トップページに戻る
少年リスト  映画(邦題)リスト  国別(原題)リスト  年代順リスト

Odessa オデッサ

ロシア映画 (2019)

①。

②。

③。

あらすじ

映画の舞台は1970年のオデッサ。コレラ・パンデミックは、この年の8月に黒海沿岸のリゾート都市オデッサを襲った。映画の冒頭の10分間は、まだ、都市封鎖が行われる前に、オデッサに住む老夫婦の住居〔戸建てなのか、アパートなのかよく分からない〕を訪れた長女と次女の一家の紹介に割かれている。長女ローラは、眼鏡をはめた細身の理屈っぽい女性で、飲んだくれで才能のない失業中の音楽家ヴォロージャが、禁酒していると思っている。2人には、本の虫で、地味なハイティーンの娘がいる。次女ミーラは、派手な出で立ちの女性で、夫はユダヤ人アーリック。彼は、安月給で働くサラリーマンで〔給与は140ルーブル/当時は固定相場で1ルーブル=400円、140ルーブル(56000円)は現在の13~18万円〕、シオニズムに傾倒し、いつかはイスラエルに行きたいと思っている。2人には子供はいない。三女のアロチカは、モスクワ在住のイズベスチアの記者ボリスと結婚し、12歳の息子ヴァルエーリがいるが、まだ家族と合流していない。祖父は、オデッサ最大の食品マーケットに買い物に行ったのだが、突然、マーケットに閉鎖命令が下る。帰宅するとすぐ、情報を得ようとしてTVをつける。すると、女性のアナウンサーが淡々と注意事情を述べている。「勝手な行動は取らないで下さい。これは深刻な事態です。公衆衛生のルールに厳密に従って下さい。調理の前、及び、外出・仕事、買い物・トイレからの戻った時は、必ず石鹸で手を洗って下さい」(写真、矢印はTV)。1人だけ座っているのが祖父。その真上の太っちょが役立たずのヴォロージャ、そのすぐ左が妻の長女ローラ。祖父の左が実行力ゼロのアーリック、その左の赤毛っぽい金髪が祖母、一番左が次女ミーラ〔名前の発音は、映画の中の呼称に従った〕

次に映るのが、エアロフロートの中型機から降りてくる一群の旅客の中に混じって歩く、ボリスとヴァルエーリ(1枚目の写真)。手荷物を受け取るターンテーブルの前に陣取ったヴァルエーリが、父のスーツケースが出てくるのを待っている(2枚目の写真)。その間も、空港内には特異なアナウンスが流れる。「アテンション! モスクワ行きの80-78便は無期限に延期されました」。ヴァルエーリは、スーツケースを見つけ、父が引っ張り上げる(3枚目の写真)。「レニングラード行きの38-74は無期限に延期されました」。父は、そのアナウンスに注意を払わず、航空会社のカウンターで相談もせず、ターミナル・ビルから出て行く。

タクシーのドライバーは、スーツケースのためにトランクを開けながら、「どこから来たんだね?」と訊く。「モスクワから」。ドライバーは、ヴァルエーリに、「ママは一緒じゃないんか?」と尋ねる(1枚目の写真)。「ママは、2日後に来るんだ」。父は助手席に、ヴァルエーリは後部座席に乗って、いざ出発。タクシーがターミナルから出て行くと、代わりに軍用車両2台がターミナルに向かって行く(2枚目の写真)〔ターミナルを閉鎖するため〕。ヴァルエーリは、19世紀の石造の低層建造物が残るオデッサの街並みを見ている〔懐かしそうなのか、物珍しそうなのかは、祖父母の家を尋ねる頻度によるが、1年前にも来たことがすぐ後で分かるので、前者の方〕

