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Cache cash キャッシュを隠せ

フランス映画 (1994)

如何にもフランスらしいコメディ映画。ハリウッドのようにドタバタにはならないが、楽しい笑いがちりばめられている。主演は11歳のアントワーヌを演じるオーレリヤン・ウィーク(Aurélien Wiik)と10歳リザを演じるジョセフィーヌ・セール(Joséphine Serre)。メインテーマは、題名の通り、銀行強盗が埋めた大金を見つけたアントワーヌが それを隠すというものだが、それにリザとの幼い恋愛が絡み、2人一緒に家出して海のリゾートまで行くというおまけ付き。この後半の部分は、『リトル・ロマンス』(1979)で、幼い2人がヴェネツィアに向かうのを何となく思い出させる。純粋に子供向きの作品だが、途中で大人同士のセックスシーンが映像として挿入されているのは、不適切としか言いようがない。

アントワーヌは3年ほど前に母を亡くし、忙しい父によってソローニュ地方(ロワール川の南に拡がる5000平方キロの「森と池の平原」)にある祖父の農場に預けられている。彼の単調な生活は、近くの町デュイゾンで空前の銀行強盗があり、犯人の目撃者となったことと、時を同じくして祖父のコテージを借りた一家に可愛い少女リザがいたことで一変する。アントワーヌはリザに強く惹かれる。しかし、リザの、農場で飼育している野生の動物に対する「撃たれるために育てるなんて可哀そう」という考え方は、彼には意外なものだった。強盗のあった翌日の深夜、アントワーヌが毎晩寝ている池の端のツリー・ハウスの近くの小さな島に、強盗たちが盗んだ4000万フランを埋めにくる。誰も見ていないはずの秘密を、アントワーヌは目撃し、そのお金を奪って隠してしまう。警察に届け出なかった理由は、一味の中にリザの父が入っていたから(逮捕されたらリザが可哀そう)。翌日、アントワーヌは、リザのために大好きなイノシシを柵から逃がしてやり、祖父からひどく叱られ、閉じ込められる。リザの父は、アントワーヌが大金を移す途中で落としてしまった札束を見て、故郷のカナダにリザを連れて逃げようと決心し、アントワーヌと別れたくなくて反対するリザを叩く。こうしてお互いの祖父と父に失望した2人は、ツリー・ハウスに逃げ込むが、「あんなトコにいたくない」というリザの言葉を汲んだアントワーヌは、「うんと遠くへ」行こうと決心する。向かった先は、3年前に母と最後に旅をしたフランス南西端の高級リゾート地ビアリッツ。盗んだお金の一部を拝借したアントワーヌは、リザと豪勢な半日を送る。しかし、アントワーヌにお金を盗まれたことを知った強盗のボスは、ビアリッツに向けて追跡を開始する。また、農場でのアントワーヌの守護神のような怪力の女性クレマンスも、アントワーヌからの電話を受けて単身ビアリッツに向かう…

オーレリヤン・ウィークの映画初主演作。撮影時12歳。ノルウェー系のフランス人。現在でも、主としてTVを中心に俳優として活躍している。


あらすじ

映画の冒頭、主人公の11歳のアントワーヌが野生の小鹿と戯れるシーンがタイトルバックに流れる。これで主人公が田舎で暮らしていて、心の優しい少年であることがわかる。1枚目の写真を珍しく題名と合わせたのは、笑顔が一番良かったのと、凝った題名を見せるため。フランス語で “cache-cache” は「隠れんぼ」を意味する。これと、スペル・発音が似た英語由来の “cash” を組み合わせることで、「現金を使った隠れんぼ」という内容が読み取れる仕組み。題名表示では、両端の2文字を太くして “cash” を強調している。因みに “cache” の発音は、正式には「カシュ」。だから、題名は「シュ・ャシュ」。邦題は、この発音と意味を加味し、「ャッシュをくせ」の「き」と「か」でまとめた。さて、その後、場面は近くの町デュイゾン(Dhuizon)のオープンマーケットに替わり、ウラジミール・コスマの軽快な主題曲が流れる(https://itunes.apple.com/mx/album/cache-cash-bande-originale-du-film-de-claude-pinoteau/956527295 の3つ目をクリック)。そこに、アントワーヌが2人の女性と一緒に現れる。1人は、がっしりした体の中年のおばさんで名前はクレマンス。アントワーヌが暮らしている祖父の農場のNo.1の働き手。超怪力の持ち主。もう1人はクレマンスの姪ルイゼットで、家事を手伝っている。だから3人は町まで買出しに来ている〔朝の9時頃。夏休みの期間〕。アントワーヌは買ったものを運ぶお手伝い。学校の友達が、父親が屋台に並べているトマトを手に取ると、いきなりアントワーヌの顔にぶつける(2枚目の写真)。怒ったアントワーヌは、買い物袋から生卵を2つ取り出すと友達に向かって投げるが、そこに「現金輸送車」と書かれた車が割り込んできて、卵はフロントガラスに命中(3枚目の写真、矢印が助手席の男マックス)。ワイパーがウォッシャー液で卵を洗い落とすと、助手席から睨む男の顔が見える。アントワーヌは山羊の後に隠れて見つかるまいと必死。
  
  
  

