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The Prayer Box 祈りの箱

アメリカ映画 (2018)

アメリカでは、結構、宗教色に強い作品が作られている。この映画もその典型。私は、どちらかと言うと、無宗教なので、キリスト教色の強い映画には、どうしても抵抗がある〔知識も不足しているし、特有の表現にも慣れていないので〕。この映画のポイントは、題名通り、教会に置かれた “会衆の希望を書いて入れる箱”。主人公のウェスリーは、末期癌の妹を助けてもらおうと、牧師の勧めで祈りの箱に希望を書いた紙を入れる。しかし、牧師は、ミサが終わると、清掃の一環として祈りの箱の中身もゴミ箱に入れていた。それを見たウェスリーは、一大決心をする。祈りの箱の中の紙に書かれた希望の中で、自分で何とか出来そうなものは叶えてあげる。そのための資金は、教会の中で清掃のアルバイトをして得る。ウェスリーがなぜこんなことを始めたのか? それは、自分の行為が神の目に留まり、妹を助けて欲しいという自分の願いが叶うかもしれないと思ったから。牧師は、「祈りの箱の奇跡」が続くと、ウェスリーが “犯人” だと分かり、間違ったことはやめろと言うが、ウェスリーは、逆に “賃上げ” を要求し〔希望の中には、費用のかかるものもある〕、払ってくれないと、“すべて贋物” だと会衆に告げると言って牧師を脅す。そうかと言って、ウェスリーは悪い少年ではなく、ただ妹を救おうと必死なだけだ。「祈りの箱」の存在は、この映画で初めて知ったが、それをこのようなストーリーに仕上げるのは、アメリカだからであろう。結局、奇跡は起こらず、妹は死んでしまうが、ウェスリーの努力は妹の最期を幸せなものに変える。そして、ウェスリーは、悲しみの中で、正しい信仰への道を見出す〔最後の部分は、宗教的すぎて馴染めないが…〕あらすじの作成にあたっては、宗教に関わる部分は極力避けて通る。

ケンタッキー州に住む13歳のウェスリーは、妹ロザリーが小児癌で入院して以来、ほとんど一人で暮らしている。母は、朝早く病院に行き、夜遅くしか帰って来ない。治療代がかさむためか、時間がないためかは分からないが、家の中では生鮮食料が底をつき、お金も渡してもらえないウェスリーは、学校のランチ代も払えず、係りのおばさんに嫌味を言われ、他の生徒の前で恥をかかされる。ウェスリーは、それでも、大好きな妹のため、母の代わりに教会の日曜礼拝に出かけて必死で祈ったり、かなり病院にも自転車で見舞いに行ったりしている。あるミサの日、終わった後にポットラック(持ち寄りパーティ)が行われ、ウェスリーは、ビリー・ウェルズ老に誘われて参加する。そして、会が終わった後、教会に入る前に脱いだジャケットを堂内に忘れてきたことに気付き、こっそり中に入って行く。すると、そこではコリン牧師が清掃作業をしていた。そして、ウェスリーが、ロザリーの回復をお願いする言葉を書いて “祈りの箱” の中に入れた紙を、他の人の書いた紙と一緒に、牧師が、さっさと、事も無げに、何の躊躇もなく、ダストカート付属のゴミ箱に捨てるのを見てショックを受ける。ウェスリーは、牧師がいなくなると、すぐに紙を回収する。翌日、ウェスリーは教会の牧師を訪ね、自分を掃除係として雇ってくれるよう頼む。牧師が、予算がないので自分で掃除していると言って申し出を断ると、ウェスリーは回収した “祈りの箱” に入れられていた何枚かの紙を見せることで、牧師の行動を批判する。牧師は、紙に書いた時点で神が見ていると弁解するが、ウェスリーは、これでは、紙に書くことは、一種の “ガス抜き” に過ぎないと主張する。牧師は、「祈りの箱を “てこ” にして?」と、脅迫ではないかと抵抗するが、ウェスリーは「僕が知ってるのは、あなたには助けが必要で、僕には仕事が必要だってことです」と言い、清掃の仕事を勝ち取る。それからのウェスリーは、祈りの箱に入れられた “神へのお願い” の中で、実行可能なものを選び、清掃アルバイトで得たお金を使って、書き手の希望を叶えることに全力を注ぐ。ウェスリーが、ここまで必死になったのは、妹に、「お前は、世界中で一番大切な人間だ。神様がお前に気付くようにしてみせる。約束だ。どうにかして、何としてでも、神様に気付いてもらって、お前のすべてを知ってもらうんだ」と約束したからだ。しかし、努力のかいもなく、妹は死んでしまう。ウェスリーは、絶望して神の存在自体に疑問を感じるようになるが、妹が死ぬ前に書いた “神に宛てた手紙” の中で「お兄ちゃんは すごく頑固ですから、あなたが本当に存在し、お兄ちゃんを愛してるって知らせるには、よほど頑張らないといけません」と書いたのを見て感動する。そして、教会の信者が集まって、古い教会のペンキ塗りをする奉仕者の中に、自分が助けた人達が全員いるのを見て、その中に神の存在を感じる。

グラント・デヴィッドソン(Grant Davidson)について、詳しいことは何も分からない。映画の設定では13歳だが、実際にも、その年齢であろう。この映画の1年前に『Speedy-Snacks!』というショート映画に6人の子供の1人として出演しただけだが(下の写真、あらすじの1枚目の写真と似たポーズを選んだ)、この映画では、すべてがウェスリー役の出来不出来にかかっているという重圧の中で、見事に単独主演を演じ切っている。声変わりはしているが、表情は多彩で、純情な雰囲気がとてもいい。
  


