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Abeltje アブチェ/空飛ぶエレベーター

オランダ映画 (1998)

如何にもオランダ映画らしい子供向き映画。オランダを代表する児童文学作家Annie M.G. Schmidtの同名原作(1953)を映画化したもの。彼女の作品で映画化されたものは、「Wiplala」(1957)が『ミクロ・アドベンチャー』(2014)、「Minoes」(1970)が『ネコのミヌース』(2004)として日本でも知られている(他に、『Otje』『Pluk van de Petteflet』)。何れも奇想天外なストーリーが持ち味。『ミクロ・アドベンチャー』も、映画化は、アメリカの『ミクロキッズ』(1989)に遅れを取ったが、1957年に出版されたとは思えない「はちゃめちゃさ」は、家庭内コメディの『ミクロキッズ』の比ではない。彼女の最初の小説「Abeltje」も、映画化されるまでに45年かかっている(映像化の難しいものが多い)。原作と映画との一番大きな違いは、映画では、アブチェと瓜二つのジョニーの救出が主題となっているが、原作ではそうではないこと〔原作では、救出など行われず、エレベーターはニュージーランドから地球の中心を通ってオランダに戻る〕。映画でアブチェとジョニーのダブル・キャストを演じるのは、リック・ヴァン・ハステル(Rick van Gastel)。2000年にTVシリーズ化された時も、主役を務めている。映画は、オランダ映画祭で作品賞と監督賞を受賞。レンブラント賞の最優秀オランダ映画にも選定。ただし、英語字幕は最悪のレベル。

アブチェの冒険譚はオランダ編、アメリカ編、南米の架空の島国ペルゴナ編の3つに分かれる。出だしのオランダでは、アブチェがシャワー中に、ガールフレンドのライラに裸を見られたことに怒り、スケボーをぶつけ、それが教師に当たったことから、母が呼び出される。母は教師の一方的な態度に腹を立て、アブチェに学校をやめさせ、まだ11歳だというのに、デパートのエレベーターボーイにしてしまう。そして、その初日、エレベーターに防虫剤のセールスマン、歌の先生、ラウラの3人が乗ったところで、教師が違法な児童労働を摘発する警官を連れてきたのを見たアブチェは、禁じられていた「緑のボタン」を押してしまう。エレベーターはデパートのガラス天井を突き破り空中に飛び出る。アブチェが適当に階数ボタンを押すとエレベーターは水平に動き出す。そこからがアメリカ編。そこでのメイン・テーマは、4年前に家族でペルゴナを訪れた際、行方不明になった富豪の息子ジョニーがアブチェと双子のようにそっくりだったこと。アブチェはジョニーと間違えられ、富豪のビルに連れて行かれ、そこでジョニーからのSOSのハガキを見つける。駐車場ビルの出入口に「着地」したエレベーターが、邪魔なので警察のヘリによって撤去されそうになる寸前、4人はエレベーターに戻る。そして、アブチェはジョニーを救い出そうとペルゴナに向かう。そこからがペルゴナ編。毎年大統領が変わるペルゴナでは折りしもクーデターの真っ最中。政権を奪った将軍は、ペルゴナ特産のリンゴ酒の飲み過ぎで死の直前になる。それを救ったのがセールスマンの防虫剤。感謝されて大統領になる。アブチェはジョニーを救い出そうと、リンゴ酒の酒造所に潜入。ジョニーを発見し、服を交換し、「大統領の息子」として酒造所から逃がす。アブチェはジョニーが逃げた後、自力で脱出し、エレベーターで逃げようとするが、将軍に妨害され、エレベーターは島にある活火山に真っ逆さま…

リック・ヴァン・ハステルは、出演時11歳。金髪、灰色の目の可愛らしい少年。突飛もない展開の映画だが、それに負けじと頑張っている。


あらすじ

学校のシャワールームの前で悪戯好きの女生徒たちが高い窓から何とか中を覗き、OKということで犠牲者のラウラを連れてくる。そして、いきなりドアを開けると、ラウラを中に押し込む。中でシャワーを浴びていたのはアブチェ。最初は後ろ向きなので気付かないが〔シャワーの音が大きい〕、女の子たちが「恋人よ!」と叫んだので、ハッとして振り向く。アブチェは裸を見られて愕然(1枚目の写真)、ラウラも合わせる顔がない(2枚目の写真)。怒ったアブチェは、いつも離さず持っているスケボーをラウラに向かって転がす。身の軽いラウラが飛んでかわすと、廊下を歩いてきた体育教師の足にぶつかる。原因をつくったのは女生徒たちなのに、教師はアブチェの母を呼び出す。女手1人でGS付きガレージを経営している母は、サイドカー付きのバイクに颯爽と乗ると学校に急行。教室では、教師とアブチェがスケボーの奪い合いをしている。そこに母が入って来て、「私なら、息子のものに触らないわ」と警告する。その機に乗じてアブチェはスケボーを奪い取る。教師は、学校にスケボーに持ち込むのは教育上良くないと母に説明し、アブチェは、「没収されちゃう」と母に訴える。母は、そんな権利はないと教師を責め、息子はガレージを手伝ってくれるとサポート。教師は、児童を働かせるのは違法と反論。カッとした母は、「今日が この学校に来る最後の日になるわよ!」と怒鳴る(3枚目の写真、矢印はアブチェのスケボー)。
  
