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Eskil och Trinidad エスキルとトリニダッド

スウェーデン映画 (2013)

スウェーデンの山の中という映画は時々あるが、その大半はすべて大自然が舞台で、この映画のようにダム・発電所のような “面白味に欠ける” 施設が対象となった例はみたことがない。ただ、もう一人の主人公トリニダッドが造ったヨットが ダム湖に向かってレールを滑っていく様は、5年以上前に紹介した『Slaughter of the Innocents(ザ・スローター/赤い迷宮)』(1993)で 宗教的狂信者が山上に造った方舟を彷彿とさせる。また、元プロのアイスホッケー選手の父親は、未紹介の映画『Breakfast with Scot(スコットと朝食を)』(2007)で、弟の死んだ妻の残した子を引き取ることになった元プロでゲイのアイスホッケー選手と、“子供に対する無理解さ” という点で似ている。映画のプロットは2つに分かれる。1つは、元プロのアイスホッケー選手だった父が、息子のエスキルに過度の期待をかけ続けるが、エスキルはゴーリーとしては最低の腕前。そんなことを、なぜ父が把握していないのか不思議なくらいの下手さ。父の仕事の関係上、年に何回、もしくは、十数回の転校を強いられているので、巧くなりたくても、身の入った練習などできないのが実情だし、そもそもエスキルは父に言われてアイスホッケーを嫌々やっている感じがする。そんなエスキルの代わりに、“エスキル” になりきってゴーリーをやってくれるのが、エスキルの父と同じ会社の技術社員で、点々と配置先の変わる父を持つ少女ミリヤ。少年チームに少女が内緒で入るというあり得ないパターンは、少女サッカーチームに 少年が内緒で入る 既紹介の映画『Ladybugs(恋のレディ&レディ?)』(1992)の裏返しだ。プロットの2つ目は、居場所のなくなったエスキルには、別居中の母の影響で、ヨットに対する強い関心がある〔乗るのではなく、ヨットという船舶構造に対する〕。そして、父が1週間だけ赴任した発電所の近くには、“変人” というレッテルを貼られた老女が 何年もかけて密かにヨットを造っていた。こうして、エスキルにはヨット造りを助ける という重要な使命ができた。かなり変わったストーリー展開だが、子供向きの映画にしては、幾つも “あり得ない” シチュエーションが前提として組み込まれていて、現実性を欠いた内容になっている。一番の問題はヨット。老女がダムの存在を知らずに、カリブ海まで行くためのヨットを何年もかけて造ってきたという設定には大いに疑問を感じるし、スウェーデンの川には〔日本の川でもそうだが〕、浅瀬や急流もあるし、ダム・発電所も途中に複数あるので、そこを外航用の大型ヨットで航行しようと考えること自体 “狂気” としか言いようがない。使用したDVDはドイツのアマゾンから購入したもので、こちらもうっかりしていたが、ドイツ語の吹替え版だった。しかも、ドイツ語の字幕は入っていない。WEBで入手可能な字幕は英語とフィンランド語のみ。英語字幕の信頼度は20%で使用に耐えず、ここではフィンランド語字幕を使用した。

11歳のエスキルは、北欧最大の電力会社に技術者として勤める父の仕事の都合上、転校を繰り返す生活を強いられている。映画のスタートは、短期間在籍したクラスでのお別れシーンから。記念に渡された集合写真にも、年1回の撮影なので、エスキルは入っていない。こうして、エスキルは、父の受け持ちのスウェーデン東部の山間部のどこかの町に引っ越す。そこには、同じように点々と勤務地を変えてきた別の技術者が1日前に着いていて、その一家には、エスキルと同い年の可愛い少女ミリヤもいて、エスキルは心惹かれる。父は、昔、プロのアイスホッケーの選手だったため、エスキルにも同じようになることを期待し、どちらかと言えば、無理矢理アイスホッケーをさせている。地元のチームは、クリスマス以来連敗しているので、有名選手の息子のチーム入りに期待をかけている。しかし、実際にゴーリーとして練習させてみたら、1球も取れないヘタクソさ。一方、ミリヤは、ゴーリーをしたくてたまらないのに、小さな町なので、少女チームがなくてがっかり。練習終了後に、エスキルに頼んで ゴーリーをさせてもらう。そしたら、100%の守備力。それを偶然見たコーチは、エスキルの代わりに、“エスキル” として〔規約に違反して〕ゴーリーになるよう頼む。ゴーリーがしたくてたまらないミリヤは、屈辱的な条件を飲み、髪まで切ってエスキルの代役を務めることに合意する〔マスクを被るので見分けがつかない〕。エスキルは、地元の子が、“小さな子を煮て その脂肪を飲んで長生きしている化け物” と思っている老女トリニダッドが、実は、巨大な作業小屋の中でヨットを造っていることを知り、元々、別居中の母から、伝統的な北欧のヨットに関する知識を与えられていた上に、チームの練習中は家に戻れないことから、トリニダッドに頼み込み、ほとんど完成したヨットの最後の仕上げを手伝わせてもらう。トリニダッドの目的は、暖かくて氷のない理想の天国トリニダッド〔日本名トリニダード、カリブ海の島〕に そのヨットで行くこと。彼女は 町の人にも参加を促すが、変人の烙印を押された老女の話に耳を傾ける者は誰もいない。一方、エスキルの父と母は、母がうつ病で故郷のデンマークに行ってからは、離婚に近い状態が続いている。ただし、実態はエスキルに伏せられている。エスキルは、アイスホッケーしか頭にない父と、電話代が高いからと 話すことも間々ならない愛しい母の間で、心が揺れる。そして、アイスホッケーの試合の日。その日の夜は、トリニダッドの船出の日でもある。試合でチームが勝った後、“エスキル” がいると教えられた場所に、おめでとうを言いに行った父は、ミリヤを発見して驚愕・落胆し、エスキルに怒りをぶつける。父を見限ったエスキルは、トリニダッドのヨットに同乗するが、ヨットはダムに阻まれて先に進めなくなる…

