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Ransom 身代金

アメリカ映画 (1996)

ブロウリー・ノルテ(Brawley Nolte)が、身代金目当てに誘拐される富豪の息子を演じるクライム・サスペンス。主演は、最盛期のメル・ギブソン。誘拐犯に立ち向かう映画は多々あるが、誘拐された息子の父親が、誘拐犯に対してこれほど強行策に出る映画も珍しい。父親と誘拐犯との状況は刻々変化するが、その度に父親は新たな強行策に出る。自分の子供を誘拐されて、犯人の要求を一蹴し、逆襲に転じたら、命の保証はないと心配するのが普通なのだが、この父親は違う。身代金を渡せば、相手は下劣な人間なので、息子は必ず殺されると確信している。この確信が、異常なまでの強行策を次から次へと繰り出す原動力になっている。そういう意味では、なかなか見応えがある映画だ。

トム・ミューレンは、全米4位の航空会社のオーナーにして富豪。その一人息子を誘拐して200万ドルの身代金を奪取する計画を、現職の悪徳警官が考え、4人の仲間が参加する。ベテラン警官の経験を活かした非常に綿密な計画の元、身代金の受け渡しは順調に進行するが、犯人側の連絡ミスとFBIの勇み足で失敗。2回目からは、犯人とFBIの双方を信用しなくなった父親が、身代金を払うのを拒絶し、代りに、同額を誘拐犯への懸賞金に当てるという超強行策を主導する。その心は、「身代金を払ってしまえば、息子は殺される」という確信。だから、父親は絶対に妥協しない。それどころか、誘拐犯が恐喝手段に出ると、懸賞金を倍額にして対抗する。主犯の兼官だけは、何とかこの強行姿勢に対抗しようとするが、4人の仲間はとても付き合っていられないと距離を置き始める。そんな中、父親と主犯の警官との電話での罵り合いの最中に、主犯が思わず拳銃を撃ってしまい、父母は息子が殺されたと思い、仲間は離反を決める。この仲間の離反を逆手に取って、主犯の警官は、警官の身分の生かした最後の捨て身の作戦に出る。それは、仲間を誘拐犯として、衆人環視の元、警官の立場で射殺し、監禁されていた少年を救出し、懸賞金をもらおうというものであった。

ブロウリー・ノルテは、誘拐された子供としてしては、恐らく最悪の酷い状態下におかれる。目にテープを貼られ、ベッドに鎖で縛り付けられるので、逆に、出番は、最初と最後しかない。出演作は3本だが、うち2本は、実父の俳優ニック・ノルテの主演作に端役で出ているだけ。本作が唯一の重要な脇役だ。


あらすじ

トム・ミューレンは、空軍除隊後にチャーター便の会社を設立、それを独力で全米4位の航空会社にまで育て上げたやり手の企業家。自社のTVコマーシャルに出演した記念パーティを、広い自宅で開いている。一人息子のショーンも、母と一緒に参加(1枚目の写真)。話相手もいないので、暇つぶしに変な顔をしてみせる(2枚目の写真)。父から「テントをたたむ時間だ」と言われ、階段を降りて、寝室に向かう(3枚目の写真)。ちょうどその時、不祥事をすっぱ抜こうとする記者が父に鋭い質問を浴びせ、追い出される一幕もあった。足を止めて心配げに見守るショーン。
  
  
  

しばらくして、寝室まで様子を見に来た父に、ショーンは、「あの人、怒ってたの?」と訊く(1枚目の写真)。「怒ってたんじゃなく、詮索好きなんだ。彼の仕事柄ね」。「パパの周りはいつもあんなだね」。「そう思うか?」。「うん」(2枚目の写真)。「パパのこと、怒ってないよな?」。「ううん」。「じゃあ、変えてやろう」。そう言って、息子に襲いかかり、「顔面パンチだぞ」とふざける父。嬉しそうなショーン(3枚目の写真)。こんな嬉しそうな顔は、これ1回きりだ。
  
  
  

