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Twelve 背番号12の12歳/栄光の星を目指して

アメリカ映画 (2019)

2019年3月にネット公開(NetflixやAmazonではない)されたアメリカ映画。最近は、こういう公開のされ方をする映画が増えてきていて、劇場公開~DVDやBL発売というパターンが減っている。こうした、一部の人にしか見られない映画をどう捉えるか、アカデミー賞でも2019年にスピルバーグが異議を唱えたが、今後も選考対象にすることが4月に決まった。今後に悪影響がなければいいのだが… この映画は、リトルリーグのワールド・シリーズに至る序盤の道のりを克明に描いた異色作。少年の出てくる野球映画はそれなりに多いが、リトルリーグに限定するとあまり多くない。その中でも飛び抜けて評価が高いのが、先回紹介した『The Perfect Game(ザ・パーフェクト・ゲーム)』(2009)だった。この映画と比べて大きく違う点が2つある。1つは、方や実話、方や全くの創作という点。もう1つが野球の描き方。『The Perfect Game』の評価を低くつけている数少ない海外サイトの評として、野球のプレイ自体が描写されていないという愚かなものがある。しかし、あの映画が優れていたのはプレイを描かずに、登場人物の心を描いていたからだ。一方、この映画では、積極的にプレイを映している。特に、州大会での準決勝と決勝での、主人公カイルの打と投での活躍ぶりは観ていて爽快だ。どちらの描き方も、映画の目的に沿っているので、正解だと思う。もう1つ、この映画で印象的だったのが、スポコン的な味わい。カイル親子の1年にわたる特訓ぶりは、何となく、星一徹と飛雄馬の関係を思わせる。練習また練習というスタイルは、スポコンの最も得意とする分野。それが、アメリカ映画の中で見られるのだから興味深い。しかし、その練習は、日本の漫画と違い、特殊な特訓ではなく、特別な器具も使われないし、変わった技も会得しない。それでも、主人公カイルは目覚しい上達ぶりを見せる。残念なのは、①実話でない点、②最後の2戦以外の描き方が非常に分かりにくい点、③人間関係の描写が下手な点の3つ。最後になるが、この映画に仮題をつける時、原題の“twelve”が、1チーム12人という枠を指すのか、カイルの12歳という年齢を指すのか、カイルが拘(こだわ)った背番号12を指すのか判断がつきかねた。1チーム12人の枠は、カイルが引越し先のオークウッドの選抜チームに採用されなかったために、5年生の1年を棒に振った重要な数字。そこで、最初は「12人」とした。しかし、カイルはそのお陰で成長し、背番号を7から12に変え(12歳で挑戦するから)、真に偉大な選手に成長し、6年生になって隣の地区のブライトン・チームを優勝戦まで導いていく。それを考えると、「12歳」の方が重要なのではないかと考えて変更した。さらに、年齢を重視すると、年齢を意識した背番号を忘れるわけにはいかないので、「背番号12の12歳」に再々変更した。

野球大好き少年カイルは、10歳の時、リトルリーグのマサチューセッツ州大会の決勝戦で敗退。翌年は頑張ると誓うが、引っ越した先のコネチカット州の町のチームの監督は、選抜チームに縁故枠を設けていて、カイルが如何に優秀な打者兼野手だということを試技で見せても、選んでくれなかった。父は、カイルを、「こんなことで絶対にあきらめるな。これをバネにもっと強くなれ」と元気付け、「夢を実現するチャンスを与える」というコンセプトのもとで、1対1の基礎練習から始め、「打つ、守る、投げる」の全ての力を上げる。飛び抜けて良くなったのが「打つ」。ボールを観察し、確実にホームランが打てるようになる。1年間 練習を続け、12歳の春、長打力を買われて50キロほど離れた町の選抜チームに入団、夏の地区大会に備えてさらに練習する。地区大会が始まると、カイルのお陰でチームは大量得点で勝ち進み、州大会に進出する。一度は投手力で優る別のチームに負けたが、敗者復活同士で決勝戦に臨む。戦う相手は、1年前にカイルに門前払いを食わせたチーム。カイルの長打力が封じられ、味方のピッチャーが傷ついた時、カイルはそれまで自分に禁じていたピッチャーを買って出る〔子供の頃、ピッチャーとして投げた球がバッターに当り 死にかけた〕。その右腕から投げられた剛速球は、リトルリーグの水準を遥かに超えるもので、相手は手も足も出ない。かくして、カイルは、念願の州大会優勝を果たし、ワールド・シリーズでの優勝を目指して突き進む。

主役の12歳のカイルを演じるのは、ワイヤット・ラルフ(Wyatt Ralff)。2004年10月4日生まれなので、撮影時は13歳くらい。映画初出演は『ムーンライズ・キングダム』(2012)、その後、『ラブストーリーズ エリナーの愛情』(2013)、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』『Wishin' and Hopin'』(2014)、『No Letting Go』(2015)と続くが、何れも端役。その後、4年のブランクを経て、いきなり主役に抜擢された。スポーツ好きなところが採用された理由かも。下の集合写真は『ムーンライズ・キングダム』から。どれがワイヤット・ラルフか判りますか?


あらすじ

映画は、リトルリーグのマサチューセッツ州大会の決勝戦プリンストン対ブルックビルの試合から始まる。最終回の裏2死2塁。10歳のカイルの所属するプリンストンが7対6でリードして、あとアウト1つで州の代表校となれる。カイルの守備位置はセンター(1枚目の写真)。背番号はラッキー7だ。次に迎える打者は背番号1。監督からは、外野への指示が飛ぶ。ただし、長打警戒シフトは命じない〔采配ミス〕。初球空振りの後、2球目はホームラン性の当り。カイルはフェンス目がけて必死で走る。そして、柵にぶつかり外に転倒しながらボールを取ろうとするが(2枚目の写真、矢印はボール)、失敗。2点ポームランで、7対8と逆転され、敗退する。カイルのことを心配した監督は、フェンスまで行き、「大丈夫か?」と声をかける。「取れなかった」。「やるだけやったろ」。「取らなくっちゃ」。「来年、君がいなくなって寂しいよ。みんなが君みたいなガッツでプレイしてくれるといいんだが」(3枚目の写真)「メジャーに入っても、私のことは覚えといてくれよ」。
    

