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Superbror スーパーブラザー

デンマーク映画 (2009)

ルーカス・オーディン・クローリウス(Lucas Odin Clorius)とヴィクトル・クルース・ピエツォイ(Viktor Kruse Palshøj)が弟と兄を演じる、家族向きの映画。母子家庭に住む、虐められっ子の弟と、本来ならそれを庇うはずだが、自閉症のため、日常生活でも弟に助けられる立場の兄が、ふとしたことから立場が一時逆転するSF映画。題名からはヒーロー映画のように見えるが、全く違い、兄弟の心の通じ合いに焦点を当てた、しんみりした映画。同じデンマーク映画の『アントボーイ』(2013)がアメリカ的なヒーロー劇なのとは対照的だ。

アントンには、自閉症の兄ブラーがいる。日常の危険から庇ってあげないといけないし、そうかといって、虐めグループから自分を庇ってくれることはない。片務的な関係だ。年下の弟としては満足できるはずがない。ダメな兄貴と、それを不憫がる母に対し、不満はつのる一方だ。そんな時、バカにしていた兄ブラーの描いた幼稚な線画が、実は、一種のメッセージだと気付いたアントンは、兄が心ならずも呼び寄せた隕石へと辿り着く。部屋に持ち込んだ隕石には、スーパー・パワーを与えるマシンが入っていた。そのお陰で、普通の兄に変身したブラーは、結構自分勝手なところがあり、お陰でアントンは最悪の虐めにあってしまう。それを怒って蹴飛ばしたマシンが壊れてしまい、スーパー・パワーが残り36時間で切れると分かった時、ブラーは、自分の運命を享受して、最終的にアントンと対等な関係を築こうとする。兄弟愛のドラマなのだ。

ルーカスもヴィクトルも黒っぽい髪で、あまり北欧系という感じはしない。ルーカスは撮影時10才くらい、ヴィクトルは13-14才。ルーカスは、最初から最後まで負けん気の腕白坊主といった雰囲気だが、自閉症でおどおどしているヴィクトルは、“スーパーブラザー” になると、雰囲気ががらりと変る。ルーカスの方が顔立ちはきれいだ。演技力は2人とも普通。


あらすじ

滑走路の端に建ち、離着陸の度にガタガタと揺れる家に住む母子家庭。電車の車掌で生計を立てている母、自閉症のため特殊学級に通う兄と、小学校でいつも虐めにあっている弟の3人家族だ。最近、兄のブラーは2階の屋根裏の外に設けられた張り出しの上に立って、空を見つめて「来い」と呼びかけている。心配になって飛んでいく母と弟。「何してるの? 危ないでしょ」と母。「フツーのお兄ちゃんが 欲しいよ」とつぶやく弟のアントン。しかし、太陽系外のある惑星から、その呼びかけに答え、地球に向けて小さな隕石が放出されていた。
  
  

翌朝、登校の時間。母:「アントン、道を渡る時は 一緒にね」。弟:」「分かってる」。家を出た所で、兄ブラーの背負いカバンの具合を見てやる。幼い子の世話係といった感じ。そこに、「お早う、アントン」という声がする。同級生のアグネスだ。「何でここに?」。「2人だけで歩こうかなと思って」。「家が学校なのに、何でわざわざ?」。「通学してみたいから、来てみたの」。「どうかしてる」。「あんたって、すっごく鈍感なのね」。アグネスは、アントンにほの字だが、おくてのアントンには全くその気がないのだ。ブラーの手を取って歩くアントン。しかし、ブラーは、「一人で行ける」。「ママは、そう思ってない」。「行けるって」。「じゃあ、好きにすれば」。ブラーは、一人で信号を渡り始めるが、途中の分離帯で赤になり、パニック状態になる。アントンは、青信号になると兄に駆け寄って抱きつき、なぐさめる。「安心して。一緒にいるだろ」。
  
  

