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The Thief Lord どろぼうの神さま

イギリス・ドイツ映画 (2006)

アーロン・ジョンソン(Aaron Johnson)とジャスパー・ハリス(Jasper Harris)が孤児になった兄弟を演じるファンタジックな冒険物語。原作は『どろぼうの神さま』の題名で翻訳されている。だから仕方なく、映画の邦題としてそれを使用したが、これは絶対に誤訳である。映画に登場する16歳のスキピオは、ヴェネツィアの大金持ちの息子。家のない孤児を可哀想に思って、父が所有する使われなくなった映画館ステラ座に匿っている。そして、黒いカラスの仮面をかぶり、家にある金目のものを盗み出しては、盗んできたと偽って孤児たちに渡して生き延びさせている。スキピオ自ら名乗ったのか、孤児たちが付けたのか、故買屋のバルバロッサが付けたかは分からないが、「Thief Lord」と呼ばれている。これは、どう見ても「神様」ではない。そもそも盗んでなどいないのだから。“Lord” には神という意味もあるが、貴族という意味もある。内容からすれば、「泥棒のふりをした金持ちのボンボン」なので、そのつもりで観て欲しい。孤児たちをボロ家に匿うという発想は、ディケンズの『オリバー・ツイスト』に端を発するもので、21世紀に入ってからの映画では、本作と、2007の『奇跡のシンフォニー』に引き継がれている。この映画の一番の魅力は、完璧ともいえるヴェネツィアでのオール・ロケで、これほどヴェネツィアの魅力が映画の隅々にまで散りばめられた子供映画は他にはない。この映画のファンタジーの部分を担うのが5つの木像(ライオン、ユニコーン、ネプチューン、タツノオトシゴ、人魚)の付いた回転木馬。前向きにまわすと乗った人物は年を取り、後ろ向きに回すと若くなるというユニークな装置だ。伯母夫妻は、兄弟の母が亡くなって孤児になった時、6歳のボーだけを養子にし、15歳のプロスパーを孤児院に放り込んだひどい人間だが、逃げた2人を探すために探偵ヴィクターを雇う。もう1人の重要人物は回転木馬のライオンの翼(ヴェネツィアの象徴「有翼の獅子」)を持っている孤児院出身の写真家の女性アイダ。さらに、その翼を「Thief Lord」に盗ませ、回転木馬を動かして若返ろうとする伯爵、厳しい一点張りの父に対抗して年をとりたい「Thief Lord」ことスキピオ、そして、プロスパーとボー他、3人の孤児たち、欲のつっぱった故買屋のバルバロッサが渾然一体となり、話は思わぬ結末へと向かっていく。今でも、「Thief Lord」めぐりツアーがあるほどの人気作だ。

この映画の魅力は何といってもヴェネツィア。兄弟は貨物列車で逃亡し、亡くなった母が憧れていたヴェネツィアを目指す。駅からこっそり小さな貨物ボートに潜り込み、シートをめくり上げて最初に映るのが、かつてヴェネツィアが栄華を極めていた時の玄関口のサン・マルコ広場や総督邸、そして鐘楼。ボートはそこから大運河へと入って行く。私が世界中で一番好きな都市がヴェネツィアだ。3度しか行ったことはないが。一度はマイカーで、一度は鉄道で、一度は飛行機で。マイカーで行った時は、ヴェネツィア市街を望むリド島までフェリーで行き、ガレージ付きのホテルに泊まった。鉄道で行った時は、駅からタクシー(モーターボート)でサン・マルコ広場近くのダニエリに向かった。飛行機の時は、空港からの船旅を楽しんだ。ヴェネツィアは観光客で溢れていて日常生活はないかのような、島全体がテーマパークのような錯覚に陥りがちだが、観光名所を離れ、運河沿いの路地を歩いたり、ボートに乗って細い運河を進んでいくと、そこにはひっそりと静かな歴史が息づいている。ここでは、2枚だけ、舟から撮った写真を紹介しよう。1枚目はヴェネツィアらしい煉瓦のアーチが3つ連続している写真。両側に歩道はなく、松丸太の杭上に建てられた煉瓦の建物が如何にも古めかしい。因みに、煉瓦を多用するのは、資材運搬の手間を省くため(石材だと本土から運ぶ必要がある)。煉瓦アーチも、世界中で、ここと中国浙江省でしか見られない特別なものだ。すなわち、アーチ部に注目すると、長い円弧状の石と、四角錐の飾りの付いた正方形の石が交互に使われている。地盤沈下に耐えうるようなアーチを目指した結果だ。2枚目の写真は、正面の建物の角にある左折禁止の標識と、その右方にあるミラーに注目して欲しい。ヴェネツィアには150~160の運河が網の目のように走っているが、そのほとんどは狭くて一方通行になっている。交差点では、道路と同じようにミラーがないと出会いがしらに衝突しかねない。ヴェネツィアには車は1台もないが、代わりに舟が車の役を果たしていることをよく示している。
  
  

母が亡くなり孤児院に入れられたプロスパーは、ある夜、孤児院を抜け出し、伯母夫妻の豪邸に住んでいる弟のボーを救い出し、弟が用意しておいた自転車に乗って逃げる。貨物列車に隠れて町を出て、向かった先はヴェネツィア。無事ヴェネツィアには着いたものの、貨物列車での旅が祟ったのか、ボーは咳が止まらない。薬屋に入っても、お金が足りないので盗もうと思うが、プロスパーにはどうしても盗めない。迷っているところを「盗み」と間違われて店主に追われる。それを助けてくれたのは「Thief Lord」ことスキピオだった。彼は、他にも孤児を匿っているステラ座という使われていない映画館に2人を連れて行く。スキピオは、「恵んでやっている」と思われるのが嫌で、自分の豪邸からくすねて来た金銀の食器や装飾品を、「盗んできた」と言って孤児たちに渡している。プロスパーは、年長なので、その「盗品」の換金係りに任命される。行った先は、悪徳な故買屋のバルバロッサの店。プロスパーは最初提示された買取価格の5倍まで値を吊り上げのことに成功。その時、「Thief Lord」に新たな依頼主があると伝えられる。しかし、喜びも束の間、伯母夫妻がボーを探すのに雇った探偵に付け回される。「Thief Lord」は、依頼主に会うため、全員でサン・マルコ大聖堂に向かう。探偵は大聖堂の前で待たされているボーに近寄り、ステラ座に隠れていることを聞き出す。一方、大聖堂の中では依頼主である伯爵が、5万ユーロという大金で「Thief Lord」に盗みを依頼する。これはスキピオにとっても初仕事になるが、孤児のためにと引き受ける。探偵は、ステラ座の鍵を所有者に借りに行き、そこでスキピオに会い、彼が「Thief Lord」などではなく、ただの金持ちのボンボンだと知る。そして、ステラ座に行って2人を保護しようとして、逆に孤児たちに捕まり、スキピオの正体をバラしてしまう。その結果、スキピオと孤児たちの間には修復不能の亀裂が入る。スキピオ抜きで「盗み」を実行しようと、伯爵に依頼された「木の翼」の所有者の家に忍び込む孤児たち。しかし、すぐに家主のアイダに見つかってしまう。そこには、スキピオも独自判断で来ていたが、アイダは、怒るよりも、盗みの対象が無価値な古い「木の翼」であることに興味を惹かれる。自分が孤児院を出る時、修道院長から託されたものだったからだ。翼の由来を尋ねに院長を訪れたアイダと孤児たちは、150年前の回転木馬に関わる伝説を聞かされる。その気になったアイダは、「木の翼」をスキピオと孤児たちに渡し、それを伯爵に渡す。伯爵は「木の翼」を受け取ると、誰も住んでいないはずの謎の島に向かう。スキピオは、いつも父から口汚く罵られ蔑まれているので、早く大人になりたい一心で、プロスパーと一緒に島に潜入する。そこで見たのは、若返って子供なった伯爵とその妹だった。そこから、回転木馬を巡り、スキピオ、バルバロッサを交えた予想外の展開があり、伯母夫妻とプロスパーとボーの関係、探偵とアイダの関係にも予想外の展開がある。

アーロン・ジョンソンは、少年時代の出演作がとても少ないので、見る度に大きくなってしまう。この映画では身長もぐっと伸び、3歳年上のスキピオ役のRollo Weeksよりも背が高いくらいだ。ジャスパー・ハリスはふわふわの金髪が可愛いが、目立った役はこれ1作で、翌2007年の端役を最後に映画界から去っていった。


