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Ladybugs 恋のレディ&レディ?

アメリカ映画 (1992)

ジョナサン・ブランディス(Jonathan Brandis)は1984から1996年にかけてTVで絶大な人気を誇った子役だが、残念なことに映画への出演はほとんどない。その中で代表作をあげるとすれば、この映画だろう。邦題はひどいものだが、原題は『レディバッグス』。意味は「てんとうむし」だが、中学生の女子サッカーチームの名前だ。ジョナサンは、そのチームを優勝に導くためにバツイチ・ママのダメ彼氏から頼み込まれ、「女装」してマーサとして入団するマシューを演じる。ジェンダーやゲイを除けば、女装する少年の映画は少なく、『フランスの友だち』(1989)の中で、ドイツ軍から逃げるためアントワーヌ・ユベールが少女に扮装する場面と、『ぼくが天使になった日』(2000)で、アレックス・D・リンツが自己表現のために派手な服を着てスペリング・ビーに出る場面を除けば、『ハックフィンの大冒険』(1993)の中で、状況視察のためイライジャ・ウッドがごく短時間女装するコミカルなシーンがあるくらい。『The Boy in the Dress(ドレスを着た少年)』(2014)では、チーム全体がドレスを着てサッカーの試合をするが、それはドレスを着て別人になりすまして登校したため退学になったチーム1のプレーヤー(Billy Kennedy)を助けるため(1枚目の写真)。サッカーの選手という点では この映画と似ているが、サッカー中心の映画ではないし、女装は嫌々ではなく積極的だ。この映画の面白いのは、無理矢理女装させられる点。それをOKした最大の理由は、声すらかけられない好きな女の子がチームにいるから。そこで、ハリウッド映画らしいドタバタ劇が発生するが、結構良くできている(あらすじでは、その部分を、写真を小さくして詳しく紹介)。因みに、脱線するが、女性が男装してサッカーで活躍するのが『アメリカン・ピーチパイ』(2006)。主演は、アマンダ・バインズ(2枚目の写真)。彼女も、ジョナサン同様TVで絶大な人気を誇った子役だ。
  
  

マシューは、自分の母に、変な営業マンのチェスターがまとわりついているのを胡散臭く思っている。平気で調子のいいことを並べるような態度に、不信感を持ち、チェスターには素っ気ない態度を取り続けていた。そんなある日、せっかく学校で、好きな女生徒に声をかけるチャンスができた時、下心があって学校に来たチェスターに、強引に車に引っ張りこまれる。チェスターは、ヒラの営業マンから昇進しようと社長に掛け合いに行き、下手に使ったおべっかのせいで、会社がスポンサーになっている少女サッカーチームのコーチにさせられてしまう。そして、この常勝シームの優勝を期待されるが、実際に会ってみると、選手は1人を除き1年目のど素人ばかり。チェスター自身もサッカーのイロハも知らないので、緒戦は惨めな惨敗。チェスターは自分のクビがかかっているので、自分が知っている唯一のサッカーの選手マシューに教えを請うことにした。それが、車に引っ張り込まれた理由。マシューは、最初は乗り気でなかったが、チームに好きな女生徒がいるのを見て、急にやる気になり、どうしたら勝てるかについてチェスターに一席ぶつ。それを聞いたチェスターは、マシューこそ救世主だと思い込み、マシューにカツラをかぶせ、マーサとしてチームのメンバーに紹介する。マーサの加わったチームは急に強くなったが、マーサが他の同僚選手を無視し、すべて一人でやろうとしたため、勝つことはできなかった。しかも、その独善的な態度をチェスターに責められると、あっさりやめてしまう。勝てる見込みのなくなったチェスターは、マシューの母に、今まで嘘を付いていたと告白しようとするが〔結婚もとりやめ〕、そうした態度にチェスターの人間性を見たマシューは、マーサとして加わることを了解する。それからのチームは、マーサの適切な指導もあり、連戦連勝。遂に、準決勝まで勝ち進むが、その試合の中で凡ミスをした社長の娘(マシューの好きな生徒)が、ベンチ送りになったことから、大きな異変が起きる。マシューが1人で家にいる時、そこが社長の娘が訪ねてきたのだ〔彼女は、マーサに好意を抱いている〕。ところが、その直後に母とチェスターが帰宅する。両方の板ばさみになったマシューは、マーサになったり、マシューに戻ったりをくり返し、何とか急場をしのごうとするが、結局、母に女装しているのを見つかってしまう。結果として、チェスターは出入り禁止になり、マーサを試合にも出せなくなる。大事な決勝の日、チェスターは、マーサなしで敵とぶつかるが、前半は粉砕。そこにマシューが現れ、チェスターはマーサの正体を選手達にバラすことで戦う意欲を引き出し、勝利をつかむ。マシューも、マーサとしてではなく、マシューとして好きな生徒と付き合うことができるようになる。極めて単純で、子供っぽい内容だが、最もジョナサン・ブランディスらしい映画だと思って観れば、とても面白い。

故ジョナサン・ブランディスの当たり役。ジョナサンは1976.4.13生まれ、映画の撮影は1991.7-9なので、撮影時15歳。最近、中学生になると急に大人っぽくなる子役が多いが、ジョナサンは14歳の役を順調にこなしている。普通なら、顔の表情が固定化する年代だが、コメディが得意のジョナサンらしく、表情は多彩だ。女装の場面は、変にメイキャップしていないので、かえって役柄に信憑性が出ている。


