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The Black Phone ブラック・フォン

アメリカ映画 (2021)

イーサン・ホークが悪役の連続誘拐・殺人犯グラバーを演じる夏向きのサスペンス・ホラー映画。ただ、「連続誘拐・殺人」と言っても、幸いなことに、児童虐待的なシーンは一切ない。映画評で有名なVarietyでは、「超常現象の要素とミックスされた 考えられない犯罪のもっともらしさ」という表現が使われているが、非常に正確な分析であろう。超常現象、心霊現象というと、ついつい荒っぽい、もしくは、粗っぽい化け物の登場を思い浮かべてしまうが、ここでは、それを、ブラック・フォン、つまり、1978年という時代設定に相応しい、真っ黒で古い壁掛け式の電話機から、誘拐されて死を待つばかりの主人公フィニーを助けようと、既に殺された5人の少年から掛かって来るアドバイスという、すごく地味なところに落とし込んでいるところが、ある意味、ホッとさせる。ニューヨーク・タイムズの評では、「まろやかでアンティークな釉薬」という表現を使っている。そして、IMDbの評が、結構票数が多いにも関わらず7点以上を確保しているのは、恐らく、そのアドバイスに従ってフィニーが行ったことが、ラストシーンで、すべて駆使され、グラバーをやっつけるという脚本の見事さによるものであろう。

フィニーは、学校では、ほとんど誰からも相手にされない目立たない少年。それでも、少年野球チームのピッチャーで、敵チームの強打者ブルースから投球を褒められることがあり、学校で虐めっ子にやられそうになった時は、数学の宿題を手伝うことで友達になった抜群に強いロビンに助けられたりもする。それに、フィニーの妹は、自殺した母の才能を受け継ぎ、酒浸りの父は毛嫌いするが、一種の超能力の持ち主だった。そのフィニーが住んでいるデンバー郊外のコミュニティで、数ヶ月の間に5人の少年が行方不明になるという事件が起き、その犠牲者の中に、ブルースとロビンも含まれていた。そして、6人目がフィニー。フィニーは、手品師を装ったグラバーに催眠スプレーをかけられて拉致され、周到に用意された完全防音の真っ暗な地下室に閉じ込められる。そこには、壁に、黒い電話機が掛けられていたが、そこから警察に電話されると困るので、当然、線は切られている。しかし、フィニーが、閉じ込められると、電話が鳴り始める。最初は、応答がなくすぐに切れてしまうが、3回目でようやくつながった最初の相手がブルース。彼は、便器の置いてある通路の途中に穴を掘るよう教える。グラバーが、初めて簡単な食事を持って来た時、わざと地下室の扉をロックせずに出て行く。その時、扉を開けて逃げようとしたフィニーを止めたのは2人目からの電話。掛けてきたのは、新聞配達をしていた少年。逃げようすると、グラバーが上で待ち構えていて 死ぬほど叩かれる、と教えてくれる。彼は、便器の通路に隠したケーブルについても教えてくれ、フィニーは天井近くの窓まで登ることができたが、鉄格子と一緒に落下する。しかし、ケーブルも鉄格子も無駄にはならない。3人目から電話は、地上階で見張っているグラバーが眠ってしまったことを教えてくれ、外に出るためのダイヤル錠の番号も教える。しかし、逃亡は、見張りの番犬が吠えて失敗。4人目は、上級生の不良で、便器の通路の奥を破れば冷凍庫があり、その向こうに逃げられると教えてくれる。力のないフィニーには、冷凍庫の扉を中から開けることはできなかったが、肉は手に入った。5人目が一番信頼できるロビン。彼は、フィニーを慰め、やる気にさせ、受話器を使って戦う方法を実地に教える。フィニーは、斧で叩き殺される寸前、5人の知恵を総動員し、グラバーを電話機のコードで絞め殺して脱出する。

主人公フィニー役のメイソン・テムズ(Mason Thames)は2007年7月10日生まれ。撮影は、2021年2月9日から3月27日なので、撮影時13歳。それ以前は、2つのTVシリーズに端役で出演しただけなので、これが、初出演に近く、しかも主役。1時間半強の映画の中で1時間は地下室の中なので、暗くて表情が分かりにくいが、そこは、感情表現よりは行動力で見せてくれる。

あらすじ

映画は、少年野球チーム同士の対戦から始まる。「1978年、デンバー北部」と表示されるが、周囲の風景から見てかなり都心から遠そうな郊外だ。対戦しているのは、青いユニフォームと黄色のユニフォームのチーム。ピッチャーは、この映画の主役フィニー(1枚目の写真)。妹がネット裏から声援を送っている。2塁打を打たれて走者2・3塁となったところで、一番の強打者、日系人のブルース・山田が打席に立つ。2球ストライクを取った後、3球目で本塁打を浴びる(2枚目の写真)。これで、フィニーのチームは負け。両チームの全員が挨拶を交わす時、ブルースは、「いい腕してるな〔Your arm is mint〕。やられるとこだった〔You almost had me〕」と言ってくれる(3枚目の写真)〔重要な言葉〕

ブルースが笑顔で自転車に乗っていると、前方に黒いバンが現われる(1枚目の写真、矢印)。画面は黒くなり、映画のオープニングクレジットが始まる。その中では、デンバー警察が貼った “行方不明になった子供” のポスターが 断片的に、かつ、多数示される(2枚目の写真)。本編が始まると、場面はフィニーの家。キッチンにフィニーと父親がいて、父親は、「Rocky Flats」の作業服を着ている〔1992年に閉鎖されるまでデンバー近郊に実在した “核兵器に使うためのプルトニウムを製造する” 工場〕。彼が 読んでいる新聞の日付は10月13日(金)。フィニーは、一言も口をきかず、しかも、音を立てないように食べている。父と目が合うと(3枚目の写真)、「そんなに神経質になるな。ここはボルダー〔ロッキー山脈の保養地〕じゃないんだ」と、小声で言われる。そこに入って来た妹は、キッチンカウンターの上に置いてあった食パンを入れる金属製の容器の蓋を開ける時に、バタンと大きな音を立ててしまう。すぐ、父親に謝るが、機嫌は悪い。

