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Le diable dans la peau 兄弟愛に潜む悪魔

フランス映画 (2011)

フランスの中央山地の美しい自然を背景に展開する兄弟愛のドラマ。兄弟は、優しい祖母と、暴力的な父と一緒に暮らし、特に弟のジャックは母の愛をほとんど知らずに育ってきた。父の暴力にさらされるのは兄のザヴィエを見せられることで、頭はいいが、ジャックは口数が少なく、協調性を欠いた子供になっていた。そんなジャックをザヴィエは弟として愛し、いつも一緒にいてやって、守ることに生きがいを感じてきた。映画の原題『Le diable dans la peau』の “diable” は悪魔だが、後半の “dans la peau” は直訳すれば、“肌の中” となる。しかし、この成句には、“誰かを愛した挙句の” という意味にも使われる。従って、原題は、弟を愛した挙句、兄の心に生まれた悪魔的発想という意味になる。結果として、ジャックは死ぬことになる。しかし、その原因となった「凧糸に銅線を用いる」という発想は、ジャックがザヴィエのために思いついもので、好きな兄を助けようと、弟の心に生まれた悪魔的発想とみなすことができる。ジャックの死も、兄の父に対する復讐を助けようとする “愛の心” から生まれたものであり、“dans la peau” は相互的である。その点を配慮して題名の日本語訳を『兄弟愛に潜む悪魔』とした。ザヴィエ役のQuentin Grossetは1997年10月生まれなので、公開前年の夏の撮影とすれば13歳となるが、ここでは、年齢不詳で10歳以下に見えるジャックだけを紹介の対象とする。理由は、Quentinに子供らしさがなく、不細工なため。主役で紹介対象としなかった初めての事例となる。

学年の終わり、13歳のザヴィエは、突然、10歳の弟ジャックが、夏休み明けから地元の小学校ではなく、遠くの特殊学校に転校させられると聞かされる。ザヴィエは、ジャックと一緒にいることを強く希望し、転校に反対するが父に折檻されただけ。ザヴィエは、ジャックを連れて逃げようと考えるが、実行に移すまでの数日間、いろいろなエピソードが紹介される。一番重要なのは、ザヴィエが凧を揚げているのを見たジャックが、銅線を使ったらと提案し、その数日後には、ザヴィエが銅線の凧糸を使った凧を作り、ジャックにプレゼントする。ザヴィエは、友人の父のフェンス作りを手伝うが、その数日後には、パリから遊びに来ていたアンドレアの些細な発言に怒ったザヴィエがアンドレアを追いかけ、有刺鉄線を張ったフェンスに裸体のままぶつけ、大変な怪我を負わせる。この事件は、ザヴィエが鶏小屋の雌鶏を脅して追いかけて金網フェンスにぶつけて殺すという 似たような事件と重なり、父から体罰を受ける。それが契機となり、ジャックから「守ってくれる金髪の女の人がセコイアの大木にいる」という話を打ち明けられ、嵐の中、セコイアの木まで見に行き、ジャックを連れての家出を決意する。しかし、ジャックと違い、計画性や緻密さのない性格のため、家出は流浪の旅となり、数日で、ジャックは、「もう うんざり。家に帰ろうよ」と言い出す。その後の汽車の旅は、短くカットされていて何がどうなっているのか理解できないが、結局、家出してきたことがバレ、家に連れ戻される。父は、ザヴィエに制裁を加えようとするが、ジャックと別れざるを得なくなったザヴィエの怒りは、父を圧倒する。そして、父への復讐として、サッカーのワールドカップの決勝戦を父が観られないようにしようと、高圧電線に金属コイルを投げ上げようするが、高い所を通っている高圧電線に届くハズがない。その代わりを、兄に内緒でやったのがジャック。兄にもらった凧を揚げて高圧電線に接触させ、両手に持った銅線を通じて感電死する。自分のせいで、永遠に弟を失ったザヴィエは、弟が描いた「金髪の女の人」の絵を、セコイアの大木の隠し場所まで探しに行き、大切な宝物として、新しい旅立ち(特殊学校か少年院かは不明)に持って行く。

ジャック役のポール・フランソワ(Paul François)に関して情報は何もない。映画出演はこれ1本のみ。監督インタビューによれば、最初、ポール役は別の子役だったが、撮影が延期されているうちに大きくなってしまい、ぎりぎり間に合って見つけたとか。下の写真は、2011年11月2日のローマ国際映画祭のレッド・カーペットの上で、監督とザヴィエ役のQuentin Grossetと一緒に撮られたもの。Quentinは監督より背が高い。
    