  
  

母は、アブチェをサイドカーに乗せ、「学校には二度と来なくていいからね」と命じる。「教師の奴ら、子供のことや、働いてるシングルマザーのこと、何も知らないんだから!」。母がバイクで乗りつけたのは、クノッツ・デパート。そこの入口の脇には、「Liftboy gezocht(エレベーターボーイ募集中)。Met spoed(大至急)!」との大きな張り紙がある。母はビルの中に入って行き、アブチェはサイドカーの中で待たされる。そこに、一輪車で後を追って来たラウラが近づく。彼女は何とか謝ろうと、追いすがって来たのだ〔一輪車に乗っているのは、サーカスの一員だから/後でそれが活きてくる〕。ラウラは、一輪車から降りてアブチェに近づくと(1枚目の写真、矢印は求人広告)、「ごめんなさい」と謝る。しかし、アブチェは、サイドカーから降りると、「ラウラ、僕たち終わったんだ」と絶交宣言。「ホントにごめんなさい」。「終わったんだって、ラウラ。バイバイだ。あっちに行けよ」。そこに、母が、「うまくいったわ。明日から仕事よ」と戻ってくる。「ママ、違法だよ。僕まだ11だ」。「大丈夫。お前は15だから、何でもできるのさ」。「15?」。「就労最低年齢」。「学校に行かなくていいの?」。「ぜんぜん」。アブチェは「クール」と言うと、スクールバッグを走っているサイドカーから投げ捨てる。家に戻った母子。TVでは、コックル・スミス夫人が4年前にインディアンによって誘拐された息子のことで視聴者参加型の番組に出ている〔伏線〕。母はチラと見るが、アブチェは遊ぶのに熱心でTVなど見ていない。翌日の午後、アブチェは母に連れられてクノッツ・デパートに入っていく。1階はクリスマスらしく飾り立てられている。2人がエレベーターの前にいると、銀髪のスラップがやってきて挨拶する〔単なる係員ではなく、このエレベーターの「特殊機能」の発明者〕。そして、アブチェを中に入れると、頭の上に握った手を見せ(2枚目の写真、矢印)、そこから鍵を出して、エレベーターの階数ボタンの箱の一番下の鍵穴に差し込む。すると、エレベーターが稼動状態になる。スラップは「1」を押し、エレベーターは1階に着く〔ヨーロッパのエレベーターは1階がG(ground floor; オランダではBG(begane grond))、2階が1、3階が2…〕〔このビルのエレベーターは1階が「P」となっているが、意味不明(参考:http://elevation.wikia.com/wiki/Floor_numbering)〕。スラップは、「皆様、2階です。クリスマス飾り、クリマスス・ツリー、カード、キャンドルを売っています」と口上を述べ、階数ごとの口上を書いた紙を渡す。そして、「今度は君の番だ」と、中に戻って一度やってみろと命じる。台の上に上がったアブチェは、一番上の緑のボタンに触ろうとする。スラップは、「いかん!」と大声で注意する。そして、顔を近づけると、「絶対に緑のボタンを押さないと誓いなさい」と命じる。アブチェは、「緑のボタンは押しません」と誓うが(3枚目の写真)、背中の左手は指をクロスさせている〔嘘を言ってもバチが当たらない子供のおまじない〕。因みに、アブチェは、誓う際にVサインをして、ツバを吐いている。同じ行為が映画の後の方で南米南部の架空の国の大統領就任式でも見られる。ネット上でどのように捜しても、このような行為は見つけられなかった。この映画独自のものとしか言いようがない。
  
  
  

その後、アブチェの仕事振りが1回だけ映される。1階に着いたエレベーター。出てくる客に向かって、「1階です。カスタマーサービス…」と口上を読み上げる(1枚目の写真)。その後、誰もエレベーターに乗らないので、アブチェは暇を持て余し、目はついつい緑のボタンにいってしまう。1人の男性が、奥さんから「6時には家に帰ってね、ヨージアス。夕食が待ってるわ」と言われ、エレベーターに乗る。その時、ラウラが、「アブチェ、先生が来るわよ」と、警告に駆けつける。ラウラの指差した先には、教師と警官が一緒に入ってくるのが見える。もう一人、クリスマス飾りを買い忘れた女性が入ってくる(2枚目の写真)。アブチェは教師から逃げようと急いでエレベーターのガラス扉を手で閉め〔自動ではない!〕、飛び上がって緑のボタンを押す(3枚目の写真)。
  
  
  

