カナダ (2007)
2008年7月12日に第17回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭、2009年1月25日に第4回関西クィア映画祭で上映された作品と書くと、偏った映画のように思えるが、内容は家族向きのコメディ。主人公の11歳のスコットの母ジュリーは、違法な麻薬の静脈注射時に死亡。母は、より安全な経口摂取から、速攻かつ強力な注射に切り替えるほどの “ジャンキー” で、少なくとも2人の男と同棲してきた “渡り鳥” でもあった。だから、スコットは誰の子か分からない。しかし、ジュリーは5年前に正式な遺言書を残していて、そこでは、最後に同棲したビリーを法的な後見人に指名していた。児童福祉局は、ビリーが行方不明なので、ビリーの兄のサムと、その “夫夫” であるエリックに、ビリーに連絡が取れるまで、「パパ」の役割を押し付ける。こうして喜劇は始まる。映画のもう一人の主役のエリックは、トロント・メープルリーフスという名門のプロアイスホッケーチームの元スター選手で、今はスポーツ専門のTV局のアイスホッケーの解説者として名を馳せている。だから、立場上、自分がゲイだということは隠している。相手のサムの対応は映画では描かれていないが、スポーツマンを対象にした弁護士なので、ゲイであることを公言はしていないと思われる。実際、映画の中で2人の “ゲイ的な行為” が映されることはほとんどゼロに近い。映画の真の主人公は、あくまで、環境の犠牲者のスコット。ジュリーは、“男性の目を惹きつける” ための派手な衣装や装飾品、化粧品をいっぱい持っていて、スコットはそれに囲まれて育ってきた。そして、突然の母の死。消えてしまった後見人のビリー。オタワの児童福祉局に保護されたスコットは、母が残したそれらの “遺品” を大切に持っている。そんな彼がゲイなのか、そうでないのかは映画でははっきりしないが、私は、ゲイではなく、ただ単に、環境に引き回されただけの “子供らしさ” だと思う。サムとエリックに引き取られたスコットは、母の真似をして着飾ることで “ゲイらしくない” 2人を驚かせ、危険視され、止めさせようとさせられる。このあたりが、コメディ的要素としては最も面白い。スコットには、ゲイとは正反対の、乱暴で口の悪いライアンという子と、学校の安全パトロール隊のジョーイが友達になるが、この異質な2人の衝突も如何にもコメディ的。Variety や The Hollywood Reporterのように低い評価を与えているケースもあるが、単にコメディ映画として観れば、2007年にしては斬新で、ハリウッドのワンパターンのコメディよりは、よほど楽しく観ることができる。
主役のスコット役は、ノア・バーネット(Noah Bernett)。1995年2月3日生まれ。2006年11月の撮影時11歳。2003年に端役で映画に出たのが最初で、2006~2008年の間に4本のTV映画に出演。その期間の真ん中で、この映画に出演。“初めての本格的な映画の主役” としてデビューを飾る。しかし、その後の2本の映画ではいずれも端役。現在では、カナダでも有名な「Snack Owl」というスナック菓子メーカーの創業者兼CEOだが、その剥頭と髭面には、スコットのイメージのかけらも残っていない。
あらすじ
トロント・メープルリーフス〔北米プロアイスホッケーリーグ「NHL」に所属する32チーム(うち、カナダは7チーム)の1つ。1917年創設〕の紅白戦〔実戦形式のチーム練習〕が少年ファン向けに公開されている。選手たちが 観客席に設けられたアイス・エントランスから紅白二列になって出て来ると、子供たちが通路の周りに集まり、選手たちは声をかけたり、握手をしたりしてサービスする。しかし、一番人気のエリック・マクナーリだけは、1人の男の子が、「僕のヒーロー!」と叫びながら、写真入りのカードと、サイン用のペンを目の前に出すが、エリックはスティックの末端で邪険に払い除ける(1枚目の写真、矢印)。紅白戦が始まると、エリックは本番並みに荒っぽくぶつかって、次々と相手をリンクに倒していく。しかし、エリックが、パックを追ってアクリル壁で相手にぶつかった時、さっき邪険にされた少年が、「あんた、サイテー!〔YOU SUCK!〕」と書いた紙をアクリル壁に押し付け、「マクナーリ、あんたサイテーだ!」と何度も叫ぶ。それにエリックが気を取られていると、相手チームの1人が腹いせにボーディング〔相手が気づいていない、または防備できない状態で壁に強く押し付ける行為〕の反則で激突し、エリックの顔は思い切りアクリル壁にぶつかる(2枚目の写真、矢印は敵のショルダーパッド)。エリックがそのまま気を失って倒れていくのを、少年は「マクナーリ、ざまみろ!」と言いながら笑顔で見ている(3枚目の写真)。

「5年後」と表示され、エリックはTVスタジオで、マイクの前で話している。「ピーターボロと、ケベックの守備コンビ。それで、カナダ代表は 5度目の優勝なるでしょうか? 明日は 主力選手たちの実力を見てみましょう。彼らは、優勝候補か 見掛け倒しか、はたまた 圏外か。コーナーを攻める荒くれ者も、反則を受ければチャンスが来る。そう、ペナルティーショットの。エリック・マクナリーが送る、NKL版『ペナルティーショット』〔番組名〕でした。また、お会いしましょう」。出演が終わると、プロデューサーに、レイキャビクで開催される世界ジュニア大会の取材を勧められる。そのあと、エリックは、社内の自分の部屋に、お客が来ていると知らされる。立ったまま待っていたサムは、「いいオフィスだね。なんだか、中学生の子の部屋みたいだな。まあ、ここの連中はみんなそうなんだろうと言うと(2枚目の写真)、重要な本題に入る。「ジュリーが死んだ」。観客もだが、エリックも誰だか分からないので、「それ誰?」と訊く。「彼女は、僕の弟のビリー数年前まで同棲してた。そのビリーが見つからない。なにしろ彼は…」。「阿呆?」。「いや、阿呆なのは分かってる。そうじゃなくて…」。サムは、エリックを連れて、近くの児童福祉局の事務所に行く。そして、事務所の女性に、ビリーはブラジルにいると話す。そして、「刑務所は問題外として、どこを探したらいいか」と事情を話す。女性は、「困りましたわね。ビリーがスコットの後見人です」と言う。それを聞いたエリックは、「スコットって誰?」と訊く。サムは、「待てよ! ビリーはどこかのリゾート地で働いてた」と言い出し、エリックは、「スコットって誰?」と再度訊く。サム:「ジュリーの息子」。「ビリーが父親か?」。「あいつは父親じゃない」。ここで女性が「ジュリーの遺言書では、今はビリーが父親です」と言う。サムは「ビリーは父親の器じゃない。阿呆だ。彼女が息子を託したなんて。金 目当てでしか、引き取らない奴だ」。「きっとそうだ」(3枚目の写真)。女性は、ジュリーの遺言書の写しを見せる。サム:「これは 5年前のだ」。「彼女は過剰摂取で死にました。書類を更新など考える状況ではなかったのでしょう」。「今、スコットはどこに?」。「オタワの児童保護局です」。「ビリーを見つけるまで、そこに 置いておける?」。「児童保護局としては、その子は、恒久的な家庭に引き取られるか、あるいはビリーが見つかるまで… あなたの家に」。「何だって?」。「おめでとう。パパさん方」。

児童福祉局の事務所を出ながら、エリックは、「ダメだ。問題外」とサムに言い、サムは、「数週間だけだ」と宥めようとする。「子供だと? 冗談じゃない。絶対、お断りだ。こうなると、知ってたな?」。「可能性はあった」。「はめたな。ガキなんて、悪夢だ」(1枚目の写真)。口論は2人の家まで続く。家の前で、サムは「これは義務だし、正しいことなんだ」と言い、エリックは「義務なんてない。この5年で築き上げた生活… 人生を 再出発するために… それを、変えたくない」と心の底からの “叫び” を上げるが、冷徹なサムは、「信じてくれ。君の生活は、変わらない」と保証する〔如何にも弁護士らしい発言=口ではいうが、結局何もしてくれない〕。そして、口論が終わると、近くの悪ガキが、通りの反対側の木 をバールのような鉄の棒で叩き続けている音に気付く。それを見たエリックは、“あんな奴が来たら” と思うとゾッとする。サムが仕事に行き、エリックが眠っていると、玄関ドアがドンドンと叩かれる。エリックがドアを開けると、ミルドレッドという近所の中老年女性が、「サムに頼まれて、スコットの部屋の準備に来たの」と言う(2枚目の写真)。「自分で やれるから」。「で、何するの?」。「タオルを数枚 投げ込み、あと顔を拭く物を…」。ミルドレッドは、手伝いをさせるために、離婚して戻って来た息子を連れて来ていたが、エリックのいい加減な話を聞くと、スコットが数週間暮らすことになる屋根裏部屋に勝手に上って行く。そして、「こんなトコに、入れるつもり?!」と叫ぶ。エリックが屋根裏まで行くと、ミルドレッドは、「母親が死んだばかりで、傷つきやすい子を、こんなトコに、押し込めるの?」と呆れる(3枚目の写真)。「マットレスがある。立派なエア・ベッドだ」。「必要なのは本物のベッドと本棚と机よ。こんなガラクタ〔エリックが昔使っていたジム器具〕、ガレージ向きだわ」。そう言うと、ミルドレッドはエリックの反対を無視し、“ガラクタ” を息子と一緒に運び出してガレージに運ぶ

