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Oliver Twist (TV) オリバー・ツイスト (2007年版) ②

イギリス映画 (2007)

右をクリック ⇒ 『オリバー・ツイスト』 の映画化による作品ごとの原作との違い
          (各作品ごとの個別シーンの違いが写真で見られる)

あらすじ

ビルは、オリバーを背中に乗せて懸命に走る。オリバーは「痛い、痛いよ」と呻くが、ビルは「黙ってろ。捕まっちまう」と小声で制止する。背後からは、3名ほどと犬が追ってくる(1枚目の写真、矢印は追っ手の持つランタンの光)。ビルの逃げていく先には幅20メートルほどの川と、その先に3連の石アーチ橋が見える。ビルは迷わず川に入って行く(2枚目の写真)。そして、橋の下まで来ると、首まで水に浸かって身を隠す。「静かにしねぇと、溺れさすぞ」(3枚目の写真)。
  
  
  

救貧院でのバンブルとコーニーの関係の進展を表す象徴的な場面が、のオリバーとナンシーのシーンの直後に挟まれていた。時系列的な意味はないので、ここに移動して紹介する。それは、夜の通路での出来事。お互い逆方向から歩いてきた2人が狭い通路でぶつかる。ところが、バンブルが太っているので簡単にはすれ違えない。コーニー:「少し窮屈ですわね?」。バンブル:「おっしゃる通り」(1枚目の写真)。「一晩中、こうしてます? 体をひねれば、何とか…」。そして、うまく抜けられる。「ほら、成功」。「失礼しました」。「謝る必要など。堂々として男らしい お体ですもの」。コーニーが去った後、バンブルは、自分に言い聞かせる。「いいか、バンブル、彼女は熟れたプラムだ。もぎ取るだけでいい」。その次に、フェイギンの「根城」での短いシーンが入る。そこではドジャーが、自分が今度の強盗に選ばれなかったことに、「サイクスさんと仕事ができるのは、ノリーじゃなく、おいらだ。一体、どうなってる? おいら、切り捨てかい、フェイギン。そんなのおかしいぜ」と不満をぶつける。そして、前節の橋の下のシーンがあり、もう一度「根城」に戻る。深夜になっても、フェイギンは「金づる」のオリバーが心配で、眠らずにいる。それを見たドジャーが再び近づいてくる。フェイギンは、「何じゃ?」と訊く。「何、苛ついてる? 一晩中、起きてるんかい?」。「平穏無事を 祈っとるんじゃ」(2枚目の写真)。「それって、ノリーのことだろ? あいつも おいら達と同じ。使い捨てじゃねぇのか?」。フェイギンは否定も肯定もしない。そして、もう一度、救貧院に戻る。バンブルは、「勇気だ バンブル。弱気な男じゃ女は物にできん」と自分に言い聞かせ、コーニーの部屋のドアをノックする。「誰だい?」。「わしです。バンブルです」。コーニーの声が、ぶっきらぼうの塊から、甘えた猫に変わる。「お待ちになって」。そして、手早く目をこすると、悲しそうな顔でドアを開ける。バンブルは、その顔を見て「泣いておられた?」と訊く。コーニーは、泣いているフリ。バンブルは、コーニーの代わりに紅茶を入れ、「砂糖を足しました、あなた一人でも十分甘いですが」と作戦を進める。バンブルは婦長が泣いていた理由を、「打ち明けてもらえませんか? なぜ、その魅力的な目が涙で濡れとるのか?」と訊く。「うちの境遇に共通の悩み。極貧と辛苦に耐え、友もなく孤独で、冷たく、硬いベッド。愛のない不毛の砂漠のような毎日。でも、何でもなか。お願い、愚かな涙は放っておいて」と涙を誘う。バンブルはさっそく、「そんなことは できん。コ-ニイさん告白するぞ。魂が揺さぶられた。心底から言いたい。わしの魂が叫んどる。好きだ、コーニイさん。愛しとるんだ。もし、バンブル夫人になったら、二度と孤独な思いなどさせん。ベッドは日曜の牛肉で暖かく、乾いた心にはバラの花が咲くだろう」と愛の言葉を綴る。コーニーは、聞こえないように呟く。「教区吏の妻になれば、教区の宴会に招かれる。夢みたいな話だわ」。バンブルは、勝機十分とみて、「結婚して、結婚だ!」と迫る(3枚目の写真)。コーニーは、「うちは あなたのものです」とOKを出す〔原作でも。他の映画でも、元院長夫人のコーニーの方が格上。バンブルはその財産目当て(当ては外れる)で結婚する。立場が逆なのはこの映画だけ〕
  
  
  

折角盛り上がってきたのに、ドアがノックされる。コーニーは、ノックした下働きを追い払おうとするが、「存じてますが、サリーが、なしても、死ぬ前に打ち明けたいと」と懇願され、仕方なく行くことに。サリーは2人だけなると、「罪ば 打ち明けます」と言う。コーニーにはそんな話はどうでもいい。しかし、サリーが、「娘の名はアグネス。赤ん坊の名はオリバー・ツイスト」と言うと、急に態度が変わる。以前、モンクスが来た時、その名が出たからだ。サリー:「手紙が…」。「どげな手紙?」。「出して欲しいと、頼まれた手紙… だけん、しなかったし、盗みも… 約束ば果たさんで、死んじゃう。死んでも、死にきれんけん」。「何を 盗んだ?」。「枕の下に…」。コーニーは、サリーの枕の下に手を突っ込む(1枚目の写真、矢印)。手紙を取り出したコーニーに、サリーは、「手紙ば出してくれるね、婦長さん。出すっち、約束して。オリバー・ツイストへの仕打ち… あの 娘さんにも… 悔やまれて… お願いたい、婦長さん」と死に行く者の最後の希望を訴える。コーニーは、「両方とも、関係者に渡してやるよ」と、ある意味では本当のことを述べる〔関係者と言い、手紙の宛先人とは言ってない〕。次のシーンは映画では少し先になるが、関連しているので一緒に紹介しよう。コーニーは意気揚々と部屋に戻ってくる。開口一番、「やったわ、バンブルさん」。「やった?」。「オリバーを捜しよった紳士… モンクスさん。これこそ、求めよったもの。婚約者を賞讃して下さるわね」。コーニーほど頭が回らないバンブルにはさっぱり分からない。そこで、「ちゃんと住所を もろうておいた沈着さを」と説明する。「あの男、陰険よね? 青年紳士のくせに。すぐに、手紙を出しましょ」(2枚目の写真、赤い矢印はモンクスの連絡先の紙、黄色の矢印はサリーから受け取った手紙)。そして、コーニーはすぐに手紙の封を破ろうとする(3枚目の写真、矢印)。役人的なバンブルは、「それは 私文書ですぞ」と止めようとする。「交渉上、価値を知らんと、値段が付けられない。でしょ? バンブルさん」〔彼女の方が、遥かにやり手〕
  
