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Camp キャンプ

アメリカ映画 (2013)

マイルズ・エリオット(Miles Elliot)が、両親から虐待を受けて半孤児となった少年を演じるドラマ。マイルズは、Royal Family Kids' Camps(RFKC)という慈善団体(1985年設立)により全米で実施されているサマーキャンプに参加する。このキャンプは虐待されたり捨てられた6-12歳の少年少女を対象としたもので、40の州に199ヶ所(2016年)のキャンプ場を設け、子供2人につき1人のカウンセラーとボランティアが付き、子供の数より大人の数の多い。水泳、釣り、カヌー、木工、全員への誕生日プレゼントなど様々な行事を通して傷ついた子供たちにこれまで味わえなかった楽しみを経験させ、心を開かせ、場合により孤児院から里親への仲介役も果たす。撮影の舞台となったのは、カリフォルニア州のHume Lake Christian Camps。ここはRFKCのキャンプではなく、カウンセラーも子供1人に1人、キャンプの期間も5日から1週間に変わっているが、雰囲気は継承されているし、DVDにはRFKCのことが紹介されている。アメリカの銃社会や、人種や宗教への偏見ばかり目立っているが、こうした側面では先進的だと思わせる感動的な内容の映画だ。

男遊びとコカインびたりで育児放棄状態の母と、児童暴行で接近禁止命令の出ている父を両親に持つイライ。父に棒で叩かれて救急車で運ばれたことと、その後母がコカインの過剰摂取で死亡したことから児童養護施設へ。施設では、RFKCのキャンプ要請を出したが、申請時期がぎりぎりでキャンセル寸前。幸い、新たなカウンセラーの希望者がみつかり、イライのキャンプ行きが決まる。しかし、このカウンセラー希望者のケンは、若いのにポルシェを乗り回すやり手、かつ、一匹狼的なファイナンシャルアドバイザー。部下(といっても1人しかいない)の進言で、ある資産家の老婦人の現在のアドバイザー(資金運用に失敗中)を蹴落として自分が成り代わろうと、婦人の大の関心事であるRFKCのキャンプのカウンセラーを引き受けたと自分を売り込む。そんな不純な動機でカウンセラーになった男が、イライを担当する。そんな彼の不真面目ぶりは、イライたちを乗せたバスが着いた時から発揮される。他のカウンセラーが自分の担当する子供に、名前で呼びかけ暖かく迎えたのに、ケンは名前でなく「キッド」と呼び、ふざけるように笑いかけただけ。その後も、携帯ビジネスに熱中したり、カウンセラーとしてのイロハも守らなかったりで、イライからは完全に嫌われる。イライとケンのイザコザは映画の3分の2まで続く。その間のイライの怒ったり呆れたり馬鹿にしたりすり表情が面白い。ふとしたことがきっかけで、ケンは、イライの悲惨な状態を知るとともに、自分のやってきたことを少しずつ反省するようになる。最後には、イライにとって(ケンにとっても)、キャンプでの1週間はかけがえのないものとなった。エピローグは、少しできすぎで、ない方がよかったかも。

マイルズ・エリオットは、プラチナブロンドに近い金髪のきれいな少年。ただ、口が大きく、いろんなファニーフェイスができる。虐待を受けたせいで怒りっぽい性格という設定なので、かなりオーバーな顔でカウンセラーを攻撃する。これは、表情の多様性ではなく、表面的なものだが、見ていて面白い。主演映画はこれ1本だけだが、この映画でヤング・アーティスト・アワードの主演若手男優賞を受賞している。


あらすじ

イライが、倉庫のブロック壁に立てかけてあったガラスに石ぶつけて割って遊んでいると、警備員に見つかる。慌てて逃げるが砂利の上に転んで腕をひどく擦りむいてしまう。そのまま走って家まで行く。中に入ってTVを見ている母のそばに寄っていく。傷の手当をして欲しかったのだ。「何なの?」。「腕をケガした」。「部屋にいろと言ったじゃないの」。「だけど、朝からずっと…」。「お黙り! 邪魔するんじゃない」。仕方なく、キッチンに行って傷を洗う。隣の部屋から母が、「言ったことを ちっとも守らない」と文句を言う声が聞こえてくる。ひどい母親だ。イライは、キッチンペーパーで痛いのを我慢して汚れを取り、上から新しいペーパーを載せる。そして、自分の部屋に行って傷口を手で押さえる(1枚目の写真)。彼の部屋には家具は何一つなく、マットレスがあるだけ。こんな所に、一日中いろというのは、監禁虐待に近い。家の外に高級車(ジャガーの最高級タイプ)が停まり、クラクションが鳴る。母が、「でかけてくるわ」と声をかける。「ねえ、ママ」。「何?」。「今日、何の日か知ってる?」〔実は、イライの誕生日〕。「今、ゲームやってる時間はないの」。母は、キッチンの棚の缶からお札を10数枚取り出し、胸に入れている〔コカインを買うため〕。「でもママ、ホントに特別な…」。「何よ、これ! こんなに血で汚しちゃって!」。この叱咤は、残っていたイライの血で、大事な服が汚れてしまったため。「そんなつもりじゃ…」と言いかけたイライの襟をつかむと、母は、「部屋にいろって、何度言ったら分かるの?」と責め(2枚目の写真)、「そこから動くんじゃないよ!」と言って、イライを部屋の中に突き飛ばしてドアを閉める。車に乗ってどこかに行ってしまった母。悲しみに沈むイライ(3枚目の写真)。
  
