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Mickybo and Me ミッキーボーと僕

イギリス映画 (2004)

1970年の北アイルランドの首都ベルファストは、分断の都市だった。多数派のプロテスタント側は、カトリックの多いアイルランドと合併されると少数派に転化してしまうので合併に反対し、少数派のカトリック側は、アイルランド民族としてイギリスからの分離し、アイルランドへの合併を主張していた〔暴力的なIRAはカトリック側〕。ただし、これは大人の世界の話で、9歳のジョン・ライト〔愛称ジョンジョ〕と8歳のマイケル・ボイル〔愛称ミッキーボー〕にとっては分断などないに等しいものだった。ジョンジョはプロテスタント系の中流家庭、ミッキーボーはカトリック系の労働者階級の家庭に属していた。2人は、映画館で『明日に向かって撃て』を観たことで、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドに憧れる。ちょうどそんな時、ミッキーボーは一度リンゴを盗んで叱られた老人の家に侵入し銃を奪うが、老人は入浴時に心臓発作か何かで死んでいた。何でも過剰かつ非論理的に考えるミッキーボーは、このままでは逮捕されて死刑になるとジョンジョに訴え、2人でベルファストから脱出することにする。そこからは、一種のロードムービー。ブッチの真似をして銀行強盗をしようとしたり、ボリビアに行く代わりにオーストラリアに行こうとしたりし、最後は、ダブリンのフェリー乗り場で、追っ手から逃れようと、『明日に向かって撃て』さながらに埠頭から海に飛び込む。ただ、結末は後味が悪い。もっと別の結末にすれば、遥かに良い映画になったのにと思うと、残念だ。なお、この映画は、2008年2月11日に、N(ノーザン). アイルランド・フィルム・フェスティバルの一環として東京渋谷のユーロ・スペースで上映された。一般公開には該当しないので、未公開扱いとする。なお、出演者すべての英語の訛りがあまりにひどいので、雰囲気を出すため、会話はすべて博多弁とした〔「恋する方言変換」(https://www.8toch.net/translate/)を利用した〕〔博多弁にしたのは、本州と九州の関係がイングランドとアイルランドに似ていることと、東北弁と違ってある程度理解できるから〕

1970年の北アイルランドの首都ベルファスト。プロテスタント系住民とカトリック系住民の間で抗争が始まり、市は地区により “ゲットー” として分断されていた。主人公はプロテスタント系の一見平和そうな家庭に住む一人っ子のジョンジョ。ある日、カトリック系の貧しい家庭の5人の子供のうち、1人だけ男子の悪戯っ子ミッキーボーが、同じ街区に住む不良2人に追われ、禁断の橋を渡ってプロテスタント系の地区に逃げ込んだことで、ジョンジョと文字通りぶつかる。ミッキーボーは、素性通り、老人の家の木からリンゴを一袋分もぎ取って逃げる途中だったので、2人は一緒に逃げる。友達のいないジョンジョは、そんな変なミッキーボーでも、声をかけられれば好きになり、両親からは絶対にやってはいけないと禁じられている橋を渡り、カトリック系の地区にあるミッキーボーの家を訪れる。ミッキーボーは、ジョンジョを近くの映画館に連れていくが、そこで、ジョンジョは、未来の “まま母” と遭遇する。映画館で働いている女性で、館長と抱き合っているのを見たのだ。もう一つ重要だったことは、この映画館で観た『明日に向かって撃て』に、2人とも心酔したこと。年下で頭は悪いくせに、口達者で強引なミッキーボーは、ボス的存在のブッチになり、ジョンジョは、嫌々サンダンスにさせられる。こうして、アイルランド版 “ブッチとダンサンス” になった2人は、少しでも近づこうと、オモチャの銃を盗む。しかし、本物の銃がどうしても欲しいミッキーボーは、リンゴを盗んだ老人の家に忍び込み、念願通り手に入れるが、老人が老衰か発作で死んでいたため、怖くなって逃げ出す。警察に捕まったら刑務所に入れられると恐れた2人は、ベルファストを抜け出し、『明日に向かって撃て』のボリビアではなく、英語の通じるオーストラリアに行くことにする。ジョンジョは、家から食料を持って逃げ出す時、父が映画館で見た女性とキスをするのを見てしまう。2人は夜陰にまぎれてトラックに乗り込み、南に向かい、途中で “血を分けた兄弟” の契りを交わす。翌朝になり、行方不明になった2人の写真がTVで流される。2人は、ヒッチハイクでトラックに拾われるが、不用心な2人が逃亡の話を運転手にし、拳銃まで見せたので、運転手は最初のガソリンスタンドから通報、2人は即座に逃げる。そして、最初に出会った銀行で、ブッチことミッキーボーが、オモチャの銃を向けて “銀行強盗” をするが、誰もが子供の悪戯と思い、お菓子を買うためのチップをくれる。2人は、その夜、農家の納屋で一晩を過ごすことにするが、ミッキーボーの不注意から藁に火が点いてしまい、納屋は全焼、ミッキーボーは警察に保護される。ジョンジョは、その前に逃げて教会で一夜を過ごし、翌朝、」近くの町で家に電話するが、映画館の女性が電話に出て愕然とする。茫然として電話ボックスの中にいると、警察署で一夜を過ごしたミッキーボーがパトカーに乗せられるのが見える。警官が署に戻ったのを見て、ジョンジョはリヤウィンドウを割ってミッキーボーを救い出す。2人は、最終的に、アイルランドの首都ダブリンに行き、イギリス行きのフェリーに乗ろうとするが、乗船代を16歳未満禁止のスロットマシンで稼ごうとして放り出され、置いてあったお金を盗んで追われる。そして、フェリーには乗り損ね、逃げ場を失い、海に飛び込むが、警察に保護されてしまう。ベルファストに送り返された2人。ジョンジョは、映画館の女性と暮らそうとする父を見限り、伯母の家で暮らしていた母の元に逃げる。ミッキーボーはもっと運が悪く、いつもにように父が通っていたバーでテロがあり、父は射殺されていた。このことはミッキーボーの人格を根本から変えてしまう。1週間以上経ち、橋が開放されてからジョンジョがミッキーボーを訪ねていくと、彼は “血を分けた兄弟” の契りを破棄し、これまで敵同士だった不良の手下になり、“プロテスタント野郎” のジョンジョをナイフで刺す。

この映画の主役は『ミッキーボーと僕』の「僕」、すなわち、ジョンジョ役のニール・ライト(Niall Wright)。しかし、どこのサイトを見ても、最初に出てくるミッキーボー役のジョン・ジョゼフ・マクニール(John Joesph Mcneill)の方を先に出している。これは間違い。映画は、ジョンジョの独白を交えて進行する。映画の中では、ジョンジョが9歳、ミッキーボーが8歳になっているが、ニール・ライトは1991年7月26日生まれ。撮影は2003年なので、11歳か12歳。ジョンのデータはないが、やはり8歳ということはないであろう。

あらすじ

ベルファストの大半を占めるプロテスタント居住区に住むジョンジョの一家は朝食の最中。ジョンジョが父に、「父しゃん、今夜、ダンスに行くと?」と尋ねる(1枚目の写真)。「そうや」。今度は母に尋ねる。「母しゃんな、ダンスが好かんの?」。「踊れんけんばい。左足が2本あるんごと」。父は、「母しゃんなな、出不精なんや」と、それが理由でないことを暗に示唆する〔両親は別居寸前〕。ここで、ジョンジョの独白が入る。「僕ん世界は、ミッキーボーと会うまでは、家ん4つん壁よりちょっと広かくらいやった」。ここで、タイトルが表示され、ミッキーボーがサッカーボールを持って必死に逃げるシーンに変わる。追いかけてくるのは、14-15歳の悪ガキ。場所は、ベルファストでは少数派のカトリック居住区。ミッキーボーの行く手には、高くて乗り越えられない鉄柵が。しかし、彼は、とっさに頭を突っ込むと、力まかせに鉄棒を押して(2枚目の写真)、何とか通り抜けることに成功。敵は柵越しに並行してミッキーボーを追跡する。そして、ミッキーボーは鉄の階段を登ると鉄道を跨ぐ橋の上に出ると、そのまま渡って逃げる。しかし、後続の2人は橋の真ん中まで来ると、追跡を止める(3枚目の写真)。この時、理由は明かされないが、この橋の中央がカトリック居住区とプロテスタント居住区の境界線。壁はないが、暗黙の了解で “越えてはならない一線” なのだ。この橋がどこにあるのか、グーグルで探してみた。その結果を、4枚目の写真に示す〔映画が超望遠レンズでの撮影なので、望遠効果を出すように調整した〕。これはTates Ave.という通りが鉄道を越える部分に架けられた橋だが、実を言えば向いている方向は橋から東。本当なら西を向いていなくてはならないハズなので〔Palestine St.から逃げて行くと、西を向いて走ることになる〕、演出効果を狙ったもの〔逆方向だと家並が少ない〕。因みに、この場所は、5枚目の地図の左にある黄色の◯印。一方、ミッキーボーが住んでいるPalestine St.は右の黄色の縦線。双方の距離は約1.6キロ。当時、この鉄道路線が双方の居住区の境界線だったかどうかについての資料は見つからなかった。ベルファスト市内には、現在でも「平和の壁」と呼ばれるバリアが各所に残っているが、その多くは1990年代からの建設で、この映画の1970年には、まだ造られておらず、こうした心理的なバリアだった。
  
