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SpaceBoy スペース・ボーイ

ベルギー映画 (2021)

最初にパッと観た時は、それなりに楽しめたのだが、紹介するために1行ずつ台詞をチェックしていくと、43歳にして初めて映画の監督・脚本に挑戦したOlivier Pairouxの “脇の甘さ” に辟易させられた。広告やミュージックビデオ関係で働いてきた人に、ある程度のち密さが要求される映画作りは無理なのだろうか? 他に例のない題材なので、もっと客観性を持って作れば、ずっと良い作品になっていたかもしれないと思うと、残念だ(これほど短く、これほど批判的な解説は初めて)。

1986年の春、生まれてからずっと住んでいたアパートを引き払い、どこか不明の場所に住んでいた天体物理学者の父は、11歳の息子のジムと一緒に、古いピックアップトラックに僅かばかりの家財を積んでベルギーのフランス語圏に向かう。そして、夜暗くなってから、閑静な住宅地に到着する。父は、2年4ヶ月後に “宇宙に行く5人目の物理学者” として、同行する2人と一緒にミッション活動を続けていて、それが、父の血筋を受け継いで天体に熱を上げているジムにとっては自慢の種、心の支えになっている。ただ、ジムには不満もあり、それは3年ほど前に亡くなった母について、父が何も説明してくれなかったことで、父には面と向かって言わないものの、心の底ではわだかまりとなっている。こうした状態で、父が赴任したのは、屋上に天文台をもつ、奇妙なビル内の研究施設。そして、ジムは、初めて行く学校に、4-6月の最終学期に途中編入することになる。その最初の登校日に、ジムともう一人の病気休学後の女生徒のエマは、学期末に開催されるこの学校独自の科学コンクールにペアを組んで参加することが担任から求められる。ジムは、昔から興味を持っていた高高度気球による飛行がしたかったので、エマがべつのことをやりたくても、聞く耳を持たず、一方的に事を進め、教師も模型だと誤解して賛成する。エマは、もともとこの学校に通っていた地元の少女なので、気球作りに最適な人知れぬ納屋にジムを連れて行く。それからのジムは、必要な作業リストを作成し、気球ミッションに取りかかるが、父の研究室に1人で待たされていた時、父に届いた通信文をこっそり奪って読んでしまい、大きな衝撃を受ける。父は、ここに引っ越しすしばらく前に、自らミッションを辞退していたのだ。ジムの夢も生き甲斐も潰えてしまう。その結果、父に対しては、母の件に加えて一層の不信感を抱くようになり、気球ミッションにのめり込む。最大の問題は気球に使うヘリウムの大量入手で、エマが趣味で撮った写真を見ている際、植物園の温室にあるらしいことが分かり、エマと2人で閉園後に侵入して盗み出すことに成功する。この頃には、最初、ぎこちなかったエマとの関係も修復し、全面的な協力も得られるようになっていた。しかし、逆に、もう一つの問題がジムの知らない間に大きくなっていく。それは、エマが病気休学する前からエマのことが好きで、一緒にコンクールができなくなったことで、ジムを逆恨みしていた同じクラスのスペンサーが、気球を爆破することに決め、可燃性ガスのボンベを納屋にこっそり仕掛けたからだ。そして、コンクールの前日、気球の下のイスに座って、2人が本番飛行の予行演習をしている最中に、スペンサーが納屋の外から望遠鏡付きのおもちゃの銃で可燃性ガスのボンベに取り付けた発火装置を狙い撃ちし、納屋の中で爆発が起きる。ジムは、ショックを受けたエマを何とか連れて、近くの病院まで歩いて行き、それに気付いた看護婦に助けられる。しかし、エマは、先天性の難病にかかっていて、“短い余命の先の確実な死“ という悲惨なものであったため、ジムの行為は “エマを過剰なまでに防衛的に育ててきた母親” の怒りを買い、ジムはエマとの絶交を宣告される。幸い、エマは、母のそういう態度に強い抵抗感を抱いていたので、ちょうど病院にいた年上のいとこの助言を受け、ジムにSOSの伝言を送る、翌朝、それを見たジムは、コンクール開始までの時間が僅かしかないのを承知の上で、植物園の園長に頼み込んで、温室内で使っていたヘリウム風船を全部借り、それを納屋に残されたイスにセットし、いつでも飛び立てるようにしておいた上で、病院に行き、エマと一緒に逃げ出して納屋に向かう。ジムの父と、エマの両親が、納屋に駆け付けた時には、それを知ったジムは飛行を取りやめようとしたが、逆に、エマは自由を求めて縄を外し気球(といういか、風船の集合体)は、空に向かって上昇を開始する…

主役のジムを演じるのは、バジル・グランバーガー(Basile Grunberger)。2008年8月生まれ。デビュー作の 『Nos batailles(パパは奮闘中!)』(2018)〔駄作なので紹介せず〕に次ぐ2本目の映画出演。演技は、はっきり言って下手。

あらすじ

映画が始まって最初(オープニングクレジットのずっと前に)に映るのが、ツリーハウス(最初は、そこがツリーハウスだとも分からないが)の壁に並べられた品々。主だった物について言及すると、左から、インスタントカメラとその写真、ルービックキューブ、科学コンクールのポスター、写真箱、帽子型ヘルメット。どれも映画の中で登場するものばかり。他の壁には、宇宙を思わせるものも一杯並んでいる。そして、2人の幼い少女が映る。すると、カメラは一旦引き、大きい方の少女が、「パパ、こっち」と呼び、イルミネーションで飾られたツリーハウスに近づいて行く男性を映す(2枚目の写真)〔このツリーハウスも、後で登場する〕。父親は、階段を上がって子供たちのところまで行くと、大きい方の少女が1冊の大きなノートを渡し、初めから読んで欲しいと頼む。父親は、読み始める。「すべては、僕らが引っ越した日から始まった」(3枚目の写真)「1986年4月4日、午前6時30分。パパは、僕らの持ち物、全人生を車に積み込んでる。たいした量じゃなかったけど」。

この読み上げと同時に時代は、過去へと戻り、当時としては前衛的なデザインの高層アパートの下で、髭づらの父〔最初に出てきた “少女たちの父親” の父〕が、ピックアップトラックの荷台にダンボールを積み込んでいる。父は、無線機を取り出すと〔まだ携帯電話が誕生したばかりの時代〕、部屋に残っている一人息子のジムを無線で呼ぶ。「グラームからジムへ」。「ジムからパパへ」。「全部チェックしたか? 忘れ物はないか?」。ジムが完了と答えると、父は降りて来るよう指示する。ジムが、「うん、分かった。今、降りてく」と言いながらドアに向かう(1枚目の写真、左の矢印は無線機、右の矢印はドアの枠)。そして、ドアの枠に書かれた自分の身長の記録を見る。一番下には、「1975」と書かれ、その上に赤ちゃんの簡単な線画が描かれ、所々に身長を測った時の線が1年ごとに引かれ、「83」まで毎年あるが、その上に、天使の羽根を付けた母の簡単な線画が描かれ(2枚目の写真、矢印)、毎年の計測も中断し、一番上に、現在の身長と、「出発/1986」と書かれている。このことから、一家はジムが生まれてからずっと この部屋に住んでいて、3年前に母が亡くなったことが分かる。ジムは、自分の大切な記憶がどうしても欲しくなり、厚さ1~1.5センチほどの枠板〔ドアの太い柱に貼り付けられた薄く細長い板〕を、剥がそうと力任せに引っ張り、勢い余って板と一緒に床に転倒する。しばらくすると、長い板を持ってジムが出て来たので、父は 「それ何だ? ドアを剥ぎ取ってきたのか?」と訊く。「ドアじゃなく、枠だよ」(3枚目の写真、矢印)。「後ろに、投げ込んどけ。行くぞ」。