主役のエスキル役は、リナス・オスカション(Linus Oscarsson)〔FARVOの発音サイトによる〕。生年不詳だが、映画の設定と同じ11歳であろう。これが映画初出演。演技力は中程度。

あらすじ

映画の冒頭、デンマークの砂浜でエスキルと母が楽しそうに佇む姿が、オープニングクレジットの合間に3回の短いカットで示され、題名が表示される。その直後、スウェーデン北部の地図が映り、スウェーデンのどこかにある小学校の教室に変わる。エスキル1人が教壇の前に立ち、女性教師が「一緒に見てみましょうね」と言いながら、差し棒で地図の特定の地点を指し(1枚目の写真)、ローカルな地名を並べる。「今言ったどこかに行くのかな?」。「たぶん。今、先生が言った幾つかには、きっともう住んだことがあります」(2枚目の写真)。その時、窓の外に、父の赤いステーションワゴン〔2輪のトレーラーを牽いている〕が乗りつける。「行かないと」。エスキルは机からバッグを取り上げて肩にかける。教師は、お別れにと、クラスで撮った写真をプレゼントする〔ただし、その時エスキルはこのクラスにいなかったので、写ってはいない〕。エスキルは、握手の手を差し出し、「お会いできて楽しかったです」と、礼儀正しくお礼を述べる(3枚目の写真)。最前列に座っていた太った子が、「試合で会おうぜ」と、冷やかし気味に声を掛け、ニヤニヤする。廊下に出たエスキルは、壁に立てかけてあったアイスホッケーのスティック20本くらいをなぎ倒して走り去る〔チームにバカにされた腹いせ?〕

エスキルを乗せた赤いステーションワゴンが雪の残る森林地帯を疾走する(1枚目の写真)。エスキルが、「こんどの場所には どのくらい住むの?」と訊くと、父は 「仕事は復活祭までに終わる」と答える〔2012年の復活祭は4月8日〕。「ママは来るかな?」。「デンマークに復活祭休暇があるかどうか知らない。訊いてみないと」〔この発言から、父はスウェーデン人で母はデンマーク人だと推測できる〕。「それとも、僕があっちに行くか」。「何だと?」。「別に〔デンマーク語〕。父は、すかさず 「スウェーデン語を話せ」と言う。その言い方が不味かったと思った父は、“悪ふざけ” をやろうと言い出す。この “悪ふざけ” は父の定番らしく、エスキルはさっそく両手をつっかえ棒代わりにして体を固定する。父は居眠りのフリをしてワザと車を蛇行させる(2・3枚目の写真)〔雪の残る路面で、かなり危険な行為〕。軽快な曲が流れ、いつしか車は、父が数ヶ月働くことになるダムの上を走る。ダム湖は真っ白に凍り付いている。父が最初に乗りつけたのは、会社でも 住むことになる家でもなく、地元のアイスホッケー場。ここが、アイスホッケーの選手でもあるエスキルのホーム・アリーナになるので、父は中に連れて行く。そして、①このチームのコーチはゴーリー〔ゴールテンダー〕を欲しがっていること、②練習は明日の6時に始まるとエスキルに教える。父は、昔アイスホッケーの選手として名を馳せただけあって、エスキルの思いを無視して、息子にアイスホッケーを強い、彼もそれを望んでいると思い込んでいる。

父が、ようやくアイスホッケー場を離れた頃、辺りは薄暗くなりかけていた。彼が2番目に寄ったのは、父と同じように短期間にダム(発電所)で働く技師の住まいで、目的は、自分とエスキル用の住まいの鍵を受け取るため。エスキルが窓を見ると、そこには自分と同年代の少女が見える(1枚目の写真)。エスキルは、思わず微笑んでしまう(2枚目の写真)。それを見た少女も微笑む。父は、エスキルに外にいないで、中に入ってきて挨拶するよう促す。すると、相手の奥さんが出て来て、自分達も昨日着いたばかりで、荷物の整理中だと話す。そして、一緒にコーヒーを飲むよう勧める。相手の旦那は、水力タービンが試運転中に破損したと話し、さっそく父と技術的な話に入る。一方、少女はエスキルに 1枚の集合写真を見せ、「私、ここにいたの? 行ったことある?」と訊く。エスキルは否定。「ここ、Messaure〔1963年に造られたダム〕よ。住んだことないの?」。「あるかも。よく覚えてない」。2つの家族は、コーヒーとデザートを食べる。その中で、相手の奥さんが、父に 「奥さんは?」と訊く。「メッテです」。「もうこちらに?」。「デンマークの家にいます。ここでは職がなくて」。相手の旦那は 「記者だったよね?」と訊く。そこで、エスキルが嬉しそうに説明する。「ええ、新聞で働いてるんです」(3枚目の写真)〔この話が、現在でも本当なのか 映画の最後まで分からない(①それを聞いた時の父の顔が曇る、②映画の中盤での母とエスキルの会話から、恐らく今では辞めている)〕。少女は 「週末には来るんでしょ?」と訊く。「ううん、仕事がある。だけど、復活祭には会いに行かないと」。そう言って父の顔を見るが、父の顔は相変わらず厳しい。夜遅く、父は、くたびれて眠ってしまったエスキルを抱えて小さな家に行き、取り敢えず、エスキルを居間のソファに寝かせる。

