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Dolphin Tale イルカと少年

アメリカ映画 (2011)

イルカのウィンターは、実話だが、赤ちゃんの時に救助されてから、ずっとClearwater海洋水族館で保護され、人工の尾びれを付けてからは水族館の “スター” として2021年に死ぬまで安泰な一生を送ったので、映画化にあたっては、様々な話題を挿入し、メリハリをつけている。最大のメリハリは、11歳のソーヤをウィンターと並ぶ映画の主人公としたこと。そして、様々な批判はあるが、ソーヤの従兄のカイルをウィンターのように脚の不自由な境遇に突き落とし、両者が協力して再生への道を歩かせるというストーリーにしたこと。ウィンターを中心に見た場合、映画と実話の間には、下表のような違いがある。 Dolphin Tale

実 話 映 画
1905年12月10日の朝、Jim Savageという漁師が カニ捕り用の罠のロープに絡まっている生後2ヶ月と推定される雌イルカの赤ちゃんを発見した 年代不詳のある夏の日の朝、4歳半の雌イルカがカニ捕り用の罠のロープに絡まって砂浜にうち上げられているのを 浜辺の釣り人が発見する
JimはサンディエゴにあるHarbor Branch海洋学研究所に通報し、Hubbs-SeaWorld研究所の研究助手Teresa Jablonskiが現場に到着し、Jimらの協力でイルカを砂州まで誘導した。夕方になってHubbs-SeaWorldの救急車が到着し、5時間かけてClearwater海洋水族館まで運んだ 釣り人は、学校に行こうと自転車で通りかかったソーヤの携帯を借りて、911に連絡する。助けが来る間に、ソーヤは罠を外し、イルカは感謝の声を発する。Clearwater海洋病院の救急車は1時間以内に到着する
イルカは、12月に保護されたので、ウィンター(冬)と名付けられた イルカは、以前いたサマー(夏)、オータム(秋)という名前のイルカの跡を継いで、ウィンター(冬)と名付けられる
ウィンターの尾びれは壊死が進行し、医師は毎日壊死した部分を切除し、抗生物質を塗布した。翌2006年2月中旬になり、壊死は脊髄の1つ手前の椎骨で止まり、ウィンターは死を免れた ウィンターの救助の翌々日の朝には、尾びれはもう切り取られている
ウィンターは尾びれを失ったため、通常の上下運動ではなく、左右に下半身を振って前進することを覚える。しかし、その結果、筋肉が肥大し、脊椎を圧迫・損傷させてしまうことが判明する 同 左
尾びれを失ったウィンターのことをカーラジオで聞いたHanger Prosthetics and Orthoticsの副社長で公認義肢装具士のKevin Carrollは、ウィンターのために人工の尻びれを作ることを提案した ソーヤは、脚に回復不可能な傷を受けた従兄に病院に会いに行った際、義足や義手の専門家のマッカーシー博士と会い、助けを乞う
Hanger Prosthetics and Orthoticsのチーム、Clearwater海洋水族館が協力し、1 年半かけて人工尾びれの作成と装着に成功した。その際、新たに作られたシリコーン・エラストマーは、WintersGelと名付けれられ、現在では人間用にも使われている マッカーシーは、2度の失敗後、シリコーン・エラストマーという新素材を開発し(開始から半月以内?)、ウィンターが嫌がらずに人工の尾びれを付けることに成功する
Clearwater海洋水族館は、病院ではなく水族館なので、ウィンターは一種のスターとして多大な来訪者を集める。『Dolphin Tale 2』(2011)、『Dolphin Tale 2』(2014)の2本の映画も、ウィンター自身が出演して製作された Clearwater海洋病院の売却によるウィンターの安楽死を救うため、ソーヤはWEBを駆使し、「ウィンターを救う日」という募金のための一大イベントを企画する。集会は大成功に終わり、海洋病院の土地購入者は、病院の存続を快諾する
ウィンターは、2021年11月11日、腸捻転により死亡した。Clearwater海洋水族館では、11 月 20 日~24日の間、ウィンターの生涯を讃えるイベント「Celebration of Life at Clearwater Marine Aquarium」が開催された(下の写真


ソーヤ役は、ネイサン・ギャンブル(Nathan Gamble)。1998年1月12日生まれ。撮影は2010年夏なので、映画の設定〔11歳〕とは違い撮影時12歳。これまで、『Babel(バベル)』(2006)と『25 Hill (「25ヒル」道路)』(2011)を紹介してきた。前者は2018年8月、後者は2015年8月。なぜが3つとも8月の紹介となった。受賞歴はないが、演技はそれなりに上手。

あらすじ

映画は、州の水泳大会に向けて練習中の高校のプールで、州記録保持者のカイルが従弟のソーヤと一緒に、後輩のドノヴァンの泳ぎを見ている。カイルが 「あいつ、速いだろ?」とソーヤに言うと、ソーヤは 「カイルほど上手じゃない」と言う(1枚目の写真)。そのあと、カイルはコーチに会い、「元気か?」と訊かれ、「最後の別れを言いに、ちょっと寄っただけです」と握手を交わす。「月曜だったな?」。「はい」。「どこに配属されるか知ってるのか?」。「いいえ」。「陸軍はすごい水泳選手を獲得したんだから、そこにプールがあるといいんだが」〔アメリカには徴兵制はないので、カイルは志願兵〕。「ありがとう」。「くれぐれも体を大切にな」。それを聞いていたソーヤは、従兄のことが心配になる(2枚目の写真)。カイルが最後に会ったのは、カイルの持つ5つの州記録を全部更新してやろうと思っている 1年後輩のドノヴァン。そのあと、カイルの家の芝庭で盛大なお別れパーティが開かれるが、ソーヤはモバイルノートPCを手に、悲しそうな顔をしている(3枚目の写真)。パーティ会場では、カイルと母と一緒にソーヤの母も手伝っている。その中で、カイルと母が、ソーヤの母に、「あんたの方が賢かったわね。軍人と結婚しなかったから」と言い、カイルの祖父も父も軍人だと言うので、カイルと母はソーヤの母の姉だと分かる〔ソーヤとカイルは直系家族の従兄弟〕。さらに、カイルと母に、ソーヤのことを訊かれたソーヤが、「DとFばかり」〔Dが最低の合格点〕と答えるので、成績が極めて悪いことが分かる。
  
  
  