放課後、アントンは、いつもの虐めグループに呼び止められる。サンドイッチを取り上げられ、「それ返せ。でないと兄ちゃんに言いつけるぞ」。「兄貴なんていないだろ」「脅してるのか?」「嘘つき」「高くつくぞ」。アントンは、「嘘じゃない」と言い、さらに、兄はアメリカのスタント養成所にいて、空手の達人で、今帰国中だと、自慢げな顔をして嘘を付く(誰も信じない)。その後に、母と兄に同行させられた病院では、不満が溜まって機嫌が悪い。兄が、「お前のために 描いた」と言って幼稚な絵を見せても、「そう…」というだけ。「見たくないのか?」。チラと見て「上手いね」。全くの無関心状態。そこに看護師が入ってきて、「やあ、君がブラー君?」と声をかけられる。「ううん、それ兄ちゃん」「下にいるでしょ」(床で絵を描いている)。
  
  

3人で車に乗った時、アントンは、誰に言うともなく、「間違えられて、恥ずかしかった」とつぶやく。「ごめん」とブラー。「あなたのせい じゃないでしょ」と母。「僕のことを、お前の弟と?」とブラー。「ボクを患者と思ったのさ」とアントン。でまた、「ごめん」。「やめてくれよ。何も分かっちゃいない」。「ごめん」。「もう、話したくない」。ご機嫌斜めなのだ。
  
  

家で。ブラーは床に寝て幼稚な絵を何枚も描いている。「ウサギが 飛んでるトコ?」とアントンが声をかける。「やるよ」と10枚ほど渡すブラー。「これ全部?」。「捨てないよな?」。「まさか。とっとくよ」。アントンの頬を撫ぜるブラー。兄が行くと、さっそくアントンは、ゴミ箱の下の方に絵を押し込んで捨てた。
  
  

その夜、またブラーが「来い」と呼んでいる。皆が寝静まった頃、隕石状のものが大気圏に突入し、一家の真上を通過して、近くの森に落下した。1枚目の写真で、隕石の直下の長屋の1軒がブラーとアントンの家。2枚面の写真は、墜落の衝撃波で、左側の球状の門灯が割れた瞬間。
  
  

翌日の授業終了後、アグネスは、アントンに「あたし、思春期直前期って 診断された」と打ち明ける。「その意味 分かる?」。無関心なアントンに、「女の子のこと、まるで分ってないのね!」「アントン、あたしを置いてかないで!」。アントンは逃げようとして、廊下で作業員の乗ったハシゴにぶつかり、そのあおりで、いつもの虐めグループがペンキを被るハメに。惨状に、思わず顔を隠すアントン。原因者のアグネスは、「ツイテないわね。タイミング最悪」とだけ。待ち構える虐めグループに、「ボク… 兄ちゃんと会わないと」。「もしかして、ボコボコにすると、兄貴が出てくるのか?」。頷くアントン(実は、後ろに、妙ちきりんな手製の頭飾りをつけたブラーが立っていた)。「何 考えてやがる?」「このボケのカスめ!」と罵倒され、水溜りに全身を押し付けられるアントン。仕返しが終わってから、アントンはブラーのところにつかつかと寄って行き、「弟がやられてるのに、見殺しか!」と怒鳴る
  
  
  

帰宅しても、憮然としたままのアントン。「ブラーに 言ってよ。見てるから」。「私が、何もしてないと?」。「そうだよ。ボクに任せっきりだ」と母を責める。さらに、「犠牲になるのは、ボクだ!」「ブラーと同じモノ食べて、豆のゲップにオナラだ」。「現実を受け入れないと」「ブラーは、幾つになっても同じ。20歳でも30歳でも」と母。「ボクもかい?!」とアントン。「ボクは大人になるんだ!」。「普通の家族のようになりたいだけ」と母。「何がフツーだよ!」「変てこじゃないか!」。屋根に上がり、「助けてくれよ!」「ボクにだって権利はある!」「ボクのダメ兄貴 何とかしろよ!」と叫ぶ。一方のブラー。寝室で、母に、「こんなの つらいよ」「もうイヤだ」「アントンを幸せにしたい」「でも、どうしていいか」「頭がパンクしてる」。
  
  

