タイ映画 (2006)
幽霊が2番目の主人公でありながら、恐怖映画ではなく、友情の映画に変えた(これ以前だけでなく、これ以後も含めて)稀少な作品。映画は、不真面目な勉学態度と、父の不倫の目撃者という二重の “枷” から、中学1年の途中で、遠くの全寮制学校に行かされることになった11歳のトンの話。学校の寮での生活は、これまで味わったこともない、厳しく、辛いものだった。それに、編入生に対して悪戯を企むグループのせいで、ますます耐え難いものとなる。しかし、そこに、救世主のように一人の少年が現われる。トンにとって、この少年ヴィチエンは、寮内で話のできる唯一の存在となった。しかし、学校で開催された野外映画会の際、トンはなぜかヴィチエンを異質の存在として怖がるようになる。それでも、誰一人話し相手がいないトンにとって、少しくらいの奇妙な感覚は平気で乗り越えられ、それからの2人は真の親友同士となる。ある日、2人は寮から抜け出し、トンはそこで初恋の少女と出会うが、その帰り、トンがヴィチエンに “すべきでない質問” をしてしまい、ヴィチエンは急にいなくなる。お陰でトンは寮長に叱られ、その怒りをヴィチエンにぶつけるが、それが一種のきっかけとなり、ヴィチエンがかつてプールで溺れ死んだ生徒だと分かる。人間界と天界のはざまで、どちらにも行けずに、幽霊として留まらざるを得ないヴィチエンを救おうと、トンは、思い切った行動に出てヴィチエンを救い、幽霊として彷徨う運命から解放する。幽霊を登場させる以上、あり得ない現象なので、映画は、脚本上何度も細かな失敗を繰り返すが、映画の力は強く、ラストはこの種の(幽霊の出てくる)映画としては、抜群の感動を観客に与えてくれる。なお、訳出にあたっては、最初は、英語字幕を用いていたが、途中から、英語字幕とタイ語字幕がかなり違っている部分があることが分かり、後半はタイ語字幕のみを用いた。
主役のトン役は、Charlie Trairat。1993年1月19日生まれ。『Fan chan(フェーンチャン ぼくの恋人)』(2003)で、日本でも公開され、DVDも発売されている映画の主役を務めて一躍脚光を浴びた。私も、この映画は観てみたが、このサイトで扱うには、あまりにも脚本が不出来と判断し、Charlie Trairatが主役を務めたもう1本のこの映画だけの紹介に留めることにした。参考までの、この映画の最後の方で、ヴィチエンと別れた後のトンの構図とよく似た、『Fan chan』に出演時の写真を右に示す。2人目の主役のヴィチエン役は、Sirachuch Chienthaworn。1992年5月28日生まれ。これが映画初出演。
あらすじ
主人公のトン・チャトリーの言葉で、ナレーションが入る。「初めて家を離れた日のことは今でも覚えている。慌ただしさと寂しさの混ざり合った日曜日の午後だった。それは僕と7年生(中学1年)の友だちにとって中休み期間の最終日だった。自由を味わえる最後の日だと覚悟した」。トンは、頭のサイドをバリカンで刈り上げられ、1人のお手伝いさんが荷物をトランクに入れ、もう1人が入口で見送る中、クラウンの1987年モデルの後部座席に乗り込む(1枚目の写真)。すると、助手席に乗っていたトンの母が、2人に向かって、「チェウ、ペン〔เพ็ญ〕、家を守って」と声を掛け、入口にいた方が 「はい、奥様」と返事をする〔重要な会話〕。車の中で、トンに母は、夫に向かって 「トンが7年生を終えるのを待ってから、転校させてもよかったのに。突然の転校は、私にもショックだったわ」と、改めて不満を漏らすが、夫は 「いいか、これはもう決まったことで、議論の余地などない」と、きっぱり切り捨てる。同乗してきた小学校3年生くらいの弟トーが、「お兄ちゃんの新しい学校は田舎にあるんだよね?」と父に訊くと、父は、チョンブリー〔県名、バンコクの都心から、県北部なら80km南東〕だと答える。車が、チョンブリー県との県境に近くを流れるバーンパコン川まで来ると、母は、トーに、「急いで願い事をして。橋を渡り切るまで息を止めていたら、どんな願い事だって叶うわよ」。それを聞いて喜んだトーは、兄にも同じことをするよう勧め、自分は息を吸わないよう鼻を手でつまんで願い事をするが、そんな気分には遠いトンは無視する(2枚目の写真)〔重要なシーン〕。そして、車は門をくぐって校内に入って行く。車が停まっても、トンは父がドアを叩いて催促するまで、じっと座ったまま “行きたくない学校” を見ている(3枚目の写真)。
一家を待っていたのは、学生寮の寮長のプラニー。中学の学生寮の寮長に挨拶するのに、両手を合わせて頭を下げるとは(1枚目の写真)、2005年はそうだったとしても、今もそうなのだろうか? プラニーは、両親を玄関のイスに座らせ、「チャトリー、ついて来なさい」と言い、先行する形で階段を登って行く。そして、入って行った先は、ベッドが4列に並ぶ巨大な寝室(2枚目の写真)〔これほど大きな大部屋は、これまでの観てきた映画で、少年院にすらなかった〕。プラニーは、トンのベッドの前まで来ると、「これが、あなたのベッド。毛布を取りに行きなさい。毎朝必ずベッドを整えること。ここでは、誰もが自分のことは自分でするの。自分の家にいた時のように、誰も助けてくれないし、勝手にさせてもくれないから」と、厳しい口調で説明する。再び玄関に戻ると、「頑張って、勉強するのよ。罰せられたりしないで」と母が言い、トンを抱き締める(3枚目の写真)。父は、プラニーに、「彼をよろしく」と言って封筒のようなものを渡すが、謝金でも入っているのだろうか? 戻ってきた父が、トンの頭を撫でようとすると、トンは嫌がってすぐに離れる(4枚目の写真)。両手に一杯の荷物を持って無言で階段に向かう〔私物は、一種のシャワー室の手前の脱衣場にある木製のロッカー(高さ1.2m強、幅30-40cmくらいの物入れと、その横に、引き出しが付いているが)に入れることが後で分かる〕。
