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Cuernavaca クエルナバカ/鬼の祖母かクズの父か

メキシコ映画 (2017)

母を失った少年が家族間の軋轢に苦悩するドラマ。主役のアンディ少年を演じるのは、エミリオ・プエンテ(Emilio Puente)。社会性や問題提起などはなく、唯一、「現代」を感じるのは、映画の中で携帯が重要な役割を果たしていることぐらい。映画の冒頭で母が死ぬという設定は、子役が主演する映画ではよくあるパターンだが、中南米らしさを感じるのは、それが事故死や病死ではなく、アイスクリーム店を襲ったギャングに撃たれるという治安の悪さによるもの。母が意識不明になった段階で、アンディは、今まで存在も聞かされていなかった祖母(父方)のいるクエルナバカの荘園に連れて行かれる。映画の冒頭、母とのシーンに父が出てこなかったのは、父が出所後に住所不定だったため。祖母は、そんな「敗残者になったぐうたら息子」に強く失望していたため、孫にあたるアンディにも厳しい態度で臨む。そして、アンディには、父はすぐ来ると嘘をつき、住所不定の父を真剣に捜す気など一切ない。待ちくたびれたアンディは、携帯にあった番号をたどって何とか父に連絡を取るが、現れた父は、ダメ人間の典型だった。父が現れたことで祖母はますます「鬼」のようになり、一方の父は何の行動もとってくれないどころか、こちらもますます「クズ」らしさを暴露していく。アンディは、祖母の家を出たくてたまらないのだが、父は不祥事を起こして逃げ出してしまう。そして、アンディ自身も、自らが招いた不祥事に巻き込まれていく…

アンディに父はいるが、メキシコシティでは母と2人で暮らしている。離婚しているわけではないが、父とは滅多に会えない。アンディは、気が弱く、そんな自分が少しでも強くなるため、スーパーマンのようなケーブを大事にしている。そんなある日、母と一緒に入ったアイスクリーム店に強盗が押し入り、母は運悪く撃たれてしまう。母は意識不明のまま入院し、アンディは、クエルナバカに住む祖母の荘園に連れて行かれる。アンディは、それまで、自分に祖母がいるなどとは聞かされていなかった。刑務所に入るような父を、その母親であるアンディの祖母は、廃嫡同然に扱っていたため、これまで縁がなかったのだ。アンディが祖母の荘園に来た翌日に、重体だった母は死亡する。そして、アンディは、カナダに住む母方の伯母が迎えに来るまでの「預かり所」と言われて、荘園で暮らすことになる。アンディは父に会いたいと祖母に頼み、祖母もすぐ現れると答えるが、一向に姿を見せない(母の葬儀にすら現れなかった)。母を失ったアンディの悲しみは大きいのに、祖母は、悲しみを忘れさせるためと称して、雑用をさせたり、自分の荘園の収入源であるグアバのジャム作りを無理矢理に手伝わせる。祖母には、知的障害のある心の優しい娘(アンディにとっては叔母)がいて、その存在は、規律一本槍で情の全くない祖母と違い、アンディに安らぎを与えてくれた。また、荘園で働くチャーリーという若者は、アンディを親しく構ってくれ、ぽっかりと開いたアンディの心の穴を埋めるのに貢献してくれた。しかし何と言っても、アンディが一番に求めていたのは、父に会うこと。祖母が全く協力してくれない中で、アンディは何とか父の携帯を発見し、その中の通話記録から情報を得ようとする。しかし、携帯はテレホンカードの残量がゼロで動かず、やがて充電も切れて全く反応しなくなる。そのリカバリーを打診されたチャーリーは、その時点では、不祥事のため解雇されていたので、荘園に「入らせる」ことを条件に直してやると提案する。どうしても父と会いたいアンディは、深く考えずに条件をOKし、携帯を渡す。携帯は動くようになり、父とも通話でき、父は荘園にやってくる。最初は、幸せ一杯だったアンディだったが、父の「ギャンブル依存症」が大失態を招き、自ら荘園を出て行ってしまうと、捨て鉢になる。そんなアンディに、チャーリーは約束を果たせと迫る。アンディが深夜、門を開けると、そこにいたのはチャーリーだけでなく、「ギャング」と呼ばれる4人の仲間も一緒だった。4人は館内を荒らし回り、現金を求めてチャーリーとアンディは祖母の部屋のある2階に向かう。しかし、途中で叔母に遭い、チャーリーは叔母を撃つ。幸い叔母は軽傷で済んだが、アンディは祖母に見限られ、全寮制学校に入れられることになる。絶望したアンディの前に、なぜか父が再度現れる。父は、これからどうするか目論見もないまま、アンディを強引に連れ出そうとする。祖母の説明では、それは、アンディをカナダの伯母に渡すためだった。アンディはそれを承知で、荘園に残ってもいいと譲歩する祖母の申し出を拒絶し、父と一緒に出て行く。

この映画の「売り」は、何と言っても主演のアンディを演じるエミリオ・プエンテの存在。きれいなブロンドなので、メキシコ生まれのメキシコ人なのだが、人種としては北欧系か東欧系? 映画には、初出演で初主演。暗い感じの場面が多いので、悲しい表情が多いが、演技はしっかりしている。映画の中での設定は12歳だが、出演時は13歳くらいかもしれない。同年に公開されたショートムービー『Satán』では、どう見ても15歳以下には見えないので(下の写真)、この映画は公開の数年前に撮り終えていたのかもしれない。
   


