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Brammetje Baas ブロムチェ・バース

オランダ映画 (2012)

この映画の主役ブラム(ブロムチェ)は、恐らくADHD(注意欠如・多動症)でありながら、知能が非常に高い少年だと思われる〔ADHDの約8.8%が高い知的能力も持つという研究があり、この割合は、普通の人の約2倍の割合とされる〕。映画は、ブラムが、それまでのグループ2の小学生〔日本の2年制の幼稚園の2年目〕から、グループ3の小学生〔日本の小学校1年生〕に進学するところから始まる。大きな都市の小学校ではないため、グループ3のクラスは1つだけ。担任のフィスは、教師を30年も務めてきた50代の男性。そのくらい長く同じことをしていると、どうしても行動方針が固定化されてしまい、ブラムのように、足をそわそわ動かし、じっとしていらればない上に、勉強に集中できない生徒への対応に戸惑った挙句、厳しい態度を取ってしまう。その結果、2人の関係はどんどん悪化していく。ブラムは、非常にIQの高い少年なので、そうした扱いに対する不満は非常に高くなり、つまらない授業など受けようともしなくなる。こうした内容を映画化すれば、本来は陰惨な感じになりがちなのだが、この映画では、すべてをブラムのナレーションと、それを面白く漫画化した絵や動画で表現しているため、非常にコミカルな雰囲気が内容の暗さを消し去ってくれる。映画の進行に伴い、事態はフィスが重傷を負う所まで悪化するが、臨時教員として雇われた青年マルクの明るく楽しい授業や、ブラムのADHDを活かした雑用係化が功を奏し、ブラムは生き生きと学校生活をおくるようになる。そして、校長がそれを認めたことで、フィスの復帰後のクラスは、マルクとの併任ですごく楽しいものとなる。こうした変化のすべてをブラムのナレーションが支えている。このような作り方をした映画を観たのは初めてで、素晴らしい監督と脚本だと感服させられた。

この映画では、ブラムのナレーションの進行に伴う多彩な映像の紹介が必要となり、ある程度まとまった内容のものを4コマ集めて1つの集合写真として用いる手法を初めて採用した。そうすると、1つの節の冒頭に長々と文章を書いても、写真との対応が困難となるので、初めて写真ごとに分けて解説することにした。なお、翻訳にあたっては、全面的にオランダ語字幕を採用した。

ブラム(ブロムチェ)役は、クン・ファン・オーフェルダム(Coen van Overdam)。2003年6月10日生まれ。映画の撮影が2011年の夏~秋頃とすれば、撮影時8歳。グループ3の小学生は6~7歳なので、それより1歳年上。映画の出演はこれ1本のみ。なお、このサイトは少年の映画が対象だが、この映画に出て来る同級生のリザロール役のイザベル・スミット(Isabelle Smit)ほど可愛い少女は見たことがないので、敢えて言及する。

あらすじ

映画の冒頭、ブラムの部屋の棚にぎっしり並んでいる多種多様な物が順番に映される。上の段には、望遠鏡に使う紙の筒、木の枝、中世の兜の図、インディアンの人形、茶こし、栓、家族の写真。中の段には、ノート14冊、鳥・動物・魚の写真、貝殻、顕微鏡。下の段には、ハサミ、金槌、ペンチ、ロケットの絵、ここでロケットが白い枠で囲まれて飛び立つ(1枚目の写真①)。あと、飛行機の写真と地球儀。机の上に色紙、蝶や鳥の頭の絵図、楊枝、粘着テープ、接着剤、バンドエイド、ホッチキス、鉛筆、サイの絵は白い枠で囲まれて動き出す。大きな羽根、その前を飛ぶ白い枠の飛行機。別の小さな棚には、色々な意志と骨、壁に貼られた昆虫の図も白い枠で囲まれて飛んでいき、その上には巨大なハエの絵が。100個以上の小さな人形や小さな飾りが細かく仕切られた並んだ壁棚を映すと、ベッドで眠っているブラム(本名ブロムチェ)に替わる。その直後、何かの上に乗ったブラムが鏡の前で跳ねながら、可笑しな顔をしながら飛び跳ね(1枚目の写真②)、「世界のみんな、お待たせ! ブロムチェだよ。ぼくって、いつも何か考えてるんだ。だから、じっとしてられない …たぶん」の言葉が流れる。すると、何かが落ちて割れる音がして、母が、「ブラム?」と言って見に来ると、案の定、床に、棚から落ちた陶器の花瓶(壺?)がバラバラになっている(1枚目の写真③)。母はため息を付き、ブラムはすぐに電気掃除機を持ってくるが、気が変わって、掃除機の先端を母の長い髪に向け、髪が管に吸い込まれる(1枚目の写真④、矢印)。そして、母から逃げたブラムが天井から紐を引っ張ると、映画のタイトルの文字が糸でぶら下がって一気に降りる。しかし、Aの字が下がり過ぎているのに気付いたブラムが、Aの字を口で吹く(2枚目の写真、矢印)が、上がらない。次にブラムはノートを開く。ブラムのナレーションが入る。「ぼく、発明って大好き〔彼が発明する訳ではない〕。発明ってのは、知恵がぎゅっと つまったものなんだ。中でも とびきりのをトップ200にしてる」。そして、バンドエイドのページを作りながら、「バンドエイドって、カッコいい名前じゃないけど、発明としてはサイコーだよね。だって、これがなかったら、みんな血が吹き出て死んじゃうもん!」(3枚目の写真①)。そして、出血死したブラムのお墓の絵(3枚目の写真②)。ブラムが、割れた陶器を片付ける時に負った傷に、母がバンドエイドを貼っている(3枚目の写真③)。「だから、バンドエイドは、ぼくの発明ノートに入れないと。104位にしよう」(3枚目の写真④、左の103位は、ホッチキスの針を使って103を作っている)。

ブラムは、ハサミを手にし、「ハサミがなかったら、手で びりびりに引き裂かなきゃいけなかった」と言うと、彼の頭の中で描かれた思いが3つの映像で示される。最初は、妹のキムが、紙を引き裂く(1枚目の写真①)。次は、父が、隣の家との境の植え込みを、手でさっと払っていく(1枚目の写真②、黄色の点線)〔手で払うだけで、こんなにきれいに切れるハズがないが、想像なので何でも可能〕。3番目は、美容院に行った母の髪を、美容師が手であっという間に短くする(1枚目の写真③、矢印は手で取った髪の毛の束)〔これも、ただの空想〕。そして、98位のページに貼ってあるハサミを手で触る(1枚目の写真④)。だけど、ハエは、ぼくの好きなものトップ200の中で、もっとずっと上だよ〔何位かは不明〕。人間じゃなく、神様が作ったものなんだ。それとも自然かな。どっちかは知らないけど。ハエで一番すごいのは、目なんだ」(2枚目の写真①、矢印はハエ)。「その目は、ものすごくたくさんの、小さなお目々の集まりなんだ」(2枚目の写真②)〔実物の拡大ではなく、人間の目の集合なのが面白い〕。ブラムは、ハエを大事に逃がしてやろうと、ガラスのコップでとらえ、紙で蓋をする(2枚目の写真③)。そして、開いているテラス窓まで持ってくるとハエを逃がしてやる。ハエは、ロケットのように白い水蒸気を出して飛んでいく(2枚目の写真④)。ぼくの好きな発明について話すと、それはキムの誕生日にやって来たんだ」。そして、祖父と祖母が円形をした大きなプレゼントを門の前に持って来る。「ぼくのトップ200のぶっちぎりの第1位はトランポリン!」。2人が同時にトランポリンに飛び乗ると、キムは垣根の向こうに飛んで行く(3枚目の写真①、矢印)。「ぼくの頭の中は、『どうして?』であふれてる…  悲しいと どうして涙が出るの? ミルクはどうして白いの? ぼくたち、どうしてこの世界にいるの? そういうことは、ぼくが、グループ〔groep〕〔日本の小学校1年生〕になったら教えてもらえるんだ」。そして、ブラムは、トイレに座りながら、ゲームボーイで遊ぶ。「ぼくの発明ノートじゃ、トイレは85位で、ゲームボーイは25位」。その時、母が 「ブラム」と呼ぶ。ブラムは、「うん」と言って立ち上がり、ゲームボーイを便座の上に置くと、トイレットペーパーホルダーから紙を巻き取っていると、脚がゲームボーイに触れて便器の中に落ちてしまう(3枚目の写真②、矢印)。ブラムはゲームボーイを洗ってヘアドライヤーで乾かす(3枚目の写真③)。「ヘアドライヤーは66位、電動歯ブラシは53位だよ」。そのあと、ブラムは電動歯ブラシを使い始めるが、足を滑らせてバスダブに落ち、カーテンも落ちてくる(3枚目の写真④。矢印)。

