ドイツ映画 (2019)
1979年にロルフ・カルムザック(Rolf Kalmuczak)によって5冊の本からスタートしたTKKGは、一連の本や、ラジオ番組としてシリーズ化し、著書の死後もいろいろな著者によって引き継がれ、誕生から42年経った2019年に、「すべての伝説には始まりがある」として、この4人の “探偵” によるクループが生まれるに至った経緯を映画化した『TKKG』が公開された。この映画について紹介するまで、このシリーズが、ドイツで一番愛されている超大シーズだという認識は全くなかった。全貌はあまりに巨大かつ複雑で、私の理解を完全に超えている。「TKKGウィキ」(https://tkkg.fandom.com/de/wiki/Hauptseite)が、恐らく最も正確に全貌を伝えているサイトだと思われる。冒頭の「TKKG Wiki」の下の5つの▼の中の「MEDIEN(メディア)」を左クリックすると、上から順に、「Bücher(書籍)」、「Hörspiele(ラジオ番組)」、「Fernsehserie(連続テレビ番組)」、「Kinofilme(映画)」、「Computerspiele(コンピューターゲーム)」、「Theaterstücke(演劇)」、「Hörbücher(オーディオブック)」に分かれている。「Bücher(書籍)」のトップにある「TKKG Romane(小説)」だけでも、リストが延々と続いている。この映画は、先に触れたように、この膨大なシリーズの「始まり」を 初めて描いたもので、そういう意味では、斬新なアイディアかもしれない。他の有名なシリーズ、例えば、ごく古い『ダルタニアン物語(『三銃士』を含む)』や、最近の『ハリー・ポッター』では、第一巻が物語のスタートだった。一方、これも昔の『シャーロック・ホームズ』は中短編の集合体で、始まりはない。そして、色々な作家が次々と “続き” を書いている。そういう意味では、TKKGはホームズ的なのかもしれない。TKKGは、4人の子供が探偵になる話なので、その点も似ている。ただ、4人の年齢は、ホームズと違って、ずっと14歳前後(下の挿絵参照/映画と違ってカールは大きく、団子ことウィリーは小さい)。大人にはならない。だから、この映画の続編の『TKKG 2』では、4人の俳優は20歳に近づいてしまい、“掟破り” になってしまう。最後に、苦言を呈すると、これほど、ご都合主義で、論理的に破綻した脚本は見たことがない。
映画の主人公ティムは、数学オリンピックで州のチャンピオンになったので、奨学金をもらって、一流の寄宿学校に中途入学することができた。彼と同じ部屋には、チョコ会社の社長の息子で、4回の放校歴を持つウィリーが同時に入る。ウィリーは、一人部屋だと思っていたのに、スニーカーを履いているような移民二世と同室にされ、機嫌が悪い。しかし、その夜、窓から飛行機が墜落するのが見え、ティムに付いて見に行ったウィリーは、それが父の自家用機だと分かると、大好きだった世話係 兼 操縦士 兼 運転手のゲオルグのことが心配になり、朝になるまで現場で警察の来るのを待っている。そこに現れたのが、警部の娘のガビーと、特殊な装置で金の含有量の高い物質を探しにきたカール。これで、将来のTKKGのメンバーが、偶然一ヶ所に集まった。その日の成果は、警部に先んじて空の箱を見つけたこと。その箱の中には、中国の小龍寺の宝物 “天空の守護者” の像が入っているハズだった。しかし、ウィリーの父は、ゲオルグを疑っていたので、ワザと空の箱を持たせてジュネーヴまで飛ばせたのだった。すると、今度は、ティムたちを学校まで車で送っていく途中で、その父が何者かのグループにより拉致される。ティムたちは、何らかの手掛かりを得ようと、警察署に侵入し、カールが、拉致車内に「STICK」という文字が刻まれているのを見つける。その最初の手掛かりは、STICKという家に住んでいる、“最近ウィリーの母に取り入った怪しい2人組”。ティムたちは、さっそくその家に向かい、地下室があることを発見し、その中に拉致されたウィリーの父が監禁されていると思ったが、警察まで呼んだ結果は間違いに終わる。冴えない警部は、あくまでゲオルグが犯人だと思い込んでいるが、STICKの家でウィリーが見つけたカセットテープの中には、意外な人物が犯行に加わっていたことを示す証拠が入っていた。かくして3人は、カールが先行して捜索に行った “以前、空の箱を見つけた場所” に、後を追って駆け付ける。そこには、すべての関係者がいて、4人は最終的に大手柄を立てて、ウィリーの父と、“天空の守護者” とゲオルグを発見・救出する。そして、これがきっかけとなり、探偵団TKKGが発足する。なお訳にあたっては、①省略が時々あるドイツ語字幕と、②省略はないが時々間違っている英語字幕を併用した。
ティム役はIlyes Moutaoukkil (現在はIlyes Raoul)。2004.9.25生まれ。映画の撮影は2018年9-10月だったので、撮影時14歳。ドイツとモロッコの国籍を持っているので、生まれはベルリンだが、両親の双方もしくは片方がモロッコからの移民なのであろう。『Zeiten ändern Dich』(2010)に端役で出たのが映画界入りのスタートで、『TGGK』は6作目(TV映画を含む)。他にTVドラマ3本もある。『TGGK』の続編、『TGGK 2』は、現在、製作準備段階。もう少し子供らしい顔の写真で、出回っているのは、『Bibi & Tina: Tohuwabohu total』(2017)のポスターを背景にした右の写真。ウィリー役はLorenzo Germeno。映画の最初ではティムよりかなり年上に見えるが、2004.1.1生まれ。撮影時14歳半。スタートは、『Let's Go!』(2014)。『TGGK』は6作目。他にTVドラマ1本もある。『TGGK 2』にも同じく登場。カール役はManuel Santos Gelke。2人よりかなり小さく見えるが、何と2005.2.10生まれ。撮影時13歳半。これが映画初出演。
あらすじ
4人の高校生のグループが、どこか不明の都市のビルの屋上にある塔屋にスプレーで落書き、あるいは、グラフィティをしている。そこに警官2人が現われ、それを見つけた1人が、仲間に緊急警報。2人はすぐに逃げ、親切な女の子は、落書きを続けている男の子に、「ティム!」と声をかける(1枚目の写真、矢印がティム、左が女の子、右が警官2名)。しかし、ティムは、古いウォークマンのヘッドホンを耳に付けていたため、女の子の声が聞こえない。彼女は逃げてしまい、スプレーを使い続けるティムの背後に警官が回り込んで、作業をじっと見ている。ふとしたきっかけで後ろを振り向いたティムは、警官の姿を見てがっくり(2枚目の写真、矢印はヘッドホン)〔ドイツでは2005年の法改正により、物的損害のある場合、最低5ユーロの罰金、最高2年の懲役。ただし、14歳未満なら、無罪。ティムのように14-18歳の場合は、個々のケースで判断。(a)教育処分(①居住に関する指示の遵守,②一定の家庭又は施設への居住,③一定の職業訓練への従事又は就労,④一定の労働義務の履行,⑤指導援助者の監督下に置かれること,⑥一定の社会訓練への参加,⑦被害者への補償を達成するための努力,⑧特定の者との交際あるいは飲食店・娯楽場への出入りの禁止)、(b)懲戒処分(①戒告(行為の不法性についての痛切な訓戒), ②義務の賦課(損害の回復、被害者への謝罪、一定の作業), ③少年拘禁(休日拘禁,短期拘禁,継続拘禁))、(c)少年刑務所における自由の拘束(短期は6月,長期は5年)〕。ティムは、片手にスプレー缶を持ったまま両手をgive upするように上げ、警官に近づいて行く。そして、突然、1人に向かってスプレー缶を投げると、相手がひるんだ隙に走って逃げる。屋上から、その下の段まで4mをジャンプして飛び降り(3枚目の写真、矢印)、さらに、その先の4mも飛んで、広い屋上を走り、塔屋の中に逃げようとするが、鍵が掛かっていてドアが開かない。ビルはここで終わっているので、逃げ場を失ったティムは、屋上の端からぶら下がる(4枚目の写真、矢印)。生命の危険があるので、追ってくる警官が、「止めろ!」と言うが、ティムは何とか弾みを付けて、下の階のベランダの手すりを経てベランダに無事着地。その際に、スマホは地上に落下。スマホを心配してベランダから見下ろしたティムに、屋上の端まで来た警官が、「お前、死にたいのか?」と声をかける。危険を察知したティムは、急いでアパートに入り、居間でお菓子を食べている2人のお婆さんの前を駆け抜けるが、一瞬止まって 「召し上がれ」と言い(5枚目の写真)、出て行く。
