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Vinski ja näkymättömyyspulveri ヴィンスキーと不可視の粉

フィンランド映画 (2021)

1954年に出版された児童書『Koko kaupungin Vinski』で、ヴィンスキーが薬局で不可視の粉を手に入れるところだけ活かし、あとの内容を全く変えた映画。原作では、目に見えないヴィンスキーが町の人々に親切な行いをするのだが、映画では町を襲った犯罪の波に、10歳の少年ができる程度の簡単なやり方で、ただし、透明という絶大な効果を生かして向かっていく。子供向けの映画としては、なかなか良くできている。なお、この原作は1969年に『Koko kaupungin Vinski』、1970年に『Vinski ja Vinsentti』という2本のTV映画(ともに、白黒、40分)になっている。下に示したのは、2番目のTV映画のネット上にある唯一の鮮明な映像。
 

フィンランドのある町に母と2人で暮らしている10歳のヴィンスキーが主人公。彼が、夏休み前の最後の登校の際、いつもの虐めっ子に怪我をさせられた直後、不思議なことが起きる。絆創膏と消毒液を買おうと薬局に行ったヴィンスキーは、そこでも不思議な体験をし、突然現れた老いた薬剤師は、ヴィンスキーの傷を手当した後で、不可視の粉を見せ、目の前で消えてみせる。一方、その少し前から、この町では強盗事件が続発していて、その魔の手は、遂にヴィンスキーの母のケーキ屋にも及ぶ。母は、アンテロという男がセールスしていた会社と契約し、防犯装置を付ける。そして、バツイチと独身の2人は、次第に親しくなっていく。ヴィンスキーは、母の店が連続強盗犯に襲われたことで、薬剤師の老人と一緒になって犯人達を捕まえる “ヒーロー” になろうと決心する。そして、老人の、どこが襲われそうかの研究と、透明になったヴィンスキーの活躍で、計14名の犯人が逮捕され、町では、謎の「目に見えないスーパーヒーロー」としてもてはやされる。そんな時、ヴィンスキーは、母がアンテロとデートをくり返しているのが気になり、老人の忠告を無視して、私用で魔法の粉を使い、アンテロの家でデート中の母を監視しようとする。ところが、アンテロの家の地下室でヴィンスキーが見たものは、アンテロが連続強盗の主犯、窃盗団の親玉である証拠だった。そして、頭に来たヴィンスキーが、透明になって、デート中のアンテロを痛めつけた時、彼の家に仕掛けられた防犯カメラの一つに、透明から元に戻るところを映されてしまう。アンテロは、ヴィンスキーの母と結婚するか、断念する代わりに不可視の粉を寄こせと迫る。そして、結婚式の日、ヴィンスキーは、奇抜な方法で、この難局を解決する。脚本には、欠点もあるが、最後の難局の解決策は、10歳の子供でも十分できる方法であり、かつ、意表を突いたもので、かなり巧く考えられている。

ヴィンスキー役は、クウラ・ロッシ(Kuura Rossi)。2009年生まれ。この映画に出演する前に、『Metsäjätti』(2020)、『Luokkakokous 3』(2021)に脇役で出たほかに、3つのTVシリーズにも顔を出している。

あらすじ

映画の冒頭、ソ連時代のGP-5ガスマスクを被り、黄色の革手袋をはめた男が、旧式のランドローバー88の運連席でイライラしながら待っている。すると、後方の建物で爆発音がし、非常ベルが鳴る中、同じガスマスクを被った2人の男がバッグを持って車に乗り込み、即発車。警察が余程近いのか、パトカーがすぐにやって来る。後から乗った2人のうち1人が発煙筒に火を点け、煙を後方に充満させ(1枚目の写真、矢印は発煙筒)、パトカーを撒(ま)く。このシーンのロケ地はフィンランドのポルヴォー(Porvoon)。首都ヘルシンキの北東50キロ弱の所にある中世由来の古い木造の町並みが残る観光地。写真は、同じ位置でのグーグル・ストリートビュー。この写真でも、①車道も歩道にも丸い石ころが敷き詰められていること、②家はすべて木造、③観光客が多い、ことが分かる(ただし、こうした一種の保存地区は約300m×約500mとかなり狭い)。TVのレポーターの声が入る。「ヘンプスタッド〔架空の町〕の人々にとって、鉄面皮な強盗犯罪は もはや日常的なものとなっています。犯罪の波が、私たちの愛すべき町を襲う中にあって、市の指導部と警察はどうすることできません。ふがいない警察にとっての唯一の手掛かりは、主犯の黄色の手袋です」。黄色の手袋の男は、先頭の立って、多くの車が置いてある強盗団の基地に入って行く。そして、大きなテーブルの上に敷かれた町の地図の上に、今夜の戦利品のお札を置くと、両手を8名の手下に向かって 鼓舞するように突き出す(3枚目の写真、矢印は黄色の手袋)。そして、映画のタイトルが表示される。

そして、すぐに主人公のヴィンスキーの母のケーキ屋周辺の町並みが映る(1枚目の写真、矢印が店)。この地点のグーグル・ストリートビューが2枚目の写真(矢印が店)。左にある立派な建物は、ポルヴォー博物館。1764年に完成した旧市庁舎(フィンランドで現存最古)。この地方では石造建物の経験が乏しく、しかも、最大級だったため、博物館のホームページによれば、土台が貧弱で、完成後すぐに傾き始めと書いてある(右の写真は、傾斜した戸枠)。因みに、最初の節のグーグル・ストリートビューの道路の正面に見えるのも同じポルヴォー博物館。

朝、ヴィンスキーが起きて来ると、母が、ハンドミキサーを動かしたまま眠っている。ヴィンスキーは、母の腕に触ると、「ママ」と起こす。母は 「眠ってなんかないわよ」と言うが、ヴィンスキーは、「ママ、いつも言ってるじゃない。かくはんし過ぎるとクリームが固まっちゃうって」と、母の嘘弁解に反駁する(1枚目の写真)。母もしぶとい。「片方の目を休ませてただけよ」。「いびきをかいてたよ」。「いいこと、今日は、ケーキを15個も焼かなくちゃいけないの」。「今日って、僕の…」(2枚目の写真)〔誕生日と言おうとした〕。「分ってるわ。学校で最後の日よね」。

ヴィンスキーが、自転車で学校に向かっていると、塀にずらりと新聞の一面が貼ってある。新聞は、「ヘンプスタッド新聞/再び大胆な強盗-連続犯罪がヘンプスタッドを襲う」という見出しで、黄色の手袋が大きく描かれている(1枚目の写真、矢印)。ヴィンスキーの頭の上には、特徴的な薄い青緑の塔と、三角的の大きな屋根が見える。この路地にはグーグル・ストリートビューがないので、路地を抜けた先の画像を示すと、2枚目の写真のようになる。1枚目、2枚目とも、①は古い鐘楼、②はポルヴォー大聖堂。先の旧市庁舎と並んで、ポルヴォーを代表する建物だ。