あらすじ

タイトルが表示された後、流れるように後ろに去って行く地面が長々と映り、カメラが次第に上を向くと、それが自転車に乗った兄弟となる。13歳のザヴィエと10歳のジャックだ。ザヴィエは年齢以上に大人を、ジャックは年齢以下の幼児を感じさせ、母のいない家庭で、兄をかけがえのない存在として慕っている(1枚目の写真)。草原に行ったジャックは、バッタを捕まえるのに夢中になり、林に入ると、鳥にも親しいことが分かる。ザヴィエが、「あれ何だ?」と訊くと、「シジュウカラ」と答える(2枚目の写真)。「確かか?」。「うん」。「ウソ〔アトリ科の小鳥〕じゃないのか?」。「ううん、シジュウカラだよ」。2人が歩いているのは、フランス中央山地のどこか〔監督インタビューによれば、撮影場所はリモージュの東南東50キロにあるミルヴァシュ高原(le plateau de Millevaches)〕。その美しい自然が、常に映画の背景になっている(3枚目の写真)。
  
  
  

2人が家に戻る途中で 1台の自動車に道を訊かれる(1枚目の写真)。運転していたのは中年の女性で、「道に迷ってしまった。ル・モンテイユ(Le monteil)に行きたいの」〔ル・モンテイユという名の小村は、クレルモン=フェランとリヨンの南方の100キロ×70キロの区域内に10ヶ所ほどある/ただし、ミルヴァシュ高原とは無縁〕。「もうちょっと、先だよ」。「地元の子?」。「ドゥーセさん家、教えてもらえない?」。「村の中だけど、どこにあるか知らない」。「いいわ。自分で探すから」。車が去った後で、兄は、「どうかしたのか?」と訊く(2枚目の写真)。「なぜ、ちゃんと教えなかったの?」。「早く行って欲しかったからだ」。
  
  

その日の夕食。祖母が、「学校は、明日で終わりね。みんなに さよなら言うの忘れないで」と言う(1枚目の写真)。それに対し、ジャックは、「あんな奴らなんか!」と 祖母の発言に逆らうような返事をする。「二度と会えないんだから、ちゃんとしないと」。この会話に驚いたザヴィエが、「二度と会えない?」と口を挟む。そして、ジャックに直接、「どういうことだ?」と訊く。「学校が変わるんだ」。「変わる?」。「うん」。「なぜ、黙ってた?」。「僕に合った、特別な学校に行くんだ」(2枚目の写真)。ザヴィエは、祖母に、「特別な学校? それ、何?」と訊く。「ジャックに、ぴったりの学校」。「あの女性なんだ!」〔さっきの車の〕。祖母は、2人がどんな女性と会ったか知らないハズなのに、「その女性は、特別な学校の校長先生で、とってもいい人なのよ」と教える。「そんなセンコー知らないし、そんな奴にダマされてたまるか!」。ラジオを持って部屋に入ってきた粗暴な父は、その言葉を聞き、「何だ、その口のきき方は?」と叱り、それに対し、父に反抗的なザヴィエは、「勝手だろ」と答える。「二度と、そんな口きいてみろ…」。ザヴィエは逃げ出し、ジャックは、自分の皿に乗っていた料理を手づかみにすると、父に向かって投げつける。
  
  

夜、2人の寝室で。ジャックは、ザヴィエのベッドの端に座り、兄の顔をじっと見ている(1枚目の写真)。ザヴィエは、「逃げよう」と言う(2枚目の写真)。「どこに?」。「まだ、考えてない」。そのあと、ジャックが、「痛い?」と言いながら、兄のシーツをめくろうとするので、父に折檻を受けたのか? 兄は、ジャックの手を止める。この映画の後半は、2人の逃避行なので、この場面での兄の言葉は重要だ。
  
  

翌日。学年最後の日。授業が終わってから、ザヴィエは、女性教師のアンベールのところに行き、「僕の弟のこと知ってます?」と切り出す。「ええ」。「なぜ、特別な学校へ? バカげてるよ。ちょっと変わってるけど、他の子より うんとよく出来るのに」(1枚目の写真)。「そのこと、私たちが知らないとでも? よく知ってるわ。だから、あの子の能力に合った学校に行かないと」。ザヴィエは パソコンを持っている友達の家に行き、子供のための特殊学校(école spécialisée)について調べてもらう(2枚目の写真)。そうすると、出てきたものは、何らかの精神障害を抱える子供たちのための学校(IME)だった〔実際に、ネットで調べても、フランスの小学校教育で出てきたものは、IME(Institut médico-éducatif)に関するものばかり。唯一の例外として 一部の私立のリセ(Le lycée privé)に付属する、秀才児のための初等コース(Primaire)は存在するのだが、ジャックがそれに合致するとは思えない。しかし、精神障害を抱えているようにも全く見えないので、この設定には違和感を覚えてしまう〕
  