翌年の春休み、カイルの一家はマサチューセッツ州から南隣のコネチカット州に引っ越す。カイルは、4月から新しい学校〔カイルは、9月から5年生になっているので、学年途中での編入〕。チームも新しくなる。転居先は、地上より高い1階と、半地下からなる2階建ての家(1枚目の写真)。父が、カイルに、「感想は?」と訊く。「前の家より、庭すごく狭いね」(2枚目の写真)。「そんなに狭くないぞ 試してみたいか?」。「今すぐ?」。父は、「そうだ」と言うと、カイルにグラブを投げて寄越す。「なあ、カイル、引っ越しはお前にとって簡単なことじゃないと思うが、きっとここが気に入るぞ」。そう言いながらキャッチボールを始める。「いいか、仕事仲間とも話したんだが、10歳、11歳と2年連続で州の代表になれば、12歳でワールド・シリーズだ」〔リトルリーグは10~12歳〕。カイルが、「僕、選抜チームに入れるかな?」と心配すると、「もちろん。お前くらい巧く打てる子はいないんじゃないかな」と勇気付ける(3枚目の写真)。典型的な野球パパと野球少年だ。ただ、父はあくまでおおらかで明るく、「星一徹」のような異様な厳しさは全くない。父は、最後に、キャッチャーのように芝生の上にしゃがむと、「快速球〔heater〕を投げろ」と言う。カイルは嫌がるが、「一球だけだ。精度が落ちないようにしないと」と投げさせる〔なぜ、カイルが嫌がるのかは、後で分かる〕。カイルの球は速く強く、受けた父が手を痛そうに振る。
    

父が、1階に上がって行くと、居間では母が荷物を解いている。母も、野球には理解があり、荷解きの前にキャッチボールをしてきたことを咎めたりしない。次に、父は、カイルの兄ゼヴィアの部屋に入って行く。「荷解きは進んでるか?」。「とっても」。「そうか、ちょっと休んで弟とキャッチボールしたらどうだ?」。「やめとく」。兄は、父が何と言っても手伝う気はない。ゼヴィアは高校生で、野球は抜群に巧く(ピッチャー)、昔、リトルリーグの地域大会でノーヒットノーランを達成したところを、新しい高校のコーチが見ていて、もう熱心なお呼びがかかっている(1枚目の写真)〔彼の部屋には、サイ・ヤングの写真が飾ってある〕。だから、「今年は、野球よりも女の子に焦点を当てようと思ってる」と余裕の一言。そのためかどうかは知らないが、「ゼヴィア〔Xavier〕」の名を使うのはやめ、通称を「エックス〔X〕」に変える。映画は、最初のこの部分だけ、エックスに焦点を当てる。エックスの登校初日、4月編入は彼一人だけ。自己紹介の場で、教師に「春休みには何してた?」と訊かれ、「荷解きを山ほどと野球をちょっぴり」と答えたので、教師は、「じゃあ、君が、バレット・コーチが自慢してた新しいピッチャーなのか?」と驚く(2枚目の写真)。「ええ、僕です」。「わが校へようこそ?」。最初のクラスが終わった後、次のクラスがどこにあるのか分からないでいるエックスに、さっそくクラス一の美人が助け舟。2人は、最初から息がぴったり(3枚目の写真)。
    

カイルも小学校に編入したであろうが、その場面は一切ない〔学校でのカイルのシーンは、映画の最後まで一度もない〕。春休みが終わったカイルの最初のシーンは、父との打撃特訓。父は、「もっと手首を早く返せ」と言い、すぐ近くからポンとボールを放り、それをカールがジャストミートする(1枚目の写真、矢印)。「それでいい」。「パパ、今年は新しいバッド 買ってくれる?」。「まだ使えるじゃないか」。「これ、兄さんが2年も使ったお古(ふる)だよ」(2枚目の写真、矢印は古いバッド)。そこにやって来たのが、地元オークウッドのリトルリーグのコーチ。父は、このコーチに、息子を推薦するEメールを送っていた。しかし、このコーチは不勉強で、昨年、カイルがどのくらい活躍したか一切調べなかった〔兄が有名な投手ということも〕。守備練習をさせながら、父に、「野球はずっとしてきた?」と訊く。「ああ、4歳の時から」。「ポジションは?」。「どこでも」。そのあと、昨年はマサチューセッツ州で準優勝だったと言うが、コーチのチームはコネチカット州代表としてニュー・イングランド地域6州の試合で、マサチューセッツ州代表を破ったと事も無げに言うので、準優勝チームの選手など重視していない。次のシーンは、オークウッドの選抜チームの選手選考会〔4月に行われる新規メンバーの追加募集〕。カイルは、「オークウッド」と書いたユニフォームを着ている選手〔一番まともなレッジという選手〕に、「何人くるのかな?」と訊いてみる。「30人かな。でも、選抜の12人は変わらないんじゃないかな。8人はホントにいい選手で、残りの4人は監督とコーチの子供たちなんだ」(3枚目の写真)〔つまり、4月からも、3月までのメンバーのままで行くという意味〕。「君も、空(あき)さえあれば入れるのにな」。これは、最初に聞いた良くない情報だ。
    

父が、仕事から帰って来て、母に、「また、販売にまわるなんて変な感じだ。40にもなって、カレッジを出た時と同じ仕事に戻るなんて」と不満を言う。父が、具体的に何をしているかは分からない。そこにカイルが帰ってきて、最初の試合は、現・選抜チームとの対抗戦だと話し(1枚目の写真)、「メイトランズ」と書いたユニフォームを見せる。背番号はマサチューセッツの時と同じラッキー7。ただ、選抜チームには、もう7番がいるので、選ばれても7番は使えないと話す。そして、すぐに試合が始まる。映画を観ていて理解できないのは、選抜チームが「オークウッド」のユニフォームではなく、「CT建設」と書いたユニフォームを着ていること。「メイトランズ」の1人が外野に安打を打つが、その後ろにいたライトの小柄な「CT建設」の選手は、まともに取ろうともしないし、拾って投げようともしない。これが「縁故採用」の4人のうちの1人だろう。「優秀な8人」の1人が球を拾いに来て2塁に投げ、そこでアウトになる。しかし、監督は、何もしなかった「縁故採用」に、「ジェイスン! 球ぐらい取れ! ピアノでも担いでるのか?! てきぱきやらんか? 今年中、プレイさせんぞ!」と怒鳴る(2枚目の写真)〔選抜選手は12人なので、永久にベンチでも構わない〕。監督は、「メイトランズ」のコーチに、「チームはどうだ?」と訊く。「最高ですよ。新しく、すごく巧い子を取りました」。「どれだ?」。「ショートです」〔カイルのこと〕。「空(あき)は1つしかないが、マレーのガキにやるつもりだ」。「どうして?」。「そんなにひどくないし、オヤジさんが 家の増築に俺たちを雇ってくれる」〔「俺たち」とはCT建設のことか?〕。「メイトランズ」のコーチは、縁故採用に反対なので、カイルを強く推薦する。「CT建設」の最後の回は、1人目のメイソン〔監督の息子で、ピッチャー。一番嫌な選手〕がヒットで1塁に出た後、2人目がバント成功で1・2塁。しかし、3人目のヒット性の当りをカイルが見事にキャッチしてアウト(3枚目の写真、矢印)。1・2塁間にいた選手も2人目もアウト。3アウト〔メイソンはどうなった?〕で引き揚げるカイルに、メイソンが、すれ違いざまに、「おい、興奮し過ぎるな ただの幸運だ」と嫌味を言う(4枚目の写真)。この場面では、チャッドという監督の①チームより自分の利益を優先する下劣さ、②選手に対し何の愛情もなく怒鳴るだけの非道さ、が良く分かる。
      

