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Le bel été 1914 1914年の美しき夏

フランス映画 (1998)

1942年に出版されたLouis Aragon(ルイ・アラゴン)の『Les Voyageurs de l'impériale(二階馬車の乗客たち)』のごく初期の部分だけを自由に膨らませて映画化された作品。日本では1956年に訳本が出ているが、読んだ訳ではないので、主人公ピエール(Pierre)の出自が全く分からない。映画では 没落したサントヴィル伯爵の甥で、フランスの中等教育を担うリセの教師〔原作では、歴史と地理〕。映画の中で、「家賃収入だけで暮らしていけるほど財産家なのにリセの教師なんかになって」という誹謗を受けるので資産家らしい〔原作によれば、すべてに失望したピエールは、1897年の秋、彼の権利をすべて売り払って35万フラン(1912年の時点でのフラン/ドル換算で67698ドル≒現在の約180万ドル≒2億円)の現金を手にすると家族を捨て旅に出る〕。ピエールの結婚相手はポーレット(Paulette)。映画の中で、「まともな人は働かない。ポーレットの父のように外交官か、長官になるならいざ知らず」と、父親について言及があり〔原作では警視総監〕、映画の中で一番嫌な登場人物ポーレットの母マリー・ダンベリュー(Marie d’Ambérieux)は “de” が付いているので貴族なのであろう。2人の関係は完全に破綻しているが、映画ではよく分からないが、原作ではその原因はもっぱら、“軽薄で、浪費癖があり、頭が悪い” ポーレットの責任になっている。映画では1914年の夏〔原作では1897年の夏〕、ピエールは妻の叔父の城で、リヨンの実業家の妻ブランシュ・パイユロン(Blanche Pailleron)と短い恋愛をし、原作によれば、深い失望はピエールをより皮肉に変える。どう見ても 暗い内容だが、それは原作者のLouis Aragonが筋金入りの共産党員だったから、“社会に寄生するクズのような人間” を手厳しく描いたに違いない。映画は、その “一方的な暗さ” を緩和するため、原作には登場しないガブリエル(Gabriel)という12歳の少年を、ピエールの長男として登場させ、パイユロン家の娘スザンヌ(Suzanne)と、その友達のイヴォンヌ(Yvonne)との間の思春期の恋をちりばめることで、トーンを変えている。あらすじの作成に当たっては、ガブリエルの場面を優先し、大人同士の長々とした会話の部分はカットした。なお、残念なことに、この映画のフランス語字幕は存在しないので、ある程度の間違いを覚悟の上で、英語字幕に全面的に頼るしかすべがない。この映画を一度観てみたいと思われる場合は、画質は落ちるが、https://ok.ru/video/95780211438 で公開されている〔字幕はない〕

1914年、毎年恒例となった夏のバカンスに、母の叔父の伯爵の城にやって来たピエール、ポーレット、長男の12歳のカブリエルと、妹の4人家族。いつもと違って、他人が城の中庭を占領している。伯爵の話では、金銭上の問題で、夏の間、城の半分をリヨンの実業家の一家に貸したとか。さらに、領地の多くも、一大結核療養施設を作ろうと目論んでいるモローという大金持ちの医者に売ってしまっていた。ガブリエルの一家には、さらに問題があり、金持ちというだけで結婚したピエールと妻のポーレットの間には、かなり前から決定的な溝ができ、互いに嫌い合って別居に近い状態。ガブリエルにとって唯一の救いは、“女性” との初めての邂逅。最初は、実業家の妻で美人のブランシュに恋をしたが、ブランシュの娘のスザンヌと友達のイヴォンヌとは1つ違いですぐに親しくなる。2人の女の子から恋愛の対象になるなんて、思春期を迎えたガブリエルにとっては、ドキマギするような体験だった。最初はスザンヌが積極的だったが、そこにイヴォンヌが絡むとスザンヌが嫉妬し、彼女の専横的で暗い影が覆いかぶさるようになる。そこに、ガブリエルの父ピエールの、スザンヌの母ブランシュに対する “なり振り構わぬ” アタックが加わり、そこに、伯爵の姉の傲慢で口うるさいマリーが突然やって来たことで、事態は最悪の方向に進み始める。まず、マリーとピエールが激しく対立し、そのせいもあって、ピエールとブランシュの関係は一線を越え、その気配をスザンヌが感じ取り、マリーが口を滑らした決定的な証拠を聞き、本性の短気が爆発して出奔、大騒ぎとなる。その原因となったマリーに対し、伯爵が誹謗したため、怒ったマリーは城を出て行き、恐らく、その怒りも引き金となり、その夜ホテルで突然死する。ブランシュは、スザンヌのことで反省し、激しく迫るピエールを一言で撥ね付け、すべてに失望したピエールは、家族を放り出して自己資産を食い潰す旅に出る。姉の葬儀後の会食で、伯爵は親類一堂に向かい、自己破産と城の明け渡しを告白する。そして、第一次大戦も始まる。

重要な脇役の12歳のガブリエル役を演じているのは、ロバンソン・ステヴナン(Robinson Stévenin)。1981年3月1日生まれ。映画に関する情報が乏しく、撮影の時期も不明だが、仮に公開前年の1995年夏とすれば撮影時14歳となる〔声変わりしているし、体の発育状態からも12歳ではあり得ない〕。スザンヌは13歳の少女の役で、ガブリエルより大人に見えるが、俳優の生まれ年は同じ。ロバンソンは、TV映画を含めて、本作が映画出演6本目。映画初出演の『La révolte des enfants』(1992)では、Paris Film FestivalでBest Actorとなっている(右の写真)。現在もTVを中心に俳優として活躍。

あらすじ

パリから毎年のように母ポーレットの叔父の城まで 夏のバカンスにやってくるメルカディエ一家の馬車が、途中の道で夜を過ごしている。荷物と一緒に屋根で寝ているのは、ガブリエルと妹(1枚目の写真、実際はもっと暗いので増感処理を施してある)。愛犬の気配でいち早く目を覚ましたガブリエルが、馬車の中を覗いてみると(2枚目の写真、同前)、母だけが寝ている。馬車が停まっている場所と城とはそれほど離れていないので、ガブエリルは犬を連れて城に向かう(3枚目の写真、同前)。
  