  
  

コーニーがサリーから話を聞き出した後、映画に次に表示されるのは、ビルがオリバーを抱いて帰宅するシーン(1枚目の写真)〔真夜中に家を出て、館に行き、負傷したオリバーを背負って夜のうちに戻れたのだから、余程近い場所に違いない〕。目を覚ましたナンシーは、「ビル、その子に何したの?」と驚く。「何も しちゃいねぇ。奴ら、銃と犬を…」。ナンシーには話なんかどうでもいい。オリバーが心配で、寝かせられたオリバーに、「坊や、撃たれたの?」と声をかける(2枚目の写真)。「てめぇの『坊や』だったな。一晩中、血の池だった」。「守ってやるって…」。「生かしといたぞ!」。「血まみれじゃない!」。ビルは、「捨ててきたって、よかったんだ」と反論し、「フェイギンに預け、酒を持って戻って来い」と命令する。ナンシーは、「召使いじゃない」と言いながら、オリバーを抱き上げる。「やい、言われた通りにしろ!」。ナンシーは強く反撥する。「子供を抱いてるのよ、ビル。あたいの腕に」。「出てけ」。ナンシーは、オリバーを抱いて家を出て行く(3枚目の写真)〔映画では、この後、コーニーが自分の才覚をバンブルに自慢するシーンが続く〕
  
  
  

フェイギンの「根城」に連れて来られたオリバーを手下の子供全員が見ている(1枚目の写真)。フェイギンは、「撃たれたのか?」と驚く。少し触れただけでオリバーは痛くて叫ぶ。ナンシーは、「氷みたいに冷たい。早くベッドに」と催促する。「屋根裏へ」。ナンシーは、「大丈夫だからね、坊や」と言いながら、オリバーを抱き上げる。ドジャーはそれを、面白くなさそうに見ている。フェイギンは全員に仕事に行くよう、カリカリして命じるので、もう朝になっていることが分かる。フェイギンはすねて残っていたドジャーに、「医者を呼べ」と命じる〔特別待遇〕。ドジャーは呆れて出て行く。その次に、朝のブラウンロウ邸が映る。ローズとベドウィンさんが2度目のオリバー捜査に出かける場面だ。モンクスは、2人が出かける動機に疑問を抱く。そして、場面はオリバーの寝かされた屋根裏に。怪しそうな医者が来て、オリバーの左肩に当たった散弾を1つ1つピンセントで取る(2枚目の写真)。見立ては、「軽傷ですな、表面的な」。フェイギンは「治るな?」と訊く。「さあ、傷は浅くても、感染が進行したら赤い血が緑の膿になり、腕の切断が必要に。たった1日で、死が激痛からの救いになるかも」〔コッホが細菌説を唱えたのは1876年、原作の38年後〕。散弾をとり終えると、「ヒルを持ってますよ」と勧める(3枚目の写真)〔1840年代には毎年600万匹のヒルが瀉血用にフランスからイギリスに輸入された〕。また、「毒抜きの湿布は どうです?」とも勧める。フェイギンは、「効き目があるなら、みなもらう」と金に糸目をつけない構えだ。ナンシーは、フェイギンらしくないので不審の目で見る。
  
  
  

医者が帰った後、ナンシーから、「看病してるから帰れない」と伝えるよう頼まれたフェイギンは、土産に酒ビンを1本持ってビルの家へ行く。ビルが眠りこけているのを見ると、体を揺すって目が覚めないことを確かめる。そして、顔を近づけると、「もし、あの子が死んだら… わしの、お宝… わしの褒賞、庇護への報酬が貴様のせいで死んだら!…」と脅すように話しかける(1枚目の写真)。ビルの愛犬は、主人に危険が及ぶと思い吠え始める。フェイギンは犬を蹴って、「うるさい!」と叫ぶ。そのどちらで目が覚めたのか分からないが、ビルがあっという間に起き、起きた時に割れた酒ビンのギザギザをフェイギンの顔に近づけ、「俺の犬を蹴ったな」と怒りをぶつける(2枚目の写真)。「わしを怒らせた」。「俺の犬を蹴った」。「ナンシーが、看病してると伝えてくれ、と」。「分かった。出てけ」。そう言ったにもかかわらず、ビルは放そうとしない。そして、「なんで、帰らん?」といたぶる。「帰ろうと、しとる」。「なんで、そうしねぇ?」。「あんたじゃ、ビル。お願いじゃ、行かせてくれ」。ビルは、フェイギンを外に出すと、体をつかんで路地に投げ飛ばす。フェイギンは、路地に仰向けに倒れる(3枚目の写真)。「こんな人生 嫌じゃ。もっと、ましになるはず」と悲しむフェイギンに、ビルは、「てめぇは、ずっと、太った、臭い、汚物まみれの故買屋だ。『ましになるはず』? 笑わせるな」と悪態をつく。
  
  
  

ローズとベドウィンさんが、オリバーのことを訊いて回っている(1枚目の写真)。しかし、モンクスは隠れてそれを見ていた。そして、2人が去ると、何を訊かれたかを訊きに行く(2枚目の写真)。これで、2人が服やレースを探していないことがバレてしまう。夕食の席で、ブラウンロウ氏は、 ワザと、「今日は どうだった、ローズ? 必要なものは、手に入ったか?」と訊く。「はい、伯父様。楽しく過ごせました」。「それは変だな。エドワードが会えないかと、同じ店を訪ねたそうじゃないか。それに、小間物屋では、今日の大半を過ごしていたはずなのに、何ヶ月も来たことがないと、言われたとか」〔言い方が、実に嫌味〕。ローズは、2人でオリバーを捜していたと白状する。ブラウンロウ氏:「盗っ人なんだぞ」。「いいえ、違います」。「盗んで逃げたんだ。なのに、捜したと?」。ローズは 言い方を変える。「家に籠っていても、姉〔アグネス〕は戻りません」。「私は、全力を尽くしとる。お姉さんと子供を捜すのに」。「アグネスは死んでいます」。「違う」。「姉なのです。10年も、便り一つ寄こさない。そんな人ではありません。二人の心は一つです。アグネスは死んでいます。だから、ぜひ、子供だけでも」(3枚目の写真)「ところで、オリバーは外に出て行き、きっと何かが。私はあの子を捜し続け、安全だと分かるまで止めません。安全じゃないから! あなたは盗っ人と呼びますが、違います。もし昔はそうでも、理由は明白。見ておられませんが、鞭で打たれていました。背中に傷跡が残るほど叩かれたんですよ! 子供が! 毎日、子供達がひどい目に… なのに、座ってスープを飲んでる!」。ローズは逆上している。「具合が悪いのでは?」と訊かれ、「そうじゃありません。怒ってるんです! 怒りで 一杯」と言うと、「失礼」と言って席を立つ。そんなローズなど見たことのないブラウンロウ氏はびっくりする。
  