現金輸送車が去り、アントワーヌがホッとしていると、いきなり耳をつかまれる(1枚目の写真)。相手は警官で、「刑務所に放り込んで欲しいか?」と脅される。「ワザとやったんじゃ…」。「今度やったら両親に注意するぞ」。トマトをぶつけた友達は、申し訳ないと思ったのか、井戸水で顔を洗うのを手伝う。しかし、そんなことでアントワーヌは許さない。隠し持った卵を相手の頭に叩きつける(2枚目の写真)。そして、2人は仲良く別れる。すると、ハイティーンの不良2人がルイゼットに近づき、お尻をさわって絡む。間に割り込んで救おうとしたアントワーヌが鶏(生きている)を売っている木の囲いの中に投げ飛ばされると、それに気付いたクレマンスが柵を踏み倒して助けに入る(3枚目の写真)。その後、クレマンスはアントワーヌを虐めた男をつかみ上げると、腹に強烈な頭突きを食らわし、そのまま地面に押し倒す。2人組は逃げて行く。その時、サイレンを鳴らしたパトカーが、近くにあった銀行に乗りつけ、警官が中に飛び込んでいくのが映る。
  
  
  

パリの「シャルリー・エブド」〔2015年1月7日の襲撃事件で知られる週刊新聞〕で働いている父のところにアントワーヌから電話が入る。4000万フラン〔約7億8000万円〕の銀行強盗が目の前で起きたので、興奮状態だ。「きっと、パリからいっぱい新聞記者が来るよ」(1枚目の写真)。父も記者なので、来て欲しいという願いがこもっている。しかし、父は週間新聞なので、「それなら次の木曜だな。話せて良かったよ」とすげない。アントワーヌはがっかり。父は、2年10ヶ月前に母を亡くしている。アントワーヌが、いつから、どのくらいの頻度で祖父の家に来ているのかの説明は一切ない。しかし、大きなツリー・ハウスもあることから、小さな頃から祖父の家によく滞在し、母を亡くしてからはずっと暮らしているらしいことは想像がつく。父があまり会いに来ないことも〔デュイゾンは、パリの南南西約150キロ/父が東京、アントワーヌが静岡市といったイメージ〕。父は、1ヶ月近く会ってないことを思い出し、電話をかけ直す。そして、週末に行くと伝える。アントワーヌの機嫌が急に良くなる。次のシーン。時刻が11時少し前なので 翌日であろう。アントワーヌがクレマンスに連れられて立派な警察署に入って行く。署に入ると、待っていたのは、耳をつかんだ警官。パリから来たという重罪犯担当の警部〔1995年までは制服を着ていない警部という階級があった〕に引き合わされる。そして、「マーケットでバンに卵を投げたろ?」と訊かれたので、アントワーヌは真っ青。しかし、それは杞憂で、アントワーヌが卵をぶつけた現金輸送車に乗っていた2人が銀行強盗。アントワーヌには その顔を見た可能性があるので、「来ていただいた」のだ。アントワーヌは、アイスクリームをもらい、舐めながら、犯罪者の写真集に見入る。かなりめくったところで、舐めた拍子にアイスクリームの半分が写真の上に落ちる(2枚目の写真、矢印)。警官が、ペーパーナイフで落ちたクリームを取り始めると、アントワーヌは、ハッとしてペーパーナイフを借りる。そして、ワイパーで徐々に卵が取れていった状態を再現する(3枚目の写真、矢印)。その写真の男が、助手席に乗っていたマックスだった。「彼だよ」。「確かか」。「うん、ぜったい」。アントワーヌは警部に感謝される。
  
  
  

アントワーヌがツリー・ハウスの上からビデオで撮影をしている〔ツリー・ハウスは、かなり大きな木に作られている(イライジャ・ウッドの『8月のメモワール』を思わせる)〕。ビデオでも白黒画像なのは、ビューファインダーがまだ白黒の時代だからなのだろうか?〔調べてみたら、国産品では1992年からカラー化が始まる〕。ツリー・ハウスからは池が一望でき、そこに設けられた長い桟橋から全裸の女性が飛び込む姿も撮影してしまう。そこに従兄のジャンがジープで乗り付けて「アントワーヌ」と怒鳴って呼ぶ(1枚目の写真)〔ジャンは祖父の農場を任されている。ジャンの父がどうなったのかは不明。奥さんはいない/従兄といっても、最初は伯父かと思ったほど年が離れている〕。「カメラ盗んだの、お前か?」。「必要だったんだ」。「触るなと言ったろ! 降りて来い!」。ジープに乗ったアントワーヌは、水辺のサギを撮っていたら、全裸の女性が池に飛び込んだと話す。従兄は信じようとしないが、ジープで桟橋まで来ると、脱いだシュミーズが置いてある。「これで信じるよね?」。さらに、美しい女性が水面から顔を見せ、「ちょっと後ろを向いていて」と頼む。OKの声がかかって2人が振り返ると、シュミーズ姿の女性が、「暑かったから我慢できなかったの」と話す。従兄は、この池は私有地内にあるので遊泳禁止だが、「あなたが何も着ずに泳ぐのなら、目をつむりましょう」と、結構きわどい発言をする。一方の女性は、家を借りた時、池で楽しんでいいと業者に言われたと話す。この言葉で、彼女が 祖父のコテージの新しいテナントと分かり、独身の従兄は にこやかに自己紹介する(2枚目の写真)。女性の名前はクレア。そして、「またね」と言うと、池の端に立って、「リザ?」と呼ぶ。「お父さんが来たわよ」。乗用車が近づき、従兄はアントワーヌの撮ったビデオを嬉しそうに見る。「ね、嘘じゃない。嘘なんかつかないよ」。その時、リザが顔を見せ、アントワーヌの目はそちらに釘付けになる。そこに父親が車から降りて挨拶に来る。リザは、もっとここにいたいと言い出すが、一人では危ないと父は反対。従兄は、先ほどのアントワーヌの顔を見ていたので、恩返しとばかりに援軍を繰り出す。「後で、私が送って行きますよ」。これで、誰もが満足する結果となった(3枚目の写真)。
  