メインの外扉が閉まると、建物が揺れ出し、エレベーター乗り場の上に表示された階数ランプが異常点滅する。そして、外扉の隙間から眩しい緑の光が上に昇っていくのが見える。エレベーターは加速し、建物天井のガラス屋根を突き破って空中に飛び出す(1枚目の写真)。中の4人は衝撃で床に倒れ込むが、そこからはどんどんと離れて行く地上の建物が見える(2枚目の写真)。それを見て興奮したアブチェは、英語で、「Yes, yes, yes!」と叫ぶ。ヨージアスは、「エレベーターをすぐ戻せ」と言い、女性は、「クリスマス飾りが欲しいだけなのに」と言うが、それでどうなるものでもない。エレベーターは雲の中に突入する。他のボタンを押せば下がるかもと言い出す女性と、墜落するかもと恐れるヨージアスの間でアブチェも迷い全員がパニック状態に。それをとめたのも女性。お互い自己紹介することで気を逸らせようとする。そして、ヨージアスは自家製の防虫剤のセールスマン、女性はユフラウという名で、歌の先生だと分かる。その頃、空に登って行くエレベーターを目撃した母はクノッツ・デパートに駆けつけ、責任者に、息子に欠陥品を任せたと非難し、「アブチェは辞職し、学校に行かせるわ!」と怒鳴るが、それでどうなるわけでもない。エレベーターが雲の上に出たところでアブチェが鍵をOFFにすると、エレベーターは停止する。落下もしないので安心したアブチェは、再び鍵をONにし、赤いボタンを適当に押してみる。「5」と「3」を同時に押した時、エレベーターはかなり速度で水平に動き始める。進行方向は夕陽の沈む方向(3枚目の写真)。夕陽は西に沈むので、向かっている先はアメリカ北部だ。
  
  
  

エレベーターは、夜になり激しい雷雨に遭う。ガラス扉の隙間から入り込んだ水を翌日靴ですくって外に捨てるシーンがあるが、水は垂直に落ちて行く。どう見ても時速は10キロほどだ。しかし、その日の午後には行く手にニューヨークの摩天楼が見えてくる。出発点(撮影場所)はオランダのバント(Bant)。アムステルダムの北東70キロ。クリスマスの直前の出立で夕陽が地平線に見えたので時間は16時半くらい。ニューヨーク着は翌日の日没の数時間前。仮に14時半とすれば、時差の6時間を足して所要時間は28時間。距離は約5900キロなので、エレベーターは時速210キロで飛んだことになる。雨水を捨てた時の時速10キロだと、590時間=24日以上かかることになるので、あり得ない。映像上のご愛嬌とみるべきだろう。尤も、エレベーターが飛ぶこと自体ナンセンスなのだが… 時速210キロというのは、何となくありそうで、いい線だと思う〔コメディ映画なので、こちらも数字で遊んでみないと…〕。さて、ニューヨークに上空に来ると、アブチェは「1」のボタンを押してみる。変わらないので「3」も。エレベーターはビルの隙間をゆっくりと進む(1枚目の写真、矢印)。古い映画の割にリアル感のある映像だ。アブチェが「0」を押すと、エレベーターは垂直に降下を始める。飛んでいたハトがガラスにぶつかる。オフィスで電話をかけている男の窓の外を降りていく(2枚目の写真)。ぶつかったハトの方が先に地面に落ち、エレベーターは駐車場ビルの出入り口をふさぐ形で着地する(3枚目の写真)。接地した時に、軽くチンという音がするところが可愛い。通行人は上など見上げていないので、誰もエレベーターに気付かないのもニューヨークらしく (?) 面白い。
  
  
  

ラウラは 降下途中でぶつかったハトが歩道の上で縮こまっているのを見つけ、「お願い、捕まえて。治してあげないと」、とアブチェに頼む。アブチェはガラス扉を開け、鍵を抜いて首にかけるとハトを捕まえにいく。そして、両手でそっとつかむと、そのままラウラに持って行くフリをし、目の前でサッと方向を変え、ヨージアスに渡しながら、「これ、バーベキューにできるんでしょ?」と訊き、ラウラを見てニヤッと笑う。アブチェにはラウラを許す気などさらさらない。「あまり肉がついてないが何とかなるだろう。こんがり焼くと旨いぞ」。この言葉を聞いたユフラウは、「駐車場のハトを食べるなんて、野蛮人ね。文明人は、お金で食べ物を買うモンです」と強く牽制する。ヨージアスは、防虫剤を売ればお金になると言い、ユフラウは、そのお金で食べ物とクリスマス飾りを買いましょうと言う。「飾りがなければ、クリスマスにならないわ」(1枚目の写真)。ユフラウの、何をする気かの質問に、ラウラはエレベーターの見張りをすると答え、アブチェは「決めてないよ」と答える。ユフラウはコーラスしてる人たちを捜しに出かける。アブチェは片時も手放さないスケボーに乗ってニューヨークの街に出て行く〔この映画はニューヨークでロケ撮影をしている〕。タイムズ・スクエアの次は、ウィリアムズバーグ橋〔1903年に架けられた全長2.2キロの吊橋〕の近くの河岸遊歩道で、ニューヨーク流のスケボーの使い方を若者から伝授してもらう(2枚目の写真)。その後、くたびれたアブチェが、46階でクリスマス・チャリティの開催されているビルの玄関前の階段に腰を降ろして休んでいると、チャリティにやってきた金持ちの夫人連が見つけ、「愛らしい」の大合唱。ビルの中に連れ込まれ、エレベーターの前で、エレベーターボーイの真似をさせられる。人気はますます高まる(3枚目の写真)。
  
  
  