  
  

様子を見に来たモンクスに、ローズは、「激情を赦して下さい。とても無分別でした」と恥じる。モンクスは、この機会を利用する。「あなたの激情には、ぞくぞくしました。その激情を、もっと巧く 使えないかと」。「何のことですか?」。「あなたの立場を考えたことは? 祖父が亡くなった時の。この家と家具一切は 私の物です」〔モンクスの頭の中には、もう1人の財産分与者であるオリバーのことなど眼中にない〕。ローズは、「姉の子供の物でも」と注意する(1枚目の写真)。「あなたは、この家の女主人になれるのです。夫と妻として、共に暮らせます。あなたの姉、私の父… かつて二人は一緒。今、あなたと私」。「二人は愛し合ってました。二人がどうあれ、私達の結婚の理由にはなりません」〔ローズには、その気は全くない〕。「『結婚の理由』は、私が望むからです」。そう言いながらローズの首を触ろうとするモンクスの手を、ローズははねのける。「触らないで、耐えられません」(2枚目の写真)。モンクスは、「いいか、プロポーズを熟慮したまえ。君のような立場の人間は 耐えることを学ばねば」と脅し文句を言って部屋から出て行く。彼が玄関に下りて行くと、ちょうど手紙が届き、メイドがブラウンロウ氏に持って行こうとしていた。モンクスは手紙を取り上げると、「もらっておく。私も 旦那様だろ、結局」(3枚目の写真、矢印)〔コーニーからの手紙だった〕と言い、自分のものにする。
  
  
  

一方、屋根裏では、オリバーの意識がしっかりしてきた。夕方になるまで見守っていたナンシーは、「強いのね、オリバー。大人でも危ないのに。ここまで良くなった。明日には踊れたりして」と冗談を言う(1枚目の写真、手に持っているのは水の入ったコップ)〔因みに、当時の水は非常に汚い⇒右の黄色をクリックすれば、ロンドンの風刺画雑誌「パンチ」に掲載されたイラスト 『ジョンの飲んでいる水』(1849年)の面白い絵が見られる〕。ナンシーは、オリバーに「眠るの。いい?」と言う。オリバーは、「起きた時、いてくれる?」と頼む。「もちろん、いるわ。よく寝て。いい夢を」。ナンシーは降りていき、フェイギンに、「夜中、注意しててね」と声をかけるが、普段はいるはずの時間なのに姿がない。ナンシーはビルに持って行ってやろうと酒場に向かう。すると、中に入って行くフェイギンに気付く(2枚目の写真、矢印はナンシー)。フェイギンは奥の小部屋に消える。尋常ではないので、ナンシーは酒ビンを買うと、こっそり奥に入って行き、隙間から中を覗く。フェイギンは見慣れぬ男と話している。男:「済んだか?」。フェイギン:「まだじゃ」。「オリバー・ツイストの死。お前は、それを請けた。なのに、まだ生きてる。なぜだ? もう時間がない」。この言葉で、ナンシーは何が何でも聞き漏らすまいと必死になる。「状況が変わったのかね、モンクスさん? わしが仕事しよる以上、急ぐことになった訳を、聞かしてもらわんと」。「明日、ロンドンを発ってマッドフォッグへ行く。証拠が出てきた。子供を始末しろ。手段は問わん。2日で戻る。まだ、生きてたら、自分でやる」(3枚目の写真、矢印は母斑)〔ナンシーには、極悪人が顔に母斑のある男だとしか分からない〕。こう吐き捨てるよう言うと、男は部屋を出て行く。
  

  
  

ナンシーがビルのところに戻ると、いきなり、「どこに いやがった!?」と飛びかかられ、酒ビンが落ちて割れてしまう。「あの子の看病よ」。「嘘つけ!! 何でこんな遅い? 誰と会ってた?」。「酒を持ってきたんだ。ご覧よ」。「出てったかと思ったぞ。俺を捨てて!」。「するもんか。あたいの夫だろ?」〔ナンシーは、ビルを心から愛している〕。ここで、ミニ・シーリズの第3回目が終わる。4回目の冒頭、バンブルの元に、モンクスからの手紙が届く。彼は、粥を配っているコーニーに、「今夜、来るとか」と伝える。「なら、こっちも準備せな。うちが話すわ」。「わしは何を?」。「うちの 勇ましい守護神」〔結婚前から、尻に敷かれ始めている〕。朝になり、ナンシーが出かけようとする。ビルは「どこに行くんだ?」と嫌がる。「オリバーの様子を見に」。「待たしとけ」。「目覚めた時いるって、約束を」。「あのガキは、おめぇの何なんだ?」。「あの子が好きなだけ」〔原作、どの映画より、ナンシーはオリバーを好いている〕。屋根裏にやってきたナンシーが、「起きた時にいてくれた」かどうかは分からないが、次の場面では、オリバーの傷を布で拭いている。「痛くして、ごめんね」。「大丈夫」。「ねえ、気が散るから話しなさいよ。あんたが、住んでた家のこと」。ナンシーは、昨夜の密談を訊き、ブラウンロウ氏にオリバーの危険を伝える気で、場所を正確に訊き出そうとする。そして、ブラウンロウ氏、ローズという名と、玄関のドアの色が暗い青色で、ノッカーがライオンの形だということが分かる(1枚目の写真)。ナンシーは、「ちょっと出かけるけど、すぐ戻る」と言って出て行く。向かった先は代書屋。ここで手紙を書いてもらう(2枚目の写真、矢印)。ナンシーが出かけている間、フェイギンは、カラスを相手に、「あの子と引き換えに、莫大な報奨を。こんな暮らしとは、おさらば。もう、すぐじゃ」と言うものの、何の行動も起こさない〔モンクスが「2日で戻る」と言ったのに、あまりに楽観的。これも、この脚本の弱点〕。ナンシーは、ライオンの形のノッカーのついた暗い青色のドアをすぐに見つけ、ドアの下から手紙を入れる(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