あらすじ

映画は、主人公のアンディが時々見る悪夢から始まる。夢の中で、アンディは地面に落ちて割けたグアバの実に群がる毒蟻〔アカカミアリかヒアリ〕を見ている(1枚目の写真)。毒蟻は手にも上がって来て、驚いたアンディは目が覚める〔アンディの夢は 「過去の悪夢」 がほとんどで、未来を予兆するような夢はこの1回限り/毒蟻は、アンディや母に襲いかかる「不幸」を象徴している〕。びっくりして目が覚めたアンディは、ベッドの脇に置いてある父の写真を見て心を落ち着けると(2枚目の写真、矢印は父、その左は小さい頃のアンディ)、ベッドに戻ってシーツを頭から被る〔父は、クエルナバカ(アンディの住んでいるメキシコシティの南南西約50キロ)にいると聞かされているが、実は一時刑務所に入っていた〕。朝が来て、アンディは母に起こされる。アンディは、悪夢のこともあり、かつて父にもらったスーパー・パワーのコスチュームを着てみたくなるが、母は子供っぽいのでやめさせる(3枚目の写真)。
  

学校まで車で送っていった母は、休日に誰か友達を招くようにと言って別れる。しかし、学校でのアンディは、ケンカをしている生徒を避けるようにPSPで遊んでいて(1枚目の写真)、その姿からは孤独感が漂う。学校が終り、迎えに来た母から、「お友達は?」と訊かれると、「ケープがないから」と弁明する。母は、今朝の言葉が失敗だったと気付き、アンディをコスチュームショップに連れて行き、スーパー・パワーの赤いケープを買ってやる〔スーパーマンに似ている〕。2人は、それを持ってアースクリーム店に行く(2枚目の写真、アンディが手に持っているのが、赤いケープの入ったパッケージ)。母は、社会勉強に、お金を渡してレジで支払いを済ますよう頼む。アンディは、赤いケープを持っていきたがるが、母は止めさせる。そこに突然、数名の強盗が拳銃を構えて入ってくる。母は、赤いケープのパッケージを胸に抱えたまま、強盗の標的にされる(3枚目の写真)。
  

レジにいたアンディは、床に伏せて「ママ!」と叫び(1枚目の写真)、母は「アンディ!」と叫ぶ。その時、銃声が聞こえる。カットシーンが小刻みに入る。床を這って母の方に向かうアンディ。「早く!」という叫び声。救急用ベッドで運ばれる母に付き添うアンディ。しかし、アンディは、ERの前で入室を禁じられる。そこにいた病院のスタッフが、アンディに、「君のママかい?」と訊き、そうだと答えると、待合室に連れて行く。どのくらい待たされたのか分からないが、やがて同じ人物がやって来る(2枚目の写真、アンディは、撃たれた時に母が抱いていた赤いケープのパッケージをしっかり抱いている)。スタッフは、アンディをERのドアまで連れて行き、ベッドで寝ている母の姿を入口から見せてくれ、意識不明の状態だと教える。事務室に連れて行かれたアンディは、「他に家族はいる?」と訊かれ、「パパは、クエルナバカにいて、時々会いに来てくれます」と答える。「電話番号、知ってる?」。アンディは首を振る。「他に家族はいるかな?」。「伯母がカナダにいます」。恐らく、調べるのに数時間かかったのだろう。アンディがPSPで遊んでいると、1人の男が紙を持って入って来る。アンディが「パパはどこ?」と訊くと、男は「来られません」と答える。スタッフは、「君の家族が、この人を迎えに寄こしたんだ。一緒に行きなさい」と告げる(3枚目の写真)。車に乗せられたアンディは、赤いケープのパッケージを抱きしめたまま、不安そうにドアにもたれている。迎えにきた男(運転手)が「私を覚えてますか?」と訊いても、黙ったままだ。
  

アンディが、大きな荘園の前に着いたのは、もう暗くなってから。玄関に、「パパ?!」と言いながら飛び込んで行ったアンディの前に現れたのは、中高齢の女性。いきなり、「私が誰だか分からない?」と尋ねてくる。アンディは首を振る。「祖母の話、聞いてないのね?」。「パパ、ここにいないの?」(1枚目の写真)。「いないわ。でも、すぐに来るから、心配しないで」。アンディは寝室に連れて行かれる。ベッドが2つ置いてある。「こっちに寝なさい。もう1つはパパのよ」。部屋の中の大きなチェストの引き出しの中には、父の子供時代の服がとってあり、どれでも着ていいと言われる。祖母は、アンディと一緒にベッドに座ると、「きっと大丈夫よ」と慰める(2枚目の写真)。そして、遅い夕食。祖母は、「強盗のこと、話してちょうだい。お前もそこにいたんだね?」と訊く。アンディは頷く。「何事もなかったなんて奇跡だね」。「ママは無事かしら?」(3枚目の写真)。「もちろん大丈夫。絶対よ」。アンディの向かいの席には、叔母が座っている〔病院でアンディが話したカナダの伯母は「母の姉」。こちらの叔母は「父の妹」〕。このデリ叔母は、知的障害者で、自分の部屋に子猫をいっぱい飼っている。心の優しい女性だ。
  

