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Cowboys カウボーイたち

アメリカ映画 (2020)

①。

②。写真の左端の “白線” は現在を、“黄線” は過去の思い出を意味します。

③。ジョーこと、ジョシー・ジョンソンというトランスジェンダーの少女を演じるのは、撮影時10歳のサーシャ・ナイト(Sasha Knight)。れっきとした男の子だ。トランスジェンダーの男の子を、少年が演じるのは当然だが、トランスジェンダーの女の子を少年が演じるのは、それだけ聞くと異常に思える。しかし、映画のメインパートは、カナダ国境近くのモンタナ州グレイシャー国立公園を彷徨する父と “息子” の物語なので、敢えて少年を選んだのであろう。しかし、多くのアメリカの映画評を見ていると、映画をいい加減に観ただけで書いているのか、男の子のトランスジェンダーと勘違いしているお粗末なものが大半を占めている。母親にとっての 「her transgender son Joe」 などと書かれているので、確信犯と言える。サーシャ・ナイトは、映画初出演にして L.A. Outfest映画祭でGrand Jury Award(最優秀演技)を獲得している。全体に暗い感じの多い役だが、サーシャは、自分はジョーと違って明るくて活動的な性格だと 本人が述べている。サーシャらしい写真は、コロナ禍のためWEBインタビューの低解像度のものしか存在しない。これを見ると、“男の子” になってからの長めの金髪(?)は本人のものだ。

あらすじ

グレイシャー国立公園の高台からの俯瞰映像に続き、トロイ(父)とジョーの2人が映る。「どうだ、この景色?」。「きれいだね」。「きれい過ぎるくらいだろ」(1枚目の写真)。ここでカメラ・アングルが変わりと、先ほどの俯瞰映像は2人が見ている風景だと分かる。この30秒ほどの短いシーンの後、場面はガラリと変わり、ベッドで寝ていたサリーが目覚まし時計(8時47分と表示)の音で目が覚める。サリーは、慌てて起きると、仕事に遅刻しそうなので、大急ぎで出かける用意をする。その間も、「ジョー、仕事に遅れちゃう」などの言葉をジョーに向けて叫んでいたが、一向に返事がない。そこで、「ジョー、聞いてるの?」と言いながら部屋を見に行くと、ジョーはいなくて、窓が開いている(2枚目の写真)。タイトルが表示され、12時間ほど過去に戻り、昨夜、トロイとジョーのピックアップトラックが夜道を走る車窓からの眺めが短く映り、続いて、ライフルの手入れをしているロバートが映る。依存症のグループカウンセリングで一緒だった友人だ。玄関をノックする音がし、ロバートがドアを開けると、そこには寝てしまったジョーを抱いたトロイがいた(3枚目の写真、矢印はジョー)。別居しているサリーの家に留まることに我慢できなくなったジョーを、サリーが寝ている間に救い出してやってきたのだ。トロイは、夜の間、泊めてくれるよう頼む。ジョーをソファに寝かせた後で、2人は少し話し合う。その中で、トロイは、ジョーとキャンプの旅をすると打ち明ける。ロバートは、トロイが乗って来たピックアップトラックを放置してもらっては困ると釘を刺す。その後、トロイが薬を飲む場面がある。映画の中で数回ある同様のシーンの1回目だが、これは彼の躁うつ病を抑えるための大切な薬だ。
  
  
  