そこに、大金持ちのコックル・スミス夫人がやってくる。アブチェを一目見た夫人はその場で卒倒。4年前に誘拐された息子そっくりだったからだ〔4年前だと7歳になるが、7歳と11歳で、そんな判断がつくかどうかはさて置いて…〕。気つけ薬で目を覚ました夫人は、「坊やだわ。信じられない。何て可愛くなって!」と喜ぶ。アブチェには英語は分からないはずだが、「僕、あんたの子じゃないよ」とオランダ語で返事する。英語で答えなかったので、夫人は、「あの子、野蛮なインディアン語を話してる」と、周りの夫人たちに言う(1枚目の写真)〔インディアンに誘拐されたので、意味不明の言葉はインディアン語に違いない、だから、アブチェは息子に違いない〕。アブチェは足をバタバタさせながら、夫人に抱えられて建物を出て(2枚目の写真)、ピンクのキャデラックに乗せられる。一方、街ではヨージアスが防虫剤を売ろうとして、英語が話せないので、「防虫剤を舐めたハエが苦しんで死ぬ」という演技をするのだが、気違いじみた仕草のため敬遠して誰も買わない。ラウラは、エレベーターの前で、サーカスで鍛えたバク宙2回転などを披露し、結構なチップを稼いでいる。エレベーター近くにあるビルに連れて行かれたアブチェは、戻って来た時のために用意してあった服に着替えさせられ、夫人の前に降りてくる(3枚目の写真)。
  
  
  

アブチェは隙を見て逃げ出し、美しい大型のらせん階段を駆け上がって屋上に出る〔ビル丸ごと、一家の所有物〕。見下ろすと、エレベーターの前に集まった「観客」に向かって頭を下げているラウラの姿が見える。「ラウラ!」と叫ぶが、夫人の執事に捕まる。アブチェは、夫人の息子のジョニーの部屋に閉じ込められる。部屋の中には、父母と3人で撮った最後の写真(1枚目の写真、矢印はジョニー)が置いてある。父の左に映っているのは、家族で訪れ、そこでジョニーが誘拐された南米にある島の活火山。その隣に置いてあったのは、四角く手で破られた「インディアン」の顔。裏返すと、左半分に「HELP ME !」と書かれ、右半分には「コックル・スミス、ニューヨーク市、USA」と書かれ、切手が貼り消印が押されている。ジョニーが決死の思いで母に出したSOSのハガキだ。そして、見上げると、壁には南米の地図が貼られ、フォークランド諸島の北500キロほどの場所に向かって赤い矢印が引かれている。そして、左下には、そこにある2つの島のクローズアップ地図が描かれている(2枚目の写真)〔この小さな独立国の名前はPERUGONA。唯一の町はQuoquapepapetl。火山のあるのは北の島。そこに、インディアン印のリンゴ酒の酒造所がある。ジョニーがハガキ用に破ったインディアンの顔は、このリンゴ酒のトレードマーク〕。アブチェは、ジョニーがそこに囚われていると思いつつ、地図を見る(3枚目の写真)。そして、オランダにいる母に向かって、「ごめんね、ママ。家には戻らない。助けに行かないと」と謝る。
  
  
  

アブチェの部屋からはエレベーターが見える。双眼鏡で見ていると、駐車場から出ようとした車が、エレベーターが邪魔になって出られず、クラクションを鳴らしている。ラウラはハトを抱いてどこかに出かけていって不在。車のドライバーはエレベーターを押して動かそうとするが、びくともしない。心配になったアブチェは窓から抜け出そうとするが、父親が帰宅したので呼びに来た執事に取り押さえられる。父親は、アブチェの顔と足の臭いをかいで〔犬じゃあるまいし…〕、「息子じゃない」と言う。「坊やよ!」。「違う」。「もし、坊やだったら?」。「本人に訊いてみろ」。「インディアン語しか話さない」。その頃、ヨージアスは、売っていた防虫剤がコカインカプセルにそっくりなので、麻薬密売を疑われて警官に追われる身。逃げ込んだ先がインディアン・ショップ〔店頭に飾ってあった酋長の羽飾りをちゃっかり拝借した〕。コックル・スミス夫人は、同じ頃、インディアン語の通訳を頼もうと、インディアン・ショップに電話をかけ、「1人寄こして」と頼む。ヨージアスはインディアンの衣装のままコックル・スミス夫人のビルに向かう。ジョニーの部屋に連れて来られたヨージアスは、そこでアブチェに会ってびっくり。「そんな格好で何してる?」。「息子と勘違いしてるんだ」。夫人は、「坊やはジョニーだわ。インディアンになったのよ」と夫に言う。ヨージアスは、片言の英語で、「2人だけ、話す。出ろ」と言って全員部屋から追い出す。アブチェは窮状を説明。2人が窓から見ると(1枚目の写真)、エレベーターを動かすために警察のヘリが出動する騒ぎになっている。ヨージアスは、インディアンの毛布のように大きなマントの中にアブチェをくるんで隠し、「息子、寝てる」と言って部屋に入らないようにした上で、外に連れ出す〔途中で、執事が届けにきたエレベーターボーイの制服を奪い取る〕。駐車場ビルの前では、ヘリから下げたロープの先のフックを警官がエレベーターの屋根に引っ掛けようとしている(2枚目の写真、手前の赤い服がアブチェ)。4人は大急ぎでエレベーターに乗り込む〔アブチェが警官たちの気を逸らす〕。エレベーターは4人を乗せたまま吊り上げられていく(3枚目の写真)。
  
