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Chasing Wonders チェイシング・ワンダーズ

イギリス・オーストラリア映画 (2020)

オーストラリアの珍しい風景と、スペインのブドウ畑を舞台に、過去に捉われた頑固で優しさの全くない父フェリペと、その一番の犠牲者になっている12歳のサビーノの物語。フェリペの一家はオーストラリアの南西部に暮らし、スペインでやっていたのと同じ品種のブドウを使い、ワイン作りをしている。一緒に暮らしている妻の母方の両親と、弟のその愛人の生活費はすべてフェリペがみているため、彼がどんな振る舞いをしても、正面切って反対する者はいない。映画は、この、恐らく2014年頃と思われるサビーノの少年時代に加え、「現在」と称される2020年もしくは2019年に、18歳になったサビーノが父の暮らしていた家を訪れるシーンを適宜交えることで構成されている。フェリペがこの時代になるまで独裁者だったとしたら、恐らくサビーノは とうの昔に離反し、父の故郷など訪れことなどしなかったであろうから、このことは、12歳のサビーノが、何らかの事件を契機に父フェリペに対する見方を変えたことを、予め観客に示唆している。父フェリペの12歳のサビーノに対する厳格な行動は、決して虐待ではない。部屋に閉じ込めて勉強させ、ブドウ園に連れ出して後継者となれるよう教育し、自分の考えに背いた行為をすれば怒鳴りまくるというもの。その背後には、フェリペが14歳くらいの年頃の時、面倒を任された末の弟のオリアンを交通事故で死なせてしまったことに対する非常に強い公開の念があり、そのため、サビーノを危険に曝す可能性のある行動はすべて封印した。もう一つの背景には、オリアンの件で、いたたまれなくなってスペインを飛び出し、オーストラリアに移民として来た以上、スペイン時代に負けない高品質のワインを作りたいという強い念願が、酒と女びたりの情けない弟ゴヨへの技術移譲を一切拒み、息子サビーノに負荷をかけることにつながった。このサビーノを救ったのは、同居している母の父のルイス。自由でおおらかな気性のルイスは、12歳の誕生日に望遠鏡をプレゼントし、それで、南十字星の下に見える岩山を訪れるよう示唆する。これを実行しようとすれば、フェリペが最も嫌っている、“息子を危険に曝すこと” に直結する。好奇心が強く、父に嫌気がさしていたサビーノは、両親がいながら孤児のように放置されている親友のスキートと一緒に冒険の旅に出る。それが原因となり、母の両親はフェリペの家から追放され、ずっと前から癌にかかり妻以外には打ち明けていなかったルイスが死亡する。サビーノは父を見限り、家出する形で再び岩山に向かう。それが、サビーノとフェリペの関係を100%好転させることになろうとは、予想だにせず。

映画は、「現在」のスペインから始まり、18歳のサビーノがスペインの南端近くのマラガに向かう列車に乗っている。そして、映画はすぐ、「その6年間」に戻り、11歳のサビーノが登場し、誕生日が間近に迫り、父フェリペの専横さの一端が見られる。その日、学校から予定より遅れ、暗くなってから帰宅したサビーノは叱られ、一緒にいた友達は無視される。18歳のサビーノは、かつて父が住んでいた家を探し当てると、そこにかつての隣人が寄ってくる。そして、サビーノの12歳の誕生日。父フェリペのプレゼントは形式主義的でサビーノはがっかり、一方、母方の祖父のルイスは、立派な望遠鏡をプレゼント。気分を害したフェリペは、口実をもうけて外に出て夜なのに農作業を行い、息子の誕生日パーティをボイコットする。何という心の狭い人物。パーティが終わり、さっそく望遠鏡を覗いてみたサビーノは、南十字星の真下にある岩山に飛んで行く2羽の大きな鳥に注目し、そこに行って見たいと思い、祖父のルイスを起こして、南十字星を目指せと教えられる。その先、18歳のサビーノが、かつての父の家の管理を任されている隣人に中に入れてもらい、かつての父のブドウ園で作られたワインを見せられる。12歳のサビーノは、学校に行っている時は別として、いつも勉強のために閉じ込められている部屋で、フェリペがスペインから1本だけ持って来た自慢のワインを見せられる。18歳のサビーノは、隣人の家の昼食に呼ばれるが、それからしばらく映画は、スペインでの出来事に集中する。あまりパッとせず、兄フェリペからは “お荷物” としか思われていないゴヨは、ワインのテイスティングと称して、12歳のサビーノに結構大量にワインを飲ませてしまう。フェリペは怒り、すぐに水を飲ませるが、酔いが完全に冷めないサビーノは、“家にいても全く構ってもらえない” 級友のスキートに誘われて、2階の窓から脱出すると、急に、ルイスから示唆されたように、南十字星を目指そうと思い立つ。2人は夜中、美しい星空の下の半乾燥地帯を歩き続け、望遠鏡で見えた岩山に辿り着く。しかし、せっかく登ってみたものの、そこには驚くようなものは何もなかった〔着いた時間が、夜だったから〕。おまけに、不注意なスキートが崖から落ちて足を骨折してしまう。翌朝、フェリペはルイスの責任を追及し、彼が、息子に再度の挑戦を示唆すると、激怒して母方の両親2人を家から追い出す。サビーノは、家じゅうで一番好きだったルイスを放り出した父が許せない。おまけに、ルイスが妻にだけ告白していた癌が思ったより進行していて、入院して短期間で死亡してしまう。死亡する直前にルイスに会いに連れていかれたサビーノは、もう一度岩山に行くよう、言われる。ルイスの死の翌朝、荷物を持ち、祖母と一緒に家に入ろうとした母子に対し、ルイスの死を知らないフェリペは猛然と食ってかかる。サビーノは、父を完全に無視する。そして、その夜、岩山に向かって1人で歩いて行く。止めようとした父は、トラックで岩山に向かう。だから、サビーノが岩山の頂上まで登ると、そこには父が待っていた。ここから、スペインでの挿話が再開する。そして、フェリペがスペインからオーストラリアに移住した理由、サビーノに厳しく当たる理由が明らかにされていく。岩山の上では、父はサビーノに対して心から詫びる。そして、ルイスが再度行くのを勧めた岩山では、朝日とともに数えきれないほど多くの鳥が舞う姿がみられる。その光景は、映画のタイトルのワンダーズ=鳥の大群をチェイシング=追及した姿そのものだ。。