その夜、アンディは犬の吠える声で目が覚め、ベッドの下に隠れて夜を過ごす。朝、明るい太陽の光で目が覚めたアンディは、窓ガラスを滝のように流れる水に驚き、何が起きているかこっそり覗く。外では、庭の手入れの手伝いをしている半裸の若い男が、ホースで水を撒いている。窓ガラスをきれいにするため、庭だけでなく窓にも水をかけていたのだ。この男が、後でアンディと親しくなるチャーリー。その後、アンディがPSPで遊んでいると、祖母が入って来て、「朝食の時間よ」と言い、「こんな物はためにならない」とPSPを取り上げる。「返してよ」。「没収するわ。ここを出ていく時に返してあげる」(1枚目の写真、矢印はPSP)。アンディに暗雲が漂い始める。祖母の行動は、重体のママを心配する孫に対し、自分の信念だけを押し付ける 一方的で情け容赦のないやり方だ。次は、朝食後のシーン。アンディが女中に連れられて庭に出て来る。女中は、そこにいた庭師に、「ご主人が、坊っちゃんに何かさせるようにって」と伝える(2枚目の写真、左端にいるのがチャーリー)〔子供を遊ばせておくのはもっての他と思っているだけなのか、あるいは、瀕死の母のことを考えさせないよう 仕事で忙殺させようという方針なのかは分からないが、何れにせよ、すべてを「上から目線で」押し付けるやり方は 優しさに欠けている〕。庭師は、下働きのチャーリーに対応を任せる。チャーリーは、「何があったか聞いたよ。ママはすぐに良くなるって」と慰めた上で、雑草の抜き方をやって見せ、「やってみて」とスコップを渡す。アンディが1本抜くと、「上手いじゃないか、賢いな」と褒める(3枚目の写真)。そして、2人は草取りを始める。
  

雑草抜きを終えたアンディが、初めての区画に入って行くと、デリ叔母が芝の上で遊んでいる子猫を優しく捕まえている(1枚目の写真)。アンディは、それを葉陰から見ている(2枚目の写真)。叔母は、すぐ前の建物に入って行く。そこは、叔母が子猫たちを飼っている場所だった。叔母は、アンディがこっそり覗いているのを見つけると、「アンディ、入って」と声をかける。それでも、入って来ないので、入口まで迎えに行き 子猫の棚の前まで連れて来る。子猫は1匹ごとに棚の個別の仕切りの中に入れられている。アンディは黒い子猫を抱いてみる(3枚目の写真)。
  

アンディと叔母が、食堂でじゃれ合っていると、そこに難しい顔をした祖母がやって来る。そして、「ママが亡くなった」と告げる。事故のまだ翌日だ。アンディは母の死に目にも会えなかった。寝室に戻ったアンディは、再び赤いケープの入ったパッケージを抱く(1枚目の写真)。翌朝、女中が 葬儀用にアンディの髪を整える。そして、すぐに墓地での埋葬シーン。大勢の参列者の中に、肝心の夫(アンディの父)の姿がない(2枚目の写真)。アンディを優しく労わっているのはデリ叔母。アンディの右が祖母、さらにその右で花を持っているのが伯母(アンディの母の姉)だ。葬儀が終わっても、アンディは悲しみのあまり、1人離れて座っている(3枚目の写真、矢印は伯母)。伯母は近くに寄って来ると、「あなたの祖母と話したんだけど、私と一緒にカナダで暮らすのがベストだと思うの」と話しかける。しかし、アンディは、それを無視し、つかつかと祖母の元に歩み寄ると、「僕を、パパと一緒にクエルナバカに連れてってよ!」と頼む。祖母:「伯母さんと一緒に行った方がいいわ」。「いやだ!」。こうして、アンディは再び祖母の荘園に戻ることになった。ただし、車の中で祖母は、「お前が荘園で暮らすのは、伯母さんがカナダに連れて行くための書類を用意する間だけですよ」と念を押す。アンディは何も答えない。荘園の玄関で、アンディは、「なぜ、パパは来なかったの?」と祖母に訊く。「すぐに来るわ」。祖母の言葉を信用できなくなったアンディは、建物の中に駆け込む。夕食を、「お腹が空いてない」と言って中座したアンディは、祖母の寝室に直行し、電話帳と電話機を無断で持ち出して自分の寝室に行く。そして、電話帳で「Andrés(Hijo〔息子〕)」と書かれた番号に電話する。相手は留守録になっていた。しかし、留守録になる前の数回の呼び出し音が部屋のどこかから聞こえる。アンディは何度もかけ直し、遂に父の携帯を発見する〔映画では写らないが、アンディはその後すぐに電話帳と電話機を返しに行ったに違いない〕。アンディは着信履歴の2番目に電話をかける。すると、「有効期限が切れました」の自動音声が流れる。その夜のアンディの悪夢は、母が毒蟻に襲われ「アンディ!」と叫ぶものだった。
  

翌朝、朝食時、アンディは、「パパにどうやって電話かけたの?」と尋ねる(1枚目の写真)。「携帯によ。いつも旅先だから」。「最後にかけたのは、いつ?」。「昨夜よ。尋問されてるみたいね。言ったでしょ、すぐ戻るって」。アンディには、祖母が嘘をついていて、それは最初からで、一度も父と話したことなどないと分かった。庭に出て行ったアンディは、怒りを爆発させ、そして、芝生の上に丸くなり、「父の携帯」を宝物のように抱える(2枚目の写真)。チャーリーは、その姿を見つけ、心配して声をかける。「おい、アンディ、どうした?」。アンディは他に頼る者がいないので、思わず抱きつく(3枚目の写真、矢印は父の携帯)。
  