あらすじ

映画の冒頭、インチキがましい「自己啓発セミナー」の様子が写される。大勢の参加者の中に、老齢のチェスターもいる。この映画の唯一のミス・キャストだ。Rodney Dangerfieldは素晴らしく巧いのだが、年齢が撮影時に70歳。これでは、①現役のセールスマンで、営業成績No.1で昇進を狙っている、②主人公のマシュー(14歳)の母親との再婚話を進めている、という設定とはどうみても合わない。もっと若いコメディ俳優を持って来ていたら、もう少し現実味があったのにと思う。例えば、Steve Martin(当時46歳)とか、John Cleese(52歳)とか。さて、チェスターは、セミナーが終わると、求婚相手のベスの家に直行する。家に入って行くなり、置いてあったラグビー・ボールをつかむと、居間でTVをボーっと見ているマシューに、いきなり、「おい、マシュー、キャッチ」と投げる。マシューは、チェスターを嫌っているので「聞く耳」はないし、たとえあったにせよ、リラックスして床に寝ている状態から、飛んで来るボールをキャッチできる体勢になるには時間がかかる。ボールはお構いなしに投げられ、TVの横のサイドボードのガラスを粉々にする。マシューは、じろりとガラスを見ただけ。チェスター:「惜しかったな。母さんはどこだ?」。マシュー:「さあね。忙しいんだ」〔ヒマの極致〕。その時、マシューが見ているのは、踊っている女性のお尻。それに対してチェスターは、「おい、近寄りすぎると目に悪い〔strain〕ぞ」。そして、「後で、他の場所もおっ立つ〔strain〕かもしれんしな」と付け加える〔この映画、内容は子供向きなのにPG-13なのは、チェスターの言葉に下品な表現が多いから〕。マシューは呆れて黙殺(1枚目の写真)。庭に出て行ったチェスターはベスと親しげに話を交し、ベスはそんなチェスターが気に入っているので抱きつく。チェスターは持ってきたバラを渡し、「明日の朝10時に大ボス〔社長〕のモーレンさんに会いに行く。昇進は確実だ〔in the bag〕。今から、ウェディング・ベルが聞こえちまう」((2枚目の写真)。「いいわね。でも、もう何度も聞いたわ」。「マシューとも、うまくいってる」(3枚目の写真)。「この前のクリスマスはひどかったろ。BB銃〔子供用の空気銃〕を贈ったら、背中に標的の付いたトレーナーをくれた」「イースターには、Ex-Lax〔チョコ風味の下剤〕でできたチョコのウサギをくれた」「だが、そんなのは卒業だ。俺は、最高の父親になってみせる」。そこまで聞いていたマシューは、見切りをつけて立ち去る。彼の不信感は以前とどこも変っていない。
  
  
  

チェスターは、「自己啓発セミナー」とベスへの公言の相乗効果もあって、意気込んで社長室を訪れる。ちょうどその頃、社長室には夫人が来ていて、「ブラッドは、立派なコーチだったけど、もういない。あなた、新しいコーチが必要よ。レディバグスを、今年も優勝に導けるような人が。私たちの娘を、負け犬のチームなんかに置いとけないでしょ? 期待してるわ。お互い幸せを大事にしてきたでしょ。言った通りにしてね」と言って部屋を出て行く。入れ違いに入って来たチェスターは、「これまで12年間、脇目も振らず働いてきました」と昇進を念頭に自己セールスを始めるが、社長は何も聞いていない。最初から、追っ払うつもりでいたからだ。だから、チェスターの長広舌も全く効果がない。そのうち、電話がかかってきてゴルフ談義が進む。その間、チェスターは社長室にずらりと並んでいる優勝カップを見ている(1枚目の写真)。そして、電話が終わると、もっと 「ご機嫌取り」に徹しようと、「あなたは、名プレーヤーなんですね。すごいトロフィーじゃないですか」と持ち上げる。そして、つい余分な一言を。「私達には いっぱい共通点がありますね。モーレン産業に最善を尽くしてきましたし、2人とも、サッカーの選手でしたし」。社長は、特にサッカー好きではなく、会社がスポンサーになっている少女サッカーチームのレディバグスが、夫人の熱心な後押しのお陰で優勝を続けているだけなのだ。そこに、夫人が戻ってくる。社長は、チェスターを、元サッカー選手だと紹介する。さっそく興味を示した夫人は、ポジションを尋ねる。サッカーのことなど何も知らないチェスターは、答えに詰まって「キッカー」だと答え、夫人は再度ポジションを尋ねる。「スイーパー、それとも、フォワード?」。チェスターの答えは、実にいい加減。「スイーパー、フォワード、バックワード、外野、タイト・エンド、何でもこなしました」。最初の2つは夫人の言葉を借りただけ。バックワードはスポーツ用語ではないし、外野は野球、タイト・エンドはアメフトからの借用だ。しかし、「もう少しでプロになるところでしたが、鼠径部の筋肉が肉離れしたもので」と嘘を重ね、さらに、「このトロフィーを見た時、常勝チームを持つことの素晴らしさを、実感しました」と言ってしまう。夫人には、「チームを持つ」は「チームをコーチする」に聞こえ、これぞ捜した次期コーチだと大喜び。さっそくチェスターに辞令が下りる。チェスターは、部下のジュリーと一緒に「常勝」チームを見に行く。2人とも、サッカーは11人ですることしら知らない「音痴」。それなのに、部下が持ってきた 『絵で見るサッカーのルール』という入門編ですら、「前に、『セックスの100の体位』を読んだら、後で牽引治療が必要になった。本は信用できん」と無視。選手たちを集め、「名前と、昨年のゴール数を言って欲しい」と訊き始めるが、3人訊いたところで、3人とも「ど素人」だと分かり、昨年チームにいた選手に手を上げさせる。上げたのはたった1人だけ(2枚目の写真)。これでは常チームどころか、常チームになりかねない。その心配は、最初の試合で現実となった。全く手も足も出ずに完敗したのだ。試合の後、観戦していた社長がやってきて、「チェスター、君も知ってるように、私は負けず嫌いの人間だ。そして、1番が大好きだ。もし、君が初心者の一団を常勝チームに変えられたら、君にはリーダーシップがある。この種のリーダーシップこそ、営業部門のトップに相応しい」と話す。勝たなければ、良くて万年ヒラということだ。次に現れた夫人はもっと手厳しい。「信じられない。何よこのザマ。次にはちゃんとやってちょうだい」(3枚目の写真。背後の得点板には「0:9」と表示されている)。
  