主役のサビーノを演じるのは、マイケル・クリサフッリ(Michael Crisafulli)。『6才のボクが、大人になるまで』(2014)は、1人の少年が大人になるまでの12年間を追った類い稀な作品だったが、それは、その変化を辿るのが目的だったから意味があった。この映画では、12歳のサビーノと18歳のサビーノを同じマイケル・クリサフッリが演じている。12年の半分の6年だ。それは、きわめて稀なことなのだが、この場合、『6才のボク…』と違って、途中の成長を描いている訳ではない。下の写真は、両端がこの映画、真ん中が『Factory Hands』(2016)というショートムービー。ここで、もし、この映画の中で、15歳のサビーノが登場するのなら、同じ俳優が演じなくてはならなかったかもしれないが、この映画のように、見分けがつかないくらいに変わってしまった18歳のサビーノのために、なぜ6年も待って同じ俳優を使わなければならなかったのかは、よく理解できない。マイケルについての情報は全くなかったが、出演した2本のショートムービーとTVシリーズ「ホーム・アンド・アウェー」(2016年の放映分)はすべてオーストラリア製作なので、オーストラリア人だと思われる。なお、映画の4種類のリストに(下の写真を含めて)、映画以外の顔写真を使ったのはこれが初めて。暗くて顔が小さい映像ばかりで、ネット上の写真を使用した。

あらすじ

映画の冒頭、「どの子供も、父親が、ヒーローあるいは悪役だと考えて大きくなる。父親がただの男だと悟る年頃になるまでは」という、Mark Maishの言葉が表示される。そして、題名と同時に、サビーノの祖父ルイス(?)のナレーションが始まる。「私たちは、誰しも夢を抱く。それこそが、心の目的だから。若い時の夢は、鮮やかで澄み切っている〔ナレーションの時点で アントニオは死んで久しい〕。最後の部分は、鮮やかで澄み切った景色と重なり合う(1枚目の写真)。そして、「スペイン、現在」と表示され、ディーゼル機関車に牽かれた客車が、単線の線路を走って行く(2枚目の写真)。写真の左下の星印は、舞台がスペインであることを示す〔黄色は現在。空色は過去〕。「私の孫、サビーノは夢想家だ」。そして、座席で旅行ガイドブックを見ているサビーノが映る(3枚目の写真)。「サビーノが6歳の時、彼の父フェリペは、彼の家族と弟のゴヤを 生まれ育ったスペインのブドウ畑から引き離し、世界の反対側で新しい生活を始めた。彼には、彼なりの理由があったが、それをサビーノに話すことはなかった」。

場面は、すぐに切り替わり、「オーストラリア、6年前」と表示される。21世紀の割には暗い室内で、割と多人数での朝食が始まろうとしている(1枚目の写真)。食卓の首座、右端に座っているのがサビーノの父フェリペ、そこから反時計回りに、フェリペの妻アドリアナ、サビーノ、アドリアナの母、アドリアナの父ルイス、空席、父の弟のゴヨの愛人、ゴヨの順。いつもサビーノの役目かどうかは分からないが、食前の祈りを始める。定例の神への感謝を述べた後で、「このテーブルを分かち合うすべての人に祝福を。パパ、ママ、おじいちゃん、おばあちゃん、ゴヨ叔父さん、そして…」(赤茶色はスペイン語)。ここで、言葉が詰まって、困った顔になる(2枚目の写真)。サビーノとゴヨの間で、ヒソヒソとやり取りがあるが、空白が長いので、父が 「サビーノ、終えろ」と催促し、「そして、彼のガールフレンド。アーメン」と英語で言う。祖父のルイスが、「わしの孫は、彼にとって特別な日に、何をするんだね? 計画はあるのか?」とサビーノに訊く。「何もないよ」。サビーノが、その返事を、食べながら言ったので、父はすぐに、「サビーノ、口に入れたまま話すんじゃない」と叱り、正面に座っている義父を 睨むような目で見る。そして、大事な誕生日のプランの話は、そこで立ち消えになる。この一語で、フェリペの異様な厳しさが印象付けられる。その日も学校はあるので、家の前にスクルーバスが停まり、アドリアナがサビーノを門まで送って行く。「いい子でね」。「そうする」。「ちゃんと食べて」。「そうする」。そこにフェリペがやって来て、スペイン風のコルドベス・ハットを無理矢理被せる(3枚目の写真)。しかし、スクルーバスに乗ると からかわれたのですぐに外す。「親として、私たちは子供たちを人生の潮目から守ろうとベストを尽くそうとする。しかし、それは時として、若き水面に石を投げ込んでしまい、一生続く波紋を起こしてしまう」。

学校では、教師が南十字星と、それを見つけるのに便利な2つのアルファとベータ・ケンタウリについて話している(1枚目の写真)。授業が終わると、サビーノは同じ机に座っている友達のスキートと一緒に線路際で時間を潰す。スキートは、「見つけた〔I found it〕」という携帯を見ながら、「パパにメッセージを送るのに使える」と話す(2枚目の写真)。サビーノも、「僕が、今日 見つけたもの見て」と言い、2つのものを見せる。そのうち1つは飛び出しナイフ。外は次第に日が暮れて来て、フェリペが空〔多くの鳥〕に向かって銃を撃ち始めるpestSMARTというサイトには、オーストラリアでは20 種以上の鳥類がブドウとワイン産業に悪影響を与え、対処方法の1つに鳥を怖がらせるための射撃があると書いてあった〕。それを聞いたサビーノは、「まずい! 僕、殺されちゃう」と言うと、急いで帰り始める。途中、ずっと走ったにもかかわらず、家の近くに着いた頃には、辺りはかなり暗くなっている。そして、なぜかスキートも一緒について来た。サビーノが、「どうして、ついて来たの?」と訊くと、「さあな。考えてみないと」という変な返事。家の周りのブドウ園には、照明用の電球が波状に2列吊ってある〔何のためかよく分からない。農業関係の研究報告には、ブドウの着色を促すため、夜間に補光し、日照時間を多くすると書いてあったが、こんな程度の僅かな電球で効果があるかどうかは不明〕。サビーノとスキートは、隣り合った別の通路を通ってフェリペの前に現れる。サビーノを見ると、フェリペは、「どこにいた?」と帰りが遅いのを責める。「遊んでから、時間を忘れちゃった」(3枚目の写真、波状の電球が映っている)。「時間を忘れただと? 突然、阿呆になったのか? 彼〔スキート〕は ここで何してる?」。「友だちだよ」。それまで黙っていたスキートは、「君のパパ、英語を話せると思ってた」と言い、それを聞いたフェリペは、スキートに 「もちろん、話せるとも」と返事し、サビーノに 「家に入れ」と命じると、スキートのことは無視する。