ヴィンスキーが学校に行くと、虐めっ子のヨウソがいて、「あの中に足を入れろ」と指差す(1枚目の写真)。指の先には、雨樋から出てきた水を貯めるブリキの小さなタライが置いてある。ヴィンスキーは 「イヤだ」と言うが、次のシーンで教室の中に入っていくシーンでは、木の床に水に浸かった靴跡がつくので、結局、足を入れて来させられた。その時、教師は、ローサの課題レポートを絶賛していて、犠牲者の足跡など見ていない。最後に、「楽しい夏休みを」と言うので、それが、母が言っていた「学校で最後の日」の意味だ。次に呼ばれたのがヴィンスキー。ヨウソは、前に出て行くヴィンスーに足を出して転ばせようとして失敗。代わりに、「彼の家に洪水に遭ったか、おしっこ漏らしたんだ」と冷やかし、教師に注意される。そして、ヴィンスキーには、「このレポートはもっとよくなったハズだ。集中力が足りないぞ」と注意する〔教師もローサもアフリカ系移民〕。そして、学校が終わって外に出ると、ヨウソが、「おい、ヴィンスキー、俺たちとサッカーしたいか?」と声をかける。「もちろん」。「条件が一つ。まずシャワーを浴びるんだ」。シャワーを持ったヨウソを見て、ローサが、「ヴィンスキーに構うの止めなさいよ」と注意するが、「人形で遊んで来いよ」と言って無視。ローサは、「あんた人形遊びが好きなの? 最低にキモいわね」と笑う。それを聞いたヴィンスキーがニヤニヤしていると、ヨウソにいきなり地面に押し倒され、左の肘をケガする。ヨウソは水道の栓をひねり、「じゃあ、掛けようか」と言う(2枚目の写真、右の矢印はホース、左の矢印はシャツが破れて血が出ている)。その時、いきなり、ヨウソの手からホースが奪われ、ホースの水はヨウソに向かって掛けられる(3枚目の写真、矢印)。ヨウソが逃げて行くと、ホースは路面に置かれ、水が止められる。誰もいないのに、ホースが勝手に動くのを見たヴィンスキーは、立ち上がってホースを見つめる(4枚目の写真)〔この場所は、探したがポルヴォーにはなかった。しかし、路面は石ころ舗装なので、この後でロケ地に頻繁に使われるリトアニアでないことは確か〕

その頃、ケーキ屋では、母が出来上がったケーキを箱に入れ、店から出て歩いて配達に出かける。すると、A-セキュリティという会社のアンテロが、しつこくホームセキュリティの勧誘を始め、会社のパンフレットを渡す(1枚目の写真、背後の建物は旧市庁舎)。ヴィンスキーが家に帰ると、母は配達から戻っていた。母はすぐに破れたシャツに気付き、「どうしたの?」と訊く。「転んじゃった」(2枚目の写真、矢印は傷)。そして、「どれが僕のバースデーケーキ?」と訊く。「ごめんなさい、僕ちゃん、忘れちゃった。今すぐ焼くから。何がいい? チーズケーキ? チョコケーキ? 何でも お望みのままよ」。「アイスクリームでいいよ。今日は、たくさんケーキ焼いたでしょ」。「何ていい子なの。ごめんなさいね。でも、薬局に行って絆創膏と消毒液も買ってらっしゃいね」。そう言って、母は、レジからお金を取り出してヴィンスキーに渡す(3枚目の写真、矢印)。

ヴィンスキーがアイスクリームを食べながら薬局の前まで来ると、「Suljettu(休業中)」と表示が、誰もいないのにひっくり返って「Avoinna(営業中)」の変わったので(1枚目の写真、矢印)、びっくりして(2枚目の写真)、アイスクリームを落としてしまう。そして、ドアが招くように開く。それを上から撮ったのが3枚目の写真。この場所がどこなのか、捜すのに丸一日かかった。ロケ地は、バルト三国の1つ、リトアニアのコウナス(Kaunas)〔先のロケ地のポルヴォーの南約620キロ〕という都市の聖ペテロ&パウロ大聖堂前の広場に面した “28 Rotušės a.” にある灰色の建物(4枚目の写真、グーグル・ストリートビュー)。なぜ、捜すのに時間がかかったのか? 理由は、①この構図(建物の一部のみ)しかないことと、②他の都市シーンは、リトアニアの首都ヴィリニュス(Vilnius)で撮影されているらしいので、この場所もヴィリニュスにあると思ったから〔ヴィリニュスの旧市街地(車道は煉瓦、歩道は長方形の石)は約1キロ四方と広いので捜すのが大変〕。そして、なぜ分かったのか? ヴィリニュスでは、①歩道の石がほぼ正方形に統一されているが、3枚目の写真のように、ここではかなり長細い石が敷かれていることと、②車道の煉瓦の色がこれほど鮮やかではないので、別の都市だと断定できたから。

店に入って行き、ヴィンスキーが「ハロー」と呼ぶが、中には誰もいない。棚にたくさん並んだ白い粉の瓶に触ろうした時、いきなり、「ハロー」と声がする。それでも姿が見えない。ヴィンスキーがあきらめて出口に向かおうとすると、音がして、もう一度、「ハロー」と呼ぶ声が聞こえ、振り向くと、白髪の老人がカウンターの向こうに立っていて、「元気かな、ヴィンスキー?」と言う(1枚目の写真)。「どうして、僕の名前知ってるの?」。「ここは、小さな町だから」。「薬局、やってるの?」。「どうして?」。「看板が…」(2枚目の写真)。「すりむき傷じゃないか」。「買いに来たの。絆創膏と、しょうど…」。「消毒液〔Desinfiointiaine〕」。「それ」。老人は、殺菌液〔Antiseptinen〕のコルクを取ると、脱脂綿に付け、それで肘の傷を何度も軽く叩き、瓶にコルクをはめてから、絆創膏の紙を剥がして肘に貼る。「これ、幾ら?」。「タダでいい」。「でも、ママは、買って来いって。絆創膏と、しょうど…」。老人は、瓶を見せて、「消毒液」と言う(3枚目の写真、矢印)〔瓶に書いてある文字が違う…〕

絆創膏と消毒液の入った紙袋を持ったヴィンスキーは、そのまま出て行こうとし、さっきの質問を続けようと、振り返る。そして、「看板、どこか変じゃないの?」と訊く。「どこも変じゃない。秘密を知りたいか?」(1枚目の写真)。そう言うと、老人は扉付きの棚を開け、金色の粉の入った瓶を取り出し、カウンターの上に置く(2枚目の写真)。そして、「不可視の粉だ」と言う。それを聞いたヴィンスキーは、ニヤニヤ顔になる(3枚目の写真)(3枚目の写真)。「何が、そんなに可笑しい?」。「透明になる粉だなんて」。