  
  
  
  

父は、仕事場に向かうバスが来るまで、ジョンジョと一緒にカフェに行き、息子にアイスクリームを注文する。そして、それが目の前で作られている間に、2人は短い会話を交わす。「父しゃん、今度アイスクリーム食べる時、母しゃんも一緒じゃいけん?」。「よかや、こんことば母しゃんに知られたら拙か。こりゃ2人ん秘密なんや」。「なして?」。「昼飯ん前に、アイスクリームなんか食べたとバレたら、がらるーぞ。それに、母しゃんなアイスクリーム自体が好かんしな」。父は、「真っ直ぐ家に帰れや」と言って出て行く。ちょうどアイスクリームも出来上がる(1枚目の写真、矢印は豪華なアイスクリーム・コーン)。ジョンジョが歩きながら半分ほどに減ったアイスクリームを食べていると、頭に、紙袋がぶつけられ、ジョンジョは地面に倒れる。その真横に、塀からミッキーボーが飛び降りて、破れた紙袋から転がったリンゴを拾う(2枚目の写真)〔ミッキーボーは、橋を渡って禁断のプロテスタント居住区に入ると、一軒の家の庭の木のリンゴに目を付け、無断侵入してリンゴを頂戴していた〕。彼がリンゴ入りの袋を投げたのは、所有者の老人に見つかったため。老人は、片足が義足だが、杖を突いて出てくると、「こん盗っ人め!」と怒鳴る。ミッキーボーは、ジョンジョにリンゴ集めを手伝わせ、「逃げれ。あんじじい、でっかかナイフ、持っとーぞ」と唆す。2人が道を走って横断すると、その直後に、イギリス軍の装甲車が2台高速で通り向けて行く(3枚目の写真、矢印は被害に遭った老人)〔英軍が治安維持に当たっている緊迫した状況を示すために用いた〕
  
  
  

安全な所まで逃げた2人。ミッキーボーは、自分より格段に速く走れるジョンジョに、「いったいどうやったんや?」と訊く(1枚目の写真)。「何が?」。「おいら、学校中で一番早か。誰にも負けたことがなか」〔彼の言うことは嘘ばかりなので、この言葉も怪しい〕。「君が逃げれて言うたけん、走ったんや」。「どこから来た?」。「すぐそこだ。君は?」。「橋ん向こう側や」〔ジョンジョは、相手がカトリックだと分かる〕。その後、近くの遊具まで行った2人。ミッキーボーは、「お前、仲間はいるんか?」と訊く。ジョンジョは首を横に振る。「おいらとお前で、GankとFartfaceばやっつけようじぇ」〔GankとFartfaceは映画の最初にミッキーボーを追いかけていた2人の不良だが、gankは “かっぱらう” という意味の動詞、fartfaceは “いけ好かない” という意味の名詞〕「あいつらんタマば蹴り上げて、おいらん自転車ば取り返すったい」(2枚目の写真)〔自転車云々は嘘〕。「誰って?」。「おいらん通りにおる奴らで、いつも追いかけまわしゃれとー。おいらん新品ん自転車ば盗みやがったけん、ボールば盗ってやった」(3枚目の写真)〔自転車云々は嘘。ボールを盗んだことは事実だが、なぜか、もう持っていない〕。ミッキーボーは、遊具から降りると、盗みに慣れているので、ジョンジョのお尻のポケットに入っていた雑誌を許可なく取ると、「貸しぇやな、後で返す」と言って持って行く。「いつ?」。「昼飯ん後。Palestine St.で。親父んぱげた〔壊れた〕バンがあるウチや」。
  
  
  

昼を食べ終わると、ジョンジョはPalestine St.に行くため、鉄道を跨ぐ橋を渡る。「橋は、僕らと彼ら、プロテスタントとカトリックば別くる境界線やった」(1枚目の写真、橋の中央で立ち止まる)「絶対に越えてはならな百万回は言われてきた。反対側は、こん世ん果てなんやと」。Palestine St.には、焼けただれた2階建てのバスが置いてあり、車の通行ができないようになっている。その後、どうやってジョンジョがミッキーボーの家を捜し当てたかは分からない。彼は、クローズアップされたドアをノックする。ドアを開けたのはミッキーボーの母、というより、ハリーポッターの親友ロン・ウィーズリーの母だ〔ちょうど2作目と同じ頃の撮影〕。このちょっと変わったおばさんは、「ミッキーボーば探しよーと?」と訊き、そうだと分かると、「ひどか話なんやばってん、ジプシーに売ってしもうたと。悲しかったばってん、必要に迫られんしゃい」と言った後、「入って」と中に入れる。居間では、ちょうど昼食の最中。ミッキーボーは、双子の妹と、2人の姉に挟まれて食べている。「いらっしゃい。動物園の餌やりん時間に間にちょうど合うたわね」。それを聞いたミッキーボーは、「母ちゃんな変なんや。気にすんな」とジョンジョに言う(2枚目の写真)。母が、ジョンジョにサンドイッチを食べさせようとすると、ジョンジョの意見も聞かず、「母ちゃん、彼、お腹空いとらん」と否定。「レモネードはどげん?」に対しては、「喉なんか渇いとらん」。ミッキーボーは、そう言って席を立つと、ジョンジョに母の方を向かせ、反対側のソファに寝ている父のポケットからお金を拝借する。ミッキーボーの母は、最初のうちは、ジョンジョに、「今日は、これからアマゾンのジャングル探検に行くと? 人食い人種に気ば付けて」などと言っていたが、ジョンジョの真面目な顔つきを見て、「あんた、ここら辺ん子やなかね。どこでミッキーに見つかったと?」と、初めてまともな質問をする。「橋ん向こう側ばい」。「お母しゃんな、こっち側に来たっちゃよかって?」(3枚目の写真)。ジョンジョは中途半端ンに肯定する。
  
  
  

ミッキーボーは、映画館の裏口の鍵をこじ開けて中に入る。ジョンジョは、「行こうや。ここしゃぃ来たらいけんばい」と言うが、ミッキーボーは返事もせずにどんどん中に入って行く。途中、ジョンジョが開いたドア越しに中を覗いてみると(1枚目の写真)、そこでは、映画館のオーナーのシドニーが、入場券販売や館内の売り子をしている女性〔後で、ジョンジョの父の愛人となる〕とキスしている(2枚目の写真)。2人は、階段を駆け上がって上映中の館内に入る。しばらくすると、先ほどの女性が、売り子として入って来る。ミッキーボーは、上の手すりにもたれて女性に唾を吐きかけ、ジョンジョにも同じことをさせる。運悪くジョンジョの唾が女性に当たり、彼女は、持っていた懐中電灯で2人を照らす。映画は、始まってしばらくしたところで、『明日に向かって撃て』の冒頭のシーン。ミッキーボーはジョンジョに、「今夜また会うぞ。お前ん親父から、お菓子用に6ペンス盗んで来い」と命じていると、シドニーが突然現れ、2人をつまみ上げると、そのまま裏口まで運んで行き、外に放り出す(3枚目の写真)。その後、ミッキーボーの家での夕食後のシーン。父は、新聞を見ながら、「明日こそ当てるぞ。そげん直感がする」と賭けることしか念頭にない〔定職に就いていない〕。母は、「こちとら家事しとーっちゃけん、夢んような大金が欲しかばい。オモチャや競馬に使わんで」。「ガキンチョだって、男ん子用ん自転車が要るやろ。お下がりん女ん子用んじゃ可哀想や。あいつには、新しかもんば何も買うてやっとらんけんな」〔この言葉で、ミッキーボーが、“新しい自転車” が盗まれたというのは、完全な嘘だと確定する〕
  
  
  

その頃、ジョンジョの家では、父がネクタイをはめながら、「靴ば見りゃ、どげん男かすぐに分かる。よう覚えとけ。靴は、常にピカピカにしとくったい」と教えを垂れている。ジョンジョは、それに頷いた後、「お金少し、くれん?」と訊く。「何に使う?」。「別に」。父は、ポケットから小銭を取り出して渡す。そして、言う言葉が凄まじい。「タバコや尻軽女〔loose women〕に使うんやなかぞ」〔9歳の子供に言う言葉?〕。ジョンジョとミッキーボーは、映画館の入場券売り場の列の先頭に割り込み、台の上にジョンジョが乗って、身長を高く見せ、切符を2枚買おうとする(1枚目の写真)。映画には年齢制限があるのか、女性は、「とっとと消えんしゃい」と問題にもしない。さっそくミッキーボーが台に乗り、「切符2枚って言うたんやぞ」と文句。「ガキん観る映画やなか。出てかなかと、シドニーば呼ぶばい」。「シドニーといちゃついとったん見たぞ。入れてくらんなら、ドスケベ女だって言いふらしてやる」。「何て口汚か、クソガキと。うちん子やったら、石炭酸石鹸〔消毒剤〕で口ば洗うてやる」(2枚目の写真)。ミッキーボーが、女性の真似をして、「シドニー、あんた何て強かと、チュチュチュ」とそれらしい甘い口調で言うと、諦めた女性は、「入場券2枚ね」と言う。ジョンジョ:「上ん階ん席ばい」。こうして、2階の最前列に座った2人は、『明日に向かって撃て』をじっくり観る。そして、ボリビアの警官隊と撃ち合いになって傷付いた後、相手は、残りは数名の警官だと思って、隠れた場所から飛び出していく有名なラストシーン(3枚目の写真)〔外には、数十名の軍隊が待ち構えていた〕。映画が終わり、館内が明るくなっても、2人はラストの衝撃から立ち直れないでいる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

