トップページに戻る
  少年リスト   映画リスト(邦題順)   映画リスト(国別・原題)  映画リスト(年代順)

Day-O (TV) デーオ

アメリカ映画 (1992)

イライジャ・ウッドが 「空想の友だち」 デーオの役を演じるコメディ映画。主人公グレースが、昔5歳だった時、厳格で無理解な父はデーオのような非生産的な友達を持つことを禁じる。そして30年後、グレースが中年女性になって人生を見直す立場に立たされた時、もう一度デーオが復活する。後は、如何にデーオがグレースを立ち直らせていくかが焦点になるが、何と言っても素晴らしいのはデーオの演技。「空想の友だち」 なので、呼び出した本人と遊んだりふざけたりしながら、それでもグレースが正しい道に進むよう懸命に努力する。その一風変わった役どころをイライジャが担当し、当時抜群の人気を誇っていたTVドラマ『浮気なおしゃれミディ』(1986~93)の主演女優と1対1で組ませている。その当時のイライジャは、『わが心のボルチモア』〔撮影:1989.9.6-11.22、撮影時8歳、公開:1990.10.19、Young Artist Awardsノミネート〕での評価を受け、『ラジオ・フライヤー』〔撮影:1990.10.3-1991.2.22、撮影時9-10歳、公開:1992.2.21/ヤング・アーティスト・アワード受賞〕と、『愛に翼を』〔撮影:1991.3.25-6.7、撮影時10歳、公開:1991.9.18、ヤング・アーティスト・アワード・ノミネート、シカゴシカゴ映画批評家協会の最も有望な俳優賞ノミネート〕に出演(撮影時期と公開が逆転している)、『デーオ』のTV放映は1992.5.3なので、『フォーエヴァー・ヤング/時を超えた告白』〔撮影:1992.2.11-5.8、撮影時11歳、公開:1992.12.16〕と同時期の撮影と、売れっ子だった時期にあたる。それだけに、グレース役のデルタ・バーク(Delta Burke)との息はぴったり。大人の 「空想の友だち」 という突飛な役どころを見事にこなしている。しかし、TV映画と一般公開の映画では「視聴媒体」という点では差別が大きく、いくらイライジャ・ウッドのベストの時期の作品といってもDVD化されていない〔ネット上で販売されているものはVHSをデジタル化したDVD-R〕。日本でも、一度TVで放映されたが、その時にはビデオしかない時代だった。いくらS-VHSで録画しても〔VHSは水平像度240本、S-VHSは500本〕、当時のBS放送が水平像度350本程度だったので画質は見劣りするし、色も修正不可能なほど歪んでいる。なお、この映画には英語字幕は存在しないが、放映された時の日本語字幕はかなり良質なので参考にさせていただいた。

映画は、グレースが4歳の頃から始まる。グレースには弟か妹が生まれようとしていた。父は男であることに期待し、グレースはなおざりになれたように感じる。グレースが、1人になって「弟の赤ん坊なんていらない」と何度も不満をぶつけていると、突然男の子が現れる。名前はグレースがデーオ〔最初の発音は “デイオー”〕とつける。映画はすぐに35歳の現実のグレースに戻る。そこでは、グレースは父の倉庫業の店のNo.3。No2の兄はぐうたらで何もしないくせに、父は何事にも兄を立て、妹のグレースのことは見向きもしない。そんな日常に慣れてしまったグレースだが、思いもよらぬ妊娠が引き金になったのか、それとも、昔好きだった桟橋前のビルに自分の店を持ちたいと思ったことがきっかけとなったのか、グレースの前に突然デーオが現れる。デーオは相変わらず悪戯しかしないが、グレースは、デーオの挑発に乗る形で、「自分を無視し続けた父」に目を向かせようと努力する。そして、最後になってようやく父が目を開くと、グレースはデーオに消えてくれるよう頼む。