あらすじ

日曜日の朝。ウェスリーの母が、「遅いわよ」と言う。「乗せてってくれないの?」。「無理ね。逆方向だから。急がないと」。「僕も会いに行くよ」(1枚目の写真)。「ダメ。教会に行きなさい」。信心深い母は教会に行きたいのだが、「癌が娘を殺そうとしてる時に、教会に座って、微笑んで歌ってなんかいられない」ので、息子にいつも代理を頼んでいる〔ボンドガールでラジー賞やスティンカーズ最悪映画賞をちょうだいし、それから18年も経って不気味に老いたデニス・リチャーズ(47歳)を、清廉な純真な13歳の少年の母に据えるなんて、完全なミス・キャストだ〕。この母は、娘のことに精一杯で、ウェスリーがミルクなしでシリアルを食べていようが、後で出てくるように、学校で給食代を払えなくて恥をかいても、一向に気にしない。ウェスリーは自転車で教会に行く。日曜礼拝はもう始まっている。教会でのウェスリーの指定席は、気のいい老ビリーの横の席〔ビリー役はTV俳優のレジナルド・ヴェルジョンソンだが、こちらは適役〕。ビリーは、ウェスリーを、自分の孫のように扱う(2枚目の写真)。賛美歌が終わると、牧師が話をするが、途中で、「主に特にお願いしたいことのある方は、祭壇まで来られて祈るか、神への要望を箱に入れて下さい」と声をかける。それに応じて、ウェスリーは祭壇の脇の段差に跪くと、妹が助かるよう一心に祈る(3枚目の写真)。
  
  
  

話を終えた牧師は、会衆代表の女性に、教会の報告事項を読み上げてもらう。その間に、牧師は、祈りをやめないウェスリーの前に行くと、肩を叩いて体を起こさせ(1枚目の写真)、「なぜ、祈りの箱に書いて入れない。後は、神に任せればいい」と言う。ウェスリーは、祭壇の前に置いてある祈りの箱(“Prayer Requests” と書いてある)の脇に置いてある紙に妹を救って欲しいと書くと、それを箱に入れる(2枚目の写真、矢印)。
  
  

ミサが終わり、ウェスリーが帰ろうとすると、ビリーに呼び止められる。そして、「ポットラック(持ち寄りパーティ)には出ないのか?」と訊かれる。「もう行かないと。何も持ってきてないし」。「わしは、4つの鍋料理とチィコレート・ケーキを持ってきた。それだけあれば十分だろ。わしの家族と一緒に楽しめばいい」(1枚目の写真)「それに、ちゃんとしたものを食べとらんみたいだしな」。宴会場には、会衆が持ち寄った料理が並べられ、それぞれに番号と料理名を書いた札が置いてある。参加者は、バイキングのように、好きなものを皿に取ってテーブルに行き、好きな者同士で語らい合う。ウェスリーが、レモンパンチをコップに入れようとしていると、ビリーの孫娘で、ウェスリーと同じクラスのオリヴィアが、「明日の数学のテスト、準備できた?」と訊く。「うん、大したことないから」(2枚目の写真)。「簡単に言うのね。私、昨日丸1日かけたのに、まだ外国語を読んでる感じ」。ここで話題を変え、「シュークリーム食べてみてよ。昨日の晩、ママが作るの手伝ったんだから」。「もちろん」。オリヴィアは明らかにウェスリーに惚れている。会衆代表の女性が、「今日の1品」の発表をする。1位に選ばれたのは、クリーム・チキンで、作ったのは、「ウェスリー・エルドリッジ」と紹介される。ビリーが、4つの鍋料理の1つをウェスリーの名にしておいたのだ。ウェスリーの奥さんはお冠で、夫を睨みつける。会が終わり、ウェスリーは、ビリーに、「ごめんなさいって、言ってもらえる?」と訊くと、「自分で言え」と言われる。そこで、「ウェルズさん、ごめんなさい」と謝るが、夫人は、「ママに、教会に来るように言っておいて」としか言わない。ウェスリーは、自転車を置いておいた所まで行き、ジャケットを堂内に忘れてきたことに気付く。表の扉は閉まってしたので、裏から入って行くと、牧師が後片付けをしていた。そして、祈りの箱の引き出しを出すと、中に入っていた紙を、そのままゴミ箱に捨てていた(3枚目の写真、黄色の矢印は引き出し、赤の矢印はゴミ箱)。これを見たウェスリーは、牧師がいなくなると、捨てられた紙をゴミ箱から取り出して出て行く。
  
  
  

ウェスリーは、自転車を漕いで、町の反対側にある病院に行き、妹の病室に直行する。妹は、兄を見ると、「私、もう治らない」と言う。「話してるの、聞いちゃった。ママに、天国ってどんなとこって訊いたら、そんなこと訊くのやめなさいって」。「ママも怖いんだ」。「時々、こんなやめてって思うの。お医者さんとか、何もかも」(1枚目の写真)。「今日は、その『時々』?」(2枚目の写真)。「今日は、教会に行ったのよね?」。「お祈りしたよ。紙にも書いた」。「お祈りした時に、もし、神様が聞いててくれたって分かれば、怖い思いをしなくてすむのに」。「ウェルズさんは、神様は僕らみんなを見てるって言ってた」。「いつも祈ってるのに、何も起きないわ。ママは、そのイスに座っていつもお祈りしてたけど、今は泣いてるだけ」。ウェスリーは、「お前は、世界中で一番大切な人間だ。神様がお前に気付くようにしてみせる。約束だ。どうにかして、何としてでも、神様に気付いてもらって、お前のすべてを知ってもらうんだ」と言う〔これが、その後のウェスリーの行動の推進力となる〕。「返事があったら、教えてね。もっと勇敢になれるから」。「お前は、僕が知ってる中で、一番勇敢な娘(こ)だよ」。
  
  

翌日、学校での食堂で。ウェスリーが、トレイに食事を取ろうとすると、給仕係のおばさんが渋い顔でじっと見る。その顔を見たウェスリーは(1枚目の写真)、「払わないとね」。「この前も、未払いだって言ったでしょ」。「あと1回だけ、お願い」。「払えないんなら、ママに来てもらって、無料化の手続きをしないと。同じことを何度言わせるの?」。オリヴィアは、「2人分」と言って、給仕係にお金を渡す。ウェスリーは、「後で返すから。今日は、お金を持って来るの忘れたんだ」とオリヴィアに言う。「いいのよ」。「ありがとう」。
  