「本当だ。この粉は、君を見えなくし、望めば、壁だって通り抜けられる」。「じゃあ、何回も壁を通り抜けたんだ」。「何度も。わしを信じとらんな?」。「ぜんぜん」。老人は、瓶を手に取ると、カウンターから出てヴィンスキーの前まで行き、瓶の蓋を外し、頭の上から少量の粉を振りかける(1枚目の写真、矢印)。そして、英語字幕では「Into walls」〔WEB翻訳のフィンランド語とはかなり違うので、正確には不明〕と言って、右足で左足を踏むと、姿が消える(2枚目の写真、映像は消える手前の淡い姿)。ヴィンスキーは、びっくり仰天。すると、もう一度音がして、老人がヴィンスキーの真後ろに現れ、ヴィンスキーは背中をぶつけて慌てて振り向く。ヴィンスキーは奇跡を見て、大喜び。

老人は、「試してみるかい?」。ヴィンスキーが断るハズがない。さっそく瓶をもらう。老人は、「魔法の言葉を言って、足を踏みつける。長時間 透明のままでいないように。副作用があるかもしれん」と注意する。ヴィンスキーは金色の粉を頭から振りかけ(1枚目の写真)、魔法の言葉ともに足を踏む。老人は、「魔法の言葉を逆さまに言い、反対の足で踏むと、元に戻る」と教えた上で、「壁を通り抜けてみてごらん」と勧める。ヴィンスキーは、石の壁に向かって進む。そして出た場所は、狭い裏通り(2枚目の写真)。このロケ地は、先に言及したリトアニアの首都ヴィリニュス(Vilnius)の旧市街の “5 Šv.Kazimiero g.” という場所。発見の糸口は、建物と建物をつなぐアーチ型の通路。3枚目の写真は、ある意味、奇跡的に見つけたグーグル・ストリートビュー。これを発見したことで、撮影の半分は首都で行われたことが判明した。それにしても、フィンランドの田舎の中世の木造住宅と、旧市街とはいえ、煉瓦で出来た大都市とを同じ町だとして映画化するのは、大胆な発想だ。

ヴィンスキーが、透明なまま路地を歩くシーンが続き、その後、突然、ヨウソのグループが公園のような場所でサッカー遊びをしているところに現れる〔背後の建物が、典型的なポルヴォー風の木造家屋なので、フィンランドでの撮影〕。ヴィンスキーは、地面に落ちていたボールの1個を蹴るが、誰も気付かない。そこで、今度は手に持って、魔法の言葉を言いながら、ヨウソに向かってボールを投げつける。振り返ったヨウソの前に、ニコニコしたヴィンスキーが立っている。「どうやって、ここに入った?」(1枚目の写真)。「信じられないだろうけど、透明になる粉を持ってるんだ」。バカにされたと思ったヨウソ達は、逃げるヴィンスキーを追いかける。慣れていないヴィンスキーは、魔法の言葉を連発するが、粉をかけないので消えない。だから、薬局に戻って来た時は、地面に対されて殴られたような惨めな姿。ヴィンスキーは、魔法の粉の瓶をカウンターの上に叩きつけるように置くと、「おじさんの粉はバカだ!」と文句を言う。老人は、ヴィンスキーの行動を推察したのか、「君は理解しないといかん。この秘密は誰にも洩らしてはならんのだ」と注意する。「透明になんかなりたくない」(2枚目の写真)。「粉は残り少ない。だから、重要なことにしか使ってはならんのだ。この町には、未解決の問題がいっぱいある。この粉を使えば、助けることができる」。「何を助けるの?」。「頻発する強盗じゃよ」。老人は、そう言って 置いてあった新聞を叩く(3枚目の写真、見出しは、同じ日なので、壁に貼ってあったものと同じ)。「自分でやれば?」。「歳を取り過ぎとる。粉は、他の力は与えてくれんのじゃ」。「僕は、おじさんの粉のせいで殴られたんだ!」。それだけ言うと、ヴィンスキーは紙袋を持ってさっさと店を出て行く。

翌朝、母が店に出て行くと、店の中が荒らされ、レジが空になっている(1枚目の写真)。母はさっそく警察を呼ぶ。2人が話している間、ヴィンスキーは壊された戸のガラスを見ている(1枚目の写真)〔ここから手を突っ込んで、鍵を解除した〕。「何も聞こえませんでした?」。「何も。ぐっすり眠っていたので」。警官は、ヴィンスキーにも同じことを訊く。ヴィンスキーは、首を横に振る。「保険には入って?」。「全部はカバーされません。警報システムを買うべきだったわ」。「私たちには、とても手が回りません。ヒーローが要りますね。この町の連続強盗を捕えるには、スーパーヒーローが必要です」。その、警官とは思えない言葉を聞いたヴィンスキーは、スーパーヒーローになろうと決意する(3枚目の写真)。

そして、すぐに薬局に行き、カウンターにいた老人に、「あの粉を使って透明になりたい」と、決然と話す(1枚目の写真)。「なぜかね?」。「スーパーヒーローになりたい」。「なぜ、スーパーヒーローに?」。「助けたいから。僕、何をすればいいの?」。老人は、不可視の粉の瓶を取り出すと、「まず、気付かれないよう、ある場所に行かないと」と言い、2人の頭に粉を振りかけ、2人同時に足を踏む(2枚目の写真)。店の壁を通り向けて、昨日の路地に出る。歩きながら、ヴィンスキーが話そうとしたので、老人は、「不可視の第一のルール。君は誰にも見えないが、しゃべれば聞こえる。だから、しーっ」と注意する。画面は、また突然、別のきれいな場所に変わり、2人の姿も見える。「壁を通り抜けると、歳取ったわしは眩暈(めまい)がする。これは、稀な副作用の一つなんだ。だから、必要以上に壁を通り抜けることは やめた方がいい」。2人の前で、豪華な家の門が自動的に開き、中から車が出て来て2人の前を通って道路に出て行く。このロケ地は、ヴィリニュスにあるヴィレイシス・エステート(後述)。老人は、「ナランテリ夫人は、ヘンプスタッド一番の金持ちで、町の半分を所有している。噂では、あの家には、高価な宝石、ゴールドなどのお宝があるそうだ」と話す。ヴィンスキーは、「金持ちのレディなんか助けるの?」と反撥する。「誰であろうと助けないと。行くぞ、時間がもったいない」。そして、老人が連れて行ったのが、半分廃墟と化したネオルネサンス様式の瀟洒な煉瓦家屋(3枚目の写真)〔ロケ地不明〕