イライジャ・ウッドが才能を遺憾なく発揮した作品。残念なことは、体の大きな女優との共演で、かつ、同時に写る場面が多いため、イライジャの顔が小さくしか写らない。クローズアップも少ない。


あらすじ

小さなグレースは、家の前の野原で人形を相手に食堂ごっこ。そこで出た一言が彼女の思いを語っている。「パパは、赤ちゃんができてから、わたしが何をやっても気に入らない」。アイスクリーム屋のバンが来たので、買ってもらえないかと家に入って行くと、そこでは父が赤ちゃんの話でもちきり。父は生まれてくるのは男の子だと確信し、名前を披露し、フットボールを教えると嬉々として話す(1枚目の写真)。グレースは悲しくなって野原に戻ると、「弟の赤ん坊なんていらない」と何度も口に出す。すると、木の上から、「残念だけど、君の負け〔Too bad, you lose〕」という声が聞こえてくる。そして、いきなり木の根元にグレースより少し年上の少年が現れる。グレース:「何て名なの?」(2枚目の写真)。少年:「どんなのがお気に入り?」。「わかんない」。少年は木の箱の上に乗った人形向けの食事をおいしそうに食べる。グレースは「夕食も食べてく?」と尋ねる。「君がそうして欲しけりゃ」。その時、動き出したアイスクリーム屋のバンを見たグレースは、少年の名前を「デーオ」と決める〔Town Clown Ice Cream とDay-O の間に何の関係があるのかは不明〕。「その名前、好きだよ」(3枚目の写真)。母が家のドアを開けて「グレース」と呼ぶ。すると、机にうつ伏して寝ていた35歳のグレースが、父で社長の呼び声で目を覚ます。映画のオープニング・シーンは、主人公のグレースの少女時代の思い出だった。
  
  
  

グレースは、父からは、できの悪い弟トニーの誤発注の後始末をさせられ、トニーからは、父へのご機嫌とりの手伝いをさせられる(1枚目の写真)。そんなグレースが思い出したのは、子供時代の秘密の隠れ家。木の桟橋の床板の下にできた小さな空間だ。「教えろよグレース。どうしてここに隠れてるんだい?」(2枚目の写真、矢印はグレースとデーオ)。「パパに嫌われてるの」。「違うな。問題はトニーさ。君を愛してるなら、パパはなぜトニーなんか欲しがる」(3枚目の写真)。2人でトニーの悪口を言っていると、現実に戻り、トニーが父に油を売って褒められているのが見える。グレースは慣れっこになっていても、悔しいことに変わりはない。
  
  
  

その夜、グレースは夫に、「父が所有していて、今は使われていない桟橋前のビル」で商売を始めることを提案する。夫は、他にも付近に商業施設があると言い、乗り気ではない。5月3日はトニーの娘コーリーの5歳の誕生日。グレースは、野外パーティの場で父に話しかけるが、父は、お産間近のトニーの妻の赤ちゃんが男の子に違いないという話に終始し、グレースが桟橋の前のビルの再開発を持ち出しても何一つ耳に入らない〔逆に、それを漏れ聞いたずる賢いトニーは、後で父に取り入って売却しようとする〕。いつまで経っても自分を無視し続ける父にキレたグレースは、パーティから逃げ出す。吐き気に襲われたグレースは、不安になって医者を訪れると妊娠したと告げられる。グレースは、ますます不安になる。子育てができる自信が全くないからだ。グレースは、桟橋の前にある廃墟と化したビルを訪れる(1枚目の写真、矢印は大好きだったレストラン)。このビルの前は、かつて小さな観覧車もある賑やかな場所だった。グレースの回想が始まる。そのビルの2階には父の小さなオフィスがあった。デーオと一緒のグレースは、父に小うるさく質問し、父の仕事を邪魔する。そのうちに、2人はバネのおもちゃ「トムボーイ」の取り合いを始め、グレースが手を離したトムボーイは父のコーヒー入りの紙コップを直撃して書類を汚す。グレース:「デーオがやった。わたしじゃない」。父:「やり直すのに、1時間もかかるんだぞ」。デーオ:「嘘付きは刑務所行きだ」。グレースはデーオを「うるさい!」と叱るが、父は自分が言われたと思い〔デーオはグレースにしか見えない〕、娘を叱る(2枚目の写真、矢印は倒れた紙コップ)。1階の食堂の店主はグレースが大好き。デーオにも、あたかも実在するように声をかける。デーオは店主のネクタイを褒め、グレースがそれを口にする(3枚目の写真)。店主は、グレースがコーヒーをこぼしたことをなぐさめ、1ドル・コインをプレゼント。店主:「何に使うんだい?」。グレース:「貯めておいて、わたしのレストランを買うのに使うの」。
  