  

夏休み入った翌日、ザヴィエが凧を揚げている。それをジャックがじっと見ている(1枚目の写真)。そして、凧揚げ用のリールに細い銅線を巻き付ける。ザヴィエがジャックに気付いて寄ってくると、「兄ちゃんの凧糸良くないよ。これ、試してよ」と言って、銅線のリールを渡す(2枚目の写真、矢印)。「お前、頭いいな。どこで、見つけた?」。ジャックは、それには答えない。「お前に、簡単な凧を作ってやるよ」。「いいけど、飛んだ試しがないよ」〔非常に重要な場面なので、果たして凧糸に銅線を使うなんてことがあり得るのか調べてみた。すると、室内用いる超小型のプロペラ付きの凧(ホームカイト)に糸電線を用いた話題が見つかったが、これはあくまで特殊例。屋外の凧は、木綿やポリプロピレンの諸撚(もろよ)り糸だと書いてあった。映画に出てくるような “普通の細い銅線” が凧揚げに適しているとはとても思えない〕
  
  

ザヴィエの友人バスチャンの父が、干し草作りが終わったので、フェンス作りをすることになり、ザヴィエとジャックもトラクターの台車に乗って同行する。ザヴィエとバスチャンは、フェンスの材料の木の棒を運んだだけで、実際にフェンスの支えとなる木の棒を打ち込むのは大人の仕事(1枚目の写真)。映画に映るのは、こうした場面だけで、実際にどんなフェンスが出来上がったのか、この時点では分からない。一方、一緒に来たジャックは、こうした作業には一切加わらず、草むらの中の虫探しに熱中している(2枚目の写真)〔協調性のなさという点では、他の田舎の子とは違うが、自然観察に熱心なだけで異常さはどこにもない〕。仕事が一段落して食事を取った後、ザヴィエはバスチャンの父に、「ジャックのこと、知ってる?」と訊いてみる。「ああ、聞いたぞ」。「どうすれば、止められる?」(3枚目の写真)。「何のために? いいことじゃないか」。ザヴィエが黙っているので、「何を案じとる? 一緒にいられなくなることか?」。「みんな、そう言って はぐらかすんだ」。最後に、ザヴィエがトラクターを運転させてもらって帰る場面があるが、その時に、有刺鉄線を巻いたものが “残り” として台車に乗っているので、有刺鉄線のフェンスを作ったらしいことが分かる。
  
  
  

体をきれいにし、着替えた後で、ザヴィエとジャックは、バスチャンの一家の奢(おご)りでピザ屋に入る。ジャックが注文したのは、「コーク、特大」と「ピザ・マルゲリータ」。夕食後、夜の町に出て行った一家と2人が目を留めたのは、大道芸人の体を使った大ワザ(1枚目の写真)〔それなりに大きな村か町なので、田舎の小村でしかないル・モンテイユではない〕。家に帰った2人。夜、寝室で。ザヴィエ、ベッドに横になったジャックに、「なんでお前を追い出したがってるのか分からん。お前も、気にしてないようだしな。俺と別れ別れになっても平気なのか?」と疑問をぶつける。ジャックは、「僕らには何も起きない。僕は守られてる」と答える(2枚目の写真)。「守られてる? 一体何が守ってくれる?」。ジャックは、「ちゃんといるよ。もうやめよう。眠いよ」と言い、兄の反対を向いて寝てしまう。兄は、「スニーカーくらい脱げ」と言い、ジャックの靴を脱がしてやる。先に、引用した監督とのインタビュー〔https://medias.unifrance.org/ : 2013/03/27〕によれば、①ザヴィエルは、暴力的な父に殴られつつ育ったので、大人の世界をとても警戒している、②ジャックを失かもしれないという心の痛みは、ザヴィエルを盲目にし、誰かが自分から弟を連れ去ろうと画策していると確信している、③それは一種のパラノイア(妄想症)に近い、と話している。
  
  

次の日、ザヴィエとジャックは、バスチャンにアンドレアというイタリア系の名前の少年を加えて原っぱに行く。ジャックを除いた3人はサッカーごっこを始めるが、ジャックは見ているだけ。翌朝、ザヴィエは、ジャックのために凧を作る。その間、ジャックは、ベッドに横になり、僅かな宝物の1つ、ルービックキューブのキーホルダーを触って時間を潰している(1枚目の写真)。凧が完成すると、ザヴィエは凧をジャックのベッドの前の床に置く(2枚目の写真)。ジャックが、「新しい凧 作ったの?」と訊くと、「お前のだ」と答える。「あの銅線、お前の凧に使ったんだ。今日、風が出たら、揚げに行こう」。ザヴィエは、さらに、「その前に、何するか分かるか?」と謎かけ。「ううん」。「めんどりを自由にしてやる」。
  