あらすじ

母が亡くなり、15歳のプロスパーは孤児院へ入れられ、6歳のボニファス(ボー)だけが金持ちの伯母に引き取られる。ある夜、ベッドから起き上がって考えるプロスパー(1枚目の写真)。ボーが別れる前に言った言葉を考えている。「あいつら、お兄ちゃんを孤児院へやるなんてできるもんか。ボクたち、いつも一緒だからね。プロスパー、ボクを置いてかないで。一人にしないで」。一大決心をしたプロスパーは孤児院を抜け出し、伯母の家に向かう。弟の部屋の窓まで登っていって、「ボー」と呼びかけ窓ガラスを叩く。電気が点き、ボーが起きてくる(2枚目の写真)。窓を開け、抱き合う2人。「持ってく物はあるのか? 急がないと」。「ボクを、放っとかないって 信じてた」。2人は窓から出て、1階の屋根から下に飛び降りる。その衝撃で警報装置が鳴り出す。逃走用の自転車には、ボーが「昨日、空気 入れといた」と手回しがいい。2人の逃走に気付いた伯母の夫は、「戻って来い、この人さらい! これで、刑務所行きだな!」と叫ぶ。2人は鉄道の操車場に向かい、たまたま開いていた貨物車両に入り込む。「プロップ、これ どこ行くの?」。「きっと 南だ」(3枚目の写真)。2人は力を合わせ、扉を閉める。「押すんだ、ボー、押せ!」。ここで、タイトルが入る。「南」と言っていたし、映画の制作にドイツも関与しているので、2人の出発地は恐らくドイツ(ミュンヘン?)であろう。それならば、まっすぐ南下すればインスブルック、ヴェローナ経由でヴェネツィアに直行できる。
  
  
  

映画は、小さな貨物ボートが、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会の北の船溜まりから右手に石の灯台を見て大運河に向かうところから始まる(地図参照、1枚目の写真)。正面に左には、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ大聖堂が見える。大運河とジュデッカ運河を分ける先端に建っている教会だ。ただ、この場所は、ヴェネツィアの貨物駅からは随分離れた場所なので、貨物駅→ジュデッカ運河→船溜まりを経由して、と考えるしかない。舟はそのまま対岸のヴェネツィアの中心部へと北上、プロスパーとボーが荷物を覆っているシートをめくって外を見ると(2枚目の写真)、舟はちょうどサン・マルコ広場が海に接するヴェネツィアの玄関口にさしかかっている(3枚目の写真)。右の白い大きな建物がドゥカーレ宮、左の煉瓦の塔が高さ98.6メートルの鐘楼、写真中央の柱の上に載っているのが、映画で重要な役割を果たす「有翼の獅子」像。右端に映っている三脚状の杭はブリコラといって航路を示すもので、ヴェネツィアを囲むラグーンには網の目のように張り巡らされている。舟はそのまま逆S字型になった大運河(カナル・グランデ)を北上し、中間点にあるリアルト橋(1591年)をくぐってすぐの河岸に舟は着岸する(4枚目の写真)。他の重要なシーンについても地図を付けようと思っていたが、複数ある「Thief Lord」サイトに示されている①ステラ座、②バルバロッサの店、③スキピオの家などはすべてでたらめであることが判明した。バルバロッサの店の周囲は独特の街路構造なので、グーグルのストリート・ビューで見つけようとしたが、どうしても発見できなかった。③も同様。従って、地図はこの1枚だけ。
  
  
  
  
  

同じ頃、伯母夫妻は、ヴェネツィアの探偵ヴィクターを訪れる。夫妻は、プロスパーとボーの写真を渡し、「これは、私たちの子供ではありません。プロスパーとボニファスは、亡くなった妹の子供です。妹が、一人で育てたのです。妹が、3ヶ月前、突然亡くなった時、私たちはボニファスの養育権を申請しました。上の子を引き取るつもりは毛頭ありませんでした。まともな人間なら当たり前でしょ。一週間前、プロスパーはボーを誘拐しました。そして、ベニスへ来たのです」〔映画は英語なのでベニスと言っている〕。「ベニスだと、なぜ確信できるのです?」。「母親が、ベニスを大好きだったから、子供たちと引っ越して来る積りでした。それに、聴かせていましたからね… 『ベニスでは魔法が起きる』 なんて、でたらめな話を」。2人が舟から降りたのは真昼だったが、次のシーンでは夕方になっている。ボーが「お腹すいた」と歩くのをやめ、プロスパーが「最後の一個だ」とパンを渡してやる。「お金、まだあるの?」。「心配するな。食べ物は見つけてやる」。「そうだね、お兄ちゃんなんだもん」。2人は仲良く手をつないで路地を歩くが、1週間近い貨車の旅でボーは風邪をひいて咳が止まらない(1枚目の写真)。見かねたプロスパーは薬屋の前に来た時、「ここで、待ってろ」と中に入って行く。咳止めのコーナーで飲み薬を見てみるが、手持ちのお金では買えない。一度はこっそりポケットに入れようと考えるが(2枚目の写真)、潔白症のプロスパーには盗みなどできず、元に戻そうとした時、背後から、店主が「おい」と声をかける。プロスパーはびっくりしてビンを落とし、割れて中味が飛び散る。「戻そうと、してたんだ!」。「みんな、そう言う!」。プロスパーは逃げ出し、外で待っていたボーと一緒に逃げる。「止まれ、ドロボー!」(3枚目の写真、矢印は追う店主)。その時、屋根の上を歩く仮面をつけた男のシルエットが映る。男は、2人の先回りをし、しつこく追ってくる店主の行く手に高さ10センチにロープを張り、転倒させる。
  
  
  

プロスパーとボーは、追っ手がいなくなったので、うらぶれた街角で休んでいる。「やっと、撒(ま)いたな。僕らも、道に迷っちゃったけど」。ボーは、「お金がないと、いつも逃げてなくちゃいけないの?」と尋ねる。「もう逃げないよ、ボー。ママは、ここに居る事を望んでる。ここが、僕たちの住む場所さ」(1枚目の写真)。あまりに汚い場所なので、「ここが?」とボーが訊く。「違う、バカだな。ベニスの事だ」。その時、ボーがネプチューンを見ると、像が動いている。びっくりしたボーは、プロスパーの手を叩き、「あの魚男が、ボクを見た」と言う。「疲れてるせいだ。夜の影が悪さをするのさ」。その時、さっき薬屋を妨害してくれた仮面の男が、「迷子か?」と言って2人の前に姿を見せる。「違う」。「迷子に見えるぞ」。相手が変な仮面をかぶっているので、プロスパーは警戒する。「お前は誰だ? 望みは何だ?」。「同じ質問を、君に お返ししよう」。「プロスパーと、弟のボー」。「ママやパパと、はぐれたのか?」。「そうだ。ある意味では」。「じゃあ、俺が手助けしてやろう」。「出来ない。もう、この世にいないんだ」(2枚目の写真)。「孤児なのか。小さいのに。じゃあ、教えてもらおう。何を盗んだ? 金か、宝石か? 君ら、金庫破りか? スリか? こそ泥か?」。「泥棒なんかじゃない。放っといてくれよ。無一文だし」。仮面の男は、この場所は「暗くて じめじめして、ネズミだっている」と言い、「安全な所に連れて行ってやろう」と申し出る。プロスパーは乗り気ではなかったが、「ネズミ」の一言でボーが付いていく。仮面の男は、路地から路地へ抜け、暗い戸口に着くと、「諸君、わが貧しき棲家、ステラ座、『星の隠れ家』だ」と紹介する(3枚目の写真)。
  
  
  

呼び鈴に応えて現れたのは、プロスパーより年下のリッチオ。プロスパーが仮面の男スキピオに、「あんた、泥棒なのか?」と訊くと、リッチオが代わりに、「ただの 泥棒じゃないぞ。スキップは、『Thief Lord』 だ。ベニス1のな」 と教える〔題名の「神さま」ではそぐわないので原題のままとする〕。館内に入って行き、スキピオがスイッチを入れると、赤と★で統一された広い空間が現れた(1・2枚目の写真)。ステラ(Stella)は、イタリア語で「星」を意味するので、柱に★印が付いている。最上階から「午前2時。遅いわね」という女の子の声がする。「今度は、時計でも盗んだら? もう、眠ってたのよ」。スキピオは、「この子が、いやな咳をしてる。君の薬箱に何かあるだろ?」とボーのことを心配する。もう1人の黒人の男の子(モスカ)が、「こいつら誰だい?」と訊くと、スキピオは「俺の友だちさ。ここに、泊まる。それで十分だろ?」と答える。「魔法の薬を持って、保母さん登場だ」。女の子が降りてくる。「あたし、ホーネット」。ボーの額に手を当て、「熱が高いわ。うまく効くかな?」(3枚目の写真)。隣では、モスカが衣装袋を拡げながら「自分でやりな」と言う。深夜にもかかわらず、スキピオは、「お宝を取りに戻らないと。コンタリーニ宮の近くに置いてきた」と言い出し、全員でモーターボートに乗って取りに行く。リッチオ:「スキップ! これ〔モーターボート〕、よく盗めたな?」。「『Thief Lord』 に不可能はない」〔実は、父のボート〕
  
  
  

