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Dans la forêt 森の奥深くで

フランス・スウェーデン映画 (2016)

森と湖の国スウェーデンでも、特に人里離れたノルウェー国境近くの “森の奥深く” で、“現実と幻想” の狭間に巻き込まれた兄弟の姿を淡々と描いたフランス映画。兄弟は、12歳のベンと8歳のトム。2人はパリで母と暮らしている。父は、スウェーデンのイェッテボーリ〔イェーテボリ、ヨーテボリと標記されることが多いが、いろいろな発音サイトで確認し、一番多かったものを採用した〕の半導体工場に勤めている。数年前に恐らく離婚し、今回は久しぶりの再会。夏休みのバカンスということで、飛行機でストックホルムまで飛び、そこから父の車でイェッテボーリまで連れて来られる。兄は、よく父のことを覚えているので、あまり親しみを感じていない。そのことは、母を “maman(ママ)” と呼ぶが、父と直接話す時は、“tu(あんた)” としか呼ばず、弟と父について話す時は “il(彼)” としか言わないことから分かる。父も、2人の母について話す時は、直接的には “ta mère(お前の母親) ”、間接的には “elle(彼女)” としか言わない。2人が母からもらったスマホでビデオ通話をすると、露骨に嫌な顔をするし、兄は父の机の中から “母の顔だけ削り取った写真” を見つけ、父の人格に疑いを抱く。この父は、映画に出てくる範囲では4年前から超常現象にのめり込み始めていて、それが性格を歪めていき、離婚の原因になったらしい。父は、2人を「出かけるぞ。北だ。森の中に家がある。気に入るぞ」と一方的に言うと、車で1泊、徒歩で1泊しないと辿り着けないような遠方の森の中まで連れて行く。そして、兄弟が会わなかった数年の間に、精神異常のレベルにまで歪んでしまった姿を 突如としてさらけ出す。幼くて無口な弟は父に引きずられているだけだが、それでも、“何かよくないことが起こる” と予感する。前思春期に入っている兄は、父の狂気に近い強権的な態度に反発し、最後には “Je vais le tuer(殺してやりたい)” と弟に打ち明けるまでになる。そして、救いを求め、決死の覚悟〔道なき道を2日歩かないと人里に出られない〕で 山の家から逃げ出す。残された弟は、兄が逃げたことで、“育児放棄” の罪に問われることを怖れた父と一緒に、湖から湖へと彷徨する。そして、その中で、父の真の姿が見えてくる。それは、父の狂気の中に残っていた “本来の優しさ” が、弟の目を通して幻影の形で捉えられたものだった。なお、この映画は、第8回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルで上映されたが、国内公開されたわけではないので、非公開扱いとした。また、意図的に暗くされた場面が連続し、何が起きているか分かりづらいので、思い切った増感処理を施した〔それでも、分かりづらい場面には、輪郭に点線を加えた〕。DVDのメイキングでの撮影場面はそれほど暗くないので、意図的だと解釈した。参考までに、下の写真は、森の中で兄弟役の2人と “悪魔” 役の俳優が遊んでいる場面だが、かなり明るい。

母とパリに住んでいるベンとトムは、夏のバカンスに 父の住んでいるスウェーデンを訪れる。父は、フランス人だが妻と不仲になった後は、言葉の通じないスウェーデンで人目を避けて暮らしている。孤独な父は、2人を、居住地のイェッテボーリの北北東約250キロのノルウェー国境に近い僻地まで連れて行く。そこは、車で廃道を行ける所まで行った後、途中で野宿しないと着けないような森の中に建つ廃屋のような一軒家だった。ベンとトムは、旅立つ前に母から最新式のスマホを渡され、定期的に連絡し合えるようにしていたが、父にはそれが気に食わない。そこで、再充電できない環境で、夜間にこっそりスマホで無駄な録画をくり返して使えなくする。ベンは激怒し 父を罵るが、逆に罵ったことを謝らされただけ。ベンは父の携帯で母に連絡しようとするが、パスワードでブロックされ使えない。おまけに、そのことを知った父は、携帯を焚火で焼き、「ここにいても無意味だ。明日、ここを出て、飛行機で帰れ」と言い出す始末。ある意味、それは “解放” を意味していたのだが、翌日、父は前言を翻す。ベンが、「パリに帰りたい。僕らを ここで缶詰にはできない」と要求しても一蹴される。ベンは、弟トムとの会話の中で、「殺してやりたい」を思を打ち明け、翌朝にはいなくなっていた。救いを求めに逃げ出したのだ。一方、トムは、なぜか父から気に入られ、そのお陰で、精神異常をきたしている父に残った僅かな “人間らしい善意” の化身に、幻影という形で何度も遭遇する。その姿の醜さに、トムは悪魔だと思い込んでしまう。しかし、ベンが逃げ出し、父が、外部からの干渉を避けるため、トムを連れて逃避行に入ると、幻影の様子が変化する。それは “悪の化身” ではなく、無謀な父からトムを救おうとする “残された良心” となり、森の中で父と一緒に果てるはずだったトムを救う。その後、父がどうなったか誰も分からない。

クレジットでは、台詞の少ない弟のトムの方が先になっている。映画の冒頭と、最後はトム1人になっているからであろう。演じているのはティモテ・ヴォン・ドー(Timothé Vom Dorp)。2007年3月3日生まれ。2016年8月のロカルノ映画祭が初演なので、1年前の夏が撮影年だとすれば8歳。その割には、これが6本目の映画出演で、『SMS』(2014)では、端役でない脇役も演じている(下の写真)。兄のベン役は、テオ・ヴァン・デ・ヴォルド(Théo Van de Voorde)。名はフランスだが、氏はオランダもしくはベルギーのフラマン。それらしく発音すれば、ファン・デ・フォールドになる。2002年11月8日生まれ。2015年夏の撮影なら12歳。年齢はティモテ・ヴォン・ドーより上だが、映画は、これが初出演に近い〔TVと映画の端役が1つずつ〕

