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Barricade バリケード

アメリカ・カナダ映画 (2012)

ライアン・グランサム(Ryan Grantham)が、雪の山中の山荘に孤立した一家3人のうちの1人を演じるサイコ・スリラー映画。オカルト映画のように見えるが、実際は、悪性のインフルエンザによる高熱のため、自分のしていることが分からなくなった父親の視点から描写しているため、超常現象が起きているように見えるだけ。最後になって種が明かされると、がっかりする。そのせいか、IMDbは4.5と低い。ホラー映画のサイトの評は、「もし他にすることが何もなければ、土曜の夜に観てもいいでしょう。私は全くお勧めしませんが、一杯飲んだ後で、たまたま観れば、失望しないかもしれません」。すごい評価だ。私の意見。この映画を観る価値は、ひとえにライアン・グランサムにある。ホラー映画では、『インシディアス』のタイ・シンプキンス(Ty Simpkins)のように、可愛い子役がよく似合う。可愛くない子供が怯えても絵にならないから〔『ダークスカイズ』のダコタ・ゴヨ(Dakota Goyo)は悲惨だった〕。そういう意味で、ライアンは実に適任だ。

妻を1年前に事故で亡くしたテレンスが、山荘に2人の子供を連れて行く。そこは、妻が、子供の頃に いつも行っていた山荘で、生前、「一度連れていってやりたい」と言っていたのに応える形で、クリスマス休暇を過すことにしたのだ。まず、山麓にある店で山荘の鍵をもらう。そこは、ハウズという保安官が兼業でやっている店で、テレンスが子供2人を連れて店に入って行くと、ハウズはひどく咳いていた。鍵をもらって、山に入って行くと一面の銀世界。山荘は、屋根裏まである2階建ての大きな建物だった。その夜、父は咳き始める。そして、インフルエンザによる高熱に、常用薬とアルコールの複合作用も加わり譫妄状態になる〔映画だから構わないが、普通の感冒の潜伏期間は5-6日、インフルエンザA型でも稀に最短で12時間なので、それ以下での発症はあり得ない。しかし、ハウズに感染させられるという点が映画の「ミソ」になので、敢えて言及しておく〕。この映画の主人公というか、「視点」は父だ。そして、父は譫妄状態にある。そして、ないものを見て恐怖に怯える。咳と高熱に苦しむ子供たちも父の恐怖に引きずられていく。しかし、映画が追っているのは、あくまで父の目に入った、あるいは、「入ったと思った」ものだけ。だから、実際に何が起きているのかは分からない。この点を強調しておきたい。さて、1日目、山荘に着いた時には夜になっている。小屋の中を点検し(1階には、居間、食堂、台所、2階には寝室が3つ、それに、地下室と屋根裏もある)、クリスマスツリーに点灯し、プレゼントを渡す。しかし、父は咳が始まり、薬を強い酒で飲んでウトウトしていると、窓に一瞬 奇妙な顔が見える。翌日、外で雪合戦をやっていると、子供たちも咳き始めたので、医者に連れて行くことにする。しかし、一旦山荘に戻り、すぐ玄関を開けると、なぜか車が雪にすっぽり埋もれている。これでは、医者に連れて行けない(携帯は圏外、電話は不通)。吹雪がひどくなり、子供たちも怯え始めたので、3人で小屋中を点検すると、洗面所の床に薬が散乱している。しかし、そんなことは誰もしていない。夜、3人が2階の寝室で話し合っていると、玄関を激しく叩く音が聞こえる。父が恐る恐る降りて行くと、そこにはハウズがいた。一瞬ホッとした父だったが、ハウズが背中から引っ張られて空中に飛ばされて消えると、一転恐怖が何倍にもなって押し寄せる。父は、怖がる子供たちを何とか守ろうと、山荘中の窓に板を打ちつける。しかし、異様なことが次々と起こり、オカルトではないが、一種のサイコ・スリラー的な展開となる。そして… 姿を消したジェイクを捜して屋根裏に登った父は、口に布テープを張られ 縛られたハウズを発見する。以上は、あくまで父の視点から見たストーリーだ。あらすじを作成するにあたっては、父の視点ではなく、実際に起きたことを紹介することにした。そこで、写真を、①現実に起きたこと、②父の目にはそう映ったが、実際には、譫妄状態による幻想だったものは「黄枠」、③最後になって、父が真実に気付いた時、実際は何があったかをフィードバック的に示した部分を、実際のタイムラインに沿って挿入したものは「赤枠」と、3種類に分けて表示することにした。ただ、幻想か現実か曖昧な場面もあり、「黄枠」の一部については間違っている可能性もある。