  
  

従兄はリザを農場に乗せて行く。そこから先は、アントワーヌとリザの2人だけ。アントワーヌは動物の囲いに案内する。最初のフェンスの中にはキジが20羽ほど入っている。アントワーヌは、狩猟のシーズンになったら自由にすると説明する。自由になってもハンターに撃たれるだけだ。次に行ったのがイノシシの囲い(1枚目の写真)。グレグワという名前のイノシシはアントワーヌのお気に入りで、コーラをガブ飲みするのが大好き。「撫ぜていい?」。「待って。その前に紹介しなきゃ」。アントワーヌはイノシシの横に立ち、「グレグワ、あれはリザ」と言い、リザに「幾つ?」と訊く。「10よ」。イノシシに「10歳だって」と教える。「パリに住んでるの?」。「ううん、モンレアル」〔そういえば、フランス系住民が圧倒的に多い都市なのに、なぜ日本では英語標記でモントリオールと書くのだろう?〕。「カナダ人?」。「そうよ」。リザは、柵の中の他のイノシシを見て、「いつか、撃たれるために出されるんでしょ」と悲しそうに言う。「それが当たり前なんだ」。「当たり前だと思うワケ?」。「そうさ。それが狩猟なんだ」。リザは戻りたいと言い出す。アントワーヌは家の方に戻る。その時、祖父が 地主のマダムと一緒の姿が見える。私は農業については知識ゼロなので、この表現に驚いた。マダムが “la propriètaire du domaine(地所の所有者)” であるのに対し、祖父は “s'occupe de la ferme(農場の世話係)”。これでは小作農になる。戦前の日本、あるいは、フランス革命を思い出させる言葉だが、2013年の論文(Desriers, M.: Un essais de synthèse statistique sur le foncier agricole en France. Une situation de plus en plus complexe dominée par le fermage”, Pour, no. 220, pp.77-88,2013)を見てびっくりした。フランスの小作農地は全面積の76.4%にも達すると書かれている! 次にアントワーヌの目に入ったのはクレマンス。「世界一の強い女性なんだ。シュワルツェネッガー観たことあるだろ? 彼より強いんだ。誓ってもいい」(2枚目の写真)「一度もボディービルなんかしてないだぞ」〔シュワちゃに対する皮肉?〕。その時、従兄がトラクターで近づいて来て、アントワーヌに、「お父さんから電話があった。来られないって言ってた」と伝言する。これにはアントワーヌもがっかり。リザが心配して “Ça va?” と訊き、アントワーヌが “Ça va?” と答える。英語のOKに近いが、本当に便利な言葉だ。2人は森に向かって歩きながら話し合う。アントワーヌの話で重要な点は、父からもらった夜光双眼鏡を持っているということ。リザの話で重要な点は、さっきの女性クレアはリザの母親ではないということ。2人の前に野生の小鹿が現れる。映画の冒頭、アントワーヌと遊んでいた鹿だ。アントワーヌは森の中で罠にかかったキツネを見つけ、罠を外してやる(3枚目の写真)〔後で、獣医にところに持って行く〕
  
  
  

従兄がリザを送って行った後、アントワーヌはクレマンスからしつこくリザのことを言われる。「恋したの?」。「からかってる?」。「名前を言ってみて」。「話したじゃないか」。「もう一度」。そこで、アントワーヌが「リザ」と言うと、言い方が違ったので「やっぱり恋してる」と、はやし立てる。アントワーヌは、「そっちこそ、ムチャクチャ言って」と照れ隠しの反論(1枚目の写真)。その時、祖父が大声でクレマンスを呼ぶ。彼女が中に入ると、祖父が重い棚を動かそうと必死になっている。棚の上に置いた200フラン札がなくなったので、棚の後ろに落ちたと思ったのだ。クレマンスが簡単に棚を動かすが、そこにはなかった。ポケットにも財布にもなかったので、次に疑われたのはアントワーヌ。祖父に呼ばれたアントワーヌは、「200フラン札〔約3900円〕、見なかったか?」と訊かれる。そして、返事も待たずに、「白状して返したら、忘れてやる」と犯人扱い(2枚目の写真)。「何も盗ってないよ」。「ポケットを見せろ」。従兄が、「また盗んだのか?」と言ったので話がややこしくなる。「盗んだんじゃない、借りただけだ!」〔ビデオのこと〕。祖父は立ち上がると、「昔、わしが父から5フラン盗んだら、ベルトで叩かれた」と言い、自分のベルトを外そうとする。アントワーヌは「盗んでないったら!」と怒鳴ると、体罰を待たずにその場を立ち去る。祖父は、「3週間小遣いなしだぞ!」と後姿に向かって怒鳴る。証拠もなしに疑ってかかるとは、実に嫌な人間だ。その夜、アントワーヌはツリー・ハウスで一夜を過ごす。夜明け前になり、飼っているオウムがキーと鳴き、翼をバタつつかせる(3枚目の写真、矢印はオウムと翼)。
  
  
  