明日は、選抜の日なので、カイルは、練習を手伝ってくれるよう父に頼むが、父も母の手伝いで忙しい。そこに兄のエックスが顔を出し、母に、「お金ちょうだい」と頼み、これまで三振を記録するのに「K」を使っていたのも「X」にすることになった、と自分の存在感を自慢する。すると、父は、「見逃し三振の時は、どうするんだ?」と欠陥を指摘する。見逃しの三振〔caught looking〕は、“backwards K” とも言うが、それは、観客が“K”と書いた紙を逆に示すところからきている。“X”では逆さまにしても形は同じ。母が幾ら渡したのか、ぼやけて見えないが、全体の構図から何となく旧20ドル札のような気がする〔2200円〕。その時、玄関のチャイムが鳴る。母はエックスの嬉しそうな顔を見て、「信じられない」と言って玄関に降りて行く。母が連れて来たのは、エックスの登校初日にお互い見初めた女性〔ブルック〕。カイルは「マドンナだ! あなた、ゼヴィアのガールフレンドなの?」と思ったままを言ってしまう(1枚目の写真)。「ゼヴィアにはもったいないよ」。ブルック:「可愛いわね。まだセヴィアって呼んでる」。母は、「2人はただのお友だちよ」と注意する。「友だちにしたって、きれい過ぎるよ」。相手が子供でも、褒められて嫌なハズはない。ブルックは、その後もカイルに対し親切だが、この時の好印象が効を奏しているのかも。エックスは2人で映画に出かける〔アメリカの映画料金は6-7ドルで、日本の3分の1〕。父と2人だけになると、カイルは、「パパ、子供の頃、野球選手になりたいと思ったことないの?」と質問する。「もちろん、あるとも」。「なぜ、ならなかったの?」。「そんなに簡単じゃない」。「だけど、ベストを尽くしてあきらめなければ何でもできる、って言ったじゃない」。「できるとも、スポーツに限らず、どんなことでも」。「じゃあ、どうしたの? ケガしたの?」。「大きくなるにつれ、他のことに興味を惹かれ、野球はただの楽しみになってしまったんだ」と打ち明ける(2枚目の写真)〔その結果が、今の冴えない仕事と地位というのでは、寂しい〕。カイルは、「パパ… 僕 あきらめないよ。絶対に忘れないでね」(3枚目の写真)と言う。
    

翌日は、選考会。建前上は、現在選抜チームにいる選手も同列に扱われる。最初のテストは、ベース間のランニング・タイム(1枚目の写真、矢印はカイル、その後ろが最優秀のレッジ)。1人目は3.16秒、2人目は3.25秒、カイルは2.70秒。レッジは2.59秒。次は打撃。カイルが終わると、意地悪メイソンが、「いいバッドだな。どこのゴミ箱で見つけたんだ?」と嫌味を言う(2枚目の写真)。最後は、守備。1人が終わると、その選手は、次の選考者が投げた球を受ける担当になる。メイソンは2球目を取り損ね、「あんなの、取れるかよ!」と父(監督)に文句を言う。「泣き言はやめろ!」。次がカイルの番。彼は、2球目、先ほど言われたことの返礼に、全力で投球する(3枚目の写真)。お陰で、受けたメイソンは痛くてしばらく手を押さえて身を屈める。それを見て、カイルがザマミロと微笑む(4枚目の写真)。最後は、遠距離での長打の捕球。ここでも、カイルは見事な技を見せる。しかも、その返球は、コーチのグラブにフルスピードで真っ直ぐ入る。コーチ:「弾丸だ」。これで選抜のトライアルは終わり。
      

父が車を運転していると、“BETH〔母〕”からの呼び出しが何度も入る。「どうしかしたのか? あと5分で販売会議だ」。「カイル、選ばれなかったの。あなたと話したがってる」。「替ってくれ」。「パパ、僕、外されちゃった」。「ああ、ママから聞いた。いいか、きっと何かの間違いだ」。「コーチに電話してくれる?」。「するとも。確認するから、心配するんじゃないぞ」。「OK。大好きだよ」。「パパもだ」。父は、会議そっちのけで、車を停めると、コーチに電話する。「リック、私は、選抜を全部見てた。あの子が、最高の1人じゃないと言えるのか?」。「選抜は、手続きの一部にすぎない」。「打率5割以上だぞ。どんなポジションでもプレイできる」。「私はカイルを強く推した。だが、最終判断をするのはチャッド〔監督〕だ。彼に話してくれ」。「そうする」。帰宅した父。エックスは、カイルが落ちたと聞き、思わず、「ざけんな〔That's bullshit〕」と言いかけ、禁止用語だと気付き、途中から「でたらめだ〔Bullshoot〕」に変更する。「ここらじゃ、最高の選手じゃないか。JVチーム〔高校の2軍チーム〕の半数より上だ」と弟を擁護する。カイルは、半地下にある居間のソフェアに横たわり、顔を枕で隠している(2枚目の写真)。父は、「悲しむのは当然だ。だが、悔しがる必要はない。お前は見事だった。お前がチームに入れなかったただ一つの理由は、不公正に扱われたからだ。確かに、今は嫌な気分だろう。だが、これは僅かな後退に過ぎない。こんなことで絶対にあきらめるな。これをバネにもっと強くなれ」と慰める。夜もふけた頃、気を取り直したカイルが、父の部屋にやってきて 横に座る。父は、週末に監督のチャッドと話すと言った後で、「それでも変わらなかったら、来年は別のチームでプレイしたらどうだ?」と提案する。カイルは、「来年は7番はやめる。12番にするよ。『僕の年』だ」と言う(2枚目の写真)。「僕の年」という言葉には、来年は「僕の年」にしてやる、という意志がこもっている。なぜかというと、その直後に、「僕は、最優秀選手になってみせる」という意志表示があるから。父は、その意志を100%受け止める。そして、「いいか、すぐに始めよう。明日の朝、お前が起きたら、そこからが使命だ。確実に最優秀選手になれるまでトレーニングを止めるな、練習を止めるな、戦うのを止めるな。いいか?」。「いいよ」。翌朝、父は普段より早く起き、出かける用意をする。すると、キッチンのドアでは、既にカイルがグラブを2つ持って待っていた。「今朝、僕が起きたら、始めるって言ったでしょ」(3枚目の写真)。
    