翌朝、ブラムとキムは、母に連れられて小学校に行く。ブラムはグループ3、キムはプループ1〔日本の2年保育幼稚園の1年生〕の初日。母はまずキムをプループ1の教室に連れていく。次に母はブラムをグループ3の教室に連れていく。そして、「P. フィス先生」と言うと、名札を指差す(1枚目の写真)。ドアの中央には、「MEESTER〔オランダ語の小学校の男の先生に対する呼び方/中学校~大学では “MENEER(英語のMr.)”〕 P. Vis〔フィス(英語のフィッシュ)〕と表示されている(2枚目の写真①)。すると、想像力豊かなブラムは、魚から、顔が魚の男性を想像し、矢印付きの白い字で、「Meester P. Vis」と手書きされる(2枚目の写真②)。「ぼくの お気に入りの言葉と名前のノートに入れなきゃ。だけど、フィス先生は、もっと特別なんだ」。そう言うと、ブラムは、名のPと姓のVを入れ替える。すると、P. Vis が V. Pis〔ピス(英語のピー)〕になる。おしっこ先生だ(2枚目の写真③)。そこで、ブラムはドアの所にいたフィスと握手しながら、「こんにちは、ピス先生」と、良くない呼び方で挨拶したので、フィスが不愉快そうな顔になる(2枚目の写真④)。フィスは、ブラムに座る席を教える。全員が揃うと、フィスが教壇に上がる。ブラムは、教室の廊下沿いの後方の壁に貼ってある世界地図を見ながら、「昔の人は、なんにも知らなかったんだ。船で世界の端まで行くと、ドボーンって落ちちゃうと思ってたもん。でも、それなら、海の水が全部こぼれてなくなっちゃうはずだよね。昔の人って よっぽどマヌケだったのか、ぼくがお利口さんだからかな?」と思う。フィスは、1人だけ、前を見ていない生徒に、「ブラム?」と声を掛ける。ブラムは、体の向きを変えた時に、手元においておいた鉛筆袋を落としてしまう(3枚目の写真①、矢印)。最初からドジな生徒に、フィスはため息を付く。ブラムは、鉛筆袋とその中味を拾って机の上に置くと、教室に入った時から気に入っていた女の子を振り向き、女の子の方も笑顔で応える(3枚目の写真②③、矢印)。フィスは、「ブラム、こっちを向いて。君は、後ろに用などないはずだ。あの席に座れるのは、君が…」。ここで、フィスは名簿を見る。「リザロール・ルシュスさんと同じくらい良い子になった時だけだ」と言う。「リザロール・ルシュス… この名前、ぜったい ぼくのノートに書いとかなきゃ!」。ブラムは前を向いたが、脚は走っている時のように、常に前後に動いている(3枚目の写真④、矢印)。フィスは、「ブラム、君さえ良けりゃ、そろそろ授業を始めたい。だから、じっとしてなさい」と注意する。

ブラムは激しく不満に思う。「じっとしてろ? 先生がどうして、そんなこと言うんだ? あしってのは、動くためにあるんじゃないか」。そして、ブラムは、校庭で、キックボードに乗った脚、校庭と道路の間の壁の上を歩く脚(1枚目の写真①、矢印)、歩道を駆ける脚、木を登る脚、ボールを蹴る脚などを思い浮かべる。そこにやってきたフィスは、問題児を見るような渋い顔で、「ブラム、脚を動かすのをやめてくれるかな?」と声をかける。ブラムは、「ううん」と答え、笑い声が起きる。「どうして、『ううん』なんだ?」。「しかたないよ。ぼくのあしが、勝手に動いちゃうんだ」。笑い声が大きくなったので、フィスは、「しーっ」と注意する。そして、ブラムには、「脚を止めなさい。君が、脚にそう命じればいい」と言う。幸い、そこで終業のベルが鳴る。ブラムは走って校庭に向かう。「あのね、あしがずーっとじっとしてると、『そんなことしなきゃよかったのに』ってことを、勝手にやっちゃうことがあるんだ」。そして、転がって来た赤いボールを蹴る(1枚目の写真②、矢印)。すると、ボールはフィスの後頭部に当たってしまう(1枚目の写真③)。ワザとやったと思われると心配したブラムは、校庭の中央に1本だけ立っている大木の下枝に上り、“知らぬ存ぜぬ” の顔をして口笛を吹く(1枚目の写真④)。木の下には、大勢の生徒が集まっていたので、フィスはすぐに犯人がブラムに違いないと思い、ボールを持ったまま 「ブラム!」と怒鳴る。その日の夕食。その時も、ブラムの脚は揺れ続ける。すると、キムが、「せんせい、とっても やさしいの! お外で あそんでたわ! そしたら…」。話がヤバそうになりそうなので、ブラムは皿をナイフでトントンと叩き始める。すると、叩くのが楽しくなる(2枚目の写真①、矢印はナイフ)。なぜなら、キムがストローで飲む時の泡の音(2枚目の写真②)、母が胡椒引きを回す音(2枚目の写真③)や、ナベの蓋をバチャンと落とす音(2枚目の写真④)、父がステーキをナイフで切る音、もぐもぐ食べる音が、一種の音楽となってブラムには聴こえたから。父は、ブラムが皿を叩く音がうるさくなったので、ブラムの手を押さえて止めさせ、「学校はどうだった?」と訊く。ブラムは、「いいじゃん」とだけ〔その言葉に伴うはずの笑顔なしに〕答える(3枚目の写真)。その夜、ベッドに横になったブラムは、「グループ3になったら、いろいろ教えてもらえると思ってたのに、まだなにひとつ新しいこと教えてもらってない」と不満を覚える。そして、サイドテーブルの蛍光灯を点けると、「言葉と名前」のノートに、「ピス先生〔フィスじゃないのが面白い〕、リザロール・ルシュス」と書く。

翌朝、リザロールが 廊下のコートと荷物掛けに、両方を掛けていると(1枚目の写真①)、それをじっと見ていたブラムに、母がキスをする〔2日目になっても、生徒と一緒に来ている親は他にいない〕。母は、歯が変で、気もそぞろなブラムに向かって、「よそ見しないで、しっかり話を聴いてね」と言うが(1枚目の写真②)、ブラムは母の言葉など聞いていない。だから、「何て?」と訊く(1枚目の写真③)。授業が始まると、具合が悪そうなブラムを、リザロールが心配そうに見ている(1枚目の写真④)。ブラムは 「歯がグラグラ… イラつく」。なのに、フィスはブラムを呼ぶ。「こっちに来なさい。ノートを持って」。そして、ノートをチェックすると、「もう10分も経っているのに、まだ1問しか解けていないじゃないか。どういうことなんだ?」と詰問する。ブラムは、「ぼくの歯、グラグラなの」と言うが(2枚目の写真)、フィスは、「そんなの、理由にはならん」と、グループ3の教師には相応しくない対応を見せる。休憩時間に、ブラムはトイレの個室の便座に座ると、「フィス先生は、『できないこともある』ってことが、分かんないみたい。残念だな。歯がグラグラして気になるのに、算数の問題なんて解けっこないじゃないか」と思いながら、歯に触る。映画では、歯の絵の下に、さっきブラムが言った、irri(イラつく) と tand(歯)の文字が表示される。そして、tand の最後の d に赤線が引かれ、その後ろに t の字が現われる(3枚目の写真①)。そして、次のカットで tand が tant に変わり、2つの単語が引っ付いて irritant になる。これは、「うざい」という意味〔なかなか、言葉遊びが上手い〕。すると、個室のドアの下の隙間から、女の子の運動靴が見える〔ドアにぴったりくっついているので、靴の先端が中に入る〕。ブラムは、ドアを叩いて、「ハロー」と声をかける。すると、ドアの向こうから、「わかる?」と声がし、ドアの上から、リザロールが 「こっちよ」と言って顔を見せる(3枚目の写真②)。そして、「歯がグラグラしてるの? そーっとひねるといいわ」と言い、「来て」と呼ぶ。ブラムが便座の上に立つと、リザロールが手を伸ばして歯をつかんでひねる(3枚目の写真③)。痛くて、ブラムが呻くが、それに構わず力を入れると、歯が抜ける。笑顔のリザロールは、抜いた歯をブラムに見せる(3枚目の写真④、矢印)。次の授業では、ブラムは 机の一番上に抜いた歯を置き、順調に問題に取り組む。