  
  

グレースは、使われていないビルの中に入っていく。中は真っ暗だ。懐中電灯を点けて2階に上がる。そこには、かつてビルの前に置いてあった遊具が押し込まれている。すると、昔の記憶が蘇る。ビルの前で、グレースはデーオと口論になる。デーオ:「聞けよ」。グレース:「イヤよ」。「弱虫」。「ちがう」、「そうさ」。結局、弱虫でないことを証明するため、グレースは父に訊きに行く。その内容は、弟を売って、儲けた金でカラーテレビを買う、というとんでもない提案。父は叱らずに、ただ、「トニーは何より大切だ」と答える。グレースは、「わたしより?」と困らせる質問。父親の「グレース無視」の現状には、少女時代のグレースの言動が影響しているのかもしれない。その時、デーオが、「ヘリコプターに乗るぞ」と言って中に入る〔グレースがドアを開けなかったのにデーオが中に入れたのは変〕。グレースは、父にデーオの乗ったオモチャのヘリを動かしてと頼むが、父は、「お前、幾つだ?」とグレースに尋ねる。「5つ」。「もう大きいと思わないか?」。「そうよ」。「なら、デーオのことなど忘れるんだ」。デーオ:「おい、待てよ」。グレース:「傷つくじゃない」。父:「傷つくはずがない。空想なんだから」。そう言うと父は、ヘリのドアを開かないようにロックしてしまう(2枚目の写真)。中に閉じ込められたデーオは内側から必死にドアを叩くが出られない(3枚目の写真)。こうして、グレースは5歳の時にデーオと別れ別れになった。
  
  
  

グレースが懐かしく思い出していると、突然、「出られないよ!」という声が聞こえる。グレースはヘリコプターに近づくとドアを開ける。自分がバカなことをしたと思わず笑ってしまうが、その直後、背後で、「やっとだ」と批判がましい声がする(1枚目の写真、矢印はヘリコプター)。グレースは、驚いて「デーオなの?」と振り向く。「何してたんだよ?」。30年ぶりの再会にグレースは悲鳴を上げる。グレースは、見たものが信じられず、「悪い夢よ」と自分自身に言い聞かせながら、逃げるように車まで戻る。「妊娠による幻覚だわ」。車に乗り込み、自分のバカさ加減を笑いながらエンジンをかけて車を出すと、デーオがいきなり後部座席から乗り出して、「わあ、運転できるんだ」と声をかける。グレースはびっくりして急停車。後ろを見ると、「シワもある」と言われる(2枚目の写真)。グレースは、両手で顔を覆い、気を鎮めて車を出す。デーオは、助手席に現れ、「これ何?」と訊く。グレースは、「これは幻覚。疲れてるのよ。今日はヒドい日だったから」と目を閉じて言い、「目を開けたら、正常に戻ってる」と念じて助手席を見ると、デーオがニッコリしながら、「やあ」と声をかける(3枚目の写真)。
  
  
  