学校に歩いて行く途中、妹は、自分の将来の結婚相手が誰になるか 兄のフィニーに 話している。すると、フィニーは、通路の柵の外に、新しい張り紙を見つける。「これ新しい」。「何が?」。「チラシだ」(1枚目の写真)「また連れ去られた、今度は山田君だ」。そこには、「行方不明の少年。ブルース・山田。7月18日から行方不明」と書かれている〔これは、いくらなんでもおかしい。今日は10月13日(父の新聞の発行日もそうだったし、落ち葉が多いので、今は秋)。行方不明になってから、87日も経っている。なのに、なぜ、今さら、新しいチラシが? そして、それを初めて見た発言を? 編集ミスとしか思えない。他は完璧なのに、なぜ、こんな失敗を?〕。「警察に見つけられるかな?」。「無理ね。行きましょ、遅れるわ」。広場のような場所に行くと、喧嘩が始まろうとしている。図体が大きくて 如何にも悪漢風の生徒が、フィニーの友達のロビンを脅し、ロビンは 「ならやれよ。怖くないなら」とバカにするように応じたので、相手は怒って一発食らわそうとするが、簡単に空振り。狙いすましたロビンの手と足を使った攻撃に 地面に倒される。それからのロビンが怖い。相手の上に跨ると、拳骨で顔を何度も殴り付け(3枚目の写真、矢印はフィニー)、相手の顔が血まみれになるまで止めない。

フィニーは、理科の授業が終わると、誰よりも早く教室を飛び出すが、一番の虐めっ子が廊下で待っている。フィニーはそれを無視して必死になって廊下を歩くが、敵も負けじと急いで歩く。フィニーはトイレに駆け込むと、個室に逃げ込んで便器の上に座り込む(1枚目の写真)。しかし、すぐに、「よお、フィニー」の声が聞こえてくる。「出て来い、ボケナス〔dick weed〕」。フィニーは、覚悟を決めて出て行く。「そこで、何してた?」。手下A:「入口のサイン見たか? 『男子』って書いてあるぞ」。手下B:「男子だぞ。ゲイじゃない」(2枚目の写真)。すると、音がして、ロビンが入って来る。3人を見て、「どけ、バカども」と命令する。さっきの、もの凄い戦いを見ていたのか、3人はさっと避けてロビンを通す。ロビンは、「やあ、フィン」と声をかける。そして、血を洗い流しながら、「ムースの野郎 鋭い歯をしてやがった。だから、拳骨がすぐに血まみれになった」と言う。それを聞いた3人は、トイレから退散しようとするが、ロビンは、「待て」と呼び止める(3枚目の写真)。そして、「今度 フィンに手を出して見ろ、俺が叩きのめしてやる」と、平然と言い放つ。3人が消えると、フィニーは 「ありがとう」と感謝する。そして、さっきの残語とも言える戦いぶりの理由を訊いたフィニーに、「ああいう時は、血が多い方がいいんだ」と答える。そして、放課後に自分の家に来て、いつものように数学を教えてくれるよう頼む。「君の教え方は上手いし、落第点を取りたくないからな」。フィニーは、相手が救いの神なので、喜んでOKする。

一方、授業中のフィニーの妹に、授業中、呼び出しが入る。向かった先は校長室。そこには、2人の刑事(ライトとミラー)が待っていた。フィニーの妹を。「ミス・ブレイク」と姓にミスを付けて、イスに座るよう頼むので、被疑者としての扱いではない。「エミー・山田と友達なのは本当かね?」。「ホームルームが一緒です」。「彼女に、兄のブルースについて何を話したの?」。「夢に見たことです」。「どんな夢?」。「すごく変な」。「夢の中で何が起きたのかな?」。「連れていかれた。それだけです」。「バンに黒い風船を入れた男によってだね?」。「はい」。「夢について、他に話すことは?」。「なぜ? ただの夢だったわ」。「夢について、他に知ってる人は?」。「誰も」。「我々は、現場で2つの黒い風船を見つけたんだ、グウェン」(1枚目の写真)「グリフィン・スタッグの拉致現場にも、黒い風船が1個あった」。「我々は、このことをどこにも漏らしていない。君は、どこで風船のことを聞いたんだね?」。「聞いてません」。「もう一度訊くよ。どうやって、風船のことを知ったんだい? 我々の部署で機密漏洩があるのか、それとも…」。「私が グラバー〔Grabber: 新聞が名付けた犯人の仮の名。人さらいの意味があるが、大文字なので、犯人の名前として流布している〕? 昨年の春、ヴァンス・ホッパーを私が誘拐したとでも?」。「違う」。「ヴァンスは2度抵抗したわ。彼、戦ったの。彼なら、あんたたちなんかやっつけちゃったと思うわ」。この発言を聞いた校長が、言葉遣いを注意する。グウェンは、攻撃的な態度を改め、実際に起きたことを打ち明ける。「時々、私の夢はホントになるの」。その言葉を2人の刑事が信じたかどうかは分からない。翌朝、フィニーは、父の怒鳴り声とグウェンの泣き声で目を覚ます。急いでキッチンに飛んで行くと、父が、ベルトでグウェンのお尻を叩いている。グウェンは、「ごめんなさい!」と叫ぶが、父が止めようとしないので、フィニーは 「パパ、止めて!」と怒鳴る。父は、「お前には関係ない!」と 怒鳴り返す。父が怒った理由は、仕事場まで2人の刑事が来て、父が一番聞きたくないことを話したから。父は、その内容について白状するよう、ベルトを振り上げるが(2枚目の写真、矢印はベルト)、グウェンは、あくまで 「何でもない!」と否定する。父は、「よく聞け。お前は母さんじゃないんだ! つまりだな、そこにない物は、聞こえんし、見えんのだ! お前の夢は、ただのアホな夢だ。分かったな?」と、強く言い、グウェンに 「私の夢は、ただの夢です!」と何度も言わせる。これで、ようやくグウェンは許される。グウェンは、TVの漫画を見ながら、そばに来てくれた兄の肩に寄り添う(3枚目の写真)〔2人の母は死んでいない。後で、母もグウェンのように、予知の夢を見ることができ、それが原因で自殺したことが分かる。だから、父は、グウェンにその特殊な能力が遺伝していることを恐れている〕