夜になり、エリックがTVでアイスホッケーの試合を見ながらスナック菓子を食べていると、玄関が開き、サムが 「エリック、連れてきたぞ」と言う。エリックが玄関まで行くと、サムは、「スコット、エリックだ」と紹介し、エリックは、「初めまして、スコット」と言って握手の手を差し出し、スコットも、「初めまして、エリック」と言って、手を握る(1枚目の写真)。握った感じが変なので、エリックが気にすると、サムがハンドクリームだ」と説明し、スコットは「それ、それ、ピンク・ガーデニア。お風呂用のも 同じなの」と言う(2枚目の写真)。サム:「母親のだ」。エリックは、スコットが腕にはめている飾り付きブレスレットを見て(3枚目の写真、矢印)、「それもママのなのか?」と訊く。サム:「それも、ジュリーのだ」。

エリックは、「じゃあ、上に行こうか。新しい寝室を 見せてやろう」とサムに告げる。サムは、「新しい寝室?」と驚く(1枚目の写真)。サムがスコットと一緒に階段を上がって真っ暗な屋根裏部屋に着くと、「どんなかな? 明りを点けるぞ」と言って照明を点ける。あまりの変わり様に、サムはびっくりして、後から付いて来たエリックを振り返る(2枚目の写真)。「嘘みたいに、きれいだ」と言うと、スコットに「感想は?」と訊く。スコットは、ベッドのヘッドボードの真上の壁に貼ってある、カナダで “アイスホッケーの神様” として知られるウェイン・グレツキー〔Wayne Gretzky〕の大きなポスターを見て、“それ、誰?」と訊く。エリックは、「ウェイン・グレツキー」と答えるが、スコットは全然興味がないので、「もう寝ていい?」と訊く。サムは、スコットの持ち物は1階の黒い袋〔オタワの児童保護局が渡したゴミ袋〕に入れて置いてあり、バスルームと、自分たちの部屋は2階にあると教える。スコットが、最後に「僕、どのくらいここにいるの?」と訊くと(3枚目の写真)、サムは「ビリーに電話する。彼が、ここに来るまでには… 数週間かな」と答える。「だろうね」。

キッチンに行くと、サムはオタワでの体験を話す。「児童保護局は、彼を廊下に座らせてた」「スコットは、僕を覚えてなかった。前に会った時は7歳だったから」「持ち物は、あのゴミ袋だけ。服は汚れ、体も拭けず…」。ここで、エリックが口を出す。「やることが、できたな。服を洗えよ」。「手袋も、ろくな コートもなく…」。「買いに行けよ」。「1ヶ月も学校に行ってない」(1枚目の写真)。「明日、入学させろ」。「母親の死因を、誰も話してない。児童保護局は自動車事故だと嘘を付いた」。「なあ、サミー… ビリーに任せろ。これは、君じゃなく ビリーの問題だ」。その頃、屋根裏部屋では、スコットが、ピンで止めてあるウェイン・グレツキーのポスターを剥がしている(2枚目の写真、矢印)、玄関では、サムが運んできた袋の中を見たエリックが、中身がすべてスコットの母の物なので驚いている。カメラは屋根裏に戻り、スコットは、大事に持ってきた母の写真を、ポスターが貼ってあった場所にピンで止め、ベッドに横になって頭を枕に置く。すると、マットレスを支えていたフレーム全体がガタンという音と共に、床に落ちる(3枚目の写真。上の矢印は母の写真。下の矢印は、マットレスの落下方向)。

翌朝、1階まで荷物を取りに下りていったスコットは、変な音がするので玄関のドアを開けてみると、自分より背の低い生意気そうな悪ガキが、ドアの横の郵便投入口に向かって、カー・ロック〔金属棒〕でリンゴを打って遊んでいる(1枚目の写真、矢印)。スコットは、「何するんだ!?」と注意する。次の場面で、2階で眠っていたエリックが、「ギャー!!」と叫ぶ音で飛び起きる。エリックが急いで靴を履きながら玄関から飛び出すと、そこにはもうサムがいて、チビ助に向かって、「ライアン、落ち着け」と宥め、ライアンは 「放せ! カー・ロック返せ!」と文句を言い、玄関の反対側ではスコットが拗ねた感じで腕組みして、顔を背けている。エリックが「何事だ?」と訊くと、サムが「手伝ってくれ」と言う。すると、それを聞いたライアンが、「そうかよ、他のホモ呼んだな、このホモめ」と生意気を言う(2枚目の写真)。スコットは、自分が悪者にされそうなので、「あいつ、僕を殺そうとしたんだ!」と叫ぶ、サムは「エリック、こいつ凶暴な子だ」と呼び、エリックは、「了解」と言うと、ライアンを担ぎ上げ、「放せ! 降ろせ!」と叫ぶ(3枚目の写真)。

サムが「ホモと言ったろ!」と叱咤すると、「カーロックで、りんご打ってたら、気味悪い声で話してきたんだ。『何するんだ』。「りんご打ちだ」。『何でぶつける』。「暇だからさ」。『何で食べない?』。「食うかよ」。そしてら、僕にキスしようとした」。その言葉で、エリックはライアンを下に降ろすと、「キスだと?」と訊く。「叫んで、当然だろ?」(1枚目の写真)。そのシーンはそこで終わり、次は、キッチンで、スコットが、「キスしてやってもいいよ、って言っただけなのに」と、説明している。シリアルを食べながら、エリックは「相手は、カーロックを持ってるガキだぞ」と言い、サムは「スコット戻れ。シリアルを食べろ」。スコット:「まともな朝食じゃない」。サム:「後を追うべきか?」。エリック:「親爺はいつも怒鳴ってた」。サム:「持って来い! 何か、腹に入れろ!」。戻ってきたサムは、「ヘルメットと。胸の当てるやつとパッドがいるんだ。ローラーブレードする人が付けてるみたいなやつ」と言い出す。「待て待て、パッド!? 何のためだ?」。「身を守るためだよ」。今度は、エリックが、「そんな物より、凶器を持ったガキに、『キスしてやってもいいよ』なんて言わないことから始めたらどうだ?」と、いつも通り冷静かつ冷淡に言う。一方のサムは、スコットにカップ入りのプリンを投げて渡し(3枚目の写真、矢印)、「子供はプリンが好きだ。他の子と友達になれるぞ。ほら取引… いや、分けっこすればいいんだ」。それを聞いたスコットは呆れてキッチンから出て行く。

サムは、エリックを連れて学校に行き、手続きを取る。「では、あなたが第一保護者なんですね? 書類上、控えの連絡先も必要なのです」。「エリック・マクナリーです。でも、連絡はまず私にして下さい。いいですね」。「それじゃ、彼は… あなたの…」。「名前さえ登録すればいいんでしょ?」。場面は教室に変わり、女性教師は「みんさん、今日から新しいお友達が… スコット・ラトゥーア君」と言うと、黒板に、「SCOTT LATOUR」と書く。それを見たスコットは、「Tは1つです。2つ目はありません」(1枚目の写真、矢印)と言う。「それは珍しい綴りね、スコット」。「でもね、すごい、僕の名字… 先生、正解ですね」。この、どちらかと言えば生意気に聞こえるスコットの返事に、生徒たちはどっと笑う。しかし、よくできた教師は、笑顔で「ありがとう、スコット」と言い(2枚目の写真、矢印)、教室の空気を一瞬で和やかなものに変える〔因みに、LATOURはフランス系の名前と発音、以前、サムが言っていたスコットの母の名Julieもフランス系。SCOTTはイギリスの名前だが、以前、他の映画の解説で、イギリスがフランスの貴族によってノルマン朝、プランタジネット朝と2つの王朝下で支配されたと書いた。その時、名前の混合が生じ、スペルの変更も起きた(tt→tになった)ので、現在でもSCOTという名のフランス人が稀にいる。従って、SCOT LATOURは、すべてがフランス系の姓と名だと言える〕。場面は授業中に変わり、女生徒が、教科書の「忠実な猟犬の死を描いた感動的な場面」を読み上げていると、スコットは悲しくて泣いている。次に当たったスコットは、泣きながらその続きを読み続け(3枚目の写真、斜め後ろにライアンが座っている)、生徒たちから笑い声が起きる。教師は、「みんな、やめなさい。静かにして」と言うが、それでも笑うので、「こら!」と叱って止めさせる。