スペインの片田舎を、青年のサビーノが歩いている。「私たちの長い物語を受け入れるには、勇気が要る。なぜなら、私たちが誰で、どこから来たかの真実を知られたら、嫌われるのではないかと怖れているから。しかし、私たちの心の奥底には、過去の出来事についてもっと知りたいという切望がある」。サビーノは、1軒の家の前で立ち止まり、オーストラリアから持参した古い白黒写真と比べてみる(1枚目の写真)。ここだと思ったサビーノが嬉しそうな顔になる。すると、「今日は」と言う声がして、1人の中年の男性が近づいてくる。「やあ、今日は」。「この家を借りた家族の一員かね?」。「借りた? 借りてません」。「アメリカ人?」。「いいえ、オーストラリア人」。「きれいな場所だって聞いた」。サビーノは、古い写真を見せて、「父の家を探してました」と教える(2枚目の写真)。「お父さん? ここが、お父さんの家だと?」。「そうです」。男性は驚き、顔に親しみが沸く。「フェリペ? 君は、フェリペの子か?」。

オーストラリアでは、先程とは違う日の夕方、サビーノが食堂に入って行くと、全員が立って拍手で迎える(1枚目の写真)。この日は、サビーノの12歳の誕生日。ゴヨのプレゼントは、スクラブルというボードゲーム。ゴヨの愛人のプレゼントは、よく分からない数学器具。3番目がフェリペのプレゼント。中身は『スペイン内戦の記録』という本で、本自体に価値はないが、表紙をめくった最初のページに、祖父と父のサインがあり、「私の父、お前の祖父アントニオは、私の12の誕生日にこれをくれた」と話し(2枚目の写真)、「だから、これからはお前の物だ。お前の名前を一番下に書くがいい。三世代だ」と言うが、サビーノにとって、フェリペが思うほど嬉しいプレゼントではない。フェリペは、一緒に少し読もうと言うが、サビーノは、「本当に感謝できるようになったら、後で読むよ」と、やんわりと断る〔映画の中で、二度と登場しない〕。祖母のプレゼントは靴下。そして、祖母は奥から大きな包みを持って来ると、祖父に、「ルイス、サビ〔サビーノの愛称〕に本物のプレゼント、渡してあげて」と言う。心の狭いフェリペは、その言葉に引っ掛かる。「本物のプレゼントって、どういう意味です? 何が言いたいんです?」と、ネチネチと突っ込む。それを聞いたルイスは、「別の日にしよう」と言い出すが、ゴヨは、「プレゼントなんだから、開けなきゃ」と言い、サビーノが紙を破る。中身は、三脚付きの天体望遠鏡で、サビーノの名前も彫ってある(3枚目の写真)。この立派なプレゼントに比べると、いくら「三世代だ」と言っても、たかが古本1冊なので、面目が潰されたと思ったフェリペは、ブドウに水やりが必要だからという口実を設けて、お祝いの会を中退して家から出て行く〔何と心の狭い〕。その後の誕生日会は、中南米発祥のピニャータゲームで最高潮に達する(4枚目の写真、矢印はピニャータ)〔当然、フェリペはいない〕。ピニャータの中に入っていたのは、お菓子と、サビーノの黒い革靴。みんなが踊って楽しんでいる中で、一瞬だが、ルイスが痛そうにお腹に手をやるシーンがあるが、伏線というには、短か過ぎて誰も気付かない。サビーノは、窓から、農作業を続ける意固地な父の姿をチラと見る。

サビーノは、ルイスの隣に座ると、「この望遠鏡は、他の銀河が見えるほど強力なの?」と訊く。「強力だ。君が何を見る気でいるのかは知らん。これは、君にとっての冒険なんだ」(1枚目の写真)「多分、君には、まだ準備ができとらん。だが、いつか準備ができて、その時には、見るじゃろう」。「何を見るの?」。「わしは、君に道具を与えた。目を使うんだ、サビーノ」。そこで、パーティが終わった後、自分の部屋に行ったサビーノは、望遠鏡に三脚を取り付けると、窓を開け、外を見てみる。最初に見たのは、別棟でゴヨと愛人がセックスしているところ。祖父は、そんなものを見ろと言ったハズはなにので、望遠鏡を南十字星に向け、そのまま下げて行くと、1羽の大きな鳥が山を目指して飛んで行く。そして、それに、もう1羽が加わる(2枚目の写真、朝日が昇ろうとしている)。サビーノは、2階から降りてきて、ノックもせずに祖父母の部屋のドアを開ける。ルイスは、その行為を注意した後で、「どうした?」と訊く。「僕、特別な物を見た」(3枚目の写真)。サビーノは、南十字星の下にあった岩山と2羽の鳥について話す。そして、「あの場所、知ってる?」と質問する。「ああ。美しい場所だ」。「ねえ、教えてよ。僕、行くことができる?」。「さあ。行けるのか?」。「どうやって行くの?」。「分かるじゃろう。星について行けばいい」。翌朝、部屋に缶詰めにされて勉強させられているサビーノを見かねた、祖父ルイスが、「サビーノは太陽の下にいないと」と批判し、祖母が 「普通の子のように、自転車で走り回らせないと」と追随したのを聞いたフェリペは、「孫に勉強させたくないのか?」「農園を運営する方法を学ばせなくていいのか?」と強く反撥し、食堂との境のドアを締め切り、自分とサビーノだけになる。