映画を観終わった後、映画館の階段を降りながら、ミッキーボーは、「ブッチがデカいキモ野郎んタマば蹴り上げたっちゃろ。あれ良かったな〔That was class〕」と言った後で、「おいらはブッチ、お前はサンダンスや」と言い出す(1枚目の写真)。「なんで?」。「おいらがそう決めたけんしゃ」。「サンダンスなんか嫌や。ブッチん方がよか」(2枚目の写真)。「なに考えとーったい。おいらはブッチや。お前はサンダンス。こんギャングば始めたんな、おいら。やけん、おいらがボスや。お前がブッチん馬になりたきゃ、ばってんよか。馬か、サンダンスのどっちだ?」。「そげん風に言うんやったら、サンダンスでよか」。「じゃあ、一発始めようじぇ、相棒」〔ミッキーボーは何様のつもりで、ジョンジョは何故こんな年下の不良に唯々諾々と従っているのだろう?〕。ところが、映画館から出た途端、2人はGankとFartfaceに捕まる。Fartfaceはジョンジョに、「お前、どっから来た?」と訊く。ジョンジョが 橋の向こうと答えたものだから、Fartfaceは ジョンジョの左手を掴むと、薬指と小指と間にナイフを入れ、「俺たちは、あっち側ん奴らは好かんのや」と言い(3枚目の写真、矢印はナイフ)、刃を押し付けるので血が出てくる。「もし、今度、ミッキーと一緒にこん辺ばうろついとったら、まっすぐしょんべんができんごと〔ように〕してやる。分かったな?」と言うと、一気にナイフを引き、指の間が切れる。薄暗くなってから帰宅したジョンジョを、母はひどく心配する。しかし、「どこにいたの?」と訊かれても、ジョンジョは、「外」と答えるだけで、手の傷のことはひた隠しにする。そのあと、ベッドで横になったジョンジョに、母は 「あんたがここしゃぃ〔ここに〕おらんと心配と。家んそばにおるんばい」と言い聞かせる(4枚目の写真)。「よかばい」。その時、遠くで爆発音が聞こえる。「どこやろう?」。「大丈夫。橋ん向こうやけん」。ジョンジョが窓から覗くと、ミッキーボーと一緒にいた方角が赤く染まっている。「Palestine St.ん人たち、大丈夫やろか?」。「誰か、知っとーと?」。「煙が上がるんば見よーと、心が折れそうになった。ばってん〔でも〕、母しゃんにミッキーボーんことば話すことはできんかった。心配ばかくる〔心配をかける〕だけやけん」。
  
  
  
  

翌朝、目が覚めたジョンジョは、着替えると真っ先にPalestine St.に駆け付ける。煉瓦造の家が粉々に吹き飛び、イギリス軍が警戒に当たっている(1枚目の写真)。最初にジョンジョがミッキーボーの家を訪れた時の映像は、ずるいことに街並みを一切見せなかったので、ジョンジョが見ている壊れた街並みがミッキーボーと関係があるのかないのか全く分からない。それでも、なぜが、ジョンジョは正面を心配そうに眺めているので(2枚目の写真)、ミッキーボーの家もこの辺りだった可能性はある〔長い通りなので、場所が違っていれば移動するはず〕。すると、正面の廃墟の中からミッキーボーが姿を見せると、「爆発見たんやろ、相棒? 通りんほとんどがやられてしもうた。ホントだぞ」と自慢げに言う。「誰かケガした?」。「よかもん拾うたぞ」〔ジョンジョの質問は無視〕。そう言うと、金の指輪の付いた “吹き飛んだ指” を見せる。「お宝や」(3枚目の写真、矢印は指輪)。指輪のことかと思ったら、指から指輪を外して捨てる。彼にとって大切なのは、ちぎれた指の方だった。「サンダンス、おいら ダイナマイト使いすぎたかな」。これは、『明日に向かって撃て』で、貨車に載せられた銀行の金庫を開けるために、ダイナマイトを使い過ぎて貨車が吹っ飛んだ時に、ブッチがサンダンスに言った言葉だ。
  
  
  

次のシーンでは、2人が覆面強盗の格好をして、手を拳銃の形にして、ミッキーボーの父のいるバーに、スペイン語で、「Esto es un robo〔強盗だ〕」と言いながら入って行く(1枚目の写真)。店主は、顔見知りなので、「何やと?」と訊く。ミッキーボーは、カウンターに向かって腰かけている父に、「ボリビア語で、『強盗や』ん意味しゃ」と言いながら近寄ると、「母ちゃんが言うとったよ、お金くるーやろうって」。「俺がそげんもん持っとーて思うんか?」。「ビール飲むとに要るやろ」。「確かにそうばい。そいつ、誰や?」〔ジョンジョが最初に来た時は、酔いつぶれて寝ていた〕。「サンダンス・キッドや。おいらブッチ・キャシディ。ボリビアに行くったい」(2枚目の写真)。それを聞いた店主は、「オーストラリアにせれ。そこなら英語が通じる」と言う。これも、『明日に向かって撃て』に出てくる台詞。結局、父は、TVで見ていた競馬に賭けることに熱心で、お金なんか渡してくれない。そこで、ミッキーボーは、カウンターに置いてあったタバコとマッチの箱をわしづかみにすると、走って逃げ出す〔このシーンが奇妙なのは、あれほどの爆発について誰も触れず、まるで、そんなことがなかったように振る舞っていること〕
  
  

次のシーンでは、2人は、オモチャやお菓子を売っている店にいる。ミッキーボーは、広げた新聞の上から目だけ出してジョンジョを見ている。ジョンジョは、店主の前でカウンターの新聞の上に両手を乗せ、背後の棚の方を見ている〔新聞の見出しは、「都心のバーで5人爆死」〕。そして、「ミゼットジェム〔砂糖菓子〕、お願い」と指差す(1枚目の写真、矢印はミッキーボー)。店主が後ろを向いてミゼットジェムの入ったガラスケースを取っている隙に、ミッキーボーは、自分の前の壁から、赤と緑のオモチャの拳銃を1個ずつ盗む(2枚目の写真)〔“SPUD GUN” はジャガイモの皮に押し付けて作った “弾丸” を撃ったり、水鉄砲にもなるオモチャ〕。ミッキーボーは2丁をズボンに挟むと店を飛び出し、ジョンジョも後を追う。店主は、何が起きたか分かっていない。
  
  

ミッキーボーは青果店の店頭を走り抜けてジャガイモ入りの袋を奪い(1枚目の写真、矢印)、2番手のジョンジョは、食料としてのバナナを奪う。同じ場面ではつまらないので、ジョンジョは、青果店の次に、軍が通行人(?)の持ち物検査をしている前を通り抜ける時の映像(2枚目の写真、矢印はバナナ)。ミッキーボーは、煉瓦の壁にもたれてタバコを吸っている。周りにはジャガイモ1個と、バナナの皮が3つ転がっている。そして、「心配するな、相棒、おいらん時も最初はそうやった。すぐに慣るー」と言う。すると、カメラが右に移動し、大きなゴミ缶に向かってゲーゲー吐いているジョンジョが映る。そこにも、ジャガイモの袋と、バナナの皮が3つ。手にタバコを持ったまま顔を上げたジョンジョは、「バナナは、もうよかや」と言う(3枚目の写真、矢印はジャガイモとバナナ)〔タバコのことを言わないのは、負けたくないから〕〔右側のジャガイモの表面の点の幾つかは、SPUD GUNを突っ込んだ痕〕
  
  
  