  
  

吊り上げられたエレベーターの空中劇は奇想天外で面白い。ラウラは、ヨージアスの手に足を乗せ、開いたままのガラス扉のてっぺんに手を掛ける。そして、扉の取っ手に足を移し、エレベーターの屋根に這い上がる(1枚目の写真、矢印はラウラ)。ラウラは、屋根に上がりきると、「アブチェ、エレベーターを上げて」と叫ぶ。アブチェは鍵を差し込んで起動させると、エレベーターは浮力がつき、フックが外れる。ラウラは、後方宙返りの要領で屋根からぶら下がると、それをヨージアスががっちりとつかむ(2枚目の写真)。ラウラが収容されると、後はアブチェがエレベーターを操作する(3枚目の写真)。ヘリのパイロットが唖然と見送る中、エレベーターは空飛ぶ円盤のように、高速で去って行く。
  
  
  

エレベーターの中で、ラウラは大きな紙袋をユフラウに渡す。曲芸を見せて稼いだお金で、クリスマス飾りが欲しいと言っていたユフラウにプレゼントしたのだ。感動したユフラウは、「エレベーターは、私たちの家みたいね」と言うと、内部にキラキラのモールを飾り付ける。ヨージアスへのプレゼントは、前の部分に自由の女神像がプリントされた下着のパンツ。こちらはあまり嬉しそうでない。最後に取り出した小さな赤い包みを、アブチェに渡す。中に入っていたのは、赤いハート型のペンダントトップのついた首飾り。彼女は、ペンダントを自分の首にかけると、ハート飾りの中央の小さなハートを押し出す。それは「穴の開いた」ハート飾りと対になる小さなハートのペンダントトップ。それを、アブチェに渡す(1枚目の写真、左の矢印は「穴開き」のハート、右の矢印は小さなハート)。アブチェはチェーンの部分を持つと、エレベーターの扉を少し開けて捨てる。「ごめんよ」。それを見たラウラはすすり泣く。ユフラウは、ラウラを抱きしめ、「悲しまないで。男って無神経なの」と慰める(2枚目の写真)。夜が明け、エレベーターには朝日が射し込む。3人は眠りこけ、アブチェはジョニーの部屋から持ち出した地図を見ている(3枚目の写真)。すると、雲の隙間からペルゴナの島が見えてくる。ニューヨークからの距離は約9800キロ。ニューヨークを出たのは日没直後なので仮に17時とすると、南米南部のこの辺りの日の出の直後は6時(ニューヨーク時間では5時)、所要12時間なので時速は820キロとなる〔オランダ→アメリカ間の4倍のスピード〕。目を覚ましたラウラは、オランダに戻っていると思っていたので、驚いて、「何してるの?」とアブチェを問い詰める。そして、アブチェが手に持っていたジョニーの家族写真を取り上げ、「これがジョニー?」と訊く〔ジョニーのことは、知らないはずだが…〕。アブチェは、写真を奪い返し、「余計なお世話だ」と言うや、エレベーターを操作して下降に移る。
  
  
  

ここからが、映画の後半。ペルゴナの島の住民が映り、みんながインディアン印のリンゴ酒を飲んでいる。すると、機関銃を撃ちながらジープに乗った数十名の兵士が大統領府に向かう。クーデターだ。一方で、大統領の一家は建物からこっそり逃げ出している。エレベーターでその真上に来たアブチェは、双眼鏡でその様子を見ている。ジープに乗った兵士たちが逃げる群集を押し分けて進む。バックに『地獄の黙示録』でも使われたワーグナーの「ワルキューレの騎行」が勇壮に流れる。将軍を乗せたジープが大統領府に突入する(1枚目の写真、矢印はエレベーター、2人はまだ眠ったまま)。建物を制圧した兵士たちが お祝いで空に向かって銃を撃つ。何発かがエレベーターにも当たり、衝撃で2人が目を覚ます。大統領執務室に入った将軍は、机に足を乗せ、リンゴ酒をビンごとガブ飲みする。この酒には副作用があり、そのせいで将軍の鼻が赤黒くなっていて、ひどくむせぶ。アブチェがエレベーターの緑のボタンを押すと、エレベーターは大統領府のエレベーターと一体化し、建物が地震のように揺れる。何事かと兵士たちは中庭に集まる。すると、中庭に面したエレベーターの上に置かれた「B 1 2」しかない階数表示が時計のようにくるくる回り、最後に「B」で止まって「チン」と音がする。兵士たちはエレベーターの扉を取り囲む。外扉が開き、中のガラス扉を手で押してアブチェが出てくる。「みなさん、1階です」。30名ほどの兵士が一斉に狙いをつける。4人は、突入した兵士よって拘束され(2枚目の写真)、手錠をはめられて、将軍の前に連行される。将軍は、酒ビンをベルトに挿したまま、4人を検閲する(3枚目の写真、矢印は酒ビン)。
  