翌朝、祖母の態度が変わる。いつも通り 暗い中で寝ていると、祖母が部屋に入って来るなり、「いつまでも寝てちゃダメでしょ」と言って、カーテンを開ける。そして、「さあ、ほら、起きて」と無理矢理に起こす。アンディは、ベッドに座ると、「パパはどこにいるの?」と訊く(1枚目の写真)。「知らないわ。いつも旅行してる」。そして、「明日から、ジャム作りを手伝ってもらうわよ」と命令する。アンディは、朝食後、デリ叔母の子猫に会いに行く。元気のないアンディを、叔母は優しく撫でてやる(2枚目の写真)。そのあと、アンディは叔母と一緒に「赤いケープのパッケージ」の葬式を行う。つまり、穴を掘って埋めることにしたのだ。アンディは、パッケージに向かって、「僕が、自分でやらないと」と言うと、穴に入れ、上から土をかける(3枚目の写真、矢印は穴の中のパッケージ)〔ケープには、結局、何のスーパー・パワーもなく、アンディを守ってくれなかった。彼は、何かに頼るのをやめ、自分の力で解決しようと誓ったのだが…〕。悪いことは重なり、父の携帯は 充電不足で全く反応しなくなる。
  

そして、翌日。アンディは、グアバのジャムを作る作業場に連れて行かれる。祖母は、「ドイツから機械を購入したのよ。だから、ウチのジャムがクエルナバカでベストなの」と自慢する。そして、その場にいた数人に、「今日から、アンディが収穫を手伝うからね」と告げる。その場にいた、アンディより幼い少女〔女中の娘?〕は、さっそくアンディをグアバの実の採取に連れて行く。少女は、熟した実の見分け方を教えるが、アンディにとってジュースなどは100%興味外。ひたすら、動かなくなった携帯を見ている。それを見た少女は、「こら」と言い、もいだ実をぶつける。「何するんだ」。「落ちたのよ」。ケンカになるところだったが、通りがかったチャーリーが「一緒に来ないか?」と誘う。アンディは、少女の制止を無視してチャーリーに付いて行く。チャーリーはグアバの大木の前までくると、「これだ。ちょろいもんさ」と言って、やすやすと登ってみせる。チャーリーは飛び降りると、手で足場を作り、アンディを枝に登らせる。チャーリーも枝に登り、アンディに自分の彼女の話をするが、アンディにとってはジャムもグアバも「彼女」もどうでもいい。チャーリーは、アンディの気を惹こうと、グアバ園の奥の木戸に連れて行く。その木戸には鍵がかかっているが、チャーリーは鍵で木戸を開け、アンディを外に出す(2枚目の写真)。木戸の外は自然の森になっていて、歩道が整備されている。チャーリーの説明によると、「ばあ様は、俺達がここに入るのを嫌がってるが、俺は好きなんだ。悲しくなると、ここに来る。あっちには俺の家もあるしな」。そう言って、木陰に見えるコンクリート・ブロックで出来たあばら家を教える。家の下に4人の若者がいる。「あいつらが、俺の遊び仲間〔gang〕だ」〔実は、文字通り「ギャング」だと後で分かる〕。チャーリーが4人のうちの1人と携帯で話すのを見たアンディは、「僕の携帯、動くようにしてよ」と頼む。「どいつだ?」。アンディが父の携帯を渡すと、「安モンだな。どこで拾ったんだ?」と笑われる。「それ、パパのだ」(3枚目の写真、矢印は携帯)。
  

翌日、アンディは、グアバの収穫中のチャーリーを探し出し、「お願い、助けてよ」と頼む。「充電器がみつからないんだ」。「オヤジさんは失くしちまったのさ。何がしたいんだ?」。「パパへの着信履歴を見たい。その人、パパのいるトコ知ってるかも」。「どうしてもやりたいなら、テレホンカードの金を寄こせ。充電器の金もだぞ。最低でも500は要るな〔2015年頃の撮影だとすれば、当時の換算レートで約4000円〕」。「そんなお金どこにあるんだ?」。「ばあ様からもらえよ」(1枚目の写真)。夜、アンディが祖母の部屋を覗きに行くと、彼女は酒を飲みながら音楽に合わせて体を動かしている。そこに、叔母が寄って来てアンディに声をかけたため、2人の存在に祖母が気付く。「そこで、何してるの?! 寝てらっしゃい!」。「お金もらえませんか?」。「とっととお行き!」(2枚目の写真)〔ジャム作りを手伝わせているくせに、金額すら聞かない専横主義者〕。翌朝、アンディが朝食に下りて行くと、祖母がいない。女中に訊くと、祖母は気分が悪いという返事〔二日酔い〕。そして、少女にアスピリンを持って行かせる。アンディはすぐに後を追い、少女が部屋を出るのと入れ違いに祖母の部屋に入る。そして、気付かれないように床を這っていき、クローゼットに入り込むと財布を捜し出し、500ペソ札を1枚抜き取る。そして、グアバの木の下でチャーリーにお金を渡す(3枚目の写真、矢印)。「200足りないぞ」。アンディは驚く。「冗談だ。明日までに動くようにしてやろう」。「パパが来たら、こんなトコから連れ出してくれるんだ」。
  