  

学校の帰り、ウェスリーは教会に寄る。そして、牧師の部屋に行って用件を問われると、「えーと、あの… 僕、考えてたんです… 時間はたっぷりあるから… 家には、他に誰もいないし… 僕…」、ここまで言い渋り、最後に、「仕事が欲しいんです」と本来の目的を口にする。牧師は、13歳の子供を雇うのは違法だと言うが、ちゃんと調べておいたウェスリーは、「週末に働かないんなら、問題はないはずです」と答える〔そうでなければ、映画によく出てくる 少年の新聞配達はできなくなる〕。牧師は、昨年から掃除人の予算を削り、自分で掃除していて、余分なお金はないと、乏しい資金繰りを話す。「こう考えたんです。僕がもっときれいに掃除すれば、あなたは牧師の仕事に専念できるって」。「いいかね、教会の掃除は、簡単な仕事だから、朝早く来て汗を流せば、残りは牧師に専念できるんだ」。ウェスリーは、「じゃあ、ゴミは?」と言うと、“祈りの箱の中に入っていて、牧師がゴミ箱に捨てた紙” を机の上に置く。「それは、何だ?」。「紙くず” じゃないですか?」(1枚目の写真)。そう言われて、牧師は仕事の手を止め、紙を見る。「これらは秘密に書かれたもので、君が見てはいけない」。「妹は、神様に見捨てられたと思っています。あなたが、これらの要望を事も無げに捨てたように」。「ちょっと待ってくれ。もし、私が祈りの箱に入れられた要望のすべてに対処していたら…」。ここで、方針を変え、「神は、紙に何が書かれたか知っておられる。ちゃんと。だから、私は介在する必要がないんだ」と逃げる。「こんなのばかげてます。書いた人の気分を楽にするだけです。ただの、それだけ」。「ウェスリー、なぜ、ここに来たんだ?」。「言ったでしょ。仕事が欲しいんです」。「祈りの箱を “てこ” にして?」。「僕が知ってるのは、あなたには助けが必要で、僕には仕事が必要だってことです」。その顔には、“脅し” の表情は全くなかったので、牧師はウェスリーに掃除をさせることにする。次に映る掃除シーンは、“その当日” なのか、“もっと後” なのかは分からない。ウェスリーは、トイレの掃除をし、床を電気掃除機できれいにし、会衆席を拭き、最後に祈りの箱を拭いて(2枚目の写真)、引き出しに入っていた1枚の紙を取り出す。そこには、「神様、どうか息子の誕生日プレゼントを買う余裕を与えて下さい」と書かれていた(3枚目の写真)。ウェスリーは、その紙を ゴミ箱に入れずに持ち去る。
  
  
  

ウェスリーは、その後、まず妹の病室に行き、ゲームが上手にできるよう、コツを教える。そして、最初の “給料” で買ったチャコレートを妹に渡す(1枚目の写真、矢印)。「ダメなの。胃が痛くなるから」。「だけど、好きだったろ。僕のお金で買ったんだぞ」。「お金なんか持ってないでしょ」。「持ってる。仕事やった」。「ママは知ってるの?」。「いいや。言ったダメだぞ。いいな?」。「どこで?」。「教会だ。掃除してる。言っただろ、神様に気付いてもらうんだって」(2枚目の写真)。
  
  

ウェスリーは、雑貨店の前に行くと、持ち出した紙を見て考える。そして、そのまま店に入って行くと、「何かお探し?」と訊かれ、「6つか7つの男の子へのプレゼントを探しるんだけど。玩具とか」と言う(1枚目の写真)。「ここには、玩具はあまり置いてないの。玩具屋の方は、もう当たってみたの?」。「僕の予算に合うものがなくて」。「そう、幾らあるの?」。「10ドル」。「それなら、こっちにあるわ」。そこに置いてあった大きな箱の中身は、ほとんどが縫いぐるみ。中に1つだけ子供の野球用グローブが混ざっていたが、その値札には、「20→18→12.95」と2回値下げした価格が書かれていた。しかし、それでも、10ドルでは足らない。ウェスリーがあきらめて、他のものを探し始めると、店員が、「言うのを忘れたけど、今、クリアランス・セール中で、30%引きよ」と声をかける。ウェスリーは、すぐにグローブを取り、レジに行く。「包んでもらえる?」。「箱をあげるわ」。そして、簡単な紐ももらう。9.84ドルなので、16セントのお釣。そして、ウェスリーの誠実そうな顔を見て、売れ残ったボールをプレゼントしてくれる(2枚目の写真)。夜、暗くなってから、ウェスリーは、1軒の家の横まで自転車で行き、グローブとボール入りの箱を持ち(3枚目の写真)、玄関のドアの前に置くと、ノックして体を隠す。そして、贈り物を母親が手にするのを確認してから、その場を去る〔ウェスリーは、この願いの主が、この家の母子だと、どうして分かったのだろう?〕
  
  
  