親切な隣人は、サビーノをフェリペの家に入れてくれる。そして、「君のお父さんがスペインを離れると決めた時、バルセロナの家族が、この家を買ったんだ。彼らは、別荘として使っている。わしがブドウ園を管理し、妻が家の面倒を見ている」と話す(1枚目の写真)。そして、ベランダに連れて行き、「あれが、わしの家だ」と教える〔ブドウ園を挟んで、すぐ隣の家〕。一方、缶詰めの部屋の中には、1本のワインが飾ってある。フェリペは、「わしらの作ったテンプラニーリョの65年物は、これまでで最高の出来だった」と自慢する(2枚目の写真)〔テンプラニーリョは赤ワイン用のブドウの品種名で、スペインで最も広く栽培されている〕。サビーノは、「でも、パパはワイン飲まないじゃない」と言う。「飲む必要はない。テイスティング〔味の鑑定〕をするだけだ」。フェリペは、弟のゴヨが、飲む方に熱心なので、そこが一番気に入らない。ここで、再びスペインのシーンに変わり、親切な隣人が、「かつて、君の家族のブドウ園だったところのブドウで出来たものだ」と言って、1本のワインを見せる(3枚目の写真)。「お父さんに持って行って」。サビーノは、「パパは昔、こんなボトルを1本大事に取ってたけど、もうなくなりました」と話す。そして、「もし、僕たちがまだここに住んでたら、僕の家族はどんな人生を送ったのだろうと、つい考えてしまいます」と付け加える。

ここで、フェリペがサビーノに、太陽の下に出て、実務教育をする場面が入る。フェリペはブドウから実を少しもぎ取り、サビーノに食べさせる(1枚目の写真)。サビーノは、思わず吐き出したので、ブドウ自体の味は、食用ブドウと違ってひどい味だったのか? 次にフェリペは、ブドウの木の根元の土を掘り起こし、土の匂いを嗅がせる(2枚目の写真)。「分かるか、甘いだろ?」。「うん」。こうした教育が終わった後、サビーノは、「パパの父さんは、ワインの作り方をパパとゴヨに教えたの?」。「そうだ」。そう言った後、「お前に会わせてやりたかった。お前のお祖父さんは、パパにすべてを教えてくれた。だから、今、お前に伝授してる」。ゴヨは、愛人と一緒にブドウ園の一角に座っている。そして、「彼は、僕らの祖父が変わる前の、よき時代の話しかしない」と言う〔父方の祖父に何が起きたのかは全く分からない〕。フェリペは、「そろそろ夕食の時間だ。後で会おう」とサビーノに言い、サビーノは家に向かって走って行く。途中では、兄フェリペから完全に無視されたゴヨと愛人が、暇を持て余している(3枚目の写真、矢印)。2人の前を走って行く時、サビーノは、「ゴヨ叔父さん、夕食だよ」と声を掛けて行く。

サビーノは、親切な隣人の家の食事に招待される。奥さんが持って来たのは、焼き立てのパエリア(1枚目の写真)。サビーノの席は、客人なので、テーブルの端に座った親切な隣人の隣だ。彼は、「サビーノ、君がここにいるのは特別なことだ。わしは、君のお父さんのことを、幾度となく考えてきた。彼は、ここでの生活のこと、なぜ、オーストラリアに移住したか、君に話したことがあるかね?」と訊く。「少しだけ」。「彼は、いい男だ。幸福になるに値する。ほとんど人々はそうなんだが、特に君のお父さんには その権利がある」。そう言うと、親切な隣人は立ち上がり、「わしの妻のパエリアを試すためだけに、地球の反対側からやってきたサビーノに家族で乾杯しよう」と言い、グラスを合わせる(2枚目の写真、矢印はかつてのフェリペの家)。

ワイン蔵にサビーノとゴヨと愛人がいて、楽しそうにしている(1枚目の写真)。そこにフェリペが入ってくると、「何してる、サビ?」と訊く。「家業を学んでるよ。ゴヨ叔父さんは、異なった年のワインのテイスティングの仕方を教えてくれてる」。フェリペは、その返事に満足し、自分もやってみせようと、置いてあったワインを少量グラスに注ぐと、「よく動かさないと」と言いながら、よく振り、そのまま口まで持って行くと、口の中に入れ、すするような音を立てて息を吸い込み、ワインを空気に触れさせ、一気に吐き出す。そして、「2000年」と言う。「正しいか?」。それに対するゴヨの返事は、異常としか言いようがない。「多分」。その返事に、フェリペはピンと来る。「その子に飲ませたのか? 12歳だぞ」。「ごめん、フェリペ、ほんのちょっとだけ。スペインじゃ、そうやってたから、問題ないだろ」(2枚目の写真)。「ここは、スペインじゃない」。それに対し、ゴヨは初めて、強く反論する。「何を考えてるんだい? 家業のことを息子に話したい? なら言えよ。僕らの父さんがどんなふうに家業をやってたか。僕の覚えてるのは、思いきり飲んでたってこと。そうだろ? 僕は父さんとは違う。そんなに飲んでなんかいない。ただ、人生を楽しんでるんだ。あんたは、素晴らしい家族を持って、家業を引き継いでる。だけど、悲しい人間なんだ」。フェリペは、弟に対して何も言わなかったが、サビーノを部屋に連れて行くと、水を一杯飲ませる(3枚目の写真)。サビーノが、「僕は赤ん坊じゃない」と文句を言うと、「ああ、赤ん坊じゃない、男だ。酔っぱらいの男。酔いが覚めるまで、この部屋から出るな」と言う。そして、「今後は、私の見ているところで仕事をすること」と 釘を刺す。