  
  

中学で。授業が終わり、マシューが友達と廊下を歩いていると、前を 好きな女生徒が歩いている。「彼女だ」。「行って、話してこいよ」。「できないよ、ポール。何言ったらいいか分からない」。「褒めるんだ。女の子は同じさ」(1枚目の写真)「目や唇や髪が素敵だと言えよ。何もかもが好きだって」。「そんなこと言えるもんか」。そして、「忘れてくれ、ポール、僕には無理なんだ」。ポールは、ラグビーボールを取り出すと、「おい、マシュー、ロングパスだ」と声をかける(2枚目の写真)。マシューが走り出すと、「もっと遠く」。そして、彼女の進行方向に向かってボールを投げる。マシューは、柵を飛び越し、倒れながら巧くチャッチする。それを見た彼女が、「ナイス・キャッチ」と声をかけてくれる(3枚目の写真)。マシューは大喜び。ポールの合図で、後を追おうとするが、その時、バンでやってきたチェスターに邪魔される。
  
  
  

「おい、マシュー、飛び乗れよ。話がある」。「遠慮しとく」。「母さんに、話してくれと頼まれたんだ。なあ、乗れよ」〔また、嘘。マシューはこの嘘付き人間が嫌いなのだ〕。「丁寧に、断わったぞ」。「こんなのバカげてる。乗ってくれよ」。「乗る気はない。だからつけてくるな」。しつこそうな様子に、おせっかいおばさんから、「大丈夫なの?」と声がかかる。マシュー:「知らない人〔stranger〕じゃありません。変人〔strange〕ですが」(1枚目の写真)。マシューは、こう答えた以上、仕方なく車に乗る。「分かった、チェスターフィールド〔イギリスのサッカー・チーム、ここでは蔑称〕、何の用だ?」。チェスターは、マシューの学校の成績のことを取り上げ、「将来のことを考えろ」と目的外のことを話していたが、マシューに「聞いておきたい。ハロウィーンじゃないのに、その格好は何だ?」と訊かれると、「そのことは後で説明するが、実は お願いがあるんだ」と本来の話題に持っていく。マシューは、「やっぱりな〔That figures〕。僕のためじゃない。自分のために来たんだ」と怒り(2枚目の写真)、車を降りる。マシューが最後の頼みの綱なので、チェスターも必死だ〔マシューはサッカーが巧い〕。「マシュー、助けが借りたい。俺たちの関係が良くないことは知ってる。だが、他にすがる相手がいないんだ」。そう切り出すと、後は、気楽になったのか、①昇進がダメになった、②マシューの母は 昇進したと思っているが、真実を話せない、③女子のサッカー・チームのコーチになった、④優勝したら昇進できる、と打ち明ける。マシューは、それを聞いて笑いを隠せない(3枚目の写真)。チェスターは、練習場に連れてきたので、様子を見て、悪い点を教えて欲しいと頼む。
  
  
  

マシューは、他の話だったら無視したろうが、好きなサッカーのことなので、興味と冷やかし半々で覗いてみる。そしてチームのあまりのひどさに絶句(1枚目の写真)。しかし、「キンバリー」という名が聞こえてきて、目を上げてよく見ると、そこには「彼女」がいた!(2枚目の写真、矢印が片思いの彼女キンバリー)。それを見たマシューの顔が快心の笑みに(3枚目の写真)。最高のチャンス到来だ。
  
  
  

ここで、マシューの頭に去来した「夢」が挿入される。マシューの顔は、さっきとよく似ているが、より 「でれっ」 としている(1枚目の写真)。2人は、フィールドで嬉しそうに抱き合い(2枚目の写真)、リムジンで飛行場に乗りつけ、自家用ジェットで高級レストランに行き、最後は目出度く結婚式を迎える(3枚目の写真)。これで、マシューの心は決まった。バックに流れるのは、エヴァリー・ブラザーズの名曲『All I Have to Do Is Dream(夢を見るだけ)』。映像にぴったりだ。
  
  
  