  
  

イライは何か食べようと冷蔵庫を開けるが、入っていたのは酒ビン1本だけ。棚の中にも食べ物はない。仕方なく、何か買って来ようと、お金の入っている棚を開けて缶を取り出す(1枚目の写真)。残っているお金を手に持ったところで、ドアが開く音がする。「ママ?」と言って、急いで棚を閉める。イスから降りると、父が入って来た。最初は上機嫌だ。ニコニコ笑いながら、「よお、坊主、どうしてた?」と声をかける。「いいよ」。「ママはどこだ?」。「外」。「外? どこに行ったんだ?」。肩をすくめるイライ。父は、「ふしだら女は、俺に借りがあるな」と言ってチッキンに入っていく。冷蔵庫を開け、空なので、「この酒、お前のじゃないよな?」と冗談。「ねえ、パパ、今日、何の日か知ってる?」。「知ってるさ」。嬉しそうに返事を待つイライ。「金曜だ」。イライは、がっかり。父は、「ママが、どこに金を隠してるかは分かってる」と言って、棚を開ける。缶の中は空だ。父の表情が一変する。「どこへやった?」。「知らないよ」。「あいつ、どこに隠した?」。「僕…」。父がイライの頬を張り飛ばす。「俺をなめるんじゃない、金はどこだ?」。ポケットから、さっき取った一部を出して「ほら、これ」と渡す。「嘘付くんじゃない。残りはどこだ?」。「それで全部だよ!」。「全部だと!」。「ホント」。「ホントだと?」。父は、置いてあった長箒を膝で2つに折ると、柄を振り上げて(2枚目の写真)…。残酷なシーンはカットされ、次は、パトカーと救急車が家の前に着き、母が頭を抱えているシーン(3枚目の写真)。恐らく、父がイライの体を箒の柄でメッタ打ちにして、ポケットに残っていたお金を巻き上げて出て行き、後から帰った母が警察に通報したのであろう。母は警官に「いつもは、こんなに長く一人にしないわ。こんなこと初めて。友達のパーティーで…」と弁解している。一方、救急車の横では、別の警官が看護士に、「プロビデンスのERに、ソーシャルワーカーが会いに行く」と伝えている〔プロビデンスはロードアイランド州最大の都市〕。「その子の容態は?」。「とてもタフそうだから、大丈夫だと思うわ。2月24日。今日が誕生日ね」。書類を書きながら、「誕生日、おめでとう、坊や」と言う警官。このシーンの最後は、母:「あの子、病院には行けないわ。保険に入ってない」。
  
  
  

ファイナンシャルアドバイザーでめきめき業績を上げているやり手のケンが秘書兼部下の女性から、今夜の晩餐パーティについて説明を受けている。「ターゲットは誰だ?」。「マーガレット・サマーフィールド」。「油田の女相続人か」。「彼女の有価証券は昨年20%下落したわ。ラヴァリーにとってはきつい結果よ」。「ラヴァリー? ホントか? 奴は恐竜だ。恐竜に起きたこと知ってるだろ。終わったんだ」。「絶滅したんでしょ」。「違う、終わったんだ」。そして、「弱点は?」と訊く。「子供たち」。そして、老夫人の隣の “秘書が苦労して確保した” 席に座る。さっそく、商談に入ろうとしたボスをたしなめるように、秘書は夫人に「今夜のチャリティーでのご関心は何ですの?」と尋ねる。「私の教会のセント・アンドリューズは、里子に対するサマーキャンプのスポンサーなのよ」と答える。秘書は、如何にもわざとらしく、「待って、ケン、それってあなたがボランティアしてるキャンプじゃない?」と発言。それを聞いた夫人は、「あなた、キャンプのカウンセラーなさるの?」と興味深げに尋ねる。「ええ、子供が好きですから。キャンプは今年が始めてですが」。夫人は、「この職業に就いておられ方で、お金よりもっと大切なことがあると悟っている方に、お会いできるとは素晴らしいことね」と褒める(1枚目の写真)。一方、今年のパイン・レイクのキャンプ〔架空の名称〕のディレクターを務めるタミーのパソコンに、一通のメールが入る。キャンプの申し込み期限は過ぎているが、2週間前に母親をヘロインの過剰摂取で亡くした少年の気分転換のため、参加を認めて欲しいという内容だ。それに対し、タミーは「なぜ、こんなことをさせるの」の言いつつ、「今、カウンセラーを見つけるには遅過ぎます」と返信しようとした時(2枚目の写真)、電話がかかってくる。それは、例の秘書から、今年のサマーキャンプ用の男性カウンセラーを1人探していると聞いたが、私のボスがやりますという内容だった(3枚目の写真)。タミー:「荒っぽい子供たちの中で働くことになりますよ」。秘書:「彼は子供好きなんです。とっても」。
  
  
  