ある日、ロビンの前に黒いバンが現われる(1枚目の写真、矢印)。そして、再び真っ暗に。夜、父の元に1本の電話が入り、父は TVを見ている2人の所に行き、「お前たち、ロビンなんとかと言うガキを知っとるか?」と訊く。フィニーは、「アリアーノ?」と言う。「そうだ」。「学校の友だちだけど、なぜ?」。父は、それ以上何も言えなくなって部屋を出て行く。夜、町の中では、たくさんのパトカーが出て、捜索が行われている。その日の夜、フィニーの部屋にグウェンが顔を出し、「ホントにごめんなさい、フィニー。彼、お兄ちゃんの友だちだったわよね」と言う。フィニーは、「『だった』なんて言うな。今でも友だちだ」と訂正する。「ごめんなさい」。フィニーは、グウェンに 「夢は見れないのか?」と訊く。「そんな風にはいかないの」。「試したのか?」。「もちろんよ」。「じゃあ、もう一度試して」(2枚目の写真)「頼むよ」。自分の部屋に戻ったグウェンは、お祈り用のドールハウスを開け、十字架を手に持つと、キリストに向かって祈る。主な内容は、①ロビンは兄の友だち、②夢を1つか2つ見せることで、警察がロビンを助け出せるようにして下さい、というもの(3枚目の写真)。

翌朝、藁にもすがりたい2人の刑事は、グウェンの家を訪れる。父親が、「あいつ、何かやらかしましたか?」と訊くが、「済みませんね、ブレイクさん。あなたの娘さんは何もしていません。でも、私たちに話して下さることが何かあればと思いまして」と頼み込み、居間で話を聞こうとするが(1枚目の写真)、彼女は首を横に振るだけ。次のシーンは、前回、ブルースのチラシが貼ってあった板に、今度はロビンのチラシが貼ってある(2枚目の写真)。そこには、字が小さくて読み辛いが、11月9日失踪と書かれている。父親が新聞を読んでいた日が10月13日だったので、それから26日後だ。ロビンの失踪が一番響いたのがフィニー。彼を守ってくれる子がいなくなったので、3人の虐めっ子がフィニーに襲いかかり、地面に押し倒し、殴る蹴るの暴行を加える。そこに、援軍として登場したのが、10センチほどの大きさの石を手にしたグウェン。「クソむかつく卑怯者〔Fucking cocksucking coward〕!」と叫びながら突進していくと、1人の顔を石で殴り付ける。大きな石なので、一発でノックダウン。その後も、石を両手で持ち、倒れた兄を守ろうとするが(3枚目の写真、上の矢印は石、下の矢印は倒れたまま動けないフィニー)、投げた石が逸れ、地面に倒されて顔を蹴られる。残った2人は、フィニーに対する暴行を続ける。

学校が終わった後、途中まで一緒だったグウェンは、友達の家に “お泊まり” に行き、フィニーは1人だけになる。そして、家に向かって歩いていると、前方に停まっていたのが黒いバン。いきなり、スライドドアから飛び出した男が、持っていた袋を落としてしまい、中身が歩道に散乱する(1枚目の写真)。フィニーは、「手伝いましょうか?」と声をかける。「帽子を拾ってくれないか?」。フィニーがシルクハットを渡すと、男はそれを被り、顔に白い化粧をしていることもあって、「パートタイムのマジシャンだ。マジックを見てみないか?」と声を掛ける。フィニーが興味を示すと、男は、スプレー缶を振り始める。フィニーは、バンの中に一杯黒い風船が入っているのに驚く。男は、10数個の風船を一気に取り出すと、それでフィニーを覆って外から見えないようにする(2枚目の写真)。フィニーは抵抗し、いつも持っている金属製のロケット型の懐中電灯の尖った先端で、男の左腕を何度も突き刺す。男は、痛さに喘ぎながら、催眠スプレーをフィニーの口の中に大量に噴霧する(3枚目の写真)。そして、風船ごとバンに入れて 拉致する。

グラバーは、隠れ家の地下室に、意識が朦朧(もうろう)としたフィニーを抱えて降りて行くと、「俺様の腕をこんなにしやがって。本来なら、首をへし折ってやるところだ」と言いつつ、ベッドの上に投げ出す。グラバーは 顔全体を鬼の仮面で覆い(1枚目の写真)、傷口が顕わな左腕を触ると、「畜生、血だらけだ。どいつかを殺した時と同じだ」と恐ろしいことを言う。そして、「怖いだろう? だが、お前を傷つけることはせん。首をへし折るといったのは、頭に来てたからだ。俺の腕をこんなにしやがったが、貴様に 同じことをする気はない。俺たちは、平等なんだ。怖がる必要はない。ここじゃ、何も悪いことは起きんからな。約束する、ジョニー〔フィニーは、そのうち殺される “ジョニー” になった〕」。そう言うと、グラバーは、「ソーダを持ってきてやる」と言って、地下室を出て行く。フィニーは、頑丈で思い鉄の扉を開けようとするが、びくともしない(2枚目の写真)。フィニーが、部屋の片隅にある通路の先に行き、天井灯を付けると、そこにはトイレがあった(3枚目の写真)。ベッドの置いてある広い空間には、頭上遥か上の天井近くに小さな鉄格子のはまった窓があり、そこから僅かばかりの光が入ってくる。フィニーは、壁にポツンと掛けられた旧式の黒い電話機〔映画の題名と同じThe Black Phone〕に目を留める。電話機があれば、助けを呼べるので変だと思いながら受話器を外すが、何も聞こえない。フィニーは、肝心の電話線が切断されているのに気付く(4枚目の写真、矢印)。絶望したフィニーは、ベッドに横になると、死を覚悟する(5枚目の写真)。

