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De mayor quiero ser soldado 僕は兵士になる

スペイン映画 (2010)

スペイン人の監督が、バルセロナ近郊で撮影したスペイン映画にもかかわらず、映画の舞台はアメリカで、会話はすべて英語、主要な俳優はイギリス人とアメリカ人という変わった映画。それでも、なぜか、映画のタイトルだけはスペイン語のまま。映画の主役は10歳のアレックス。宇宙飛行に憧れ、宇宙船の船長がイマジナリーフレンドの真面目な少年。そのアレックスが、自分の部屋にTVを持ったことで、戦争に惹き込まれて行き、イマジナリーフレンドは、船長から軍曹に変わり、大きくなったらアメリカ陸軍の兵士になりたいと思うようになる。そして、それと同時に、クラスの不良の影響もあり、どんどん暴力的な性格が助長され、全くの別人になっていってしまう。この映画の目的は、映画の最後、エンドクレジットのところで強調されているように、“最近のTV” が及ぼす子供に及ぼす “洗脳” 的な害を訴えることにある。2010年の映画なのでTVがターゲットになっているが、2020年なら、SNSなどの媒体の方が遥かに恐ろしい。情報は、場合により非客観的に変節され、場合により、意図的で悪意に満ちたフェイクも混在する。そして、それが子供達が個人的に持っているスマホの中に直接入って来る。そうした状況から派生する可能性のある悲劇は、この映画を遥かに凌駕するであろう。なお、この映画には、英語字幕は存在しない。ヒヤリングで聴き取りにくい部分が多いため、フランス語字幕を併用したが、こちらはかなり内容が省略されている。

アレックスは、長髪で、甘えっ子の一人息子。宇宙飛行士になるのが夢で、イマジナリーフレンドはハリー船長。それが、双子の誕生と、家に1台しかないTVを自由に見させてくれないことへの反撥で、次第に怒りっぽくなっていく。そして、遂に手に入れた自分の部屋専用のTV。アレックスは、戦争番組(ニュースや映画)を見ることで、戦争が好きになり、将来は宇宙飛行士なく、陸軍兵士になりたいと思うようになる。部屋は父の協力もあって、軍隊一色に染まり、それとともに、イマジナリーフレンドも同じ人物ながら優しい船長から厳しい軍曹に様変わりする。そして、兵士らしく頭を丸刈りにしてしまう。それを見た同じクラスの不良2人が、アレックスを自分たちの仲間に引き入れる。アレックスの学校での態度は 不良に感化されてどんどん悪くなり、複数の教師から苦情が出て、両親が精神分析医に呼ばれて注意を受ける。しかし、アレックスは、元友達が賞としてもらったヒヨコを焼き殺したり、一番のワルからバタフライナイフを借りたり、授業中に描く絵が過激なものになり、精神分析医の指導もあって、TVを撤去される。アレックスは、精神分析医の指導を受け、戦争が如何に悲惨な現実を生むかの映像を見せられ、それまでの考え方を反省し、兵士になる夢を絶とうとするが、せっかく仲間に引き入れた不良達はそれを妨害し、それに、家庭内でのいざこざもあって、アレックスを前以上に過激な軍国主義者に変えてしまう。学校を放校され、元友達に復讐しようとして、その兄に追われ、殴り殺されると恐れたアレックスはバタフライナイフで戦おうとして、逆に刺し殺される。

アレックス役のファーガス・リオーダン(Fergus Riordan)は1997年7月22日にマドリードで生まれた。両親はイギリス人。バイリンガルの少年だ。本格的な映画レビューが、この作品。その後、スペイン映画『El sueño de Iván』(2011)に重要な脇役で出た後、アメリ映画『ゴーストライダー2』(2011)に重要な脇役で出演。その後、フランス映画『Don't Grow Up』(2015)で主役を務めた後に映画界を去り、現在は フォトアーティスト。

あらすじ

アメリカの国旗が2つあるオフィスで、大人の前に少年が座っている。後で、この男性は、この小学校の校長だと分かる。そして、少年は、10歳のアレックス。この映画の主人公だ(1枚目の写真、矢印は国旗)。校長から、「今度、先生から苦情があったら、次は、放校処分にする」と宣告されると(2枚目の写真)、アレックスは、「笑って、構うもんか。家にいてTVを見てるから」と答える。「そんなに面白いか?」。校長は、真面目な顔でそう言うと、アレックスに近づくように言い、「私を叩け」と意外なことを言う。アレックスが何もしないと、「君は、仲間の連中と同じ臆病者だ」と言う。「行っていい?」。校長は、許可するが、その時、「君が今何を変えているのか、私が どれほど知りたいか」と告げる。画面が暗転し、アレックス役のファーガス・リオーダンの名前だけが表示される。そして、アレックスと両親に赤ちゃんが産まれた時の、8mmフィルムを思わせる映像。再度暗転。アレックスのイマジナリーフレンド役の男優、次の8mmフィルムでは、2歳くらいになっている。暗転。アレックスの母役の女優。アレックスの3-4歳の誕生日。暗転。アレックスの父役の男優。5-6歳くらいの母と遊ぶアレックス。暗転。アレックスを理解しない意地悪教師役の女優。8-9歳のクリスマス。暗転。美術の教師役の女優。その後のアレックス。暗転。精神分析医役の男優。10歳の誕生日。隣には宿敵となるマックスが楽しそうに座っている。そこで、アレックスがプレゼントとしてもらうのが、宇宙飛行士のヘルメット。暗転。校長役の男優。冒頭のシーンがなぜあるのかは、分からない。映画が始まってから1時間後くらいに挿入されるべき場面だからだ。しかし、その後の、アレックスの赤ちゃんから宇宙飛行士までの2分間くらいのオープニングクレジットの8mm映像は、現在のアレックスを知る上では親切だ。