あらすじ

映画は、1人の少年が、セラピストらしい女性から質問を受ける場面から始まる。「今日は、何もしゃべらないのね」。その後、一般論を話し、「ママに聞いたけど、バカンスはずっとパパと一緒だったそうね。お兄ちゃんとスウェーデンに行ったとか」。少年は、わざと積み木に集中し、答えようとしない。女性は、何度も話すよう求めた後、「行ったのは初めて?」の問いに、ようやく、「うん」と返事する。「楽しかった?」。しばらく黙っていた少年は(1枚目の写真)、はぐらかすように 「スウェーデンに行ったことある?」と質問する。「いいえ。でも、行きたいわ。きれいな所よね。運が良かったわね」。こう答えて、次の質問に入る。「パパを最後に見たのはいつ?」。「1年前」。「また会いたい?」。返事がない。「言いたくない?」。返事がない。「良いところと 良くないところがあるからよね?」。返事がない。「良くないのは、どんなところ?」。ようやく、「あのね、ちょっと怖かった」と答える。「トム、昨年、パパがパリに来た時も、同じこと言ってたわよ。うまく行かないかもと、怖がってた。でも、後で、楽しかったと言った。覚えてる?」。「うん」(2枚目の写真)。「でも、今は少し不安〔appréhension〕なのね」。「『不安』って何?」。「悪いことが起こりはしないか、って思うこと」。「悪い予感〔pressentiment〕のこと?」。「少し違う。予感は 『何かが起きると知ってる』と思うことね。なぜだか分からないけど、確信があるの」。「じゃあ、予感だよ」。

この意味ありげな 「1年後」のシーンの後、飛行機の窓から見た空を背景に、タイトルが表示される。窓際に座ったトムが、その風景をスマホで動画撮影している(1枚目の写真、通路側に座っているのは兄のベン)。すぐに、走る車内での場面に変わる。ここでも、トムは、後部座席の座度から、外の景色を動画撮影している。そして、いつしか、運転席のルームミラーに向きを変える(2枚目の写真)。それに気付いた父は、「何してる? 俺を撮ってるのか?」、さらに、「それ、母親にもらったのか?」と訊く。ベンは、「2人のだよ」と口をはさむ〔この、長時間の動画撮影が可能な最新式のスマホは、後で重要な意味を持つ〕。車の窓から一瞬見える道標から、車がイェッテボーリ(Göteborg)の市内に入っていくことが分かる。前節と合わせ、この夫婦は離婚していて〔別居の可能性も否定できない〕、母と息子2人は母国フランスに住み、父はスウェーデンのイェッテボーリに住んでいる。2人は、夏のバカンスを 父〔フランス人〕と一緒に過ごそうと、はるばるパリからやってきた。そして、まず市内のアパートに連れて行かれる。そして、「トム、荷物は俺の部屋に入れろ。2人とも俺のベッドで寝ろ」と言われる。ベンが 「どこで寝るの?」と父を心配すると、「心配せんでいい」と答える(3枚目の写真、「ベッド」と言うが、床にマットレスが置いてあるだけ)。

父は2人と中華料理店に行く。そこで、スマホに母からのビデオ通話が入る。取ったベンが、トムにも見えるように傾けて 「やあ、ママ」と言い、トムも身を乗り出して 「やあ、ママ」と参加する。「飛行機どうだった?」。「クールだった」。「よかった。明日は何するの?」。「知らない」。「観光かな? 見る場所いっぱいあるわよ。話してね」。トムは 「動画で撮ろうか?」と訊く(1枚目の写真、父の如何にも嫌そうな顔が印象的)。「いい考えね。明日、かけてね」。「うん。大好きだよ、ママ」。「僕も」(2枚目の写真)。通話が終わると、父は、「来てくれて嬉しい。3人で仲良くやろう」と言う。

夜、部屋の中は真っ暗になったが、トムは眠れない。そこで、マットレスから置き、少しだけ開けてあるドアから出て居間に行くと、父がソファに座ったまま起きている。「眠れないのか?」。トムは頷く。「満月だと イライラするんだ」。「イライラしてないよ」。「とにかく、だから眠れないんだ」。「パパも 眠れないの?」。「ああ、偏頭痛のせいだ。こっちに来い」。トムは近くに寄って行く。「秘密を話してやる。誰にも言うな。俺は眠らん。絶対」(1枚目の写真)。「こうして座ってるだけだ。ずっとそうだった。眠らないのは強さだ。物の見方が違ってくる。分かるか?」。「そんなのありえない。眠らなかったら死んじゃう」。「そう思うか? 俺は死んでるか?」。トムは “死んでない” と首を横に振ろうとするが、異様さ空気に圧倒され、身動きできない(2枚目の写真)。

翌日、2人は父の勤務先に連れて行かれる。2人は、全身を覆う専用のクリーンウェアを着せられる(1枚目の写真)〔子供用などないので、ダブダブ〕。そして、中に入るとクリーンルームの中は、純黄色のLEDランプが灯されている〔半導体露光装置の光源として使われるレーザーが248、もしくは、193nmのため、500 nm以下の波長をカットした特殊なランプが必要〕。父が、2人に、「小さなチップに大量のデータを…」と解説していると、「フランソワ」と声がかかる(2枚目の写真)。「君の息子たちか?」(英語)。「はい。ベンジャミンとトムです」。そして、2人には 「こちら、同僚のヘンリク」と教える。ヘンリクは、“初めまして” を英語(Nice to meet you)」で言い、さらに、迷いながらフランス語で言う(Euh... Enchante)。ここまで、すごく親切そうに見えたが、すぐに、「何のつもりだ? 2人は、ここにいるべきじゃないし、君も知ってるはずだ」と批判する〔2人は英語が理解できない〕。「私が一緒です。初めて私に会いに来たんです」。「例外は認められん。出て行かせたまえ」。外に出された2人は、中で父と同僚が話し合っているのを見る(3枚目の写真)〔会話の内容は不明〕