車に乗ったマシューの元に、チェスターが戻って来て、「見てくれたか?」と尋ねる。「ああ、見たよ」。「どうする?」。「仕方ないから、面倒みてやるよ」。「ありがたい。で、どう思った? 忠告してくれんか?」。「あんたには、計画ってもんがまるでない。選手は、スキルの基本を学ばなきゃ。足の速い子を前に持ってくれば、オフェンスがもっとマシになる」(1枚目の写真)「もし、僕がプレーするなら、アンカー〔中央のミットフィルダー〕をやるね。そうすりゃ、試合の流れをコントロールできるし、不慣れな子も助けてやれる。僕がプレーするんなら そうする」。その時、マシューはチェスターの顔に気付く。それは、「チームに入ってプレーしてくれ」という顔だった(2枚目の写真)。「なぜ、そんな顔で見るんだ?」「ダメだ。とんでもない。あり得ない! 気が違ったか、チェスター、バカ言うな! 絶対イヤだ!」。しかし、次のシーンで、マシューはカツラを被らされ、女装して「我らが新メンバー、マーサだ」と紹介されていた(3枚目の写真)〔現実だったら、練習の時だけ「男子」として加わればいいわけだが、そこは映画〕。みんなに拍手で迎えられ、チェスターの指示で無理やり笑顔を作る。しかし、「彼女」に、「ハイ、私キンバリーよ」と言われると、ついつい相好が崩れてしまう(4枚目の写真)。
  
  
  
  

マーサが加わった最初の試合。1人だけいる2年目の選手が、パスしてと頼んでも、ボールを最後まで1人で持ってシュート(1枚目の写真)。しかし、その後は、味方選手に、「ディフェンスだ! 何だそれ、この でき損ない!」「おいこの意気地なし、目を覚ませ。聞いてるか?」「ケツを動かせ! 何やってる!」(2枚目の写真)と罵り続け、点を奪われて結局負ける。チェスター:「サイコがプレーしてるみたいだな」。部下:「ノーマン・ベイツ〔ヒッチコックの『サイコ』の主人公〕みたい」。マーサの仲間受けは最悪。
  
  

帰りの車の中では、2人が口げんか。マシューが、「あんなのチームじゃない。クズの山だ。次の試合までに徹底改造しないと」と言うと、「その通りだ。お前だけのチームだったからな〔they're all about you〕。彼女達は、チャンスももらえなかった」(1枚目の写真)「俺は、お前に勝って欲しいんじゃない。チームに勝って欲しいんだ。マシュー、プレーの仕方を変えなきゃいかん。常勝チームになるには、人の和がないとな。今や、マーサは嫌われてるぞ」。そして、チェスターが試合中の「マーサ」の汚い罵り言葉を並べた上で、「マシュー、もっと女の子らしく振舞わないと」と言うと、「なら、別の女の子を捜せよ」(2枚目の写真)「その気にさせられたけど、もう終わりだ。僕は辞める」と捨て台詞を残して、車を出て行く。
  
  

勝利への道を断たれたチェスターは、ベスに会いに行くと、今までついてきた嘘を白状しようと決心する。「ベス、人生では時として欲しいものを取ろうとして、自慢にならんことをやってしまう。がんじがらめになって、嘘をつくこともな」。「チェスター、私をけむに巻くつもり? 何が言いたいの?」。この直前に、母が如何にチェスターを愛しているかを見ていたマシューは、チェスターが、「けむに巻いちゃいない。俺が言いたかったのは、実は…」と昇進できなかったと言いかけると(1枚目の写真)、隠れていたドアの陰から出てきて、「お腹空いた。夕食はどこ?」とチェスターに その先を言わせないようにする。そして、母に、「ねえ、ママ、実はね、新しいサッカー・チームに入るんだ」(2枚目の写真)「コーチがいい奴でさ。一度会ってみるといい」と言い、「最高にウマくいくさ」と チェスターにOKサインを出して見せる。
  
  

「女の子らしく振舞う」ことの「教育」の第一段階として、チェスターは「マーサ」の着るものを買いに、マシューをショッピング・モールに連れて行く。そして、子供服の店に入り、「何かお探しですか?」と訊かれ、「女の子の可愛いドレスを見せて欲しい」。「サイズは幾つです?」。チェスターは、マシューに「サイズ、幾つだ?」と訊く。店員が変な顔をしたので、「この子の双子の妹なんだ。2人とも同じサイズでね」と取り繕う。店員は、「ちょうど、素敵なプリント柄が入りました。ここにあります」と手に取り、「サイズもぴったりだと思います」とマシューに前で合わせてみせる(1枚目の写真)。「試着していいかな? 妹に合うか見てみたいから」。店員は少し変な顔をして試着室に案内する。マシューには、背中のジッパーが上げられないので、チェスターを呼び入れる。チェスターはジッパーを上げると、カツラも付けてみることにする。その時、小さな女の子を連れたおばさんが着て、試着室の前で順番を待ち始める。その場所からは、カーテンの下から、マシューの女性靴と、チェスターの運動靴が見える(2枚目の写真)。そして、聞こえてくる2人の会話。「覚えておけ、バレたら大変だ。お前のママに見つかったら、俺が殺されちまう」。「こんなことするなんて信じられない」。「心配するな、すぐに終わる」。「そっとやって、痛いよ」。「心配するなって。今はきついが、そのうち慣れてくる」。聞いていたおばさんは、足の動きと声の調子から、試着室の中でおぞましいことが行われていると想像する。そして、カーテンが開いて、老人と少女が現れたのを見て(3枚目の写真)、卒倒する。PG-13だけあって、実にユーモラスなシーンになっている。
  
  
  