一方、TVスタジオに行ったエリックは、昨夜、スコットと握手した時のピンク・ガーデニアの匂いが手から消えないのでぎゅっと握っている。エリックの専用スタッフの女性ヌーラに手の匂いを嗅いでもらうと、「好みじゃないわ」と言われる。「ピンク・ガーデニアのハンドクリーム… 昨夜、スコットって子と握手した時、手に付いた。2回洗っても、取れない」。「それ、誰の子?」。「サムの弟の “死んだ元・彼女” の子」(1枚目の写真、矢印は握った手)。そのあと、ヌーラはサムからの伝言があると言い、伝言を書いた手を見せる。そこには、「エリック、スコットを迎えに行って」と書いてあった(2枚目の写真)。今朝、サムと話合った事務員は、「てっきり、お見えになるのは… あなたの… その、サムさんだと思っておりましたので」」と戸惑いなふぁら言う。「彼は明日、こちらに来ます」。「まあ、一応… あなたの… その… あなたのサムさんには、警告しておいた方がいいかもしれませんね。初日はスコット君にとって、少々… 刺激が強すぎたのではないかって」。「 最初は少しパニックになるくらい、誰にでもあることじゃないですか?」。「いいえ。あの子のは… そんなレベルじゃありませんから」。事務員が連れて行った先では、サムが校庭のコンクリートの壁の隅で、落ち葉の中で丸まっていた(3枚目の写真)〔確かに、保護者が学校に呼び出される特異なレベル〕。

他の生徒から隠れているスコットを目の前で見張っていたのが、学校の安全パトロール隊の2人の生徒(1枚目の写真)。2人しかいない隊の隊長のジョーイは、隊員であること示すオレンジ・ベルトが支給されてないことに対し、事務員に不満を漏らす。事務員が、「父兄の前で生意気なこと言わないで」と注意すると、エリックは「私は父兄じゃない」と事務員に注意した上で、「スコット、立つんだ」と呼びかけるが、反応はない。もう1人の女子隊員カーラが、「プードル柄のベルトをプードル柄のベルトを引っ張ったらどうでしょう?」と勧める。エリックは、スコットが着ているピンクと白の縞模様のセーターに気を取られていて、ピンクのプードルが一列に並んだ白いベルトには気付いていなかったので、ますますゾッとする。次のシーンは、どうやって運んだのかは分からないが、スコットはふてくされた顔で助手席に乗っている(2枚目の写真)。エリックに、シートベルトを付けるように言われても無視。しかし、「助手のヌーラからのプレゼントだ」と言って渡された袋の中に、犬の小さなステッカーの紙が入っているのを見ると、急に大喜び。さらに、ジョーイが運転席の窓から、エリックに向かって、「スコットの友だちになっていいですか?」と訊き、OKが出ると、スコットに「君に会えて楽しかった」と言って笑顔で手を振ったので、スコットも笑顔で手を振る(3枚目の写真)。

場面は、自宅に変わり、スコットの部屋とは違う場所に、ヌーラからもらったステッカーがいっぱい貼ってある。それをセッセと剥がしているサムに向かって、スコットが「貼っちゃダメななんて聞いてない!」と文句を言う。サムは、そんな文句は無視し、エリックに、いきなり学校行きを頼んだことに対し、「ずっと空いてるわけじゃない。いつ仕事が入るか分からないんだ」。「仕事なら仕方ない。だが、僕だって、このインタビューを、うまくこなさなきゃいけないんだ。だって、失敗したら…」(1枚目の写真、矢印はベタベタ貼られたステッカー)。ここで、またスコットが邪魔をする。「好きなように飾っていいって言ったじゃないか!」。サム:「協力し合わないと」。エリック:「まさか、違うな」。スコット:「ここ、大嫌いだ!!」。サム:「ペンキ塗りたてのアンティーク風ドアに、こんなもの もっての他だ!」。エリック:「サム… ビリーは、君の弟だ。それを忘れるな。それに、こう言ったろ… 僕の生活は変わらないと。そもそも、子供なんか反対だった!」。そこに、国際電話がかかってくる。ブラジルにいるビリーからだと思ったスコットはすぐに電話に出る。相手は確かにビリーだったが、愛人をベッドに寝かせ、その横で電話してくる姿を見ると(2枚目の写真)、ビリーという人間のいい加減さがよく分かる。「やあ〔Olá〕、チビのスクート〔Scoot〕」〔茶色はポルトガル語〕。「ビリー、どこにいるの?」。「リオだ。元気か〔Que tal〕、相棒」。「何だって?」。「ブラジルだ。南米の」(3枚目の写真)「君のママと別れた後に、こっちに移ったんだ… クソッ! そんなつもりじゃ… すまん、ママの話を出すつもりはなかったんだ。クソッ!… 『クソッ』なんて言うつもりもなかった」。「いつ迎えに来てくれるの?」。「ああ、それは… その… そのために電話したんだ、相棒」。「じゃあ、すぐ? 明日かな、それとも明後日? いつ?」。「いいか… 聞けよ、スクート。俺が言いたいのは、その、君のママ、本当はいなくなったわけじゃない。分かるだろ。だって、ほら、俺たちはみんな繋がってるんだ、その… 宇宙の大きな摂理みたいなもので…。で、その… 葬式はどうだった?」。その言葉を聞いたスコットは、ビリーと話しているのが嫌になり、受話器をサムに渡す。

スコットは、腹を立てて屋根裏まで行くと、ベッドに横になる。そこに、エリックがやって来て、「さっき、サムが、ステッカーのこと 怒鳴ってたろ。彼は、“秩序” が好きなんだ。服を、バスルームの床や寝室の床に置かないとか…」と、慰めつつ、麻薬の過剰摂取で死ぬような悪い母から何も教わらなかったスコットの態度に注意する(1枚目の写真、右の矢印は飾り付きブレスレット、左の矢印はピンクのプードル)。そして、せっかく貼っておいたウェイン・グレツキーのポスターが剥がされ、代わりに小さな写真がピン止めしてあるのを見て、「それ、ママの写真?」と訊く。「外すよ」。「そのままでいい。宿題でもやったらどうだ?」。「もう、終わってる。エリック? ショッピング、行かない?」。「まさか。僕は買い物なんかしない。必要ないっていうか。服は職場で支給されるし、他のものは全部サムが買うから。食料品も、何もかもね。買い物担当はサムなんだ」。「じゃ、ここにいる」。「サムが、君には新しいコートが必要だって言ってた。1時間だけ付き合うよ」。次のシーンでは、ショッピングセンターに行ったスコットが、母のカラフルファーマフラーを首に掛けて、勝手に走り出す。そして、気に入った物を持ってレジに行くのではなく、商品を持つと、センター内の警備室にアドバイスを求めに行く。エリックは、あちこち捜しまわってようやく見つけたスコットを、「探したぞ。勝手にいなくなるな!」と叱り、警備員に「悪かった」と謝る。すると、逆に「お気の毒でした」と言われる。「彼が、何か?」。「いいえ、奥様のことです」(2枚目の写真)。「奥様?」。「自動車事故で、悲惨な死に方をされたとか」。「私は、この子のパパじゃない」。すると、スコットが、「この人、エリック、ゲイなんだ」と、すっぱ抜く。「わ、私は、そんな…」。「サムと結婚してる」。「ホモでもないし、結婚もしてない」。「2人ともゲイなだけ」。「何も知らんくせに。行くぞ」。エリックはスコットをスポーツショップに連れて行くと、「知らない人と話すなと、教わらなかった?」と訊く。「ぜんぜん」。「警備員に、自分の話だけじゃなく、僕のことまでペラペラと!」。「ママを探してあげる、と言われたから」。「いいか、今後二度と他人には言うな」(3枚目の写真)「僕の私生活だ。僕は、スポーツ界で仕事してるから、変な噂は困るんだ」。

その夜、ベッドの左側のサムが、右側のエリックに、「君の妹から、電話があったぞ。金曜に出て来られるか知りたいそうだ」と言うと、エリックは、「ノーだな。この家から、二度と出ない」と言う。「ショッピングで、トラウマに?」。その時、ドアがノックもなしにバタンと開き、スコットが「どっちが、コートに合う?」と言って、今日買った2枚のセーターを並べて見せる(1枚目の写真)。翌日、右側のセーターを着て学校に行ったスコットは、図書室に入って行くと、安全パトロール隊の2人ジョーイとカーラがいる。スコットは、ジョーイに、「ブラジルの本ある? 移住する人のための」と訊く。「君がか?」。「多分。ひょっとして」。それを聞いたジョーイは、行って欲しくないので、「僕、君が好きだよ、スコット」と言い、カーラも「私もよ」と言う。スコットは、「僕が着てるの、全部 おニューなんだ」と言って自慢する(2枚目の写真)。その頃、TV会社に行ったエリックは、ヌーラに、「ゲイは養子を持つべきじゃないとか、僕らが子供をゲイにしようとしてるとか言う連中がいるだろ?」と言う。「あなたが? もしそうなら、私、その人たちに言わないと」。「いいか、僕はスコットをゲイにはしない。怖いのは、逆に、あの子が僕を…」。「エリック、あなたは、ゲイなの。ゲイ、ゲイ、ゲイ、ゲイ」(3枚目の写真)。