アントワーヌはオウムの鳴き声で目を覚ます。すると、何者かが池でボートを漕いでいる。さっそく、夜光双眼鏡をつかんで目に当てる(1枚目の写真)。モーターボートだが、静かなエンジン音でゆっくり走っている。ボートが小さな島に接岸したのを見届けると、アントワーヌはそっと梯子を降り、岸に置いてあった丸太にうつ伏せに乗ると、手で漕いで小島に向かう(2枚目の写真)。小島では、3人がシャベルを使って穴を掘っている。アントワーヌが水草に隠れて見ていると、警察署で銀行強盗だと確認した男マックスがいる。もう1人は現金輸送車を運転してした男だろうが、3人目は何とリザの父親だった。彼が祖父のコテージを借りたのは、このためだったのだ。アントワーヌは愕然とする。水鳥が羽根をバタつかせ、アントワーヌが見つかりそうになる場面もあるが、幸い気付かれずに済んで3人は小島を離れる。アントワーヌは入れ替わるように上陸し、柔らかい土を掘り起こす。中には大きな黒いビニール袋が埋めてあった。アントワーヌがナイフで袋を切って手を突っ込むと、出てきたのは帯付きの500フラン札(3枚目の写真、矢印)。盗まれた4000万フランがここにある!
  
  
  

アントワーヌはビニール袋をかつぐと、桟橋の横から岸にあがる。しかし、ナイフで破いた穴から、先ほど取り出した帯付きの500フラン札が顔を覗かせている(1枚目の写真、矢印)。札束〔約100万円弱〕は、茂みの中を通過した時、地面に落ちてしまう。アントワーヌはお金をどこかに隠し、明るくなってから自転車で農場にやって来る。そして、イノシシの囲いまで行くと、グレグワを呼び寄せ、話しかける。「よく眠れたか? 僕はあんまり寝てない。泥棒してたから。そうなんだ、僕は泥棒さ。僕を見ろよ。お前がこれまで見た中で一番の金持ちだぞ」(2枚目の写真)「銀行強盗のお金なんだ。お前だったらどうする? 返すか? そうしたいんだけど、リザがいる。昨日会わせてやったろ。あの子の父さんがグルなんだ。もし刑務所に入れられたら… どうすりゃいいんだ、グレグワ。もし、このまま持ってたら? 何でも買えるぞ」。そして、最後に、「パパがここにいてくれたら…」。朝食の用意ができたのでキッチンに入った時、そこにはクレマンスしかいなかった。アントワーヌはお金のことを打ち明けようと、「話がある」と切り出す。しかし、クレマンスは昨日の祖父の200フランのことを白状するのかと思い、200フランを祖父に渡して万事解決したから〔どこかに落ちていたとでも言ったのか?〕、「後で返してね」と笑顔で話す。アントワーヌは、クレマンスにまで疑われたのかと憤慨してその場を立ち去る。後から入って来た従兄が、「銀器にご用心」と意地悪な冗談を言ったことも、それに輪をかけた。その日のランチは池の端で、リザの一家を招いてのものだったので、アントワーヌも顔を出す。アントワーヌはリザと一緒に座るが、目は、リザの父をずっと睨んでいる(3枚目の写真)。
  
  
  

話題は、4000万フランがあったら? 祖父は、農場の地所を買い取って自分のものにすると言い、従兄はアフリカにサファリに行くと話す。使い途を訊かれたリザの父は、「国境なき医師団やテールデゾム〔国際児童保護NGO〕に寄付する」と、心にもない嘘を平気でつく。アントワーヌは、リザに泳ごうと誘われて桟橋に行く。アントワーヌ:「お父さん、何してるの?」。リザ:「知らない。どうして?」。「訊いただけ。よく知ってるの?」。「誰を?」。「お父さん」。「なんでそんなこと訊くの? 今日、ちょっと変よ」。「変な夢を見たんだ。お父さんが、銀行強盗して、仲間と一緒にお金を隠す夢」。リザは、面白がって、そのことを父に話そうとしたので(1枚目の写真)、アントワーヌは慌てて止める。「どうして?」。「どうしても」。「ホントに変なのね」。「よく寝てないんだ。変じゃないって」。水着に着替えたアントワーヌが戻る途中で、愛犬が寄ってきたので、咥えていた棒を取って投げてやる。そして、ふと地面を見ると、帯付きの500フラン札が落ちている。池で泳いでいるリザが何度も呼ぶので、アントワーヌは札束を茂みの奥に投げる。アントワーヌが桟橋のたもとまで来ると、桟橋の先端で泳いでいたクレアが「タオルを持って来てもらえない」と声をかける。アントワーヌがバスタオルを手に取ると、愛犬が札束を咥えて寄って来る。アントワーヌは慌てて口から奪い取る。すぐ近くでは、リザの父が祖父と話しているし、クレアからは催促の声がかかるので、切羽詰ったアントワーヌは札束を近くにあったバッグ〔クレアのもの〕に突っ込む(2枚目の写真、矢印)。そして、タオルを持って桟橋の先端まで走って行く。すると、意地悪な従兄がアントワーヌのパンツを引っ張って脱がすので、そのまま池に落ちてしまう。札束のことが心配なアントワーヌはじっとバッグを見ている(3枚目の写真)。すると、バッグの中を覗いたクレアの顔が変わる。目線は、桟橋の先端で泳いでいる従兄に向かう。そして、リザの父と一緒に車に戻って行く。埋めたはずのお金が、なぜかバッグに入っている。これは、あの男がお金を全額盗み、かつ、意図的に入れたに違いない…
  
  
  