翌朝、ロバートが起きてくると、2人の姿はどこにもなく、「すぐに戻る」という簡単なメモが残されていた。そして、あれほど言ったのに、ピックアップトラックは放置されたまま、そして、納屋で1頭だけ飼っていた大切な白馬が消えていた。このシーンでは直接出てこないが、ロバートが昨夜手入れしていたライフルを、後でトロイが持っていることから、ライフルも黙って持ち出して来たことになる。そして、映画は、冒頭の場面に戻り、馬に跨ったトロイとジョーは、雄大な自然の中を進んで行く(1枚目の写真)。ジョー:「カナダのこと覚えてないよ」。トロイ:「お前さんは、まだ赤ん坊だったからな。だが、気に入ってたぞ」。「そうなの?」。「ああ。お前さんの冒険心は、カナダで身に着けたんじゃないかな。早く、もう一度、見せてやりたいよ」〔この辺りからカナダ国境までは30キロ程度〕。ここで、場面はサリーの家に変わる。地元警察の女性刑事フェイスがジョーの失踪の件で話を聞いている(2枚目の写真)。「元夫との状況について、もう少し話して下さい」という問い掛けに対し、「まだ、離婚していません」と答えるので、別居中だと分かる。サリーは、1週間に1度、トロイがジョーに会いに来ることを認めていた〔裁判所の判断は、その必要なし〕。「それは、とても寛大でしたね」。「バカでした。彼は、娘を誘拐したんです」 。
  
  

トロイは、渓流に沿った場所でお昼を食べることにし、荷物を降ろす。そして、まず薬を飲むと、リュックの中から豆の缶詰を取り出し、蓋を開けてからジョーに渡す(1枚目の写真)。「これ、温めるの?」。「いいや、火は焚かない。注意を引きたくないからな」。「カウボーイは、豆を食べるんだよね」。「ああ」。「じゃあ、おなら出ちゃうよ」。「そうだな。お前さん、俺の風下に座ってくれるといいんだが」。「残念でした」。こう言うと、ジョーは、ニコニコしながら おならをする。そのあと、トロイは地図を見て、場所を確かめる。ジョーが、「どのくらいかかるの?」と訊くと(2枚目の写真)、「長くても3日だな」と言われ、思ったより大変だと驚く。次のシーンは、サリーの家での続き。誘拐事件の報道に使うための写真の提供を求められたサリーは、アルバムの中から1枚の写真を取り出してフェイス刑事に渡す。「何歳ですか?」。「10歳」。「可愛い娘さんですね」(3枚目の写真)。
  
  
  

この写真を契機に、映画は過去に戻る。過去の映像は、写真の左側に黄色の帯を縦に入れることで、現在進行中の内容とは区別する。この映画の中で、過去を振り返るシーンは計7回登場する。それらのシーンは、すべて、その直前の現在のシーンを説明するために挿入されている。写真を撮影した日、ジョーの家には父トロイ、トロイの義兄で上司のジェリーとその家族も一緒だ。サリーは、ジョーの肩を抱くと、「私たちピッタリ息が合ってる。2人とも可愛いでしょ」と、別居前だったトロイに言う(1枚目の写真)ジェリーは、「あんたの お人形さんみたいだ」と言い、サリーに叱られる。そのあと、ジェリーは、トロイに向かって、「彼女、レジ待ちの列に並んでる。持ってる物は4つ。ゴムプール、パドルボール、ポテトチップ、大人用のおむつ」と つまらないジョークを言うが、ジョーは不審感を持ってジェリーを見ている(2枚目の写真)。さらに、そのあと、トロイが、サリーとジョーのツーショットを撮る(3枚目の写真)。フェイス刑事に渡した写真とは違うが、着ている服は同じ。
  
  
  

その日の夜、両親は、外での食事の後片付けをしている。ジョーは居間に行くと服を脱いで下着だけになる(1枚目の写真)。両親は、キッチンでキスし合っている。ジョーは、余ったクッキーを取りに来て、サリーからは、「1つだけよ」と言われ、トロイからは、「おい、パジャマを着ろよ。寝る時間だぞ」と言われる。トロイは、ゴミ出しをした後、ジョーの様子を見に部屋に行く。ジョーがあんまり不機嫌な顔をしているので、「待てよ、悲しい顔コンテストで優勝する気だな?」とおどけてみせ、「どうやるか、教えてくれよ」。この言葉でジョーも笑顔になる。しばらくしてサリーが様子を見に行くと、トロイがジョーの横に寝て、「2人のカウボーイがいて、火の周りに座ってココアを飲んでる。2人とも、一日中炎天下で金を探してて、くたびれ果てたんだ。2人が見上げると、空には流れ星が…」と話している。すると、ジョーがそれを受けて、「そしたら、2人のうちの1人が、メールを受け取ったの。あれは、流れ星じゃなくって、UFOだって」(2枚目の写真)。サリーは、ジョーを1人で眠らせようとするが、ジョーは、「眠るまで一緒にいてくれる?」とトロイに甘える。サリーは、仕方なくその場を去るが、ジョーが母より父の方が好きなことがよく分かる。
  
