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Sammen 2人して

ノルウェー映画 (2009)

オーディン・ヴォーゲ(Odin Waage)が主演する、父と子の映画。母を事故で亡くし、突然父と子になったという設定はよくあるが、父親が精神的に崩壊し、育児放棄から自殺未遂にまで至るという設定はあまり聞いたことがない。オーディンは、施設に預けられては脱走し、何とか父と暮らそうとするけなげな少年を好演している。

いつも、口先だけで実力の伴わない変な父。しかもずさんで、いい加減ときている。一家でイギリスに発つ日、空港に向かう車の中で、航空券、ひいては、クレジットカードを持ってきたかどうかで口論となり、母が荷物を見るため車を出たところではねられて死亡。その時の口論の原因は自分にあると自責の念にさいなまれる父は、自暴自棄となり奇行も目立つようになる。当然、一人息子のポールのことなどは放ったらかし。遂に面倒を見切れないと施設に預けてしまう。その後も人格崩壊は進み、売春宿で意図的に暴れて重傷を負い病院へ。一方のポールはどうしても施設に馴染めなくて、父のいる病院へ向かう。そこで自殺を図る父。知らずにその手助けをするポール。母や妻を失い、この世に2人しかいない親子の心がバラバラになってしまう。そして、我慢を重ねてきたポールの怒りが爆発した時、ようやく父の目に理性の光が戻りかける。

オーディン・ヴォーゲは、プラチナ・ブロンドの端正な少年。しかし、役どころは、映画でもあり得ないくらいダメ人間に転落した父のより孤児のような境遇になった少年なので、一身に同情を集めることになる。悲しげで健気なところがいい。


あらすじ

ポールは一人っ子。ノルウェーではよくある3人家族だ。優しい母に、口達者な父。映画はボーリングのシーンから始まる。いかにも名手みたいに口うるさく指導するくせに、自分は からきしダメ。「1本も倒せなかったわね」。「君らみたいに、運を天に任せて投げたら、もっと倒せたかもな。だが、俺は理論派だから」。ポールは誕生日に、中華料理に連れて行ってもらう。ポールはもともと難読症で読むのが大の苦手。メニューを読めないので番号で言ったら、父にくどくど叱られてキレる。絶対に好きになれないタイプの父親だ。
  
  

一家でイギリスにサッカー観戦に行く当日。「切符は、持ったの?」。「ああ」。「ほんと?」。「ああ」と言って車で出発する。しかし、途中で気になり、母が「ねえ、あなた」。「また、何だ?」。「手元に、あるの?」。「切符は不要だ。カードを出すだけ」。「カード?」。「買うのに使ったカードだ。カード番号が予約番号。チケットレスなんだ」。「で、カードはあるの?」。「ああ、鞄の中だ」。「私が詰めた鞄に?」。「そうだ」。「なら、飛行機には乗れないわ!」。「鞄の中だ!」。「責任感が欠けてるわ」。「言ったろ、鞄の中だって! 信じたら、どうだ!」。「まるで子供と同じね。確かめてくるわ!」。実にいい加減な父親だ。母は車を道路脇に停め(狭いのではみ出し駐車)、ドアから出たところを大型トラックにはねられて即死してしまう。
  
  

ここで、タイトルが入る。母の入った棺桶の前で、最後の別れの涙を流すポール。「さよなら、ママ」。父は、自責の念からか、「ちょっと 知人に会ってくる」と言って、そそくさと立ち去る。翌日、ポールを学校へ送るため車へ。鍵がない。アパートに戻るだけなのに、失敗を認めたくないが故に、「近道を知ってる」と強引に歩き始める。ポールは「学校に、遅れちゃうよ」と気が気でない。体操服もないことに気付くが、「そんなもん、借りたらいい」。ひどい父親だ。遅刻した学校では、優しい担任の先生の指示で、生徒全員がポールを励ます手紙を順番に渡してくれる。
  
  

