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Better Nate Than Ever ブロードウェイ ドリーム!

アメリカ映画 (2022)

ディズニーの漫画映画 『リロ・アンド・スティッチ』(2002)がミュージカル化されるという設定のもとで、その一方の主役スティッチ役の選考にチャレンジする13歳の少年の物語。劇場公開ではなく、Disney+ で配信された(日本でも)。ミュージカル映画ではないので、歌はきわめて少ないが、それでも、実際に別のミュージカルの舞台で活躍した少年を主役に持ってきているため、歌の場面には迫力がある。英語のタイトルよりは、日本語のタイトルの方が、映画の本質をうまく表現している。面白いのは、その夢が一直線のものではなく、両親の結婚記念の一泊旅行(不在時)に合わせて、467キロも離れたニューヨークまで夜行バスでこっそり出かけてオーディションを受ける、それも、ズルして紛れ込んで受けるという設定。二次審査を通った後は、ニューヨークで1泊しなければならず、そこでまた障害にぶつかる。そして、翌日の最終選考では、弟の “やってはならない行為” を知った兄が乗り込んで来て、妨害しようとする。だから、オーディションの映画ではなく、いかにオーディションを受けられるようにするかという映画で、そこが面白い。最終選考の際の演技力と歌唱力は、ミュージカルで鍛えた技の賜物。

順を追って簡単に説明すると…
 ① ネイトは中学校主催のミュージカル『リンカーン』の主役に応募したが、結果は、ただの “木” の役でがっかりする。
 ② 仲のいい女生徒リビーが、新しいミュージカル 『リロ&スティッチ』 のキャスティングが明日行われると教えてくれるが、遠いニューヨークまではとてもいけないし、両親から許しが出るハズもない。
 ③ ところが帰宅したネイトは、その日の夜から1泊で、両親が結婚記念の旅行に出かけると知らされ、リビーの家で泊まると嘘を言って家を出る。
 ④ ネイトとリビーは夜行バスでピッツバーグからニューヨークに向かう。
 ⑤ オーディション会場では、両親か親族の付き添いが必須で、しかも、予め渡された番号札順にしか選考を受けられない。そこに、同じ建物で別のオーディションを受けに来た伯母とばったり会い、番号札も何とか手に入れて、伯母には内緒で一時選考を受ける。
 ⑥ 一次選考から漏れたネイトは、伯母の指示でリビーと一緒に帰りのバスに乗らされるが、そこに、彼を気に入ってくれた審査員の推薦で、二次選考への招待の電話がかかってきて、ネイトだけ急いでバスを降りる。
 ⑦ 二次選考は成功し、翌日の最終選考に出られることになり、吉報をリビーに知らせようとすると、スマホの電源が落ちて動かない。そこで、充電ケーブルを買おうとするがお金が足りない。
 ⑧ ネイトは、偶然出くわしたタイムズ・スクエアで熱唱してチップを稼ぎ、それでケーブルを買ってリビーに知らせ、かつ、その夜、泊めてもらおうとして、伯母さんに会う方法をリビーに教えてもらう。
 ⑨ ネイトは、貧しい伯母がアルバイトをしているパーティ会場に行き、そこで失態を起こし、伯母のアパートまで連れて行かれるが、会話の途中で伯母も機嫌を直し、最終選考への挑戦を許してくれる。
 ⑩ ところが、タイムズ・スクエアの熱唱がTikTokで拡散し、それを見た兄が、リビーを連れて翌朝、アパートに現れ、直ちに帰宅するよう命じる。
 ⑪ 隙を見て窓から非常階段を使って逃げ出したネイトは、地下鉄で最終選考が行われる劇場に向かう。
 ⑫ 兄、リビー、伯母の3人は、昨日のオーディション会場に行くが、そこは最終選考の劇場ではなかった。
 ⑬ 兄達は、ネイトからリビーに入ったメールを見て、正しい場所に向かう。
 ⑭ 劇場では、“まともに話せないエイリアンのスティッチ” がどうやって歌うのかよく分からないので、迷ってしまい、失格寸前になる。
 ⑮ そこに、駆け付けた兄が、2階の客席からはげまし、ネイトは生まれ変わったような熱唱を見せる。
 ⑯ 1週間後、母のもとに、キャスティング・ディレクターから連絡が入り、ブロードウェイでの週2回の公演が知らされる。

ネイト役はルービー・ウッド(Rueby Wood)。 2007年1月19日生まれ。映画の撮影は2021年6月なので、撮影時14歳。ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』(初演は2013年)の第一次全米ツアー(2018-19年)に、3人のチャーリー役の1人として活躍したので、この映画の中での歌とダンスは堂に入っている。ただ、これで声変わりしてしまうと、今後どうなるかは分からない。