マンションに着いても「幻覚」は続く(部屋の前の開放通路)。デーオ:「ここ、君のオフィス?」。「コンドミニアム〔分譲マンション〕よ」。公園を見て、「あれが裏庭かい?」。「裏庭はないわ」。グレースは、「もし、目を閉じたら…」と期待する。デーオ:「かくれんぼだ」。「そうよ。永久に隠れてて」。グレースは10まで数える。デーオはいなくなっている。その日、グレースは早めに寝てデーオに会わずに済む。しかし、翌朝、夫がジョギングに出かけると、さっそく姿を現す。グレース:「ここで何してるの?」。デーオ:「貸しがあるだろ〔You owe me〕?」。「貸しなんかないわよ」。キッチンには、ダイエットのためか〔グレースは肥満体〕クッキー1つ置いてないので、デーオはブツブツ。代わりにセリアルの箱を取り出して、グレースにも食べるよう勧める。TVにチャンネルがないのにもブツブツ。実は、もうリモコンの時代だった。グレースは、「私は大人よ。結婚してる。妊娠もよ」と言う〔デーオに消えるよう要求している〕。デーオは、「そんな、君までもかい?」と妊娠に驚く(1枚目の写真)。グレースは、「ひどい〔lousy〕母親にしかなれない」と妊娠に自信がないことを打ち明ける。話しているうちに夫が戻って来る。そして、妻がセリアルを食べているのを見て驚く。「大丈夫かい?」。「もちろん。どうして?」。「困っていることでも?」。「いいえ」。その時、グレースの後ろに現れたデーオが「赤ちゃんができたんだろ」と、打ち明けるよう催促する(2枚目の写真)。グレースは怖い口調で、「今はダメ」と否定するが、夫には別の意味に解釈する。「じゃあ、何か困ってるんだね?」。「そんな感じだけど、もう終わったの」。「つまり、話したくないんだ。なら、それでいい」。そして、汗のついたタオルをイスに掛けようとした時、グレースはソファを揺すっているデーオに向かって、「そんなこと、やめなさい」と叱る(3枚目の写真)。自分に言われたと思った夫は、慌ててタオルを手に持って、「ごめん」。デーオはソファの上に立ってピョンピョン跳ね始める。「うるさいわね。座ってなさい」。夫は、すぐに座る。コミカルなシーンだ。
  
  
  

デーオはグレースの職場にも現れる。そして、つまらないので「もう、やめたら」とブツブツ。「来たばかりでしょ」。「つまんない」。グレースは仕事だから仕方ないと言うと、「楽しい仕事したら?」と反論、さらに、「そうだ。食堂ごっこだ。食堂だって仕事だよね? それに、楽しいだろ」と提案する(1枚目の写真)。その時、室内側の仕切り窓を見たデーオが叫び声を上げる。デーオをヘリに閉じ込めた本人がやって来るのが見えたのだ。デーオ:「追い払えよ!」。父は部屋に入って来ると、「母さんに話すよう言われてな」と口を開く。理由は、グレースが誕生パーティを中座したこと。しかし、グレースは正直に不満をぶつけず、「何でもないの」としか言わない。父は、それを聞いて安心し、ソファに腰をおろす(ソファには、デーオが寝転んでいた)。頭の上にお尻を乗せられたデーオは足をバタバタさせてもがく。グレースは何とか父をどかせて、部屋を出て行ってもらう。グレースは「大丈夫?」と心配そうに声をかける(2枚目の写真)。「キスしてくれたら良くなるよ」。そこで、グレースはデーオにキスして頭を撫でる。仕切り窓ごしに娘を見ていた父の目には、それは不可解な行動に映った(3枚目の写真、矢印はデーオを撫でるグレースの手)。その日、夫が帰宅すると、寝室からグレースの話し声がする。「もちろん、あなたのことは好きよ。いつもそうだった。でも、状況は変わったの。私には夫がいるのよ」。夫は、グレースの浮気を疑い、ドアをさっと開けるが、中には「見えない」デーオしかいない。グレースは、「あのね、話したいことがあるの」と切り出し、夫は覚悟する。しかし、昔父と交した会話(「トニーは何より大切だ」。「わたしより?」)を思い出したグレースは、口を濁して妊娠したことを打ち明けるのをやめる。夫が部屋を出た後、デーオは「赤ちゃんのことを話すんだ」と催促する。
  