ブラムとキムが昼食テーブルについている(1枚目の写真①)。ブラムはナイフとフォークで遊び、食べようとしない。紙パックのチョコレート・ミルクを飲んだ後、テーブルの上に置いてあった箱やプスチック容器を柱状に重ね(1枚目の写真②、矢印)、てっぺんに、極めて不安定な物を置く(1枚目の写真③、矢印)。お陰で、あっという間にすべてが崩壊する。母は 叱ることなく、「学校、大変だった?」と訊く(1枚目の写真④)。ブラムは それには答えず、テーブルの上下を乱雑にしたことを 「ごめんなさい」と謝る。再び学校で、フィスは、「万年筆で書くには優れた筆記能力が必要なんだ。つまりだね、私は 『そんなに簡単なことじゃない』と言いたいんだ。だから、まずは鉛筆で練習する。うまく書けるようになったら、一人一本ずつあげよう」と話す。しかし、ブラムはずっと窓の方を向いている(2枚目の写真)。それに気付いたフィスは、「ブラム」と声を掛けるが、そんな程度の声では、ブラムの連想を断ち切れない。フィスは、授業が終わった後で、ブラムの母を呼び付け、「彼は常に他のことに気を取られています。そうとしか言いようがありません」と言う。それに対し母は、積極的に息子を擁護する。「先生が大変だと思っていらっしゃるのは分かりますが、私には納得できません。あの子は学習意欲が高いんです。世界のことをよく知っています。発明のことや、難しい言葉、歴史についてもです。自然のドキュメンタリー番組を見るのが大好きなんです。あの子、3歳の時にはもう道路標識を全部覚えてたんですよ」。それに対し、ダメ教師のフィスは、教条的な一般論しか言わない。「それはそれで大したものですが、教室では普通に勉強してもらわないといけません。計算問題を解いて、丁寧に字を書くこと。彼は絶えず他のことに気を取られています。彼を正しい道に導き、そこから外れないようにさせるのが私の役目です。少しばかり規律も教えないと。課題を最後までやり遂げること、それは将来のために学んでおくべき大事なことなのです」。その夜、天窓から、紙筒で作った望遠鏡で星を見ながら、ブラムは自己主張する。「あのね、勉強なんて、ぼくにとってはすごく簡単なことなんだ。ぼくのまわりにあるものを、じっくり観察しさえすれば、それでいいんだ。そうすれば、この世界のなにもかもが、どんなに素敵に作られているかが わかるから」。国語の時間で、フィスは “oe” を含む単語の話をしている。「例えば…」と言って、黒板に “Poes(猫)” と書き、「さあ みんな、“oe” の入った単語を言って」と促す。その時、ブラムは窓に止まったハエを見ていた。オランダ語のハエは “vlieg” なので “oe” は入らないが、ブラムの頭の中では、ハエの周りに、“oe” がいっぱい現われる(3枚目の写真①)。そこで、ブラムは、ハエが飛ぶ音をまねて、いきなり大きな声で 「ブーン、ブーン、ブーン」と言い、「ブーン(zoem)にも “oe” があるよ」 と言うが(3枚目の写真②)、フィンは 「ブラム、君は手を挙げたか?」と、挙手なき発言を批判し、フィンの正解を全く評価しない〔実に最低・最悪の教師で、こんなのを1年生の担任にしておく校長にも重大な瑕疵がある〕。おまけに、窓にハエが止まっていることに気付いたフィンは、教壇の上に置いてあった不要な冊子を丸めて筒状にし、それでハエを叩き殺そうと窓に近づいて行く。ブラムは、「ダメ……!」と叫ぶと、机の上に乗って フィンを妨害する(3枚目の写真③)。フィンは、ハエの代わりに、邪魔したブラムの頭を叩く。1年生の頭を叩いておいて、この暴力教師は、「席に戻れ!」と怒鳴る。ブラムは、「あとでね、先生」と言い、ハエをコップで押さえ、ストッパーの紙を挿入する(3枚目の写真④)。「今すぐ、戻るんだ!」。ハエをコップに入れて蓋をしたブラムは、フィンなど無視し、コップを持って教室と校舎から出て行き、ハエを空に向けて放つ。「ハエを叩き殺すなんてダメだよ、すごくよくできた発明なんだから」。そこにやって来たフィンは、授業中、指示を無視して勝手に教室を出てった罰、さらに、教師に失礼な態度を取った罰として、廊下に机を出し、そこで勉強するよう命じる。ブラムは、廊下の窓辺に置かれた机に座り、出された問題なんか見ずに、窓から外を見ている(4枚目の写真①)。すると、空の上では、命を救われたハエがハートの形に飛んで感謝する(4枚目の写真②)。それを見たブラムは大喜び。「もしかしたら、このために ぼくはこの世界にいるのかも」と思う(4枚目の写真③)。授業が終わると、教室から出て来たリザロールが、「すごいわ」と笑顔で褒める(4枚目の写真④)。一方、ダメ教師のフィンは、机の上に置かれた問題用紙が白紙なのを見て、「何もやってないじゃないか! ここは学校なんだ、ブラム。学校というのは、勉強をする場所だ」と、強く諫める。「はい、先生。でも…」。「君は、いつも、『でも』しか言わん。そんなのは、聞きたくない! 先生の話はもっとちゃんと聞かないといけない。君の耳は、飾りで付いているんじゃないぞ!」〔こうなると、虐めに近い〕

その日の夕食の時間。父は、まずキムに、「今日は学校どうだった?」と訊く。「よかった」。「ブラム、お前の方は?」。すると、廊下の机に座っているのを見たキムが、「お兄ちゃん、廊下に出されちゃってた」と話す。「ブラム、なんで廊下に出されたんだ?」。ブラムの返事は、「ハエを助けてあげたからだよ」(1枚目の写真)。これでは、両親には何のことか理解できなかったかも。その日の夜、ブラムはベッドで、ノートに 「Maar(でも)」と書く〔このノートの上には、「klok(時計)=kolk(うずまき)」と書いてある。「たった一文字ちがうだけで、ぜんぜん別のものになっちゃうんだ。ふしぎだよね!」と思って書いたに違いない〕。そして、「フィス先生は、ぼくが 『でも』って言うの聞きたくないんだ。それって変だよね。だって、その通りに見えても、ホントは違うことって、よくあるんだもん。だから、『でも』ってのは だいじな言葉なんだ。フィッシュ先生、ぼくをバカだと思い込んでる。だけど、ぼくは、みんなより うんと考えてるんだ。だって、考えなきゃいけないことが、山のようにあるんだから」と思う。そして、「たとえばさ、お庭の葉っぱで、どんなことができるかなって?」と言うと、ブラムが最初に思い浮かべたシーンは、庭に溜まった落ち葉にうんざりしている母の姿(2枚目の写真①)。ブラムは、子供用の円形プールに水の代わりに葉っぱを入れて泳いだり(2枚目の写真②)、キムと一緒に葉っぱで出来た服を着てみたり(2枚目の写真③)、フィスに提出した宿題ノートに葉っぱを貼り付けたり(2枚目の写真④)する場面を思い浮かべる。次の想像は、「手がなかったらどうなっちゃうんだろう?〔手(handen)は複数形。つまり両手〕。今度は、ブラムが実行してみせる。最初は、両手がないので、ケチャップのミートソースパスタを口だけで食べ(3枚目の写真①、矢印)、鼻から顎までケチャップだらけになる。食事後、父は洗った皿を 横にいたブラムの腕にうっかり載せるが(3枚目の写真②、矢印)、手はないことになっているので、ブラムはワザと皿を床に落とし、父を驚かせる〔父はブラムをあまり理解していない〕。洗面台の前に立ったブラムは、電動歯ブラシを見ながら、「ハミガキしなくていいんだよ」と解説する(3枚目の写真③、矢印)。「だからね、手がない人は歯もない人になっちゃうんだ」。ブラムの歯がどんどんなくなっていき(3枚目の写真④)、最後は1本もなくなる。

