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Héroes ヒーローたち

スペイン映画 (2010)

子供達5人がメインキャストだが、子供向き映画ではない 不思議な感覚のスペイン映画。その理由は、①(a)5人の12歳の子供達が中心となった1980年代のシーンと、(b)2人の30代の男女のみによる現代のシーンが、同時進行する形で進み、前者は、ファーストキスや冒険的要素など思春期映画らしさが漂うが、後者はセックスを含まない先鋭的な男女の抗争を正面から描き、両者のバランスが巧く取れていること、監督インタビューによれば、①(a)を中心とした脚本の完成間際に 脚本も担当していた監督の幼なじみの友人が亡くなり、そのショックで(a)に死の要素が加えられて、ラスト30分が大幅に変更されたこと、の2つが要因となっている。映画は、“死” を暗示したナレーションで始まり、ナレーションを担当した同じ老女の役者が、劇中で、そのナレーションに別の光を当てる。そして、衝撃的な “死” が映画全体を引き締め、①(b)の物語とも見事にリンクする。この斬新な構成が、単なる青春ものとは一線を画した出来栄えとなり、スペインのマラガ映画祭で観客賞を獲得した。この映画がなぜ日本で公開されなかったかは不明だが、スペイン映画でも、話される言葉がカタロニア語という点が敬遠されたのか? 私は必見だと思うのだが。

上記の①(a)の部分のメインストーリー。主人公のチャビは、バルセロナの小学校に通い、夏休みなど休暇の際には、カタロニアの田舎にある母の実家にいつも帰っては、地元の3人の同い年の子供達とグループを作って仲良くしてきた。1984年の夏には12歳になっている。しかし、少し前に、大好きだった父が家を出て行き、母は代わりに年配の冷たそうな男と結婚してしまい、チャビにはそれが不満でたまらない。故郷に帰ったチャビは、さっそく3人と旧交を温める。3人は、村で有名な “小屋” と呼ばれるツリーハウスのすぐそばに、壊れたキャンピングカーで “アジト” を作り、いつかは “小屋” の主になりたいと願っている。“小屋” の主は1年交代で、誰が所有するかは、ソープボックス、すなわち、動力を持たない手作りのゴーカートを使って斜面を降りるレースで決めることになっている。今年こそはと挑戦したことはいいが、チームは5人と決まっていて、4人では1人足りない。そこで、村中に募集広告を貼って、やっと1人を確保する。これがストーリーの主軸。これに、チャビと、唯一の女性メンバーのクリストとの “相思相愛だが、お互いにそれを表に出さないことによる葛藤” や、チャビの “浮気” も加わり、思春期映画らしさもプラスされている。上記①(b)のメインストーリー。主人公のサラ〔チャビの兄の25年後〕は、典型的な中堅ビジネスマンで、仕事のことしか頭になく、今日も、重要な会議に出席すべく バルセロナに向かって急いで運転している。それが、悪戯っ子達のせいで、ズボンを失い、同時に現金もクレジットカードも失い途方にくれる。そこに現れたのが、ヒッチハイカーの自由奔放な女性クリスチーナ〔クリストの25年後〕。サラが、クリスチーナにガソリン代を借りようとしたことがきっかけで、彼はひどい災難に巻き込まれ、車まで失ってしまう。それでも、代車を用意し、クリスチーナがクリストだと分かったので、渋々代車にクリスチーナを乗せる。それは、サラを25年前の悲劇へと引き戻す “魂の旅” へと変容していく。

チャビ役のフェラン・ルル(Ferran Rull)は、1997年8月22日生まれ。映画の撮影は2009 年 7 月から 8 月までの 8 週間なので、撮影時は、11歳の終わりから12歳の初めとなる。この作品が、映画への本格デビュー。その後は、TVとショートムービーだけなので、これが唯一の映画出演作となる。

あらすじ

映画の冒頭、年取った女性の声でナレーションが入る。「この瞬間を覚えておきなさい。灼熱の太陽と背中に飛び散る水の匂いと感覚を忘れないこと。今は友だちでも、これから、すべてが変わっていくでしょう。年が流れ、忙しくなると、魔法の瞬間を見つけることは難しくなるわ。でも、大人になろうと急がないで。私を信じて。いつの日か、この瞬間の記憶があなたたちの人生を救うかもしれないのよ」。この言葉とともに、机の上に置かれた多くの写真の中の1枚が徐々にクローズアップされ、遂には画面全体を占める(1枚目の写真)。そこに映っているのは、左から、コロ、ロス、クリスト、チャビ、エカイツの5人。ナレーションは、ロスのお祖母ちゃんだ。

この映画は1984年の夏が舞台となっているが、それと並行する形で現在(2009年の夏)のシーンが7回挿入される。区別がつき易いように、現在のシーンについては、左端にイエローオレンジの縦帯を付けて区別する。バルセロナ北部の田舎道をアウディーA4 B8が走る。運転しているのは30代半ばのネクタイ姿のビジネスマン。カーブを曲がった所で 少年が道に横になっているのを見て、急ブレーキをかける(1枚目の写真)。男は車を下りると少年に声をかけ、動かないので頬を叩いて起こす。「何があった?」。「覚えてない」。男は、優しく 「大丈夫、すぐ思い出すさ」と話しかける。ところが、少年は 「今、思い出した」と言うと、「あんたはバカ野郎だ!」と叫んで 逃げ出す。それを合図に、4人の悪たれっ子が現われ、男に向かって生卵を投げつける。大事なワイシャツとズボンは卵で汚れてしまう。ガキどもはバラバラに逃げ出すが 男は一番足の遅いデブッチョを追いかける(2枚目の写真)。そして、捕まえると、デブッチョの頭や服に泥をなすりつけて復讐する。車に戻った男は、ペットボトルの水で何とかズボンの汚れを落とし、それを後部座席の窓に挟んで乾そうと思い、車を走らせるが、気付かないうちに ズボンは外れて飛んで行ってしまう。

ここからが、映画の本番。1984年の夏休みの前の最後の授業。教師の厳しい声が響く。「どうしたの、チャビ・サラ! 学期の最後の日なのに、こんな簡単な算数もできない。どうかしてる!」。黒板には 「(3/4)(2X+4)=X+19」 という簡単な一次方程式が黒板に書かれ、その前で やり方が全然分からないチャビが 何もできずに立っている。「席に戻りなさい!」。チャビは、ひたすら耐えて、席に向かう(1枚目の写真)。チャビが席に着くと、教師の厳しい言葉が降りかかる。「こんな簡単な算数ができないと7年生にはなれませんよ。夏休みを使って9月までに挽回なさい」〔英語字幕では9年生になっているが、スペイン語字幕の7年生の方が正しい〕。チャビは、ひたすら終業ベルが鳴るのを待つ。やっとベルが鳴ると、チャビはすぐに制服を脱ぎ、教室から真っ先に飛び出す。学校の現玄関から階段を下りると、そこには母が待っている。チャビは笑顔で母の前まで行く(2枚目の写真)。場面は、いきなり、渋滞した山間部の道路に変わる。車の中にいるのは4人。祖父のように見える義父のルイス、母、チャビ、それにチャビの兄のオスカル。オスカルが、「ルイス、もうバルセロナを出たよ。音楽かけようよ」と義父に声をかける。母は 「音楽はうるさいわ」と反対し、義父は 「料金所を通過したら、かけよう。いいな、オスカル」と中間をとる(3枚目の写真)。「いいよ、パパ」〔機嫌がいいと「パパ」になる?〕