夜になり、“お泊まり” に行っていたグウェンに、父から電話が入る。兄の誘拐を聞いたグウェンは、全速で家に向かって走る。家の周りには何台もパトカーが集まり、2人の刑事と父の3人が家の前に立ち(1枚目の写真)、その横に、グウェンが座り込んでいる。自分の部屋に行ったグウェンは、ドールハウスを開き、キリストに向かって一心に祈る。すると、電話が1回だけ鳴る音が聞こえる。同じ音は、フィニーにも聞こえ、フィニーは何が起きたんだろうと思いながら、受話器を外す(3枚目の写真、左上の白い数字は、フィニーが電話機を取った回数。では、1回鳴っただけで、受話器を取っても反応はなかった)〔これは、グウェンの “母譲りの能力” が起こした奇跡〕

すると、背後から、グラバーの声がする。「それは、作動せん。あきらめろ」(1枚目の写真)。フィニーが振り向くと、鉄扉が開き、最初とは、“顔の下半分が違った仮面” を被ったグラバーが、「貴様が、怖くて、家に帰りたがってるのは分かる。すぐに連れ帰ってやる」と、平気で嘘を付く。それを聞いたフィニーは、「警察がここに来る前に僕を解放してくれたら、誰にも言わないって約束する」(2枚目の写真)「でないと、大声で叫ぶよ。誰かがきっと聞きつける」と、すがるように言う。グラバーは、「この扉を閉めたら、誰にも聞こえん。俺が、自分で防音したんだ。だから、貴様が叫びたければ、どれだけでも叫ぶがいい」と、フィニーの希望を断ち切る。グラバーが出て行こうとした時、フィニーが 「あんたが、みんなを殺したんだね。ブルースやロビンを」と訊く。グラバーは 「俺じゃない。他の誰かだ。俺は、貴様が嫌がることは絶対にせん」と、また嘘を付く(3枚目の写真、左手の包帯はフィニーの攻撃の跡)。グラバーは、フィニーが、まだ受話器を持っていたので、「電話を置け。俺が、ここにいた時、一度鳴ったことがある。気持ち悪かった。恐らく、静電気のせいだろう」と話すと、今度こそ、扉を閉めて出て行く。

グラバーがいなくなると、フィニーは、できるだけ大きな声で、「助けて!! お願い!! 誰か!! 助けて!!」と叫ぶが、効果は全くない。部屋の中で叫んでも、外には届かないと思ったフィニーは、何とか、格子窓の所から叫ぼうと、思いきりジャンプするが、かろうじて桟に手が届くものの、体を引き上げることはできない(1枚目の写真)。フィニーは、ベッドを動かそうとするが、床に固定されていて動かない。マットレスも、同様で、台にするものは何もない。フィニーは、「待てよ。もし、窓が割れるものなら、誰かがやってるハズだ。ロビンならできたかもしれないが、僕にはとても無理だ。ここからは出られない」と、あきらめる。その時、また電話が鳴る。今度は4回も。あり得ないことなので、フィニーは迷うが、結局受話器を外し、「もしもし?」と2度言ってみるが、返事はない(2枚目の写真、2回目なので)。フィニーは、がっかりして、ベッドに横になり寝てしまう。目が覚めると、目に入った電話機を見て 「やめろ」と文句を言う。すると、背後から、「何を止めるんだ?」という声がしたので、ベッドから飛び起きる(3枚目の写真)。そこには、仮面の上部を外したグラバーが、床に座っていた。「お腹 空いた。食べ物が欲しい」。グラバーは 「何か食い物を持って来てやる。待ってろ」と言って、出て行く。

フィニーは、何もすることがないので、またベッドに横になる。すると、また電話が鳴り出し、フィニーは飛び起きる(1枚目の写真、)。電話機が信用できないので、3度目の呼び出し音でようやく受話器を外し、「もしもし?」「誰かいるの?」「助けてよ」と言うが、返事がない。もう一度、「もしもし?」と言うと、遠くから響いてくるような声が、「フィニー」と言ったので、怖くなったフィニーは受話器を置く。しかし、電話機は、また鳴り始める。フィニーは、4回鳴ったところで、受話器を外し、すぐに戻して 強制的に接続を断つ。それでも、電話機は鳴り出す。今度は、一定間隔ではなく、連続して鳴り続ける。そこで、フィニーは、覚悟を決めて受話器を取る。「切るなよ」。「切らない」。「誰なの?」。「名前は忘れた」。「なぜ?」。「君が、最初に失うものだ〔名前のこと〕」。「いつ、最初に失うの?」。「分かるだろ〔殺された時〕」。「僕の名前知ってるの?」。「一度会った。いい腕してるな〔Your arm is mint〕。やられるとこだった〔You almost had me〕」(2枚目の写真、)。この言葉で、相手が誰だか分かる。「ブルース? ブルース・山田?」。「ああ、ブルース。僕はブルースだ」。「君が、電話を鳴らしたの?」。「そうだ。僕ら以外には、誰にも聞こえない。君だけだ」。「なぜ、電話したの?」。「トイレに行く通路で、汚れたタイルが緩んでる。基礎まで掘るんだ。僕もやってみたが、外に出られるだけの時間がなかった」。「時間はあるの?」。ここで、電話は切れる。映画の画面は一転し、ブルースが幼児だった頃から、初めてバットを持つところ、そして、試合でホームランを打って祝福され(3枚目の写真)、拉致されるシーンまでが、粗い映像で短く映される。最後は、ブルースではなく、フィンが、閉じ込められた家の1階のドアの所で、「助けて!」と叫ぶシーンに変わる。ここでグウェンが目を覚ます。この一連の粗い映像は、グウェンが夢で見たものだと解釈できる(3枚目の写真の左上に緑色の★印を付けた。今後も、グウェンの夢は同様の扱いとする)。ただし、フィニーとブルースの電話は、鮮明な画像なので、グウェンの夢ではなく、グウェンの力によって、死者からフィニーに伝言が渡されたと見るのが正しい。

フィニーは、さっそくブルースに言われたことを実行に移す。安いっぽいビニール・タイルは、簡単に剥がれ(1枚目の写真、矢印)、その下はコンクリートではなく土なので、どんどん掘って行く(2枚目の写真、空色の矢印は頭の入る方向。穴はもっと深い)。掘り出した土が見つかるとヤバいので、土はすべて便器に入れて流す(3枚目の写真)〔下水管が途中で詰まらないのだろうか?〕。そして、できた穴が見つかると、これもヤバいので、トイレに置いてあったビニールシートのようなものを広げて、一見、穴などないように見えるよう工夫する〔自分が通る時は、落ちないよう、通路の端を歩く〕。作業が終わると、フィニーは くたびれ果ててベッドに横になる。学校では、生徒全員が体育館に集められ、警察の幹部からフィニーの拉致について説明される〔会話は一切なく、映像だけ〕