翌朝、全員が “一種のシャワー室” で中央に数列設けられた細長い水槽の両脇に全員が並んで、水槽から手桶で水を汲んでは頭からかける(1枚目の写真、矢印はトン)〔水槽の中がお湯だったら、これだけしぶきが飛べば、湯気が立つと思うので、水に違いない〕。体を洗い終わったトンは、使ったタオルなどを干す場所に行くが、狭い場所にぎっしりと干してあるので、すでに干してあるものをずらして、自分のものを掛けるしかない〔これだけ密集していて、よく乾くものだと疑問に思うが、暖房を掛け、通風をよくしてあるのだろうか?/5節後にこの場所の写真がある〕。そして、全員が揃って食堂に入って行くシーン(2枚目の写真、生徒の小さな食器と比べ、矢印の “プラニーと2名の職員の席の食事はより豪華だ)。トンは、初めてなので、プラニーが、食事はぴったり6時開始だと教え、どこがトンの席かも指示する。3枚目の写真は朝食の内容。ご飯の量が多くておかずは少なく、栄養バランスは最悪。矢印は、デザート。
食事を見たトンは、父から最悪の通告がなされた食事時のことを思い出す。トンが漫画を見ながら食べていると、父が急に 「次の学期から、トンを寄宿学校に入れることにした」と言い出す(1枚目の写真)。それを聞いたトンは、驚いて父を見る(2枚目の写真)。母は 「なぜ突然決めたの… 遠くへやるなんて?」と、びっくりして問い質す。「今度の学校は、今までの学校と違って水準が高く、評判もいいんだ。トンはちっとも勉強せん。試験前だというのに、友達と遊んだり、TVなんか見とる。それでも成績がいいってことは、学校の水準が低いんだ」。この会話を思い出したトンは、新しく厳しい学校での最初の食事を食べながら、涙を流す(3枚目の写真)。
次は、初めての授業。プラニーはトンを教室に連れて行き、生徒達の前に並んで立つと、「彼はチャトリー、あなた達の新しい同級生です。チャトリーは、この学期からここに加わり、あなた達と一緒に勉強します」と紹介する(1枚目の写真)〔それにしても、1クラスに何と多い生徒数なのだろう。1列12人×8列なので、100人近い生徒がいることになる〕。トンが後ろの方の席に向かって中央通路を歩いていく途中で、“ちょっとワル。グループ” のボスのペンが、仲間に向かって、“あいつも最後だな” というような合図をする(2枚目の写真)。1日が終わり、夜になり、チャトリーが歯をみがいていると、グループの手下の1人が、「チャトリー、ペン〔เพ้ง〕教授〔อาจารย์〕が呼んでるよ」と誘う。そして、ベッドの並ぶ大部屋の一角で、各自が持った懐中電灯で照らして4人のグループとチャトリーが集まってひそひそ話を始める(3枚目の写真、矢印)。まずは、教室で合図をしたボスが、「俺はペンだ」と言い、隣にいる二番手を、スペシャリスト〔หมอ〕ヌイと紹介する。あとの2人はただの手下なので、トンに紹介するが、ここでは割愛する。
そのあと、ペンは、さっそくトンを虐めてやろうと、学校にまつわる幽霊の話を始める。①学校の全生徒の憧れの的だったコックの娘が首を吊って自殺した〔妊娠4ヶ月〕。②寮長だった老人の幽霊が夜中に寮の中を歩き回る。③夜中にトイレに行くと、誰かいるような気がするし、犬達が一斉に吠え出すから、トイレには近づかない。④学校に新しいプールができたには、学校の裏にある古いプールで生徒が溺死したから、そしてその生徒は、今いる大部屋の一員だった。この事故のあと、寮長のプラニーの態度が急におかしくなった。ここからは、ペンの話の直接紹介。「どのくらい奇妙だと思う? 先生の部屋にある古いレコードプレーヤー見たか? 同じ悲しいラブソングをくり返し聴いてるんだ」(1枚目の写真、矢印)「ゾッとするぞ。ある日のこと、先生が開いた引き出しを見つめながら泣いてたそうだ」(2枚目の写真、矢印)「その引き出しの中に何が入っているか誰も知らない。俺は、先生が生徒の溺死に何か関係があったと睨んでる」。3枚目の写真は、こうした話で恐怖に包まれたトン。「その生徒の幽霊は悪質だぞ。彼のベッドで寝た生徒は、毎晩ベッドから追い出されたんだ。だから、そのベッドは倉庫に移された。だけど、今日、管理人がそのベッドを倉庫から持ってくるのを見たんだ」。その時、光に気付いたプラニーが、就寝時間後の集会に厳重注意したのでグループは直ちに解散する。
その夜、トンはどうしてもトイレに行きたくなり、ベッドを出て、唯一明かりが点いているトイレに向かう。しかし、トイレに入って行くと、犬が吠えているのが聞こえる。あまりに気になるので、窓から下を覗くと、暗い草地の上に群がった多くの犬が、窓を見上げて一斉に吠えている(1枚目の写真)。その場面を、犬の位置から捉えたのが2枚目の写真。窓辺のトンの後ろに黒い人影が見える(矢印)。トンは、恐怖に怯えながら、何となく気配を感じて後ろを振り向くと、黒い手が肩の方に伸びてくる(3枚目の写真、矢印)。恐ろしくなったトンは、トイレは無視し、ベッドに駆け込むと、毛布を被って寝る〔トンが家を出たのは、日曜日の午後。しかし、このシーンは、月曜の最初の授業で、トンが紹介された日の夜の話。ということは、トンは既に日曜の夜、この大部屋で一夜を過ごしたことになる。この事実は、映画の中では無視されてしまう〕。