パーティの主役のカイルがプールで仲間と遊んでいると、さっきまでいたソーヤの姿がどこにもない。そこで、従弟が好きなカイルは、向かいにあるソーヤの家に1人で探しに行く。すると、ソーヤは工具室でこつこつとラジコンヘリをいじっている。カイルが 「それ、新しい奴か?」と訊いても、暗い顔で 「ううん、古い奴の調整してるだけ」と答えるだけ。そこで、カイルは、笑わせようと 「サマースクール〔落第しそうな生徒のための夏期講習〕、興奮するだろ?」と笑顔で言い、ソーヤに変な顔で見られたので、「なんちゃって。ここからは本気だ。なあ、少なくともここから出られるだろ? だから、約束しろよ。夏の間、こんなトコに閉じ籠ってないで、外に出て友だち作るんだ」と、アドバイスする。「なんで?」。ソーヤはカイルを見もしない。そこで、カイルは、床に座り込んで下から目線になると、「ソーヤ、俺を見ろ。俺はいなくなるけど、君の親爺さんとは違う。消えたりしない〔ソーヤの父は、妻と子を捨てて出て行ったきり、消息もない〕。10分ほど向こうに行ったら、すぐ戻って来て、君と一緒に金メダルを取ろう」。「そうか、やっぱりオリンピックに挑戦するんだね?」。「そうなんだ、だけどトレーニングには金がかかる。だから陸軍にちょっとだけいる。彼らがお金を払ってくれるからな」。それだけ言うと、プレゼントのリボンのついた箱をソーヤに渡す。ソーヤが、すぐに中に見ると、中に入っていたのは、ビクトリノックスのマルチツールで最も多様なスイスチャンプ。ソーヤはそれを見て幸せ一杯の笑顔に変わる(2枚目の写真、矢印)。そして、パーティに戻るよう誘うが、急にまた寂しい顔になり、「もうちょっとしたら」と言って断る。結局、ソーヤは、パーティには行かず、ベッドで眠ってしまう。そして、朝になり、向かいから聞こえてくる声で目が覚め、カーテンを開けると、カイルが父の車に乗って出かけるところだった(3枚目の写真)。ソーヤにとって唯一の友達だったのに、彼は、パーティにも、最後の見送りにも行かなかったことになる。
  
  
  

同じ日、ソーヤは自転車で学校に向かう。一方 海岸では、1人の釣り人が砂浜にイスを持って来て投げ釣りをしている。そして、イスに座って魚が掛るのを待つ間、遠くの砂浜を見ると、何かが海岸に打ち上げられている。そこで、竿立てに釣竿を入れると、走って見に行く(1枚目の写真、矢印)。すると、そこには、カニ捕りの仕掛けのロープが尾びれから尾柄にかけて絡みつき、弱り切ったイルカが砂浜に打ち上げられていた。釣り人は携帯を持っていなかったので、海岸沿いの道路を通りかかったソーヤに、「おい、坊や、電話持ってるか?!」と声をかける(2枚目の写真)。釣り人はソーヤと一緒にイルカに向かいながら、911に電話をかける。しかし、場所とイルカまで話した時、彼の釣竿に魚が掛り、強く引っ張られたため竿立てごと海の中に引っ張られていく。そこで、携帯をソーヤに渡すと、何とかしようと急いで走って行く。1人残されたソーヤは、イルカの方に近寄って行く(2枚目の写真)。
  
  
  

イルカの吻〔クチバシ〕にはロープが巻き付き如何にも苦しそうだし、尾びれからはかなりの出血がある(1枚目の写真)。尾柄に何重にも巻き付いたロープを緩めることができなかったので、ソーヤはポケットからカイルにもらったスイスチャンプを取り出すと、カニ捕りの仕掛けとロープをつないでいたブラスチックのリングを切断し(2枚目の写真、矢印)、尾びれにかかる圧力から解放してやる。それが済むと、今度は、吻に巻き付いたロープを外し、口が自由に開くようにする(3枚目の写真、矢印)。ソーヤは口笛を吹いて元気付けようとすると、イルカの方も、小鳥がさえずるようなピーピーというホイッスル音で応え、ソーヤも口笛で応える。もちろん、イルカの頭部を優しく撫でてやったことは言うまでもない。
  
  
  

そうしているうちに、1台のアルミバンを付けた中型トラックがやって来て(1枚目の写真)〔バンの横には「CLEARWATER MARINE HOSPITAL」と書かれている〕、10人が降りてくる。先頭をきって走ってきたのは、ヘイゼルという女の子。カニ捕りの仕掛けが外れているのを見て、イルカの横に膝を立てて座っているソーヤに、「切って自由にしたの?」と訊く。話すのが苦手なソーヤが何も言えないうちに、他の救助班員がやって来て、トラックまで運ぶ準備を始める(2枚目の写真)。全体を指揮しているクレイ・ハスケット博士が、「イルカ〔雌〕、いつからここにいる?」と尋ねても、ソーヤには 「知りません」としか答えられない。クレイはストレッチャー〔『フリー・ウィリー』の時と同じ、大きな布の両端にアルミ・パイプが付き、その中にイルカを入れる方式〕を持って来させ、それを左右4人ずつの8人〔電話をかけた釣り人も入れて〕で持ち上げてトラックに向かう。荷物を持たないヘイゼルが、最後に 「ナイフの使い方上手ね」とソーヤに言って去って行く(3枚目の写真)。
  
  
  

やむを得ない寄り道のため、学校に着いた時には、とっくに講習が始まっている。教師がホワイトボードに書きながら話している隙に、ソーヤは教室に入り込むが、座ろうとした空いたイスに意地悪な生徒が荷物を置いたので座れず(1枚目の写真)、次のイスも別の生徒によって妨害される。そのうちに教師が生徒達の方を向き、立ったままのソーヤに気付く。教師は別に叱りはしなかったが、「ネルソン君、講習に参加いただきありがとう」と皮肉っぽく言い、前回、宿題を持ち帰るのを忘れたと指摘する。講習が終わると、ソーヤは学校から一番先に走って出て来ると、朝の出来事の続きが知りたくて、真っ直ぐ海洋病院に向かう(2枚目の写真)〔このイルカ、ウィンターは2005年12月10日に発見され、フロリダ州にあるClearwater Marine Aquarium(クリアウォーター海洋水族館)で飼育された。映画では、それが、AquariumではなくHospitalになっているが、撮影はAquariumで行われた〕。ソーヤは裏口から中に入ろうとするが、屋根に住み着いたサギに邪魔され、それでも何とか 「スタッフ専用」と書かれたガラスの両開きの扉から中に侵入する。内部の撮影は、クリアウォーター海洋水族館なので、海洋病院とは思えない立派な施設だ(3枚目の写真)。
  
  
  