報復は素早い。自室に行かたアンディは、祖母から 「なぜ、財布からお金を盗っての?」と詰問される(1枚目の写真)。アンディは、「やってない」と嘘をつく。「デリが見てた。お金も減ってる」〔デリは、アンディが朝食の途中で立ったのを見ただけ。500ペソ札1枚減っただけなの気付いたとは余程の吝嗇家か〕。「違うよ」。「お前は、父親と同様 盗っ人だね。あれも、こんな風に始めて、最後は刑務所行きだ。お前もかい?」。「パパは刑務所なの?」。「今は違う。だが、あれは、お前の面倒なんか見やしないよ。お金をお返し。でないと、ここを出て行く日まで外出禁止だよ」。日曜日の朝。祖母が入って来て、ミサに行くと叩き起こす。そして、チェストの引き出しが開けっ放しになっているのを見て、「取り散らかしてるのも、父親そっくりだね」と批判する。日曜ミサが終わり、3人が教会から出て来る。祖母は、「ママのためにお祈りした?」と訊く。「はい」。「お金を盗んだことへの反省は?」。アンディは何も答えない。祖母は、これ見よがしに、デリ叔母には 欲しがったシャボン玉を買ってやり、アンディには 「お前には、何も買ってやらないよ」と釘を刺す。アンディは、教会の門の外の通りにいるチャーリーを見つけると、祖母の目を盗んで追いかける。チャーリーは4人の仲間と一緒に、遊戯施設もある盛り場で遊ぶ。アンディは、「カードと充電器どうなった?」と尋ねる(2枚目の写真)。「まだだ」。そして、遊ぶお金のなくなったチャーリーは、アンディの目の前で、中年の女性のバッグを奪って逃走する。祖母のところに戻ったアンディは、チャーリーと会うことを禁止される。その時、アンディは、「彼じゃないよ」と庇う〔嘘をついた理由→携帯のために会いたいから〕。「この大嘘付き! 父親と同じね、犯罪者の遺伝子だわ」。怒った祖母は、レストランに行く予定をキャンセルし、荘園に戻るよう運転手に命じる。そして。車内で開口一番、「チャーリーを、二度と家に入れないでちょうだい! 分かった?!」と強く指示する。夜になり、祖母は誰かと電話をしている。内容は、荘園の隣にチャーリーのような危険人物が住んでいることへの不安と不満。何とかしないと という相談だ。電話が終わると、アンディは、「チャーリーを辞めさせないで、戻してよ」と頼む(3枚目の写真)。「その話題は、二度と持ち出さないで」。
  

翌日、少女と一緒にグアバの実を採りに行ったアンディは、少女が梯子で大木の枝に上がると、梯子を倒して動けないようにしておいてから、チャーリーの家まで行ってドアをノックする。ドアを開けたチャーリーは、「何しに来た?」と言い(1枚目の写真)、アンディを中に入れる。アンディは、すぐ、「カードと蓄電器は?」と訊くが、「金は使っちまった。おまけに、仲間の奴らは俺がバカだとさ」。「お願い、チャーリー、携帯何とかしてよ」。「心配するな、あしたにはちゃんとする。川のトコで渡してやる」〔荘園とチャーリーの家の間には小さな谷川がある〕。チャーリーの家を出て荘園に戻る途中で、アンディは呼び止められる。チャーリーが追いかけてきたのだ。チャーリーは、「助けたくないってんじゃない。だがなあ、荘園に入れなくなって、すべてが変わっちまった」。「助けてくれるって約束したじゃない」。「ああ、問題は、あの くそばばあだ。俺もお前も コケにされてる」。そう言うと、持ってきたビール瓶を、飲めとばかりに差し出す。アンディはヤケになって飲む。アンディ:「そうだ。くそばばあだ」〔アンディにとって、祖母は「くそばばあ」になった〕。アンディが荘園に戻ると、昨夜の電話で集ったうるさ型の婦人3人と祖母が談笑中。アンディは、叔母の子猫を全部カートに乗せると、客間に連れて行って放す。お陰で、お茶の会はめちゃめちゃに(3枚目の写真、矢印は子猫の1匹)。
  

アンディは、そのままグアバ園に逃げて行く。遠くから、「アンディ、ここに来なさい!」という祖母の怒った声が聞こえるが、彼は無視して木に登る。そこで、毒蟻に食べられてるトカゲを見つめる姿が結構長く映される(1枚目の写真)〔アンディにとって、トカゲは祖母なのだろうか?〕。夜、祖母の部屋に呼び出されたアンディは、「お前にはもう うんざりしたわ! 今度何か仕出かしたら、カナダに送り付けてやる!」と罵られる。「嫌だ。パパと一緒に行く」(2枚目の写真)。「パパは来ない。お前なんかどうでもいいのよ」。翌日、アンディが谷川で待っていると、約束通りチャーリーが来た。「来てくれて嬉しいよ」。チャーリーは「父の携帯」を手に持っている。アンディが、「どうもありがとう」と携帯を取ろうとすると、チャーリーは渡してくれない。代わりに、「いいか、お前は、仲間が俺のトコに戻ってくれるよう手助けするんだ」と言い出す。「もち、やるよ」。「俺を荘園に入れさせろ」。アンディは頷く。「約束しろ」。「約束するよ」。この軽はずみな約束をして、アンディは携帯を返してもらう(3枚目の写真、矢印)。
  

