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After.Life アフターライフ

アメリカ映画 (2009)

リーアム・ニーソン演じる葬儀屋のエリオットがサイコ・キラーとなり、クリスティーナ・リッチ演じるアナを「死んだ」と思わせて埋葬するホラー映画。この奇妙な映画の中で、チャンドラー・カンタベリー演じるジャックは、オープニング・クレジットで4番目に表示される。なぜ、そんなに順位が高いかというと、ジャックは最初、小学校の教師だったアナのクラスの生徒として登場し、最後は、エリオットの共犯者にさせられるという、またまた奇妙な役回りになっているからだ。この映画を観ていると、アナは交通事故で死に、一方、エリオットには埋葬される前の「彷徨える魂」と話す力があるのか、あるいは、アナは救急車の隊員により死んだと判定されただけで(常用している薬とショックで仮死状態にあった)、実際には生きていて、エリオットはそれを承知で楽しみながら生き埋めにしたのか、の判断を迷わせる作りになっている。これについて、MOVIEWEBに2010年4月7日に掲載された「監督とのインタビュー」では、観客に迷ってもらうことが一番の楽しみだったとしながら、監督自身にも、映画そのものにも「確答〔definite answer〕」があると答えている (つまり、上記のが正解)。「6つの手がかり〔clue〕があります」。あらすじでは、チャンドラー・カンタベリーの出演場面16ヶ所すべてと、6つ(以上)の手がかりを紹介するが(写真の左下に★印)、映画全体の紹介は行わない。

チャンドラー・カンタベリーは、孤独な少年から始まり、次第に不気味さを出していくが、飄々として過度の演技に走らないところが彼らしくて巧い。


あらすじ

映画は、アナと恋人ポールのベッドシーンから始まる。アナは気が乗らない。それは、アナが子供のころ、愛のない母親から、「誰かを愛してしまうと傷つく」と教えられたため、ポールが好きなのに、最後の一歩が踏み込めないでいて、そんな自分に嫌気がさしているからだ〔映画の最後の方で、告白する〕。アナは、そのまま、勤め先の小学校に行く。学校ではジャックが虐められていた。ジャックがヒヨコのいっぱい入ったケースを見ていると、そこに意地悪そうな2人が入って来て、「おい、ジャック」と呼びかける。「聞こえないのか、トンマ?」(1枚目の写真)。ジャックが答えないと、「ツンボなのか、トンマ? 口もきけないのかよ?」と首根っこをつかまれる。その声を廊下で聞いたアナは、ドアを開け、「こら、何してるの?」と詰問する。2人はすぐにジャックから離れる。ジャックは、「何でもありかせん、先生」と、虐められた生徒の定番的な返事をする(2枚目の写真)。「何でもない? そんな風には見えなかったわね」。そう言うと、アナは2人の悪ガキを追い出し、「ジャック、大丈夫?」と優しく尋ねる。ジャックは頷き、ヒヨコの方に振り返る。「これ、死んでるよ」。「どれ?」。ジャックが指を突っ込んで示す。「これ? 違うわ。怖がってるだけよ」と手に取って見せる(3枚目の写真)〔あとで、ジャックは、このヒヨコを家に持ち帰る〕
  
  
  

その後、複数の短いシーンが入るが、印象的なのは、アナが常備薬を濫用しているらしいこと〔薬の名前は分からない〕。そして、アナが誰もいなくなった学校から出て行くシーン。アナが教室から廊下に出る。出口まで数10メートル、真っ直ぐな廊下が伸びている。左はロッカーが並び、右は教室が3つ。アナが出口に向かって歩き始めると、天井灯が1つずつ消えていく。よく恐怖映画で見るパターンだ。アナは怖くなって出口に向かって走り始めるが、出口には鍵が掛かっていて開かない。「誰かいるの?」と怖そうに訊くと、いきなりすべての電気が点き、そこにいたのはジャック。「怖がらせちゃった、先生?」(1枚目の写真)。「鍵が掛かってて」。しかし、ジャックが出口のドアを引くと、すぐに開く(2枚目の写真)〔天井灯を順に消していくことなど不可能なので、誰もいないと思ったジャックは全ての照明を消しただけ、アナが精神のバランスを崩していて幻覚を見ただけであろう。だから、ドアもすぐに開いた〕。アナは、「帰らなくていいの?」。「ママが迎えにくるから」。「じゃあ、先生は行くわね」。「どこに行くの?」。「お葬式よ。ピアノの先生の」。「行ってもいい?」(3枚目の写真)。「だめよ、ジャック。お葬式はとってもプライベートなものなの」。「一度も行ったことがないから」。「いいことじゃないわ。それに、お母さんも心配なさるでしょ」。「あんまり」。アナはジャックを抱くと、「明日、クラスで会いましょ」と言って去り、ジャックはベンチに座って母の来るのを待つ〔結局、歩いて帰宅した〕
  