ソーヤが館内を歩いていると、外で邪魔したサギが天井から舞い降りて来てきたので、追い払おうとして振り向いた拍子に、今朝会ったヘイゼルとぶつかり、彼女が運んでいた発泡スチロールの箱に入った 餌用の魚が床に散乱し、サギが喜んで食べようとするので、2人で追い払いつつ、魚を急いで箱に戻す。ヘイゼルは、サギに向かっては 「ルーファス、悪い子ね!」と叱り(1枚目の写真)、ソーヤには 「屋根〔roof〕の上に住みついたから、ルーファスと名付けたの」と説明する。魚の回収が済むと、ソーヤが逃げようとしたので、ヘイゼルは 「どこ行くの? ウィンター見たくないの? だから来たんでしょ? 海岸にいた男の子でしょ?」と声をかける〔この病院には以前、サマー(夏)、オータム(秋)と名付けられたイルカがいたので、次の季節のウィンターと名付けた〕。話すのが苦手なソーヤは、「その…」と言うのが精一杯。逆に、話すのが好きなヘイゼルは 「分かった。でも、パパには内緒よ。一般の人が病気の動物に近寄るのを嫌がるから。ところで、どうやってここに入ったの?」と訊く。ソーヤが裏口からと話すと、ヘイゼルは鍵をかけ忘れたと言って飛んで行く。そして、戻って来ると、階段を上がり、屋上にあるウィンターを入れた円形水槽が隠れて見える場所までソーヤを連れて行く。そして、「ウィンター、ここに来てから動いてくれないの。目も開けてくれない」と打ち明ける(2枚目の写真)。ヘイゼルが前を見ようと少し力を入れると、隠れていた棚が傾き、上に載っていた物が落ちて大きな音を立てる。水槽にウィンターと一緒にいた女性は、関係者以外の子を連れて来たヘイゼルに注意するが、ヘイゼルは 「分かってるけど、ウィンターのロープを外してあげたのはこの子なのよ。だから、心配して見に来たの」の取りなす。それを聞いた女性は、尾びれへの血流が長時間遮断されていたので、多くの組織が死んでしまったとソーヤに説明し、それを聞いたソーヤは(3枚目の写真)、「ありがとう」と言う。その声を認識したウィンターはホイッスル音を出すが、ヘイゼルの父のクレイがやって来るのが見えたので、ヘイゼルは急いでソーヤを連れて出口まで行き、外に出す。そして、自転車に乗ったソーヤと名前を交換する。
  
  
  

その日の夜、ソーヤは工具室のノートパソコンで、イルカの鳴き声について調べている。夜遅く母が帰宅すると、ソーヤは疲れたのか、パソコンを点けたまま眠っている。翌日の夏期講習会の終業ベルが3時ちょうどになると、それを待っていたソーヤは、教師など無視して立ち上がって教室から出ると、自転車を勢いよく漕いで海洋病院にまっしぐら。そして、また裏口から入ると、作業員に見つからないよう階段を駆け上がると、昨日と同じ棚の後ろに隠れて水槽の方を見る。今日は、昨日と違い、クレイがいるので、ソーヤは棚に触らないよう注意する。そして、漏れ聞こる会話によれば、①尾びれの感染症が悪化し、壊死した細胞が多過ぎて抗生物質が効かない、②ウィンターに生きる意欲がないという深刻な状態。その時、サギのルーファスが、ソーヤの靴をつつき出したので(1枚目の写真)、「やめろ」と小さな声で叱り付け、足で蹴っているうちに、梯子から滑り落ちて大きな音を立てる。当然、クレイに見つかり 「こっちに来なさい」と呼びつけられる。そして、「君は誰だ? どうやって、ここに入った?」と問い詰める。そこに、ヘイゼルが飛んできて、「パパ、その子、海岸にいた男の子よ、覚えてる?」と助太刀する(2枚目の写真)。クレイは 「ヘイゼル、規則は知ってるだろ。病院のこのエリアには、誰も入ることは許されない」と説教を始めるが、ウィンターが、小鳥がさえずるようなピーピーというホイッスル音を出し、それを聞いたヘイゼルが、ウィンターがソーヤに話しかけているのだと指摘する。今まで黙って目も開けなかったウィンターがホイッスル音を出したことに驚いたクレイは、ソーヤに 「ちょっとこっちに来てくれないか」と頼み、ソーヤを水槽の縁まで連れて行く。そして、ウィンターを抱いて支えている2人の女性に、ウィンターを近くまで連れてくるよう指示する。クレイはソーヤにウィンターの頭を撫でるよう頼む(3枚目の写真)。撫でている様子を見たヘイゼルは、父に 「ウィンターは、あの子のことがホントに好きなんだ。また、戻ってきてもいいでしょ?」と頼む。クレイは、「どうかな」と曖昧な返事をすると、ウィンターが怒ったような変な音を出す。ウィンターの反応を見たクレイは、今度は積極的に賛成する。
  
  
  

翌朝、いつもは母に起こされるソーヤが、母が起きて来た時にはもう朝食を済ませ、「今日は早く行って、勉強しようと思ったんだ」と言うと、さっさと自転車に乗って出かける。しかし、向かったのは学校ではなく海洋病院。裏口から入って、「ヘイゼル?」と声をかけるが、どこにもいない。そこで階段を上がって行くと、屋外水槽への入口の前で、ヘイゼルが泣いている(1枚目の写真)。ソーヤは 「どうしたの?」と尋ねる。次のシーンでは、円形水槽の中で、ウィンターが男性1人と女性2人によって支えられているが、尾びれはなくなり、代わりに円錐状にテープが巻いてある(2枚目の写真、矢印)。水槽の所で、ヘイゼルが 「尾びれの感染がひどかったから、パパが切るしかないって言ったの」と 悲しそうに説明する(3枚目の写真)〔地元紙Tampa Bay Timesの2021年11月12日(ウィンターの死の翌日)の記事によれば、「尾びれは壊死により溶けるようになくなっていった。医師は、壊死が脊髄まで達すると死亡するので、毎日壊死した部分を切除し、抗生物質を塗布した。こうした壊死は救助された2005年12月10日〕から1ヶ月後の2006年の1月中続き、尾びれはどんどん小さくなり、3本の椎骨が溶けた。バレンタインデー(2月14日)が過ぎ、脊髄の1つ手前の椎骨で壊死は止まった」とあるので、映画のように保護した翌々日に切断した訳ではない〕
  
  
  