2人は店を出て、モール内の公園を歩いている。「さあ、これで女の子になれた。後は、それらしく振舞わんとな」。しかし、その話が終わらないうちに、素敵な女性とすれ違い、マシューは振り返って憧れるように見る(1枚目の写真)。初めから落第だ。チェスターは首を持って振り向かせるが、自分が立ち止まって女性のお尻を見ているうちにマシューの姿が消える。マシューは、モール内のコーナーに置かれたパンチングボールを、女の子とは思えないフットワークで叩き、それを男性軍が茫然と見ている(2枚目の写真)。チェスターは、慌てて止めさせ、「今、トレーニング中なんだ。金曜の夜は負け犬〔underdog〕だったからな」と取り繕って、連れ出す。その後、2人が向かったのは公衆トイレ。チェスターは女の子の格好なので、女性用に入らされる。マシューは「やだよ。中にいるかも」と拒否(3枚目の写真)。チェスターはドアを少し開け、「誰かいるか? モールが火事だ」と呼びかけ、誰も出て来ないので「入れ、見張っててやる」。マシューが中にいる間、2人の男性が男子用に入り、次に品のいいおばあさんがやってくる。チェスターは、ドアに貼られた「WOMEN」の「WO」を手で隠し、「ここは違います、男性用ですよ」と言って、「男性用」の方に入れさせる。悲鳴が聞こえた時には、マシューは外にいて2人でトンズラ。「家じゃ絶対見ない何かを見たんだな」。
  
  
  

マーサの2度目の試合。マーサは、選手たちの配置を大幅に刷新した。そして、試合に入ると、蝶に見とれて注意力の散漫なチューのために、蝶の柄の入ったボールを見せ〔あり得ないが、お笑いなので…〕、ボールに集中させることに成功。チューとマーサでうまくパスをつないで、最後にチューがゴールを決める。両手を叩きあって喜ぶ2人(1枚目の写真)。そこに、ベスが、昼休みで仕事を抜け、様子を見に来る。慌てたのはチェスター。マーサを見破られたら終わりだ。しかも、運悪く、その時に限って、2人のすぐそばでマーサが、スローイン。チェスターはベスの体を後ろ向きにすると、思い切りキスして(2枚目の写真)、マーサが離れるまで離さなかった。マーサが次に てこ入れしたのが、気後れで身動きできないペスター。やる気を起こさせ、アドバイスを続けてボールをキープさせ、ゴール直前で2年目のラミナーにパスさせ、ゴール。マーサはペスターと抱き合って喜ぶ(3枚目の写真)。キンバリーがミスキックした時には、「気にするな、キム、次がある」と慰める。実に優秀な「キャプテン」だ。しかし、ボールが股間に当たった時には困った。痛くてうずくまるが、女性なら痛くないはずだ。看護婦が駆けつけ、「可哀想に、傷を見せて」と言われた時は、何とか耐え忍ぶ(4枚目の写真)〔『アメリカン・ピーチパイ』では、逆に、ボールが股間に当たってもアマンダ扮する「男子〕選手がちっとも痛がらないので、不審がられ、慌てて痛いフリをする場面がある〕。エースプレイヤーの「事故」に社長が飛んできて、「何が起きた? ひどいケガなのか?」と訊いた時、チェスターが「想像を絶します〔You have no idea.〕」と答えるのも面白い。次のゴールは、相手の蹴ったボールがたまたまキンバリーの開いた脚の間に挟まった時、すぐ後ろにいたマーサが「動かないで」と言って、そのまま蹴り込んだもの。これには、2人で肩を組んで喜ぶ(5枚目の写真)。最後は、マーサが1人でゴールを決めて4点目。見事な初勝利に社長夫妻も、チェスターと部下も大喜びだが、何と言っても嬉しかったのはマーサ。チーム全員からキス責めにあったのだ(6枚目の写真)。
  
  
  
  
  
  

チェスターは、ベスと談笑しながら車で送っていくが、途中で、マーサから緊急電話が入る。カーテレホンを取ったのは母の方だ。「チェスター、マーサよ」。それを聞いたチェスターは、慌ててしまい、車を蛇行させて急停車。「アライグマを見たと思って」と弁解し、電話を受ける。「マーサ、なぜ電話してきた?」。「母さんと話せと言うんか?」。「まさか」。「いいか、困ったことになった。今、モーレンのトコにいる。奥さんが選手全員を招いて、僕も連れて来られた」。「アイスクリームとケーキを食べたら、家に帰ればいい」。「あのな、そんな単純だったら、電話するはずないだろ」。その時、「マーサ、どこにいるの?」「出てらっしゃい」「隠れてないで」という選手たちの声が遠くから聞こえる。マーサは、バスタオルを体に巻いた姿だ。そして、壁の後ろに隠れ、「これから、みんなで素っ裸で泳ぐ〔skinny-dipping〕んだ」。それを聞いたチェスターは再び慌てて急停車。マーサ:「親が迎えに来ない限り、出さないって言うんだ」。チェスター:「心配するな、マーサ、何とかする」。「いつ?」(1枚目の写真)。チェスターはベスの手前、「頑張って耐えた子にはご褒美があるぞ」と曖昧な返事で電話を切る。モーレン夫人が邸内の大きな屋内コート〔バレーボールとバスケットボール併用〕で、コーチに個人指導を受けていると、チャイムの音が聞こえたので、玄関に向かう。そこは広大な大邸宅で、ベスの2LDKの小さな家とは大違いだ〔チェスターの住まいは一度も映らない〕。夫人が玄関を開けると、チュールというよりは紗幕に近いものを帽子につけた太ったおばさんがいて、娘のマーサを迎えに来たと言う。夫人は、その場で、大声で「マーサ、お母さんが見えたわよ」と呼ぶ。ドアから出てきたマーサは、チェスターの女装を見て思わず吹き出す(2枚目の写真)。夫人が家に入ると、チェスターは 「このことを一言でも漏らしたら、15歳にはなれないぞ」と脅す。その後は、レディバグスの連戦連勝の様子が、①短いプレー・シーン、②社内でのお祝い、③新聞記事、を交互に映してスピーディーに見せる。そして、準々決勝に勝った帰りの車の中で、盛り上がるシーン(3枚目の写真)で、次の準決勝シーンへとつなぐ。
  