一方、店では、母がすぐにA-セキュリティのアンテロを呼び、基本プランとデラックス版を提案され、売り上げを盗まれたばかりなので、基本プランにぎりぎり手が届く。アンテロは、玄関の内側に取り付けたコード入力用の小さな装置を見せる。そして、6桁のコードを入力して警報装置を作動させた後で、店の中で手を振ると、動きを察知して警報が鳴り出す(1枚目の写真、矢印はコード入力盤)。「これで、目が覚めるでしょ」。そして、同じコードを入力すると、警報が止む。「いかがです?」。「泥棒は驚くでしょうけど、捕まるわけじゃないわね」。それを聞いたアンテロは、「警察への通報装置も設置します。無料で」とサービス。母は、「冷たいりんごジュースと、焼き立てのパイはいかが?」と笑顔になる。軽食が終わり、アンテロは母と一緒に会社のジープ(WRANGLER UNLIMITED)に向かう。母:「ここには、長くお住まい?」。「いいえ、あんまり」。「私もよ。ここで育ったけど、その後は別の町に住んでたの」。「ここは、小さないい町ですね」〔このシーンは、確かに小さな町だが、リトアニアの首都でのロケ場面は、小さな町とは思えない〕。「でも、ちょっと内向きね」(2枚目の写真)。「なぜ、戻ったのです?」。「離婚してから、ヴィンスキーとここに移って来て、焼き方を学んだの」。「見事に学びましたね」。「ありがとう」〔2人は、いい雰囲気〕。「息子さんは?」。「ヴィンスキーは10歳よ。あなたの子供は?」。「私は独身です」。「そりゃ、びっくりね」。2人は別れ、その時点で母が腕時計を見ると、(夜の)8時14分〔フィンランドの夏休みは6月から。その時期の日没時間は22時半なので、20時14分ならまだ明るい〕

ヴィンスキーは、薄暗い老人の家に入って行く。中は、埃が一杯であまりきれいではない〔一種の伏線?〕。2階に連れて行かれたヴィンスキーは、壁に置かれた大きな板に貼られた地図に、写真や絵、ピンが多く刺され、それに、赤い糸が貼り渡されているのを見せられる(1枚目の写真)。老人は、ピンに赤い三角の紙が付いているのが 強盗に入られた家、青い三角の紙のピンは お店と会社。緑の三角の紙のピンは 将来強盗に入られる可能性のある家だと説明する。それを見たヴィンスキーは、自分の家が漏れているので、「ピンが一つないよ」と言い、赤いピンを自分の家に挿しながら、「昨夜、入られたんだ」と教える。老人は、「今夜、強盗どもには、“驚き” が待っておるぞ!」と言う。「どんな “驚き”?」。「もちろん、君じゃ!」(2・3枚目の写真)。

そして、2人は、老人が考えた、“今夜一番襲われそうな場所” の近くの茂みに行き、双眼鏡で、街路の様子を見る〔ロケ地は不明だが、木造の建物は見えないので、リトアニアの都市〕。ヴィンスキーは、「もう8時間も待ってる」と言うが、老人は、「ここには、正確に17分いただけじゃ」と言う。本当にそう言っているのか、字幕の間違いなのか、字幕は1つしか存在しないので分からない。すると、1台のピックアップトラックが街路に姿を見せる。老人は、すぐに、「粉だ」と、瓶を渡す。「来ないの?」。「ああ」。「どうして?」(1枚目の写真)。「わしは、あまりにたくさん壁を通り抜け過ぎた。君しかおらん。覚えておくんだな、危険を冒さなければ、スーパーヒーローにはなれん」。ヴィンスキーは不可視になる。ここで、カメラが切り替わり、トラックを運転している2人の男に代わる。2人は、男の1人が、子供の豚の貯金箱まで盗んできたことで口喧嘩をしていると、いきなり目の前に、黄色の布を被った人影が見えたので急ブレーキをかける(2枚目の写真、矢印)。「あれ、何だ?」。「脚がないぞ」。「構うもんか。死んだ奴が一番善人だ」。そう言って、運転席の男は車から出て、布を取ると、そこには何もない。助手席から出て来て それを見ていた男が怖くなってドアに近づくと、ドアが跳ねるように開いて男は気絶して道路に倒れる。布を持った男が心配になって見に行くと、宙に浮いた消火器から、男に向かって消火液が霧状になって噴霧され(3枚目の写真)、男はたまらず倒れる。そこに、恐らく、老人が携帯で通報したのであろう。パトカーがやってきて、2人とも逮捕される。ヴィンスキーが家に着いてドアを開けると、すぐに母が出て来て、「今、何時か知ってるの?」と、強く訊く(4枚目の写真)〔日没が22時半だったので、真夜中に近い〕。「時計持ってない」。「真っ暗だから分かるでしょ。とっても遅いのよ」。「夏休み中だから」。「一晩中、ほっつき歩くなんて許せないわ。どこにいたの?」。「友だちと…」。「友だち?」。「友だち」。「どんな友だち?」。「ただの友だち」。「何をしてたの?」。「遊んでた」。「分かった、誰と一緒だったの?」。「一人の友だちだよ」。「名前があるんでしょ」。苦し紛れにヴィンスキーが言ったのは、「ローサ」。それは女の子の名前だったので、母はニヤニヤする。

翌朝、ヴィンスキーが降りてくると、母が電話で楽しそうに話している。「ビーチで会いましょうか?」「え、そうしましょ。あなたお魚好き? 私もなの。まさか」。ヴィンスキーが二度目の「ママ」と呼び、ようやく母が にやけた顔で振り向く(1枚目の写真、矢印は受話器)。「おかしい人ね。もう行かないと。そこで会いましょ。じゃあね」。ヴィンスキーが、「誰なの?」と訊くと、昨夜のヴィンスキーの真似をして 「ただの友だち。知り合い」。「知り合いと、どうしてそんな風に話すの? それじゃ、まるで…」。「まるで、何?」。「バカ」。「どういうつもり?」。ヴァインスキーは、母の言葉を皮肉っぽく口にする。「『まさか。あなたお魚好き? おかしい人ね。それじゃ』」。「大人は、時々そういう話し方するの」。ここで、母は話題を変えようと、タブレットをONにして、ヘンプスタッド新聞の記事を見せる。そこには、「ヘンプスタッドで2人の強盗逮捕!」という見出しがあり(2枚目の写真)、母は、記事の中身を読み上げる。「強盗の一人は 通りの真ん中で幽霊を見た後、消火器に襲われたと話した。検察官は精神鑑定を要求」。ヴィンスキー:「ざまあみろだ」。「警官以外に誰かいたのね」。「あいつら、すごい間抜に見えた」。「誰が?」。ヴィンスキーは、秘密を洩らしそうになったので、慌てて、「強盗だよ。見たんだ… 新聞で写真を」とごまかす。母は、「あとで、一緒に何かしない?」と訊く。「ううん、約束があるんだ」。「ローサね? 2人で何するの? キスするとか、抱き合うとか?」。「ママだって、デートじゃないの? ビーチで、“お友だち” と。キッシング・ブースにでも行くの?」(3枚目の写真)。「ただの友だちだから、フレンドリーな会話をするの」。