ウェスリーにことなど完全に忘れている母が、早朝家に戻ると、まだ息子が家にいた。「まだ いたの?」。「昨晩は帰って来なかった」。「あの娘(こ)に、いてくれって頼まれたの。そしたら、咳き始めて、離れられなくなった。電話すれば良かったけど、もう遅かったから」。そして、ビリーが電話を寄こし、①土曜に、昔の教会のペンキ塗りを手伝って欲しい、②アルバイト代を払う、と言っていたと告げる。アルバイト代という言葉にウェスリーは喜ぶが、その後、母は、牧師の手伝いをしているとも聞いたと話し、自分に相談もせずに勝手に始めたことを非難する。ウェスリーは、「食べ物や石鹸だけで買わないと。僕のランチ代は もう何週間も払われてない」と、母の対応を非難する(1枚目の写真)。「給仕を拒めないはずよ」。「だけど、恥ずかしい思い させられるんだ。少しでもお金があれば、ランチ代を払えるし、牛乳も飲めるんだ」。この、ひどい母親は、それに対し、謝りも、改善策も言わず、「辛いのは分かるけど、切り詰めないといけない。あなたは、子供なんだから、宿題をするとか お友だちと付き合うとかしないと」と教条論しか言わない。「妹が癌になってる可哀相な子なんかと付き合いたがる子なんていないよ」。「なぜ野球をしないの?」。「ママが、申し込み日までに、申請書を送り忘れたからだよ」。母は、まだ謝らない。そして、「もうこんな時間。今朝、お医者さんと会わないと。新しい治療を頼むの。それで奇跡が起きるのを祈ってるわ」。ウェスリーは、「本気で そう思うの?」と訊く(2枚目の写真)。「本気って、何が?」。「奇跡を祈ること。そう言わなかった?」。これにも母は答えない。「時間がないわ。バスに遅れないで。こだ、ランチ代よ」とお金を置くが、ウェスリーは、「自分のことは自分でできるよ」と言い、お金を取らずに席を立つ。「ウェスリー?」。「バ~イ」。彼は、完全に母を見放している。学校に着いたウェスリーが真っ先にしたことは、ランチ代をオリヴィアに返すこと。「『いいのよ』って言ったのに」。「うん、だけど、『後で返す』って言ったよ」。お金を渡し、「これで貸し借りなし。そうしたかったんだ」と言い、オリヴィアも快く受け取る。
  
  

土曜日。古い教会の前に集まったのは、ビリーとウェスリーの2人だけ。現在は、スマートで現代的な教会があるので、ウェスリーが、「ここが、まだ使われてるって知らなかった」と言うと、ビリーは、使われていないが、放置するのは可哀相なのできれいに塗り直したいと話す(1枚目の写真)〔動機は、①ビリーの父が建設に携わった、②長年 この教会に通って神と話した〕。ウェスリーが任された仕事は、剥がれかけているペンキをこそげ落とし、ペンキがきれいにのるようにすること。仕事が終わってから、ビリーは、妻が訊きたがっていたと言い、妹の容態を尋ねる。「ママは、何も話してくれない。僕が知ってるのは、昨日、医者と話し合ったってことだけ」(2枚目の写真)「もし、いい知らせがあったんなら、もう聞いてると思うよ」。「そりゃ残念だな」。「誰か、死んだ人、知ってる?」。「もちろん」。「その人達、苦しんだ?」。「何人かはな。中には、死んだ方がマシな奴もいたな」。この言葉で、ウェスリーに少し笑顔が戻る。最後に、ビリーは、「忘れるとこだった」と言い、アルバイト代として10ドル札を6枚渡す。「少し余分に入れといた。学校のランチ代を精算して欲しかったからな」。「オリヴィアが話したんだ」。「わしと孫娘との会話は、君には関係ない」(3枚目の写真)「だが、君には、君のことを心配してる女の子がついてるんだ」。
  
  
  

翌日の日曜礼拝で、賛美歌が終わると、1人の女性が発言を求める。「牧師さん、ごめんなさい。でも、どうしても、皆さんに知って欲しくて」。そして、話し始める。「先週、私がここに来た時、通帳には2ドルしかありませんでした」(1枚目の写真)「でも、息子の誕生日が数日後に迫っていたので、お願いを書いて箱に入れました。正直言って、何も起きないと思ってしました。エヴァンの誕生日の夜、誰かが玄関に箱を置いていきました。エヴァンの欲しがっていたのが野球のグローブだって、どうやって分かったのでしょう? あの子は、グローブ以外、何も欲しくありませんでした。彼が、贈って下さったに違いありません」。牧師は、「ありがとう。我々が祈りを捧げるにあたり、実に励ましになるお話でした」としめくくる。礼拝の後、祈りの箱の中には、いつもより多い紙が入っている。ウェスリーは、すべてに目を通す。もちろん、対応不可能なものも多い。「神様、マロリー〔ウェスリーの妹〕を見守ってあげて下さい!」「マロリーを助けてあげて下さい」「マロリーを死なせないで下さい」という3枚は、嬉しい内容だった。その次にあったのが、「レジーの身障者手当が入るまで、何とか持ちこたえられますように」。ウェスリーは牧師の部屋に行くと、引き出しから、教会の封筒、便箋、町の住所録を取り出し、ポスト・イットとボールペンを取ると(2枚目の写真、矢印)、アドレスを書き込む。翌日学校で、ウェスリーはパソコンに向かって文章を打ち、プリンターで便箋に印刷する。そこには、「関係各位/当教会の重要な会衆が財政的な問題に直面していると知りました。貴社からの督促で破綻を迎えるのは見過ごせません。どうか、寛大なる措置により、レジナルドとスーザン・クレモンスに猶予を与えてあげて下さい。クレモンス氏は、酸素タンクを扱う熟練者です。いましばらくお待ち頂きますよう/敬具」というものだった。手紙を封筒に入れたウェスリーは、それをクレモンスのポストに入れる(3枚目の写真、矢印)〔差出先が分からないので、投函はクレモンスに任せることにした/牧師のサインはどうしたのだろう?〕。自分の部屋に戻ったウェスリーは、“左右2つに仕切られ、左に「神」、右に「ウェスリー」と書かれたウッドボード” の右欄に、2枚目の “祈りの箱の紙” をピンで止める。
  
  
  

翌日、ウェスリーが妹に会いに行くと、彼女は眠っていて、それを母が見ている。ウェスリーが、母の肩に手を置くと、「ここで何してるの?」と訊く。「今日は、半日で終わり。今夜は、公開日だから」。母は、元気がない。「この娘(こ)には、ママを信じなさいって言ってきた。大勢の医者や専門家にもお願いし、彼らは、病気に勝てるって言ってくれた。この娘(こ)は、すごく頑張った。でも、今はもう、奇跡を待つしかないの。そんなこと、どうやったら言える?」。「妹は、もう知ってるよ」。ここで、妹が咳き始める。母は、「看護婦さん!」と叫ぶ。自分には用がないと悟ったウェスリーは、そのまま廊下に出ると、隅で “お見舞い用の花” を売っているところに行き、ポット入りの花束を買う(1枚目の写真、矢印はお金)。花束には、「ペニー、許してくれ、ピーター」と書いた紙が刺してある。ウェスリーは、それを1軒の家の戸口に置く(2枚目の写真)。部屋に帰ると、ウッドボードに3枚目の紙を貼る。そこには、「私の娘の結婚生活を救って下さい。ペニーが彼を許しますように」と書かれている。
  