翌朝、ソファで目を覚ましたエスキルは(1枚目の写真)、部屋の中を見回した後で、一番近くに置いてあったダンボール箱の中から、母とのツーショット写真を取り出す〔背景はコペンハーゲンの観光地ニューハウン〕。2つ目に取り出したのはボトルシップ〔ガラス瓶の中に入った小さな帆船の模型〕。すると、そこに父が現われ、奇妙なことを言う。「それはママの箱だぞ。勝手に開けるんじゃない」〔昨夜、父は、妻のことを 「デンマークの家にいます。ここでは職がなくて」と言い、さらに、エスキルは 「週末には来るんでしょ?」の問いに対し 「ううん、仕事がある。だけど、復活祭には会いに行かないと」と答えている。つまり、母がダム現場に来ることは想定されていない。それなのに、なぜ「ママの箱」があるのか?〕。この意地悪な叱咤に対し、エスキルは、「これは僕の船だ。ママが僕に作ってくれたんだ」と反論する(2枚目の写真)。アイスホッケーのことしか頭にない父は、「スケートを研いでおいたぞ」と言った後で、住むことになった町の地図を見せ(3枚目の写真)〔この地図はフェイク/少なくとも、ロケ地のJokkmokkの地図ではない〕、どこに学校があり〔10時が始業時間〕、どこにアリーナがあるかを教えた後で、「俺の帰宅は遅くなる。あとで、お金と買い物リストを渡す」と言う〔夕食は自分で作れ、と言う意味〕。最後に、アイスホッケーのバッグの中にサプライズがあると教えるが、エスキルはそれを聞いてもあまり嬉しそうではない。父が出て行った後で、バッグを開けると、それはゴーリーのグローブだった。

その日の10時、エスキルと昨日会った少女と一緒に、クラスで転校生として紹介される。「ミリヤさんとエスキル君ようこそ。2人は復活祭まで一緒に勉強します。一番後ろの席に一緒に座って」(1枚目の写真)。放課後、子供達が雪の校庭でアイスホッケーのスティックで遊んでいる。そこに、校舎からエスキルが出てくると、ミリヤがすぐ後を追ってきて 話しかける。「練習はいつ終わるの?」。「多分 7時。6時から始めるから。どうして訊くの?」。「その後で、フィギュアできるわよね」。「君、やるの?」。「ホントはホッケーなんだけど、ここには女子チームないから、体をほぐすの」(2枚目の写真)。「君、次はどこ行くか知ってる?」。「ううん、あんたは?」。「バッテンフォール〔北欧一の電力会社〕が決めるさ」。ここで、父が働くことになるダムと発電所の俯瞰映像が映る(3枚目の写真)。因みに、ここは、ラクセデ(Laxede)というダム・発電所。4枚目に、グーグルの航空写真を示す。ルーレ(Lule)川を締め切るこのダムの建設が始まったのは1958年。ルーレ川を流下する丸太が通過できるよう長さ122mのflottningskanalなるものが造られたとあるが、どんなものかはWEB上では分からない。このダム・発電所のスウェーデン国内での位置は、5枚目のグーグルマップの中に小さな○印で示す。映画のロケに使われたヨックモック(Jokkmokk)という人口2700人余のこの地方の中心コミューンは、ラクセデダム・発電所の約60キロ北西にある。

真っ暗な雪道を、アイスホッケーの練習に行こうと橇でゆっくり進んでいたエスキルは、森の中で明るい蒸気が立ち昇るのを見て何事だろうと思う。そこに、スノーモービルに乗った同級生2人が通りかかり、「やあ、エスキル」。「あれ、トリニダッドだぞ。来いよ」と誘う。3人は、除雪した雪の壁に向かう(1枚目の写真)。3人は壁の上まで登って、その向こうに拡がる不思議な光景を見下ろす。「あいつがトリニダッドだ。小さな子をキャンディーで釣って ここまで連れてくると、あそこで煮ちまう。そしたら、脂肪を集めるんだ」。「どうして?」。「小さな子の脂肪を飲むと、長生きできるんだ。あいつは、150歳を超えてる」。「消えた子がいるの?」。「昔の話さ」。ここで、エスキルが、「僕、あれ何か知ってる。煮沸槽だ。煮沸して木を曲げるんだ」と教える(3枚目の写真、矢印は板を持ったトリニダッド)〔帆船の舷側に使われるカーブした板を作るため/「長時間煮沸して木の繊維を柔らかくして曲げる」と書いてあった〕

エスキルにとって、地元の子供アイスホッケー・チームの練習への初参加。コーチは、練習を始める前に、全員を集め、プロ野球カードのようなプロ・アイスホッケー・カードを1枚取り出すと、チームで一番詳しいベニーに見せる。ベニーは、「ロガー・ルンディン、Björklöven〔北中部最大の都市ウメオ(Umeå)のプロ・チーム〕とLuleå HF〔北部最大の都市ルレオ(Luleå)のプロ・チーム/ルレオは先のルーレ川の河口にある〕のゴーリー」と すらすらと答える。そのカードの写真はエスキルの父だ。コーチは 「そのあと、フィラデルフィア・フライヤーズ〔アメリカ〕に引き抜かれた」と言い、ベニーは 「ううん、ニューヨーク・レンジャースだよ」と否定し、コーチは 「違う。膝の故障で取り止めになった」と再訂正。「このカードの男が、電話をかけてきた。こっちに転勤になるから、息子をプレーさせてくれるかって。彼はゴーリーで、そこに座ってる」(1枚目の写真)「決勝戦の1週間前にだぞ。彼は、自分が どれほど歓迎されるか分かってないようだ」。そして、「エスキル・ルンディン!」と呼んで、拍手する。他の選手も期待して唱和する。エスキルは、さっそくゴールの前に立ち(2枚目の写真)〔マスクが頑丈なので 顔がほとんど分からない〕、他の選手は、横一線に並び、順番にエスキルめがけてパックを打ち込む。全員の期待に反し、エスキルは1球も阻止できない(3枚目の写真)。コーチは、最初の日なので戸惑ったのだろうと思い、観客席で休ませる。