翌朝、トンが目を覚ますと、何となく下半身がおかしいので、毛布をとってパジャマを見てみると、トイレを済まさずに逃げ帰ったため、ベッドを含めてべっとり濡れている。それに気付いた他の生徒が、「おい、新しく来た奴、おねしょしてるぞ」と知らせ、大勢が見に集まって来て笑う(1枚目の写真)。トンは体を洗うと(2枚目の写真)、物干し場に行き、前日と同じように、すでに干してあるものをずらして、自分のものを掛ける。その時、初めて見る生徒から、「そんな風に掛けると、床に落ちちまうぞ。物干し場は戦場だ。水浴び用の半ズボンは1つで十分だ。でないと、他のにカビが生えるぞ」と親切に注意してくれる(3枚目の写真)〔この映画のもう一人の主人公ヴィチエンとの初顔合わせ〕。
ボスのペンが、3人を連れてトンをからかいにくる。途中でワザと 「おい、なんか臭わないか?」と声をかけ、手下の2人の口の中と脇の下の臭いを嗅いで 「違う」と言うと、トンの周りで鼻をクンクンいわせ、下半身に顔を寄せ、「これだ。小便の臭いがするんだ」と言うと、トンに向かって、「幽霊の話いっぱいしたから、漏らしたんだ。みんな、笑ってやれよ」と言い、4人揃ってトンを笑う(1枚目の写真)。それを、少し離れた机に座った “物干し場で親切だった少年” が非難するように見ている。そして、トンが2005年の段階でも旧式の “うまく作動しない” ゲーム機を何とかしようとしていると、寄って来て、「壊れてるんか?」と訊く。「さあ、そのうち直るよ」。その時、生徒が入って来て 「チャトリー、先生が電話だから来いって。父さんからだよ」と知らせる(2枚目の写真)。父が大嫌いなトンは、プラニーの所に行かずに、グラウンドの周囲の並木の後ろの段差に腰を降ろしてボーッとしている(3枚目の写真)。すると、校内アナウンスで、「チャトリー君、寮に来て、お父さんの電話に出て下さい」と何度も呼び出しがある。
すると、場面は、また家にいた時のチャトリーに変わり、彼は手元に本を置き、TVを点けて見ている(1枚目の写真、矢印)。父が来る音がしたので、チャトリーは急いでTVを消し、本を読み始める。そこに、「お菓子を持って来たぞ」と言って、チャトリーの後ろの低いテーブルの上に置くと(2枚目の写真、矢印は本)、チャトリーが教科書らしきものを読んでいるのをじっと見る。父は、チャトリーがTVの正面に座っていることに不審の念を抱き、ブラウン管TVが冷たいか、温かいか調べてみる(3枚目の写真、矢印はアンテナ・ケーブル)。結果、TVは温かかったので、直前までTVを見ていたことがバレ、「二度と、こんなことは許さん。今度のテストの結果が悪かったら、罰してやるからな」と強く叱り、TVの裏に行くとアンテナ・ケーブルを引き抜き、先端の部品を外して、TVに差し込めないようにする。トンがちっとも現われないので、プラニーは、受話器を取ると 「チャトリー君は寮にいません。伝言を残されますか?」と訊く。父は、後日電話すると言って切る。
その日の真夜中、またトイレに行きたくなったトンは、トイレに行き用を済ますと、水が流れる音に気付く。個室を順番に覗いて行くと、2番目の個室で “何のためにあるのか日本人には分からない小さな水溜” の上の全開の水栓から水が大量に落ちている音だった。トンが中に入って水道の栓を閉めると、それを待っていたように扉がバタンと閉まる。トンはすぐに立ち上がって、扉を開けようとするが、外から “丸落とし(かんぬき)錠” が掛けられているため開かない〔このシーンは根本的におかしい。トイレの個室は、中に入った人が、外から開けられないために中側から扉に錠をかけるもので、外側についているハズがない〕。トンは、扉を叩いて 「開けろよ!」と叫び(1枚目の写真)、扉に体ごとぶつかるが、細い “丸落とし(かんぬき)錠” なのに、壊れずに開かない。その頃、大部屋では、悪さを終えた4人が笑っている。トンが諦めて床に座って泣いていると、錠が外れる音がして、扉が少し開く(2枚目の写真、2つの矢印の隙間)。トンは扉をゆっくり開けて外の様子を窺うが(3枚目の写真、矢印は丸落とし錠)。そこには誰もいない。
翌朝、トンが目を覚ますと、大部屋の中には誰もいなかった(1枚目の写真、矢印)〔寝過ごしたのに、誰も起こしてくれない。生徒達はそんなに不親切なのだろうか??〕。トンは急いで水浴室に向かうが、ちょうどプラニーの部屋の前を通りかかった時、レコードがかけられ、悲しげな歌が聞こえてくる。そこで、ペンから聞いたことは本当だろうか確かめようと、トンは開いたままのドアの脇からこっそり覗いてみる(2枚目の写真)。レコードには傷があり、あるところまで行くと、同じ音をくり返すが、プラニーはうつむいたままそれを聴き、涙を流しているので、ペンの話は本当らしい。そのあと、トンが1人だけで水浴びをしていると、突然、“物干し場の少年” が現われ、「寝坊したんか?」と尋ねる。「うん」。「プラニー先生にすごく関心があるんだな。気を付けろよ」。「プラニー先生が、どうしてあんなに変わってるのか、知ってる?」(3枚目の写真)。「いろんな推論がある。中でも最悪なのは幽霊の話だ。それはホントじゃない」。「ここは長いの? 何でも知ってるみたいだね」。「ヴィチエンが、すごい物知り〔ช่ำชอง〕だって知らないの?」〔名前がようやく分かる〕。朝食の前に、プラニーは全生徒に、おばけ〔ผีๆ〕の話で他の生徒を脅す行為を止めるよう強く警告する。