その後、ミッキーボーは、昨日リンゴを10個以上盗んだ家に、塀を登って侵入する。ジョンジョが、「ベルば鳴らしたら?」と訊くと、「強盗なんやぞ。郵便配達やなか」と言われる。塀の次は、裏口のドアの最下部にあるペットドアからの侵入。先にミッキーボーが入り、次はジョンジョ(1枚目の写真、矢印はジョンジョの頭)。2人は2階に上がって行く〔ジョンジョは嫌々〕。老人の寝室でミッキーボーが最初に見つけたものは、大きな木の義足。ジョンジョは、ここの主が母親と一緒に靴を買いに行った時、爆発で片足が吹っ飛んだと説明する〔老人はかなりの年なので、母親と一緒ということは数十年前の出来事。①なぜ、そんな昔の話をジョンジョが知っているのか? ②ベルファストの武力紛争は1966年以降のことなので変ではないか? など問題点を指摘できる〕。そして、「もう行こう。ここにゃ何もなかばい」と訴えるが、ボスは、「お宝ば見つくるまで、出てかなかぞ」と強硬だ。そして、大きな木箱の底から旧式の大型拳銃を見つけて、「すげえ」とご満悦(2枚目の写真)。そのあと、浴室に入って行ったミッキーボーは小便を始めるが、ジョンジョが、「もう、よかやろ?」と督促すると、「しょんべんしとーったい」と振り向いた時、バスタブの中の死体に気付く。ミッキーボーの視線に気付いたジョンジョは、死体を見てすぐに逃げ出す。ミッキーボーは、死体に寄って行くと、銃でつついて動かないことを確かめる(3枚目の写真、矢印は総入歯、後で、“吹き飛んだ指” とともに、お宝になる)。ミッキーボーが階段の上まで戻って来た時、ノックとともに玄関〔裏口の反対側〕のポスト穴が開き、女性が 「バーンズしゃん」と呼びかけ、ミッキーボーの姿を認めて、「そこで何しよーと?」と詰問する。ミッキーボーは、階段を駆け下り、「走れ、ジョンジョ、命がけだ!」と声をかける。
  
  
  

ジョンジョは、一足先に裏口から飛び出し、外階段を走って降りると、路地に出るが、その途端、GankとFartfaceに捕まる。ジョンジョのズボンが下げられ、ナイフが出される(1枚目の写真、矢印)。その時、Fartfaceの頭上から拳銃が突き付けられる(2枚目の写真)。Gankは、「Fartface、そいつは本物やなか。錆びとーぞ」と言うが、ミッキーボーは、「本物だぞ、Gank。中におるバーニー爺しゃんに訊いてみな」と言うと、銃を構えたまま階段を降りる。「だばってん、爺しゃんな死んでしもうた」。GankとFartfaceは、本物の銃を、“何をするか分からない悪ガキ” に向けられていると悟り怖くなる。ミッキーボーは、ブッチのつもりになり、『明日に向かって撃て』の終盤で、ボリビアの盗賊団に襲われた時の台詞を口にする、「話しとかな。実は人ば撃ったことがんのや」。ジョンジョもサンダンスの台詞で返す。「ありがたかお言葉ばい〔One hell of a time to tell me〕」。ミッキーボーは、銃口を下げてFartfaceの陰部を狙う。Fartfaceは恐怖で小便を漏らす。それを見た2人い、恥ずかしくなったGankとFartfaceは逃げ出す。ある程度離れると、Fartfaceは、「町から出ていけ、ジョンジョ。ここはお前ん居場所やなかし、ミッキーも永遠にお前ば守れんぞ。今度捕まえたら…」。ミッキーボーは、「おいらはブッチ・キャシディや。相棒はおいらが選ぶ」と言うと、銃でコミ缶に狙いをつけ、見事に命中させる。このシーンは、痛快だが、全面的に間違っている。映画の冒頭、GankとFartfaceに追われたミッキーボーは、橋を渡り、プロテスタント居住区に逃げ込んだ。GankとFartfaceは橋の中央で渡るのを止めた。ミッキーボーは、リンゴの木を見つけて盗み、義足の老人に見つかって逃げようとして、アイスクリームを食べながら歩いていたジョンジョとぶつかった。だから、ここはれっきとしたプロテスタント居住区だ。しかし、この節でのGankとFartfaceは、ここが自分達のカトリック居住区だと言っている。この矛盾は、映画を一度観ただけでは気付かない。
  
  
  

その後の行動を決定付ける2人の重要な会話。ジョンジョ:「あげんの変ばい〔あんなの変だよ〕。僕、あいつらに何もしとらんのに。昨日ん夜だって、映画館でひどかことしゃれた。バーニーしゃんば殺したっちゃ警察に告口するに決まっとー。そしたら、僕は刑務所行きだし、絞首刑か電気椅子かも」(1枚目の写真)。ミッキーボー:「じゃあ、逃げな。ほかに途はなか」。「ばってん、どこしゃぃ行くと? 迷子になるかもしれんし、飢え死にしたり、バスに跳ねらるーかも」。「食い物や要る物ば持って来い。橋ん下で落ち合おう」(2枚目の写真)。「だばってん、僕ら、何もしぇんかったばい」。「そげなと誰が信じる? おいらたち、ただんガキなんやぞ。なんでん、おいらたちのしぇいにしゃれちまう」。
  
  

ジョンジョが、用意をしようと大急ぎで帰宅すると、父が憮然とした顔で、階段の一番下の段に座っている。ジョンジョが2階に駆け上がると、母が、自室に「入ってらっしゃい」と呼ぶ。「僕、出かけな」(1枚目の写真)。「今夜は、リタ伯母しゃんの家で泊るんばい」。「できんよ、行くトコがあるったい」。「後になしゃい。今は、一緒に来ると」。母は、ジョンジョが何と言って抗議しようと、連れて行く気だ〔この夜を境に、夫と別居する〕。ジョンジョは、嫌々車に乗せられるが、対向車線をパトカーがサイレンを鳴らしながら通り過ぎて行くと、自分を逮捕しに来たんではないかと頭をすくめる(2枚目の写真、矢印はすれ違ったパトカー)。一方、ミッキーボーも、自室に籠って出発の準備。バッグには拳銃を入れ(3枚目の写真)、冷蔵庫の中に入っていた何かの袋も入れる。双子の妹が、「どこしゃぃ行くと?」と訊くと、「オーストラリアに行くったい」と答え、妹はさっそく、「ミッキーが変なこと言いよー」「オーストラリアに行くって」と母親にご注進するが、いつも冗談しか言わない母は、「一緒に連れて行ってくれん?」「絵ハガキ送りんしゃい」と呑気に声をかけただけ。独身の伯母の家の一室を与えられたジョンジョは、暗くなると、「母さん/ごめんなさい」と書いた紙を残して窓から脱出する。そして、必要な物を取りに自宅まで走って戻り、台所の窓から侵入する。そして、鞄に食料を詰め込むが、その時、玄関のチャイムが鳴る。急いで物置に隠れるが、扉を少し開けて様子を窺っていると、階段を駆け下りてきた父は映画館のシドニーと抱き合っていた女性を家に入れ、キスしている(4枚目の写真、矢印は映画館の女性)。ジョンジョは、母のことが心配になったが、ミッキーボーとの約束があるので2人が2階に行くと、家を忍び出る。
  
  
  
  

ジョンジョが橋の下に入って行くと、待ちくたびれミッキーボーが、「今、いったい何時やて思いよー」と批判する。「母しゃんに連れてかれたんや」。「警察に捕まったんかて思うたぞ」。2人は暗い路地を走る。ちょうどトラックが曲がり角でスピードを緩めたところだったので、走るのが得意なジョンジョは、トラックに飛び付く(1枚目の写真、矢印)。走るのがジョンジョほど早くないミッキーボーも、ゆっくり走るトラックに次第に追いつき、ジョンジョの差し出した手に(2枚目の写真)、何とかつかまると、トラックに引き上げられる。トラックはベルファストから南に向かって走り、やがて特徴ある山並みが見えてくる(3枚目の写真)。この山の稜線の形は、ティレラ(Tyrella)海岸から望むスルーヴ・ドナード(Sleve Donard)の山塊(4枚目の写真)と全く同じである〔このことから、トラックは南に向かったと書いた〕
  
  
  
  

トラックの中で、ミッキーボーは、置いてあったガラス瓶を床に叩きつけて割る。そいて、ガラス片を拾うと、ジョンジョの手を掴み、掌を切る(1枚目の写真、矢印)。「痛か! 何するったい?」。「女やなかだ」。ミッキーボーも、自分の掌をガラス片で切る。「手ば寄こしぇ」。そいて、血の出てる掌同士をぎゅっと押さえる。「これで、おいらたちは “血ば分けた兄弟” だ。一生だぞ」。「何だって? 頭がおかしかやなかとか?」。「一生や。そう言え」(2枚目の写真)。「分かったばい。ブッチ、一生や」(3枚目の写真)。「よかか、サンダンス、おいらとお前とで、世界に立ち向かうったい」。2人はトラックを降り、丘の上の空き家に忍び込んで一夜を過ごす。
  
  
  

翌朝、2人は、スルーヴ・ドナードの山塊を遠望しながら、ヒッチハイクを試みるが、通る車も少ないし、ちっとも停まってくれない(1枚目の写真)。一方、ジョンジョが書置きを残して出て行ったことで、心配した母の一報を受けた警官がリタ伯母の家を訪れ、母が持っていたジョンジョの写真を預かっていく(2枚目の写真、矢印)。同じように、一晩家を空けたミッキーボーのことが心配になった母親も、同じように警察に連絡し、こちらも写真立てから写真を外して渡す(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