持ち返った「お宝」をテーブルの上に置く。銀のスプーンや金のメダルのようなものだ〔すべて、自分の家から盗んできたもの〕。ボーが、「これ、金なの?」と訊く。プロスパーはボーに寄って行くと、「触るんじゃない。盗品だぞ」と注意する。スキップはリッチオとモスカに、「明日、バルバロッサの店に持っていけ。今度は、まともな値で売るんだぞ」と命じる。モスカは、「どうやって? ナメられてるんだぞ、あのデブ豚に」と反論。その時、口を出したのがボー。「プロップならできる。とても上手なんだ」。プロスパーが「こら」と言っても続ける。「昔、中古屋で古いおもちゃを売った時なんて、お店の人がピーナッツで誤魔化そうとしたんで、石みたいな顔したら、お金を一杯くれた」。スキップ:「分かった。やってもらおう。もし、古ダヌキを出し抜けたら、君らは、好きなだけ居ていいぞ」(1枚目の写真)。明くる日、プロスパーとリッチオは早速バルバロッサの店に行く。店の入口で、「お手並み拝見だな、『石顔』」 と、リッチオ(2枚目の写真)。店に入ると、バルバロッサは、「何、ニヤニヤしてる、ハリネズミ〔リッチオ〕? 奥で、待ってろ。何にも 触るんじゃないぞ?」と命じる。プロスパー:「無礼な奴だな」。リッチオ:「オレは、『つるっ禿げデブ』って呼んでる」。「奥」にやってきたバルバロッサ。プロスパーが袋から出したものを見て、「いいものが、幾つかあるな… こっちの付け値は100ユーロだ。気前いいだろ。今日のわしは、最高に 気前がいいんだ」と笑う。プロスパーは「1000、それとも、取引中止」と思い切ったことを言う(3枚目の写真)。「気でも違ったか、坊主。気前のいい値を付けてやったのに… 良すぎたほどだ。生意気な戯(たわ)言で侮辱しおって。『Thief Lord』 に言うんだな。もし、取引きを続けたいのなら、船乗り小僧〔モスカ〕か、あまっちょ〔ホーネット〕を寄こせと」。プロスパーは、「僕は 『Thief Lord』 の公式交渉役です」と言うと、持ってきたものをさっさと袋に戻す。それを見たバルバロッサ。「300だ。こんな、ガラクタにだぞ」。「800」。「400」。「700」〔(800+400/2)+100〕。「475」。「687.5」〔(700+475)/2+100〕。「頭のいい奴だな。わしが出せるのは500ユーロだ」〔当時のレートで7万円〕「子供だましが通用するのは、これが最後だからな」。これで交渉成立。
  
  
  

2人が店を出ようとすると、バルバロッサが襟をつかんで引き止める。「あと、もう一つ。わしの、お得意様が探しておられるのだ。言うなればだな… 救いの手を差し伸べられる人物を」(1枚目の写真)。頭の回らないリッチオが「病気なら、医者に行きゃあ…」と言いかけると、「その方の探しておられるのはな、『ある物を盗んでくれる』人物だ。これで、お前の汚い耳にも分かったか?」とリッチオをバカにする。そして、「『Thief Lord』 に伝えるんだ。かなりの大金になる、とな」と念を押す。店を出たリッチオは、「プロスパー、スキピオのお宝の処分係りは 決まったな。オレ達じゃ、あのデブにあんな口きけねぇもん」と賞賛(2枚目の写真)。プロスパーは、「だけど、あれきっと、もっとずっと高かったんだ」と言う。ケーキ屋の前で、物欲しそうに棚に並んだケーキを見るリッチオ。「どれか欲しいなぁ。お祝いしようぜ、プロップ」。「みんなのトコに、お金持って帰るのが、先だろ」。その時、一人の男が「失礼だが、君の名前プロスパーって言うのか?」と尋ねる。探偵のヴィクターだ。それを聞いたプロスパーは顔色が変わり(3枚目の写真)、全速力で逃げ出す。一緒に逃げるリッチオ。「何で、走ってる?」。「あいつ、僕の名前知ってた」。「それが、どうした?」。「僕を、捕まえる気だ」。2人は、大運河を通るヴァポレット(乗り合い船)に飛び乗って、ヴィクターの追跡を振り切った
  
  
  

ステラ座では、テーブルを囲んでお祝いだ。スキップが「プロップに」と乾杯の音頭をとる。「これからは、お宝を 売る係りだ。実際、君はよくやった。これで、俺も、一休みできるからな」。この時、リッチオが「やめられないぜ。バルバロッサが、客を連れてきた。そいつが、泥棒を探してる。大金になる、って」。何も考えずに、ボーが「スキップ、手伝うよ。一緒に行く」と言い出したので、プロスパーは「なに考えてんだ。バカ言うな」と叱る。ボー:「スキピオが子猫くれたから、ボクも、盗みのお手伝いする」。スキピオ:「受けて立とう。大金は、大きな計画に通じるし、大きなケーキも買える」。ボーは、兄に「ほらね」と自慢げ(1枚目の写真)。プロスパーは渋い顔だ(2枚目の写真)。スキピオの了解を得たので、プロスパーとリッチオが再びバルバロッサを訪れる。「わしの顧客がお会いになるのは、サン・マルコ大聖堂の左手奥、懺悔室の中。つまり、伯爵は秘密めいた事が お好きなのだ」。リッチオ:「その人、本物の伯爵?」。「お前、ツンボなのか?! わしは、今、何て言った! お前らのようなノータリンには、これで十分… その方は 伯爵なのだ」(3枚目の写真)。「他に、知りたい事はあるか?」。プロスパー:「怒鳴るのは止めて下さい。時間は?」。「明日、午後3時ちょうど」。2人が去ろうとすると、バルバロッサが、「ちょっと待て、ハリネズミ。お前と、その礼儀知らずが付いてく事は構わんが、お前たちの主人も、本人が来ないといかん。分かったか?」と付け加える。「でも、『Thief Lord』 は、そんな事したがらないぜ」。「したがらん? 我慢してもらわんとな。さもないと、この仕事は なしだ」。
  
  
  

サン・マルコ広場を、仮面をかぶったスキピオを先頭に、プロスパー(1枚目の写真)、モスカ、ホーネット、リッチオ、ボー(2枚目の写真)の順に1列になって歩く(3枚目の写真)。首領以外は、身長順か? それを探偵のヴィクターが見張っている。その時、ヴィクターに声をかけたのが、顔見知りのアイダ。この女性、写真家だが、ヴィクターの仕事中に現れては〔偶然だが〕、邪魔をする。「何の調査なの?」。「子供の調査だ。これ以上は話せない」。「子供に罪はないわ」。「いやいや、この調査は犯罪とは無関係なんだ」。「子供が面倒を起こすのは、大人に利用されてる時なの。悪いのは両親の方」。それだけ言うと、「また、都合の悪い時に会うかもしれないわね。ところで、私の新しい家に寄ってみて下さる? 広場で、ぶらついてるだけでなく」と皮肉を言って別れる。アイダは、この映画で最重要の登場人物だ。
  
  
  

スキピオは、「プロスパー、モスカ、俺と一緒に来てくれ。他は、ここで待ってろ」と命じて、大聖堂に入って行く。残された3人。ボー:「こんなトコで、待ってるのヤだよ」。リッチオ:「何で、オレは 一緒に行けないんだ!」。ホーネット:「スキピオの命令。それで、十分でしょ?」。3人の性格がよく現れている。一方、大聖堂に入った3人。懺悔室に入る。1人用なので、3人で入るとすし詰め状態だ。モスカが「まだ、来てねぇんじゃないか?」と言うと、いきなり仕切りが開く(1枚目の写真)。伯爵:「仮面は付けん方がいいぞ。教会ではな。帽子を被るのと同じだ」。スキピオ:「この中で、盗みの話をするのも良くないはず」。「では、君が、『Thief Lord』 だな? 仮面は取らなくていい。それでも、君が、かなり若い事は分かる」。「そして、あんたが年寄りな事も。この取引に、年令は関係あるのか?」。「いささかも」。そして本題に入る。「わしは、探しとるんだ。ある物を、手に入れてくれる人物をな。長年かけて、探し求めてきた物だ」。「報酬は?」。手数料は5万〔700万円〕。引渡しと同時に支払う」。今までスキピオがやってきた、自分の家でのチョロマカシとは別次元の大金だ。広場では、ボーが、円柱の上の「有翼の獅子」像を見ていると、先日のネプチューンのように、動いて自分の方を見る。ボーは、驚いて(2枚目の写真)、「ホーネット、リッチオ、見て!」と叫ぶが、「何を?」と訊かれた時には、元の像に戻っていた。その時、鳩の餌やり男に扮したヴィクターが、ボーに「今日は」と声をかける。懺悔室では、伯爵が「よいかな、君が盗むものは、わしだけに価値のある物なのだ。金で出来てもおらず、銀ですらない。木製なのだ」と説明している。「いつ、届けたらいい?」。「早ければ早いほどいい。わしは年寄りなのでな。この世に残した未練は、ただ一つ。君が、盗んでくれる物を手にする事だけだ」。広場では、ヴィクターとボーが会話を交わしている。「おじさんは、大運河沿いのホテルに泊まってる。坊やは、どこかな?」。「映画館」(3枚目の写真)。「映画館に泊まってる? じゃあ、一日中映画を見られるな」。「ううん、壊れてる」。「そこ、何て名前?」。「覚えてない」〔地元の探偵にとっては、閉鎖された映画館で十分だ〕。ヴィクターはさらに、「坊やには、面倒を見てくれる親戚の人、いないの?」と訊く。「伯母さんいるけど、ヒドいんだ。笑ってもくれないし」(4枚目の写真)。そこに、3人が大聖堂から出て来たので、慌ててヴィクターは離れていく。
  