ヘイゼルは、海洋病院の外までソーヤと一緒に歩きながら、「家に帰る前に、凍らせたレモネード食べてかない? 私が作ったの」と誘う。女の子に誘われたことなどないソーヤは断るが、それを、桟橋に係船されたヨットの上で聞いたヘイゼルの祖父リードが 「分らんな。孫娘の凍らせたレモネードくらい悪い知らせに効く薬はないんだが〔Nothing goes down with crappy news like one of my granddaughter's lemonade icicles〕」と言ったので、2人は、桟橋に沿って作られた水上ハウスのイスに座って凍らせたレモネードを食べる(1枚目の写真)。ヘイゼルは、先ほど祖父が声をかけたヨット を指して、「パパは まだ子供だった頃、おじいちゃんと一緒に世界中を帆走したのよ」と話した上で、ソーヤの父のことを訊く。ソーヤは、「分かんない。5年くらい前、出てった。電話もないし、手紙も来ない」と話す。そして、逆にヘイゼルの母のことを尋ねる。ヘイゼルは、「7歳の時亡くなったの」と言った後、「電話もないし、手紙も来ない」と言い、2人とも同じ境遇だと示唆する。ヘイゼルは 「来て」と言うと、屋根上の階段を上って、家の天辺にある “帆船の見張り台” を思わせる場所にソーヤを連れて行く。そして、「私、ここで一日中過ごしてるの。勉強したり、その他いろんなことをしたりして。自宅学習だから、おしゃべりなの。あなた、学校好き?」と、ペラペラ話す。「ほとんど落第さ」(3枚目の写真)。「興味のある科目がまだ見つかっていないからよ」。「ウィンター、死んじゃうの?」。「死なないよう祈ってるわ」 。
  
  
  

翌日の朝、ソーヤは、スタッフの一員として堂々と屋上まで来て、お早うの挨拶を交わす。水槽では、クレイが栄養を加えた水をウィンターに細いガラス管で飲ませようとするが、全然飲んでくれない。クレイはソーヤに 「泳げる?」と訊く。「僕のこと?」。「フィービー〔ウィンターを支えている女性の一人。もう一人はヘイゼル〕はウィンターと一緒に一晩起きてた。少し眠らないと」。ソーヤは海洋病院が用意した服に着替えると、裸足で水槽まで行き、逆V字形に立て掛けたアルミの梯子を上がって下りて水槽に入る。ウィンターをソーヤとヘイゼルに任せると、クレイは1階で行われる経営会議に出席する。そこでは、助成金を失い、経営が困難だという話が中心で、しかも、愚かな一人の男は、ここにホテルを建てたいという富豪に売って、動物は移転させるという馬鹿げた案を出し、呆れたクレイはさっさと屋上に戻る。そして、水槽に入ると、ウィンターに栄養ドリンクを飲ませようとするが、ウィンターは嫌がって水を吹き出す(1枚目の写真、矢印はドリンクの入ったビン)。それを見ていたリードは、「なぜソーヤにやらせてみないんだ?」と言う。そこで、クレイは 「やってみる?」とソーヤに訊く。「何するの?」。「それをウィンターに見せるんだ」。ソーヤはドリンクのビンをウィンターの目の前に持って行く。リードが 「ウィンターと話して」と言う。ソーヤは 「気分が悪いのは分かるけど、飲まなきゃ良くならないよ」と言ってビンを吻に近づけるが、ウィンターは嫌がって横を向く。そこで、ソーヤは 「これ美味しいよ。ヘイゼルが作った天然成分のドリンクだ」と言うと、自分で飲んで見せる(2枚目の写真)。そして、ビンの先端を口に入れると、ウィンターはあっという間に飲み干す(3枚目の写真)。クレイは、ソーヤの重要性を再認識する。
  
  
  

ソーヤが海洋病院から戻ると、家には母だけでなくカイルの両親もいた。母は 「学校はどうだった?」と訊き、それが “引っかけ尋問” だとは知らずにソーヤが 「よかった」と答えると(1枚目の写真)、母は 「ドイル先生から電話があって、今週は一度も講習に出なかったっておっしゃってたわ。一体どこにいたの?」と問い詰める(2枚目の写真)。しかも、母がソーヤに近寄ると、嫌な臭いがする。「その悪臭なんなの? 釣りにでも行ってたの?」。彼がどう答えたかは分からないが、すぐにシャワーを浴びに行かされる。バスタオルで体をくるんで戻って来たソーヤの臭いを嗅いだ母は、もう一度シャワーに行くよう命じると、ソーヤは 「分かった。だけと、明日、学校には行かない。ウィンターには僕が必要なんだ、もし、僕が止めちゃったら…」(3枚目の写真)。母は、ソーヤの抗弁を途中で打ち切り、「明日は学校に行きなさい。それだけ。終わり」と取り付く島もない。ソーヤは怒って自分の部屋に走って行く。それを聞いていたカイルの父が、ソーヤを弁護して、「あの子が、こんなに熱中するのを最後に見たのは、いつだったかな」と言う。
  
  
  

心の広い母は、一体何が起きているのか確かめようと、ソーヤを車に乗せて、“聞いたこともない場所” に行ってみる。着いた場所には巨大な建物が建っている。ソーヤは、車が着くとすぐに飛び出して行ってしまい、母が車から出た時には姿が見えない。そこで母は、仕方なく、正面に見える玄関に向かおうとすると、目の前にいきなりルーファスが現われ、悪戯の洗礼を浴びる。ルーファスに追われて何とか玄関から中に入ると、中には見学者が10数名いて、ソーヤが 「どこに行ってたの?」と訊く。母は、サギに襲われたことを非難せず、ソーヤの案内で管内の水槽を見て回るが、息子が上手に説明するのを聞いてびっくりする。さらに、館内の何人もの女性職員と親しげに挨拶するのも、これまでのソーヤからは考えられないことだった。最後にソーヤは屋上の水槽まで母を連れて行き、ウィンターに会わせる(1枚目の写真)。すると、ヘイゼルの祖父が現われ 「ようこそ、リードです」と握手を求め、母も 「どうも、ロレインです」と笑顔で握手する。「私たちは、あなたのことをたくさん聞いています」。「あなたについても同じことが言えるといいんですが」。「あれは、私の息子のクレイと、イルカの専門家のフィービーとキャットです」。すぐ横を、ヘイゼルが 「Hi」と言いながら大きな箱を持って通って行く。「あれは、孫娘のヘイゼルです」。母は、ソーヤに、ウィンターの年齢を訊き、ソーヤは 「まだ子供だよ。イルカは、何年も母親と一緒にいるのが普通なのに」と言い、リードは 「今は、ソーヤがウィンターの母親です」と言う。2人きりになると、母は息子のこれまで見なかった熱意と重大な役割に感動し、「ドイル先生と話してみるわ」と言い、それを聞いたソーヤは 「ありがとう」と母に抱き着き、ヘイゼルとハイタッチする(2枚目の写真)。最後に、クレイが挨拶にきて、これまでソーヤが母に内緒でやっていたことを、「あなたが知らなかったとは知りませんでした。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪した上で、「彼は、素晴らしい子供ですね。彼はウィンターと驚くべきつながりを持っています」と称える。母は、すぐに学校に行き、教師のドイルと話し合うが、形式主義で、例外を認めようとしない器の小さなドイルは、母が 「ソーヤが経験していることは、この教室であなたが息子に教えられることより、ずっと豊かなことです」と言ったので、「私は、良い教師です」と反発し、例外を認めようとしない。
  