ライアン・グランサムは、多くのTVには出演し、映画の端役も多いが、子役として本格的に映画出演したのは、この作品が第一号。きりりとした顔立ちが特徴だ。サイコものは、怖がっていればいいので演技力は要求されない。


あらすじ

映画の冒頭、夫婦の会話が挿入される。妻は、夫に写真を見せて、「子供の頃、いつも行ってた山荘なの」と話す。「一度連れていってやらないと。雪のクリスマスにでも」。夫は、売れっ子のサイコセラピストで忙しいので、子供たちと まとまった休暇を取る時間がない。それが妻にとって唯一の不満だった。ある日、夫が台所に降りて行くと、妻が床に落ちて割れたガラスを拾っている。「不器用なのね」。「その姿もセクシーだよ」。それを聞いて立ち上がった妻は、床で滑って仰向けに転倒し、その際、後頭部を固い木の角で強打して、そのまま息を引き取る。そして、雪山の映像となり、「1年後」と表示される。1台の車(クライスラーのジープ・コンパス)が山道を走っている。道路の両側には除雪された雪が1メートルほど溜まっている。夕方になって車は1軒の小さなガソリンスタンド 兼 雑貨店の前に着く〔バンクーバー郊外での撮影なので、クリスマスの時期だと、明るさからの推定時刻は17時前くらい〕。ここで山荘の鍵を受け取る約束だ。しかし、店は閉まっているように見える。父は、ドアをノックし「ハロー」と何度も呼ぶ。返事が何もないのに、店主が「何だね?」と言って、いきなり顔を出した。父は、「びっくりしたじゃないか」と文句を言う。セラピストの割に、神経過敏だ〔後で、それが効いてくる〕。店主はハウズ保安官。男はテレンス・シェイドで、「リア・タイラーの夫」と自己紹介する。ハウズは気さくな老人で、リアが子供の頃よく山荘に来たという思い出と、お悔やみを述べた後、店に招じ入れる。父は、子供2人も店に入らせる。ハウズは鍵を渡し、誰も通らないので店は早く閉めていると説明する。その際に、よく咳いているので、父が「咳してるけど、大丈夫かね?」と訊くが、大丈夫とだけ答える。父:「全部準備してもらえた?」。「聞いたことは、全部やっておきました。1週間はたっぷりもちますよ」「冷蔵庫は故障してるので、地下室の冷凍庫に入れてあります」と説明する。一方、弟のジェイクは、棚から色々なスナック菓子を取り出して抱え込んでいる(1枚目の写真)。父が、「もう十分だろ。行くぞ、ジェイク」と呼ぶ。店主は、ジェイクの頭を撫で、姉のシンシアのウサギの縫いぐるみを手に持って名前を訊く。「切り裂きジャック」と答えるが、縫いぐるみにしては、変わった名前だ。ハウズは「すぐに、どか雪が降りますよ」と言う。それを聞いた父は、ジェイクに「雪だるまでも何でもできるな」と笑いかける(2枚目の写真)。先ほど、「頭を撫で」と書いたが、一瞬なので観ていても気付きにくい。父がその事実を思い出したのは、「ハウズから病気をうつされた」と勘付いた時。それが、映画の最後の回想シーンの1つに入っている(3枚目の写真)。そこでは、ハウズがジェイクの頭を何度も撫でている〔髪の毛からの接触感染よりも、咳からの飛沫感染の方が可能性は高いので、あまり意味はないと思うのだが…〕。父は、これこそがジェイクの咳と高熱の原因だと確信した。そして、ハウズに強い怒りをぶつける。
  
  
   