翌日、父はさっそくチャッドに抗議に行く。チャッドが挙げた「言い訳」は、カイルは確かに素晴らしいが、過去2年、今の中核メンバーでうまくやってきたこと〔縁故採用の役立たずの存在には触れない〕。父は、選抜を見ていて、息子より巧い選手などほとんどいなかったと言うと、1回だけ失敗したフライの捕球を盾に取り、選抜チームの水準には達していないと言い切る。父は、「うやむやに話すのはやめよう、あの子が選抜に相応しいことはあんただって分かってるはずだ」と、あからさまな嘘に反撃する。監督は、来年Bチームを作るから、そこに入れてやると提案し(1枚目の写真)、頭に来た父は、「このボケナス」と罵った後、「一度でも野球をやったことあるのか? 最低のスイングだぞ」とこき下ろす。こうして、父とカイルによる 1対1の練習が始まる。先ずは、バッティングティー上のボールをネット目がけて打つ練習。「打った後も、頭を動かすんじゃない。ちゃんとティーを見てろ」。「僕に投げてくれないの?」。「まず、基礎からだ」。こうして、カイルは、バッティングティー上のボールを打ち続ける(2枚目の写真、矢印)。次は、父が打ったボールをキャッチする練習。「もっと早くグラブを下げて、準備態勢に入れ」。「逆シングルはダメ?」。「まず、基礎からだ」(3枚目の写真、矢印)。外野の守備練習では、「あと数歩下がり、前進しながらキャッチしろ」。「ダイビングキャッチしていい?」。カイルは父の顔を見て、「分かった、基礎からだね」と自分から言う。こうして練習は続く〔星親子のようだが、特殊な器具は使わない。あくまで基礎作りを徹底する〕
    

カイルが練習から戻ってくると、エックスとブルックが仲良く勉強をしている。カイルが、「やあ〔Hi〕、ブルック」と呼びかけると、ブルックは、「やあ〔Hey〕、カイル」と笑顔で返す。“Hi”の方が少し丁寧な言い方。ブルックは相手が年下なので、敢えて親しみを込めて“Hey”にしたのであろう。「チームに入れなくて残念だったわね」。「いいんだ。来年入るから。州で勝って、多分ワールド・シリーズに出るよ」(1枚目の写真)。カイルは、さらに、「もし、2人が結婚したら、あなたの名前、ブルック・コック〔Brooke Cooke:氏名が似ている〕になるの知ってた?」と付け足す。ブルックは笑い飛ばし、エックスは無視。そこで、カイルは、「ねえ、ゼヴィア?」と封印したハズの名で呼ぶ。返事がないので、もう一度くり返すが、兄は無視。そこで、あきらめて、「エックス?」と言い直す。ようやく、エックスがカイルを見る。「学校が終わった後、一緒に練習してくれない?」。「まさか〔I don't know〕」。ブルックは、「何よそれ? 弟を助けなさいよ」と助け舟(2枚目の写真)。「そうだ、弟を助けろよ」。返事がないので、カイルはブルックに、「何になりたいの?」と訊く。「科学者よ」。エックスが急に口をきく。「彼女は、未来を拓く人工知能の仕事に就くんだ」。その時、父が部屋に入って来る。カイルは、さっそく、兄への口添えを頼む。父も、「弟と練習してやれ」と言うが、その後に、極めて厳しい言葉をカイルに投げる。「お前は、自分一人でも練習できるんだ。覚えておけ。お前が練習していなくても、必ず、どこかで誰かが練習してて、そいつとぶつかれば、お前は負ける」(3枚目の写真)「だから、どんな場合でも練習する奴になれ」〔ここも、日本のスポコン漫画を思い出させる〕。この言葉には、兄も動揺する。
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いよいよ本格的な打撃練習。父が投げて、カイルが打つ。最初の打球は、フェンスまで届かない。「スイングはとてもいいが、ワンテンポ早くしろ。タイミングだ。忘れるな。バッティングで一番大事なのは、タイミングだ」。次の打球はフェンスを越える。カイルは、「パパ、最初のホームランだ」と満面の笑顔(1枚目の写真)。「どんどんいけ。次は、少し速く投げるぞ。よく見て、タイミングを計れ」〔1・2球相手の球を見てから打つのがカイルの定番打法となる〕。3球目。「さあ、振れ」。またもやホームラン。「完璧だ」。次もホームラン。「もっと速く投げるぞ」。ホームラン。「もっと速く投げてよ」。「速球〔cheese〕を打てると思うのか? パパはカレッジで投手だったんだぞ」。「投げてよ」。150キロ以上の速球に、カイルは手も足も出ない。ここで、2人がにこやかに笑うところがいい〔スポコン特有の暗さはどこにもない〕。「これで、お前もプロの一端を垣間(かいま)見たな」。ここで場面は切り替わり、これまで2人が練習してきた球場は雪に覆われている。家の中では、父が「ひいらぎかざろう」を口笛で吹いているので、クリスマスだと分かる。その時、母の、「カイル!」と咎める声が聞こえてくる。「それ、まっさらなのよ。クリスマスにお祖父ちゃんたちからもらったばかりじゃないの」。「すごく気に入ったんだけど、これじゃ投げられないよ」。「なら、それ着て練習しなきゃいいでしょ」。「だけど、他のじゃ寒いんだもん」。ここで、父が部屋に入って来て、ようやくカイルの上半身が映る(2枚目の写真、矢印は切られた右袖)。父は、「屋外の練習はやめよう」と宣言する。母は、「2人とも しばらく休んだら」と言うが、カイルは、「ママ、僕はやめないよ」と父に賛同する。狭い室内の練習場で、カイルは、再びバッティングティー上のボールを打つ(3枚目の写真、矢印)。カイルは、父がずっと練習に付き合っていて、仕事がおろそかにならないか心配する。兄が練習相手になってくれれば、すべてうまく行くのだが、父は、「強制はできない」と否定的。その後、父が仕事で悩むシーンがある。ボスは27、自分は42の負け犬。誰よりも地域を知っているのに、販売成績は全く伸びない。そんな父に、母は、いつも息子たちに言っているアドバイスを、自ら実行してみろと勧める。万一ダメなら、母方の祖父母のところに転がり込めばいいと。母は、専業主婦のようだし、母方の祖父は企業家か農家なのだろうか?。
    