あらすじ

13歳のネイトの部屋のスマホのアラームが鳴り7時15分を告げる。その下には、中学で行われるミュージカルの「配役リスト今日発表!!!」との文字が見える。今日がネイトにとって待望の日だったことを示している。スマホの横に置かれているのは幸運のお守りの「ウサギの足」の子供用の偽物。ネイトはとっても大事にしている(1枚目の写真、矢印)。ネイトは、洗面台の前に立つと、ミントとローズマリーの入った防臭スプレーを顔に吹き掛ける。そして、シャワーの湯で曇ったガラスに「ネイト」と書くと、その周りに、ネオンのような『Better (Nate) Than Ever』の文字が付け足され、映画の題名〔「かってないほど素晴らしいネイト」くらいの意味〕が表示される。すると、友達のリビーから電話がかかってくる。ネイトと違って主役を希望していないリビーはコーラスの一員でいいからと言った上で、電話をかけた理由を 「うまくいきますように、幸運を祈るわ〔Break a leg: オーディションを受ける人などに対して使う表現〕と言いたかっただけ」と言い、さらに、「あんた、今年はきっと主役 取れるわ」と元気づける(2枚目の写真)。そのあと、キッチンに行ったネイトは、母から、「今日はえらく早起きね」と言われ、ネイトは 「いよいよ今日なんだ。このセーター派手過ぎないかな。僕、『主役に選ばれて感激だけど、思ってもいなかった』って、見えるようにしたいんだ」と自信たっぷり(3枚目の写真)。母は、たかが学校の演劇(ミュージカル)なので 無視に近い。
  
  
  

そこに、兄のアンソニーが、汚いスポーツバッグを持って来て、洗い終わった洗濯物入れの上に無造作に放り込み、母から注意され、さらに冷蔵庫を開け、大きなオレンジジュースのポリ容器から直接飲み(1枚目の写真、矢印)、ネイトから 「コップなしで?」と嫌がられる〔オレンジジュースは酸性なので直飲みによる細菌増殖は少ないが、性格がずさんな点はスポーツバッグで立証済み〕。アンソニーは、ピックアップトラックを運転して高校に向かい(2枚目の写真)〔アンソニーが車を持っていることは重要な伏線〕、ネイトは 家の前からスクールバスに乗る。ネイトは、バスの扉が開くと、ふざけて 「やあ、おやじ〔guv'nor〕」と声をかけ、睨まれる。ネイトの派手なセーターが嫌われ 空いている隣の座席に座らせてもらえない中で、鞄をどけて開けてくれた女の子の横に座ろうとすると、いつもの虐めっ子が 「女の子は座るな」と文句を言う。ネイトが、「奇抜だね」と言うと、今度は 「レディ・ファースト」と反対の表現。ネイトが無視して座ろうとすると、虐めっ子がネイトの大事なウサギの足を握って背負ったバッグを自分の方に思いきり引く(3枚目の写真、矢印)。ウサギの足は引きちぎられ、ネイトがウサギの足を庇おうとした手が相手の顔を引っ叩いて鼻血が出る。運転手が座るよう注意したので、虐めっ子は 「今日は 気をつけろよ、負け犬」と脅す。ネイトが座ると、そこにリビーからのメールが入る。「配役リスト発表/会いましょ。いいニュースがあるの」。これを見たネイトは。1行目と2行目を同じに捉え、“配役でいいニュース” だと勘違いしてしまう。
  
  
  

期待に燃えたネイトが、ミュージカル『リンカーン』の配役リストを見に行くと、何と、第一希望のリンカーンはおろか、代役、リンカーンの死んだ息子の役すら与えられず、“木” の役だった(1枚目の写真、矢印はリスト)。役を選定した女性教師は、ネイトをリンカーン役にしなかった理由を、これまで主役を演じたことがないからだと言うが、それにしても “木” というのは、あまりに不親切。主役希望者なので、もう少し配慮しても良かったのでは。ネイトは、その場にいたリビーと一緒に、人目を避けようとトイレの個室に行く。ネイトは、さっそく、「『いいニュース』? 何だよ、あんなメール送って」と文句を言い(2枚目の写真)、その後は、夢が破れたことへの自嘲。すると、リビーが、「話していい?」と訊き、スマホで、新しいミュージカル 『リロ&スティッチ』 のキャスティング募集の記事を見せ(3枚目の写真)、「マンハッタン。公開オーディション。明日。私たち小さい頃から言ってたわよね、『いつかニューヨークに行こうって』。2人だけで」と言う。ネイトは、夢のような話に、大勢の人々に歓迎される幻想を抱く。すると、そこに兄が出てきて、「タクシーでニューヨークまで行けると思ってるんか?」と訊き、みんなが笑い、幻想が消える。
  
  
  

ネイトは、リビーが バカなことを言い出したかのように、「どうやってニューヨークまで行くのさ? スティッチが宇宙船で僕らを拾ってくれるんか〔スティッチはエイリアン〕?」と攻撃的に責める。リビーは、「そんな口調やめて」とネイトを落ち着かせ、「夜行バスでこっそり行くの」と教える。「リビー、僕のママは、ライト・エイド〔ドラッグストアチェーン〕にだって、1人じゃ行かせないよ」(1枚目の写真)。ここで、リビーが 「あんたのトニー賞、一緒に行きたいわ」と突飛もないことを言い出し、ネイトもすぐに、授賞式の幻想を抱くが、隣に座った母が、「ニューヨークのどこで寝るの?」と訊き、周りが笑ったのですぐ幻想から戻り、同じ質問をリビーにぶつける。リビーは 「あんたの伯母さんは? ブロードウェイの女優さんでしょ?」。「そうだよ。すぐママに連絡が行く」(2枚目の写真)。「ニューヨークで伯母さん出会うと思う? 人口1700万〔17 billionと言っているが17 millionの言い間違い〕の都市で?」。「ニューヨークのことは忘れろよ」。リビーをがっかりさせたネイトが家に帰ってくると、両親と兄が居間に揃っている(3枚目の写真)。おまけに、すぐ横には、スーツケースが2つ置いてある。そして、母が、結婚記念日にウェストバージニア州の高級ホテルで1泊することになったと告げる〔父は失業中だが、母は二交代制で働いている〕。ここで、ネイトのベビーシッターが問題となり、兄は、明日試合があるので面倒が見られないと断る。
  