  

ここから、現在。TVで女性キャスターが、「不幸にして、レイバー・デー〔9月の第1月曜日〕が、一人の母親にとって悪夢に変わってしまいました。11歳の地元の少女、ジョシー・ジョンソンが今朝早く寝室からいなくなりました…」と報じている(1枚目の写真)。一方、警察のフェイス刑事のもとには、役に立ちそうな一報が入った(2枚目の写真)。それは、ロバートの家のすぐ近くに放置されていたトロイのピックアップトラックに関する情報だった〔電話したのはロバートではなく、たまたま通りがかった若者〕。そこに、ロバートが車で帰ってくる。そして、フェイスを見て、「どうかしましたか?」と尋ねる。「フラットヘッド郡警察のフェイス・エリクソン刑事です」。ファイスは、ロバートの家に入り いろいろと質問する。「じゃあ、トロイが来て、トラックを置いていった?」。「ああ」。「彼は本当に1人だった?」。「ああ」〔トロイとジョーを守って嘘をついている〕。「いつ取りに来ると?」。「知らんね」。「どうやって出てったんです? 歩いて? それとも、誰かに乗せてもらって?」。「知らんね。外に出てた」。「あなたの私道にトラックを放置されて、不愉快だったのでは?」。「特に異常だとは何も」〔ここも嘘〕。壁には、白馬に乗ったロバートの写真が、額に入れて飾ってある。トロイが無断で持ち出した馬だ。「素敵な馬ですね」。「ああ、いい奴だった」〔盗まれたことは、隠している〕
  
  

その白馬に乗った2人。ジョーが、「パパ、馬が疲れてる」と指摘したので、トロイは、渋々 「分かった、ここでキャンプしよう」と賛同する。2人は、近くの渓流まで歩いて行く(1枚目の写真、矢印はジョー、その左にトロイ)〔大自然が美しい〕。さっそくトロイが薬を飲む。「薬 飲んでるの?」。「そうなんだ。毎日飲んでる。心配するな。気分が落ち着く」。ジョーは、水の中に大きな魚を見つけて、興奮する。竿を用意しながら、トロイは、「怯えさせるんじゃないぞ」と注意する。ジョーは、魚に飽きると、「撃とうよ」と言って、ライフルに手をかける。トロイは、「まだ 銃に触るんじゃない」と止めるが、ジョーは、「でも、撃ち方知ってるよ」と反論。「だが、引き金の引き方は知ってても、撃てる訳じゃない」。その時、対岸に現れた3人のトレッカーの1人が、「トレイルを見失ったみたいなんだ」と 助言を求められる。トロイは、「あんたたちの後ろじゃないかな」とテキトーに答える。「俺たち、オハイオからシアトルまでのトレイルを全部制覇するつもりなんだ」〔3000キロ以上ある〕「あんたたちは、どこから来たんだね?」。「アイダホ〔モンタナの隣の州〕〔嘘〕。「ここで 釣りしていいなんて知らなかったな」。「のんびり過ごしてるだけだ」(2枚目の写真)。一方、ロバートの家から出たフェイス刑事はピックアップトラックの車内を徹底的に調べ、トロイとカウボーイ姿の少年が映った写真を見つける(3枚目の写真)。
  
  
  