そして、「現在」。宇宙飛行士のヘルメットを被ったアレックスに、母が 「もう9時よ」と、寝る時間であることを示唆する。アレックスは、ガラスを上げると、「もう?」と訊く(1枚目の写真)。アレックスは、母の胎内にいる双子にお休みを言い、母に重いヘルメットを外してもらうと、ベッドに横になり母に甘える。母が電気を消して出て行くと、アレックスは、「お休み、ハリー船長」と、イマジナリーフレンドの宇宙船の船長に声をかけ、「お休み、アレックス」の返事をもらう〔正確に言えば、聞いたと思い込む〕。別の日、アレックスは、宇宙に浮かぶ小惑星らしき手作りの模型の上で、モンスターの玩具を持って父と仲良く遊んでいる。しばらくすると、父は、「宿題の時間だぞ」と言う(2枚目の写真、矢印はハリー船長⇒アレックスには、このように見えている)。「双子が生まれたら、一緒に遊ぶの?」。「もちろん。だが、お前が年長なんだから、ケガをさせないよう注意しないと。もっと重要なことは、積極的に宿題をやって手本にならないとな。できるか?」。アレックスは、「最高の長男になるよ」と自慢げに言う(3枚目の写真)。

その後、家に1台しかないTVをめぐって、父とアレックスの間で争奪戦があり、当然、父が勝ってサッカーを見続ける。アレックスには、それが不満だ。そのまま、キッチンに夕食の時間を母に訊きに行くと、母の様子がおかしい。アレックスは 「パパ!」と呼び(1枚目の写真)、母は 「もうすぐよ」と夫に声をかける。アレックスには、意味が分からなくて、「何がすぐなの?」と訊くが、夫はすぐに飛んできて、すぐに車に連れて行く。車は、途中でマックスの家の前で停まり、病院には同行できないので、そこで預けられる。マックスは、アレックスの誕生日会に招かれた時には結構嬉しそうな顔をしていたのに、それから何があったのか、アレックスに対して実にぶっきらぼうで、とても友達とは思えない。アレックスが、「君の部屋にはTVがあっていいな。ウチは許してくれないんだ」と話しかけても、「絵を描き終えたい」と言っただけ。アレックスが、勝手に引き出しを開けて、映画のイミテーションのようなナイフを取り出して感心して見ていると、「触るな!」と、すぐに中に入れる。アレックスが机の上に散乱していた映画のDVDの1つを取り上げて、「じゃあ、映画でも観るか?」と言うと、また、「触るな!」と叫び、取り上げようとする。そこに入って来た兄は、「弟を困らせてたのか?」と一方的にアレックスを責める(2・3枚目の写真)。この、マックスは、いわゆる “すごく嫌な性格” の持ち主なのだが、なぜアレックスが かつて “友達” だったのかは分からないし、現在、お互い友達同士にはとても見えない。

赤ちゃんを乗せた両親の車が、自宅に戻ってくる。その時に映る住宅地は、庭付き、2台ガレージ付きの白壁、灰色屋根の切妻屋根の2階住宅がワンパターンで並んでいる非個性的な住宅地。アメリカなら 共働きの若夫婦らしい中流層向きの郊外住宅地だが、IMDbに記載されているロケ地がバルセロナ西のL'Hospitalet de Llobregatが正しければ、スペインらしくない極めて珍しい住宅地だ。いつの間に自宅に戻ったのか分からないが、アレックスが家から走り出て来て、車の中の双子の赤ちゃんと初対面する。その夜の食事。アレックスは 「エンドウ豆なんか嫌いだ」と 母に文句を言うが、母は 「健康的でビタミンがいっぱい」と、食べるよう勧める。すると、イマジナリーフレンドのハリー船長が、「宇宙飛行士になるには、野菜を食べないと」と声をかける(1枚目の写真)。食事が終わり、夜遅くなっても、アレックスはTVで古いアメリカのコミック・アニメを観ている。母は 「寝る時間よ」と注意し、アレックスは、「終わりまで観てたいよ」と言うが(2枚目の写真)、父は 「もう遅い。私はニュースが見たい」と拒絶する。アレックスは、「ママ お願い。終わりまで見せてくれたら、洗車するから」と頼むが、「お父さんの言ったこと、聞いたでしょ」と言われただけ。アレックスは、「なぜ、自分のTV 持てないの?」と訊くが、「まだ小さいから」。「ニュースも見れないの?」。「子供向きじゃない」。「僕、もう子供じゃない。クラスの子は、みんな自分の部屋にTVがあるよ」。「人は人」。朝になり、アレックスがTVでコミック・アニメを観ていると、赤ちゃんが泣き止まないので、父は 「アレックス 音を下げろ」と命じる。「弟や妹なんか欲しくなかった」。「下げろ」。アレックスは、「TVも見ちゃイケないなんて!」と怒鳴り(3枚目の写真)、居間を出て行く。