その日の夜、エリックの妹ジョーンが、息子ハンクを連れて2人の家を訪れる。玄関に出て行ったのはスコットで、「コートを、どうぞ」と声をかける。ジョーンは、「君が、スコットね」と笑顔で言う(1枚目の写真)。そしてサムと一緒に現れたエリックを指して、ハンクに、「この人が、エリック伯父さんよ。伯父さんのこと、覚えてる?」。ハンクの返事は、「ノー」。エリックが、「何か 飲むだろ、ジョーン?」と訊くと、すかざず、スコットが「コップ、冷たいよ」と言い、ジョーンは、「スコットは、私より、ホスト役が巧いわね」と褒める。エリックは「君は、この子を半分も分かっていない」と言うと、スコットに、「ハンクを上の階に連れてって、部屋を見せてやったらどうだ」と追い払う。ダカラ、スコットが「手伝わなくて大丈夫?」と訊いても、「屋根裏だ」としか言わない。3人だけになると、エリックは、スコットが如何に “変てこな子” なのかを例を挙げてジョーンに話す。それを聞いたジョーンは「親は自分の子供の話をして人を退屈させるものよ。それで後になってから謝るの」と言う。「自分が賢いと思ってるな」。「心配しないで、お二人さん。家にはもっとあるから」。そう言うと、ジョーンは2冊〔左は『男の子の不思議』、右は『男の子の育て方』〕の、子育て本を取り出し(2枚目の写真)、「これ、パパに読ませたかった本よ。あんたも参考にして」と言う。一方、屋根裏では、大変なことが起きていた。2人は女の子のような服を着て、歌いながらチアリーダーの真似をしていたのだ。そこに上がって来た3人。楽しそうに笑ったのは、ジョーンだけ。エリックは、思わず「なんてこった」と呆れる。スコットは、「ジャンプ・スプリッツ〔チアリーディングの花形種目〕をやってみようとしたんだけど、めちゃくちゃ難しいんだよ」と言う(3枚目の写真)。しかし、問題は、ジャンプ・スプリッツではなく、その服装だった。だから、エリックは、何が何でも不適切な服を直ちに脱ぐよう強く命令する。それに対し、サムは「エリック、スコットはどんな格好をしたって、どんな遊びをしたって自由だろ」と言うが、「いや、これはダメだ。認めん」と、あくまで反対する。

ハロウィンの日、学校に行ったスコットは、ジョーイに、「サムは、ホームレスの格好させたんだ。僕、そんなの嫌いなのに」と不満をぶつける。ジョーイは、「一番 簡単なんだ。だから、ママは毎年、僕をホームレスにさせる」と言う。スコットは、家から持って来た母の形見で、唇を赤く塗っている(1枚目の写真、矢印は手鏡)。その頃、エリックは、世界ジュニア大会に出る主力選手の1人とスタジオで握手している。その時、エリックの携帯の着信音が鳴り出す。二度消すが、相手の選手は、「その着メロ、クリスマスソング〔『ウェンセスラスはよい王様』〕?」と、思わず訊いてしまう〔元プロのホッケー選手にしては異常な選択〕。着メロが3度目に鳴った時、スコットは仕方なく電話に出る。その結果、恐らくインタビューを録画した後で、エリックは学校に行く〔なぜ、サムが行かない? かなり暇そうなのに〕。学校では、いつもの事務員が、「担任の先生が、あなたとサムさんに、個人面談がしたいとそうです。木曜の参観日に」と告げた後で、事務室で待っているスコットに会わせる(2枚目の写真)。スコットを連れて校舎のドアを開けると、目の前にホッケーの選手たちがいたので〔この日は、準決勝の日〕、スコットは、「行け、狂犬(勇猛果敢な者)ども〔Go, Mad Dogs〕!」と叫び、選手たちから笑われる。エリックに「サムは、ホームレスの格好で行かせたと聞いたが」と訊かれると、スコットは「僕はきれいなホームレスなんだ」と答える(3枚目の写真)。「どこで、化粧品を?」。「ママのだよ」。「ママが 化粧したからといって、真似する必要なんかない」。「真似たっていいよ。だって、パターソンさん〔事務員〕が、そんなの “二重基準〔「女性はいいのに男性はダメ」というように、相手によって基準を変える不公平なルール〕” だって言ったもん。だから、僕、化粧したっていいんだ」。「パターソンも、余計なことをいいおって。携帯の着メロ変えたか?」。「楽しくなかった?」。

帰宅したエリックは、サムに 「スコットはゲイだと思う」と言うと、サムは、「今さら、何だよ」と、呆れるように言う(1枚目の写真)。「ああ、そうだな。彼は、本物のゲイだと思う。ガチのゲイだよ。いいこともある… 彼は、ここに来る前から、絶対ゲイだった」。「そのどこがいいんだ?」。「僕らのせいじゃない」。「分かったよ、スコットはゲイだ。少なくともその傾向がある。僕も、彼くらいの歳でゲイだと気付いたし、ちゃんとやってこれた」。「ああ、サム、君はちゃんとやれた、立派にな。だが… 君は小学校の廊下を厚化粧して歩いたか? バスケの代表チームの前で『行け、豹ども!』と叫びながら歩いたか? どうだ? いいか、あの子は どう振る舞うべきか分かってない。何も。僕は自己防衛の話をしてるんだ、サム」。「そのうち学ぶさ」。「いつ学ぶ? 君はチームの連中の顔を見てないだろ、サム。見てるこっちが恥ずかしかった」。「彼に? それとも君にとってか?」。話が終わると、サムはすぐビリーに電話をかける。「ビリー」。「サミー、最近どう?〔Que passa, ó sá?〕」。「どうした? スコットだ。いつ迎えに来るんだ?」。「今、ちょっと、俺… 今、いろいろあって… 店を閉めるやら、片付けやらで」。「店? 店なんか持ってたのか?」。「持ってたよ。ダイビングショップだ。だけどよ、ラテン系の奴らはフリッパー〔ダイビング用の足のヒレ〕なんか好みじゃなくて… もうちょっと時間が欲しい」。ここで、ビリーは話を大きく変える。「今、ホントに… 新しい展開っていうかさ。見込みのある話が進んでるんだ。ホントに、つい最近動き出したばかりの、大事な話なんだよ」。ここまで言うと、電話が急に聞こえなくなったフリをして切る。そのあと、カメラは、ブラジル人の美人を映す(2枚目の写真)。ここで、場面は木曜日の担任との個人面談に。最初は、担任を前に、2人が意見をぶつけ合う。エリック:「君も僕も働いてる。2人とも、ずっと付きっきりで面倒を見るなんて無理だ」。サム:「ずっと付きっきり? 冗談じゃない。朝起こすのも、夜寝かしつけるのも僕だぞ。冷蔵庫だって見ろよ、あんなにすぐ空になるんだ」。「誰のせいだよ? そもそも僕は、あの子をここに置くことに反対だったんだ」。「あの子がしてる化粧も飾りも、全部母親の形見なんだ。今はまだ、突然の死にショックを受けているから」。「ショックが原因なら、すぐあの子に止めさせろ、サム、それも直ちに」。「ショックをなくすことなど誰にもできない」。「スポーツの解説では、“できない” なんて言わないんだ」。ここで担任が口を挟む。「私からアドバイスしてもよろしい? スコット君は本を読むでしょ。それは素晴らしいことです。でも、テレビは全く見ないのですか?」(3枚目の写真)。サム:「エリックが見てますよ。僕たちの分までね」。エリック:それが僕の仕事だから。テレビ関係の仕事をしてる以上」。担任:「それは分かっています。ただ、スティンソン校では、子供たちに “能動的〔積極的に分析し、メッセージを額面通りに受け入れるのではなく、独自の意見を形成する〕” な視聴者になるよう勧めています。テレビの良い点の一つは、より伝統的な “ロール・モデル〔高く評価され、模範とすべき人物―多くの場合、歴史上の人物、地域社会のリーダーなど〕” を紹介してくれることです。子供たちが心から憧れるヒーローたちを。エリック:「つまり、彼にもっとTVを見て…」。サム:「より良いお手本を見つけるさせる…」。担任:「いいえ。“良い”ではなく、“別の” お手本です。彼が既に持っている素晴らしいお二人に、さらに一つを加えるのです」。