そして、ピックアップトラックは少なくとも11年暮らしたアパートから去って行く(1枚目の写真)。湖の上に張り出すように立つ奇抜な窓の建物がどこにあるか、いろいろ探したが見つからなかった〔そもそも、ベルギーには湖はないし、父が務めていたのがルクセンブルク、フランスもしくはスイスのフランス語圏、かもしれないと思ったが、ルクセンブルクには湖はないし、フランスにもこれほどの湖は都市近くになく、スイスのジュネーヴにもこの建物はなかった〕。父は、「ジム、うまくいくさ」と安心させようとする。ジムは 「学校は?」と訊く(2枚目の写真)〔額のバンドエイドはさっき転倒した時のケガ?〕。「新しい学校だ」。「僕の友だちは?」。「友だちって、どの?」。「さあ、バートンさん?」。「バートンさん? 図書館の年寄りか?」。「ミゲルは?」。「スペインのペンパルか?」〔ジムには、クラスの友だちがいない?〕。そこから、車の空撮が始まり、場所が、都会から片側3車線の高速、片側1車線の地方道、中央に斜線のない田舎道へと変わっていき、辺りが真っ暗になった頃、絵で描いたような森の中の住宅地に到着する(3枚目の写真)。出発したのが日中で、それからほとんどのシーンが日中で、最後に夜中。ベルギーは小さな国なので、数時間でどこにでも行ける。ということは、前、暮らしていたのは、フランス、スイスの可能性が高い〔ルクセンブルクはベルギーのスランス語圏に隣接しているので1時間くらいで到達できる〕

翌朝、父は、ジムに手で目を覆わせ、車で自分の職場の前まで連れて行き、「着いた、見ていいぞ」と言う。ジムは、目の前に立っている奇妙キテレツな建物を見て、びっくりし、「ここで、パパのミッション 完了させるの?」と訊き、「すごいや、早く行こうよ」と言う(1枚目の写真)。2枚目の写真の中央最下部が父のピックアップトラック〔この建物は、もちろん ただの絵。こんな不安定な構造物は、あり得ない。それに、下側の80%がただの土台で、てっぺんのガラスの部分が研究部門、そこまでエレベーターではなく周囲に付いた階段で上がっていくなんて、何てバカげた発想だろう/因みに、屋上に天文台が乗っている〕。父は、ジムに見せるためだけに寄ったので、「明日の放課後に来てもいいぞ」と言うと、そのまま学校に連れて行く。そして、荷台に乗せて来た自転車を降ろすと、ジムと一緒に校舎に向かう。歩きながら、「4月、5月、6月、あと僅か3ヶ月で夏だ。夏休み用に、友だちを何人か作るチャンスだぞ」と言う。校舎の入口では校長が拡声器を持って、生徒達に指示を出している。そして、父を見ると、「グールドマンさん!」と言って駆け寄り、熱烈に握手し、「何と光栄でしょう」と喜ぶ(3枚目の写真)〔グールドマンは、2年後の1988年に、宇宙に行く5人目の物理学者になる予定の著名人〕。そして、グールドマンとしばらく話した後、ジムに向かって、「こんな素敵なパパの幸運な持ち主は誰かね?」と尋ねる。ジムはフルネームを言い、校長は6Bクラスだと教える。

6Bクラスでは、教師が理科の実験器具を机の上に置いた状態で、原子について話し始める。それを、教室の外の木に登ったジムが双眼鏡で見ている〔どうして、6Bのクラスの理科の授業がここで行われていると分かったのだろう?〕、そこに校長が1人の女子生徒を連れて入ってくる。そして、教師に、「グールドマン君は来てないか?」と尋ね、「いいえ」の返事。「小さくて茶色の髪の少年」。「見てません」〔校長は、どうしてジムに校長室で待つよう言わなかったのだろう?〕。そこで、校長は、女子生徒について、クラス全員に話し始める。「親愛なるエマさんが、数ヶ月の欠席後、最終学期に向けて最高のコンディションで戻ってきました」(1枚目の写真)「でも、みなさん、くれぐれも気をつけて下さい。彼女のお医者さんも、ご両親も、要するに、みなさんがそう指摘しています」と言うと、「注意深く」とゆっくり言い、生徒達にもその言葉をくり返させる〔あとで分かるが、エマは嚢胞性線維症(日本では指定難病、遺伝性疾患、気管支炎や肺炎を繰り返す、平均生存期間は過去50年間で伸び、2017年誕生で約47歳となっているが、この映画では1975年の誕生なので寿命は約20年程度と短い。日本では患者数が全国で100人以下という稀な疾患だが、白人では約3300人に1人とかなり多い)〕〔問題は、この注意をジムが知らないということ。そういう事態を発生させるため、ジムを木に登らせるという “あり得ない状況” を創り出した〕。エマが、窓の外に目をやると、木に登って双眼鏡でこちらを見ている少年がいる(2枚目の写真)のでびっくりする〔そもそも、ジムは、なぜ双眼鏡など持って来たのだろう?〕。気付かれたと悟ったジムは、急いで木から降りる。エマは、前からクラスの一員だったので、一番後ろの空いた席、エマのことが好きなスペンサーという男子生徒の隣に座る。エマが、「木に登ってた子 見た?」と訊くが、誰も見ていない。すると、その当人が窓から入って来て窓際の空いた席に座ったので、それに気付いたクラスがざわめき、担任が 「私のクラスで何してるの?」と訊く。「校長先生が、6Bのクラスに行けって言ったから」。「窓から?」。「どこから入れとは、言わなかった」(3枚目の写真)。この言葉に、クラス全員が笑う。教師は 「静かに!」と笑うのを止めさせ、ジムには、「あなたもよ。分かった?」と叱る。

科学の授業が終わると、教師はジムとエマを部屋に残し、最後まで抵抗するスペンサーを追い出してドアを閉める。そして、ジムに向かって 「今度からは、みんなと同じように、ドアを使う。いいわね?」と言うと、ジムは 「はい、でも、火災や爆発の時には窓から逃げる必要があるかも」と言い、教室の隅に置いてある 「可燃性ガス」という赤いラベルの張られた容器を指す〔伏線〕。教師は、「ドアを通って」と強く指示する。そのあとで、1枚のポスターを2人に見せ、6月末に恒例の科学コンクールがあると言い(1枚目の写真、同じ物が、映画の冒頭のツリーハウスの壁に貼ってあった)、2人で組むように指示する。エマが、「私もう、スペンサーのチームにいます」と自分勝手な判断を言うと(2枚目の写真)、教師は、彼らは1月から始めているので、こんな遅くから加わっても意味がないと拒否。そして、「大丈夫、心配しないで」とエマを慰めると、2人に 「夕方2人で相談して、明日企画案を聴かせてもらえる?」と、決定事項として命じる。それを、教室のドアの鍵穴からスペンサーが覗いで見ている。そして、スペンサーの言う通りに動くプティ・パスカル〔図体が大きいのに、プティ(小さい)はジョーク?〕に、「あの野郎、僕らからエマを盗んでる」と 教師が決めたことなのに、ジムを罵る(3枚目の写真)〔スペンサーは最悪のワル。プティ・パスカルはまともな男の子〕

家に戻ったエマは、夕食を食べてから、1時間限定で母が車でジムの家まで送ってきて、道路の反対側でじっと待っている〔彼女は、エマのことを過敏なまでに心配している〕。エマが玄関のドアを開けると、家の中は片付けていないダンボール箱が山積み(1枚目の写真)。何度も「ジム」と呼ぶと、彼はキッチンで父の分を合わせた夕食の準備中。エマが、自分の企画案を描いたノートを見せる。表紙には、ハムスターの写真が貼ってある。ジムがざっと見ていると、そこに父が帰ってくる。ジムは、「頑張ってパスタ作ったよ」と報告すると、エマを自分の部屋に連れて行く。ジムの部屋にもダンボールはあったが、ある程度片付いていて、それを、何でも撮影するのが趣味のエマは、インスタントカメラ〔映画の冒頭のツリーハウスに置いてあった〕で棚の中の飾りをパチリ(2枚目の写真)。ジムは、8mm映写機をセットし、カーテンを閉めると、スタートさせる。内容は、1960年にアメリカ空軍のパイロット、ジョゼフ・キッティンジャーが31300mの高度からジャンプして、パラシュート降下の世界記録を樹立した時のニュース。その時の気球の名前が「エクセルシオIII」。8mmが終わると、ジムは、科学コンクール用に、キッティンジャーのエクセルシオ気球を再現すると言う〔独創性があるとは言い難い〕。エマは、ジムの父親のことを知らないので 「冗談でしょ」と言う。そこで、ジムは 父が宇宙に行く5人目の物理学者になることを、誇らしげに説明する。そして、エマに企画ノートを見せるが、その時、車のホーンが聞こえたので、エマは中身を見ずに急いで帰って行く。