ある日、父は、いい知らせを持ってくる。「お前を ブライトンのチームに申し込んできた」(1枚目の写真)。母:「遠すぎない?」。「40分くらいだ」〔田園地帯なので50キロはありそう〕。父は、選抜の方法の公平性や、コーチの子供が選手になっていないことなど いい点ばかりをカイルに話す。それを聞いたカイルが 大喜びで練習に出かけた後、母は、「この町に住んでなくてもチームに入れるの?」と、一番重要な点を質問する。「アパートを借りる」。「頭がおかしくなったんじゃない?」。「すごく安いアパートなんだ。とにかく、それで住んでることになる」。そのあとで、頭をかかえた母に、父がかける言葉が実にいい。「これは、カイルにとって、一つしかないチャンスなんだ。もう二度と12歳は来ない。ここじゃ、絶対選抜チームに入れてくれない。どうかしてることは分かってるが、あの子には、夢を実現するチャンスを与えてやらないと」。「なら、チャンピオンにしてやって」。その次のシーンは、人工芝を貼った体育館内での腕立て伏せ(2枚目の写真)、反復横飛び、腹筋、ジャンプ力(3枚目の写真)、水平バランスなど様々なメニューが紹介される。それと同時に、筋肉を強化するための蛋白質の補給。牛肉、鶏肉のあと、ツナと言われ、「ツナは嫌いだよ」。「味なんか関係ない。どれだけ体にいいかだ」と言われ、さらに、生卵を飲むことも勧められるが、実際にやろうとして口に入れるが、気持ち悪くて吐き出してしまう。
    

カイルが、ノートパソコンで日本の野球を見ている。巨人対中日。中日の打者がホームラン性の打球を打つと、巨人の外野がフェンスに登り、打球を掴み取る。それを見たカイルは、「僕も、やってみないと」と一人言と。そこに、ブルックとエックスが上ってくる。ブルックは、「やあ、カイル、調子はどう?」と明るく声をかける。カイルは、「エックス、一緒に練習してよ。選考まで2週間しかないんだ。30分でいいし、毎日でなくてもいい」と頼む(1枚目の写真)。エックスは当然断るが、ブルックは、「もし、もっと時間があれば、カイルを助ける?」とエックスに尋ねる。「ああ。助けたいのは やまやまなんだが…」。ブルックは、「なら、別れましょ」と言って、野球帽をエックスの頭にかぶせる。「何だって?」。「たっぷり時間ができるでしょ。じゃあ消えるわね」。「ちょっと待てよ」。このあと、2人の間で何が話し合われたかは分からないが、結果的に、弟の練習相手と、ブルックとの付き合いを両立させることで話し合いがつく。兄は、カイルと一緒に全力走塁し、一緒にボールを投げ合う。練習の場には、ブルックも一緒にいる。守備練習では、フェンス越しのボールをもぎ取ったり、ヒット性の当りを素手で取ったりもする(2枚目の写真、矢印)。最後は、ブルックも協力して、3つの塁を回ってどちらが速いか競争する(3枚目の写真)。兄の方がかなりの差をつけてホームイン。エックスはブルックとキスし、それを見ていたカイルが真似をしようとして、鼻を指で弾かれる(4枚目の写真)。
      

別な日。兄がピッチャーズ・マウンドに行き、投球練習をさせようとすると、カイルは、「投げたくない」と断る。兄は「乗り越えろ。野球じゃ、メンタルな強さは、フィジカルと同じくらい重要だ。雑念はすべて振り払え。集中しろ。レーザー光線のように」と言うと、バッティングティー上のボール目がけて全力投球する。兄はピッチャーなので、当然ボールに命中させる。次にカイルが挑戦するが(1枚目の写真)、逸れてしまう。兄は、「目を閉じろ」と命じ、「頭の中を真っ白にしろ。黒い空を思い描け。真ん中に1つだけ星がある。星に集中しろ」。しばらく経つと、「目を開けろ。頭の中はそのままだ」。ボールを渡し、「あの〔バッティングティー上の〕ボールが星だ。集中して当てろ」と言う(2枚目の写真)。今度は、見事にボールを当てることができた(3枚目の写真、矢印)。「これでお前もドラゴン戦士だ」。
    

いよいよ選抜の日。家を車で出かける前、父は、「確かに全部持ったか?」と訊く。「うん、昨日の夜、チェックした」。「ちょっと違うみたいだぞ。バッグの中を見てみろ」。カイルが、バッグを開けると、そこには待望の新しいバッドが入っていた。「それが、パズルの最後のピースだ〔選抜への道の最後の鍵、という意味〕」(1枚目の写真、矢印は新しいバッド)。ブライトンの選抜の行われるグラウンド。父は監督に挨拶し、握手するが、その直後、監督はカイルにも手を差し出し、握手する(2枚目の写真)。非常にフレンドリーな人物だ。カイルが子供たちのところに行った後、監督は、「あんた、ゼヴィアのパパなんだろ?」と尋ねる。「ああ」。「彼は、すごい選手だ。ウチの高校と対戦して11連続三振を奪ったからな」。「彼はすごい」。「カイルもすごいピッチャーなんだろ?」。「ああ。たぶん、もっと巧い。だが… 投げない。前は投げてた… だが、9つの時、投げた球がバッターの肋骨に当り、心臓が止まって倒れると 動かなくなった。幸い、スタンドにいた救急医が駆けつけて生き返らせてくれた。カイルはひどく取り乱し、二度と投げないと言い、以来、一度も投げてない。その話をするだけでも嫌がる」(3枚目の写真)。
    