体育の時間。体育館の中で、10人の生徒が5人ずつに分かれ、互いにボールを投げ合っている。脇のベンチでは、ブラム、リザロール他3人が退屈そうに見ている。すると、ブラムはシャツの下をめくると同時に、膝を曲げて片脚ずつシャツの中に入れていく。そして、シャツの中から膝の部分だけ出すと、「見てよ、ぼくのおっぱい」と言って、リザロールに見せる(1枚目の写真)。リザロールは楽しそうに笑う。それを見た、隣の男の子も真似をし、その隣の女の子も真似をする。退屈の極みだったベンチが、一番楽しい場所へと変わる。すると、ユーモアのセンスの一切ないフィスが、笛を吹いて警告する。それでも、ブラムだけ止めないので、フィスはもう一度笛を吹き、親切なリザロールがブラムに止めさせる。次のシーンでは、生徒が一列に並んで待ち、順番に跳び箱代わりの木の台を、手前のバネ入り踏み板を使ってジャンプして超える。2人が上手に飛んだ後、リザロールの番になると、踏み板に乗ったとことからフィスが手伝い、体を持って木の台の反対側に吊って落とす(2枚目の写真①)。それを見たブラムは、まだリザロールがいるうちに走り出し、木の台の上に乗ると(2枚目の写真②)、手を伸ばしてフィスの半ズボンの一番下を握り、そのまま下に落ちる。すると、その上下差で、フィスの半ズボンが落ち、パンツが剥き出しになる(2枚目の写真③)。それを見た生徒たちが大声で笑う(2枚目の写真④)。フィスは、急いで半ズボンを履くと、「お前には、もう本当に、心底うんざりだ」と、強い言葉で罵倒し、ブラムはその言葉にショックを受ける(3枚目の写真)。フィスは、さらに、「ここから出ていけ、当分の間 お前の顔なんか見たくない」と言い、体育館から追い出す。ブラムは、隣の、床も壁もタイルの寒々とした着替え室で、授業が終わるまで待たされる。服を着替えながら、「先生は、ぼくがやることは、何もかもワザだと思ってるんだ。ぼくにうんざりしただって? ぼくだって、時々、自分にうんざりしちゃうんだ」と悲しむ。そして、部屋の隅にある、金属製のペダル式ゴミ箱のペダルを何度も踏み始め、バタン、バタンと大きな音が響く。すると、ドアが開き、フィスが、「こら!」と怒鳴る。その日の夜、ブラムはベッドの中で、「フィス先生とぼくは、すごくたくさんのことで、考え方が違うんだ。グループ3には、ホントにがっかりしてる」と思う。

翌朝、ブラムはベッドから起きようとしない。母が、「ブラム、起きて」と言って布団を剥いでも、すぐに布団の中にすっぽりと包まる。「どうしたの? 具合が悪いの?」。ブラムは頷く。「それなら、学校を休んだ方がいいわ」。そして、ブラムは居間のソファに移され、横には朝の食事が置かれる(1枚目の写真)。キムが行く用意ができ、母がブラムに食べるよう促すと、ブラムは起き上がろうとして、ソファの端に置かれた皿を床に落としてしまう〔そんな場所に置いた方が悪い〕。母はキムを連れて学校に行き、ブラムは1人になる。フィスが嫌なので病気のフリをしていたブラムは、自分の部屋に移動し、ノートに、「SCHOOL(学校)」と「ziek(病気)」という、2つの切り抜いた印刷文字を貼りながら、「学校のせいで病気になったら、それは『学校病(schoolziek)』なんだ。なら、家にいたほうがずっといい」と思う。母が帰宅し、壊れた掃除機の代わりに、新しい掃除機を使っていると、ブラムは1階まで下りて来て、掃除機の入っていた箱から、大きな発泡スチロールを取り出す(2枚目の写真①)。すると、ブラムの専売特許が始まる。「発泡スチロールは、すっごくちっちゃな(PIEP-kleine)ツブツブでできてる」(2枚目の写真②、PIEPSCHUIMは発泡スチロールのオランダ語)。「ツブツブをこすり合わせると、『ピッピッ(Piep)』っていう音がする」(2枚目の写真③)。「だから、『ピープ(PIEP)スハイム(SCHUIM、泡)』って名前なんだ」。そして、ツブツブにした発泡スチロールを母に向かって投げつけると、あたり一面 吹雪のようになる(2枚目の写真④)。ブラムのあまりの元気良さに、母は、「もう治ったの? 今朝は、ホントに具合悪かったの? 病気のフリをするなんて、感心できないわね」と言った上で、「学校で何かあったの?」と尋ねる。ブラムは肩をすくめるが、心の中では、「いつだって、何かが起きてるんだ。朝から晩まで」と思っている。夜になり、玄関のチャイムが鳴る。そんな時間にやって来たのは、フィスだった。フィスは両親に状況を説明する。「まず最初に断っておきますが、ブラム君は特別な子だと私は思います。頭はいい。元気一杯。しかし、やるべき事には、ほとんど手を付けようとしません。クラスの他の子たちが算数の問題を20問解いている間に、彼はたった1問しか解かないんです。ですから、課題は家でやる方が良いと判断しました」。それを、ブラムはこっそり聞いている。翌日、帰宅後、母は問題集をブラムの部屋に持って行くが、「もうすぐ、やるから」と言って何もしない。その翌日も、トランポリンで遊んでいるブラムに 「まだ何もやってないじゃない!」と強く言っても、「明日やるよ!」と言うだけ。母は、諦めて、問題集を父に渡す。父は、ブラムを食事用のテーブルに座らせ、彼の前に問題集を置くと、「終わるまで、テーブルから離れちゃダメだ」と言う。それでも、すぐに逃げようとするブラムを、二度、立つ前に叱って止める。これで、仕方なくブラムは問題集にとりかかる(3枚目の写真①)。父が自慢したので、母が見に行くと、何とノートには、確かに1年生らしい簡単な足し算はすべて正解で書いてあるものの、そこには、何ヶ所も 「ROT Meester(ひどい先生)」と書かれ、魚の顔のフィスが首を吊られている絵も描かれている(3枚目の写真②)。映画では、首吊りの部分が拡大されると、フィスのすぐそばに3匹の “ピラニア” が現われ、ページの反対側に出現した “銃を持った男” がフィスを撃ち殺し、②の左下の “黒衣の男” が爆弾を投げ、フィスが吹っ飛ぶ。それを見た父は、「分った。森には連れて行かないぞ」と言い、キムだけ連れて出かける。より責任感の強い母は、簡単には諦めず、「誰も代わりにやらないわよ。自分でやらなきゃダメでしょ」と諭した後で(3枚目の写真②)、「将来、何になりたかったんだった?」と、自覚を求める。「発明家」。「何を作る発明家?」。「ロケット・バス」(3枚目の写真④)。ブラムの頭の中のバスは、キムの後ろに母、父、猫の順で窓が埋まっていく。「でも、算数ができなかったら、墜落するわよ」。「落ちないよ」。「落ちるわ。だから、怖くて一緒に乗れない。ロケットがどれくらいの重さで、燃料がどれだけ必要なのか、知っておくべきしょ?」。

母の論理的な主張を聞いたブラムは、算数の問題集を始める。「13ひく11は2。10ひく3は、7… あ、6だっけ」(1枚目の写真)。翌朝、ブラムが家でやった問題集をフィスに渡す(2枚目の写真①)。ざっと見たフィスは、「まあ いいだろう」と言うと、「やればできるじゃないか。これでやっと、他のみんなと同じところまで来たな」と言い、万年筆を渡す。生徒が揃い、国語の授業が始まる。ブラムは、練習帳に、印刷されている “ou” の手書き文字の正しい書き方を見て、万年筆で真似しようとするが、なかなか上手く書けない。そのうち、インクがポタリと落ちる〔よほど安い万年筆を生徒に配っている?〕。ブラムは、落ちたインクを右手で擦っていると、青い染みが拡がる(2枚目の写真②)。次に、ブラムは、万年筆の上半分を回転させ、インクカートリッジを外に出す(2枚目の写真③)。当然、好奇心の強いブラムは、カートリッジを本体から抜き取り、結果、手に大量のインクが付着する。フィスが、様子が変だと思ってやって来た時には、練習帳はインクで青く染まっていた(2枚目の写真④)。それを見たフィスは、「ブラム、こんな汚いことをするなら、年下の子〔幼稚園児〕のクラスに行って やり直せ!」と侮辱する。ドアに向かって歩いて行くブラムを見て、笑い声が起きる。廊下に出たブラムは、頭に来て、練習帳を投げ捨てる(3枚目の写真①、矢印)。キムのいるグループ1の教室に行ったブラムは、優しい教師に手のインクを洗ってもらう。そして、放課後、キムと一緒に遊んでいると、母が迎えにやって来たので、走って行って抱き着いて泣き始める(3枚目の写真②)。事情を聞いた母は、フィスのいる教室に向かう(3枚目の写真③)。そして、「あなたは、ブラムのことを理解していらっしゃらないような気がします」と、教師として失格だとほのめかす。それに対し、単なる小学校1年生担当の教師に過ぎなく、恐らくADHD(注意欠如・多動症)への対応について何も知らないくせに、フィンは、如何にも自分が偉大な存在であるかのように話す。「私はブラム君のことをちゃんと理解しています。私は、この仕事を30年もやっていて、この手の子をこれまで何人か見てきました。とても賢いが、非常に不適応な子を。しかし、生徒たちは、学ぶためにここにいるのです。私がやるべきことをしなければ、問題が生じるでしょう。それは、教師としての私の務めであり、義務です。それとも、ブラム君を留年させたいのですか?」。母はもちろん否定する。「私は、生徒全員をブループ3から進級させたいのです。そのためには、ご両親が教師である私をしっかりサポートしていただかないと困ります」。こういう卑怯な恐喝で、ブラムに対して行った虐待的言動を正当化する。フィスに偏向教化された母は、家まで黙って2人を連れて帰る。母が何も言わないので、ブラムは庭仕事をしている母に寄って行く。すると、母は、「やっぱり、もっと頑張らなきゃね」と言う。「がんばってるよ!」。「そうね。でも先生は、あなたが授業中、やるべきことを全然やってない、『やる気がない』と思ってるの」。「フィス先生はいつも怒ってる。優しい言葉なんて、たったのひとつもないんだ。それって、おかしくない?」。ブラムは そう言うと、怒って家の中に入って行く。