サビーノは、まだ酔いが覚めないのか、ワインと水で膨らんだ膀胱を空にしようと、部屋の窓から放尿する。すると、下にいて尿が掛かりそうになったのは、スキート(1枚目の写真)。彼は、父がずっと不在で、母は彼の面倒を一切見ないので、時々、夜にでもサビーノの家まで来ている。サビーノは、恥ずかしいことをしたのに謝るわけでものなく、「そこで、何してる?」と訊く。「出かけるぞ。何かしようぜ」。「できないよ」。「降りて来いよ」。サビーノは部屋の外の様子を窺うと、バッグに望遠鏡を入れ、2階の窓から出る(2枚目の写真、矢印)。そして、カバードポーチのギシギシ音を立てる屋根を端まで行き、バッグをスキートに投げ落とす。そして、身一つになると 思い切って飛び降り、バッグを肩に掛ける(3枚目の写真)。スキートが、「パブみたいな臭いがする」と言うので、ゴヨが「ほんのちょっとだけ」と言ったのは嘘で、相当量飲ませたに違いない。この頃には、サビーノは、“南十字星の下の岩山” まで行って見ようと思い立ったので、地面に転がっていたワインのビンに、水道の水を一杯に詰める。スキートが、「どこに行くんだ?」と訊くと、「じゃちゃんが言ったんだ。イーミュー・プレインズ〔実際にある地名だが、シドニーの西北西約50キロで、まだ町の中なので、該当しない〕の向こうに岩山があって、変わったものが見れるって」。

2人は、オーストラリアの特徴的な風景の1つとも言える長距離送水管〔乾燥地帯が多いため、大規模な送水管網が作られている〕の上を歩いて行く(1枚目の写真)。送水管から降りると、サビーノは南十字星を目指して歩き続ける。途中、2人は、朽ちた地面に放置された幹に寄りかかって満天の星を見ながら話し合う。スキート:「砂粒よりたくさんの星があるって知ってた?」。「ホント?」。「何百万もの小さな目が、僕らを見てるみたいだ」。サビーノ:「人工衛星だ」。「どこ?」。「ほとんどは役目を終えた、何千もの衛星が飛んでる」。そえから、スキートの携帯の話になる。サビーノ:「パパ、何て言った?」。「まだ、メール送ってない」。「どうして?」。「何を書くか考えてる」。そのうち、足や背中に何かが噛みついているのに気付いた2人は、虫(?)を振り払い、大急ぎでその場を離れる。そのあと歩きながら、スキートは 「変な岩山があるなんて、信じちゃいないぞ。クレイジーなおじいさんの作り話さ」と言い、サビーノは 「僕が知ってる誰よりもカッコいいんだ」と否定する。どっちに行っていいか分からなくなったサビーノは、また放置された幹に座る〔さっきので、懲りたのでは?〕。そこでも、満天の星。スキートは、「僕らがここで死んでも、僕らのパパは気にしないじゃなかって、思ったことないか?」と変なことを言うと(2枚目の写真)、タバコを吸い始める。「体に良くないよ」。「そんなこと、どうだっていいさ」。「僕にもくれる?」。サビーノも吸ってみるが、「へたくそだな」と言われてしまう。そのあと、スキーは、さっきの言葉をサビーノに限定し、「たぶん、君のパパは、君が砂漠に行って二度と戻って来ないことを望んでたんじゃないかな。君の服や食ベ物にお金を払ったり、君に会いに来たり、メールに返事しなくて済むだろ」。サビーノは、それに反発するどころか、「僕は、失望させてる。何を望まれてるかも分からない。僕なんかどうでもいいんだ。僕は期待外れなんだ」と、悲しい本心を打ち明ける。そう言ってサビーノが後ろを向くと、何とそこには探していた岩山の頭が見えていたので、バックを背負って歩き出す。荷物を持たないスキートも、走ってついて行く(3枚目の写真)〔確かに、望遠鏡で見えた山だ〕

2人は、岩の崖を両手を使って登り(1枚目の写真)、頂上に立つ。しかし、そこには何もない。サビーノは、せっかく持って来た望遠鏡で覗いてみるが(2枚目の写真)、成果はゼロ。スキートは、「何もない。君のおじいさんの話、何が問題なのか知ってるか? 結末なんかないんだ」。望遠鏡で町の明かりを見たスキートは、すぐに戻り始める。そして、無謀にも崖に向かって入って行き、そのまま転げ落ちる。サビーノが崖っぷちまで行って覗いて見ると、崖の下にスキートが横たわっていた(3枚目の写真)。

その頃、サビーノの部屋では、窓を開けっ放しにして出て行ったので、木の日除けが風に煽られてバタンバタンと音を立てている。その音で目が覚めたフェリペは、サビーノの部屋に行き、窓から覗いて、何が起きたのか悟る(1枚目の写真、矢印)。フェリペは1階に降りて行くと、ノックもせずに岳父母の部屋のドアを開け、「サビーノはどこ?」と問い質す。岳母は、ノックなしでドアを開けたことに抗議し、サビーノの居場所も知らないと強く言うが、ルイスは黙っているので、「ルイス、彼がどこにいるか、見当は?」。ルイスが、困ったような顔でフェリペを見たので、「息子をどこに行かせたんだ?」と、容疑者のように訊く(2枚目の写真)。彼が、何を訊き出したのかは分からないが、すぐに外に出て行き、トラックのエンジンをかけるが、整備不良でかからない。その頃、岩山では、ルイスがスキートの所まで大至急降りて行く。死んだようにも見えるので、サビーノは頭をかかえる。しかし、ルイスが何か変わったことを始めると、“死んだフリ” をしていたスキートが、「何する気だ?」と声をかけたので、ルイスが笑顔になる。結局、スキートは、左足の骨折と、手や顔のかすり傷だけで済んだ。次のシーンでは、途中はカットして、送水管の脇を、スキートを支えながらルイスが歩く姿が映る(3枚目の写真)。そこは、家の近くなので、フェリペが懐中電灯を持ってやって来て2人をみつける。ルイスは、最悪の人間に見つかってしまったので、「くそっ」とがっくりする。「どうした?」。「スキートが落ちた」。この時点で、ニワトリの鳴き声が聞こえるので早朝だ。次のシーンでは、明るくなり始めた集落の中を、フェリペがスキートを背負って自宅まで送り届ける(4枚目の写真)。スキートは、「今はママしかいない。起こさないで」と言う。