  
  

その夜は、娘のことを心配した母は、グレース夫婦とトニーの一家をディナーに招待する。食事の最中ペラペラと下らないことを話し続けるのはトニー。しかも、父はそれを感心して聞いている。グレースには耐えられない場だ。デーオが突然現れ、グレースの反対側の肩を叩く(1枚目の写真)。そちらには夫が座っているので、夫に触られたと思ったグレースは微笑む。デーオは、そうじゃないよとばかりに、反対側の肩をトントン叩く。グレースは驚いて食器をテーブルに落とす。今度は、トニーの妻の出産が近いという話になる。すると、ディナーテーブルの下からデーオが顔を出し、「今が、絶好のタイミングだ」と声をかける。それを悟ったグレースも、「あのね、報告することがあるの」と切り出す。しかし、すぐに父が「わしもだ」と割り込み、勝手に先に話し始める。しかも、その内容が、桟橋の前のビルを売却するというもの。ビルに自分の店を開こうと思っていたグレースにとっては最悪の展開だ。デーオは「残念だけど、君の負け」とテーブルの下から はやし立てる。グレースは、床にこぼれたものを拾うフリをしてテーブルの下にもぐり込むと、デーオが 落ちたフォークを父の脚に突き刺そうとしている。食卓では、トニーが、ビル売却の提案者は自分だと自慢している〔娘の誕生会の時にグレースが父に話しているのを聞いた〕。デーオの行動を止めうとしたグレースはフォークを奪い合い(2枚目の写真、矢印はフォーク)、最後にはデーオが一人でフォークを父に脚に突き刺す〔映画ではデーオが1人で刺したように見えるが、実際には、グレースがデーオを争う形で刺したはず〕。父はあまりの痛さに飛び上がる(3枚目の写真)。
  
  
  

翌日、出勤したグレースは、会社でパターの練習をしているトニーを、「私のアイディアを盗んだわね」と非難する。トニーは、恥じることもなく、「何も盗んじゃいない。借りただけさ」と反論。グレースが「いつもの典型ね。全部私にやらせて、あんたはイイトコ取り」と怒ると(1枚目の写真)、「それが弟ってもんさ」。そして、お陰でパットを外したと文句まで言われる。デーオは、「弱虫〔Wimp〕」とグレースをからかい、置いてあったコップを取り上げ、コーヒーをトニーにかけようとする。グレースは止めようとするが、そのまま勢い余ってコーヒーはトニーの背中を直撃(2枚目の写真、矢印は空になったコップ)。「何すんだよ!」。「事故だったの」。その場を離れた2人。デーオは、グレースが職場でないがしろにされていると正直に警告するが、グレースは「よく聞いて。言っとくけど、私はここじゃ非常に重要な存在なの」と自慢し、父の前を通る時、「パパ、明日の昼食会のメモ、見たわ」と声をかける。父は、グレースの声など耳に入らないので、「グレース、明日のランチのメモは見たか?」と、何もなかったように訊く。さっそくデーオがからかう(3枚目の写真)。グレースは、父が考え事をしていたせいだと庇うが、デーオの笑いは止まらない。
  
  
  