この写真を契機に、映画は再び過去に戻る。場所は ボーリング場。トロイとジェリーが対戦している。その間、サリーとジェリーの妻、ジョーは脇に座っているが、サリーは 自分が働いているカフェかバーで、カリフォルニアからの観光客の男が客として入って来た時のことを話している(1枚目の写真)。ボーリングの場面は中途半端に終わり〔何のために挿入されたのか分からない〕、次のシーンは、ジョーが学校の廊下を早足で歩いて来て、遺失物保管室にこっそりと入る(2枚目の写真)。として、バッグの中から男の子の上下の服を取り出すと、鏡の前で来て見る(3枚目の写真)。
  
  
  

夜、未舗装の広いスペースで、トロイのピックアップトラックが爆走している。助手席に乗っているのはジョー。「運転してみたいか?」。「ぜんぜん」。「だから、来たんじゃないのか?」。「話がしたかったから」。「何が、話したいんだ?」。「明日、ママに言ってくれない? ドレスなんか もう着たくないって」。「いいとも。だけど、教会に行くとか、パーティの時は着なきゃダメだぞ」。「パパ、ドレスが着たい?」。「まさか。何で俺がドレスなんか着るんだ?」。「そうでしょ? パパは男だから。男はドレスなんか着ない」。「そうだ」。「だから、私もドレスなんか着ない」。「分かった、お前さんはトムボーイ〔男の子のように振る舞いたい女の子〕なんだ。なら、ドレスなんか着なくてもいい」。「私は、トムボーイじゃない。トムボーイは女の子の一種でしょ。でも、私は女の子じゃない」(1枚目の写真)。「言ってることが分からんぞ」。「エイリアンが冗談で 私を女の子の体に入れたんじゃないかって時々思うの」。「お前さん、エイリアンに さらわれたのか?」。「パパ!」。「何だ」。「私は間違った体に入ってる。いい、私は男の子なの!」(2枚目の写真)。これで、すぐにトロイが理解した訳ではない。最初は、思春期のホルモンの変化による混乱を疑う。しかし、ジョーは、「混乱なんかしてない。自分のことぐらい分かってる」と否定する。そして、さらに、「ごめんなさい。でも、私のせいじゃない」と謝る。トロイは、真剣な顔になり、「大丈夫か?」と訊く。「私のこと、信じてないんだ」。「信じるよ」。「信じてない」。「信じる。約束する」。これで、2人の間には強い絆が生まれた。重要な場面なので、台詞の割愛は極力避けた。
  
  

フェイス刑事が、サリーの家を訪れる(1枚目の写真)。目的は、ピックアップトラックに中で見つけた写真について。「この写真、見たことありますか?」と尋ねる。サリーは、首を横に振り、「いいえ」と答える。「その写真に映っているのはお嬢さんですか?」。「そうです。時々、トムボーイみたいな服を着るのが好きでした。でも、こんな姿で家の外に出したことはありません」。「この子が、ドナルドダックの格好をしてても いいんです。大事なことは、この写真のような姿でいる可能性があるかどうかなんです。最初にお借りした写真と比べると、全くの別人のように見えますから」。「可能性は大いにあります。今じゃ、髪の毛も短く切ってますから」。「ショートカットですって? とても重要な情報なんですよ。まだ伺っていないことで、他に重要なことはありませんか?」。サリーは何も答えない。「何か思いついたことがあれば、何でも結構ですから電話して下さいね」。刑事は、捜査には、新しい写真を使うと言って去って行く。サリーは、思わず頭を抱える(2枚目の写真)。
  
  