セントラルパークで、市主催、母が後援する第10回のジュニア・サイエンス・フェアが開幕。母がスピーチする脇で、面白い形をしたバルーン式飛行船を持ったショーンが、父に「なぜ僕 出られないの?」と不満そうに訊く。「フェアじゃないだろ。ママが審査員だから。優勝したら、何て思われる?」。ショーンがスィッチを入れ、父が手を離すと、飛行船は垂直に上昇していく(1枚目の写真)。周りからは、「あれ最高にすごいや。優勝すると思わない?」との声も。父:「うまく風に乗った。左に向けろ」(2枚目の写真)。ショーン:「やっぱりフェアじゃないよ、パパ、こんなに頑張ったのに」。親が偉いと、子供は可哀想だ。父が市長と話している間、ショーンは飛行船を見ながら電波で指示を出している(3枚目の写真)。背後に見えるニット帽の男が誘拐犯〔一番下っ端〕。この後、しばらくして、ショーンは画面から消える。
  
  
  

息子の姿が見えなくなり心配する母。審査員のマイクで会場に呼びかけるが表われない。父は飛行船の後を追い、落下して壊れた飛行船を見て、悪いことが起きたと直感する。その後、家に戻っても連絡は一切ない。2人がやきもきしていると電話がかかってきて、自動音声で「Eメールが着信」と言う。さっそくパソコンを見ると、動画がダウンロードされ、両手を手錠、両足を鎖でベッドの枠に固定され、眼にテープを貼られたショーンの痛々しいビデオ映像が映し出される(1枚目の写真)。そして、変調された音声が流れる。「息子を誘拐した。200万ドル〔当時のドル円相場で2億円強〕よこせ。50ドル札と100ドル札でだ。続き番号、新札はだめだ。札に印を付けるな。金は、サムソナイトの260型モデル2個に詰めろ。警察やFBIに通報するな。通報したら殺す。マスコミに知らせるな。知らせたら殺す。金やケースに追跡装置を付けるな。付けたら殺す。金の用意に48時間やる。また連絡する」。一方、隠れ家では、ショーンが目隠しテープを貼られたまま、飲み物を口に注ぎ込まれている。うまく飲み込めなくて吐き出してしまい(2枚目の写真)、相手の女の服には赤いシミがべったり。思わず「この クソガき」と罵る。犯人グループは全部で5人だが、ショーンを一番嫌っているのがこの女。最初から殺すことに決めている。両親は、FBIに電話するが、ショーンとはあまり関係ないので省略する。ここでは、誘拐されてから極度に出番の少なくなった隠れ家におけるショーンの僅かなシーンから、もう1枚。5人の中で唯一ショーンに好意的な男が、ショーンの足をベッドに縛り付けていた鎖の輪で出来た傷を手当してやる場面。痛さをこらえるショーン(3枚目の写真)。
  
  
  

FBIの専門家の反対を押し切り、犯人の要求に応じて、父本人がスーツケースに現金を入れて指定の場所に出かける。しかし、途中で車内に電話がかかり、目的地を変更させられる。スポーツ・ジムにあるプールの底にあるロッカーのキーを、服を着たまま飛び込んで拾えという指示だ。着たままというのは、水に入ることで体に付けた発信機を無効にするためだ。父はキーを拾い、ロッカールームにびしょ濡れのまま掛けつける。ロッカーの中では、もう電話が鳴っている。急いで鍵を開け電話を取ると、次の指示は、ロッカー内の服に着替え、同じくロッカー内の布袋に現金を移し変え、外に停めてある車に乗れというもの。これで、衣服、ケース、車に付いているかもしれない発信機のすべてが無効となる。首犯が現職の警官なので、こういう点は抜かりがない。この主犯は、父の乗った車を、自分の車で尾行しつつ無線機で指示を出す。電話を使わないので、傍受もできない。しかし、FBIは付近に駐車していた数台の車の行き先をヘリで徹底的に調べ、遂に父の車を発見する。そして、採石場で男が身代金を受けり現れると、急にヘリが姿を見せ、男を追い詰める(1枚目の写真)。そして、銃で抵抗する男を射殺してしまう。これはFBIの大きなミス。①事件へのFBIの関与を主犯に知られ、②射殺した手下からは何も情報を聞き出せない。FBIに通報したことで、子供が殺されても仕方がない状況になってしまったのだ。家に戻った父は、当然FBIの捜査官に怒りをぶつける。母も怒り心頭だ。しかも、マスコミにも漏れ、TVで大々的に報道される。それを聞いた、射殺された誘拐犯の兄は、「ガキは埋めちまおう。それで終わり。クソ金はいらん。ガキを始末したら、俺は出て行く」と言い出す。ショーン嫌いの女も、「それがいい。始末するって言ってたじゃない」と同調する。主犯の警官は、「ガキを始末するのは、用が済んでからだ。ちょっとは、頭を使え」と歯牙にもかけない。逆に、女に「ガキを 見て来い」と命じる。女が見に行くと、ショーンは、「チョコ・バーもらえる?」と声をかけてくる。変だと思って女がよく見ると、ショーンの目のテープが半分はがれている(2枚目の写真)。そして、「あんた、知ってる」と言う。顔を見られて怒った女は、「知ってるもんか。見るんじゃないよ!」と怒鳴り、ショーンの目に2重にテープを貼る。そして、「チョコ・バーだ? 何考えてんのよ? パパが来て、助けてくれると思ってるんじゃないの? パパも来ないし、誰も来ない。その意味 分かるかい? お前は、おさらばなのさ(this is it for you)」。全身を拘束されて目隠しされた上に、こんなことを言われたら、どんな気がするだろう?
  