父のリストあったものを買うと、エスキルは家に帰り、食品を冷蔵庫に入れる。コールプディング(Kålpudding)〔スウェーデン風キャベツと挽き肉の重ね焼き〕、ブレゴット(Bregott)〔バターに植物性脂肪を配合させたスウェーデン独自のパンに塗るもの〕など。エスキルは、さっそくコールプディングを1個オーブンに入れ、焼いている間に、鏡の前に行き、パックが当たってケガをした腕の様子を見る。その後、鏡を真っ直ぐ見つめて、今後どうなるかを心配する(1枚目の写真)〔エスキルは、父に言われてアイスホッケーをしているだけで、本当はちっともやりたくない〕。自分に割り当てられた部屋に行くと、母からもらった帆船の写真や図面をホワイトボートにマグネットで留め、それを壁に取り付ける(2枚目の写真)〔エスキルの趣味は、母ゆずりの帆船〕。その下には、最初に出てきた母とのツーショット写真を置く。前のクラスで担任からプレゼントされた集合写真を机に置くと、小箱からエスキルの顔の写真を小さくくり抜いたものを1枚取り出し、集合写真に貼り込む〔くり抜いた顔写真は数十枚もあるので、如何に転校が多いかが分かる〕。そして、エスキルは、母への手紙を書く。「やあ、ママ。また引っ越したよ。いつも同じ。川のそばで発電所がある。村の名前も、またサーミ〔スカンジナビア半島北部の先住民族〕みたい。ここにもホッケーがあり、ママはいない。あざも、ママが息を吹きかけてくれたら、早く治るのに。デンマークでは氷がなくて船が通れるといいね。エスキル」。翌朝、時計は7時53分を指している。エスキルと父は 狭い食堂にいて、エスキルは ブリス六分儀を覗いている(3枚目の写真)。父が、「それ何だ?」と訊くと、「Yrvind〔スウェーデンの船大工・冒険家、1980年に20フィートの自家製ボートで南アメリカのホーン岬を通過、2011年には15フィートの自家製ボートでアイルランドから西インド諸島の仏領マルティニーク島まで大西洋横断〕の六分儀」と答える。こんな小さなもので、大きな六分儀と同じような天測航法ができるとは信じられないが、https://www.yrvind.com/bris-mini-sextant/ に詳しい使い方の説明と、原理を説明するYouTube動画まである。右の図は、そのサイトに載っていたもの。

エスキルは、学校が終わってから、母への手紙を持って 郵便を扱っている店に寄る。すると、受け取り口には、黒い防寒帽をすっぽり被った人がいて、大きな荷物を受け取って出て行く。店を出るとすぐ、受け取り口の女性が、新顔のミリヤの母に、「村の変人、トリニダッドよ。ペンテコステ派〔聖霊の働きを強調するキリスト教の教派〕で酔っ払い。どうやれば一緒になるのかしら。製材場に住んでて、時々、荷物を取りにここに来るの。何でも、楽園を見つけたから、私たちをそこに連れて行きたいみたい」と情報提供。エスキルが、これが、夜、遠くで見たトリニダッドかと納得する。そして、店の窓から、トリニダッドが荷物を橇に乗せているのを見る(1・2枚目の写真)。女性の最後の言葉は、「ウチの子供には、製材場には近寄らないよう言ってあるの」。こうして、トリニダッドは村中の嫌われ者になっている。エスキルは、ミリヤの母に挨拶した後、封筒を窓口に出して切手代を払う。エスキルは、そこで、母からの手紙を受け取ることができた〔母は、かなり前から 次の引っ越し先を知らされていたことになる〕。その手紙には、氷が張ってないから、Frejaという名前の2本マストの小型帆船が入港したと書いてあり、写真も入っている。手紙の最後は「あなたが、早くここに来れますように。寂しいわ」で終わっている。エスキルが読み終わった頃には、辺りは もう真っ暗になっている(3枚目の写真)〔これから、2日目の練習がある〕

2日目のゴーリーも悲惨な結果(1枚目の写真、矢印は打ち込まれたパックだが、全く追い付いていけていない)。エスキルは、マスクを外して拗(す)ねたように後ろを向いてしまう。選手を解散せてエスキルの所に来たコーチは、エスキルにゴーリーは無理なのでディフェンスに回るよう指示して出て行く。エスキルが一人で観客席に座っていると、そこにミリヤが現われる。ミリヤは 「お願いがあるんだけど」と切り出す。「何?」。「ダメって言うだろうけど、ゴーリーの装具を貸してもらえない?」。「いいよ」。エスキルは、ミリヤをゴール前に立たせ、パックをたくさんリンクに出す。最初にスティックで緩く打ったパックは、ミリヤがグローブでつかみ、「ちゃんと打ってよ」と言われてしまう。そこで、普通に打つのだが、ミリヤはすべてブロック(2枚目の写真)。それを、後始末に来たコーチが見てしまう。コーチは、さっそく滑走してくると、今度は、自分でパックを打つが、ミリヤは それもすべてブロック。嬉しくなったコーチは、「誰なんだ?」とエスキルに尋ねる。「僕のクラスのミリヤだよ」。「女の子か?」。ミリヤがマスクを外し、長い金髪を見せる。エスキルとミリヤが家に帰ろうと外に出た時、コーチがエスキルを呼び付ける。そして、①コーチのチームはクリスマス以後、一度も勝ったことがない。②あと1試合残っているが、もしそれに負けたら自分はクビになる。③エスキルの父が、息子がゴーリーだと言った時、コーチもチームも救いの神だと思った、と話す。それを聞いたエスキルは、「分かりました。ミリヤにゴーリーの用具を貸します。でも、ちゃんと許可は取ってね。それと、パパには内緒で」と、条件付きでOKする(3枚目の写真)。

ダム湖の氷の上を歩いて家に向かっていたエスキルは、湖に向かって敷かれた線路の向こうから、夜だというのに 木を切る電動音が連続して聞こえるので調べてみることに。ここで、奇妙なのは、エスキルが姿を見せた場所は、湖とは反対側の、昨夜、3人と一緒にこっそり見に行った “除雪した雪の壁” と同じ場所〔こんなことなら、氷上のシーンは止めて、コーチと別れ、そのままここに現れるよう編集すべきだった〕。エスキルが身を乗り出したせいで、雪の壁の先端が崩れ、エスキルは敷地内に落下(1枚目の写真)。①トリニダッドの白い犬が吠えて飛び掛かろうとし、②犬を縛ったロープがトリニダッドの足に巻き付いて転倒させ、③その弾みで、木を切断するための動力源だった車が動き出してしまい、④トリニダッドが車に跳ねられ、⑤二度目に轢かれそうになった時、エスキルが車に飛び込んで何とか止めることに成功。しかし、トリニダッドは、叱りも、感謝もせずに建物内に入って行ってしまう。エスキルは後を追って中に入って行く。そして、建物内の船体を見て(2枚目の写真)、「コリン・アーチャー。最低40フィート」と、思わず口にする。コリン・アーチャーはノルウェーの造船技師。理想的なセーリング・ヨットの設計者としても有名。右の図は、アーチャーが1887年に描いた理想的な船体の曲面 。トリニダッド:「42。出てお行き」。「また来ていい?」(3枚目の写真)。「出て行けと、言ったじゃろ」。