2人の警官のうち、“死にたい” 方の1人が、ティムと同じように危険なジャンプをしてベランダに飛び降り、2人のお婆さんに 「今日は」と声をかけて出て行く。アパートの階段を駆け下りたティムは、2階から工事中の立ち入り禁止地区の砂利の上に飛び降り、しばらく走って横断用通路の柵を乗り越え、反対側の有刺鉄線付きの柵も飛び越える(1枚目の写真)。警官が、しつこく追ってくるので、ティムはその先の高さ2mほどの金属ダクトに飛び乗り、その先にある建物の屋根に上がると、奥にある屋上ハッチを開け、中に入る(2枚目の写真、矢印はハッチを開けたティム)。だから、警官が屋根の上に上がるとティムの姿が消えていて、どうすることもできない。ティムは、ハッチから下にある廊下まで飛び降りるが、かなりの高さなので手をつく(3枚目の写真)。この従業員用の廊下の向こうは、食品スーパー。ティムは、棚から飲み物のカップを取ると、それを飲みながらレジに向かう(4枚目の写真、矢印はレジ)。レジ係はティムの母で、ティムを抱くと、上機嫌で話す。「今日、学校に行ってきたのよ。おめでとう。あなた、今年の数学オリンピックで州のチャンピオンになったって」。「ホント? クールだ」。「お父さんも、きっとすごく誇りに思ったでしょうし、私もよ」。母は、そう言うと、もう一度ティムを抱きしめる。母は、ティムの担任が推薦したMINT奨学金〔実際にある制度で、毎月300ユーロ≒2018年の38000円が支給される〕の採択通知を見せ、さらに、その奨学金で、ティムを受け入れてくれる全寮制の寄宿学校があったと、学校のパンフレットを見せる(5枚目の写真)。このあと、TKKGのタイトルが表示される。きわめて小気味よいスタートだ。
双発ターボプロップビジネス機のビーチクラフト・キングエアB200から、まるで大人のような雰囲気の少年(ウィリー)が降りて来る(1枚目の写真)。後ろからは、荷物を持ったお守り役の男性が付いてきて、「真っ青な空。まるでニースです」と言うと、「海じゃなくて、学校だよ」。「そう、おっしゃらず、今度は絶対に上手くいきます」。個人飛行機用の空港に待っていたのは、ピカピカだが旧式の黒のメルセデスW116(1972-80年)。向かった先は全寮制の寄宿学校(2枚目の写真)。このロケ地は、ローブルク城寄宿学校〔Internat Schloss Loburg〕。他に適切な構図の写真がなかったので、禁断のウィキペディアでも写真自体に間違いはないので、3枚目に全体像を示す〔このローブルク城は田舎にあり、一番近い都市は60km離れたドルトムント。1899年の大火後、20世紀初頭の現在の形に修復され、1951年以降カトリックの寄宿学校Collegium Johanneumとして使われている〕〔映画の中では、この学校は、最初にティムが落書きをしていた建物からさほど離れていない場所にある〕。
ウィリーがお守り役と一緒に予め教えられた部屋に入って行くと、そこには既にティムがいた。ウィリーは、「えーと、すみません、ここは53号室です」と、丁寧に間違いを指摘する(1枚目の写真)。ティムは、ヘッドホンを外して、「その通り」と答える(2枚目の写真)。「あのね、誤解してないかな? 53号室は僕の部屋だよ」。ティムは、自分の鍵を見せて、「僕もだ」と言う。ウィリーは、お守りを振り向くと、「ダブルルーム?」と、真剣に驚く。そして、「父上は、僕が嫌いなのかな?」と言い、ティムのことを、「スニーカーを履いた奴とダブルルーム」と言って貶(けな)す。お守り役は、ティムに 「彼にチャンスを。思いやりのある人だが、気付くのに時間がかかるんです」と、言い訳する。「ピエモンテ〔イタリア北西部〕の寄宿学校よりはマシだと思ってたのに」。お守り役は、「これでいいんですよ」と宥める。「一緒にいてよ」。「私は、明日の朝、あなたの父上の命令でジュネーヴに飛ばねばなりません」と断るが、馴染みの菓子店からウィリーの好物のケーキを送らせるからと配慮を見せ、2人は友達のように抱き合う。お守り役は、部屋を出て行く時、ティムとフィスト・バンプ〔握り拳を突き合わせる挨拶〕し、「チャオ」と言い、ウィリーに向かっては、「元気でね〔Mach's gut〕、団子〔Klößchen〕」と言う。ティムは、思わず、「団子?」と訊く。「ダメ、ダメ、そう呼んでいいのは、僕の友だちだけ」。ティムは、笑顔で「了解」と言う。ウィリーはバッグを逆さにすると、中から板チョコが山ほど出てきて、1個が床に落ちる。ティムは、それを拾い、丸々と太ったティムの顔が印刷されているのを見て、「団子」に納得する〔専用の板チョコを大量に持参するほどの甘党〕〔板チョコの「Sauerlich」はウィリーの姓、「BESTE」はベスト、上下の小さな文字は「高貴なナッツのヌガー・チョコレート」。包装紙の色が違うと、チョコの内容も違う〕。
2人は、部屋から外に出て、校舎の正面から真っ直ぐ伸びる道を歩く。ティムが、「スニーカー、嫌いなの?」と訊くと、ウィリー〔紳士靴を履いている〕は、「僕は、スポーツなんかしない」と答える(1枚目の写真)。すると、右の方で、3人の生徒に囲まれた年下の生徒〔頭がいいので飛び級している〕が、「おい、宿題はやったろうな?」と訊かれ、少年(カール)が3人にノートを渡している(2枚目の写真、矢印)。それを見たティムは、「君らは、宿題 自分でできないくらいバカなのか?」と声をかけ、辺りに緊迫感が走る。如何にも意地悪そうな2人がティムの前まで来ると、1人が後ろに回り込み、「お前、ゲットー〔ナチスの時代は ユダヤ人居住区を指す差別用語だったが、今は 少数民族が居住するスラム街を指す差別用語〕の奨学生か?」と訊く。「そうがどうか?」。後ろの学生がティムの背中のバッグから電気器具を取り出すと、「おい、見ろよ、博物館物だぞ」と言い、周りの生徒に見せる。前にいたワルが、「俺にも 見せろ」と言い、後ろのワルが投げて渡す。それは、1986年に発売されたウォークマンWM-32だった〔撮影は2018年なので、33年前の製品になる。そんな古いものを14歳のティムがなぜ持っているかは、それが、5歳の時に交通事故で亡くなった父の遺品だったから〕。ティムは、「返せよ」と要求する。前にいたワルが、「もし、返さなかったら?」と、ニヤニヤしながら言うと、ティムは瞬時に相手の腹に一発食らわすと、体勢が崩れたところを、一気に地面にねじ伏せ、顔を地面に押し付ける(3枚目の写真)。それを見て、いつも虐められているカールが嬉しそうな顔になる(4枚目の写真)。ティムは大切なウォークマンを取り返す〔この騒動の間、ウィリーはティムから離れ、自分は無関係を装っていた〕。