  
  
  

土産物店に入った6人。スキピオは、ボーに、「ヴィクターとかいう奴に、何、訊かれたんだ?」と尋ねる。「名前だよ」。「教えたのか?」。ボーがうなずく。ホーネット:「他には、何をしゃべったの?」。「よく分かんない」。そして、兄に「エスター伯母さんが寄こしたの?」と訊く(1枚目の写真)。「何回、言えば分かるんだ。誰とも話すなって」。その時、スキピオは、自分たちの方を覗っている変な男に気付く。「そいつ、何を着てた?」。「青い上着に赤い帽子。時計にお月様が付いてた」。服は、赤い上着に変わっていたが、怪しいと睨んだスキピオは、コートをはおると外に出て行き、ヴィクターに「すみません、時間を、教えてもらえませんか?」と話しかける。「4時15分だよ」(3枚目の写真)。「面白い時計、持ってますね。月の時間も分かるんですか? 旅行者でしょ?  どこの国です?」などと話している隙に、他の5人は店から出て逃げていく。しかし、問題は、スキピオがヴィクターの偽の髭が取れかかっていると指摘したこと。ヴィクターは、6人が並んで大聖堂に向かうところを見ていたので、これが仮面の首領だと分かってしまう。ステラ座に戻った6人。伯爵から受け取った写真を見て、スキピオは「何かの翼だな」と言う。ボー:「ライオンの翼さ。絶対」〔さっき、広場で動くのを見たから〕。ホーネット:「木の翼に5万ユーロ? 何かの間違いよ」。伯爵からのメモには、「写真の翼は、わしが探している翼の片割れだ」と書いてあった。一方、ヴィクターはステラ座を調べようと、所有者を訪れる。それは、たまたま大金持ちのスキピオの父だった。「今日は、ご主人。ヴィクター・ゲッツです。閉鎖された映画館ステラ座の持ち主でいらっしゃるとか。ベニスの映画館の歴史について記事を書いている者です。入館の許可を頂きに参りました」と嘘を付く。その時、「父上、猫が病気です」とスキピオが顔を出す。「スキピオ、今、来客中だ。ノックするよう注意したはずだ」。「できれば、獣医に見せたいと思いまして」(3枚目の写真)。スキピオは、ヴィクターに顔をバッチリ見られてしまう。そして、『Thief Lord』=スキピオ=「金持ちのボンボンのお遊び」だと悟られてしまう。父は、「お前の猫がどうなろうと知った事か! 獣医に、無駄な金を使うつもりなどない」と剣もほろろだ。
  
  
  

ヴィクターがステラ座にやってくる! スキピオは大急ぎでステラ座に行き、「今すぐ、ここを出るんだ」と命令する。ホーネット:「冗談でしょ」。「説明してる暇はない。ここが、『詮索好き』〔ヴィクター〕に見つかった。必要な物だけ持ってズラかるぞ」。リッチオ:「何で、見つかったんだ?」。モスカ:「どこ、行きゃぁいいんだよ?」。ホーネット:「ここに、留まるべきよ」。一方、ステラ座の正面玄関では、ヴィクターが鍵開け道具を使って錠前をこじ開けている(1枚目の写真)。そして、中に入ると、「かくれんぼ、だな? 大人だから、下手だと思ってないか? がっかりさせて、悪かったな。こっちは、かくれんぼの名人なんだ」と呼びかける。返事がないので、「ずっと、隠れてるなんて、できないぞ! どうやって、暮らしてる? 乞食か? こそ泥か?」と声を大にする。その時、スクリーンの幕の間からボーが顔を覗かせ、「ヴィクター。銃、持ってる?」と訊く。ヴィクターは、しめしめとばかりに、「もちろんさ。見たいかね?」。「怖かないよ。どうせ、にせ物だから」(2枚目の写真)。ヴィクターは、「利口ぶってるがいい」と言って、ボーが姿を消した幕の中に入って行く。そこでは全員が待ち構えていた。ヴィクターは網でぐるぐる巻きにされる。「この、くそガキども!」。お陰で、汚い布が口に押し込まれる。スキピオ:「『Thief Lord』 に楯突いた罰だ」。リッチオ:「どうやって見つけたのか、訊けよ」。答えられるとマズいので、スキピオは「何で?   大人はみんな嘘しか言わないだろ?」と誤魔化す。「じゃあ、運河に、放り込んでやろうぜ」。夜になり、ステラ座の中がプロスパーとボーだけになると、プロスパーがヴィクターのところにやってきて、口のボロ布を取ってやる。「ボスに、許可は取ったのか? 汚い布で、毒殺でもする気だったのか?」。「落ち着いてよ。猿ぐつわの事は、ごめん。訊きたい事が…」。そこにボーが入ってくる。「何してる? すぐ寝るんだ」。「そっちこそ何してるの? 運河にでも投げ込むの?」。「ボー、僕は真剣なんだ! すぐに寝るんだ」。ボーは、それに構わず、ヴィクターに「お願い。伯母さんのトコに戻さないで」と頼む(3枚目の写真)。「誰かが、君を世話しなくちゃな」。「プロスパーが、してくれてる。ホーネットも」。「それはそうだが、2人とも大人じゃない」。「『Thief Lord』 は? 16には なってるよ」。「ああ、『Thief Lord』 か。スキピオについて、飛びっきりの話がある」。プロスパーは、「あんたの知った事じゃない」と聞くのを拒む。
  
  
  

翌日、スキピオは、父が部下に対して自分のことを話しているのを聞いてしまう。「…息子ときたら、ただの、パッとしないやっかい者だ。そんな子供に振り回されるのは、もう うんざりだ。数日したら、艦長を退職した我が兄が、専任で息子の教育に当たってくれる事になっている。そうなれば、あれにも、分別と規律を叩き込んでやれる」。ひどい父親だ。一方、プロスパーとホーネットとリッチオは、「木の翼」の所有者の家を偵察に訪れた。ホーネット:「で、これからどうする? どうやって中に入るの?」。すると、そこに太ったおばさんが買い物を抱えて近付いてくる。リッチオ:「おい、見ろや。家政婦じゃねぇのか? オレ、ちょっくら、話してくる」と言って寄って行くと、わざとぶつかって、散らばった買い物を謝って拾い、荷物を持って家の中まで運んで行く。こうした馴れ馴れしさは、リッチオの得意分野だ。リッチオが偵察から戻ってくるのを本屋の店頭で待っていると、店主が出てきて、「お前ら、何やってんだ? 買うつもりがないなら、失せろ」と追い払おうとする。服装が浮浪児風なので、盗まれると思ったのだろう。「あたし達、迷惑かけてないわ」。「迷惑かけてんだよ。俺をイライラさせて… 大事なお客さんの邪魔もしてるしな」。そこにいた「お客さん」はアイダ。「私なら、邪魔されて ないわよ」と2人を擁護してやる(1枚目の写真)。アイダは、2人が自分の家をジロジロ見ているので、「あなた達、何を見てるの?」と尋ねる。その時、戻って来たリッチオが。「あんたに、関係ねぇだろ」と代わりに返事。アイダ:「素敵な、返事ね」。ホーネット:「ごめんなさい。気が立ってるの」。「あなた達、冒険でもしてみたらどうなの? 私も、子供の頃は、もめ事ばかり起こしてた。その価値は十分あったわ。未知の世界への興奮ね」。プロスパーは、その言葉に、「ママが生きてた時 言ってたのと、同じだ」と口をはさむ(2枚目も写真)。3人がステラ座に戻り、呼び鈴を鳴らすと、出て来たのはボー。プロスパー:「モスカはどこだ? お前は、外に出るなって、言ったろ」。「モスカは忙しい。映写機 据え付けてる。ヴィクターとね」。2人は、ヴィクターの拘束を解いて、映写機を修理してもらっていたのだ。モスカ:「逃げ出さねぇって、名誉の誓いを立てた」。ボー:「もう、ボクらの、友達なんだよ」。リッチオ:「友達? 何て、おめでたい赤ん坊なんだ」。「ボク、『おめでたい赤ん坊』 じゃない。ほんとに 友達なんだ」。「こいつは、捕虜だ。敵なんだぞ! スキップに知れたら、張り倒されちまう」。モスカ:「ところで、あいつ〔スキピオ〕は、どこなんだ?」。ホーネット:「彼、来なかったの」。ヴィクター:「そりゃ、そうだろうさ」。リッチオ:「何が、言いてぇんだ? 早く言え。このデカ面(づら)!」。「お前さんこそ、可愛いビーバー面(づら)して。君たちは、これまで 『嘘の魔法』 を、かけられてたんだ」(3枚目の写真)。怒って飛びかかるリッチオ。プロスパーはリッチオを引き離し、ヴィクターに「謎々みたいな話し方は、やめろ。この次は、リッチオを止めないぞ」と迫る。「謎々の答えが見つかる所を教えてやろう。自分の目で確かめてみるんだな」。
  