  
  

城の中庭の端にあるネオ・ゴシック風の石の欄干には、数人が手をついて話しているのが見える。ガブリエルは、下の庭の石垣の一番低い箇所を上り(1枚目の写真)、下の庭に入ると、そこには父ピエールと その城主のサントヴィル伯爵がいて、伯爵が 「土地の一部を売り、夏の間賃借人を置かねばならなかった。わしの姪が嫌な顔をせぬといいのだが。賃借人はリヨンから来た。君には、城の別の翼棟の2階を用意する」と説明している。それを耳にした、ガブルエルは、挨拶を抜きにして、いきなり、「どうしてそんな? きっと何もかも おかしくなるよ。もう元には戻れない。バカンスはめちゃめちゃだ」と伯爵に不満をぶつける。伯爵は、「何を言い始めるんだ?」と言いながら、ガブリエルの額にキスをする。ピエールは、「ガブリエルは疲れてるんでしょう」と弁解し、ガブリエルを残して去って行く。次のシーンは謎。同じように外は真っ暗なのに、馬車で眠ってハズのガブリエルの母がいつの間にか城にいて、夫も同じ部屋にいる〔1人でいったいどうやって馬車を動かしたのだろう? ピエールが馬車まで戻って連れて来たのだろうか? それほど近いのなら、なぜ道の途中で寝ていたのだろう?〕。この夫婦の会話は長く続くので紹介はしないが、①妻のポーレットが伯爵の行動を批判する、②2人が同じ部屋で寝るのは久し振り、という内容。その中で、重要な台詞が1つだけある。ピエールがポーレットに対し、伯爵を 「君の叔父」と呼んだこと。2人は同じベッドに入るが、同じベッドに入っても、ポーレットは体を近づけないように横を向いて本を読んでいる(3枚目の写真)。そして、ピエールが声をかけても返事もせず、ほんの少し肩に手が触れただけで、体を起こし、「触らないで! 謝ってちょうだい!」と過剰反応。2人の仲は完全に決裂している。
  
  
  

翌朝、妹と同室だったガブリエルは、窓辺に行き外の馴染み深い景色を眺めると(1枚目の写真)、そのまま長い廊下を走りながらシャツを頭から被り、犬と一緒に中庭に走り出る。そして、階段を下りて下庭を横断し、石垣を降り、その下に拡がる野原を走り降り、その先の丘を駆け上る。かなりの距離を走ると、展望の効く場所に出る。ガブリエルは、犬に向かって、「僕らは世界の端にいる。ジャンプすれば鳥みたいに飛べるかも」「パリでは、目を閉じて、この景色を思い出してた。また 戻ってこられて嬉しいよ」と言いながら、犬を撫でる(2枚目の写真)。谷の下から汽笛が聞こえ、パリに向かうであろう汽車が映る(3枚目の写真)。
  
  
  

ガブリエルは、出て行った方角とは180度違った方向、すなわち、城の裏側から中庭に入る。中庭の端の高欄に沿いに、自分と同じくらいの女の子が2人話し合いながら歩いている。場所を移しながら2人を見ていたガブリエルは、犬が寄ってきたので、早足で前を向いたままバッグし、デッキチェアに寝ていたブランシュ〔賃借人のパイユロン家の妻〕にぶつかって、ブランシュにそれ以上転倒しないよう、助けられる。ブランシュは、ガブリエルを真っ直ぐ立たせると、「あなたがお孫さんね。よく見せてちょうだい」と笑顔で言う(1枚目の写真)「あなたってハンサムな子ね、ガブリエル。それが名前なんでしょ?」。茫然としているガブリエルに、ブランシュは言葉を加速させる。「私たち、もうお友だちよね、小さな野獣さん」。ガブリエルが、逃げそうな素振りを見せたので、「あなた、女性が怖いの?」と訊く。「なぜ、怖がるんです? 僕が秋に生まれたから?」。「秋なの? それは、春の情熱のすべてを宿してるってことよ。あなたには、前途有望な素質がある。その若い肉食動物の歯で、多くの女性の心を打ち砕くでしょう」。男の子が こんなことを言われたら困ってしまうが、ガブリエルは負けていない。「あなたに噛みつきましょうか、マダム?」(2枚目の写真)。その頃、ポーレットはまだ寝ている。ピエールが、 “触らぬ神に祟り” なしで、起こさないように部屋を出て行くと、廊下を伯爵が足早にやって来て、「お早う、甥っ子。マルタを見たか? あいつ、わしを忘れておる」とブツブツ。「台所にいませんか?」。「わしは、今、そこから来たんだ。朝食を食べたかったのに、30分も無駄にした」。すると、薪で沸かす風呂のある部屋からマルタの声がする。そこに2人が言ってみると、何と、バスタブの半部にジャガイモが入れてある。マルタの説明によると、大量のジャガイモの発芽を防ぐためにバスタブに入れたとか。結局、ガブリエルがバスタブの中に入り、ジャガイモを外に放り出すことに(3枚目の写真、矢印はジャガイモ)〔マルタは若干の認知症?〕
  
  
  

そのあと、伯爵がいつも飲むことにしているホットチョコレートを持ってガブリエルが書斎に入って行く(1枚目の写真)。「気分はどうですか?」。「騒ぎで疲れた」。そして、ガブリエルの汚いシャツを見て、「どこに行ってた? どこで、そんなに汚した?」と、笑いながら訊く。ガブリエルは、雑然とした書斎の中を見て歩く、「背が伸びたな」。ガブリエルは、女性の裸像のお尻に手を当てると、「チョコレート おいしいですか?」と尋ねる。伯爵は、逆に、「光が当たる所に立って、よく姿を見せろ」と言う。光に当たった姿が、あまりに “浮浪児” のようだったので(3枚目の写真)、「いったいどうした? お父さんは、ちゃんと面倒を見てくれてるか?」「お前さんも、彼みたいに先生になって、ガスの出る都会のアパートに住みたいか?」と訊く。ガブリエルが、それには答えず、置いてあった本をめくり始めると、「そこにおる?」と訊く。「テーブルのところ」。伯爵は、「目がどんどん悪くなっておる。誰も気付いておらんがな」「誰にも言うんじゃないぞ。わしたちだけの秘密だ」と念を押す(4枚目の写真)。ガブリエルは、「名誉をかけて誓います」と言い、「名誉か、いい子だ」と褒められる。その時、ガブリエルが見ているのは、女性裸像の解剖本。
  