そこに、この寄宿学校の校長がやってくる。騒ぎを聞きつけたわけでなく、2人に用があったのだが、なぜ2人がここにいるのを知っていたのかは分からない。ミュラー=ボレロ校長は、「一緒に来なさい。寄宿生の責任者のポーリングさんのところに連れて行きます」と言い、2人を引き連れて歩いて行く(1枚目の写真)。ポーリングは、校長直々の “お越し” だったので、3人だけになると、「そうか、ミューボー〔ミュラー=ボレロの略〕、おっと、今のは聞かなかったことにして、校長の命令だ 軽々しく扱えない」と言うと、各科目の教科書を1冊ずつ投げて寄こす。「何か質問は?」との問い掛けに、ウィリーは 「朝食の卵は3分半茹でて下さい。僕の食べ物に一切アボガドを入れないで下さい。とてもひどい鼓腸が起きます」と言う〔伏線〕。食事については了解が得られたが、次に、ウィリーが個室を要求すると、あっさり断られる。理由は、2人を一緒の部屋に入れたのは、その方がお互いのためになるとポーリングが判断したから。ティムは激しい気性が問題で、ウィリーは過去4回の放校が問題〔『ミュミュ』のロジェそっくり〕。ウィリーは、最後から二番目は入学前に放校されたので数に入らないと主張する。ポーリングは、教科書を選びながら、ウィリーの入学にあたって両親が懸命にアピールしたことに感銘したとも言い、父親のアートコレクションについても言及する(2枚目の写真)〔伏線〕。全部の教科書を渡し終えた後、結局、ティムは一言も話さなかったが、ポーリングは、新しいルームメイトとして、2人に握手させる(3枚目の写真、矢印)。
翌日の明け方、ティムは、自分のスマホを逃げる時落としてしまったので、隣のベッドで寝ているウィリーの顔の前に置いてあったスマホを借りると、ウィリーの指で指紋認証し、母にメールを書き始める。「ママ、僕は元気で…」。すると、急に電気が付き、ウィリーが 「おい!」と文句を言う(1枚目の写真、矢印はウィリーのスマホ)。ティムは、「ごめん。僕スマホ持ってない。母さんに短いメールを送りたかっただけだよ」と言うが、ウィリーは、取り返したスマホでメールを見たにもかかわらず、すぐに立ち上がる。「どこ行くの?」。「君が、スマホを盗んだって言いに行くんだ」。「ちょっと、待てよ」。「僕を殴る気か?」(2枚目の写真、矢印)。その瞬間、窓の外を光るものが高速で通過し、その音に気付いた2人は窓まで行く。見えたのは、遠くの森の向こうに、炎を出しながら落ちて行く物体だった。ウィリー:「あれ、何だ?」。「誰かがパラシュートで脱出したのかな。見に行かないと」。「もし、面白い物なら、ネットで見れる」。「目撃ヒーローにならず、他人の書いた物を読みたいの?」。2人が外に出て行くと、最初に窓の外を横切って行ったものが、落下して燃えていたが、それが何なのかは分からない。森の向こうでは、落下物が大きな炎と黒煙を上げている。ティムは、「もっと近づかないと」と言い、遠方にも関わらず歩いて見に行こうとするが、ウィリーは、「ホラー映画では、それは、全員が死ぬ前の最後の言葉だ」と言って、動こうとしない。しかし、ティムが、「1人取り残された人は、どうなる?」と訊くと、怖くなってついて行く。2人が森の向こうの原っぱで見た物は、墜落した飛行機の燃える残骸だった(3枚目の写真)。しかも、尾翼には、ウィリーのチョコと同じ、「SAUERLICHS BESTE」の文字が見える。前日の朝、ウィリーが乗って来た飛行機だ。ウィリーは、大好きなお守り役が心配になり、「ゲオルグ!」と言って、残骸に向かって走って行く。ティムは、「ウィリー待って」と後を追う〔ここで初めて、ウィリーという名前が使われる〕。ティムは、「ゲオルグは飛び降りた。見たじゃないか」と言って、ウィリーを慰める。
それから、場面は明るくなり、消防車や警察車両などが集まってくるシーンに変わる。2人は、草むらの陰からその様子を窺っている(1枚目の写真)。すると、警部がなぜか娘同伴で現場に到着する〔娘は、寄宿学校の生徒で、名前はガビー〕。ガビーは、規制線のテープを貼り始める〔日本の黄色と違い青色〕。すると、草むらの中にいる2人に気付き、大声で父を呼ぶ。駆け付けた父は、ガビーには車から出ないように言い、2人には、墜落を見たか訊く。ティムは 「はい、寄宿学校から。でも、ここに着いた時には、終わってました」と言い、ウィリーは 「あれは、僕の両親の飛行機です。僕はウィリー・ザウアーリッヒ、家族を代表して話しています」と言った上で、「事故に関する調査の状況は? パイロットが生きている可能性は?」と訊く。そこに、ブラックボックスが見つかったという無線が入り、警部は、ウィリーが重要な関係者であるにもかかわらず、規制線の中に入らないように言ってブラックボックスを見に行ってしまう〔この警部、原作ではどうか知らないが、映画では実に冴えない〕。2人の見張りに残されたガビーは、ウィリーに 「運んでた彫像って何なの?」とウィリーに訊く。ウィリーは、「どうして、“天空の守護者〔Himmelswächter〕” のこと知ってるの?」と訊く。「警察無線」。「父上が、カカオ豆を輸入しているアジアから持ち帰ったんだ。すごく価値のある物に違いない。純金の像なんだ」。すると、奇妙な機械を持ったカールが規制線を無視し、3人の前を横切って行く〔なぜか、ガビーは止めようとしない〕。カールが入っていいならと、ティムは規制線を越え、ウィリーがそれに続き、ガビーは後を追う。ここで、画面は、墜落現場の奥にある大きな廃棄された工場の横をカールが歩いていく場面に変わる(2枚目の写真)。カールは、機械が指示するままに工場の巨大な空間の中に入って行き、その奥にある穴に向かう。そこまで来てカールが大きなヘッドホンを外したので、ティムが、「やあ」と声を掛け、カールはようやく3人に後を付けられていたことに気付く。神経質なカールは、胸が苦しくなって、すぐに喘息スプレーを口の中に噴射する〔伏線〕。そして、振り向くと、「“天空の守護者” のコアは純度0.999の金で出来てる。この装置は、非同期パルスを発信することで、特定の純度を持つ対象物を見つけられる。金の含有量は87.3%」と言う〔大きな疑問。そもそも、なぜ、カールは “天空の守護者” を捜しに来たのだろう? その名前すら知らないハズなのに。そして、それが、なぜ、ここにあると思ったのか? しかも、その材質を調べ、それを探査できるように装置を調整するためには、相当の時間を要する。こんなことは、絶対に起こり得ない〕。4人が穴の中に入って行くと、装置は柵の前まで来て、下を指す。目の前には縄梯子があるので、身軽なティムが降りて行くと、下にはパラシュートがあった。それを聞いたウィリーは、ゲオルグが生き延びたと思い、喜び勇んで2番目に降りて行く。そして、“天空の守護者” を入れた箱も見つかる。しかし、ガビーが指紋を付けないように蓋を開けると、中は空だった(3枚目の写真)〔ここも、120%、決定的に間違っている。「ふざけるな」と言いたい。カールの装置は、金の含有量は87.3%の対象物に反応して彼をここまで案内して来たことになっている。しかし、箱な中に何も入っていなければ、装置が動くハズがない。だから、ここまでガビーを連れて来ることなどあり得ない→映画そのものへの不信感が急速に高まる〕。ガビーは、ゲオルグが箱を持ってパラシュートで飛び出し、パラシュートと空の箱をここに置き、像だけ持って逃げたと推測する。ウィリーは、ゲオルグを信頼しているので、そんなことはあり得ないと反撥する。4人は、箱を持って墜落現場に戻る。警部は、感謝するが、中が空であることにがっかりしていない。そして、それを不思議がるウィリーに、「君のお父さんが話してくれる」と、曖昧な返事をする。警部は、パトカーに3人を乗せ、ザウアーリッヒ邸に行かせる〔カールは うっかり置き去り〕。ザウアーリッヒ邸に着くと、ガビーが箱を持って行く(4枚目の写真)〔証拠物件ではないので、素手で持っている〕。ザウアーリッヒ邸には、ウィリーの父がいて、意外なことを打ち明ける。それは、彼〔父〕はゲオルグを疑っていたので、わざとレプリカを入れた箱を持たせてジュネーヴに行かせた。そして、その予想は的中し、ゲオルグはレプリカを盗んだというもの〔父は、邸宅に保管してある本物の像を見せる〕。これを聞いて、ウィリーは愕然とする。その後で、神秘思想に染まった母と、その “師” が登場する。