  

次の日曜礼拝で、立ち上がったのは、スーザン・クレモンス。「信じられませんでした。驚きでした。会社は、私たちが扶助制度の資格に該当する」と電話をかけてきて、請求書は取り消されました。奇跡です」と、神に感謝する。また、報告はなかったが、破綻寸前だったペニーとピーターが仲良く出席しているのを見た牧師は、「お母さんは とても喜んでおられるだろう」と、一言添える。しかし、ミサが終わり、誰もいなくなると、掃除中のウェスリーに、「君だな」と牧師が声をかけてくる。「何です?」。「みんな、そこにある祈りの箱を見て、神が何か特別なことをなさったと考えている」(1枚目の写真)「君は、私が “祈りの箱の紙” を捨てたことは間違いだと思っていた。だから、みんなを騙して、神が奇跡を起こされたと思わせてるんじゃないのか? そうだとしたら、一種の背信行為だぞ」(2枚目の写真)。ウェスリーは、反撃に出る。「みんなは、要望に応えているのが、神なのか、トイレ掃除をしている子供なのか、どっちでもいいんです。希望が叶ったんだから。あなたは喜ぶべきですよ。ミサの参加者がうんと増えてるでしょ」。「このこと、誰かに話したか?」。「もちろん、言ってません」。しかし、これで手を緩めるようなウェスリーではない。了承して去ろうとする牧師を呼び止め、「次の日曜には、もっと大勢の人が来るでしょう。献金皿もいっぱいになると思います。手当を増やして下さい」。「これまで、種々の小口の基金からお金を引き出してきたし、私のポケット・マネーも使っている」。「申し訳ありません。でも、僕のためじゃないんです。信徒の希望を叶えるためです。要望に応えるには、もっとお金が要るんです」(3枚目の写真)。「ウェスリー、私にはできない」。「いいでしょう。以前の状態に戻そうじゃありませんか。みなさんに、偽(いつわ)りだったと告げる… それで いいんですね?」。この一種の脅迫に、牧師は折れる〔ウェスリーは、「僕のためじゃない」と言っているが、こうした “奇跡” を演じることを神の注意を惹き、妹の命を助けてもらおう、という強い決意の元での行動であり、全くの “無私の無欲” とは言えない〕
  
  
  

かくして、より多くの資金に裏打ちされたウェスリーは、スーパーに行くと食料品を買い込み、それを大きな紙袋に入れて、ある一軒の家の前に置く(1枚目の写真)。別の家の場合は、お札をそのまま封筒に入れ(2枚目の写真、矢印はお札)、ドアに挟んでおく。ウッドボードに貼られた紙は5枚になった(3枚目の写真)。最後の2枚は、「家賃が払えません」、「子供たちに食べさせるものがありません」と、“祈りの箱” に頼った調子のいい内容になっている〔信者の方も逸脱してきている〕
  
  
  

夜遅くまで雑用に追われたウェスリーは、翌日、授業中に眠ってしまう。教師は、「親のサインをもらって明日返却するように」と言い、先日行った数学のテストを1人ずつ机の上に置いていく。しかし、ウェスリーの答案は「95」だったので、眠っていても起こさずに素通りする(1枚目の写真)。指示を聞いていなかったウェスリーは、教室を出る時、チラと答案を見ると、ゴミ箱に捨てていく。ウェスリーが廊下に出ると、彼のロッカーの前で、オリヴィアが待っている。「どうしたの?」。「待ってたの」。「それで?」。「妹さんのことを聞いたの。何かできることは? して欲しいことは?」。「妹には、死んで欲しくない」(2枚目の写真)。「私、祈ってるし、他の人たちも…」。「だろうね」〔ウェスリーは、気丈に見えて、崩壊寸前〕。学校が終ると、ウェスリーはビリーとの約束を守り、追加のペンキ塗りに出向く。塗る場所が高さ3メートル近い鼻隠し〔屋根と壁間〕の部分なので、ビリーは、キャスター付き作業台の上に6段の脚立を立てるという “危なっかしい足場” を作ってウェスリーを待っていた。「それ、ホントに安全なの?」。「安全過ぎたら、面白くないだろ。それとも、お前さん、自分で作りたかったのか? やりたいなら、作ってくれてもいいぞ。とにかく、来てくれて嬉しいよ」。「で、僕は何をすればいいの?」。ウェスリーは脚立に登りたがったが、ビリーは、危険にさらさない義務があるといい、ペンキを練って渡す役を頼む。その会話の中で、ビリーの息子が8年前に交通事故で死に〔その時、オリヴィアは4歳〕、奥さんは再婚したことが分かる〔オリヴィアの今の父は、継(まま)父〕。そして、ようやくビリーが脚立を登り始めると、太っていて体重が重いため、少し登っただけで脚立のバランスが崩れ、そのまま作業台からも転落して地面に投げ出される(3枚目の写真)。ウェスリーは携帯を持っていないので、恐らく、自転車で近くの家に行き、救急車を呼んでもらう。そして、救急車に同乗して病院に向かう。その夜、部屋に戻ったウェスリーは、ウッドボードの左欄〔「神」がすべきこと〕に、初めて紙を貼る。そこには、自ら、「ウェルズさんを助けて」と書いた。
  
  
  