それを、開いたドアから聞いていたアントン。兄が描いた絵に、如何に冷淡だったかを思い出す。そして、ゴミ箱に捨てた絵を回収し、あちこちに置いてあった絵も全部集め、床に並べ始める。行き当たりばったりに描いたはずの意味もない幼稚な線画は、全体で1つの絵、落下する隕石の絵になった。朝方、屋外授業で森に行った時に見た “熱くて触れないもの” を思い出し、懐中電灯を持って森に向かうアントン。盛り上がった土に埋もれていた隕石を部屋に持ち帰る。
  
  
  

アントンは、ブラーを起こして、部屋に連れて来る。そして、最初に兄が描いた簡単な隕石の絵を示しながら、運んできた本物の隕石を見せる。「これ、何かな?」とブラー。「『何かな』って… 知ってるんだよね?」とアントン。ブラーは、宇宙から来たと言い、「中に、何かが」とも。アントンがバットで強く叩くと、隕石がゆっくりと開き、中から光る蝶のようなものが多数飛び出し、中心に銀色のマシンが置いてあった。それを取り上げると、3Dホログラムの “青く光るおじさん” が現れる(宇宙人ぽくないところが面白い)。そして、「最新のおもちゃを、送ることにした」「君には空想力がある。だから、これを 見つけることができた」「おめでとう」「これは、スーパー・トリップ・コントロール、略してSTC」「水に入れたり、日光に当てないこと」「STCで楽しんで。だが、大きな力には大きな責任が伴う。忘れるなよ」、と言って消える。
  
  
  

空中に浮かんでいるスタート・ボタンを思い切って押すアントン。銀色のマシンが青く輝く。試しに、金魚を狙って撃つと、水槽の中で金魚が高速回転を始める。怖くなって部屋を出て、ブラーのベッドに潜り込む。翌日の夜、「やるぞ」と言うブラー。「どうなるかも分からないのに?」「ボク、知らないから」とアントン。そして、銀色のマシンで兄を撃つ。青い光線を浴びたブラーは、一瞬、全身が青く輝く。「痛い?」「どこか 変わった?」とアントン。ベッドに倒れ込むブラー。心配して駆け寄るアントンに、「落ち着けよ、チビ助」「変化はゼロ… なんちゃって」と人が変わったよう。「あの… からかってない?」。「大正解」。「どうしたの、ブラー?」。「ホントの兄貴が欲しかったんだろ?」。そして、アントンの宿題1年分をあっという間に片付けてやる。
  
  

学校で虐めグループに捕まったアントン。今は、後ろ盾があるので勇気百倍。「放課後、原っぱで会わないか」「お兄ちゃんに会わせる。ほんとだ」と宣言。やってきたら、強くなった兄に、こてんぱんにやっつけさせようという魂胆だ。そして、原っぱで。なかなか相手が来ない。ブラーは、無情にも、「また今度だ。待ちくたびれた」。「約束したんだ。会わせるって。兄ちゃんなんだから助けてよ」と必死のアントン。しかし、ブラーは「弟は、兄貴の言うコトを聞く。いいな?」と帰ってしまう。「かくて、兄貴は 去りぬ…」とつぶやき、地面に仰向けになるアントン。逃げ隠れはできない。覚悟の上だ。「待ち遠しいか?」と声がして、目を開ける。「泥の穴を 探しておいてやった」「ヘドが出そうな生ゴミや、虫の死骸がつまってるぞ」。アントンは、「いいよ。どこだい?」。あきらめの境地だ。全身泥まみれで帰宅したアントンだが、兄が大音響で音楽をかけている部屋に入った時、「どうした、ドジリ? やられたのか?」と言われ、頭に血がのぼった。「見りゃ分かる!」。「いい色だな、アントン」。「ドロの穴に どっぷんだ。帰っちゃったからだぞ! 最低のジコチュー兄貴!」。
  
  

怒り心頭で部屋に帰り、銀色のマシンを、「バカな マシンめ!」と蹴っ飛ばす。しかし、運悪く、金魚の水槽に落ちてしまう。慌てて拾うが、時既に遅し。ブラーの部屋から呻き声が聞こえてくる。元に戻った兄が、大音響を怖がっているのだ。「さあ、大丈夫、一緒だから」となだめるアントン。部屋に戻ったアントンは、スチーム暖房の上に置いて乾かそうとする。その時、アグネスが来て、仮装パーティへの招待状を渡す。アントンは それどころではない。「ママだったら、喜んで行くわ」という母に、「今日は、サイテーの日だった!」。
  