  
  
  

城を出た所で、ピエールの前に1台のオープンカーが停まる〔1908年に発売されたT型フォードのような安物ではない〕。運転したのはモロー博士。伯爵の土地の多くを買収し、そこに肺結核患者のためのサナトリウムの建設を始めている。ゆくゆくは、城も取得し、そこも病院にするつもりだ〔モローは、ピエールに対し、伯爵を 「君の叔父」と呼んでいる〕。一方、ガブリエルが虫取り網を持って小麦畑を歩いていると、後ろから、2人の少女がこっそり後をつけてくる。それに気付いたガブリエルは、3人で歩くことにする。スザンヌが、「ここには、毎年来るんですか、ムッシュー」と訊くと、ガブリエルは 「そうだよ。『ムッシュー』はやめにしない?」と言う(1枚目の写真)。「あなた、幾つ?」。「12歳」。ガブリエルは、自分の方が強いことを見せようと、円弧状に曲がった木に這い上がりながら、「こんなことできる?」と訊くが、途中で落ちてしまう(2枚目の写真)。心配して駆け付けた2人。「おケガは?」。体中に土がついた状態で立ち上がったガブリエルは、「堅苦しいことは抜きにしよう」と言う(3枚目の写真)。それを聞いて、もしくは、ガブリエルの野性的な顔を見て痺れた2人は、ニッコリする(4枚目の写真)。
  
  
  
  

朝食の鐘の音が響き、スザンヌとイヴォンヌは、中庭のテーブルに向かって走って帰る(1枚目の写真)。一方、そことは別の翼棟の2階にある食堂には、ガブリエルが汚いシャツのまま駆け込んでくる。そして、伯爵、プラス、一家4人で食事が始まる(2枚目の写真)。伯爵が首を痛そうにしていたので、ポーレットが、「首をどうかなさったのですか?」と訊くと、「寝ている間に椎骨をひねったらしい」と答える(3枚目の写真)〔会話に意味はないが、ガブリエルの様子が分かる唯一の場面〕。食事中の話題は、①ポーレットが賃借人のことを “金持ちだからユダヤ” と軽薄に誤解し、伯爵は、パイユロンという姓は典型的フランス人だと否定する、②ガブリエルの妹がスザンヌとイヴォンヌは13歳だと話す。③ピエールは 紙幣の発明者ジョン・ロー(1671-1729)の本の書いている〔原作でも、彼は、株式やギャンブルが好きで、この本も書いている〕
  
  
  

城の下庭のすぐ下の野原に遊びに行ったガブリエルは、ブランシュが夫が馬車で出かけるのを見送っている姿を見ると、石垣の上の平らな部分に 「A TOI(君に)」 と刻み込む(1枚目の写真)〔「A VOUS(あなたへ)」 という丁寧語を使っていない〕。それが終わると、下の庭の壁際に生えていた雑草で花束を作ると、中庭にブランシュを探しに行くが、そこで彼女と鉢合わせする。ブランシュは、「秋の子が、夏の花束を持ってどこに行くの?」と問い掛ける。「あなたにです、マダム」。「私に、嘘はダメよ」。「あなたが好きです」。「花をもらってこんなに嬉しかったの初めてよ。素敵な花ね」。そう言うと、ブランシュはガブリエルの額にキスする。「あなたの名前は?」。「変わった子ね。パイユロン夫人でしょ」。「そうじゃないんです。それは、夫の姓でしょ」。「私は、ブランシュ。普通は、訊かないわよね?」と言い、今度はガブリエルの唇にキスする(2枚目の写真、矢印は花束〔根っ子の方〕)。そのあと、ブランシュは階段を下り、下の庭の端から森に入って行く。それを伯爵が追う。後を追おうと思っていたピエールは、伯爵の姿を見て、影に隠れる(3枚目の写真、ピンク、黄色、空色の矢印でそれぞれの位置を示す)。森の中でブランシュが道に迷ったのを見て、伯爵が話かける。その中で、ブランシュは 「あなたのお孫さん、とっても魅力的ですね」と、ガブリエルを話題にする。「ガブリエルが? 彼は、騒々し過ぎるし、思わせぶり過ぎると思われませんか? 見苦しい点は、年齢とともになおっていくでしょう」。「見苦しい? そうは思いませんわ」。後は、老人が美しい中年女性に話すたわいもない会話。ピエールは、2人の後を付け、木の間に隠れて会話を聞いている。そんな中で、一瞬、ブランシュがピエールの存在に気付いたと思わせるショーンがある。
  
  
  

森の中のパヴィリオン〔イギリス風庭園にある “あずまや”〕の中で、ガブリエルとスザンヌが、ギリシャ神話のアイアスの最期を真似して遊んでいる。ガブリエルが扮した悲劇の王子アイアスが最後に自刃して果てる時の剣に模したツルハシを持ち、「あなたに抱擁されて果てたいのです」と言い、“剣” を投げ捨ててスザンヌに迫る。「たった1回のキスで私は救われます」(1枚目の写真)。そう言ってキスしようとした時、邪魔をしようと、“犬” にさせられたイヴォンヌがパヴィリオンのドアをバタンと押し開け、「ワン、ワン」 と2人を分かれさせる。その時、スザンヌは、イヴォンヌに、「お座り、ドレフュス」と命じる〔こちらは、1894年に冤罪で終身禁固刑になったユダヤ人の陸軍大尉ドレフュス〕。ガブリエルは、ユダヤ人をキリスト教徒に変えるか、死亡させる薬を調合し、それをイヴォンヌに飲ませる(2枚目の写真)〔もちろん、本当に飲むわけではない〕。イヴォンヌは死んで倒れるフリをする。とスザンヌは、「イヴォンヌ、ここにいるのよ。100数えたら追って来て」と言うと、ガブリエルの手を引っ張って森の中を走る。境の柵まで来ると、ガブリエルを柵に押し付け、「さあ、本物のキスよ」と言い、激しくキスする(3枚目の写真)。すると、1台の馬車が、父ピエールが御者になり、柵の外を城に向かって疾走して行く。何事かと思ったガブリエルは、大急ぎで城に向かう。
  