パイン・レイクのキャンプに、カウンセラーを乗せたバスが到着する。バスから降り立ったタミーが、ベテランのサムに、「また、ここに戻れて良かったわね」と話しかける。その時、目の前に、ポルシェ911カレラ4にもたれて携帯をかけている男に気付く(1枚目の写真)。電話は秘書に対するもので、「いいか、彼女は、俺がこのキャンプ、彼女のキャンプに来てることを知る必要がある。そうじゃなかったら、すべてが無駄になる」と指示している。寄ってきたタミーは、ケンにマニュアルは読まなかったのかと訊く。「ざっと」。「だから、携帯やマイカーの項は見落としたのね」。ケンはそもそも、そんなもの読んでもいないし、読んでいたとしても、バスなんかに乗るのは真っ平だった。タミーは、最もベテランの元陸軍軍曹サムに「イロハを教えてあげて(Show him the ropes)」と一任する。ケンが連れられて行った先は、バンガロー。2段ベッドが置いてある。下の段にカウンセラー、上の段に担当の子供が寝る仕組みだ。「ここじゃ、最高のバンガローだぞ」。お粗末さに辟易しながら、ケンは「最高?」と訊く。「浴室のすぐ近くにある。湯沸かし器が底をつくまえに、熱いシャワーを浴びれるだろ」(2枚目の写真)。そして、こんなことでビビッているケンを脅してやろうと、「密閉度も高い。バンガローの中に入って来て欲しくないだろ、タランチュラとか蛇とかネズミに?」。これは冗談。ケンは、「なあ、この子供達って、マトモじゃないんだろ?」とうっかり訊いてしまい、サムに「君は、里親でも専門医でも先生でない。子供達が1週間楽しめるよう助けるのが役目なんだ」と諭される〔効き目ゼロ〕。そんな時、携帯がかかってくると、サムの話を遮って携帯に出る。自分勝手で非礼だ。その後、キャンプ内を見せてもらう。プール際で日光浴する水着の女性カウンセラーを見て、「大騒ぎの前だから休んでおかないと」と言うサム。“Little R and R before the craziness begins”という表現は、“R and R”が“rest and relaxation”だと知ってないと分かりにくい。昼食の時間、食堂で、あまりの不味さに料理をつつくだけのケン。タミーによる包括説明が始まる。「子供達は、辛い人生を送ってきました。キャンプは、子供達と希望を分かち合えるチャンスです」と趣旨説明した後、“子供達に盗もうという誘惑を与える” という理由で、携帯やスマートフォンの所持を禁止する。そして、最後に、担当になる子供の名前と癖を書いた紙を個々に配布する。しかし、かかってきた携帯に気を取られたケンは、その大切な紙も残したまま外に出て行く。紙の表には「イライ」、裏には「最近の母親の死から立ち直っていない。噛みつく癖あり」と書いてある。外の芝生の上で、カウンセラー達が手をつないで輪を作ろうとしている。ケンは一人電話に夢中(3枚目の写真)。同僚が、「後で書け直せ」と呼びに来てようやく輪に加わる。
  
  
  

こうしてカウンセラー達が結束を固めている所に、子供達を乗せたバスが到着する。歓声を上げ、手を振ったり 拍手したり、名前を書いた紙を掲げたりして歓迎するカウンセラー達(1枚目の写真)。ケン(矢印)だけは、何もせずボーッと立っている。バスから子供達が順番に降りて来ると、担当のカウンセラーが暖かく、あるいは、親しげに歓迎する。イライがバスを降り立ったのは、ほとんど最後になってから。カウンセラーも数人しか残っていない。誰も迎えに行かないので、水泳コーチが寄って行き、「何て名前だい?」と訊き、「おい、ケン」と呼ぶ。ケンはおもむろに近付いてくると、作り笑いをして、「よお、キッド、元気か兄弟(Yo, kid! What's up, my man?)」とハイタッチをしようとする(2枚目の写真)。イライは、「ふざけんな(Screw you)」と怒って、荷物を放り出し(3枚目の写真)、森に向かって走り去って行く。
  
  
  

「あれ、いったい何だ?」と言ったきり、何もしないケン、同僚は、担当の責任だから、走って追いかけろと指示。しぶしぶ後を追いかけるケン。しかし、走っていくイライに対して叫ぶ言葉は、相変わらず「おい、キッド!」。ケンが息も絶え絶えで辿り着いた時、イライは大きな岩の上に座っていた(1枚目の写真)。「おい、そこから降りて来い!」の声に、一応は降りて来たイライ。ケンは、「おい、キッド、あんな風に逃げ出すんじゃないぞ。俺はカウンセラーだ。どういうことか分かるか? 俺の話をちゃんと聞き、言われた通りにするんだ。じゃあ、荷物を解きに行くぞ」。しかし、イライは動かない。「キッド、話は分かったのか?」。「僕には、名前がある」。「誰だって名前くらいある。それで?」。「あんたなんか大嫌いだ」(2枚目の写真)。見かねたサムが、「やあ、イライ、俺はサミュエルだ」と声をかける。「どうする? 今 荷解きに行くか、それとも、まず切り株を見に行き、後で荷解きするか? どうする、兵隊君」。「どっちでも」。大きな切り株の所にいた時、タミーが通りかかって声をかける(3枚目の写真)。この映画の中で 恐らく唯一の素顔。すごく端正な顔だ。一つ前の破壊的な顔と対比すると面白い。「あなた、きっとイライ君ね。キャンプにようこそ。首にかける名札はどこ?」。「僕のカウンセラーが言うんだ、名前なんかどうでもいいって」。
  
  
  