アンディは、ジャムの作業場に連れて行かれる。祖母は、回転式皮剥き機の前に座り、「収穫したグアバは、皮を剥く必要があるの。やり方を教えてあげる」と言いつつ回転させるが、アンディは見もしていない(1枚目の写真)。当然、気付いた祖母は怒り、皮剥き機をの使用はやめさせ、いつもの少女に「剥き方を教えてやって」と命じる。アンディは、小さな皮むき器を渡される。しかし、数個ずさんに剥いただけで、トイレと言って席を立つ。そして、携帯で留守録をチェックする。最初の音声は、「アンドレス、母ですよ。電話なさい。大変なことが起こったわ」というものだった。祖母は、アンディの母の死を知って、連絡を取ろうとはしたのだ。2つ目の留守録は、ミゲルという人物からで、「待っているぞ。いつもの場所だ。きっと上手くいくぜ」というものだった。アンディは、このミゲルに電話すると、相手も留守録になっている。アンディは、「僕、アンドレス・ナバさんか ミゲルさんを捜しています。緊急なんです。この番号にかけて下さい」と伝言を入れる。そこに少女が呼びに来て、それ以上できなくなる。恐らく、その後は、ず~っと手伝わされていたのだろう。次のシーンは夜になってから。アンディは着信記録から別の人に電話をかけている。恐らく、これ1人ではなく、ずっとかけ続けてきたのだろう。相手が出る。女性だ。「もしもし。アンドレスさんかミゲルさんをご存知ですか?」(2枚目の写真、矢印はベッドサイドに置かれた母とのツーショット写真)。「誰なの?」。「アンドレスの息子です」。「アンドレス、誰?」。「アンドレス・ナバです」。「いいこと、坊や。夜遅くにかけるなんて迷惑でしょ」。次の日もグアバの皮剥き。女中、運転手、少女、アンディの4人で剥いている〔祖母はいない〕。すると、いきなり携帯が鳴り出す。アンディは、急いで外に出る。それは、何と、父からだった。「アンディだよ。今、クエルナバカにいるんだ。迎えに来てよ」(3枚目の写真)。映画では、これだけしか話さないが、当然、母のことも話したであろう。
  

そして、待ちに待った父の到着。門のチャイムが鳴る。アンディは門まで全力疾走。途中で父と会い 抱きしめる。アンディは、父に携帯を渡す。「ありがとよ。失くしたと思ってた」(1枚目の写真)。「やっと来てくれたね。嬉しいよ」。そう言うと、父の手を引いて玄関に向かう。「ごめんよ。お前がここにいたとは 知らなかった」(2枚目の写真)。父が中に入って行くと、祖母は、「戻ったのね」の一言〔歓迎の言葉はゼロ〕。そして、「おいで。言っておきたいことがある」。そこで何が話されたのかは分からない。次のシーンは、父とアンディだけの会話。「ママのことは知らんかったんだ。ごめんよ」。「こんなトコ、出てこうよ」。ところが、父の返事は、「できないんだ」というもの。「俺には、金も家もない」(3枚目の写真)「ちょっと待っててくれ… 行く宛を見つけるから」。これには アンディもがっかりする。
  

そして、夕食の時間。祖母は、父に 「今までどこに隠れてたの?」と尋ねる。「友だちのミゲルんトコだ」。「刑務所で知り会ったんかい?」。父は「息子の前だぞ、ママ」と注意し、アンディには、「部屋に行ってろ」と言う。祖母は、そんなことには無頓着。「その子は、まだ食べ終わってない」。父:「アンディ、部屋に行っててくれ、頼む」(1枚目の写真)。アンディは席を立つ。息子がいなくなると、父は「何のつもりなんだ?」と、平気で刑務所に言及した祖母に怒りをぶつける。3度目のアンディの悪夢は、母が強盗に撃たれる場面。アンディが飛び起きると、隣のベッドに、父が目を覚ましたまま横になっている。アンディは、父のベッドに移ると、「なぜ、眠らないの?」と訊く(2枚目の写真)。「考えてたんだ」。「何を?」。「いろんなことさ」。アンディは父に寄り添うように横になる。そして、「僕のこと愛してる?」と尋ねる。父は優しく微笑むと(3枚目の写真)、息子を抱きしめる。
  

翌日も、アンディは、皮むきを手伝わされている(1枚目の写真)。祖母は、他の連中に細々と注意を与えている。アンディが窓の外を見ると、父はプールに脚を浸していた。すると、作業場に子猫を連れた叔母がやってきて、祖母に追い払われる〔作業場が汚れるから〕。そのあとで、アンディがもう一度プールを見ると、父の姿が消えている。アンディは、不安になって、すぐにプールに駆けつけ、辺りを探すと、父は叔母と一緒にベンチに座っていた〔何と言っても兄と妹なので〕。父:「どうしたんだ?」。「出てっちゃったかと心配になって」。「ちゃんといるぞ」(2枚目の写真)。「どこにも行って欲しくないよ」。それを聞いた父は、アンディと一緒に散歩に出かける。2人は、ハンモックに仲良く一緒に入る(3枚目の写真)。アンディにとって、母が殺されてから一番幸せなひと時だ。
  