普通の服に着替えた2人は、父を待っている。そのうち、トムが、「おしっこ」と言い出す。「行けよ」。「一緒に来ない?」。「いいや」。「場所知らない」。「僕もだ」。トムは、1人で探しに行く。そして、トイレ・マークに従い、階段を2階分降り、トイレのある廊下に入り、男子用のドアを開ける(1枚目の写真)。トムが個室で用を足し、洗面台で手を洗っていると、個室のドアが開き、不気味〔先天的斜顔面裂症〕な男が出てくる(2枚目の写真、矢印)。振り返ったトムは(3枚目の写真)、トイレから逃げようとしてドアを開けるが、そこに父がいて、「何してる?」と訊く。この “父の化身” はトムにしか見えないものだが、なぜ、このタイミングで出現したのかは、映画の最後まで観ても分からない〔スウェーデンの深い森に行ってから現われる方が似合っている〕。なお、4枚目の写真は、DVDのメイキングにあった “顔にマスクを付けた悪魔役の俳優〔解説に写真〕

その夜、マットレスで寝てから、トムはベンに、「一つ訊いていい?」と尋ねる。「何だ?」。「悪魔って、いると思う?」。「悪魔?」。「うん」。「いないよ。なぜ、そんなこと訊くんだ?」。トムが黙っているので、「いないって言ったろ」と念を押す。「もし いたら、お兄ちゃんも怖い?」。「もちろん」。「僕、見たんだ」。「悪魔を? どこで?」。「パパの会社。トイレで。顔に穴が開いてた」。「なぜ、悪魔なんだ? 悪魔がどんな顔してるか知りもしないのに」。「絶対 悪魔だ」。「なぜ分かる」。「感じたんだ」(1枚目の写真)。「パパに話したか?」。「パパは、知ってると思う」。ベンは、トムの奇妙な発想に呆れて寝てしまう。朝、ベンが起きてくると、書置きとお金が残されていた。「仕事に出かける。昼食代に200クローネ〔当時の換算レートで約3000円〕置いておく」(2枚目の写真)。そのあと、ベンは乱雑な部屋の中を見て回る。「何してるの?」。「捜してる」。引き出しの中で見つけたのは、何かの処方薬のビン、そして、写真。「見てみろ」。トムが見せてもらうと、どの写真でも、母の顔だけ細いもので削り取られて白くなって見えない(3枚目の写真)。父親の異常さが表面化した最新のシーンだ。

それを見たトムは、「何も消さなくたって。こんなのひどいや」と不満を漏らす。「『ひどい』だって? このネンネ。2人は何年も前に終わってるんだ。お前が生まれる前だ」。「ウソだ」。「ホントさ。訊いてみろ」。そのあと、ベンは奇妙なことを言い出す。「秘密、教えてやろうか? 僕らを空港で拾い、ここに住んでる奴は、パパじゃない」。「何て?」(1枚目の写真)。「そっくりだけど、違う」。「ありえない」。「違うと言ってるだろ」。「じゃあ、誰?」。「知るか。パパのフリをしてる奴さ」(2枚目の写真)「信じられないか? なら奴の手を見てみろ。人差し指がふしくれだってる。そんなのは悪魔だけだ」。そこまで真面目な顔で脅すと、急に、「悪魔だぞ~」と言って笑顔になる。ベンは冗談でトムを脅しただけなのだが、実は、ある面真実が含まれている。父は、本人かもしれないが、昔の父とは別の存在、トムがトイレで見たような存在に “内面” はなっている。問題は、いつそれが外に飛び出すかだ。そして、その最初の兆候は既に昨日のトイレで始まっていた。

2人がTVを見ていると、そこに父が荷物を抱えて入ってくる。ベン:「仕事じゃなかったの?」。「違う」。父は即座にTVを消す。「出かけるぞ」。「どこに?」。「北だ。森の中に家がある。気に入るぞ」(1枚目の写真)。そう言うと2人分の、リュックサック、寝袋、登山靴、多用途ナイフを渡す。3人は、赤茶のワゴン車に乗ってイェッテボーリを出る。最初に映るのが、ヨーテ川に架かるGötaälv橋(2枚目の写真)〔路面電車とバスが渡っている〕。3枚目の写真は、スウェーデン運輸局のサイトにあった橋の現況。老朽化したため、隣に新しい橋を架けている最中。短期間で都市の風景はどんどん変わっていく。運転しながら、父は、子供達に問題を出す。「どの動物が、全種類の動物だぞ、他の全部を合わせたより重いか?」。ベン:「クジラ?」。「違う。クジラは重いが、数が少ない。陸上の生物」。「分かった。人間」。「いい線いってるが、違う。トムは?」。トム:「ゾウ」。「違う」(4枚目の写真)。さらに、「すべての人類、ゾウ、クジラ、鶏、猫、犬、猿… 全部の哺乳類を合わせても敵わん」。トム:「牛」。ベン:「何なの?」。「ミミズだ。バイオマスの80%だ〔biomass, earthworm, 80%で検索すると、確かに正しいように思える〕。しかし、この正解に2人はがっかりする。

その後、車は、ケーブル・フェリーに乗る(1枚目の写真)。ケーブル・フェリーとは、両岸に張られたケーブルを使って水路を横断させる手段で、スウェーデンには25ヶ所ある。この場所はノルウェー国境に近いStora Le湖〔全長75キロもある細長い湖で、北半分はノルウェー〕を横切る900メートルの区間。2枚目の写真は、グーブルのストリートビュー。ここまで来るには、イェッテボーリから高速E6で100キロほど北上し、そこから一般道をさらに100キロほど北上する必要がある。3枚目にこの地域のグーグルマップを掲載する。最下部にある◯印は 出発地のイェッテボーリ(Göteborg)。点線は スウェーデンとノルウェーの国境。参考までに、首都オスロの場所を示した。2つある★印の下の方は、ケーブル・フェリーのある場所(Sund-Jaren Ferry)。黒に近い紺色はすべて湖。この辺りには 多くの湖が点在していることがよく分かる。父の運転する車は湖の西岸から東岸に渡り、★印からさらに斜め右上に向かった。
 3人は、フェリーが動いている間 車から出る。ベンは フェリーの先端に立って、前方を見ていたが、父とトムは 車のすぐ横に立っている。父は、トムに 「あることを試してみてくれないか?」と頼む。「何?」。「試すだけだ。うまくいかなくても 気にするな」。「何を試すの?」。「兄さんを見ろ。こっちを向いてくれと念じるんだ。心で呼びかけろ」(4枚目の写真)。トムが集中し始めて45秒後、ベンが振り向き 「何だ? 何か言ったか」と訊く(5枚目の写真)。父の、“トムに期待をかけ、ベンを疎んじる” 傾向は、この成功によって加速する〔この映画は、オカルトではないので、これが超能力なのか、偶然の一致かは定かではないし、似たようなことは二度と起こらない〕