ポールがアパートに帰ると、父は意味もなく本棚の整理中。「ねえパパ、お墓の花 買わないの?」と訊いても無反応。翌日、学校から帰ってきて、「花、買った?」と再度訊く。「花?」。「そうさ」。「花を、買うんだったか?」。「当り前だろ」。「そうか、なら明日買おう」。「けど、ママの誕生日は、今日だ!」。「“母の日”のことか?」。「ママの誕生日だ。知ってるだろ! 買って来るから、お金を」。「今は、手持ちがない」。母の墓に花を供えたいポールは、自分の小遣いを全部持って買いに行くが、足りず、盗んでしまう。アパートに戻って花を見た父は、「どこで、手に入れたんだ?」。「知ったことか」。2人で墓地まで歩いて行くと、父は、入口で「胃が、急に痛くなった」「先に行っててくれ。少し休むから」。ポールが花を供え、写真を置いて戻ってくると、父は姿を消していた。最低の父親だ。
  
  

アパートに戻ると、父がソファーに寝ている。「胃痛がひどくて」。その割にビールは飲むわ、ポールが自分でパンを切り始めると「ピザでも取るか?」。そして、ポールに電話で注文させる。電話を切ってポールが「1時間で届かなかったら、無料だって」と言う。カンフー映画を観ている間に、自分は黒帯まであと一歩だったと自慢げに言い、空手着に着替えてくる。しして、やり方を如何にも名人ぶってポールに教える。「さあ、本気でかかって来い」「それじゃ、女の子だ」とけしかけ、ポールが本気で腹に一発決めると、胃痛のせいにする。そこにピザが届く。「注文したのは4時15分だ。今は5時半だからタダだろ」とイチャモンをつけケンカに。最後はピザを奪おうとして床に散乱してしまう。それを見て、「まだ、5時5分前じゃないか!」と怒るポール。父は、さらに後でバーに飲みに行き、アベックに絡んで、怒った男性に放り出され、路上で激しく殴られる。心配で後をつけて行ったポールは、必死に止めて父を助け、アパートまで抱えて戻る。
  
  

そして翌日、父は児童福祉センターへ。「世話なんてできない」「世話する資格がない」という父に、「息子さんを、一時的に預かりましょう」と承諾。「それで、いいんですね?」「それが、望みですね?」。そして、その夜アパートでポールを引き取ることに。しかし、父は勝手にポールと中華料理店に。そこに、すっぽかされた担当者から電話が。「今、どこに?」。「ポールと 食事に来てます。言いませんでした?」。また言い逃れだ。「ここに、戻って下さい」というのを無視し、料理店にいると、しびれを切らした担当者が現われた。父は、そそくさとトイレへ逃げる。担当者が仕方なく、「児童福祉センターで働いてるの。お父さんが、今日相談に来られて、具合がとても悪いから助けて欲しいと言われたの」と切り出す。「一緒に車まで来れば説明する」と言われるが、ポールは、「パパと話したいよ」「ここにいたい」と反論。そこで、トイレから連れ戻された父。いいなり、「短期間だから」と言う。「短期間? 一体 何のこと?」と不審げなポール。「これ、パパが決めたの?」「本気で?」。それに目を合わせないようにして「そうだ」と父。「僕を、行かせたいの?」の訴えには、目線を逸らすばかり。あきらめたポールは担当者と同行する。
  
  

ヴィラ・ハウグという施設に着いたポール。所長が、「君のパパが今日来られて、“いいパパを続けるのはできない” って言われたの」と話したところで、ポールは耳を塞ぎ、唸り出す。担当者が去ると耳を塞ぐのをやめたポールに、所長が話しかける。「君が、聞くのを拒むのはよく理解できる。怒りを、ぶつけたい気持ちもね」。それに納得したポールが素直に「僕ここに、何日いるんです?」と尋ねる。しかし、返事はない。個室に案内される。「希望するなら、明日ポスターでも買いましょ。少しでも快適になるように」「最初の夜は眠れないかもね。それが普通。みんなそうだから」。ポールは始終無言だ。ポールは、ベッドに入りすすり泣く。一方、一人になった父は、多額の預金を引き出してセックスショップに行き、相手の嫌がることを続けた挙句、ボディーガードに半殺しにされる
  
  