  
  

準決勝でも、順調に点を進める。ゴールの直前でマーサがキンバリーにゴールさせようと、「いくわよ、キム」と声をかけ、「ダメよ。あなたやって」と断ったのを、「さあ、やって! 私を信じて!」とボールをパスする。しかし、キンバリーがキックしたボールはゴールを大きく外れてしまう。社長は、チェスターの元に直行。「キンバリーを外してくれ」と迫る。「チャンスをやりましょう、1回だけじゃないですか」と庇うが、「私にとって恥だ。あれは私の娘だ。いて欲しくない」と言い、「でも…」と渋ると、「追い出せ!」と命じる。チェスターに呼ばれたキンバリーはベンチに向かう。その後、試合は、マーサのゴールでレディバグスが勝ち、決勝進出を決める。マーサは、ベンチにうな垂れて座っているキンバリーを励ましにいく(1枚目の写真)。このマーサの「優しさ」が、これから始まる5分間のドタバタ劇の起因となる。非常によくできたドタバタなので、画像の縦幅を縮めたオリジナルサイズで詳しく紹介しよう。スタートは、マシューが自宅の今で寝転がってTVを見ているところから。チャイムが鳴り(2枚目の写真)、マシューが「ちょっと待って」と言って、キッチンに行って窓から覗くと外にはキンバリーがいる。「やばい!」(3枚目の写真)。マシューは、地下にある自分の部屋に滑り降りる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

マシューは、大急ぎでTシャツを脱いでドレスをはおり〔半ズボンははいたまま〕、カツラをかぶると、マーサになって階段を駆け上がる(1枚目の写真、矢印はマシューの黒い半ズボン)。マーサは階段脇のボードの上に立ててあった写真額を全て倒し、半ズボンを上げて(2枚目の写真)、ドアを開ける。「キンバリーなの? びっくりしたわ」。「マーサ。勝手に押しかけてごめんなさい。あなたがここにいるって聞いたから」。「構わないわ、ぜんぜん。TV見てただけなの」。「一緒に見ていい?」。「どうぞ、居間よ。入っててちょうだい。ドアを閉めてから行くわ」(3枚目の写真)。マーサは居間に入って行くと、「キンバリー、試合でのこと、ホントに残念だったわね」と慰める。「パパのチームに入れば、親密になれると思ったの」。「いい考えね。言えてるもの〔That makes sense.〕」。「ええ、だけど、ダメだったみたい。失望させちゃったから」。「ねえ、キンバリー、どの親もみんなプレッシャーをかけてる。心配しないで。そのうち、親も成長するわよ」。「マーサ、とっても気が楽になったわ。ありがとう。あなたって、一番の親友ね」と言って、抱きつく。マシューは、嬉しいが、緊張してしまう(4枚目の写真)。「ここって、暑いわね。コーラでも飲まない?」と逃げ出す。キッチンに行き、冷蔵庫を開け、コーラの缶を2個取り出して栓を開けた時、窓の外で声がする。母とチェスターが戻って来たのだ(5枚目の写真)。マーサは、居間との間のガラスドアのブラインドを下ろしてキンバリーがキッチンから見えないようにすると、階段を滑り降りる(6枚目の写真)。
  
  
  
  
  
  

すれ違いに、チェスターと母が食料品を抱えてキッチンに入ってくる。Tシャツに着替えたマシューは階段を駆け上がる(1枚目の写真)。「やあ、ママ、チェスター」。母が車に忘れた財布を取りに行くと、マシューはブライドの羽を開けてキンバリーを見せ、「彼女、マーサに会いに来たんだ。つい、さっき。母さんを絶対にキッチンに近づけるなよ」と言う(2枚目の写真)。「あと1試合なんだぞ。おじゃんだ。家から追い出せ!」。「分かった」。マシューは階段を滑り降りる(3枚目の写真)。
  
  
  

マーサが、階段を駆け上がり(1枚目の写真)、居間に向かってダッシュ。居間に入ったマーサは、ゆったりと キンバリーの横に腰を降ろし、膝の上に足を乗せて足を組む(2枚目の写真)。女性ならこんな座り方はしないが、幸い、キンバリーは気にとめない。しかし、「コーラは?」と訊かれ、マーサは「コーラ! そうだったわね」と笑いながら席を立つと、キッチンとの間のドアの下の開口部から、「チェスター」と呼びかける。「コーラを取ってきて」(3枚目の写真)。ところが、チェスターが缶を持って近付いて来ると、母がキッチンに入ってくる(4枚目の写真)。そして、「心を読んだのね。ありがとう」と言って缶を取ってしまう。マーサは居間の裏口からこっそり外に出ると、庭を突っ走って(5枚目の写真)、玄関から入り、すぐ脇の階段を滑り降りる(6枚目の写真)。
  
  
  
  
  
  

Tシャツに着替えたマシューは、階段を駆け上がるが、うっかりカツラを外し忘れてしまう(1枚目の写真、矢印はカツラ)。幸い、母は冷蔵庫を整理していて気付かない。チェスターが先に気付き(2枚目の写真、矢印はカツラ)、マシューが、「もっと大きな冷蔵庫が要るって言っただろ」と母に言っている間にカツラを取り去る。体を起こした母に、チェスターは、庫内を指して、「コーラ缶がもう1つないかな?」と言い、母が再びうつむいた隙にカツラを投げて渡す(3枚目の写真、矢印はカツラ)。マシューは、何もできないまま再び階段を滑り降りる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