  
  

城に着いた無蓋の馬車。座席に倒れていたのはブランシュ(1枚目の写真)。ピエールは、「馬が棒立ちとなり、馬車は寸前でした」と説明する〔なぜ、そんな事態が起きたのか? なぜ、ピエールがその場に居合わせたのかは全く不明〕。ピエールはブランシュを横抱きにすると、パイユロン家が借りている部屋まで運んで行く。その場で、ブランシュは、ポーレットに、「もし、あなたのご主人がみえなかった、私は死んでいたでしょう」と話す。さらに、ピエールに向かっては、「あなたが、馬の首に飛び乗られた時、踏み潰されるのではと恐怖にかられました。あなたは勇敢な方ですね」と感謝する〔何度も書くが、どうしてその場に居合わせたのだろう?〕。戻って来たパイユロン家の当主は、中庭のテーブルにピエール一家と伯爵を招き、感謝の言葉を述べる(2枚目の写真)。食事の場での主な話題は、①サラエボでの大公暗殺(1914年6月28日)の影響、②カイヨー夫人によるカルメット射殺(1914年3月16日)、③モロー博士の結核療養所〔なお、この会話の中で、ポーレットは伯爵を「叔父様」と呼んでいる〕。ガブリエルはイヴォンヌと隣り合っていたが、この時点では、特に互いに意識はしていない(3枚目の写真)。
  
  
  

テーブルに座っていた3人は、食べ終わったので、遊びに行っていいとの許可が下り一斉に走り出す(1枚目の写真)。そのあと、ずっとテーブルでの事後談が続くので、どうやってイヴォンヌをまいたのかは分からない。草むらを走っているのは、先行するセザンヌと、後を追うガブリエルの2人だけ。セザンヌは納屋の2階へと上がり(2枚目の写真)、「イヴォンヌに見つかりそうになったら、屋根に逃げましょ」と言って 窓際に連れて行く(3枚目の写真)。ガブリエルは、「何を怖れてるの?」と尋ねるが、セザンヌは 「何もかも」としか答えない。「建物に侵入したことが怖いの? それともイヴォンヌに見つかること? 見つかっても、それだけじゃないか。何を怖がるの?」。「誰にも見つかっちゃいけないの。特に、イヴォンヌにはね」。「どうして? こうしてるのが、イヤなの?」。「まさか」。外から、イヴォンヌが、「スザンヌ!」と呼ぶ声が聞こえる。「イヴォンヌと私が、この場所を見つけたの。そして、誰にも話さないって約束したの」(4枚目の写真)。
  
  
  
  

2人は、籠のようなものの中に一緒に入る。「もし、イヴォンヌに見つかったらどうする?」。「ここには来ないわ。どうしたの? あなたも怖いの?」。ガブリエルは、左手をスザンヌのお腹に置き、次いで、破れたストッキングを見て、その上に手を移す。「ストッキング、破れちゃったね。お母さんに 何て言われるかな?」。「母の話はしないで。嫌いなの」。そう言いながら、ガブリエルは破れた箇所を撫で続ける。「パパのことは、好き?」。「いいえ。2人とも嫌い。死んだらいいのに」(1枚目の写真)。ガブリエルは、スザンヌの頬に額を付ける。「冗談よ」。その時、また、イヴォンヌの呼び声が聞こえる。「僕たち、イヴォンヌをからかってるみたいだね」(2枚目の写真)。「私たちって残酷ね。あんなに苦しんでるのに」。そう言うと、その対価措置なのか、別の意味があるのか、「私に痛いことして」とガブリエルに頼む。「いいよ、どこを?」(3枚目の写真)。その後、2人がどうなったのかは映されない。
  
  
  

翌朝、ガブリエルが薪ストーブを使ったバスタブに入り、「A TOI(君に)」と何度もつぶやいていると(1枚目の写真)〔この “君” は、ブランシュではなくスザンヌであろう〕 、急にドアが開く音がしたので、急いで湯に潜る〔白濁しているので、姿が見えなくなる〕。入って来たのは父ピエール。早朝、ブランシュの夫が馬車で出かけるのを見たので、両首筋に香水のガラス蓋の内側を押し付ける。父が出て行くと、ガブリエルはドアに鍵を掛け、鏡の前に行くと、父がしたように香水のガラス蓋の内側を押し付ける(2枚目の写真)。そして、瓶を持ったまま窓辺まで行き、もう一度蓋を開け、今度は振りかける(3枚目の写真)。その時、ドアをノックする音が聞こえたので、びっくりして瓶を落として割ってしまう。バスタオルを下半身に巻いてドアを開けると、そこにいたのは伯爵。彼は、「ガブルエル、ちゃんと洗ったな。いい子だ」。ガブルエルが逃げ出した後で、割れた瓶を窓辺で発見する。
  
  
  

家庭菜園の脇で、ガブリエルとイヴォンヌが会っている。イヴォンヌが前髪をワザとボサボサに垂らしているので、ガブルエルが 「君、変人になりたいの?」と訊くと、犬のように 「ワン」と答える。「やめろよ。髪を戻して。ちっとも良くない」。イヴォンヌは、垂れた前髪を元に戻す(1枚目の写真)。「スザンヌが待ってるよ」。「ええ」。そのあと、イヴォンヌは これまで言わなかったことを口にする。「彼女に探させたらいい。面白いわ」。そう言うと、ガブリエルの頬に自分の頬をすりつけ、手を引っぱって小走りに駆ける。連れて行った先は、スザンヌと同じ納屋。同じように2に上がると(2枚目の写真)、「こっちに来て」と誘う。ガブリエルは、「僕たち、かくれんぼしてるんじゃないんだ。こんなのズルだよ」と反対するが、イヴォンヌは、「来て。スザンヌには見つからない」と言う、以前、スザンナに連れて行かれた窓際に、引っ張って行く。あまりに行動が同じなので、ガブリエルはつい笑ってしまう。「なぜ笑ってるの?」。「ただ、何となく」(3枚目の写真)。私は、これまで あなたをここに連れて来なかった。スザンヌに誓ったから。でも、いつか破るって気がしてたわ。言ってる意味わかる? これって甘い誘惑なのよ」(4枚目の写真)〔りんごの向こうというのも、スザンヌの時と同じ〕
  