  
  

かくして、5人は、ヴィクターに教えられた場所へと赴く。スキピオの父の館だ。運河に面して専用の船付き場を持つ総石造りの豪壮な館だ。プロスパーがドア・ノッカーを叩く。出て来たメイドに、「ここに、スキピオって子、いませんか?」と訊く。「何のつもり。悪ふざけは おやめ」。ボーがプロスパーの後ろから姿を見せ、「今日、会うハズだったの」と言う。「ボー、プロスパー、ホーネット、リッチオ、モスカ、みんな友達なんだよ」。ボーの容姿はメイドを安心させたらしく、「いいわ」と2人を中に入れてくれるが、残りの3人は、「お待ち! 2人で十分」と遮られる。中に入った2人。タツノオトシゴの噴水の前で、ボーはまたブロンズ像が動くのを見る。これで3度目だ。そこにスキップが、2人がいるとは知らずに現れる。ボーが「やぁ、スキップ!」と声をかけると、スキップはいきなり逃げ出す。プロスパーはすかさず階段を登って後を追う。2階に上がったスキピオはドアから出て来た父に、「ここで、何やっとる? 家庭教師の、時間だろ?」と呼び止められる。「1時間後です」。そこに2人が追いつく。「あの浮浪児どもは、何だ?」。「2人とも僕の友達です」(1枚目の写真)。「交友関係については、注意しておいたはずだ。薄汚い連中と付き合うなど、恥ずべき事と思わんのか?」。こう罵って父が去った後、ボーが「あれ、君のパパ?」と訊く(2枚目の写真)。孤児だと思っていたからだ。「そんな目で見るなよ。みんなには、俺から説明する」。プロスパー:「今すぐ、みんなに説明しろよ。外で待ってるんだから」。「これから授業がある。でも、今夜中には何とかする。盗みは、予定通り実行する。いいな?」。「笑わせるな。お宝は、全部、ここから持ち出したんだろ? 金持ちの坊ちゃんの 『お遊び』 だったんだ。僕らは、君の 『お慰み』」。これにはスキピオも返す言葉がない。館から出て来た2人。「それで?」とリッチオに訊かれる。「スキップだったのか?」(3枚目の写真)。プロスパー:「その通り」。ボー:「彼のパパ、イヤな奴」。モスカ:「彼の、何だって?」。プロスパー:「彼の、パパだ」。リッチオ:「何、言ってんだよ? スキップは、父(てて)なし だぞ」。「自己紹介してきたら、どうだ?」。リッチオは1人で館に戻り、ドア・ノッカーを何度も叩きつけ、「スキピオ! スピキオ! いるんだろ! 出てきて、ウソだって言ってくれ!」と叫ぶ。ドアを開けたのはメイドではなく父だった。「きさま、何やっとる! きさまが、誰で、息子と何をやっとるのか知らんが、無事でいたければ、いまいましい大騒ぎは止めて、胸くそ悪いチビどもと一緒に、ここからとっとと失せろ! この家の周りに、二度と姿を見せるな!」。罵り方が凄まじい。父の脇にはスキピオがうつむいている。それを聞き、見たリッチオは、閉まったドアの前で泣き崩れる。
  
  
  

5人がステラ座に戻ると、ヴィクターが姿を消していた。代わりに残っていたのは1枚の紙。「ヴィクターの名誉の誓い。泥棒をしないなら、ハートリープ夫妻には黙ってる」。怒りが収まらないリッチオは、「もう一度、あいつを捕まえないと。今度こそ、運河にドボンだ。スキピオも同罪だからな」。その後、今夜実行するハズだった盗みの件に話は移る。プロスパー:「君ら、泥棒のやり方、本当に知ってるのか? スキップは、いないんだ」。ホーネット:「スキピオなんて、どうでもいい。彼なしでやりましょ。5万ユーロ手に入れたら、自分たちでやっていける。大人も要らない。ニセの 『Thief Lord』 も要らない。今夜やるのよ。早い者勝ちだわ」。そして、「どう思う? 行くでしょ?」と3人に尋ねる。モスカ:「おいら、行くぜ」。「よかった。あなた どうする、プロップ? 行くの、行かないの?」。ホーネットはプロスパーに来て欲しかったのだが、返事は「絶対に行かない」(1枚目の写真)。3人が小型のモーターボートに乗っている。「まだ 起きてたら、どうする?」。ボーは、プロスパーが眠ると、ステラ座を抜け出して3人を追って行った。ボーが運河を見ていると、水の中に人魚がいるのが見える〔4つ目〕。その時、ボートがやってくる。ボーは、運河にかかる橋の上に行くと、手すりの隙間に座ってボートが通るのを待ち受ける。そして、ボートが通り抜けた瞬間に飛び乗る。「おい、ボー! おいらの心臓つぶす気か?」。「大事なもの、忘れてきたじゃない」。「何だ?」。「ボクの、ジャンパーの中にある」。「何なの?」。ボーは、ジャンパーをまくり上げて「ボクさ」と自慢げに言う(2枚目の写真)。一方、ステラ座では、ボーのいないことに気付いたプロスパーが、走って後を追いかける。運河と路地が縦横に走っているので、どのようなルートでも目的地に着けるのがヴェネツィアのいいところだ。かくして5人はアイダの家に潜入する。プロスパーが止めようとしても、ボーが大きな声を出すので、仕方なく付いて行く。5人の中で、ボーが一番腕白なのかもしれない。ホーネットとリッチオが懐中電灯で照らしながら「木の翼」を探していると、仮面をつけたスキピオと鉢合わせする。リッチオ:「ここで、何やってんだ? 失せろ!」。スキピオ:「君らこそ、何してる? これは、俺の仕事だ」。モスカ:「うるさい。嘘つきの、ガラクタ野郎。金持ち坊やには お遊びかもしれねぇが、こっちは、生活かかってんだ」。ホーネットが仲裁に入る。「やめなさいよ。今、どこにいるか分かってるの?」。しかし、リッチオの怒りの方が大きい。「伯爵には、何も届けられねぇぜ。この嘘つきの 『rat lord』〔rat=裏切者〕」(3枚目の写真)「連絡できねぇだろ。ソフィアは、オレ達が押さえてる」〔ソフィアは、盗みが成功した時の連絡用の伝書鳩〕「オレ達の邪魔したら、ただじゃ済まねぇからな」。
  
  
  

再び5人になり探していると現像した写真がいっぱい壁に貼り付けてある〔アイダは、写真家〕。その時、急に明かりが点いて、アイダがライフルを構え、「夜中に外出して戻って来たら、何て事でしょ、ちびっ子ギャングが家の中をウロついてる」と激しい言葉を投げつける。恐れをなしたリッチオが、「お願い、撃た…」と言いかけると、「まぁ、見た顔じゃない」(1枚目の写真)「お店にいた、無作法な子ね」。ホーネットにも気付き、「それに、女の子もいるし」、次いで、プロスパーにも。「可哀相な、みなしごも」(2枚目の写真)。「目的は、カメラなの?」。ホーネット:「どうか、警察は呼ばないで」。「呼ぶのは、最後の最後にしておくわ」。「怒って当然です。でも、カメラじゃない。あたし達、翼が欲しいんです」。これは、アイダには想定外の言葉だった。「翼? 本当に? どうやって、翼の事 知ったの?」。その時、ホーネットの後ろからボーが姿を見せる。「まぁ、幾つなの?」。アイダは急にライフルを置く。ボーは一番向こう見ずなのに、なぜが人を安心させる。「6つと3ヶ月」(3枚目の写真)。「弟です。何してるかも分からなくて」。「私の翼を、どうする積りだったの?」。モスカ:「盗んで来いと頼まれたんだ」。「頼まれた? 誰に?」。その時、アイダの背後から、スキピオがライフルを構えて「言えない。依頼者に対して守秘義務がある」と答える。ホーネット:「スキピオ、銃を下げなさいよ」。スキピオ:「翼は見つけた。上の寝室にあった」。アイダは、スキピオのライフルの銃身をつかむと、「私に、銃を寄こしなさい!」と奪い取る。「どのみち、壊れてるのよ」〔銃のこと〕。そして、スキピオが運んできた翼を見ながら、「私って、好奇心が強いの。謎の依頼者とやらは、一体、幾らの値を付けたの?」と尋ねる。ホーネット:「5万ユーロ」。これには、心底アイダも驚く。「ちょっと、高すぎない?」。ボーが、内容を誤解した返事をする。「そんな事ない。ボクたち孤児だから、自分で払わないといけないでしょ。『星の隠れ家』 には住めなくなっちゃったし、リッチオは歯を治療しないと〔歯並びが悪い〕。ホーネットには新しい服。だから足りないぐらいだよ」。木の翼を見て、ホーネットが「天使の翼ですか?」と訊く。「天使? 違うわ。ライオンの翼よ」。ボー:「言った通りだろ。誰も、信じなかったけど」。アイダ:「孤児院を出た時にもらったの」。リッチオ:「孤児だったの?」。「そうよ。孤児院には10年以上いたわ」。スキピオ:「翼のどこに、そんな価値があるんです?」。「私も、全然知らないの。でも、調べてみてもいいわね」。
  