翌日、エスキルがミリヤの部屋を訪れると、彼女は、「コーチは許可が取れなかった。だから、私はこっそりプレーしなくちゃならないの」と話す。エスキルは、「じゃあ、僕の名前が選手名簿に?」と訊く(1枚目の写真)。「ええ」。そして、ミリヤはゴーリーのマスクをかぶると、そこからはみ出た髪の毛を切るようエスキルに頼む。最初、エスキルは嫌がるが、ミリヤは無理矢理髪を切らせる(2枚目の写真)。ミリヤの母親は、先端を切っただけの髪形に驚くが、ミリヤは 「いいでしょ?」と言っただけ。母親は、今度はエスキルに、「お父さん 帰りが遅いでしょ。食事はどうしてるの?」と訊く。「自分で料理して、ちょっとTVを見たら 寝ます」(3枚目の写真)。「あなたは、いつでも我が家に来ていいのよ」。「ありがとう」。「お母さんから連絡はあった? 復活祭にはちゃんと会いに行くのよ」。「どうかな」。「最後に会ったのは、いつ?」。「クリスマス」。「3ヶ月以上前じゃない。寂しくないの?」。「ママはデンマークにいるのがいいんです。日中、お日様が出て、水は凍りませんから」。

アリーナでは、エスキルに扮したミリヤがゴールを守り、選手たちが “どうせダメだ” と打ち込んだパックを、すべてブロックする。チームのエース、ベニーが打ち込んだ必勝のパックも見事にブロック。勢い余ってミリヤにぶつかったベニーは、「やい、エスキル、よくもダマしてくれたな!」と、嬉しそうに上に跨る。すると、下になったゴーリーから 「どいてよ、デブ!」と女の子の声。びっくりしたベニーが飛びのくと、ゴーリーがマスクを外し、ミリヤの顔が現われる。コーチは、日曜の試合に勝つためにミリヤが加わったと言うが、誰にも内緒だとは言わない〔違反行為だと全員が認識?〕。一方、エスキルは、早く家に帰って 万一父とぶつかったら大変なので、時間を潰そうとトリニダッドの船小屋の中に入って行く(1枚目の写真)。そして、横に置いてあった道具(1枚目の写真の矢印)で 床の “おが屑” の掃除を始める。すると、犬が階段を駆け下りてきて吼え出し、上から 「お黙り」の声がして 犬が静かに床に伏せる。トリニダッドは、上から木材を垂らし、「4分の1インチの穴を2つ、印を付けてある」と命じる。エスキルは木材を受け取ると、電動ドリル機の上に置き2ヶ所に穴を開ける(2枚目の写真)〔こんなプロ用の大型装置の使い方、どうして知っていたのだろう?〕。穴を開けた木材を受け取りながら、トリニダッドは名前を訊く。そして、「明日、船体にペンキを塗るから、床を掃除しておくれ」と、エスキルがここにいてもいいとのサインを出す。「水で洗った方がいいですか?」。「その方がいいね」。

その日の夜、エスキルがベッドで寝ていると、父が激しい口調で母メッテと話している(1枚目の写真)。要点は、①メッテのうつ病は単なる言い訳、②いつまでも エスキルを “つんぼ桟敷” に置いておくことはできない、③メッテがここに来て 直接エスキルに説明しろ、というもの〔ただし、観客には具体的な内容が知らされないので、エスキルがどういう状態に置かれているのか分からない〕。朝になり、父は、エスキルに 「試合のことは聞いた」と声をかける。エスキルは、「観に来ないで」と頼む(2枚目の写真)。幸い、父は、週末は忙しくて時間がないと答え、エスキルをホッとさせる。「そのあと、どこに行くの?」。「復活祭はルレオに行こう」。「デンマークに行って、ママと会ったら?」(3枚目の写真)。「その前に、ママとはきちんと話し合わないと。お前には関係ないことだ」。父は大事なことはきちんと説明せず、試合の話に振ってしまうが、エスキルは全く興味がないので虚ろな顔で何も聞いていない。その頃、トリニダッドは船体の上部を白、下部〔水面下〕を赤に塗っている。また、学校では、担任が、「私が住んでいる所」という題で作文を書くように言って 生徒達に用紙を配る。エスキルは、今住んでいる場所じゃなくてもいいかと訊き、OKを取ったので、楽しかった母とのデンマークでの1日のことを書く。

その日、トリニダッドは教会のミサに行き、彼女が4年前にトリニダッド〔正式な発音は “trɪnɨdæd” なのに、なぜか、日本ではトリニダードと表記される〕に行った時、この島の暖かさと楽しさの中で教会を生まれ変わらせるべきだとの啓示を受け、地上の天国への “方舟” を自ら造り完成したので、希望者は一緒に行こうと呼びかける(1枚目の写真、矢印の立っているのがトリニダッド)。牧師は、天国は地上にはないと反論するが(2枚目の写真、エスキルは隠れて見ている)、トリニダッドは、聖書の時代に知られていたのは地中海だけで、トリニダッドのことは知られていなかったと再反論。一緒に来て満足できなかったら、戻ればいいとまで言う。ミサには大勢の村人がいたが、トリニダッド悪評は定着しているので、誰も本気で聞いていないし 失笑も買う。トリニダッドは、「あんたたち、来世の幸せだけが唯一の慰めみたいな この凍った地獄に なぜ執着するの? 最後にもう一度訊くわ。一緒にトリニダッドに来る人は?」。凍ったような静寂。トリニダッドは 失望して教会を出て行く。エスキルも教会を出ると、近くで犬と一緒に橇に座っていたトリニダッドに寄って行き、「ほらこれ」と言って、ブリス六分儀を差し出す(3枚目の写真、矢印)。海に出た時、万一計器が使えなくなった時のバックアップ用だ。