翌朝、アンディは、大騒動で目が覚めた。祖母が遠くて怒鳴っている。アンディがパジャマのまま見に行くと、居間には叔母の猫がいっぱいいて、そのうちの1匹は絨毯におしっこをしてしまった。叔母は、祖母から強く叱られる。父、「猫が絨毯におしっこしただけじゃないか」と宥めるが、「よく、そんな口がきけるわね。あんなことをしたくせに」と逆襲されただけ。その後、どうやったのかは分からないが、父は、祖母の車を1台を借りて、クエルナバカの町までアンディと2人で出かける。アンディは、「このままメキシコシティまで行こうよ」と言うが、「まだ早い」と言われ、がっかりする(1枚目の写真)。2人は、遊戯施設に行き、アンディはそこで出会ったチャーリーと「スピンするアトラクション」を楽しむが、終わった時に、「約束、忘れるな。ちゃんと入らせろよ」と言われる。「できないよ、パパとメキシコシティに行くんだ」。「俺は、オヤジさんなんか信用してないぞ」〔この少し前、車の中で、父がチャーリーのことを「彼は嫌いだ」と言っている/2人とも悪人同士なので、相手を正しく見定めている〕。アンディが父を捜しに行くと、父はダーツに似た遊びに熱中している。父は、遊び事に熱中すると途中で止められなくなるタイプだ。ここは、ようやくやめさせて車に戻りかける。しかし、途中で 賭けをやっているのを見つけると、父は我を忘れてしまう。それは、3つのミニカップのどれにコインが入っているかを当てる賭けで、日本の丁半と同じように簡単にインチキができる。そんなことも知らないで、父は何度も賭け(2枚目の写真、矢印は 父が「コインが入っている」と思って開けたミニカップ)、有り金を全部巻き上げられてしまう。典型的なギャンブル依存症だ。おまけに帰ろうとしてポケットを探るとキーがない。結局、アンディは空腹を抱えて荘園まで歩かされることに(3枚目の写真)。父に対する考え方が、期待から失望に変わる。それは、荘園に辿り着いた父が、「俺は鍵〔門の〕を持ってない。持ち上げてやるから塀を登って門を開けてくれ」と頼むのを、「イヤだ」と断り、「やめろ、お祖母ちゃんを起こす気か」と止めるのも構わず、チャイムのボタンを押したことで分かる。
  

当然、父は、祖母から叱られる。「このバカ息子! お前は私の人生を台無しにした! 今度は、息子の人生をダメにする気かい? あれはお前の息子だよ。なのに、世話の一つもできないなんて!」。アンディの座った食卓にまで、祖母の罵り声が聞こえてくる(1枚目の写真)。「いいかい、二度と、頼んだり 話しかけたりするんじゃないよ! 私は平穏に生きたいんだ。何で こんなにぐうたらに育っちまったんだろうね。このギャンブル狂!」。アンディが父のベッドで横になっていると、父が寄って来て髪を撫でる。起き上がったアンディは、「『ギャンブル狂』って何?」と訊く(2枚目の写真)。「慢性疾患さ」。「病気なの?」。「違う。横になれ」。「出てこうよ」。「寝るんだ」。翌朝、アンディが目を覚ますと、父はいなくなっていて、枕の上には1枚の紙が置かれていた(3枚目の写真)。そこに何て書かれてあったのかは分からない。ただ、読んだアンディは、一目散に道路まで飛び出して行く。しかし、そこには もう 誰もいなかった。
  

朝食の場で、祖母は、「今は 理解できないだろうけど、パパがいなくなったことは、お前にとって最良の出来事なのよ」と言い、グアバ・ジャムを塗ったトーストをアンディの皿に置く。アンディは祖母を睨むだけで何も言わない。そこで、祖母は、そのトーストを自分で食べながら、「今 話すのが最適じゃないかもしれないけど」と断った上で、「カナダに行く前に、全寮制の学校に入ってもらうわよ」と宣告する(1枚目の写真)。「もう、ここには置いておけない」〔アンディは、祖母に見放された〕。困惑したアンディは、自分の携帯から 父の携帯に連絡しようとするが、「圏外です」としか応答しない(2枚目の写真、矢印は携帯)。切羽詰ったアンディは、チャーリーに会いに行く。そして、「僕、全寮制の学校に入れられちゃう。パパを見つけないと」と泣きつく。「また、出てったのか? もし、そうなら、それは お前と一緒にいたくないからだ」(3枚目の写真)「放っとけよ。それより、あのくそばばあにバイバイして、俺と一緒にクエルナバカを出てこうぜ。そのためには、約束を守るんだな」。そして、「今夜、鍵を開けとけ」と言い、「これを着ろ」と真っ黒の服を渡される。
  

その夜、アンディは強盗さながらに 真っ黒の上下の服を着、母の写真を胸に抱いてベッドで待機している(1枚目の写真、矢印は母とのツーショットの入った写真立て)。セットしておいた時間が鳴ると、アンディは迷わず祖母の寝室に向かう。中では、床に酒ビンが散乱し、祖母は「みんな、私から離れて行く」と言いながら、酒をラッパ飲みしている(2枚目の写真、矢印は酒ビン)。その時、喚く言葉の中に「夫は自殺した」というのがあるので、祖母は、昔、よほどひどい奥さんだったのだろう。アンディは、「お前も私を見捨てるのね」と言い続ける祖母を 何とかベッドに入れる。そして、鍵を取ると部屋を出る。アンディが門を開けると、そこには、チャーリーだけでなく仲間の4人も一緒だった。アンディは、「1人だって言ったじゃない」と言うが、後の祭り。アンディも仕方なく後に付いていく(3枚目の写真、矢印はアンディ)。
  