翌早朝、ウェスリーは、母に起こされる。「何?」。「一緒に教会に行くわ」。「なぜ?」。「行きたいの。15分で出るわよ」。ウェスリーは、眠たくてベッドの中で悶々としている。着替えたウェスリーが、階段を降りながら、「なぜ、行く気になったの?」と尋ねる。理由は、昨夜、母が妹の部屋にいたら、同じ病院に入院したビリーが会いに来たから。「どうやって? 死んだみたいに動かなかったのに」(1枚目の写真)。最初、ビリーは、母に、話しがあるから病室まで来て欲しいと電話してきたが、母は娘の具合が悪かったので断った〔具合ならいつも悪いので、同じ病院の中で呼ばれて行かないのは、如何にもこの母らしい自己本位の非礼さ〕。そしたら、ビリーは、静脈注射やモニターを付けたベッドに寝たまま、2人の看護婦に運ばせて、わざわざ妹の病室までやってきて、今日のミサに出るよう約束させた。母は、ビリーのことを、「今まで会った一番の頑固者」と酷評するが、ビリーにそこまでさせて、妹の病室から一歩も動かなかった母こそ「一番の頑固者」だ。教会の中は人でいっぱい。母は、「こんなにたくさんの人、そこから来たのかしら?」とウェスリーに囁く(2枚目の写真)。牧師は、ビリーの事故のことを話して回復を祈った後、久しぶりにウェスリーの母がいるのを見て、娘の容態について話すよう依頼する。母は立ち上がると、「そうですね。厳しい日々です。治験に望みをかけましが、うまくいっていません。娘は戦っていますし、私たちはあきらめていません。でも、病気の悪性は高く、だから…」。ここで、牧師が、「あなたは、どうなのです?」と訊く。「私は、怖いんです」〔この発言をする時の “笑顔” は、ラジー賞の俳優に相応しい〕。牧師が、祈りの箱への記入を呼びかけると、多くの人が立ち上がり、列ができる(3枚目の写真、矢印)。ところが、ウェスリーはそれを見て、外の廊下に出て行ってしまう。
  
  
  

ミサが終わってからのシーンは、2つ。1つは、母が、ウェスリーに、「なぜ、出てったの?」と訊くと、ウェスリーは、「なぜ、まだいるの?」と訊き返す(1枚目の写真)。息子との対話が欠けていると感じた母は、隣に座ると、「こんな気持ちになるのは久し振り」と言う。「どんな?」。「分からない。希望?」。ウェスリーは、かすかに首を横に振ると、「仕事に行かないと」と言って立ち上がる。母は、手で座らせ、「あとで妹を見に来てやって。あなたと話したがってる」と頼み、「もう長くない」と付け加える。もう1つの長いシーンは、祈りの箱の前に立っている牧師との会話。引き出しの中は、紙で一杯だ。そこに来たウェスリーは、「僕が掃除します」と申し出る。「すべて君の妹のものだ。私が処理する」。ウェスリーが他の場所の掃除に行こうとすると、牧師が、思いを述べる。「私は、ずっと信じて祈ってきた。もちろん、人々のために祈ることが仕事だから。だが、そうした職務とは関係なく、私は心から信じてきた。そして、天国に近づくことができ、世界を変えられると思い、熱心に祈った」。「なぜ、やめたんです?」。「すべてが無作為に起きていると感じたからだ。我々は神を変えられるのか? 神は我々を変え得るのか? 変えられないのなら、神秘的なスロットマシンとどこが違うのか? マロリーの回復を神に求めたとして、応じられるかもしれないが、たぶん何もされないだろう。それが私を悩ませるのだ」。「僕らのやり方が、間違ってるのかも…」(2枚目の写真)。「そうかもしれん」。「僕、昨日、ウェルズさんのことを祈ったけど、そんなつもりなんかなく、思わず書いたんです」。「きっと効くだろう」。「正しいという信念だけで物を言うのは止めた方がいいと思います」。「たぶん、君が正しいんだろう」。
  
  

ウェスリーは、掃除が終わると、母に言われたように、妹に会いに行く。部屋に入った時、眠っていた妹が、目を開ける。兄が泣いているのを見ると、「泣かないで」と言う。「僕、試したぞ。ホントなんだ。この前 話したように、神様が僕らに注目してくれるよう、やってみた。覚えてるか? 約束しただろ」(1枚目の写真)。「今日、神様を感じたわ」。「感じた?」。「一緒にいてくれたの」。「見たのか?」。「感じたの」(2枚目の写真)。「今日、教会でたくさんの人たちが お前のことを祈ったんだ。神様は、それを聞いたんだ。ウェルズさんも死なせなかった。僕らに気付いてくれたんだと思うよ。だから、もうちょっと、頑張るんだ。いいね?」。「いいわ、お兄ちゃん。大好きよ」。「絶対、あきらめないからな」。しかし、妹は、また眠りについていた。母が、「眠らせなさい」と言って、廊下に出るよう促す。ウェスリーは、母に、「神は、今まで、なぜ妹を助けようとしなかったの?」と食ってかかる。「たぶん、今日、したのよ」。「何を? 妹が、心で何かを感じたから? そんなの十分じゃないよ。助けになんかならない」(3枚目の写真)。その時、看護婦が処置に来たので、ウェスリーはビリーに会いに行く。
  
  
  

ビリーは、ベッドに寝かされているのにウンザリし、無理矢理ベッドから出ると、将来のために置いてあった車椅子に乗り、勝手に部屋を出る。そして、偶然、廊下でウェスリーに会う。「病室から出て、何してるの?」。「あんなトコには戻らん」。そこに、“逃亡” に気付いて探していた看護士が飛んできて、「あちこち探したんですよ」と注意する。「ガーガーうるさいな」(1枚目の写真)。ウェスリー:「言われた通りにしたことないの?」。看護士は、ビリーの車椅子を病室まで押して行くと、ベッドに横にならせ、「今度やったら、縛り付けますよ」と警告する。ウェスリーは、ビリーの奥さんが戻って来たので、出て行こうとするが、ビリーは、「わしは、君に言いたいことがあったから、出かけたんだ」と言って、引き止める。そして、「わしは、ひらめいた。悟ったんだ。君が祈りのため祭壇に行ったあの日、何かが起きた。君の祈りは純粋だった。君は、わしらみたいな老人しかいない教会に、新風をもたらした。神様も気付いたに違いない」と褒める(2枚目の写真)。さらに、「君が、まだ若いからといって、誰にも見下されるな。君は、信者たちに、話し方でも、行いでも、信仰でも、純粋さでも模範となっている」と、追加で褒める。
  