さっきイライが座っていた巨石の前に設けられた集会所に子供達とカウンセラー達が一堂に会し、手振りを交えて歌っている。一番後ろに離れて座り、携帯メールにかかりきるケンと、白けきったイライ(1枚目の写真)。最悪のペアだ。歌が終わり、イライが「下らない」と言うと、ケンは、「何言ってるんだ、キッド、結構楽しいじゃないか」。顔合わせの歌が終わり、キャンプ・ディレクターのタミーが立ち上がり、「まず、ルールを言います」。子供達からため息が。「2つだけよ。安全に、楽しんむこと!」。喝采があがる。そして、何をするかの簡単な紹介。ティー・パーティ、みんなで出演するバラエティ・ショー。プールでの水泳にまで話が及んだ時、ケンが「プールか、楽しみだな」と言うと、イライは「下らない」。「冗談だろ?」。タミーが冗談で「今年は、水泳をしないことに決めました」と言うと、みんなはがっかり、イライは喜ぶが、水泳のコーチが、「さあ、みんな、バンガローに行って水着に着替えて来い!」と言うと、歓声。イライががっかり(2枚目の写真)。バンガローに戻り、年上の子から、「お前、水着を忘れたのかよ、バカ」と言われると、「違う。泳ぎたくないだけだ」と答える。それを聞いたケンが、「どうしたんだ? 泳ぎ方 知らないのか?」。「泳げるさ」。年上の子:「じゃあ何だ、水が怖いのか、臆病者」。「黙れ」。ケン:「なあ、キッド、君が水が怖いのは恥じゃない」。「怖いんじゃないって言ってるだろ」。「じゃあ、何が問題なんだ」。「あんたさ」(3枚目の写真)。「みんなプールで楽しんでるぞ。それを棒に振りたいのか?」。「くたばれ」。「さっさと水着に替えろ」。イライは、ケンの顔にツバを吐きかける
  
  
  

怒って1人でプールに行ったケン。それを見咎めたタミーが、「イライはどこ?」と訊く。「バンガローにいろと言った」。「1人で残してきたの?」。「顔にツバをかけられたんだ」。如何なる理由があろうと、カウンセラーが子供を放り出すことは許されない。タミーは急いでバンガローに向かう。タミーとイライが一緒にいる所に、ようやくケンがやって来る。タミー:「じゃあ、3人で話し合いましょう。誰かが謝らないと」。イライは腕を組み、ケンはそっぽを向く(1枚目の写真)。2人とも拒否したのだ。タミーは、「私だわ」と言う。そしてイライを見ながら、「あなたには、どうしてもキャンプに来て欲しかったけど、カウンセラーが1人足りなかったの。その時、ケンが、手を上げたから、無経験なのにカウンセラーにしたの」。「いいよ、一杯食わされるのには慣れてる」(2枚目の写真)。タミーは2人にこう提案する。「じゃあ、こんなのはどう? ツバ吐きはやめ〔イライに〕、仲良くして〔ケンに対し〕、キャンプを楽しむの」。イライ:「いいよ」。「この後、キックボールがあるわ。夕食の前に2人でやってきたら?」。どうでもいいといった顔でタミーを見るイライ(3枚目の写真)。イライが去った後、タミーはケンに、「二度と一人にしないで」と釘をさす。
  
  
  

キックボールは、ドッジボールで使うボールを蹴ってする野球。ピッチャー(?)が転がすように投げたボールを蹴り、1→2→3塁と回りホームに戻れば1点だ。子供とカウンセラーが順に蹴る。イライの番になり、結構遠くに飛んだのでホームまで走るが、直前にボールが戻って来てタッチ・アウト。しかし、イライは、「何だよ、セーフじゃないか」と審判役のカウンセラーに食って掛かる。「ごめんねイライ、アウトだったわ」。そこにケンがやって来て、「大したことじゃないだろ。アウトなんだ」。「そうか、敵の見方するんだな。誰のカウンセラーなんだよ」(1枚目の写真)。「そこをどくんだ、キッド」。怒って、また森に駆けて行くイライ。今度は、ケンもすぐに後を追う。例の石の上に座っているイライ。追いついたケンが、「これから5つ数える。そしたら降りてくるんだ。分かったな?」(2枚目の写真)。「数え方なら知ってる」。「そうか。じゃあいくぞ。1、2、3、4」。ここまできて、イライが「5」と大きな声で言う。「いいだろ。そこにずっといるがいい。勝手にしろ。夜中まで、ここにいるからな」。イライは、下に降りると、また走り出す。向かった先は食堂。ちょうどみんなで夕食の最中だ。へとへとになって追いつき、隣に座ったケンが、「キッド、走って逃げるんじゃない、いいな」と言うと、「お腹空いてた」。イライは、前に座った女の子の腕についたアームバンド〔立派に泳げると、もらえる〕を見て、ケンに「僕も、あれが欲しい」と言う。「悪いな、キッド。カウンセラーに従って ちゃんと泳いだ勇敢な子だけがもらえるんだ」。イライも負けていない。「あんたも、その携帯下取りに出してバンドにしたら? どうせ1日中メールやってるだけだろ。なあ、僕にバンドくれよ。何て アホなカウンセラーなんだ」(3枚目の写真)。
  
  
  