この “男の子のような恰好” を契機に、映画は三度目の過去に戻る。二度目の過去と同じ日の夜、トロイはサリーにジョーが打ち明けたことを話す。サリーが、真面目に取り合わないと、「ジョーが俺に話したことを、聞いたろ?」と、再度強調する。それに対し、サリーは、「ジョーはカウボーイハットが好き。だから何? あの子は、あんたのようになりたいだけ。あなたはそれを唆してる」と、全くジョーの言ったことを理解しない発言をする。「違うったら。ジョーは、自分が男の子だと言ったんだ。ジョーは、間違った体に入ってると思ってる。まるで、他人の体の中に入り込んだエイリアンみたいに。『ボディ・スナッチャー』って、映画があったろ」。「『ボディ・スナッチャー』ですって? トロイ、あんた何言ってるの?」。ベッドで2人の話を聞いているジョーは悲しそうだ(1枚目の写真)。サリーは、見当違いの話を続ける。「カウボーイになるって、ジョーはきっと素敵だって思ったのよ。真夜中に盗んだ車で飛ばしたり、仲間とバーに行ったり、釣りや狩りもする。あの子にとって、あんたはヒーローなの。家で皿を洗ったり、トイレの掃除をしてる胸くそ悪いママと比較したら、男の子になりたいと思ったって不思議はない。ジョーにとって、あたしはゴミなの」。トロイは、「君は関係ない!」と断ずるが、サリーには全く理解できない。だから、ジョーのベッドにお休みを言いに行った時にも、無理解を繰り返す。「ねえ、何か言いたいことある?」。「ない」(2枚目の写真)。「ママが あんたの年頃の時、あたしと母さんはペギー・リーを聴くのが好きだった」から話し始め、ペギー・リーのようになりたいと思ったけど、結局は、下らない夢だったと くどくど話したあとで、「あなたは、人生で、たった一人の人間にしかなれない。体は一つしかないのよ。あなたは一つの道を歩んできた。神様お決めになった道を。これからも、それを歩み続けるの」と、言い聞かせるように話す。これでは、絶望的なので、ジョーは何も言わない。
  
  

1日目の夜のテントの中で。周囲は真っ暗だ。ジョーが、「パパ、お腹空いた。明日は、魚 獲ったら?」と声をかける。「ああ、そうしよう」。そして、「大好きだぞ」と付け加え、ジョーも、「大好きだよ」と受ける(1枚目の写真)。しかし、父が眠ってしまうと、ジョーは起き出してLEDのヘッドライトだけを頼りに、釣り竿を持つと渓流に入って行く〔なぜ? お腹が空いたから? 獲っても料理などできない〕。次のシーンは、ジョーが溺れて叫ぶ声で、トロイが目を覚ます。「パパ、助けて!」。トロイは、何が起きたのか さっぱり分からない。それでも、ヘッドライトを頭に付けると、悲鳴のする方に向かって、「ジョー!」と叫びながら、真っ暗な森を小走りに進む。「パパ!」。「ジョー! どこだ?」。渓流に達すると、ヘッドライトが急流の中で光っている。ジョーは渓流に入って行った後、転ぶかどうかして流されたのだ。トロイはそのまま渓流の中に入って行く。そして、足をすくわれ流される(2枚目の写真、左の矢印はジョー、右の矢印はトロイ。分かり易いように増感したが、実際はもっと真っ暗)。ジョーは、何とか岩にしがみつき、そこにトロイが助けに来る。2人は寒さに震えながらテントに向かう。途中で、トロイは大事な薬のビンが胸ポケットに入っていないことに気付き、「すぐ戻る。どこにも行くな」と言い、薬を探しに戻る。ジョーは、「どこに行くの?」と訊くが(3枚目の写真)、トロイは何も答えない。結局、薬ビンは見つからなかった。トロイは思わず川原に座り込み、「くそっ!」と罵る。
  
  
  