この辺り、“時間の感覚” が少しいい加減。あきらめかけていたところで、1台のトラックが停まってくれる。1つ前の節の写真と比較しても、影の長さはそれほど短くなっていないので、待っていた時間は長くても1時間くらいだろう。ミッキーボーは、トラックに向かう前に、「おいらが話す。あいつがどんくらい知っとーか分かるまでは、黙ってろ」とジョンジョに命令する(1枚目の写真)。トラックの運転手が、「どこしゃぃ行くったい、アミーゴ」と訊くと、ミッキーボーは 「オーストラリア」と答える。「そりゃ運がよかったな。乗れや」〔オーストラリアに行くには、一度イギリスに行く必要があり、そのためのフェルーはダブリンから出る。このトラックはダブリンに向かっているのだろう〕。ところが、この直後のシーンは、TV放送が中断され、「番組を中断します。ニュース速報が入りました」と音声が流れ、ジョンジョとミッキーボーの写真が表示される(2枚目の写真)。ベルファスト在住の2人の少年が行方不明になりました。1人は、9歳のジョン・ライトと8歳のマイケル・ボイルです。情報をお持ちでしたら、すぐ地元警察に連絡して下さい。少年達は武装していると思われますので、近づく際には注意して下さい」〔ヒッチハイク→写真の回収→トラックの停車→TV→運転手との会話の順になっているので、驚くほど速くTVで速報が流れたことになる。それに、GankとFartfaceが何か話したとは思えないので、なぜ、「武装している」ことが分かったのだろう。謎としか言いようがない〕。トラックの運転手は、「君たち、サーカスか何かに入るんか?」と尋ねる(3枚目の写真)。「違うよ、おじしゃん。おいらたち、逃亡中んカウボーイで、南に向かっとー。ベルファストで気難しか奴ば殺してきたんや。友だちんおらん、びっこん老いぼれしゃ。これから銀行強盗ばいくつかやり、国境んフェンスば越えたら、フェリーに乗るったい」〔「あいつがどんくらい知っとーか分かるまでは、黙ってろ」と言ったくせに、ブッチになったつもりでオーバーに話すとは…〕。「えろう忙しかね」。「こいつは、サンダンス・キッド。射撃ん名人や。おいらは、ブッチ・キャシディ。ギャング団んボスしゃ」。「凄かね。聞いたことがあるぞ。冷酷非情な無法者なんやろ」〔幸い、運転手は、単なる子供の冗談話だと思ったようだ〕。ところが、今度は、ジョンジョが、情報は伝わったと思って口を開くと、「もし、あんたが通報しぇんのなら、殺しゃんけん安心してよかばい」と言いながら、拳銃を取り出して見せてしまう。運転手は、調子を合わせて、「そいつは公平ばい。命には命って訳や」と言うが、銃を本物だと見破ってしまった。これは、ジョンジョの大失敗。
  
  
  

トラックは、野原の真ん中にあるティレラGSに寄る〔このことから、トラックがあまり移動していないことが分かる〕。運転手は降りて店内に入って行き、その隙に、ミッキーボーは運転席側のタイヤに向かって小便をする(1枚目の写真)。すると、電話をかけている運転手の声が聞こえてくる。「…。いんにゃ、2人とも元気や。家族には、心配するなと伝えてやれや。俺は、菓子でも買うてやって、あんたたちが捕まえにくるまで待っとーばい」。ミッキーボーがこっそり覗くと、運転手はバーニー爺さんの拳銃を持って電話を話している(2枚目の写真)〔いつ、どうやって拳銃を手に入れたのだろう? (2人が眠たくなるほど長距離を走っていないのに…) 〕。ミッキーボーは大至急トラックに戻ると、ジョンジョを引きずり下ろし、トラックから全速で逃げ出す(3枚目の写真)。「確かなんか?」。「戻って、訊いてみぃや」。「乗しぇてくれたやなかか」。「利口になれや。あいつ、拳銃ば盗んだ上に、おいらたちば懸賞金目当てに売ったんやぞ。頭んきるー〔頭のきれる〕奴がおって良かったろ。おいらがおらんかったら、お前はとっくん昔に鉄格子ん中や」。このあと、2人が歩く丘の向こうにも、昨夜からのスルーヴ・ドナード山塊が同じように見える。
  
  
  

場面は、いきなり、とある銀行の前に立つ2人に変わる(1枚目の写真)。この撮影場所は、前回のティレラに西約10キロにあるキャッスルウェラン(Castlewellan)という町の中心に建物。2枚目の写真は、グーグルのストリート・ヴューの画像。小さな田舎町だということが良く分かる。ミッキーボーは、「逃げるとに乗るものが要る」と言い出す。「僕、運転なんかできんばい。君、しきるんか?」。「バカ言いなしゃんなや。おいらは、ペダルにも足が届かんのやぞ」。結局、ミッキーボーが目を付けたのは馬。馬小屋の中に入ったミッキーボーは馬に乗ろうとするが、ジャンプしても手が背中に届くのがやっと。ジョンジョを踏み台にして何とか這い上がることができたが、馬は動こうとしない。そこで、ジョンジョに、「尻ば叩けや」と催促。ジョンジョが手でポンと叩くと、「お前、女ん子かよ。ぼてくりまわしぇ」と文句を言う。そこで、ジョンジョが棒で叩くと、怒った馬はミッキーボーを振り落とし、叩かれた罰に馬糞をポタポタ落とす。そこで、2人は自転車を盗むことに。大きな籠のついた自転車に乗ってきた老人が 場外馬券売り場に入って行くと、ジョンジョが両開きの扉の取っ手に棒を差し込んで開かないようにし、ミッキーボーが自転車を腕で押してズラかる(3枚目の写真、矢印は突っかい棒)。
  
  
  

自転車を銀行の向かい側に待機させると、いよいよ、ギャングのボス、ブッチが銃を片手に1人で銀行に向かう(1枚目の写真)。手に持っているのは、本物はトラックの運転手に持って行かれたので、その前に盗んだ 緑色のオモチャの拳銃。この時、挿入されるのが、『明日に向かって撃て』で、本物のブッチが銀行に入って行く時の映像(2枚目の写真)。この時のブッチは、内部の防犯体制を下見するため、銀行が閉まる午後3時に来ただけで、強盗はしていない。しかし、この映画では、まだ営業中なので、窓口に列ができている(3枚目の写真)。
  
  
  

ミッキーボーは、窓口の前にいる老夫婦に向かって、「Manos arriba〔手を上げろ〕」と言う〔これは、ボリビアで初めて銀行強盗をする時、紙を見ながらブッチが最初に言った言葉〕。反応ゼロなので、「『マノス・アリーバ』って言うたんばい、奥しゃん。手ば上げるったい。ピストル強盗だぞ」と脅す。しかし、緑のオモチャの拳銃を向けても誰も本気だとは取らない。老紳士は、ニヤニヤするだけ。窓口係は、「この お若いのは、誰でしょうかね?」と夫妻に尋ねる(1枚目の写真、矢印はオモチャの拳銃)。夫人:「おふざけ坊やね。ジョン・ウェインじゃないの?」。紳士:「どちらかと言えば、『リバティ・バランスを射った男』のジェームズ・ステュアートに似てるな。楽しい映画じゃった」。窓口:「リー・マーヴィンも、出てませんでしたか?」。夫人:「いいえ、出てたのはデューク〔ジョン・ウェインの愛称〕よ」。話はどんどん拡散していき、遂に、ヒッチコックの『裏窓』にまで広がるが、そこに出演していたモナコ公妃になったグレース・ケリー(Grace Kelly)のことを男優のジーン・ケリー(Gene Kelly)と言い間違えるなど、紳士の記憶は結構あやふや。自分が無視されていることに頭に来たミッキーボーは、「おい、聞けや。おいらはブッチ・キャシディで、こん銀行ば襲うとーったい」と怒鳴る。紳士:「悪かったな坊や。ちゃんと強盗に対処しないとな。老人ボケを曝してしまった。なあ、この小さなガンマンに、ささやかながら戦利品〔a crumb from your table(テーブルのパンくず)〕をあげようじゃないか」。そう言うと、紳士は自分のポケットから小銭を出すと、「お菓子でも買いなさい」と言って渡す。奥さんもハンドバックの中から小銭を出すと、「好きな物を買いなさい」と言ってくれる。ミッキーボーは、「サンダンス・キッドにも要るったい。外で見張っとーけん」と言い、そこに並んでいた人たちは、みんなお金持ちのように見えたが、全員が小銭を探る。外で、ジョンジョがハラハラしながら待っていると、ドアが開いてミッキーボーが出てくる(2枚目の写真)。右手には緑の拳銃〔如何にもオモチャ〕、左手にはコインがぎっしり。ミッキーボーは、自転車の籠に乗ると、両手を挙げて成功を喜ぶ(3枚目の写真)〔ジョンジョは、ミッキーボーが本当に強盗をしてきたと思っている〕
  
  
  