  

2人は雌鶏の囲いの前に行き、ジャックは、「どうやって自由にするの?」と訊く(1枚目の写真)。その時、2人は気付かなかったが、洗濯物を持った祖母が後ろを通りかかり、「そんなトコで何してるの? そのシーツを干すの、手伝ってちょうだい」と声をかけられる。祖母がシーツを干し始めると、2人は手伝うどころか、ジャックは、干したシーツの間に入り込み、ザヴィエは干す前のシーツをつかんで祖母の邪魔をし、祖母はカンカン(2枚目の写真、矢印はジャックのシルエット)。午後になっても、風は一向に吹いてくれない。そこで、ザヴィエとジャックは、バスチャンにアンドレアに会いに行き、アンドレアがイヤホンで聴いていたジャマイカ音楽の話になるが、ここでもジャックは、葉についた毛虫と遊んでいる。
  
  

翌日のシーンは、ザヴィエが雌鶏の囲いの中に入って行くところから始まる。ザヴィエは鶏小屋に入ると、声を上げて雌鶏を脅し、小屋から外に追い出す。そして、地面の上を逃げ回る雌鶏たちを、声と手を叩く音で追い立てる(1枚目の写真、矢印)。1羽の雌鶏は、逃げようとして金網にぶつかる。それを見たジャックは、「ザヴィエ、止めて!」と叫ぶ。そして、雌鶏が死んでいることを確かめる(2枚目の写真)。その後、父が手を洗うシーン場面が挿入される。父が手を洗うシーンは、映画の初めの頃、「勝手だろ」。「二度と、そんな口きいてみろ…」の後、ザヴィエがベッドで寝ているジャックが「痛い?」と訊く場面の直後に挿入されていた。ということは、雌鶏を1羽殺したことにより、ザヴィエが肉体的な折檻を受けたことを示唆している。実際、その直後には、ザヴィエが以前と同じようにベッドで横になっている。そこに、祖母が夕食の盆を持って入ってくる。ザヴィエは、「お腹、減ってない」と言う。祖母は、「叱られたくてやってるんじゃないかって、思う時があるわ」と言った後、ベッドに座り、ザヴィエの頭に触ろうとするが、彼は嫌がって首を振る。だいぶ時間が経ち、ジャックが部屋に入って来ると、「1-0だ。ポルトガルをやっつけた!」と、サッカーの結果を教える〔罰として、ラジオでの観戦も禁止〕。ザヴィエの反応がないので、「聞こえたの?」と訊く(3枚目の写真)。「興味ない」。「嬉しくないの?」。「どうだっていいんだ」。
  
  
  

翌日、ザヴィエ、ジャック、アンドレアの3人で渓流に行く。ザヴィエは一人不機嫌なので、ジャックがアンドレアに話しかける。「僕、君の母さん好きだ。いい人だもん」。「いつもじゃないさ」。「それに、優しいし」〔母のいないジャックの想いがよく分かる〕。「8月、ザヴィエに来ないかって招待したんだ。お前も来ていいんだぞ」。「パリへ?」。「サルデーニャ〔イタリア〕だ。夏はいつもそこに行く。父さんの生まれ故郷なんだ」。「兄ちゃん、何てった?」。「はっきりしなくてさ。プッシュしてくれよ」(1枚目の写真)。ジャックはそれに答えず、「泳ごうよ」と言って川に入って行く。そのあと 2人が泳いだかどうか分からないが、アンドレアが、「君らの母さんのこと… 2人とも、ぜんぜん話さない。どうしてだ?」と訊く。ジャックは、黙ったままだが、その質問を耳に挟んだザヴィエが、「くだらんこと訊くな」と強い調子で割り込む。「君に、訊いてない」。「余計なお世話だ」(2枚目の写真)。「弟に言わせろよ。彼には、何も決めさせない気か?」。「ああ、何でか知ってるか? みんなが俺たちをハメようとしてるからだ」。「頭のネジがゆるんでるんじゃないか?」。その言葉に起こったザヴィエはアンドレアを川の中に突き飛ばす。怒ったアンドレアが、「お前が 父さんに殴られるのは当然だな!」と言って、林の中に逃げていったので、ザヴィアは後を追いかける。アンドレアは全力で逃げ、ザヴィエが全力で追う。そして、アンドレアの正面にあったのは、数日前に出来上がったばかりの有刺鉄線の入ったフェンス。直前でアンドレアに追いついたザヴィエが揉み合ううち、アンドレアの裸体が有刺鉄線に激突し、彼は痛さに悲鳴を上げる(3枚目の写真、矢印は有刺鉄線)。ザヴィアは、助けることもせず、そのまま立ち去る。
  