  
  
  

一方、ピエールは、森に入って行くブランシュの後を追い、それを伯爵が見ている(1枚目の写真、この矢印の色は 以前の3人と同じだが、配置が違う)。ピエールはすぐにブランシュに追いつき、ピエールはピアノを話題にする。それは、イヴォンヌが弾いていたピアノを、ブランシュだと間違えて始めた会話で、結果は気まずいものに。そこに、スザンヌが現われ、「ガブリエルとイヴォンヌを見ませんでした?」と尋ねる(2枚目の写真)。その頃、納屋では、2人が、スザンヌの時と同じように、籠のようなものの中に一緒に入っている。「あなたは、1つ年下だけど、私はスザンヌとは違う」。「それ、どういうこと? スザンヌが何か言ったの?」。「あのね、私のお父さんは、ずっと前に死んだの。だから、しかめっ面。もしも、あなたが貧しかったら、金持ちを楽しませるでしょ」。「やめろよ。何、言ってるんだ? 気は確かかい?」。「大丈夫。スザンヌだけど… 私は、気が変なフリをしただけ。でも、彼女は 完全にプッツンしてる」。「そうなの?」。「彼女は怪物よ。だから大嫌い。身から出た錆ね。彼女のこと、どう思う?」。「さあ、ピアノが上手だよ」。「ピアノを弾けるのは私よ。音楽は大好き。有名なピアニストになりたいわ」。「僕のために弾いてくれる?」(3枚目の写真)。「もちろん」。
  
  
  

ピエールとブランシュは、その後も話しながら歩いている。「あなたと、あなたのご主人は、私にとっては謎です。あなた方は、決して軌道が交わることのない2つの惑星を思い起こさせます」とピエール。そのあとの会話は、ブランシュによる夫との出会いがメイン。2人の後ろからスザンヌがついて来て斜面に上がる。そこに、ガブリエルとイヴォンヌが合流する(1枚目の写真)。3人の会話は示されないので分からないが、きっと、スザンヌが、「どこに行ってたのよ。何度も呼んだのよ」とでも批判し、残る2人は適当に言い繕ったのだろう。ガブリエルたち3人は、一旦、ピエールとブランシュのところに行った後、ガブリエルが父に何か言い、走り出す。2人の女の子も後を追う。スザンヌは、「止まって」とガブリエルに呼びかけ、彼が走るのを止めると、「なぜ そんなに急ぐの? ママとメルカディエさんが追い付けないじゃない」と批判する(2枚目の写真)。ガブリエルは、年長ぶって指図するスザンヌが疎ましくなり、「だから? 迷子になるとか?」「君のママが、僕のパパと一緒にいたいんだったら?」と反論。それを聞いたスザンヌが、「『僕のパパと一緒にいたい』? バカじゃないの?」と誹謗すると、「そんなこと言うなら、君とはもう かくれんぼはしない」と絶縁状を突き付ける。城の下庭まで先行して走って行ったイヴォンヌは、石垣の上の平らな部分に刻まれた 「A TOI」 の文字に気付く。「ここに書いてこと、見てよ、『A TOI』よ。愛の告白よ。誰が書いたのかしら?」(3枚目の写真)。ガブリエルは黙ったまま。
  
  
  

場面は、急に変わり。ガブリエルが川の中に入り、魚を捕まえたと思ったら、蛇だった(1枚目の写真)。スザンヌは、「放しなさいよ、それ蛇よ!」と叫び、ガブリエルも、「助けて、僕に噛みつく気だ!」と叫ぶが(2枚目の写真)、気持ち悪いので誰も助けない〔この映画には、蛇が5-6度登場するが、それは、多くのひねくれた登場人物をシンボライズしているのか?〕。ここにいるのは、ガブリエルの家族4人と、スザンヌとイヴォンヌ。あと、伯爵が岸辺のデッキチェアで本を読んでいる。その次のシーンでは子供達3人が川の流れに乗って泳いでいる(3枚目の写真)。映画の中で、唯一、普通のバカンスらしいシーン。
  
  
  