翌朝、学校に向かう時、ブラムは、靴の先端と、最後部がぴったり合うように、ワザとゆっくり歩く(1枚目の写真①、矢印)。キムを連れて先行した母が急ぐように叫んでも、ブラムはスピードを変えない。そのうち、始業のベルが鳴る。すると、学校の正門の前に立ったブラムの周囲で いきなり雷鳴が轟き、辺りが 雷光で真っ白になり(1枚目の写真②)〔幻覚〕、ブラムは学校から逃げ出す(1枚目の写真③)。母は、キムをグループ1の教室まで送っていった後で、グループ3の教室まで行き、ドアのガラス窓から中を覗くと、ブラムの席に息子がいない。次のシーンは、母が 校庭へのドアから出て 「ブラム!」と叫ぶ(1枚目の写真④)〔フィスは、全く心配していない〕心配になった母は、ブラムを探しに行く。その頃、ブラムは、公園のベンチに座っている。「フィス先生は、難しいことはいっぱい知ってる。でも、簡単なことになると、先生はぜんぜん分かってくれないんだ」(2枚目の写真)。ブラムの不満はさらに増えていく。「ぼくの足が『動きたいよー』って言ってるのに、先生はちっとも分かってくれない」(3枚目の写真①)。「優しい言葉をかけるってことが、どれだけ大切かってことも」(3枚目の写真②)。母は、なかなかブラムが見つからないので、焦っている(3枚目の写真③)。「フィス先生がぼくのことを分かってくれないのは しょうがないけど、ママまでぼくを分かってくれなくなっちゃうなんて… そんなの、あんまりだよ」(3枚目の写真④)。ようやく、母は、公園の中にいるブラムを見つける。そして、ブラムの顔を見て、「そんなに、何もかもひどいの?」と訊く。ブラムは、母に抱かれて大声ですすり泣く(4枚目の写真)。

ブラムの両親は、フィスに対する一種の苦情を言いに、校長に相談に行く。まず、口を開いたのは母で、「フィス先生が悪い先生だって言いたいわけではないんですが、でも、その…」。言葉を失った母の代りに、父が、「私たちは、フィス先生とブロムチェの間で負の連鎖が起きていると考えています。相性が最悪なんですよ」と説明する(1枚目の写真)。ここまで言ってもらうと、あとは母が1人でまくし立てる。「7歳の小さな子が、学校に行きたくなくて病気になり、学校から逃げ出してしまう… あなたは、それが普通のことだと思われるのですか? フィス先生がブラムを理解しようと努めているとは、私には到底思えません。あの子に落ち着きがないのはよく分かっています。でも、決して『厄介者』なんかじゃありません。あの子は本当に、とても特別で、自分というものをしっかり持っている子なんです」。これを聞いた校長は、“特別” という言葉に拘り、信じられないような失礼な発言を平気でする。「どこの親御さんも、自分の子が特別だって仰(おっしゃ)るんですよ。もしその度に1ユーロずつ貰っていたら、今頃私はとっくに引退して遊んで暮らせているでしょう」〔教育者として非常に失礼で、配慮に欠ける失言〕「フィス先生は、クラスに28名もの子供たちを抱えているのです。もしその子たちがみんなブラム君みたいだったら… いいですか。私からフィス先生には話しておきます。あなた方も、もう一度ブラム君と話して下さい」〔この校長には何も期待できない〕。校長の最初の言い草に腹を立てた父は、「ああ、そうですか。どうもご丁寧に」と、皮肉交じりに応える。ここで、場面は自宅にいるブラムに変わる。彼は、窓の外の道路を見ながら、「もし人間が車だったら、ものすごく速く走らなきゃいけない」と思う。すると、“車人間” が道路を走って行く(2枚目の写真①)。クラクションが鳴り、急ブレーキの音がし、ガチャンとぶつかる音もする。すると、“車人間” が消えた側から煙が出てきて、右側からは “救急車人間” が走って助けに行く(2枚目の写真②)。すると、「ブラム」と呼ぶ声が聞こえる。そして、ブラムの部屋で、ブラムを見ている両親が映る。ブラムが窓から目を離さないので、母が 「ブラム、話を聞いてる?」と再度声をかけ、ようやくブラムが振り向いて、「なに?」と訊く。すると、今度は父が、「とにかく、フィス先生の言う通りにするよう努力しなさい」と注意する。それを聞いたブラムは、「だって、ぼく、それやってるんだよ!」と反論する。母は、宥めるように 「それが大変なことなのは分かってるわ」と言うが、父は、もっと厳しく、「いいか、とにかく周りに合わせるんだ。お前は、もう幼稚園児じゃないんだぞ。もうグループ3なんだ」と、見放したように強く言う。それに対し、母は 「わかる、ブラム? 学校にはグループ3は1クラスしかないの。フィス先生のしかね。お互いにうまくやっていくしかないのよ」と、優しく話す。しかし、何を言われようが、ブラムは、「やだ! 二度とフィス先生のクラスになんか行かない。絶対に行かないから!」と、激しく反発する。父:「そうするしかないんだ」。「絶対やだ!」。「じゃあ、どうする?」。「グループ2に戻る! それで、あの先生がくたばっちゃうまで、ずっと待っててやるんだ!」(2枚目の写真③)。それを聞いた父は笑う。怒ったブラムは、「パパもママも大嫌いだ!!」と怒りを爆発させ、部屋を出て階段を下りて行く。言い過ぎたと思った父は、階段を下りて行くと、「おい、相棒」と声をかける(2枚目の写真④)。「元気がよすぎるのは、悪いことじゃないんだ。でも、人の話を聞くことだけは覚えなきゃいけない」と言うが、父の話なんか聞きたくないブラムは、「ブラム、ここにいなさい!」と命じる父の腹を蹴って2階に逃げて行く。怒った父は、「彼は、自分がボスじゃないって学ばなきゃならん」と言い、それを聞いた母は、「そんなこと、あの子は分かってるわよ!」と反論する。ここから、夫婦げんかが始まる。夫:「違うよ。君は、このチビ助が、ここのボスじゃないって、よく忘れるんだからな」。妻:「ヤープ、あなたってホント、最低だわ!」。「俺のどこが最低なんだ?」。そして、怒鳴り合いに。ブラムはベッドに横になると、「ぼくは、何をやってもダメなんだ。そのうち、パパとママ、離婚しちゃうかも… みんな ぼくのせいだ。ぼくは発明家なんかじゃない」。そう思ったブラムは、ベッドから出ると、自分で描いた家族のロケット・バスの絵を破り捨てる(3枚目の写真①)。「ぼくには、何も作れない。壊すだけなんだ」。翌朝、母は、父に、「あなたが学校へ連れて行ってくれたら、助かるんだけど」と言い、父は 「分かった。そうするよ」と言う。すると、テーブルに座ったブラムが、2人を見ながら考える。「ほら、やっぱり。ぼくが全部壊しちゃうんだ」。そして、自分の部屋に置いてある家族4人の写真を思い浮かべる(3枚目の写真②)。次の瞬間、父と母の写真は破れて飛んで行き、ブラムとキムだけになる(3枚目の写真③)〔両親は離婚した〕。そして、両親のいた場所に、それぞれ、再婚した両親の写真が置かれる(3枚目の写真④)。父がブラムを学校まで連れて行くと、「また今日の午後な」と言って帰ろうとする。ブラムは、「パパ?」と呼び止める。「なんだい?」。「パパたち離婚するの?」。「いいや、しないよ。お前がちゃんとしてれば、心配することなんか何もないんだ」。