タクシーが家の前に着くと、家族がほぼ総出で迎えに出る〔ダメ人間のヴォロージャと、その娘だけは、窓から見ている(住居は2階にある)〕。ボリスは娘婿なので、祖父母の関心はもっぱらヴァルエーリに向けられる(1枚目の写真)。祖父:「大きくなったな、パパそっくりだ。去年、ドアで(身長を)測ったの覚えとるだろ? 後で、もう一度やってみような」。祖母は、何も言わず キスに専念(2枚目の写真)。ボリスは、2階の2人も、「やあ、ヴォロージャ、ジェンカ」と声をかける。「アロチカは、来られなかったの?」。「インドの使節団の通訳を頼まれてね」。「すぐ発つの?」。「ああ。特派員としてボンに行かないといけない」。「あなた知らないの? ここじゃ、コレラが流行ってるのよ」。そんな話の最中も、後ろでは、祖母がヴァルエーリを抱きしめてしる(3枚目の写真)。

祖父が、スーツケースを持って2階に運んで行こうとした時、表の通りから葬送行進曲が聴こえてくる。全員が、敬意を表しに通りに出て行く〔2階建てのアパートらしき建物群は、通りから引っ込んだ内庭に面している〕。ボリスが来ても階段を降りることさえしなかった怠惰な2人も一緒に見に行く。通りでは、4人の楽師を先頭に、花で覆われた棺を1つ乗せたトラックが、それに静かに続く(1枚目の写真)〔死者は、当然 共産党のお偉方?〕。ヴォロージャは、ショパンのピアノ協奏曲第2番ロ短調の第3楽章だと指摘する。ヴァルエーリも、それを、物珍し気に眺めている(2枚目の写真)。ヴァルエーリは、「パパ、僕はいつ死ぬのかな?」と、変な質問をする。すぐ後ろにいる父は、「死なない」と答える。「でも、もしコレラにかかったら?」。「手をよく洗って、爪を噛まなきゃ大丈夫」。祖母は、「心配しないで。すぐには死なない。最初にお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが死に、それから、ローラ伯母さんとヴォロージャ伯父さん、それから、ミーラ伯母さんとアーリック伯父さんが死ぬわ」(3枚目の写真)。ヴァルエーリは、「パパ、ママ、それから、ジェンカだね?」と、その後を続ける。ジェンカは、すぐに、「私は死なない」と反論し、ヴァルエーリの父は、「誰も死なない」と、変な会話を収める。

ヴァルエーリに、祖母がスイカを一口ずつ食べさせている間、父は、モスクワにいる母に電話をかけている。「TVではエピデミック〔一定の地域において、疾病の罹患者が、通常の予測を超えて大量に発生すること〕だと言ってる。深刻だ」。一方、祖母は、ヴァルエーリに 「どのくらい重くなった?」と訊いている(1枚目の写真)。父:「明日、空港に行ってみよう」。それを漏れ聞いたヴァルエーリは、「パパ、僕たち明日、発つの?」と訊く。父は、それには答えず、岳父に電話を替わる。母にとっての父親は、娘に対し無難なことだけ述べて娘婿に電話を返す。その機会に、ヴァルエーリは、「パパ、僕 行きたくないよ」と言うが、再び父に無視される。その時、ミーラが、ヴァルエーリ親子の寝る場所がないので、向かいのジョーリックの家〔口のきけない車椅子の老人と、その息子(つまり、父親)、奥さんはいなくて、16歳の娘イルカと14歳くらいの息子がいる〕に1泊すると言いに来る。ボリスは、ホテルに泊まると言うが、祖母は、「他人行儀な」と言い、ヴァルエーリも、「ホテルなんかに泊まりたくない」と反対する(2枚目の写真)。そこで、ボリスはミーラ達に迷惑をかけないよう、自分達がジョーリックの家に泊まることにする〔どうせ1泊だと思っている〕。祖母は、「ジョーリック一家は、いい人たちよ」と太鼓判を押し、ヴァルエーリが出て行く前にスイカを口に押し込み(3枚目の写真、矢印)、さらにキス。