この平和なシーンの直後、ポーレットの母マリー・ダンベリューが モロー博士の車に乗って到着する。伯爵が、川の中洲から、「マリー、金曜日まで来ないと思っていた」と叫ぶと、マリーは 「驚かそうと思ったの。予告なしで来るのって面白いでしょ」と答える。ポーレットは、「ママ、ちゃんと話してくれないと」。しばらくして、伯爵が対岸のマリーの所まで来る。伯爵が胸を押さえているのを見たマリーは、「弟や、大丈夫なの?」と訊く。これで、一家の関係が、ようやく確定する。①映画の冒頭で、伯爵が「わしの姪が嫌な顔をせぬといいのだが」と言うが、これはポーレットのこと。②その夜、ピエールがポーレットに対し、伯爵を 「君の叔父」と呼んだ。③翌朝、伯爵が、ピエールを「お早う、甥っ子」と呼んだ。④モロー博士が、ピエールに対し、伯爵を 「君の叔父」と呼んだ。⑤中庭での食事の際、ポーレットが伯爵に 「叔父様」と呼んでいる。⑤今、マリーは、伯爵を弟と呼び、ポーレットはマリーを母と呼んだ。①~⑤を総合すると、伯爵にとってポーレットは姉の娘(姪)、ピエールは姪の夫となる。③④は、ポーレットと結婚したピエールを、広い意味で 「叔父」と呼んだだけで、ピエールと伯爵の間に直接の血縁関係はない。それに対し、ガブリエルは、伯爵にとって、姪の息子、すなわち、姪孫〔あるいは、大甥or又甥〕となり、直接の血縁関係がある。その夜、2階の食堂では、姉のマリーと並んで席についた伯爵が、立ち上がって歓迎の歌を贈る(1枚目の写真)。マリーは、「私は、この歌が好きでした。いとこのパスカルと一緒によく歌ったものです」と昔を懐かしむ。すると、ピエールが、「申し訳ありませんが、パイユロンにコーヒーを飲みに行くと約束しましたので」と言って立ち上がり、背を向けて部屋を出て行こうとする。その行動に、伯爵は、ピエールの背中に向かって、「君は、マナーを完全に忘れとりはせんか?」と、激しい言葉を投げかける。「なぜです?」。ポーレットは、「私たちの お母様の誕生日なのよ」と、非難がましく説明する。ピエールは、「違うな。君の母親だが、私のじゃない」と開き直り、両手をポケットに突っ込む(2枚目の写真)。あまりの非礼な物言いに、マリーは、「メルカディエさん、私達の家族で、なぜこのようなことが起きなければならないの? 私の哀れな娘に対する敬意のかけらすらない」と言った後、「あなたの家族を壊して、行きなさいよ、尻軽女のところへ」を口切りとして、ピエールに対する罵詈雑言を叩き付ける。ピエールは、「失礼、マダム、ここには子供たちがいて、窓も開いています。今すぐ、ヒステリーは止めて下さい」。それでも、マリーは止めず、伯爵は窓を閉めに行く。窓からは、中庭のテーブルにいるパイユロン夫妻が見える(3枚目の写真、増感処理)〔恐らく、マリーの声は届いていた〕。口論の後、ピエールは、「私には、あなたがどちらなのか分かりません… 大ばか者なのか、キチガイ女なのか」という捨て台詞を残し、さっさと部屋を出て行く〔マリーは、川原を歩いていたブランシュを目にするが、ピエールとブランシュの淡い関係まで知っていなかった⇒ピエールが 異常なほど強引に出て行こうとするので、“女性の直感” で関係を察した?〕
  
  
  

その夜、ピエールが戻ってきた寝室。ポーレットは、「あなたは 何もかも破壊した。決して許しません」と言う。それに対し、ピエールは、「何を破壊した? 破壊するものが残ってたか? 君は、私を嫌悪してる。私は、そんな君が怖い」と言い返す。こうして、責任のなすり合いが際限なく続く。最後は、ブランシュのことが争点になり、ピエールは関係を否定し、ポーレットは、それならと、「彼女に近づかないと誓って」と言い、ピエールは 「誓う」と答える(1枚目の写真)。その直後、深い谷の淵で、ピエールとブランシュが全裸で抱き合っている(2枚目の写真)〔ポーレットとの約束は、何だったのだろう? かえって、関係を急加速させただけ〕。クローズアップの場面もあるが、ここではカット。逆に、全景の方を紹介する(3枚目の写真、橋の下に泳ぐ2人)。石橋の真上に馬が小さく映っている。2人のこの馬が牽く小さな無蓋の馬車に乗ってここまでやって来た。
  
  
  

その頃、ガブリエルは診療所の建設現場で イヴォンヌが来るのを待っていた(1枚目の写真)。そこに、イヴィンヌが現われ、「スザンヌに一緒に来るよう頼んだけど、来たくないって。なぜ、彼女を避けるの?」と尋ねる。「ママが、パイユロンの一家とは話すなって」。「彼女、私の友だちなの。一人にできないわ」。ガブリエルが頷き、イヴォンヌがニッコリする(2枚目の写真)。そして、門のところで立っていたスザンヌの所まで走って行き、一緒に来るよう誘う。場面は林の斜面に変わり、スザンヌが先を歩き、ガブリエルとイヴォンヌは2人仲良く付いて行く。スザンヌは登るのを止めると、後ろを振り返って 「ママは、今朝早く馬車でどこかに出かけたわ」と言い、それに対し、ガブリエルが 「何も起きないといいんだけど」と心配し、「ママは、ここんトコ自重してるわ」と擁護。3人は、ピエールとブランシュがいちゃついている すぐ下流の渓流で一休み。ガブリエルが両手で水をすくってイヴォンヌに飲ませようとすると、彼女は、「最初に着くのは だあれ?」と言って、上流に走って行ってしまう。今度は、両手ですくった水をスザンヌに差し出すが、こっちは無反応(3枚目の写真、イヴォンヌの向こうに石橋が見える)。「なぜ、僕に腹を立ててるの?」。「イヴォンヌと納屋に行ったでしょ?」。「行かないよ」。「嘘付かないで。彼女が話したの」。
  
  
  

3人は、その後、渓谷を離れて “伝説の神殿” という渾名(あだな)のついた廃墟の前に。ガブリエルはイオヴォンヌに誘われて廃墟の方に行くが、2人に付いてきたくせに距離を置きたいスザンヌは、別行動をとる。そして、脇道を数十メートル歩くと、母が朝乗って行った馬車が置いてある(1枚目の写真)〔というより、馬がいる〕。廃墟の方からは、「スザンヌ、どこにいるの?」というイヴォンヌの呼び声が聞こえる。その声は、教会の廃墟の屋根裏で愛し合っていたブランシュにはショックだった。「あの子たちだわ。なぜ、ここにいるのかしら? 怖いわ。心臓がドキドキしてるでしょ」。ブランシュは、そう言うと、ピエールの手を胸に押し付ける(2枚目の写真)。「私たちを見たかしら?」。「まさか」。「でも、馬車は? 馬は?」。母の浮気を確信したスザンヌは ますます不機嫌になる。そして、2人を廃墟から遠ざけ、どんどん先に歩いて行く。イヴォンヌは、それを見て、「嫉妬で 狂い死ぬってあるかしら?」とガブルエルに訊く。その後も、スザンヌは折ってきた木の枝をガブリエルの顔に投げつけたり、雨が降り出し、雷の音がし、イヴォンヌが 「戻った方がいいわ、ひどい雨になる」と言ったのに対し、「雨、大好き! もっと降れ!」と踊るような仕草をするなど(3枚目の写真)、奇行が目立つ。ガブリエルが、「城まで戻るのに2時間以上かかる。先に行っちゃダメだ」とイヴォンヌに説明していると、遠くに行ったスザンヌが2人を呼ぶ。実に、自分勝手で はた迷惑な子だ。
  