  

一方、ミューレン家では、父が、「殺人鬼が金を手に入れたら、ショーンとは二度と会えないだろう。まだ。生きているとしてもだ」と言い出す。この辺りから、普通の誘拐犯の映画とは違った雰囲気になってくる。FBI捜査官:「金を払わないと言うのですか?」。FBIも、この父の「転向」には困ってしまう。そこに、主犯から電話がかかってくる。面白いので、全文紹介しよう。「俺をだませると思ったのか? 金をケチりやがって」。「仕方がなかった。言われた通りにしたんだが」。「しただと? その態度は何だ? 俺をごまかす気か? 誰を相手にしてると思ってる? 奴らに、金を追跡してるだけだと言われたのか? そこで誰が聞いてる? FBIのアホか? 警察もFBIもダメと言ったろ。金を払ってれば すんなりいったのに、こんな大騒ぎになっちまって」。「分かった。要求を言えよ」。「金だ」。「息子と話したい」。「FDR高速に乗って、ウィリアームズバーグ橋方面に出ろ」。「いやだ。息子はもう死んでる」。「バカ言ってないで、ウィリアームズバーグ橋方面に…」。ここで、父は怒鳴るように「息子は死んだ。地獄に落ちろ!」と言って電話をバチャンと切る。これには、FBIも犯人側も驚いた。結局は金が欲しい主犯は、監禁室からショーンを連れて来て、電話口に立たせる。話したのは一言だけ。「パパ?」(写真)。すかさず、父が「ショーン?」と言うが、もう子供は口を手で封じられて監禁室に戻されている。そして、最後通告。「ウィリアームズバーグ橋だ。それと、聞いてるバカ野郎ども。もし、金から10マイル以内に お前らを嗅ぎつけたら、ガキのはらわたを 魚みたいに抜いてやる」。
  