イライのバンガローには、年上の子が来て、“アームバンドがどこかにいった” と探している。「ここにあった。イライのバッグの中だ。こいつが盗ったんだ」。イライ:「自分で、そこに入れたんだろ」。ケンが「なぜ盗ったんだ」と訊く。年上の子:「こいつ、盗みの常習犯なんだ」。怒ったイライが、少年の腕に噛み付いて(1枚目の写真)、バンガローを飛び出して行く。カウンセラーは追っていかなくてはならない。疲れているのでブツブツ言いながら出て行く。夜、カウンセラーの談話室では、イライが噛み付いたことが話題になっている。タミー:「看護婦は何て?」。別の女性:「幸い、皮膚は傷付いてないって」。サム:「あの2人、どう思う」。タミー:「認めたくないけど、私が間違ってた。うかつだったわ」。女性:「イライのソーシャルワーカーは、もし手に負えないようなら戻してくれって」。タミー:「2人とも帰すことにするわ」。サム:「2人にもう1日やれよ」。タミー:「2人のために、キャンプ全体を危険にさらせない。今日1日で起きたこと見たでしょ」。その時、携帯で話しながら、呑気にケンが入って来る。「また、走って逃げたんだ」(2枚目の写真)。「最悪のガキをわざと押し付けられた」。携帯を切って、タミーに話しかける。「問題児をありがとさん。あいつ、どこか変なのか?」。「どこも」。タミーが怒って出て行った後、ケンはサムに話しかける。「ここにいるガキども、俺達なんかより精神科医の方が似合ってるんじゃないのか?」。女性カウンセラーが、「最初の日は、大変だから」と言うと、「そうさ。俺のガキは今日一日で20マイルは走ったんじゃないかな。1ヶ月は首のカイロプラクティックに通わないと」。別の男性カウンセラーには、「ランディ、あんた、ここで何年やったと言ったっけ?」。「3年だ」。「奇特な御仁だな(Glutton for punishment)」。「俺のガキは最悪だが、タミーにはめられたんだ」。これでカチンときたサムは、口だけの生意気人間をバンガローに連れて行く。そして、ケンを睨みつけて怒りをぶちまける(3枚目の写真)。「お前さんは、ちっちゃなオフィスで金儲けは得意なんだろうが、俺は地獄の戦場にいた」から始まり、自分がかつてはどうしようもない不良で、このサマーキャンプで素晴らしいカウンセラーに会って、まともな人間になれたんだ、とこんこんと聞かせる。
  
  
  

その夜、母から叱られている夢を見て、夜中に飛び起きたイライ(1枚目の写真)。「ケン」と呼びかけ下に降りると、ベッドの端に携帯が置いてある。とっさに借りて、バンガローの外で父に電話する。箒の柄で叩くような父でも、キャンプよりはマシなのだ。電話が通じる。「どこのどいつだ、真夜中の3時に電話しやがって!」。「パパ?」(2枚目の写真)。「イライか? 何してる? どこにいるんだ?」。「パイン・レイクのキャンプにいる」。「キャンプだと? そんなトコで何してる?」。「さあ。ここに連れて来られたんだ。カウンセラーは最悪、食事はプロビデンスの施設よりひどい」。「分かった。心配するな。連れ出してやる」。「そうじゃない、パパ、いいんだ。僕、ただ…」。「連れ出してに行くと言ったろ」。「ダメだよパパ」。ここで電話が一方的に切られる。なんせ、切れやすい父親だ。困ったことになったと思いつつ、バンガローに戻って寝るイライ。朝起きて、ケンが携帯を探している。「俺の携帯はどこだ?」。「携帯なんか 持ってちゃ いけないんだろ?」(3枚目の写真)。「冗談のつもりか? 携帯 見たか?」。「ううん」。携帯は、マットレスの下につっこんであった。
  
  
  

2日目の朝、イライは人前で着替えをすることを拒否。そこで、ケンは珍しく気をきかせて、イライのために毛布で仮の脱衣場を作ってやる。その次が、渓流での釣り。ケンは、ヒルがいると聞いて、一旦脱いだ靴を履き直してから中に入るが、子供達の言い争いを止めようとして渓流にドボン。その後、食堂で。サムに、「イライ、今日は泳ぐのか?」と訊かれ、「泳がないって、言ったろ」。ケンが、「なあ、水に入ったって苦しいわけじゃない。それに外は暑いしな。だから…」と言い始めると、「水泳はしない。OK?」(1枚目の写真)と強調する。イライがこんなに嫌がるのは、彼の体に虐待された傷跡がいっぱいあるからだ。「OK。しらけさせ屋君(mister party pooper)。いちんちじゅうバンガローの中にいて、何もしないでいよう。楽しそうだな?」。そこで ケンの携帯にメールが入り、返信しようとしてタミーに咎められる。ケン:「いいか、これは将来の重要なお客さんなんだ。すごく重要だから…」。タミー:「いいわ。だけど忘れないで、イライも同じように重要なのよ」。「分かってるだ。俺が、こういうの下手なのも。今日はちゃんとやるって。泥の中だって入るぞ」。「あの子に 辛く当たってるわ」。「その逆だろ」。「10歳なのよ」。「それで?」。「携帯をしまって、あの子の後を追いなさい」。ケンが弓で遊ぶ場所に行くと、ケンだけが1人ポツンとうつむいてイスに座っている(2枚目の写真)。ケンが歩み寄って、「覚えてるか? 俺達一緒だろ?」と言うが返事はない。そこでまた、くどくどとプールのことを持ち出す。「なあ、俺は水難救助員だったこともある。君の個人的な水難救助員になってやる」。「言ったろ、水は怖くないんだ」。「そうだった。確かにそう言ったよな、キッド」。まだ、キッド呼ばわりだ(3枚目の写真)。「僕は、嘘付きじゃない。あんたなんか大嫌いだ!」。これで2度目だ。弓矢を教えようとするが、一度もやったことのない子に、バカにしたように教えようとするので、弓矢を投げ捨てて去ってしまう。
  
  
  