  
  

この先2節だけは、映画で一番重要な場面なので、チャンドラーは無関係だが 要点を簡単に説明しよう。まず、アナはピアノ教師の葬式に行く。そこで、アナは、葬儀屋でサイコパスのエリオットに、「生きることへの希望」を失った顔を見られてしまう(1枚目の写真)。かくして、アナはエリオットの次なる標的となった。その日の夜、アナはポールに呼ばれて行き付けのレストランに行く。ポールはそこで結婚を申し込み、婚約指輪を渡すつもりだった。しかし、愚かなポールは、話す順序を間違え、弁護士としての仕事ぶりが評価され、シカゴの本社に転勤になると話す。これを、別れの言葉と勘違いしたアナは、その後の話も聞かず、怒って席を立つ(2枚目の写真、矢印)。アナは心の底ではポールを愛していたので、「別れ話」には衝撃で、泣きながら雨の中を運転する。すると、1台の白いワゴン車が急接近してクラクションを鳴らし、いわゆる「煽り運転」をする(3枚目の写真、矢印は特徴的なドア⇒後で、これがエリオットの車だと分かる★)。事故の経過は明快には示されないが、結果的にアナは、致命的な事故に巻き込まれる。
  
  
  

アナは、葬儀場の地下にある死体安置所の台の上に横たえられている。エリオットはかけてあったシーツをめくる(1枚目の写真)。着ていた黒い服をハサミで切り、その下の赤い下着姿にした時、アナが目覚める。「ここはどこ?」(2枚目の写真)。「葬儀場だ。君は死んだんだ。君は事故を起こした」。アナの記憶に白いバンが無理に追い抜いていった時のことが蘇る。「トラックの積んでいたパイプが当たったんだ」。「死んでないわ」。「君は、8時間前に死を宣告された。血液は体の中を循環していない。脳の細胞はゆっくりと死んでいる。体は、腐敗し始めている」。「死んでない」。エリオットは1枚の紙を持ってくる。「これは君の死亡証明書だ。『死因: 広範囲の内部の外傷。死亡時間: 午後8時23分』。病院に着いた時には死亡している。担当医の署名はここだ」(3枚目の写真)〔従来、こうした場面だと、死亡判定のミスで、蘇生して生き返ったとお騒ぎになるのが定番なのだが、エリオットはアナと会話しているのに、それが当たり前のように平然としている。エリオットはアナが死んでいないことを承知の上で、アナには、「君たちはみな同じことを言う」と告げる。死んで葬儀場に運ばれてきた人間はいつも「死んでいない」と文句を言い、自分はそれに聞き飽きていると話すことで、「死んだ」と信じさせようと全力を傾ける。そのためには、体を動かせないように、また、実際に負っているケガの痛みを感じさせないように特殊な薬剤を投与しておいたのであろう〕
  
  
  

アナが死んだことを知らないポールは、連絡がつかないので、彼女が教えていた教室を訪れる。ポールがいきなりドアを開けたので、代行の教師に教室に入らないよう注意される。ポールは、婚約もしていないのに、婚約者と自己紹介し、「ここは彼女のクラスですよね?」と尋ねる(1枚目の写真)。「今日は来ていません」。「病気の連絡でも?」。「何も連絡がありません」。ポールは、謝ってドアを閉める。ジャックは、ポールの顔をしっかりと覚えた(2枚目の写真)。その後、ポールはアナの母親の家に行き、昨夜死んだと教えられる。涙にくれるポールに対し、「愛のない母親」は、辛辣な言葉でポールを追い払う。一方、地下室では、エリオットがアナの額の傷を縫合針で閉じている。アナは針を挿されても痛みを全く感じないが、それは死んでいるからではなく、何らかの薬によるもの。作業中に母親が遺体の確認に来たため、エリオットは、死んでいないのがバレないよう、筋肉弛緩剤を注射する(3枚目の写真)〔エリオットは、死後硬直を防ぐためと嘘をつく〕
  