そのあとの朝食の時間。アドリアナは、サビーノが無事だったことにホッとして、頭を撫でる(1枚目の写真)。一方、フェリペは、「サビーノ、食べる前に、お前の祖父が言ったことを話すんだ」と命令する。ルイスは、「わしは、彼に何を言ったか、正確に言える」と言うが、フェリペは、「息子から直接聞きたい」と、申し出を突っぱねる。サビーノは、「僕のせいだ」と言う。それを聞いたルイスは、「君は間違えたかもしれんが、誰にもでもあることだ。君のせいじゃない」と優しく言う。しかし、狭量で短気なフェリペは、「何だと? 俺が問題だと? サビを砂漠に行かせたのは、そっちじゃないか!」と、ルイスを指差して責める。「わしは、彼があんたに話すと思った」。「どうしてだ?」。「あんたが、父親だから」。「ルイス、彼を見てみろ。俺には何も言わん!」。ルイスも反撃する。「問題は、あんたにある!」とフェリペに言った後で、サビーノに、「君は、見たか? 見つけようと努力したか?」と訊く。サビーノが首を横に振ると、「いつか、見るだろう」と言い(2枚目の写真)、それがフェリペに火を点ける。「『いつか』 なんてない!! 息子を危険にさらすような バカげた夢は止めてくれ!! 止めるんだ!!」と、テーブルを何度も叩きながら喚(わめ)く。それを聞いたルイスは、「わしだって、あんたを責められる」と静かに言う。それを聞いたフェリペは、横隣に座っている妻に、「君の両親を 家から放り出せ」と言う(3枚目の写真)。その異常な言葉に、全員が驚く。特に、ルイスが好きなサビーノは、「おじいちゃんたちの家でもあるよ」と、強く反撥する。フェリペは、「ここは、私たちの家だ。お前の母と、お前と、私の家だ」。アドリアナ:「フェリペ、お願い。止めて」。それを聞いたフェリペは、「分かった、ルイス、あんたを追い出すのは止める」と言う。しかし、ルイスは、「その時が来た」と言い出す。それを聞いたサビーノは 悲しみにくれる(4枚目の写真)〔ゴヨのせいで酔っ払った挙句に、半分はスキートに唆されてやった愚行で、祖父を失うことになったので〕。アドリアナは、どこにも行き場がないと心配するが、ルイスは負担にはならないとしか答えない。フェリペにそれを止める気は全くなく、逆に、これから食事だというのに、サビーノを部屋に行かせる。そして、フェリペは望遠鏡はどこかに持って行く。

その日のうちに、サビーノの祖父母はバスに乗って去って行き、それをサビーノとゴヨが見ている(1枚目の写真)。フェリペは、岳父母が出て行くのに、見送りもせず、故障したトラックの修理に没頭している。それを見たサビーノは、「おじいちゃんたちが出てっちゃうのに、下らない車なんか、よくいじってられるね」と、ゴヨに父の態度を批判し(2枚目の写真)、ゴヨは、「僕たちから隠れてるのさ」と答える。「『隠れてる』?」。「まさに、そうじゃないか?」。バスが出て行く〔なぜ、2人は見送りに行かなかったのだろう?〕。フェリペが、家の敷地から出て、後ろを振り返らずに道路に出て行くと、後ろから走ってきた2台のバイクが、かろうじてフェリペを避けて通り過ぎて行く。それは、フェリペに、スペインで まだ子供だった時の記憶を呼び覚ます。未舗装の土道を、木の箱で作った小型の4輪車に乗った少年(ゴヨ)がいて、より年上の少年(フェリペ)が、その後ろにつかまっている。後ろからは、より幼い少年(オリアン)が何か叫びながら〔待ってよ、か、乗せてよ〕必死に走る。もう少しで手が届きそうになった時(3枚目の写真、40年前のシーンなので空色の星印)、映像は、当時を悔やむフェリペの顔に変わる。

その日の夕食。テーブルには4人しかいない〔アドリアナは、両親の行き先を見つけるために付いて行った〕。フェリペはスパゲティをむさぼるように食べるが、サビーノは、手をつけず、あきれて父を見ている(1枚目の写真)。「神のすべての創造物の中で、人間は、自らを何度も罰しようと思う唯一の存在だ。そして、さらに悪いことに、私たちは、自分の子供たちに 自らの過ちの代償を払わせる」。それから数日後、サビーノは自分の部屋で神に祈る。「また僕です。ママに家に帰るよう言って下されば、ありがたいのですが」(2枚目の写真)〔アドリアナはずっと両親につきっきり〕。その時、ノックの音がして、ゴヨの愛人が入って来る。そして、「望遠鏡、取り戻したい?」と訊く(3枚目の写真)。

翌日、サビーノは、いつものように部屋に缶詰めにされて、「僕の家族」という題でレポートを書かされている。すると、隣のキッチンで、ゴヨの愛人が「フェリペ!」と呼ぶ。シンクにいく途中のパイプから水が大量に漏れ出したのだ。フェリペは、「そのまま続けろ」とサビーノに指示すると、故障の具合を見に行く。サビーノがレポートを止めてドアまでこっそり見に行くと、ゴヨの愛人が右手を左右に動かし、「さあ、行って」と促す(1枚目の写真、矢印)。サビーノは家じゅうのありそうな場所を探す。ゴヨたちが暮らしている別棟に行くと、ベッドの下には、ゴヨが描いたデッサンがたくさん出て来る。その中で、サビーノが興味を惹かれたのは、自分と同じ年頃の3人の子供を描いた絵。それぞれ名前が書いてあり、2人は、フェリペとゴヨだったが、3人目のオリアンという名前は初めて見るものだった(2枚目の写真)。結局、望遠鏡があったのは、いつも故障しているトラックの座席の後ろの箱の中だった(3枚目の写真)。場面は、水道の修理を終えてフェリペが、缶詰部屋に戻ると、それまでに用事を済ませたサビーノが熱心に言われたことを続けている(4枚目の写真)。「まだ、終わらんのか?」。「もうすぐ」。「終わったら、行っていいぞ」。自分の部屋に行ったサビーノは、取り返した望遠鏡で、寂しげに周辺を見てみる。「家族がバラバラになり、忘れ去られ、気に入られていないと感じると、1週間は一生のように感じられる」。