車が故郷の家に着くと、チャビは真っ先に下りて、門の中に入ろうとする。義父が、「チャビ、荷物を降ろすのが先だ」と注意しても、チャビは 「友だちに会いに行かないと」とガレージに向かう。「友だちは待ってくれる。やるべきことをやってから、行くんだ」と言うが、チャビは無視。母は、「行かせなさいよ。急いで乱雑にされるより、私が自分でちゃんとやりたいの」と庇ってくれる。チャビは、自転車に乗ってエカイツの家に向かう(1枚目の写真)。エカイツは、兄たちと一緒に家の園芸の手伝いをしていたが、チャビは藁の山の前にいたエカイツに飛びかかって、半回転させる(2枚目の写真)。2人は抱き合って再会を喜ぶ。チャビはエカイツと、自転車でロス(ダウン症)の家に向かう。そこで出迎えたのが、冒頭のナレーションのロスの祖母。両手を上げて迎えてくれる。3人が自転車で向かったのは、友だちクループ最後のクリストの家。庭にいたビキニ姿の母親が、「村で一番ハンサムな3人じゃないの」と声をかける(3枚目の写真)。そして、家に向かって 「クリス、お友だちが来てるわよ」と呼ぶ。「大きくなったわね、チャビ」。「105センチです」。そこに、クリストが出てくると、チャビとエカイツが満面の笑顔になる〔クリストは女の子〕。クリスト:「キャンピングカーに行く?」。チャビ:「腕を折ったの?」。「バスケでね」。これで自転車が4台になる。

4人が向かった先にあったのは、古いキャンピングカーを2つに切断して作ったグループの “アジト”(1枚目の写真)。このキャンピングカーのリアウィンドウを開けると(2枚目の写真)、真正面に見えるのが、4人の垂涎の的である “小屋”(3枚目の写真)〔実態はツリーハウス〕。この小屋は、1年おきに所有者が変わることになっているが、いつも大きな子供達に占領されていて、4人は一度も中に入ったことがない。チャビは、「あれを勝ち取るためだったら、何だってする」と言い、ロスとエカイツも 「僕も」と賛同。クリストは、「でも、あの小屋にパワーがなかったら? 考えたんだけど、でたらめよ、魔法の力なんかあるハズない」と、必ずしも欲しくない様子〔村の子供達は、小屋にパワーがあると信じている〕。エカイツも、「そうだよな、赤毛の奴ら4年も続けて持ってるけど、御利益(ごりやく)なさそうだしな」。チャビは、「オートバイがあるじゃないか」と言う〔ちょうど、オートバイで、赤毛グループとその彼女たちが到着した〕

4人は、そのあと、ロスの祖母が野外に作った “応接セット” に行く(1枚目の写真)。祖母:「今年は、小屋を勝ち取るつもりなの?」。クリストは 「何のパワーもないと思います」と、さっきの考えをぶつける。そこで、祖母は小屋にまつわる伝説を話し始める。「小屋のお陰で、信じられないことが起きたのよ」。クリスト:「どんな?」。それは、第二次大戦中のスペイン内戦の話だった。空爆を受けた村人は家を出て 衣類や食べ物を持って小屋に集まり、祈った。村には50回爆撃があったが〔こんな小さな村に、何回も爆撃に来るとは思えない〕、小屋のお陰で、被害を受けた村の家は一軒もなかったというもの。戦争が終わると、大人たちが、小屋の所有権を巡って、手作りのソープボックス〔動力を持たない車両〕による年1回のレースが始まった。しかし、年月とともに忘れられ、今でも、子供達だけが、まだパワーを信じている、という内容(2枚目の写真)。3人は自転車でロスの家を離れ、途中でエカイツが別れ、あとはチャビとクリストだけになる。チャビのことが好きなクリストは、チャビにわざとぶつかったりして気を引こうとするが、チャビにとってはただの友人の一人だ。

2度目の現在。男が 電話で、ズボンを失くし 一緒に財布もなくなったと携帯で話していると、ヒッチハイカーの女性が後ろからやってくる(1枚目の写真)。男は、子供に卵をぶつけられズボンを失くしたと 女性に話し、「どこに行くんだい? 乗っていかないか?」と訊く。「バルセロナよ」。「完璧だ」。「遠慮しとくわ。じゃあね」。「ちょっと待って。お金 儲けたくない? 財布も落としたから、ガソリン代に70ユーロ要る。バルセロナまで連れてったら、倍にして返すよ」。「なぜ2倍に?」。「3倍だ」。「遠慮しとく」。「250」〔これはユーロのことで、3.5倍強〕。女性は、足も止めない。「300だ」。速度も緩めない。「お願いだ」。こちらの方が効いて、女性は戻って来る。「その言葉から 始めるべきだったのよ。好意でやってあげる」。そう言って、女性は助手席に乗り込む。「私がガソリン代を払う。あなたは運転。変なことはしない。分かった?」。「もちろん」。「私、クリスチーナよ」。「サラだ。よろしく」。実は、クリスチーナは25年後のクリストなのだが、名前が違うのでサラ〔オスカル・サラ〕は気付かない。しかし、クリスチーナは相手がサラ、チャビの兄だと気付く。だから、嬉しそうにサラが握手の手を差し伸べても、クリスチーナは茫然として握手どころではない。それでも、笑顔に戻ると、「姓を使うの?」と訊く。サラはガソリン・スタンドに車を停め、給油する。給油が終わるのとタイミングを合わせるように、クリスチーナが大きなポリ袋を持って店から現れ、「エンジンかけて。急いで」と言って乗り込む。「どうした?」。「車、出して! お金ないの!」。サラは慌てて車を出すが、車内で、クリスチーナに文句を並べる。しかし、事は文句だけでは済まなかった。車の行く手には1台のジープが道を遮るように停まっていて、後ろからは、車で追って来たガソリン・スタンドの男がバットを持って歩いてくる。そして、いきなり、バッドですべての窓を叩き割る。サラが持っていた現金を狂暴な男に渡すと、ジープの男2人が、制裁だと称してタイヤに金属棒を突き刺してパンクさせる。僅か70ユーロのガソリン代の10数倍はかかる損害を与えられても、警察に訴えれば、ガソリンの窃盗行為を問題にされるので泣き寝入りしかない(2枚目の写真、フロントガラスの中央が窪んでヒビが入っている)。サラは、携帯で代車を依頼する。