映画は、ここで4度目の過去に。このシーンの冒頭で、トロイはジェリーと一緒に落ち葉集めのバイトをやっている。その次は、ロバートに誘われてアル中のグループセラピーに参加する〔トロイはアル中ではないが、助けにならないかと誘われた〕。その何れでも、異常なほどの “躁状態” を感じさせる。そして、このパートのメイン・シーンである衣類と靴の店での騒動に入って行く。そこには、まず、サリーとジョーの2人だけがいて、サリーがピンクのブーツを、「これ、試してみて」と言ってジョーに渡すと(1枚目の写真)、ジョーはそれを床に叩きつける。「ブーツを床に投げないの」。そこに、トロイが、「遅れてごめん」と言いながら店に入って来る。「40分も遅刻よ」。そして、すぐにサリーは出て行く。サリーの姿が消えると、トロイはジョーの座っている長椅子に置いてあったピンク色の棚にしまうと、ジョーが選んだカウボーイにぴったりのブーツを、「とってもいいぞ」と褒め、履いた後で歩いて様子を見させる。その次は、男性用のチェックシャツを3着持って来て合わせてみる(2枚目の写真)。そこに、ジェリーが息子を連れてやって来る。ジョーは試着室のドアを閉める。ジョーが、一番地味な色のチェックシャツを着て、ズボンのベルトを締め終わった頃、ドアがガタガタする。ジョー:「パパ?」(3枚目の写真)。しかし、それはトロイではなく、入って来た時、チラとジョーの持っていたチェックシャツを見たジェリーの息子で、彼は、ドアというか、仕切り板の下をくぐって試着室の中に入ってくる。「なんだよ、その服。ダイク〔男性的に振舞おうとする女性〕みたいだな」。「ダイクじゃない」。「でも、ダイクみたいだぞ」。ジョーは、「ダイクじゃない!」と言って、息子の顔を叩く。怒った息子は、「ダイク!」と大声で言い、2人で揉み合いになる。すると、急にドアが開き、トロイが、「このクソガキ、何してやがる!」と怒鳴りつける(4枚目の写真)。
  
  
  
  

息子は逃げ、トロイは追いかける。ジョーは、「パパ、やめて!」と叫ぶが、躁状態にあるトロイは、息子を捉まえると、「何であんなことした? 大人のつもりか? ホントの大人が何するか見せてやろうか?」と脅し、止めようと肩を抑えたジェリーの顔を、振り向きざま、肘で強く叩く。煽りを食ったジェリーは、そのまま階段を転げ落ちる(1枚目の写真)。「そんなつもりじゃ…」。ジョーは、その光景を悲しそうに見ている(2枚目の写真)。結局、傷害事件として警察が呼ばれる。ジェリーは、「トイレから出てくると、奴が、俺の息子を襲ってた。止めようとしたら、俺を殺そうとした」と、実際にあったことを誇張し、“過失致死” で告発する。手錠をはめられて連行されるトロイは、ジョーに手を振る(3・4枚目の写真)。映画の中では説明がないが、トロイは過失致死にはならなかったと思われるが、恐らく精神科医の診断で躁うつ病だとされ、その時から薬を飲み始めたものと思われる。また、サリーとの別居もこれを契機に始まったのであろう。
  
  
  
  

2日目。雄大な自然の中に、点として映る2人の素晴らしい映像が再び見られる(1枚目の写真)。TVでは、9月2日にジョーを拉致した犯人としてトロイの顔が映し出される〔レイバー・デーに拉致なので9月の第1月曜日が2日なのは2019年〕。フェイス刑事が見ているトロイの調書には、「診断: 躁うつ病(執心、奇矯な行動)、処置: 話し合い療法(週1回)、精神科医(週1回)」と書かれている。食べる物がないため、トロイはキャンプに来ている車にこっそり接近し、中から食料を盗み出す。そのあとで、横に置いてあった新聞を手に取ると、そこには、カウボーイ姿のジョーの写真が、一面に掲載されていた(2枚目の写真)。自分達のテントに戻ったトロイは、1つ1つ取り出していく。「豆の缶詰、クラッカー、チョコバー」(3枚目の写真)「ジャーキー〔薫製肉〕」。ジョーは、一緒に入っていた新聞を取り上げる。「お前さんの写真だ。俺のトラックから持ち出したに違いない。てことは、ロバートの家に行ったってことだ。彼は味方だから、心配はいらん」(4枚目の写真)「俺たち、無法者だよな」。
  
  
  
  