  
  

ザヴィエが、家の前の木立の中で、左腕の傷に貼った絆創膏を外して待っていると、ジャックがTシャツを持ってやって来る。「どうなってる?」。「アンドレアのお母さんがいるよ。不機嫌そう」(1枚目の写真、矢印は腕の傷。かなり大きい→父親の暴力?)。ジャックは、さらに説明する。「アンドレアは傷だらけ。お兄ちゃんがズタズタにしたから、お医者さんが、いっぱい縫ったんだ。お母さんの話じゃ、アンドレアはもうパリに帰るんだって。もう、ここにいたくないから」。そして、Tシャツを渡す。ザヴィエは、弟に、「ここにいろ。一人で行く」と命じて、Tシャツを着ずに背中に掛けて家に向かう。ザヴィエが家に入って行くと、食卓になるテーブルには祖母とアンドレアの母が並んで座り、横のイスに座っていた父が立ち上がる。「えらく遅かったな。何だその格好。着替えて来い」。ザヴィエがTシャツを着ていると、父はアンドレアの母に、「あいつには常識は通用しないんです。親友をあんな目に遭わしたり、動物が好きだと言ってて、平気で殺したりする」と、異常さを訴える。ザヴィエは、アンドレアのことを詫びる前に、「雌鶏を殺す気なんかなかった」と、アンドレアの母親を前にして、非常識な反論をする。「あいつの中には、悪魔が巣食ってるんです」。そう釈明すると、ザヴィエに向かって、「とっとと、出て行け!」と命じる(2枚目の写真)〔せっかく部屋に留まっているアンドレアの母に謝罪するよう命じない父親の異常さも目立つ。一番恥かしい思いをしたのは、祖母〕
  
  

その夜、ザヴィエがベッドで横になっていると、部屋に入って来たジャックは、アンドレアからプレゼントされたピノキオの木製人形を手に取ると(1枚目の写真、矢印)、人形を何度も棚に打ち付けて破壊する〔アンドレアが原因で、兄が厳罰を受けたことに対する仕打ち〕。ザヴィエは、「彼のせいじゃない」と言うが、ジャックはピノキオ人形を蹴飛ばしてから、ザヴィエの隣に横になる。そして、これまで黙っていたことを話し始める。「僕を守ってくれる女の人がいる。金髪のきれいな人なんだ」。「よく見かけるのか?」。「セコイアの木、知ってる? いつもそこにいるんだ。いつも僕を見ててくれるんだって」。「俺は、なぜ誰も守ってくれないんだ?」。「その人、お兄ちゃんのことも時々話すよ。何て言うか知ってる? お兄ちゃんと一緒にいれば、僕は安全なんだって」。「その人、誰なんだ? 母さんか?」(2枚目の写真)。ジャックは、何も言わない。
  
  

ザヴィエが そのままザヴィエのベッドで寝てしまうと、ザヴィエはベッドから出て服を着てから、もう一度ジャックの横に座り、優しく頭を撫でる(1枚目の写真、矢印)。そして、首筋にキスすると、スニーカーを手に持ち、足を忍ばせて部屋を出て行く。そして、向かったのは、担任教師のアンベールの家。真夜中に、鉄の門をガタガタ言わせて家の人を起こす。しかし、教師バカンスで不在だった。途中から、雷雨が降り出すが、ザヴィエは構わず、森の中に生えているセコイアの大木のところまで駆けて行く。セコイアの木は、屋久島の縄文杉〔最高齢で一説に7200年、樹高最大30m〕に対し、樹齢では劣るものの〔最高齢で2200年〕、高さでは圧倒する〔樹高最大115.5m〕。この映画のセコイアも、幹の直径だけでザヴィエの身長の3倍もある。ザヴィエは大木の前に立ち、木を見上げて考え込む(2枚目の写真)。翌早朝、ジャックがまだ寝て入ると、外から口笛で呼ばれる。目を覚ましたジャックは、ベッドから起き上がると(3枚目の写真)、窓の外を見る。ジャックは急いで服を着る。
  
  
  