そして、選抜が始まる。カイルの打撃試験。投げるのは監督。カイル:「何をすればいいんですか?」。「ボールを芯でとらえるんだ〔make solid contact〕。できたら、3方向に打ってみてくれ」。カイルは、2球続けて、何もせずに監督の球筋を見極める。外野で見ている選手たちからは、「あいつ、打ち方知ってるのか?」という声が上がる。そして、3球目を柵外に運ぶ(ホームラン)。4・5球目もすべて柵外。方向も変えている。監督は舌を巻く。「確かに、3方向だな」。その時、一人の子が、「カイル、森の中に打ち込めよ」と叫ぶ。6球目、カイルがジャストミートすると(1枚目の写真、矢印)、ボールは森の中へ(2枚目の写真、矢印)。それを見た監督は、「もし、ご両親が夏休み旅行の計画を立てておられるようなら、キャンセルするように」と言い、選ばれたことが分かったカイルはにっこりする(3枚目の写真)。
    

カイルが庭にいると、両親が笑顔で出てきて、正式な通知のあったことを知らされる(1枚目の写真)。母の、「おめでとう」の言葉に対するカイルの返事は、「いいね〔Cool〕」だけ。父:「『いいね』? それだけ? ただの『いいね』なのか?」。「うん、『いいね』だよ。地区で勝って、それからコネチカット州、そして、ニュー・イングランド地域だ」(2枚目の写真)「そしたら、ワールド・シリーズで優勝だ」。「そうか。ところで、ブライトンは、去年、最初の『地区』で敗退したんだぞ」。「パパ、僕たちは地区なんか問題じゃない、今年は1試合も落さない」。次の場面は、ブライトンの選抜チームの選手を前にして、監督が話す。「これが今年のチームだ。昨年の屈辱を果たそうと、これまでみんなで頑張ってきた」「今日から、新しい選手が1人加わる。カイル・コックだ。みんな彼の選抜を覚えてるな」。選手たちがカイルに笑顔を見せる(3枚目の写真)。コーチ〔どのチームも、監督とコーチの2人制〕が、カイルに質問する。「どうやったら、すべてのスイングにあんなに集中できる?」。「練習です。いっぱいやったから」。「どうやったら、いつも最適のポジションを保てる?」。「それも、練習のお陰です」。「どうやったら、正確な投球ができる?」。「練習です」。その言葉を受けて、コーチが、「いいか、みんな、今年は楽しい年にしたいだろ?」「野球が上手くなれば、野球をするのも楽しくなる。上手くなるには、方法は1つしかない。練習だ。これから毎日、自由な時間があれば、練習しろ」と、呼びかける。いくらカイルが優れていても、野球は9人でするものなので、全員のレベルアップは必須要件だ〔今が4月だから、あと3ヶ月ある〕
    

ここから映画は、しばらく「空中分解」する。結構好きな映画なのだが、評価が思ったほど上がらないのは、最後戦に至るまでの部分(開始52分から1時間9分までの17分)の映像が、断片的でつまらないからであろう(特に、試合の部分が)。もちろん重要な場面もある。エックスが、カイルをキャッチャー代わりにナックルカーブ〔通常のカーブよりも大きく縦に落ちる〕の練習をしている短い場面〔伏線〕だ。その後の父の「一括契約」成功に関する母との会話は、すべて削除してもいいと思うほど “boring(退屈な、つまらない)”な内容。映画の進行に何の寄与もない。次に突然表示されるのが、1枚目の写真の組み合わせ表。表の上には、「コネチカット州選手権」と書かれているが、州全体ではなく中部地区のこと。映画では8地区となっているが、実際には11地区ある。ブライトンの属する中部地区には、16チームあるという設定。因みに、にっくき敵のオークウッドは西部地区に属していて、この表にはない。この表から分かることは、ブライトンは1回戦を23-0、2回戦を18-2と、その強力な打線で一方的に勝ってきたこと。ここから、オークウッドブライトンの試合の一部だけが「細切れ」に紹介される。
 ①西部地区の準決勝オークウッド×センイツ戦の4回表。14-4でオークウッドが圧倒している。以前、カイルに親切だったレッジがホームランを打ち、試合を決定的にする。
 ②中部地区の準決勝ブライトン×ランカスター戦の1回表。まだ0-0。カイルが、いつも通り2回見てからホームランを放つ(2枚目の写真、矢印)。
 ③西部地区の準決勝の続きでオークウッドが勝った瞬間。
 ④中部地区の決勝ブライトン×ウエストレイク戦の4回裏。12-0でブライトンが一方的。ここで、ダニーという選手が見事な守備を見せる。
 ⑤西部地区の決勝オークウッド×サンドリッジ戦の5回裏。8対1でオークウッドが圧倒。オークウッドは結局、この試合を制する。愚かな監督は、コーチに、「ワールド・シリーズのホテルを予約しよう」と言い出す。これに対し、コーチは、「どうやったら地域大会に出られるかを考えないと」と戒める。「ブライトンは無敗ですよ。これまで他のチームと戦って75対9の成績だ」。「ブライトンは去年最低だったぞ」。この現状認識に欠けた監督のおバカな返事に対するコーチの言葉は、「At least the Sox got a hundred grand for Ruth. They oughta send you flowers.」。最初は何を言っているのか全く分からなかった。この部分は、「少なくとも、ソックスは、ルースに10万ドルでトレードした。ブライトンは、あんたに花でも贈らないとな」という訳になる〔それでも、意味は分からない〕。これは、野球に詳しいアメリカ人にしか分からない。すなわち、有名なベーブ・ルースは、1919年にレッドソックスからヤンキーズに10万ドルで金銭トレードされ、その後、ルースは球史上最も偉大なホームラン・キングになる。コーチは昨年ケイルの採用を勧めたのに監督が無視し、そのお陰で、今年のブライトンが強大なチームになったことを揶揄したのだ。意訳すれば、「ソックスは、ルースを放出するなんて愚かなことをしたが、それでも10万ドルは受け取った。あんたはタダでカイルをブライトンに渡した。ブライトンはあんたに感謝して花でも贈らないとな」とでもなろうか。
  