父とヴァルエーリは、早速、祖母の家(?)を出て、向かいにあるジョーリックの家(?)への階段を登る(1枚目の写真、ベランダにいるのは、のきけない車椅子の祖父)。ヴァルエーリがドアの所まで行くと、少し年上で 上半身裸の少年が立ち塞がり、自分の人差し指を出し、「引っ張れ」ろ言う(2枚目の写真)。意味が分からず、ヴァルエーリが恐る恐る指を掴むと、少年は舌を出してべーっという音を出し、ヴァルエーリが変な顔をすると、「聴力検査だ」と言う〔それを聞いたヴァルエーリは、バカ笑いするが、何が可笑しいのか全く理解できないし、笑い方もわざとらしい〕。ジョーリック家の父親と娘の言い争いが聞こえてしばらくすると、映画の中で登場回数が最も少ない父親が姿を見せ、「あんたが、ミーラとアーリックの代わりかね?」と尋ねる。「一晩だけ。もし迷惑なら…」。「何を言い出すんだね。迷惑なんかじゃない」。その時、枕を持って、娘のイルカがやって来る。イルカは、イライラした様子だが、父親は、「心配無用。イルカが用意してるから」と言い、すぐ横にあるイルカの部屋に入るよう促す〔イルカは、2人を泊めるために、自分の部屋から追い出される〕。イルカは、「ここに寝て」と自分のベッドの枕カバーを交換する。そして、「これには触らないで」と机を指す。ボリスとイルカの最初の出会いは、イルカの素っ気なさが印象的だった。一方、ヴァルエーリは少年と一緒に外に出て行くと、足踏み式の回転砥石で刃物を研いでいるおじさんがいて、2人でそれに見とれる(3枚目の写真、矢印は火花)。

ボリスは、すぐに空港に行く。空港に通じる道路は、空港に入れなくなった人で溢れ返っている。ボリスは、「新聞社だ」と言いながら、人込みをかき分けて前に進んで行く。前方では、1人の軍人が、「すべての飛行はキャンセルされた!」と叫んでいる。最前列まで言ったボリスは、「同志少佐、私はモスクワから来た、イズベスチアの記者だ」と言って、身分証を見せる(1枚目の写真)。少佐は、「何もしてやれん。今日は、飛ばん」と答える(2枚目の写真)。「行かなきゃならん。イズベスチアの記者なんだぞ」。「無理だ。帰れ」。ボリスは、一緒に付いて来たアーリックに、「この町は封鎖された」と言い、あきらめて引き揚げる。しかし、群衆はあきらめないので、遂に空に向けて発砲。全員が悲鳴を上げて逃げ出す。

翌朝、父が目を覚ますと、もう服を着たヴァルエーリが、スーツケースを開け、中を探している。「メチャメチャにするなよ」。「僕の水泳パンツ、どこ?」(1枚目の写真)。「なぜ、そんなもの要るんだ?」。「入り江に行って水浴びするんだ。イルカと、モーターバイクでね」。そして、パンツが見つかる。ボリスが、部屋を出て、家族のいる部屋に入っていくと、ちょうど、イルカの弟が、「俺も行く。何で、俺だけ除け者にするんだ」と、イルカに文句を言っている。イルカは、「じゃあ、誰が、お祖父ちゃんの世話するの?」。ボリスは、イルカの父親と一緒に簡単な朝食をとりながら、イルカに、「どこに行くんだ?」と尋ねる。「入り江よ。足止めされている間、ヴァルエーリに何かしてあげなくちゃ。おじさんも来ていいのよ」。それを聞いたヴァルエーリは、それまで座っていたベッドの上で、飛び跳ね始める(2枚目の写真)。ボリス:「ちょっと待て。食事が先だ。それに…」。その先に否定的な発言をさせないように、ヴァルエーリはジャンプしながら、両腕で “行こうよ” と示唆する(3枚目の写真)。