  
  

それでも、母は、“あの教師” による夏期講習を受けるよりは、たとえ留年しても、これまで見なかった生き生きとした息子の姿を見続けたかったので、「あなたの新しい学校のユニフォームよ、愛してる、ママ」と書いた紙を付けた買い物袋を、帰宅したソーヤに渡す。中に入っていたのは水着だったので(1枚目の写真)、ソーヤは母に抱き着いて感謝する。ソーヤは、さっそくその水着を来てウィンターの水槽に入り、ヘイゼルと一緒にウィンターを支える。ヘイゼルは 「あなたのママって、ホントに素敵ね」と言い、ソーヤは 「君のパパだって」と返す(2枚目の写真)。その時、ウィンターが急に暴れ出す。2人は何が起きたのか分からなくなり、ヘイゼルは大声で父を呼ぶ。カイルは、ソーヤとヘイゼルをウィンターから遠ざけて水槽の縁まで後退させる。ウィンターは、尾びれをなくした尾柄を横にくねくね動かしながら泳ぎ始める(3枚目の写真)。尾びれのないイルカが泳ぐのを見るのは初めてのことなので、時に獣医のクレイは感動して見ている。
  
  
  

その後、ソーヤが家から持ってきた昔使っていた遊具を使って、ヘイゼルと一緒にウィンターと遊ぶシーンや(1枚目の写真)、ウィンターが、ソーヤの持って来た水に浮くマットの上に飛び乗って体を休めるウィンター(2枚目の写真)、ラッコに楽しそうに餌をやるソーヤとヘイゼル(3枚目の写真)など、ソーヤが海洋病院の一員となって暮らす様子が、様々な短いシーンで紹介される。
  
  
  

最高に楽しい1日を過ごして帰宅したソーヤが戸口で 「今日、何したと思う?」と言って振り向くと、カイルの母〔伯母〕が来て泣いているのを見てびっくりする。ソーヤは、カイルに何かが起きたと悟る。母は、ソーヤに手を差し伸べて 「爆発があったのよ。かなりひどいらしいの」と言う。ソーヤは、母に近づきながら 「カイル、大丈夫なの?」と心配そうに訊く。伯母は 「そう思ってる。帰ってくるわ」と言うが、ソーヤは不安になる(1枚目の写真)。翌日、ソーヤはヘイゼルの水上ハウスのテーブルの上でラジコンヘリを調整して不安を忘れようとしている。そこに現れたクレイは 「君の従兄のことを聞いたよ。幸いなことに彼は生きている。それが一番大事なことだろ?」と慰め、ソーヤは 「そうだね」と言う。クレイは、さらに、ソーヤに元気を出させようと、「なあ、今夜 少し手伝って欲しいんだ。ウィンターを一緒に見守ってくれないか?」と頼む。それを聞いたソーヤは、「もちろん、すごいや」と笑顔になる(2枚目の写真)。そして、夜になり、ソーヤが、水槽の横で 「ねえ、クレイ先生」と呼びかけると、クレイは 「もうクレイと呼んでくれて構わないよ」と言う。ソーヤは 「ウィンターは覚えてると思う? 海や家族のこと」とクレイに質問する(3枚目の写真)。「何とも言えないな。イルカはとても賢いから」と言うと、チュマシュ族の虹の橋創造物語〔Chumash Rainbow Bridge Creation Story〕について話し始める。米国国立公園局のサイト(https://www. nps.gov/articles/000/home-chumash-rainbow-bridge.htm)の方が正確な内容なので、そちらの方を引用しておこう。「フタシュ〔Hutash、母なる大地〕は魔法の植物の種でリムウ〔Limuw、サンタクルス島〕にチュマシュの人々を創造した。彼女の夫であるアルチュポオシュ〔Alchupo’osh、空の蛇、天の川〕は人々に火を与え、島の人口は増加した。すぐにリムウは込み合い、人々のざわめきがフタシュを悩ませた。フタシュは人々には新しい、より大きな家が必要だと考え、島と大陸を結ぶ虹の橋を作った。人々が渡っていると、中には霧の中を見下ろして目が回り、海に落ちた者がいた。フタシュはそれらの者達を哀れに思いイルカに変えた。チュマシュの人々はイルカ達を兄弟や姉妹と呼んでいる」。話が終わると、クレイは、手作りの小さなウィンターの彫刻をソーヤに投げて渡し、ソーヤは素敵なプレゼントに感激する(4枚目の写真)。
  
  
  
  

そのあと、ソーヤは1人だけでウィンターの世話をする。ソーヤは、ウィンターに向かって 「従兄のカイルが かなり負傷したみたいなんだ。どのくらいひどいのかは分かんないけど。でも、カイルは強いから、大丈夫だと思うよ。君もな」と話しかけると、ウィンターがピーピーと鳴く。ソーヤは、食べ物が欲しいのかと思い、栄養ドリンクのビンのある棚までいくと、ウィンターが背中に水を掛ける。ソーヤがバスタオルで濡れた体を拭き始めると、ウィンターがまた水をかける(1枚目の写真)。そして、またピーピーと鳴く。「おもちゃで遊びたいのか?」と、箱の中からボーリングのピンを出して見せると、ビーと否定する。そこで、アヒルの付いたリングを水槽の中に差し出して 「欲しいのか、欲しくないのか?」と声をかける。すると、ウィンターが水中から飛び上がってリングの中に吻を突っ込んだので(2枚目の写真、矢印)、リングを持っていたソーヤはバランスを崩して水槽の中に落ちる。ウィンターが望んでいたのは、水中でソーヤと一緒に遊ぶことだった。ソーヤとウィンターは水を掛け合って遊ぶ(3枚目の写真)。
  
  
  

とても敵わないと思ったソーヤは降参し、ウィンターの体を撫ぜながら背びれを掴むと、ウィンターは、そのままの状態で水の中に潜り始める(1枚目の写真)。ソーヤとウィンターが水中でコミュニケートするシーンは、観ていて清々しい(2枚目の写真)。この時の撮影状況は、DVDの特典映像で見ることができる(3枚目の写真)。
  
  
  