誘拐犯の強烈な脅しに屈して金を持って出かける父。しかし、たまたま交差点で停まった時、店頭に置かれたTVで流れていた息子の顔を見ているうちに、どうしても生きたまま会いたくなる。彼には、「金を払えば、息子は必ず殺される」という確信があったのだ。その時 主犯からかかってきた電話には、「計画変更だ。TVをつけろ。5チャンネルを見てろ。1・2時間で分かる」と言って一方的に切る。TV局は、目下最大の事件なので、特別番組で対応する。父は、まず、「ショーン、もし見てたら、愛してるよ」と言い、後は犯人に直接話しかける。「息子をさらった奴、お前への身代金だ」。カメラが引くと、机の上に拡げられた札束が画面に映し出される。「お前の要求通り、印のついてない札で200万ドル。だが、これをもらえると思うなよ(you'll ever get to it)。お前がこの金を見ることはない。身代金など払わんからな」(2枚目の写真)「10セント玉1個、1セント玉1個もだ。代りに、この金はお前の首にかける首にかける懸賞金にする。生死は問わない。おめでとう。これでお前は200万ドルの宝くじ券になったわけだ」。驚愕するマスコミ。非常に、挑戦的、かつ、異例な展開だ。独立独歩の企業家だから出来た賭けであろう。愛する息子を生きたまま取り戻すわずかなチャンスが、これで生まれた。主犯は怒りに震え、それでも打開策を図ろうとするが、手下は動揺し、勝負はついたと思ってショーンを始末しようと森に連れて行く。それを知った主犯は、身代金を取ったらショーンを殺して埋める予定だった場所に急行。「俺をコケにする気か?」と言って、穴を掘っていた手下を殴って止める。目だけでなく、口にもテープを貼られ、地面に横たえられて(3枚目の写真)、墓穴を掘られるという悲惨な体験は、ショーンにとって、ひどいトラウマとなって残ることだろう。最後のあがきで、ショーンを拳銃で撃とうとする女を、「やめろ!」と突き飛ばすと、主犯の男は、穴を掘っていた男を中に突き落とし、「そこで一生寝てたいか? 俺はまだ金を手に入れてないんだぞ! 俺の邪魔をすることは許さん。分かったか? これは俺のヤマだ。終わりは俺が決める」と命令する。
  
  
  

ミューレンの自宅では、父が、「発言を取り消して」と頼む妻に対し、「他に道はない」と言いきる。「私の息子でもあるのよ。払って」。「殺されるだけだ。僕らには、僕らしかいない(all we have is each other)。誰もいないんだ。僕は、何が何でもショーンを取り戻したい。全身全霊をかけて。腕を失ってもいい。絶対に 取り戻す。お願いだ、僕を支えて欲しい」(1枚目の写真)とすがるように訴える。一方、森から戻されたショーンは、監禁室のベッドに乱暴に投げ出される。荒っぽい女だ。そしてヨーグルトをスプーンで一口食べさせられる。しかし、ショーンが「ありがとう」と言うと、女は怒って部屋を出て行ってしまう(2枚目の写真)。何で こう不機嫌なのか?
  
  

思わぬ展開に対して、主犯はミューレンの妻をターゲットにしようとする。そこで、監禁室に行って(1枚目の写真)、ショーンの着ているTシャツを取り上げ、その後、妻を改修中で誰もいない教会に呼び出す。そして、いきなり殴りかかると、床にねじ伏せ、「このたわごとには、もううんざりした。これからは、お前次第だ。亭主に懸賞金を取り下げさせ、俺に金を払わせろ。でないと、お前の息子をバラバラ死体を、ニューヨーク中で見ることになるぞ。俺は銃なんか使わん。鋭いナイフを使ってやる」と脅し、顔にショーンのTシャツを押し付ける(2枚目の写真)。妻の話を聞いた夫は、「済まなかった」と謝り、「どうか僕のことを許して欲しい。今からすることも」と言い、家を出て行く。そして、家の前に集まっている大勢の報道陣の前でこう宣言する。「声明を出したい。私は、方針を変えるつもりはない。懸賞金を上げる。200万ドル上乗せする」(3枚目の写真)。脅しには屈しない決然とした態度だ。並の警官の主犯には、予想だにしない発言だろう。
  
  
  