水際まで逃げてきて、うつむいて座っているイライ(1枚目の写真)。そこにケンが歩み寄り、隣に座る。「なあ、キッド、俺は別に…」。「構うなよ、OK?(Whatever, okay?)」。「OK。君は泳ぎたくないし、弓も嫌い。代りに何がしたいんだ? 何でも言えよ。やってやるから」。「湖の対岸に行きたい」。「許してもらえないと思うな。キャンプでやれることにしろよ」。「やっぱり、本気じゃなかったんだ」。「そんなのフェアじゃない」。「何でも、って言ったろ」(2枚目の写真)「他のみんなと同じで、嘘付きだ」。そこにサム達が寄って来る。イライ:「今すぐ、バンガローに戻れない? ここ大嫌いだ」。「戻ろう」と言ってケンが立ち上がって背を向けると、その隙にイライは反対側に走って逃げる。昨日と同じで、ケンは、また後を追うことに。今度イライが来たのは、湖岸の小さな岩の上。よほど石の上が好きなのか? 追いついたケンとサムがイライを見ている(3枚目の写真)。サムは、「なぜ、話しかけようとしない」とケンに訊く。「また、100m走らされると体がもたないから、遠慮しとくよ」。「なぜ、あの子は走ると思う?」。「俺の忍耐力を試してるんだろ」。「あの子は、お前さんを試してるんだ、関心を持ってくれるかどうか。今まで誰にも関心を持ってもらえなかったから」。
  
  
  

その夜、サムの担当のレッドが、アームバンドを必死に探している。バンドは、イライのマットレスの上にあった。イライ:「ちょっと待て。それはお前のじゃない。僕が見つけたんだ」。それに対し、UFOおたくのレッドは、貴重なエイリアン・グッズを盗んだと反論。最初はバカにして対応していたイライだったが(1枚目の写真)、怒ったレッドに ど突かれたので、顔に一発パンチをくらわせる。暴力は許されないキャンプで、噛み付いたのに続いての連夜の暴行だ。2人だけ残ったバンガローでは〔サムとレッドは保健室〕、ケンが、「自分のものでもないのに、バカげたアームバンドを、なぜ欲しがるんだ?」と問い詰める(2枚目の写真)。「僕は盗ってない」。「そうか? なら、魔法みたいに君のベッドに のってた… 凄いな。言うことはない… だろうな。君は、逃げ回ったり、盗んでるくせに、俺を 悪いカウンセラーに仕立て上げた」。「あんたが、ホントに悪いカウンセラーだからだ」。「違う、よく聞け、悪いのは君だ。君なんだぞ」。ケンはバンガローを出て、入れ替わりにタミーが入って来る。イライ:「で、僕はいつ戻るの?」。「他の子を叩くような子は、置いておけないの。分かる?」と言った後で、タミーは、「ケンも、最高のカウンセラーじゃなかったし」と付け加える。「ケンは、史上最悪のカウンセラーだよ」。「分かったわ。こうしましょ(Tell you what)。もう一度チャンスをあげるわ。もし、あなたがケンにもう一度チャンスをあげるなら」。「いいよ」。そして、出て行こうとするタミーに、「レッドに、ごめんねって 言ってもらえる」と頼む(3枚目の写真)。バンガローの外へ出たタミーに、ケンは、「あいつはいつ戻すんだ?」と訊く。ケンは、自分の不始末はそっちのけで、イライは更生不能の悪ガキだと主張するが、タミーは、「イライの世界では、善悪が少し混乱してるの。これまで大人が違いを教えてこなかったから」と援護し、一つでいいから、好きになれるところを探しなさい とアドバイスする。
  
  
  

翌朝、全員を巨石の前に集め、水泳コーチが、アームバンドをはめた子に手を上げさせ、みんなの努力を讃える。イライは、また、「あのバンド、僕にくれない?」と、ケンに頼む(1枚目の写真)。「できないって、知ってるだろ」。「買うなり、盗むなリ、いいカウンセラーなら、何とかしろよ」。ケンは、「来いよ、見せてやるものがある」とイライを誘う。集会からこっそり離れる2人。ケンが連れていったのは、ポルシェ。男の子なら車に興味があると思ったからだ。案の定、「これ、あんたの? うそだろ!!」と喜ぶイライ(2枚目の写真)。乗せてもらい、屋根を格納してみせられる。「どうやって手に入れたの?」。「盗んだり、ペテンにかけたりしてないぞ。このために うんと働いたんだ。何か欲しいものがあったら、全力でそれにぶつかるんだ」。珍しく、まともなことを言うケン。「アームバンド欲しいんだろ?」。「うん」。「なあ、俺は嫌なカウンセラーだろうが、泳ぎは得意なんだ。だから、誰よりも早く泳げるようにしてやれる」。「だけど、泳ぎたくないんだ」。ケンは、「俺達には、数日しか残ってない。イライ。率直に話そう。俺達ホントにソリが合わないのか、それとも、何とかやってけるのか、どっちだ?」。それを聞いて、初めて一瞬ニヤッとするイライ(3枚目の写真)。君のことで、俺が気に入ってるところが1つある。君にはファイトがある。実にな。もし、本気でアームバンドが欲しいんなら、ファイトを見せるんだ。君を水から遠ざけているものを、ファイトで打ち破るんだ」。
  
  
  