父は、山荘に向かって車を走らせる。途中で、山犬か狼をはねる〔その後の出来事には一切無関係〕。はねた瞬間、父が「くそ〔Shit〕!」と叫ぶが、それに対し、すかさずジェイクが、「パパ、それSH言葉〔shで始まる単語〕だよ」と口をはさむ。その後、父が車外に見に行き、戻って来て「リスだった」と言うと、シンシアが「リスのはずないわ」と反論し、ジェイクが「当たり前じゃん〔No shit〕」と同調する。すると父から、「言葉遣いに気をつけろ」と注意される。「パパだって言った」。「ああ、間違ってた」。「でも、いつも使ってるじゃない。僕も大きくなったら、使っていいの?」。放送禁止用語が家庭内で結構厳しく管理されていることが分かる珍しいシーン。その後、真っ暗になって、車は山荘に到着する〔時間は19時くらい〕。辺りは一面の雪だ。シンシアは、衛星放送のパラボラが見あたらないのが不満。「アニメはどうなるの?」。「橇やスキーができるだろ」。「パパ、やったことあるの?」。「ないけど…」。ジェイク:「じゃあ、TV観てた方がいい」。「せっかく大自然に来たんだぞ」。母の好みと、子供たちの好みはかなり違っているようだ。父が玄関のドアを開け、電気を点ける。何となく不気味だ。シンシア:「入りなさいよ、ジェイク」。ジェイク:「レディー・ファーストだよね、パパ」。結局、3人で一緒に入る。真っ先に目に入ったのは、玄関脇の壁に掛かった山猫の剥製。「すごいや、パパ。これ本物?」(1枚目の写真)。第一印象はあまり良くない。しかし、その後、父が中に入って行き、奥の部屋でクリスマス・ツリーに点灯すると雰囲気はガラリと変わる。ハウズに頼んで 用意しておいてもらったのだ。おまけに、父が車から持ってきた大きなバッグの中には、クリスマス・プレゼントが詰まっている。「家には もっとあるぞ。多過ぎると邪魔だと思ってな」(2枚目の写真)。「開けていい?」。「ダメだ。まず火を起こし、ホット・チョコレートを作らないと」。部屋から出ると、「寝室は2階だ。3つある。好きな部屋、選んでいいぞ。ケンカはなし」。姉が「年長者からどうぞ」と言う。すごく円満な感じだ。そして、3人で1階を見て廻る。最初は食堂。かなり広い。父は、ジェイクに「タキシード持ってきたか?」とふざける。その奥にはキッチンが。冷蔵庫は、ハウズが言ったように故障していて空だ。ジェイクが、「食べ物どうするの?」と心配する。父は、さっそく地下室に行ってみる。ジェイクは途中まで降り、「お腹空いてない」と言い出す。「来いよ、臆病君」。父は、大きな横置きの冷凍庫の前に2人を連れて来ると、「じゃーん、おいしい料理の宝箱だぞ」と言って蓋を開ける。中には、冷凍食品がぎっしり詰まっている。父は、「一家の主には、もち、ホットドッグだ」と言って(3枚目の写真)、それをジェイクに渡し、「レディには、北米産のミニ・ピザだ」とシンシアに渡す。自分には、「マカロニ&チーズ」を取る。そして、「これが好きなのは、子供だけじゃないんだぞ」と おどける。
  
  
  

父は、長い運転で疲れているので、眠くてたまらないが、せっかくなので、暖炉とツリーのある部屋でパジャマ・パーティーをやろうと提言する。映画では、パーティの部分はカットされ、ソファでは2人の子供が眠っている(1枚目の写真)。恐らく深夜0時前後であろう。この時、父は最初の咳をする。ハウズに会ったのが17時とすれば、まだ7時間しか経っていない。最も感染力の高いA型インフルエンザの例外的最短潜伏期間12時間を割っている。だから、これは現実的ではなく、映画ならではの設定といえる。だが、重要なのは、父にインフルエンザならではの急激な発症(高熱)が起きていることだ。その上、常用薬のクロナゼパム(4mg)を、禁忌のアルコールで飲む。クロナゼパムは強い薬でもなく幻覚作用もゼロなのだが、高熱により一種の譫妄状態に陥っていく。父は、姉のポケットに入っていた亡き母の小さな写真を取り出し、それにじっと見入る(2枚目の写真)〔父は、妻の写真を身につけていない。見ると悲しくなるからだ〕。最初に思い出したのは、妻がジェイクと話している場面。ベッドで横になったジェイクが、「イヤな夢を止める方法ある?」と訊くと、母は「寝る前に楽しいこと考えるの」と教える(3枚目の写真)。「試したけど、殺人ピエロが出てきちゃうんだ」。この場面は、父がこれから見るものを暗示しているように思える。こうして、過去を振り返りながらウトウトし、ふと窓を見ると、妻の顔に若干似たような「何者」かが窓の外から覗いている(4枚目の写真)のが一瞬見える。しかし、山荘は、幽霊屋敷でも、呪われた館でもなく、父本人に何かが取り憑いているという設定でもないので、譫妄状態が産み出した幻なのだ。父は、すぐに外に出て見るが、もちろん何もない。そして、気がつくと、朝になっている。
  
  
  
   