  
  

その先の3人は、実に大変な目に遭う。沼地の端に行ったところで、ガブリエルは、「ここは危険だ。あの木は覚えがある。こっちなら行ける」と、安全な道筋を指示するが、スザンヌは、「そんなの子供だましよ。私は怖くない」と言って勝手に歩き出し、たまたま安全に渡り切る。しかし、イヴォンヌは なぜか指示通りのルートを通らず、底なしの泥にはまってしまい、首まで沈む。2人がかりで、何とか引き出すことができた(1枚目の写真)。3人は、この時点で、全身ずぶ濡れて、おまけに泥まみれ。そんな彼らを襲ったのが、土石流のような土砂混じりの濁流(2枚目の写真、ガブリエルの後ろにある土色のものはすべて沢から溢れ出た濁流)〔こんな危険な場所で、どうやって撮影したのだろう?/このあと、イヴォンヌが濁流に腰まで泥水につかるので、CG合成ではない〕。城では、3人のことを心配するが、どこかで雨をしのいでいるだろうというだけで、雨の中に出て行く者は誰もいない。雷雲が去り、雨がやんだ頃、3人のくたびれ果てた姿が、中庭への階段から現れる(3枚目の写真)。3人が、それからどうなったのか、何を訊かれ何を話したかなどの事後談は一切ない。
  
  
  

リヨンから戻ったブランシュの夫は、ヴィクターVという蓄音機〔手回しで、12インチのターンテーブルをもつ初の本格的録音生成装置、販売価格60ドル≒現在の1590ドル≒17万円〕を下庭に置き、ダンス曲をかける。伯爵はブランシュと、ガブリエルはイヴォンヌと踊る(1枚目の写真、左端でスザンヌが母を睨んでいる)。スザンヌの父が手を取ろうとするが〔一緒に踊ろうとした?〕、手を撥ね退けられる。スザンヌは、不品行な母だけでなく、ガブリエルとイヴォンヌが見せつける仲の良さにも頭に来て、つかつかと蓄音機に寄って行くと、針を払いのける(2枚目の写真、矢印)〔当然 レコード板に直線状の傷が付く⇒次に再生する時、何度も雑音が入る〕。父は、レコードを取り換える。ブランシュは、イヴォンヌに 「あの子どうしちゃったの?」と尋ねると、「きっと、ガブリエルと仲違いしたからです」との返事。そこで、ブランシュは、スザンヌのところに行き、「どうしたの? あなた変よ。男の子と仲違いしたからって、そんなに動転するなんて。あの子が好きなの?」と話しかけるが、不機嫌の原因はブランシュ本人に起因しているため、かえってスザンヌの反感を買う。スザンヌは、機嫌が直ったフリをして、ブランシュと踊り、目茶目茶に振り回して眩暈を起こさせる。一方、伯爵の姉のマリーは、浴室で会った伯爵や 廊下で会った娘のポーレットに、毒舌を振りまき、下庭のベンチに伯爵と一緒に座った時、決定的な発言をする。それは、ブランシュを誹謗する姉に対し、伯爵が、「マリー、パイユロン夫人に対して そんな言い方はやめて欲しい。彼女は、私の客人なのだから」と言うと、マリーは、「唐変木のピエールにあれほど感情を高ぶらせるとは、彼女、ベッドで何をしたんでしょうね?」「証拠が欲しい? 今朝、マルタが村に行ってモロー博士と会った時、彼は こう言ったのよ。『メルカディエと、城の賃借人が、嵐が襲う前に城まで無事に帰り着けたことを願っています』って」話す。近くのイスに一人で座っていたスザンヌは、この話を耳にし、母の不倫への疑惑は確信となる。そのため、イスから降りて、走って逃げ出す。
  
  
  

雨が降り出し、城から出奔したスザンヌを探すため、多くの村人が駆り出され、野山を歩きながら 「スザンヌ!」と叫ぶ。ガブリエルとイヴォンヌも 心配そうに捜索を見守っている(1枚目の写真、右端の傘の中はブランシュとポーレット)。一方、ブランシュは、ピエールに、「怖いわ。夫には言えない。スザンヌは、きっと私たちが廃墟にいるのを見たのよ」と話す。母親の直感はある程度当たっている。その後、城内で伯爵と姉の激しい口論が延々と続く。その中で、スザンヌに関する部分を抜き出すと、伯爵は、「私達は 知っていることを話さなければなりません」と、姉がピエールとブランシュの不倫を仄めかした直後にスザンヌが逃げ出しことを、伝えるべきだと主張する。そして、「あなたは 結論がどれほど不吉なものになり得るか 認識していますか?」と、事態の緊迫性も言い添える。姉は、「結論?! 結論は、万事OKだと考えてもいいんじゃないの」と責任回避の発言。「おやめなさい。あなたがやってしまったことだけでは、まだ足りないのですか?」。「私を有罪にするつもり? この厚顔無恥な弟が! でも、なぜこうも驚かされないといけないの? あなたは、常に私を苦しめる側に加担してきたじゃない。この裏切り者!」。こう伯爵を罵ると、彼が過去に行った失敗を羅列する。伯爵は、「私の過去に対するあなたの攻撃は、スザンヌの失踪におけるあなたの失策を隠すためです」と詰り、それに対し、姉は、「何と無礼な」と反論、堪忍袋の緒が切れた伯爵は、「この、鬼婆(ばば)」と罵り、部屋を出て行く。完全に頭に来た姉のマリーは、すぐに帰り支度をし、夕方暗くなり始めた頃、辻馬車で城を去る。夜になり、捜索は一旦中止される。その時、パイユロン家の犬がスザンヌの靴を加えて中に入って来る。そこで、靴を見つけた場所まで犬に案内させる。外はどしゃ降りの雨。それでも、犬は、城から結構近い場所にある木の下まで行くと、吠え始める。スザンヌの父とピエールが、それぞれのカンテラで木を照らすと、木の股になった部分にスザンヌが隠れている(2枚目の写真)。スザンヌは、「放っといて」「降りたくない」と勝手なことを言うが、父は木に登って行き、何とか下に降ろす。翌朝、ガブリエルとイヴォンヌは、スザンヌが隠れていた木に登ってみる。ガブリエルが 「スザンヌは、ここで死んでたかもしれないんだ。こんな城の近くで」と言うと、イヴォンヌは 「死ぬなら、若い方よ。12で死ぬなんて悲しいけど、美しいわ。誰もがあなたのことを覚えてて、有名になるわ」と変なことを言う。その時、モローの自動車が城に来るのが見えたので、2人は城に戻る。そして、スザンヌが横になったベッドのある部屋に そっと近づいて行く(3枚目の写真)。モローの診断は、肺炎。熱と 意識の混濁があり、この状態が3日続くというもの。モローは、帰り際に、ピエールに、「今朝、君の叔母さんが亡くなった」と教える〔死因は塞栓症〕。伯爵の一家にとっては、スザンヌのことなど もうどうでもいい。
  