ここから、連続して3つ、ヴィンスキーの活躍が映る。①強盗が、昼日中、窓を割って強盗に入っている間に、透明になったヴィンスキーは強盗のオートバイのリアサスペンションの最下部がサイレンサーに隠れるあたりにロープを縛り、もう一方の端を真鍮製のごつい雨樋の最下部に縛り付ける。ロープの長さは、オートバイのスピードがある程度出るくらい長いので、ロープによって急停止させられた強盗は、吹っ飛ぶ(1枚目の写真)。そこに、老人が呼んだパトカーが駆け付ける。②2人の強盗が、夜、ミニバンを脇道に入れて建物に盗りに入った瞬間、透明になったヴィンスキーがサイドブレーキを外し、それによって斜面に停めてあったミニバンが進み始め(2枚目の写真、矢印は車の進む方向)、やってきたパトカーを見て逃げ出す。③2人の強盗が、建物から大きな彫像を建物から運び出してSUVに入れている。透明になったヴィンスキーは、大量のビー玉を建物の出口にばらまき、強盗が二度目に出て来た時、2人とも滑ってひっくり返り、パトカーがやって来る(3枚目の写真、矢印はビー玉)。ここだけは、何とか、ロケ地を付き止めた。リトアニアのヴィリニュスの “9 Church of St.Johns” という場所(4枚目のグーグル・ストリートビュー)。これで、最初の2人と合わせれば、7人の強盗が逮捕されたことになる。

ヘンプスタッド新聞の見出しは、「目に見えないスーパーヒーローは誰?」となっている(1枚目の写真)。それから、さらに7人の強盗が逮捕された。これで、残るのはボス1人になった。映画の最初の同じレポーターが、「警察は何人も逮捕したが、市民は答えを求めています。目に見えない神秘のスーパーヒーローは誰なんでしょう? そもそも、そんな人物がいるのでしょうか? 犯罪のボスは、まだ野放しです」。一方、がらんとした強盗団の基地では、ボスが、サンドバッグに新聞記事を貼り付けて、手下を全員奪っていった憎たらしいスーパーヒーローをバッドで叩いている(2枚目の写真、矢印は新聞)。

母は、旧市庁舎の前の露店市で、偶然ローサを見つけ、確信がないので、「ねえ、あなたローサよね?」と訊く(1枚目の写真)。「ええ」。「ヴィンスキーの同級生?」。「ええ」。「私、ヴィンスキーの母よ」。「そうですか?」。「ヴィンスキーは、あなたと ずっと一緒だったと話してくれたわ」。ローサは困ったような顔をする。返事の場面はなく、次のシーンでは、母が怖い顔をして家に戻ってくると、外に行こうとしているヴィンスキーとバッタリ会う。「ヴィンスキー、どこ行くの?」。「外」。「何しに? ローサに会いに行くの?」。「そうだよ」。「ヴィンスキー、なぜ嘘付くの?」。「どういうこと?」(2枚目の写真)。「さっき、露店でローサと話したトコよ。あなた、ローサは否定したわ」。「分かった。嘘だった。でも、ちゃんとした理由があるんだ」。「どんな?」。ヴィンスキーは。母が持っていた新聞をひったくると、その一面を自分の前に広げ、「僕が、目に見えないスーパーヒーローなんだ」と言う(3枚目の写真)。母は、また嘘を付いていると思い、「ヴィンスキー」と呆れた顔で言う。「僕は、透明になる粉を持ってるんだ。見せてあげたいけど、瓶はここにないし、どこにあるか言っちゃいけないんだ」。「分かった。イマジナリー・フレンドね」。「ホントのこと言ってるんだ!」。「じゃあ、私もホントのこと話しましょ。実は、今、付き合ってる人がいるの。アンテロって人」。「A-セキュリティの?」。「そうよ。意気投合したから、デートしてるの」。ヴィンスキーは、「そう…」とだけ言って、外に出て行く。

ヴィンスキーは老人の家に行き、何か不満を洩らしたらしく、説教されている。「不可視の第一のルールは何だった?」。「誰にも見えない」。「つまり、それは、粉の秘密を誰にも明かしちゃいけないってことだ」(1枚目の写真)。「そんなのあんまりだよ」。「そうかな? 君は、何人の強盗を逮捕させた? 何人の町の人が、盗まれずに済んだ? そのどこが、“あんまり” じゃ?」。そして、地図の上の見慣れない色のマークを見て、「これは何だね? わしがやったんじゃない」と訊く。「僕が、付けたんだ」。「どうして?」。「ある男が、そこに住んでる」。「どんな男?」。「アンテロ」。老人は、「ヴィンスキー、君にはまだやることがある。粉末を個人的な目的に使うべきじゃない」と危惧する(2枚目の写真)。「これが、最後の瓶なんじゃ。よく考えてから使うように」。ヴィンスキーは、「どこにいけば もって手に入るの? もっとあるんだよね?」と訊く。老人は、外の何もない庭に連れて行き、そこに植えてある2本の侘しい木を見せる。「この2本は、普通のリンゴの木じゃない。果実を乾燥させて粉末にすると…」。「透明になる粉に?」(3枚目の写真)。「その通り。だが、熟すには時間がかかる。いいか、ヴィンスキー。君のお母さんと付き合っているアンテロは犯罪者じゃない。粉は、賢く使って欲しい」。

それでも、ヴンスキーは、夜、アンテロの超モダンな家の前で見張っている。すると、会社のジープに乗ったアンテロが到着し、助手席のドアを開け、中からヴィンスキーの母が出て来る(1枚目の写真、矢印)。やっぱりと思ったヴィンスキーは、老人に止められたにもかかわらず、不可視の粉を頭から振りかけると、透明になって、防犯装置の付いた玄関も難なく突破、2人が楽しそうにしている2階に上がって行く。アンテロはディナーテーブルの上のキャンドルにピストル型のライターで火を点け、母にキスする。それ以上見たくもないので、ヴィンスキーは、もう一度1階に降りて行き、ドアを開けて地下への斜路を降りて行き、地下室に入ると姿を現わす。最初に目に入ったのは、大きなワインの貯蔵庫だったが、反対側の壁にはいろいろな記事、写真、図面などが貼ってあった(2枚目の写真)。右上の新聞記事の見出しは、「計り知れないほど貴重なサファイアのティアラは ナランテリ宝石コレクションの至宝」。左の新聞記事の見出しは、「2.500.500ユーロ〔当時の約3億円〕。今年、ナランテリ夫人の慈善団体は貧困家庭を救った」。他には、色々な宝物の写真や、別の紙には建物の平面図と宝物室の位置、入口の厳重な金庫室のようなドアの写真まで貼ってある。そして、振り返って作業用のテーブルを見ると、何と黄色の革手袋が置いてある(3枚目の写真、矢印)。そして、壁に貼り付けた付箋紙には、「目に見えないスーパーヒーローは誰だ?」と書かれている(4枚目の写真)。これらを見たヴィンスキーは、アンテロこそ強盗団のボスだと確信する。

