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Arcadia アルカディアへ

アメリカ映画 (2012)

タイ・シンプキンス(Ty Simpkins)が実姉のライアン(Ryan)と共演したロードムービー。主演は姉で、映画の焦点は完全に姉のみに当てられている。ロードムービーなので、主要な出演者は、父、長女、そして、ライアンとタイの4人に限定されるが、カメラは始終ライアンを追い続ける。タイの台詞も結構あるのだが、彼が話していても画面にはライアンが映っている。普通はこういう映画作りはしないのだが、あまりに差別的でタイが可哀想だ。ライアンのアップは頻繁だが、タイは小さく端っこか、横顔か、ピンボケか(ライアンにピントがあっているため)のいずれかだ。今回使用した写真が、タイの出て来るほとんどすべてだと思っていいくらい、彼は無視され続けている。

映画は、アメリカ東海岸(北部)のコネチカット州から西海岸のカリフォルニア州まで、新しい職に就くために一家を引き連れて、旧式の車で10日かけて旅をする一家4人を描いている。朝暗いうちに、大慌てで家を出て西へと向かう。母は用事があって、飛行機で行くことになっている。次女のグレタは父と母の関係に懐疑的なため、ことごとく反抗的で、時間があれば母のいる自宅に電話をかけるが、いつも留守番電話。一方、長男で一番年下のナットは、グランド・キャニオンに行けることを楽しみにしている。そして、事あるごとにカッとして切れる父。影の薄い長女。途中、グランド・キャニオンの料金所まで行ったのに、入園料を請求されたことに反発し、素通りする父。がっかりして泣くナット。それを契機に始まった父とグレタの激しい口論。そして、明かされる複雑な家庭の事情。ロス郊外のアルカディアの町に着いた一家は、本当にちゃんとやって行けるのだろうか?

タイ・シンプキンスが、『スリーデイズ』と『アイアンマン3』の間に出た作品。長髪の金髪がきれいだ。2作と違い、最初から最後まで一貫して出演しているので、カメラの焦点から外れていても、色々な表情を垣間見ることができる。以下のあらすじでは、ライアンの部分はカットしてある。


あらすじ

早朝、家を出発した一家。辺りはまだ暗い。彼らが最初に立ち寄ったのは、朝食をとるためのファーストフード店。父が、「あのデブを見てみろ。糖尿病が、こっそり入り込んでるぞ」と言うと、まだ無邪気なナットが「おい、デブども」と呼びかけ(1枚目の写真)、慌てて制止される。グレタには、「1ドルで肉が食べられるのに、ヨーグルトに3ドルとはな」とあきれたように言う。「ファーストフードは嫌いなの」とグレタ。「アメリカ人で、ファーストフード嫌いの子が いるなんて」と父。1日目の夜。ナットは、父に「グランド・キャニオンまで、どのくらい?」と訊く。「3・4日だ。できるだけ早く行くからな、ナッティ。グランド・キャニオン急行だ」。その直後、長女から「ねえ、ナッティ。踊ってみない?」と声がかかる。父が訪れるまで、ベッドの上で飛び跳ねていたからだ。今度は、なぜか、上半身ビキニの真似をする。「それ 何だ? コネチカットのホモ君か」と父。しかし、姉妹には大モテ。
  
  

2日目。「パパ」。「何だ、ナット坊主」。「目にせっけん」。「大丈夫か?」。「透視能力が!」。「透視能力なら大丈夫。酸でやられるから、よく、すすぐんだ」。たわいもない会話だが、この間、映像は次女のグレタのみ。この映画では、こうした「差別」が始終行われている。いざ、車で出発。本に読みふけるナット。「何 読んでるナッテイ?」。「グランド・キャニオンの動植物」。「一番でかい動物は? アメリカライオン?」。「絶滅したよ」(1枚目の写真)。「つまらんな」。「ねぇ、パパ、グランド・キャニオンまで、あとどのくらい?」。「前に訊いた時から10時間縮まった」。グランド・キャニオン行きを、如何に楽しみにしているかが分かる。因みに車内シーンでは、ナットは横顔しか写らない。顔がはっきり判るのはグレタだけだ。途中で寄ったコンビニで、グレタは、自分用にロト(宝くじ)を買おうとするが、「18歳以上」と言われ、「分かってる。パパのよ」と言い逃れ。一緒に店に入った弟に、「ナット、行くわよ」と声をかけて店を出る。するとナットが寄って来て、手に隠したキャンディーを見せる。「どこにあったの?」と訊かれても、ナットはニコニコしている(2枚目の写真)。「お金 払ったの?」。「ううん。おとりになってくれたから」。「盗んだの? 返してらっしゃい」。「やだよ。たかが キャンディーじゃないか」。
  