グレースはデーオを公園に連れて行く。デーオが遊んでいる間、グレースはベンチに座って待つことにする。そこには、2人の娘を遊びに連れてきた男性が既に座っている。グレースの悩んでいる顔を見た男性は、「大丈夫かね?」と声をかける。グレースは、他人だと言い易いのか、「妊娠したの」と打ち明ける。「本当かね? そりゃ素敵じゃないか。おめでとう」。しかし、夫には話したかと訊かれ、まだ話してないと正直に答える。男性は、「話しなさい」と優しく言う。ところが、この2人の親密そうな様子を、グレースの挙動に不信感を抱いた夫がこっそり後をつけて来ていた(1枚目の写真、矢印はグレース)。夕方になってグレースがデーオと帰宅すると、夫が照明も点けずに待っていた。グレースは、どっきりして「暗い中で何してるの?」と訊くと、夫は「話し合わないと」と言い出す。グレースは夫の横に座り、デーオもその隣に座ってグレースにウィンクする(2枚目の写真)。打ち明けろというサインだ。夫:「君からだ」。デーオ:「赤ちゃんのこと話せよ」。グレース:「あなたに隠してたことがあるの」。夫:「やっぱり。いつからなんだ?」。「いつからって?」。「君が隠してた友達〔ベンチの男性〕との付き合いだ。いつから会ってたんだ?」。「彼〔デーオ〕を見たの?」。「君を公園までつけてった。言語道断な行為だとは分かってたが、最近の君は変だったからな」。「本当にデーオを見たの?」。「イタリア人なのか? じゃあ北イタリアだな、金髪だから」。「髪は茶色よ」。「2人いるのか?」。グレースはようやく夫の勘違いに気付く。そして、金髪はただの他人、茶髪がデーオで、小さい頃の空想の友だちだと話す。そして、「また現われたの。あなたの横に座ってるわ」。夫は、グレースの精神状態が心配になる。そして、電話で医者に相談しようとするが、デーオがしつこく「言うんだ!」とくり返したので、グレースは遂に、「赤ちゃんができたの」と打ち明ける(3枚目の写真)。
  
  
  

夫は赤ちゃんができることに大喜びだったが、グレースにはまだ不安が残っていて、悪夢を見てしまう。真夜中に起き出して居間に行くと、そこではデーオがTVを観ている。グレースは、「しくじって、何もかもダメになって、赤ちゃんに嫌われちゃうかも」とデーオに子育ての不安を訴える。デーオは、空想の友だちらしく「そうじゃないかも」と言い、いい家があり、優しい夫がいて、TVに142チャンネルもあるから大丈夫だと請け負う(1枚目の写真)。そして、2人は、TVのミッキーマウスに大満足(2枚目の写真)。デーオは、「いつものグレースに戻った〔Finally, that’s the Grace I know〕」と安心する。翌日、仕事に向かうグレースの車の中に現れたデーオは、途中でバッティングセンターを見つけて瞬間移動。グレースも仕方なくデーオに付き合い、ブースに入りバットを手にするが、これまで一度も打ったことがないので、最初から「できないわ」とネガティブ思考。デーオは、「ボールは打てない、いいお母さんにはなれない、パパには話せない… できること一つでもあるの?」と鼓舞する。グレースは3度目の正直でボールを打ち返し、大喜び。デーオも飛び上がって喜ぶ(3枚目の写真、矢印)。こうして、グレースは少しずつ「経年的な無気力」から脱していく。
  
  
  