ブラム、その日は逃げずに授業に出る。彼が一番嫌いな男の子が、教壇に出て、トラについて話しているが、ブラムは話なんか聞いていない(1枚目の写真)彼が興味を抱いたのは、黒板に書かれた 「tijgers(タイガー)」の文字(2枚目の写真①)。さっそく、ライオンとタイガーの交配によって生まれるライガーとタイゴンについて考え始める(2枚目の写真②)〔日本語では、英語の雄lionと雌tigerの子のliger、雄tigerと雌lionの子のtigonをそのままカタカナにしている〕。「テレビで見たんだけど、もしトラとライオンが一緒になったら、その子どもは、ライガーっていうんだよ」(2枚目の写真③)〔オランダ語では、雄leeuw(レイウー)と雌tijger(タイハー)の子はlijger(ライハー)〕。「でも、なんでそれって『テイウー』じゃないのかなぁ?」(2枚目の写真③)〔雄tijgerと雌leeuwの子はteeuw(テイウー)〕〔英語のように半分ずつ使わないのは、オランダ語では、「ijger」を一体と考えるから。そして。もし、leegerにすると、leeg(空っぽの)の比較級と同じになるから〕すると、フィスが「もうすぐ休み時間だ。それでは、静かに外へ出て」と言う。しかし、ブラムは考え続ける。「ライオンが結婚できるなら、きっと、離婚しちゃうことだってあるよね」(3枚目の写真①)〔ブラムはまだ両親の離婚を心配している〕。その時、トラの冊子を持ったフィスがつかつかと寄って来て、「ブラム、お前は中に残ってろ」と命じ、「これまで3回も注意したはずだぞ。3回もだ!」と厳しく言う(3枚目の写真②)。そして、「注意が聞けない以上、休み時間を使ってトラについてもっと勉強するんだ」と言い、持って来たトラの冊子を机の上に置く。それに対して、ブラムは 「でも、ぼく、トラのことならもう全部知ってるよ。トラは肉食動物で大きな奥歯を持ってる。裂肉歯〔硬い肉を切り裂き、骨を砕くために進化した、ハサミのような鋭い形状をした奥歯〕だよ」と専門用語を用いて反論する。それを聞いたフィスは、「言い訳無用。つべこべ言うな」と、教師にあるまじき言葉を吐いて去って行く〔きっと、「Knipkiezen」が理解できなった〕。腹を立てたブラムは、トラの冊子を荒っぽくめくりながら、トラのことを思い浮かべる。「トラはベジタリアン〔菜食主義〕じゃない。だからトラにはすごく大きな奥歯があるんだ。裂肉歯っていう歯が。それを使って、トラは獲物の肉を引きちぎることができるんだ」。ここまで来た時、力余ってページが1枚破れてしまう(3枚目の写真③)。ブラムは冊子を閉じ、遠くに投げ捨てる。冊子は飛んで行き、教室の後ろの背の高い棚の上に落ちる(3枚目の写真④、黄色の円の中の斜めの灰色の線が、飛んで行く冊子)。

休憩時間が終わり、生徒たちと一緒にフィスが教室に戻ってくると、ブラムが教室の後ろの背の高い棚の上に、トラの冊子を持って正座している(1枚目の写真、矢印)。それを見たフィスは、心配などせず、「何て奴だ」とつぶやくと、ブラムに向かって、「正気か? 今すぐ棚から降りるんだ!」と怒鳴る。3度言っても降りようとしないので、棚の中段に足を乗せ、引きずり下ろそうとするが(2枚目の写真①)、棚板が固定されていなかったため、フィスの乗った棚板が傾き(2枚目の写真②)、フィスはそのまま床に落ちる(2枚目の写真③④)。フィスの体の格好を見たブラムは、「ぼくたちの体って、いろんなことができるんだね。でも、フィス先生が今やってる格好は、誰にもできないや。コントーショニスト〔サーカスで、驚異的な体の柔らかさを活かしてパフォーマンスをする人〕だって、あんなことはできない」と思う。優しいリザロールが床に座って、「先生、大丈夫ですか?」と訊くと、フィスは 「あいたた」と呻く。救急車がやってきて、校舎の外に出て行ったブラムは、フィスがストレッチャーに乗って運ばれて行くのを見ている(3枚目の写真①)。校長は母を呼びつけ、「詳しい経緯は分かりませんが、これほどの不祥事を黙って見過ごすことは不可能です〔『棚に登っていたブラムが悪い』という一点のみでの断罪〕。断定的なことは申し上げられませんが、フィス先生の足が尋常ではないことは、一目瞭然でした。最悪な状態と言えるでしょう。事態は長期化するのではないかと懸念されます。今日は、ブロムチェ君を家に連れて帰るのが最善だと思います」(3枚目の写真②)。ブラムは、母と手をつないで教室の前を歩いて行く(3枚目の写真③)。ブラムが教室の窓を見ると、同情したリザロールが見送ってくれる(3枚目の写真④)。家に帰ったブラムは、トランポリンの上に横たわる。「フィス先生は この事故がぼくのせいだと思ってる。校長先生も そう思ってる。ママまで そう思ってる。でも、本当にぼくのせいなの? この世界からいなくなってしまうくらい、高く高く跳べたらいいのに」。

恐らく翌日、両親とブラムは校長室に座っている。校長:「あのような忌まわしい事件の後、お二人揃ってお越しいただけて何よりです」。父:「フィス先生の容態はいかがですか?」。校長:「良くありません。先生は複雑骨折で緊急手術を受けました」。ここで、ブラムの考えが入る。「複雑骨折(gecompliceerde beenbreuk)。きっと、すごく痛いんだろうな。でも、響きだけは格好いい〔ハコンプリシエイド・ベンインブロウク〕言葉だな。先生は これから6週間お休みか。わぉ」(1枚目の写真)。校長:「今日、子供たちは別々のクラスに振り分けられました。ブラム君はエスマ先生のクラスです。フィス先生にとっては悲惨な事態ですし、ブラム君にとっても辛い状況ですよね。ブラム君、どう思う? もしかして、別の学校の方が楽しく過ごせるかもね」。ブラムの考え:「『学校がない』ってのが 一番いいんだけど。そんなの無理だよね」。校長の最後の言葉:「少人数学級の学校への転校を検討するのも、悪い考えではないかもしれませんね」。ブラムは、その後、グループが2以下のエスマ先生のクラスで、つまらなさそうに過ごす。「ロケット・バスが完成したら、遠くへ飛んでいっちゃうんだ。ずっとずっと遠くへね。そしたら、もう二度と学校に行かなくてすむから」(2枚目の写真、5つの窓は、最初と違い、4番目の窓にリザロールと去年の先生が入っている)。家に戻ると、新しく作られた7段に仕切られた白い紙が壁に貼ってある。そして、父はブラムに、「いいかブラム。もう本当に、このままじゃいけないんだ」と、改心を促す。次に、母が、「あなたが守るべきことを、ここに書いたわよ。行儀よく食べること、言うことをきくこと、静かにすること、時間通りに寝ること、テキパキ動くこと、宿題をすること」と言い、一番下の行が言及されなかったので、父が、「ここは、あらゆる… 珍しい行為の行だ」と言う。母:「もし、例えば、ちゃんと時間通りに寝たら、緑色の丸印を貼ってあげる」(3枚目の写真、矢印)。父:「だが、例えば、宿題をやらなかったりしたら、赤色の丸印だ。分かったか?」。

ブラムは、父がテーブルの上に置いたコップを、ゲームボーイをしていて落として割ってしまい、さっそく、“静かにする” の行に赤の丸印が貼られる。ブラムは挽回しようと大きな花束を母に渡し(1枚目の写真①)、“珍しい行為” の行に緑の丸印が貼られるが(1枚目の写真②)、すぐにドアがノックされ、近くの住民が 丸坊主にされた鉢を見せたので(1枚目の写真③)、緑の丸印の上から赤の丸印が貼られる(1枚目の写真④)。ブラムは、再度、テーブルの上のコップを倒すが、今度は中にミルクが入っていて(2枚目の写真①)床を汚したので、「散らかした」ことで赤の丸印(2枚目の写真②)。母が一緒に学校に行く準備を済ませ、「ブラム」と呼んでもちっとも来なかったので、“テキパキ動く” の行に2つ目の赤の丸印。夜、寝る時間になっても、上から毛布を被り、懐中電灯を点けていた時(2枚目の写真③)、母が毛布をめくって違反を見つけ、さっそく “時間通りに寝る” の行に最初の赤の丸印(2枚目の写真④)。しかし、隠れてやっていたのが宿題だったので、“宿題をする” に緑の丸印。居間の椅子を倒して時(3枚目の写真①)は、「めちゃくちゃにした」ことで何個か目の赤の丸印(3枚目の写真②)〔「散らかした」「めちゃくちゃにした」は、守るべき事項ではなく、やってしまった行為なので、リストにはなく、どこに貼ったのかは分からない〕。最後は、朝食の時、パンに必要以上のスプリンクル〔つぶ状のチョコレート〕をかけていたので(3枚目の写真③)、「散らかした」ことで赤の丸印(3枚目の写真④)。結局、何日後かは分からないが、丸印が5つの行が多いので、5日後かもしれない。成績は緑9個に対し、赤20個(4枚目の写真)。これを成績に直すと、“良い”/全数=9/29=31%。大学では、不合格の「不可」は59点以下なので、31点はその約半分。この結果を見た母は、「これ、どう考えたらいいのかしら」と困惑するが、父は笑顔で 「うまくいってるじゃないか」と楽観視する。しかし、母は 「そんな感じしないわ」と否定的。