  
  

このチャンスを生かそうと、ネイトは、「今夜は、リビーのママの家に泊まれるよ」と提案する(1枚目の写真)。母は 「できるの? 迷惑かけないかしら?」と心配し、兄は 「俺が 女の子の家で泊まることなんか絶対許さなかったのに」と文句を言う。この件は、父の 「お前はネイトと違う」の一言で決着。ネイトはすぐに部屋に行くと、ニューヨーク行きに必要なものをバッグに詰め、すぐにリビーの家に向かう。リビーは、①明日、ネイトが自宅に戻っているように見せかけるための “インスタグラム用の自撮り写真” があることを確かめ、さらに、②キャスティング・ディレクターが両親の携帯の番号を尋ねたら、2人(リビーとネイト)の携帯の番号を教え、ネイトは声変わり前なのでママの真似をするよう指示する。そして、最後に、「顔写真は入れた?」と訊く。ネイトが、幼い頃の小さな写真を見せ(2枚目の写真、矢印)、「最悪のヘア・カットした時の学生証用の写真だよ。パパが失業してるから、8×10〔20cm×25cm〕の写真なんかないよ」と言う。その直後、ネイトは 『ウェスト・サイド・ストーリー』が好きなので、窓から出ようとして、リビーに 「オーディションの前に足首を骨折したいの?」と注意される。そして、Lyft〔ライドシェア型のオンライン配車サービス〕が あと12秒で到着するので、急いで家を出る。2人は、Lyftで ピッツバーグのバスセンターまで行き、ニューヨーク行きの夜行バスに乗り込む〔バス代は、成功報酬でネイトが払うという条件で、全額リビーが払う〕。席に着くと、リビーは如何にも女の子用のアイマスクをはめてネイトにもたれ、ネイトは窓にもたれて眠る。夢の中で、ネイトは3分10秒にわたって『Nate on Roadway』という独自のミュージカルの中で、歌とダンスを披露する。これ以外にダンスシーンはないので、この夢の中のダンスがネイト役のルービー・ウッドの才能が見られる唯一のチャンス。
  
  
  

着いた途端の雨でびしょ濡れになった2人は、オーディションの行われる建物に行き、入口の “受付けの男” に、「どうも。僕たち リロ&スティッチのオーディションに来ました」と、満面の笑顔で訊く(1枚目の写真)。不愛想な男は、「ニューヨークは初めてだな」と言うと、首を振って方向を示す。すると、すぐ近くの廊下には、子供達が数十人並び、胸に番号の付いた紙を付け、父兄が大きな顔写真を持って並んでいる。そこに現れたのが、キャスティング・ディレクター。一緒に現れた女性スタッフが、①24時間で1000人のオーディションを行う。②ここに集まった最初の25人が、胸に付けた数字の順番に並ぶ〔番号など持っていないネイトは困惑する〕。③マカダミア・ナッツにアレルギーのある子は申請書に記載すること〔それを聞いて絶望した13番の男の子が、泣きながら立ち去り、番号札をイスに置いていく〕。④親か保護者と一緒にサインすることが必須条件。どんな言い訳も通用しない(2枚目の写真)〔それを聞いてネイトは愕然とする〕。その時、背後から、「ネイサン」と呼ぶ声が聞こえ、振り向くと、そこには何と伯母がいた(3枚目の写真)。
  
  
  

これで、④の条件をパスしたネイトは、喫茶室で伯母と対面するが、そこで、伯母が奇跡的に現れた理由が分かる。それは、別の演劇の30代半ばの主役のオーディションを受けにきたため。会話の途中で、伯母から 「お母さんはどこ? トイレかどこか?」と訊かれた時、ネイトは何も言わなかったが、伯母が 「この子、あんたのガールフレンド?」と訊くと、ネイトは 「違います」と否定し、リビーも 「私たち、まだ決めてません」と否定する。そのあと、母がいないことをこれ以上隠し通せないと思ったネイトは、「ママは、ここにいません」と正直に打ち明ける。リビーが、「ネイト!」と注意すると、「3分もすれば必ずバレちゃう」とリビーに言う。それを聞いた伯母は、「じゃあ、誰が連れて来たの? お父さん?」。今度はリビーが、「家出して来ました」と打ち明ける。それを聞いた伯母は “責任ある大人”モードに変わり、ネイトから母のスマホの電話番号を訊き、ネイトはリビーのスマホの電話番号を教える(2枚目の写真、矢印は伯母のスマホ)。ネイトは、スマホを留守録モードに切り替えたので、伯母は、ネイトの母に伝言を残す。その中で、「次の飛行機に乗せる」と言ったので(3枚目の写真、矢印)、ネイトはすかさず、「バスです。飛行機のお金なんてありません」と言う。伯母が電話を終えると、キャスティング・ディレクターが最初の25人に部屋に入るよう指示する。
  
  
  