翌朝、チャビが遅くまで寝ているので、兄が来てブラインドを上げる(1枚目の写真)。しかし、明るくなったくらいでは起きない。そこで、母がやってきて、「起きなさい。でないと、ランチの前に何もできなくなるわよ」と言いながらキス責めにするが、それでも起きない。「ルイスが自転車のタイヤを直してくれたわよ」。「パパもそうしたと思うよ」。ルイスという言葉を聞いたチャビは、ベッドから起き上がると、シャツを着ながらベランダに出て行き、下で芝刈り機の準備をしているルイスを冷たい目で見る(2枚目の写真)。すると、エカイツが自転車でやって来るのが見える。チャビは大急ぎで下に降り、自転車を引いてルイスの前を素通りし、エカイツに 「行くぞ」と呼びかける。エカイツが、ルイスを見て 「誰だ?」と訊くと、一瞬チラと振り返り(3枚目の写真)、「草刈り屋だ」と言う。「俺の兄貴が刈ってたぞ」。「今年はいいんだ。あれ、間借りしてるブルガリア人なんだ」。「間借りしてるブルガリア人?」。「そうさ」。エカイツがルイスに 「バイ」と声をかけると、ルイスが 「また後で」と応じる。「カタロニア語、話せるじゃないか」。「いくつか知ってるだけさ」。チャビが義父を徹底的に嫌っていることが分かる場面だ。

その後、4人揃って小屋の前に行く(1枚目の写真)。そこには、他にも、今年こそ、と思ったグループが他に2つ集まってくる。それぞれのグループから1人がナイフを持って小屋を支えている大木の幹にナイフを刺し、ソープボックス競争への参加を宣言する。エカイツからナイフを渡されたチャビも、最後にナイフを刺しに行く(2枚目の写真)。それを見た、赤毛ブループの1人から、「レースには5人要るって知ってんのか?」と訊かれたが、4人は知らなかった。しかし、気の強いクリストは、「知ってるわよ。私たちをバカだと思ってるの?」と反論する。そこで4人は至急 求人ポスターを刷り、村のあちこちに貼ることに(3枚目の写真)。そこには、「小屋のレースに参加する子を1人捜しています。興味のある子は、明日午後5時に海岸のバーまで来てください。ありがとう!」と、カタロニア語で書かれている。

翌日、チャビとエカイツは、先に海岸に行って待つことにする。村から海岸に行く途中に、去年にはなかった道ができ、そこを大型の砂利トラックが走っていることにチャビはびっくりする(1枚目の写真)。「去年はなかったよな」。「建設工事用のトラックのためさ」。2人が海岸に着くと、クリストとロスは先に来ていた。エカイツとロスが泳ぎに行ったので、チャビとクリストが残される。クリストにとってはまとない機会。2人は砂浜に置いてある足漕ぎボートに仲良く座り、動かないけど足でペダルを回転させる。クリストは、「あなたの望みは何?」と訊いてみる(2枚目の写真)。返事は、「君とのデイト」ではなく、「望みの時間に戻ったり、進んだりできるようになること」という変わった内容。そして、遠くを見るような目で、「気に入らない出来事は 変えられたらいいな」と言う(3枚目の写真)。これは、母と再婚した義父についての、“父が戻ってきて、義父なんかいなくなればいい” という希望だ。「君の望みは?」。「一年中夏だといい。大きくなるにつれて、あなたに会う機会がどんどん減っていくから」。これは正直な答えだ。ところが、クリストが頭に来たことに、チャビの視線はヤナス〔誰なのか不明〕のいとこの女性に釘付けになっている。クリストは、海から上がって来たエカイツやロスと一緒に、面接所のバー〔実態は カフェ〕に行く。

時間が来てチャビがバーに入って行くが、応募者はまだ誰も来ていない。そこに、外で見張っていたロスが、「誰か来る」と言って、中に飛び込んでくる。そして、1人の少年が入ってくる(1枚目の写真)。それを見たチャビが、「ちぇっ、コロだ。テーブル・フットボールでもやるか」と言い出す〔なぜ、1年ぶりに戻って来たチャビが、コロを知っているのだろう?〕。それを聞いたクリストは、「コロがどうかしたの?」と訊く。コロは 「応募しに来た」と言うが、チャビは 「もう決まったんだ」と断る。それに対し、ロスは 「まだ、誰も来てない」と本当のことを言ってしまう。面子の潰れたチャビは、「何人も来たじゃないか、ロス、忘れたのか?」と反論(2枚目の写真)。ロスも負けずに 「誰さ? 誰を採用した?」と言い返す。そして、直接コロに 「ホントの名前は?」と訊く。「コロメールだけど、みんなコロって呼んでる」。クリストが、「これまで、いくつのグループに入ってた?」と訊く。「15。ホントは30だけど、バカみたいだから」。そう言うと、どうでもいいグループを羅列し始める。エカイツは、それを止めさせ、「分かった。連絡する」と言い(3枚目の写真)、家の場所を訊く。面接が終わって出て行こうとするコロに、クリストが 「なぜ入りたいの?」と訊く。「友だちが誰もいないから」。

チャビが家に戻った頃にはもう暗くなっている。このくらいの暗さだと、バルセロナ近郊では夜の10時近い。なぜそんなに遅くなったのかは分からないが、家の前のハンモックに兄が座ってギターを弾いている。チャビは、その前のベンチに座ると、兄に話しかける。「ねえ、兄ちゃんが小屋の競争に勝った夏、何か変わったこと起きなかった?」(1枚目の写真)。「まさか、願いが叶うなんてこと、信じちゃいないよな。お前はもう大きいんだ」。「小屋は、爆撃を防いだんだろ?」。「ああ、そうだ」。「僕、願いを叶えたい」。「どんな願いだ?」。「パパに戻ってきて欲しい」。「パパは、俺たちを捨てたんだ。『パパ』という言葉には、もう何の意味もないって、いい加減 慣れたらどうだ」。チャビは、怖い顔をした義父が階段の前に立って睨んでいるのに気付く。義父:「中に入って、夕食を食べろ」。チャビは返事もしないで、脇を素通りし、階段を上がって行く。階段を下りて来たチャビの母に、義父は 「彼に話すべきだと思う」と言う。兄は 「まだ、だめだよ」と反対する。母は 「いつかは話さないといけない。あの子も 知る権利があるわ」と言うが、兄は 「今は、彼を楽しませてやろうよ。数日後に話せばいい。この場所と、友だちが、彼にとっての世界なんだ。好きにさせてやろうよ」。この、“いつかは話さないといけない” 重要な事が何かは、この段階では分からない。チャビは、自分の部屋でしばらく考えたあと、こっそり家を抜け出すと、コロの家に行く。出てきた母親に 「コロ、いますか?」と訊く。すると、急に母親が満面笑顔になり、「コロに会いに来たの? さあ、入って」と大歓迎される。母親は、コロに友達が来たと呼びかけるが、それを聞いて走って出てきたのは父親。こちらも満面の笑顔だ(2枚目の写真)。父:「何か食べていかないか?」。母:「メニューは魚だけど、他の何でも作るわよ」。父:「ハンバーグは? すぐ買って来るぞ」。母:「コロッケとか?」。2人の喜びが伝わってくる。チャビが断ると、父親が、ちっとも出て来ないコロを大声で呼ぶ。チャビは、コロに 「僕らの仲間になりたい?」と訊く。「ほんとに? みんな、賛成したの?」。「全員じゃない。明日、10時に、小屋の近くにあるキャンピングカーまで来いよ」。「君ら、人が足りない、そうなんだろ? ゴーカートのためだ。僕は間抜けじゃない。保障が欲しい」。「保障って?」。「夏中、僕を仲間にすること」。「そんなこと、約束できない」。「なら、誰か他を見つけるんだな」。「保障、1週間だ」。「1月」。「10日」。コロは10日でOKし、2人は握手する(3枚目の写真)。チャビが去ると、それまでの打算的な雰囲気とガラリと変わり、コロと2人の両親は大喜び。それにしても、元々、なぜチャビが反対し、今度は、誰にも相談せずに、態度を100%変えたのか、理由は全く分からない(説明は何もない)。