  
  

家に帰ったジャックは、新聞に載ったアナの死亡記事をハサミで切り抜いている(1枚目の写真)〔葬儀の場所はここで知った〕。それが終わると、TVを観ている母に、「昨日は、僕を迎えに来ることになってたんだよ」と声をかける(2枚目の写真)。「ずっと待ってたんだ」。文句を言うなら、なぜ昨日言わなかったのかは分からないが、それを聞いても母はゾンビのような顔で全くの無反応。年も、ジャックの母にしては信じられないほど老けている〔この設定は最後まで謎のまま〕。一方、薬の効果のきれたアナは、寝かされていた台から起き上がり、脈を調べてみる。その結果、手を台に打ち付けるので、観客には脈がないように見えてしまう〔これは、監督が言っていた「確答」とは逆の「迷答」で、心拍数がゼロなら人間は死んでいる。アナが幻覚にでもとらわれていない限り、このシチュエーションは不可解だ〕。アナは外に出ようと扉まで行くが、鍵がかかっていて開かない。その時、ポールがアナにひとめ会おうと葬儀場までやって来る。しかし、親類ではないので、中に入ることを拒否される。ポールはエリオットに怒鳴り、その声をかすかに聞いたアナは、「ポール!」と叫んで扉を叩く(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

ポールが去った後、地下室に来たエリオットに対し、アナは、動けるし、息もしているので、事故の際は昏睡状態で医師が間違えたのだと主張するが、エリオットは「みんなそうだ」と誤魔化す。「話してるからといって、生きてるわけじゃない。私に特殊能力があるからだ」という、荒唐無稽な説明だ。そして、その能力は、彷徨っている魂を宥めて、安楽に埋葬できるようにするために使うのだとも。アナは、隔離された特殊な環境にいて、この言葉を信じ始める(1枚目の写真)。同じ頃、目が覚めたジャックは、棚の上に照明を当てたまま箱に入れておいたヒヨコを見に行く(2枚目の写真)。電気を消すと、ヒヨコはピヨピヨと鳴き、点けると縮こまって鳴きやむ。「怖いのかい?」(3枚目の写真)。箱は地下室、ヒヨコはアナを思わせる。
  
  
  

エリオットが、葬儀会場で後片付けをしていると、1人だけ残ってイスに座っている少年がいる。エリオットは、「手伝ってくれるかい」と声をかける。そして、飾ってある花を指して、「捨ててくれるかな?」と頼む。ジャックは、手に1本のバラの花を持ったまま前に行き、手伝い始める。「ホワイトホール夫人の知り合い?」。「テイラー先生の葬式だと思ったんだ」。「テイラー先生なら違う。金曜だ」。「今は、どこなの?」。「地下にいる」。「なぜ?」。「まだ準備ができないからだ」。そして、手に持ったバラを見て、「それは、先生のため?」と訊く。「僕の担任だったんだ」(1枚目の写真)。「君は?」。「ジャック」と言いながら、握手しようと手を差し出す。エリオットは嬉しそうな顔になって握手する。ジャックは葬儀の感想を訊かれた後で、「どのお葬式も同じ?」と訊く。「いいや、全部違う。それぞれが特別なんだ。死んだ人は、違ったやり方で話しかけてくるからね」〔ここだけ聞いていると、エリオットに超能力があるように受け取れる〕。「どういうこと?」。エリオットは話を打ち切る。「話せて楽しかったよ、ジャック」。このシーンの直前、アナが地下室の棚に置いてあったものを床に叩き落としたり、ガラスの棚を壊したりする場面がある。その破壊現場に初めて入ったエリオットは、「なぜ、こんなことをした?」と怒鳴る。アナは「これがアフターライフ〔死後の世界〕?」と訊く(2枚目の写真)。この場面も明白な手がかり。もしアナの意識が幻の存在で、体は死んで寝たきりなら、実際に物が壊れるはずがない★〔その後のシーンでは、部屋はきれいに片付いているが、アナが壊さなかった物だけカメラに収め、壊した物は映さないようにしている⇒アナが「壊した」のが幻覚だったように見せるため〕。エリオットは、用事があり、バンでどこかへ出かける。その際、うっかり鍵束を部屋に忘れ、それに気付いたアナは何とか扉を開けようとする。バンはガス欠寸前だったので、エリオットはGSに行くが、支払いの際に鍵にないことに気付き、フルスピードで戻る(3枚目の写真、矢印は特徴的なドア)。この映像で、アナを煽ったバンがエリオットのものだと分かる貴重なシーン★〔もっとクローズアップの映像もあるが、葬儀場の全景が写っているので、この写真にした〕
  