どうしてもオーディションに出たいネイトは、急におしっこに行きたくなったフリをする。伯母も、生理的要求なので、すぐに行くよう認める(1枚目の写真、矢印)。ネイトはイスに放置してあった「13」の番号札を取ると(2枚目の写真、矢印)、それを胸に張り、13番になりすましてオーディション・ルームに入って行く。そこでは、キャスティングの実施担当の禿の男性が、スティッチの役柄について、マスコットキャラクター用の全身スーツを着ての演技となるため、多才な子供が必要になると説明している。キャスティング・ディレクターは、高所恐怖症もダメだと補足する。そして始まったオーディションは、叫び声をあげさせただけ。それが終わると、実施担当が、「第一次選考を行う前に、実演して見せたい特殊技能のある子はいますか?」と訊く。それを聞いたネイトは、隣の子に、「『第一次選考』? 叫んだだけじゃないか?」と話しかける。6番の男の子が、体操選手だと言って前方連続回転を披露し、それを見たネイトは拍手するが、他の誰も拍手しないのできまり悪そうに止める。「他に、メアリー・ルー・レットン〔元女子体操選手〕はいるかな?」。ネイトは手を挙げ、『屋根の上のヴァイオリン弾き』のボトル・ダンス〔膝で這うようなダンス〕ができると言い、実施担当助手の黒人女性が、「やらせてみたら」と勧める〔彼女は、なぜかネイトが気に入っている〕。ネイトが、頭にボトルが乗っていることを前提に、「マゼルトフ」と叫んでしゃがんだ途端、ズボンのお尻が裂け(3枚目の写真、矢印)、ダンスをあきらめる。たったこれだけで、キャスティング・ディレクターが第一次選考の合格者の番号を読み上げる〔13番は入っていない〕
  
  
  

伯母は2人をバス・ステーションまで連れて行く。そこで、リビーが 「次があるわ」と言うと、ネイトは 「次なんてない。僕にとって最初と最後のブロードウェイのオーディションで落とされた」と捨て鉢。伯母は 「私に嘘付いて、オーディションに割り込んでね」と、トイレが嘘だったことをその時知らされて 嫌味を言い、ネイトは自分が愚かなことを言ったことに気付いて愕然とする(1枚目の写真)。伯母はさらに、オーディション会場の横でネイトの母宛にしゃべった留守録に対する母からの返事が、アフリカ系アメリカ人の親指を立てた絵文字であることを問題視する。幸い、そこに、ピッツバーグ行きの午後2時発のバスの最終案内放送があったので、伯母はそれ以上追及せず、これから彼女が自然博物館で、バーミツワ〔ユダヤ人の13歳の男の子の成人式〕のケータリングのアルバイトをするとだけ言って去って行く。ネイトは、エスカレーターに一旦乗った後、手前の店でウサギの足を売っているのに気付き、一番カラフルなものを選ぶ(2枚目の写真)。その頃、オーディション会場では、「24時間」と言っていたのに、もう一次選考を終えようとしていた〔応募者が少なかった?〕。キャスティング・ディレクターが二次選考に進む子供のリストを原案通りで決めようとすると、実施担当助手の黒人女性が、提出された大型写真を探してもないので、「ちょっと待って、あの子どこ?」と訊く。「どの子だね?」。「あの奇妙で面白い子。『屋根の上のヴァイオリン弾き』のボトル・ダンスの」。実施担当は 「あの子が 気に入ったのか?」と訊く。「私の好きなタイプなの。エネルギッシュだったわ」。「連絡先も渡さなかった」。ここで、受付けをやっていた女性が、「これ、彼の友だちがくれたわ。裏に電話番号が書いてある」と言って、ネイトがリビーに渡した小さな写真を見せる(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

2人がピッツバーグ行きのバスに乗り込むと、すぐにネイトのスマホから着信音が聞こえる。ネイトがすぐにスマホを取り出すと、212の市外局番〔ニューヨーク〕からの新着ボイスメールと表示されていたので、何だろうと電話に出る。すると、それが二次選考への参加連絡だった(1枚目の写真)。バスが動き始めていたので、ネイトは立ち上がると、「運転手さん、バス止めて!」と叫ぶ。親切な運転手は止まってくれる。「そうしたの?」と訊くリビーに、ネイトは 「呼び出し電話があった。20分で行かないと」と言う(2枚目の写真)。リビーはなぜか素直に喜ばず、別れ別れになることを嫌がるが、ネイトは 「ホントにごめん」と言ってバスを降りる。その頃、ピッツバーグの自宅には、片足を捻挫した兄アンソニーが戻って来て 「ネイト!」と呼ぶが、返事はない(3枚目の写真)。そこに、今日の試合の仲間からスマホに連絡が入り、今夜、アンソニーの家でパーティをやろうと持ち掛け、アンソニーも賛成する。
  
  
  

二次選考で、ネイトは4人の前で、『アナと雪の女王』の「レット・イット・ゴー」を歌う(1枚目の写真)〔雪の女王エルサが歌う曲〕。歌い終えると、キャスティング・ディレクターが、「男の子が『レット・イット・ゴー』を歌うのを聴くのは初めてだ。それは認めるよ〔I'll give you that〕」と言うと〔ある程度 評価した〕、「突拍子もない質問だが、君は、何かモノローグができるか?」と訊く。「モノローグ?」。「簡単なスピーチだ」。実施担当が 「短くな」と注意。そこでネイトが始めたのは、『Designing Women(浮気なおしゃれミディ)』というTVドラマのシーズン1、エピソード2の「The Beauty Contest」(1986年)の中にある、「The night the lights went out in Georgia」という一節でJuliaが立て続けに早口で話す台詞。キャスティング・ディレクターが、途中で「OK」と言って止めさせようとするが、ネイトのプロ顔負けの熱演は延々と続く(2枚目の写真)。4人を驚かせたモノローグが終わった後、キャスティング・ディレクターは、「明日また来てくれるか? 監督は君に会うべきだと思う」とネイトに言う(3枚目の写真、矢印はウサギの足)〔高く評価した〕。そして、会場は、ここではなく、西41番街のニュー・アムステルダム劇場だとも〔実際には西42番街〕
  