その日は、父と弟と「桟橋前のビルを買い取る開発業者」との昼食会だったが、グレースはバッティングセンターで寄り道したので大幅に遅刻。到着するとさっそく作ってきた資料について話し始めるが、父はそれを止めさせ、相手の計画を訊く。画面は、食事がかなり進んだ段階に飛び、トニーが下らない冗談を1つ披露。グレースも披露し始めるが、半分まで話したところで、父が「ビジネスの話をしましょう」と割り込んで、強制的に打ち切る。そして、トニーに案を説明させる。グレースの出番は全くない。ただ、そこにいるだけの存在。食事はデザートになっている。テーブルから姿を消したグレースは〔いなくなったことに誰も気付かない〕、いきなりステージで歌い始める。腹を立てた父は、歌っているグレースを店の入口まで連れて行き、突飛な行動を厳しく咎める。グレースも、今までと違って反撃に出る。「あら、気付いたの? 私って、透明な女性じゃなかった?」。「何のことだ?」。「私のこと、完全に無視してたじゃない」。「してない」。「子供の時から、ずっと無視し続けてきた」。しかし、人の話を聞かないという点では、グレースも似たり寄ったり。帰宅したグレースは一方的にデーオに話しかけ、デーオが何を言っても聞いていない。その一方的な態度をデーオに指摘されると、「パパと同じね」と自分自身を嫌悪する(1枚目の写真)。そこに、グレースの母が心配して顔を出す。グレースは、母には妊娠したことを素直に打ち明ける。ただし、誰にも口外しないという条件付き。そこに、トニーから、妻が産気付いたというSOSの電話が入る。グレースはトニーの娘のコーリーの面倒を見ることになる。グレースとコーリーとは車の中で話が合う。5歳のコーリーの状況は、30年前の5歳のグレースと全く同じだった。父親は生まれてくる赤ん坊のことしか頭になく、嫉妬した娘は、2人とも、心のどこかで、「生まれないで」と願っていた(2枚目の写真)。グレースとコーリーとデーオの3人は観覧車に乗り、その中で、グレースは「弟を売って、儲けた金でカラーテレビを買う」という話を父にしたと打ち明ける(3枚目の写真)。コーリーは、それを聞いて、「赤ちゃんが自分より大切に思われている」と打ち明ける。
  
  
  

3人は、海岸に沿って作られたボード・ウォーク〔板張りの遊歩道〕を歩いている。立ち止まったコーリーに、グレースは、病院に電話してみるように勧めるがコーリーは乗り気でない。「大人になりたくない」とも話す。グレースは、コーリーを慰めようと、「私の秘密の隠れ家、見たい?」と尋ねる(1枚目の写真)。「秘密? ほんとに? 素敵」。「桟橋の下にあるの」。コーリーは先に走っていく。2人だけになると、デーオは、「パパと一緒に働く」という「嫌なこと」を無理に続けている、とグレースに指摘する。グレースは、「じゃあ、お利口さん、私がすべきこと教えてくれる?」と尋ねる。「さあ。でも、時には、答えが目の前にあるかもね」(2枚目の写真、矢印は「目の前にある答え=“PAPA LOUIE’S”=昔、グレースが好きだった食堂)。その時は、グレースには、この謎々は解けなかった。グレースはコーリーを桟橋の下に連れて行く。そして、秘密の隠れ家の場所を教える(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

グレースが病院に行くと、赤ちゃんが生まれていた。その時の顛末は、次節の冒頭に廻し、その後の展開を先に紹介しよう。病院のセルフ式食堂でグレースが何を取るか迷っていると、デーオが「ケーキを取れよ」と催促。グレースは果物を選ぶ。不満気なデーオに、グレースは「妊娠のこと話して欲しいんでしょ」と言う。「違う。おいしい物を食べて欲しいだけ」。しかし、夫にはデーオの声は聞こえない。「妊娠」の部分だけが聞こえる。そこで、「機会も場所も最適じゃないか」と、父に話すよう勧める(1枚目の写真)。グレースと夫は、先にテーブルに着いているグレースの父母に合流する。そして、夫は打ち明けるよう促す。デーオも、父の後ろで飛び跳ねながら、「話せよ」と叫ぶ(2枚目の写真)。グレースが言おうとすると、デーオが茶々を入れ、それに対して「No」と叱ったので、父はグレースの話を聞こうとするより、「最近、変だぞ」と言って聞く耳を持たなくなる。父のバカにした態度があまりにひどいので、グレースは立ち上がると、「空想癖の娘に赤ちゃんができたのよ」と吐き捨てるように言う。デーオは、「その意気だ、頑張れ」と讃える(3枚目の写真)。「でも、やっぱり関心なさそうね〔But, obviously you don’t care〕」。そう言うと、グレースは食堂から出て行く。母は、「結婚して35年になるけど、恥ずかしいと思ったのは初めてよ」と夫を非難する。
  
  
  