アレックスの父は、自分が子供の時、息子と同じ年齢の時、子供部屋にTVがあったことから、「まだ小さいから」と言った母とは違い、「世の中変わったのよ。番組は、より愚かで暴力的になってるわ」という母の反対を押し切り、アレックスの部屋へのTV導入を承認する。そして、アレックスを前にして、「これは大きな責任だ。私たちは、お前を信頼している。1日に見ていいのは30分。スイッチを切れと言われたら、切ること」と条件を話し、アレックスは、無条件でそれに賛成し(1枚目の写真)、父に抱き着く。そして、ソニーのブラビアのスイッチを入れる。最初に映ったのは、アラブでのテロによる殺害や、中国での市民による警官隊への火炎ビン投げ。チャネルを変えるが、結局は、テロを受けてアメリカ軍が避難民の救援に出動する場面に釘付けになる(2枚目の写真)。次にもう一度注視したのが、最初のアラブのテロで死者が運ばれて行くシーンや 警官隊による催涙弾発射を受けて逃げる市民のシーンなどの “子供には相応しくない” 番組。母が、食事に降りて来ないアレックスに対し、ドアをドンドン叩いて、「鍵をかったの? 何してるの?」と大声で訊いても、アレックスは、敵と戦う勇壮なアメリカ軍を惚れ惚れと見ている(3枚目の写真)。そこから、中東での戦闘シーンが続く。こうして、アレックスは洗脳されていった。恐らく、別の日の夕食。TVを一刻でも早く見たいアレックスは、夕食は半分以上残し、「もう寝るよ」と言って部屋向かう。後を追っていったハリー船長は、ドアから入れず締め出される〔イマジナリーフレンドとしてのハリー船長が消える〕

学校の授業で、「大きくなったら、…になりたい」かについて、レポートを書くよう求められたアレックスは、家に帰ると書き始める。「僕の名前はアレックス。10歳。まだ子供のように見えるけど、もう大人。僕には大きな野心があって、僕の人生はエキサイティングな冒険でいっぱいになるだろう。僕の部屋には兵士の人形がたくさんあり、それに名前をつけた。パットン、モントゴメリー(『パットン大戦車軍団』)、マッカーサー(『マッカーサー』)、ライアン(『プライベート・ライアン』)、カーツ大佐(『地獄の黙示録』)、ジョン・ランボー(『ランボー』シリーズ)〔すべて、アレックスが観たであろう映画の登場人物〕。以前、僕が小さかった頃、僕は宇宙飛行士になりたかった。でも、今じゃ、月に行っても、一人じゃつまんないと思う」。さらに、「パパは、部屋を飾り直すのを手伝ってくれた。ママも慣れてくれないと」。最後は、「TVでは、兵士は海外に送られる。TVに映るのはどれも面白い。僕もいつか、そのうちの1人になりたい。でも、まず、戦争についてもっと知らなくちゃ。大きくなったら、兵士になるんだから」。この言葉で、新たなイマジナリーフレンドが登場する。ジョン・クラスター軍曹だ。顔は、ハリー船長と同じ。着ているものだけでなく、性格が全く違う。そして、服を着て兵士になる準備をするよう命じる。アレックスは、ベッドの上に並べておいてある宇宙服とアメリカ陸軍の戦闘服の前に行く。アレックスの左にある大きな旗は、なぜかネオナチの旗(1枚目の写真、矢印は軍曹)。アレックスは当然迷彩模様の戦闘服を選び、軍曹の前に行き敬礼する(2枚目の写真)。その次は、兵士らしく、髪をカットすること。アレックスは、自ら電気バリカンを使って長い髪の毛を切って行く。軍曹は 「俺たちは兄弟だ。誰にも引き離すことはできん」と言い、その行為を称える(3枚目の写真)。

そこに、母が、「行きましょ。学校の仮装パーティが始まるわよ」と呼びに来て、坊主頭のアレックスを見て絶句する。「何なのそれ? その頭! その服! その仮装、何よ?」。「『ジャーヘッド』〔戦争映画〕だよ、ママ。丸坊主」(1枚目の写真)。父は、「宇宙飛行士はやめたのか? それ、私の軍服か?」と訊き、アレックスは、「イエス・サー」と軍曹に教わった通りに答える〔服のサイズが合ってないのは、そのため〕。そして、学校の講堂に設えられた、「謝肉祭パーティ」の演壇。いろいろな仮装をした生徒達が 父兄の拍手に迎えられて登場する。その中に、軍服姿は3人。クラスの不良2人に、アレックスが加わった形だ。中でも一番のワルが、アレックスに何か言っている(3枚目の写真)。「これからは、仲間だな」とでも言っているのか? 映画の冒頭に登場した校長が壇上に現われ、挨拶する〔観ていて分からなかったのは、壇上の生徒は1クラス分だけ。父兄席の方が多い。どうなっているのだろう?〕。新たな悪友3人組は、壇上からすぐに消えてトイレに行く。ワルが、「マックスは校長のペットだ」と言う。その直後、壇上では、校長が礼服姿のマックスを呼び、音楽教師(?)と一緒にピアノ演奏をさせる。3人がトイレで暇を持て余していると〔1人は、タイルに カギ十字を落書きしている〕、そこに演奏を終えたマックスが入ってくる。ワルは、さっそくマックスにからむ。「それ、チャップリンか?」(3枚目の写真、矢印はマックス)〔まつ毛にチョビ髭〕。「ううん、グルーチョ・マルクス〔アメリカのコメディアン〕だ」。「聞いたことないな」。「道化師か?」。「俺は、告げ口屋は嫌いだ」。「見張ってるからな」(3枚目の写真)。