その日の夜は、納屋で過ごすことに。ミッキーボーは、銀行強盗について、いつものように嘘を付く。「チョロイもん〔cinch〕やった。えろう怖がって、壁にへばりついて、両手ばこげん風に挙げとった。警備員もだぞ」(1枚目の写真)。「えずう〔怖く〕なかった?」。「あたりきばい」。その後、会話の内容は、嘘の自慢から、本当の話に替わっていく。「去年、おいら、父ちゃんのために、爆撃機んすげえ絵ば描いたんや。バーに持って行って父ちゃんに見しぇたら、そこしゃぃおった奴らに見しぇたら、傑作だって言うてくれた。父ちゃんな、初めといらにおごってくれた」。ところが、家に帰ると、双子の妹が父親に詩を披露、ミッキーボーは絵で対抗しようとしたら、「父ちゃんたら、絵ばバーに忘れてきたんや」〔大した絵でなかったので、捨ててきた?〕。お陰でミッキーボーは双子に笑われた。それは、1年後の今でも彼にとって、屈辱的な思い出だった。だから、それを思い出したことで、怒りが再燃して、ちょうどそこにあったランテンを引っ叩いてしまう(2枚目の写真。この愚かな行為により、納屋に一杯あった藁に火が点き、あっという間に燃え広がる。ミッキーボーは2階部分に座っていたので、下に降りられなくなる〔ハシゴが燃えている〕。ジョンジョは、冷静に、「あっちへ廻れ」と指示する。「燃えとーやんか」。「言う通りにせれ」(3枚目の写真)。ミッキーボーは、ジョンジョの指示に従い、2階にあった藁の直方体の束を幾つか火の来ていない所に投げ落とし、不平たらたら、飛び降りる。ジョンジョの言うことは常に正しく、飛び降りたミッキーボーは、ケガひとつなく焼け死なずに済んだ。もちろん感謝の言葉はない。それどころか、早く逃げようというジョンジョの言葉に逆らい、自分のせいで燃え盛っている納屋を見ているうちに、農家の主から、放火犯として ライフルを突き付けられる。そして、警察が呼ばれ、連行されて行く(4枚目の写真)。
  
  
  
  

ジョンジョは、パトカーに乗せられて連れ去られるミッキーボーを、暗闇の中で見送る(1枚目の写真)。「相棒ば失くした僕は、ケガ人のごたー〔ようだ〕った。ばってん〔でも〕、家で見てしもうた悪夢〔父と映画館の女性がキス〕は、僕ば先に進ましぇた」。ジョンジョは、一夜を過ごすために教会の中に入って行く。そして、マリヤ像の前で祈る。「イエス様。あんたんお父しゃん〔神のこと〕にお願いして、母しゃんば守っちゃってくれん。母しゃんな、リタ伯母しゃんの家におる〔います〕。母しゃんには、僕が謝っとったと伝えてくれん〔下さい〕。そして、ミッキーボーば刑務所に入れんでくれん。彼は誰も殺してれなどおらん。僕ん知っとー限りでは。ありがとう。アーメン」(2枚目の写真)〔ジョンジョは、芯から腐っているミッキーボーと違い、実にいい子だ〕
  
  

ミッキーボーは、捕まったのが夜中だったので、警察署内の監房に入れられる(1枚目の写真)〔ミッキーボーの母親には、警察から無事保護の電話が入る〕。一方、ジョンジョは、教会の中にあったロウソクを自分の周りに置いて、祈りを捧げる(2枚目の写真)〔ジョンジョの母には、何の連絡もないので、息子の無事をひたすら祈っている。ジョンジョの父は、カフェで愛人と待ち合わせ中。息子のことなどどうでもいいに違いない〕
  
  

翌朝、ジョンジョは近くの町まで出てくると、電話ボックスから自宅に電話をかける。すると、電話を取ったのは、映画館の女性。女性:「もしもし」。ジョンジョは、相手が “あの女性” なので、何も言えなくなる。変な電話なので、父が代わり(1枚目の写真)、「もしもし、誰や?」と詰問してので、ジョンジョはすぐに電話を切る〔普通の父親なら、「ジョンジョなのか?」と言うに違いない〕。その頃、ミッキーボーは、家に連れて帰るために 監房から出される。一方、ジョンジョは、ミッキーボーの家に電話をかける。電話を取ったのは、双子の1人。「ミッキーボーいる?」。「ううん、警察ばい」。「お父しゃんに替わって」。「まだ寝とー。ジョンジョと? お巡りが あんたば捜しとー。2人とも家に戻ったら殺しゃるーばい。怖そうな2人も待ち構えとーし」(2枚目の写真)。あまりのことに、ジョンジョは怖くなって受話器を置く。そして、電話ボックスの中でへたり込む。すると、数十メートル先に1台のパトカーが停まっているのが見える。そして、警官に付き添われたミッキーボーがやってくる(3枚目の写真)。
  
  
  

警官は、ミッキーボーを後部座席に乗せると、そのまま署に帰ってしまう。助けるチャンスだと思ったジョンジョは、すぐに駆け付け、「大丈夫か?」と訊く(1枚目の写真)。「すぐ出してくれや」。後部座席のドアはロックされていて、外からでも開かない。助手席のドアは開くが、護送車のため金網が邪魔している。さっそく、ミッキーボーは、無茶なことを言い出す。「サツに忍び込んで、拳銃ば盗んで来いや。それでドアば撃つったい」。ジョンジョは、「頭がおかしかやなかか〔be soft in the head〕? もっとよかやり方がある」と言うと(2枚目の写真)、トランクの上に上がると、ずっと持ってきた懐中電灯でリヤウィンドウを叩き割る(3枚目の写真、矢印は懐中電灯)。
  
  
  

2人は、すぐ山に逃げ込む。しばらく逃亡を続けた後、ジョンジョが、「警察は、バーニーんこと知っとった?」と訊く。ミッキーボーは、それには直接答えず、例によって、嘘を連発する。「おいら、何もしゃべらんかった。奴ら、口ば割らしぇようと〔to spill the beans〕拷問したんやぞ」(1枚目の写真)「ばってん、奴らには、カウボーイん沈黙ん掟(おきて) ば破れんかった。それに、おいらたちには、すごか賞金がかかっとーったいぞ。逃げてしもうたけん、賞金がもらえんちゃろ。やけん、お巡りたちはカンカンしゃ」。「賞金て幾ら?」。「百万。生死ば問わず」〔ミッキーボーは、ブッチになりきって話しているつもりだろうが、相棒に正しい情報を与えないのは、間違っている〕。この後、ミッキーボーの家に警察から再逃亡の知らせが入り、母親が泣き崩れるシーンがある。そして、再び、逃亡中の2人。ジョンジョが、「映画ん中でボリビアん言葉ば2人に教える女んしぇんしぇー〔先生〕がおったろ。彼女、ブッチん奥しゃんでもあるとやろうか?」〔サンダースの愛人〕。「そう思う。きっと、交代しとーったい」。「今でん、奥しゃん2人持てるとやろうか?」〔母と映画館の女性〕。「違う。昔ん話しゃ。カウボーイやけん、好きにできたんや」。「奥しゃんって、取り換えらるーもんなんやろうか?」(2枚目の写真)。「しきるんな〔できるのは〕、アメリカだけしゃ」。「じゃあ、母しゃんが2人おるなんてこと、あり得らん?」。「もち。1人だって多かぐらいだ」(3枚目の写真)。
  
  
  

2人は丘陵地帯を延々と歩き、いきなり海岸線に出る。ドーヴァーの崖に似ているが、あちらは白亜(柔らかい石灰岩)でできていて、崖が海に直接落ち込んでいるが、こちらは、黒っぽい岩質の崖で、崖の前方に広い砂浜が続いている(1枚目の写真)。しかし、写真からも分かるように、近くにダブリンのような大都市があるようには見えない。2人が昨日 “銀行強盗” をしたキャッスル・ウェランからダブリンまでの直線距離は約100キロ。ミッキーボーが収監された警察署がどこの町かは分からないが、ジョンジョが簡単に歩いて行ける範囲なので、100キロが50キロに減るわけではない。1枚目の写真の直後には、2人が砂浜に降り、ちょうど通りかかったフェリーに “乗るんだ” とばかりに競争する場面(2枚目の写真)があるが、2人がこの先どうやってダブリンまで行ったのかは謎。ただ、ミッキーボーは、最初、「国境んフェンスば越えたら、フェリーに乗るったい」 と言っていたので、ダブリンからフェリーの乗ろうとしたことは確かだ。次のシーンでは、いきなり、ダブリン市内の旅行代理店「FAR and AWAY TRAVEL」。色眼鏡をかけて変装したミッキーボーが、「次ん船、何時ばい〔What times the next boat, missus?」と「ミセス」〔既婚女性〕を使って尋ねる。女性は、嫌な顔で「ミス〔未婚女性〕と言う。「ミス、何?」。女性は。左手の薬指に指輪がないのを見せて、「ミスよ」と厳しい声で言う。常識に欠けたミッキーボーは、ジョンジョに、「いったいどうなっとー?」と訊く。常識のあるジョンジョは、「次んフェリーは何時とです〔When's the next ferry, please, Miss?」と、「ミス」を使って正しく尋ねる(3枚目の写真)。女性は、置いてあった時計を見せ(3時40分を指している)、「ちょっと早過ぎたわね。次の船は8時までないわよ。夜行船で、1人2ポンド12シリング。埠頭で払って」と、編み物をしながら不愛想に答える。2人が、いきなり走って出ようとすると、自分の応対は不問に付し、「お行儀 悪いわね!」と文句を言う。ミッキーボーは、「ありがとしゃん〔Thanks, missus」と言うので、何も分かってないことが分かる。
  