フィニーが、床に座って、電話が掛かって来ないか待っていると、鉄扉が開き、鬼の仮面のグラバーが、食べ物の入った皿と、飲み物のビンを1本、トレイに載せて入ってくる(1枚目の写真、矢印)。「朝食を作ってやった」。「何を入れたの?」。「塩とこしょうだ。貴様は、もうここにいる。今さら、薬を飲ませても仕方ないだろ」。グラバーは、トレイを床に置くと、戻って行くが、その際、鉄扉を閉めるが、ロックせずに行く。それを見たフィニーが、扉を触ってみると、やはり開く。これなら逃げられると思った瞬間、電話が鳴る(2枚目の写真、、2つの矢印は開いたドアの隙間)。フィニーは 待たせないように電話のところに駆けつけ、受話器を外す。「もしもし?」。「1階に行っちゃダメだ」。「どうして?」(3枚目の写真、)。「罠だ」。

「君は誰?」。「覚えてない」。急に、本人が姿を見せるが、フィニーは気付かない(1枚目の写真、)。「サッカーしてた? フットボール?」。「新聞配達だった」。「ビリー。君は、ビリー・ショーウォルターだね」。「多分」。「ビリーだよ」。「1階には、絶対、行くんじゃない」。「奴、何してるの?」。「ベルトを握って、部屋の向こう側で待っていやがる。ここを離れていいと言わなかったから、そうしようとしたら、罰せられるんだ。気絶するまで叩かれるぞ。すごい痛いんだ。泣いて、やめくれと叫んでも、奴は、叩くのを止めない」。そこまで言うと、ビリーは、自ら電話機のボタンを押し、電話を切る。フィニーが、こっそり様子を窺いに行くと、グラバーがイスに座り、手にはベルトを持って待ち構えている(2枚目の写真、矢印はベルト)。フィニーはそっと戻ると、鉄扉を閉め、床に置かれた粗末な食べ物を口に入れる(3枚目の写真)。

フィニーがベッドで寝ていると、電話で目が覚める。電話を取ると、「君は、僕がビリーだと言った」と話し始める。さっきの少年だ。「ビリー・ショーウォルター」。「そう呼ばないで。もう覚えてないから、今の僕じゃない」。「じゃあ、どう呼べばいい。覚えていることは?」。「言っただろ。新聞配達だ」。「分かったよ、新聞配達の子」。「君の前の壁が見えるか? 床との間に隙間があるだろ」。「うん」。「僕、長いケーブルを床から引き抜いて、隠したんだ」。「それで、何をすればいい?」。床に転がっていた飲み物のビンが動き出し、先端がもち上がって、鉄格子のはまった窓を指す(1枚目の写真、、矢印は光の窓を指すビン)。その頃、学校の保健室で眠っていたグウェンは、ある夢を見る。それは、新聞配達をしていた頃のビリーの夢(2枚目の写真、)。夢の大半は、彼が配達中に拉致されたところで終わる。夢の最後に、フィニーが連れていかれた煉瓦建ての1階家の全体像が一瞬映り、目が覚める。フィニーは、床と壁との隙間に指を入れ、そこからケーブルを一気に引き出す(3枚目の写真、矢印)。フィニーは、さっそく窓の下まで行き、鉄格子に向かって何度もケーブルを投げ上げるが、巧く絡まってくれない。

フィニーは、トイレに筒状に巻いたものが置いてあったことを思い出し、それを持って来て、窓に立てかける(1枚目の写真、矢印はケーブル)。そして、ケーブルを筒の中に入れていく。すると、てっぺんから出てきたケーブルが上手い具合に鉄の桟に絡みつき、そこからぶら下がることができるようになる。最初は、2本のケーブルをまとめて両手で持って登ろうとするが、彼の腕力では途中で落下してしまう。それを2回失敗した後、今度はケーブルの両端を結ぶことを思いつく。そうすれば、より高い所に足場ができる。フィニーは、そこに足を掛けると、今度は、楽に窓の鉄格子に手が届く。そして、格子を両腕でつかみ力を入れる(2枚目の写真)。すると、格子が外れて、格子ごと落下する。フィニーは、悔しそうに窓を見上げる(3枚目の写真、矢印は鉄格子)。その夜、グウェンは、父に、彼が嫌っている夢の話をする。その時、父が話すのが、母の才能と自殺の話。しかし、グウェンは、「もし、お兄ちゃんを見つけ出す役に立つんだったら?」と言い、父は、グウェンを車に乗せて、夜の町をゆっくりと走り、グウェンが保健室の夢で見た家がないか探すが、この時は、成功しない。

翌日、2人の刑事は、訊き回りで1軒の家を訪れる。そこに住んでいたのはマックスという中年男性で、兄の家に短期滞在していて、この地で起きた連続少年誘拐事件に興味を持ち、刑事に、自分が作成した拉致マップを見せ、犯人のいそうな場所を推測してみせる。刑事は、この手の “民間捜査” には辟易していたので、早々に退散する。そして、マックスが、居間のテーブルにコカインを置いて、紙を巻いた筒で鼻に吸い込むシーンが映ると、カメラは下に向かって動き(1枚目の写真、青の矢印はカメラの方向)、何と、居間の地下にはフィニーがいた(2枚目の写真)。マックスは、鬼の面を被ったグラバーの上半身裸の写真と比べると、痩せこけているので、グラバーは、マックスの兄に違いない。そして、マックスの行為から見て、彼は、兄が何をしているかも知らないように見える。フィンは、ベッドから降りると すぐに穴を掘り始めるが、以前と違い、フィンの頭が見えなくなるほど穴は深くなっている(3枚目の写真、青い矢印より もっと深い)。