マーサは、階段を駆け上がり(1枚目の写真)、庭を通って居間に入り、「ごめんなさい。コーラきれちゃってた。一緒に買いに行かない?」と提案する(2枚目の写真)。マーサは、かくしてキンバリーを連れ出すことに成功。少し歩いたところで、「ママがすぐ帰ってくるんだった。そしたら、洗い物とか、部屋の掃除しないと。また、別の時に来てもらえない?」と再提案。「いいわ。そうする」。そして、さらに、「いつか、一緒に映画に行かない?」とマーサを誘う。「いいわ。素敵ね」(3枚目の写真)。2人はそこで分かれ、マーサは玄関から入って行く。男女入れ替わりドタバタは、『アメリカン・ピーチパイ』でも見ることができ、一種の定番かもしれないが、階段の上下というワンパターンでこれだけ面白く見せるのは、脚本が巧いからだ。
  
  
  

しかし、マーサが玄関から入って、階段を降りようとしたまさにその時、母が現れる。「マシュー?」。「ママ!」(1枚目の写真)。その時、チェスターが入って来て(母に気付かず)、「マーサ!」と声をかける。母:「チェスター?」。チェスター:「ベス!」。かくして、三つ巴の悲劇が始まる。母:「ここで何が起きてるの? マシュー、なぜドレスなんか着てるの?」。マシューとチェスターは顔を見合わせるばかり。「いったい何なの? 知る権利があるわ」。「ベス。落ちついてくれよ。何でもないんだ」(2枚目の写真)「俺もガキの頃、同じことをした。女の子みたいにドレス着たんだ。ガキなんてそんなもんさ。いつもバカをやる。もっと正直なマシューは、「ママ、チェスターに悪気はないんだ。サッカー・チームを手助けして欲しかっただけさ。そうすりゃ常勝チームができる」と打ち明ける(3枚目の写真)。しかし、正直な言葉は、母の一層の怒りを買った。「マシュー、部屋に行きなさい」。「でも、ママ…」。「部屋に行きなさい!」。チェスターには、もっとずっと厳しかった。「これが、あの子が言ってた『新しいサッカー・チーム』なのね。いいこと、私に嘘を付くのと、私の息子を堕落させるのは別なのよ。よくもまあ、こんなこと できたわね」。「俺は、ただチームを勝たせたかっただけなんだ。そうすりゃ結婚できるから。そんな風に考えたことなかった」。この最後の言葉は、さらに怒りを募らせた。「そんな風に考えたことなかったのね? あんたは凄腕のセールスマンよ。だけど、これ以上、あんたのたわ言に付き合うつもりはないわ。今すぐ出てって!」。「悪気はなかったんだ。2人のためにやったんだ。愛してる」。「早く出てって!」。
  
  
  

その夜のマシューとチェスター。マシューはカフェのカウンターに座り、ふてくされてお代わりを頼む。店員に、「女の子の問題だろ?」と訊かれ、そうだと答えると、「どうした? ケンカしたのか?」。「そんなじゃない。ケンカなんかしない。すごくうまくいってる。よく笑うし、同じ音楽が好きだし、一緒にスポーツやってる」。「そのどこが問題なんだ?」。「僕が男だって知らない」(1枚目の写真)。こちらは、笑えるが真面目な悩みだ。一方のチェスターは、PG-13そのもの。バーに入って自分のやってしまった失敗にグチをこぼしていると、バーテンが「何をやったんだね?」と訊く。「彼女の息子に女の子の服を着せ、俺と一緒にプレーするよう説得しちまったのさ」(2枚目の写真)〔”play” には試合をするという意味もあるが、セックスするという意味もある〕。チェスターが変態扱いされてバーを追い出されたことは言うまでもない。
  
  

いよいよ決勝選。チェスターは、あの日以来、マシューとは会ってもいない。部下に訊かれ、「きっと、俺のことを恨んでる」。そして、「これから、もうマーサはいないって、女の子達に話さんと」。今度は、社長がやって来て、「今日は、キンバリー抜きでやってくれ。今日の試合に出て欲しくないと言ったら、家に帰ってしまった」と話す。チェスターが「マーサも来ません」と言うと、社長の態度は激変。「どこにいても構わん、ここに連れて来い。チームに不可欠だ。チェスター、君も彼女を必要としてる」と威嚇する。最後の言葉は、負けたらクビを意味している。決勝戦の開会が華やかに宣言されている時、マシューが姿を見せる。「調子はどう?」。「来てくれるとは思わなかった。どんなだ?」。「何とかやってる〔I'm hanging in there.〕」。「俺もだ」「ママはどんなだ? 俺には口もきいてくれん」。「僕とも、ほとんど話さない」。「その鞄は?」。「マーサさ。あんたが、この試合にどれだけ必死になってるか知ってるから」(1枚目の写真)。「お前って、いい奴だ。だが、どうしたもんかな〔I don't know.〕」。チェスターが相手チームのコーチのスパルタぶりを見ていると、マシューの姿が消える。そこで、チームの選手用テントに行くと、マシューがカツラをかぶろうとしている。チェスターは、「ちょっと待て。マシュー、ダメだ」と止める(2枚目の写真)。そして、カツラを取ると、「もうマーサは要らん。勝ちたいんだが、それ以上にお前の母さんを愛してる」と打ち明ける。マシューは、これまで仲が悪かったのは、チェスターが本気で母と結婚しようと願っているとは信じられなかったからだと話し、「もっと自分に自信を持てよ。あんたは大した奴だ」(3枚目の写真)「でなきゃ、母さんが好きになるはずがない」と持ち上げる。これは、マシューが「息子として」、結婚にGOサインを出したことを意味する。マシューはキンバリーがいないことに気付き、家に帰ったと聞くと姿を消す。一方、チェスターは、選手達を集め、「今日は、これまでで最高のプレーをしてみせろ! そうすれば必ず勝つ!」と鼓舞。拍手が沸くが、その直後に、「マーサなしで、やるんだ」と言うと、「何て言いました?」「何言ってるんです?」「彼女がいないと」と不安の声が巻き起こる。「今日は、来ない」。落胆する選手達。「マーサなしでも勝てる。試合は1人で勝つんじゃない、みんなで勝つんだ。ベストを尽くせば、勝者になれる!」と焚き付けるが、選手達はうな垂れたままだ(4枚目の写真)。
  