父が目覚めると、ジェイクが、「パパ、雪だよ」と声をかける(1枚目の写真)。シンシアは、「ずっと寝てるんだもん」と少し批判がましい。「何時だ? なぜ起こさなかった?」。ジェイク:「起こそうとしたよ」。父はひどく咳く。それにもかかわらず、父は「雪が積もって動けなくなる前に、外に出て雪だるまでも作ろう」と声をかける。2人が服を替えに2階に行くと、父は携帯を見てみるが「圏外〔No Service〕」と表示される。固定電話を取るが、すぐに受話器を置く〔後で、ハウズが、山荘まで来た理由を、「嵐が終わっても、補給の要請がなかったので、何か起きたんじゃないかと思った」と言っている。だから、電話は通じるはずなのに、なぜ、すぐに切ったのか訳がわからない〕。その時、2階から呼ぶ声がする。姉が、屋根裏から変な音がすると怖がるのだが、この場合は、直前にお碗のようなものが床に落ちるところが映されるので、単なる偶然で、父も「想像の産物」だと慰めるが、父自身、恐怖心にシンクロした可能性が高い〔譫妄状態〕。というのは、その直後、今度はジェイクから声がかかり、部屋に行くと、彼が窓から外を見ている。「どうした?」。「あそこに何かいたよ」(2枚目の写真)〔このシーン全体が父の幻想かもしれない。しかし、シンシアの場合は お椀だったので、ジェイクの場合も動物か木の枝のどちらかを見たのであろう〕。「何が見えたんだ? 鳥じゃないのか?」。「もっと大きいよ。茂みの中」。「人間か?」。「分かんない」。父は、「風に吹かれた木の陰だろう」と言うが、心の中では、昨夜見た「顔」が暗い影を落としている。その時、ジェイクが咳く。こちらは、16時間以上経っているので、インフルエンザを発症しても不思議はない。「大丈夫か?」と訊かれ、「雪合戦でシンシアをやっつけてやる〔I'm gonna nail Cynthia〕」と言い出す。「気をつけろ。姉さんは豪腕だぞ」。「ただの女の子さ」。
  
  

かくして、3人は山荘の前で雪合戦を始める(1枚目の写真)。途中でジェイクの姿が消え、父は心配するが、近くにあった道具小屋を見に行っただけだった。小屋の中を見た父は、「何かを直したくなったら、ここに来れば何でも揃ってる」と感心するが、ジェイクに「でも、修理の仕方、知らないじゃない」と言われてしまう。「誰が言った?」。姉:「ママよ。いつも言ってたわ、パパは 頭はいいけど、腕はからきしだって」。その先、シンシアが窓の外に気を取られ、父も見に行くと、木の間を黒い人影が一瞬走るように見えた。3人とも窓の外を見ていたが、映像は、父が見たと思ったもので、実際には、3人とも何も見なかったのであろう。父が、「お前が見たのと同じか?」とジェイクに訊いても、ジェイクは、何も答えずに、ただひどく咳いただけ。おまけに、シンシアまで咳き始めた。そこで、父は、「計画変更だ」と宣言する(2枚目の写真)。「みんなダウンしそうだ。こうしてはどうかな。ハウズさんを探して、お医者さんを紹介してもらう」。2人とも頷く。
  
  

3人は、小屋を出ると、咳をしながら、山荘に走って戻る(1枚目の写真)。写真で注目すべきは、車がはっきりと見えている点だ。中に入ると、姉は、すぐに「おしっこ」と言って2階に走って行く。ジェイクも後を追う。これからハウズに会いに行くので急いでいるのだ。「急げよ!」。そう言うと、父はドアを背にして床にへたり込む。映像が歪む。これは、父が譫妄状態になったことを意味する。幸せだった頃の妻の夢を加えても、その間わずか30秒。ハッと気がついた父が、「どうした? 行くぞ! エンジンをかけてくる」と2階に向かって叫び、玄関を開けて外に出る。すると、車は雪の中にすっぽり埋まっていた。本当は長時間 気を失っていたのに、そのことには気付いていないので、あまりのことに父は〔観客も〕驚愕する。「いったい何が起きたんだ?」。そう言うと、玄関の脇に立てかけてあった雪掻き用のシャベルをつかむと、運転席の部分だけ除雪を始める。かなりの時間を費やし、ようやくドアを開け、車に入ることができた。しかし、車全体が雪の中に埋もれた状態でエンジンをかけても何も起きない。ハンドルを揺すって怒鳴るのも、熱に浮かされたためか。気がつくと、玄関の前に子供たちが立ってこちらを見ている。父は、気を取り直して車から出ると、「なあ、お前たち… 見た通り、車がずっぽりだ(2枚目の写真、1枚目の写真と対比されたい)。「これじゃあ、中に入って、火にあたってスープでも飲むしかないな」(3枚目の写真)。シンシア:「パパ、私 怖い。なぜママは、こんな所に連れてきたがったの?」。「楽しいと思ったのさ」。ジェイク:「楽しくないよ、パパ」。「だが、楽しまないと。さあ、中に入ろう」。それにしても、疑問なのは、これだけ雪が積もるには数時間はかかる。その間、子供たちは何をしていたのだろう? シンシアもジェイクも、先ほど小屋にいた時と同じ服装だ。トイレにいっただけなので、玄関まで降りてくれば 譫妄状態の父に気付くハズ。なら、父を起こすとか何かしてもいいのではないか? もし、それができなほど急に病状が悪化したのなら、山荘の外に平気で立って父を見ていたり、その後の会話など 無理ではないのか? この映画の中で一番ひっかかる部分だ。
  