  

道に迷って低速で運転していると、後ろからけたたましいクラクション。頭にきて停車する父。「パパ、何するの?」と姉。「一日中、こうしててやる」。道幅は広いので、追い抜けばいいのに、後ろのドライバーが降車して「このクソ野郎!」と怒鳴るって寄って来る。父:「何て言った?」。「クソ野郎だ!」。「失せろ、この間抜け!」。「何だと?」。「失せろ」。「クソ車から出てきて、言ったらどうだ」「お前ら全員クソだ!」。頭にきて、ドアを開ける父。取っ組み合いのケンカになる。それを悲しそうに見るナット(1枚目の写真)。倒されてケガをした男性は、「このクソ野郎、訴えてやる! 貴様のナンバプレートを通報してやるからな!」。警察署で、告発に該当するかどうかの取調べを受け、父は、「男は、言葉と行動で 私と子供達を脅したので、自衛しました」。「口論を始めたのは?」。「彼です。車まで来て、罵詈雑言を。恫喝したんです。銃を持っていたかもしれないでしょ。家族を守りたくて必死でした」。その様子を見ている3人の子供達(2枚目の写真)。言い訳が認められ解放された父。一家で食事をとっている。その席で、「でも、銃なんて 持ってなかった」と責めるグレタ(3枚目の写真)。そして、「嘘をついた」とも責める。父は、「持っていたかもしれない」と言っただけで、決して「持っていた」とは言っていない。こういう変な潔癖主義と、自分だけは何をしても正しい(18歳未満は変えないロト籤は平気で嘘を付いて買ったくせに)という姿勢は、この年代の少女にありがちなものなのかもしれないが、観ていて好感は持てない。
  
  
  

3日目。牧場のそばを通りかかり、柵のそばで馬を見ている3人。「ねえ、嘘ついたのバレたら、パパ投獄されてた?」と心配そうに訊くナット(1枚目の写真)。嘘をついたと非難したグレタの言葉が、翌日にまで影響している。4日目。ミズーリ州の道路際のレスト・エリアで父が太陽系のポンチ図を描いてナットと話している。「地球がこれで、火星が、一番近い惑星だ」〔金星の方が近い〕。「ガニメデは? ガニメデだよ、木星の月」。「そうか…」。「エウロパと、他に2つある」。「もし、お前が もっと詳しくやりたいなら…」。「詳しくじゃなくて、常識だよ」「これじゃ、木星と土星が近すぎるよね」(2枚目の写真)。子供の方が、こうしたことは詳しいものだ。
  
  

その後、父の携帯を借りて母に電話するグレタ。横には、ママが出たら話したいナットもいる(1枚目の写真)。しかし、電話は留守録につながり 誰も出ない。車内に戻り、父が西部劇『ローハイド』の主題歌を歌い出し、ナットも一緒に歌う(2枚目の写真)。父が仕事で電話している間、「車で待ってろ。すぐ戻る」と言われたのに、外へ出て行くグレタ。そして、後を追うナット。グレタは、絵葉書をポストに投函する。用事が終わったと思い、「グリス、戻ろうよ。パパが戻ってくるだろ」〔グリスはグレタの愛称〕と声をかけるナット(3枚目の写真)。それを無視し、近くの犬にかまって吠えられ、逃げ帰る2人。
  
  
  