  
  

ネイトは最高の朗報をリビーにメールしようするが、途中で電源が落ちて切れてしまう(1枚目の写真、矢印)。ネイトはすぐにスーパーに入り、充電とデータ転送できるケーブルを手に取ると(2枚目の写真)、レジに持って行き、くしゃくしゃに丸めたお札を出す。レジ係は、「白血病の子供たちに寄付しませんか?」と訊き、ネイトは、「やめとくよ。今夜寝る場所のない子供たちに寄付しない?」と訊き返す。「1ドル足りない」。「どうしても、充電器が要るんだ」。「次の人」。感じの悪いレジ係に頭に来たネイトは、外が寒いこともあり、出口に置いてあった 「あなたのコートを寄付しましょう」と箱の一番上にあった紫色のコートを拝借する(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

ネイトがコートを羽織って暗い道を歩いていると、いきなり目の前に光の溢れるタイムズ・スクエアが現われる。中には、テナー・サクソフォンを侘しげに吹いている黒人がいて、ネイトはその音に合わせて低く歌いながら寄って行く(曲は『オン・ブロードウェイ』)。ネイトは、大きな声で曲の最初から歌い始め、それに合わせて、ドラムも演奏を始める。そこに、1人の黒人が寄ってきて、チップのコインを1枚落とすと、「これからも頑張れよ。いい声してる」と笑顔で言い、フィスト・バンプする(1枚目の写真)。お金を拾ったネイトは、これで充電器を買えると思い、コートなど脱ぎ、本気になって歌い始める。近くにいたトランペット、バリトン・サクソフォン、チューバ、ギターも参加し、聴衆も集まり(2枚目の写真、矢印)、その姿をスマホで録画する人も(3枚目の写真)。
  
  
  

歌い終わると、ネイトはバッグを持って、聴衆からチップを集める(1枚目の写真)。集め終わると、聴衆に曲をリクエストし、それがたまたま 『屋根の上のヴァイオリン弾き』。映画では歌うシーンはないが、これでチップがさらに増えたことは間違いない。そこで、ネイトは さっき売ってくれなかった店に戻り、カウンターに大量のコインの袋を置き(2枚目の写真)、「このコートも買うよ」と、とりすました顔で言う。そして、店から出ると、充電ケーブルを歩道の電源に差し込み、すぐにリビーに電話をかける(3枚目の写真、矢印)。ネイトは、「明日の最終選考に残ったよ。ニュー・アムステルダム劇場だ。その前に、殺されなければだけど。伯母さんに電話したけど、留守録だった〔電源切れの際に電話した相手もリビー、充電ケーブルを使って最初に電話した相手もリビーなので、「伯母に電話した」のは、いつ? この部分は間違っている〕。伯母さんがどこに住んでるか知らないから、今夜、どこで寝たらいいか見当もつかない」と、嬉しい報告と、今後の不安を打ち明ける。リビーは、「伯母さん、自然博物館でバーミツワやってるから、そこに行けば」と的確なアドバイス。それを聞いて嬉しくなったネイトは、これまで封じてきた言葉を並べる。「だから、僕、君が好きなんだ。ホントだよ。君は、最初から後押ししてくれた。君は舞台に立たなくても、僕のスターだ。僕には、君が必要だ」。
  
  
  

ネイトはさっそく自然博物館に向かう。入口には、バーミツワの受付けの女性がいて、名前を訊く。当然、そのリストにネイトの名前があるハズはないので、「こんなの楽しいんじゃない? あなたが、まだ来ていない人の名前を読み上げる、そしたら、僕が、それだって言うから」。受付けは、相手が “招かれざる客” だと分かり、「パーティ用の服じゃないわね」と言うと、出て行くよう手で指示する。そこに、電話がかかって来る。女性が後ろを向いて対応し、さらに、配膳係が料理の乗ったテーブルをすぐ近くまで動かして来たので、ネイトは床に這いつくばると、そのままテーブルに向かって這って行く(1枚目の写真)。女性が振り向いた時には、ネイトはテーブル・クロスの中に入り込んでいて、女性は “諦めて帰った” と思う。テーブルはエレベーターに乗せられ、バーミツワの会場の階まで上がって行く。すると、伯母の声が聞こえる。「滑稽なくらい大胆な甥みたいに 元気一杯だといいんだけど」。男性:「それって、あんたがキッチンで話してた子かい?」。「ええ」。女性:「てっきり、あなたの息子さんかと思ったわ」。「そうなら嬉しいんだけど」(2枚目の写真)「今日、15分一緒にいたんだけど、私より百倍面白くて、素早いわ。まるで、ネイサン・レイン〔舞台俳優〕とタスマニアデビル〔タスマニアの獰猛な肉食有袋動物〕の子供みたい。ここで、伯母は降りてしまうが、テーブルはさらに上の階に行くので、ネイトは出られない。一方、自宅で内緒のパーティをやっているアンソニーのところに、仲間の1人がTikTok〔中国製〕で送られてきた動画を見せる。兄は女の子とキスしかけていたので、最初無視するが、「見ろよ、ニューヨークだぞ」と言われ(3枚目の写真、矢印)、スマホ画面をよく見ると、何とネイトが歌っている。弟が、よりによってニューヨークにいるのを知った兄は、パーティを放り出して、ピックアップトラックでリビーの家に向かう。
  
  
  