  
  

2人は、時間を潰そうと、遊園地に行く。2人は、ブッチとサンダンスなので、射的屋に行って遊ぶ。ミッキーボーが賞品の子熊のぬいぐるみの鼻に命中させると、店主は、「的ば狙え! 賞品やなか! 今度やったら、摘まみ出すぞ!」と怒鳴る。「ごめん。ワザとやなかだ」(1枚目の写真)「一等賞品は何と?」。この言葉の後、ゲームを終わった2人が、デッキチェアに座っている姿が映る。ミッキーボーは、保安官の帽子とバッジ〔恐らく一等賞品〕を身につけている。「大人になったら、本物ん銃ば持つったい。そうすりゃ、誰にもバカにしゃれん」(1枚目の写真)。一方のジョンジョは、最下位の子熊のぬいぐるみ。「僕ん銃、真っ直ぐ飛ばんのやもん」。ミッキーボーは2人の標的の紙を見比べる(3枚目の写真、矢印は保安官のバッジ、右の紙(ミッキーボー)には一点に集中して当っている。左の紙(ジョンジョ)はバラバラで紙から外れているものすらある)〔ジョンジョがやらされているサンダンスは西部一の射撃の名人で、ミッキーボーがやりたがったブッチはボリビアで初めて撃った銃の素人。『明日に向かって撃て』とは、全く逆の結果だ〕
  
  
  

お腹が空いた2人は、スナックを買いに行くが、そこで、ミッキーボーは船賃がないことに気付く〔2人分で5ポンド4シリングだが、キャッスル・ウェランでそんなにたくさんもらったとは思えない〕。逆に、ジョンジョは、銀行強盗をしたので、お金ぐらい一杯あると思っていた。それでも、そのことでミッキーボーを問う詰めることはしない。ミッキーボーは最後の1枚となった半ペニー銅貨を口にくわえる。ジョンジョが、「君の父さんだったらどうする?」と訊く。それを耳にしたミッキーボーは、ミニカジノに入って行き、スロットマシンの前に行き、「ぞろ目〔snake eyes〕、頼むぞ〔come to papa〕」と念じてコインを入れ、レバーを引く。すると、★が3つ揃い、大当たりのベルが鳴る。2人が喜んだのも束の間、様子を見に来た係員が、「ここは、子供ん来る所やなか」と言うと、溢れ出るコインには手を付けさせず、2人の襟をつかんで連れ出そうとする。ジョンジョは、「だばってん〔だけど〕、あれ、僕らんお金や! 正々堂々と〔fair and square〕稼いだんや!」と抗議するが、「気ん毒だがな〔Tough luck〕、お前らガキやなかか。とっとと失しぇろ〔get the fuck out of here〕」と言うと(1枚目の写真)、文字通り、2人を外に放り出す(2枚目の写真、入口の右に「16歳以上限定」と 貼り紙がしてある)。ミッキーボーは、「こん盗っ人野郎! おいらたちには、お金が要るったい!」と文句を言うが、ジョンジョは、横にあるメリーゴーランドの脇に置いてあった売上金の入った袋まで突進すると〔何の変哲もない袋なのに、なぜお金(コイン)が入っていると分かったのだろう?〕、「走れ、ブッチ!」と叫ぶ。2人は、ゴーカートの間を縫って逃げる(3枚目の写真、矢印は袋)。係員が2人、後を追うが、1人はゴーカートにぶつかって転倒する。
  
  
  

2人は、船に向かって全力で走る。口ばっかりでドジなミッキーボーが浜辺に降りる階段で袋を落とすが、袋を拾わずにお金を拾おうとするので、ジョンジョに、「ほっとけ!」と叱られる。そのあと、2人は、砂浜の「仔馬乗り場」のポニーに乗るが(1枚目の写真)、前にも馬を一歩も動かせなかったミッキーボーは、ここでも醜態をさらす。仕方がないので、ポニーから降りて、走ってジョンジョのポニーに乗る(2枚目の写真)。しかし、ミッキーボーですら走って追いつけたくらいの速度なので、追っ手の方が早い。そこで、2人ともポニーから降りて走ることに。2人は浜辺を出ると、埠頭に向かって走る(3枚目の写真、矢印)〔この映画は2003年の撮影なので、ダブリンの都心の約10キロ南東にあるダン・レアリー(Dun Laoghaire)港の様子は、現在とは全く違っている〕。因みに、旅行代理店の女性は、船の出航は午後8時と言っていたが、3枚目の写真はとても明るい。しかし、影を見るとかなり長いので、陽は傾いてきている。もし、これが夏至の頃だと、北緯53度にあるダブリン〔前にも書いたが、稚内は北緯45度〕の夕暮れは22時半以降。20時ならまだ明るい。
  
  
  

しかし、2人が必死に走って埠頭の先端に着いた時、船はもう出た後だった(1・2枚目の写真)。後ろを振り返ると、係員が4人の警官を連れてこちらに向かってくる。2人は防波堤の先端まで逃げていく。しかし、もう、これ以上、逃げられる場所はない。ミッキーボーが、「バーニーん銃があったら、撃ってやるーとに」と、バカなことを言い出したので、ジョンジョは、「スーパーマンのごたー力があったら、オーストラリアまで飛んで行くる。だばってん、僕らには、そげん力もバーニーん銃もなか」と、現実的になれと言う。ミッキーボーは、「そうかよ、知ったかぶり〔smart-arse〕、なら、よか考えでもあるんか?」と反論する。目の前の海を見たジョンジョは、「飛び込んだらよか」と提案する。「本気なんか? ぺちゃんこだぞ」。「それしかチャンスはなか」。「おいらは、やらん」。「どげんしたんや?」。「泳げん」。ジョンジョは、「君が、泳げんだって?」と笑顔を見せる。「もち、泳げるしゃ、こん間抜け〔you tube〕」。「なら、何ば迷うとー。逮捕〔fall〕しゃれたら、殺しゃれてしまうぞ」。そう言うと、ジョンジョは、「血ば分けた兄弟やろ?」と手を差し出す。少し迷い、ミッキーボーも、「血ば分けた兄弟や」と手を重ねる(3枚目の写真)。そして、防波堤の先端から海に飛び込む(4枚目の写真)。このシーンは、『明日に向かって撃て』に対するオマージュ。ボリビアに行く前、アメリカで、追跡のプロにしつこく追われた2人は、渓谷の崖っぷちに追い詰められ、捕まるよりはと、命を賭して飛び降りる。ただし、飛びようと言うのはブッチで、泳げないと断るのはサンダンス。ミッキーボー(ブッチ)が銃の名人で、ジョンジョ(サンダンス)が下手というのも逆だったが、この重要な場目でも、2人の立場は逆。ただ、ブッチが最後に言う言葉、「The fall will probably kill ya」は、ジョンジョの言葉、「The fall will probably kill you」と同じ。細かい所まで神経を払っている。
  
  
  
  

次の場面は、いきなりパトカーで護送される2人(1枚目の写真)。結局、飛び込んでも、すぐに捕まったらしい。車内は真っ暗なので、どこかで数時間、事情聴取されていたのか? あるいは、ここは、アイルランドで、ベルフファストとあるイギリス(北アイルランド)とは別の国なので、迷子情報も届いておらず、情報の交換に手間取ったのかもしれない。しかし、警察署の監房には入れずに、その日のうちに家に帰そうと、パトカーで国境に向かうところは、なかなか親切だと言える。ただし、乗せられる時に何の説明もなかったので、ジョンジョが、「僕ら留置場行き?」と訊くと、「いいや、北の連中に引き渡すだけさ」と笑顔で答える。ミッキーボーは、「なんで、拳銃持っとらんの?」と訊く。「必要ない。ここじゃ、悪い奴らは、俺たちが素手で殺す」。「銃ん方が強かとに」。「銃なら、いっぱいあるぞ」。ジョンジョ:「それ、どげなこと?」。「北とはルールが違うんだ。こっちじゃ、銃は。ウサギやキツネなんかを撃つのに使う」。ジョンジョ:「僕ら、国境なんか越えとらんばい」。「越えたのさ。草の緑がちょっと濃くなっただろ?」。パトカーは検問所に着く。車から降りる前に、ミッキーボーは射撃でもらった帽子とバッジのうち、バッジを 友情の証としてジョンジョに渡す(2枚目の写真、矢印)。そして、2人は、迎えに来た北アイルランド警察に引き渡される(3枚目の写真)。
  
  
  