3度目の現在。サラは、クリスチーナから借りた “女性用のズボン” を履き、2人は道路を歩き続ける〔破壊された車の所で待っていないのは、恐らく、数日かかると言われたから、近くのホテルまで行くため〕。サラの機嫌は最悪なのに、クリスチーナはどうでもいい話をペラペラと話しかける〔こんな事態に陥ったことへの罪悪感に欠けている〕。やれ、パリが、エッフェル塔が、やれ、どこかで会った老女がどうのこうのと… いい加減 頭に来たサラが、ついに爆発する。「私は君が嫌いだ。君は、私の大事な1日を目茶目茶にした。恐らく、私の人生もだ。君のせいで重要な会議はキャンセルされた。なのに、君は、どうでもいい下らん話を止めようともしない! 君には目的というものがない。うんざりだ。私は違う。仕事が好きだ。君は、何て哀れなんだ」。それを聞いたクリスチーナは、自分の失態はあるが、チャビの兄として親しく接して来たのに、厳しい言葉を掛けられたことに腹を立て、別行動を取ることにする(1枚目の写真)。歩き慣れていないサラが、ようやくホテル辿り着くと、クリスチーナはホテルに泊まるお金がないので、入口のイスに座って地図を見ていた。サラは、クリスチーナの前に座ると、「私は、君が一生こんな調子で続けていけるとは思わない」と言い、怒ったクリスチーナは席を変わる。次のシーンでは、サラがホテルの部屋に入っている〔現金もカレジットカードも失くし、ガソリン代も払えなかったのに、どうやって泊まることができたのだろう?〕。部屋からは、クリスチーナがヒッチハイクを試みて、ことごとく失敗するのが見える。サラがTVを付けると、サウ(Sau)貯水池に水没したサン・ロマン・デ・サウ(San Román de Sau)の町の教会の塔の先端が映る(2枚目の写真、矢印)。この、一見何の関係もなさそうな映像は、その後、重要な意味を持つ。その時、突然、ドアが激しくノックされる。何だろうと、パンツ1枚のサラがドアが開けると、入って来たのはクリスチーナ。そして、ずうずうしく 「許してあげる」と言い、「何もしないでしょうね?」と、同室を迫る。「君は、好みのタイプじゃない」。サラが歯を磨きに行っている間に、クリスチーナはソファに寝てみて硬かったので、勝手にシングルベッドに寝て、ベッドカバーをかぶってしまう。歯を磨き終わって出てきたサラは、クリスチーナのずうずうしさに呆れるが(3枚目の写真、矢印)、追い出したりせず、自分が硬いソファに横になる。

翌朝、コロがキャンピングカーに行くと、そこにいたのは、まだエカイツ1人。彼は、チャビから何も聞いていないので、「あっち行けよ。お前の来るトコじゃない」と追い払おうとする。「チャビが、10時にここに来いって言った」。「チャビが? まさか、嘘だろ」。そこに、クリストがやって来る。コロは、取り入ろうと、「やあ、リンゴ食べる? ママが、いろいろくれたんだ」と訊く。「リンゴは嫌いなの」。「何でもあるよ」。そう言ってコロはリュックを降ろすと、「乳製品、パン、野菜…」と言い、お菓子が詰まったリュックの中を見せる。そこに、ようやくチャビとロスが到着。エカイツは、さっそく、「チャビ、お前、そいつに 来ていいって言ったのか?」と訊く。「うん」(1枚目の写真)「思ったんだ… 彼、僕らのチームにとって役に立つんじゃないかって」。「俺たちが負けたいならな。ドベになるぞ」。クリストは、チャビの肩を持ちたいので、「いい考えだと思うわ」と賛成。エカイツ:「そうは思えんな。だが、2日 試行期間をやる」。ここで、コロがチャビに昨夜のことを言うように催促。チャビは、渋々 「保障したんだ」と話す。「何を?」。「10日、約束した」。「信じられん。投票もしてないぞ」。クリストは 「保障に賛成の人は?」と言い、3人が手を上げる。ロスが手を上げてなかったので、コロはキャンディー1袋を渡し、これでロスも手を上げる。コロ自身に投票権はないが、3対1になったのでエカイツも仕方なく認める(2枚目の写真)。そして、5人は海岸へ。そこで、5人は、ゴーカートについて話し始める〔劇中の用語がいつの間にかソープボックスからゴーカートに変わったが、ゴーカートは動力があるので、ソープボックスの方が正しい〕。チャビは、強度が大切なので鉄製を主張するが、クリストは、入手が困難だと指摘、コロは、鉄は重すぎるから木の方がいいと指摘。ここで、エカイツが、“保障” されてても、話す権利まであるのかと文句を言って黙らせる(3枚目の写真)。しかし、クリストは、木製に賛成する。理由は、その方が、速く走れるから〔これは間違い。空気抵抗のため、軽いと速度が落ちる〕。エカイツ:「木材は、どこで?」。ロス:「バーの裏に木材が置いてある」。チャビ:「気難しそうなおじいさんだから、分けてくれないよ」。エカイツ:「盗めばいい」。そして、「今夜バーに盗みに行くのに賛成の者は?」と訊く。全員が渋々手を上げる(4枚目の写真)。「今夜12時にキャンピングカーで」。