アレックスは、TVで戦争映画のDVDを何度も繰り返して観る。「敵が1人殺されると、僕はポップコーンを1つ食べる。逆回しすると、死者は生き返る。素晴らしい。多分、いつか、誰かが、僕に同じことをしてくれるだろう」。父が呼ぶ声が聞こえたので、アレックスはすぐにTVを消す。「坊主はどんなだ?」(1枚目の写真)。アレックスが、昔、父が飼っていた犬の毛を剃った時のことを話すと、父は、「お前は、物事を全体として見ないとな。現実と、フィクションを一緒にするな。イマジナリーフレンドは9歳で消えるべきで、お前は10歳だ」と注意する。「パパ、ハリー〔船長〕が死んでから しばらく経つよ」。それを聞いた軍曹はニヤリとする。父がいなくなると、アレックスは、レポートを書き始める。「いつか、兵士になった時、僕はすごい冒険をするだろう」(2枚目の写真)。すると、さっきサインを送った軍曹が、「お前は、各国に侵略し、お前の嫌いな野菜の畑を破壊するだろう。楽しむために」と言い出す(3枚目の写真)。アレックスは、一番嫌いな野菜を並べる。「芽キャベツ、ほうれん草」。学校の授業中のシーン。女性教師は、マックスが書いている文章を見て、「とてもいいわ」と褒め、アレックスに対しては、「最初の1行だけで3つも間違いがあるわよ」と、他の生徒に聞こえるように言う。怒ったアレックスは、指で教師を狙い撃ちすると、空想で、TVゲームの銃が登場し、教師を吹き飛ばす。「クラスター軍曹の助言もあって、僕はコンピュータゲームで、どうやって兵士になるかを学んだ。この前、自分の記録を更新したけど、初心者にとっては大変だった。僕は、10分で234の敵を殺した。ハエのようにバタバタと」。

ある夜、アレックスにお休みを言って廊下に出てきた母に、父が、「会社に行かないと」と言う。「冗談でしょ」。「今、呼び出しがあった」。「もううんざり」(1枚目の写真)。普通なら、夜 仕事に呼び出された夫に、こんな攻撃的なことは言わないと思うが、この時は、双子の女の子が病気だったので、イライラしていて、大声での怒鳴り合いが始まる。それに驚いたアレックスは部屋から出て様子を窺う。「私がいなければ暮らしはどうなる?」。「私が何時間働いてるか知ってるの?」。「レイオフの話なんだ」。「レイオフされたら、私、倍の仕事をしなくてはならなくなるわ」。この口論を聞いたアレックスは、「兵士だったら、結婚する必要なんかない。ただ、国家と結婚しているので、離婚はできない。両親はまだ口論してる。みんな双子のせいだ」。自分の部屋に戻ったアレックスは、アメリカ国旗を背に、軍曹と話し合う。そして、レポートの文章。「兵士になる時、僕は アメリカ陸軍に入隊する。陸軍は最高の戦車や爆撃機を持っていて、防備や攻撃のため、どの国よりも多くのお金を使ってる」。軍曹は、「より良い世界を創る助けになっとる。だが、お前は、大きな代償を払う覚悟をせねばならん」と言う(2枚目の写真)。「大きな代償って?」。「人生を犠牲にする」。こうして、アレックスは、自ら作り出したイマジナリーフレンドにより、洗脳が加速されて行く。「僕は アメリカ人として生き、アメリカ人として死ぬよ」。その日の真夜中。時計は午前2時37分を指している。父の気配でアレックスが起きてきて(3枚目の写真)、「何してるの、パパ?」と訊く。「寝てないのか?」。「ソファを広げたの?」〔父は寝室から追い出された〕。父は自分の “鼾(いびき)” のせいにするが、アレックスは、「嘘だ。止めてよ」と言い、さらに、先ほどの口論の内容から、「僕らを 置き去りにしないで」「3人はずっと一緒だと誓って」と言う〔双子の存在は無視〕。「5人だろ」。「僕、双子は嫌いだ。僕を変な顔で見るし、一言も口をきかない」〔まだ、口がきける年でない〕。アレックスは、何とか両親が仲直りできるよう、「ママに花を贈ったら」と勧める。

学校の美術の時間。マックスの絵を見た教師は、「マックスは、きれいな田舎を、カラフルな世界として見ているのね。モネのように」と褒める。一方、アレックスの絵に対しては、「それに対し、アレックスの絵は、暗く、陰鬱で、終末論的ね。ムンクのように」と、公平に褒める(1枚目の写真)。次の生物の時間。「僕は科学、特に解剖学が好きだ。敵のどこが弱点で、より効率的に破壊できるか分かるからだ」。そして、ランチタイム。アレックスの皿を見た中年の教師が、「なぜ、緑の物を残すの? 野菜には なくてはならないビタミンが含まれているのよ。アレックス、それじゃ赤ちゃんと同じだわ」と批判する。アレックスは、「先生の言うことなんか、どうだっていい。僕のママはネオみたいな薬を飲んでる。赤が1つと青が1つ。間違えたら?」(2枚目の写真)〔ネオとは、映画『マトリックス』 の主人公ネオのこと。モーフィアスがネオに 「青の薬を飲めば、元通りの生活に戻る。赤の薬を飲めば真実を知ることができる」と選択を迫った時の 赤と青のピルだが、教師に分かるハズがない〕。アレックスは、さらに、「いちいち うるさいんだよ。だから、黙っててよ。僕は、こんなの食べない」と、生意気な発言を続ける(3枚目の写真)。怒った教師は、アレックスを、1週間、自由時間剥奪の罰を課し、さらに、今すぐ食堂の壁に向かって立つよう命じる。

別の日、何かの授業で、一等がマックスとポーラのペアだと発表され、賞状とともに、ヒヨコの入った箱がプレゼントされる(1枚目の写真、矢印はヒヨコ)。アレックスとワルは、ヒヨコを盗み出し、トイレに行くと、ワルが 純度の高いアルコールをヒヨコの入ったガラスビンに注ぎ(2枚目の写真、矢印はアルコールと、それを撮影している携帯)、 次には役割を交代し、アレックスが火の点いたマッチを(3枚目の写真、矢印はマッチと、それを撮影している携帯)、ヒヨコのガラスビンに入れ、焼き殺す〔残酷な映像はカットされている〕