翌日のお昼、2人はサンドイッチを食べている教師に企画案を持って行く。ジムが提出したノートの内容は、当然気球。エマは、勝手に決めたことにムッとしてジムを見る。教師は感心しながらページをめくっていくが、エマは、「これは冗談です。こんなのできません。危険過ぎます」と反対し、それを聞いた教師も、「ええ、あなたの言う通りね。気球が霊柩車になって欲しくないもの」と言う。教師は、ちょうどその時開いていたページに、“エマの企画ノートの表紙に貼ってあったハムスターを切り取り、気球に乗っているように見せた絵” のハムスターを指差すと、「ハムスターは乗せないで」と言う(2枚目の写真)〔教師は、この絵を見て、気球の企画が、ハムスター用の小型気球だと勘違いし、ハムスターを乗せることに反対した。つまり、気球そのものは反対しなかった。ハムスターの絵を最後に持ってきたのは、ジムの策略〕。エマは、絶望すると、外に出て行き、屋外机の上で自分たちの企画について話合っているスペンサーとプティ・パスカルの間に割り込むようにして座ると、頭を抱える。スペンサーが、「どうしたの?」と尋ねると(3枚目の写真)、「ひどいプロジェクト。できっこない」と呟く。「ハムスターの案は?」。「ジムは私を騙したわ」。「それで、何するの?」。「熱気球」〔実際は、ヘリウム気球なのに、ジムは熱気球だと嘘をついている〕。それを聞いたスペンサーは、ジムがドジを踏むかもしれないと思い、エマにスパイになって、写真を撮るよう勧める。

学校からの帰り、父が昨日 「明日の放課後に来てもいいぞ」と言っていたので、さっそく父の新しい勤務先に行ってみる。1枚目の写真は、階段を上がって、ガラスの研究部門に着いたところ。「クールだろ」。「うん」。ジムを見た女性が、「来週の打ち上げ一緒に見ない?」と勧める〔この日は、1986年4月6日のはず。しかし、“来週の打ち上げ” は 1986年1月28日のスペースシャトル、チャレンジャー号のこと。こうした、事実の歪曲は、1月末のベルギーの気候のことを考えると、仕方なかったのかも〕。そのあと、ジムは父の居室に連れて行かれる。ジムは、そこに、昔から見慣れていたイスを見つけ〔わざわざ前の職場から持ってきた〕、さっそく座ると、「パパ、なぜ ここでのミッションについて話せないの?」と訊くが、父は話してくれない。代わりに、ジムは、気球の案が通ったと言い、教師にも見せた企画案のノートを自慢たっぷりに見せる(2・3枚目の写真、矢印)。それをざっと見た父は、「重量対質量比の抵抗係数を忘れてるぞ」と指摘する〔意味不明〕。父は、間違いを指摘することで、ジムの質問を完全に忘れさせる。

恐らく翌日、エマはジムを もう使われていない納屋に連れて行く。そして 「気に入った?」と訊く。「すごくいいね。この納屋、使われてないってホント?」(1枚目の写真)。「そうよ。でも、言っておくけど、私、あなたの気球なんかに乗らないから」。「ちょっと待って、エマ、信じてよ…」。納屋に中に入ると、中の空気が悪かったのか、嚢胞性線維症の症状が出てしまい、エマが苦しそうに咳き始める(2枚目の写真)。しかし、ジムは、その話を聞き洩らしたので、コンクールに緊張したせいだと誤解し、見当違いのことを言うだけで、健康上の心配をぜんぜんしない。そして、紙で作った熱気球の模型を取り出し、バスケットに該当する部分に乗せたロウソク(?)に火を点ける。すると、上昇を始めたので、エマは、「ちゃんと飛んでる」と驚き、ジムは 「もちろん。ほらね、僕を信頼していいんだ」と自慢する。しかし、その直後、火が紙に燃え移り(3枚目の写真、矢印)、あっという間に落下。そこで初めて、ジムは真相を明かす。「まあ、心配しないで… 大丈夫。キッティンガーのミッションの再現では、火じゃなくてヘリウムを使うから」。

ジムは、バスケットの代わりになる物を探しに隣の使われなくなった納屋に行ってみる。すると、入口に金属パイプとタイヤだけで出来た小型のリヤカーのようなものが立て掛けてある(1枚目の写真)。その頃、元の納屋では、ジムが壁にピンで差し止めた “キッティンガーのミッションに必要な物のリスト” を、エマがインスタントカメラで撮って “スパイ” の役を果たしている。シャッターを押した瞬間、「エマ!」と大声で呼ぶ声がしたので、カメラがブレてしまう。本当はエマは走ってはいけないのに、ジムは、「来て。急いで。早く。走って」と無理強いする。エマも、自分の病気のことを言えばいいのに、黙っている。エマがやって来ると、「ご覧あれ、この幸運を」と自慢する。「何なの? あんな古い物?」。「そんなこと言わない。すごいよ。これで、僕らの座るトコができる。バスケット〔気球の籠のこと〕だよ。エマは地面に落ちていた “硬く厚い布でできた真っ黒な帽子型ヘルメット”〔映画の冒頭のツリーハウスに置いてあった〕を拾うと、「そうね。その車輪で空母だってできるものね」と、そんな重い物が飛ぶハズがないとバカにして納屋に戻る。次のシーンでは、どうやってジム一人で運んだかは分からないが、リヤカーが納屋の天井にある滑車に付けたロープで吊り下げられている(2枚目の写真、矢印は重量を測るために使う “石を詰めた袋”、エマが手に持っているのは拾ったヘルメット)。エマが、「何してるの?」と訊くと、バスケットの重さを測ってる。15キロ210グラムだ。重すぎる」と言う〔そんなに軽いのだろうか? もっと重そうに見えるが…〕〔そもそも、どうやって袋に詰めた石の重量を測ったのだろう?〕。「こんなの止めたら? 私のハムスター、すごくいいわよ」。「体重を減らせばいいんだ」。エマが呆れて外に出て行き、ヘルメットを自転車に乗せていると、後ろからこっそりハサミを持ったジムが忍び寄り(3枚目の写真)、エマの “縛った長い髪” を切り落とす〔こんな髪くらいで、「重すぎる」のが解決できるのか?〕。エマは激怒するが、ジムは 「科学者にとって1センチは1センチ…」と訳の分からないことを言うので、エマはジムの頬を引っ叩く〔この辺りのジムは最低。態度が横柄な上に、観ていて納得できないことが多過ぎる〕

