アメリカ映画 (2017)
この映画は、同名の子供向け小説(2013)を映画化したものだが、内容は一部のパズル的要素を別とすれば、大きく変更されている。そこで、ここでは、両者の違いについて、少し長くなるが、順を会って解説していくことにする。映画の詳しい内容については、あらすじを参照のこと。
カイル・キーリーは、兄2人と「屋内外宝探しゲーム」をして、大人のだらんとしたズボン、汚れた皿、腐ったバナナの皮などを探しだす。最後の 「1982 年の、合計が 30 セントで、そのうち 1 枚が 5 セントではない硬貨 2 枚 」を見つける謎では、カイルは、父が地下の作業場に小銭が詰まったアップルサイダーの瓶を置いていたのを知っていたので、地面に近い掃き出し窓を蹴り開ける。テニスシューズが窓ガラスに当たってガラスが割れるが、そんなことは気にしていられない。兄たちに勝たなければならなかったので。彼は勝ったが、1週間の外出禁止になる。
映画では、父に買って来るよう頼まれたモンキーレンチを持ったカイル・キーリーが、2人の兄に追われて町の中を走っている。家に着いたカイル・キーリーは、走りながら 「レンチだよ、パパ」と言って投げたレンチがショーウィンドウのガラスを割ってしまい 「外出禁止だ〔It is over〕」と叱られる。
カイル・キーリーは、スクールバスの中でアキミ・ヒューズの隣に座る。そこで、「ボーナスポイント作文書いた?」と訊かれる。カイル・キーリーは忘れていた。そこで、カイル・キーリーは、すぐに書くことにする。「今から作文書くの? バスの中で?」。「書かないよりはいいよ」。「ホームルームの時間よ、カイル。それも一番に」。カイル・キーリーは、教室に入ると、ベルが鳴って教師が作文を回収し始める前に、「風船。風船があるハズだ 」とだけ書き、それを提出するが、教師が呆れて読み上げたので、生徒たちが笑う。
映画では、前夜、自室のデスクに向かって、ノートに空想上の恐竜「スカラダクティル(Scaradactyl)」と赤い風船8個の絵を描く。
アレクサンドリアヴィル公共図書館の図書館長ヤニナ・ジンチェンコ博士(真っ赤な背広に、真っ赤な眼鏡の背の高い女性)が登場し、12人の選抜者は 「寝袋、歯ブラシ、着替え、下着2枚」の持参が求められ、逆に 「500ドルのギフトカード」が贈呈されると話す。そして、燕尾服を着たレモンチェロ氏が音の出る靴を履いて演壇に登場。壇上の図書カード12枚の名を読み上げる(奇跡的に、カイル・キーリーの名が選抜者の中にあった)。そのあと、選抜者はすぐに図書館に入らない。カイル・キーリーは、一家5人で100ドルずつ買い物をし、感謝される。翌日、選抜者と両親のための盛大なパーティがあり、それが終わると、12人は図書館の中に入る。
映画では、レモンチェロが図書館の玄関の遥か上を綱渡りして現われる。そして、中央まで来るとワザと失敗して落下したように見せかけ、トランポリンに降り、12人の名を読み上げると、すぐに図書館の中に入る。
図書館に入ってすぐの噴水池の真ん中に立つレモンチェロ氏の等身大の像の台座には、「共有されていない知識は未知のまま—ルイジ・L・レモンチェロ(KNOW- LEDGE NOT SHARED REMAINS UNKNOWN. —LUIGI L. LEMONCELLO)」と刻まれている。
映画では、1・2階は普通の図書館だが、3階には図書館とは無縁の特別室がある。部屋の中央には、大きな本が置かれた台座があり、その周りに4つの扉がある。台座の正面には、原作と違って、「LMPE;RFHR MPY DJSTRF TR,SOMD IMLMPEM— ;IOHO ; ;R,PMVR;;P」と、文字が浮き彫りになっていて、脱出のヒントとして、2分での解読が要求される。この文字列を特異なパターンで読むと、上記の原作の台座の文字になる。
図書館の中に入ると、まずあるのが、ロタンダ閲覧室と呼ばれる円形の部屋(天井のドームは宇宙のイメージ)、2階に書庫(000~900番台まで)、3階にチームが会合を開けるコミュニティ会議室、4階に電子学習センターがある。
映画では、3階の特別室の4つの扉には、①HORROR(ホラー)、②CHILDREN(子供向き)、③CLASSIC(古典)、④FANTASY(ファンタジー)と書かれ、該当する絵も付随している。①の中は、古い街路になっていて、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男がいる。②の中に入ると、そこは完全な屋外〔あり得ない〕。田園の中にハンプティダンプティ、マザーグース、蜘蛛のシャーロットと、子豚のウィルバーがいる。③の中は見上げんばかり(8階)の書棚になっている〔あり得ない〕。④の中は人工の森になっていて、トロール、天空の巨人、ヘンゼルとグレーテル、東の魔女がいる。
12人の挑戦者は、①カイル・キーリーのチームと、②チャールズ・チルティントンのチームに分かれる。①には、アキミ・ヒューズ、ミゲル・フェルナンデス、シエラ・ラッセル、ヘイリー・デイリー(最後に参加)、②には、アンドリュー・ペックルマン、ヘイリー・デイリー(最後に退団)が加わる(赤字は女の子)。
映画でも、①と②のチームは同じ。ミゲル・フェルナンデスは、チーム結成前にいなくなる。ヘイリー・デイリーは②の途中でいなくなる。チャールズ・チルティントンが悪人であることは変わりないが、映画では原作のような天才と違い無能、アンドリュー・ペックルマンは全くの別人、ヘイリー・デイリーも、映画の方は唯の自惚れ家。
12人の挑戦者に課せられた使命は、①各自に渡された図書カードと、②膨大な図書の中の12冊に隠されたカード(絵文字)を解明して、図書館から出るヒントを得ること。②については、規則性がなく、原作をどう読んでも、「見つけられるハズがない」と不信感を抱かせる。①と②について、レモンチェロがある程度支援してくれるが、すべては下の一種のパズルなので、映像にはなりにくい。①については、下の12枚の絵が、それぞれ、番号の書かれた封筒の中に入っている。 ・最初の雌羊は、本は不明だが、英語で “ewe” なので、それに近い発音の “you” 〔無理筋〕。