友達になったトンとヴィチエンが校内の並木道を歩いている。トンは、「学校からこっそり抜け出したことある?」と訊く。「どこへ?」。「家だよ」。「なんで? 学校は楽しいだろ? 親に指図されることもない。最初は大変だけど、慣れるさ」(1枚目の写真)。「慣れないよ」。2人はガチョウを飼っているコーナーに来る。ヴィチエンは、中央に置かれたガチョウの卵の盗み方を教え、トンにガチョウを一羽掴つかんで卵の周りを走らせ、ガチョウの注意を逸らしている間に、ヴィチエンが中央の卵を盗む(2枚目の写真)〔何のためにあるシーンかよく分からない。さらに、後で分かる “ヴィチエンの負った宿命” が分かると、こんなことをする理由がますます納得できなくなる〕。2人が寮に戻ると、プラニーが、受話器を持ち、父から電話だと告げる。こうなっては逃げようがないので、受話器を受け取る(3枚目の写真)。しかし、プラニーがいなくなると、そのまま受話器を戻して電話を切る。
トンが物干し場にいると、ヴィチエンが 「夕食が済んだら、中庭で、2人用に席をとっといて。今夜は、野外上映会があるんだ」と声をかける。場面は、すぐに夜の会場となり、トンは、隣に空席を確保して、背もたれのない長い木のイスに座る。すると、映画が始まってから、ヴィチエンがやって来てトンの隣に座る(2枚目の写真、矢印)。映画は、学校で上映するにしては相応しくない内容で、好ましくない用語、シーンのあと、タイ風のお化けが現われて暴れる(3枚目の写真)。
ここから先が、全く納得できない場面。お化けを見たヴィチエンは急に表情が変わり、その場で立ち上がる。それを見たトンは、ヴィチエンを見上げる。すると、カメラは、それまで満席だった会場ではなく、誰一人いない会場に、お化けの映画と、ヴィチエン1人だけが立っている姿を映す(1枚目の写真)〔一体何が言いたいのかさっぱり分からない〕。ヴィチエンが右を向いて見下ろすと、トンがじっと見ている。ヴィチエンがイスに座ると、笑顔で、「どこに行ってたの?〔หายไปไหนมาวะ〕」と訊く(2枚目の写真)。それを聞いたトンが、急に怯えたような顔になったので(3枚目の写真)、「君も僕が怖いのか?」と訊く。するち、トンは立ち上がると、逃げるように走り、それまで虐めの対象にしてきたペンのグループの横に無理矢理〔長椅子なので押し込むように〕座る。理解できないのは、立ち上がったヴィチエンから、「どこに行ってたの?」と訊かれただけで、トンがこんな激しい反応をしたこと。せっかく友達になったヴィチエンなので、「何のこと?」と訊き返すくらいが普通ではないのか?
大部屋に戻ってから、トンは4人のところに行き、さっきの件について話す。「ホントだよ、嘘じゃない。幽霊を見たんだ。普通の生徒と区別できないくらいだった」(1枚目の写真)〔何度も書くが、映画を観ていても、ヴィチエンを幽霊だとする根拠は、観客にはあっても、トンにはない。「普通の生徒と区別できないくらい」なら、なぜ幽霊と言えるのか、その根拠をちゃんと映像化して欲しかった。映画そのものはよくできているが、この一番重要な点が曖昧なので、不満は大きい〕。このトンの話に対し、ペンは極めて懐疑的。ただ、“スペシャリスト” のヌイは、「プールで溺れた子かもしれない。きっと、友だちを探してるんだ」と言うが、ペンはそちらも信じず、トンが熱で錯乱状態にあると断定する。自分のベッドに戻ったトンは、何かを祈る(2枚目の写真)。そして、トイレには、黒くて分からないが、ヴィチエンらしい生徒が床に座っている(3枚目の写真)〔この連続する2つのシーンも、トンが何を祈っているのか全く分からないし、ヴィチエンがなぜトイレにいるのかも分からない〕。この次にプラニーが部屋で悲しんでいるのはいつものことなので、問題はない。
そして、翌朝。トンはまた1人取り残されて目が覚める。そして、誰もいない水浴室に行く(1枚目の写真)。そして、細長い水槽に手桶を入れて頭から何杯もかけ、上半身に石鹸を塗り、手桶を水槽に突っ込むと、中から手が出てきて(2枚目の写真、矢印)、トンを水槽の中に引きずり込む。溺れながら、トンの目がヴィチエンと合うと、それは単なる悪夢で、トンは真夜中のベッドで目が覚める(3枚目の写真)。そして、その日の授業中、トンは、後方の机に座っているヴィチエンを何度も見ているので(4枚目の写真)、教師に注意される〔教室に余った机などないので、幽霊のヴィチエンがなぜそこに座っているのか、どう考えても納得がいかない。他の生徒が座っていて、トンにはそれがヴィチエンに見える、という状況ではない。映画では、ヴィチエンは、トン以外の他の誰にも見えないという設定なので、やはりこの机は空席で、そんなことはあり得ない〕。このシーンの後、トンがプラニーに呼び出され、父から、週末には迎えに行けないと電話があったと伝える〔この学校では、生徒は、週末は家で過ごすことができる〕。