  
  

山荘に入ると、急にジェイクが咳き込み始める。姉は、「歩いて行けるの? お医者さんによ」と疑問を投げかける。「ジェイク、かなり具合 悪そうなの」(1枚目の写真)。父は、こんな雪の中を無理して行っても、病状が悪化するだけだと反対する。その代わり、気分を変えるため、もう一度、ゆっくり山荘の中を見て歩くことを提案する。ジェイクは、「2階のベッドの下は? チェックしてくれる?」と、急に極端なことを言い出す。ここも、急な発言の真意がよく分からない。なぜ、ベッドの下を怖がるのか? ジェイクも、熱に犯され、「殺人ピエロ」でもいると心配したのだろうか? 父:「ベッドの下なら大丈夫、心配ない」。ジェイク:「チェックするよね?」。「するとも」。父は、山荘中のカーテンを全部閉めていく。外から見られたくないからか? ジェイクの寝室に来ると、ジェイクは「ベッドの下もだよ」と念を押す。姉は、「ベッドの下に怪物なんか隠れてないわよ。そんなバカ話は迷信〔old wives' tale〕なんだから」と言い、父は、「怪物は、どこにも隠れていない。そんなものは存在しないんだ」と言いつつ、ちゃんとベッドの下を確認し、「ホントだぞ」とジェイクのお腹を指で突く(2枚目の写真)。チェックがすべて済むと、父は、「そろそろ昼食の時間だな。どう思う? パパはお腹が空いた? お前たちは?」と訊く。シンシアは、「昼食? もう夜よ、パパ。具合でも悪いの?」と訊き、ジェイクは不安げな顔をする(3枚目の写真)。父の起床時間が遅く、しかも、猛吹雪のあいだ意識がなかったので、とっくに夜になっていたのだ。
  
  
  

父は、「もちろんだ。だけど、ピーナッツバターとジャムだっていいんだぞ。昼食も夕食も同じだ」と誤魔化かす。シンシアは、「洗面所もチェックできる?」と言い出し、一行はすぐに洗面所に向かう。しかし、ドアを開けると、床には薬瓶が散乱している(1枚目の写真)。父:「一体どうなってる?」「パパの薬、触ったか?」。シンシア:「いいえ」。父:「ジェイク? お前なのか? 何か捜してたのか?」〔自分でなく、シンシアでなければ、ジェイクしかいないという論理〕しかし、実際にやったのは父だった。映画の終盤の「過去を思い出す部分」の中に、最初の夜、父がクロナゼパムの薬瓶を必死に探すシーンがある。譫妄状態なので、違った瓶はすべて床に捨てている。だから、床一面に散乱していたのだ。姉は、「違うわよ。この子、OCD〔強迫性障害〕でしょ。後始末しないはずない」と擁護し、ジェイクも「僕じゃない」と否定する(3枚目の写真)。その時、照明が一瞬消えて、また点く。超常現象ではないので、猛吹雪の影響か?
  
   
  

子供たちの機嫌を直そうと、父は、ホット・チョコレート(?)を3人分作る。そして、自分の分を飲みながら、「ママほどじゃないが、悪くないな」と言う。ジェイクは「おいしいよ、パパ、ホント」、シンシアも「そうよ、パパ。ホント おいしいわ。ママよりもイイくらい」と褒める。褒められてばかりではいけないので、父は、「お母さんには、下手なものが1つもなかった」と持ち上げる。「だろ?」。ジェイク:「歌えなかったよ」。「そうだが、パパも歌えない」。そして、「さてと。戸締まりは完璧だ。すべてチェックした。もう安心できるぞ〔We're safe and sound〕」と終息宣言をする。ところが、ジェイクは、「僕たち 襲われる?」と爆弾発言をする(1枚目の写真)。恐らく、①父の強迫的な安全思考に懸念を抱いたのと、②「ベッドの下」発言の再燃と、③ジェイク自身の高熱による精神状態の不安定化の何れかによるものであろう。この発言に、父は過剰反応する。「何が言いたい? 答えろ、ジェイク。なぜ、そんなこと言った?」と怒鳴るように訊く。「分かんない」。「何を怖がってる?」。ここで、シンシアが助け舟。「どうしてそんな変な態度を取るの?」。ここでも譫妄状態は続いているのだ。我に返った父は、ジェイクに謝り、「実はパパもどうなってるのか分からない」と断った上で、「何も襲ってこない、いいな」と釘を刺すように言う。その瞬間、ドンというすごい音が響き渡る(2枚目の写真)。これは、多分に誇張された音響で〔父の耳には、そう聞こえた〕、実際は、その後に何度も聞こえる、玄関のドアを叩く音だった。それでも、猛吹雪の夜中に誰かが来るとは思えないので、子供たちは怖がる。父が見に行こうとすると、ジェイクは「パパ行かないで」と必死に止める。父は、置いてあった電気スタンドの笠を外し、逆さまに持つと、「隠れてもダメだ。ここにいるってバレてる。それに警察に電話できない」「多分、何でもないだろう。だが、パパが戻ってくるまで ベッドの下に隠れてろ」「音を立てるな。絶対だぞ。じゃあ潜れ」(3枚目の写真)と命令して部屋を出て行く。
  