翌朝、ロッカーの前にいるエマを見つけたジムは、「エマ、君に言いたいことがあるんだ」と声をかける(1枚目の写真)。てっきり謝罪の言葉が聞けると思ったエマは、「聞いてるわ」と言うが、ジムが言ったことは、バスケットのボルトを一部外したので、重量の問題が解決したことだけ〔自分のことしか考えない〕。エマが呆れていると、ジムは、エマのロッカーの扉の裏に一杯貼ってある写真を見て、「すごく写真あるね、見ていい?」と訊く。エマはロッカーの中から写真箱〔映画の冒頭のツリーハウスに置いてあった〕を取り出すと、校舎の外の階段まで行き、分厚い写真の束をジムに渡し、1枚ずつ簡単に説明する。中に、怖い顔の男が映っていて、植物園の園長〔しばらく後で登場する〕と教えられる。そして、その次にあったのが、植物園の温室の中でいとこのパム〔かなり後で登場する〕を撮ったもの。しかし、ジムが注目したのは、パムの横に映っている複数の風船(2枚目の写真、矢印)。ジムはパムの身長を訊き、エマが 「私より少し高い」と答えると、「風船の高さは2メートル。中にはヘリウムが入ってる」と言う〔風船は一部しか映っておらず、パムとの距離も不明なので、こんな推測は不可能〕。そこに、スペンサーとプティ・パスカルがやって来て、2人の両側に座る。真面目なプティ・パスが、「君の企画、進んでるか?」と訊くと、ジムは、「みんなより遅れて始めたけど、うまくいってる」と答える。すると意地悪なスペンサーが、「僕らに勝てるとホントに思ってんのか?」と訊く。ジムは、「1961年4月11日、人々は宇宙に行くのは不可能だと思ってた」と変なことを言う。「だから何だ?」。「次の日、ガガーリンが行った」。「それがどうした?」。「だから、僕とパパは見せてやるんだ、バカどもに…」。「バカども? 誰のことだ?」。「一般論だよ」。「バカどもって、誰なんだ?」。ジムがどう答えたのかは分からないが、次のシーンでは校長が騒ぎに駆け付けると、ジムとスペンサーが地面で取っ組み合いのケンカをしていたので、2人を右手と左手を使って引き離す。校長が、「またか。いつも君だ」と言うので、スペンサーの “たちの悪さ” がよく分かる。校長は、スペンサーに 「これからどうなるか知ってるな? 君は常連さんだから」と言うと、罰として、嫌がる2人を無理矢理キスさせる。

スペースシャトル、チャレンジャー号の打ち上げの日。ジムは、父の研究施設に行き、所員たちと一緒にTVで実況中継を見ている。そして、不幸な爆発〔打ち上げ73秒後に爆発し7名全員死亡〕が起きると、父は手で口を覆ってしまう(1枚目の写真)。父は、がっかりしたジムを自分の研究室に連れて行き、パソコンでロケット打ち上げのゲームを立ち上げると、ジムを残して出て行く。すると、すぐ横にある通信装置がブザーを鳴らし、通信が紙に打ち出されて出てくる〔マイクロソフトのメールサービスが始まったのは1988年〕。ジムは、それが、父の宇宙ミッションに関する極秘の連絡に違いないと思い、紙を破り取って読み始める(2枚目の写真)。そこには、「やあ、グラーム。夕方の惨事を契機に、私もプログラムから降りる決心をした。デヴィッドは、私が君と同じように、このミッションを放棄したことに激怒している。彼は、君の決断を理解しなかったが、私の決断も受け入れてくれない。このような結末になってしまい、とても残念だ。よかったら電話をくれ。友情を込めて。フェリックス」と、ジムにとって極めて衝撃的なことが書かれていた(3枚目の写真)。父は、もう宇宙に行くのを止めていた。ジムがあれほど誇りに思っていたのに、何一つ話してくれず、ジムを勝手にこんな辺ぴな地まで連れて来た… ジムは大事にとっておいた新聞記事の切り抜きをバッグから取り出し、そこに、フェリックス、デヴィッド、グラームの名前が書いてあることを確認する(4枚目の写真)。

すると、父が部屋に戻って来るのが見えたので、急いで記事をバッグに戻す。父が 「仕事、終わったぞ」と声をかけると、ジムは手を顔に当て泣き始める。父は、自分の嘘がバレたとは知らないので、てっきりチャレンジャー号の爆発を見て泣いているのだと勘違いし、抱きしめる(1枚目の写真)。翌日、エマがロッカーの前を通ると、中から泣いている音がする。変だと思って扉をノックすると、扉が開き、制服の黄色のネクタイを頭に巻き付けたジムが顔を出す。エマは、半ば呆れて、「こんなトコに、隠れて? あなた、普通にできないの? どうしたのよ?」と訊く。ジムは、「パパがミッションから逃げたんだ」と言うと(2枚目の写真)、通信文をエマに渡して扉を閉める。それ以後は、扉の中から声が聞こえる。「パパはミッションを辞退してた。数ヶ月前からだ〔“数ヶ月”? そんな情報どこで(通信文には書いてなかった)? 引っ越したのが “辞めた時” だと思うのが普通だが、それなら1週間と少し前でしかない〕。天文台は偽装だった」。「あなたのパパは黙ってたの?」。「だから、僕が天文台に行った時、訊いても黙ってたんだ。グールドマンは決してあきらめないということを パパに教えてやる」(3枚目の写真、矢印は通信文)。話の内容は、ここから、内容が、ジムのミッションに変わる。「今夜、僕たちはヘリウムを手に入れる」。エマは、「植物園のヘリウムのこと?」と驚いて訊く。「その通り。閉園後に侵入するんだ」。エマが反対しても、ジムは聞く耳を持たない。

ジムは、自分一人でやればいいのに、「ママに見つかったら、殺されちゃう」と言うエマを連れて温室に向かって走る(1枚目の写真)〔閉園なのに明るいが、それは、4月中旬のベルギーの日没が午後8時半を過ぎているから〕。ジムは、地下室への入口の鍵を壊して中に入って行き、途中で園長が趣味で飼っている蛇や巨大グモの部屋を通り温室内に侵入する。しかし、途中で立てた音が園長の不信感を招き、見回りに来たので、2人は大きな石の陰に隠れるが、そこになぜか、地下室から逃げ出した巨大な蛇がやってくる(2枚目の写真、矢印)。エマは必死になって悲鳴を上げないようにし、蛇は2人を通り過ぎて通路に出て行き、園長は、これが不審な音の原因だと思い、蛇を抱き上げると去って行く。顔を上げたエマは、すぐ近くの葉陰の棚にヘリウムの缶が並んで置いてあるのに気付き、それを知らされたジムは、“やった” と音を立てずに喜ぶ(3枚目の写真)。一方、スペンサーがプティ・パスカルに、他のチームの悪口を言っていると、そこにエマがやって来る。スペンサーは、エマをすげなく迎えるが、この企画の実質的な作成者のプティ・パスカルは、明るくエマを迎える。スペンサーに、スパイのことを訊かれたエマが、“キッティンガーのミッションに必要な物のリスト” を撮った時の写真を渡すと、ブレてピンボケの写真なので、「ぼやけてて、なんにも分からない」と批判する。エマが 「それが、私にできたベストよ」と反論すると、スペンサーは 「なんにもない。ボケボケじゃないか」とバカにし、写真をテーブルに投げ捨てる。そして、「いいか? もし、君が僕らと一緒にいたいんなら、あいつのやってることを邪魔しろよ」と言うと、エマは、「もめごとはイヤなの」と断り、“フン” という顔で写真を取り戻すと、さっさと出て行く。

次の場面は、納屋の中。ジムは携帯用の水タンク(?)をなぜかロープでぶら下げ、エマは温室から盗んできたヘリウムの缶を数個運び入れている〔円筒形の金属容器なので、自転車の荷台に転がり落ちないように縛って1個ずつ運んだのだろうか?〕。エマが、運び込んだ量で充分なのか尋ねると、ジムは、液体ヘリウムは気体になると700倍〔正確〕の体積になるから十分だと答える。エマは、運び終えるとワラの山の上に座り込み、スペンサーに会った時のことを話し、「2人が “フロッピーブック” を完成させれば、有力な候補になるわ」と言う(1枚目の写真、左の矢印はエマ、右の矢印はヘリウムの缶)〔フロッピーブックは、フロッピーディスクに、映画を観た時の感想を書き入れるもの。映画の感想に特化したフェイスブックの原子版のようなもの〕〔CD-RWが登場するのは1997年〕。それを、スペンサーとプティ・パスカルが、納屋の板の裂け目から盗み見していて、プティ・パスカルが、「エマは、僕らをスパイしてたんだ」と小声で言い、スペンサーに「静かにしてろ」と叱られる。ジムは、エマのバッグに入っている物のことを訊き、エマは中からギターを取り出し、「去年、お小遣いで買ったの」と言う。「何か弾いてくれる?」。エマは、弾きながら歌い、終わるとジムが拍手する(2枚目の写真、矢印はインスタントカメラ)。エマを奪われて頭にきたスペンサーは、急に凶暴になり、「あいつらを吹っ飛ばしてやる」とブツブツ(3枚目の写真)。その直前に、プティ・パスカルが小さなスイーツを食べ、スイーツの包装紙を捨てるシーンがある〔あとで、2人がいた証拠になる〕