ある夜、サビーノはアドリアナに連れ出される。「お祖父ちゃんと、ちゃんと話しておくのよ」。「病気なの?」。「入院してるわ」。「なぜ黙ってたの?」。アドリアナが病室のドアを開け、サビーノが顔を見せると、祖父と一緒に横になっていた祖母が体を起こす(1枚目の写真)。ルイスは、「わしの美しい娘とサビーノ。入って」と呼ぶ。アドリアナは、家から持って来た 自分の若い頃の写真と、家族全員が映った写真をベッドサイドに置く。祖母は、「スペインにいるべきだったわ。そしたら、癌にかからずに済んだかも」と言う。アドリアナは、サビーノに、「お祖父ちゃんと話してらっしゃい」と言って、1人で行かせる。ルイスは、「怖れな。誰でも、いつかは、愛する人を失う。これ〔集合写真〕は、君の家族の半分だ。残りの半分を見つけねばならん」と、諭すように言う(2枚目の写真)。「家族は失われ、見つけ出せるのは君だけだ。君だけ。分かるか?」。「ううん」。「方法は見つかる」。そう言った後で、「君は、もう一度岩山に戻らないといけない。明るい時に」(3枚目の写真)。「できないよ。僕がそこに行ったから、おじいちゃんはここにいる」。「もっといい計画を立てるんだ」。「おじいちゃんがいないと無理」。「わしは不要だ。そうやって世界は回ってゆく」。悲しくなったサビーノはルイスに抱き着く。

それから何日後かは分からないが、再びバスが家の前に停まり、アドリアナ、サビーノ、祖母の3人が 荷物をいっぱい持って降り立つ(1枚目の写真)。3人を見たフェリペは、妻に、「君のお母さんは どこに行く?」と訊く。アドリアナは、それを無視し、祖母に、「中に入って、ママ」と指示する。今度のことでフェリペを憎んでいる祖母は、フェリペの前を素通りして家に向かう。アドリアナは、「お母さんは部屋に行くわ。休まないと」と言うが、フェリペは、「ここには部屋などない。話したじゃないか。どこか他に行ってもらえ」と、頑固一点張り。アドリアナは、それも無視し、サビーノにバッグを持って行かせようとする。フェリペは、「ダメだ、下に置け」と言い、サビーノは、「ママが中に運べと言った」と言い、父を無視して中に入ろうとし、バッグを取られ(3枚目の写真、矢印)、地面に投げ捨てられる。フェリペは、「下に置けと言ったろ」と言うが、サビーノは、父を睨むと、そのまま家に入って行く。アドリアナは、バッグは放置し、その他の荷物を持って家に入って行く。

家の中にフェリペが入って来た時、サビーノは アドリアナに慰めるように抱かれていた(1枚目の写真)。アドリアナは、テーブルに座ったフェリペに、「母は、私と一緒にここで暮らすわ。母は、これまで父と一緒にホスピスにいたのよ。父は、昨夜亡くなった」と話す。フェリペは、「何だと?」とびっくりする(2枚目の写真)。父と一緒にいることに耐えられなくなったサビーノは席を立つ(3枚目の写真)。

サビーノは、放置されたバッグの脇に 割れて落ちていた望遠鏡のレンズを拾い、ちゃんとつながることを確かめる(1枚目の写真)。そして、バッグを自分の部屋に持って行き、レンズを接着剤でつなぎ合わせて、望遠鏡にはめ込む(2枚目の写真)。望遠鏡を三脚で固定すると、さっそく、もう一度行くべき岩山を見てみる(3枚目の写真)。

その夜、アドリアナはフェリペが籠った部屋を見つけて入って行く。彼は、「君は、私を憎むのか? 君ら全員が憎むのか?」と訊く。逆にアドリアナは、「何が問題なの? オリアンが死んでから、どれだけ長い年月が経ったか知ってるの? 彼は逝ったけど、サビーノはここにいる」と、夫の問題点を指摘する。フェリペは、平然と、「オリアンとは何の関係もない」と嘘をつく。「ないの?」。「ない」。「なら、なぜ、あなたのために、これ以上言い訳しなきゃいけないの? 私の息子が、あなたのオリアンのように見えるからといって、閉じ込めておくことなんてできない。あなたの大切な弟が死んだのは何年も前なのに〔実際は、34年も前〕、私たちの誰一人として、あなたの苦しみから抜け出すことが許されない。私の息子を押しつぶすのは やめてちょうだい。聞いてる? 私のサビは、もっと笑って、幸せに生きるの。彼の祖父のように。あなたが、一人で暗闇の中にいたければどうぞ。私は、もう うんざり。聞いてる?」。反応がないので、アドリアナは、「聞いてるって言ったのよ!!」と怒鳴る、夫の顔を叩いて部屋から出て行く。その代わり、岩山に行こうと、バッグを持ったサビーノが降りてくる。それに気付いたフェリペは、「サビ、どこに行く?」と訊く。「戻るよ〔岩山へ〕」。「戻っちゃダメだ。危険すぎる。お前はまだ12歳だ」。サビーノは完全に無視。「お前の祖父が病気だとは知らなかった。嫌いじゃなかった」(1枚目の写真)「私は、お前を守ろうとしてるだけだ。分かるか?」。ここまで、フェリペが何を言っても、サビーノは、父がそこにいないかのように無視を続ける。「私は、お前の父親だ。頼み、行かないでくれ」。そう言うと、サビーノの腕をつかんで引き留める。それでも、外に出ようとするので、「サビーノ、出て行くな!」と、いつものように怒鳴る。サビーノは、「どうする? 殴る?」と訊く。フェリペは、すぐに頬を引っ叩く(2枚目の写真、矢印)。サビーノは、「大嫌いだ」と言い(3枚目の写真)、そのまま出て行く。

サビーノは、毎晩のように家の前に来るスキートと、さよならの挨拶を交わす(1枚目の写真)〔松葉杖なので、一緒には行けない〕。そして、以前と同じように、送水管の上を歩いて距離を稼ぐ(2枚目の写真)〔前と違って、真上からの撮影。管の直径が思ったより小さく、上辺がかなり丸いので、結構危険〕。一方、フェリペは、修理の結果 ようやく動くようになったトラックを、岩山に向かって走らせる(3枚目の写真)。