  
  

この間に、アナは地下室から何とか逃げ出していた。しかし、玄関まで辿りついてドアを開けた時、バンが戻って来て出られなくなる。アナは仕方なく2階に行き、あちこち捜してようやく電話を見つけると、すぐにポールに電話する。するとポールの部屋の電話が鳴り出す。絶望した酔っ払ったポールはなかなか出ていくれない。ようやく電話を取ったポールに、「私、ここよ。ポール、来て」「そこにいるの? 助けて」と必死で話す(1枚目の写真)。この場面、①ポールの部屋で電話が実際に鳴った、②ポールの受話器からアナの声が聞こえる、の2点から、アナが生命体として実在する証拠となる★。ただ、ポールは、悪戯だと思い 切ってしまう。電話に気付いたエリオットが部屋に現れる。彼は、「私なら、もっと気をつける。死者は、影響力を持つ。彼は、まだ君の存在を感じている。彼のことを愛しているなら、死を受け入れ 彼を解放するんだ」と、ご託を並べる。「なら、私が本当に死んだって証明してみせてよ」。エリオットは置いてあった全身鏡の布を外す。そして、自分の姿を見させる。エリオットが施した化粧で、死人のように見える。アナはゾンビのような自分を見て悲観する。「私、死んでる」。ところが、その部屋の窓のカーテンが開いていて、たまたま下を通りがかったジャックは、窓辺にいたアナを見てしまう(2・3枚目の写真)。これはアナが生きている明白な証拠★〔後で、エリオットは、ジャックにも特殊能力があると言って誤魔化す〕。そして、その直後、思わず吐いた大きな溜息でアナの鏡が曇る。アナは目を閉じていて気付かなかったが、それを見てヤバいと思ったエリオットは急いで曇った部分を拭う(4枚目の写真、矢印)。この行為〔息で曇ったこと。エリオットがこっそり拭ったこと〕も、歴然たる証拠★。
  
  
  
  

10。
  
  
  

ポールの顔馴染みの警官の兄が死に、葬儀場に安置されているので会いに訪れる。安置場所は地下室なので、少し離れた所にアナも眠らされて横たわっている。警官が最初入って来た時、アナの顔はまっすぐ上を向いていた。しかし、しばらく経って見てみると、顔が横を向いている(1枚目の写真)。これが生きている手がかり★になるかどうか確信はないが、わざわざ映している以上、意味はあるのだろう。次のシーン。ジャックが、ゾンビ状態の母に、「学校に行くね」と言い残し、自転車で墓地を突っ切って行く(2枚目の写真)。向かった先は学校ではなく、葬儀場だった。自ら先生を助けようと思ったのだろう。葬儀会場には、警官の兄が棺に納められて横たわっている。ジャックは、遺体に向かって、「どんな感じなの? 怖い?」と訊いてみる。しかし、この問いかけは、それを聞いたエリオットの格好の餌食となった。「君は死者の身になって考えてるな?」と声をかける。「彼らが君に惹かれるように、君も彼らに惹かれている。それは類い稀な力だ」(3枚目の写真)。さらに、「君は、アナを見たね?」と訊く。ジャックは頷く〔先手を取るのは実に巧みなやり方〕。「怖かっただろ?」。頷く。「怖がらなくていいんだ。キリストも同じ力を持っていた。ラザロを生き返らせ、死者と話した」。「テイラー先生と話したの?」。「ああ」。「他の人とも話した?」。「そう、多くの人と」。「最初に話したのは誰だったの?」。「母親だった」。そして、「怖がっちゃダメだ。他の人間には理解できん。我々が見るものが彼らには見えないからな。私が助けてあげよう。いろいろと教えてあげる」。これでジャックはエリオットの成すがままだ。
  