  
  

何日後かは分からないが、ガブリエルの妹が下庭の外れで小鳥の死骸を土に埋め、それに付き合っていたガブリエルが妹の手を引いて中庭への階段を上がる(1枚目の写真、矢印)。伯爵の姉の葬儀が行われるということで、城には多くの馬車が詰めかけている。2人は、マリーの遺体に敬意を表するため並んでいる弔問の人々の列の横を通り、遺体の安置してある部屋に向かう(2枚目の写真、矢印)。そして、遺体の横に立っている伯爵と両親の横に並ぶ(3枚目の写真)。
  
  
  

弔問の日の夕方、ピエールは、スザンヌの様子を見に行き、そこにいたブランシュに言い寄る。「ブランシュ、君なしには生きられない」「君が必要だ」。それに対し、ブランシュは、「もう その話はしないで」と、ひと頃の火が消えたような返事。さらに、スザンヌが、2人の関係をすべて知っているようなことを うわごとの中で言っていたと教える。そえでもピエールはあきらめない。「愛と情熱は破壊的だ。君はそれに対処しないと」。それに対するブランシュの返事は、「私は、すべて捨てることもできた。ただ、それだけです」という曖昧なもの。ピエールがその意味を問うと、「私は、あなたを愛していません」と答える(1枚目の写真)。ポーレットとの愛のない生活に嫌気がさしていたピエールは、ブランシュからも裏切られ、翌日の早朝、家族を捨てて城を出て行く。内庭の階段の所で、詫びようと待っていたブランシュに〔なぜブランシュに、ピエールが出て行くことが分かったのか?〕、彼は、「男と女をつなぐ唯一のものを知ってるかね? それは金(かね)だ。金と、それを失うことへの怖れ。そのことしか頭にない。私には10年か、それ以上過ごせる金がある。悪くないだろ? 自由の10年! 10年ですべて使い果たす! カジノ、モナコ、カンヌ、ヴェニス、イタリア、ギリシャ、イスタンブール…」と言って、朝霧の中に消えて行く〔これほど身勝手な人間はいないだろう〕〔原作では、まずイタリアのヴェネツィアに行き、その後、パドヴァ、ヴィチェンツァ、ヴェローナと徐々に西に移動し、ミラノ経由でモナコのモンテカルロに。その後、数年エジプトで暮らした後、パリの戻るが家族とは二度と会わない〕。ガブリエルが父を追い、そして、その後をイヴォンヌが追う〔ガブリエルとイヴォンヌは、なぜ こんな早朝に 外にいたのだろう? しかも、別々に〕。ガブリエルは、途中から父とコースを変えたらしく、映画の初めに出てきた “展望の効く場所” に行く。すると、しばらくしてイヴォンヌが合流する。カメラは、斜面を歩いて行くピエールを映す(2枚目の写真、早朝なので影が長い)。イヴォンヌが、「駅に向かってるの?」と訊くと、ガブルエルは頷く。汽車の汽笛が響き、ガブリエルは思わず両手で耳を塞ぐ。それを見て、可哀想に思ったイヴォンヌは、何とかその状態でキスしようとするが(3枚目の写真)、手が邪魔して届かない。この時、木の枝を這う蛇が一番大きい。
  
  
  

葬儀の後の会食の場面。中庭に設えられた長いテーブルには、子供が混じっているので、城側26人、テラス側24人が座り、両端には伯爵とモロー博士が座っている。伯爵は、赤ワインをグラスに注ぎ始めるが、僅かにズレたため(1枚目の写真)、ワインはテーブルに大きな赤い染みとなって広がる。伯爵は、歌のようなものを口ずさみながらワインにコルクで栓をすると、手でこぼれたワインを撫でながら、「私は、金銭トラブルを少々抱えています」と話し始める(2枚目の写真)。「私は破綻しました。城を貸し出し、事業は日々悪化しています。私は、すべて売り払いました。ご親切な親戚のどなたかが、私を一緒に住まわせて下さらないでしょうか?」。会席者の1人が、「城はどうなるんです?」と質問する。「そこにおられるモロー博士です。博士は、この時が来るのをずっと待っておられた。私が城を離れるとすぐ、結核患者が大挙して城に押し寄せることでしょう」。ポーレットは、「何も打つ手はないのですか?」と、尋ねた後、「ピエールはどこ? なぜ、ここにいないの?」。最後は、「どうなってるの、ガブルエル?」と、お鉢が回ってくる。しかし、ガブリエルは何も言わない(3枚目の写真)。「ガブリエル、お父様を探してきなさい」。その言葉で、ガブリエルが イスを倒して立ち上がる(4枚目の写真、矢印)。伯爵は、「開戦だ」と言い、「1914年の美しき夏」の文字が画面に重なる。第一次世界大戦は7月28日に始まる。
  
  
  
  

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