その日の夕食。父:「なかなかいい店だな」。グレタ:「ホームレスの施設よりはね」。ナット:「僕は好きだよ」(1枚目の写真)。3人の性格がよく出ている。トラブルは、ウエイトレスが注文を聞きに来た時に発生。「ご注文は?」。「初めに、訊いておきたんだが、ハンバーグの大きさって、どのくらいかな?」。「書いてあるように、蒸した野菜と、ジャガイモかライスです」。話がかみあっていない。「で、大きさは? お肉の」。「普通のサイズですよ」。「論理的に訊いてるんだから、論理的に答えて欲しい」「8オンス?」〔≒200gr〕「10?」「6? 5? 4? 3? 2?」。ここで、ウエイトレスが、めんどうくさそうに、両手で直径10センチくらいの円を作ってみせる。その態度を見た父が、すかさず、「ミートローフにマッシュポテト。ハウス・ワイン1杯」と注文する。全部の注文が終わってから、3人に、「応対はDマイナスだな」〔5段階評価で1〕。「腕も太いし」とナット。「ここは、高級ホテルじゃない」とグレタ。いちいち逆らう。「そりゃ誤解だ。ここがどこでも関係ない。常連じゃないから、ああいう態度をとるんだろう」。そして、破局が訪れた。ウエイトレスが、グラスに4分の1しか入っていないワインを持ってきたのだ。「ワインは1杯分を頼んだんだ。こんな少しじゃない」。「これがウチの一杯ですよ。フランスじゃないわ」。これで完全にキレた父。「分かった。さあ、子供達。ここを出る。行くぞ」と問答無用でレストランを出る。そして、結局は、車でファーストフードを食べることに(2枚目の写真)。
  
  

5日目。父が車を停めて、また電話をかけている。そして、また無断で車を降りて行くグレタと、後を追うナット。木陰で、「ママに電話かな?」と訊くナット(1枚目の写真)。「初登校の日、ママ 来てくれる?」。「分からない」。「来なかったら、サンドイッチ作ってくれる?」。夜になり、モーテルで。父が、出て行ったきり戻って来ない。「パパの散歩、長いわね」。そんな時に、ナットが、トランプを手で広げて、「1枚、選んで。きっとびっくりするよ。世界一すごい手品のトリックだ」とグレタに差し出すが(2枚目の写真)、それをバラバラに払いのける。いくら不安を抱えていても姉としては失格だ。その夜、あまりに帰りが遅いので、モーテルの近くにあるバーまで見に行くグレタ。そこで見たのは、見知らぬ女性と酒を飲みながら話す父の姿。母思いで潔癖症のグレタとしては、絶対に許せない光景だ。部屋に戻り、ナットのベッドに入り込む。ここからは、2人でシーツを被ってする会話。ナット:「小さなコウモリ 見つけた時のこと 覚えてる?」「猫が翼を裂いて、飛べなくなっちゃったよね」「そしたらママが、裏口から森に帰してやって、良くなるって言った」「コウモリには 特別な力があるって」「あの後で、どうなったと思う?」。「知らない」。「知ってる」と言って上を向いた無表情のナット(3枚面の写真)。何を意味しているのか。恐らく、コウモリは死んだのであろう。
  
  
  

6日目。オクラホマ州に到着。父は友人のエーカー家を訪問すると告げる。また、グレタの文句が始まる。「ママは そこに行くこと知ってる? ママの知らない所で こんなこと、変だわ」「パパが家を選んだ時みたい。ママには口出すなって」「私がキャンプに行ってる時、パパが選んだって聞いたわ」。友人宅に着いた一家。出てきた女性。「昨日 いらっしゃると思ってた」(1枚目の写真)。「電話したんだが…」。「構わないのよ。心配しないで。さあ、入って」。そして、ナットには、「坊や、自動車旅行は、楽しかった?」と訊く。父は、「グランド・キャニオンが待ちきれなくて」。「すごいものね。最高だった。絶対に忘れない」「地震で 巨大な穴が開いたそうよ」。「それって、コロラド川だよ」とナット(2枚目の写真)。
  
  