別の日〔服が違う〕、ジムはエマを連れて自転車でパラシュートがうまく開くかどうかの実験に出かける。場所が決まり、ジムがロープの準備をしていると、エマが 「ちょっと聞いてもいい?」と言い、「先生が私たちを一緒にした時、どう思った?」と訊く。ジムは、「君の “雀卵斑(ephelide)” のこと考えてた」と専門用語を入れて答える。当然、エマには理解できなかったので、ジムは、「ほら、君のそばかす」と言い直し、「サイフ、リゲル、ベテルギウス、ベラトリックス、ミンタカ、アルニラム、そして、アルニタク」と、これも理解できない単語を並べ、そう言いながら、自転車のバックミラーに、小さなハケで白い点を付けて行く(1枚目の写真)。そして、「それらを合わせると、君にはオリオン座があるんだ」と言う(2枚目の写真)〔先ほどの単語は、オリオン座のκ星、β星、α星、γ星、δ星、ε星、ζ星の正式名称〕。エマはミラーを受け取ると、それで自分の顔を見て、顔のそばかすと白い点が何となく一致するので面白いと思う(3枚目の写真)〔あとで、エマが利用する〕

そして、いよいよ、パラシュートの実験。ジムは、シャツの上からジャンパーを着て、頭に昔の空挺部隊の兵士のような革製の頭巾を被り、パラシュートを背負い、大きなゴムをロープで引っ張って固定したところに座る(1枚目の写真)〔幅広の長いゴムの入手はかなり困難だと思うが…〕。エマが 「これ何?」と訊くと、ジムは 「成層圏への飛行、安全な帰還」と、また自己満足的な返事をし(2枚目の写真)、不満なエマが写真を撮ると、「パラシュートのテスト」と説明する。エマは、「カタパルト〔投石器〕ね?」と訊き、「肯定的」という返事。そして、「このパラシュート、パパが使えるんなら、僕たちにも使えるハズだ」〔つまり、父が将来の宇宙飛行のために持っていたものを拝借したということ? もし、そんなことがあり得るとしても、2個もあるだろうか?〕と、説明を加える。そして、自分が飛ぶよりは、エマに飛ばせて、軌道を見ていたいと無茶なことを言い始めると、急にロープがほどけて、ジムは 空に向かって飛ばされる(3枚目の写真、矢印)。ジムは、とっさのことに、パラシュートを開くこともできず、着地地点として選んでおいた池に落下して ずぶ濡れになる〔つまり、パラシュートのテストは失敗したことになるが、映画では、再テストのシーンはない〕

一方、いつの日かは分からないが、2人が留守の時、スペンサーとプティ・パスカルは、教室に置いてあった 「可燃性ガス」と書かれた赤いラベルの張られた容器とそっくりな缶を持って納屋まで行く。威張るだけで頭の良くないスペンサーは、納屋を一周して来て、「力いっぱい引っ張ったけど、びくともしなかった」と言い、納屋の壁を乗り越えて中に入ろうと、プティ・パスカルに 「足を上がらせろ」と命じる。素直なプティ・パスカルは、両手を組んで足場を作ると、スペンサーは、プティ・パスカルの両手に片足を入れ、プティ・パスカルの肩をつかむと、反対側の足を肩にのせ、「押せ」と言う。プティ・パスカルが両手を持ち上げると、スペンサーは壁板のてっぺんに手をかける(1枚目の写真)。あとは、向きを変えたプティ・パスカルが背伸びして足を持ち上げ、スペンサーは壁板の上まで行くが、板一枚の厚さしかないので、そのまま向こう側に落下する。気を失ったスペンサーが目を開けると、扉が開いていて、「可燃性ガス」の容器をかついだプティ・パスカルが目の前にいるので、「何してる? どうやって入った?」と言いながら立ち上がる。プティ・パスカルは、「もうちょっと強く引っ張らないと」と言う(2枚目の写真)。面目をなくしたと思ったスペンサーは、「可燃性ガス」の容器をひったくると、「何にも触れるなよ」と命じて、中に歩いて行き、その容器をヘリウムの缶の隣に置く(3枚目の写真、矢印、左端の黄色の枠内は、“教室に置いてあった容器”)〔「可燃性ガス」の容器と、ヘリウムの缶は、「可燃性ガス」の赤いラベル以外は全く同じであることが分かる。①一体この容器には何が入っているのか? ②内容物が違うのに、2つの缶は、上部の紺色の金具まで同一だが、なぜ? という疑問が沸く〕〔因みに、写真の左端に参考に入れた “教室に置いてあった容器” と比べると、スペンサーが運び込んだ容器は、教室に置いてあったものではない。それは、「可燃性ガス」のラベルの貼ってある場所が微妙にズレているから。本当に違う物なのか? それとも小道具係のミスなのか?〕。スペンサーが、黒いビニールテープを持ち出して何かをしようとしていると、カメラは動き、プティ・パスカルが台の上に置いてあったルービックキューブ〔映画の冒頭のツリーハウスに置いてあった〕を手に持って動かし始める〔伏線〕

エマの母が、娘の行動を心配して、ジムの父に会いに来る。その時、ジムとエマは家の地下室(?)に置いてある巨大な冷凍庫の中にいる。ジムは、エマに、「宇宙て すっごく寒いんだ。高度1万メートルでマイナス60℃くらい〔多くのサイトにはマイナス40℃、もしくは、50℃と書かれている〕」と説明する。エマは、「もっとここにいるの?」と、寒さに凍えながら訊く。ジムは、腕時計を見て、「今、33分16秒。僕らの飛行時間は約40分だから、あともうちょっと」と言う(1枚目の写真)。エマは了解し、「あなたのママ、何してるの? 一度も会ったことないわ」と訊く。ジムはなぜか、「この2ヶ月で、何回パパと会った? 2回だよ」と言い、母の死を隠している〔もう6月になったことが分かる〕。エマは、ここで咳き始め、耐えられなくなって蓋を開ける(2枚目の写真)。

科学コンクールの前日、2人はリヤカーを利用したイスの上に並んで座り、屋根は開けずに、1メートルだけ上昇するテストを始めようとしている(1枚目の写真)〔2人の上には、ヘリウムで膨らんだ気球が浮いている〕。納屋の外では、スペンサーが望遠鏡付きのおもちゃの銃で、「可燃性ガス」の容器の紺色の金具に黒いテープで縛り付けた側薬シール〔マッチ箱の横にあるこげ茶色の擦る部分の大きなもの〕の端にある導火線の先端を狙う(2枚目の写真)。2度失敗した後、3度目に、大きさ1mmほどの鉄球が側薬シールの上を高速で滑って発火させて導火線に引火し、それが容器まで燃えて行くと、大爆発が起きる(3枚目の写真)。スペンサーは それを見て逃げ出し、プティ・パスカルは、「キレたんか? あれが 『怖がらせるだけ』なんか? 完全に狂ってる」と批判する(4枚目の写真)〔ヘリウムは非可燃性ガスなので、爆発したのは、スペンサーが持ち込んだ可燃性ガスの容器だけ〕