父の車は、暗くなった頃Statoilのガソリンスタンドで給油。近くのスーパーで簡単なものを買って夕食にする。そして、ホテルに入る。この場所は、前節の地図の2つある★印の上のCharlottenbergという人口3000人ほどの小さな町。この町に同定した理由は、イェッテボーリからフェリーを通るルートの先にあるStatoilのガソリンスタンドは、ここ1ヶ所しかないため。グーグルのストリートビューでも、否定的要素は皆無だった(ガシリンスタンドはどこも同じ)。さらに、この町には、デパート、ショッピングモール、スーパー、ホテルまである。次のシーンでは、ホテルのフロントで、ベンが母に電話をかけている。「僕たち、パパのアパートじゃなく、ホテルにいるんだ」(1枚目の写真)。母が何か言い、「ううん。今朝出発した。森に行くんだって」。母が何か言い、「何も聞いてないよ。知らない」。母が何か言い、「ちょっと待って」。ここで、トムに交代する。「やあ、ママ」。母が何か言い、「うん」。母が何か言い、「うん」。母が何か言い、「うん」。そして、部屋。父は、ソフアにじっと座ったまま起きている〔不気味〕。最初、トムはそれが気になって眠れない。しかし、1日中車に乗っていて疲れたので眠りにつく。トムに “期待” する父は、トムの近くまで来ると、顔を寄せ、「トム、眠れないんだろ。お前は俺に似ている。我々は同類だ」と囁く。トムは、父の期待と違い、本当に寝てしまったので起きない(2枚目の写真)〔この映画は、わざと暗く撮影されていて、非常に見えづらいため増感処理を施したが、それでも分かりにくいので、暗黄色の点線で輪郭を示した〕。そして、翌日。ベンは、後部座席で横になって眠り、トムは助手席に座っている。父は、車を停めると、トムに 「お前とベンとやったゲーム覚えてるか? 4年前、お前の母親とスキーに行った時だ。“何を考えてるかを当てる” ゲームだ」と訊く。「あんまり」。「いつも当ててたぞ。すごかった。だが、お前の母親は止めようと言い出した。好みじゃなかった。怖がってた。覚えてないのか?」。トムは下を向く。「小さかったからな。だが、そんな時から、お前は特別だった。お前には才能があるんだ」(3枚目の写真)。「人とは違ってると知ってるな?」。そう訊かれたトムは、下を向き、どうしようかと考え、結局、「知らない」と答える。「2人で、またやってみないか?」。「何を?」。「思ってることを当る」。「ノン」。「なぜ?」。「やりたくない」。父はがっかりして、車を走らせる。

車は、舗装道路を離れ、自然に戻りかけた道に入る。道はどんどん悪くなり、両側から張り出した木の枝が車体を擦る。そして、先が見えないほどになりってストップ。ベンは、「どうするの?」と尋ねる。「後は、歩きだ」。ドアを無理矢理押して何とか外に出る」。その先の具体的な行動はカットされ、次のシーンでは、3人が並んで立っている(1枚目の写真)。そこは少し小高い場所になっていて、行く手に広がる切れ目のない森が見渡せる。3人は、森へと降りて行く。途中で、ベンがスマホを取り出し、「ネットにつながらない」と言う。「ネットなんかやめろ」。「コンパスが見たかった」。「電池の無駄使いだ」。「充電するよ」。「充電器を使うには電気が要るな」。「電気ないの?」。「ない」。「まさか!」。「保証する」。その先、3人が歩くのは “道なき道”。トムが、「迷ったの?」と心配すると、「ノン」。ベンが、「携帯のGPS使おうか?」と訊くと、「ノン」。3人は、辺りが暗くなっても急な斜面を登り続ける(2枚目の写真)。参考までに、DVDの再生映像のスクリーンショットの未加工画像を3枚目の写真。実際には、こんな暗い中なのに、急斜面を登らせている。これではどこに人がいるのかも分からないので、かなり増感処理を行った。それ以上進めなくなった父は、平坦な所を探し、乾電池で照らして野営の用意をさせる。ベンは、「外で?」「地面の上で?」と不満をぶつけるが、「寝袋を出せ」と言われただけ。「こんなに遠いなんて 言わなかった」。ベンが動かないので、「邪魔だ」〔この父親が、子供たちのためを思って森に連れてきたのではない ことがはっきりする〕。おまけに、2人が食べ物の袋を破って食べようとすると(4枚目の写真)、いきなり懐中電灯を消してしまう。

翌日も、全く道のない森の中をひたすら歩く。トムが2人から遅れ、姿が見えなくなった時、一瞬かすかな音がし、木の幹から “トイレで現れた悪魔” が姿を覗かせる(1枚目の写真、矢印)。トムは、その姿をじっと見つめる。悪魔が出てこようとした時、カメラが先行していた父とベンに切り替わる。トムがいないことに気付いた父は、「トム!」と呼ぶ〔父と悪魔が別だと、ここでも再認識させられる/この時点でトムが見ているのは、父の “真の姿(肉体的なく、精神的な)” を、幻影として見ているに過ぎない〕。その声で、トムが走ってくる。「大丈夫か?」。何も言えない。「休みたい?」。「ノン」。3人の前に、木立で囲まれた2階建ての家が見える。父は、持ってきた鍵で錠を外して中に入る。2人もそれに続く。中は荒れた感じで、バカンス・ムードでは全くない。外には、汚いボートが置いてある。ベンが、「壊れてるの?」と訊くと、「少し」。「漕げるの?」。「まだだ」。この男、ベンに対しては多くを語らず、じつにぶっきらぼうだ。そのあと、3人は湖に容器を持って行き、飲み水を入れる。そして、湖を一望できる高台に連れて行かれる。父は、トムに 「写真を撮りたいか?」と訊く。トムは頷く。そこで、ベンに 「携帯をよこせ」と言う。ベンが渡すと、「パスワードは?」と訊く(2枚目の写真)。「2003」。「生まれた年だな。みんなそうしてる」。そして、トムに渡す〔ベンがトムに直接渡せば済むのに、わざわざ一旦横取りするのは、暗証番号を訊き出すため〕。トムが動画を撮っている間に音がしたので ベンが確かめる。「電波が飛んでる!」。「まさか」。「ほら1本立ってる。ママに電話していい?」。「ノン」。「どうして? 電話するって約束したんだ」。父は、渋々、メールだけ許可する。ベンがメールを送る(3枚目の写真。2人の背が同じなのは、トムがジャンプしているから)。「消せ」。「待って、返事が来る」。10秒もしないうちに母からの返信メールが入る。「すごいわ。2人の小さな狼さんにキスを」。