エーカー家には、プールもあり、グレタと同年代の少年もいる。子供はみんな水着姿になっているのに、グレタだけは着替えない。エーカー家の息子が、「プールでバスケしないか?」と誘っても(1枚目の写真)、「いいえ、遠慮する」。「可愛い水着があるんだ」。「ありがとう」。その後、プールに入ったナットが寄ってきて、いくら誘ってもぜんぜん相手にならない。最後にナットが、「どうして入らないか知ってる。彼が好きなんだ」(2枚目の写真)と言い、「♪グリスはエヴァンが好き、木の下でキス…」と歌い始めると、「やめなさい」と言ってプールから離れて行ってしまう。この日、彼女がイライラしているのは、実は初潮の前兆だった。その夜、ベッドのシーツを血で汚し蒼白になるグレタ。シーツを洗いに部屋を出たグレタは、エーカー家と主人と、父との会話を耳にはさむ。「彼女〔母〕には、子供がどこにいるか知る権利がある。デマルコスの弁護士が20分以内に電話してくる」〔妻の父が雇った弁護士〕。「最悪だ。エレン、ハンク、歓待をありがとう」。「ここにいた方が、いいんじゃないか」。「そうか? 忠告ありがとう」。「電話がかかってきたら、何て言えばいい?」。「メリー・クリスマス」。そして、早朝だというのに、大急ぎで家族を車に乗せて出発する。
  
  

さんざんのスタートをきった7日目。途中で寄ったスーパーで、タンポンの箱を手に取るが、そこに父が来たので慌てて棚に戻す。何が起きたかを悟る父。何も買えなかったグレタは、スーパーを出たところで姉と口論になる。次のシーンは、展望のいい休憩所で。ナットが姉と話している。「ボローニャ〔ミートソース〕に飽きてこない?」(1枚目の写真)。「大好きなんだもん」。「加工肉なの。その意味知ってる? 豚のいろんな部分が入ってるのよ。脳みそとか、睾丸とか、化学薬品が」。「睾丸って言った」。「しまった」。その間、グレタは別のテーブルに座り、一人で陰鬱なムード。食べ物も喉を通らなくて席を立ったところを、父から「どこに行く」と訊かれる。「散歩に。行っていい?」。後から追って来た父が、四方山話をした後で、「渡すものがある」と言って、タンポンの袋を渡す。グレタは、それを受け取るどころか、「話したくない。放っといて」と突き放す。「でも、誰かと話さないと」。「嫌よ、特にあなたとは」と拒絶して去って行く。その夜、父とグレタと口論しながら運転していると、突然パトカーのサイレン。停車した所に警官が来て、免許証と車両登録証を要求される。そして、急にナットの顔に懐中電灯を向け、「坊や、君の父親かい?」と質問する。父が、「息子のナット…」と言いかけると、「あなたに訊いてません」。「さあ、質問に答えるんだよ」。ナットの返事は意外なものだった。「誘拐なんかされてないよ。冗談なんだ」(2枚目の写真)。実は、父に裏切られたと思った昨日、グレタが「助けて!! 誘拐されてます!!!」と書いた紙を、後部の窓にこっそり貼っておいたのだ。この紙の件は悪戯で済んだが、時速75マイル〔120キロ〕制限の所を91〔145キロ〕で走っていたことから、350ドルの罰金が科せられた〔日本だと15000円の罰金なので2倍以上〕。350ドルの怒りの矛先を、グレタに向ける父。「二度とやらかすんじゃないぞ」。「スピード違反してなかったら、捕まらなかったわ」。「怒らせるな、聞こえたか? 母親と同じに狂ってる」。「今、何て言った?」。父は、いかに妻がヒステリックで、毎日両親に電話をかけ自分との関係を不仲にしたか、そして、妻の祖父が夫婦関係に介入してきたと話して聞かせる。
  
  

8日目の朝、モーテルから、「グランド・キャニオンの日だ!」と叫びながらナットが駐車場に走っていく。入口で渋滞する車の列。ようやくゲートに辿り着いた時、係員はにこやかに「49ドルになります」と話しかけた。「車が25ドル、大人2人で24ドルです」。因みに、この料金は正しくないとIMDbで指摘されている。車なら中に何人乗っていても1台25ドルだけなので、49ドルの請求は間違いだというのだ(大人1人12ドルは、車で来なかった人が対象)。しかし、例え、25ドルでも父には払う気はなかった。それは、父の主張から分かる。「この種の略奪行為は許せないタイプでね。国宝を見に来た納税者に、そんな金を要求して 気分いいのかね?」。「維持管理の人件費は、誰かが払わないといけません」。「そのために、連邦政府に給与の40%を喜んで提供してると思ってたが」。「いいえ、グランド・キャニオンの入園税は 入っていません」。「じゃあ、勝手に大事にしてるがいい」。父は、ゲートの所で車をUターンさせた。あれだけナットが楽しみにしていたのに! 写真は、1枚目が、父の抗議を聞いて不安そうなナット、2枚目が向きが逆だから分かるように、入園せず引き返す車の中で泣いているナット。
  