2人は全身ススで黒くなり、最初に気がついたジムが、エマに 「大丈夫?」と呼びかける(1枚目の写真)。声の返事はなかったが、ジムが助け起こすと、エマは何とか立ち上がる。次のシーンでは、ジムに支えられ、フラフラしながら野道を歩いて行くと、正面に病院が見えてくる。2人の姿に気が付いた看護婦が2人走って来て、エマを受け取り、病院に向かう(2枚目の写真)〔同じくらい黒くてケガをしているように見えても、なぜかジムは放置される〕。そして、恐らく数時間後、ジムがエマの病室の前で耳をドアに近づけて聴いている。病室の中では、女医が、恐らくエマの両親の質問に対して、「ヘリウムに毒性はありません」と答えている。父親が 「じゃあ、エマが気を失ったのは煙を吸い込んだからですか?」と質問すると、女医は 「嚢胞性繊維症で肺が弱っています」と答える〔映画では、ここで初めて病名が明らかにされる〕。この言葉に、エマが口を挟む。「気分はずっと良くなりました」。しかし、母親が 指で発言を止めさせる。女医は 「このまま数日間観察したいと思います」と言うと、病室から出て行く。一家3人だけになると、エマは 「コンクールは明日だわ」と 数日間の入院に反対する。母親は 「もうコンクールはナシ。彼にも会わない。あなたは病気なのよ、エマ。あの子の育て方を見ると、母親の死は言い訳にならないわね」と言う(3枚目の写真)。

この言葉にエマはびっくりする。「彼のママは死んだの?」。「知らなかったの? あの子が嘘つきだという証拠ね」。「ママは、どうやって知ったの?」。「昨夜、彼のパパが全部話してくれたわ。彼はママと一緒になるために あの気球を作ったのよ。あの子は狂ってる」〔この “理由” も映画の中で初めて出てくるが、ジムとその “自分のことしか考えない” 父の関係からして、あり得ないと思うが…〕。その言葉を聞いて、今度は、ドアの外で聞いていたジムが突然部屋に入って来て、「僕は、狂ってなんかない! エマ、そう言ってよ」と主張する(1枚目の写真)。それに対し、エマの母親は、「あなた、よく こんなことができたわね?」と叱る。「僕、知らなかったから…」。エマは、ジムが嘘をついていたのにショックを受け、「ジム、出て行って」と言い、母親は、「聞こえた? 出てお行き!」と怒鳴り付ける(2枚目の写真)。ジムがうつむいて廊下を歩いていると、スペンサーとプティ・パスカルとすれ違う。スペンサーは、それがジムだと気付くと、プティ・パスカルに 「おい、あれ見ろよ。トラブルメーカーじゃないか」と言う。スペンサーが悪の張本人だと知っているプティ・パスカルは、スペンサーの肩に手を置き、「エマに会いに行こう」と、バカな行為を止めさせようとするが、スペンサーはその手を払い除けると、「何言ってるんか分かんないぞ。口ん中はいつもお菓子でいっぱいだ」とプティ・パスカルを侮辱する。その言葉にピンと来たジムは、振り返ると、納屋で拾ったスイーツの包装紙を数枚取り出し、「君たちだな! 納屋の裏に、お菓子の紙がいっぱい落ちてたぞ」と言って、見せる(3枚目の写真)。そして、次にルービックキューブを取り出すと、「こんな風にぐちゃぐちゃにしたこともない」と糾弾する。それに対し、スペンサーは 「トラブルメーカーの言うことなんか、誰が信じる?」と、罪を認める発言をし、ジムは 「僕が トラブルメーカーだと? 彼女を殺しかけたのは そっちじゃないか!」と怒鳴りつける。スペンサーは 「あのバカげた気球で、確実に彼女を殺してたさ」と言うと、ジムの腹部を殴り、ジムは痛くて廊下に膝を付く。

ジムが家に帰り、体をきれいに洗って自分の部屋にいると、そこに父が入って来て、「一体どうなってる?」と問い詰める。「何でもないよ」。「何でもだと? エマは病院。あの火災。それが、何でもないと言うのか?」。「あれは、破壊工作だったんだ!」。「なら、本物の熱気球を作るのはどうなんだ?」。「縮尺模型だなんて、一度も言ってない!」(1枚目の写真)。「あんな病気のエマを危険にさらすなんて!」。「病気だなんて知らなかった!」。「知ってたら、どう変わってた?!」。この最後の言葉に怒ったジムは、父の制止を振り切って、ツリーハウスに走って行く。そこで、父もツリーハウスに向かう(2枚目の写真)あらすじの最初の節の “イルミネーションで飾られたツリーハウス” の写真と比べれば、両者が同一だと分かる〕。父が梯子を登って行くと、中ではジムがイスに座って企画ノートに何か書いている。父は、ジムの横にある低いイスに座ると、「エマが入院したことで、お前が悲しんだり怒ったりしているのは分かる」と話しかけるが、ジムは、「何も分かっちゃいない」と批判する。「なら、正確に、何が問題なんだ」。ジムは、フェリックスからの通信文を父に渡す(3枚目の写真)。

通信文を読んだ父は、「3年前、お前のママが亡くなった時、危険を冒すことができなくなった。だからだ」と理由を言う〔宇宙ミッションで死んだらジムの世話をする者がいなくなる〕。「なら、なぜそう言ってくれなかったの?」(1枚目の写真)「パパは全部隠してきた。ママの時もそうだった。ある日、彼女はここにいて、次の日にはいなくなり、それで終り」。「お前には、ママが病気で、病気は深刻だと話してある! だが、知るべきじゃないことだってあるんだ。お前が あれ以上苦しむのを見たくなかった」(2枚目の写真)。そして、床に転がっていたルービックキューブを拾うと、「4300京弱の異なる配置がある」と言い〔実際は、4325京2003兆2744億8985万6000通りなので、4300京強〕〔“配置” とは、キューブを一旦分解して色を揃え直した時の色の配置の総数〕、さらに、「正解はひとつしかない」と続け〔この意味は不明。揃え直す際の最小の手数は20だが、解法は幾らでもある〕、「時々、人生も同じだと思う。最善を尽くすしかない」と、言いたいことにつなげる。それに対し、ジムは、「じゃあ、惨めで みすぼらしい天文台で楽しんでりゃいい。それがパパの最善の解決策なら!」と怒鳴る(3枚目の写真)。父は立ち上がると、「お前のために断念したんだ! お前のために、ここに引っ越した! すべてを捨てて、新たなスタートを切るためだ!」と怒鳴ると、梯子を降りてツリーハウスから立ち去る。ジムに残されたのは、泣くことだけ。

その日の夜、病室から両親が出て行くと、間仕切りカーテンで仕切られた隣のベッドにいた親友のパムが、カーテンを開けてベッドに入ってくる〔あまりに、偶然の一致過ぎる〕。パムは、「その子のこと もっと知りたいな。事態は良くなるわ、いい?」と声をかける。エマは 「彼はただの嘘つきよ」と言うが、パムは 「真実の女教皇である彼女は言うわ、彼に伝言を送りなさいって」と、自論を曲げない。「パム、親に見つかったら、私、殺されちゃう」。「そんなこと気にしない。伝言送って」(1枚目の写真)。そして、翌朝、父がジムの部屋に “仲直りの手作り朝食” を持って行くと、ジムの姿はない。その頃、ジムは納屋にいた。すると、そこに1人の女生徒がエンジン付き自転車に乗ってやって来ると、封筒を渡して、「いとこの友だちからよ」と言う。ジムは封筒から取り出した紙には(2枚目の写真、矢印)、「ミアプラシダス(りゅうこつ座のβ星)、アルドラ(おおいぬ座のη星)、カノープス(りゅうこつ座のα星)、ムルジム(おおいぬ座のβ星)、アテナ(存在しない名前)、ワサット(ふたご座のδ星)、ドゥベ(おおくま座のα星)、ワサット(2度目)、キャラ(りょうけん座のβ星)、クルハ(ケフェウス座のξ星)、シリウス(おおいぬ座のα星)、アセルス(かに座のδ星)」と書いてある〔エマが、以前のそばかすの配置をオリオン座の星の名前で言われた時のことを覚えていてやったというストーリーなのだろうが、これを書くには、正確な星の位置を知った上で、その名前を知る必要があり、病室にいてそんなことをするのは不可能〕。ジムは、全天星図を見ながら頭の中でそれらの星を並べてつなげると、3枚目の写真のようになり、エマが自分に助けを求めていることが分かる〔これらの星々は、この写真のようには並んでいない。そもそも、違う名前の星座が多く、お互いうんと離れているので、全くのインチキ〕