夜になり、2人は 父が袋からテーブルの上でぶちまけた大量の食事の袋を見る(1枚目の写真)。「これ、スープ?」。「いいや、フリーズドライの食事だ」。トムが、「トイレに行きたい」と言い出す(2枚目の写真)。「小便なら、外ならどこでもいい」。「そうじゃない」。「なら、さっき言った場所でやれ」。そう言うと、父は懐中電灯をトムに渡す。トムは動こうとしない。「どうした?」。ベンは 「一人で行きたくないんだ」と説明する。「そうなのか?」。結局、2人で外に出る。ベンは、地面に穴を掘り、その上に板を2枚置いただけの便所を懐中電灯で照らすと(3枚目の写真)、「やれ」と言う。トムがズボンを下ろすと、ベンはスイッチを消し、臆病なトムを怖がらせる。

翌朝、3人は湖で泳ぐ。そのあと、岸に上がって次の会話がある。父は、ベンに、「何でも好きなことができるとしたら、何をする?」と訊く。想像力のないベンは、すぐに 「分かんない」と答え、父からネチネチ叱られる(1枚目の写真)。「自分に問いかけもしない。考えもせずに返事したな。まず、質問を、ちゃんと頭に入れろ。そして、よく考えてから 返事をするんだ。今、一番欲しいものは何だ?」。「ファルコン」。「何だ」。「ビジネスジェット機だよ。いつでも、そこでも、世界中好きな場所に行ける。でも、大金持ちじゃないとね」。「トム、お前は?」。「お友だち」。ベンが 「友だち? いっぱい いるじゃないか」と問いかける。「そんな いないよ」。「いっぱいじゃなくても、かなりいるだろ」。ベンは、父に、「何がしたいの?」と訊き返す。「俺か… 永遠の命。この森と この家。お前たちと一緒に、ここで、永遠に」。こう答えると、「気に入らんか?」と訊く。「何が?」。「3人で、ここに住むこと」。「あの家で?」。「ああ。うまくいきそうだろ?」。「遠慮するよ」。「何が言いたい?」。「バカンスにはいいけど…」(2枚目の写真)「人里はるか離れた所には住めない」。父は、「だから、いいんじゃないか」と、不機嫌になる。

その夜、夕食を食べていると、一足早く食べ終った父が、待ちきれずに立ち上がり、まだ食べている最中の皿を取り上げ、「お互い向き合って座れ」と命令する。ベンが立ち、トムの正面に座る。父は、他のロウソクを吹き消しテーブルの上のランプだけにすると、ベンにメモ帳とペンを渡し、「言葉を1つ書き、トムには見せるな」と命じる。ベンは、表紙を立てて見えないようにして書く。父が、「見ていいか?」と訊くが、ベンは 「見られたくない」と断る。父は、ベンの背後に立つと、トムを見て、「当ててみろ」と言う〔4年前のゲームの再現〕。トムは頷く。「目を閉じろ」。「準備できたか?」。「うん」(1枚目の写真)。「ベンジャミン、お前の言葉を強く念じろ。トム、兄の頭の中の言葉を見るんだ」。時間が経つ。「何か見えるか?」「集中しろ」。そして 「何か感じるか?」。「怖いよ」。「未知のものと向き合ってるからだ」。「ダメだ」。その時、部屋の暗がりに悪魔が現れる。父は、トムを叱咤激励する。そして、「あきらめるな!」と叱った時、その背後に例の悪魔がいる(2枚目の写真、矢印)。目を開いたトムは、悪魔を見て悲鳴を上げる(3枚目の写真)〔4年前にトムができたのは、父がこっそり教えたから? 今回はベンが隠したので、もともと存在しない “超能力” は働かなかった?〕。ゲームが終わった後、ベンは 「ねえ、僕も感じたよ」と悪戯っぽく言う。「何を?」。「笑いそうになっちゃった」。そして、トムに 「想像もしなかったろ」と言いながら、書いた言葉を見せる。メモ帳には「BOUCHE(口)」と書いてあった。

その夜、トムは大きな音で目が覚める。恐る恐る下に降りて行くと、父は、「眠ってるとこを見つけようとしてるのか?」と、意地悪く訊く。トムは首を横に振る。「なら、何してる?」。「音がした」。父は、「ここは むしろ静かなんじゃないのか?」と否定するが、その時、外で音がする。「木が倒れる音だ」。「なぜ知ってるの?」。「知ってるからだ。木は枯れてしばらく経つと、叫び声をあげて倒れる」。「怖いよ」。父は、トムを近くに来させる。「闇が怖いんだな? なぜだか分かるか? 闇の中には、いろんなものが隠れてるからだ」。父は、わざとトムが怖がるように「怖い」理由を説明すると、「また、見たのか?」と訊く。「何を?」。「お前が、『悪魔』と言ったものだ」。父は、ベンから聞いたと言い、「どんな姿だ?」と訊くが、トムは言おうとしない。「お前に話しかけたか? 何て言った?」。「何も」。「確かか?」(写真)「いいか、どうしてももう一度会うんだ。そして、必ず話しかけろ。とても重要なことだ」と言い含める。