  
  

将軍は、「お前たち、何者だ?」とスペイン語で訊くが、4人には通じない。片目の副官が英語で、「How are you?」とヨージアスに訊き、彼は「Fine」と曖昧に答える。副官:「Come on?」。返事はない。これで英語も通じないと判断される。アブチェは、「誰かって、訊いてるのさ」とアドバイス。ヨージアスはオランダ語で自己紹介する。埒があかないと判断した将軍は、「監獄にぶち込め」と命じる。そして、4人に向かい、「明日は…」と言うと、首を切る仕草をしてみせる。それを見た4人はおののく(1枚目の写真)。アブチェは、「僕らにはエレベーターがある」「ここまでエレベーターで飛んできた」と将軍に言うが(2枚目の写真)、言葉が分からないので笑われただけ〔言葉が分かっても笑っただろう〕。執務室に1人残った将軍は、壁に飾ってある何枚もの「元・大統領」の写真を見て、全員が任期1年で終わっているのに気付く。そして、自分が就任しても、1年で取って代わられると恐れる。「死ぬのは嫌だ。大統領にはなりたくない」。一方、取調べ室では1人ヨージアスがイスに座らされ、その前に副官が立ち、「スパイか?」と訊くが、当然通じない(3枚目の写真)。しかし、くり返される「スパイ」という言葉にピンと来たユフラウは、「私たちはスパイではありません。品行方正なオランダ人です…」と述べるが、これも当然通じない。副官はヨージアスが後生大事に抱いていた鞄を奪うと、中にある白い防虫剤を取り出す。「いったい何だ」と訊かれていると感じたヨージアスは、ニューヨークでやってみせたように、「ハエが飛んできて舐める」真似をしたところで、うんざりした副官によって監獄に放り込まれる。
  
  
  

外では、クーデター成功の祝賀会。将軍もリンゴ酒をどんどん飲む。そして、限界に達し、咳が止まらなくなり倒れてしまう。医者が呼ばれるが治らない。口から泡を吹いた将軍を見て、副官はポケットに入っていたヨージアスの防虫剤を見て、薬かもしれないと思い〔舐める真似をしていたから〕、他に助ける手立てもないので、「これは実験的な薬です」と言い、一か八かで飲ませる(1枚目の写真)。防虫剤のはずなのだが、薬は即効的に効き、将軍はたちどころに元気になる〔如何にも、この映画らしい〕。喜んだ将軍は、監獄に行き、ヨージアスに博士と呼びかけ、何と、オランダ語の通訳を同行してくる〔こんな小さな島のどこで見つけたのだろう?〕。通訳は、①錠剤が将軍の命を救い、②博士には輝かしい未来がある、と告げる〔将軍の代わりに、傀儡の大統領になる〕。2階にある執務室に行く際、ヨージアスは3人をエレベーターに連れ込む。そして、降りる時、「自分が大統領の間はオランダには帰らない」という意志を示すため、鍵を取り上げる(2枚目の写真、矢印は鍵)。大統領の制服を着たヨージアスは、副官の教えるスペイン語を復唱する形で、就任の宣言をし〔右手でVサイン〕、最後に、Vサインの隙間からツバを吐いて誓う〔以前指摘した〕。それを見ていた町の人から一斉に拍手が起こる。その時、カメラマンによって撮られた大統領一家の写真(3枚目の写真、右端は通訳)は、世界中に配信された。オランダではアブチェの母が、ニューヨークではジョニーの母が新聞でこの写真を見て、すぐに行動を起こす。
  
  
  

アブチェは、ヨージアス会いに執務室に行った際、ベランダから下を見て、「ジョニーのSOSハガキと同じインディアン」を描いたトラックが停まっているのに気付く。アブチェは中庭に降りて行くと、スケボーに乗って、走り出したトラックの後部につかまる。トラックはそのまま林の中を進み(1枚目の写真、運転席の上や車体の横に「インディアン」印が見える)、南島の北端の海岸に着く。そこから、火山と酒造所のある北島までは、一本の鋼材が何本もの柱で支えられて架け渡され、その鋼材に取り付けられた荷台をワイヤロープで引っ張ってリンゴ酒を運搬する仕組みになっている。アブチェは、トラックの運転手が、空ビンの箱を載せ、南島→北島に送るのを見ていて、荷台が戻って来た時、運転小屋で寝ている係員の目を盗み、荷台に乗って北島に向かう(2枚目の写真、アブチェの乗っているのが荷台、荷台を動かすには、南島側にある大きな鉄のレバーを倒す)。アブチェは北島にある酒造所に到着。窓から覗くと、中では何人かの小さな子供が汚いなりで働かされている。アブチェは、監視人の男に見つかってしまうが、幸い、上司の女性が飾ってあった「大統領一家」の写真を見て「大統領のご子息」であることに気付き、へつらった態度で歓迎される(3枚目の写真)。
  
  
  