母のことが心配になったヴィンスキーは、残り少ない不可視の粉を振りかけ、2階に戻る。アンテロは、銀の大きな蓋の付いた料理の皿を運んできて、ディナーテーブルの上で、蓋を外す。そして、「自家製のヤツメウナギの燻製」と言って、2匹のうち1匹を手で取り、母の皿の上にポンと置く。丸ごとのヤツメウナギを見た母は、気持ち悪くて困った顔をしている。すると、ヴィンスキーが頭から少し下を一瞬つまんで戻す。もちろん、ヴィンスキーは透明なので、ヤツメウナギが動いたように見える。それを見た母はびっくり。「これ、まだ、生きてるの? 生きたまま食べるの?」と訊く。「まさか。燻製にされてるよ」。「そう… 私、手を洗ってくるわ」。母がいなくなり、アンテロが、自分の皿に置いたヤツメウナギを食べようとすると、ヤツメウナギが勢いよく飛び上がって鼻を直撃する(1枚目の写真、矢印はヤツメウナギ)。こんなことは起こり得ないので、アンテロは、“目に見えないスーパーヒーロー” がいるに違いないと思い、「ハロー」と声をかける。返事がないので、「俺は、目に見えないスーパーヒーローと一緒にいるのかな?」と言い、あちこち見回す。「いるって、示してくれ。協力し合あおうじゃないか」。すると、母が立った時、後ろに引かれたイスが、アンテロの方に動く。これで、“目に見えないスーパーヒーロー” がいることが確実になる。アンテロは、自分のイスに座り、「結構」と喜ぶが、その途端、前に置いてあったワイングラスが持ち上がり、中身がアンテロの顔に浴びせられる(2枚目の写真、矢印は跳ね上がった白ワイン)。「これは、協力しないってことだな?」と言う。その時、母が戻って来てイスに座ったので、母は、自分に言われたのだと思い、「そんなことないわ。私、あなたが好きなんだけど、ヤツメウナギには耐えられないの。ごめんなさい。怒らないで」と言う。アンテロは、「ピザを取り寄せましょう」と言うと、席を立ち、背後のキッチンまで行くと、「どこにいる? 姿を見せろ」と、母には聞こえないように言う。すると、シンクの水道が満開に出始め、アンテロがそれを締めている隙に、背後でフライパンが持ち上がり、それで、アンテロの頭が殴られる(3枚目の写真、矢印はフライパン)。これは、さすがに痛く、頭に来たアンテロは冷蔵庫を開け、中からホイップクリーム・スプレーを取り出し、当たれば透明でなくなるいと思い、あちこちに振り撒く。しかし、当たらないどころか、殴られて床に転倒する(4枚目の写真、矢印はスプレー)。あまりの騒音に、母が、「アンテロ、どうしたの?」と飛んでくる。

アンテロは、すぐに地下室に向かい、パスコン上で監視カメラを時間的に動かしてみる。すると、外に停めてある車の脇から、急にヴィンスキーが現われ(1枚目の写真、矢印)、立ち去るのが映っている。アンテロは、“目に見えないスーパーヒーロー” が 只の子供、しかも、結婚を考えている女性の子供だと知って、やったと喜ぶ。ヴィンスキーが自分のベッドで 空になった瓶を見ていると、ドアがノックされる。入って来た母は、「ヴィンスキー」と声をかける。ヴィンスキーは、「アンテロについて、話しておかないと」と言う。「何なの?」。「アンテロは、今度の犯罪の波の背後にいるんだ。彼は犯罪組織の親玉だよ」(2枚目の写真)。母は、おどけた顔で、「まさか」と言っただけ。「ホントだって。彼の地下室で、黄色の手袋見つけたんだ」。「どこで?」。「彼の地下室。僕は、透明に…」。「また、透明になってたのね」〔バカにしてるだけ〕。「ヤツメウナギで、あいつの顔を叩いてやった」。「窓から、私たちをスパイしてたの?」。「違うって」。「他人を盗み見するのは、すごく悪いことなのよ」。ヴィンスキーは、母のあまりの身勝手さに怒り、頭から布団を被って何も言わない。母の左手の薬指には婚約指輪が光っている。

この節と、次の節は意味不明。いくら子供映画といってもひどすぎる。翌日ヴィンスキーが自転車で老人の家まで行くと、何と、ブルドーザーがいて、不可視の粉の原料となるリンゴの木を踏み倒している(1・2枚目の写真、矢印)。でも、いったいなぜ? ①ここは、私有地内。②老人とヴィンスキーの関係を知る者はいない。③なぜ、わざわざリンゴの木を? 分からないことだらけで、全く意味をなさない。不可視の粉が永久に手に入らなくなったと、言いたいのか?

そして、ヴィンスキーが薬局に行くと、出て来たのは若い女性(1枚目の写真)。彼女は、①ヴィンスキーが探しているのは、今の薬剤師の父親で、ずっと前に引退した、②今は、病気で施設にいると教える。ヴィンスキーが施設(一種の老人ホーム)に行くと、老人は、屋外の木の下で車椅子に座り、半ば痴呆状態で、半ば睡眠状態で、ヴィンスキーがどう呼び掛けても返事すらしない(2枚目の写真)。あとで、彼は、“世間の目をくらますための仮装” だと言うが、いつも病院にいるハズなのに、日中も夜間もヴィンスキーと会っていた。両立は不可能。だから、この2つの節の部分は、脚本の欠陥としか言いようがない。