そして、朝。トムが目を覚ますと、床の割れ目から父の頭が見える。そこで、ベンの頭の横の窓枠に置いてあったスマホを取ると、パスワードを入れ、割れ目から父の写真を撮る。そして、仕上がりを見てみる(1枚目の写真)。そして、アルバムを見てみると 似たような白黒映像の画像が並んでいる。画面で確認できた数は12、計294秒。トムがそのうちの1つを再生すると、暗闇の中で、寝ているトムを撮ったものだった。すると、ベンの声がする。「何してる?」。トムは、「見て」と言ってスマホを渡す。ベンは再生してみて、「これ何だ? お前か?」。2人でアルバムを見る(2枚目の写真)。今度は、27〔1列に3個×9列〕が確認できる。「バッテリーがなくなった」〔先の12で294秒の比率を採用すると27で661秒となる(照明なし)。10分強だ。しかし、映画撮影時の2015年のNexus 5Xのユーザー記録だと、連続動画撮影時間はフルHD(1080p)画質で2時間42分だった。母は最新型を渡したようなので、飛行機の中や車の中でトムが撮影していた時間を差し引いても、たった10分で急にバッテリーが上がるのは納得できない〕。ベンは、「あのクソ、何でこんなことを?」と怒り、すぐに下に降りて行く。そして、「何でトムを撮ってバッテリーを無駄にした?」と文句を言う。「何のことだ」。「勝手にスマホ使って、バッテリーをゼロにした!」。「何だその言い方。朝の挨くらいしろ」。「わざとやったな!」(3枚目の写真)「緊急事態が起きたらどうする?!」。「俺の携帯がある」。「寄こせよ、ママに電話する」。「緊急事態か?」。「もう うんざりだ〔Tu fais chier〕!」。「何だと? 何て言った? 謝れ」。「何を?」。「うんざりなのは お前だ。謝れ」。この卑劣な父は、ベンを組み敷き、何度も謝らせる。これでベンの心は完全に離反した。一緒にいるのは父ではなく、以前の言葉を借りれば、「そっくりだけど、違う」もの〔狂人〕だ。

父が外に出ている間にベンはリュックから携帯を盗み出し、前に電波が届いた場所まで走って行く。そして、父の生まれ年を入れるが、「パスワードが間違っています」と表示される(1枚目の写真)。別のパスワードでトライするがダメ。夜になり、父が家のそばで焚火をしている。ベンが近づいて行くと、父が 「どこにいた?」と訊く。「湖」〔さっきは明るかったのに、家からそんなに遠いのか?〕。「ママにSMSを送ったか? できなかったろ? パスワードを知らないからな。持ち出す前に試すべきだったな。寄こせ」。ベンは携帯を返す。「どうして、母親と話をしようとした? ここにいて嬉しくないのか? パスワードが知りたいか? 8753。日付じゃない。意味もない。信じないか?」。この気が触れた男は、パスワードを入れ、使えるようになった画面をベンに見せる(2枚目の写真)。「見たか? よく見ておけ。これが最後だからな」。そう言うと、携帯を焚火の中に捨てる。そして、「ここにいても無意味だ。明日、ここを出て、飛行機で帰れ」と宣告する。夕食の時間、ベンはポテトサラダのようなものを用意し、トムと2人で食べる〔父親は、夜の森を彷徨(ほうこう)している〕。ベッドに横になってから、トムが、「お兄ちゃん」と呼びかける。「何だ」。「おしっこ」。「勝手に行け」。トムは、家から出て森に入って行く。そして、光虫の群れに遭う(3枚目の写真)。虫がトムに寄っていく様は、映画『アバター』の「聖なる木の精」を思わせる〔その後の展開には無関係〕

翌朝、ベンは外の物音で目が覚める。窓の外を見ると、父親がボートを修理している(1枚目の写真)。ベンが窓を開けると、父親は 「手を貸せ。ボートを直せば、湖で釣りができる」と言う。「帰るって言ったじゃないか」(2枚目の写真)。「気が変わった」。「俺が間違ってた。もう怒らない」。そんなことで、兄は許せないし、こんな所にはいたくない。そこで、下に降りて行き、「どのくらい ここにいるの?」と訊く。「必要なだけ」。「パリに帰りたい。僕らを ここで缶詰にはできない」。「もちろん できるとも」。「そんな権限はない」。「法律の何を知ってる? 俺はお前の父親だ。責任がある。俺が決める。それが法律だ」。「そんなのメチャだ。ママに知れたら、あんたは僕らに二度と会えないぞ。分かった?」(3枚目の写真)。「そうか? それは脅しか?」。「違う。あんたには二度と会いたくない」。父親はベンに、「大抵にしろ。一度でもお前を殴ったか?」と食ってかかる。

その時、男性2人と女性1人が登山姿で現れ、緊迫した状態が一旦は解除される。父親にとっては、新たな敵が現れたことになるからだ。「まさか、こんなトコに家があるなんてな」(1枚目の写真)。そして、父親に向かって、「それ修理してるんです?」と訊く。「スウェーデン語はほとんど話せん」。「いいとも。これ、あんたの家です?」。「そうだ」。「素敵ですね。湖でキャンプしても構いません?」。「ああ」。「どこから?」。「フランス」。「あんたの息子さん?」。「ああ」。ベンが、「ボン・ジュール」と声をかけ、相手も同じ言葉で返す。ベンとトムは湖に行き、対岸〔入り江のようになっている〕にいる3人に手を振る。そして、相手の叫び声に対して、叫び返す。父親と3人での沈黙の夕食の後、ベンは1人で家を抜け出し、3人に会いに行く。すると、真っ赤なテントの中では、2人が愛し合っている。ベンが、どうしようかと佇んでいると、突然 懐中電灯の光が当てられ、もう1人の男性が、「ここで、何してる?」と訊く。ベンには英語が分からない。男性は、中の2人に 「訪問者だぞ。チビの覗き魔だ」と声をかける。ベン:「一緒に行っていい?」。3人にはフランス語が分からない。「おっぱいが見たいんじゃないかな」。ベンは「あなた方と、一緒に行きたいんだ」と、身振りを交えて話す。テントの中の男性は、「一緒にヤリたいのかな?」と女性に言い、「君は、ヤルにはまだ幼な過ぎる」とベンに言う。女性は、片言のフランス語で、「Trop petite(小さ過ぎ)」と言う。ベンは、一緒に行くのが小さ過ぎて無理だと言われたと思い、「小さ過ぎないよ」と反論する。「小さいさ」。そして、最初に声をかけた男性が、「パパのトコに戻れ」と最終命令(2枚目の写真)。こうして、ベンの望みは絶たれる。翌日、ベンとトムが家の外で暇そうにしていると、3人がやって来て、梯子に登って窓の修理をしている父親に声をかける。「邪魔して悪いが、あんたボート持ってるよね。貸してもらえません?」。父親は、「まだ修理が済んでない」と断った後、立ち上がると 「ここにずっといてもらっては困る」と言い出す。「ずっといる気なんかないですよ」。「今日、立ち去って欲しい」。「何か問題でも? 昨日はいいって言ったのに」。「ノーと言うべきだった」。「それって、あんたの息子と関係あり?」。「息子?」。「昨夜来たんだけど、怖がらせたのかも」。「俺は、息子たちと過ごすためにここに来た。ヒッピーどもと分け合うつもりはない」。3人は、この侮辱的な言葉を聞き(3枚目の写真)、憮然として立ち去る。