翌朝(?)はカイルが軍隊から戻って来る日。カイルの家の壁は、「WELCOME HOME KYLE」と書かれた大きな紙が貼られている。ソーヤがさっそく庭に入って行くと、準備された歓迎パーティが撤去されている。寄ってきた母に、ソーヤが 「カイル、どこ?」と訊くと、母は 「アリス伯母さんから電話があって、彼は退役軍人病院に直行するそうよ。カイルには時間が必要なの」と言う。それを聞いたソーヤは、カイルが思っていたより重傷らしいので、悲しくなってしまう(1枚目の写真)。悲劇は、これだけに終わらなかった。海洋病院では、ウィンターに関わる全員が呼ばれ、クレイがウィンターの尾柄のレントゲン写真を見せ、骨の外側に若干の膨れが見られるのを指摘する。ヘイゼルが 「それが? 悪いことなの?」と訊くと、クレイは、ウィンターがこのまま尾柄を左右にくねらせて泳ぎ続けると、筋肉がどんどん肥大していき、脊椎を圧迫・損傷させてしまうと説明する(2枚目の写真)〔イルカは本来 尾びれを上下させて泳ぐため〕。それを聞いたソーヤは愕然とする(3枚目の写真)。
  
  
  

恐らく数日後、ソーヤは母と一緒に退役軍人病院に行く。病院内でカイルがいると教えられたのは、病室ではなく研究室。2人が研究室に入って行くと、車イスに座ったカイルの前に、1人の男性が跪いていて、「あいつら、私が頼んだとおりに加工してくれなかった」と文句を言っている。研究室のドアが閉まる音で、2人がカイルと母に気付く。男性は 「そんなトコに立ってないで、中に入って」と言うが、カイルはイスの向きを変え、2人に背を向ける。男性の方は、2人の方に進み出ると 「私は、キャメロン・マッカーシー。あなたは?」と訊く。「私は、カイルの叔母、ロレイン。こっちは、彼の従弟のソーヤです」と答える。陽気なマッカーシーは、テーブルの上に置いてあったプラスチックの手を取り上げると、「ハイタッチ」と言うが、暗く沈んだカイルは 「どうか、出てって」と言う(1・2枚目の写真)。ロレインが 「カイル、あなたが大丈夫かどうか確認したいだけ」と言うと、カイルは 「俺はそうじゃない。分かるでしょ」と冷たく言う。それを聞くと、義足や義手の専門家のマッカーシー博士は、自分は精神科医じゃないと言って研究室から出て行く。3人だけになると、カイルは、ソーヤに向かって 「会いに来てくれなんて頼んでない。君は俺を見たろ、だから出てってくれ」と言う。それを聞いたソーヤは、「そうか。どうでもいいや〔You know, whatever〕」と言って、出て行こうとするが、急に振り返ると 「他の人たちにとって辛いことかもしれないと思ったことは?!」と強く批判し(3枚目の写真)、さっさと出て行く。
  
  
  

廊下に出たソーヤと母がカフェに向かって歩き始めると、研究室のドアが開き、カイルが 「ソーヤ」と声をかける。母は 「車で待ってる」と言って立ち去り、カイルはソーヤを病院の敷地内の公園のベンチまで連れて行く。そして、「いいか、君だから言ったんじゃない。もうちょっと時間が欲しいだけなんだ」。「ママは、カイルが背中を痛めてるって言ってた。だから、脚が動かせないの?」(1枚目の写真)。「左脚は感覚が戻ってきた。心配なのは、右脚の方なんだ」。「また歩けるようになる?」。「装具があれば、多分」。「泳ぐことは?」。水泳の話が出たので 悲しくなったカイルは病棟に戻ってしまう。ソーヤがベンチから振り返ると、さっきのマッカーシー博士が離れたベンチに座っている。ソーヤは、簡単なランチを食べている博士の前まで行くと、「済みません」と声をかける。「やあ」。「変なこと訊いていいですか?」(2枚目の写真)。次のシーンでは、ソーヤが博士を連れて海洋病院に行き、クレイと引き合わせる。ソーヤのアイディアに賛同したクレイは、マッカーシーにウィンターの尾柄を調べてもらう(3枚目の写真)。マッカーシーは、クレイに 「濡れた絹のように滑らかだ。その上、固定する場所がどこにもない。魚に尾びれをつけようなんて、とんでもないことだ。正気の人間なら、誰も挑戦しないだろう」と言った上で、自分は正気じゃないから試してみようと言ってくれ、全員を喜ばせる。
  
  
  

マッカーシーは、イルカの皮膚が過敏であることや、脊椎の構造は人間とそれほど変わらないことを教えてもらうと、ウィンターの尾柄に綿製の細長い布を巻き付ける(1枚目の写真)〔皮膚を刺激しないように〕。そして、イルカが泳ぐ時の尾びれの動き方のコンピューター映像を見せてもらい、研究室に戻ると、巻き付けた布にすっぽり被せられるような、人工の尾びれを設計する。そして、試作品を海洋病院に持ってきて見せる(2枚目の写真)。そのあとで製造会社に行くと、①これまで作ったことがないもの、②お金は払えない、と言った上で発注するが、「どんな患者です?」と訊かれ、ウィンターの写真を見せ担当者を驚かせる。その帰り、博士が退役軍人病院の駐車場に行き、研究室を見ると明かりが点いている。不審に思って中に入って行くと、カイルがパソコンを立ち上げ、「Donovan Peck Sets New State Record(ドノヴァン・ペック、州新記録を樹立)」という記事を悲しそうに見ている。博士が、「悪いニュースか?」と訊くと、「関係ないでしょ」という不謹慎な返事。「装具の具合は?」。「いいです」。博士は、サッカーのボールを床に落とすと、カイルの方に緩やかに蹴り、「思い切り蹴るんだ。何を壊しても構わん」と言う。カイルは蹴ろうとするが、車イスに座った状態で蹴ったことがないので、蹴ることができない。博士は 「どっちが痛い? 脚かプライドか?」と訊く。カイルが 水泳のできなくなったことを嘆くと、博士は 「他のことをすればいい。選択肢は100万ある。ケガをしたからと言って、壊れたわけじゃない」と言うと、カイルは 「僕は壊れてます」と答える。それを聞いた博士は、デスクの上に置いてあったガラスのコップを手に取ると、そのまま床に落とす(3枚目の写真)。「壊れるとは、このことだ。カイル、もう家に帰りなさい」と助言する。
  
  
  

恐らく数日後、マッカーシーは、純白のシリコーンゴムでできた皮膚保護膜と(1枚目の写真、矢印)、博士が自分で作った試作品の尾びれを持って海洋病院を訪れる。そして、ウィンターの尾柄に皮膚保護膜を被せた上から、白いプラスチックでできた人工の尾びれ付きのカバーを挿入し、2本のベルトで固定する(2枚目の写真)。しかし、ウィンターを自由にさせ、人工の尾びれを上下させるよう指導すると、ウィンターは嫌がり、水槽の中で暴れ、人工の尾びれを壁に打ち付けて壊す(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