サイドカー付きのバイクでイルカが連れて行ったのは、オデッサの中心から10キロ少々南にある長い河口(1枚目の写真)。最初、イルカとヴァルエーリが水際で戯れていた。一緒に来たローラの娘ジェンカは、こんな所に来ても本を読んでいるだけ。ヴァルエーリが、だんだん水の中に入っていったので、止めようと父も入って行く。すると、イルカが川底の泥をすくって投げ、3人で泥の塗り合いが始まる。それを見たジェンカは、「ママと行ったサキの療養所は楽しかったわ」と言う(2枚目の写真)〔サキは、オデッサの南東約260キロにあるクリミア半島のリゾート/療養所は父ヴォロージャのアル中治療のため?〕。この唐突な割り込みは、サキのことを知らないヴァルエーリに笑われただけ〔サキという発音が可笑しかった〕。イルカとボリスは、互いに泥を塗り合い、それを見たヴァルエーリは、「黒人の女性みたいだ」と言って笑い、イルカは、「あんたは骸骨ね」と言い返す。それが気に入ったヴァルエーリは、「パパ、見て、僕、骸骨だ」と自慢する(3枚目の写真)。イルカとヴァルエーリは、ボリスが服を着た後も水辺で遊んでいたが、イルカがガラス片を踏んで足の裏にケガをする。傷を、水筒の水で洗っているボリスに、ジェンカは、「ボリス叔父さん、敗血症にならない?」と訊くが、ボリスは、「大丈夫だろう」と答える。それを聞いたイルカは、血縁関係もないのに、ふざけて、「ボリス叔父さん、2人はモスクワに帰るの?」と訊く。ボリスは、「いったいどんな叔父さんなんだ?」と訊き返す。「なら、叔母さん?」。「ただのボリスでいい」。「ボリス、死んだネズミたちのボスね」。それを聞いたヴァルエーリは大喜び。ボリスとイルカが親密になる第一段階として重要な場面。

その夜、ジョーリック家で寝ていたヴァルエーリは、トイレに行きたくなり、あちこち探すが見つからない。そこで、仕方なく、2階のベランダから放尿する(1枚目の写真、矢印に並行に幾つかの点が見える)。ところが、ドアから入ると、急にスタンドの電気が付き、イルカが、「恥ずかしくないの? ずっと見てたわよ」と言い(2枚目の写真)、さらに、「こっちに来て。怖がらない」と、ベッドの端に座らせる(3枚目の写真)。

「何の真似? 誰にも言わないから。この家にトイレがないの忘れたの? 中庭に行かないと。冬はどうなると思う? すっごく寒いから、走るのよ」。その最後の言葉で、ヴァルエーリが笑顔になる。イルカは、「ママは来ないの?」と訊く。「ううん」。「ママなしで過ごすのね。でも、そんなの大したことじゃない。私には、ママがいないのよ」。「なぜ?」。「出てったの」。「どこへ? うんと遠く。あんた、パパとママ、そっちが好き?」。ヴァルエーリは 大きく首をすくめる。「さあ」。「男の子はママ、女の子はパパよ。あんただったら、なおさらね」。「どうして?」。「何もかも揃ってる。素敵じゃない」。「でも、モスクワに帰っちゃう」。「どこにも行けないわ。オデッサからは、誰一人出られないの」。「どうして?」。「全員が感染してるから。ママに移したくないでしょ?」。「僕、感染してないよ!」。「ちゃんと、してるわよ。あんたのパパも、他のみんなも死んじゃうわ」。「君は?」。「私もよ」。イルカは、ヴァルエーリのそばに寄ってくる。「想像できる? 町中が死んじゃうの。夜、町に行っても、誰一人いない。すると、後ろから忍び寄った死人が(1枚目の写真)… 『心臓を寄こせ!』」。ヴァルエーリが悲鳴を上げ、イルカが口を押える。「大声で叫ばないで。みんな寝てるのよ。怖かったの?」。「ううん」。「嘘!」。「嘘じゃない」。「恐怖ね」。「違う」。その頃には、笑顔でのやり取りになっている(2枚目の写真)。朝、父が起きて来ると、ヴァルエーリは、イルカのベッドで一緒に寝ていた〔12歳と16歳の恋だと良かったのに…〕