ウィリーの父は、3人を学校に送り届ける。いつもはゲオルグが運転していたので、運転に慣れていない父は 最初戸惑う。しばらく、野原の中の1本道を走っていると、道路の真ん中に、行く手を塞ぐように、斜めにバンが停まっている。父は、クラクションを鳴らしても動いてくれないので、どうなっているか見に行こうと、車から降りて歩き始める(1枚目の写真、矢印)。父が、途中まで言って、「おい!」と声をかけると、いきなりバンのバックドアが開き、黒装束の3人が飛び出て来て父を拘束する。それを見たウィリーは、車内で真っ青に(2枚目の写真)。助けようと飛び出したのはティム。父は、薬を嗅がされてバンに引っ張り込まれ、3人のうちの1人が、ティムに対抗しようと向かってくる。そして、小龍形の中国古来拳法のポーズを取り、ティムが正面から攻めて行くと、宙を飛んでティムの後方に着地。再び、ポーズを取る。そして、ティムがぶつかって行くと、ティムは宙を飛ばされ(3枚目の写真)、そのままアスファルトに叩きつけられて、動けなくなる。車の中で見ていた2人が、助けに駆け付ける。ガビーは、バンのナンパープレートをスマホで素早く撮影。ティムを打ちのめした相手は、バックドアを閉めると、ワザと足で蹴って、そこにゴム底靴の黒い跡を残す(4枚目の写真、矢印)〔伏線〕。
学校では、ポーリングが、飛行機の墜落事故と、行方不明の像について生徒達に話し、“天空の守護者” について、美術史的な余談を始める。それによれば、中国のSongshan〔松山〕の山麓にあるShaolong寺〔この映画の中では小龍寺となっている(後で出て来る本の題名から)〕にある “天空の守護者” は、小龍寺で最も神聖な物で、1928年に盗まれ、1960年代にオークションに出品され、1200万ドル〔1965年とすると、2022年の1億1300万ドル〕という記録的な価格で落札された。そのあと、ポーリングが生徒達に見せたのは、1928年以前に撮影された〔1928年に盗まれた “天空の守護者” が映っている〕僧侶の特殊な防御的な戦い方。他の生徒はまるで興味を示さなかったが、ティムは、ウィリーの父が拉致された時に、自分が黒装束にやられた時と似たスタイルの戦い方だったので、ポーリングが話し終えると、彼に会いに行き(1枚目の写真)、本を貸してもらう。その足で寮の部屋に戻ると、ウィリーが部屋を引き上げる準備をしている。理由を訊くと、①母一人なので、世話(精神的な)をしないといけない、②今日、父の身代金の電話があった〔父を拉致したのは、飛行機で運んでいた “天空の守護者” の像がレプリカだったため、本物と交換するため〕と話す(2枚目の写真)。そして、部屋を去るにあたり、父を助けようとしてくれたことに感謝して、スマホをプレゼントする。さらに、警察は間違っている。ゲオルグは犯人ではないと強調するが、ティムは3人の拉致犯の1人がゲオルグだと思っているので、半信半疑(3枚目の写真)。
ティムは、「多分、ガビーなら何か知ってるかも」とウィリーに話す。「きっと、話してくれないよ」。「なら、話させないと」。「拷問するの? 親指のネジ締め? 手足を巻き上げ機で引き延ばす? 歯を抜くとか?」〔ティムが最初にカールを救った時の腕力が頭を離れない〕。「うまく尋ねるのさ」。「もちろん そうだよね」。という訳で、ティムは、学内のオーケストラでアルトサクソホンを吹いているガビーを、練習室のドアをそっと開けて見る(1枚目の写真)。ガビーも、見られていることに気付く。練習が終わった部員が出て来ると、廊下で待っていたティムがガビーの前に出て、「ちょっと話せる?」と訊く。次のシーンでは、2人揃って建物から出て来る、ティムは、「君のお父さん、何か新しいこと知ってる?」と、質問をぶつける。彼女の返事は 「部外者には、調査結果は話せない」という冷たいもの。ティムは 「僕は部外者じゃないし、秘密は守れるよ」と言うが、ガビーは 建物のドアの陰から様子を窺っているウィリーの存在に気付き、「ウィリー?」と声をかける。ティム:「ウィリー? なぜ、今、彼の名前が出て来るの?」。ガビー:「ウィリー、出ていらっしゃい」。ガビーにとっては、第三者のティムより、直接の関係者であるウィリーの方に興味がある。そこで、「ここで会えてよかった。いつくか質問があるの」と切り出す。「いいよ」。「ゲオルグとは、どのくらい長いの? あなたたちだけで一緒にいた場所なんかあった?」と質問する。「彼、ワイガ湖〔架空〕に小屋を持ってたから、時々、一緒に釣りに行ってた。だけど、また どうして?」。「最後に、そこに行ったのは、いつ?」。これでは、尋問と同じなので、ウィリーは反撥する。「やめろよ。犯人はゲオルグじゃない」。ティムも、「分かんないの? ゲオルグは彼の友だちなんだ」と、ウィリーをサポートする。ガビーは、「調査は、感情なんかじゃなく、頭でするものなの。手掛かりを集めないと」と、去ろうとする。ティムは、「お父さんが警官だからって、鼻にかけるなよ」と、その態度を批判する。ガビーは、「私が撮影したナンバープレートのお陰で、拉致犯のバンを見つけられたのよ。はっきりした手掛かりも見つかったし」と自慢する(2枚目の写真)。ウィリーが 「どんな手掛り?」と訊いても、「さよなら、プロさん」と、バカにして去って行く。少なくとも、犯人のバンが警察署にあることだけでも分かったので、ティムはカールに会いに行く。そこは、寄宿舎内とは思えないような、屋根裏の研究室〔なぜ そんな特別待遇が許されるのだろう/ティムは、なぜカールの居場所を知っているのだろう?〕。2人を見たカールは、機械的に、やって欲しい宿題を置くように言うが、ティムが、別の用事で来たと言うと、大喜びする(3枚目の写真)。
その夜、ティムは窓からロープを使って抜け出す〔ウィリーと一緒の時は、玄関(?)から出て行ったのに、なぜわざわざ窓から出て行くのだろう?〕。ティムと、自宅から抜け出して来たウィリーと、脱出方法不明のカールの3人が、ガビーの父の警察署の前に集合する。3人は、バンが停めてあるであろう車庫側の出入口に忍び寄り、カールが持参したノートパソコンで、ロックの暗号コードを読み解こうとするが、バッテリー切れで失敗。しかし、がっかりしたウィリーがドア柵に寄りかかると、元々鍵が掛かっていなかったので、中に倒れ込む。一方、署内では、ガビーが、ウィリーから聞き込んだワイガ湖の小屋のことを得意げに父に話すと、ガビーは警察官ではないから、これ以上、首を突っ込むなと言われ、反感を覚える。そこで、車庫に潜り込んだ3人がバンの前にいるのが監視カメラに写っているのを見つけると、父に見つからないようにし、自分は車庫に駆け付ける。ティムは、バンのバックドアにくっきりと付いたゴム底靴の黒い跡を見る(1枚目の写真、矢印)〔3節前の写真と比べ、①靴跡の形が全く違い、②場所も15センチほど下に変わっている→ずさん過ぎる〕。一方、車内に入り込んだカールは、最後部の端がザラザラしているのに気付き、上から紙を当て、鉛筆で密に斜線を書いて字を浮き立たせる。そこには、「STICK」と言う文字が彫り込まれていた(2枚目の写真)〔stickはドイツ語でも英語と同じ。色々な意味があり、特定できない〕〔最も重要な伏線〕。そこに、警察犬がやってきて吼え、次いで、ガビーがやってきて犬を抑える。ティムが窓から自分の部屋に戻ると、ポーリングがいるのでびっくりする(3枚目の写真)〔なぜ? 真夜中に、こんなタイミングでなぜティムの部屋に? 現実には絶対に起こり得ない〕。ポーリングは、「なぜ、前の学校でやったことを、また繰り返すんだね?」と訊き〔ティムが寄宿学校に入るのは、これが初めて。授業を抜け出すことはあったが、寄宿舎の部屋から抜け出したことはない。このあたり、矛盾だらけ〕、もう一度やったら、処分すると警告する。