学校では、大きな変化が起きる。校長が手配した臨時雇いの教師が来校し、校長は、それまで別々に別れていたグループ3の生徒をフィスの教室に集め、そこにマルクという先生を連れて来て、「今日からは、こちらのマルク先生が、皆さんの新しい担任ですよ… しばらくの間ですが」と紹介する(1枚目の写真①)。さっそく1人の生徒が手を挙げ、「わたしたちの先生は、いつ戻ってくるのですか?」と尋ねる。マルクは、「フィス先生は まだこの辺〔腰に手で当てて〕までギプスをされてる。だから、戻ってみえるまでにはまだかなり時間がかかるよ。少なくとも、あと6週間ぐらいかな」と答える。若いマルクの態度はフィスとは全く違い、さっそく机を片付け、輪になって座って話し合うことにする。そして、生徒に机を移動させるが(1枚目の写真②)、マルクの良さをまだ知らないブラムは、勝手に教室から抜け出し(1枚目の写真③)、廊下の荷物掛けから上着を取ってはおると、まっすぐ正面玄関に向かう。しかし、鍵がかかっていたので、仕方なく戻り(1枚目の写真④、背後が正面玄関)、すぐ近くに、半開きのドアを見つけたので中に入る。教室では、生徒が次々と手を挙げ、マルクに質問を浴びせる(2枚目の写真)。「好きな食べ物は何ですか?」「結婚していますか?」「犬、飼ってます?」、などなど。きわめて雰囲気は明るい。しかし、あまりに手を挙げる子が多いので、ブラムがいなくなったことを伝えたいリザロールがいくら手を挙げても、全然当たらない(3枚目の写真①)。最初の授業時間が終わったので、リザロールは自分でブラムを探しに行く。最初に行ったのはトイレの個室。でも、そこにはいない。そこで、「ブロムチェ」と呼びながら玄関に向かう。鍵がかかっていたので、彼は絶対校舎の中にいると確信する。そして、玄関から戻ると、ちょうどブラムが立ち止った位置で、少しだけ開いたドアに気付く(3枚目の写真②)。そこで、さっそく中に入って行き、隠れていたブラムを見つける。リザロールは、ブラムの横に座ると(3枚目の写真③)、「どうしてこんなところにいるの?」と訊く。「ぼく、別の学校へ行ったほうがいいんだ」。「どうして? 別の学校なら、ちゃんとおとなしく座っていられるの?」。「ぼくのせいで、先生が複雑骨折しちゃった」。「先生が自分で招いたことよ。先生は分かっててやった。あなたはそうじゃない」(3枚目の写真④)「あなたは、“ありのままのあなた” でいいの。そこが面白いんだから」。この素敵な言葉に、ブラムはウキウキする。

マルクの授業は、根本からフィスと違っていて、それがブラムにはすごく魅力的だった(1・2枚目の写真)。問題は、マルクが、生徒全員にフィスに対するお見舞いの手紙を書かせようとした時に起きる。それは、ブラムだけが書こうとしなかったから。マルクは何も書いていない紙を取り上げると(3枚目の写真①)、ブラムを黒板の前に置かれた机に連れて行き、紙とペンを置く(3枚目の写真②、矢印)。しかし、授業が終わっても白紙のままだったので、マルクはブラムを追って校庭に出て行き、リザロールと一緒に仲良く歩いているブラムを呼び止め(3枚目の写真③)、ブラムと同じ目線になるよう地面に膝を付くと、「フィス先生にお見舞いのカードを書いてくれなかったね」(3枚目の写真④)「残念だな。本当はね、君はちゃんと謝るべきだと ぼくは思ってるんだ。『ごめんなさい』ってね」と話しかける。それに対し、ブラムは、「ぼく、わざとやったんじゃない」と、書くのを拒否する(4枚目の写真)。マルクは、「分かっているよ。それでも、やっぱり心は痛むだろ?」と尋ねる。ブラムは頷く。そこで、マルクは、青い紙を渡そうとするが、ブラムは何も言わずに、そのまま立ち去る。

教壇の上に気楽な格好で座ったマルクは、フィスから届いた封筒を開き、生徒たちに、「かわいそうなフィス先生がなんて書いてきたか、これから読むからね」と言い(1枚目の写真、矢印)、声を上げて読み始める。「『たくさんの素晴らしいカードありがとう。とても嬉しかったよ。しっかり勉強するんだぞ。君たちが気づかないうちに戻ってくるからね。またすぐに会おう。フィス先生より』」。読み終わると、マルクは、「手紙はここまで。みんな、おやつをしまって。さあ、また知恵を絞る時間だよ。みんな 算数の教科書を出して」と言い、授業を始める。次は、放課後のシーン。ブラムとリザロールは、校庭の大木の枝に仲良く並んで座っている。すると、リザロールが、「『ごめんなさい』って言ったほうがいいんじゃない?」と切り出す。ブラムは、「やってないのに、『ごめんなさい』なんて言わないよ」と、いつもと同じ反論をする(2枚目の写真)。「わざとじゃなくても、相手を傷つけちゃうことってあるのよ」と言った後、リザロールは、思い切ったことを打ち明ける。「考えなんて、変えたっていいの。わたしだって、最初はあなたのこと変だなって思ってたもん」。「で、今は?」。「今だってそうよ」〔変なままでいい、それがあなたの魅力なんだから〕。それを聞いたブラムは、両手で両目を下に引っ張り、変な顔をしてリザロールを笑わせる。リザロールを自分の家に連れて帰ったブラムは、キッチンに連れて行き、テーブルでパソコンを使っていた母に、「ママ、これから ぼくたちお菓子焼くよ」と話しかける。「何を?」。リザロールが 「ケーキです」と言うと、ブラムは 「ううん、ケーキじゃない、アップルタルトだよ」(3枚目の写真)「フィス先生はアップルタルトが大好きなんだ」と言う。それを聞いた母は、「先生にあげるの?」と訊く。「仲直りするためだよ」(4枚目の写真①)。「それはいい考えね! なんて優しいの!」。そして、2人はいよいよアップルタルト作りに挑戦する。といっても、ゼロから作るのではなく、アップルタルトを作るための基本材料が入った箱をみながら、追加の材料として リザロールが「卵を2個ね」と言う (4枚目の写真②)。ブラム:「えーっと… 冷蔵庫の中だよ」。母:「レーズンを入れると、きっと美味しいわよ」。リザロール:「わたしのパパは、いつもナッツを入れるんです」。母:「それは美味しそうね、でも うちには なかったと思うわ」。リザロールが母と話しているのを見たブラムは、「リザロールはぼくのところに遊びに来てるんだ。だから、ぼくと話すべきなんだ。ママとじゃない」と思うと、リザロールを『変なブロム』で喜ばせようと、アップルタルト用の卵2個を両手に持ちながら、「見てよ、リザロール! 見て、卵で手品ができるんだよ! リザロール、見てってば!」と大きな声で呼ぶ。そして、2人がブラムを見ると、ブラムは右手に持った方の卵を自分の頭のてっぺんにぶつけて割り、黄身が髪の上をだらりと垂れ下がっていく(4枚目の写真③、矢印)。それを見たリザロールは嬉しそうに笑い、母は呆れて見ている(4枚目の写真④)〔2人の顔の対比が面白い〕