ここまでが、映画が始まってから34分。ここから41分まで、祖父母の家での何の意味もないつまらない会話が延々と続くのでカットする〔主な内容は、次女夫婦のイスラエル行きに関し、ロシア人のユダヤ人観、シオニズムへの偏見など/長男の才能のない音楽家が、7年間無職らしいことも〕。いい加減、ワンパターンの会話にうんざりした時、ヴァルエーリが、「パパ! パパ!」と叫びながら、祖父母の家(?)の階段を駆け上る(1枚目の写真)〔階段の途中では、ジェンカがまたも本を読んでいる。何という魅力のない…〕。部屋にいた父は、「何だ、ヴァルエーリ?」と訊く。「ジョーリックさんちが、夜間の釣りに出かけるよ。一緒に行こうよ!」(2枚目の写真)。

場面は、いきなり日が暮れかかった黒海の上。ジョーリックが操縦するモーターボートに、彼の息子、ボリスとヴァルエーリの4人が乗り込んで、暗い海面を疾走する(1枚目の写真、増感)。ボートは、7本の木の棒が円形に刺してある中に停泊すると、予め仕込んであったのか、ジョーリックが引き揚げる網には、魚が一杯入っている。息子は、魚を1匹手に取ると、ヴァルエーリに口の中を見せ、「歯が一杯だろ。噛みつかれるぞ」と怖がらせる(2枚目の写真、矢印は魚、増感)。「向こうにやってよ」。すると、いきなりサイレンが鳴る。そして、拡声器で、「ボートの乗員に告ぐ。ロープを投げろ」と命令する。ヴァルエーリは、「パパ、あれ何? 軍隊?」と訊く。ジョーリックは、拿捕されるのを嫌い、エンジンをかけると、3人に伏せるよう命じると、相手の船に向かって一発撃ち(3枚目の写真)、全速で逃げ出す。

軍隊か警察の船は、2丁の機関銃で応戦するが(1枚目の写真、矢印、増感)、ジョーリックのモーターボートの方が高速なので、幸い、追い付かれない。追手が来ない所まで来ると、3人は伏せるのをやめ、ボートの後方に座り、ボリスが労わるようにヴァルエーリを抱いている(2枚目の写真、増感)〔このシーンは、相手が誰で、なぜ拿捕しようとしたかの説明が一切ないので、そもそも、何のために挿入されたのかさっぱり分からない〕。ジョーリックの家(?)に戻ったヴァルエーリは、翌朝、イルカが車椅子の祖父を押してベッドの横を通って行く時、「イルカ、兵隊がいたんだ。そしたら、君のパパが…」と言いかけ(3枚目の写真、増感)、イルカから、「黙って。聞きたくない」と、すげなく一蹴される。

イルカは、祖父を、①ヴァルエーリがジョーリックの息子と一緒に寝ていた部屋、②玄関のある居間兼食堂の部屋、③臨時にボリスが使っているイルカの部屋、まで押して行くと、そこ車椅子を止める。そして、魚の鱗を取り始める(1枚目の写真、祖父の向こうに見えるのはボリス、増感)〔この構図を示したのは、祖父には、“イルカのいる部屋で起きていることが見える” と言いたいため〕。イルカの作業を見ていたボリスは、彼女の背後に寄って行く。すると、イルカは突然作業を止め、振り向き、ボリスにキスする(2枚目の写真)。ボリスも、拒否せず、それに応える。すると、それに気付いたのか、祖父が変な声で叫び出す〔口はきけないが、意味不明の音を出すことはできる〕。イルカは急いで飛んで行く。車椅子の角度が若干斜めになっていたので、キスを見た可能性は高い。イルカは、車椅子の向きを窓に向け、「お祖父ちゃん、大丈夫だから、心配しないで」と声をかける。