ネイトは、会場に着くと、テーブルの下から抜け出し、いかにもお客のように振る舞っているが、そこに恐竜の形をしたお祝いのケーキを伯母が両手で運んできて、ネイトと鉢合わせし(1枚目の写真、矢印)、びっくりして大事なケーキを床に落としてしまう。一方、アンソニーが、リビーの家の前で待っていると、リビーがLyftから降りて家に向かって歩き出す。アンソニーは、すかさず、「さて、さて… バカなチビ助がニューヨークにいて、TikTok上でなぜ拡散してるのか教えてくれるかな?」と声をかける。「言わなくちゃいけない?」(2枚目の写真)。そこに、スマホに電話の着信音があり、発信者が伯母だと示される。アンソニーは、「なんで、伯母さんが君を呼んでるんだ?」。「彼女は、あなたのお母さんにかけてると思ってるの。ややこしい話になるけど」。一方、高級ホテルで記念の一夜を過ごしているネイトの両親は、TVをつけたまま話がはずんでいる。だから、TVのキャスターが、「ペンシルベニアから来た子供が、今夜、タイムズ・スクエアで人々をびっくりさせました。信じて下さい、必見の価値があります」〔どうして、ペンシルベニアだと分かったのだろう?〕。そして、TVの画面はTikTokの映像に変わる(3枚目の写真)。しかし、幸い、両親は 話に夢中でTVなど見ていない。
  
  
  

伯母は、“ブロードウェイで活躍している女優” の割には、お粗末極まるアパートにネイトを連れて行く。そして、壁紙もペンキも塗っていない汚い窓辺の背なしソファにネイトを寝かせると、「あんたのせいでケーキを落とした。どうやって家賃を払えばいいの?」と文句を言う。ネイトは、「伯母さんとは話したくない」と言い(1枚目の写真)、顔を背ける。伯母は、「明日、朝一番のバスに乗せるわ。それが正しいことだから」。そう言うと、5年分の “誕生日おめでとう” の未投函カードを渡し、カードを送らなかった理由を、喜ばれるかどうか分からなかったからと、如何にも愛情が籠っていたかのように説明する。これに対し、ネイトは 「でも、さっき伯母さんは バーミツワの子供たちの前で僕を怒鳴りつけたじゃないか」と反論する。そして、「7年生で、『Corner of the Sky』〔ピピンの歌〕の歌詞を全部覚えてる子は、僕だけだよ」と自慢も。ここで、伯母は、引用をする。「Everything has its season, everything has its time(どんなものにも旬があり、ふさわしい時がある)」。これは、Solveig Leithaugの歌『Everything Has Its Season』からかもしれないし、その元となった旧約聖書のコヘレトの言葉(第3節)「Everything has its time」からかもしれない。伯母はさらに、ピピンの歌詞を覚えている子は他にもいるし、それを知られたくないだけだと辛口でネイトの傲慢さを戒め、そんなことを言った理由として、「あんたが、私を思い起こさせるから」と言う。ネイトが、嬉しそうに 「ホントに?」と訊いたので、伯母は、「褒め言葉だと思ったの?」と否定しようとするが、ネイトは 「もちろん 褒め言葉だよ。伯母さんは、僕が大人になった時、誇張なしになりたいすべてなんだ」(2枚目の写真)「ブロードウェイで3週間、ニューヨークにアパート」と、尊敬の言葉を並べる。「クイーンズだけど」。「クイーンズもニューヨークだよ。そして、伯母さんは僕のヒーロー」。これらの言葉に胸を打たれた伯母は、それまでの頑なな態度を一変させ、「明日の選考に行きなさい。ママは、このこと知ってるのよね?」と訊く。「それ本気なの?」。「そうよ」。「オーディションの秘訣ある?」。伯母は、①歌詞をすべて覚えていないかのように、楽譜を持ってステージに立つ、②途中でさりげなく楽譜を落とす。「曲なんか全部覚えてる。最後には、心が吹っ飛ぶよ」て感じで、③常にステージのスポットライトに当たるようにする、の3点を助言する(3枚目の写真)。
  
  
  

翌朝、ネイトは、兄がドアをドンドンと叩き、「ネイサン!」と怒鳴る声で目が覚める(1枚目の写真)。イライラしながら入って来たアンソニーに、伯母は 「いらっしゃい〔Hi〕、アンソニー」と歓迎するが、アンソニーは伯母には丁寧に答えたものの、ネイトには、「俺には、『やあ〔Hi〕、アンソニー』と言うなよ」と厳しい。そこで、ネイトは、「バイバイ、アンソニー、僕は伯母さんとニューヨークで暮らすから」と反撃。「ママが、そんなこと許すか」。「だから、何? 下で手錠でも持って待ってるの?」。「俺がここにいることも知らん。いいから車に乗れ。俺の役目は、お前の面倒をみることだ。今すぐ、下に降りろ!」。ここで、なぜか、急にネイトは弱気になり、「最後のオーディションまで、2時間だけ待ってよ。僕のことを恥かしい奴だと思ってることは知ってるけど、これだけはやらせて」と頼む(2枚目の写真)。伯母も、最終選考に残ったことがどれだけ重いことなのか、できの悪い兄に教えようとする(3枚目の写真)。
  
  
  