  

褒め殺しの一歩手前まで行きそうになったウェスリーは、渓流の岸辺まで行くと、妹とは無関係な “祈りの箱の紙” を7枚並べて、どうすべきか考える。3枚は、ポケットに入れ、残る4枚は丸めて渓流に投げ入れる。ゴミ箱に直接入れるよりはいいと思ったのだろう。暗くなって、ウェスリーは、遠距離バスの切符売り場に行く。そして、メンフィスまでの往復切符を購入する。旅行日は土曜、帰りは月曜、名前はライアン・リレー。金額は40ドル。今までの最高額だ(1枚目の写真、矢印は切符)。そして、未成年立入禁止の場所に入って行くと、係に、青シャツの男に渡してくれと、切符の入った封筒を託す。2つ目は、最初にグローブをプレゼントしたエヴァンの家に行くと、エヴァン宛の手紙を置き〔エヴァンが、「野球を上手にしてください」とでも書いた?〕、「楽しめ」と言って立ち去る。最後は、翌日、学校の給仕室に行くと、嫌味なおばさんのところに行き、「僕みたいな子、多い?」と訊く。「どんな?」。「ランチ代を払う余裕のない子」。「いつも」。「それって、その子の責任じゃないのに、すごく恥ずかしいんだ」。「そうかもね。だけど、両親がここに来て、必要な書類に記入さえすれば…」。「足りるかどうか分からないけど、これで、その子たちの借金を清算してもらえる」。そう言うと、ウェスリーは、小さく巻いたお札を渡す。「どこで手に入れたの?」〔いちいち口うるさい〕。「受け取って。そして、お腹の空いた子供たちに意地悪しないで」(2枚目の写真、矢印)。
  
  

ウェスリーは、右欄が満杯になったウッドボードを、教会に持ってくる(1枚目の写真)。そして、「僕を見て! なぜ、僕を見てくれない?!」と祭壇に向かって話しかける(2枚目の写真)。「あなたは、どこにいるの? 僕に、これ以上、何をしろと?」と涙ぐむ。そこに、牧師が入ってくる。「ウェスリーは、ずい分、探したぞ」。「まさか」。「済まない」。「イヤだ」。「何と言ったらいいか… 可哀相に…」。2人は抱き合うように泣き崩れる(3枚目の写真)。
  
  
  

数日後、自宅で。ウェスリーが喪服を着て、黒いネクタイを締めようと悪戦苦闘している(1枚目の写真)。母は、いつも通り冷淡で、「時間よ」と言っただけで、ネクタイの手助けをしようなどとは露ほども思わない。自分には無理だと分かったウェスリーは、ネクタイを投げ捨てる。次のシーンは、墓地での埋葬シーン。牧師が最後の言葉を述べていると、耐え切れなくなったウェスリーは、走って逃げ出す(2枚目の写真、矢印)。
  
  

葬儀から帰った母は、ウェスリーの部屋まで上がってくると、「コリン牧師から渡された」と言うと、ウッドボードを見せ、「これ、何なの?」と訊く。「何でもない」。「これって、祈りの箱の紙じゃないの? なぜ、ここにあるの?」。ウェスリーは、「何でもないと言っただろ」と言いながら、母の手からボードを取り上げる。母は、再度説明を求める。「これは、神が妹のために何もしてくれなかった証拠だよ。お祈りなんて、バカな人たちの責任逃れに使われるバカげた冗談だっていう証拠だよ。神は、僕らなんか見もしないし、やって来もしないし、助けようともしない証拠だよ」〔『神なんて存在しない証拠だよ』とは言わない〕。「あなたが、これをやったの? この人たちの祈りに応えたの? なぜ? なぜ、そんなことしたの?」。「神様が妹に気付くようにしてみせる、って約束したんだ。だから、神の代わりに、神のやるべきことをやったんだ」(1枚目の写真)。「コリン牧師の仕事も助けたんだ。これらの要望にすべて応えたることで、神は聞いててくれてる、ってみんなが思ったから。だから、大勢 教会に戻ってきたんだ。神が、助けてくれたり、優しくしてくれると期待したから」。「ウェスリー、ここに来なさい。あなたは、自分がなにをしたか、皆さんに言わないといけないわ」。「僕は、絶対、教会には戻らない」。「あなたは、良い子で、最高のお兄ちゃんだった」(2枚目の写真)「だから、嘘付きにはならないで。あなたには、あなたなりの理由があるけど〔とても冷たい言い方〕、皆さんにも真実を知る権利があるの」。「今さら、それがどうしたっての? もう、どうだっていい」。「それは、皆さんが判断することよ」。「なぜ僕がやったかなんて、理解できないよ。僕にだって、理解できないんだから」。母は、息子を抱く〔こういうシーンで、特にミス・キャストがマイナスに作用する。“この種の映画には場違い” な女性が、こうした意見を述べること自体に信憑性が全く感じられない〕
  
  

次の日曜礼拝で、牧師は、「人生は、簡単なものではありません。決まりきったこと、悩みごとの連続で、回り道をさせられたり、時には脱線もします」と一般論を述べた後、4年半前に、妻子を分娩時に失ってから、自分が変わってしまったと告白する。「私は、常套句に頼り、型通りの手順でミサを行いました。祈りの箱については、中味を形式的に見ましたが、それは、あなた方が、好きな時に、好きなことを神に要望できる便利な仕組みだと、希望的に考えていただけでした。その時、ここにいる、ウェスリー・エルドリッジ少年が私の部屋に入って来て、私のことを偽善者と言いました」(1枚目の写真)「そして、彼はこうも言いました… “神があなた方に手を差し伸べたり、祈りの要望を聞かれることなどなさらない” と私が信じていると。それは正しかったのです。私は、恥ずかしい思いをすると同時に、私は真の姿が暴かれるのではないかと恐れ慌てました。今、ウェスリー君と私は、何が起きたかをすべてをあからさまにする必要があります。実際に告白するのは私一人ですが、ウェスリー君もここに来ています。ただ、これは あくまで私の告白でしかありません」。ここで、ウェスリーは席を立って、牧師のところに行く。「私は、ウェスリー君に感謝しています」。牧師は、ウェスリーの肩に手を置くと、もう一度、「ありがとう、ウェスリー」と言う(2枚目の写真)。
  