そして、いよいよ州大会。最初の2回戦の結果は1つの表で提示される(下の写真)。この表が、非常に分かりにくい。表の左端部の8チームによる4試合が1回戦で、
 ①オークウッド×ノリッジ戦は14-1でオークウッドの勝ち。ここで負けたノリッジは、写真の左端部にも表示されている。
 ②フリーポート×キングストン戦は7-0でフリーポートの勝ち。負けたキングストンは、やはり左端部に表示。
 ③ウエスト・ハートフォード×ブライトン戦は0-24でブライトンの圧勝。負けたウエスト・ハートフォードは左端部に。
 ④ニュータウン×ストラトフォード戦は3-4の接戦でストラトフォードの勝ち。負けたニュータウンは左端部。
◇表の、左端部を見ると、
 ①キングストン×ニュータウン戦が組まれ3-9でニュータウンが勝ち、キングストンは赤字になっている。
 ②ウエスト・ハートフォード×ノリッジ戦で負けたウエスト・ハートフォードは赤字
これは、敗者復活制が採用されていることを意味している。そして、2度負けたチームは赤字となり、それ以上戦う権利はない。
◇表の、部右を見ると、2試合が2回戦で、
 ①オークウッド×フリーポート戦は2-3で、バカ監督のオークウッドが負けている! 
 ②ブライトン×ストラトフォード戦は17-2でブライトンの圧勝。
◇表にはまだ表示されていないが、3回戦ではフリーポートとブライトンが戦うことになる。
◇一方、部右を見ると、2試合が行われている。
 ①敗者復活戦で勝ったニュータウンと、2回戦で負けたストラトフォードが戦い、12-11で負けたストラトフォードが赤字
 ②2回戦で負けたオークウッドと、ノリッジと敗者復活で勝ったノリッジが戦い、15-1で負けたノリッジが赤字。かくして、オークウッドは3回戦に進むことができた。


試合の「ちょっとだけ」映しの後半に入り、それまでの打者と投手の成績が表示される。打率、ホームラン数、打点は、カイルが、0.909、5本、18点で断トツのトップ〔2位は、0.625、3本、9点で、しかも、同一選手ではない〕。一方、投手の方はフリーポートのウィルソンが、防御率、奪三振、被安打率とも、0.00、20球、0.000で断トツのトップ〔2位は、2.33、9球、0.227で、しかも、同一選手ではない〕。これだけ見ると、州大会は、攻めのブライトンと守りのフリーポートとの一騎打ちで、オークウッドの立ち入る隙などない。そして、最初の映像紹介は、
 ①州大会の3回戦フリーポート×ブライトン戦の6回表。2-0でブライトンが負けている。ブライトンになぜ点が入らないのか? それは、ケイルが毎回敬遠のフォアボールで歩かされているからだ。この試合を捨てたブライトンの監督は、ピッチャーの肩を休ませるため、外野手にピッチャーをさせ、ホームランを打たれる。6回の裏に、フリーポートは13歳のストッパーを登板させるが、彼は時速118キロの球を投げ、ブライトンの下位打線を翻弄する。ブライトンは初めての敗戦〔最終的には8-0〕
 ②表が映り、敗者復活同士のニュータウン×オークウッド戦は 2-8でオークウッドが制したことが示される。
 ③準決勝のオークウッド×フリーポート戦は6回裏、相手の最後のバッターを打ち取って試合終了。オークウッドの決勝進出が決まる〔最終的には9-7〕
 ④敗者復活戦でブライトンとフリーポートが再度対戦する。場面は6回表。0-1でブライトンが負けている。アウト数は分からないが、満塁となったところで、フリーポートはストッパーを出してくる。そして、バッターはカイル。カイルは、いつものように2回見て、3球目を満塁ホームラン(下の写真、矢印)。チームは6-1で快勝する。これで、ブライトンも決勝進出が決まる。


決勝戦の朝。カイルの家で。兄にも試合がある。エックス:「今日は頑張れよ」。カイル:「そっちも。何人、三振に仕留めるの?」。「全員だ。トロフィー持って帰れよ」。「うん」。そこに父が入って来る。「エックス、頑張れ」。「パパ、ありがとう」。「剛球だぞ。集中しろ」。ブルースは、エックスの応援に行ってしまうが、その前にカイルを励ます。「州大会で勝つって言ったでしょ? でも、これが目標なんかじゃない、もっと先よね〔you didn't come this far to only come this far〕。勝ってらっしゃい」(1枚目の写真)。そう言うと、カイルを抱きしめる。カイルは、エックスに対する協力示唆へのお礼を含め、「どうもありがとう」とお礼を言う(2枚目の写真)。出発にあたり、父は カイルに、「大丈夫か? 血が騒ぐか?」と訊き、カイルが「ちょっと緊張してる」と答えると、イスに座らせる。「いいか、緊張感はウォーミングアップを始めれば消えてしまう。だが、今日は、ずっと緊張を保つようにしろ。お前は、このために ずっと頑張ってきたんだから。いいな? 勝つにしろ負けるにしろ、全力を尽くし 悔いは残すな」(3枚目の写真)「お前のことを誇りに思う。お前は素晴らしい。ここまでやってのけた」。そう言うと、固く手を握り合う。
    

コネチカット州の決勝戦が開幕する(1枚目の写真)。お互い4勝1敗同士の対戦だ。オークウッドのチャッド監督は、汚い作戦に出る。ピッチャーのメイソン〔あの意地悪な息子〕に、初球に危険球を投げさせ、ブライトンのバッターをビビらせるという卑怯な作戦だ。1番バッターは、地面に倒れ込んでボールを避ける。お陰で三振に終わる。しかし、もともと大したピッチャーではないので、2人目か3人目にはヒットを打たれ、4番のカイルの打順となる。チャッドは、長打を警戒し、守備陣を後退させる。そして、第1球は、またもや危険球(2枚目の写真)。たちが悪いのは、チャッドの指示も去ることながら、メイソン自身もニヤニヤして、倒れ込んだカイルを見ている点(3枚目の写真)。
    

カイルは、おじけることなく、2球目を、意表を突いたバントにする(1枚目の写真、矢印)。後退守備を取っていたためと、予想もしなかったバントに驚き、カイルは一気に三塁まで到達する(2枚目の写真、矢印、監督が褒めている)。動揺したのか、次打者に対するメイソンの球は、キャッチャーがぎりぎり捕球できたほどの悪球。キャッチャーは、メイソンの方に歩いて行き、「試合に集中しろよ〔get your head in the game〕」と文句を言う。カイルは、その隙を突いてホームスチールする(3枚目の写真、矢印は走るカイル、キャッチャーは気付いていない)。これを見ていたスカウトが、「将来、有望だな」と言う。
    