翌日、ポールは施設に収容されている子供たち4人と一緒にテーブルを囲んでいる。新入生として紹介された後で、子供たちが好き勝手なことを発言し始める。その時、緊急な電話が入り、ポールは一瞬自分のことかと思う。その後、子供たちは収拾がつかなくなり、みんなが部屋から追い出される。ポールは、その時、別室で所長が「ポールのお父さんが集中治療室に」。「ポールに知らせる?」。「黙ってましょ」と話し合うのを聞いてしまう。
  
  

夜、こっそりと抜け出して病院に向かうポール。何とか病室まで辿り着き、重傷を負った父の横で眠り込む。深夜、看護士に起こされ、「ここにいちゃ、いけないんだ」と言われたポールは、自分のアパートに戻る。夫婦部屋で散乱したままの服の匂いをかぎ、ママのベッドに横になるポール。翌日病院で、父がベッドの脇のモルヒネの定量投与装置を見上げている。看護士を呼んで増量するよう頼むが断られる。そこに、ポールが来る。きれいな服や、毛布まで持ってきたのだ。そして、本を見せ、「読んであげる。難しくなさそうだから」と、ポツリポツリと読み始める。下心のある父は、「とても良くできた。頑張ったな」と褒めた後で、「イギリスにサッカー観戦に行こう」と言い、ポールを喜ばせる。こうして油断させておいて、何も知らないポールに「そこの柱に、黒い箱 架かってるだろ?」と言う。ポールが手に持つと、「グレーのボタンが2つあるだろ? 上の奴を押してくれんか?」。「これ?」。「そうだ。そしたら、左にあるボタンも同時に押すんだ」。「これ、何なの?」。「ビタミンと薬の入った水だ」。ピーと音が鳴る。「鳴ってもいいの?」。「いいんだ。もう十分だ助かった。もっと読んでくれるか?」。そして、ポールは続きを読み出した。モルヒネは過剰投与で死に至る。自分が自殺したくて、息子にそれを黙って幇助させる。これはもう犯罪行為だ。これほど悪質な父親が映画で描かれるのを見たことはない。声を出して本を読んでいる間に看護士が入ってきたため、ポールは部屋を出る。その直後、看護士は父の心拍停止状態に気付いて緊急処置。お陰で一命を取りとめた。
  
  

そんなことがあったは知らず、学校でも読書を褒められて気を良くしたポールが病室に入って来る。しかし、父はこう切り出す。「俺はもう、お前のパパじゃない。お前を、心から愛してる。だが、パパは務まらない。無理なんだ」。「僕が悪いの?」。「悪いもんか」。「じゃ、パパで いてよ」。それでも、父はさらにこう続ける。「施設に戻るんだ。いい人達だから。やるべきことを知ってる。だから、すぐ行け」。ポールの目から溢れる涙。そこに施設の職員が来て強制的に連行される。しかし、車が信号で停止した隙を狙ってポールは脱出し、そのまま雪の中を逃走する。
  
  

夜まで待って病院に戻り、「こんなトコ、ダメだ! ウチに戻ろう!」「死にたいの? 死ぬ気?」「帰って来いよ! パパ!」と叫び、もみ合いとなり、怒ってガラスのコップを投げつけるポール。粉々になったガラスの破片にまみれる父。ポールは駆け出していく。お金もなくお腹の空いたポールは紙パック(内容不明)を盗んでごくごく飲む。病院では、ようやく自分の現状を自覚した父が、看護士の制止を振り切って病院を退去する。アパートに戻っても息子はいない。心配なので、父は、バス停(屋根+ガラス壁付き)で夜を過ごす。
  
  

翌朝、ひょっとしたらと妻の墓地に向かう父。そこには、かいがいしく墓に花を供える息子の姿があった。父の姿を見て逃げるポール。抱きとめた父に対し、もがきながら「放せ!」「行っちゃえ!」とわめくポール。しかし、次第に声は小さくなり、遂に目と目で見合う2人。父は、ポールのやり残しの花を植え付ける。ベンチに少し離れて座る2人の後姿で映画は終わる。
  
  

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