主犯は、次の一手に出る。ショーンをもう一度電話口に出したのだ。「息子と話したいか?」。「ああ、もちろんだ」。「パパ? パパ」(1枚目の写真)。まだ、ショーンが生きていると知って大喜びする父。「戻してくれ。もっと話したい」。「今、話したろ。いいか、よく聞け、真剣にだ。もう一度だけ言う。金を払え。さもないと、二度と話せないぞ。おふざけは終わり。今すぐ答えろ。どうする?」。「ノーだ。お前は その子に手を出せん。そんなバカじゃないからな」。「女房を見ろ。顔だ〔殴った傷がある〕。ガキがどうなるか、分かるだろ」。「この国最高の追跡者を何人も雇い、一生かけてでも捕まえてやる」。「俺を脅そうってのか? 相手が誰だか分かってるのか? さっさと金をよこせ!」。「お前とお前の200万ドルなんかクソ食らえだ! 英語が分からんのか、この役立たずのゴミめ! 金はやらん! 絶対にだ!」。「警告しておくぞ。今に後悔するぞ。後悔って分かるか? もし1時間以内に金を寄こさなかったら、ガキは死ぬんだ」(2枚目の写真)。自分の命をもて遊ぶような2人のやりとりを、ショーンはどんな気持ちで聞いているのだろう? あまりに残酷すぎる。「息子を返せ、今すぐだ。でなきゃ自殺でもしろ。さもないと、捕まえて、じわじわと殺してやる。死ぬ頃には、生まれてきたことを後悔するぞ。頭を串刺しにしてやる。分かったか?」。「この野郎! 今すぐガキをブッ殺す!」。「息子を殺せば、お前も死ぬんだぞ、このくされ野郎!」。「息子を返せ!」。「欲しいか?」。「ああ」。ショーンが「パパ!」と叫ぶ。それと同時に、拳銃が発射される。
  
  

電話ごしにその音を聞き、息子が殺されたと思い、自分の自身過剰的やり方の失敗に深く後悔し、泣き崩れる父。母は夫に向かって怒りを爆発させる。「このサイテー男(Son of a bitch)! あんたがあの子を殺したのよ!」と怒鳴って頬を張り飛ばす。夫は泣くばかりで何も言えない。しかし、幸いショーンは生きていた。銃は撃たれたが、わざと的は外したのだ。しかし、自分のすぐそばで拳銃が発射され、しかも会話の内容から殺されると思っていたショーンは、ショック状態だ(1枚目の写真)。主犯は、頭にきて隠れ家を飛び出して行き、残った3人は、残っていてもラチが明かないので撤退の準備を始める。もうショーンなんかには構っていられない。ボスは当てにならないし、殺したら自分が殺人犯になるからだ。一方、自分の失敗のために涙にくれる妻を見て、一瞬自殺を覚悟してベランダに出て行く父。ペントハウスなので、飛び降りれば即死だ。しかし、それもできずに、テラスの隅で再び泣き崩れる父。それを見て思わず寄って行った妻に、父はすがりついて泣く(2枚目の写真)。先ほどまでの犯人への虚勢はあくまで作戦で、実はすごく息子を愛していることが妻にも分かり、悲しみを共有したのだ。
  
  
主犯の警官は、考えた末、思い切った行動に出る。隠れ家の向かいのコイン・ランドリーに隠れて見張っていた主犯は、仲間の2人がずらかろうとバンに乗りかけているのを見て、ランドリーでみんなに聞こえるように警察に電話し、誘拐犯の可能性のある男たちを発見したので至急パトカーを寄こすよう要請する。そして、おもむろに店を出ると、バンの前に立ち、拳銃と警察バッジを取り出し、「警察だ!」と叫ぶ。本物の警官なので、慣れたものだ。バンの2人はハメられたと分かり、慌ててバンのエンジンをかける。「バンから降りろ!」(1枚目の写真)。衆人環視の中で、バッジを掲げ、バンに近づいて行く主犯。バンが発進するが、主犯は素早く針路から逸れて運転手を射殺。銃を持っていないのに、「銃を捨てろ!」と言って、助手席の男も射殺する。そして、予備の拳銃を2発空撃ちし、死んだ男の手に握らせる」。その時、背後から銃声がして、主犯の男が左肩を撃たれる(2枚目の写真)。1人残っていた仲間の女に、裏切りを見られて復讐されたのだ。だが、女が止めを刺そうかと迷っているのを見た主犯は、隙を見て女も射殺。冷酷この上ない。主犯は、ケガをしたまま隠れ家に入って行くと、監禁室に直行。そこに、駆けつけたスワットチームが突入。主犯は、バッジを掲げ、「俺は警官だ」と言い(3枚目の写真)、誘拐犯転じて、「誘拐された少年を発見・救助した英雄」となる。これが、主犯の最後の賭けだ。こうすれば、身代金の倍額の400万ドルが報奨金として自分のものになる。しかも、金を分配する仲間はいない。
  
  
  