その隙に、ネイトは、伯母のコートをこっそり着こむと、隣の部屋に逃げ込み、窓から非常階段に逃げる。兄が気付いた時には、1階分以上差を付けているし、兄は足が完全に治っていないので後を追えない(1枚目の写真、矢印)。ネイトは、地下鉄アストリア線の高架部分の下を走って近くのアストリア・ブールバード駅への階段を駆け上がる。しかし、自動改札の棒が邪魔になって中に入れない。乗り越えようと思った時、女性の駅員が運悪くやって来て制止する。ネイトは、緊急事態だからとお願いする。その様子を見ていた駅員は、ネイトが昨夜のTikTokの少年だと気付くと、姪のために自撮りの2人撮りを希望し、ネイトは、「地下鉄に無料で乗れる?」と訊く(2枚目の写真)。双方の要求が合致したので、ネイトは満面の笑顔でホームに立つことができた(3枚目の写真)。この電車に乗れば、ブロードウェイ線経由で、ニュー・アムステルダム劇場のすぐ近くにあるタイムズ・スクエア-42丁目駅まで10駅で行ける。
  
  
  

その頃、伯母のアパートでは、ネイトが伯母のコートを借りていったので、伯母は代わりにネイトの紫のコートを着て、昨日のオーディション会場に向かう〔アンソニーと一緒に来たリビーは、最終選考がニュー・アムステルダム劇場で行われることを黙っている〕。一方のネイトは、車内でも、すぐに気付いた乗客から笑顔とスマホで迎えられる(1枚目の写真)。そして劇場の前に来ると、スマホで自撮りし(2枚目の写真、矢印)、すぐに写真をリビーに送る。一方、昨日の会場に行った伯母は、昨日と同じ受付けの男に、「今日のスケジュールに、『リロ&スティッチ』はありません」と言われてしまう。その時、ネイトが送ったメールが着信し、リビーが見てニヤニヤしたので、怪しいと思ったアンソニーがスマホを奪うと、そこには自撮り写真が。アンソニーは、「ここが選考の場所じゃないって知ってたな」とリビーを責めると、スマホの写真を伯母に見せる(3枚目の写真、矢印)。これで、行き先がバレてしまう。
  
  
  

ニュー・アムステルダム劇場の脇には、10数人の子供たちが列を作っていて、ネイトは何とか間に合って、列の一番後ろに並ぶ。すぐに、キャスティング・ディレクターが現われ、全員を楽屋に入れる〔伯母たちがやって来ても、隔離状態にあるため、直接会うことはできない〕。一方、最初のオーディション会場では、伯母のことを高く買っている別の劇のディレクターが、是非とも今日のオーディションに参加するように勧め、結果として、ニュー・アムステルダム劇場にはアンソニーとリビーだけが向かう。そして、劇場のステージでは、客席に並んで座った5人の審査員の前に、ネイトが呼ばれる。ネイトは、渡された台本の最初から、それらしく話し始める。(銀河連邦議長)「罪を認めるか?」。(ジャンバ)「無罪です。理論だけで違法な実験は行ってません」。ここで、監督が、「スティッチの台詞だけ読んだらどうかしら」とサジェストするが、ネイトは、「ご心配なく。できます」と言い、その後も、銀河連邦議長とジャンバの2役を演じ、次いで、ガラス瓶の中のスティッチが蠢く様子を体で演じ、それを見たガントゥが、「その怪物は何だ?」と驚くシーンを演じ(1枚目の写真)、その後のジャンバの長い台詞の途中で、監督が立ち上がり、「その部分は、今、書き直している最中です。ありがとう」と言って、やめさせる。そして、ネイトの近くに寄って行くと、「あのね、リロがチャイムを鳴らすデュエットの部分にきたら、音楽が流れるから、スティッチの歌詞だけ歌ってね。今日は、スティッチを演じる日だから」と親切に注意するが、舞台の裏では他の子供達が笑っている。ネイトは、自分が如何に物知らずのバカだったかを悟り、恥かしくて動揺を隠せない。場面は、伯母のオーディション会場に変わり、列の最後に並んでいる伯母に、2人前の女性が、スマホを見て嬉しそうに笑う。伯母が、「何がそんなに面白いの?」と訊くと、女性は、「この子、何て凄いの」と言って、昨夜のネイトのTikTokを見せる(2枚目の写真)。それを見た伯母は、ネイトの才能に気付き、こんなことをしている場合ではないと思うと、台詞を書いた紙をイスの上に残してニュー・アムステルダム劇場に向かう(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

次がいよいよミュージカルの本番、歌唱力の審査。ネイトに好意的な監督は、「歌う前に何か質問はありますか?」と尋ねる。「一つだけ。映画では、スティッチはまともに話せないのに、ミュージカルの歌詞をどうやって歌うんですか?」。これに対しても、後ろから笑い声が聞こえる。監督は、「なぜなら、ミュージカルでは、現実の世界では言えないことも、言えるからです」と、説明する。2階席には、こっそり、3人が忍び込んで、かたずを飲んでネイトを見ている。それを聞いても、ネイトは迷い、ピアノ演奏が始まっても、声が出ない。やっと歌い出すが、如何にもスティッチが歌っているようにヘタクソにしか歌えない。あまりに下手なので、途中で止めさせられる。すごすごと引き揚げていくネイトを見た兄は、立ち上がると、「お前は恥ずかしい奴なんかじゃない。ホントだ」と声をかける。それを聞いたネイトは、タイムズ・スクエアで歌ったように、心の底から思い込めて歌い始め、伯母に教えられたように、楽譜も途中で放り投げる(1枚目の写真)。そして、そのあとは、誰をも魅了する熱唱(2枚目の写真)。最後は、笑顔で終わる(3枚目の写真)。さっきまで笑っていた舞台裏の子供達は、手を叩いて称える。
  