ここからが、2人の逃避行になるのだが、映画では、そうした説明は一切ない。最初は、2人が、いつものように遊びに出かけただけのように見える。2人は丘を登り、疲れると 木陰で休む。ザヴィエは、木の枝の皮をナイフで剥ぎ、その横で、ジャックは、木の葉で遊んでいる(1枚目の写真)。そして、再び歩く。ここでも、ミルヴァシュ高原の美しい自然が堪能できる(2枚目の写真)。石が累積した場所に着いた時、ザヴィエが 「喉 乾いたか?」と訊き、ジャックが 「うん」と答えたので、休憩を取ることに。その時、ザヴィエが持っていた袋の中身が初めて明らかになる。彼が、最初に取り出したのは、父のビリヤードの白い球。「なんで こんなもん、持って来た?」。「あいつ、ムカつくだろ」。「あいつは、ビリヤードなんかしないんだぞ」〔父親が、球だけ持っている短い場面はあるが、キューで打っている場面はない〕。「ラジオ、持って来るべきだったね。そしたら、サッカーのスコアも聴けたのに」(3枚目の写真)。「食いもんは、これっぽちか?」。この言葉で、ザヴィエに命じられて ジャックが逃避行のための必需品を袋に入れて来たことが分かる。「それしか 見つからなかった。足りないんなら、家に戻ろうよ」。「問題外だ。これで何とかしよう」。そう言うと、袋を肩から掛けて出発する。
  
  
  

夜になり、満月が上がっても、2人は、その明かりを頼りに歩き続ける。そして、ようやく湖の畔に辿り着く。そこには、一隻のボートが木に縛り付けてあった。2人は、そのボートに乗り込む。空には満天の星。ザヴィエは、「星々が すぐそばにあるみたいだろ。まるで、手を伸ばしたら、毛布のように被ることができそうだ」と言う。「バカ言わないで。できもしないのに」。「それがどうした? 想像するだけで楽しいだろ」。「そうだね」(1枚目の写真)〔ザヴィエとジャックが入れ替わったような台詞〕。次の台詞は、ジャックらしい。「一人になりたい時、僕がどこに行くか知ってる?」。「さあ」。「セコイアの木のそばに隠れ家があるんだ」。「そこで、例の人と会うのか?」。「うん」。その時、流れ星が。「願いごと、した?」。「ああ。俺たちは絶対に別れないって」。「願いごとを叶えたいんなら、誰にも言っちゃダメだよ」。朝になると、ジャックは、岸辺の草の上で、ザヴィエに抱かれて寝ている(2枚目の写真)〔寒くないよう〕。そして、日中、暖かくなると、2人は湖に飛び込み、水を掛け合って遊ぶ(3枚目の写真)。
  
  
  

水遊びを終えた2人は岸辺で休む。ザヴィエが、「ジャック」と2度呼びかけても返事がない。「なんで返事しない?」。「ジャックは嫌いなんだ」。「あいつが、付けた名だからか? だけど、そんな名にせよ、付けなくちゃ」。「でも、嫌なんだ」。「ジャックって人、いっぱいいるぞ?」。「例えば?」。「ジャック・シラク」〔元・大統領〕。「もっとマシな人いないの?」。「そうだな… ジャック・スパロウ〔『パイレーツ・オブ・カリビアン』の海賊船長〕、ジャック・バウアー〔TVドラマ『24 -TWENTY FOUR-』の主人公〕…」〔何れも架空の人物。ザヴィエの知識は限定されている。ジャン=ジャック・ルソー(哲学者)、ジャック=イヴ・クストー(海洋学者)、ジャック・ロンドン(作家)、ジャック・ニコルソン(俳優)など、著名な人は幾らでもいる〕。「どんな名ならいいんだ?」。「ミレイユがいい」(1枚目の写真)。「だけど、女の子の名だぞ」。「どっちが使ったっていいんだ」。そのあと、ザヴィエは足りない食料を補うため、川でマスを捕り、内臓をえぐり出し、焚火で焼く。焼き上がったので、「来いよ、食いもんだぞ」とジャックを呼ぶ。すると、ジャックは、静かにと唇に指を当て、兄を手招きする(2枚目の写真)。「見て」。そこにいたのは、黒地に黄色の斑点のあるイモリだった。ザヴィエにとってイモリなど どうでもいいので、マスが黒焦げにならないよう急いで戻る。
  
  

薄暗くなった頃、2人は、木の棒を使って、剣士ごっこを始める(1枚目の写真)。辺りが真っ暗になると、ジャックは、「突然、風が冷たくなった。震えが田園に広がり、山は薄紫色に変わった。子山羊は、群れの鈴が囲いに戻るのを聞いた。彼女は、悲鳴を聞いた時、悲しくなって身震いした」と言った後で、「1年前、学校で習ったけど、これだけしか覚えられなかった」と付け加える。ザヴィエは、「ここには、危険なんかない。分かってるだろ」と慰めるが、ジャックは、「僕、まだ怖い」と言ったあとで、「今、何考えてるの?」と訊く。「これらすべてより もっと大きな何かがあるに違いない。そうじゃなければ、生きてけるハズがない。周りには何かがある。見えないけど、いつもそこにある何かだ」(2枚目の写真)。「僕の金髪の女の人みたいに?」。「その通りだ」。翌日、陽がのぼると、2人は 同じような景色の中を先に進む。そして、林の中に入ったところで、石壁でできた一軒の小屋を見つける。何かの作業に使われる小屋だ。「いったい何に使うんだろう?」。この好奇心に満ちたザヴィエの言葉に対し、ジャックは、「もう うんざり。家に帰ろうよ」と、これまでのザヴィエの行動を全否定するようなことを言い出す(3枚目の写真)。「何だと? お前、バカげた学校に行かされてもいいのか?」。「それほど悪くないかもしれないよ」。「俺は、お前を放さん。絶対に! いつも一緒だ! 覚えとけ」。この熱烈な言葉を聞いても、ジャックはうなだれるだけで、決して嬉しそうには見えない。
  