  
  

絶え間なく叩かれる玄関のドアに向かって、父は恐る恐る階段を降りて行く。ドアの前に着いても、怖くて開けられない。そのうちに、外から鍵が解除されドアが開く。現れたのはハウズだった。スタンドの台を振りかざした父は、思わず、階段に座り込む。ハウズは、「スペアキーを使って悪かった。だが、返事がなかったし…」。父は、頭を抱える。ハウズ:「どうかしたのか?」。父は、自分のバカさ加減に、思わず笑ってしまう。そして、「会えて良かった」と笑顔で言う(1枚目の写真)。ハウズも、咳ながら笑顔になる。その時、変な音がしたかと思うと、ハウズは何かに背中から引っ張られ、叫び声とともに雪の中へと消えていった。新たな展開に戦々恐々となり、父は慌てて玄関を閉める。外からは、ハウズの叫び声が聞こえる。実際に起きたことは全く違っていた。父は、「会えて良かった」と行った後に、ハウズはひどく咳き込む。それを見た父は、自分達の具合が急に悪くなったのは、ハウズに悪性の風邪をうつされたせいだと気付く。「あんたのせいだ。病気だと知ってたな。あの時、訊いただろ。病気じゃないかって! 何でもないって言いやがった!!」(2枚目の写真)。話し方が、またエキセントリックになっていく。「この人でなし! 貴様が、子供たちを撫でくり回したんだ!!」。ここで、挿入されるのが、最初に紹介した赤枠の写真。そして、さらに、「この大バカ野郎!!」と言うと、ハウズを後ろに突き飛ばす。ハウズは何かに引っ張られたのでなく、父が突き飛ばしたのだ。その後も、玄関の外の雪の上で、父はハウズに馬乗りになって殴りかかる。それが終わると、今度は、ハウズを山荘の中に引っ張り込み、金槌を振り上げて脅し、階段を登らせ、屋根裏まで行かせる。その時の音が、子供たちに聞こえてくる。結果として、ベッの下に隠れた2人も、聞こえて来る叫び声や音に恐れ慄いている(3枚目の写真)。観客は、化け物が本当にいて、山荘の外から一家を窺っていると信じ込まされる。階段の上から、2人が心配そうに父に尋ねる。ジェイク:「パパ?」。シンシア:「何が起きてるの?」。「全く分からん」。ジェイク:「でも、パパなんだから、分かってないと。僕らを助けてくれなきゃ」。父は、階段の上で待っている2人と合流する。映像では、ハウズが消えた直後なのだが、実際は、ハウズを屋根裏に監禁した後なので、かなりの時間が経過したハズだ。だから、子供たちも「ベッドの下に隠れてろ」という命令は解除されたと思って寝室から出てきていたのだろう。この直後、山荘全体が停電する〔積雪(?)による過電流により分電盤のブレーカーが落ちた〕。子供たちは父に抱きつき怯えるが、これは現実であろう。3人は、地下室の分電盤を見に行くが、そこで、ブレーカーをONにした途端、電気が回復する。しかし、その際に見えた「冷凍庫の蓋が開き、ネズミが群がっている」シーンは、あり得ないので〔①冷凍庫の蓋は固い、②ネズミは冷凍食品など食べない〕、幻覚としか思えない。ただし、その場には、2人の子供もいて、ネズミを見て怖がっているので、分析不能の迷走シーン〔観客を怖がらせるために挿入した意味のないシーン〕とみなし、写真は使用しなかった。
  
   
  

3人がキッチンにいると、屋根の方から異音が聞こえる。唸り声のように聞こえるのは父が聞いた幻聴であろう。ただ、ジェイクが「中に入ってくるかな?」と心配する(1枚目の写真)ので、何かが聞こえたには違いない。口に布テープを貼られ、縛られたハウズが暴れた音だろうか? いずれにせよ、このジェイクの不安は 重要な転機となる。譫妄状態にある父は、外に怪物がいてハウズを放り投げたと信じ込んでいるため、山荘の中に入れないことが最優先事項だと考え、そのため、わざわざ屋外の小屋まで五寸釘を取りに行く〔外にモンスターがいると信じているのに、山荘を出るのは矛盾している〕。山荘に戻って1人になった父には、怪物の唸る声が聞こえ、くらくらとして床にくずおれる。その姿を見て、子供たちが駆け寄る〔怪獣の声は聞こえていなくても、父親が倒れれば心配する〕。父は、元気を取り戻すと、地下室から板切れをかき集め、玄関のドアや、各部屋の窓に板を打ちつけ、「怪物」が中に入れないようにする(2枚目の写真)。それを見ている子供たちの顔に浮かぶ表情(3枚目の写真)は、父の過剰反応に対する戸惑いか?
  