  
  

最終選考を終えたネイトは 3人と一緒に劇場の玄関まで行く。兄は 「お前にあんなことができるなんて知らなかった」と褒め、ネイトは、「家じゃ歌わせてくれないから」と切り返す。ネイトは、伯母に向かって、「言われた通り、楽譜を落としたよ」と、お礼を言い、伯母も笑顔で 「見たわ」と言う。兄は、二重駐車しているので、そろそろ出ようと言い出すが、伯母はネイトを呼び止め、「ネイト、これプレゼント。来る途中、タイムズ・スクエアにあった観光客用の店で買ったの」と言って袋を渡す。その時、リビーが、トラックに違反切符が置かれようとしていると告げたので、兄は飛び出して行く。2人だけになると、ネイトは、伯母の家から逃げ出した時に拝借したコートを脱いで返す〔紫のコートは、持ち帰って両親に見つかると大変なので、伯母がそのまま着ている〕。そして、「今年のクリスマスには、会えないって期待してるよ」と伯母に告げる。それを、“会いたくない” からだと思った伯母は、「ひどいこと言うのね」とがっかりするが、ネイトは、「だって、伯母さん劇で忙しくて、家に来られないでしょ」と、伯母がオーディションに受かったと思って言葉を返す。「オーディション受けなかったのよ。ここに来たかったから。そうして良かったわ」。そこに、リビーが呼びに来る。ネイトは、「オーディションの秘訣、ありがとう」と、再度礼を言い、伯母は、これが最後の機会と思い、「ネイト、ママに言ってくれる? 何で喧嘩したかも覚えてない、会いたいわって」と頼む(1枚目の写真)。「分かった、伝えるよ」と言うと、玄関から出て行く際、もう一度振り向き、「伯母さんは 僕のヒーローだ」と称える(2枚目の写真)。一方、ピップアップトラックに駐車違反なしで乗り込んだ兄は、さっそく両親に電話をかける。その頃、両親はホテルをチェックアウトし、車に荷物を積み込んでいた。母は、アンソニーからの電話を受け、夫に、「2人ともいい子たちね」と話す。「どうした?」。「ネイトが電話に出なかった理由をアンソニーが話したんだけど、信じられる? ネイトが歌い方を教えてたからだって」〔結局、アンソニーは、ネイトのニューヨーク行きを両親に黙っていた〕。「いいことじゃないか。それが 『ウィキッド』〔ミュージカル〕じゃなけりゃな」。ピッツバーグに戻る車の中で、3人が熱唱したのは、『ウィキッド』の中で最も有名な「Defying Gravity(自由を求めて)」という曲の、「羽ばたくチャンスは誰にでもある」と歌う部分。兄は、まず、リビーを家の前で降ろす。伯母からもらった帽子〔ブロードウェイのレジェンドと書いてある〕を被ったネイトは、リビーに、「僕を連れ出してくれてホントにありがとう。君ってまるでエージェントだね」と心からお礼を言う(3枚目の写真)。リビーは、「私も夢を見つけたわ」と答える〔エージェントになること〕。動き出した車から身を乗り出したネイトは 「姉さんみたいに好きだよ!」と叫び、リビーは 「妹みたいに好きよ」と応じる〔Love you like a sister/Love you like a sister、という台詞。2人とも “sister” という単語を使っている。男性には、使わない用語なので、試しに姉と妹と訳した(ネイトが、女の子みたいだと思わせるシーンが、映画の中に数ヶ所ある)〕
  
  
  

最終選考から1週間後、構内放送で、ネイトが校長室に呼ばれる。ネイトは、「僕、何もしてません。僕じゃありません」と言いながらドアを開けて中に入ると、そこに両親がいたのでびっくりする。そこで、「どうしたの?」と訊く(1枚目の写真)。父は、「ネイト、私たちに内緒でニューヨークに行ったのか?」と訊き返す(2枚目の写真)。ネイトは、嘘がバレたと思い込み、「アンソニーを巻き込まないで。いろいろ助けてくれたんだ。リビーを外出禁止にしないで、外出禁止は僕だけだ」。そこにリビーが入って来て、「私はならないし、あんたもそうよ」と言う。母が、すぐに、「ネイト、電話があったの」と言い、リビーが 「最初のオファーは少ないけど、交渉できるわ」と付け加える。ネイトは、「待って、それって…」と驚いたところで(3枚目の写真)、本編は終わり、エンドクレジットが始まる。
  
  
  

その後のシーンは、エンドクレジットの間に、こま切れになって挿入される。①ネイトがリビーのスマホに向かってしゃべっている。「リビーのお陰で、僕は週 2 回のマチネ〔昼間の興行〕でスティッチの役を演じるよ」(1枚目の写真)。②ネイトがリビーが生徒達が羨ましそうに見ている中を、廊下を闊歩して行く(2枚目の写真)。③伯母は、それまで配膳係で暮らしてきたが、『Solitary Woman』という劇の主役に抜擢された(3枚目の写真)。
  
  
  

そして、最後は、ネイトが主役の時の『リロ&スティッチ』の舞台の最後の挨拶の場面(1枚目の写真)〔リロはどこ? 隣の男性は誰?〕。これが初演の時なのか、リビー、伯母、兄、両親が拍手している(2枚目の写真)。3枚目の写真は、観客の映像だが、子供向けのミュージカルになぜ大人しかいないのか? 4枚目は、スティッチの頭を脱いだネイト。これが、エンドクレジットの最後の映像。
  
  
  
  

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