  
  

アイダは、子供たちを連れて、孤児院の院長(女子修道院の院長)に会いに行く。「今から150年以上も前、裕福な商人が、孤児院に回転木馬を寄付したのです。でも、子供たちが十分に遊ばないうちに消えてしまい、残ったのは、破片が一つだけ」。ボーが、「翼だ」と口をはさむ。「私が見つけたのよ、孤児院の屋根裏で。それを、アイダにあげたのです。保管してもらうため。私は、もちろん、回転木馬を見ていません。でも、比類なきものという言い伝えがあるのです。それには、5つの木像が付いていたそうです」(1枚目の写真)。再びボーが割り込む。「僕、知ってる、人魚に、矛(ほこ)を持った水の精、噴水にいたタツノオトシゴ、空飛ぶライオンとユニ… 何とかだよ」。院長:「ユニコーンよ」。その時、ボーの目の前をユニコーンが走り抜ける〔実際には、ただの白い馬〕。プロスパーが、「ボー、何で、知ってるんだ?」と訊くと、「ママが、話してくれた」という返事(2枚目の写真)。スキピオ:「回転木馬のどこが、そんなに特別なんですか?」。「魔法の力を持っているの。子供が乗って、ぐるぐる、ぐるぐる回ると大人になるの。大人が乗って、ぐるぐる、ぐるぐる回ると子供になるの」。「院長様、どうか言って下さい、すべて真実なんだ、と」。「真実ですよ。ひいひいお祖母さんが目撃したのです」。院長から話を聞いたアイダは、「伯爵は、回転木馬の在りかを知ってる。それ以外、考えられないわ。賭けてもいい。翼を戻したら回転木馬が動くって、信じてるのよ」。スキピオは「もし、本当に動くのなら、見つけ出して乗ってやる。親爺より背が高くなるまで、降りない」と決意をもらす。アイダは、「君たちに翼をあげるわ。伯爵から報酬をもらいなさい。だけど私も一緒に行く。伯爵に付いて行けば、回転木馬まで案内してくれるはず」とやる気満々だ。スキピオが「アイダに 賛成しよう」と言い出すと、リッチオが「誰が、お前に訊いた? ウチに帰りな、坊ちゃん。 豪邸に引っ込んでろ」と大反対。ホーネットは「内輪モメ してる時じゃないわ」と賛成派。一方で、ボーは兄に、「絶対、ほんとだよ。ボク、5つとも全部見たんだ」と話している(3枚目の写真)。
  
  
  

その頃、ヴィクターは雇い主の伯母夫妻に向かい、2人はもうベニスにはいないと報告していた。しかし、夫妻はその話を信じるどころか、ヴィクターは無能だから、既に自ら手を打ったと答える。次のシーンは、バルバロッサの店。プロスパーとボーとホーネットが店にいる。翼を手に入れた旨を伝書鳩で送ると、返事はバルバロッサに届くことになっていたからだ。バルバロッサが引き出しを開けると、中には、「報奨金1万ユーロ、ボニファス、6歳」という写真入りの紙が入っている。その上に置いてあった飴を取ると、バルバロッサはニコニコしながら、「キャンディーでも、どうだ」と言ってボーに飴を渡す(1枚目の写真、矢印は飴)。同じ引き出しから伯爵からの封印された手紙を取り出し、「バルバロッサは、友達だろ? ちょっぴり秘密を漏らしてくれんか」と言い、「伯爵は、お前たちの主人に何を盗ませた?」と尋ねる。プロスパーは、「子供だけど、アホタレじゃないんだ」と言うが早いか、バルバロッサの手から封筒をむしり取る。「そいつを返せ! さもないと、その蛇舌を引っこ抜くぞ!」。怒った拍子にひどく咳き込む。「ザマ見ろ。プロスパーを怒鳴った罰だ。ヤな性格してるね」とボー。手紙には、「ミゼリコルディアの入り江で会おう。赤いランタンを探せ。今夜、午前1時」とだけ書いてあった(2枚目の写真)。映画では、もう少し後になるが、関連があるので、順序を変えて3枚目の写真を紹介しておこう。その日の深夜、スキピオ、アイダ、プロスパー、リッチオ、モスカの5人は小型のモーターボートで伯爵に会いに行くが、ボートが小さくて全員は乗れないので、ボーとホーネットがステラ座で寝ていた。そこに現れたのが警官を連れたバルバロッサ。2人は必死で逃げたが警察に捕まってしまう。バルバロッサは賞金をもらい、ボーは夫妻に引き渡され、ホーネットは昔アイダがいた孤児院に入れられる。原作を読んでいないので疑問が1つ。バルバロッサは、どうしてステラ座のことを知ったのだろう? ずっと後をつけていたのだろうか?
  
  
  

前節のステラ座での捕獲劇の数時間前、スキピオ、アイダら5人は小型のモーターボートに乗り込み、ミゼリコルディアの入り江に向かって出発する(1枚目の写真)。アイダは伯爵に見られるとまずいので〔翼の持ち主なので〕、姿を隠している。一方、入り江で待っている伯爵は、同行した妹に向かって、「もうすぐだな、いとしい妹よ。長かった忍耐の日々も、ようやく報われようとしている。そろそろ、とんまな若造がやって来る時間だな」と話している。「とんま」という言葉に、不正な策略のあることが分かる。そこに、スキピオのボートが到着。伯爵は、「ようこそ 『Thief Lord』。寒いのは、君も、わしも同じだろう。ならば、できる限り早く取引を済ませようではないか」と話しかける。スキピオから木の翼を渡され、それを頭上に掲げる伯爵。バルバロッサが、双眼鏡でその様子を見ている(2枚目の写真)。5万ユーロ入りの鞄を渡されたスキピオ。「金を、数えなくて いいのか? 『Thief Lord』」 と言われ、札束を見て、「ちゃんと、あるようだ。あんたは、約束を守る人だと信じてる」。2つの船は別れて行く。それを見ていたバルバロッサは、「それじゃ、ちょっくら報奨金でも稼いでくるとするか」と言い、前節の3枚目の写真へとつながる。一方、別れたように見せたスキピオたちは、こっそりと伯爵の跡をつけて行く。伯爵が船を着けたのはセグレータ島(3枚目の写真、島の左側に等間隔に光が並んでいるのは、前述したブリコラ)。アイダ:「謎の島。無人島だと思ってたけど、違ってたようね」。モスカ:「セグレータ島? 誰も、近づきたがらねぇ島だろ?」。アイダ:「幽霊が出るって話。上陸した者は2度と戻らないとか」。因みに、セグレータ島は存在しない。ただ、それに近い島としてポヴェーリャ島がセグレータ島に比定されている。サン・マルコ広場の埠頭から6キロ弱南に位置する無人島だ。ボートは伯爵に見つかり、銃で追い払われる。
  
  
  

ステラ座に戻った3人。玄関には警察の立入禁止テープが張られ、ボーとホーネットの姿はない。早とちりしたリッチオは、「思った通りだ! 何で、オレの話を聞かなかった? 『詮索好き』 野郎にダマされたんだ! 名誉の誓いだ? ヘドが出るぜ!」とわめく。プロスパーも、バッドを手に、「あいつに訊きに行く。話によっちゃ、一発お見舞いしてやる」と怒り心頭。あくる日、3人はヴィクターの家の前で待ち構え、プロスパーがバッドを持って、「弟はどこだ? ホーネットはどこだ?」と迫る(1枚目の写真)。ヴィクター:「一体 何を騒いでるのか、教えてもらえるかね?」。モスカ:「ボーと、ホーネットが消えちまった。プロスパーは、あんたが密告したと思ってる。おいらとリッチオもな」。ヴィクターは、「ばかばかしいにも、ほどがある。第一に、私は密告などしとらん。第二に、逃げ出して以来、ステラ座には行っとらん。第三に、ハートリープ夫妻にはベニスにいないと伝えた。だから、いい加減 決めたらどうだ? 私が、友達か、敵か」と答えた後で、3人を家に入らせる。そこで昨夜の冒険を聞き、札束を見せられ、光に透かしてみて、「騙されたな。これは本物じゃない」。リッチオ:「ニセ札?」。「残念だが、全部だな」(2枚目の写真)。「そんなの、ないぜ! 深夜のラグーンの追跡! 撃ち殺されそうになって、何を手に入れた? ニセ札の山かよ!」。プロスパーにとっては、そんなことより弟の方が心配だ。「ボーは、どうなるの?」。「気の毒になプロスパー。全力を尽くしてみよう」。そう言って、ヴィクターは伯母夫妻に電話をかける。朝遅くまで寝ていた夫妻は電話で起こされて不機嫌だ。伯母は 「もう事件は、解決してるのですよ。私たちは甥を捕まえました。あなたに用はありません。なんでも、隠れていたと… 壊れた映画館に、名のない女の子と一緒に。女の子は警察に保護されました。邪魔しないで下さい。二度と!」と一方的にまくし立て、ガチャンと電話を切る(3枚目の写真)。
  