ジョンジョは、そのまま父の家に連れて行かれる。冷酷な父親は、ドアを閉めると、抱き締めるどころか、「お帰り」や「大丈夫やったか」の一言もなく、いきなり、「弁明せれ」と命じる。「ミッキーボーと僕は…」。「あいつんことなどどうだってよか。お前は何ばしでかしたんや?」。その時、玄関の開く音が聞こえる。階段に座らされていたジョンジョは、母が来たと思い、「母しゃん!」と言ってドアを開けると、そこにいたのは映画館の女性。「まあ、誰かて思えば、ちっちゃな放蕩息子やなかと」。ジョンジョは、「彼女、ここで何しよーと?」と父に厳しく訊く(1枚目の写真)。「父しゃんのお友だちだ」。「ソーシャルワーカーみたいなものね、坊や」。「僕、あんたん子なんかやなか。どげん人か知っとー。映画館で見たっちゃん、シドニーとボボしとったやなかか。ベルファスト中ん男と寝るつもりと? それも妻子んあるごたー?」。父は。「ジョンジョ!」と制するが、それに構うことなく、さらに口撃を続ける。「僕はあんたん子やなかし、あんたは僕ん母しゃんやなか。あんたは売女(ばいた) や。出てけよクソッタレ」。父は、ジョンジョを掴むと、「もう十分や!」と怒鳴る。女性は、「ましゃか、ここまで言わるーとはね」と言うと、玄関の鍵を棚に置き、ドアをバタンと閉めて出て行く〔恐らく、二度と戻って来ないだろう〕。父は、ジョンジョに、「お前ん部屋に行くったい。朝になったら話し合おう」と言うが、ジョンジョは、「父しゃんが言うたごと、僕ん部屋に行く。母しゃんと僕は、ここしゃぃはもう住まん」と宣言すると(2枚目の写真)、家を出て行く〔これで、この愚かな父は、妻と愛人、プラス、息子の3人を失ってしまった〕。リタ伯母さんの家に行ったジョンジョは、母の胸しっかりと抱かれる(3枚目の写真)。
  
  
  

一方、ミッキーボーが連れて行かれた先には、真夜中だというのに人だかりがしていて、警官もいる。ミッキーボーの到着を見て、母が腕を広げて迎える(1枚目の写真)。母は、ミッキーボーを抱きしめた後、何事かを話しかける。それを聞いたミッキーボーは、いきなり、「話しゃな」と言って、群衆をかきわけ、その先の立ち入り禁止の建物に走って行く。そこは いつものバーで、カウンターに父が一人座っている。ミッキーボーは、その父に向かって、冒険旅行でどんなに凄いことをしたか得々と語る。しかし、そのあとの言葉、「父ちゃん、死んだん?」で、生きている父はミッキーボーの想像の産物で、実際には、このバーで何者かが発砲し、そこに居合わせた父が運悪く命を落としたことが分かる。バーの中の全員を殺した男のことは、「joker〔バカなやつ〕」という単語で表現され、そこに、ベルファストの宗教対立を想わせる要素はない〔しかし、これを契機に、なぜかミッキーボーの態度が変わる〕。ミッキーボーと父との架空の会話は、「競馬ん賭けで勝ったことある?」というミッキーボーの質問に、「一度もなか」と父が答えるもの。このあと、ミッキーボーが立ち去る場面では、父は、カウンターにもたれて死んでいる(2枚目の写真、矢印は父の死体)〔誤解を招きやすいシーン〕
  
  

ジョンジョがカフェで母とアイスクリームを食べている。「僕らが戻ってから、橋は何日間も閉鎖しゃれた。やけん〔だから〕、相棒に会いに行けんかった」。「母しゃん、これ好き?」(1枚目の写真)。「うまかばい。もう1つ食べたか?」。「ううん、もう十分」。「橋が通るーごとなると、僕は、すぐミッキーボーん家に行った」。ドアをノックして出てきたミッキーボーの母親は、「こげんトコで何しよーと?」と訊く。「ミッキーボーば探しよー」(2枚目の写真)。「ここしゃぃはおらんばい。もう誰も」。ジョンジョは、笑顔で、「いつもん冗談やろ?」と訊くが、母親は、「面白かことなど何もなか。あたしん愛する人は血まみれになって地面に入っとー。何ん取り柄もなか人で、のん兵衛で、あたしたちば貧乏にしたばってん、おらんよりはマシやった。ミッキーボーは出てった。ここしゃぃいてん〔ここにいても〕、何んためにもならんばい。安全な場所など、もう どこしゃぃもなか〔どこにもない〕。自分の部屋に戻りんしゃい」と重い言葉を並べる。そして、家に入ってしまう。
  
  

ジョンジョが、帰る途中、映画館の前を通った時、入り口でミッキーボーが様子を窺っているのが見えた。ジョンジョは大喜びで映画館の中に入って行き、中を覗いているミッキーボーに、「やあ、ブッチ、遊び場に行かんね?」と誘う。「ブランコなんか、ガキんやろ」。「保安官になるーぞ」。「そげん気分やなか。一人で行けや」。その言葉を聞いたGankとFartfaceが館内から現れる。Gank:「ここで 何しよー、ミッキー?」と訊く。「分らん」。今度はFartfaceがジョンジョに、「ミッキーん自転車ば返したら、行かしぇてやる」と無茶な言いがかりをつける。「そげなと見たことなかばい」。「こいつに、自転車ば返しぇて言うったい、ミッキー」。ミッキーボーは、“血を分けた兄弟” に対し、これまで敵対してきたFartfaceの命令に従い、「父ちゃんが自転車ば買うてくれたんや。おいらに返しぇ」と言う。Gankは、「お前やお前んダチが、橋のこっちまで来て盗んでったんだ」と決めつける。「誓うよ、君ん自転車なんか持っとらん、ミッキーボー」。「お前がおいらん自転車盗んだんや。返しぇや」。「盗んだんなこいつらやろ? 僕は君ん相棒なんやぞ」。Gank:「こいつは、親爺んことがあってから、俺たちん仲間になったんしゃ」。Fartface→ジョンジョ:「こいつん面倒は俺たちがみる」。Fartface→ミッキーボー:「お前は、俺たちんダチや」。ミッキーボー:「返しぇや、ジョンジョ」。ジョンジョ:「僕、家に帰る」。GankとFartfaceはジョンジョの腹部を膝で蹴り上げ、苦しんでいるところを、ミッキーボーに命令する。「やれ、ミッキー、こいつは腑抜けだ。殺しちまえ」(1枚目の写真)。ミッキーボーは、拳骨でジョンジョの顔を殴る。ジョンジョは隙を見て逃げるが、行く先には鉄柵があって通れない。結局、GankとFartfaceに取り押さえられ、そこにミッキーボーがいばってやって来ると、「何で盗みやがった!」と怒鳴り、ジョンジョのお腹に強烈な一発。Fartfaceは、さらに、「やるって言うたろ、ほらやれや」とナイフを渡す。ミッキーボーは、ジョンジョに4回も足蹴りを加えた後で、ナイフの刃を出し(2枚目の写真、矢印はナイフ)、地面に倒れているジョンジョを刺す。ジョンジョは悲鳴を上げ、GankとFartfaceは即刻逃げ出し、ミッキーボーも血の付いたナイフを投げ出して逃げる(3枚目の写真、矢印は保安官のバッジ、その右にナイフ、ミッキーボーが刺したのは左手の小指の下)。このシーンを見ると、ミッキーボーの安易な転身が憎らしくなる。
  
  
  

壁にもたれたまま泣くジョンジョを背景に、独白が流れる。「1970年ん頃、全世界は、ベルファストが分断しゃれた都市やと知っとった」。ここで、大人の声に替わる。「だが、私は、そんなこと全く知らなかった。ナイフで刺されるまでは」。ここで、映画製作当時のベルファストの橋が映る。「あれから30年が経ち、連絡を取りたくなった」。バーにいるミッキーボーに、店主が、「これが今朝届いたぞ、ミック」と言って航空便の封筒をカウンターの上に置いていく。男の手が封を破る(1枚目の写真)。「母は、未だに、新聞の切り抜きを送ってくれる。生誕と死亡、結婚などの記事だ。ベルファストを離れることはできても、私の心からベルファストを取り除くことはできない。今では、状況はかなり良くなったと聞いている」。ここで、カウンターで酒を飲んでいる男が映る。「これからも、ずっと平穏が続いて欲しい」。男は、封筒の中に入っていた写真を見る(2枚目の写真、オーストラリアのシドニーのハーバー・ブリッジを背景に、ジョンジョの家族を撮ったもの)〔ジョンジョは、サンダンスの希望通り、オーストラリアに移住した〕。「子供たちが、もう少しこのままだといいのだが」。写真の裏には、「私と家族/2003年9月30日」と書かれている。そして、男が封筒を逆さに振ると、中から、保安官のバッジが落ちてくる(3枚目の写真、矢印)。「今日、これを見つけた。君が持っているのが相応しいので、すぐに返すことにした。血を分けた兄弟だから。オーストラリアに来ることがあったら、電話してくれ。君の友。ジョンジョ」。それを見るミッキーボーは、服装からしても、うだつの上がらなさそうな労働者階級のままだ〔それにしても、ナイフで刺すような相手に、こんな友情を抱き続けられるものだろうか?〕。映画はここで終わる〔後味は、あまり良くない〕
  
  
  

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