エスキルは、アイスホッケーの練習に行くミリヤと途中まで一緒に行く。そして、別れた直後、1台の車が停まり、そこからデンマークにいるはずの母が降りてきて、「エスキル」と声をかける。2人は そのままアリーナの中の部屋に行き、母は、デンマークから持って来たお土産を渡す。夏に2人で乗ったMyrnaというヨットの模型キットだ。「すごいや、ありがとう」(2枚目の写真)。「プレーしなくていいの?」。「今日は、交替の日なんだ」(3枚目の写真)。そのあと、真剣な話が始まる。重要な台詞だけピックアップすると、「ママは病気だったの。だから、医者がデンマークに帰らせた」〔以前、うつ病という言葉があった。母は、うつ病にかかってデンマークに行き、結局、“別居” という事態となった〕。「でも、今は健康だよね。いつ、こっちに来るの?」。「それは、できないの… もう嫌だから… あんな病気には もうなりたくない。ここは、暗くて寒い。そんな場所で落ち着いてみんなと付き合えないの。働くこともできない」〔新聞記者というのは、やはりエスキルの嘘だった〕。「みんな働いてるよ」。「でも、ママには無理。それが どんなに辛いか分かる?」。ここからも重要。「僕は、どうすればいいの?」。「この秋、あなたは12になる。だから、どっちに住むか決めるの」。「パパは、嫌がるだろうね」。「でも、決めるのはあなたよ」。

母の その言葉を聞き、エスキルは、ガラス窓に行くと、プレーしているミリヤをじっと見る。エスキルにとって、父はアイスホッケーにしか興味のない仕事人間でしかなかったが、ミリヤは初めて好きになった女の子だ。迷ったエスキルは、ヨットの模型キットも持たずに飛び出し、トリニダッドの船小屋に走って行く。母もその後を追う〔アリーナから かなり近い〕。母が船小屋に入って行くと、トリニダッドは、母を見て、村人が乗船しに来たと勘違いして喜ぶ。しかし、エスキルの母だと分かってがっかり。しかし、2階に上がった母は、カリブ海への航海のことを聞くと、もともとヨットが好きなので、「ここのみんなにとって素晴らしい贈り物ね。誇るべきことだわ」と称賛する。「誰一人来なかった」。母は話を変える。「どこで、こんなアイディアを?」。このあとの返事が長いので要約すると、①トリニダッドは、昔、製材場がここにあった頃、丸太をたくさん盗んだ、②会社がなくなった後、罪の意識にかられたトリニダッドは牧師に懺悔した、③牧師は、スンツヴァル〔スウェーデン中部の都市〕に建てる教会に丸太を寄付するよう提案(1枚目の写真)、④トリニダッドが木を運んで建設を手伝うと、多額の謝礼金がもらえた、⑤牧師の弟の旅行代店はトリニダッド島への旅行を勧めたが断った〔4年前に島に行ったと教会で話したのは嘘〕、⑥その直後、“啓示” を受け(2枚目の写真)、ヨットを作ることにした、というもの。船小屋を出た母は、エスキルに、「もう飛行機に乗らないと。電話してね」と言う。「一緒に行きたいよ」。「今はできないの」。母はエスキルにキスして頬に手を置くと、「また後でね」と言い(3枚目の写真)、車に乗り込む。

エスキルは、再びトリニダッドの所に戻る〔それを見ていたベニーが母に教え、母が余計な電話をエスキルの父にかける〕。エスキルは、母がいなくなった後、唯一相談相手になってくれそうなトリニダッドに、「僕がデンマークに行って、ママのウチのドアをノックしたら、入れてくれると思う?」と訊いてみる(1枚目の写真)。「もちろん、ママとはそういうものさね」。「あなたのヨットでデンマークまでヒッチハイクさせてくれる?」。「いんや。大騒動が起きちまう」。「夜 出発してバルト海に着いちゃえば、誰も僕らを見つけられないよ」(2枚目の写真)。この提案をトリニダッドは否定するが、予定の航海コースをエスキルに教える。そこに出てきた地名は、ブレスト〔フランスの第一の軍港〕が最初なので、デンマークは念頭にない。そこからビスケー湾を横断し、スペインのCasas de Vilanを指す(3枚目の写真)。こだわるようだが、4枚目に、この場所の、スペインの40万分の1の地図(ミシュラン)を掲載するが(赤の矢印は指の位置/地図には灯台の名前まで記されている)、Casas de Vilanのような地名はどこにもない〔WEBで検索して出てこなかったので、地図でチェックしてみた〕。トリニダッドに行くのが目的のヨットなのだから、こういういい加減さには興をそがれる。そこに、父が「エスキル」と呼ぶ声が聞こえる。家に連れて帰る車の中で、父はいろいろトリニダッドのことを尋ねる。一番ひどいのは、「触らなかったか?」というもの。エスキルが、一人でヨットを造るなんて偉い人だと褒めると、偏見を持ったベニーの母の言葉をそのまま信じる父は、「彼女は少しおかしいに違いない。そんなにヨットに打ち込むなんて」と批判。すると、エスキルは、「パパだって、アイスホッケーのプロ選手として打ち込んでたじゃない」と、ある意味批判する〔いい気味〕。そのあと、ようやくヨットの組み立てキットの話となり、エスキルが母にもらったと話すと、「何だと? いつだ?」と驚く。「さっき」。「メッテがここにいたのか?」。「うん。もう戻って来ないんだって」。帰宅し、エスキルは寝てしまう。父はエスキルの胸に手を置くが(5枚目の写真)、エスキルのことを何も理解しようとしないこの男は、息子のことを本当に大切に思っているのか疑ってしまう。