その午後、イライは、全身をタオルで覆ってプールサイドに現れる。笑顔で迎えたケンが、「さあ、タオルを寄こすんだ。勇気を出せ」(1枚目の写真)。タオルを外したイライ。体に残る暴行の跡に、イライが隠したかった辛い真実を悟るケン。顔が引き締まる。それを「助けて」といった顔つきで見るイライ(2枚目の写真)。顔を逸らして反対側を向いた背中にも暴行の跡が。ケンは、優しく手を握ると、「3つ数えて、飛び込もうな」と声をかける。そして、1、2、3で、手を握ったままプールに飛び込む。そして、水中からイライを持ち上げて、傷に触れないよう優しく抱きかかえる(3枚目の写真)。父親から受けた傷を曝したことで、それからのイライは、プールで別人のように明るくなった。プールが終わり、ケンとタミーがバンガローの前で話している。ケン:「知ってたのか? イライのこと」。「過去のことはあまり考えないようにしてるの。希望ある未来のことだけにね」。その時、嬉しそうな顔をしたイライがバンガローから出てくる。イライ:「なぜ、ドレスを着てるの?」。タミーがわざと淑女風に答える。「ティー・パーティがありますのよ」。イラン:「そうだ、女の子だけだったよね」。ニコニコしているイライがとっても可愛い(4枚目の写真)。この後、ケンは携帯をタミーに渡す。真面目にカウンセラーに取り組むというサインだ。友達のように話しながら歩いていくイライとケン。最後に、「今、何がしたい?」と訊かれ、「クッキーって良さそうだけど、ティー・パーティでドレスなんか着たくないし」と答え、ケンが妙案を考えつく。
  
  
  
  

女性のカウンセラーと、女の子達だけで、イギリス風のティー・パーティを開いている。もちろん、クッキーや他のお菓子もある。そこに、黒い服に黒いシルクハット風の帽子を被ったイライとケンが近付いてくる。イライ:「おいしいお茶が飲めるんでしょ?」。ケン:「誰かさんから、ブラック・タイが必要だと聞いたんだ」(1枚目の写真)。みんなが喜んで歓迎し、まず男性2人にティーを勧める。タミー:「ご来駕の理由をお聞かせいただいても?」。イライ:「クッキー目当てだよ」。「どうぞ」。その時、イライは「全部いただき」と言って、服の中から大きな水鉄砲を取り出し〔ケンも〕、女性たちに掛け始める(2枚目の写真)。逃げ出す女性たち。そこに、森の中から男性のカウンセラーと子供たちが水鉄砲を持って参戦。テントにあったお菓子を全部さらって巨石の下に集まり、パーティを開く(3枚目の写真)。イライも、完全に溶け込んでいる。
  
  
  

仲の良くなったイライとケンは、弓にも挑戦(1枚目の写真)。イライは、中心のX円ぎりぎりに当てて満面の笑み(2枚目の写真)。湖のカヤック・カヌーでは、女性の方から水鉄砲の逆襲を受けて転覆しそうに(3枚目の写真)。
  
  
  

バラエティ・ショーでは、ほとんど全員が、下手なりに歌ったり、踊ったりする。最後のトリとなったのは、意外にもケン。高校の時にロック・バンドのドラマーだったことを知っているタミーが、サプライズで客席から呼び出したのだ。舞台でドラム演奏を披露するケンに、イライも大喜び(1枚目の写真)。ショーが終わって解散してから2人だけになると、イライが寄ってくる。「これ、ホントに誕生日にもらったの?」。「ああ」。「僕も、いつか誕生日プレゼントが欲しいな」。「それって、一度もプレゼントもらってないってことか?」。「ママは、僕にはそんな資格ないって」。「ひどいな(That's lame)」。「ほんとだよね(Tell me about it)」。その後、イライは、「どうして、ここにいるの?」と訊き、「彼女のせいだろ?」と言う。「彼女って?」。「タミーさ。すごくセクシーだもんね」。「そう思うか?」。「高嶺の花だよ(Out of your league)」。「そうかもな」。「やっぱ、その気あるんだ」(2枚目の写真)。その後、イライは、スティックを握らせてもらってドラムを叩いてみる。最初は楽しんで叩いていたが、「僕のママ、死んだの知ってた? あんたのパパのように」と訊き、雰囲気が変わる。「いや、知らなかった」。「ママは最低の人間だった。僕をいつも部屋に閉じ込めてた。ボーイフレンドがいっぱいいて、奴らが来る度に僕を隠すんだ。それに、僕が他の子と話してると怒るんだ。僕のことが嫌いだった。だから、僕もママが大嫌いだった」。そう言って、ドラムにうつ伏せになって泣き始めるイライ(3枚目の写真)。
  
  
  

翌日、イライはプールの端から端まで泳ぐことに挑戦する(1枚目の写真)。全員の声援を受けて、犬かきで泳ぎきってケンに迎えられる。「偉かったな、キッド」(2枚目の写真)。ところが、その時、イライの暴力的な父親が、邪魔をするカウンセラーを突き飛ばしながら、つかつかと寄ってくる。「俺のガキから手をどけろ!」。イライは、ケンと父の間に割り込んで、「やめてよパパ、来てくれなんて言ってない」(3枚目の写真)。「黙れ、お前が呼んだんだ。家に連れて帰る」と言いつつ、イライを張り倒す。元軍曹と水泳コーチの最強コンビで父をフェンスに押し留め、「誰か警察を呼んでくれ」。イライは床に飛ばされて額を切ってしまった。保健室に運ばれ、ショック状態のイライ。ケンが、「おい、大丈夫か、イライ」と訊いても、「1人にしといて」。「恥じなくたっていい…」。「放っといてよ」(4枚目の写真)。
  
  
  
  