授業後の自由な時間、トンが、先日座っていた “グラウンドの周囲の並木の後ろの段差” まで行くと、ヴィチエンが楽しそうに生徒の競技を見ている(1枚目の写真)。トンにはヴィチエンの背中しか見えないが、ヴィチエンに違いないと思ったトンは、悩んだ末、思い切って、依然のように友達としてはつき合ってみようと決める(2枚目の写真)。そして、ヴィチエンの横に行くと、「ゲーム機、直したよ」と言って渡す。2人は仲良く並んで座る(3枚目の写真)。そして、トンは 「君と僕がどれほど似てるか知ってる? 僕はみんなから無視されてる」と言うと、「ほら、ゲームしてみて」と勧める。「やり方、分からない」。それを聞いたトンは、ゲームのやり方を教え始める。一方、グラウンドで遊んでいたペンの手下の1人がトンに気付き、ペンを呼び、「チャトリー、誰と話してるの?」と訊く。ペンが見ると、トンは左側の空間に向かって話しかけている(4枚目の写真、点線の枠)〔野外上映会の場面だけでは懐疑的だった観客も、このシーンで、ヴィチエンが幽霊だとようやく確信できる〕。それを見ても、ペンは、トンの頭が狂ったとしか言わないが、ヌイには別の考えがあるようだ。そのことは、週末に1人取り残されたトンに、ヌイが 「今、幽霊が見える?」と訊くことから分かる。トンが 「なぜ訊くの?」と言うと、ヌイは 「僕も見てみたい。今度見たら、話してくれよ。幽霊が好きなんだ」と答える。
あくる日。学校にいるのは、トンだけ。一緒にベンチに座ったヴィチエンが、「ねえ、最初の夜、覚えてる? 君がおねしょした」と、にやにやしながら話しかける(1枚目の写真)〔7節の最後で指摘したように、“最初の夜” ではない。2日目の夜だ。脚本の大きなミス〕。それを聞いたトンは、「僕をからかってるの?」と反撥する。「違うんだ。君に見せるものがある」。そう言うと、ピロティーに行くと、そこにいた4匹の犬に向かって両手を90度上げる。すると、寝転んでいた犬達が起き上がる。そして、ヴィチエンが指揮者のように手を動かすと、一斉に吠え始める。それは、犬の数こそ少ないが、トンがトイレに行った時に窓から見た光景と同じものだ。ヴィチエンが言いたかったのは、犬を吠えさせたのは、僕だったということ。それを見たトンは笑顔になる(2枚目の写真)〔ベンチからだと犬は見えないので、トンは、ヴィチエンの過剰なまでの指揮ぶりが面白くて笑っている〕。そして、“合唱” はヴィチエンの派手な格好で終わる(3枚目の写真)。トンは、それまでの笑顔とはうって変わり、「君が僕を怖がらせたのか、ひどいじゃないか」と批判する。「そんなつもりじゃなかった」と謝る。
食堂で、トンとヴィチエンが並んで座って食べていると〔幽霊が食べられる? それに混んだ食堂で、空席(ヴィチエンは他の生徒には見えない)は可能なのだろうか?〕、ヴィチエンがトンを腕でつつく。それは、食堂の配膳係の美人の娘を見ろという合図。トンは笑顔で、「おいしいね」と言い(1枚目の写真)、それを聞いた娘も笑顔でトンを見ると(2枚目の写真)、「たくさん食べて、早く大きくなってね」と声をかける。そして、母の所に戻ると、「タンは運動会の練習に行かないと」と言って、いなくなる。
その日の夜、ヴィチエンはトンをトイレに連れて来る。トンが理由を訊くと、ヴィチエンは 「早く大きくなりないって言ってたろ」と言い〔言ったのは、トンではなくタン〕、個室の1つを開けると、「ここには、僕の宝の山が隠してある」と言い、壁と天井の隙間に指を入れ、1冊の雑誌を取り出すと(1枚目の写真、矢印)、「神戦聖典〔คัมภีร์เทพยุทธ〕、一人前の男になるための最善の本」と言ってトンに渡す。トンはさっそくベッドに行くと、毛布を被り、懐中電灯を点けて女性の裸体の写真の入った雑誌を見ていると(2枚目の写真、矢印)、突然毛布がめくられ〔薄い毛布なので、懐中電灯の光が透けて見える〕、プラニーが立っていた。翌朝、プラニーの部屋に呼び出されたトンは、雑誌を前に、「何か言いたいことはある?」と冷たく訊かれる。部屋の外では、どんな厳罰が科せられるかで生徒達が話し合っているが、実際には、「二度とこんなことはしないように」と言われただけで解放される。それを聞いた生徒達は罰の軽さにびっくりする。
いつの日かは分からないが、ヴィチエンがトンを、“生徒が勝手に外に出ないよう” 学校を取り巻いている高い塀を乗り越えられる場所まで連れて行く。そこには、土管のようなものが斜めに置いてあり、そのてっぺんに上れば、何とか塀の上に手が届くようになっている(1枚目の写真、矢印)。ヴィチエンに続き、トンも何とか壁の上に這い上がる(2枚目の写真)。しかし、そこから先は、土管がない分、より多く飛び降りなければならない〔帰りは、どうやって塀を登るんだろう?〕。2人は、タンがバトンガールとして活躍するパレードを見に行くが、トンは、人混みの中をタンを追っていくので、タンも、トンに気付く。パレードが終わると、タンはトンのところにやってきて、「どうやってここに来たの?」の訊く。トンが答える前に、他の女の子が、タンと一緒に写真を撮りたがったので、タンは、トンに 「一緒に写真撮る?」と訊く。トンはもちろん賛成なので、2人並んで写真を撮ってもらう〔誰が、撮ったのだろう?〕。そこに、ヴィチエンがやってきて、こっけいな仕草をするが(3枚目の写真)、出来上がった写真には、もちろん幽霊のヴィチエンは入っていない(4枚目の写真、点線の枠)〔この写真、インスタントカメラで撮ったものなのか? そうでなければ、簡単にはトンの手には入らない〕。
帰り道で、トンは、ヴィチエンに 「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」と声をかける。「ああ」。「君に何が起きたの?」(1枚目の写真)。「老衰で死んだんだ」。「何だよ、ちゃんと答えてよ」。そう言ってから、「すぐ戻るよ。おしっこしないと」と言い、草むらに入って行く。そして、腕時計を見ると、もう6時。6時が厳守なので、早く戻ろうと後ろを振り向くと、ヴィチエンの姿はどこにもない(2枚目の写真、矢印はトン)。トンは、どうやって塀を登ったかの理解できないが、とにかく塀を越えて校内に入ると〔地面に落ちた時に頬にすり傷ができる〕、校内アナウンスが 「チャトリー君、お父さんが寮で待っています」と言っている。そこで、トンは寮の前まで隠れて行き、建物の入口のテーブルに父とプラニーが座っているのを見る(3枚目の写真、矢印は父)。