ここで、TVが熱帯低気圧がカテゴリー1のハリケーンになったと伝え、それを聞いた海洋病院のスタッフ全員が窓を閉めたり、屋上の飛散する物の片付けに追われる(1枚目の写真)〔カテゴリー1は5段階あるハリケーンの中では最小だが、日本の台風で言えばクラス4(建物への被害はないが。木の枝が折れたりする)に該当する。だから、なぜ、これほど大騒動するのか分からない〕。その日の夜、ソーヤと母は自宅で怖い一夜を明かす(2枚目の写真)〔これも、カテゴリー1にしてはオーバー〕。ハリケーンが過ぎ去った翌朝、海洋病院の前の駐車場は、倒木で埋まっているし、病院の看板も吹き飛ばされている(3枚目の写真)〔カテゴリー1とは思えないひどさ〕
  
  
  

ソーヤが、海洋病院でハリケーン被害の後片付けをしていると、そこに、右脚を装具で支え、左腕にロフストランド杖〔1本の脚で体重を支えるグリップと腕を支えるカフを備えた杖〕を付けたカイルが母親と一緒に現われる(1・2枚目の写真)。クレイは後片付けで忙しいが、カイルの来訪を歓迎する。カイルは誰の助けも借りずにウィンターと接触できる台の上に横になると、自分と同じように、大切な尾びれを失くしたウィンターに “仲間” として接触する(3枚目の写真)。
  
  
  

そのあとで〔数日後?〕、1階で開催された経営会議は、クレイ欠席のまま開催され〔もし、数日後なら、クレイの多忙な後始末も終わっているハズなので、最重要人物の欠席は絶対に不自然〕、ハリケーンによる損傷が50万ドル〔当時の為替レートで4250万円 ⇒ カテゴリー1のハリケーンで、いくらなんでもオーバー〕なので売却を進めるしか方策はないことで全員が一致する。その結果を伝えに来た年老いた女性理事が、クレイに魚や動物の行き先は決まったが、ウィンターのような障害を持つイルカは安楽死させるしかないと話す。クレイからその話を聞かされたソーヤとヘイゼルは、会議の勝手で思いやりのない判断に愕然とする(1枚目の写真)。“職場” を失ったソーヤが自転車で家に帰ろうとしていると、きれいに清掃された駐車場に1台の車が入ってくる〔あれほどの倒木を短時間で片付けられるハズがないので数日後だと解釈した〕。運転席から降りた女性は、この場所がクリアウォーター海洋病院かとソーヤに尋ね、ソーヤがそうだと言うと、女性はアトランタ〔海洋病院の約650キロ北北西〕から運転してきたと話す。そして、後部座席には車イスの幼い少女が乗っている。その少女は、自分のように脚のないウィンターにどうしても会いたがる。ソーヤは、2人を連れて閉鎖中の館内に入り(2枚目の写真)、少女は、大型水槽の中で泳ぐウィンターとガラスを挟んでコンタクトする(3枚目の写真)〔ウィンターは、見物客もいないのに、なぜ、展示用の大型水槽に移されたのだろう??〕
  
  
  

ソーヤは、ヘイゼルと一緒にクレイに会いに行き、「解決策はないっていったでしょ。これが解決策だよ」と訴えるが、クレイは 「分かってないな…」と相手にしない。ソーヤ:「分かってるよ。お金が必要なんでしょ。ウィンターなら、たくさんのお金を集めることができる。その女性は、娘をここに連れてくるため、8時間かけて運転してきたんだ」。ヘイゼル:「他の人たちだって きっとそうするわ」。ソーヤ:「ウェブサイトを使わせて」。ヘイゼル:「ウェブカメラ付きで」。ソーヤ:「寄付をつのる」。ヘイゼル:「大きなカーニバルがいい」。2人がそれだけ熱心に言っても、クレイは、①現実的ではない、②お金が足りない、の2点で否定する。夜になり、先ほどの話を聞いていたリードが、クレイに話しかける。最初は、クレイが子供だった頃によく読んで聞かせた詩(ジョン・メイスフィールドの「熱き海」)を口にする。「どうしても海へ戻らないと、あの孤独な海と空のもとへ。帆船を手に入れ、を導(しるべ)に舵を切る…」。そして、「が指し示している場所にたどり着けなかったからといって、それが間違っただとは限らない。あのイルカはわしらをどこかに連れて行ってくれる」と諭す(2枚目の写真)。それで目覚めたクレイは、ソーヤの家まで行き、「もう一度、資金集めの話をしてくれないか?」と頼む。翌朝から、ソーヤとヘイゼルは、「Save Winter Day(ウィンターを救う日)」の活動を開始する(3枚目の写真)。
  
  
  

そこにカイルがやって来て、従弟の発想に感心する(1枚目の写真)。ソーヤの 「チケット、たくさん売れるといいんだけど」という言葉を聞いたカイルは、地元のTV局のニュースキャスターとして働いているサンドラ〔かつての同級生? ガールフレンド?〕に会いに行き、協力を依頼する。そして、数日後、TVでサンドラがウィンターのことを重要なニュースとして流している(2枚目の写真)。「ほんの数か月前、小さな雌イルカ、ウィンターがカニ捕りの仕掛けのロープに絡まっているのが発見されました。尾びれがひどく損傷していました。クリアウォーター海洋病院に搬送されましたが、生存が危ぶまれました。でも、この勇敢なイルカは、尾びれを失っても元気になりました。尾びれがないのに、どうやって泳げるのでしょうか? ウィンターは体を左右にくねらせることで、泳ぐことを覚えたのです。しかし、それはハッピーエンドではありませんでした。その異常な泳ぎ方はウィンターの脊椎にダメージを与え、麻痺につながる恐れがあります。解決策は? ウィンターに人工の尾びれを付けます。人工装具の専門家キャメロン・マッカーシー博士の協力を得て、テストが推進中です。しかし、それには時間とお金がかかります。そこでウィンターの親友である11歳のソーヤ・ネルソン君は、ウェブカメラ付きのウェブサイト「SeeWinter.com」を立ち上げ、ログインしてウィンターに会えるようにしました。27日土曜日の「ウィンターを救う日」に、ウィンターに直接会う方がさらに良いでしょう。この催しでは、追加特典として、特別なスポーツイベントもお楽しみいただけます。アメリカのトップクラスの若手水泳選手2人、フロリダ州のカイル・コネランとドノヴァン・ペックが直接対決することに合意しました。すべての収益はウィンターと海洋病院に寄付されます。ぜひ、優秀なアスリート 2 人とヒロイックな小さなイルカに会いに来て下さい。ウィンターは、私の心を奪ったように、あなたの心も奪うことを保証します」。それを聞いたソーヤは、従兄の絶大な協力に感激して抱き着く(3枚目の写真)。
  