その直後のシーンは、ヴァルエーリの祖父母の家での、父と一緒の朝食(1枚目の写真、手にしているのはパン)。後ろでは、ミーラが祖母と話している。「ママ、パパはどこ?」。「外出」。「どこへ?」。「知るもんかね。寝てる間に、出てったから」。ヴァルエーリは、食事の途中で席を立つと、「出かけてくる」と父に言って、ドアから出て階段を降りて行く。入れ替わりに、イルカが、昨夜獲った魚をさばいたものを金盥(たらい)に入れて持ってくる(2枚目の写真)。ボリスは、彼女が出て行くと席を立ち、向かいの階段を上がって行くのをじっと見ている。イルカはベランダまで行くと、車椅子の祖父に、「お祖父ちゃん、何か欲しい?」と訊く(3枚目の写真、これはボリスの視線なので、両家の位置関係がよく分かる)。ボリスの視線を見たミーラは、「涎(よだれ)なんかこぼさないで。あの子、まだ15よ。女性なら、ここにいるでしょ。分かってる?」と冷やかす〔実は、ズバリ正解〕。「私は、あの年の頃、どんな人と一緒になるんだろうってことばかり、考えてた」。「アーリックよりいい奴はいなかったの?」〔ボリスは、シオニストのアーリックが好きではない?〕。「いたわ」。「ボリス、年上の伯母のこと どう思ってるの? 目下、一時的に独身でしょ?」。この変な誘いは、最低のヴォロージャが、シャツとパンツだけで現れたことで終わりとなる。

先ほどのシーンでは、ボリスがタバコを吸い、ミーラが1本せがんだが、それを受けて、次のシーンでは、ジョーリックの息子がタバコを吸い、それをヴァルエーリにも吸わせようとする(1枚目の写真)。ヴァルエーリは、最初咽(むせ)たが、2回目は普通に煙を吐いたので(2枚目の写真)、初体験とは思えない。それを見た妹が、「喫煙は健康に悪いのよ」と注意する(3枚目の写真)〔WHOがタバコと健康に関する最初の決議を行ったのは、ちょうど1970年の総会。そんな時代に、10歳くらいの少女がこんな発言をするだろうか?〕。因みに、このシーンは、映画開始後50分40秒。次にヴァルエーリが登場するのは、1時間19分10秒。約30分の長い空白が続く。

実につまらない30分の無駄なシーンの後は、翌朝。ボリスがベッドで目を覚ますと、すぐ横にイルカの笑顔があった(1枚目の写真)。驚いたボリスは、「ここで何してる?」と訊く。さらに、「気は確かか? 誰かが入ってきたらどうする?」。「誰が来るの? 誰もいない。お祖父ちゃんは喋れないし」。この危険な申し出に、ボリスは 体を起こすと、「私は大人で、君は…」と言いかけ、「私にはできない」とはっきり断る。イルカは、怒って部屋を出て行く。この椿事はボリスにある決心を促したようで、次のシーンでは、階段を駆け下りてきたヴァルエーリが、ジョーリックの息子に、「これから船に乗るんだ」と、興奮して話す(2枚目の写真)。ジョーリックの息子は、よほど “他人に興味がない人間” なのか、「それがどうした? オレは、これから爆発の準備だ」としか言わない。次の場面では、ボリスが、「また来年」と言ってジョーリックと握手し、岳父がスーツケースをくれる。ボリスは、ジョーリックの父(イルカの祖父)の前に立ち止まると、「さようなら」と声をかける。彼は、意味不明の言葉を発しようとしたが、髭を剃っている最中なので、イルカが、「お祖父ちゃん、じっとして」と注意する。

ボリスが階段を降りると、岳父がスーツケースをトランクに入れ、丈母がヴァルエーリを抱きしめている。岳父は、トランクを閉めるとボリスを抱いて背中を叩く。丈母は、ヴァルエーリに、「お祖母ちゃんのこと、好き?」と訊く(1枚目の写真)。「うん」。こうして、2人は、急な出で立ちで港に向かう。港には、大きな客船が停泊している(2枚目の写真、船名はアブハジア(地域名))。「悪くないだろ?」。「航海するの?」。「いいや、検疫だ。船内に5日滞在し、毎日検査を受けるんだ」。「なぜ?」。「感染していない確認が取れたら、モスクス行きの飛行機に乗れる」(3枚目の写真)。「こんなの嫌だ。なぜやるの、パパ?」。「何を嫌がってる? 外航船に乗るのは初めてじゃないか」。