そのブラウンロウ邸では、ローズが、「伯父様、オリバーの捜査を認めて下さい」と頼む。「助けて あげたいのです」。「子供は出てった。なぜ固執する?」。「やりたいのです」。「エドワードが戻ったら相談しよう」。その時、ベドウィンさんが、「お二人宛の手紙が、ドアの下にありました」と言って、ナンシーの手紙を持ってくる。手紙を開けて読むシーンはあるが、内容は分からない(1枚目の写真)。次の場面は夜の救貧院。バンブルはモンクスを案内しながら、「旅は、いかがでした?」と訊くが、戻って来た返事は「黙れ、ばか者」。「物は、あるんだな?」。後ろを歩くコーニーが、「ちゃんと」と答える。一方、屋根裏では、ナンシーが眠っているオリバーを起こす。そして、ナイフを渡し、「誰にも見つからないよう、隠して」「誰か、真夜中に近づいたら、刺すの。いい? 刺すのよ」と教える。「なぜ?」。「目が覚めて、誰かがいたら刺すの。刺し続けるの」。「ナンシー?」。「ここから出して、戻してあげる。窓から光が差し込む場所に」。そう言うと、頬にキスして出て行く。残されたオリバーは、ナイフをじっと見る(2枚目の写真)。ナンシーは下に降りて行くが、これからすることを思うと心が乱れる。それが態度に現れる。フェイギンが、「大丈夫なのか? ビルに問題は?」と訊くと、「ビル・サイクスだけが人生じゃない」と言って出て行く。ナンシーの態度に疑念を持ったフェイギンは、「きっと、好きな男でも できたんじゃろ。ビルを、抑えられるのは、あいつだけじゃ。ビルを捨てたら、困るのは わしらじゃ」と言い、ドジャーに後をつけさせる(3枚目の写真)。
  
  
  

ここから、映画では、救貧院での場面と、ナンシーの場面が交互になるが、ここでは、まず救貧院での場面をまとめて紹介しよう。部屋に案内されたモンクスは、「私に寄こせ」と命令口調だが、コーニーは、手紙を右手に持ち、左手でロケットをぶら下げ、「幾ら?」と訊く。モンクスはうんざりしたように金貨を取り出す。「バンブルさんに渡して」。受け取ったバンブルは、「どうも ありがとう。気前の いいことで。半ソヴリン〔半ポンド〕ですぞ」と言う。「足らんね」。「それは無価値だ。恥を知れ。個人の所有物を返すのに 金を要求するとは」。「『無価値』? どこが? モンクスさん。この手紙は、無価値じゃなか。若い娘… 金持ちの紳士の被後見人が、息子と恋に落ちた。でも、息子には正妻がいて、娘は庶出の子供を妊娠。まるで、舞台で見るような魅惑的な話。そして、惨めで悲劇的な死。哀れなアグネス・リーフォードと、赤ん坊の父親の両方が死亡。あんたの父親なんでしょ、モンクスさん? それとも、本名で呼びましょうか、エドワード・ブラウンロウさん? ひどい醜聞。金持ちも、貧乏人同様、自制心ば失うんね。おぞましい話。おぞましい手段で、大金ば独占」(1枚目の写真、上の矢印はロケット、下の矢印は手紙)。そして、「要点は、お分かりでしょ? お金よ」。「あさましい方ですな」。「『あさましい』。でも、的をついてる。いっぱい人生見てきたから。あんたが遺産目当てだと、すぐ分かる。このオリバー坊やが見つかったら、遺産が半分になるんでしょ? 痛いわね。貧救院出の私生子と、遺産ば分けるなんて。身を切られる思いやろうね」。「渡すんだ」。「40ギニー〔42ポンド〕で、あんたの物」。「まさか」。この時、愚かなバンブルが「お互い、友好的に折り合いを」とモンクスに近づく。コーニーは、「40ギニー。手紙の宛先に、送ってもよかとよ」と脅す。モンクスは、バンブルを後ろからつかむと、首を杖で押さえる。「わしの気管が!」。「手紙を渡せ」。コーニーは全く動じない。「40ギニー」。「手紙を渡して、窒息する!」。「40ギニー」。今度は、バンブルの鼻に指を突っ込む。「手紙を渡せ。顔を引き裂くぞ」(2枚目の写真)。コーニーは表情一つ変えず、「40ギニー」(3枚目の写真)。モンクスは、今度は、コーニーを直接脅す。「手紙と一緒に、命も奪ってやる。躊躇などせん。お前を血の海に放置する。私は、すべてを否定する。だって、紳士が救貧院など訪問するはずなかろう? だから、手紙の価値を云々するより、自分たちの命の価値を考えたらどうだ?」。この脅しに、さすがのコーニーも屈する。モンクスは手紙とロケットを奪い、オリバーの誕生を記録した戸籍簿のページも破り取り、金貨を10枚ほど床に投げ捨てて去って行く〔原作と違い、コーニーは貪欲、バンブルは最低、モンクスはドケチ(25ポンド、何も言わずに渡す)〕
  
  
  