ジムは、病院に直行せず、ヘリウムの缶を手に入れようと温室に行く。そして、地下室から中に入ろうとして、園長に捕まり、部屋まで連れて行かれる。最初は、園長に向かい合って座らされたジムだが、急に立ち上がると、「そうだよ、僕、あなたのヘリウム盗んだ。だから何? 僕、もっと必要なんだ」と言う(1枚目の写真)。それを聞いた園長は、笑い出す。「面白くなんかないよ。コンクールは今日なんだ! 銀河系間の大惨事だよ!」(2枚目の写真)。すると、園長は笑うのをやめて立ち上がる。すると、圧倒的に背が高いので、ジムからは見上げる形になる。そこで、ジムはイスに上がり、見下ろす形にすると、「何ヶ月もかけて準備したのに、あのキチガイ・スペンサーがぐちゃぐちゃにしちゃった」と訴える。そして、イスから飛び降りると、いきなり園長の胸を拳で連続して叩きながら、「エマが病気だってことも知らなかった」と言う。園長は、ジムをイスに座らせると、「君の話は一言も理解できなかった。何一つ。だが、人生では、転んでもケツを上げて戦いに戻るものだ」と、諭すように言う。ジムは、「で、ヘリウムは? 余っているものない?」と訊く。「全部 盗んだんじゃないのか?」。「ううん、そんなことないよ」。「ここから出て行くんだ。だが、あの娘っ子にはちゃんと謝るんだぞ」(3枚目の写真)〔これだけの言葉と、落胆したジムの表情からは、ヘリウムはもらえなかったと解釈するしかない〕

ジムは、次に病院に行き、エマの部屋の窓を叩く。ジムに朝、伝言をしてもらったのに、ちっとも来てくれないので泣いていたエマは、その音を聞いて、大喜びで窓を開けて迎え入れる(1枚目の写真)。2人は手をつないで廊下を歩いていくと、709号室の前でエマが立ち止る。ジムは、横の長椅子に上がって、ドアの上のガラスのランマから中を覗くと、パムがベッドに横たわって苦しんでいる〔そんなエマが、昨夜、なぜエマのベッドの隣にいたのか? この映画は、不可思議な謎だらけ〕。エマはジムに、「パムよ。ポラロイド写真見たでしょ」と言う。「彼女どうしたの?」。「隠していてごめんなさい」〔「隠して」って、何を?〕。「僕にできることある?」。エマは、円筒型で太陽の動きに合わせて回転する家を描いた紙を渡す。そして、常に窓から太陽の光が射し込む家が理想、あたかも時間が止まっているみたいだからと話す。ジムは、“回転する家” から、”時間” に話題を勝手に変え、時間を止めることはできないと言い、それに対しエマは、「それができないなら、私をここから出して」と言う(2枚目の写真)〔何と、無意味な会話だろう。“パム→回転する家→時間→連れ出せ”。全然関係のない話を無理矢理並べて、結局、連れ出せに至る。それなら、病室で再会した時にそう頼んでいれば、遥かにすっきりしたのに〕。このあと、父が、学校で開催中の科学コンクールに行き、ジムを探す姿が映る。病室に戻ったエマは、服を着て出て来るが、その服は、爆発に遭った時に着ていた服。病院に昨日来た時は 煤で真っ黒だったのに、いつ、誰が、どうやって、こんな短時間できれいにしたのだろう〔これも謎〕。2人が廊下を歩いていると、看護婦に見咎められ(3枚目の写真)、走って逃げ出す。2人は階段室に入って屋上に行き、看護婦が追ってくると、2階の屋上から “枯葉の山” に向かって飛び降りる(4枚目の写真)。

次に、科学コンクールで、スペンサーとプティ・パスカルが発表をしている場面がある。そのあと、ジムを探している父のところに、病院から連絡を受けたエマの母がやって来て、娘をどこにやったかと詰め寄る〔エマの母は、なぜコンクールに来たのか? 昨日、エマがここに来たがっていたから?〕。父が、自分もジムを探し続けていると反駁すると、プティ・パスカルが 「2人なら納屋にいます」と言う〔それは正解なのだが、なぜ、今、2人が納屋にいることが、ずっとコンクールにいるプティ・パスカルに分かったのだろう。これも謎〕。ジムの父と、エマの両親、そして校長と担任は、プティ・パスカルの先導で納屋に向かう。一方、納屋では、ジムが、エマをびっくりさせようと、手で目を覆わせて入口から中に入る。そして、目を開けたエマが見たものは 、たくさんの風船で吊り上げられた “リヤカーを利用したイス” (1枚目の写真、矢印はジム)〔ということは、ジムは、温室にあった風船を全部もらってきたことになる。2つ前の節で、「ヘリウムはもらえなかったと解釈するしかない」と書いたが、それは、この場面の異常さを認識してもらうため。なぜ、園長は気を変え、風船をプレゼントしたのだろう? そして、リヤカーをも空に運ぶ力のある風船を、ジムはどうやってここまで運んだのだろう? あり得ない謎が多過ぎる!〕〔もう1つ。先ほどの写真では、納屋の中が非常にきれいで、木の板は、木の色をしている。ワラの色も黄色い。爆発の後、煤で真っ黒になったハズなのに。なぜこんなにきれいなんだろう?〕。エマが 「植物園の風船?」と訊くと、ジムは 「そう、長い話なんだ」と言う〔こんなずるい謎解きはない〕。そして、ジムがロープを巻いて、納屋の屋根を開いていく(2枚目の写真)〔屋根の一部を可動式に変えるような大工事が、子供にできるのだろうか?〕〔もっと言えば、前日に爆破された時、納屋の屋根は切れ目なく連続していて、可動式ではなかった(別の納屋を使って爆破シーンを撮影したのなら、辻褄が合うような構造にすべきだった)〕。ジムは飛行服に着替え、エマは納屋に置いてあったヘルメットを被り、並んでイスに座る。そして、「なぜ、あなたのママについて嘘ついたの?」と尋ねる。ジムは、「ママはすごく具合が悪かった… それを見たくなかったと思うんだ…」と答える(3枚目の)〔母が生きているかのような嘘をついた理由になっていない〕。その時、遠くの方から、「エマ!」と叫ぶ女性の声が聞こえてきたので、ジムはイスを降り、外の様子を見に行く。そして、プティ・パスカルを先頭に6人がこちらに向かって来るのが見える。ジムはイスに戻ると、「終わりだ。みんなが来る」と言い、エマに病院に戻るよう勧める。戻りたくないエマは、「いいわ。終わりね」と言い、さらに、「でも、まずキスして」と言うと、いきなりジムにキスし、その間に腕を伸ばして、ロープの先端の木の輪を引き(3枚目の写真、左の矢印はキスするエマ、右の矢印は木の輪を引く方向)、イスを納屋から解き放つ。ジムは、「エマ、君、完全に狂ってる」と言うが、停める手立てはないので、風船を使った気球は急速に上昇を始める。プティ・パスカルが納屋の見える場所まで来て5人を先に行かせると、最後尾の担任から、「どうして、このこと知ってるの?」と詰問され、「僕たち跡をつけたから」と白状する。