  
  
  

一方、マシューは、タクシーでキンバリーの家に向かっていた。家に着いたマシューは、タクシーを待たせておき、玄関のチャイムを鳴らす。ドアを開けたキンバリーが、「マーサ、こんなとこで何してるの?」と不審げに訊くと、マシューは、「これから すごく重要なもの見せるから」と言いながら(1枚目の写真)、ドアを閉め、カツラを脱ぐ(2枚目の写真)。閉まったドアの向こうから、キンバリーの「何てこと!」の叫び声が聞こえる。
  
  

試合の方は、一方的な運びで、前半が「0:3」で終了。レディバグスは手も足も出なかった〔最初のゴールまでわずか14秒。それでも、相手コーチは「たるんどる!」と叱っていた。その割に3点しか取れていないのは絶対に変なのだが…〕。チェスターが部下に、「家に帰ろうか。渋滞を避けないと」と話していると 〔完全に試合を投げている〕、そこにキンバリーを連れたマシューが到着。「キンバリーは準備できて、出たがってる」。「分かった、出てもらう」。チェスターは、「鞄持ってるな。マーサも要るんだ」と言い(1枚目の写真)、マシューをテントに連れて行く。そこで、チェスターはマシューをマーサに変える。呼ばれた選手達がテントに入って来てマーサを見ると、みんなが大喜びで飛び付く(2枚目の写真)。そこで、チェスターはホイッスルを吹いて注意喚起すると、「みんな、座って、落ち着いて」と芝の上に座らせると、「話したいことはいっぱいあるが、時間がない。君達、マーサを見て興奮しただろ」。歓声が上がる。「いいか、ちゃんと座ってろよ、マーサなんて いないんだ」。一斉に「何?」と声が上がる。「マーサは、マシューだ」とチェスターが言うと、マシューが自分でカツラを脱ぐ(3枚目の写真)。「何てこと! 男の子よ!」。中には、慌てて身だしなみを整える子もいる(4枚目の写真)。チェスターは、もう一度、「マーサは、マシューだ」とくり返し、「これを見せたのには訳がある。君達には、マーサはもう必要ない。勝つのに、男の子の助けなんか要らない。君達は女性だ。進歩的で、ブラだって焼ける… 付けるようになったらな」と笑いをとる(5枚目の写真)。そして、「あいつらなんか吹き消してやろう!」で大歓声〔結局、マーサの力は大きかった〕
  
  
  
  
  

キンバリーがいることに気付いた社長が、「5秒やる。キンバリーを追い出せ」と命じるが、チェスターは初めて反論する。「ここは、社長室じゃありません。ここで采配をとるのは私です〔call the shots〕」。「君を見損なったみたいだな。会社での将来など大事じゃないらしい」。「今、大事なのはチームです」。「何が大事か、忘れてしまったな」。「忘れてません。忘れたのはあなただ。どっちが大事か? 赤の他人からの賞賛か、自分の娘か? キンバリーはプレーさせます。たとえ私のクビがかかっても」。「チェスター、私は今日勝ちたいだけだ。一番になりたいんだ」。「一番一番、あなたはそればっかり。何でも一番になりたい。聞かせてもらえます? 最悪の恥をさらしてまで、一番になりたいのですか?」(1枚目の写真)。いよいよ後半が始まる。前半とはうって変わってレディバグスが大活躍〔少なからず嘘っぽいが…〕。「3:3」に持ち込む。そして、残り6秒で、レディバグスのペナルティキック。チェスターは、その時、相手にぶつけられたキンバリーにキックさせる。マシューが祈り、社長が目をつむる中、キンバリーがキック(2・3枚目の写真)。見事にゴールを決め、3人は大喜び(4枚目の写真)。社長は、いざ成功すると、「あれは、私の娘だ!」と大声で自慢する。
  
  
  
  

マシューとキンバリーが顔を見合っている。マシュー:「やったね。マーサは必要なかった」。キンバリー:「いなくなって寂しいわ。一緒に映画に行くつもりだったのに」。誘うような笑顔につられ、マシューは、「僕と行けば?」と尋ねる(1枚目の写真)。「喜んで〔I'd like that.〕」と快心の笑み(2枚目の写真)。マシューが、これならと 顔を近づけていくと、キンバリーも顔を近づけてくる。マシューは、最初、夢にまでみたキスをすることができた(3枚目の写真)。映画の最後で、社長が、副社長になったチェスター〔ベスとも結婚している〕に、「君のマシューが、私のキンバリーと付き合ってるそうじゃないか」と話しかけると、チェスターが後で、「想像以上に」と呟くシーンで、2人の親密さが分かる。
  
  
  

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