  

ミサの帰り、母は、かつてマロリーが好きだった川辺に車を乗りつける。そして、「今日は立派だったわ。あそこに座っているのは大変だったでしょう。今でも、あなたがしたことには賛成できないけど、多くの人を助けたことも事実だわね」と、褒めて腐した後、数日後には、仕事に復帰するけれど、「すべてが元通りになるとは期待しないで」と言う。「それって、予防線か何かのつもり?」。「あまり早い進展を期待しないで欲しいってこと」。「好きなようにすれば」。「子供を1人失った悲しみは生涯続くわ。2人は失いたくない」。「まだ失っちゃいない」。「ウェスリー、本当に悪いと思ってるわ。でも、前と同じママには戻れないの」(1枚目の写真)「打ちのめされてしまったから。でも、あなたを愛してる。マロリーのために戦ってくれたことも。神様をあれほど追い回すなんて度胸、誰にもないでしょ。でも、あなたはやってのけた。そうなのよ。最後の数日、神様がマロリーの部屋に来てくれた。そう感じたの」。「なら、なぜここにいないの? 神なんて、どこにも感じられない。なんでそう、事をややこしくするの?」(2枚目の写真)「時々、顔を見せるだけだなんて、すごくイージーだと思わない?」。口だけで何もしなく、信仰だけに頼り、ずっとウェスリーを無視してきて反省すらしない母に対する、怒りがこもっている。
  
  

それから、数日して、最後の整理に病院に行った母は、病室の引き出しに入っていたものを渡される。その中に、マロリーが書いた手紙があった。手紙を渡されたウェスリーは(1枚目の写真)、読むのを拒むが、母は、読み始める。「神様…」。「聞きたくないって言ったろ」。「ウェスリー、お願い」。「お兄ちゃんは、私が勇敢な子だと言いました。でも、それは、あなたが私にお兄ちゃんを与えてくださったからです。お兄ちゃんは、どれだけイライラしてる時でも、私のことはバッチリ見守っててくれます。お兄ちゃんはあなたのことをもう信じていないみたいです。お兄ちゃんは すごく頑固ですから、あなたが本当に存在し、お兄ちゃんを愛してるって知らせるには、よほど頑張らないといけません。それと、ママをあまり泣かせないでください。最後に、私の家族の世話をよろしくお願いします。マロリー」。内容の如何は別として、妹が、いかに兄思いだったかを知ったウェスリーは感動する(2枚目の写真)。
  
  

ビリーが何とか歩けるようになり、古い教会のペンキ塗りには、ウェスリーだけでなく、他の信者たちも参加している(1枚目の写真)。作業が終わり、持ち寄りで昼食がふるまわれている。ウェスリーが1人離れて “外された足場” に座っていると、オリヴィアがやってきて、「一緒に食べないの?」と訊く。「ここから見てる方が好きなんだ」。「一緒に座ってもいい?」。「いいけど、ペンキに気を付けて」。ウェスリーは、仕事中ずっとオリヴィアの姿がなかったので、「一日中、どこにいたの?」と訊く。「全部終わってから、来ようと思ったの」。「そりゃいいや。どうだい、きれいに仕上がっただろ?」。「あの建物、取り壊されて新しい託児所が作られるそうよ」。「まさか? 嘘だろ? 君のお祖父さん、そんなこと言ってなかったぞ」。「もう、計画は決まってるみたい」。「じゃあ、なぜ教えてくれなかったんだ?」。「お祖父ちゃんには、別の考えがあるみたい。お祖父ちゃんが、すごく頑固だって知ってるでしょ?」。ここで、この話は終わり、次に、ウェスリーが重要な話を始める。「どう話したらいいか分からない。気が違ったかと思われちゃう」と前置きした後で、「僕、今日、神様を見たんだ」と打ち明ける(2枚目の写真)。こっちにいるのは、もうちょっと考えることにしたからだ。あの感じを いつでも思い出せるようにね」。「あなたが、そんな話し するなんて」。「それは、突然のひらめき、ホントだっていう悟りなんだ。あそこにいる人たち、雑然としてるように見えるだろ。あの人たちは、みんな、汗を出して働き、今は、人生で起きた最悪のことについて話してるんだ。最初は、気が滅入っちゃった。そしたら、どの話も、“いかに神様がみんなを助けたか” を物語ってるんだって、気付いたんだ」。信者たちの中には、確かに、グローブを贈ったエヴァンスとお母さん、督促状の取り消しを頼んだクレモンス夫人、花束を贈って仲直りさせたペニーとピーター、メンフィス行きの切符を買ってやった青年たちがいる。「すべてをまとめると、それは突然、小さな神様のように見え、それが、どんどん大きくなっていったんだ」。そして、こう続ける。「僕は、神様に見て欲しいと ずっと思ってて、それが今日、ようやく、見れたんだ。そんなこと、ありかな?」。「ええ」。「あそこにいる人たちの誰一人、神様が一緒にいるって、気付いてない。でも、ここにいるんだ。みんなも 知るべきじゃないかな?」。「話せばいいじゃない」。「13歳の子供を誰が信じる?」。「私は信じるわ」。
  
  

その夜、ベッドにもたれかかったウェスリーは、妹の手紙をもう一度読むと、ウッドボードの左の「神」の欄にピンで止め、じっと見入る(1枚目の写真、矢印はボード)。そして、天井を見上げると、「あなたが見える」と言う(2枚目の写真)。
  
  

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