4人は海岸を去ろうとするが、チャビは 「泳ぎたいから、ここにいる」と断る。クリストは心配そうに去って行くが、それは、定位置に “ヤナスのいとこの女性” が寝ているから。誰もいなくなると、チャビはじっと女性を見つめる。見られていることに気付かれても、チラと視線を送るチャビ(1枚目の写真)を見て、女性がニッコリほほ笑む(2枚目の写真)。チャビを意を決して立ち上がると、女性の近くに寄って行く。すると、「今日は」と声を掛けられる。チャビは、待ってましたと 「やあ、今日は」と振り向く。「何してるの?」。「ただ、歩いてる」。「何て、名前?」。「チャビ」。「私は、ヘレナよ。あなた幾つ?」。チャビは、相手が年上なので、「14」と言う。「14? 12だと思った」。「それは2年前で、今は14だよ」。クリストは、2人が仲良さそうに話しているのを、心配そうに見ている(3枚目の写真、左下の黒い部分がクリストの頭)。

チャビは、「チャリに乗らない?」と訊く。「あなたの自転車に?」。如何にも子供っぽい申し出にヘレナは吹き出してしまうが、それでもチャビの後ろに乗る。その姿を、木の影から見送るクリストは悲しそうだ。腰をヘレナにつかまれたチャビは、幸せ一杯に自転車を漕ぐ(1枚目の写真)。そして、ヘレナのアパートの前で彼女を降ろす。「ありがとう」。「どういたしまして」。チャビはじっとヘレナを見送る。ヘレナが振り返って「さよなら」と言うと、チャビがずっと自分を見ていたことが分かる(2枚目の写真)。そこで、戻ってくると、チャビの頬にキスする(3枚目の写真)。チャビは嬉しくてたまらない。帰りの自転車は幸せ一杯だ。

家に戻ったチャビは、ベンチに座ってギターを弾いている兄の横に座ると、「あのね、女の子と親しくなりたい時、ってあるよね」と話しかける(1枚目の写真)。「そのニヤニヤ。相手がいるんだな?」。「うん。でも、初めてだから、どうやったらいいのか分からない」。「書くんだ」。「何を?」。「絶対失敗しない秘訣を教えてやる」(2枚目の写真)〔この兄の25年後の姿が、これまで3度登場した “典型的なビジネスマン” のサラ〕。「外国の歌を探して、カタロニア語に訳せ。それを、お前が書いたフリして、彼女に読んで聞かせるんだ。彼女は、お前が感性の鋭い奴だと思ってくれる」。「うまくいったかどうか、どうやったら分かるの?」。「お腹の中にチョウチョがいるみたいな感じがしたら、成功だ」。「チョウチョ?」(3枚目の写真)。「気持悪がるな。そうなってみれば、俺の言ったことが分かる」。

真夜中になり、5人は懐中電灯を持って集合。少しでも人相を隠すためか、あるいは、元気をつけるためか、『コマンドー』のシュワルツェネッガーのように 顔の一部を黒く塗る(1枚目の写真)。そして、海岸まで歩いて行き、バーの裏にある倉庫への階段を下りる。すると、突然、照明が点く。行き場を失った5人は倉庫の中に入り、棚の影に隠れる。階段を下りて入ってきたのは、バーの “気難しそうなおじいさん” だった(2枚目の写真)。彼は、棚から1本の酒瓶を取ると、子供達には気付かず、そのまま出て行く。照明が消されてから、5人は倉庫の中を探して板が何枚も立て掛けられているのを見つける。その時、チャビは、覆いを被った大きなものに気付き、触ってみる(3枚目の写真)〔映画の最後に出てくる、大昔のソープボックス〕。5人は、必要量の板をキャンピングカーまで運ぶ。

チャビが家に戻ると〔早くても、午前2時は回っていたろう〕、そこには義父が待ち構えていた。「どこにいた?」。「あんたに関係ない」。「なぜ、許可を受けなかった?」。「許可が要るんなら、ママに頼むよ」。義父は、叱るのを抑え、「チャビ、私は君と友だちになりたい。私たちが仲良くなれば、君のお母さんも幸せになるだろう。君が、お父さんのことで、精神的に苦しんでいることも分かっている」と、妥協と融和の言葉を投げかける。それに対し、チャビは、「パパのことを言うな。知りもしないくせに。あんたは僕のパパじゃないし、ここは あんたの家じゃない。ママがあんたと一緒にいるのは、パパが出てったからだ。パパの方が、あんたより ずっと良かった」と、一切の妥協を拒否する。これを聞いた義父は態度を硬化させ、「2日間 外出禁止。1週間 小遣いなし」と宣告する(1枚目の写真)。チャビは無言で義父の前を通り過ぎ、自分の部屋に行く。その後、母と義父の間で口論が始まり、それを兄が聞いている。部屋に戻った兄が見たものは、父と母のツーショット写真に見入っているチャビだった。兄は、チャビの横に座ると、チャビの肩に手を回し、「気にするな。俺だってパパが恋しい。けど、ルイスもいい奴だ」と諭そうとするが、「ほっといて」と言われる(2枚目の写真)。「僕がこのレースに勝てば、パパはきっと戻ってくる」。

4度目の現在。朝になり、起きようとしないクリスチーナに、サラは 「一緒に来るか、来ないのか?」と最後通牒(1枚目の写真)。2人で朝のコーヒーを飲んでいる時、クリスチーナは 「私の名はクリスチーナ。友だちは、クリストって呼んでる」と話す。彼女は、チャビの兄に、自分が誰だかを初めて明かしたことになる。これを聞いて、サラは不思議な縁に驚くが、何と言えばいいか、言葉がない。サラの代車はサーブ9-3 Convertible。2009年に発売されたばかりの新車だ。車に乗ったクリストが映画の中で最初に放った言葉は 「今日は、非常に重要な日なの」だった(2枚目の写真)。サラも、「ああ、とても」と応じる。「あんたのことなんか、念頭になかった。信じようが、信じまいが、他にも同じ人たちがいるの。だから、会う約束〔cita〕があるの。特別なことよ」。クルストが使った “cita” はカタロニア語だが、スペイン語では「デート」という意味もある。そこで、サラは 「それって、正式なデート、それとも、君みたいな人らしいブラインドデートかな?」と誤解する。クリストは 「古くからの友人との再会よ」と、サラのセンスを疑う。サラは、クルストの “ある意味 神聖” な気持ちを誤解、もしくは、無視し、彼女のことを、“永遠のカルペ・ディエム(今この瞬間を楽しむ人)”、“気楽な盗癖者” と詰(なじ)る。それに対し、クリストは、「私には、大きな責任があるの」と言う。「本当?」。「ええ」。「それは何?」。「幸せになること。ずっと昔、子供の頃の友だちに、魔法のような日々を一杯送ってみるって約束したけど、どんどん難しくなってきてるの」。