グラバーは、食事と水を運んできた後、また 鉄扉をロックせずに出て行く。すると、すぐに電話が掛かってくる。「もしもし?」。返事がない。「ブルース? ビリー? 新聞配達の子?」。電話が切れる(1枚目の写真、)。これは、恐らく、1階に行かないようにとの、再警告。次のシーン。あれから時間がかなり経ったのか、1階では、グラバーが、フィニーがちっとも来ないので、ウトウトし始めている。地下では、フィニーが、ロケット型の懐中電灯のLEDを点けて、真っ暗な部屋の中を順に動かしていると、弓なりになった少年が宙に浮いている、全身から出血し、血が床にしたたり落ちている。フィニーが、茫然してその姿をみていると、いきなり左腕が上がり、電話機を指す(2枚目の写真、)。フィニーは、鳴ってもいない電話機の受話器を手に取り、「もしもし?」と言う。そして、後ろを振り返ると、血まみれの少年は消えていた。「君には、あまり時間がない。誘拐犯は眠っていない。ひょっとしたらと考えてる。彼が、何か仕出かすんじゃないかと」。「誰が?」。「1階にいる奴の弟」〔マックスのこと〕。そう言って、少年は笑う(1枚目の写真、)。

「君はグリフィン?」。「誰?」。「グリフィン・スタッグだ」。「多分ね。すべてが霞んでるけど、君は、僕らの名前全部知ってるようだね」。フィニーは、グリフィンに尋ねる。「なぜ、奴は、僕を殺さないんだろう?」。「君がゲームをしないからさ。ゲームをしないと、奴は勝てない」。「どんなゲーム?」。「“言うことをきかない子〔naughty boy〕”。君が “言うことをきかない子” にならないと、奴は君を叩れない。叩れないと、次の段階に進めないんだ」。「次の段階って?」〔ナイフでの刺殺〕。ここで、グリフィンは話題を変える。「君には、あまり時間がない」。「もう、言ったよ」。「奴は、今、眠った。イスに座ったままね。君がゲームを来るのを待ちくたびれて、眠っちゃったんだ」。「僕は、どうしたら? 扉は、まだ開いてる。 行くべき?」。「玄関の内側にダイヤル錠がついてる。僕の自転車の錠だ。僕を捕まえた時、一緒に取られたんだ」。「組み合わせ番号は?」。「覚えてない。忘れるといけないと思って、書いておいた」。「どこに?」。「壁に、ボトルキャップで彫った」。「どの壁?」。「右側。座ってる時、肩の高さくらいのトコ」。フィニーは必死に探す。そして、「23317」という数字を見つける(1枚目の写真、、矢印)。「23317かい?」。「君が、そう言うなら」。「でも、23-31-7、23-3-17、2-33-17の3通りある」。「覚えてない。全部試さないと。それを、すごく静かにやらないといけないよ」。フィニーは数字を暗記してから、階段を静かに登ると、確かに、仮面のグラバーはイスに座ったまま寝ている(2枚目の写真)。そこで、フィニーは、グラバーの左側にあるドアまでそっと歩いて行くと、その奥の部屋〔マックスの作った地図が置いてある〕を横切り、内扉を開け、玄関のダイヤル錠を回し始める(3枚目の写真、矢印)。成功したのは、3回目のトライアルだった。

鍵が開くと同時に、意地悪な犬が吠え始め、フィニーは逃げ出すが、グラバーも目が覚める。そして、ドアが開いたままになっているのを見ると、フィニーが逃げたと悟る。フィニーが全力で走っていると、すぐに黒いバンが飛び出て来る(1枚目の写真、矢印)。それを見たフィニーは、走りながら、大声で、「助けて!! 誘拐犯だ!!」と叫ぶ。しかし、すぐに捕まり、首にナイフを押し当てられ、「一言でもしゃべってみろ、豚のように、はらわたをくり抜き、腸でお前の首を絞めてやる」と脅される(2枚目の写真)。フィニーの叫び声で、2軒の家の玄関に明かりが点いたが、その後、静かになったので消えてしまう。すると、グラバーは、「言うことをきかない子」と言って、フィニーの頭を殴る。グラバーは、気絶したフィニーを、地下室のベッドの上に放り出す(3枚目の写真)。その時、上の階から、マックスが、「いったい何の騒ぎだ?」と訊く。「サムソン〔犬〕が、時々吠えるんだ。何でもない。ベッドに戻れよ、マックス」。

気絶していたフィニーは、起き上がり、左手に付いた傷を見て、「ちくしょうめ」と 怒りをぶつける。すると、電話が鳴り出す。電話に出たために大変な目にあったので、電話機に向かって、「くたばれ」と罵る(1枚目の写真、)。しかし、鳴りやまないので、「くそっ!」と言って受話器を取ると、これまでのように、「もしもし?」ではなく、「何だ?」と乱暴に訊く。「何が言いたいんだ? 自分が誰かも分からんのか?」。すると、相手も、これまでとは違って、乱暴に答える。「何だ、その口の聞き方は? お前は誰だ?」。「フィニー・ブレイク」。「そうか、会えて嬉しいぜ、フィニー・ブレイク」。そう言うと、フィニーは気付かないが、ベッドの反対側に座った男は、「ここだ! これだ!」と腕を伸ばして示す。「これって、何?」(2枚目の写真、)。「お前の哀れなちっぽけな命の、ゾッとする悪夢の終わりだ」。その言葉を聞いて、フィニーは、「あんた、ヴァンス・ホッパーだ。覚えてるよ。いつも怖かった」。「俺を信じろ、フィニー・ブレイク。お前が、これからどうなるか知ってたら、怖いじゃ済まされんぞ。今日が、その日だ、ちくしょうめ!」。そう言うと、ヴァンスは立ち上がって壁を蹴り、場面は、かなり前に戻る。そこは、コンビニにゲーム機を置いたような店。そこで、ゲームにはまっているのがヴァンス。これまでの最高得点を狙っている。それが叶いそうだった時、じゃれ合った2人のガキがゲーム機に接触し、そこでゲーム終了となる。頭に来たヴァンスは、2人を徹底的にやっつけると、そのうちの1人の腕に、ナイフで「7741」と切り書く〔この数字は、ゲーム機の得点とは関係ない〕。暴力沙汰の通報を店から受けてやって来た警官が、暴れるヴァンスを連行して行く(3枚目の写真、、矢印はフィニー)。