アブチェは、作業をさせられている子供たちの中に、自分そっくりの少年を見つける。そして、「ジョニー」と呼びかける(1枚目の写真・右)。すると、リンゴを踏んでいた少年がアブチェの方を見る(1枚目の写真・左)。アブチェは、トイレに行きたいと格好で示し、ジョニーに連れて行ってもらうようお膳立てする〔監視係が付いているので、うかつに話せない〕。別室に入ったアブチェは、すぐにエレベーターボーイの制服を脱ぎ、次いで、ジョニーの顔に触って汚れを一部落とし、ジョニー本人だと確認する。そして、ジョニーの家族写真と、「助けて!」のハガキを見せる。おどおどしていたジョニーが笑顔になり、アブチェと手を握り合う(2枚目の写真)。一方、南島では、リンゴ酒の飲み過ぎで死に瀕する病人が続出し、ヨージアスは次々に防虫剤を与えて「奇跡の回復」を実行している。お陰で、残った防虫剤はわずか1個だけとなる。新大統領の絶大な人気は、この「奇跡の治療薬」にあったので、在庫の欠如は地位を揺るがす大問題だ。初めから斜めに構えて距離を置いてきた通訳は、これを冷ややかな目で見ている。ここで、場面はもう一度酒造所に戻る。リンゴ酒を入れる木箱を持っているアブチェ(3枚目の写真・右)を、エレベーターボーイの服を着たジョニーが心配そうに見る(3枚目の写真・左)。アブチェは、ジョニーを救うため 入れ替わったのだ。
  
  
  

ジョニーは、「へつらった」女性に導かれ、北島の舟着場に行く。そして、モータボートに乗せられると、南島の舟着場まで連れて行かれ、「お父様の大統領にどうぞ」とリンゴ酒を1本贈られる(1枚目の写真)。その様子を、偶然、海岸まで来ていたラウラが見ている〔ラウラは、アブチェが荷台で島に渡るところも見ていた。だから、アブチェが戻って来たと思い込む〕。一方、酒造所では、アブチェが持ち前の大胆さから、少しトロい男の監視人の頭にリンゴをぶつけ、隙を見て、先に盗んでおいた拳銃を男に突きつける(2枚目の写真)〔最初に男女の監視人に会った時に、机に置いてあったのを見て盗んだ〕。男は、子供たちによって発酵用の樽に落とされる。南島に渡ったジョニーにも大きな異変が起きていた。息子が島にいることを新聞で知った母が、どうにかしてアルゼンチンまで来て、そこで水上飛行機を借り、助け出そうと飛んで来たのだ。そして、舟着場に赤いエレベーターボーイの制服を着た少年がいるのを見つけると、アブチェだと確信し、舟着場目指して強行着水する。ジョニーにとっては見知らぬ人なので抵抗するが、母は難なく抱き上げる(3枚目の写真)。それを対岸で見ていた女性の監視人は、「大統領子息の誘拐」と勘違いし、機関銃で母を狙って撃つ。飛行艇には当たったが、母には当たらず、弾が切れる。そして、飛行艇は無事 離水する。ラウラは、「置いていかないで」と叫ぶが、声が届くはずもない。最後に、南島では、大統領が群集に向かって演説し、「今日からリンゴ酒を飲むことを禁じる」と言ったものだから、その翻訳を聴いた人々が騒ぎ出し、群集クーデターとなってヨージアスは追われる身に転落。
  
  
  

アブチェは、狙撃銃を奪って酒造所から北島の荷台乗り場に走ってくる。荷台は来た時のまま残っていたが、動かすための鉄レバーが北島にはない。アブチェは、南島の鉄レバーを狙撃銃で倒して装置を動かそうとする。リンゴ酒の木箱を台にし、その上に狙撃銃を置いて狙うのだが、荷台が揺れてなかなか的が定まらない(1枚目の写真)。1回目は失敗するが、2回目で奇跡的に当たり、荷台は動き始める(2枚目の写真、全体の構造がよく分かる)。しかし、そこに、酒造所から女性の監視人が駆けつける。機関銃の弾は切れているので、駆動用のワイヤロープを受ける滑車に木の棒を挟む。お陰で、3分の1ほど来たところで、荷台は大きな衝撃とともに急停止。アブチェは振り落とされそうになり、何とか端にぶら下がる(3枚目の写真、本人がスタントをしているので大変そう)。
  
  
  

手だけでぶら下がっても、一人で上がることは、揺れる台の上では不可能に近い。さらに悪いことに、アブチェの下には2匹の人食い鮫が待ち構えている(1枚目の写真)。一方、飛行艇に乗ったジョニーは、前の操縦席に乗っているアブチェの母に、自分はジョニーだと英語で告げるが、大きな騒音も手伝ってなかなか伝わらない。ラウラはジョニーを助けようと、サーカスで培った綱渡りの才能を活かし、ロープに比べれば幅の広いH型鋼材の上をかなりの速度で歩いてくる。そして、荷台の上まで来ると、荷台の支柱を伝って降り始める(2枚目の写真、遠望なので本人のスタントかどうかは不明だが、実写であることに変わりはない)。荷台に降り立ったラウラはアブチェを引っ張り上げる〔揺れるし、他につかむ場所がないので、結構力が要る〕。無事、荷台に上がったアブチェに、ラウラは、片言英語で 「You, Jonny?」と訊く。「Jonny Cockle Smith? New York?」。アブチェはにやりと笑うと(3枚目の写真)、「You Laura? Me Abeltje」と、わざと片言英語で答える。引き上げたのがジョニーでなくアブチェだと分かったラウラは、ニヤリと笑うとアブチェを突き飛ばし、再び、「ぶら下がる」身に。アブチェは、「ごめん」と謝る。「何て言った?」。「ごめん」。「もう一度」。「ごめん」。アブチェは3回謝り、ようやく引き上げてもらえた。
  