朗報を聞いて現場に駆けつける両親。監禁室では、ショーンが手錠や鎖を外されている。自分を呼ぶ声を聞き、「誰?」と訊く。「ショーン、私だ、パパだよ」(1枚目の写真)。それを聞いて、「パパ」と、ケガした左手を出すショーン。目は閉じたままだ。ずっと目にテーピングされていたため、眩しくて開けられない。ショーンの体を起こして、父と母が思い切り抱きしめる(2枚目の写真)。父は、外に出て行き、負傷して救急車に載せられる主犯に、恩人だと思って「ありがとう」と手を差し出す。皮肉な光景だ。念のため、病院に連れて行かれたショーン。両親が電気を消そうとすると、「電気を点けて、暗いのは怖い。暗いのはイヤだ。消さないで」とパニックになる(3枚目の写真)。当然だろう。
  
  
  

事件から何日かが経ち、ショーンは公園で両親と過せるまでに回復している。父が家に戻ると、そこに、撃たれた腕をアームホルダーで吊った主犯が現れる。懸賞金を受け取りに来たのだ。突然の訪問でも歓迎され、すぐに書斎に通される。さっそく400万ドルの小切手を書き始める父。その時、父の部屋を覗きにきたショーン(1枚目の写真)が2人の会話を聞いてしまう。その声は、最後の日に、すぐ横の電話で怒鳴っていた男の声だった。恐怖のあまり見開かれるショーンの目(2枚目の写真)。その顔がチラと目に入った父。何とショーンの靴の横には、恐怖のあまり漏らした尿が広がっている。異常事態だと悟った父。父を見たショーンは、ダメダメと首を振るのが精一杯。目には涙が浮かんでいる(3枚目の写真)。父は、この男が主犯だと確信する。しかし、父親の態度が何となく変なことに気がついた主犯は、一瞬、名前をサインする手が止まったのを目に留め、渡された小切手が無効だと見破ってしまう。
  
  
  

主犯は、態度を一変、金を要求する。父は、小切手ではなく、銀行口座への振込みを提案する。一緒に自分の銀行まで来て、その場で、主犯の口座に送金する方法だ。主犯の、電話による送金はきっぱり断る。理由は、一刻でも早く家から出て行って欲しいから。主犯は、自分が手玉に取られそうなので、「俺に命令するな」と銃を突きつける。父は、いつもの調子を取り戻し、「なら、今すぐ殺すがいい、このロクデナシ」と強い調子で言い、「くそったれ、電話なんか掛けるもんか」と突っぱねる。「殺したいなら、殺すがいい」と開き直り、「一緒に銀行に行って400万ドルを手にして逃げるか、私を殺して空の財布のまま逃げるか」と二者択一を迫る(1枚目の写真)。そして、自家用飛行機で好きな所まで連れて行くと甘言で誘う。安全な国外脱出ルートの提示は、主犯にとって魅力だった。そこで銀行に行くことに同意する。銀行に向かう車内で、父は、一番の部下に電話で飛行機の手配を命じる。「デビット、トムだ。ジェットに給油を頼む。グアダラハラへ飛ぶ」。「ああ、ちょっと用事ができて(something came up)。銀行に寄ってから行く」。一緒にいたFBIの捜査官が、すかさず、「誘拐犯が一緒ですか?」と訊く。「その通り」。これで、主犯には知られずに、FBIに情報が伝わった。この直後、一瞬だが、ミューレン家でのショーンの姿が映る(2枚目の写真)。たいした意味はないが、これが最後の出番だ。銀行では、支店長以下に歓迎され、一緒に記念写真も。しかし、送金のボタンを押す前に、主犯の持っている警察無線から自分を手配する緊急指令が聞こえてくる。送金が完了し、銀行から2人揃って出たところで、警官から呼び止められる。主犯は、身柄を拘束すると言われ、その場で警官2人を射殺。しかし、隙を見た父が飛びかかって、積り積もった怒りを爆発させる。軍人あがりだけに腕力はすごく、主犯を何度も殴るところは爽快。最後は、父にショーウインドーに叩き込まれ、這い出て来て 隠し持った銃で反撃しようとしたところを、駆けつけたFBIや警官に射殺される(3枚目の写真)。
  
  
  

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