ブラウンロウ氏とローズは 手紙に書いてあった場所に行く〔原作ではロンドン橋〕。ブラウンロウ氏は乗り気でないが、ローズは会うまでは絶対に引き下がらないつもりだ。ブラウンロウ氏が「誰も おらん。これは悪戯だ」と文句を言った時、ナンシーが姿を見せる。ブラウンロウ氏は、ランタンを掲げ、「誰だ?」と怒鳴るように言う〔これほど嫌な感じのブラウンロウ氏は、他の映画にはない。演じているエドワード・フォックスには、『ジャッカルの日』(1973)のイメージがつきまとう〕。ローズは、「怖がります」と諌める。ナンシーは名乗った後、「あの子は逃げたんじゃない。罠にかけて取り戻したの」と。ずばり言う。「なぜ、連れて来なかった?」。その冷たい言葉に、ナンシーは、「なんも知らんと」と不満を漏らす。「何も、只でとは言わん。金なら少しは払ってやる」〔この言い方も嫌らしい〕。「金欲しさに、危険に身をさらしてると?」。ローズは、「もちろん違います」と宥める。「安全なのか知りたいのです」。「危険なの。助けてやって。死ぬのを望んでる奴が」。ローズは思わず「『死ぬ』?」と言う。ブラウンロウ氏:「ただの子供じゃないか」。「フェイギンって男がいて、モンクスって男のために、手はずを」。ローズ:「モンクス?」。「そいつが、死を望んでる。あんたみたいな紳士なの。上等の服を着て上品に話す。そいつは、首から顔にかけて赤い痣が」。ハッとしたローズは、思わず「伯父様」と、顔を見る。ブラウンロウ氏は、意固地になって、「違う! あり得ん」と否定する(1枚目の写真)。彼は、ナンシーの言葉ではなく、「モンクス=孫」の可能性を否定したのだが、ナンシーは自分の言葉が疑われたと感じる。「『あり得ん』? この目で見てるし、聞いたわ。モンクスがオリバーを殺せって」(2枚目の写真)。「嘘をついとる」〔孫を救うため、全否定している〕。「なんで、嘘なんか? マッドフォッグって所に行くって。証拠があるから。戻ってきたら、最後」。ローズは、「エドワードのリストには、マッドフォッグ貧救院が」とブラウンロウ氏に言う。「エドワードは無関係だ!」。ナンシーには2人のやり取りは意味不明。「なんで、エドワードなの? 名前はモンクス! 聞いてる?」。「聞いてます」。「明日、戻ってくるの。フェイギンが やらないんなら、モンクスが自分で殺すって。あたいには連れ出せない。あんたが取り戻して」。「私達 どうすれば?」。「フェイギンの居所を教える。でも、約束して欲しい。行くのは、明け方まで待って。巻き込みたくない人〔ビル〕がいて、なんとか しとくから」。「約束します」。ここに来ても、ブラウンロウ氏は「これは、作り話だ」と言う〔ひどすぎる〕。「信じてない。助けないんだね」。「助けます。私が、必ず。フェイギンの家は、どこに?」。「セント・ジャイルズの門に皮なめし屋が。階段の上に、錠が3つある扉。中に、オリバーが」。3人が立ち話をしていたすぐ横の窪みにはドジャーがずっと隠れて聞いていた(3枚目の写真、黄色の矢印はロジャー、赤の矢印は去って行くローズ、その左がブラウンロウ氏)〔原作でも、どの映画でも、ブラウンロウ氏はナンシーを信じる。モンクス=孫という設定が、明らかな違いに結びついている〕
  
  
  

ここからは、映画の順番通り。一旦 貧救院に戻る。コーニーが金を数えながら、「40ギニーやないけど、ウェディング・ドレスには十分」と独り言を言うと、それを耳にしたバンブルは、「金は、傷の手当てに使うべきですぞ!」と憤慨し、さらに、「疑問なんだが、そもそも、ウェディング・ドレスなんぞ要るんかね?」と言い出す。「妻に相応しいか? 息は詰まり、鼻の穴は裂ける寸前。なのに、40ギニーの一点張り!」と、コーニーの態度を強く批判する。そこは、ずる賢いコーニー。「もちろん、死ぬほど心配を」と言うが、「納得するには、ほど遠いですな」と跳ね返されると、さらなる一手。「うちに催眠を。蛇のような目で睨まれ… ありゃ悪魔たい。怖かった。あなたの腕が 恋しくて…」と言うと、立ち上がり、「胸がドキドキと。感じるでしょ? 罠にかかった鳥のような、この鼓動」と言いながら、バンブルの手を自分の胸に押しつける。この作戦で、バンブルはコロリと騙される。一方、ブラウンロウ氏は、家に帰るや否や、「あんな女を、なぜ信じるのだ?!」とローズを非難する。「私は、彼女を信じます」。「私が愛し信頼する孫は、卑劣な行為の象徴たる偽名など使わない」。「あなたのエドワード像と、私のは違います」。「嘘だ。すべてが嘘だ! なぜ 裕福な人間が子供の死を望む?」。その時、ローズはハッと気付く。「オリバーがアグネスの子だから。エドワードは突きとめたのです。この事実を」(1枚目の写真)「確実です。これで、すべて説明が。伯父様は信じておられますが、彼は、妻にならなければ追い出すと脅したのですよ」。「まさか、何かの誤解に違いない」。「指定の場所に行くべきです」。そして、ローズはもし、モンクスが架空の存在でエドワードが潔白なら、オリバーのことは2度と口にせず、大嫌いだがエドワードと結婚すると言う。こうなれば、ブラウンロウ氏は黙るしかない。次のシーンは、ドジャー。「フェイギー、最悪だ!」と叫びながら 「根城」に駆け込む。「恋人じゃねぇよ」。フェイギンは「ドッジ」と、制する。しかし、ドジャーは、そのまま まくし立てる。「ナンシーが チクった! サツが来る!」。「ドジャー、お前の間違いじゃ」。「間違っちゃ いねぇ!」(2枚目の写真)「チクったんだ! 名前も、何もかもだ!」。そこまで言って、ドジャーは、ようやく中にいるビルに気付く。ビルは、恐ろしい顔でドジャーを睨み付けると、そのまま立ち上がり、ドアに向かう。フェイギンは、「やり過ぎるなよ、ビル」と声をかけるのがせいぜい(3枚目の写真)。「何か事情が。ナンシーじゃぞ。無茶はよせ!」。
  
  
  

ナンシーが休んでいると、ビルが無言で帰って来て、ドアにかんぬきをかける。それを見たナンシーは、「ビル… お願い、聞いて。あんたのことは話してない」「お願い。ビル、やめて! やめて!」と頼むが、棒で叩き殺される(1枚目の写真、矢印は頭から流れ出た血)。手加減したと思っていたビルは、ナンシーが死んだと分かり、愕然とする。そして、「根城」に行くと、フェイギンを一発で気絶させる(2枚目の写真)〔ナンシーは、「行くのは、明け方まで待って」と頼んだが、フェイギンは気絶してしまいタイムリミットとなる〕。ビルは、そのまま屋根裏に上がって行き、「近づいたら、刺してやる!」と脅すオリバー(3枚目の写真、矢印はナイフ)を いとも簡単につかみ上げると、そのまま「根城」を後にする。
  
  
  