3回裏2-0。2死1塁。ブライトンのピッチャーがロングヒットを打たれ、打者が3塁を回る。フェンスぎりぎりで拾った野手が、カイルに向かって投げ、カイルはそれを素手でつかむと、そのまま本塁へ剛速球で返球し(1枚目の写真)、アウトにする。それを見たスカウトは、「メジャーでも、あんなのは見たことがない」と言う。これで、3回は終了〔2-1〕。試合は、そのまま6回にもつれ込む。6回表のブライトンの攻撃は無得点に終わる。6回裏の守備に出て行く選手たちを集めた監督は、「これで最後だ〔This is it〕。アウト3つだ。奴らをアウト3つに抑えれば、我々が州のチャンピオンだ!」と檄(げき)を飛ばす(2枚目の写真)。「やれるな?!」。「はい!」。「抑え込めるな?!」。「はい!」(3枚目の写真)。「絶対できる。生涯に残る思い出だ」。そして、カイルに、掛け声をかけさせる。カイル:「いちにのさんで ブライトンだ〔Brighton on three〕!」。全員で、「1、2、3、ブライトン!」と叫ぶ。
    

6回裏2-1。0死1塁。バッターが打ったボールが、ブライトンのピッチャーを直撃する。ピッチャーは痛くて体を丸めたまま、倒れている。監督とコーチが助け起こして立ち上がることはできたが、投げられるような状態ではない。監督は、野手に投げさせようとするが、カイルが、自発的に「投げていい?」と名乗りをあげる(1枚目の写真)。「まさか投げると言うとはな。思う存分やってくれ〔Head back on out〕」。カイルのピッチャーは誰も見たことがないので、スカウトも相手チームも戸惑う。監督は、「カイル、心配するな。ただミットを見て、キャッチボールのつもりで投げればいい。腕力が強いから投げ過ぎるな。打たれても気にするな」と、くどくど心配する。カイルは、その言葉を遮ると、「座ってて、監督。この試合もらったから」。すごい自信だ。1塁には、前のピッチャーが残した走者がいる。そこで、カイルは、一塁手とキャッチャーを呼び、作戦を授ける(1枚目の写真)。一方のオークウッド。カイルはピッチャー未経験と踏み、第一球を投げる時、後ろを見ていないだろうから、盗塁するよう指示する。打者はレッジ。カイルは投球に入るフリをして、いきなり一塁に投げる。これで、盗塁しようと大幅に塁を離れていたランナーはアウトになる(3枚目の写真)。
    

カイルの初めての投球。あまりの速さと強さに、捕球したキャッチャーが尻餅をついてしまう(1枚目の写真)。臨時ピッチャーのあまりの凄さに、オークウッドのベンチは沈み込み、スカウトはスピード計測器を取って来るよう命じる。2球目も剛速球。そして、3球目はナックルカーブ(2枚目の連続写真。球が急に落ちている)。兄の投球練習相手をしていた時、教えてもらったのだろう。スカウトは、これにも驚く。2人目は大した打者でないが、3人目はあの憎いメイソンだ。カイルはメイソンと勝負すべく、2人目をわざと敬遠する(3枚目の写真、矢印)。
    

そして、迎えたメイソン。カイルは、「ピカピカのバットでも役に立たないぞ」と、昔バカにされたお返しをする(1枚目の写真)。1球目は時速84マイル〔135キロ〕。スカウトの友達は、「嘘だろ〔You gotta be kidding me〕」と言って数値を見せる(2枚目の写真、矢印は計測器)。「12歳の最高記録は?」。「81〔130〕でした」。チャッドが、「速球に早く慣れろ!」と叱咤すると、カイルは、「あんなの速球じゃない」とチャッドに言う。「速球を見たい?」。これは、自分を採用しなかったチャッドへのお返しだ。2球目は90〔145〕。メイソンには手も足も出ない。スカウトの友達:「あの子は超人だ。12歳じゃ、あんなの無理だ」。メイソンは、「もう一度投げてみろ」と口だけ達者を見せる。「もっと早く投げてやろうか?」。「やれよ」(3枚目の写真)。「覚悟はいいか?」。メイソンはバットを思い切り振って転倒する(4枚目の写真)。速度は95〔153。日本のプロ野球の最速記録に近い〕。これで、カイルが監督に予告したように、ブライトンはコネチカット州の決勝戦を制した。
      

カイルは、仲間に祝福されて満面の笑顔(1枚目の写真、この子は笑顔がよく似合う)。チャッドは、カイルの父の姿を見つけると、「ちょっといいか?」と声をかける。そして、「去年、カイルを選ばなかったことは間違いだった。本当に悪かった」と謝る。「あんたの息子は、俺が見た中で一番優れた選手だ」(2枚目の写真)。父は、勝った嬉しさと、本来の心の広さから、「ある意味、あんたに感謝しないとな。落されてなかったら、カイルもあれほど頑張らなかったろうから」と言い、お互い気持ちよく別れる。そこにやってきたのが、スカウト。自己紹介によれば、スタンフォード大学の野球部のスカウト。「あなたの息子さんについて、少しお話したい」と切り出す。「カイルは、これから8年生になるところですが」〔カイルは12歳なので、今6年生のハズ。だから、「これから7年生」と言うべき〕。「いやいや、違うんです。お宅のゼヴィア君の方です」。スカウトは、全額支給奨学金として30万ドル〔3300万円〕を申し出る。父はもちろん文句なしの大喜びだが、なぜカイルの試合に来たのかを尋ねる。スカウトは、有望選手の試合を見て回るのが仕事だと言った上で、「何年か後には、カイル君は、間違いなく全世界で一番嘱望される選手になっているでしょう。高校を卒業したその日に、複数のメジャーリーグから1億〔110億円〕の契約の申し出があるでしょうから、スタンフォードじゃ とても太刀打ちできません」と話す(3枚目の写真)。そして、父が2人の優れた選手を育てたことを絶賛する。映画の最後に、「ブライトンは、地域大会を無敗で制した。ワールド・シリーズの国内選手権に進み、延長11回でテキサスに敗れた。カイルは、ホームラン数と打率で大会記録を作った。彼は、3回投手として登板し、2回ノーヒットノーランを記録し、奪三振記録も破った。カイル・コックは、ワールド・シリーズの優勝チーム以外からMVPに選ばれた大会史上初の選手となった」と表示される。解説で述べたように、これは実話ではない。
    

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