アントワーヌは家に戻ると、誰もいないのを確かめて、父に電話する。相変わらず忙しそうだ。「他の電話の最中だ。タンザニアでクーデターだ。すぐに飛んで欲しいと言われてる」。「僕、4000万盗んだよ、パパ」。「何だと?」。「デュイゾンの銀行強盗、覚えてるよね。僕がお金持ってる」(1枚目の写真)「強盗がお金埋めたの見て、取り上げたんだ」。父は、「来週の水曜にそっちに行くから、大笑いしょう」と言って、取り合わない。「ホントだよ!」。「せいぜい楽しんでろ。できるだけ早く行く。じゃあな」でバシャリ。次のシーンは、どこかの小さな町。先日の警部が部下を連れて小さなホテルに入って行き、マックスの写真を見せる。1号室ではマックスが猫にミルクを飲ませようとしている。2人はドアの前に張り付くが、部下が猫アレルギーでクシャミ。マックスは、すかさず窓から出て、警部たちが乗ってきた車の屋根に飛び降り、車を盗んで逃走する(2枚目の写真)。次のシーンは、祖父のコテージ。リザの父とクレアが話している。クレアは、従兄のジャンが札束をバッグに入れたと思い込んでいる。それを受けて、リザの父が「なぜ君のバッグに金を入れたんだ?」と質問する。「あたしが好きだから」〔ジャンは、クレアに愛想を振りまいていた〕。「くそ泥棒め」。「お金を盗んで、あたしも手に入れたいのよ」(3枚目の写真)。その後の話で、今回の強盗事件への協力はクレアが言い出したことが分かる。リザの父はビジネスマンだが、2年間で2回破産し、悪の道に走った次第。だから、お金がなくなったことがバレたら殺されるとオロオロする。クレアの方が大胆で、ジャンを垂らし込んでお金を奪おうと考える。
  
  
  

クレアは早速ジャンに会いに行き、夫がパリに行っていないから、池を案内して欲しいと、色仕掛けで誘う。鼻の下の長いジャンは、クレアをゴムボートに乗せて池に漕ぎ出す。クレアは、ジャンがどんなつまらないことを言ってもニコニコしているので、ジャンはすっかりその気に。一方、アントワーヌはリザをツリー・ハウスに案内する。「すっごい。あんたが作ったの?」。「そうさ。僕の家だ。毎晩、ここで寝るんだ。誰にも言うなよ」。その頃、ジャンは、マックスが4000万フランを埋めた小島に、「ガキの頃、『宝島』って呼んでたんだ」と言いながらボートをつける。クレアは、あまりにも偶然なので、当然下心があると考える。そこで、「宝物といえば、小っちゃな贈り物ありがと」と探りを入れる。ジャンには何のことか分からない。クレアは、ジャンがワルなので、しらばくれていると思う。そこで、さぐりを入れたり、さそい水をかけたりしているうちに、強引で野卑なジャンがクレアの胸をはだけてしまう。一方、ツリー・ハウスでは、木の幹に貼ってある母の写真のことを、「3年前、ビアリッツで撮ったんだ〔英仏海峡沿いの有名なリゾート〕。最後のバカンスだった。2ヶ月後に死んじゃった」と説明している。悲しくなったアントワーヌは、すぐに話題を変え、「夜光双眼鏡 覗いてみないか? 夜見えるようにできてるけど、ここを押すと、昼間でも見えるんだ」と言い出す。リザはさっそく覗いてみる。最初はカエルを見ていたが、向きを変えると、視野に入ったのはクレア(1枚目の写真)。「クレアが、あんたの従兄の上に乗ってる」。アントワーヌが双眼鏡を取って見てみる。そこで見えたのは2人のセックスシーン。思わず、「ウソだろ〔Oh, putain〕」と言って、リザの方をチラと見る(2枚目の写真)。小島では、コトが済んだ後、クレアが「びっくりさせてくれるんでしょ?」と催促する。どうやら、コトの前に、ジャンがそう約束したらしい。そして、ジャンが袋から出してみせた「びっくり」は、何とナチュラルホルン〔バルブ=ピストンがないホルン〕。そして、いきなりそれを吹き始める。クレアは、これで、ジャンがただの好色の田吾作に過ぎないことを思い知らされる。怒ったクレアはさっさと小島を引き払う。一方、農場では、シャツから200フランが出てきたとクレマンスが祖父を責めている〔アントワーヌは嘘をついていなかった〕。農場に戻って来たアントワーヌとリザ。「普通は、男が女の上に乗るんだ。逆だってことは、彼女が願ったんだ」。「分かってる」。「何で知ってる?」。「先月10歳になったのよ」。リザは涙が止まらない。「なぜ、泣いてる? あれ見たからか?」。「違う、気にしてない〔Mais non, je m'en fous〕! 彼はハクチ〔crètin〕で彼女はバイタ〔guidoune、カナダ方言〕よ!」(3枚目の写真)。「何だって?」。「バイタ」。「それ何?」。「知らないの?」。「ううん。カナダ語?」。「誰とでも寝る女」。「ここじゃ、売春婦って言うんだ」。「カナダでもよ」。
  
  
  