翌朝、カールが廊下を歩いていると、前方からティムとウィリーがやって来たので笑顔になる。そして、「やあ!」と声を掛け、拳を突き出してフィスト・バンプを要求し、2人は仕方なくそれに応える(1枚目の写真、矢印)。「僕たち、今や、調査チームだから、基地が必要だよね。僕の屋根裏部屋を改装できるよ」。この期待に燃えた言葉に対し、ティムは、「何か誤解してないか?」と冷たい言葉。「誤解って、何を?」。今度は ウィリーが、「君は助けてくれたけど、調査チームなんかないんだ」。そこに、ガビーがやって来て、「警察署に侵入するなんて、バカじゃないの?」と、昨夜のことを批判する。それに対し、ティムは 「手掛かり、教えてくれなかったじゃないか」と言って、ガビーを無視して歩き始める。ガビーは、追いすがるように 「バンで、どんな手掛かり 見つけたの?」と訊く。「残念だけど、部外者には何も話せないんだ」〔前にガビーが使った言葉〕。「じゃ結構よ。パパが何でも教えてくれるから」〔嘘〕。「じゃあ、パパと仲良く続けてりゃいい」。「何を見つけたのよ?」。ここで、ウィリーがニヤニヤしながら割り込む。「もし、情報を教えてあげたら、見返りには何がもらえる?」(2枚目の写真)。「例えば、知恵ね。まずもって、基地が必要だわ」。それを聞いたカールが、「その通り!」と嬉しそうに言う(3枚目の写真)。次のシーンでは、どのくらい時間が経ったか不明だが、屋根裏が基地になっている。そして、ガビーが、「私たちは、“stick” では行き詰まってるけど、靴跡なら先に進めるわ」と、1人立って説明する。それに対し、ティムは、「標準サイズだから、誰でも履いてるよ」と否定する。「でも、ここに割れ目があるの」。そう言って、ガビーは僅かな白い部分を指差す(4枚目の写真、矢印)〔拉致犯が意図的に付けた靴跡を 証拠と考える方が異常〕。
ガビー:「靴が見つかれば、犯人が分かるわ」。そう言うと、具体的には、容疑者の足跡を調べることを提唱する。容疑者をどうやって特定するかというウィリーの質問に対しては、カールが、「ゲオルグ以外に、誰がこのフライトについて知ってたの?」とウィリーに訊く。ウィリーは、邸宅の全員と言うが、その中から、長年働いていた人を除外して行くと、残ったのは、母を神秘思想に染まらせた “師” とその付き人の中国人の若い女性だけ。師は盲目で、付き人は女性だが、ガビーは除外しない。何とか2人の靴跡を取りたいと思うが、ウィリーが、ちょうど明日の夜、母と師が主催する会が開かれると発言する(1枚目の写真、矢印は後で登場する人形)。それは、行方不明者と接触するためのエネルギーサークルを作り、拉致された夫の行方を見つけようという妻(ウィリーの母)の試みだった。そこで、誰かがその会に参加し、ガビーが作る特殊なシートの上を2人に歩かせて、靴型を取ることが決まる。しかし、一番有力な候補者と思われたウィリーは、その会に、参加を許されていないことが分かる。ティム:「どうやって参加者を招待するの?」。ウィリー:「eメールで」。カール:「僕がハッキングするよ。トロイの木馬を送り込み、キーロガー〔パソコンへのキー入力を監視し、それを記録するソフトウェア〕でCドライブに自由にアクセスできるから…」。ティム:「分かった。僕の名前入れといて」。ガビー:「ティムじゃダメよ。ティモティア〔女性の名〕ね」。ティム:「まさか、そんな」。ガビー:「そうよ」。当日、ザウアーリッヒ邸の木陰で、ガビーはティムを女装させ、ティムは颯爽と邸宅に向かう(2枚目の写真)。玄関で出迎えたウィリーの母に、「お名前をどうぞ?」と訊かれると、余裕たっぷりに「ティモティア・ムラー」と名乗る(3枚目の写真)〔あんなに男っぽい少年だったのに、不思議と二十前後の女性に見える〕。
ウィリーは、自宅の自室でソファに横になり、12ヶ所に仕掛けておいた隠しカメラの動画映像を見ながら、無線で庭にいる2人に指令を出している。テーブルの上には、集会の客用に用意されたフィンガーフードが乗っている〔伏線〕。ウィリーが最初にヒヤリとしたのは、ウェイター役の召使が、ティムの背中をトントンと軽く叩き、ティムがハッとした時。ティムが恐る恐る振り返ると、ウェイターは、トレイに乗せたフィンガーフードを見せ、トマトとモッツァレラチーズのデュエット、ザリガニとアボカドのディップ〔ペースト〕と言って勧める〔以前、ウィリーは、「僕の食べ物に一切アボガドを入れないで下さい」と言っていた〕〔この時の “ティモティア” は、ティムが女装しているように見える〕。ウィリーは、外にいる2人に、ライモンド〔“師”〕のピックアップトラックに 追跡装置を取り付けるよう指示する。バンパーに磁石で取り付けたところに、1台の車が入って来て、ガビーの父が出て来る。それを見たガビーは、「もし、パパに見つかったら、生きたまま焼かれちゃう」と心配する。一方、邸内で、フィンガーフードを口に入れかけたティムは、玄関から入って来た警部を見て、慌てて反対を向く。しかし、中に入ってきた警部は、参加者全員を見ようと、ティムの前まで来ると、「素敵な夜を」と言って手を差し出す。ティムは、「ええ」とだけ呟いて握手する(1枚目の写真)〔さっきよりは。女性らしく見えるが、年齢は10代後半〕。この時、ウィリーは、“バレる” と思って、手で顔を覆うが(2枚目の写真)、バレなかったので、ホッとしてテーブルの上のフィンガーフードを口に入れる〔伏線〕。そして、外の2人に安心していいと伝える。ウィリーの母が、多数のロウソクに囲まれて、招かれた客に中に入るよう声を掛ける。母が、集会の趣意を話し始めると、ティムは手に持っていたフィンガーフードを床に落とし、片付ける振りをしながら、靴型を取るための黒い正方形のシートを2枚、“師” が来そうな所に置く。説明が終わると、全員がテーブルにつく。そして、「ライモンド、神託者と、巫女のアマンダ」と唱えると、2人がいきなり現れる(3枚目の写真)。
その頃、ガビーとカールは、邸内に侵入。ウィリーは、洋服掛けのバッグがライモンドの物だと教える。ガビーがさっそく中から財布を取り出すと、クレジットカードの名義はオットー・ビアザック。これで、彼が詐欺師の可能性が一気に高まる。一方、その詐欺師本人は、宙を見上げて、「彼がそこにいる。私には彼が見える」と、根も葉もない嘘をつく。さらに、“彼” の声が聞こえたフリも。彼は、歩き回り、その度に、靴型を取るためのシートの真上を通過するが、その上に靴が乗らない。一方、アマンダは、最初の移動でシートを踏み、靴跡をはっきり残す〔そもそも、こんな重要な式典に、2人のどちらかが拉致犯だとしても、その時履いていたゴム底の運動靴を履いて来るハズがない〕。そうしている間に、ウィリーの腸がゴロゴロと鳴り出す。テーブルの上に残ってたものを調べると、アボガドが入っている。もうダメだと思ったウィリーはトイレに急行。その時、マイクのスイッチはオンになったまま(1枚目の写真、矢印)。ライモンドが、もっともらしいことを言って、黒メガネを外すと、両眼とも真っ白なので、参会者からは驚きの声が上がる。そして、「私には分かった… 彼がどこにいるか」と言った瞬間、辺りにウィリーのおならの音が響き渡り、ライモンドは驚嘆する(2枚目の写真、矢印は白い目)〔マイクが点いていても、それはガビーとカールに指令を出すためで、それが大きな音で響き渡るのは絶対に変〕。この音のせいで、“聖なる探索” は中断したことにし、ライモンドは依頼者の夫がどこにいるか言わない。そして、最後の最後にライモンドはシートを踏んで行く(3枚目の写真、矢印)。それを見たティムが、“やった” とばかりに嬉しそうな表情をしたので、隣に座っていた警部が、「何がそんなに面白いの?」と訊き〔なぜ、“嬉しい” と言わず “面白い(witzig)という言葉を使ったのだろう?〕、ティムは、「ご主人が無事だったから嬉しいの」〔こちらは、一応答えになっているが、この時の顔は、ティムそのもので、とても女性には見えない。メイキャップ係のミス。警部はなぜ気付かないのか?〕。