気球が木の高さを越えた時、エマが 「ジム、納屋を見て」と言ってうつむいた時、頭からヘルメットが落ち、ちょうど納屋の扉を開けて中に入ったジムの父に前に落ちる。空を見上げた父は、「信じられないよ、ジム」と感嘆する。気球は森の上に出てまっすぐ上昇していく(1枚目の写真)。父は、納屋の中に貼ってある色々な紙を見て回る〔どれも、真っ白できれいで、しかも、簡単に留めてあるだけなのに、爆発で吹き飛ばされてもいない〕。次に気球が映った時には、高度は数百メートルに達している。エマは学校のコンクール会場に気付き、ジムが双眼鏡で見てみると、「巨大双眼鏡」と書かれた展示物を少女が見ている。2人は下に向かって叫ぶ。声が届きはしなかったが、双眼鏡を覗いた少女が、周りの人々に、「ジムとエマ! 上にいる!」と叫び、映像は、双眼鏡から見た2人の姿を正面に捉えたものとなる(2枚目の写真)。上と下で、手を振り合う。次のシーンでは、気球は雲の上に出て、下からは見えなくなる。ジムは 「気になってたんだけど… どうしてキスしたの?」とエマに訊く。エマは、逆に 「あなた、女の子とキスしたことないの?」と訊き返し、ジムは 「どうして、僕が?」と、さらに尋ねる(3枚目の写真)。

一方、納屋の中では、エマの母が ジムの父に 「知らなかったとは言わせませんよ」と喰ってかかると、父が手にしていた “ジムの描いた2人の飛行時の姿” の紙をひったくって破り捨てる。父は、その大人気ない態度に腹を立て、「2人を信頼する以外に、私たちに何ができます?!」と反論する。エマの母は、如何にもバカにしたように、「あなたの有名な理論ね。結果を見なさいよ。あなたの息子がいなければ、エマはこんなことしなかった」と批判を続ける(1枚目の写真)。それに対し、いつもは静観するだけでほとんど口をきかないエマの父が、「黙れ!」と一喝し、「エマがあそこにいるのは君のせいだ! 彼女を追い詰めたんだ!」と、鋭く妻を批判する(2枚目の写真)。「でも、エマは病気なのよ」。「エマはもう耐えられんかった」。ここで、担任が 「静かに!」と言い、聞こえてくる小さな雑音を頼りにして、片隅に置いてあった無線機を見つける。それは、もともと父のものなので、父は 4人から離れると、聞こえてくる音に耳を澄ます。すると、2人の話し声が聞こえてきたので、「聞こえますよ」とエマの両親に声をかけ、全員が無線機の周りに集まる(3枚目の写真)。

一方、気球では、ジムが 「エマ、高度計」と言い、「もう、戻らないと。行こう」と声を掛ける。その時に、映るのが1枚目の写真。これは、気圧計と高度計が合体したもので、中央の白い部分が気圧、周囲の黒い部分が高度を示している。しかし、赤い針は真上を指している〔この種の計器は、盤面の数値の最大値が測定限界なので、この高度計は4500mが最大値。針が真上を指しているのは、①この撮影が地上でされた、②気球が測定限界を超えた、の2通りしかない。①だとすれば恥ずかしいミス、②だと、万事科学的なジムにしては奇妙で納得できない〕。ジムの言葉を聞いたエマは、「ジム、私ここに残る」と言い出す。ジムは、「怖がらないで。簡単だよ。君を置いてなんかいけない」と言うが、エマは、「私を失いたくないなら、ここに置いていって。私には何かが起きたの。あなたのおかげよ。初めての自由。みんな、私のことを壊れやすいとしか見ていない。そうしなかったのは、あなただけ」。それを聞いたエマの母は、「ジム、お願い、エマを降りさせて」と言うが、気球の中の無線機の着信がOFFになっている〔あるいは、着信音が最小化されている〕ので、母の声は気球に届かない。エマは、さらに続ける。「一度でいいから、私の言うことを聞いて欲しい。一度でいいから、自分で決断したい」。それを聞いて1人で降りることしたジムは、無線機の着信をONに変え〔あるいは、着信音を上げ〕(2枚目の写真、矢印)、「父との再会を願って、ジム・グールドマンは神の手に命を委ねる」と言うと、飛び降りる(3枚目の写真)〔着信を変更したことから、ジムは 自分には無理なので、両親にエマを説得してもらおうと決断したと解釈するのが妥当であろう〕

ジムの父は、息子が飛び降りたと知ると、無線機をエマの父に渡し、走って納屋から外に出る。すると、外にいたプティ・パスカルが、「見て」と言って、落ちてくる小さな点を指す〔そんなに早く見えるということは、高高度ではない〕。父は、森の中を全速で走り、ジムはパラシュートを開いて減速するが、森の中に突っ込み、枝の間を落ちる時に足を捻るかケガをしてしまう〔後で、片方の足を引きずって歩いているので〕。父は、宙吊りになったジムを抱きしめると(1枚目の写真)、「大丈夫か? 悪かった。真実を隠すべきじゃなかった」と謝る。ジムが 「どうやって見つけたの?」と訊くと、「納屋にお前の無線機があった。声は聞こえたが、話すことができなかった」と話す。それを聞いたジムは、予定通りなので、「完璧、納屋に連れてって」と頼む(2枚目の写真)。納屋の方では、プティ・パスカルが中に入って来て、「ジムとお父さんが来ます」と伝える。それを聞いた校長と担任が一緒に外に出て行く。両親は、エマが高空でギターを弾きながら歌っているのを聴いている。ジムと父が納屋に近づくと、パトカーが到着し、降りた警官が走ってくる。後ろから、スペンサーが、「彼だよ、逮捕して!」と叫ぶ。父は、ジムを一人で行かせると、警官が邪魔しないよう受け止める(3枚目の写真、矢印はスペンサー)〔これで、スペンサーは確実に逮捕される〕。ジムは、話しかけようとする担任を無視し、片方の足を引きずって納屋に入って行くと、エマの両親の前まで行く。

エマの父は、「通じない」と言いながら無線機をジムに渡す。ジムは、スイッチを切り替え、「エマ?」と呼びかける〔納屋の無線機の送信がOFFになっていたとしたら、最初に父が無線機を使った時、それに気付かなかったハズはないのだが… これが最後の謎〕。すると、「ジム、あなたなの?」というエマの声が聞こえ、両親はびっくりする。ジムは、「うん、納屋にいる。君のママが話したいって」と言うと(1枚目の写真)、無線機をエマの母に渡す。母は、「エマ? ママよ。本当にごめんなさい、最愛のエマ。ママはあなたを守ろうとしたの… 愛してるからよ。パパも私も、あなたのことすごく愛してる。ママを許してちょうだい。どうか降りてきて。お願いだから、戻ってきて」と、涙声で哀願する(2枚目の写真)。ここで、画面とは関係なく、大人になったジムの声が聞こえてくる。「パパは正しかった。遠くから見るとすべてが小さく見える〔当時ジムがママに対する父の方針に過大に反撥してことへの反省〕」。すると、無線機からエマの声が聞こえる。「私のこと許して、ママ。ごめんなさい」。そして、再び大人のジムの声。「物事は数学のようにはいかない」。ここで、映画の冒頭のシーンに戻り、幼い方の少女が 「ホントに、ママといっしょにぜんぶやったの?」と訊く。大人のジムは、「アインシュタインは言っている。『人生は2つの生き方しかない。奇跡などないかのように生きるか、すべてが奇跡であるかのように生きることだ』」と言い、少女が、「ママがいなくてさみしい」と言うと、「パパもだよ」と答えたところで映画は終わる。

エンドクレジットが始まると、最初に表示されるのが、大学生になったジムとエマの写真。その後で、黒地に名前が連続して表示されるようになり、最初に名前の列の右に表示されるのが、2枚目の写真の左側の “気球からパラシュートで無事着地したエマ”(かなり拡大してある)。そして、その次に表示されるのが、2枚目の写真の右側の “ジムとエマの2人の女の子を抱く ジムの父”(かなり拡大してある)。このあと12枚の写真が表示されるが、関連するものはない。何れにせよ、この当時の嚢胞性線維症の最長寿命は20歳程度だったので、2人の結婚はかなり早く、そして次女が生まれてすぐエマは他界したことになる。

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