談話室では、“なぜ父親が、ここに息子がいるかを知ったか” が問題となっていた。父親の言葉のはしばしから、イライが電話をかけらしいとサムが推測する。タミーは、最初、イライが携帯など持ってないので電話をかけられたはずはないと思うが、ケンが持っていたことを思い出す。そこで預かっていた携帯をチェックすると、午前3時に通話した記録が。番号を見せるとケンは「そんな番号は知らない」と言う(1枚目の写真)。これで原因は明らかになった。しかし、話はこれだけで済まなかった。その携帯をタミーから受け取った別の女性カウンセラーが、通話記録を見て、「あなた、なぜ、タミーの伯母さんを知ってるの?」と訊いたことで、情勢は一気に悪化する。タミーの伯母さんは、マーガレット・サマーフィールドだった〔偶然過ぎると思うが…〕。例の、キャンプの大口の財政支援者の大金持ちだ。このことから、ケンが、タミーの伯母のファイナンシャルアドバイザーになりたいという下心で、キャンプのカウンセラーになったことがバレてしまう。烈火のごとく怒るタミー。「私の伯母さんのお金のために、私を利用し、子供達を利用した!」。その時、傷の手当が終わったイライが出てくる。ケンが、「やあ、兄弟、バンドもらえたな」と待望のアームバンドを渡すと、「みんな、あんたのせいだ!」と言ってバンドを投げつけられる。「後を追いなさいよ」。「いや。正しいことじゃない」と言って、タミーに何と罵られようが黙って立ち去るケン。そして、釣りに出かけるサム達4人の前を、ケンのポルシェが走り去って行く(2枚目の写真)。夕食のテーブルに着いたイライ。サムに「ケンはどこ?」と尋ねる(3枚目の写真)。さっきはバンドを投げつけたけど、嫌っているわけではないのだ。「見てない」。それを聞いてテーブルに頭を伏せるイライ。
  
  
  

翌日、イライが失望に打ち砕かれていると、小型トラックが入って来る。ケンが車から降りてくると、「キャンプの諸君、パーティの準備はいいか?」と呼びかける。「俺の友達イライは、これまで一度も誕生日のパーティをやってもらってないから、今日、盛大に祝おうと思う」。そして、トラックの扉を上げると、中には一杯プレゼントやおもちゃが入っている(1枚目の写真)。イライ:「戻ったの?」。ケン:「誕生日おめでとう、イライ」。「これ、僕の誕生日のパーティ?」。ケンは、「誕生日パーティには、プレゼントがあります」と全員に言う。そして、子供達一人一人プレゼントを渡す。イライには、「君のは、特別だ」と言ってドラムスティックを渡し、「これでドラムを叩くんだ」と言う。「ドラム? ホントなの?」と言って、イライはケンに抱き付く(2枚目の写真)。このできすぎのシーンの最後は、イライが大きな誕生日ケーキのローソクに火が点くのを見る場面(3枚目の写真)。ただ、最初に書いたように、参加者全員への誕生日プレゼント配布は、RFKCのキャンプの決まりらしいので、この場面は、それをケンの発想のようにアレンジしている。
  
  
  

いよいよ、キャンプ最終日。イライとケンは、仲良くボードにサインしている(1枚目の写真)。ボードは、これまで書かれたサインで一杯だ。バンガローでは、サムが「1週間、あんたと一緒で楽しかった」とケンに言っている。これは最大級の賛辞だろう。「もっとずっと長かったような気がする」。「守れないような約束はするなよ。あの子達は、十分過ぎるほど問題を抱えてるんだから」。そして、子供達を迎えに来たバスの前。ケンは、くせになった「よお、キッド」でイライの前に片膝で座ると、「大丈夫か?」と訊く。ケンに抱きついて「ううん」と言うイライ。「ここを出た後も、会いに行っていい?」。「さあ、どうかな」。「また会えるって、約束できる?」。「1つだけは確実に約束できる。君のことは絶対忘れない(2枚目の写真)「イライ、大好きだよ。神様が見守って下さるよう祈ってる」。涙を流すイライ(3枚目の写真)。ここで、バスに乗るようにとの指示が出される。「バスに乗るんだ」。また、抱き付くイライ。クールなケンにとっては、こんなウェットな体験は初めてだったに違いない。バスから悲しげな顔でケンを見るイライ(4枚目の写真)。
  
  
  
  

湖畔に座ったケンのところに、タミーが寄って来る。色々と話した後で、最後にケンは、「最初は、現実の生活に戻りたくて仕方がなかった。でも、今は、仕事じゃなく、キャンプが現実のような気がする」。そして、「また いつかイライに会えるかな?」と尋ねる。「祈ってあげて」。そして、1人だけになって考え続けるケン(1枚目の写真)。最初に書いたように、映画はここで終っていた方が良かったかも。この後、ハリウッド流のエピローグが続く。ケンが、イライの父親が収監されている刑務所を訪れる。父親は、イライから来た手紙を読み、自分のこれまでの育て方、というか、「育てなかったこと」を反省し、ある決断をしている。そして、事務弁護士に書かせた紙をケンに渡す。「これでは、要求が多すぎるかも」「イライには選択の自由がほとんどない」。この言葉が正確に何を意味するかは分からない。養育権の完全な放棄か、自分が出所するまでの養育の依頼かは定かでない。いずれにせよ、ケンは新しいポルシェで児童保護施設までイライを迎えに行く。2人が喜んで車に乗って、施設を立ち去るところで映画は終る。もし、ケンがイライの里親になったのだとしたら、それはそれでいいことなのだが、あまりに良く出来すぎている。
  
  
  

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