  

父のこの非常識な行動に、グレタがくってかかる。「パパ、こんなの可哀想よ。約束は約束でしょ」。「じゃあ、代りにウォルナット キャニオンに寄ろう」。「グランド・キャニオンに行くと言ったわ。他のチビ・キャニオンじゃなくて。そっちの方が、安く済むからでしょ?」。「口を閉じてろ」。「どうするつもり? ママにやったみたいに、私達を捨てるの?」。「いい加減にしろ。お前のママは、後から来るんだ」。「なぜ でたらめを言い続けるの? 離婚したくせに! 認めなさいよ! なぜ、ホントのこと言わないの?」(1枚目の写真~先ほどと似ているが、涙が多くなっている)。「お前には もううんざりだ」「お前の母親は お前を捨てた。逆じゃない」「ちょっとは我慢してみせろ、この こしゃくで、小生意気なクソガキめ」「今、お前といるのは誰だ?」「誰が、苦労して3000マイルも連れてきてやった?」「知らせておくことがある。あれは、お前の母親じゃない」。「嘘つき! ママの所に帰りたい!」。「降りろ! 出てけ!」。「ダメだよ」とナットが泣きだす(2枚目の写真)。「降りて、ママの所に走って戻れ。お前の顔なんか見たくもない」。そして、荒野の真ん中で車から追い出す。
  
  

しばらくして、車は戻って来た。グレタと再会できたナットは、ホッした顔を見せる(1枚目の写真)。ウォルナット・キャニオンで、父は本当のことをグレタに告げる。グレタがキャンプに行っている間に母の精神が崩壊し、今は精神病院に入院していると。しかし、母親の父が立てた弁護士との間での揉め事については言及を避けた。こうした曖昧な態度が、ゲレタの不信感を募らせる。この会話の最後に彼女が父にぶつけた言葉は、「もう家族じゃないわ」。「それは不当だ」。「ずっと、万事順調だと言い続けてきたじゃない」。「そう思ってる」。「思わないわ」。こうした断絶とは関係なく、数日後、車は無事ロサンゼルスに到着、目的地であるアルカディアの看板が見えてくる。
  
  

新しい家に到着した一家(1枚目の写真)。中に入って驚いたのは、がらんどうなこと。父が、プール用のエアー・マットに空気を入れながら、「家具を借りるまで、ここで一緒に寝ればいい」と話す。呆然と立ちすくむ3人(2枚目の写真)。「家具を借りるの?」。「ああ」。「いつ?」。「すぐだ」。ナットが、「それ、プール用?」と訊く。「そうなんだが、今は、マットレス代わりに使う。誰か、膨らますの手伝ってくれないか?」。食事の時間になり、小さなテーブルに4人が座る。「明日は、お前達を学校に連れて行く。2人には自転車も」(3枚目の写真)。ナットが、「ママは いつ来るの?」と訊くと、「多分、あと2週間だろう」。「ここで待ってると 言ったよ」。「そうだな、ちゃんと答えなくて悪かった」。
  
  
  

その夜、母からグレタに電話が入る。「今、どこ?」。「家よ」。「大丈夫?」。「ええ」。「病院にいたのよね」。「お前がキャンプにいる間に具合が悪くなって」。「なぜ、みんな黙ってたの?」。「分からない。お父さんは なぜ言わなかったのかしら。会いたかったわ。元気?」。「ええ。ここに 来られる?」。「あなたのこと、とっても愛してるわ」。「そう?」。「とっても、複雑なの」。久しぶりの母親だったが、曖昧な態度にがっかりし、父ばかり責めるべきではないと気付いたグレタ。父に携帯を返しに行くと、静かに肩に手を置く(1枚目の写真)。そして翌日、2人は学校へ。帰りがけに、「気に入った子 いた?」とグレタが訊くと、ナットは「あんまり」。「バカな子は いた?」。「お姉ちゃん以上に?」。「あんた以上によ」。仲のいい姉弟の日常が戻った。母がどうなるかは別として。
  
  

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