ナンシーが好きなドジャーは、ビルに何をされたか心配になって見に行く。ドアを開けると、ナンシーの死体がころがっている。ドジャーはその前にひざまづく(1枚目の写真)。ここで、ミニ・シーリズの第4回目が終わる。次が、最終の5回目。警官隊がフェイギンの「根城」に向かって走って行く。中では、フェイギンを含め、子供たちが逃げる準備に大わらわ。フェイギンが、荷物を持ってドアを開けると、そこには警官のボスがいて、「お出かけかな?」と皮肉たっぷりに訊く。そして、警官隊が踏み込む。ここで、場面は変わり、ビルがオリバーを連れて森の中を歩いている。「何で、そんな目で 見る? いいか、見て いやがると、目を潰してやる。下を向いてろ。歩け。ロンドンから離れろ」(2枚目の写真)。再び、「根城」。ブラウンロウ氏の声が聞こえる。「屋根裏には おらん。どこにもだ」。警官に囲まれたフェイギンが、「いました」と言う。「ベッドに押し込んで、保護してきました」。警官のボスが、「もう、殺したんだろ?」と訊く。「殺した? まさか、わしは傷一つ」。「これは何だ? え?」と、オリバーが持っていたナイフを見せる。「見たことありません。誓って。わしが傷付けるなんて。モンクスじゃて。死を望んどったんは」。ブラウンロウ氏が、「もっと詳しく」と要求する。「モンクスです。赤い痣のある」と、母斑のあるあたりを指で示す(3枚目の写真)。「奴の仕業です。わし じゃない」。「オリバーは、どこだ?!」。「サイクスが、連れて… 行き先は知りません。知ってたら言います」。ブラウンロウ氏は、「全市の捜索を要請する」と警官のボスに告げ、「すべての路地や地下室! サイクスを見つけ出さんと!」と言う〔孫に騙されていたと悟ると、今度は手の平を返して怒り心頭〕。フェイギンは、「あんたのために保護した。探しにくると思って。服も与えとる。好意でじゃ! 取り返してみせる。約束するよ!」と言うが、時既に遅し。警官のボスに「お前の『約束』なんか屑だ、ユダ公め」と言われ、ペットのカラスはその場で処分され、逮捕連行される。
  
  
  

ドジャーは、ナンシーの目を閉じ、まぶたの上にコインを置く〔三途の川(スティクス)の渡し賃〕。死体を毛布で覆っていると、外で、「ここだ! ビルの家だ!」と叫ぶ声がする。ドジャーがベッドの下にもぐり込むと、警官隊が突入する。これでナンシーの死が公に確認された。一方の森の中。早朝から歩き詰めのオリバーは、疲れて歩けなくなる。「立ちやがれ!」。「歩けないよ。お願い、解放して」。「どこにも行かせねぇぞ」。「僕を殺すつもり?」。「かもな。てめぇ次第だ。役に立て」。「『役に立て』って?」。「俺を守れ。俺のために話せ」。「何を話すの?」。「やったのは俺じゃない。できんかった。俺は、おめぇと外にいて、あいつとは離れてた」。「『あいつ』って? ナンシーのこと? ナンシーに何か…」。「何もねぇ!! 俺じゃねぇ。そう話すんだ」(1枚目の写真)。誰か他の奴だ。てめぇなら 分かるよな?」。「顔に血がついてるよ、サイクスさん」。その時、ビルの目に、森の中で微笑むナンシーの幻が見える。そして、マッドフォッグから戻る馬車の中。モンクスが、戦利品の、戸籍簿の1ページ、アグネスの手紙、ロケットのついたネックレスの3点を、満足げに見ている(2枚目の写真)。ブラウンロウ邸では、ローズとベドウィンさんがソファで肩を寄せ合っている。すると、下から、「ローズ! 警察だ!」と呼ぶ声が聞こえる。ローズは階段を駆け下り、「見つかったの?」と訊く。ブラウンロウ氏は、「ナンシーが…」と絶句。その意味を察したローズは(3枚目の写真)、泣き崩れる。
  
  
  

森の中。ビルの目には、ナンシーの幻が常に見えるようになる(1枚目の写真)。ビルは、森にいるせいだと思い、ロンドンに戻ることにする。「ロンドンに戻るの?」。「訊くな。歩け。田舎は嫌いだ」。そして、讃美歌を歌うように命じる。「魔よけになるような」。オリバーは 途切れ途切れに歌い始めるが(2枚目の写真)、幻は消えない。一方、「根城」に戻ってきたドジャーの見たものは、一箇所に固まって座っている手下の子供たち。1人だけ大型のイスにふんぞりかえっている子がいる。ドジャーは、その子に、「フェイギーは、どこだ?」と訊く(3枚目の写真)。「サツに、パクられた。俺たちも出てく。この「根城」は終わりだ。来たいなら来い。だが、仕切るのは俺だ」。自分の方が上だと思っているドジャーは、「勝手に やってな」と断る。
  
  
  

モンクスが帰宅すると、ベドウィンさんは、「旦那様と、ミス・ローズは応接間です」と告げる。モンクスが応接間に行くと、ブラウンロウ氏は、「早く戻ったな、エドワード」と言う。「個人的な用なので、すぐ終わりました」。そこで、モンクスは、暖炉の前に立っている2人の男に気付く。「あの人たちは? まさか、不都合でも?」。ブラウンロウ氏は、ずばり訊く。「マッドフォッグは、どうだった?」。モンクスは、「そんな陰気な地名〔直訳すれば、「泥霧」〕、知りませんね」とシラを切る。「お前は、マッドフォッグへ行った。オリバー・ツイストの誕生に係わる証拠のため。正直に答えろ、エドワード! どこにある?」。「お祖父様、ご乱心ですか?」。ブラウンロウ氏が目で合図し、待機していた2人の男がモンクスを捕まえ、証拠の品を奪う(1枚目の写真)。モンクスは、いったん奪われた手紙を奪い取ると、暖炉の火に投げ込む。しかし、ローズが必死になって、燃える前に取り出す。「姉の筆跡だわ!」。ブラウンロウ氏:「拘束しろ」。ブラウンロウ氏は、一番大きな戸籍簿を読み上げる(1枚目の写真)。「アグネス・リーフォード… 死亡」。覚悟していたことだが、辛いので一旦読むのを止める。「アグネス・リーフォードの男児… 父親不明… オリバー・ツイストと命名」。そこまで読むと、「私たちが捜しとる子供だ」と改めて言う。次に、ローズが姉の手紙を読む。「最愛の後見人様。希望を込めて。私の死期は迫り、お金もありません。あなたが失望されていることは承知しています。でも、ご慈悲にすがり、お許しを。私のためでなく、あなたの息子ウィリアムのために。私達 結婚するはずが、彼は亡くなりました。あなたや、エドワードもご存じのように、彼の子が、じき生まれます。私を、家に迎え入れる お積もりはなくても、子供だけでも、庇護していただけないでしょうか? 私の愛しい子供、男の子か女の子は、生まれようと必死です。あなたの孫には、どうか怒りをぶつけないで下さい。エドワードにお願します。異母弟か異母妹に会った時、父親の喪失を癒してやって下さい。大好きなローズ、もう会えなくてごめんなさい。あなたの不忠な被後見人、アグネス・リーフォード」。ブラウンロウ氏は、「さて、エドワード、どう弁明する?」と尋ねる。モンクスは、「偽物です」と答える。その言葉に激怒したローズは、「嘘つき!」と言うと、モンクスに飛びかかり、何度も手で叩く(3枚目の写真)。ベドウィンさんは、「おやめ下さい、こんな下司男に」と止める。
  