ヒヨコの虐殺はまだ知られていなかったが、複数の教師からの報告を受け、校長は両親に精神分析医と相談するよう勧める(1枚目の写真)。両親の認識と、校長から聞いた話とが違うので、最近何が変わったかを尋ねられ、父は「双子」、母は「TV」と答える。分析医は、アレックスが仲間と一緒にヒヨコを盗んだと話し〔焼き殺したことは知らない〕、その意味するであろうことを両親に尋ねる。母は、息子は動物好きだと言うが、分析医は、一般論として、アレックスのようなタイプの子供は、小動物を虐待する傾向があり、それは、生と死を支配していることを示すためだと説明する〔実に的確な指摘〕。そして、いろいろと注意点を述べた後、最後に、「世界は、彼らを中心に回っているわけではいので、従うべきルールがあり、もし彼らがそれを破れば、大変なことになるかもしれません」と警告する。次のシーンで、アレックスは車の助手席に乗っている。父はさっきと同じ服装だが、母は乗っているように見えない。ただ、父が話す言葉から、分析医との話し合いの後、最初にアレックスと会った時の会話だと分かる。「私は仕事で、お前のお母さんもだ。みんな疲れてる。なのに、こんなことになるとは。信じられん」。「なら、忘れて」(2枚目の写真)。

学校で、アレックスが バスケットボールをしていると、そこにマックスの兄が割り込んで来て、ヒヨコを盗んだことを責め、「今度 弟に手を出したら、足を折ってやる」と脅す(1枚目の写真)〔他に仲間がいたのに、アレックスだけ脅すのは、彼しか知らないからか?〕。シーンは変わり、「僕らは、空き地で訓練する。時には痣だらけになる」。そして、ワルが、危険なバタフライナイフを取り出し、自慢げに見せる(2枚目の写真、矢印)。ナイフを触らせてもらったアレックスは、指を怪我する。部屋に戻ったアレックスは、アルコールを含ませた脱脂綿で傷を手当している。「ケガした時、涙を出さなかったのは、立派だったと思う」。横で、冷めた目でそれを見ていた軍曹は、「痛みのいい点は、まだ死んでないと分かることだ」と言う(3枚目の写真、矢印)。さらに、「戦争では、兵士は2つに分かれる。泣く奴と 泣かない奴」とも。アレックスは、「僕は泣かない方です」と言う(4枚目の写真)。「兵士の使命は、敵の殲滅だ」。「サー、イエス、サー」。

アレックスの両親は、再び、精神分析医の部屋にいて、今度は、彼が最近描いた絵を見せられる(1枚目の写真)。人体が切断され、血が吹き出す絵で、正常とはとても思えない。「これらの絵は、彼が、暴力に対して不健全な魅力を感じていることを示しています」。そして、過去にあった恐ろしい事例を紹介する。その後、アレックスの部屋の話になり、父は、アレックスは軍隊が好きで、部屋の中も旗やポスターなどで一杯だと言うが、それに対して反対だとは言わない。それに対し、母は 旗は嫌いで、夫のそうした態度に不満をぶつける。それでも、父は 「息子は10歳です。彼には、自分の部屋を好きなように飾る権利があると思いますね」と、分析医に主張し、「自由は結構ですが、制限は設けないといけません」と、母の立場を支持する。次のシーンでは、母が、アレックスの反対を押し切り、問答無用でTVを持ち去る(2枚目の写真、矢印)。その後、偶然、父の代わりに、浴室で双子の面倒を見ることになったアレックスが、弟の頭を水面下に沈めようとする場面があるが、父がすぐに戻ってきたので、事なきを得る。

アレックスが母の買い物のお供をさせられていると、今や、悪玉No.1になった軍曹が現われ、アレックスを煽動する。「伍長。訓練の時間だ」〔いつ、伍長になったのだろう?〕。「イエス・サー」。「この辺には、人間のクズが多い。ベトコンどもだ。地獄に送り返してやれ」(1枚目の写真)。そして、老人が来ると、「老人は役立たずだ」。ショートパンツにニーハイソックスの女性が来ると、「ふしだら女は殺せ」と言い、「バン、死んだ」。アラブ系の女性が来ると、「移民ゴミ」と言い、「寄生虫ども!」と罵る〔恐ろしいのは、軍曹は単なるイマジナリーフレンドなので、これらの他人には聞こえない言葉が、アレックスの頭の中で作り出されていることだ。TVのせいで、まともな小学生ではなくなっている。この映画は2010年の上映なので、現代なら、SNSの秘匿性にフェイク情報が加わり、事態はより深刻化する可能性がある〕。家に戻ったアレックスはレポートを書き綴る。「僕が世界を支配したら、悪者どもは逃げ足が遅いから、破滅させてやる。唾を吐きかけ、監禁する。刑務所行きだ。疲れ果てるまで、手を上げ続けさせる。必要なら、拷問する。本当のワルなら殺してやる」。その後、3人組は、学校のトイレに閉じこもり、ワルと 3人目は禁じられたタバコを吸い、アレックスはバタフライナイフの練習に余念がない(2枚目の写真)。ワルは、アレックスに 「欲しけりゃ 持ってろ」と バタフライナイフを預ける。アレックスは立ち上がると、3人目の口からタバコを奪うと、トイレの中央まで歩いて行き、トイレのドアに向かって小便を始める。すると、いきなりドアが開き、そこに現れたのは、アレックスを一番嫌っている女性教師(3枚目の写真、矢印は小便)。アレックスは教師が現われても小便をやめず、教師が文句を言っても、3人と一緒に出て行く。