ここで、三度目の過去のシーン。真夜中、トンが家でこっそり直したTVを見ていると(1枚目の写真)、階段を下りてくる音が聞こえたので、急いでTVを切り、どこか不明の家具の下に隠れる。すると、父が、「ペン〔เพ็ญ〕、こっちに来て。心配するな、みんな眠ってる」。カタカナでは同じ “ペン” でも、こちらの方は、映画の最初にトンが車に乗せられた時に見送っていたお手伝いさんの1人で、親分のペン〔เพ้ง〕とは違う。しばらくトンが見ていると、父とペンはベッドの上でセックスを始め(2枚目の写真)、それを見たトンは驚愕し(3枚目の写真)、さらに、そのトンに気付いたペンも驚愕する。父はトンに自分の不倫を見られたと知り、それがトンを突然、全寮制の学校に追いやった動機となった。
そのことを思い出したトンは、父に会いたくないので寮に入らないで、父が帰るまで時間を潰す。そして、夕食が始まってからしばらくして食堂に入って行くと、それまでイライラして待っていたプラニー(1枚目の写真)がトンに駆け寄り、「どこにいたの、チャトリー?!」と訊き、返事がないので、肩や腕を何度も手で叩いて叱り飛ばす(2枚目の写真)。
トンが水浴室に行こうとすると、背後からヴィチエンが 「どこにいたんだ? お父さんが来てたのに」と声をかける。怒り心頭のトンは、ヴィチエンのシャツを掴むと、「そっちこそ、どこにいたんだ?!」と強い調子で訊く。「君は、『僕はみんなから無視されてる』って言ったろ。なら、君はどうなんだ? 他人のこと、ちゃんと考えてるのか?」〔トンは 「君に何が起きたの?」と訊き、それがヴィチエンを傷付けたのに、トンはそのことに気付いていない〕。この言葉に、自分の間違いに気付いたトンは、水浴室に行き、これからどうすべきか考える(2枚目の写真)。
着替えている時に、ペン親分から 「仲直りしよう。俺たちは友だちだ。何もかも分かち合おうぜ」と、嘘でもいいから言われたトンは、ヴィチエンの “宝の山” のトイレに入って行くと、そこから、手に触れた2つの物を取り出す(1枚目の写真、矢印は雑誌と新聞)。さっきは、仲良しといったくせに、ベッドに入ると、仲間に 「あいつは、絶対にゲイだ。持ってるのは男性のポルノ雑誌だから、そんなの欲しくもない」と、さっきと反対のことを言っていると、そこにトンが女性のポルノ雑誌を持って来たのでありがたく受け取る(2枚目の写真、矢印)。一方、トンは自分のベッドに行くと、また毛布をかぶり、持って来た新聞の方を見る。そこには、「ウィチャイ・シャムソン〔วิชัย ช่ําชอง〕警察中佐を25年投獄する首相命令が発表」という記事が載っていた(3枚目の写真)〔この部分、タイ語の字幕では割愛されているため、記事の顔写真の右側の部分をGoogleドキュメントで文字に変換した〕〔ウィチャイ・シュアポン大佐とヴィチエンの関係は、これでは全く分からない〕。
翌日、プラニーからの伝言を持って来た生徒が、トンに 「お母さんから電話だよ」と伝える。トンは喜んで電話のところに行き、受話器を取ると、「母さん?」と言う。しかし、それは、父が嘘をついて電話してきたもので、父は 「トン、お父さんだよ。ペンはもう家にはいない。私が電話しても、どうして出てくれなんいだ? ペンの件で、私がトンを寄宿学校に入れたと思ってるなら、トン、それが間違いだ」〔これは、どうみても嘘〕「それで、新しい学校は、どうだい?」。ここまで聞いていたトンは、フックのボタンを指で押して通話を遮断する(1枚目の写真、矢印)。家では、どうしていいか分からなくなった父が頭を抱える(2枚目の写真)。
夕食の時間になり、トンはいつも隣に座るヴィチエンがいないので、立ち上がって探す。映画は、一瞬、食堂を横切るヴィチエンを映し、その時点の時計が6時ちょうどであることを示す〔夕食は、6時に入室ではなかったのか? それなのに、なぜ、みんなもう食べているのだろう? それとも6時というのは、朝だけなのか?〕。そして、ヴィチエンは寮から出て行く。ヴィチエンをチラと見たトンも後を追って走る(1枚目の写真、矢印)。トンがヴィチエンの行方を探していると、金網フェンスの向こうの使われなくなった古いプールの縁をヴィチエンが歩いているのが見える。トンが金網フェンス越しにじっと見ていると、ヴィチエンはプールに飛び込むが、底には落下せず、あたかも水があるようにフワフワ浮きながらゆっくりと沈んでいき、助かろうと腕を動かすが(2枚目の写真)、浮き上がることができない。それを見ていて耐えられなくなったトンは寮に走って戻る。ベッドに横になったベッドの裏の木の部分を懐中電灯で照らして見ると、そこには、ヴィチエン〔ไอ้วิเชียร〕の名前が彫ってあった(3枚目の写真)〔光が当たっているのは、最後の5文字〕〔このベッドはヴィチエンが使っていたベッド。だから、ヴィチエンはトンにまとわりついている〕。トンはトイレに行き、3つ目の個室を開けると、中にヴィチエンが座っていた。トンは、「君が毎晩ここにいなくちゃいけないのは、僕が君のベッドで寝ているからなの?」と訊く(4枚目の写真)。しかし、ヴィチエンはうつむいたまま何も言ってくれない。