  
  

ブラウンロウ氏は、モンクスを1階の書斎に行かせる。階段を降りながら、モンクスは、「何たる 法外な振る舞い! ローズを妻にするのは考え直さないと」と言い、書斎に入ると、「お判りになるまい、僕に仕掛けられた欺瞞の罠が」と、事ここに至っても嘘で切り抜けようとする。「アグネスのロケットは?」。「盗まれた物です。手紙は、明らかに捏造。だから、燃やそうと… あなたを、とんでもない陰謀から護るため。僕は、驚きませんよ、ローズが加担していたとしても」。我慢できなくなったブラウンロウ氏は、モンクスの頬を引っ叩き、「不埒者! お前の口から出るのは騙りばかり! すべて分かっておる。邪魔になるからと、子供の殺害を依頼。お前のせいで、勇敢で正直な女性が殺された! ローズを非難するだと? 血にまみれた手をしおって。恥を知れ!」と罵る。それでも、まだモンクスは懲りない。「潔白なのに、なぜ『恥』を知るのです?」。「また嘘だ! お前など見たくもない! オリバーへの悪辣な行為! お前の異母弟なんだぞ!」。ここで、ようやくモンクスが本性を顕す。「奴こそ屑。非嫡出の蛆虫で、僕の財産に巣食うつもりだ」(1枚目の写真)。この言葉に、ブラウンロウ氏は鬼の首を取ったように喜ぶ。「とうとう、本音が出たな」(2枚目の写真)。そして、「お前を廃嫡する。遺言から除外し、相続人でもない。あの子を見つけたら、必ず見つけるが、すべてオリバーに譲る」と宣告する。「そんなことできっこない。みんな僕のだ! 僕の家だ!」。「お前は、船がインドに着くまで拘留される。私の所有地に行き、そこに留まれ。二度と ここに戻ることは許さん。戻ろうとしたら逮捕させる」。モンクスは最後のあがきを見せる。「お祖父様、再考を乞い願います。今の お言葉で、僕もやっと正気に戻りました。僕を廃嫡しないで下さい。弱さを憐れんで下さい」。「お前は、利己主義の塊だ。その傲慢さと冷酷さには吐き気がする! お前は、真の姿を巧みに隠しておった。さぞや愉快だったであろう」。「では、何か楽しんで暮らすことにしましょう。あなたが死ぬのを待つ間」。「待っても無駄だ」。そう言うと、ブラウンロウ氏はドアを開け、「さらばだ、モンクス君」と出て行くよう促す(3枚目の写真)〔その後、2人の男に護送され、馬車でインド行きの船が出航するまで監禁状態に置かれる〕
  
  
  

次のシーン。ドジャーがワイロを渡して牢に入って行く。そこにはフェイギンがいた。フェイギンは、「ベーコンの脂の付いたパンの皮を食わせるんじゃ」と悲しむ(1枚目の写真)〔ユダヤ教の食事規定「コーシェル」では、豚は不浄な動物とされる(反芻しないため)〕。そして、「ゼニが要る。裁判所の法定代理人じゃ。弁護士は金がかかる」と言う。しかし、ドジャーには、「すっからかん。ここに入るのに渡したワイロが最後さ」としか言えない。「なら、あのノリーじゃ。見つけてくれ。判事に証言してくれる。食べさせ 着させ 泊まらせたと。あの子を探せ、ドジャー! ノリーが鍵じゃ!」。「命にかけて、フェイギー! 死なせないぜ!」。一方のビル。もうロンドンの下町に入っている。オリバーは、ずっと賛美歌を口ずさんでいるが、ビルの後ろにはぴったりナンシーの幻がはりついている(2枚目の写真、矢印はナンシーの幻)。ビルは、気になるので、始終振り返る。そして、遂に我慢できなくなり、後ろを向くと、「失せろ! 消えろ! いなくなれ、こいつ!」と怒鳴る。手を放されたオリバーは、すかさず逃げ出す。突然 気が狂ったように怒鳴り出したビルを、通行人がジロジロ見ると、「何、見てやがる? 目ん玉、えぐり出すぞ!」と怒鳴る。「俺は、ビル・サイクスだ! 俺を見るな! この、虫けらども!」。彼の名前は、悲惨な女性殺しの犯人として新聞に出ていたので、群集からは、「ビル・サイクスだ!」の声が上がる(3枚目の写真)。ビルは逃げ出し、マンホールを開けて下水道に逃げ込む。ビルは、高さ3メートルほどある、煉瓦の下水道を走るのだが、このシーンは完全に間違い。フリート川と呼ばれるロンドンの下水道が映画のような姿になるのは、1860年代に入ってから。オリバーの時代は、1844年に描かれた右上の絵のような状態。これは、蓋のない下水渠で、汚物はこの中を通ってテムズ川に直接流れ込んでいた〔だから、コレラが何度も大流行した〕
  
  
  