教室から出ると、スコットとジョーイが、カーラとじゃれている。サムが、「おい、スコット、帰るぞ」と声をかけると、スコットは「僕たち、カーラに吐かせようと…」と笑顔で言い(1枚目の写真)、カーラも「そんなこと、させないわ」と笑顔で言う。サムが、悪ガキのライアンと一緒にいる太った中年の母に、「やあ、アンドレア、あたなも先生と面談ですか?」と訊く。「ライアンが、全科目 落第なの」。すると、ライアンが「体育以外だ」と母に文句。そこで、母は「体育以外、すべて」と言い直す。それを聞いたスコットは「アドバイス欲しい?」とライアンに近寄る。「変態め、そんなもん要るかよ」。「教室では、怒ったり叫んだりしない。成績が悪かったことを、すごく反省してるふりしてみて」(2枚目の写真)「そうすれば先生も、きっとかわいそうって思ってくれるよ。僕ならそう思うし」。「ふざけんな」。エリックは、「いい忠告だ、スコット。お休み 言って〔スコットの面談は午後7時から始まったので〕」と論争を止める 。スコットは、「お休みカーラ」と言って頬にキスし、ジョーイにも同じようにキスし、最後にライアンにもキスしようと寄って行くと、ライアンは、「うわっ! ほら見ろ!」と言って身を屈めてキスを逃れる(3枚目の写真)。そして、スコットに殴りかかろうとするが、サムが2人の間に割って入る。それを見たカーラが吐いてしまい、滑ったジョーイが床に倒れる。

暗くなってから家に戻ると、サムは、ソファに座ったスコットとエリックを前にして、真剣に話し始める。「ジェスチャーのヒエラルキーというものがあるんだ。特に、愛情表現としてのね」。ここで、さっそくエリックが批判する。「彼は子供だ、サミュエル。君の依頼人じゃない」(1枚目の写真)。サム:「握手があるだろう、腕を軽く叩くのも、ハイタッチもある」。エリック:「それは愛情表現というより、オタクっぽいな」。「次にハグの話に入る。背中を叩くのを兼ねた短いハグがある。それから長いハグだ。それは短いハグの、そうだな、3倍くらいの時間だ」。いい加減しびれを切らしたスコットが、「それで、キスは?」と訊く。サム:「キスがどうしたって?」。エリック:「彼は、愛情表現としてのキスのヒエラルキーについて知りたがってるんだ」。ここで場面は変わり、サムがオタワの児童保護局から引き取って来た、ゴミ袋の中に入っていたスコットの母の持ち物すべてをスコットのベッドの上に置く(2枚目の写真)。すごくきらびやかだ。サムは、「いいかい、何も捨てたりはしないってことだけ分かって欲しい。ただ… ほんのしばらくの間、片づけておくだけだ」。そして、それを入れる木の箱を取り出す。それを見たスコットは、「それは道具箱だよ。化粧品とかキラキラしたものを入れるためのじゃない!」と文句を言い、「2人には、もう口きかないから!」と拗ねる。そこで、サムは、「なあ、いい考えがある。箱の中に、柔らかい綿のクッションみたいなものを敷けばいいだろ」と言い、あと、中に入れるのは、「エリック、詰めるのは君に任せるよ」と言って下りて行く。エリックは、結構ぞんざいに、次々と中に入れて行くので、スコットは怒って見ている(3枚目の写真、矢印は箱)。そして、詰め終わると、スコットの手の届かない棚の上に箱を置く。

土曜の朝、エリックは屋根裏まで上がって来ると、「買い出しに行くぞ」と声をかける。スコットは「でも、仲直りしたわけじゃないからね」と言いつつ、一緒に出かける。歩道を歩きながらする会話。スコット:「みんな、僕のことをゲイだと思ってる」。エリックは「本当か? それは驚きだな」と、驚いたフリをして言うと、「『ゲイ』って言葉の意味 分かってるのか?」と訊く。「みんなが僕を嫌ってるってこと」。「そうじゃない」。「みんな、僕のこと、あんまり好きじゃない」。「それも違う。いいか、君をゲイだって言う子は、君を知らないだけなんだ。いいな? ゲイは呼び名だ。『チビ』とか『変人』とかみたいな。君はそうじゃないけど」(1枚目の写真)。そのあと、話題はスコットからエリックに変わり、スコットが、「誰が知ってるか、どうやって分かるの?」と尋ねる。「知ってるって、何を?」。「おじさんがゲイだってこと」。エリックは、「私はそうじゃ… 」と否定しようとするが、結局、「分かった、そうだ、ゲイだ。だがゲイだと主張したいわけじゃない… ただの、ごく普通のゲイなんだ」と打ち明ける。「子どもの頃、誰にも知られたくなかったんでしょ? だからゲイであることを隠しんたんだよね」。「まあ、そうかもな」。「で、何してたの?」。「ホッケーしてた」。ここが、映画の一つの転機。2人は、屋外スケートリンクに行く。すると、スコットだけが、フィギュアスケーターのように滑る(2枚目の写真、矢印)〔回転している〕。スケートの腕は、小学生にしては競技に出場できるほど上手いが、それでも、一種の失敗で転倒してしまう(3枚目の写真)。スコットは、すぐに滑って助けに行く。「大丈夫か?」。「あんな風に滑るつもりなかったんだ」。「誰だって転ぶさ、スコット。ほら、立って!」。「でも、さっきまでのは十分上手だったよね?」。「何をするのに『十分』なんだ?」。「ホッケーだよ」。

エリックは、スコットのやる気を見て、小学生のチームの新人募集所に連れて行く。テーブルの後ろに座ったコーチが、スコットに、「少年チームでプレーした経験はあるかな?」と訊く。スコットは、「ううん。でもママにスケート教わったよ。スピン〔フィギュアの回転〕だってできる」と、ホッケーには無関係のことまで言ったので、エリックが「スケートは上手ですよ、コーチ」と言う。エリックを見上げたコーチは、「エリック・マクナリーじゃないか! 2000年、スタンレー・カップ、準決勝の第7戦、延長戦で決勝ゴールを決めた!」と感激する。「その通り」。「私はコーチのバド・ウィルソン」(1枚目の写真)。「よろしく、コーチ」。「今はTVの人ですな。あんたに息子さんがいたとは」。ここで、スコットが口を出す。「僕、スコット。彼はエリックで、ゲ…」〔ゲイと言おうとして、エリックに突き飛ばされる〕。「元気一杯ですよ、2人とも。是非とも参加したいですね」。すると、突き飛ばされた先で、ライアンを見たスコットは、恐くなって、「エリック… ここから出てかないと! 急いで!」とエリックの腕を引っ張る。エリックが、「ライアン・バーリントンもチームの選手?」とコーチに訊くと、「うちのスター・センターだ。それが何か?」と訊く。「入団はやめるよ。スコットは新米で、このチームはかなりレベルが高そうだから」。しかし、コーチはそんな言葉は無視し、新しいユニホームをスコットに渡すと、「私は、ずっとアシスタント・コーチを探してた。あんたがいてくれればきっとうまく鍛えてくれる」と言うと、選手たちに、「おい、みんな。メープルリーフスの元スターがアシスタント・コーチになってくれたら、どう思う?!」と訊き、歓声と拍手が起きたのでエリックはOKせざるを得なくなる。家に戻ると、ガレージの前で、エリックはアイスホッケーのスティックの使い方の基本を教える(2枚目の写真)。そして、「質問があれば 叫べ。手首のこと忘れるな」と言って立ち去ろうとする。すると、スコットが呼び止め、「エリック、どうしてサムと知り合ったの?」と訊く。「僕がケガした時、いろいろ手配してくれた」。「彼、そういうの得意だよね」。「ああ、そうだ」。「ホッケーしたら、喜ぶかな?」。「絶対さ」。エリックがいなくなり、周りが暗くなってもスコットは練習を続ける〔ガレージの扉にパック(黒い円柱状の硬質ゴムの円盤)が当たったら止められる〕。心配したヌーラが出て来て、「スコット。ねえ、中に入らない? ピザもソーダもあるし、TVでは女子フィギュアをやってるわよ」と言う。「行けないよ。ガレージに当てられないと、エリックが がっかりしちゃうから」。その時、いきなり恐ろしい声がする。「そんなの、お前が打つ時に地面を見てるからだろ、バカ」。それがライアンだったのっで、スコットは、「ヌーラ…」と救いを求めるが、ライアンは、「黙れ! 殺そうってわけじゃない。俺、お前のアドバイスを使ったんだ。ポール〔Paul、女性なのになぜ男性名なのかは不明〕先生に『バカな点取ってごめんなさい』って謝ったら、“F〔落第〕” から “Dマイナス” にしてくれた。追試もなしで」と嬉しそうに言う(3枚目の写真)。「おめでとう」。「お前がボールを当てられないのは、強く叩こうとするからさ。最初は、軽く押し出すんだ」。そう言うと、打って見せる。「見たろ? やってみろ」。すると、スコットも成功する。「だろ?」。急にやる気になったスコットは、ヌーラに、「もうちょっと、外にいるよ」と言う。