翌朝、睡眠不足のチャビが、学校の宿題をやらされている(1枚目の写真)。後ろのベランダでは、母が、ルイスに、「あなた、あの子を許してやるべきよ」と言い出す。「夏休みなのよ。もっとリラックスなさいよ。友だち同士になれると思うわ」。ルイス:「なぜ、許さにゃならん?」。そこに、呼び鈴が鳴る。ルイスがドアを開けると、そこには4人が顔を揃えていた。最初に口を開いたのは、エカイツだった。「あんた、僕らの言葉話せる?」。「もちろんだ」。「どこで覚えたの? ルーマニア?」。「ルーマニア?」。「それとも、ブルガリアだったかな?」。ルイスは、変な話は打ち切り、「いいか、君たち、チャビは外出禁止にした。彼は昨夜無断で外出したんだ。君らと一緒だったかどうかは知らんが」と言う。ロス:「僕らと一緒でした」。クリスト:「外出禁止は いつまでですか?」(2枚目の写真)。「2日だ」。エカイツ:「彼と話せません?」。「ダメだ」。エカイツ:「そういうことは、ルーマニア人の庭師じゃなく、チャビの父親が言うべきだと思うけど」。「ルーマニア人の庭師? 私は ルーマニア人の庭師じゃない。私は 彼の義父だ」。ロス:「あなたは、チャビのパパじゃない。彼のパパは、もっと背が低く、笑うと顔がしわくちゃになるんだ」。この言葉に、チャビも困った顔になる(3枚目の写真)。ロス:「それに、あなたは年寄りだ。あの人、どうしちゃったの?」。ルイスは、「彼は、ママとパパが離婚したこと、君らに話してないのか?」と訊き、全員が首を横に振る。「彼の母親が、私と再婚したことも?」。再び、首を横に。「びっくりだな」。「ええ、びっくり」。義父は、自分が如何に嫌われているかをはっきり認識し、その理由の一旦は自分にあると反省し、チャビの外出禁止を解く。

5人は、キャンピングカーに行くと、さっそく盗んだ木の板を使ってソープボックスを作り始める。このキャンピングカーには、“熊の棲み処” というあだ名がついている。そこで、コロは 「ここ、ホントに熊の棲み処だったの?」とチャビに訊く。「ちょっと違うかな。誰が言ったの?」。「エカイツ」。「ホントは、こんなことがあったんだ。ある日、僕は、森の中で道に迷った。すごく寒い日で、僕は凍えそうになった。そしたら、熊が現われたんだ」。「熊が?」。それを聞いたクリストが、「彼は、熊を見たって言うけど、他に誰も見た者なんかいないのよ」と、嘘だとほのめかす(1枚目の写真)。それでも、チャビは 「あれが 僕の守護天使じゃないかって、時々思うんだ」と続ける。その後は、ソープボックス作りのシーンが続く。黄色のペンキを塗った板にチャビが釘を打っていると、小屋の下のグループに招かれたヘレナがこっちを見てほほ笑んでいる。それを見たチャビはヘレナに手を振り、逆に、クリストは、睨んでみている(2枚目の写真、矢印)。やがて、黄色のソープボックスが完成し、5人がその前で抱き合う(3枚目の写真)。

その日の夜、チャビは、兄に教えてもらったように、外国語の歌を辞書を見ながら訳し、ノートに書き込む。そして、そのページを破り取ると(1枚目の写真)、ヘレナのアパートまで行き、小石を窓に投げてベランダに呼び出す。「今晩は」。「何してるの?」、「僕… あの… 家にいて… 考えたんだけど… 僕… これを書いたんだ…」。緊張してなかなか言えないチャビの本心を先取りして、「私に何か書いてくれたの?」と尋ねる。「うん」。「優しいのね」。ヘレナはすぐ下に降りて行く。そして、ネグリジェの上からセーターを羽織っただけの姿でチャビと並んでベンチに座ると、チャビが読み上げるのを聞く(2枚目の写真、矢印は髪)。これは、バナナラマという音楽グループの『最高の愛(Love in the first degree)』という歌を、男の子用にもじったもの。「僕、昨夜 夢を見た。独房に閉じ込められてた目が覚めた時、僕は悲鳴を上げ あなたの名前を叫んだ裁判官と陪審員、みんなが僕を非難するんだ僕の説明も無視するし、抗弁も聞いてくれない僕を自由の身にできるのは あなたしかいないだって僕は有罪なんだよ、男の子が犯す罪でねねえ、分らないかな。“最高の愛” っていう罪なんだ僕が孤独だってこと、分らない? お願い、助けてよ僕を自由の身にできるのはあなたしかしないんだ」。なかなかいい選曲だったので、聞き終わったヘレナは、「キスして欲しい?」と訊く。チャビは “お腹の中にチョウチョがいる” 感じがしなかったので戸惑っていると、ヘレナがいきなりディープキスをする。口の中に舌を入れられて気持ちが悪くなったチャビは、顔を離して立ち上がり、「行かなくちゃ」と言って自転車で走り去る。ヘレナは、チャビがなぜ逃げ出したのか分からない。

チャビが、クリストの家の前を通過した時、たまたまドアのところにいた彼女は、すぐにチャビだと気付き、「チャビ!」と呼びかける。チャビは一旦通過したが、呼ばれたので戻って来る。「こんな遅くに、何してるの? また、外出禁止になっちゃうわよ」。「構うもんか」。「ギブスが外れたわ」。「良かったね」。2人は、ブランコベンチに座って、缶に石を投げ込む競争をする。その合間に、クリストは、「どこにいたの?」と訊く。「ヘレナのトコ」。クリストの顔が曇る。「すごく変だった」。「どこが?」。「バカみたいに聞こえるだろうけど、ヘレナのために書いたものを 期待しながら読んだんだけど、何も起きなかった」。「彼女、気に入らなかったの?」。「僕にキスした」。クリストはまたがっかり。「そうなの…」。「でも… 彼女ったら、口の中に舌を入れてきたんだ」。クリストは、気持ち悪そうな顔で、「なんで?」と訊く(1枚目の写真)。「さあ。でも、嫌だった。兄さんは、“お腹の中にチョウチョがいる” 感じがするって言ったけど、僕が感じたのは “吐き気” だった」。そして、クリストの顔をじっと見ると、「一つ試していい?」と訊く。「いいわよ」。チャビは、いきなりクリストの口にキスする(2枚目の写真)。「気は確か?」。「いいって言った」。「こんなことするなんて。もう行くわ」。「僕も帰る」。その後も、クリストには散々悪口を言われたが、帰ろうとして自転車を動かすと、“お腹の中にチョウチョがいる” 感じがする。そこで、“この感じなのか” と、お腹を押さえてニッコリする(3枚目の写真)。一方のクリスト、チャビがいなくなったことを確かめると、好きだったチャビにキスされたことが嬉しくて、躍り始める(4枚目の写真)。