  
  

次のシーンで、運転中のポールが、ショーウインドーに赤い下着が飾ってあるのを見て、アナとベッド・インした最後の日、アナが真っ赤な下着を付けていたことを思い出す。これは、ジャックの話と100%結びつく。ポールは、葬儀場に急行する。しかし、エリオットは、「ジャックは11歳ですよ。その年頃の子は、想像力が逞しいものです」と相手にしない。「ジャックは、本当にアナを見たんだと思う」。「見たんだと信じたいだけでしょう」。ポールは、相手をしていても始まらないと思い、制止を振り切って建物の中に入って行く。しかし、地下室には鍵がかかっていて中には入れない。中にいるアナは、麻酔が効いて朦朧としているので、返事をする気力すらない。鍵を開けろと迫るポールに、エリオットは、「警察を呼んで欲しいのですか?」とはったりをかます。ポールは「手間を省いてやる」と言い、自ら警察に赴くが、エリオットはちゃんと先手を打って警察に電話していた。だから、気心の知れた署長も、ただの「ご乱心」だとして、相手にしない。一方、アナは、葬儀用に母親が置いていった黒いレース服を着せられる。そして、最初の節に書いたように、ポールに対する本心をエリオットに打ち明ける。「私が愛した ただ一人の男性だった。でも、それを口にすることはできなかった」。それを聞いたエリオットは、遅くないから会いにいけと口にするが、アナにはそんな気力は残っていなかった(1枚目の写真)。「君は死が怖いと言い続けているが、実は生きる方をもっと怖っている」。「死ねて嬉しいわ」。その後、ジャックが、墓地の中を歩いていると、墓穴の底に入って寸法を測っているエリオットに遭う。「教えてあげると言ったよね」。エリオットは手を差し出す(2枚目の写真)。ジャックが一歩引いたのを見て、「これはただの穴だ」と言う。「テイラー先生の?」。「その通り。ここがいるべき場所だ」。「死んだから?」。「そうじゃない。先生の中には、もう『生命』がないからだ」。「どういうこと?」。エリオットは、埋葬される前の死体は勝手に歩き回り、したい放題をする たちの悪い存在なので、埋めるしかないと教える。そして、「2人でやろう」とショベルを渡す(3枚目の写真)。
  
  
  

葬儀の直前、筋肉弛緩剤を注射されて意識を失う前に、アナは、最後に「自分の化粧された死に顔」を見たいと希望する。エリオットは手鏡を渡す。アナは、自分の顔を見ながら、「これで終わりなのね」と言い、溜息をつく。すると、また、吐いた息で鏡が曇る。今度は、鏡を見ていたのでそれに気付き、まさかと思い、指でこすってみる(1枚目の写真、矢印は指でこすられてできた筋)。アナが生きている明らかな証拠だ★。アナは驚き、「嘘をついてたのね」と言うが、エリオットは、妄想だの一点張りで、すぐに首に注射を打つ。そして葬儀(2枚目の写真)。最後にポールが署長に付き添われて現れる。ポールが渡すはずだった婚約指輪をアナの指にはめた時、アナの口が僅かに開く(3枚目の写真、矢印)。これは偶然なのか、それとも生きている証し★なのか?
  