絶望して施設から帰る途中、背後からアンテロのジープが寄って来て、アイスクリームを食べに行こうと誘う。そして、次のシーンでは、2人はカフェの屋外テーブルに向かい合って座り、ヴィンスキーの前には、アイスクリームが何個も入った大きなグラスが置いてある。食べるように迫られたヴィンスキーが、アイスクリームを口に入れ始めると、アンテロは、「君は、俺を信頼していい。こうやって知り合えて嬉しいよ」と言う。ヴィンスキーは、「あんたはペテン師だ!」と批判する。「質問していいかい? 俺はな、君が不可視化したり、可視化して元に戻るところのビデオ映像を持ってるんだ」(2枚目の写真)「あれ、どうやってやったんだ? 何かのトリックなのか? 鏡か何かの?」。「僕は、透明になる粉を持ってた。それで壁も通り抜ける」。「凄いな。どこで手に入れた? NASAか? CERN〔欧州原子核研究機構〕か?」。「薬局だよ」。「店頭で?」と言って笑う。「少し分けてくれないか?」。「もう残ってない」。「嘘はダメだ。嘘だって分かる」。「嘘じゃない」。「分かったぞ。君には やる気ってもんがないんだ。だから、やる気を起こしてやろう。君が、その粉を少し分けてくれたら、ママとの結婚を 考え直してもいいぞ」。これを聞いたヴィンスキーはびっくりする。2人の仲がいいことは知っていたが、まさが、強盗の親玉と母が結婚するとは。真っ青になったヴィンスキーを見て、アンテロは、ニヤニヤしながら、「そうか、君は知らなかったのか。俺は、君のママにプロポーズし、ママはイエスと言ったんだ。そこでだ、提案がある。君が俺に粉をくれたら、ママとは結婚しない」(3枚目の写真)「ママの心は傷つくだろうが、粉の方がもっと大事なんだ。だから、俺に寄こせ」。「もうないんだ」。「手に入れろ」。「ないんだって。それに、もし持ってても、ペテン師なんかに絶対渡すもんか! 行っちまえ。でないと、もっと大声で叫ぶぞ!」。「それが、君の決断だな。なら、家で会おう、息子よ」。この “息子” という言葉は、ヴィンスキーにはショックだった。①粉はない。②あっても、悪党には渡したくない、③でも、悪党の息子になるのはおぞましい。そして、家に帰ったヴィンスキーに、さらなるショックを与えたのは、ウェディングドレス姿の母だった(4枚目の写真)。このあと、母は、ようやくアンテロとの結婚をヴィンスキーに打ち明ける。

その夜、窮地に陥ったヴィンスキーの部屋に老人が現われる。ヴィンスキーは施設で半分死んでいた老人を見てきたので、以前のように生気のある老人を見て抱き着く。そして、「あれ、あなたじゃないって分かってた」と言う。「誰がじゃ?」。「施設にいたおじいさん」。「あれは偽装じゃよ」。そう言うと、老人は、「安全な場所で1個見つけた」と言って、ポケットから不可視の粉の瓶を取り出す(1枚目の写真、矢印は瓶)。瓶を受け取ったヴィンスキーは、「ありがとう。でも、おじさんちの木はやられちゃったよ。他の場所にはあるの?」と訊く。「もちろん。だが、ここからは遠い。残った粉はそれだけじゃ。賢く使うんじゃぞ」。「でも、あなたは?」。「旅に出る」。「どこへ?」。「遥か遠く。この木が生えている場所じゃ」。「行かないで」。「なぜじゃ?」。「アンテロが親玉だって分かったんだ。そんでもって、僕のママと結婚しちゃう。でも、僕、あいつが何を狙っているかも知ってる。ナランテリさんの金庫室だよ。アンテロでも、壁を通り抜ける以外、金庫は破れないんだ」。「よくやった、ヴィンスキー」。「まだ、終わってないよ」。「準備はできとる」。「そうは思えない」。「臆病になるな。勇気を出せ。これまで、わしがなぜ君を選んだのか、話す機会がなかった。不可視の粉は、非常に正直で、無私無欲で、勇敢な人にのみ与えられるんじゃ。君のようにな」(2枚目の写真、矢印は瓶)「君が、薬局に来たのは偶然なんかじゃない」。そう言われて、ヴィンスキーは、ヨウソに向けられたホースの水のことを思い出す。「あれ、あなただったんだ! 僕が、びしょ濡れになるのを止めたの」。老人は、最後の言葉として、「ヴィンスキー、今君はスーパーヒーローじゃ。だから、君自身のルールに従いなさい」とアドバイスする。「あなたがいなくて、寂しいよ」。「君はきっとわしのことを覚えておる。それが大事なことなのじゃ」(3枚目の写真)。老人は、ヴィンスキーに粉を振りかけてもらい、「さようなら」と言って、永久に去って行く。

結婚式の日。式場の階段上に立っていたヴィンスキーは、新婚用の飾りが一杯付けられた会社のジープで乗り付けたアンテロを見て、「結婚式に会社の車か、ホント、イキだね」と皮肉る。アンテロも負けていない。「そうだろ? これなら完璧だとは思わんか? この車で、息子と一緒にバカンスだ。何度もな。まだ、粉を俺に渡したっていいんだ。そしたら、ママは独身でいられる」。「粉なんか あるように見える?」。「お互い、嘘つきだからな。司祭がアーメンと言うまで、持ってるぞ。決めるのは君だ。やるか、やらないかだ!」(1枚目の写真)。アンテロは中に入って行き、女性の司祭と並んでいる。母は、一緒にバージンロードを歩くヴィンスキーがいないので困っている。その時、ヴィンスキーは懸命に駆け、予め頼んでおいたローサの所まで行く。「どこにいたの? 待ちくたびれたわ」。「ごめん。持って来てくれた?」。「ええ」。そう言うと、ヴィンスキーは、ローサのバッグから何かを取り出してポケットに入れる。「ありがとう。もう一つお願いできる?」(2枚目の写真)。ヴィンスキーは、ローサの耳元で何か囁く。それが終わると、ヴィンスキーは、もう一度、式場目がけて全力で走る。そして、待たせていた母の所に駆け寄る。「どこにいたの?」。「トイレ。胃が、神経質だから」。「行くわよ」。こうして、2人はバージンロードを歩いて、アンテロの方に向かう(3枚目の写真)。参加者はあまり多くないが、通路の右側のアンテロの関係者は社員の2人だけ〔2人とも、残った強盗?〕

司祭は、結婚式の定番のスピーチを始める。そして、新婦の意志を問う。「クリスタ、あなたはアンテロを夫として、善きにつけ悪しきにつけ生涯を共にしますか?」。母は、「はい」と答える。次は、新郎の番。「アンテロ、あなたはクリスタを妻として、善きにつけ悪しきにつけ生涯を共にしますか?」。その時まで、アンテロは、最前列に座っているヴィンスキーの方を振り返っては、何かサインがないか気にしていたが、この時は、司祭や新婦の方よりも、ヴィンスキーの方を何度も見て、時に怖い顔もしてみせる。ヴィンスキーは、組んだ腕をほどくと、金色の粉の入った瓶を取り出し、振って見せる(1枚目の写真、矢印は瓶)。これを確認して喜んだアンテロは(2枚目の写真、矢印は瓶)、結婚式のこの段階で、まさかの、「いいえ」。この異常な言葉に、会場は驚きでざわめき、母は、「何ですって?」と訊く。司祭が目を丸くしてアンテロを見ている隙に、ヴィンスキーは席を立つ。アンテロは、「本当に好きなわけじゃない」と言ってほほ笑み、それを見た母は、手に持っていた花束でアンテロの顔を何度も叩く。通路の端まで行ってきたヴィンスキーは、それを見て笑顔になる(3枚目の写真、矢印は瓶)。アンテロは、ヴィンスキーを追って式場から走って逃げ出す。アンテロが、式場の玄関に出ると、ヴィンスキーは、手回し良く、ジープの助手席に乗っている。それを確認したアンテロは、走って運転席に乗り、すぐに車を出す。