5度目の現在。クリスチーナが車の中で着替え始める。「何してる?」。「会う約束の準備よ」。そして、赤い服に着替えると、「お願いしていい?」と訊く。「またかい? やめとくよ」。「ちょっと寄り道してもらえたら、友だちを拾えるの」。「今や、君のデートのお抱え運転手だな」。「ただの友だちよ」。「何キロだい?」。「約10キロ」。クリスチーナは、「お願い」を3度繰り返して了承させる。「なぜ、そんなに重要なんだい?」。「私が小さかった頃のグループと関係があるの。その時、私 12だった」(1枚目の写真)。「あんたも、そんなに年は違わなかったでしょ?」と訊く。「ああ」。「なら… あの夏の出来事を、あんたの人生で最も重要なこととして、覚えてないの?」。この鋭い指摘に、サラの顔は急に厳しくなり(2枚目の写真)、返す言葉もない。

翌朝、チャビの家に最初にやって来たのはロス。ベランダの食卓でルイスと2人きりになると、気まずい雰囲気が流れたので、ルイスは 「私たち、互いにほとんど知らないが、チャビの母は、君たちは家族のように愛し合っていると言ってる」と沈黙を破る。それに対し、ロスは 「それって、いっぱい? それとも、ちょっぴり?」と訊く。「家族だから、一杯さ」。「どうかな。あなただってチャビの家族みたいなもんでしょ。けど、チャビはあなたを愛してませんよ」(1枚目の写真)。次にやってきたのが、昨夜のロマンスの後のクリスト。ニコニコ顔で 「チャビ、いますか?」と、玄関に出たオスカルに訊く(2枚目の写真)。「どうして、そんなに嬉しそうなんだい?」。クリストは、答えたがらない。「入れよ、ロスが来てるぞ」。ベッドでクリストの声を聞いたチャビは、ニコニコしながらベランダに現れ、「お早う」と言って兄の隣に座る。兄が、立ったままのクリストに、「チャビの横に座りたいんじゃないの?」と念を押すが、「いいえ」と答えつつ、お互い、チラチラ見やる(3枚目の写真)。ロスが、「今日、ゴーカートをテストするんです」とチャビの母に言う。「気をつけてね。誰にもケガして欲しくない」。

チャビは、早くクリストと一緒に出かけたくて、「さあ、行くぞ」と言って、何も食べずに席を立つ。すると、義父が 「一緒に来い」と言う。「急いでるんだ」。「1分だ」。義父は、チャビをガレージに連れて行くと、車のトランクを開け、中からヘルメット取り出してチャビの頭に被せる。そして、「君がパパに戻って欲しがってるのは知ってる。そのために、レースに勝ちたいと思ってることも。私は、君のパパに取って代わるつもりはない。君が寂しい想いをしてることも当然だ。私にとっても、君にとっても、君のお母さんは大事な人だ。みんなで仲良くできたらと願っている」。そう言うと、他の4人分のヘルメットの入ったネットを渡す。「ありがとう。でも、あんたをパパと呼びたくない。他の呼び方で呼んでもいい?」。「ルイスはどうだ?」。「いいよ、ルイス」。2人は笑みを浮かべながら握手を交わす(1枚目の写真)。5人は、ルイスから贈られた お揃いのヘルメットを被って、丘の上に立つ。1人腰を下ろしたエカイツは、「ここがサーキットだ。最初の急坂を転倒せずに下り、できるだけ早く道路に到達する」と訓示する(2枚目の写真)。全員が輪になって、差し出した手を重ねる。すると、固定しておかなかったのか、ソープボックスが勝手に動き出す。チャビを先頭に5人で追うが、下り坂なので、とても追いつけない(3枚目の写真)。ソープボックスは、2枚目の写真の赤い矢印の茂みに突っ込み、その先の高さ5メートルほどの崖から落ちて壊れる。

そこに、赤毛連盟の5人がオートバイに乗って通りかかり、壊れたソープボックスを見てしまう(1枚目の写真)。「見ろよ、何てお粗末なカートなんだ。あいつら そっくりだぜ」。チャビ:「ほっといてくれ」。「それは、俺たちが決める」。エカイツ:「ヤナスのクソ野郎」。「ガキなんだ。勘弁してやろうぜ。どうせ、負け犬なんだ」。クリストは 「私たち勝つわ」と希望的観測を言い、ロスも 「そして願いを叶える」と同調するが、ヤナスは 「カートがなけりゃ、小屋は勝ち取れん。俺たちのもんだ」と言う。負けん気のチャビは 「せいぜい、あと1年さ」と強がる(2枚目の写真)。すると、ヤナスが意外なことを言う。「1年だと? お前、知らんのか? ここに、貯水池ができる。これが最後のレースになる」。そして、5人は去って行く。チャビは、「あいつら、どうかしてる。村が、どうして貯水池になるんだ?」と憤る(3枚目の写真)。

コロの様子が急に変になる。そして、問い詰められると 「僕、追い出されちゃう」と言い出す。チャビ:「話さないなら、追い出すぞ」。コロ:「ヤナスは正しい。貯水池を作ってる。僕のパパは、ダムの技術者なんだ。仲間になりたかったから、黙ってた」(1枚目の写真)。そして、「だけど、今じゃ保障がある」と余計なことを 付け加える。怒ったチャビは、「あるもんか!」と叫ぶ。ここで、エカイツが宥めに入る。「構うなよ。コロは正しい」。チャビ:「何で知ってる?」。「兄貴たちが、何ヶ月も前に話してくれた」。「なぜ、黙ってた?」。「仲間をやめるかもしれないと思ったんだ。このままでいたかった」。チャビは 「この嘘つき!」と叫んで、エカイツをど突く(2枚目の写真)。「お前はどうなんだ。パパのことで嘘付いて。ルーマニア人だと!」。「同じじゃない!」。「嘘は嘘だ!」。クリストが 「みんな友だちじゃないの」と 鎮めようとすると、制御の効かなくなったチャビは、「黙れ! どいつもこいつも嘘つきだ!」と決めつける」。クリスト:「あんただって、浜で女の子と一緒だったけど、黙ってたじゃない!」。「ああ、浜で、彼女に会ったさ。参考までに言っとくと、彼女は好きじゃなかったし、君もだぞ!」(3枚目の写真)。この、決定的な言葉に、怒り心頭のクリストは、石をつかむと、「何て嫌らしいの! このバカ!」と叫んで、チャビにぶつけようとするが、エカイツに当たる。チャビ:「君は、めちゃめちゃだ!」。そして、チャビとクリストの間で激しい争いが始まり、一番冷静なロスが去って行く。次には、クリストがコロを連れて去って行ってしまう。

2人だけが残り、エカイツはチャビに、「チャビ…」と声をかけるが、チャビは、「ほっといてくれ。この嘘つき!」と叫ぶと、走って去って行く(1枚目の写真)。そして、自転車に乗ると、通り慣れた道を家に向かって走る。しかし、頭が真っ白になっていたチャビには、新しく出来た建設用の道路のことなど眼中になかった。そして、林の中から大型ダンプの前に飛び出してしまう(2枚目の写真)。ダンプは、チャビを粉砕する(3枚目の写真、矢印)〔この場面に驚かない観客はいないだろう。映画のメインキャストが、残り時間20分の段階で死んでしまうなんて! こんな映画は観たことがない。それほど衝撃は大きい〕