  

翌日、思いついて、ヘアドライヤーで乾燥させるアントン。「お願い、直って、頼むから」「動いてよ!」。願いは通じ、金魚が再び回転を始め、“青く光るおじさん” が再登場する。しかし、「また会えた」「水に入れないよう注意したろ」「だから、君のSTCは停止する… 今から36時間後に」「それじゃ、さよなら」と言って消える。そして、空中に現れた時計。刻々と数字が減っていく。
  
  

ブラーは、元通り以上。「絶対 うらやむぞ!」と言って、窓から飛び出る。2階なので、慌てて窓から見ると、兄が浮いている。そして、スーパーマンのように自由に飛び回る。母は、仮装パーティ用にと、アントンに子犬の着ぐるみ、ブラーにスーパーマンの服とマントを渡す。胸にはブラーの「B」。だから、ブーラーマンだ。その格好で、虐めグループの前に現れるブラー。「貴様ら、日の出に、ここへ来い」「弟を、虐めてくれたお礼をしてやる」。「ああ、約束だ。日の出に来てやる」。ブラーは、「また会おうぜ、ベイビー」(『ターミネーター2』の名言)と言って消える。しかし、家に戻ったブラーは、アントンの部屋に連れていかれ、“時計” を見せられる。残り11時間6分で元に戻ってしまうのだ。衝撃を受けるブラー。しかし、それを受け止め、銀色のマシンをアントンに向ける。「お前も 試せ」と言って光線を浴びせ、2人でアグネスのパーティに向かう。
  
  

パーティから帰った2人。母に、「驚かせることが あるんだ」と言う。いつもの屋根裏の張り出しに来た3人。「ここで、何するの?」と母。冗談で「パリでアイスクリーム食べる。それとも、下に降りて洗濯でもする」と言う。にっこり笑って「アイスクリームがいい」と言うアントン。「これ、何かのゲーム?」と言う母を、真ん中に挟んで飛び立つ2人。パリに直行する。山ほどアイスクリームを食べ、記念写真を撮ってもらう。
  
  
  

日の出前に家に戻った3人。ブラーは、朝食前にやることがと言って、アントンの部屋へ。残り時間は15分。「最後に やるべきことがある」「俺、アメリカから来た兄貴だろ?」。「うん」。「じゃあ、約束通り、マックスたちに会おう」。「できっこないよ」。「できるさ」。「今までずっと、お前を助けてやれなかった」「だから、やらないと」。スーパーパワーを使った最後の希望で、成層圏まで上がって地球を見た2人、時間切れで落下するが、光る蝶のようなものに助けてもらって、決闘の場に無事着地。
  

そこに、約束通り、虐めグループが登場。しかし、ブラーは、元のダメ兄貴に戻ってしまっている。「おい、それが アメリカから来た兄貴か?」。力なく英語で「ハロー」とブラー。失笑を買う。「僕に 任せて」とアントン。「何かの達人だとか、言ってなかったか?」。「僕、カラテやるよ」とブラー。「ブラーは、そこにいて」とアントン。「2人とも叩きのめしてやる」。「兄ちゃんに触れるな! ボクが相手だ」。しかし、これまでと違い、ブラーは隠れていなかった。弟と並んで攻撃姿勢。「僕も やるぞ」。嬉しそうに、それを見るアントン。実戦では、2人ともコテンパンに。「行こうぜ」と去っていくグループに、「もっと やらないのか?」。そして、また殴られる。これを何度かくり返すと、グループも飽きてきて、相手をせずに立ち去る。傷だらけになった2人。アントンは「大好きだよ」と兄に抱きつく。「守ってくれたね、お兄ちゃん」。兄は今まで通りだが、2人の関係には大きな変化が起きていた。遂に、対等、仲間同士になったのだ。冒頭と同じような抱擁シーンだが、中味は全く異なっている(ブラーがアントンを愛しんでいる)。
  
  

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