ティムは、再び窓から部屋に戻るが、今度は、カールの屋根裏にあった人形をベッドに寝かせて布団を掛け、テープレーダーで呼吸音を出していたので、ポーリングが見に来てもバレずに済んだ(1枚目の写真)〔しかし、登ってくるためのロープは窓の下のラジエーターに結び付けてあるし、窓も開きっ放しなので、気付かれないハズがない〕。そのあと、外はまだ真っ暗なのに、ティムは眠らず、ポーリングから借りた本『小龍民衆(Das Volk der Shaolong)』を開いてみる。そこには、バンから出てきてティムをやっつけた黒装束が使ったような技の絵が描かれている(2枚目の写真)〔技の名称のうち3つは “小龍” から始まっている〕。翌朝、ティムは、さっそく、その形を試してみる(3枚目の写真)。ポーリングが近づいてきて、「何をやってるのかね?」と訊く。「少龍の技を学びたいのです」。「最高の戦い方は、戦わないことだ」。「はい、でも これは防衛用なんです」。「そりゃいい。君は、ここの雰囲気に慣れてきたようだね」。
そのあと、3人は基地に集まり、ティムが持って来た2枚の靴型シートを、バンに残された物と比較するが、合致せずがっかり。その時、その検証作業に加わらず、パソコンを見ていたカールが、「STICK!」と言い、全員がその言葉に惹かれる。パソコンに写っていたのは、前日、追跡装置を付けたライモンドのピックアップトラックが、“STICKHOUSEN(STICKの家)” と表示された地区で停止したのだ(2枚目の写真、矢印が地区名の中の “STICK” の文字、ピックアップトラックの位置は、その左上の 道路上〔細い線上〕の黒い長方形)。怪しい2人が、“STICK” の名の付いた地区に住んでいるが分かり、4人は俄然興奮する。全員が授業をサボって、自転車でライモンドの家に向かう(3枚目の写真、背後は、ロケ地のローブルク城寄宿学校の斜め正面)。
ライモンドの家に着いた4人は、アマンダがスマホで話している外国語が、カールの分析で “少龍の僧侶が話す客家語〔Hakka〕” だったとことが分かり、ポーリングが余談で 「“天空の守護者”。小龍寺で最も神聖な物」と話していたことと結び付ければ、レプリカと知らずに盗もうとした動機も明らかなので、最大の容疑者となる(1枚目の写真)。4人が、玄関から中に入ろうとした時、ライモンドが庭のテーブルで寝ていたので、中には誰もいないことが分かる〔アマンダは車でどこかに出かけた〕。そこで分かったことは、床下は空洞になっていて地下室があるが、入口の蓋には鍵が掛かっている。そこで、ティムとガビーが、ライモンドのテーブルの上に置いてあった鍵を取りに行く。一方、車で出かけたアマンダは、途中で鍵を忘れてきたことに気付き、急いで戻る。家に残ったウィリーは、家じゅうに流れている中国音楽のカセットを取り出し、ティムにプレゼントしてやろうとカールに提案し(2枚目の写真、矢印)、ティムのウォークマンに入れる〔伏線〕。一方、カールの方は、白濁したコンタクトレンズを発見し(3枚目の写真、矢印)、ライモンドの盲目が作り物だと分かる。
ティムは、鍵を奪おうとこっそりテーブルに近づくが、鍵に手を伸ばした瞬間、目を覚ましたライモンドに手を押さえられる(1枚目の写真、矢印)。その時、アマンダも戻って来て、4人は、家宅侵入と鍵泥棒で2人から責められるが、ウィリーは、盲目を装って長い間母を騙してきたと強く非難し、詐欺師と呼ぶ。ガビーは、既に警察を呼んだと告げ、ティムは 家宅捜査には警察が最適だと言う。これに対し、ライモンドは、「警察が、ここで何を見つけるんだ?」と開き直る。ウィリーは、「僕の父上だ」と言う(2枚目の写真)。それを聞いた2人は、笑い出す。警部が到着し、地下室の入口の蓋の鍵をライモンドに要求するが、鍵はないと答える〔テーブルの上の鍵は無関係〕。そこで、ドジな部下がこじ開けようとするが失敗、代わりにガビーがいとも簡単に開ける〔ならば、最初からなぜそうしなかった?〕。早速、ウィリー他全員で覗いてみるが(3枚目の写真)、中は空洞で誰もいない。それでも、ウィリーは、母を騙したことを警部の前で責めるが、ライモンドは、上流社会の中年女性は、こうしたものに夢中になると言って誤魔化す〔詐欺行為をしたことに変わりないのだが、警部はなぜか不問にする〕。ティムは、少龍寺の関係を指摘するが、アマンダは、その地域にいただけで、宗教とは無関係だと主張する。
着ている服が4人とも同じなので、その日のうちに、4人は警部の車で学校まで連れて行かれ、そのまま校長室に直行。校長の両脇には、警部とポーリングが立っている。校長は、「あなた達は、自分達がすごいチームだと思っているようね。プロのような。しかし、現実には、お互い良くない影響を与えているようです」と、いきなり否定的見解を述べる(1枚目の写真)〔警部に入れ知恵された?〕。4人からは、それを否定する言葉が漏れ、特に、ティムは、「あなたは、ゲオルグについて間違ってます」と、警部に対し、ウィリーの代わりに発言する。警部は、「こんなことを話すべきではないが、バンの足跡は間違いなくゲオルグのだ。ワイガ湖のゲオルグの小屋から、拉致の際に使用された服と靴を発見した」と発言する(2枚目の写真)〔先に指摘したように、ワザと付けた足跡は、犯人を誤認させるための行為なのに、それを信じてしまう警部はバカとしか言いようがない〕。警部は、さらに、身代金要求の電話をかけたのはゲオルグで、ウィリーもそれを確認したと話し、他の3人は、びっくりする。警部は、警察の仕事に素人が介入すべきではないと強く警告する。ポーリングは、①カールは、最高の生徒が最低に転落した〔そんな、数日で??〕、②ガビーは演奏の練習をサボっていて2週間後に演奏会がある、と指摘する。そのあと、校長は、③ウィリーは特別だと発言し、問題視しない〔父親が誘拐されたから? それとも、多額の寄付金?〕。そして、再度、ポーリングが、④ティムには2度警告したと述べる〔警告は一度だけ〕。これだけの理由で、校長は、ティムを、“奨学生として不適格” という理由で退学処分にする(3枚目の写真)〔退学は、あまりにも唐突で、論理的に破綻している〕。
ティムが部屋で退校のための整理をしていると、そこにウィリーが謝りに来る。ティムは、電話のことを隠していたことを責める。ウィリーは、話していたら助けてくれなかったと弁解するが、ティムは、「退学は、君のせいだ」と怒り、あとは、聞く耳を持たず、先日プレゼントされたスマホを、「友だちがいないのは、当たり前だ」と言って突き返し、荷物を背負って部屋を出て行く。ティムが校舎を去って行くと、いつもカールを虐めていて、そのためティムにやられたグループがニヤニヤしながら見ている(2枚目の写真)。画面は切り替わり、父親の車に乗ったガビーが映るが、父の行動がティムを退学にしたので、彼女の父を見る目は冷たい。映画の冒頭に出てきたスーパーマーケットで、ティムの母が内部の照明を消して帰り支度をしていると、通用口にティムがいる(3枚目の写真)。母は、嬉しそうにティムを抱きしめる〔ティムの母は、映画の最後にしか登場しないので、息子の退学を知らされてどのような態度に出たのかは分からない〕。