アントワーヌは、リザを慰めるために思い切った決断をする。リザが、動物を狩猟の対象にするために飼っているのは可哀そうだと言っていたのを思い出し、柵を開けてグレグワを逃がしてやることにする。「出るんだ、グレグワ!」(1枚目の写真)。出ようとしないので、近くにあったドラム缶を叩き、脅して逃がそうとする。しかし、ドラム缶を叩いたことで、不審に思った祖父が駆けつける。結果的に、グレグワは逃げ出すことができたが、アントワーヌは祖父に頬をぶたれる。リザはコテージに戻されるが、そこでは大喧嘩が起きていた。マックスが逮捕されかかったことで、リザの父は即刻カナダに向かうと言い出すが、クレアはお金を取り戻すまで帰らないと宣言する。そこに帰ってきたリザは、父から、「お前は、カナダのお母さんに家に戻るんだ」と言われる。あまりの急な話しにリザは驚く。「もう、ここには いられなくなった。すぐ用意して来なさい」。「今、帰りたくない」。「反論はなし。言われた通りにするんだ」。「来たばかりじゃない!」。「怒らせるんじゃない!」。「アントワーヌにさよならも言ってない!」。リザは頬を引っ叩かれる。「荷物だ。5分で用意するんだ!」。怒ったリザは2階の自分の部屋に行くと、窓から抜け出す(2枚目の写真)。一方のアントワーヌ。グレグワを逃がした罰で、無慈悲な祖父によって小屋〔アントワーヌの部屋〕に閉じ込められる〔鍵をかけられる〕。アントワーヌはベッドに横になって考えると、ベットサイドの母の写真を見、次に窓を開け、誰もいないことを確かめる。そして、バッグパックを背負うと、窓から逃げ出す(3枚目の写真)。
  
  
  

アントワーヌがツリー・ハウスに登っていくと、そこには先客がいた。リザが、「待ってたわ〔Je t'attendais〕」と迎えてくれる。「めった打ち〔raclèe〕にされたんだ」〔柵の所でぶたれた後で更に叩かれたことになる〕。「痛かった?」。「ぜんぜん」(1枚目の写真)。リザは、自分も父に叩かれたと話す。リザ:「あんなトコにいたくない」。「一緒に行こう」。「どこへ?」。「うんと遠くへ」。「素敵だけど、お金がいるわ」。「持ってるよ」(2枚目の写真、矢印は3年前の母の写真)「4000万あるんだ」。アントワーヌは、古木の又にできた窪みにビニール袋を隠してあった。袋を開け、「ちょっぴり頂戴しよう」と言い、映っただけで6束〔600万円分〕をバッグパックに入れる(3枚目の写真、手には3束、矢印の先に黒のビニール袋)。「これで何でもできるぞ」。リザは、「姿を見たの?」と尋ねる。「誰の?」。「お金を埋めた連中」。「ううん、暗かったから」。
  
  
  

リザの父は、娘がアントワーヌに会いに行ったと思い、車で農場にやって来る。そして従兄に事情を話すと、従兄はツリー・ハウスに案内する。リザの父は、①木が池の端に立っていて、そこからお金を埋めた小島が見える、②アントワーヌは毎晩ここで眠る、の2点を聞かされ、お金を盗んだ犯人がアントワーヌだと確信する。そして、ツリー・ハウスに登ってまず目に入ったのは、銀行の現金袋に付いていたタグ。これで犯人は100%確定した。そこには、クレマンス宛の手紙も置いてあった。リザの父:「開けよう」。従兄:「だけど、クレマンス宛だ」(1枚目の写真、矢印は手紙)。「2人がどこに行ったか知らないと」。手紙には、「クレマンス、リザと僕は出て行くよ。悪いことだと知ってる。だけど怒らないで。無茶しないから。できるだけ早く電話するね。心配しないで。じゃあね〔Je t'embrasse〕」と書いてあった。その2人、自転車に相乗りして森の中を走っている。その後、どうやって行ったのかは分からないが、直線距離で70キロほど西南西にあるトゥールのサン・ピエール・デ・コール(Saint-Pierre-des-Corps)駅まで行き、TGVに乗ろうとする。駅の切符売り場でビアリッツまでの往復切符を2枚買う。相手が子供なのに、なぜか、係員は、①親がいないことも訊かず、②いきなり1等かと尋ねる。料金は2072フラン(2枚目の写真)〔約4万円〕。アントワーヌは片手を広げて「5」という合図。リザはアントワーヌの肩のバッグパックから500フラン札を5枚取り出す(3枚目の写真)。因みに、サン・ピエール・デ・コールからはボルドーのサン=ジャン(Saint-Jean)駅まではTGV、そこからはTER〔在来線〕になるので時間がかかり、最短でも所要時間は4時間を超える。リザの父は、携帯電話でクレアに事態を報告する〔1994年のフランスの携帯普及率は2%〕。話を聞いたクレアは、一緒にカナダに行くから5分で用意すると言って電話を切る。そして、部屋に行き、隠し場所から帯付きの500フラン札を取り出したところにマックスが現れる。マックスは、クレアたちが小島に隠した4000万フランを2人が奪ったと思い込む。クレアは、子供たちが盗んだと打ち明ける。5分後にリザの父がコテージに着いた時には、血まみれのリザの服が部屋の真ん中に吊るしてあった〔このことが何を意味するのか、さっぱり分からない。マックスはリザの写真を持って子供たちの後をつけるので、クレアの話を信じたことは確かだが、クレアは二度と映画には現れない〕
  
  
  