ある日、生徒達が大騒ぎしている。それは、廊下に1人の太っちょの生徒が意識を失って倒れていたから(1枚目の写真)。生徒からは、「失神したのかな?」「ううん、ウサギの解剖をするとき、エーテルを嗅いだって話だよ」。誰か1人が扇子を取り出すと、「チャレムポル、エーテルを嗅がないように何度も言ったじゃないか」と言いながら、太っちょ生徒の顔をあおぐ〔英語字幕とタイ語字幕が最も違っている部分。英語字幕は 「空気を吸わせなきゃ」。全く違っている〕。すると生徒の目が動き、意識を取り戻す。そして、体を起こした生徒は、「ホントに死んでたような気がする。呼吸が苦しくなって、真っ暗になったんだ。そして、何が見えたか… 信じられないよ… 魂が体から離れていくのがどんなものか知りたければ、僕に訊くといい」と言い、みんなからバカにされる。その話を1人だけ真に受けたのがトン。彼はさっそくウサギの解剖を行った生物学の実験室に行くと、そこに置いてあったエーテルの瓶(2枚目の写真)〔下の方に、ジエチルエーテルの正式名称が標記されている〕と死んだウサギをじっと見る。
夜の6時の夕食の時間。トンは食べ物の入った食器をテーブルに残したまま、古いプールに向かって全力で走る。そして、プールに入れないようにしている金網の柵の扉を登ってプールのある側に飛び降りると、「ヴィチエン、飛び込まないで!」と叫んで駆け寄る(1枚目の写真、矢印)。しかし、ヴィチエンは無視して呼び込んだので、トンも後を追って飛び込む(2枚目の写真)。しかし、トンはプールの底に着地したのに、ヴィチエンは前回見たように、宙に浮いたまま “過去に溺れた時の動作” をくり返す(3枚目の写真、矢印)。そして、気を失ってプールの底までゆっくり沈んでくると、「これで、僕に何が起きたか分かったろ」と言う。「なぜ、自殺なんかしたの?」。「僕が自殺したなんて誰が言った? もっとバカげた話なんだ」。
そう言うと、ヴィチエンは当時、何が起きたのか話始める。説明時の映像は、茶色がかった白黒映像に変わる。話を簡単にまとめると、ティラという生徒が泳いでいて、「助けて!」と何度も叫び、それを聞いた生徒達が助けようとプールに飛び込んで助けに行くと(1枚目の写真、矢印)、それはティラの悪戯だったことが分かる。しばらくして、同じような場所で泳いでいたヴィチエンが、それまで泳いていたのになぜか泳げなくなり〔足でも攣(つ)った?〕、「助けて!」と何度も叫ぶ(2枚目の写真、矢印)。しかし、生徒達はティラの二番煎じを演じているだけだと思い、誰も助けず、6時になったので帰ってしまい、ヴィチエンは溺死する。その話を聞いたトンは、「それなら、どうしてプラニー先生が君の死に何らかの関りがあるなんて噂があるの?」と訊く(3枚目の写真)。「君、例の新聞読んだんだろ? 僕の父さんの記事。プラニー先生は、それを僕に見せたくなかったんだ」〔毎週末に帰宅するから、どうせすぐ分かるのに、なぜ?〕。
そして、再び過去に戻る。ヴィチエンが、プラニーの部屋で新聞を読んでいると〔なぜ、寮長の部屋に無断で入って新聞を読んでいたのだろう? 父の判決が出る頃だと、週末帰った時に知らされていたのか?〕、戻ってきたプラニーに見つかり、勝手に部屋に入ったことを強く咎められ、新聞を机の引き出しに放り込むと、肩や腕を激しく叩かれる(1枚目の写真)。そして、叩かれて後退したヴィチエンは、かかっていたレコードにぶつかり、レコードに傷を付ける。その後、ヴィチエンが寮に戻っていないことを知らされたプラニーは、その日はプールの日だったので、プールまで探しに行き、プールの底に沈んでいるヴィチエンを見つけて絶叫する(2枚目の写真、矢印はプラニーとヴィチエン)。ヴィチエンのトンに対する説明が入る。「父さんのことが知りたかっただけなんだ。だから、こっそり戻って新聞を手に入れたんだ」。プラニーが、引き出しを開けると、新聞がなくなっている(3枚目の写真、矢印)。「それ以来、プラニー先生は、僕の死は自分のせいだと思ってる」。
「でも、どうしてこんな風に何度も溺れなければならないの?」(1枚目の写真)。「分からない」。「じゃあ、どのくらいこんなこと続けないといけないの?」。「それも、分からない」(2枚目の写真)。その夜、トンは、スペシャリストと紹介されたヌイなら知ってるかもしれないと思って相談する。彼は、「俺は、前にもそんな幽霊、見たことがある」と言い出す。それは、彼の昔住んでいた家の前の道の角で衝突して死んだバイクの男で、その後、毎晩、バイクが衝突する音が聞こえ、気持ち悪いので引っ越したと話す。トンが知りたいのはそんなことではないので、「魂はどうすれば生まれ変わり、何度も死なずに済むの?」と尋ねる。ヌイは 「人間と幽霊は違う世界に住んでる。幽霊を助けたいなら、幽霊にならないといけない。幽霊になるには、君が死ぬか、魂を君の体から離せばいいんだ」と言う(3枚目の写真)。
午後の6時になってもトンが食堂に姿を見せないので、プラニーは鞭を持って探しに行く。その頃、トンは生物学の実験室のある棟の3階まで駆け上がり、エーテルの瓶を手に取る。午後ずっとトンの様子が変だったので、見張っていたヌイが、ペンと残りの2人を連れて実験棟の階段を上がって行くと、床に倒れているトンを発見する(1枚目の写真、矢印はエーテルの瓶)。中に入って行った4人は、「チャトリー、どうした?」などと、全員で声をかけるが反応はない(2枚目の写真)。「自殺したの?」。ヌイは、「そうじゃない。これで、ホントに魂が切り離されればいいんだが」と言う。それを聞いたペンは、「ヌイ、狂ったのか? なんで魂を切り離すんだ?」と、“死体” を前に動転する。「彼は、古いプールで溺れた友だちを助けたいと言っていた。俺は、魂を体から離せばいいって教えた。だから、彼の体を古いプールまで運んでいかないと」(3枚目の写真)。その頃、4人の中の一番のチビは、下まで降りて行き、プラニーにチャトリーが自殺したと知らせる。プラニーとチビは階段を駆け上がり、トンを抱えた3人は、屋外階段を駆け降りる。