  
  

2人は、単線の軌道上を歩いている(1枚目の写真)。レールとレールの間に草が生えているので、如何にも田舎の路線といった感じ。それが突然真っ暗になり、トンネルの中で遠くから電車が向かってくるシーンに変わる(2枚目の写真)。一瞬、2人がトンネルの中を歩いていたら、電車が前からやってきたのかと思わせてしまう。しかし、レールが複線なので、さきほどのローカル線ではない。そして、場面は再度突然に替わり、トンネル内を走る電車に乗っている2人が映る(3枚目の写真)。あまりにも急展開で、少し意地が悪い。
  
  
  

2人の前には、1人の老人が座っている。彼は、よりによって騒音のうるさいトンネル内で、「どこに行くんだね?」と訊く。サヴィエは、それには答えず、「あなたは?」と訊き返す。「リヨンへ」〔これは、実は嘘なのだが、なぜ老人がワザと嘘を付いたのかは不明。最初の問いを無視されたので、出方を見ようと嘘を言ったのか?〕。「じゃあ、俺たちも」。老人は、ジャックに、「何て名だい、坊や?」と訊く。返事がない。「名がないのか?」。ジャックは、しばらく考えて、「ミレイユ」と言う。老人は、チビの方まで嘘を付いたので〔ミレイユは女性の名〕、驚いたかもしれないが、「音楽はどうだい?」と言い、カセットをテープレコーダーに入れ、古めかしい音楽を聞かせる(1枚目の写真)。変わり者と一緒にいたくないと思ったザヴィエは、ジャックの反対を無視して老人のいるコンパートメントから退避する。ところが、入るべきコンパートメントを探しながら通路を歩いていると、車掌に呼び止められ、「君たちどこに行く?」と訊かれる。「リヨン」(2枚目の写真)。「この列車は、リヨンなんか行かないぞ」。場面は三度突然に替わり、警官によってザヴィエの家のドアがノックされる。警察の車の中に乗っているのは、ザヴィエとジャック。家出少年2人が、車掌からの通報を受けて、家まで連れて来られたのだ。警官の応対に出た父親の態度は、家出少年が2人出てもおかしくないような荒(すさ)んだもの。警官は書類を渡し、すぐにソーシャルサービスが訪れると告げる。2人を車まで迎えに行ったのは、祖母(3枚目の写真)。
  
  
  

ザヴィエが、家の外のテーブルで、先端の尖った工具をぐるぐる回して遊んでいると、その前に父がやってきて座り、「何か言うことは?」と訊く。ザヴィエは何も言わない。「今夜のワールドカップ決勝戦は観せん」「弟には、あいつが家を出て行くまで会わせん」「お前は、外出禁止だ」と、立て続けに制裁措置を言い渡す。それに対し、ザヴィエは、「あんたは みんなに嫌われてる。なぜか知ってるか? ゲス野郎だからさ」。父は、別の危険な工具を手にすると、「もう一度 言ってみろ」と言う。「あんたは、ゲン野郎だ」。「貴様、無礼だぞ」。「あんたは、狂った負け犬で、ろくでなしだ!」(1枚目の写真)。「俺を怒らせてみろ。はらわたをえぐり出してやるぞ!」。ザヴィエは、工具の先端を父に向け、怒鳴る。「こっちこそ、えぐり出しえてやる。何が出てくると思う? クソの山だ!! 今後は、俺に指一本触れるな!!」。そして、工具を投げ捨てると、家から離れて行く。父が、家の中に入ると、ジャックが シリアルを食べている。父は、「お前は、あいつに唆されたんだ。だから、お前のことは罰しない」。ジャックは、それに対しては何も言わず、代わりに、「なぜ、ザヴィエが嫌いなの?」と尋ねる(2枚目の写真)。今度は、父の方が黙ってしまう。
  
  