当然、両親は、精神分析医に呼び出される。そして、「より強い手段を取らなければ」 と告げられる(1枚目の写真)。最初、父は、アレックスと話し合おうとするが、全くうまくいかない(2枚目の写真)。効果が出たのは、アレックスが直接 分析医のところに連れて行かれた時。分析医は、アレックスの急速な異変が、軍隊に対する憧れから来ているものだと正しく解釈し、TVで、内戦の結果、一般の市民がどれほど苦しみ、あるいは、悲嘆にくれているかを集約した映像を見せる(3枚目の写真)。その映像は、軍隊の “カッコよさ” ばかり注目していたアレックスにとって大きな衝撃だった(4枚目の写真)。そして、軍隊を嫌っていた母のところに行くと、「ママ、嫌な思いをさせてごめんなさい。二度としません」と謝る。

アレックスは、さっそく改心したところを見せようと、静かに暴力的でないマンガの本を読んでいる〔10歳なら、普通の児童文学でも読めばいいのに…〕。母は、「あなたが、読んでるのを見るの好き。面白い?」と訊く。「まあね」と言いつつ、アレックスの視線は血まみれの死体が載っている新聞に… すると、そこに、久々に登場したハリー船長の足が乗り、見えないようにする(1枚目の写真)。母が部屋から出て行くと、アレックスは船長に抱き着く。そして、翌朝。母が、アレックスを学校まで車で送ってくる。アレックスを待ち構えていたのは、いつもの2人。さっそく、3人目が、母親による送迎をからかう。ワルは、「タバコ吸うか?」と訊くが(2枚目の写真)、アレックスは、それには取り合わず。クラスに向かう。その後ろを、ハリー船長が、アレックスの気が変わらないように防御姿勢で続く(3枚目の写真)。

その日の美術の時間。教師は、アレックスの描いた絵が、いつもと全く違って、非常に子供らしくて平和的なのにびっくりする(1枚目の写真)。それを見たワルは 「何だよそれ?!」と呆れ、3人目は 「ひどい」の一言(2枚目の写真)。ワルは 「あのゴミ、お前が描いたのか?」と直接尋ね、アレックスは 「黙れ。放っといてくれ」と言う。

その時、軍曹が現われ、「お前の友だちは正しい」と言うが(1枚目の写真)、「言わせとけ。僕は、ママにいい子になるって約束した。もう泣かせたくない。それに、兵士になんかなりたくない。宇宙飛行士になりたい」(2枚目の写真)。そう言うと、反対側にいるハリー船長の方を見る。軍曹は消える。いつものバスケットボール遊びの最中、2人から罵られたアレックスは、さっさと出て行き、玄関を出た所で仲良く座って話をしていたマックスとポーラの前まで行くと、「ねえ、マックス、最近の僕、すごくバカなことしてきたけど、仲直りしたいんだ」と声をかけ、「OK」と言われ、「ありがとう」と2人の横に座る(3枚目の写真)。

アレックスの部屋の飾りは、再び宇宙に変わり、船長と一緒にレポートを書く。「僕はアレックス。大きくなったら、宇宙飛行士になりたい」(1枚目の写真)。部屋から出て、父の前を通った時、アレックスは、携帯にメッセージが入っているのに気付き、父に知らせる。「マリアからだよ」。それを聞いた父は、アレックスの手から携帯をひったくる。「マリアって誰?」。「お前に関係ない」(2枚目の写真)。「ママの友だち?」。「私の同僚だ」。「いいか、すべて忘れるんだ」。「なぜ、忘れるの? 秘密なの?」。「ああ、秘密なんだ」。「もし、僕が秘密を守れば、TVを戻してもらえる?」。「議論の余地はあるな。部屋に入ってろ」〔なぜ、宇宙飛行士だと決めたのに、しかも、母と約束したのに、TVのことを言い出したのか分からない〕。そして学校で。悪いことは重なる。アレックスがトイレに行くと、中はタバコ臭い。そこにいたのは、ワル達2人。アレックスは勧められたタバコを断固拒否するが、そこに運悪く、例の、アレックスを一番嫌っている女性教師が入って来て、アレックスがタバコを吸っていたと確信する。そして、また両親を呼ぶと言ったので、アレックスは、「僕は何もしてない。トイレに来ただけだ」というが、意地悪教師は全く信じない。それを聞いたアレックスは、怒って出て行く(3枚目の写真)。

悪は手を休めない。アレックスとマックスとポーラの3人が館内階段に固まって座っていると、そこにワル達2人が通りかかる。ワルが、「お前ら、親しいんだな」と からかう。アレックスは、「あっち行けよ」と言うが、ワルは、「ビデオ、見せたのか?」と訊く。困ったようなアレックスの顔を見たワルは、「ないんか。大画面で上映する価値があるよな」と言い出す。アレックス:「『あっち行け』 と言ったろ」。ワルは、それを無視して、携帯をマックスに渡す(1枚目の写真、矢印)。そして、「俺たちは、ヒヨコをつかむと、フラスコに入れ、アルコールを入れて、ボン」と説明し、ヒヨコの映像が映る(2枚目の写真、矢印はアルコール)。それを見たマックスとポーラは、アレックスをその場に残して無言で立ち去る。部屋に帰ったアレックスは、屑籠に丸めて捨てたレポートを取り出して、平らに拡げる。それを見た軍曹は、アレックスに向かって敬礼する。そして、アレックスも、それに応えて敬礼する。これで、一旦は正常に戻りかけたアレックスが、元に戻ってしまった。ここで、マックスとその兄が映る。マックスは、兄に不満をぶつけ、「あいつがヒヨコを焼いたように、あいつを焼いてよ。ひどい目に遭うのが見たいんだ」と頼む(3枚目の写真)。兄は、「お前、アレックスみたいに話すな。やめろ」と叱った上で、「心配するな。奴らは、もうお前には手を出さん。しようとしたら、守ってやる」と言う。