乗船用の長いタラップの手前には、靴底の消毒用の箱が置かれている。ヴァルエーリは、しっかりと中に踏み入れると、次のステップまで足を拡げて上がる(1枚目の写真、矢印は箱)。そのままデッキの手すりにもたれた2人だが、ヴァルエーリの顔は冴えない(2枚目の写真)。「お祖母ちゃんに会いたくない?」。「さよなら、言ったじゃないか。ここが終われば、空港に直行だぞ」。「行きたくないよ。ここで、やることがある」。「どんな?」。「いろいろだよ。まず、お祖母ちゃんに会う」。父は、「モスクワには帰りたくないのか?」と訊く。「帰って、何するの?」。「ママがいる」。「こっちに来ればいい」(3枚目の写真)「モスクワに帰っても何もない。こっちには、みんないるじゃない。イルカだって」。このヴァルエーリの我儘が、折角大事に至らなかった父とイルカの関係に火を点けることになろうとは…

2人が戻って来た “驚き” は、一切描かれない。映画は、いきなり、ジョーリックの家(?)の1階の内部階段の下で、息子がビンに詰めた爆発物をセットするところから始まる(1枚目の写真、矢印はビン)〔どうでもよく詰まらない会話は 長々と観せるくせに、物語の節目の描き方が実に下手で不親切〕。爆発物は、点火するのではなく、例えば、生石灰を入れたビンに水を入れて栓をしたような感じで、化学反応による爆発。ビンはすぐにバンと音を立てて割れ、2人はそのまま内庭から外に逃げ出す(2枚目の写真。右の階段がジョーリックの家、左の階段が祖父母の家)。

その直後のシーンは、ボリスとイルカが2人だけで通りを歩き、その後、路面電車に乗る。映画の路線がどうかは知らないが、オデッサの路面電車の創業は1910年から〔日本最古の京都電気鉄道伏見線は1895年〕。面白いところは、周囲に家もなにもない林の中を路面電車が走っていること。イルカが、いつしかンポリスにもたれてしまうシーン(1枚目の写真)でも、背後には木しか映っていない〔街路樹ではなく、家一軒ない林の中〕。場面は、突然、、黒海沿岸に変わり、水着姿になった2人が(というよリ、イルカが)、べったりとくっついている。ただ、ボリスは、それを心良く思っている訳ではなく、離れるように指示する。イルカは、「知ってる? 私、もう男の人とキスしたのよ」と打ち明ける。「良かった?」。「ううん、気持ち悪かっただけ」。「私は 年配だ。君には、年配過ぎる」。「知らないだろうけど、あなたみたいな人、ここにはいないの」。このあと、祖父母の家の “うんざりする会話” が5分続いた後…