涙なしには観られないシーン。警察車両が停まり、2人の警官がチャビの家に入って行く。何事か知らされた母は、その場に立っていられなくって座り込み、泣き叫ぶ(1枚目の写真)。電話で知らせを受けたロスの祖母は、ロスの頬を両手ではさんで話しかける(2枚目の写真)。2人の兄から知らされたエカイツは号泣する(3枚目の写真)。コロは母から知らされる(4枚目の写真)。クリストの前に来た母は何かを語りかけ(5枚目の写真)、その後、涙を流したクリストは、集まってきていた4人の仲間のところに走って行き、堅く抱き合う(6枚目の写真)。最後に、海辺に行き、感情を抑えた顔で、遠くを見つめる兄オスカルが映る(7枚目の写真)。これらのシーンに、台詞は一切ない。

そして、このオスカルの顔が徐々に消え、現在のサラに代ると(1枚目の写真)、6度目の現在となる。クリストの目は涙で潤んでいる。クリストが頼んだ “寄り道” の先にあったのは、馬の飼育場。サラは、車を停めると 「クリスト、何と言えばいいか分からないんだが…」と言い始めると、携帯に電話が入る。待ちきれないクリストは、座席から立ち上がると、指笛を鳴らす。一目でロスだと分かる男が、飛んで来て、2人は抱き合う。「来るって言ったでしょ」。「ダメじゃないか。30分の遅刻だ」。「いろいろあったのよ」。「いつも、そうだろ」。「行くわよ」。「乗せてくれるかな」。「大丈夫」。「新しいボーイフレンド?」。「違うわ」(2枚目の写真)。2人はじゃれ合いながら車に向かう。サラも、一目見て相手がロスだと分かったので、ニコニコしている。「今日は、ロスです」。「サラだ。元気かい?」。「昔とちっとも変わりませんね」。ここで、クリストが行き先をサラに告げる。「貯水池。ここから数分よ」。

森の中の道を4人が歩いている。クリストは、ずっと泣いている(1枚目の写真)。4人が向かった先は、ロスの祖母の “野外応接セット”。ロスが祖母に、「なぜ、チャビは死んだの?」と訊く。「分からないわ」。「何をすればいいの?」。「今は、悲しめばいいの。あなたは、チャビが好きだったから、すごく寂しいでしょ。これから長い間、チャビのことを考えると、とても悲しくなるでしょう。でも、少しずつ、彼と一緒に過ごした楽しい時を思い出すようになるわ。そしていつの日か、あなたが お友だちになれたことが どんなにラッキーだったかと思えるようになったら、チャビを思い出す度に笑顔になるでしょう」(2枚目の写真)。「今は笑えないよ」。「ええ、今は とても無理ね」。ここまでは、話している相手はロス。ここから、他の3人にも話しかける。「チャビがどこにいようと、彼はあなたたちを見守り、とっても愛しているんだと 知っていることが重要なの。チャビは、あなたたちを誇りに思うでしょう」(3枚目の写真)「チャビは あなたたちに望むはずです。あなたたちが友だちであり続け、人生を通じて冒険を続け、多くの魔法の日々を持とうとすることを」。

そこに、海岸のバーの主人がやってきて、4人と祖母を、自分の倉庫に連れて行く。彼がカバーをめくると〔かつて、チャビが撫でていた〕、出てきたものは、本格的なソープボックス(1枚目の写真)。祖母は、「私たちは、仲のいい友だちだったの。そして、この素敵な乗り物でレースに出たの。遥か昔の話よ。あなたたち、レースには出なくても、一度はこれに乗ってみるといいわ。きっとチャビも、これを見みたかったでしょうね」。4人は、ソープボックスに乗って(2枚目の写真)、レースのコースを降りて行く。

恐らく、それから1年近い時が経ち、村の住民が家を離れて行く。最初に映るのは、車に乗った悲しそうな顔をしたクリストが、誰もいなくなったチャビの家を見るシーン。2番目は、ロスが、まだトラクターの所にいるエカイツに、リアウィンドウから手を振るシーン(1枚目の写真)。3番目は、クリストが、車に乗ろうと門から出てきたコロを見るシーン(2枚目の写真)。最後は、村を離れて森に入ったクリストの車が突然停まる。運転していた父が、「あれ、熊か?」と言ったので、びっくりしたクリストが、後部座席から身を乗り出して熊を見るシーン(3枚目の写真)。かつて、「彼は、熊を見たって言うけど、他に誰も見た者なんかいないのよ」と言ったことを反省しているのだろうか? これで、1984年のシーンは終わる。

7度目の現在。3人を乗せた車は、貯水池のダムの上を通過する(1枚目の写真)。このダムは、以前、ホテルのTVに映っていた “水没した教会” のあるサウ貯水池のダムで、ダムは1962年に完成している〔単なるロケ地というだけで、映画のストーリーとは関係ない。それに、このダムにある水没した村は、海から最短でも45キロも離れた内陸にある。子供達が簡単に自転車で行けるような距離ではない〕〔この映画では、ダムで水没する村と、海水浴場が至近距離にあるが、普通、そんなことはあり得ない〕。車は、昔、“小屋” のあった辺りまで接近していく。その先には、湖しかない。ロスが 「ありがとう」と言って降りた後、サラはクリストに 「また会えるかな?」と訊く。「疑問ね」。彼女は、荷物を持って車から出ると、「チャビは あんたに敬服してた。ヒーローのようにね。口には出さなかったけど、私には分かるの」と打ち明け、湖に向かう。その言葉を聞き、そのまま “バイバイ” するのにためらいを覚えたサラは、車を下りて湖に近づいて行く。すると、かつてのツリーハウスのような “小屋” が、湖上に浮かんでいる(2枚目の写真)。一方、小屋のもっと近くでは、かつての仲間4人が集まっている。今日は、チャビの命日で、4人は毎年、ここを訪れていたのだろう。4人は、そのまま湖に入って行く(3枚目の写真)。

4人の中で、最初にロスが転んで水浸しになると、4人の間で、水かけ合戦が始まる。そのあとは、映像のマジックで、1人ずつ昔の姿に戻って行く。最初がコロ、次がロス、そしてエカイツ、最後がクリストだ。これは、“子供時代のように天真爛漫な姿に戻った” ことを表象しているのであろう。4人はハシゴをつたって小屋に上がり、昔のように抱き合う(1枚目の写真)。それを見て、サラが微笑む〔彼には、4人の大人しか見えていない〕。それを見つけたクリストは、“おいでよ” と手招きする(3枚目の写真)。映画はここで終わる。ロスの祖母の “教え” に忠実に従って楽しい人生を送っている4人を見て、オスカル・サラの人生は変わるのだろうか?。

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