ある日、アレックスが部屋に入ると、大事にしていたランボーのフィギュアの片手と片足がちぎれて床に転がっている(1枚目の写真)。やったのは双子の弟しかいないので、アレックウは居間に飛んで行くと、弟に向かって、「なんでランボーを殺した?!」と怒鳴る。すぐには母が駆け付ける。アレックスは、「こいつ、ランボーを壊した!」と訴える。しかし、母は、「赤ちゃんよ」と正当化しようとし、それに対し、アレックスは、「関係ない。こいつ下衆野郎だ!」と文句を言う。母は、即座にアレックスの頬を引っ叩き、「お止め! この家で、そんな下品な言葉を使うのは許しませんよ!」と叱る(2枚目の写真)。アレックスは、「どうでもいい! 2人とも大嫌いだ!」と怒鳴り、母は、もう一度引っ叩こうとして 手を上げる。「叩けよ!」。そして、「大嫌いだ! みんな嫌いだ!」と怒鳴って立ち去る。部屋に戻ったアレックスは、ベッドに寝転がる。そこに、話を聞いた父が入って来る。アレックスは、「TVを返して欲しい」と要求する。「あんなことがあった後で、TVを戻せと頼むのか? なんてスポイルされたガキだ」。「TVを返してくれないんなら、メッセージのことママに話すから」(3枚目の写真)。

次の場面では、アレックスと軍曹が並んでTVを見ている。内容は分からないが、アレックスが汚い言葉を並べるので、ろくでもない内容に違いない(1枚目の写真)。その時、ドアをドンドンと叩く音が聞こえる。アレックスは、「今、行く!」と大きな声で言い、軍曹には 「プライバシーもない」とブツブツ。居間に呼ばれたアレックスに対し、向かい合って坐った両親。父は、「お前の年齢なら理解できる。私と、お前のお母さんの間は、今、うまくいっていない。お前だって気付いてるだろ。私たちは、別れることに決めた」と、思いもよらぬことを告げる(2枚目の写真)。アレックスは、「別れるのは、僕のせい?」と訊く(3枚目の写真)。母は 「いいえ、あなたのためよ」と アレックスには意味不明のことを言ったので、アレックスは 「もし、僕のためなら、別れて欲しくない」と打ち消す。そこで、父は、「そうは いかないんだ」と、淡い期待を消す。それを聞いたアレックスは、「みんな双子のせいだ」と拗(す)ね、母は 何の関係もないと断言する〔半分は、アレックスのせい〕。アレックスは、「大嫌いだ!!」と怒鳴って居間を出て行く。

部屋に閉じこもったアレックスに対し、母がドアをノックして、「開けてちょうだい」と言うが、アレックスは、ドアに背を向けて座り、涙を流すが、何も答えない。そんなアレックスに、軍曹が 「妥協してはならんぞ。兵士は決して降伏せん。戦いを続けろ」と指図する(1枚目の写真)。それに対し、「サー、イエス、サー」と答えたアレックスは、ドアの向こうの母に向かって、「大嫌いだ! 向こうに行け!」と怒鳴る。そのあと、軍曹は、アレックスにあるとあらゆる汚い罵り言葉をアレックスに言わせる。「ちくしょう! クソ野郎! クソ食らえ!」(2枚目の写真)〔軍曹は、イマジナリーフレンドなので、アレックス自身がこうした言葉を知っていることになる〕。軍曹はさらに、「俺は傲慢で不愉快な奴かもしれんが、傲慢なくそ野郎じゃない。俺は、お前を立派な兵士に変えるために、全力を尽くしとるんだ」と、洗脳するように囁き、「理解したか?」と訊く。それに対し、アレックスは、全身全霊を込めて、「サー、イエス、サー」と吼える(3枚目の写真)〔両親の離婚を聞いて、最悪の方に走り出した〕。そして、その後、TVで洗脳された少年兵の多数出て来る場面を見続ける。アレックスは にっくき双子を始末しようと、2人にバタフライナイフを渡す。2人は奪い合いになるが、そこに母がやって来たので、アレックスは急いでナイフを取り上げ、事なきを得る。

学校に行ったアレックスは、放課後、教室の窓から、爆弾を投げる感覚で、水の入った風船を投げ、当たったマックスが水浸しになる(1枚目の写真)。その水風船を何個も投げているうち、生徒からの通報で、アレックスを一番嫌っている女性教師が教室に飛びこんで来て、「忍耐も限界ね。もう続かないわよ」と、退学を臭わせる。それに対し、アレックスは、「忍耐?! 僕の前で、二度と、絶対、忍耐などと言うな!!」と大声で怒鳴り、さらに、「あんたが娼婦のように話すなら、僕が、娼婦のようにぶっ叩いてやる!」と言い(2枚目の写真)、水風船を窓から投げる。「何て言ったの?」。アレックスは、さっきの “娼婦” 云々の言葉を、そのままくり返す(3枚目の写真)。「退学!」。アレックスは、「勝手にしやがれ! あんたは、教師じゃなくて、スベタだ!」と叫んで、教室を出て行く。