3人がいなくなると、父親は、ベンを問い詰める。「お前、何をしに行った?」。「何も」。「あの人たちに、何て言ったの?」。「立ち去れ」。夜になり、トムは、「まだ怒ってるの?」と訊く(1枚目の写真)。「ああ、殺してやりたい」(2枚目の写真)。この激しい言葉に、それ以上会話は続かない。翌朝、トムは、父親に起こされる。「お前の兄はどこだ?」。トムが横を向くと、ベンのベットはきれいに片付けられている(3枚目の写真)。「知らない」。「どこに行くか話したか?」。トムは首を横に振る。「本当か?」。「うん」。「俺は捜しに行く。ここにいろ。いいな?」。「うん」。「靴〔登山靴〕を寄こせ。そうすれば、逃げようと思っても 遠くには行けん。それとも、鍵をかけて閉じ込めようか?」。父親、というか、狂気の男は、トムの登山靴を取り上げると、ベンの捜索に出かける。

下に降りていったトムは、フリーズドライの袋に直接湯を入れ、中身を皿に開けるが、いつもはベンがしてくれていたので、うまく行かない。そこで、皿の食材に直接湯をかける(1枚目の写真)。そのあと、フード付きのジャケットをはおる。すると、ポケットの中に紙が入っているのに気付く。そこには、「トム、心配するな。携帯は持って行く。充電器を手に入れたら、ママに電話する。そしたら、お前を助けに戻る。キスを。ベン」と書いてあった(2枚目の写真)。

そのあと、トムは、普通の靴を履いて家の近くの森に入って行く。そして、体の割には大きな石を斜めに傾けると、その下にミミズがいっぱいいるのを見つける〔以前、父親がミミズの話をした〕。すると、上の斜面で歩く音がする。トムが頭を上げると、そこには悪魔が立っていた(1枚目の写真、矢印)。トムは、矢のように、家まで逃げ帰る。そして、玄関に該当するドアに内側から鍵をかけ、入って来られないようにして、2階に行く。そして、外の様子を見ようと窓まで行くと、そこに悪魔が現れる(2枚目の写真、矢印)。トムは、部屋の隅に体を押し付けるように隠れる(3枚目の写真)。

朝になり、捜索から戻って来た父親が、ドアが閉まっていて入れないので、2階の窓から覗く。そして、部屋の隅で眠ってしまったトムを見つけると、窓カラスを叩く。起きたトムは、下に降り、ドアを開ける(1枚目の写真)。父親は、「見つけられなかった」と言いながら中に入ると、ポリ容器から水をカブ飲みする(2枚目の写真は、それを見ているトム)。父親は、取り上げた登山靴をテーブルの上に置き、「履け」と命じる。「ここを出るぞ」。そして、リュックにフリーズドライの袋を戻す。外に出た父親は、裏返しに置いてあったボートを、元に戻し、中にリュックを置く。「ベンを捜しに行くの?」。「違う」。「もっと奥に入る」。そう言うと、ボートを引きずり始める。トムは、「ベンを放っておけないよ」と抗議するが、「あいつは、自分の面倒ぐらいみられる」と、一蹴されただけ。この男は、ベンが母親に通報し、警察が動き出すのを怖れている。

ここからは、ほとんど台詞がない。父親は、トムを乗せて湖にボートを漕ぎ出す(1枚目の写真)。そして、湖の端にボートを付けると(2枚目の写真)、トムを下ろし、隣の湖を目指し、ボートを引きずり上げ、今度は、斜面を下る(3枚目の写真)。

そして、2つ目の湖に漕ぎ出す(1枚目の写真)。そして、逃走1日目の夜が来て、ボートを岸に着け、簡単な食事をとる(2枚目の写真)。トムは、「ベンを殺したの?」と訊く。父親は、しばらくして 「大事なことは、お前と俺がここにいることだ」という〔殺していないのに、なぜ曖昧な言い方をしたのだろう?〕。この言葉で、トムはベンが殺されたと思い込み、横になっても父の背中をじっと見る〔睨んでいるのか、ただ見ているだけなのか、はっきりしない。従って、なぜ見続けるのかも分からない〕。翌朝、父親は、再びオールをにぎり、ひたすら漕ぎ続ける(3枚目の写真)。途中で、一旦手を止めた父親は、舌の様子を手で確かめ、「大きいな。長くなってる」と、おかしなことを言い出す。トムが父親を見る目は、不審に満ちている。そして、再び日没〔丸一日、ボートを漕いでいたことになる〕。書くのが遅くなったが、ケーブル・フェリーとその先のガソリンスタンド・ホテルまでは、ロケ地と映画の中での “現実” とが良く合っていたが、家の近くの湖は完全な創作。Charlottenbergの東には、先の地図で分かるように、非常に多くの湖〔黒い部分/後氷期地殻隆起により形成された〕があり、そのうちの1つと思いたいが、実際には、どの湖も、湖岸もしくは、ごく近くまで道路が通っている。さらに、湖の大きさは、形成された理由から細長いものが多く、幅はほとんどが1キロ以内。長さも、一番長いもので30キロ。競技でなく、普通に公園のボートを漕ぐスピードは時速11-13キロと、あるサイトに書いてあった。そうなると、横断は10分以内に終わってしまうし、仮に30キロあっても、3時間はかからない。そして、この緯度の地点だと、8月の日の出は5時、日没は10時。だから、このシーンで、朝から夕方まで漕いでいること自体ありえない〔10時間漕ぐとして、120キロも進む〕