  
  

プロスパーは、ボーの様子を探りに行く。サン・マルコ広場に近いスキアヴォーニ河岸沿いのオープンカフェで、伯母夫婦とボーが一緒に座っている。伯母:「そのスーツ、素敵よ」。伯父:「そうだな。さぁ、食べなさい」。ボーの前にはアイスクリーム・パフェが置いてある。「こんなの、大嫌いだ」。そう言うと、ボーはグラスごとつかんで、クリームを自分の服に押し付ける(1枚目の写真)。「何を やらかすんだ! この恩知らずの子猿め!」。一方、ヴィクターは住む場所のなくなったリッチオとモスカを連れてアイダの家を訪れる。「ヴィクター、一体、何を始めるつもり?」。「こっちこそ、同じ事を訊きたいよ」。モスカが事情を説明する。「話が、ややこしくなったのは、伯爵がニセ札を寄こしたからさ」。ヴィクターがさらに追加する。「この子たちは、十分トラブルに巻き込まれてる。なのに、君は、どえらい事を。君も、ひどい人だな。この子たちを、気違いじみた冒険に巻き込む必要があったのか?」。「あなたなら、どうしてた? 孤児院に入れれば良かったの?」。この言葉でホーネットのことを思い出した2人は、ホーネットの「代母」とその夫と偽って、修道女会へ引き取りに行く。一方、一日中ボーの後を追いかけていたプロスパーは、泊まっている部屋の見える場所に陣取っている。そこにリッチオがやってきて、「行こうぜ、プロップ。ここで、一晩中、待ってる気か?」と促す。プロスパー:「中にボーがいるんだ」(2枚目の写真)。「どこにも行かないぜ、今夜はな。ホテルにいる限り無事なんだ。それによ、ホーネットが お待ちかねだぞ。知ってるのか? ホーネットが、ぞっこんだって」。プロスパーがいなくなってから、ボーは思い切った行動に出た。伯母夫妻がディナーに出かけて不在なので、3階の窓から逃げ出したのだ。3階といっても、古い建物なので、5階分くらいの高さはある(3枚目の写真、暗くて分かりにくいが矢印がボー)。しかし、ボーは平気で窓に下に設けられた幅30センチほどの台の上を伝って雨どいまで辿りつくと、そこをするすると降りて脱出に成功する。部屋に戻ってボーの逃げたことを知った伯父は、ヴィクターに電話をかけ、「処理」を依頼する。
  
  
  

その頃、スキピオはプロスパーに、「2人で島に戻ろう。そして、あれに乗ろう」と誘いかける。こっそりセグレータ島に上陸した2人。島を囲む塀に座ると、スキピオが、「言った通りだろ、犬は、吠えないって」と言い(1枚目の写真)、中に飛び降りる。「どうしたんだ?」。「僕、怖いよ」。「何が?」。「奴ら、銃を持ってる」。同じ頃、ヴィクターはボーを探しにステラ座に行っていた。ボーには他に行く先がないので、戻っていると思ったのだ。「ボー! ヴィクターだ」。「戻るもんか」。「君を、連れ戻そうなんて思っちゃいない。みんな、アイダの家で お寝んねしてるぞ」。「伯母さんたら、プロスパーは不良だって」。「まさか。是非とも言っておかんとな。プロスパーは、望み得る最高の お兄ちゃんだぞ。おいで。受け止めてやる」。ボーは、映画館の最上階からヴィクター向かって飛び降りる。やっぱり この子は逞しい。一方、島では2人が2匹の獰猛な番犬に吠え立てられていた。そこに小学生くらいの女の子がやってくる。「ここで、何してるのよ?」。スキピオ:「伯爵に、会いに来た」。「伯爵は、予約なしの訪問者は嫌いでね」。女の子は、小さい割に、変な口のきき方をする。「取り引きで騙された」。女の子は、仕方なく2人を建物の中に連れていく。絨毯の上に鉄道模型の線路が敷かれ、汽車が走っている。「レンツォ、『Thief Lord』 が来たわよ。贋札と回転木馬の件で。私に、いいアイディアがある。2人とも犬の餌にしてやるの」。鉄道模型で遊んでいた少年は、「妹の、無作法をお詫びする。では、贋札に気付いたのだな。許して欲しい。あれは、バルバロッサの提案なのだ。他に、払う方法がなかったから」と大人の口調で話す。スキピオはプロスパーに、「見ろよ。回転木馬は動いたんだ」と言うと、少年に向かって「あんた 伯爵だな」と声をかける。「ご用命は何なりと」。妹は、まだ粗雑に「ここにいる事、誰か知ってるの?」と訊く〔知らなかったら殺す気か?〕。プロスパー:「友達が知ってるよ。それに、探偵も」。少年は、妹にはお構いなく、「君が、心から満足するよう計(はか)らいたい。木馬に乗せる事で許してもらえないか? ここに来たのは、そのためであろう?」と申し出る(2枚目の写真)。「その通り」。「ご存知のように、木馬は遊園地の遊具ではない。木馬に乗るという事は、危険に身を任すという事なのだ。後は、時間を見計らって飛び降りるだけ」(3枚目の写真)。ここで伯爵は、青年ではなく少年に戻った訳を説明する〔単に、長生きのためではない〕。子供らしく過すことが許されずに大人になってしまったからだと〔だから、模型で遊んでいる〕。一方、スキピオは早く大人になりたいと申し出る。その頃、ヴィクターはボーを背負ってアイダの家に向かっていた。「無事だと 分かった時のプロスパーを、早く見たいだろ?」。「でも、木馬に乗っちゃってて、大人になってたらどうしよう」。「そんなバカげた話、初耳だぞ」。この無防備な2人のあとを、伯母夫妻がこっそりとつけている(4枚目の写真、矢印は伯母、その左に伯父)。
  
  
  
  

伯爵たちが回転木馬に向かっている時、犬が吠え出した。妹:「ちょっと、見てくるわ」。スキピオ:「誰か、訪問客でも?」。「この島には、誰も足を踏み入れぬ。唯一人許したのは、バルバロッサだ」。「あいつ、木馬の事を知ってるのか?」。「とんでもない。まさか」。回転木馬の前に出た2人。「見ろよ、プロップ。本物だぞ。これで、問題はすべて解決する」。しかし、プロスパーは、「大人になっても、問題が消えるワケじゃない」と消極的だ。「大人なら、自分の好きなように決断できる」。そして、伯爵に尋ねる。「どれに乗っても、いいのか?」。「私はライオンに乗った。だが、年を取るには、水生動物を選ぶべきだと思う」(1枚目の写真)。「さぁ、プロップ。選ぶんだ。どれがいい? タツノオトシゴか、水の精か?」。「君が、好きに選べばいい。僕は乗らない」。「ボーは、どうなる?」。「ボーが欲しいのは兄貴だ。父親じゃない」(2枚目の写真)。この結果、スキピオだけが回転木馬に乗ることになった。選んだのはタツノオトシゴ。伯爵:「さぁ、行くぞ! 確信があるんだな? 本当にやりたいと」。「生まれて この方、これほど確信があった事はない。ヒゲ剃りが必要になるまでやめないぞ」(3枚目の写真)。伯爵は、手で歯車を逆回転させ始める。回転木馬のスピードは徐々に上がる。木の歯車同士なので摩擦で煙が出て、装置全体が白い煙で覆われる。伯爵:「そろそろ降りないと、年を取り過ぎるぞ!」。プロスパーは、「スキップ!  飛び降りろ!」と何度も叫ぶ。思い切って手を離すスキピオ。白煙の中から現れたのは、背が高くなり、無精髭の生えたスキピオだった。「信じられんな。君が、小さく見えるぞ。俺を見てみろよ」と回って見せる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