家を出る時の 一悶着でバッグを持って来れなかったサビーノは、喉が渇いたので、地面を掘って湧き出てきた水を手の平でスクって飲む(1枚目の写真、矢印)。そして、そのまま 地面の上に横になり、きれいな星空を眺める(2・3枚目の写真)。「若さとは 澄んだ夜空の流れ星のように美しく、束の間のものだ。しかし、知恵は南十字星と同じく、不変かつ無限な、永遠のガイドだ」。

ひと眠りして元気になったサビーノは、岩山目指して歩いていく。以前よりは、空が明るくなりつつある(1枚目の写真)。そして、以前のように、両手を使って急な崖を登る(2枚目の写真)。しかし、頂上に辿り着いたサビーノにとってショックだったのは、そこでフェリペが待っていたこと(3枚目の写真、矢印はフェリペ)。フェリペは、近づいてくると、自分の着ていたジャンパーを 半袖Tシャツのサビーノに羽織らせる。しかし、サビーノの不信感は強く、「あんたと一緒には、家に帰らない」と、はっきり言う。フェリペは、背を向けて歩き出したので、サビーノは、「ねえ、僕の話聞いたかい? 家には帰らないよ」と念を押す。姿を消したフェリペは、崖の途中から枯れ枝を持って戻ってくる。そして、サビーノの前に投げ出す。サビーノは、「ここじゃ火を起こせない。風が強すぎる」と指摘する。その言葉を無視し、フェリペはマッチで火を点けようとするが、失敗する。

サビーノは、「オリアンって誰?」と訊く(1枚目の写真)。すると、画面は2020年のスペインに変わり、サビーノは、親切な隣人に連れられて共同墓地〔壁一面、少なくとも3段に墓碑が並んでいる〕に連れて来られる。「ここだよ。君の家族の一部だ」(2枚目の写真)。最初に見たのがフェリペの両親〔祖父は1939-90年、祖母は1942-97年(サビーノが生まれたのは2002年)〕。サビーノは、「会ったことは一度もない。僕が母方しか知らない。おじいちゃんは、大事なことを教えてくれた」。その次にサビーノが見たのがオリアン(3枚目の写真)〔1974-80年なので6歳で死亡。今は2020年なので40年前〕。ここで、再び岩山の上に。フェリペは、「オリアン… なぜ知ってる?」と訊く。「ゴヨの寝室にスケッチがあった」。「オリアンは、私の弟だった」。「何が起きたの?」。「ここでは、友だちができなかった」。ここで、映画はフェリペの子供時代に戻る。前回の映像は、追いかけてきたオリアンが、もう少しでフェリペに手が届きそうになった時で終わっていた。今度の映像では、結局、手は届かない。そして、フェリペのすぐ後ろに、直角に乗用車が突っ込んで来て急ブレーキをかける(4枚目の写真)。オルアンが6歳で車に轢かれて死んだ瞬間だ。ゴヨは、「オリアン!」と叫んで飛んで行ったが、フェリペは、なぜ手をつかんでやらなかったのかと、自責の念に捉われている。その時のことを、岩山の上でフェリペが説明する。「私は、オリアンの面倒を見ることになっていた。分かるか? それを、しなかったんだ」。「事故だった」。「ごめんな、サビーノ。私は、それに耐えられなかったんだ」(5枚目の写真)。そして、胸を押さえて、「ここが、どうにもならないんだ」と言う。サビーノは、「パパのせいじゃない。パパは悪くない」と慰める。「私は、サビーノに、岩山の上で驚きに会うだろうと約束した。そして、彼は会った」。フェリペは、泣きながら、「サビ、ごめんな、ごめんな」と謝る。

親切な隣人は、駅までサビーノを送って行く。そして、「どうか、この場所を、君の第二の故郷だと思って欲しい。そして、私たちを第二の家族だと」と、極めて親しい言葉をかけてくれる。「喜んで」。そして、前に見せたボトルを、旅行中に割れないように包んだものを手に持ち、「君と、このボトルが、オーストラリアまで安全に着くのを祈ってる」と言いながら、ボトルを渡す(1枚目の写真、矢印)。彼は、さらに、「サビーノ、君のお父さんは勇敢な人だった。家族ぐるみで他の国に行き、またやり直したのだから。両親を理解するには時間がかかる。年とともに学ぶだろう」とアドバイスする(2枚目の写真)。サビーノは、「ありがとう。すべてに感謝します」とお礼を言い、2人は抱き合ってから別れる。「私たちが最も恐れるものは、損失ではない。最も恐れることは、星を見上げて夢を見ること。そして、人生を有意義なものにしようと、危険を冒すこと。私たちの人生のある段階で、それぞれの旅は変わって行く」。その次に挿入されるのは、スペイン南部のマラガのボデガ農園で、フェリペ、ゴヨ、オリアンが幸せに暮らしていた時の一コマ(3枚目の写真)。「私たちは想像もできなかった方法でテストされる。そして、それは、私たちが、望遠鏡の間違った側から見ていることに気付く時でもある。星を見ることができない。「君のせいじゃない」と、あなたの子供に正しく伝える言葉が見つからない。あの夏、岩山で、フェリペは父親が与えうる最高の贈り物をした。彼の誠実さ。彼の心の中にある真実」。ここで、サビーノを乗せた客車が再び映る(4枚目の写真)〔スペイン最後のシーン〕

そして、最後に、岩山に戻る。「私たちは、この旅を通じて 強く結ばれている。私たちは子供たちに教えなければならず、子供たちから教えられる。一度彼らを信頼すれば、彼らは私たちとは違うと 教えられるだろう。彼らは完全に彼ら自身なのだ」。太陽の光とともに、鳥が一斉に飛び立つ(1枚目の写真)。生まれ変わったフェリペに、サビーノが親しげに顔を寄せる(2枚目の写真)。ルイスがサビーノに見せたかったのは、この生命の営みなのだろうか?

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