  
  

マッカーシーは、試作品ではなく、装具メーカーに作ってもらった完璧な尾びれを持って海洋病院 にやって来ると、「ジョイントが少しフレキシブルになった。より自然に感じるに違いない」と言って、自信たっぷりに見せる(1枚目の写真)。ただし、純白のシリコーンゴムでできた皮膚保護膜は前回と同じ。そして、ウィンターに装着する(2枚目の写真)。しかし、ウィンターはまた暴れ出し、人工の尾びれは破壊される(3枚目の写真、矢印) 。
  
  
  

実験が失敗した後、1人になったソーヤは、プールに足を突っ込みながら、じゃれついてくるウィンターに向かって、「ウィンターやめろよ。今は遊ぶ気分じゃない。なんでだよ。イルカは賢いと思ってたのに。尾びれを付けないと死んじゃうよ。どうして付けようとしないんだ?」と、不満をぶつける。それに対し、ウィンターは何度もシリコーンゴムの皮膚保護膜を付けた “しっぽ” を上下に振る(1枚目の写真)。そのうちに、ソーヤはその意味に気付き(2枚目の写真)、急いで立ち上がると、クレイのところに走って行き、「分かったよ!」と叫ぶ。「何が?」。「悪いのは(人工の)尾びれじゃなくて、靴下なんです。擦れて痛いから。直さなくちゃいけないのは、靴下の方」と訴える(3枚目の写真)。
  
  
  

そして、いよいよ27日(土)。海洋病院の前の入江に面した広場は訪れた人々で埋まり、サンドラが実況中継をしている(1枚目の写真、矢印)。寄付金を入れるコーナ(2枚目の写真)の前には、長い列が出来ている。形式主義の夏期講習の教師ドイルも、ルーファスに虐められながら、ソーヤの母に向かって、「ソーヤの作文を読みました。とても良かったです。そして、彼がここでやってきたことすべてを考えると、夏期講習の受講資格を与えてもいいと思いました」と言う(3枚目の写真)。
  
  
  

マッカーシーは、イベントにぎりぎり間に合って会場に駆け付けると、新たに開発したシリコーン・エラストマー〔現在は、Winter's Gel(ウィンターのゲル(薄い半透明の膜))と呼ばれている〕で作った “靴下” を見せる(1枚目の写真、矢印)。そして、ウィンターの尾柄に新しい “靴下” を履かせると、その上から前回と同じ人工の尾びれを装着する(2枚目の写真)。前2回は嫌がって装具を壊したウィンターも、ソストな “靴下” のお陰で違和感を感じることなく人工の尾びれを上下に動かして泳ぐことにチャレンジする(3枚目の写真、矢印)。プールに入ってそれを見守っていたソーヤは、親指を立てて “やった” と喜ぶ(4枚目の写真)。
  
  
  
  

イベントの開催にあたり、クレイは、ソーヤとヘイゼルに、「いいかい。何が起きようが、今日という日は君たち2人のものだ。君たちは決してあきらめず、ウィンターを見捨てなかった。いつもそうだったし、これからもずっとそうだ」と感謝する(1枚目の写真)。それだけ言うと、海洋病院の代表者としてクレイが短い歓迎の言葉を述べ(2枚目の写真)〔左側の水上の建物が、クレイとヘイゼルの家〕、特別ゲストの州水泳チャンピオンと 「カイル二等兵」の2人を紹介する。障害を負った元チャンピオンに対する盛大な拍手に応えてマイクの前に立ったカイルは、「どうもありがとう。でも、私たちが今日ここに集まったのは、私のおかげではありません」と言うと、ソーヤを呼んでマイクを渡す。ソーヤは、「わあ、何て言ったらいいか分からない。でも、この日を実現させたのが僕じゃないことは確かです。皆さんがここに集まったのは、僕がこれまで会った最も素晴らしい動物にして友だちがいるからです。そして、皆さんが、僕とおなじように、ウィンターを愛してくれることを心から願います。だって、ウィンターと僕は今や家族で、家族は永遠だから」とスピーチ(3枚目の写真)。そして、再び盛大な拍手。
  
  
  

そして、2人の新旧チャンピオンによる競泳が始まる。飛び込む直前に、カイルは後輩のドノヴァンに 「ところで、俺って、これがリレー競技だってこと、言い忘れたかな?」と言い、相手をびっくりさせるが、その直後にスタートのピストルが撃たれ、ドノヴァンは否応なしに飛び込む。先行するのはもちろんドノヴァンだが、途中からカイルは400メートル先のブイ〔ブイを回って戻ってくるレース〕へのルートから外れて、右にあるクレイの水上ハウスに辿り着く(2枚目の写真、矢印)。すると、反対側の岸まで運ばれてきたウィンターが(3枚目の写真)、ブイ目がけて高速で泳ぎ始める。イルカの方が人間より遥かに早いので、途中、入れ替わりで時間を取ったものの、最後は、ウィンターの方が勝利する(4枚目の写真、矢印)。
  
  
  
  

そのあと、ウィンターが人工の尾びれを使って見事にジャンプする姿が一度だけ映る(1枚目の写真)。それを見たソーヤとヘイゼルが手を叩いて喜び、ハイタッチする。ヘイゼルがバランスを崩して背後の海に落ちそうになったので、ソーヤが思い切り引っ張ると、今度は近づきすぎてキスの雰囲気。そこで、ヘイゼルはソーヤを背後の海に突き落とし、自分も一緒に飛び込む。それを見ていて多くの子供たちが、我も我もと海に飛び込む。子供達が海から出た頃、先の女性の理事がやって来てクレイに成功を祝っていると、委員会の決定により海洋病院の土地をリゾートホテル用に購入したホーダーンという男性がやって来て、①こんな場所を購入できて嬉しい、②この場所の企画部がとてもひどくて、ホテルの設計に20年以上かかるかもしれない、③だから、このままここに残って仕事を続けたらどうか、と話す。それを聞いて、ソーヤとヘイゼルは喜ぶ(2枚目の写真)。ホーダーンとクレイも握手し(3枚目の写真)、ホーダーンは社長なので契約は成立する。
  
  
  

映画の最後は、人工の尾びれを付けたウィンターと、ソーヤの水中での素晴らしい交流シーン(1~3枚目の写真)。
  
  
  

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