体から抜け出したトンの魂は、3人の行動とは関係なく、プールの入口の金網の柵の扉を乗り越えて中に入って行く(1枚目の写真)。ヴィチエンが溺れているプールに飛び込み、今度は、ヴィチエンと同じ幽霊なので、ヴィチエンと同じように水に突っ込み、溺れかけているヴィチエンを掴むと(2枚目の写真)、全力で水面まで引き上げる(3枚目の写真)。
場面は、いつもの並木道。トンとヴィチエンが仲良く歩いている。トンが、「君を助けてくれなかった友だちのこと、まだ怒ってる?」と訊くと、ヴィチエン 「もう怒ってないよ」と答え、逆に、「君はどうなんだ。こんな学校、出て行きたいと思ってるのか?」と訊く。「ううん。でも、もし出て行くんなら、ナムタン〔美人の娘タンの正式名〕のトコに行くよ」(1枚目の写真)。「おい、なに考えてるんだ?」。「あの日、君が彼女をどんな目で見てたか知ってるよ」。「僕は、彼女に長いこと憧れてたんだぞ」。「次は、いつ彼女に会いに行こう?」。話がここまで来ると、ヴィチエンは立ち止る。そして、「おい、トン。僕、もう行かなきゃ」と言う(2枚目の写真)。ヴィチエンは、永久の別れにトンの肩に手を置くと、1人で歩いて行きながら、右腕を上げてゆっくりと振る(3枚目の写真)。トンは、最初にできた本当の友だちとの別れを悲しむ(4枚目の写真)。すると、画面が変わり、古いプールの脇に横たえられたトンの頬に、水滴が落ちる。カメラが上を向くと、それはトンを見下ろしていたペンの涙と鼻水の混ざったものだと分かる。ペンは、「おい、チャトリーが目を覚ましたぞ」と嬉しそうに言い、他の子たちも、「チャトリー、大丈夫?」と笑顔で訊く。トンは、ヴィチエンは失ったが、ペンのグループの一員になれた。そこに、心配したプラニーが走ってくる。
4人組ではなく5人組が一緒に座り、トンが、「僕たちの学校、こんなに大きいとは知らなかった」と笑顔で言う(1枚目の写真)。すると、隣に座っていた一番のチビが、「ねえ、トン、ヴィチエンのこと、先生に話せばよかったのに」と言うと、一番左端に座っているペンが、「そうだぞ。お陰で俺たち全員がトラブルに巻き込まれて保護観察処分になっちまったからな」と言う(2枚目の写真)。「プラニー先生は、僕のこと信じないと思うよ」。今度は、右端に座っているヌイが、「けど、俺たちみんな信じてるぞ」と言う。カメラがうんと引くと、そこは高い貯水槽の上の危険な場所だと分かる(3枚目の写真)。ここは、以前、ヴィチエンがトンに一度連れていってやると言っていた所なので、トンが4人を連れてきたのだろう。その時、遠くから、校内アナウンスで、トンの呼び出しがあったので、トンは、「もう行かなきゃ。来年、また会おう」と言って塔を降りて行く
そして、第二学期が終わって迎えに来た母に笑顔で走り寄ると、甘えるように抱かれる(1枚目の写真)。トンが 「母さん、恥ずかしいよ」と言うと、母は 「何、恥ずかしがってるの? あなたが大きくなったら、もう抱かせてくれなくなるじゃないの」と、今だけの特権を主張する。トンが車を見ると、父は車の中に寂しそうに座ったまま。そこで、車に近づいて行くと、「父さん、僕 この学校好きだよ」と声をかける。それを聞いて笑顔になった父は、車から降りると息子を抱き締める(2枚目の写真)。
トンは、寮の中に荷物を取りに入って行くと、1階まで降りて来た時、4人のためにも、そして、ヴィチエンのためにも、真実を話すことに決め、プラニーの前に行くと、「先生、ヴィチエンは自殺したんじゃありません」(1枚目の写真)「溺死は、ホントに事故だったんです」。そう言いながら、ヴィチエンが盗み、トンがそれを奪った新聞を、プラニーに証拠として返す(2枚目の写真)。「ヴィチエンは先生のレコードを壊したことを謝って欲しいと僕に言いました。先生が、いつも彼のことで心を痛めていたことを、彼は知っています」。新聞を受け取り、レコードの話を聞いたプラニーは、トンが真実を話していると気付き、トンがいなくなると、喜びに溢れた顔を涙が流れる(3枚目の写真)。
車の中でのチャトリーのナレーション。「両親が僕を迎えに来た日のことは今でも覚えている。いつもと変わらない金曜の午後だった。唯一変わったのは僕自身だった。ヴィチエンと知り合えたことで、多くのことが見えるようになった」。ここで、トンは、3人で一緒に撮り、2人しか映っていない写真を取り出してみる。もちろん、ナムターンとの交際に期待を込めたのかも。それは、次の言葉の “刺激的” にも反映される。「次の学期にどんな刺激的なことが待ち受けているのかは分からなかったが、悪戯好きな友達とは また仲間になりたかった。なぜなら、良き友が1人そばにいれば、どんなことがあろうと、良いことも悪いことも、すべてがほんの数瞬で過ぎ去っていってしまう、ということに気付いていたからだ」(2枚目の写真)。そして、車がバーンパコン川を渡る橋に差し掛かると、行きは無視したトンも、今度は、ちゃんと願い事〔もちろん、ナムターンとの交際進展〕をし、橋を渡り切るまで息を止める(3枚目の写真)。