  
  

アブチェは、スケボーにラウラを相乗りさせて町に向かう。途中で、ラウラは飛行艇のことを話す。町に入ったところで、2人は群集に追われて逃げているヨージアスを見かける。そこで、向きを変えるが、今度は、コックル・スミス夫人のピンクのキャデラックに行く手を阻まれる〔ニューヨークから短時間でキャデラックを島まで運ぶことは不可能だが…〕。2人は、エレベーターに向かってひた走る(1枚目の写真)。そして、中に入り、ボタンを押そうとするが、鍵がないことに気付く(2枚目の写真)。がっかりして座り込んだ2人。そこに、ヨージアスが逃げてくる。そして、中に入ると、2人の存在には気付かず、鍵を差し込んで緑のボタンを押す。如何に追われていたとはいえ、3人を見捨てるような行為だ。だから、空中に飛び出した後、振り返って2人を見た時にはびっくりする。「ここで何してる?」。「そっちこそ」。その時、アブチェは飛行艇を見つけ、エレベーターをそちらに向かって動かし始める。それを見たラウラは、こっそり鍵を回し、エレベーターは停止する。「何するんだ?」。「ユフラウを忘れてるわ」。ヨージアスは「放っておいて行こう」と勝手なことを言い出すが、アブチェは「戻ろう」と決断する。ヨージアスは鍵を奪おうとするが、2人は協力して鍵を守る。ヨージアスは、「お願いだ」とひざまずいて頼むが(3枚目の写真)、アブチェはエレベーターを町に戻す。
  
  
  

飛行艇の中では、ジョニーが、「New York, America」と叫び(1枚目の写真)、ようやくアブチェの母も何かが違っていることに気付く。事実を知ると、行動は早い。母にとってアブチェの救出は最優先課題。その場で、飛行艇を1回転させて向きを変えて島に戻る。エレベーターは、町の端で5人の男性合唱団を指揮しているユフラウに向かう。しかし、上空のエレベーターの動きを見て将軍の一行も駆けつける。エレベーターは将軍より早めに到着するが、突然ヨージアスにつかまれたユフラウが離れるのに抵抗したため、将軍が追いついてしまう。そして、エレベーターの開いたままの扉から床をつかみ、中に入り込む。エレベーターは将軍を乗せたまま上昇。動転した将軍は、ボタンを押そうとし、狭いエレベーター内でつかみ合いとなる。戻ってきた母は、遠方から、エレベーターの中にいる息子を確認する。しかし、力で優る将軍がボタンの付いた操作板をつかんで剥がすと、電撃が走り、エレベーターはその場で制御不能となり落下を始める。運の悪いことに、エレベーターがいたのは活火山の噴火口の真上だった(3枚目の写真、矢印はエレベーター)。母は、エレベーターがなすすべもなく火口に落ちていくのを見て 絶叫するしかなかった。
  
  
  

クノッツ・デパートで行われたアブチェらの葬儀。祭壇の前に置かれた「将軍一家」の写真を悲しそうに見ながら、ジョニーがエレベーターボーイの制服をしんみりと供えて席に戻る。横ではアブチェの母が泣いている(1枚目の写真、矢印はジョニー)。正面に映っているのが1階(P)のエレベーターの入口〔冒頭で、「P」の意味が不明だと述べた〕。右手にいる合唱団が「アメイジング・グレイス」を歌い始めると、ビルに激しい揺れが始まり、エレベーターの階数ランプが激しく点滅する。そして、緑の光とともに「P」のランプだけが点き、アブチェが扉を開けて姿を見せる。ジョニーは飛んで行ってアブチェとハイタッチ(2枚目の写真)。そのあと、アブチェと母が抱き合うシーンや、なぜかエレベーターから飛び出してきたキャデラックにちゃんとコックル・スミス夫人が乗っていて、ジョニーと抱き合うシーンもある。要は、ハチャメチャ。ナンセンスだが、結構楽しい〔だから受賞したのだろう〕。最後は、アブチェとラウラのシーン。アブチェは、ハート型のペンダントを取り出してみせる。「落としたフリしたんだ」と言ってニッコリ笑う。ラウラは、「私も持ってるわ」と言って、穴開きのハートのペンダントを取り出して首にかける。そして、アブチェの持っていたペンダントを取り上げ、自分の手で、アブチェの首につける(3枚目の写真)。お互いに頬にキスし合ってニッコリ。映画の最後は、銀髪のスラップがエレベーターの操作板を直し、アブチェに向かって笑いかけ、それに応えてアブチェがニッコリする(4枚目の写真)。スラップが緑のボタンを押すと、エレベーターは再び空高く登って行く。
  
  
  
  

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