翌日は日曜日。アリーナに続々と車が乗りつける。屋外向けのアナウンスが、「Norrskenshallenにようこそ」と言っているが、これも凡ミス〔Norrskenshallenは、Nordmaling(ウメオの約50キロ南西のバルト海沿岸の都市)にあるスポーツ複合施設。場所が全然違う〕。そこの駐車場でエスキルはミリヤと別れ(1枚目の写真)、トリニダッドの船小屋に向かう。すると、扉が開いていてヨットの先端が見える(2枚目の写真、雪が降っている)。中に入って行ったエスキルは、「今夜 決行だよね?」と訊く。「そうよ」。「何か手伝うことは?」。「レールを掃いてちょうだい」。一方、ダム・発電所では、発電機が動き出し 放水が始まる(3枚目の写真)。水力発電は、右の図のように、ダム湖の水を管路で水車まで流し、その水圧で発電するもの。放水路から水を流してしまったら、水圧が下がってしまうので、洪水時にダムを守るためならいざしらず、発電機の試運転時に合わせて放水する意味は全くない。このショットも、観客に、“水力発電” についてひどい誤解を与える悪質なエラー。

エスキルが、ダム湖に続くレールを掃除していると(1枚目の写真)、犬が湖めがけて吠え始める。湖の方から不気味な音がし始めたからだ〔放水により水面が動き、張った氷が動いた〕。エスキルは 急いでトリニダッドを呼びに行く。アリーナでは、試合が始まる。“エスキル・ルンディン” ことミリヤは、敵のパックを見事にキャッチし、地元の大観衆から拍手を浴びる。トリニダッドは湖の氷の上に行き、電動のアイスドリルで氷を調べる(2枚目の写真)。「変ね、水位がこんなに上がるなんて。レールの下にもっと材木を入れないと」。発電所では、「アリーナから電話があった。オーバータイムが終わっても0対0のままだ」と知らされた父は、ミリヤの父と一緒に応援に行くことに。

アリーナではサッカーのPK戦にあたる「ゲームウイニングショット」が始まっている。“エスキル” が3人目のショットを見事にキャッチ。次は、エースのベニーのショット。そこに2人の父親が入ってくる。ベニーのショットは、相手チームのゴーリーをすり抜けてゴール! これで1点が入る。これで、次のショットを “エスキル” がストップできれば、チームの勝利だ。そして、相手のショット。一旦 “エスキル” のグローブに入ったパックは、勢い余って上に跳ね返る。相手の卑怯なプレーヤーは、パックを叩くと見せかけて “エスキル” をスティックで殴る。“エスキル” は痛くて倒れるが、何とかグローブを開くと、パックはゴールラインを越えていなかった(1枚目の写真、矢印)。これで、チームは勝利を勝ち取ることができた。チーム全員が “エスキル” の上に重なって勝利を祝う。2人の父親が、お祝いを言おうと選手控室に行くと、そこには “エスキル” はいない。ベニーは、モービル・ホームにいると、教えてしまう。2人がやって来るのを見たミリヤは、急いでマスクを被るが、隠しきれないと判断すると、マスクを外す(2枚目の写真)。それを見た、エスキルとミリヤの父親は、唖然とするばかり(3枚目の写真)。ミリヤは 一言、「ごめんね、パパ」。

その頃、船小屋の中では、エスキルが 「いつ発つの?」と訊く。「数時間先」。時計を見ると、17時47分。「僕、帰らないと」。「さよなら。助けてくれてありがとね」(1枚目の写真)。「トリニダッドに着けるといいね」。そう言うと、エスキルは手を差し出し、2人は固く握手する。「あなたに会えて良かった」。「あたしもだよ。ママとパパ、うまくいくといいね」。こうして2人は仲良く別れ、エスキルが、雪の壁のすぐ横にあるアリーナの壁をみると、電光掲示板に「何という勝利!!!!!」という文字が躍っている。これで、ミリヤが頑張ったことが分かる。エスキルがバッグを取りにアリーナに入って行くと、誰もいないリンクでコーチがアルコール度の高い酒の入ったスキットルを手にして、一人滑っている。そして、エスキルを見つけると、さっと滑り寄り、「試合は見たか?」と訊く。「ううん。ミリヤはどこ?」。「知らん。ありがとうを言う前にいなくなった。代わりに…」。「できないよ、明日、引っ越しなんだ」〔ということは、この町に滞在したのは1週間だけ?〕。コーチは、プロ・アイスホッケー・カードを取り出すと、「ミリヤがここに登場した時、最初の試合はここだったと書かれるかもしれんな」と、ありもしないことを言う〔こんなことがバレたら、コーチは生涯追放されてしまう〕。そして、「今日のことで、君にありがとうと言いたい」と言い、握手する(2枚目の写真)。しかし、エスキルが家に戻ると、いつもと違って父が先に帰っていた。「もう、帰ってたの?」。「明日の朝、ここを発つからな。試合はどうだった?」。「1対0で勝ったよ」。「そりゃ、おめでとう。ホッケーのバッグはどこだ?」。「アリーナに忘れてきちゃった」。「ミリヤが持ってるんだろ?」。「どうして そう思うの?」。「いい加減、嘘はやめろ。お前が勝ったと自慢したら、実はミリヤだった。なんでこんなことしたんだ?」(3枚目の写真)。「ミリヤの方が上手だから」。「お前が勝手にそう決めつけたんじゃないのか? とにかく、これで、お前はアイスホッケーからサヨナラだ」。「パパと同じだ」。「あっちで、荷造りして来い」。