翌朝、父親は再びボートを陸上に引き上げる(1枚目の写真)。そして、新しい湖に入るが、ボートに乗ったトムは、水の中に何かが沈んでいるのを見る(2枚目の写真)〔幻覚/悪魔なのか、別の物なのかすら分からない〕。そして、父親はまたボートを引きずって山を越す(3枚目の写真)〔すぐ日が暮れるのは、“漕ぐ” より “陸上の移動” に時間が取られるせいなのか?〕

あまりに地形が険しいので、父親は、「この先、湖があるか見に行ってくる。ここで待ってろ」と言う。そして、少し歩き始めた時、トムが、「待って」と声をかける。そして、変な質問をする。「僕が死んだらどうするの?」(1枚目の写真)。「俺も死ぬ」。「なぜ? 一人になりたくないの?」。「そうだ」。「友だち いないの?」。「いない」。父親が、またボートを漕いでいる。すると、遠くから飛行機の音が聞こえてきたので、「俺たちを捜してる」と言うが速いか、全速で漕ぎ始め、木の陰に隠れる。すると。上空をセスナが飛んでいく(2枚目の写真)。このことから、ベンが無事に人里に辿り着き、母に電話をかけ、母が警察に通報したことが分かる。これ以上ボートで逃げるのは危険だと判断した父親は、オールでボートに穴を開け、湖に沈める(3枚目の写真)。

逃走3日目の夜。トムが眠っていると、背後で悪魔が起き上がり、口から長くて黒い舌を伸ばすと、トムの口の奥まで入れる(1枚目の写真、矢印は悪魔の顎)〔ボートで、舌が「長くなってる」と言ったのは、このシーンの伏線/ただし、挿入の意味は不明〕。トムが息を詰まらせて目を覚ますちと、前方にいた父が懐中電灯を点けてトムを照らす。そして、「悪夢でも見たのか?」と訊く。トムは首を横に振る。「奴なのか?」。頷く。父親は、懐中電灯で周りを調べる。何もいない。2人は、真っ暗な森を歩き始める。トムは、「何も食べずに、何日歩くの?」と尋ねる。「当分〔Assez longtemps〕」。「2・3日?」。「2・3週間だ」。「そしたら、僕たち死ぬの?」。「違う」。2人はしばらく歩き続け、突然父親が止まる。「ここで休むの?」。「そうだ」。「ここ、ダメだよ」。「なぜだ?」。「後をつけられてる。怖いよ」。「奴に、来いと言え」。「イヤだ」。「やれ。俺を助けると思って。ここに来たのは、そのためだ。奴は、夜 眠らせてくれあに。つきまとって、イライラさせる。すべてを悪い方に動かす。だから、呼んでくれ。止めさせないと」。父親はトムを抱きしめ、強要する。すると、父親の背後、トムの前に悪魔が姿を現す(2枚目の写真、矢印)。父親は、「やれ、トム、話せ、俺のためだ」と言い続ける。そして、ある瞬間、トムが気付くと、自分を抱いていたのは、父親ではなく悪魔だった。トムは、驚いて数歩下がる(3枚目写真、矢印は悪魔)。

この時、トムは気付く。自分の前にいるのは、父親なのだと。悪魔は、父親の “ありのままの姿” なのかもしれない。そして、トムには、それが見えてしまう。“誰からも嫌われるようなこと” をしてきた、そして、その行為が “誰からも嫌われる姿” となって具象化した、孤独な男の姿として。“悪魔=父” は、トムに手を差し出す。トムは、それが父だと悟り、抱き着く。2人は手をつないで歩く。そして、トムを疲れさせまいと 肩車する(1枚目の写真、矢印は悪魔)。トムは、“悪魔=父” の頭に頬をつけて眠ってしまう。周りの木の本数が少なく場所まで出ると、“悪魔=父” はそっとトムを降ろし、地面に寝かせる(2枚目の写真、矢印は悪魔、暗黄色の点線で輪郭)。

翌朝、明るくなると、トムが横たわっている場所が明らかになる。木の本数が少なくなったのは、伐採現場だったから。トムの背後では、巨大な伐採用の重機が、太い木を簡単に切断している(1枚目の写真)。この機械があまりに恐ろしかったので、よく分かるように、ネットでいい動画を見つけた(→ココをクリック)。日本のように、木を1本1」本大切に切るのではなく、こんな “暴力的” な方法が “省力化” の名のもとに平気で行われていることを知らされるのは悲しい経験だった。騒音で目を覚ましたトムは、辺りを見回し父の姿を捜す。そして、「パパ!」と何度も叫ぶ。その声に気付いたのか、姿が見えたのか、重機の作業員がトムの方に歩いて来る(2枚目の写真)。「ハロー」。トムが作業員に救出されたのを確認すると、木に隠れていた “悪魔=父” は、森の中に泣きながら去って行く。

場面は変わり、材木を満載した大型のトレーラーが、ケーブル・フェリーに乗っている。そして、トムは、その助手席に座っている。行く手に見える湖の西岸には、パトカーが止まり、その横に2人が立っている。フェリーが近づくと、それが、兄ベンと母であることが分かる(2枚目の写真)。

夜、パリの自宅の寝室で。ベンが、「トム、訊いていいか?」と声をかける。「いいよ」。「彼、死んだと思う?」。「うん」。ベンは懐中電灯を点けると、自分の顔に当て、「なあ、トム… 悪魔を見たってお前が言った時、ありえないって思ったけど、間違ってた。きっと、ホントにいるんだ」と言う(1枚目の写真)。それに対し、トムは、「僕も間違ってた。悪魔なんかじゃなかった」と言う。ベン:「なら、何だったんだ?」。トムは何も言わない。最後に、雪に埋もれた森が映る。「“悪魔=父” は、どうなったのだろう」 という疑問を残しつつ。

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