トイレに行ったアレックスは、個室から出ようとしたマックスを捕まえると、「どうした? 話がある。お前は、死んで家に帰るか、首の骨を折るかだ。どっちか選ばせてやる」と脅す(1枚目の写真)。背後では、ワル2人組が それを見ている。ワルの方は、いつも通り、ニヤつきながら携帯でその様子を動画で撮影する。アレックスは、マックスを個室の1つに押し入れる。ワルほど悪くないもう一人は、これは大変なことになると、トイレから走り出す。一方、自宅では、母が、アレックスの部屋を探し回り、レポートを見つけて読み始める。「たくさん殺せば、給与も増える。僕が兵士になったら、皆殺しをする。そうやって、両親を助ける。稼いだ金の半分を与える」。トイレから走り出した、ワルNo.2は、マックスの兄を見つけると、「アレックスが マックスをぶっ飛ばすよ」と伝える(2枚目の写真)〔この少年が一番悪い〕。アレックスが何をしようとしているのかよく分からないが、マックスの頭を便器に突っ込もうとしているようにも見える。ワルは、まだ面白がって、携帯で撮影している〔だから、2人目が、マックスの兄を呼びにいったこと自体、不自然に思える〕。アレックスの行為を、ハリー船長と軍曹が別の立場から止めようとし、アレックスはそれに対し反論する。ワルには、船長も軍曹も存在しないので、アレックスの気が触れたとしか見えない。そこに、マックスの兄が 弟を助けようと駆け込んで来る(3枚目の写真)。「貴様をぶっ飛ばしてやる! なんで弟に手を出した?!」と言いながら、アレックスをつかんでマックスから引き離す。ここで、ワルが逃げ出し、兄が追おうとして手を放した隙に、アレックスも逃げ出す。

アレックスは必死に逃げる。「兵士になることは危険な仕事だって知ってるけど、構うもんか。僕は、決して死なないから。僕はすごく勇敢だから、絶対 捕まらない。超高速で走る。敵は 絶対に追いつけない」。大人の兵士になったアレックスなら、レポート通りかもしれないが、アレックスの兄は、体の大きさが圧倒的に大きく、追い付かれてしまう。そして、ガード下のような場所のコンクリートの壁に叩き付けられ、足蹴にされる(1枚目の写真)。兄の暴力は、アレックスがマックスにしたことの数倍もひどい。殺されると思ったアレックスは、バタフライナイフを取り出す(2枚目の写真)。しかし、使い方に慣れていないので、あっという間に腕を押さえられ、ナイフを奪おうとした兄に、胸を刺される。アレックスは瀕死の重傷を負ってその場に倒れ込み、怖くなった兄は逃げ去る(3枚目の写真)。

「僕、死ぬの?」。ハリー船長が、付き添うように横になると、「そうだよ」と言う。「でも、まだ死ぬ準備ができてない」(1枚目の写真)「まだ 10歳だ。助けて」。すると、軍曹の声が聞こえてくる。「兵士なら、いつでも死ねる覚悟がないといかん。分かるか?」(2枚目の写真)。囁くように 「イエス・サー」。「声が小さい」。「イエス・サー」。「僕、意味もなく死ぬだけ?」。「多分な」。ここで、軍曹から船長に変わる。「アルファ・ケンタウリ〔ケンタウルス座で最も明るい星〕で会えるかな?」。「会えるとも」。こうして、アレックスは息を引き取る。母が読んでいるレポート(3枚目の写真、矢印)の声だけが続く。しかし、内容は、アレックスが書いたものとは思えない。アレックスの声を借りて、映画の製作者が訴えたいことを述べているように思われる。背景に流れるTV映像も、戦争の悲惨さを強調したものになっている。「僕は、レポートを終わるにあたり、こう言いたい。僕は、より良い世界を築くような兵士になりたい。年寄りが壊してしまった世界。それを修正するのは僕の役目だ。あんたたちは、間違ったことをしてきた。戦わなくてもいいのに戦った。僕らに地球を汚染させるなと言うくせに、あんたたちは何もしなかった。皿を残さず食べろと言うくせに、大量の食べ物を捨ててる。暴力を非難しつつ、それを使う。あんたたちのせいで、世界はおぞましい場所になってしまった」。

映画の最後。突然、アレックスを失った両親が、茫然と居間に座っている。父は涙を流しているが、母は、考え込んでいる。すると、母が急に左を向く。すると、廊下の向こうから、宇宙飛行士のヘルメットを持ったアレックスがこっちに歩いてくる(1枚目の写真、矢印)。アレックスは、母の前まで来ると、「ママ、意思疎通に問題があると思うよ」と言う。母は、左手を伸ばして、「おいで」と言う。その時になって始めて、父が、何事かと妻の方を振り返るので、父にはアレックスが見えていない〔当然、声も聞こえない〕。母は、「遅いわ。もう寝ないと」と言うと、アレックスと手をつないで、息子の部屋に一緒に歩いて行く。しかし、父の目には、母1人が右手を伸ばして歩いて行くように見える(2枚目の写真、矢印)〔アレックスは、母のイマジナリーフレンドになったのか?〕。エンドクレジットの途中で、校長役の俳優が登場し、映画の主旨を述べる。「社会は変化しています。今日、我々は自らを平和主義者だと宣言しています。我々は人権問題と死刑廃止のため運動してします。我々は、内戦中の国々で犯された不正行為、暴力、拷問の犠牲者を支援しています。その上、我々は、家庭内での暴力や虐待を非難しています。しかし、我々は子供たちがTVで見ているものをコントロールできていません。放送されている戦争犯罪、悲劇、耐え難い暴力は、我々の想像以上に生々しいものです。画面を席巻しているこの暴力前で 平然と昼食や夕食の席についているのは事実であり、それはごく普通のことだと思い込んでいます。それは 無関心なのではなく、他人事なのです。しかし、我々の子供たちは、見るものすべてを模倣します。我々はそれを忘れがちです」。

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