農場では、祖父が、「警察に知らせないと」と言い、従兄が、「待ったほうがいい」と言い返している。サン・ピエール・デ・コール駅には、なぜかマックスが現れ、切符売り場でリザの写真を見せて、2人が家出したから捜していると話す。係員はビアリッツまで行ったと教える。そして、バッグパックから500フラン札を取り出したことも。一方、TGVに乗ったアントワーヌは、すぐにクレマンスに電話をかける〔50度数のテレカルトを持っていなかったので、ボックスから出てきた人から500フランで買い取る〕。アントワーヌは、クレマンスに、「心配しなくていいよ。すぐ戻るから。2・3日 出かけるだけ」と話す。クレマンス:「みんな心配してるわよ。どこにいるの?」。「モンバゾン… 違う、ソリニーだ」〔モンバゾンは、サン・ピエール・デ・コール駅から10キロの町、ソリニーはその先5キロにある町〕。「どっちなの?」。「どんどん動くから… TGVに乗ってるんだ」(1枚目の写真)。驚いて最終目的地を訊いたクレマンスに、従兄には言わないと約束させた上で、ビアリッツのオテル・デュ・パレ(Hôtel du Palais)だと教える。ビアリッツで最高級の5つ星ホテルだ。電話が終わると、クレマンスは約束を守り、頼りにならない2人には行き先を告げるのを拒否する。「私が捜しに行く。あんたたちには会いたくないそうよ」。さらに、祖父に向かって、「あなた、自分のポケットを調べもせず泥棒扱いしたでしょ」、従兄に向かって、「あんたは、文字通りのバカ〔con〕よ」と非難。最後に「手紙は私宛て。行くのも私よ!」と宣言する。怪力の持ち主なので、2人とも逆らえない。列車から降りたリザは、「ホテルはどうするの? 子供だけだと変に思われるわ」と心配する。アントワーヌ:「電話すると、相手は僕のこと 『マドモアゼル』って呼ぶんだ」。次のシーンで、ホテルの予約係が、「ボンジュール・マドモアゼル」と返事している。それを聞いたアントワーヌは、「ほらね」という顔をする(2枚目の写真)。「こちら、メシニャック氏の秘書です。今夜2部屋ありますか? 子供たちと一緒です」。「申し訳ありませんが、スイートしか空いていません。5000フランです〔約10万円〕」。「それで結構です。予約して下さい」。なりすましが巧くいって、2人は大喜び。ホテルにはタクシーで乗り付ける。ロビーは、オテル・デュ・パレでのロケ(http://hotel-du-palais.com/visite360/tour.html でホテル内の各所が360度で見られる〔中央の×をクリックして消し、左下の■に似た印をクリックすると、見たい場所が画面下に一覧表示される〕)。2人の最後の関門はフロント。アントワーヌは、父は用事ができたので、先に行って待ってるように言われたと話す(3枚目の写真)。予約が入っているし、相手は子供なので、手続きなしで部屋に案内してもらえる。部屋はホテルで一番豪華な部屋ではないが(先のサイトで見られるSuite Royale Edouard VIIは芸術的)、部屋から出られるパノラマテラスは広くて素晴らしい(ここだけ別のスイートなのか、共用なのかは不明)。テラスの手すりにもたれた2人はまるで恋人同士のよう(4枚目の写真)。因みに、5枚目の写真は、先のサイトで、Terrasse Panoramiqueを選んだもの〔4枚目の写真の場所の全景〕
  
  
  
  
  


部屋に戻ったアントワーヌは急に悲しくなる。3年前、このホテルに母と来たことを思い出し、涙がとまらなくなる。女の子に涙を見せたくないので、アントワーヌはソファに横になり、両手で両足を抱え込んで丸くなっている。それを察したリザは、アントワーヌの頭を膝に乗せると、「男の子が泣いてもいいのよ。女の子だって同じ。泣けば気分がすっきりするもん」と優しくいたわる(1枚目の写真)。ホテルのフロントにマックスがやってくる。そして、部屋番号を訊き出すと、驚かせてやるからと言って、連絡させずに部屋に向かう。同じ頃、元気になったアントワーヌは、「お腹空いた?」とリザに訊き、「ぺこぺこ」という返事を聞くと、「町で一番のレストランに連れてくよ」と言って部屋を出る。片やエレベーター、片や階段を使ったので、両者はすれ違わずに済んだ。アントワーヌは、コンシェルジュにレストランのことを訊く。「バスク料理の専門店ならシベルタがお勧めです。すごくいいレストランですよ」。「予約しておいて」(2枚目の写真)。アントワーヌたちが出た直後にマックスがやってきて、行き先を訊き出す。レストランでは、メニューを持ったアントワーヌに、メートル・ドテルがお勧め料理を述べている。「ヤリイカのラビオリ、ビネグレットソース。ズッキーニとタイムの香りの豚の前足…」。アントワーヌは よく分からないので、「全部もらうよ」。「全部?」。「うん、おいしそうだもん」。メートル・ドテルは、「ご両親は知ってるのかな?」と不安がる。アントワーヌは、パパはボートで用があると言って、500フラン札をそっとテーブルに置く(3枚目の写真)。これだけ多額のチップをもらえば、顔がほころび、何でも言う通り。
  
  
  