小屋に行ってコイルのようなものを見つけたザヴィエを、それを持って高圧送電線の下に行き、コイルを投げ上げて、送電線に届かせようと試みる(1枚目の写真)。そこに、ジャックがやって来ると、「何してるの?」と尋ねる。兄は、「何も。向こうに行け」と追い払おうとするが、ジャックは、構わず近づいてくる。ザヴィエは、「もし、決勝が観られなくなれば、あいつだって同じだ。あの電線を見てみろ。もし、俺がこいつを接触させられれば、停電だ。くそ野郎のTVも真っ暗になる」(2枚目の写真)。ジャックは、頭の上の電線を見上げる(3枚目の写真)。「さあ、家に帰れ」。「やだ、一緒にいたい」。「最終を見損なうぞ」。「兄ちゃんだって」。「(町に行って)決勝を見て、後で詳しく話してくれ。レポーターみたいに」。「そんなの無理だ。僕は、考古学者になりたいんだ」。「頼むよ、ジャック」。「イヤだ」。「たのむよ、ジャック」。「ジャックと呼ぶの、やめてよ。嫌いなんだ」。「行けよ。一人にしてくれ。頼む」。それでも、ジャックは一緒にいたいと言うので、遂にザヴィエも、立ち去るよう怒鳴る。
  
  
  

午後、町でみんなが決勝戦を応援していると、TVも天井灯も一斉に消える(1枚目の写真)。「何てこった!!」。しかし、ザヴィエの父は、電池式の小型ラジオで聴いていたので、決勝の模様を継続して聴いている。真っ暗になるまで送電線の下にいたザヴィエは、バスチャンの部屋の窓に小石を投げ、彼が2階の窓を開けると、「どっちが勝った?」と訊く。「誰も知らない。停電になっちゃった」。「まさか」。「周囲50キロじゃ誰も観てない」(2枚目の写真)。ザヴィエは、コイル投げに失敗していたので、結果が信じられない。ザヴィエは懐中電灯を借りると。家に帰り、部屋に入る。ジャックのベッドは空だった(3枚目の写真)。ザヴィエは、その意味を深く考えず、ジャックが壊したピノキオ人形を、接着剤で元通りに直してやる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

朝になり、窓から覗くと、警察が来ている。警官が2人に祖母に話した言葉は、「場所は、アンドゥーズです、マダム」だけ(1枚目の写真)〔架空の地名〕。それを聞いたザヴィエは、自転車に乗って、その場所に向かう。車や人が集まっていたので、ザヴィエは自転車を放り出し、走って行く(2枚目の写真)。ザヴィエがそこで見た者は、手が両手が黒焦げになったジャックの死体だった(3枚目の写真)。両手には、銅線を巻き付けた木の棒が握られている。そして、カメラが空中でフワフラしている細い銅線を追って上空に辿り着くと、そこには、ザヴィエがジャックのために作った凧が、高圧電線に引っ掛かっていた(4枚目の写真)。ザヴィエは、転電させようとする兄の試みを、凧を使って成功し、感電死したのだった。ここで、参考までに、凧と高圧電線との関係についての質問に対する答えの中に、次のようにものがあった。「送電線は被覆されていません。鉄のワイヤーを芯にし、その上にアルミ線が巻きつけてあり電流はそのアルミの部分を流れています。従ってタコ糸が近付くだけでコロナ放電等の現象で空気中でも電流が流れます。絶対にこのような事をしないで下さい」。つまり、映画のように銅線の凧だけでなく、どんな材料の凧糸であろうと、高圧電線の近くで凧揚げをすれば感電死の恐れがあることになる。映画では、観客に分かり易いように敢えて銅線にしたのだろう。
  
  
  
  

数日後に行われたジャックの葬儀(1枚目の写真)。自分のせいでジャックの命を奪ったと自覚しているザヴィエは、参列に加わっていることに居たたまれなくなり、一人離れた場所に行き、涙ぐむ(2枚目の写真)。
  
  

最後のシーンは、監督のインタビューにも触れていないので、よく分からない。ザヴィエは、荷物を持ち、女性教師のアンベールの車に乗る。本来、ジャックが行くハズだった学校に行くのか、あるいは、教護又は矯正教育のための公立施設に入れられるのかは不明。そこに行く途中、ザヴィエは教師に頼み、回り道をしてもらう。向かった先は、セコイアの木。ザヴィエが以前訪れた時は雷雨の夜だったので、晴れた日に改めて木を見上げてみる(1枚目の写真)。そいて、生前のジャックが話していた「隠れ家」に行き、置いたあったイスに座ると、金属の缶を開けて中を覗く。最初に見えたものは、セコイヤを描いた絵と、色鉛筆、それに、ルービックキューブのキーホルダー。その下にあった絵には、金髪の女の人の絵が描かれている(2枚目の写真)。ザヴィエは缶の蓋を閉めると、それを大切に持ってセコイアの木の正面に立ち、雷雨の時と同じように木を見上げる。
  
  

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