一方、サムとエリックは喫茶店に行き、その帰りに、サムがビリーから電話があったと話す。「で?」。「時間がかかるとさ」。「だろうな」。「クリスマスまで、とか」。「クリスマスまでホッケー? 彼にとっては いいことだ… 新しい友達。少しはタフになるかも。僕がコーチだからな」。「アシスタント・コーチだろ」。その頃、スコットは何とライアンの部屋にいる。スコットが「僕が今までもらったの、皆勤賞だけ、それも1回きりだ」と言う場面から。ライアンが、「ゲイの2人と暮らすのって、どんな感じだ?」と訊く。「ゲイじゃない」。「もち、ゲイさ」。「あの人たちは、座ってキスとか、そんなことしてないよ。ママが死んで、僕の面倒を見てくれてる」(1枚目の写真)「いい人たちだよ」。そう言いながら、スコットは棚に置いてあったカシオトーン〔電子鍵盤楽器〕をみつけ、「ねえ、ライアン、カシオ弾くの?」と訊く。「ああ」。「何か知ってる歌、クリスマスキャロルみたいなやつとかある?」。しかし、ライアンは、「ママ、死んだのか?」と改めて訊く。「うん。自動車事故だったって… みんな、ママは衝突して死んだって言う。でも、違うんだ。どうしてそんな嘘をつくのかな? ママはクスリをやってたんだ。たくさんね。それで、この前、やり過ぎちゃったんだ」。「嘘だ。ママがそんなことするわけない」。「神様に誓うよ。嘘じゃない」。その頃、サムとエリックが家に戻ると、ヌーラが、「スコットなら、通りの先よ。ホッケーやる子と一緒にいるわ」。ライアンに違いないと思った2人は、スコットが危ないと思い、全速でライアンの家まで走って行く。そして、ドアが閉まった部屋の前まで行くと、中から2人の声が聞こえてくる。「どんなの やってたんだ?」。「最初は錠剤だった。でも、それだと精神的ダメージが大きいから、注射器で打つやつに変えたんだ。足の指の間に、こんなに大きな針を刺してたよ。そうすれば、腕にやるとは違って、誰にも跡が見られないから」(2枚目の写真)。「それ、見たんか?」。「針を刺すとこ? 一回だけだよ」。「それって、死んだ時のことか?」。「針を刺し間違えると、体の中に気泡ができるんだ。それが心臓に到達すると、心臓が破裂して、死んじゃう… ママは、そうやって死んだんだ」(3枚目の写真)〔誰からスコットが聞いたか分からないが、完全な間違い。大量の空気が血管内に入った際の最も深刻な事態は空気塞栓。血管以外の場所に刺した場合は、内出血、神経損傷〕。部屋の外で訊いていたエリックが、小声で、「話したのか?」とサムに訊く。「児童保護局だろ」。そして、エリックは、ノックもせずにいきなるドアを開けると、笑顔でスコットを連れ出す。そして、ビリーがクリスマスまで来られないことを話す。スコット:「サイテー。もう、どうだっていいよ」。

スコットは、エリックとサムと一緒にスポーツ店に行き、アイスホッケーに必要な装具を揃える。ガーターベルト〔靴下留めの腰ベルト〕を見たスコットは、「この、女の人みたいな “ガーターベルト” で、“ホッケーソックス” を吊り上げ、その上からごっつい “ガードル〔下半身プロテクター〕” を履くの?」と、不満そうに訊く。サムが、「ああ、そうらしい」と慰める(1枚目の写真)。すると、横の棚から姿を現したジョーイが、「君が入部したって聞いたんだ。コーチに、どのポジションやりたいか聞かれたよ。ホッケーもスケートも経験ないって答えたら… 僕、ゴーリー〔キーパー〕だ」と言う(2枚目の写真)。サムは、「偉いぞ」と褒める。次のシーンでは、ジョーイが交差点の横断歩道を歩いていると、ライアンの叫び声が聞こえる。「こっち来いよ、スコット。横断歩道なんて、バカ正直用だ」。そして、ジョーイの横を、2人が走り抜け、交差点を斜めに横断して走って行く。2人は、もう仲良し友だちで、ジョーイはもうどうでもいい “ダメ友” に成り下がってしまう。家に帰ったスコットは、それまで常に見に付けていた母のブレスレットを外すと、小箱に入れ、「カクテルパーティーや、特別な日にぴったりです」と書いた紙を入れて、屋根裏にベッドを用意してくれたミルドレッドにプレゼントする。そして、栄養のある夕食を食べながら、『初めてのホッケー』を熱心に読む(3枚目の写真)。

翌日、練習が始まると、ジョーイのノロノロした動きを見たコーチは、「あかん」と言って、がっくり首を垂れる。エリックはリンク〔コート〕の中に入って行くと、スケーター候補を集め、「どうする?」と訊き、全員が「バックチェック〔全速で自陣に戻り、相手の攻撃を邪魔する〕!」と応じる。「そしたら?」。「ブレイク〔一気にリンクに散る〕!」。こうして意気を上げると、チームを2つに分けて戦わせる。「バックチェックだぞ、行け!」「敵を見ろ!」「マークしろ! 徹底的に!」。2回目の対戦では、開始前に、ライアンが笑顔でスコットを見ると、スコットも笑顔で応える。そして、ライアンからのパスを受けたスコットが、1人でパックを操りながら前進し、敵と真正面からぶつかりそうになるが、ライアンが横から飛び出て敵を倒し、スコットに 「任せた」と声をかける。ライアンとスコットは暗くなっても、ガレージの横で練習し、それが終わると、スコットの家の居間で、2人揃ってソファに座り、TVでプロのアイスホッケーチーム同士の試合を、エリックの解説付きで見る(2枚目の写真)。翌日の練習は、エリックが命じた、「全員、滑走!」から始まる(3枚目の写真)。

控室に集まった選手たちの前に、コーチがやって来て、「みんなよく聞け! いい練習だった。水曜日の初戦に向けて、先発メンバーが決まった。「ライアン、センター。J.P.、君はライト〔ライトウィング:攻撃時に右側からパックを運び、相手ディフェンスにプレッシャーをかけて得点を狙うフォワードのポジション〕だ。そしてレフト〔レフトウィング〕… レフトはスコットだ」(1枚目の写真)。さっそく、レフトが定番のフィンが、「僕は?」と訊く。「全員出すから安心しろ、フィン」。コーチは、次に、「エリック?」と訊く。エリックは、最初、注意事項を長々と話し始めるが、しらけた雰囲気に態度を変え、「いいか。私が『ジギー〔Ziggy〕』と言ったら、君らは『ブーン〔Boom〕』と言うんだ」と言うと、大声で「ジギー〔ジグザグの響きに近く、ホッケーの素早い動きや、予測不能なスピード感を連想させる造語〕!」と叫び、選手たちも大声で「ブーン〔ホッケーでパックを叩き込む音や、選手同士がぶつかる衝撃を象徴した造語〕!」と叫ぶ。それを3回繰り返した後で、エリックは、「よし。今日は寝ろ。水曜はぶっ殺してやれ!!」としめくくる。選手たち全員がスティックで床を叩いて盛り上がる。一旦部屋から出たエリックが、「ぶっ殺せ」は言い過ぎたと思い、部屋まで戻ってドアを開けようとすると、中で、フィンが、スコットに向かって 「この下手くそ。パスもシュートもダメ。それに、お前のゲイパパはゲイだ」と侮辱する。すると、ライアンが、「それを言うなら “オカマ” だろ、オブライエン」と語彙の低さを指摘。それを聞いたスコットは、「ケンカはやめて。エリックが言った通り、ううん、言おうとした通り、僕たちはチームとして協力しなきゃ。それに、彼は僕のパパじゃないし、“ゲイ” でもない。だから二度とあんなこと言わないで。いい?」と止めさせようとするが、フィンとライアンは取っ組み合いのケンカを始める。それを見たジョーイが、「2人とも、ケンカやめろよ!」と言うと、ライアンはジョーイを見て、ジョーイを馬鹿にするように、「『2人とも、ケンカはやめろよ』」と口真似し、「おいジョーイ。そのスケート靴、新品か?」と訊く(2枚目の写真)。「一応新品だよ」。「片方よこせ。僕が履いてやる」。その日の夜、エリックとサムが、家の前の道路で、水曜の “スコットのデビュー戦” になるべく多くの応援団を送ろうと話していると、そこにスコットが走ってきて、「サム! サム! ライアンの家で警察が何してるの?」と訊く。すると、家の中からライアンが連れて来られ(3枚目の写真、矢印)、スケート靴を警官に渡し、パトカーに乗せられる。それを見たスコットは、「ジョーイなんか大嫌いだ!」と叫んで家の中に駆け込む。

エリックが、屋根裏まで行き、スコットに、「なぜそんなにジョーイを嫌うんだ? ジョーイは友達だろ」と訊くと、「友だちじゃない。あいつ、ライアンがスケートを盗んだってママに言いつけたんだ」と答える。「ライアンは盗んだのか?」。「うん」。「なら、仕方ない」。「ライアンは少年院送りだ。僕はもうおしまいだ」。「少年院だって?」。「ライアンはチームを追い出されるんでしょ? 僕、彼に守って欲しいのに」(1枚目の写真)。それを聞いたエリックは、「起きろ、スコット。いいか、私を見ろ。拳を作ってみるんだ。いいな?」と言う。スコットが、握りこぶしを作ると、「拳だ。そうだ、いいぞ。よし、それを顔の前に構えて。そう、そんな感じだ」と、両手で殴るような格好をする。「ケンカの仕方を教えてるの?」(2枚目の写真、矢印は互いの拳骨)。「自分を守る方法を教えてるんだ。いいか? まず最初に覚えてほしいことは…」。ここで場面が前日の夜から、水曜のスケートリンクに変わり、スコットが「顔を守る」と答える(3枚目の写真)。観客席には、サム以外に10人が応援に来ている。その前には、ライアンが座っている〔出場停止〕。