館の中に入ると、ボス格の女が チャーリーに「お金はどこよ?」と訊く。「知らん」。「『知らん』ってどういうこと? お金がなかったら、アメリカに行けないじゃないの」。それを聞いたアンディは、「僕 知ってるよ」と言い、2階の祖母の寝室に案内しようとする。チャーリーはボスに渡された拳銃を持って行く。チャーリーはアンディに「黒い目だし帽」を渡し、自分も被る。そして、階段を昇って行く。しかし、踊り場を過ぎた時、正面の叔母の部屋のドアが開く。チャーリーは叔母を撃とうとする。アンディは狙いを反らそうとするが(1枚目の写真、矢印は拳銃)、弾は発射され、叔母は倒れる。泡を食ったチャーリーは逃げ出し、アンディは、叔母の元に駆け上る。翌朝、アンディは検察官の尋問を受ける。「昨夜は、誰と一緒だった?」。「僕一人です」。祖母:「本当のことを言いなさい」。「僕一人でやりました」。「庇うのも犯罪だぞ」。祖母は、アンディの頬をつかんで、「言いなさい!」と迫る(2枚目の写真)。祖母のことなど何とも思っていないアンディは、その手を撥ね退ける。しかし、検察官がテーブルをドンと叩き、睨みつけると、「チャーリーと、仲間たちが一緒でした」と白状する。取調べのシーンはこれだけ。主犯はチャーリーの一味なので、アンディは子供だし 罪に問われなかったらしい。次のシーンでは、祖母が叔母に優しくスープを飲ませている。祖母は、「奴らを見た?」と訊くが、叔母は首を振る。祖母:「あのろくでなし」〔単数形なので、チャーリーたちではなく、アンディのこと?〕。叔母は、「アンディは悪くない。悪いのはあんたよ」と、ずばり指摘する(3枚目の写真、アンディもそれを聞いている)。恐らく数日後、アンディが赤いケープを埋めた場所に行き、自分の愚かさを嘆くシーンがある。ジャムの作業場は荒らされ、床にこぼれたジャムには蟻が黒山のようにたかっている。そこに、アームホルダーを着けた叔母が現れる〔軽傷だったので、撃たれた腕だけを固定するだけで、歩き回れるようになった〕。アンディは、「叔母さんも、僕に出てって欲しい?」と尋ねる。「いいえ」。「ごめんさない」。2人は抱き合う。
  

さらに、数日後、突然、父が戻ってくる(1枚目の写真)。父は、アンディを寝室に連れて行くと、「お前の荷物を詰めろ」と言う。「ほとんどないよ」。「持ってけるものを詰めるんだ」〔着られる服は全部詰めろ、という意味〕。「どこに行くの?」。「分からん。とり合えず、ママのアパートに戻ろう。そこで考えればいい」(2枚目の写真)。ここで、いつもの夢のシーン〔非常に彩度が高く、スローモーションなので、すぐに区別がつく〕が入るが、アンディは寝ていないので、どういう意味があるのか分からない。内容は、ホースで水をやるチャーリーにアンディが抱き付くというもの。アンディは父と一緒に行くのが不安なのだろうか? 一緒にアメリカに連れて行ってくれなかったチャーリーを恨んでいるのか? その後、アンディは、芝生の上に横になり、蟻の巣をじっと見つめる(3枚目の写真)。グアバの木に抱きつくのは、荘園に心残りがあるのか? 何れにせよ、これらのシーンは、アンディが、「父と一緒に行くか」、「ここに残るか」のどちらを選択したらいいかで悩んでいる姿を象徴的に表わしたものだろう。
  

暗くなり、父は、「アンディ、行くぞ」と声をかけ、道路まで行き、タクシーに荷物を積み込む(1枚目の写真)。アンディが玄関から出ようとすると、祖母が、「アンディ、待って」と呼び止める。「もし よければ、ここにいてもいいのよ」(2枚目の写真)。「パパは?」。「出て行ってもらう」。「さよなら」。「アンディ! パパがここに来たのは、伯母さんのところに連れて行くためなのよ。伯母さんは、お前をカナダに連れて行く。パパには、お前を養っていけない」。しかし、アンディは、祖母の言葉には耳を貸そうとしない。どこに行って、どうなろうと、祖母と一緒に暮らすよりはベターだという確信がアンディにはあった。最後のシーンは、タクシーに乗った2人。なぜか、父は後部座席の真ん中に座り、アンディから顔を背けている。アンディに合わせる顔がないからか?〔つまり、一緒に暮らすと言ったのは嘘で、カナダの伯母に届けるために来ただけだからなのか?〕 しかし、アンディはそんな父の頭に手をかけ、自分の方を向かせ、まるで大人が子供にするように、自分の頬に頭をもたれさせる。そして、「何もかも、すべてうまくいくよ」と、安心させるように言葉をかける〔祖母にも父にも失望したアンディは、カナダに夢を託したのだろうか?〕
  

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