  
  

3人は、身を守るため、一部屋に集まり、ジェイクとシンシアが1つのベッドに寝て、もう1つのベッドには父が腰を降ろして寝ずの番をすることに〔このシーンは、現実か幻覚か不明確〕。しかし、ウトウトし始めると(1枚目の写真)、また、映像が乱れ〔幻覚時の特徴〕、次に、父が目を覚ますと、隣のベッドには誰もいない。父は、ベッドの下まで覗く(2枚目の写真)。床の上にはシンシアの縫いぐるみが落ちている。下で音がするので、父がキッチンに下りて行くと、汚れ物が散乱し、床には背中を向けたシンシアが うつむいて床に座っている。父が声を掛けても反応がない。父が回りこんで顔を見ると、それは化け物だった〔100%幻覚〕。その時、2階からジェイクの叫び声が聞こえる。あちこち捜すと、作り付けの棚の天井にある屋根裏への入口が開いている。映画は、ここから、屋根裏側から見下ろした映像に変わる。父が、開口部を下から見上げている。すると、いきなり2本の手が伸びてきて、開口部の縁を握る(3枚目の写真)。ジェイクが悲鳴を上げ、手が引っ張られたように消える。父は「ジェイク!」と叫び、無理して這い上がるが、廊下の上に出た辺りで底が抜けて廊下に転落する。すると、山荘の外から2人の呼ぶ声が聞こえる。小屋まで行くと、窓から誰かが雪を掘っている。そこに駆けつけると、十字架〔墓標〕が立っている。父は、2人が殺されて埋められたと思い必死になって掘り返す。中から出てきたものはシンシアの縫いぐるみだった。実は、それは、シンシアから頼まれて父が埋めたもので、十字架には、「ここに、良きウサギ、切り裂きジャック眠る」と書いてあった。
  
   
   

父は、山荘に戻り、子供たちを捜す。すると、子供たちは、別の部屋に2人で寝ていた〔理由は不明。最初から、ここにいたのかも〕。ジェイクは上半身裸で、「熱いよ」と訴える(1枚目の写真)。高熱のせいだ。シンシアも、「私も」と言う。父のポケットにはハウズのトラックのキーが入っている。「これで、でかけよう」。父は、ジェイクに暖かい服を着せると、トラックまで運ぶ(2枚目の写真)。シンシアはいつの間にか乗っている。父は吹雪の中、トラックを走らせるが、雪道でスリップして雪の壁にぶつかって進めなくなる。これが幻想と判断したのは、後で、ハウズが、「嵐がやんだので…助けに来た」「嵐は数日前に終ってる」という発言から、吹雪の中での運転は現実ではないと判断したため父は、2人が寝ているベッドの前にいる。声をかけるが、2人とも答えない〔恐らく、父が、トラックで運んでいる幻想を見ている間に病状が悪化したのであろう〕。ここで、妻の事故死の場面がフラッシュバックの形で挿入される。父が、悲しい思い出から覚めると、ベッドには誰もいない。フラフラと立って咳のする浴室のドアを開けると、上半身裸のジェイクが、「助けて、パパ」と言い、自分からバスタブの中に入って行く。バウタブの中には氷が一面に浮いている(3枚目の写真)。ジェイクは完全に水没してしまったので、父が助けようとすると、そこには誰もいず、逆に、中から大きな手が出てきて、父を引っ張り込もうとする。父が、必死になって逃れて浴室のドアを閉めると、ジェイクの寝室のドアが開き、ジェイクが立っていた(4枚目の写真)。父が、部屋に入ろうとすると、バタンとドアが閉まり、入れない。無理に開けると、中には誰もいない。すべてが父の幻覚だ。実際に起きたことは、ジェイクの病状の悪化と高熱を心配した父は(5枚目の写真)、熱を何とか下げようと必死になり、地下室の冷凍庫から大量のロックアイスを運んでバスタブに投入し、そこにジェイクを入れたのだ。寒さに震えるジェイク(6枚目の写真)。こんなことをしていいかどうかは知らないが、幸いに、ジェイクの高熱は下がった。
  