その夜、屋根裏のパソコンの前で寝てしまったカールは、パソコンが発する警告音で目が覚める。そして、ライモンドのピックアップトラックが、今回の事件で、彼が最初に向かった廃棄された工場にいるのを見てびっくりする(1枚目の写真)。これは、ただ事ではないからだ。一方、自分の家まで運転してきたメルセデスW116の車内で夜を過ごしたウィリーは、自分のスマホに入れてある父の写真を順に見ているうちに、驚くべき映像を発見する。その頃、カールは、工場に向かって、校舎から走り出ていくが、それを邪魔するように立ち塞がったのが、ティムがいないくなって、“カール宿題をやらせよう” という連中(2枚目の写真)。しかし、チームに入って強くなったカールは、「宿題は、自分でやってよ。そうか、できないほどバカなんだ」と言うと、その場を力任せに突破し(3枚目の写真)、走り出す。2人は追ってくるが、たまたま校門を入って来た校長が、カールに 「どうしたの?」と声をかけたので、カールは 「2人が、先生に質問があるそうです」と嘘を付き、2人が後を追えなくする。そして、自転車に飛び乗ると、そのまま工場に向かう。
ティムは、暇なので、アパートの近くにあるスケボー広場に行く。そこでは、落書き仲間がスプレーで龍の絵を描いていて、すぐに迎え入れられる。次に、ウィリーがメルセデスW116を運転してティムのアパートに向かう場面がある。その時渡る橋が、ケルンでライン川を渡るDeutzer橋〔隣に特徴的なSeverins橋が見えたので、場所が特定できた。しかし、これは一瞬のロケ撮影というだけで、ティム達がケルンにいるわけではない〕。そして、メルセデスはスケボー広場に入って行って停まる〔そもそも、ウィリーは、なぜティムの住所を知っていたのか? それは、教えてもらったのかもしれないが、それなら、アパートに向かうハズが、なぜ、ティムから50mと離れていないスケボー広場に来れたのか? あまりにもご都合主義的だ〕。ティムはウィリーに寄って行と、「何しに来た?」と訊く。「ちょっとした手違いだった」(1枚目の写真)。「『ちょっと』? 大失敗したくせに」(2枚目の写真)。「これ、見て欲しいんだ」。「また、嘘じゃないって どうやって分かる? 君のために女装までしたんだぞ!」。それでも、ウィリーは、ティムにスマホの写真を拡大して見せる(3枚目の写真、矢印)。ウィリーの父のすぐ横に写っていたのはポーリング。ウィリーは、彼のシャツに注目するよう促す。シャツの胸には「STICKS」とプリントされている。ウィリーは、父がバンの中に書いた字だと主張する。その気のないティムは、「誰だって持ってるさ」と言って、相手にしない。その頃、工場に着いたカールは、先日、空の箱とパラシュートを発見した穴に ライモンドとアマンダが入って行くのを見ただけでなく、ドローンを飛ばしているポーリングも見る。スケボー広場では、ティムがウォークマンのスイッチを押すと、ウィリーがライモンドの家でティムへのプレゼントだと言って装填したカセットが回り出す。最初は、中国音楽だったが、先送りすると、身代金要求の電話の練習時のやり取りが聞こえてくる。「我々は、あなたの夫を誘拐した。“天空の守護者” をソイナー砂利採取場に置いて…」。「やり直しだ。もっと気持ちを込めて」。「もうできない」。「できるとも」(4枚目の写真)。ティムは、その声がポーリングだと気付く。ティムは、広場から出て行こうとするメルセデスを追いかける。そして、ウィリーにテープの声を聞かせる。
カールは、工場の中でもかなり上の方にいるポーリングの所まで上がって行って、声を掛ける。ポーリングは、不意を突かれ、「おい、カール、こんなトコで何してるんだ?」と訊く。「先生がここにいて良かった。助けて下さい」。「何をだい?」。「僕、ウィリーのお父さんがどこにいるか知ってます」。主犯の一人のポーリングは対応に困ってしまう。「どこだい?」。「僕と、一緒に来て」。カールは、鉄の通路橋の上までポーリングを連れて来ると、直接は見えないが、穴のある方を指す。しかし、ポーリングはそちらを見ずに、橋の真下を見ている。それが何を意味するのかは分からないが、急にカールが疑いの目でポーリングを見る。ポーリングも、それに気付き、「カール、君は、頭のいい子だろ? まだ、分からんのか?」。「あなたなの?!」。ポーリングは、嬉しそうに頷く。カールは、喘息スプレーを取り出し、ポーリングの目に吹き掛ける(1枚目の写真、矢印)。一旦はひるんだポーリングだが、すぐにカールを捕まえ、奪った喘息スプレーを投げ捨てる(2枚目の写真)。橋の下には、通行の安全のためにネットが張ってあったので、喘息スプレーはそこに落ちて止まる(3枚目の写真)。ポーリングは、カールを捕まえたまま、どこかに連れて行く。
ウィリーと一緒に車に乗ったティムは、帰校中のガビーを拾うと、そのまま学校に行き、屋根裏の基地までカールを呼びに行くが、当然、そこにはいない。3人は、実際に何が起きたかを順を追って考えていく。①ポーリングはザウアーリッヒ邸でウィリーの父に会った時、“天空の守護者” を見た。②ポーリングは、そのことをライモンドとアマンダに話した。③2人は、ティムの母に取り入った。④ウィリーの父が、“天空の守護者” の奪取計画に気付いた時、ゲオルグに隠すよう運ばせるフリをした。⑤ライモンドは、機内に忍び込み飛行機をハイジャックしようとした。⑥ゲオルグは反撃し、何らかの原因で、飛行機は墜落し始め、2人は、“天空の守護者” の箱と一緒にパラシュートで飛び降りた。⑦ライモンドは、少龍の技でゲオルグを倒し、彼をどこかに隠し、パラシュートと空の箱を工場の地下に隠した。⑧箱の中身がレプリカだったので、ウィリーの父を拉致し、引き換えに本物を手に入れることにした。⑨すべてをゲオルグの罪にするため、ライモンドはワザとバンに靴跡を残し、その靴をゲオルグの小屋に隠した。ここまで、推理が進んだところで、画面は切り替り、ウィリーの母に代わって警部が、“天空の守護者” の入った箱を、指定された場所(川原)に置き、万全の態勢で監視することにした。しかし、やって来たのは、予想に反してドローンだった(1枚目の写真、矢印)〔間抜けな警部〕。ここで、再び、屋根裏の基地。ガビーがカールのノートパソコンを開くと、そこにはライモンドのピックアップトラックが、彼らが最初に行った廃棄された工場の真ん中に停車している地図〔カールが見たものと同じ〕があった。カールは、既にそこに向かったに違いないと考えた3人は、カールを助けるためにも工場に向かう。3人の自転車の上を、“天空の守護者” の箱を吊ったドローンが飛んで行く(2枚目の写真、矢印)〔それにしても、急ぐなら、なぜメルセデスで行かないのか?〕。3人は、箱が飛んで行くのを見る。最終的に、箱は、“カールが喘息スプレーを吹きかけた鉄の通路橋” の真上まで来て(3枚目の写真)、ポーリングに回収される。この廃棄された工場は、映画のロケ地として時々使われる場所で、ベルリンの東郊約30キロのRüdersdorfにある、かつての飼料リン酸塩工場。4枚目に、鉄の通路橋の部分の写真(矢印)を示す〔ロケ地は様々〕。