  
  

葬儀が終わった後、ポールはジャックと目が合うと、「生きてたって言ったよな」と生気のない顔で非難する。「生きてたなんて言ってない。『見たって』って言っただけだよ」(1枚目の写真)〔ポールは気付いていないが、ジャックは、「見た」ことは否定していない〕。ポールは、「乗ってくか?」と訊く(2枚目の写真)〔アナの母親の家でのパーティへ〕。ジャックは首を振る。「じゃあな」。車に乗ったポールに、ジャックは、「コールマンさん、シートベルトするの忘れないで」と妙なことを言う(3枚目の写真)〔伏線〕。何も言わずにポールはドアを閉める。パーティの場で、ポールがしたことは、呷(あお)るように酒を飲むこと。エリオットが、「飲み過ぎだと思いませんか?」と諌めても、「うるさい」の一言。「コールマンさん、少しは敬意を払ったらどうです?」。「彼女が死ななかったこと、知ってるぞ」。「アナは、事故の後でも生きていたと思うのですか?」。その後、急にエルオットの発言が変化する。「あなたは正しいのかも」。この意外な言葉に、ポールは 無視していたエリオットの顔を見る。「多分、まだ生きてるのかも。なぜ、ご自分で確かめに行かないのですか? 彼女が死んでるか、生きてるか、調べるために」。この挑発的な言葉にポールは激怒する(4枚目の写真)。「このサイコ野郎」。「もう、ほとんど時間がありませんよ」。その言葉で、ポールは飛び出して行く〔実は、これはエリオットが周到に用意した罠だった。アナをバンで煽ったように、ポールを言葉で煽ったのだ〕
  
  
  
  

一方の、アナは、墓穴に入れられた棺の中で目覚める。そして、自分の置かれた立場を悟り、必死で内側から蓋を叩き、「助けて!」と叫ぶ。しかし、棺の上からどんどん土が投げ込まれていく(1枚目の写真)。一方、ジャックも家の庭でヒヨコの埋葬を行っていた。まだ生きているヒヨコを紙の箱に入れると、「怖がるなよ」と声をかけ、「この方がいいんだ」と言うと(2枚目の写真、矢印の下に箱)、上からスコップで土をかける〔アナとヒヨコの対比が怖い。ジャックは、エリオットと同じことをしている!〕。アナを生き埋めから救おうと、全速で墓地に向かうポールは、ジャックが注意したのにシートベルトをしていない。次から次に遅い車を抜き、カーブにさしかかった時、追い越そうと反対車線に強引に入ったポールの前に、対向車のライトが…(3枚目の写真)〔とっさにハンドルを切り、道路から飛び出して木に衝突する〕
  
  
  

衝突シーンは映されない。代わりに、救急車が道路を走っていく。道路脇に停まった白いバンの中にいるのは、エリオットとジャック。エリオットが、シューベルトのピアノ三重奏曲第2番の第2楽章をかける。ジャックは「終わったの?」と尋ねる(1枚目の写真)。「ああ、ジャック、終わったよ」。その後、ポールが墓地に駆け込み、必死に棺まで穴を掘り、アナを救い出す。意識を取り戻したアナはポールと抱き会うシーンがある。しかし、それは、すべて死につつあるポールの想念に過ぎない。葬儀場の地下室で、台の上に乗せられたポールが覚醒する。胸の部分は血で真っ赤だ。「ここは、どこだ?」。「君は、葬儀場にいる。君は、死んだ」。「死んじゃいない」。「君は車で事故を起こした。道から逸れて木にぶつかった」。「アナを見たぞ。お前、生きたまま埋めたな」。「君は墓地には着けなかった。アナにも会えなかった。君は死んだ」。「死んでない」。そこに、ジャックが、レイピア(刺突用の片手剣)のようなものを持って現れる。それを手にしたエリオットは、「君らはみんな同じことを言う」と言い(2枚目の写真)、1メートル以上ありそうな先の尖った細い棒をポールの胸に当てる(3枚目の写真)。そして、一気に刺し込んでいき、ポールの目が閉じる〔このラストシーンは、監督のインタビューとも矛盾している。①もし、ポールが検視後に死体として送られてきたとすれば、本当に死んでいるので、こんな言動はしない(アナの場合は生きていたのを、死んだように思えせたから話せた)。②もし、ポールが重傷だが、手違いで死亡宣告され、地下室で生き返ったとしたら、本当に殺したことになる。①も②もありえない。それに、ジャックは何のためにいるのだろう? 「教える」と言っても、エリオットには死者と話す特殊な力などない。ただのサイコパスだ。ジャックをサイコパスにするつもりなのか? どうみても、この不可解なエンディングには無理がある〕
  
  
  

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