話は、少し戻るが、グレースがコーリーを赤ちゃんのいる部屋に連れて入った時、コーリーは象のぬいぐるみを赤ちゃんにプレゼントしようとして、声が大きいと叱られる。その後も、赤ちゃんが主役で、コーリーが何を言っても聞いてもらえない。その差別感に耐えられなくなったコーリーは、そっと部屋を抜け出す(1枚目の写真)。その後、トニーは娘がいなくなったと言い出し、病院中捜しても見つからない。グレースは、ひょっとして秘密の隠れ家に行ったのではないかと思い、全員で桟橋に向かう。グレースが梯子を降りて行くと、コーリーは隠れ家から顔を出す。「パパ、怒ってる?」。「いいえ。あなたのこと愛してるわ」。グレースはコーリーに梯子まで来るように言うが、梯子と隠れ家の間には、2枚の木の板が渡してあるだけ。コーリーは「怖い」と言い出す。グレースは、デーオが後ろから守ってくれるから大丈夫と宥め、2枚の板に両手をついて渡らせる。途中で左手の板の一部が折れて落ちそうになるが、デーオが足をつかんで持ち上げる(2枚目の写真)。コーリーは無事到着し、梯子を登っていなくなる。2人だけになると、デーオはOKサインを作り、「うまくいったね」とグレースを褒める(3枚目の写真)。
  
  
  

グレースの父は、トニーとコーリーのやり取りを見ていて、自分が如何に娘をないがしろにしてきたかをようやく理解する。全員が引き揚げ、グレースはデーオと桟橋に残る(1枚目の写真)。グレースはデーオの横に座ると、覚悟を決める。「お別れね〔You have to go〕」。そして、「赤ちゃんには、私が味わえなかったあらゆる愛情を注ぐ。最高のママになるわ」と宣言する(2枚目の写真)。「もう怖いものなしだ」。「ないわ」。「ほんとにお別れだね」。そして、最後のかくれんぼ(3枚目の写真)。グレースが10まで数えて目を開けると、デーオの姿はどこにもなかった。
  
  
  

グレースと ラヴラヴの夫は、妊娠が分かる前から取り決めていた「第2のハネムーン」から帰って戻る。グレースが留守の間、父の倉庫はめちゃめちゃ。父には、如何にトニーがダメな男で、グレースがすべてを仕切っていたかが身に染みて分かる。グレースは、夫に、前の仕事には戻らないと宣言し、翌日、桟橋の前のビルに行き、好きだった食堂を覗く。すると、以前、1ドル・コインをプレゼントされ、「何に使うんだい?」と訊かれた時、「貯めておいて、わたしのレストランを買うのに使うの」と答えたのを思い出す。そして、父のところに行き、レストランを開くのが最大の夢だったと訴える。それを聞いた父は、これまでの反省の気持ちを込めて、開発業者との契約を破棄し、「過去の償いはできんが、これで出直そう」と、ビルの権利書を渡す。1年後。新しくオープンしたレストランの名前はもちろん「デーオ」。そこに、赤ちゃんを連れた夫が尋ねてくる。ベビーカーを押して店を出たグレースの前に こつ然とデーオが現れる。「可愛い子だね」。グレースはびっくりして顔を上げる。「だけど、看板は、もっと大きくしないと。もっとずっと大きく」(1目の写真)。「なぜ現れないのか気になってたわ。息子に紹介して欲しい?」。「待ってました」(2目の写真)。グレースはデーオに息子のフル・ネームを教える。デーオがヘリコプターに乗って遊んでいると、そこに男の子が寄ってきて、「おい、エルヴィス」と声をかける。途端にデーオの服がプレスリー風に変わる。デーオが現れたのは、グレースに会うためではなく、デーオの新しい「ご主人様」のお供をしてきたからだった。男の子:「あちこち捜したぞ」(3枚目の写真)。エルヴィスは、仕方なく男の子について行く。
  
  
  

      の先頭に戻る                    の先頭に戻る
     アメリカ の先頭に戻る               1990年代前半 の先頭に戻る

ページの先頭へ