試合が始まる直前、選手が中央に集まったところで、ジョーイが、「スコット! スコット! 頑張れよ、スコット。君は最高だ!」と叫ぶ。そして、試合開始。スコットは、その場でスティックを捨てると、まっすぐジョーイに向かって滑って行く。そして、ジョーイに体ごとぶつかると、氷の上に倒し(1枚目の写真)、体の上に乗ってゴーリーマスクを外すと、握りこぶしでジョーイの顔を殴る(2枚目の写真、矢印は拳骨)。それを見たライアンは、目立たないように手を叩いて喜ぶ(3枚目の写真)。そこに、エリックが到着し、スコットの体を持ち上げて離すと、「何してるんだ! 退場だ!」と命じる。「どうして?」。「どうしてだと? 見ろ! 彼を見るんだ! 自分が何をしたかわかってるのか? ここから出て行け!」。「不公平だよ」。「行け! 行くんだ!」。

観客席では、一連のエリックの対応に、「やってくれるぜ、天才さんよ」との冷笑も(1枚目の写真、左の矢印は倒れたジョーイ、右の矢印は退場させられるスコット)。場面は、会場の外に変わり、サムがスコットを連れて歩いていると、そこにエリックが走って来て、「サム!」と声をかける。エリックの声を聞いたスコットは足を速める。一方、サムは振り返ると、「彼にケンカを教えたのか?」と訊く。「自分を守る方法を教えたんだ」。「殴ることで?」。「じゃあ どうしろって言うんだ、サム。バニラプリンでも投げつけさせればよかったか?」。「もういい。ホッケー会場に戻れよ。スコットは私が家に連れて帰る」。ここで、もう車に乗ったスコットが「僕のせいじゃない!」と大声で言う。エリックは、車のドアを開けると、「私は怒ってるんだぞ。ジョーイは友達だろ? 友達にはあんなことするなんて。会場に戻り、『ごめんね、ジョーイ』と謝るんだ」。サムは「もういい、十分だ」と庇う。エリックは「彼が何したか見たろ!」と、許す気はない。スコットは、とうとう本音を打ち明ける。「僕、バカげたホッケーなんかやりたくなかった!」(2枚目の写真)「喜んでもらいたかっただけ。それなのに、僕のやることを何でも嫌うんだ!」。さらに、「ここは嫌いだ、2人とも嫌いだ!」と、逆に怒りをぶつける。それでもエリックが、「私と一緒に来て、『ごめんなさい』と言うんだ。あんな卑劣な行為の結果を…」と言い始めると。サムは「エリック、彼は君の子じゃない」と、エリックの思い込みを強く是正する発言をする。これで、エリックは何も言えなくなり、サムは、その場にエリックを残したまま、スコットの乗った車を出す(3枚目の写真)。

映画は、一気にクリスマス間近に。クラスでは担任のポールが黒板に、「さよなら、スコット!」と書く(1枚目の写真)。そして、「あなたがいなくなると寂しいわね、スコット」と言うと、クラス全員に向かって「皆さん、いなくなって寂しいって、みんなで言ったらどうかしら。じゃあ一緒に… 1、2、3」と言うと、担任が先導する形で、「寂しくなるよ、スコット」と言わせる(2枚目の写真)〔短期間滞在の生徒に対し、これだけ優しい教師は珍しい〕。一方、TV局の会議室では、ディレクターのグレッグが、レイキャビクで開催される世界ジュニア大会まであと1週間と迫った中で、取材のあり方について6人に向かって話している。その時、エリックの携帯の着信音(クリスマスソング)が派手に鳴り出す。エリックは「スコットからだ」と言いい、「外で取るよ」と言うが〔スコットは、ハロウィンの時、自分からの着信音だけクリスマスソングに変えた。エリックはなぜか、それを元に戻さなかった〕、グレッグは「エリック、今はここにいてくれ」と行かせない。「すぐ済ませるから!」。「その電話は… 後でたっぷり取ってもらおうか。それとも、レイキャビク行きをキャンセルして、一生女子サッカーの取材に回りたいか?」。それを聞いたエリックは、その場で電話に出ると、それはスコットではなくエリックの妹ジョーンだった。「もしもし。ジョーン、うん… あとでかけ直すよ」。グレッグ:「終わったか?」。エリックは「スコットの面倒を見てたって言わなかったかな? しばらく、その子を預かってた。今日、僕の弟… まあ、義理の弟みたいなビリーが彼ブラジルからやって来て、彼を連れ帰るんだ」と状況を説明した後で、「プロの頃、みんなに『エリカ』って呼ばれてたって、話したかな?」と言って(3枚目の写真)、会議室から出て行く。

エリックが家に戻ると、そこに、初めて会うビリーが到着していて、口だけは達者なビリーは、席を立って、「わお、ホッケーのヒーロー! ホッケー流の握手してくれよな」と言って握手する。そして、後ろのテーブルに サムと一緒に座っているスコットを指してから、「なあ、この数ヶ月、スクートの面倒を見てくれてありがとな。ホントに感謝してるよ」と言う(1枚目の写真)。そして、4人でテーブルに座ると、「みんなで座って、口に入れてたんだ」と言う。エリック:「誰かが料理でも?」。「俺たちドアのところに来たら、あいつが小さなエプロン姿で、何か作ってたな」。スコットは、暗い顔で「コーヒーだけだよ」と言う。ビリーは、いい加減なことを言ったと思われないよう、話題をスコットにしようと、「変わってないな、ぜんぜん」とスコットに話しかける。スコットは、「成長したよ」と反発する。「え? どこが?」。「僕、成長した。分かんないの?」(2枚目の写真)。「可愛いじゃないか。ホントは今のままの方がいいんだろ?」。この無責任な発言を受けて、サムは、「スコット、ビリーに聞いてみて。向こうではどんな学校に行くことになるのか」と勧める。それに対し、ビリーは「学校か。ああ、そうだな。それは… 向こうに戻ったら、ちゃんと調べるよ。なあ、アミーゴ〔amigo〕?」と、これまた無責任な返事。「それに、あっちではポルトガル語を話すんじゃないのか?」。「ああ、それも… ちゃんと頭に入れとくよ」。ビリーが、スコットのことなど何も考えてないことがよく分かる。結局、コーヒーだけの会話はそこで終わり、スコットは 逃げるように屋根裏に行く。心配したエリックがすぐにやって来て、「いいかい、ビリーのことは心配しなくていい、分かったね? ビリーに悪気はない。ホントだよ。ただ、彼は… ちょっと “ハイ” なだけなんだ」と、さっき初対面したばかりで、いい加減な慰め方をする。それを聞いたエリックは、「もしビリーが僕なんかいらないって思ったら、児童福祉施設に逆戻りだ。それに、サムもエリックも僕をいらないと思ってるし、ママも そう思ってたんだ。だって…」と言って泣き出す(3枚目の写真、矢印は、家を出て行くためのトランク)。エリックは、「ママのことは事故だったんだ。彼女が、君を見捨てようとしたなんてありえない。それに、僕たちは 君を “いらない” なんて思ってないよ。ただ、ずっと昔にママが決めたんだ。ビリーが君の面倒を見るんだって。ビリーはいい奴だ。僕はビリーが好きだ。君はラッキーだよ、スコット」と言ってから、「ブラジルはきっとクールだよ。いや、つまり、涼しく〔クールで〕なくて暑いだろうけど、でも、クールなトコだよ」と付け加える。

下に降りていくと、ビリーはいなくなっていて、サムは、戻って来たエリックに、ビリーのことを、「とんだクソだ!」と貶す。エリック:「その通りだ」。サム:「あいつの顔をぶん殴ってやりたい」。エリック:「僕を殴ってくれ。僕のせいだ、サム。大失敗だ。あの可哀想な子。彼は、今、屋根裏で… 自分が誰なのか、どこに居場所があるのか、そもそも居場所なんてあるのかさえ分からなくなっている。彼は、自分には誰もいないと思ってる。ビリーもいないし、ママもいない。そして僕たちもいないと。こんな状態で送り出すなんて、考えただけで胸が張り裂けそうだ」(1枚目の写真)。ここで、エリックは名案を思いつく。「考えたんだが… スコットは何が好きだ? クリスマスだろ。だから、あの子のために、盛大な送別会を開くっていうのはどうだ? 伝統的な意味でのゲイ〔20世紀前半までのゲイの意味は「幸せ」〕の… クリスマス・パーティを!」。そして、12月25日の夜になり、クリスマス・パーティが開かれる。電飾で飾られた玄関を訪れたのはライアン(1枚目の写真)。ライアンを中に入れたエリックは、「ライアン、それ何?」と訊く。「スコットにカシオを持ってきてって言われたんだ。だから持ってきた。僕の、この “なよなよした〔faggoty〕” カシオをさ」。「ライアン、“なよなよした”なんて言葉、本当にあるのか?」。「何だよ、僕が辞書にでも見える?」。「ブーツ」。ライアンは靴を足で蹴りながら(3枚目の写真、2つの矢印はライアンの靴)、「いつもブーツ、ブーツって。ねえ、元NHLの選手なのに、あんたの家って世界一 “ゲイっぽい” よね」と言うと、屋根裏に向かう。