次も、ずっとグウェンの夢。だから、警察に連行されるヴァンスの隣にグウェンが座っている(1枚目の写真、)。パトカーの中の警察無線には、先ほどの、フィニーとヴァンスのやりとりの一部が入る。その中で、一番重要な言葉が、先ほどは、あまり意味の分からなかった言葉、「ここだ! これだ!」。この言葉は、パトカーが フィニーの監禁されている家の前に来た時、ヴァンスが、家を指してグウェンに教えた言葉だった(2枚目の写真、〔この言葉は、家を指しただけでなく、その後にヴァンスが言った言葉、「お前の哀れなちっぽけな命の、ゾッとする悪夢の終わりだ」とも関係がある。すなわち、フィニーがグラバーによって殺された後は、ここに埋めらると言っている〕。そこでパトカーは停まり、グウェンは、必ずこの家を見つけられるように、車から降りて鋭く観察する。家の壁には、「7741」の文字が見える。パトカーから同じように降りたヴァンスは、「俺を信じろ、フィニー・ブレイク。お前が、これからどうなるか知ってたら、怖いじゃ済まされんぞ。今日が、その日だ、ちくしょうめ!」の言葉と叫んで、家の金網のフェンスを蹴っ飛ばす。その音で、今までお風呂に入って眠っていたグウェン(3枚目の写真)の目が覚める。

地下室では、ヴァンスとの電話がさらに続く。「お前、カーペットを重ねて窓に届こうとしたか?」。「全部 試したよ」。「いいや、全部じゃない」。そう言うと、新たな情報を教える。①便器の壁にコンセントがある。②コンセントの上2フィートの壁を壊すと、ネジで止めたパネルがある。③パネルを外すと冷凍庫がある。④冷凍庫のドアの向こうが保管室。という具体的なもの(1枚目の写真、)。そこで、フィニーはさっそく、便器の後ろのタンクの陶器の蓋を外すと、その先端を壁にぶつけて削っていく(2枚目の写真、矢印は蓋)。しばらく崩すと、金属製のパネルが見えて来る。ネジを外すために、フィニーはもう一度便器のタンクに戻り、中にある金属製の部材を分解し、薄い円盤状の金属片〔ネジ廻しの代わり〕を見つけ、それでパネルを外す。その向こうは確かに冷凍庫になっていて、中には冷凍肉がいっぱい入っている。フィニーは、その向こうに見える冷凍庫のドアを押し破ろうと全力で押すのだが(3枚目の写真、左の矢印は冷凍庫のドア、中央の矢印は肉の塊の1つ)、ヴァンスにように大柄ではないため、どうやっても開かない。フィニーは、悔し涙を流す。

すると、そこに電話が掛かってくる。元気なく立ち上がったフィニーは、受話器を外し、「何?」と訊く。「やあ、フィン。どうした?」。その声に、フィニーは、「ロビン?」と訊く。「よお、相棒。泣くなよ」。フィニーは、慌てて涙を拭うと 「泣いてない」と言う。「泣いてるさ。見えるんだ」。「見えるの?」。「一緒にいるからさ。ずっと一緒だった」。「いたの?」。「ダチを放っておけないだろ」(1枚目の写真、)「親仁がベトナムに行った時、ダチを見捨てなかった。だから、家には帰らなかった。俺も、帰れなかった。俺は、君を見捨てない」。「すぐ、一緒になるよ」〔殺される、と言いたい〕。「バカ言うな。君を、俺みたいにさせるもんか」。「全部やってみたけど、どれもダメだった」。「俺が言ったこと、覚えてるか? 『いつか、独り立ちする日が来る』。いいか、その『いつか』が、今日なんだ、フィン。今日こそ、君が、誰からも虐められなくなる日だ」。「僕は、君みたいに戦えない。君ですら、奴を倒せなかった」。「君は、常に戦士だった。それが俺たちの共通点であり、だから俺たちは友だちだった」。「僕は強くない」。「強くなれ。ここから出るために。自分のために できないなら、俺のために やってくれ」。「どういうこと?」。「俺は無為に死にたくない。せめて 友だちのために死にたい。俺は、あのクソ野郎〔スペイン語:hijo de puta〕を殺せなかったから、君が俺のためにやってくれ」。「どうやって?」。「武器を使うんだ」。「武器って?」。「君が、手に持ってる」。「受話器?」。「土をぎゅうぎゅう詰めにして、重くするんだ。あとは、何度も練習する」。そして、殴り方の練習が始まる。「電話を構えろ。一歩さっと後退。一歩前進。一歩後退。そして、叩きつける」。ロビンは、この動作を何度も練習させる(2枚目の写真、、矢印は受話器)。「それでいい」。「じゃあ、その中に土を詰めるんだ」。「これからも、君と話せるかな?」。「これが最後の電話だ。これからは、君だけだ」。「寂しいよ、ロビン」。「じゃあ、俺のために、そこから出るんだ。教えた通りにやれ」。「やるよ」。「じゃあな、フィン」。「さよなら、ロビン」。フィニーは、さっそく、受話器の蓋を外すと、その中に、掘った穴の土をぎゅうぎゅう詰める(3枚目の写真、矢印)。それから、深く掘った穴の手前の壁の床から少し上にネジ釘を刺し、そこにケーブルを縛り付ける。

雨の中、グウェンが自転車に乗り、夢の中ではっきり見た家を必死に探している。すると、雷鳴とともに5人の少年が行く手を遮るように現れ、驚いたグウェンは自転車から落ちる(1枚目の写真、〔5人は、左から、ビリー、ヴァンス、ロビン、ブルース、グリフィン〕。グウェンが、体を起こすと5人の姿はなく、彼女が転んだ場所の前にあったのは、夢の中で何度も見た家だった(2枚目の写真)。煉瓦の壁には、「7741」の文字もある。グウェンは、自転車に乗ると、大急ぎで家に戻り、刑事から渡された名刺を出すと、電話を掛ける(3枚目の写真、矢印は名刺)。