ジープは、そのままナランテリ夫人の家に直行する。門の扉のセキュリティ・システムを付けたのはアンテロなので、リモコンで簡単に解除。ジープは、開いた門を通って、邸宅に向かう(1枚目の写真)。このロケ地は、リトアニアのヴィリニュスにある旧ヴィレイシス・エステート(Vileišis Estate)〔1906年、現在はリトアニア文学民俗研究所〕。舗装と建物の材質からヴィリニュスだと推測し、「ヴィリニュス、ネオ・バロック」と英語で検索して探し当てた(2枚目の写真)〔https:// www.openhousevilnius.lt/2019-en/buildings〕。ナランテリ夫人が留守なことは予め調べて分かっているので、そのまま玄関まで乗り付ける。そして、そのまま邸宅の中に入って行き、地下に降り、金庫のような扉の前に到着(3枚目の写真)。アンテロは、「この町で、俺が通り抜けられん唯一のドアだ。ここを通り抜けないと」と言い、ヴィンスキーは直ちに瓶を取り出し、「これ」と見せる。アンテロは、「これなのか」と感激する。「そうだよ」。「で、どうするんだ?」。「まず、これを頭に振りかける」と言って、アンテロの頭に振りかけようとする。「待て待て、嘘じゃないってどうやって分かる?」。「僕が、最初にやるから、嘘じゃないって分かる」。そう言うと、ヴィンスキーはしゃがんだアンテロの頭に粉を振りかけ、次いで、自分の頭に振りかける。そして、次に足の踏み方と魔法の言葉を教え、実行する。目も前でヴィンスキーが消えたので、アンテロは感極まる。そして、さっそく魔法の言葉と足踏み消える。「俺、見えないか?」。「うん」。「で、次は?」。「金庫室の扉を素早く通り抜ける」。通リに抜けた後、魔法の言葉と足踏みで姿を現わす(4枚目の写真)。アンテロは、嬉しくて笑い始める。

アンテロは、宝物室内の宝の山を見て、「みんな俺のだ! 俺は大金持ちだ!」と興奮して踊り出す。しかし、急に心配になり、ヴィンスキーに向かって、「ちょっと待て。どうやったら、このお宝全部を持って、ここから出られるんだ? 俺を騙したのか?」と迫る。「ダマしてないよ。あんたがしなくちゃならないのは、これを全部身に付けることさ。その状態で透明になれば、持ち物も透明になる」。アンテロは、「天才だ!」とヴィンスキーを讃える。「じゃあ、すべて身に付けるぞ!」。そして、身に着け終わると、「じゃあ、行こう」とヴィンスキーに声をかける。粉末をかけてもらおうと、ヴィンスキーの前に跪くが、瓶が頭の上まで来た時、ヴィンスキーの手から瓶を奪い取る。そして、ヴィンスキーから離れると、「お前が俺に与えた屈辱に、復讐などしないと思ってたのか? 俺が警察を呼ぶから、ここで待ってるがいい。これで、お前もお陀仏だな」と言って笑うと、瓶から粉を振りかけ(1枚目の写真、矢印は偽の瓶)、魔法の言葉を言いながら、ドアに向かって突進するが、ドアに全力でぶつかったので、跳ね返されて絨毯の上に仰向けに倒れる。「どうなってる?」。「あんたは、キラキラ粉とベーキングパウダーを振りかけたのさ。それに、警察はもう呼ばれてる」。ヴィンスキーは、そう説明すると、「バイバイ、負け犬」と言うと、本物の瓶を出して頭から粉を振りかけ、魔法の言葉と、足踏みで消える(2枚目の写真、消える寸前、右下は倒れたままのアンテロ)。残されたアンテロは、泣き喚くことしかできない。そして、パトカーのサイレンの音が聞こえてくる。パトカーが玄関に着いた時、ヴィンスキーは姿を現わして、悠々と立ち去る(3枚目の写真)。

アンテロは、アメリカの特殊部隊SRTのような黒装束の武装警官隊の突入で拘束され、見に付けた宝物はすべて剥ぎ取った上で、パトカーまで連行される(1枚目の写真)。彼しかいないのか、3回目も同じTVレポーターが、中継している。「ヘンプスタッドの犯罪の波は、ハッピーエンドを迎えました。ナランテリ夫人の金庫室に閉じ込められた犯罪王、地元出身の40歳前後の男は、現在拘留中です。こえらは、すべて、この若き明晰な少女のお陰です。ローサ、ヒーローになるのはどんな感じですか?」。ローサは、「私は、与えられた指示に従っただけです」。「では、ヒーローは他にいるのですね?」。「はい。でも、彼は匿名を望んでいます。彼こそ、目に見えないスーパーヒーローです」(2枚目の写真)〔ローサは、ヴィンスキーのガールフレンドになるのだろうか? 少なくとも、学業上達の手伝いはしてくれるに違いない〕。「ありがとうローサ。そして、姿を見せず、社会の注目を避ける真のヒーローに感謝したいと思います」。

その夜、ヴィンスキーの部屋には、使われなかったウケディングケーキが置いてある。それまでTVを見ていた母は、「目に見えないスーパーヒーロー?」と言い、ヴィンスキーは、「誰なのかな?」と とぼける。母は話題を変え、「あなた、ローサが好きみたいね?」と訊く。「ただの友だちだよ」。母の顔は信じていない(1枚目の写真)。その顔を見たヴィンスキーは、「何が言いたいの? ママこそ、また別の道化師に惚れるんじゃない?」と、母の今日に至った行動を批判する)(2枚目の写真)。「そうね。私一人祭壇に取り残されたんだもの」。「僕に感謝してよ」。母は、「ええ、ありがと」と、感謝してるようには思えない口調で言うと、ケーキのてっぺんにまだ載っている2つのお菓子の人形のうち、男の方に向かって、「こら、アンテロ」と呼びかける。ヴィンスキーは、男の人形の向きを180度変えて、母の方を向かせて、「何?」と訊く。「これでも食らいなさい」。そう言うと、母は、人形の頭を指ではじき飛ばす。そして、2人は仲良くケーキを食べ続ける(3枚目の写真、矢印は頭のない新郎の人形)。

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