3人は、工場内の巨大な空間の真ん中に停められたライモンドのピックアップトラックにこっそり近づいて行く。中には誰もいない。ガビーがすぐにしたことは、ペンチを取り出して、車体の下に潜ったこと(1枚目の写真)〔間抜けな父より、よほど冴えている〕。車の構造に疎い2人は、「何してるのかな?」。「さあ」。ガビーは、「逃がさないわ」と言う。すると、穴からライモンドとアマンダが出て来る。そこに、“天空の守護者” を手にしたポーリングがやってきて、アマンダに渡し、「本物か?」と訊く。アマンダは、「間違いなく」と 嬉しそうに答える。そして、「私たちの僧院と僧侶は、あなたに深く感謝します」と言う(2枚目の写真、矢印は “天空の守護者”)。そして、「彼らを解放し、ここから出ましょう」とも。3人は穴の中に入って行く。ティムたち3人も後を追う。柵の所までくると、ポーリングは2人に 「降りて、彼らを解いてやって。私は、これをしっかり守っている」と言い、2人は縄梯子を降りて行く。2人が降りてしまうと、ポーリングはいきなり縄梯子を外して下に落とす。これで、誰も上に登れなくなる〔ティム達がいなかったら、目撃者はゼロなので、この真っ暗な穴の底で5人(ウィリーの父、ゲオルグ、カール、ライモンド、アマンダ)は餓死することになる〕。一体何事かとライモンドとアマンダが見上げると(3枚目の写真)、ポーリングは、「俺は、こんなアジアのナンセンスなんか、どうだっていい」「溶かして、金とダイヤモンドだけ頂く。それだけで大金になる」と、最低のことを口走る(4枚目の写真、矢印は “天空の守護者”)。
穴の底では、アマンダとウィリーの父の間で、“天空の守護者” の所有権を巡って口論が始まる。アマンダ=“かつて信仰の対象を盗まれた被害者” と、ウィリーの父=“オークションで大金で買い取ったものを奪われた被害者” の間の口論だ。しかし、カールの健康の具合があまりにも悪いので、取り敢えず、ライモンドが3人の拘束を解く。一方、ピックアップトラックまで戻ったポーリングは、すぐ車を出そうとするが、その前に、ティムたち3人が立ち塞がる。ポーリングは、容赦なく3人に向かって発進し、直前でハンドルを切る(1枚目の写真)。ティムとガビーは車を追って走り出すが、太っていて走れないウィリーは、地下の5人の様子を見に行く。ポーリングは、車を乱暴かつ高速で走らせるので、工場から走り出て来たティムは(2枚目の写真)、すぐに走るのをやめ、「とても追いつけない」とあきらめる。しかし、ガビーは 「遠くまで行けないわ」と言い、そのまま走って行く〔そのために、ガビーはペンチを持って車の下に潜った〕。一方、運転しているポーリングは、車がまともに動かくなったので困惑するが、そのうち ハンドルを回しても 全く効かなくなり、大きな看板にぶつかり(3枚目の写真)、さらに、その前に会った金網のフェンスに突っ込んで動かなくなる。
カールは、次第に呼吸困難になっていく。カールを抱いていたゲオルグは、柵のところに現れたウィリーに、「カールの喘息スプレーが必要です。ポーリングは、それを鉄の橋の下のネットに投げつけました。手に入れて下さい」と頼む。アマンダ:「一秒一秒が大事よ!」。それを聞いたウィリーは、「分かった!」と勇気を見せる(1枚目の写真)。3節前のロケ地の飼料リン酸塩工場の写真を見ると、橋は6階に架かっている。ウィリーにとって、そこまで登って行くのは大変なことだったろう。そして、細い橋の下には、何もない空間が広がっている。それでも、ウィリーは、カールを救うためならばと、橋の柵をまたいで外に出ると、「これからは、スニーカーを履こう」と言うと、最上段の手すりにつかまり、左手をスプレーに向かって伸ばす(2枚目の写真、矢印)。しかし、あまりにも距離があり過ぎ、おまけい、右手が外れて落下。しかし、幸い、ネットは丈夫で ウィリーの重い体重を受け止めてくれた(3枚目の写真)。こうして、ウィリーは喘息スプレーを手に入れる。どうやってネットから橋に戻ったかは映されないが、ネットは橋の両端から垂れ下がっているので、端まで行けば手すりにつかまって橋に戻ることができる。それから、6階分を下り、地下に戻るためには、かなりの時間を要したであろう。
一方、飛行機の墜落現場では、金網フェンスに突っ込んだ車の辺りをティム達が探している。ポーリングは、飛行機の残骸の陰に身を潜めている(1枚目の写真)。地下では、ウィリーが戻って来て喘息スプレーをゲオルグに向かって投げ落とし、それをつかんだゲオルグがよく振ってからカールに吸入させる。生き返ったカールが最初に言った言葉が「ドローン」。ポーリングが、2人の目を盗み、身をかがめで野原を移動していると、ドローンの音が聞こえてくる。ティムとガビーもそれに気付き、ポーリングを発見する。ドローンはポーリングに向かって急降下し、頭を直撃する(2枚目の写真、矢印の薄い影は高速でぶつかった直後のドローン)。衝撃で “天空の守護者” が吹っ飛ぶ。ドローンは再度上昇する。工場の地下では、カールがパソコンで、ドローンからの動画映像を見ながら、ドローンを操縦している(3枚目の写真)〔これも、大きな、そして、あり得ないシーン。①カールは、パソコンは屋根裏に置いてきた。②パラシュートで脱出したゲオルグが持って行ったとは思えない。③ウィリーの父は持っていない。④ライモンドとアマンダは何も持たずに地下に下りた。⑤その少し前の場面で、ポーリングがライモンドとアマンダに “天空の守護者” を渡すシーンがある。その時の状況では、ドローンと操縦装置は鉄の橋の上に放置し、“天空の守護者” だけ急いで持って来たとしか思えない。⑥ウィリーが操縦装置を持ち帰った可能性はゼロではないが、喘息スプレーに必死の彼が、そんなことをするだろうか? この映画には、“あり得ない” ことが多過ぎる〕。
カールは、ドローンで二度目の攻撃を行い、ポーリングはノックダウンされ、なかなか起き上がれない。近寄って来たティムは、落ちていた “天空の守護者” を拾ってバッグに入れる。そして、少龍の技の1つの体形を取る(1枚目の写真)〔これは、ウィリーの父が拉致された時に、ライモンドが見せた最初の体形と同じ〕。ポーリングが近づいてくると、彼の肩に両手で乗ったティムは 宙で一回転し、ポーリングの後方に着地〔ここも同じ〕。素早く立ち上がると、2つ目の体形を取る〔ここも同じ〕。そして、ポーリングが走ってかかってくると、背を曲げて肩に乗せ、払うように宙に解き放つ(2枚目の写真)〔以前、ティムが宙を舞って地面に叩き付けられた時の写真(対比可能)と同じ〕〔ティムが練習していた場面は1回だけ。いつの間に、こんなに上達したのだろう?〕。地下室では、戦いをパソコンで見ていた5人が大喜び。そこに、遅まきながら、ガビーが呼んだ父がパトカーと共にやって来て、ポーリングは逮捕される。ティムが、ガビーを抱いている警部を見ると(3枚目の写真)、警部は右手を広げてそれに応える〔自分のお粗末な勘違いを詫びているのか?〕。
そして、最終章。寄宿学校の校内で行われた祝賀会。正面の舞台上では、ガビーも入って、校内オーケストラが楽しい曲を演奏し、学生達で超満員の会場では、皆が楽しそうにしている〔踊ったり立食するスペースもないほど ぎっしり〕。ウィリーは、校長に挨拶してから、母親と一緒にいるティムのところに行き、2人は嬉しそうに握手し(1枚目の写真)、抱き合う。ウィリーが両親の方に行った後に、警部がやって来て、ティムに 「将来何になりたいか決めてないなら、警察で採用するよ」と言うが、ティムは 「ありがとう。でも、僕は父さんのように技術者になりたい」と答え、母を喜ばせる。その頃、ゲオルグが操縦する飛行機は、“天空の守護者” を大切に持ったアマンダとライモンドを乗せて登封〔「天地の中央」にある登封の史跡群(世界遺産)がある〕に着こうとしていた。ウィリーは、屋根裏の基地に3人を連れて行くと、ユニフォームを渡す(2枚目の写真)。そして、「これからは “団子” って呼んで。友だちはみんなそう呼ぶから」と言い、他の3人は、「OK。団子」と笑顔で言う。映画の最後は、4人がユニフォーム姿で会場に現れ、全員から盛大な拍手で迎えられるところで終わる。4人の胸には、それぞれの名の頭文字がプリントされている。左から右に、T〔Tim(ティム)〕、K〔Karl(カール)〕、K〔Willi(ウィリー)ではなくKlößchen(団子)〕、G〔Gaby(ガビー)〕。映画のタイトルのTKKGだ。