一方、ビルから逃げ出したオリバーは、ブラウンロウ邸を目指して歩く(1枚目の写真)〔住所は、最初にナンシーが送った偽手紙に書かれていたのを見て覚えていたのかもしれない。道順は、その住所を言って、通行人に訊いたのかも〕。オリバーは、途中でドジャーに見つかる。ドジャーは、「ノリー! 待てよ!」と話そうとするが(2枚目の写真)、元々嫌われているので、「放っといて」と突き放される。「助けてくれ! 謝るから!」。しかし、オリバーは聞く耳を持たない。一目散に走って行く。「ノリー、頼む! 約束したんだ」。「行かないと」。最後の頼みの綱を失ったドジャーは、茫然とする(3枚目の写真)。
  
  
  

オリバーは遂にブラウンロウ邸に辿り着く。激しくドアがノックされるのを聞き、ローズが飛んで行って開けると、そこにはオリバーがいた(1枚目の写真)。ローズは、オリバーに抱きつき、傷ついた体を持ち上げると、そのまま家の中に入れてドアを閉める。オリバーは、「僕、どうしても言いたかった。泥棒なんかしてない、って」と言う。しかし、ローズには、既成の事実なので、「オリバーよ!」と叫ぶ方が優先される(2枚目の写真)〔必死に捜していた甥が見つかった〕。その後で、「ずっと捜してた。とても心配したのよ」と話しかける。「捜してたの?」。「そうよ!」(3枚目の写真)「ここが、あなたの家なの!」。2人は改めて抱き会う。ローズの声で、ベドウィンさんとブラウンロウ氏も姿を見せる。
  
  
  

順序は入れ替えたが、前節の前にフェイギンの裁判のシーンがある。流れを途切れさせたくないので、紹介を後に廻した。判事は、オリバーの時と同じ意地悪ファング。先のシーンでは、独断でめちゃめちゃしたが、今回は陪審員がいる。評決は、盗品の売買、重罪犯の隠匿、キリスト教徒の少年の誘拐と殺害謀議について、全員一致で有罪。このファングは、裁判制度にちゃんと則り、「刑事被告人は、刑の宣告に先立ち申し立てを行うことが許されておる」と言う。フェイギンは、「わしには、傷付ける気など毛頭ありませんでした。保護して、報酬を期待したくらいです。傷付ける気など…」と訴える。「慈悲を乞うのか?」。「はい、閣下。死にたくありません、閣下」。この次、ようやくファングらしさが出る。「キリストに頼め。跪いて拝むんだな。キリストを救世主として、お前の信仰と神を捨てよ。キリストに祈れ、フェイギン」。これは、ユダヤ人のフェイギンにはとてもできないことだった(1枚目の写真)〔このシーン、原作では、フェイギンは、「わしは老人で… 老人で」とくり返すだけ。映画の創作場面の方が遥かに詳しい〕。映画では、この後にオリバーがブラウンロウ邸に辿り着くシーンが入る。そして、その直後、短いシーンだが、ビルが下水道の中で首を吊って死んでいる場面(足しか映らない)が挿入される(2枚目の写真)〔死んだのは、下水道の中でもナンシーの幻が見えたため/使ったのはロープでなく、首に巻いていた長いスカーフのようなもの〕。最後は、フェイギンの縛り首のシーン〔原作にはない〕。見物に来た群集からは、「吊るせ!」「死ぬのが、見たいわ!」の声が多数上がる。よほど嫌われているらしい。群集の中に、心配顔のドジャーがいるのを見つけたフェイギンは、絞首台の上から、「ドッジ、わが友」と呼びかける。いたたまれなくなったドジャーは、絞首台から離れる。フェイギンの首に綱がかけられる(3枚目の写真)。
  
  
  

ドジャーは広場の隅に逃げて行き、座りこんで耳を塞ぐ(1枚目の写真)。そして、ガタンという音がし、フェイギンがブランコになる。ドジャーは涙を拭う。その時、ドジャーの顔を舐めたのは ビルの愛犬ブルザイ。ドジャーには、ビルも逝ったと分かる(2枚目の写真、まだ泣いている)。フェイギンの手下からも見放され一匹狼になったドジャーは、ビルのように生きようと決心し、ブルザイを連れて、刑場広場から離れて行く。「道を開けろ!」。体は小さいが、何ともいいようのない迫力に、道行く人は避ける。「何を、見てやがる? ぶちかますぞ!」(3枚目の写真)〔ドジャーは、原作では、ずっと前に植民地に追放されている。ドジャーをこれほど重視したのは、ミュージカルの『オリバー!』だけだが、フェイギンの扱いは全く逆になっている。こうした自由な解釈は面白い〕
  
  
  

ブラウンロウ氏の新しい一家が、小さな礼拝堂で、2つの花を供えている。ブラウンロウ氏は、祭壇の太い蝋燭に火を点けるための細長い蝋燭(?)をローズに渡す(1枚目の写真)。ローズは、それで、右側の蝋燭に、「さようなら、アグネス」と言いながら火を点ける。それをローズから受け取ったオリバーは(2枚目の写真)、「さよなら、ナンシー」と言って左側の蝋燭に火を点ける。オリバーとローズは、しっかりと手を握り合う。オリバーの空いた左手をブラウンロウ氏が握る。次のシーンは、救貧院。コーニーが花嫁衣裳なので、結婚式の直後だ。バンブルが、「結婚生活が始まりましたな」と言いながら、酒の入ったグラスを渡す。「陽気な昼間と、至福の夜に」。そして、グラスをカチンとぶつけ、バンブルは一気に飲み干す。グラスを手に持ったままのコーニーは、「火をくべて」と頼む。「いいとも」と言って、暖炉を向いて腰を屈めたバンブルの尻を、コーニーが蹴飛ばし、下品にゲラゲラと笑う。「いったい…」と言ったバンブルに、コーニーは、「おふざけ、もう、せんから、火をくべて」と再度頼む。そして、バンブルが屈むとまた尻を蹴る。今度は床に転がる。コーニーのバカ笑いは続く(3枚目の写真)。バンブルには悲惨な将来が待っている〔この2人が、こんな終わり方をするのも、前例がない〕
  
  
  

ラストシーンは、ローズとオリバーが仲良く弾くピアノ。もちろん、オリバーは、一番右端の1オクターブを、ぎこちない指で弾くだけ。それでも、2人の表情は喜びに溢れている(1・2枚目の写真)。演奏が終わると、ブラウンロウ氏が「ブラボー!」と歓声をあげる。オリバーは、席に戻ると、ローズとブラウンロウ氏に向かって左手をお腹に当てて深く礼をする。皆がメリー・クリスマスと言い、最後にオリバーがカメラに向かって笑顔を見せる(3枚目の写真)。
  
  
  

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