いきなり、ジョーリックの祖父の顔が映る。そして、理解不能な言葉を、訪ねてきた祖母に向かって続ける。祖母は適当に聞き流し、自分のことを話し続ける。そこまでは、お互いの意思疎通度はゼロで無難だった。そこに、イルカが階段を上がって帰ってくると、「今日は、ライースお祖母ちゃん」と声をかけて部屋に入って行く。ライースが、ジョーリックの祖父に向かって、「どんどんきれいになって」と言うと、彼は急に大きな声でしゃべり出す。「何が言いたいの?」。祖父は、必死になって何かを伝えようとする。その時、ボリスがライースの階段を上げって行くのが見え、祖父は、そちらに目線を向ける。「何なの?」。さらに大声になる。「イルカのこと?」。祖父の目が、またボリスに向けられる。「ボリス? それが何か?」。必死にわめく。「ボリスとイルカ?」。祖父は急にわめくのを止め、肯定するような素振りとなる(1枚目の写真)。自分の家に戻ってきたライースは、モスクワにいる妻と話してボリスの電話機を取り上げると、「アロチカ、ママよ」と言った後、具体的に何も聞いてなく、ただ単に “祖父の目線とわめき” から邪推した2人の関係を電話に向かって罵る。「アロチカ、お前の旦那はこっちで楽しんでるよ。イルカって娘っ子とね! まだ、子供なのに!」。それを聞いた2人に娘は、ボリスを責める。ボリスが、「どうかしているんじゃないのか? 冗談はよせ」と、2人に反論すると、ライースは、「少女との姦淫が冗談かい?」と、事実と懸け離れたことを言って、ボリスを罵る(2枚目の写真)。一人常識のあるアーリックは、「待てよ、彼は何って言ったんだ。口がきけないんだぞ」と庇う。しかし、ライースは、「何もかも見たって言ったわ!」と取り合わない。頭に来たボリスは、「何を見たんだ?!」と、食ってかかる。アーリックは、推定無罪を主張するが、妻のミーラからは、「いつから、彼の弁護士になったの?」と言われる始末。ボリスは、頭にきて部屋から出て行く。すると、ライースは、「そんなつもりじゃなかった。何てことしたんだろ」と泣き出すが、愚かな行為が残した傷はそんなことでは消えない。

その日の夜、ボリスは、寝ているヴァルエーリを起こす(1枚目の写真)。「起きろ。出かけるぞ」。「どこに行くの、パパ?」。「内緒だ」。しかし、荷物をまとめて出かけるので、行き先は言わずと知れている。ヴァルエーリが出た後、ボリスはイルカの前で立ち止まるが(2枚目の写真)、何も言わずに立ち去る。

場面は急に変わり、ヴァルエーリがプールの中で泳いでいる〔この映画、何度も言うが、つまらない会話には時間を割くが、場面転換は急過ぎてよく理解できない。夜家を出ても、検疫船が受け付けているとは思えないので、ホテルで1泊したのだろうか? 何れにせよ、プールのシーンは翌日だ〕。検疫中なら、コレラの感染者がいる可能性もあるわけで、そんな中で大勢がプールに入っているのは危険としか言いようがない。プールを出た後、ヴァルエーリは父の隣のデッキチェアに座り、渡されたバスタオルで体を拭く。その最中に、父が、「誰が来たか見てみろ」と言い、ヴァルエーリが見上げるとイルカが階段を降りてくる。ヴァルエーリは飛んで行って抱き着く(2枚目の写真)。2人が喜び合っている時、イルカを連れてきたオフィサーは、父のチェアまで行く。父:「ありがとう」。オフィサー:「お約束通り」。そして、そのまま欄干まで行くと、父はオフィサーにお札を渡す〔父とイルカの間に、いつこのような取り決めがなされたのだろう?? 映画の中で最も重要なシチュエーションでありながら、何の説明もないのは卑怯としか言いようがない〕。オフィサーがいなくなった後、ヴァルエーリはイルカを連れて父の横に来て、「彼女、一緒にいるの?」と尋ねる(3枚目の写真)。「夜は一緒の部屋だ」。その言葉に、内情を知らないヴァルエーリは、飛び上がって喜ぶ。父は、「彼女は、私の妹ってことになってるからな」と、注意する。「叔母さんって呼ぶんだ」。船室では、ベッドが2つしかないので、ヴァルエーリとイルカが逆向きになって寝る。2人は、電気が消されるまで、ふざけ合う(4枚目の写真)。暗くなった後、ボリスとイルカは、ベッドに寝たまま 見つめ合う〔イルカは逆向きに寝ているし、ベッドの間には通路もあるので、距離はかなりある〕

27。

28。

29。

30。

31。

32。

33。

34。

   の先頭に戻る              の先頭に戻る
  ロシア の先頭に戻る           2010年代後半 の先頭に戻る

ページの先頭へ