同じ頃、いつもようにコカインを吸っていたマックスは、自分の作った地図を見て、この家が、色々な誘拐事件の中心に位置しているのに気付く。そして、マックスは、地下室へ降りていくドアを開ける。地下室の照明が点いたので、いよいよ決戦の時だと思ったフィニーは、土を詰めた受話器を手に持って待ち構える。重い鉄扉がそろそろと開き、マックスが顔を見せる。彼は、中を見て、「ありえん〔No fucking way〕。彼が、ここに何かを隠してることは知ってたが、まさか、なんてことだ〔holy Mary, mother of God〕!」と、驚嘆する。フィニーはマックスによって助け出されると思いきや、そこに、フィニーの死骸を入れる袋を買いに行って戻ったグラバーが、仮面を被り、斧を持って階段をそっと降りて来る。そして、実の弟のマックスの頭に 斧を振り下ろす(1枚目の写真、矢印は斧)。マックスは即死。上半分だけの仮面を付けたグラバーは、地下室に入ると、フィニーに、「貴様が、俺に何をさせたか見てみやがれ。弟を殺させたんだぞ」と、勝手な言い掛かりをつける。そして、「貴様は、これから、他のガキどもと一緒になるんだ。言うことをきかん連中とな」と、死を宣言する。その頃、警察は 「7741」の家の玄関に到着している。グラバーは、マックスの頭から斧を引き抜くと、「いつもはナイフを使う。だが貴様は特別だ。時間をかけて、とことん苦しめてやる」と言い、「サムソン!」と、獰猛な犬を呼び寄せる。警察は、応答のない玄関を破り、中に押し入るが、中には誰もいない。グラバーは、斧を手にしてフィニーに向かって行く(2枚目の写真、矢印は斧)。彼が、斧を振り上げて叩き下ろした瞬間、フィニーは逃げて、便器のある通路に走り込み、ケーブルの先端を掴む。そして、グラバーが通路に突進して来ると、ケーブルを引く。ケーブルは、L字型になっていて、通路の入口全体を遮断した後、壁に沿って、フィニーまで伸びている。グラバーは、ケーブルに足を引っかけて転倒し(3枚目の写真、中央の下向きの矢印は壁に沿ってケーブル、右側の矢印は、穴が見えないように被せてあるビニールシート)、そのまま、ビニールシートと一緒に深い穴に落ちる(4枚目の写真、空色の矢印は落下方向、左の矢印はビニールシート)。穴の底には、窓にはまっていた鉄格子が斜めに置いてあり、グラバーの足は、それにぶつかって右足は恐らく捻挫し、左足は動けなくなる(5枚目の写真、矢印は鉄格子)。

立ち上がったフィニーは、ロビンに教えてもらったように、受話器を使ってグラバーの頭を何度も殴りつける(1枚目の写真、矢印は土を詰めた受話器)。途中で仮面が取れて、殴り易くなる。グラバーが、半分意識を失ったところで、フィニーは敵の頭上をジャンプして反対側に行くと、グラバーの首に受話器のビニールコードを巻き付け、背後から全力で締め付ける〔犬は、グラバーが鉄扉の横に縛り付けておいたので、助けに来ない〕。グラバーが、窒息死寸前になると(2枚目の写真、矢印は、首を絞めつけているビニールコード)、壁の電話機が鳴り出す。それを聞いたフィニーは、受話器をグラバーの顔に近づけると、「お前にだ」と言う。すると、受話器から、5人の声が順番に発せられる。「お前の哀れでちっぽけな人生の悪夢の終わりへようこそ」。「もうすぐ、終わりだな」。「今日が、その日だ、人間のクズめ」。「俺は、クソ野郎のお前を殺せなかったから、フィンが俺のためにやってくれた」。「フィンはいい腕してる」。その言葉とともに、フィニーは一気に絞め殺す。その頃、警官は、地下室へのドアを見つけ、刑事と3人で降りて行く。

フィニーは、冷凍庫にあった肉、壊してから時間が経つので、解凍された肉を持って猛犬に近づき(1枚目の写真、矢印は肉)、それをドアから離れた所に投げて、攻撃されないようにする〔これで、フィニーが5人から教わって行ったことは、すべて無駄なく有効に使われた〕。フィニーは階段を上がり始める。一方、階段を下りた3人が見つけたものは、砂で埋まった地下室。順番に殺された少年達が埋まっていて、フィニーを埋めるための穴も掘ってある。フィニーは、玄関のダイヤル錠を開け、家から出る。グウェンが心配しながら家の柵にもたれて座っていると、次から次へとパトカーが駆け付ける。その時 「7741」の向かいの家の玄関が開き、兄が歩いて出て来る(2枚目の写真)。それに気付いたグウェンは、走っていって兄に抱きつく(3枚目の写真)。それを、他の警官から知らされた刑事2人も駆け付ける。フィニーは、刑事に 「地下室」とだけ教える。2人は、刑事の指示ですぐに保護される。

2人が毛布を掛けられて、救急車の後ろに座っていると、そこに、警察の制止線を通してもらった父がやって来る。そして、まず真っ先にフィニーを抱きしめると、地面に座り込み、グウェンに向かって、「悪かった。頼む、許してくれ」と謝る(1枚目の写真)。これは日中のシーンだが、次は、辺りが真っ暗になってから、デンバーの警察署長が行う 多くのTV局に向かっての公式見解の発表(2枚目の写真)。その内容によれば、殺されたのは5人。つまり、映画では、その5人全員が協力したことになる。そして、向かい合った家の1軒は埋葬専用、もう1軒が、生きている少年の監禁用、兼、犯人の居住用。その翌日、もしくは、数日後。フィニーが登校すると、廊下ですれ違う全員が彼に注目する。「彼よ」「もっと大きいかと思ってた」「悪漢を1人で殺したんだって」「奴は7フィートもあったそうよ」「どうやって絞殺できたのかしら?」。いつもの虐めっ子3人組は、怖くて2度とフィニーに手を出さないだろう。「頭に斧が」「パパは警官よ。電話で叩いて殺したんだって」。それらは、非難ではなく、崇拝するような目線で語られる。英雄の行進だ(3枚目の写真)。

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