2人の飲物はコーラ。最初の料理はヤリイカのラビオリ。かなりの量だがペロリと平らげた上、パンでぬぐって皿をきれいする。3皿目まで映るが、マックスは、レストランの外で惨めにホットドックをかじっているのが面白い。その頃、クレマンスがビアリッツの駅に到着する。レストランでは、アントワーヌが、山のように生クリームがのったデザートを食べている。しかし、リザはぼうっとしてあらぬ方を見ている。「もう食べないの? 何を見てるの?」。「ロブスター」。そして、「茹でられる前の檻ね」と言う(1枚目の写真)。この、助けてやって、というサインを受け止めたアントワーヌは、メートル・ドテルに全部もらうと告げる。次のシーンでは、大きな容器いっぱいのロブスターを2人のコックがタクシーに入れている。そして、子供たちと一緒に海岸に向かう。マックスもタクシーで追う。海岸に着くと、コックはロブスターを海に帰してやる。それを見ているリザはすごく満足げ。帰り際にアントワーヌが1人に1枚ずつ500フランを渡す(2枚目の写真、矢印)。それを上から見ているマックスは面白くない。大事なお金がどんどん無駄に失われていく。アントワーヌは海との仕切りの壁のような場所の上に立つと、バックパックを掲げ、「これ、好きにしていいよ」とリザに訊く。「世界中の檻だって開けられる。誰にもぶたれない。これを見せればみんなお辞儀する。君より年は上だけど、君の方が大きいんだ。4000万持ってるからね。僕たち何だってできるんだ」。そう言うと、アントワーヌは1束の500フラン(100枚)を海に向かって投げる(3枚目の写真)。DVDの表紙にもなっている有名なシーンだ。それを上から見ているマックスは腹が立って仕方がないが、警官がいるので降りていけない。
  
  
  

なぜかリザに元気がない。「どうしたんだい?」。「あんたのしてること、好きじゃないの」。「いっぱいあるじゃないか」。「そうじゃない。こんなことすべてが気に入らない。海の見えるスイートより、あんたのツリー・ハウスの方が好き。お札をばらまいてるより、あんたと一緒に森にいたい。年をとらずに、もう少しこのままでいたいの」(1枚目の写真)「戻りましょ、アントワーヌ」。これは愛の告白でもある。一方、クレマンスはレストランまで辿り着く。農場にはアントワーヌの父が来ていた。そこにアントワーヌから電話がかかってくる。父が電話に出て、「もしもし」と言うが、返事がない。無言電話だ。父は直感でアントワーヌだと悟る。そこで、返事がなくても、話しかける。「アントワーヌ、お前か? もし、そうなら、聞いて欲しい。私は農場にいる。タンザニアには行かなかった。クーデターなんかどうでもいい。大切なのはお前だ。誰もお前を叱らない。逆に、お前は私を思い切り叱れ。最後にもう一つ言わせてくれ。愛してるよ」。ここで、アントワーヌが、初めて「パパ」と口をきく(2枚目の写真)。「僕たち戻るよ。最初の汽車で」。「どこにいるんだ?」。「ビアリッツだよ。楽しかった。オテル・デュ・パレに行き、シベルタで食べたんだ」。「お金はどうした?」。「話したじゃない。銀行強盗の4000万、盗んだんだ」。「ホントなのか?」。ここで、テレカルトの残数がゼロとなり警告音が鳴る。父は、「いいか、もしホントにお金を盗んだのなら、危険だ。すぐ警察に行きなさい」と必死で言うが、もう聞こえていない。辺りは暗くなりかけている。時刻表を見たアントワーヌは、次の汽車が21時30分だとリザに話す〔こんなことはありえない。TGVと接続するビアリッツ発の最終電車は2018年7月末の日曜で17時発(到着は22時03分)、当時もそれほど違いはないはず(5時間以上かかるのでトゥール着が午前3~4時になる)〕。「それまで何しよう?」(3枚目の写真)。目の前には賑やかな遊園地があった。
  
  
  

2人は、ライド式のお化け屋敷に入る。マックスが、すぐに後を追って中に入り〔ライドが出て来た時に、開いた扉から無理に侵入する〕、それを見ていたクレマンスも、次のチャンスで侵入する。ライドは、両方から手が出てきて、結構気持ち悪い(1枚目の写真、矢印は化け物の手)。2人の乗ったライドが突然停止し、リザがマックスにさらわれる。アントワーヌはすぐに後を追いかけ、「リザを放せ!」と叫ぶ。マックスは、「お遊びは終わりだ」と言うと、リザにナイフを突きつける。アントワーヌはバックパックを外すと、「金は持ってけ。リザを傷つけるな!」と言って、マックスに差し出す(2枚目の写真、黄色の矢印はバックパック、ピンクの矢印はリザ)。しかし、こんなはした金でマックスは満足しない。バックパックを叩き落とすと、「残りを返せ!」と迫る。アントワーヌは、「助けて!」と叫ぶ。そして、その声を聞きつけたクレマンスが、正義の味方よろしく現れる。そして、腕で思い切り張り飛ばすと、マックスは、ペンキの貯まったタンクに落ちていく(3枚目の写真)。
  
  
  

ラストシーンはパリの空港で。リザは1人でカナダに帰ることになり、アントワーヌと父が見送りに来ている。父は、呼びに来たエアフランスの係員に、「あの子のお父さんは入院中なんだ。重病でね、10年はかかるんだ」と説明する。「10年も?」。「リハビリとかナンかを入れてだよ」。アントワーヌは、「カナダまで会いに行くよ。チケット代くらい残しておけばよかった」と言って、リザを笑わせる(1枚目の写真)。「パパ、刑務所は長いかしら?」。「知らないな。長いかもね」。「可哀そうだけど、仕方ないわね」。係員から声がかかる。2人は立ち上がる。「書くの苦手だけど、毎日書くよ」(2枚目の写真)。この後、リザは変なことを言い出す。「カナダじゃ、ヘリコプターで脱獄するのよ」「あんた、幾つになったら免許取れる?」「パパを刑務所に置いとくの可哀そうだわ」。アントワーヌには、この謎かけの意味がようやく分かる。「僕に、また柵を開けさせたいのかい?」(3枚目の写真)〔動物を逃がす〕
  
  
  

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