ブラムは、焼きあがったアップルタルトを、洋梨の紙箱に入れ、リザロールとマルクと一緒に、フィスの家に向かう(1枚目の写真)。マルクは、フィスの家が見えると、「あそこだ。あの家がそうだ」と2人に教える(2枚目の写真①)。フィスの家の裏手はオランダらしいランドメーレン(Randmeren、干拓地と本土の間に位置する細長い湖群)に面していて、家の前に着いた3人が生け垣越しに覗くと、フィスがランドメーレンの水際で、車椅子に乗って一人チェスをしている。フィスがうっかり駒を落とすと、老齢の母親が拾いに行く〔つまり、フィスは独身。だから子供のことが分からない〕。そのタイミングで、マルクが 「今日は」と声をかける。フィスの母親は、「あら、こんにちは。もういらしたの? 早いのね」と言うので、予めマルクが連絡しておいたことが分かる。「迷わずに来られた?」。「ええ、前に一度来たことがありますから」。そう答えると。マルクは木戸を開けて中に入って行く。「マルクです」。「マリア・フィス」。ブラムは、中に入らず、木戸の脇に乗っている郵便受けの下に 「Peer Vis」と書かれている(2枚目の写真②)のをじって見ている。これで、初めて、“P. Vis” の “P” が何の略か、ブラムに分かる。さっそく、ブラムの頭の中では、梨(Peer)と魚(Vis)が浮かぶ(2枚目の写真③)。先に入っていったリザロールに、マリアは、「あなたの名前は?」と訊く。「リザロール」。リザロールは、表札の前に立っているブラムに、「ブラム」と声をかけ、中に入るよう促す。ブラムが入っていくと、マリアは 「あなたがブラムなのね」と言う。ブラムはフィスの前まで行くが、どうしても言葉が出て来ない。それを見たリザロールが、「わたしたち、先生にタルトを作ってきたんです」と笑顔で説明する(2枚目の写真④)。それを聞いたマリアは、「まあ、アップルタルト。それは残念ねぇ。だって、あなた あんまり好きじゃないんでしょ?」とフィスに言う。フィスは、“そんなこと言うんじゃない” といった感じで、マリアに笑顔を見せる。そのあと、急に石膏で固められた足のどこかが痒くてたまらなくなったフィスが、唯一包帯の外に出ている足の指の隙間から棒を突っ込んで痒い所をゴシゴシ擦る。それを見たお陰で、ブラムは、遂に、「ご、ごめんなさい」と言うことができた(3枚目の写真)。マリアは、「さあ、今すぐおいしいアップルタルトをいただきましょうよ!」と言い、フィスも、「私もだ。さあ、そのアップルタルトをこっちに。これを先生のために作ってくれたのかい?」と訊く。それに対する返答や、フィスが食べる場面はなく。外の道路で、マルクがブラムを持ち上げて、「イエーイ! やったー!」と叫ぶ場面で終わる(4枚目の写真)〔マルクは、実にいい先生だ〕

次は、ある日の学校での光景。楽しそうな授業中、マルクはブラムを呼び、紙に何か書く(1枚目の写真)。ブラムは紙をひったくるように取ると、教室から出て廊下を走って校長室に入って行くと、校長に紙を渡す(2枚目の写真①、矢印)。紙を見た校長は、棚の上に乗っていたダンボール箱を渡して何か言う。ブラムは箱を持って校長室から出て行き(2枚目の写真②、矢印)、グループ1の教室まで箱を持って行く(2枚目の写真③、矢印)。教師はブラムの頭を撫でると、棚から何本ものカラフルなロール紙を取り出し、どこかに持っていくよう頼む(2枚目の写真④、矢印)。たまにこうした活動をさせることで、ブラムの動きたい衝動を開放させるという、マルク流の名案だ。別の日。ブラムは机で脚を振っていたが、マルクは気にもかけない。ブラムは、誰よりも早く回答できたので、さっそく冊子をマルクに見せる(3枚目の写真①)。回答に満足したマルクは、ブラムに使用時間を限ってコンピューターを使わせる(3枚目の写真②)。服が違うので別の日も、ブラムは机に座ってしっかり勉強している。さらにまた、別の日には、ブラムは クラスの生徒用のミルクを走りながら運び(3枚目の写真③)、動きたくて仕方のない脚を喜ばせる。家に帰ると、2階への階段には 「立入禁止」のロープを張り(3枚目の写真④)、自由気儘な時間を過ごす。

とうとう、翌週にはフィスが戻ってくることになり、金曜の授業が終わると、みんなで黒板に 、「 フィス先生、おかえりなさい 」と書いている。ブラムだけは、黒板消しを手で叩いて遊んでいる(1枚目の写真、矢印)。見かねたマルクは、「ブラム、散歩しておいで」と言い、ブラムはさっそく校庭に出て行くと、大木の周りをぐるぐると走る(2枚目の写真①②)。家に戻ったブラムと父は、赤と緑の丸印を貼った紙を捨てようと、一緒にゴミ箱まで行く(2枚目の写真③④)。そして、力のある父が、厚紙を4つに折って捨てる(3枚目の写真)。

月曜の朝、フィスが両手で杖をついて歩いて校舎に入って行く(1枚目の写真)。黒板を背に座ったフィスの横に、マルクが ミルクを乗せたトレイを持って来て置く(2枚目の写真①、矢印)。マルクは全員を代表して、「フィス先生、あなたが戻って来られて、私たちはみんな本当に喜んでいます」と歓迎の言葉を述べた後で、ブラムを見ながら、「だから、ブロムチェ君が…」と言い、次にすぐ横のフィスの顔を見て、「あなたにお話ししたいと…」と言う。ブラムは立ち上がると、ポケットから紙を取り出して読み上げる。「大好きなフィス先生、あしのこと ごめんなさい」(2枚目の写真②)「ぼく、いじわるじゃないよ。でも、頭のなかで いろんなこと考えちゃうんだ。ホントだよ、信じてくれる? ぼくは ぼくなんだ。たまに、それで困っちゃうときがある。でも、いいトコもいっぱいあるよ。それに、これ以外のぼくにはなれないし」。読み終わると、生徒たちが拍手する(2枚目の写真③)。ブラムはフィスに向かって歩いて行き、受け取ろうと思ったフィスが立ち上がると、石膏で固めた脚が、ミルクのいっぱい乗った台を転倒させる(2枚目の写真④、矢印)〔1個1個が蓋つきプラスチックの容器なので、床は汚れない〕フィスは、「ごめんな、ブラム君。そんな君を理解してあげられなくて」と謝る。「でも…」。フィスは、「『でも』は なし」と笑顔で言うと、「本当だよ、嘘じゃない」とブラムの頭を撫で(3枚目の写真)、「すてきな手紙だね」と喜ぶ。

そのあと、クラスの全員がフィスのそばに集まり、再会を喜ぶ(1枚目の写真)。ここから、語り部ブラムの最終ナレーションが始まる。映像は、ナレーションとは無関係に、その後の状況を映し出す。「グループ3なったら、いろんなことを学べるって思ってた。そしたら、ホントにたくさん学んだよ。だけど、ぼくが期待してたのとは、ちょっと違ってた。エジプト文字〔ヒエログリフ〕の読み方も、ロケットの作り方もなかった」。ここから、校内を用事で走り回るブラムが映る。「でも、別のことを学んだ。『ぼくは ぼくなんだ』ってことを」。ここから、ブラムは簡単な舞台の上で、同級生を前に一人芝居をしている。「ぼくは、すぐにバタバタしちゃう。でも バカじゃないし、つまんない子でもない」(2枚目の写真)。ここから、校長室。校長がフィンと一緒にいるところに、マルクが呼ばれて入ってくる。「ぼくたち一人ひとりが違ってる。そこが素晴らしいトコなんだ」(3枚目の写真①、矢印はマルクの雇用契約書)。ここから、グループ3のクラスを、フィンと2人で担当することになったので、マルクがシャンパンそっくりの炭酸入り清涼飲料水のビンを開けて生徒たちに振る舞う(3枚目の写真②)。「ぼくたちは どうしてこの世界にいるの?」。ここから、炭酸入り清涼飲料水のコップを持ちながら、教室の机の上で、フィンがブラムとチェスをしている。「ええと、それは まだ分からない」。ここから、家に帰ったブラムが母をトランポリンに連れて行く。「ま、そのうち ぼくが見つけるよ。たぶんね」。ここから、フィンの脚が完治してからのクラス(3枚目の写真③、黒板に曜日ごとの担当が書いてある)(3枚目の写真④、マルク式になったフィンの授業)。「ただ、ぼくはここにいられて、すごく幸せなんだ」。ここから、家に帰ったブラムが、キムと両親と一緒にトランポリンに乗っている。「ぼくはブロムチェだよ。ブロムチェ・バース」(4枚目の写真)。ここで映画は終わる。

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