   
   
   
   
   

中断した、前のシーンの続き。ジェイクが部屋にいなかったので、父は屋根裏に上がってみる。人の気配がするので奥に行くと、そこには口に布テープを貼られたハウズがいた(1枚目の写真、矢印は布テープ)。ハウズは、テープを外されると、「嵐が終わっても、補給の要請がなかったので、何か起きたんじゃないかと思った」と説明する。「嵐が終わったって?」〔父は、まだ吹雪だと思っている。だから、この時点での映像は暗い〕。「嵐は数日前に終わってる」。「違う! 間違いだ! もう何日も足止めを食ってる。猛吹雪が…」。そこまで言うと、急に陽が射してくる(2枚目の写真)〔急に陽が射したのではなく、陽が射している現実を父が認識した〕。ここで、ようやく父の譫妄状態は終わりを告げ、現実に引き戻される。空は快晴。しかし、その次の映像は100%の編集ミス(3枚目の写真)。矢印の車を見ると、車の周囲に雪はない。ところが、あらすじの最後の写真(3人が山荘を出ていく時の写真)を見ると、車は運転席のドア以外、完全に雪に埋まっている。
  
  
  

自分が正気でなかったことに気付いた父は、子供たちのことが心配になり、急いで下に降りる〔ハウズは放置〕。廊下に出ると、そこには屋根裏から落ちた後が残っている〔ジェイクを見たと思って屋根裏に上がり、そこから落ちたこと自体は事実だった〕。最後に2人を見たと思った部屋に行くと、以前の記憶のように、2人は寝ている。身動き一つしないのを見た父は、自分の記憶が飛んでいる間に 何かが起こって2人とも死んだのではないかと思い込み、ベッドに腰を降ろすと頭を抱え込む(1枚目の写真)。父は、「子供の頃、いつも行ってた山荘なの」という妻の言葉を思い出す。だから連れてきたのだ。そこで、妻に向かって、「ごめん。助けてやれなかった」と謝る。すると、「だけど、助けたじゃない」という声が聞こえ、そこからフラッシュバックが始まる。①ジェイクがひどく咳き始めた場面(以前の写真)、②「計画変更だ」と言った場面(以前の写真)、③高熱のジェイクを心配そうに見る場面(以前の赤枠写真)、④ジェイクを氷風呂に入れる場面(以前の赤枠写真)、⑤山荘に着いた夜、洗面所で薬を探す場面(以前の赤枠写真)、⑥シンシアから、「切り裂きジャックは、ママと一緒に行っちゃったみたい。だから、埋葬して欲しいの」と頼まれ、雪の中に埋めるシーン〔もう嵐は終わっているので、雪が降っているのはおかしい〕。⑦ハウズが来た時、実際に起きた場面(以前の赤枠写真)、その中には、映画の冒頭、ハウズの店でジェイクが頭を撫でられる場面(以前の赤枠写真)も含まれる、⑧ハウズを屋根裏に行かせ、「悪いが、あんたは子供たちを殺した」と言って 口に布テープを貼り、屋根裏への扉に鍵をかけた場面が、連続して紹介される。フラッシュバックは、シンシアの「パパ?」という声で終わる。父は 死んだと思ったが、実際には、病気から回復して目を覚ましただけだ。2人とも平熱になっている。「大丈夫なのか?」。「私なら、大丈夫よ」。「僕も」(2枚目の写真)。父は、心からホッとして2人を抱き締める。
  
  
  
その時、先日のように玄関のドアがドンドンと叩かれ、破られる音がする。犬の吠える声も聞こえる。何事かと、ベッドで慄く3人。階段を駆け上がる音が聞こえ、寝室のドアが勢いよく開くと、それは警察犬を連れた救助隊員だった(1枚目の写真)。「シェイドさん? 何度もノックしたのですが。仕方なく、ドアを破りました」。「構いませんよ」(2枚目の写真)。譫妄状態が終わっても、怖がりのダメ父ぶりは変わっていない。
  
  

屋根裏からは、ハウズが救出される。隊員が「3日間、捜索しました」と言っているので、父の譫妄状態は、4~5日続いたことになる。特に、ハウズがドンドンと玄関を叩いてから、それほど時間が経ったようには見えなかったが、3日も屋根裏に閉じ込められていたとはハウズも大変だったに違いない。しかし、救助される時、ハウズは、「彼は、熱で頭がおかしくなったんだと思う」と鷹揚なところを見せる(1枚目の写真)。3人は外出できるよう、暖かい服を着る(2枚目の写真)。そして、玄関を出ると、雪に埋もれた車の前を通って(3枚目の写真)、救急車に乗り込む。
  
  
  
  
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