その時、遠くから、「こっちよ。信じて」と声がする。「どこへ連れてくつもりだ? 生意気な小娘め。今まで、騙くらかしおって。わしを、近づけんようにしとっただろう。この、凄い機械からな」(1枚目の写真)。スキピオは、「バルバロッサさん、何てひどい事を言うんだ? 伯爵夫人に」と注意する。「伯爵夫人?」。「そう、伯爵夫人よ」。スキピオは、計略に則って、「真夜中にここにいるのは、目的は同じかもな」と誘うように言う。「有名な回転木馬の魔法を、体験してみたいんだろ?」。「有名な? 魔法? これが、『慈悲深い修道女会』 の伝説の回転木馬なのか? わしは、何て運がいいんだ! 大きくなったな。その分、賢くなったか? 『Thief Lord』」。「なぜ、自分で試してみない?」。「試すに決まっとる」。「数年分、戻ってみろよ。節々の痛みがなくなるぞ。記憶も蘇る」。そして、「2人とも、来てくれ。バルバロッサさんが、乗ってみたいそうだ」と伯爵とプロスパーを呼ぶ。「どの動物に乗ればいいんだ?」。「ライオンが、いいと思う」。ライオンに乗ったバルバロッサ。「いつでも、試運転を始めてくれ」と声をかける。今度は、伯爵とブロスパーの2人が歯車を回す。高速回転させるためだ。小声で、「借りは、きっちり返してやろうぜ」と囁くスキップ。バルバロッサは、「ゆっくりだぞ。最初は、ほんの数回転でいいんだ。数年で済まなかったら、大変だからな」と言うが、回転木馬は設計基準を超えて高速で回り始める(2枚目の写真、矢印はバルバロッサの赤い服)。白煙だけで済まず、歯車から火が出て、装置全体がバラバラになってしまう。伯爵は、「あぁ! 私の回転木馬が壊れてしまった! 苦労して復元したのに!」と悲しみにくれる。そこに、小さな子供に戻ったバルバロッサが出てくる。「けしからん!  ひどい乗り物だ!」。伯爵は、「この、阿呆! 小ざかしいカバ男! 半生をかけた仕事をめちゃめちゃにしおって!」と怒鳴る(3枚目の写真)。「停まらなかったんだ! わしに起きた事を見てみろ! 立派な大人だったんだぞ!」。スキピオは 「いい服屋を紹介してやろうか?」と茶化す。
  
  
  

ヴィクターは、ボーをアイダの家まで運んで行った。「ヴィクター見つけたのね! ありがとう。夜じゅう、探してたのよ」。そこに、プロスパーが飛んでくる。彼の方が先にアイダの家に戻っていたのだ。「大丈夫?」。ヴィクター:「全然。疲れてるだけさ」。ボーが、「どこに、行ってたの?」と尋ねる。「スキップと、回転木馬のところ」。「動かなかったの?」。「ちゃんと動いた。スキップは大人になった」。「だけど、お兄ちゃんは変わってないよ」。「がっかりしたか?」(1枚目の写真)。「ううん。ボク、嬉しい」(2枚目の写真)。一方、奥の部屋では、小さな子供になったバルバロッサが、ワインのグラスを手に持って、美しいご婦人〔アイダ〕と、『でか鼻』〔ヴィクター〕に、乾杯!」と笑っている。「『でか鼻』 だと? ぬかしおったな! この生意気なコビトは何だ?」。「『コビト』 だと? わしは、エルネスト・バルバロッサ様だ。あんた達こそ何者なんだ?」(3枚目の写真)。この言葉に、「あぁ、神様…  本当に動いたのね」と感動するアイダ。ワインをもっと注ごうとするバルバロッサを、スキピオが「やめろ。飲みすぎだ」と止める。「お前は、何だ? わしの親父か?」。「言われた通りにしないと、ベッドに放り込むぞ」。その言葉を待たずに、バルバロッサは酔いが回って寝てしまう。スキピオは、「こんなの連れて来て、ごめんよ。暗闇が怖いから、店にいたくないって言うもんで」と弁解する。ヴィクターは、何が起きたのかまだ理解できない。スキピオを見ても、「君は、何なんだ? 彼の兄さんなのか? それとも、『Thief Lord』 のそっくりさん大会の優勝者か?」としか言えない。スキピオ:「あんたの、新しい助手さ」。
  
  
  

仲間の3人は、ボーとプロスパーに再開できて大喜び。特に、ホーネットはプロスパーにしっかり抱きついて、リッチオとモスかをニヤニヤさせる。そこに不法侵入してきたのが、ボーの後を追って来た伯母夫妻。伯母:「ここが、チビっ子ギャング団の巣窟なのね。全員、牢屋にブチ込んであげるから、覚悟してなさい」。そして、ボーを見つけると、「まあ! こんな所にいたのね、おチビさんは」と甘ったるい声で寄って行く。その前に立ちはだかったのがプロスパー。「手離すもんか!」。「そこを、おどき」。「いやだ!」。「息子を、寄こしなさい!」。その時、リッチオが口をはさむ。「お前の子じゃねぇぞ。クソったれの蝙蝠ババァ!」(1枚目の写真)。伯父は、「家内に向かって、よくもそんな! この、おぞましいバケモノめ!」と言うと、リッチオの頬を張り飛ばす。怒ったリッチオは伯父に突進。プロスパーに伯母とモスカが加わり、乱闘状態となる。伯父は、部屋の隅に置いてあったライフルをつかむと、プロスパーに銃口を向けて「もう沢山だ!」と怒鳴り、「弟を渡すんだ。そうすれば、すべて水に流してやろう」と脅す。以前、アイダが言ったことを覚えていたボーは、「それ壊れてるよ、威張りや」と笑顔で言う。「本当かな? 試して、しんぜようか?」。上を向けてトリガーを引くが弾は出ない。そこで、笑いながら銃身を下げてもう一度引くと今度は弾が出て、壁に大きな穴が開く。実はライフルは2丁あり、壊れているのは、先日スキピオが取り上げられた銃の方だった。プロスパーはぎりぎり被弾を免れた。心配したボーが抱きつき、ホーネットは弾がかすって一部破れたプロスパーのセーターを調べている(2枚目の写真、右の矢印は壁の穴、左の矢印はセーターの破れた箇所)。起こったことに茫然とした伯父は、ライフルを構えたまま立ち尽くしている。伯母は、「こんな事になったのも、みんな、このチビのせいよ!」と怒鳴る。プロスパー:「放っといてくれ!」。ホーネット:「この子、6つだけど、あんた達よりずっとマトモよ」。伯父は、「これは事故だ! 壊れてると、言ったじゃないか!」と責任逃れ。そこにスキップが現れてライフルを取り上げ、「出てけ。2人を置いて。ここから。ベニスから」「警察を呼ぶ前に出てくんだな」と、こわもてで告げる。逃げるように出て行く夫妻。リッチオ:「ばっちし、言ってやったな」。スキップ:「大人になる事の意味が、分かっただろ?」。この場面の最後は、アイダとヴィクターが変装し、バルバロッサを連れて伯母夫妻のホテルを訪れ(3枚目の写真)、すごい訛りで、「ウチらぁ2人は、孤児院の代理人なんですじゃ」と言って、バルバロッサを養子に押し付けたところで終わる。
  
  
  

リッチオとモスカが、バルバロッサの金庫を開けている。リッチオ:「あのニセ札より、もっと沢山あるぜ」。モスカ:「おめぇ、5万ユーロ数えられっか?」。「オレを、誰だと思ってる? アインシュタインかよ」〔これは、できないということか?〕。モスカ:「ニセ札を、バルバロッサに返してやろう」。リッチオは6万、8万と数えている(1枚目の写真)。そして、「ちょっとした、ボーナスだ」。「取り分は、5万だぞ」。リッチオは、「分かってるって」と言うと、「利息だ」「税金に」「必要経費だ」と手に持っていたお札(8万)を全部鞄に入れる。次の短いシーン。伯母夫妻がスキアヴォーニ河岸で「タクシー!」と、手を上げて呼んでいると、ボーが寄って行って2人のお尻を押して海に突き落とす(2枚目の写真)。手前に写っているバルバロッサは、それを見て恨めしそうだ。映画の最後は、アイダ、ヴィクター、プロスパー、ボー、ホーネットの5人が乗ったボート。プロスパーが、「ボーと僕はどうすればいいの?」とヴィクター訊く。「何の事だ?」。ホーネットも、「あたし、どうなるの?」と訊く。ボーは、「ボク、どうするか知ってるよ」と言うと、運転席にいるアイダの横に行って、「アイダと一緒にいる」と甘えたように言う。「当然でしょ。どこにも行かせないわ。大きな家に一人ぼっちは、うんざり」。そして、ヴィクターに、「どこにも行くなと、言ってやって」と振る。ヴィクターは、プロスパーとホーネットに、「なぁ、聞いただろ。一緒に住めとさ」。アイダ:「本物の家族になれるかもよ」。ヴィクター:「何だって?」。恋のキューピット役のボーが、ヴィクターの元に行き、「ヴイクター、イエスって言ってよ!」とせがむ(3枚目の写真)。まんざらでもないヴィクターの様子を見て、ホーネットは大好きなプロスパーにもたれかかり、幸せそうに目を閉じる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

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