エリックが、パーティ用の食べ物を準備中のキッチンに戻ると、ミルドレッドが、「スコットはどこかした? 渡すものはあるの」と言う。「渡して」。ミルドレッドは、この前、スコットから贈られた小箱をエリックに渡しながら、「忘れないでね」と念を押す(1枚目の写真、矢印は小箱)。エリックが小箱を胸の内ポケットに入れると、玄関ドアがノックされる。エリックが開けに行くと、次のお客はヌーラ。コートをエリックに渡すと、彼女はすぐに、「あのね、実は…」と言う、「実は、女子サッカーって結構好きなんだ」。「グレッグは あなたを “ゲートボール” に降格したんじゃないかと思うわ」。「『エリカ』だなんて言っちゃったから…」。「そんなの、関係ないの。だって、そんなことみんな知ってたから」。エリックは言葉もない。すると、勝手にドアが開き、最初に、スコットのベッドを運び入れてくれた男性(ジョージ)が入って来る。「やあ、スコットに立派な部屋を作ってくれた ジョージ・ジュニアだ」。「母さんがドアの下から配置図を入れてくれたんだ」。その次にドアを開けて入って来たのは、試合の時にスコットに殴られたジョーイ。それを止めに入ったエリックなので、「ジョーイ、来てくれて嬉しいよ。ブーツを脱ぎ捨てて ついてきて」と歓迎する。ジョーイは、「ラトゥールさん。これがホントにいい考えなのか、僕には自信がありません」と言う〔ラトゥーアは、スコットの姓なので、ジョーイはエリックがスコットの父親だと勘違いしている〕。エリックは、名前の間違いを訂正せずに、屋根裏まで連れて行く。そこには、ライアン以外に妹の息子ハンクと、安全パトロール隊のカーラも来ている。カーラもエリックを「ラトゥーアさん」と呼び、スコットから渡されたキラキラ・モールを首にかけている。一方のハンクは、クリスマス電飾のコードを肩に掛け、ライトを点けたり消したりしてみせる。エリックは、ジョーイを、部屋の奥のイスに座って本を見ていたスコットの前に連れて行き、「スコット!おい、スコット。ジョーイが来たぞ」と言い、「ほかにも、彼に言いたいことがあるだろ?」と訊く。スコットは、立ち上がってジョーイの前まで来ると、「よぉ」と言い、ジョーイは「うん」と応じる。あまりに簡単過ぎるので、エリックは「他にも、彼に言うべきことがあるだろ?」と注意し、ようやく、スコットが「ごめん」と謝り、ジョーイが「いいよ」と受け入れる(2枚目の写真)。「2人ともダメだ。ジョーイ、違うだろ。スコットに鼻を殴られた時、心もすごく傷ついたってこと、言わなくていいのか? それからスコット、君も、ジョーイがどれほど かけがえのない親友かってこと、言わなくていいのか?」。それを聞いたジョーイが、「殴られた時、すごく血が出たんだ。クリース〔ゴールの前〕が真っ赤になるくらい」と言うと、スコットが、笑顔で顔を寄せて「それ、カーラに言わなきゃ」。それで終わり。ジョーイは、カーラやハンクのようにキラキラを付けるが、スコットは「そんなの付けない」と言う。「どうして?」。「ビリーが、僕のことホモだと思っちゃうから」。それを聞いたエリックは、棚の上に置いた箱を降ろし、引き出しを開き、「ここじゃ、ちょっとくらいホモっぼくていいんだ」と言う(3枚目の写真)。スコットは、母の飾り物を返してもらって大喜び。

エリックが一安心して1階に下りてくると、サムとビリーが待っていて、ビリーのフィアンセのミアが紹介される。エリックは、①ビリーが再婚するとは初耳、②しかも、それをお別れパーティ日にスコットに告げられたことに不快感を示すが、ビリーは全く反省しない。エリックがキッチンに行くと、兄のサムと弟のビリーの間で口論が始まる。そして、ビリーが「いいかい、あんたたち運がいいよ」と言った時に、エリックが入って来る。サムは、「的外れだ。僕らの運がいいだって?」と言い、エリックは、「どういいんだ?」とビリーに訊く。「あんたら、ゲイだろ。子供がいない」。エリック:「その、どこが、幸運なんだ?」。ビリー:「他人の子供を押し付けられて、一生その養育費を払い続けなくて済むだろ」。サム:「お前は、厄介ごとをいつも逃げてた。スコットとジュリーも見捨てた」(1枚目の写真)。ビリー:「誰も見捨てちゃいない。あいつがヤクを始めたんだ」。サム:「やめさせようとしたか?」。ビリー:「あのさ、いいか、俺は関わりたくなかったんだ。俺は… 心配してたんだ、「どうしよう… 俺だけエイズになったら」って。これを聞いたサムが、「何と言った?」と訊くと、ビリーは逃げ出し、怒ったサムが追いかける。しかし、パーティが始まるので、争い止めさせられ、全員が階段の前に集まる。すると、階段の中段の立った着飾った5人が 『おめでとうクリスマス〔We Wish You a Merry Christmas〕』と『ジングルベル〔Jingle Bells〕』 を歌う(2枚目の写真、矢印はライアン)〔ライアンだけは普通の服で、みんなから少し離れている〕。次の『イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー〔It's the Most Wonderful Time of the Year〕』は、スコットが一番前に出て一人で歌う(3枚目の写真)。しかし、見知らぬ女性を連れたビリーに見られているのに気付くと、途中で歌うのをやめてしまう。

それを見たビリーは、「スコット、この女(ひと)は、ミアさんだ。君の新しいママになる」と紹介し、ミアは笑顔で「よろしく」と言う(1枚目の写真、矢印)。スコットは、ビリーに、「僕が、どれほど成長したか、気付かなかった」と、厳しい顔で言う。「何だって?」。「今朝、言ったよね」。「何を?」、「僕、成長したって」。「ああ、子供は成長するものだ。君も成長した。いいことだ」。そんな一般論で誤魔化されないスコットは、あくまで今朝のビリーを非難する。「気付かなかった」。その時、エリックが、「僕なら気づくよ。君はこれからすごく成長するから。背が高くなり、声が変わり、顔つきも変わる。すべてが驚くほど一変するんだ。でも、変化はとてもゆっくりで、自分じゃ気付かない。けど、僕なら気付く。君に気付くよ。毎日でも、僕なら君に気付くんだ」。それを聞いたスコットは、「僕、エリックやサムと、いたい」と言い出す。エリックが、「ビリー?」と訊くと、ビリーは「ダメ、エリックとサムじゃダメだ。俺は大金を払ってチケットを買い、ここまで飛んできたんだ。それに、このことはミアにずっと話してきた。ミアだってスコットが好きなんだ」とまくし立てる。しかし、ミアは、「もちろん、そうよ。でもスコットは、ここにいるべきなの」と、スコットの意志に賛同する。ビリーは、ミアの顔をじっと見つめ、次いで、スコットやサムや、他の客を見てから、胸に手を当て、「俺って、クズ〔hose bag〕だな」と言う。すると、階段の上の方から、ライアンが、「“クソ〔Dickhead〕” の間違いだろ」と声を掛ける。スコットは、「じゃあ、僕、ここにいていいの?」とビリーに訊く。ビリーは「ああ、いいぞ」と言うしかない。最高に嬉しくなったスコットは、エリックに手を差し出す(3枚目の写真)。エリックが、「来いよ」と言うと、スコットは抱き着く。

エリックは、その場で、胸の内ポケットから小箱を取り出し、「これ、ミルドレッドさんからだ」と言って渡す。小箱を開けたスコットは、「これ、ママのブレスレットだ! 新しいのが付いてる」と喜ぶ。スコットが、新しい飾りの「T」を見ていると(1枚目の写真)、エリックが、「スコット、Tは1つ」と言う。そのあと、パーティは盛り上がり(2枚目の写真)、それを見ていたエリックとサムがキスする〔唯一のゲイらしいシーン〕。翌朝の朝食は、クリスマスの装飾に囲まれている(3枚目の写真)。幸せな3人組の船出を祝うように、映画は終わる。。