5度目の過去。ジョーが、おもちゃ売り場で、おもちゃのピストルを手にしていると、サリーが カートを押しながらコーナーを曲がり、「何してるの?」と訊く。「これ、買っていい?」(1枚目の写真)。「そんなの要らない」。ジョーは横の棚のY字型のパチンコを取り上げ、「これなら? たったの1ドル。家に帰ったら、貯めておいたお金で払うから」と言う。ところが、サリーは、棚からスパークル・ガールズという女の子の人形を選ぶと、「これにしたら? 可愛いでしょ」と勧める(2枚目の写真)。「そんなの欲しくない」。「じゃあ、今日は、おもちゃを買うのやめましょ」。ジョーはピストルとパチンコをカートに放り入れると、「これは?」と言って1冊の本を見せる。本の題名は『カウボーイ・トム』。「ダメ。そんな本は要らない。棚に戻しなさい」。「なぜ?」。「パパなら買ってくれる」。「他の女の子が遊びに来たら、こんなおもちゃで遊びたくないし、そんな本も読みたがらない。お友だち、欲しいんでしょ?」(3枚目の写真)。「そんなバカ、いらない」。サリーは、すべて棚に戻させる。ジョーは怒って店から出て行く。
  
  
  

場面は変わり、刑務所の駐車場でトロイが座っていると、そこにロバートが車で迎えに来る。トロイが、どこに仮住まいを設けたのかは分からない。サリーの家では、サリーがジョーに何かをしようとして、何度も手を払い除けられる。「やめなさい! 長いことパパに会ってないから、変な気がするんでしょ。興奮しで当然。あたしも興奮してる」と言うが、ジョーの賛同は得られない。そこに、車の音がして、トロイが運転するピックアップトラックが家の前に停まる。エンジンを切ったトロイが真っ先にしたことは、薬を飲むこと。これまでに何度も観たシーンだが、すべて「現在」の場面だったので、「過去」の場面としては、これが最初。ジェリーにケガを負わせたことで、医者の診断を受け、処方された薬だ〔その大切な薬が、ジョーを救おうと渓流に入ったことで紛失した〕。トロイが玄関をノックすると、出てきたサリーは、ジョーが裏庭にいると教える。2人が会うのはほぼ1年ぶり。サリーは、トロイが収監されている間、一度もジョーを刑務所に行かせなかった。2人の会話の主な部分。「会いたかった。ママがズボンを捨てちゃった」(1枚目の写真)〔この写真が、一番少女らしい。演じているのが少年とは信じがたい〕。「ホントなのか?」。「ええ」。「ひどいな」。「ママは、魔女じゃないかな」。「魔女なんかじゃない。美しい女性だ。お前さんのことを、まだ理解してないだけだ。そのうち、変わる」。「あのね、パパ、誰も私に訊いてくれない… パパと住みたいのか、ママと住みたいか… そんなの不公平…」。トロイは、「ジョー、パパは頑張る」と言うと、「じゃあ、来週」と言ってトラックに向かう」。ジョーは、「パパ、待って!」と叫ぶと、走って行ってトロイに抱きつく。その機会に、トロイは、ハンカチに包んだものをジョーに渡し、「ほら、これ後で」と小声で言う(2枚目の写真、矢印は小さな包み)。ジョーは、地下室に降りて行くと、ハンカチを開いて中身を見る。それは、バッファローの頭の絵柄を打ち出した ズボンのベルトのバックルだった(3枚目の写真)。
  
  
  

3日目のテントでの朝。トロイは、目立たないように作った焚火でココアを作ると、テントに入って行き、「お早うさん!」と、躁状態でジョーを起こす。ジョーをくすぐったり、突飛な歌を口ずさんだりしたので、薬が完全に切れたのだと分かる。そして、地図を見せ、「国境のそばまで来たぞ」と言い、指で示すのだが、そのやり方がまた突飛。心配になったジョーは、「大丈夫なの?」と訊く(1枚目の写真)。「大丈夫かだと? おまえさんがいて、国境は近い。大丈夫を超えとる」(2枚目の写真)。「ちょっと興奮してない?」。「お前さんを起こそうとしただけさ」。「いつもと何だか違ってた。薬飲んだの、見てないけど」。「もちろん、飲んださ」〔嘘〕「ほら、おいで」。ジョーの目は、疑いに満ちている(3枚目の写真)。その時、遠くで雷のゴロゴロという音が響く。
  
  
  

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