父のあまりの専横さに頭に来たエスキルは、家を飛び出し、トリニダッドに所に行き、ヨットが発進する直前に何とか間に合う。そして、「乗せて」と頼む。「ダメだって言ったがね」。「次の村まででいいから。お手伝いしたでしょ。みんな、僕のことなんか どうだっていいんだ」(1枚目の写真)。その頃、エスキルの様子を見に行った非情な父は、部屋の窓から脱げ出したことを知り、また余計なことをする〔自分で行けばいいのに、警察に通報する〕。船小屋では、ヨットを固定していたストッパーが爆破され。台車に載ったヨットがレールの上を滑り始める(2枚目の写真)。ヨットの最後尾に陣取ったエスキルとトリニダッドが立って、これから向かう氷原を見ている(3枚目の写真)。ヨットは次第に速度を増し、氷を割って着水する(4枚目の写真)。

ヨットは、モーターで自走して川下に向かう(1枚目の写真)。この航海は、ダムにより中断される〔ここが、映画を観ていて一番信じられない部分。トリニダッドは、「昔、製材場がここにあった頃、丸太をたくさん盗んだ」と話しているので、その頃にはダムはなかったのであろう。しかし、ダムの建造には長い年月がかかる。撮影に使われたラクセデ・ダムは1958~62年にかけて造られた。時代はズレているが、4年かかったことに変わりはない。その間、トリニダッドは、それに全く気付かなかったというのだろうか? ダムの工事が進むにつれて川の水位は増して行ったハズで、しかも、川がダム湖になると流れは止まる。それに気付かないなんてことが本当にあり得るんだろうか?〕。トリニダッドの興奮した声で、一旦眠ってしまったエスキルの目が覚める。「どうしたの?」。「出られなくなった! 発電所を造っちまった!」。「この先、最も近い発電所は30キロ先だよ。ここを乗り越えて行けばいいじゃない」(2枚目の写真)。「悪魔ってのは、いつだって、楽園を求める人の足を引っ張るんじゃ。だけど、あたしは負けないよ」。ダムの上にはパトカーがいて、ヨットに向かって警告音を鳴らす。その前に父やミリヤの父親も立っている(3枚目の写真)。

その夜、遅く、エスキルの部屋に入ってきた父は、トリニダッドが釈放されたと伝えた後で、「あの女、少し気が変なんだろう。発電所のこと知らないなんて」と言い、エスキルから、「どこも変じゃない」と反論される(1枚目の写真)。父はすぐに話題を変え、復活祭の後の行き先をボーデン(Boden)〔ルレオの北西約30キロ〕だと言い、ミリヤの家族も一緒だと教える。これにはエスキルも興味を示す。最後に、自分がエスキルにアイスホッケーを強いたやり方が乱暴で性急過ぎたと反省はするが、謝りはしない。父は、そのまま出て行こうとするが、エスキルは、自分の意志を伝えようと、「もし、僕があそこで死んでたら、パパも死んでた?」と尋ねる。「ああ、たぶん」。それでは不十分だと思い、「きっと死んでた」と言い直す。「ママならどう? ママが死んだら、パパも死ぬ?」。「それは分からんな」。「ママが死んだら、僕は死ぬよ。だから、パパも死なないと」(2枚目の写真)。父が何も言わないので、エスキルは電気を消して寝てしまう。

翌朝、家を出た父は、来た時と同じように、赤いステーションワゴンに2輪のトレーラーを牽いて町を出て行く。そして、ダムの上に差し掛かった時、エスキルが興奮して叫ぶ。「見て、ヨットが なくなってる!」。父は、「戻ったんだろう」と気のない返事。しかし、クレーンがなくなっていることに気付き、慌てて車を止める。エスキルは、ダムの下流側に行き、「パパ、クレーンがある!」と指差す(1枚目の写真)。エスキルの顔が徐々に喜びに満ちて行き、「あそこ! ヨット! あの人、やったんだ!」と指差す(2枚目の写真)。そこには、白い帆を張ったヨットが下流に向かって進んでいた(3枚目の写真、矢印)。ここで、エスキルの観客に対する “解説” が入る。「クレーンは180トンまで吊り下げられ、トリニダッドのコリン・アーチャーは22トンしかない」。しかし、22トンは重い。バタンスよく吊り上げないとひっくり返ってしまう。22トンもあるものを、たった一人の老女が、どんな材料を使ってクレーンに結び付けたのだろう。「安全荷重表」なるものがWEB上にあったので見てみると、径20ミリのワイヤ2本2点吊りで、吊り角度が30~60°の際の安全荷重は5.70トン、径40ミリだと22.7トンで何とかセーフ。しかし、直径4センチもあるワイヤ、どうやって1人で装着したのだろう? それに、そもそも、クレーンで、ダム湖の船をダムの下に降ろせるものだろうか? さらに、帆を張っているが、マストはどこに入っていて、どうやって一人で立てたのだろう〔マストの長さは、船の全長42フィート(12.6m)より長く、直径30センチ以上はある丸太。それに、長さ5mほどのブームと呼ばれる帆を下で支える金属棒も付けないといけない〕? 疑問は山ほどある〔子供向きの映画だからと言って、あまりにご都合主義的な…〕

父は、エスキルに紙に描いたコペンハーゲン行きの航空券を渡す(1枚目の写真)。「ママと話したの?」。「ああ」。「帰りのチケットもある。戻って来たければだが」。エスキルは嬉しそうに頷く。それを見た父は嬉しそうに笑う。そこに、ミリヤの一家を乗せたピックアップトラックが到着、ミリヤが降りて走ってくると、「エスキル、私たち、ボーデンでまた一緒ね」と呼びかける。「うん。見てよ、トリニダッドのヨットだよ」。「ホント」(2枚目の写真)「ねえ、信じられる! ボーデンには、女子チームに、屋内プール、ショッピング・モールまであるのよ!」(3枚目の写真)「計画立てないと。一緒に乗ってっていい?」。「もちろん」。エスキルの父は、途中で、いつもの “悪ふざけ” 運転を披露し、2人を喜ばせる〔エスキルは、復活祭の間コペンハーゲンに行かないといけない。ボーデンには空港がないので、ルレオまで行き直行便に乗る必要がある(3時間20分かかる)〕

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