・次の女の子は『Anne of Green Gables(赤毛のアン)』の本に挟まっていたので、“Anne” を短縮し、その前に “C” を足して “can”。
・3番目の正規の横断歩道標識は、人が歩いているので “walk”。
・2段目の最初は、『The Umpire Strikes Back(アンパイアの報復)』という本からで、野球の審判がアウトを宣告する典型的なポーズなので “out”。
・次は、『Tea for You and Me(あなたと私のためのお茶)』という本からで、ティーポットの最初の “t” に、“H+E” を足して “the”。
・2段目の最後は、『Why Wait to Lose Weight?(なぜ減量を急ぐのか?)』という本からで、体重計に乗って体重(weight)を気にしている女性の絵なので、“Weight” を略して “way”〔無理筋〕。
・3段目の最初は、『True Crime Ohio: The Buckeye State’s Most Notorious BrigandsJ BurglarsJ and Bandits(オハイオの真の犯罪: トチノキの州〔オハイオ州の別名〕』の最も悪名高い山賊、強盗、強盗)』という本からで、内容に合わせて、絵のバンド(band)に、“ITS” を足して “bandits(強盗たち)”。
・次は、本は不明だが、赤ちゃんが這っている(crawl)ので、それに “ED” を足して “crawled”。
・3段目の最後は、『The Mystery at Lilac Inn(ライラック宿の謎)』という本からで、絵からも宿なので、“Inn” を略して “in”。
・4段目の最初は、『Hoosier Hospitality(おもてなしのフージャ州)』という本に挟まっていた。フージャ州とはインディアナ州の別名。インディアナ州の略称は “IN” なので “in”。
・次は、『In the Pocket: Johnny Unitas and Me』の、有名なクォーターバックのジョニー・ユナイタス(背番号 19)の背番号から “nineteen”。
・12番目の最後は、本はないが絵から、6人が食べているので “six ate”。これらを順につなげると、「You can walk out the way bandits crawled in in nineteen six ate(君たちは1968年に強盗たちが入り込んだ道を出て行くことができる)」という、重要なヒントになる。これは、チャールズ・チルティントンのチームの成果〔チャールズ・チルティントンは、前にも書いたが、映画と違い頭が切れる〕。
もう1つの重要なヒントは、12人に渡された図書カードの裏に書いてある、2冊の本の題名の最初の1文字を並べると、「I N O N S E T H T T A T O U T A A S A W ? ? I T」となる〔? ?は、1人だけ、すぐ逃げ出したの不明〕。この文字列では何ともならなかったが、①2冊目の題名の “OneをOではなく1”、“NineをNではなく9”、3冊目の題名の “SixをSではなく6”、“EightをEではなく8” とし、さらに、冠詞(The や A)で始まる場合は冠詞を無視すれば、「I N 1 9 6 8 T H E W A Y O U T WA S A W ? ? I N」となり、「In 1968 the way out was a way in(1968年、出口は入口だった)」となる〔“w??”→“way”とした〕。これは、カイル・キーリーのチームの成果。チャールズ・チルティントンのチームの成果の簡略版でしかないので、読んでいてがっかりする。そもそも、カイル・キーリーのチームは、自分達が何をすべきなのか、あまりよく分かっていない。
映画では、①HORROR、②CHILDREN、③CLASSIC、④FANTASY の部屋で見つける昔の新聞の見出しの文字がヒントになる。
・最初に①に1人で入ったミゲル・フェルナンデスは、恐怖のあまり逃げ出して、本は行方不明。
・②には、チャールズ・チルティントンのチーム3人が入り、そこで、「4分以内に、ハンプティダンプティを元通りにする」という課題を与えられ、成功して渡された封筒に入っていた新聞の切り抜きの標題文字(6行)の最初の1文字を並べると、「THEWAY」となる。
・③には、カイル・キーリーのチーム3人が入り、そこで、「2分以内に、とても有名な本を特定する」という課題を与えられ、『ロミオとジュリエット』と判明。そこまで、空飛ぶ本〔あり得ない〕を使って到達し、封筒を獲得し、中に入っていた新聞の切り抜きの標題文字(8行)の最初の1文字を並べると、「ISTHEWAY」となる。
・その後、④に、カイル・キーリーのチーム3人が入り、ズルで、チャールズ・チルティントンのチーム2人〔1人は欠落〕も潜入。
その時の課題は、原作の第55章の、図書館の地下にある “床の四角いタイル” に 「Luigi L. Lemoncello」のアルファベット16文字を、4×4のマスに並べたもの(右の図参照)が光り、「Give me sixteen words made from these sixteen letters in sixty seconds or less(これらの 16 文字からできる 16 の単語を60 秒以内にリスト・アップして)」の文字がスクロールする。
映画でも、表示される場所がレモンチェロ橋という石橋の手前で、トロールが、上記の要求の文で最後の「or less〔以内〕」がないだけの要求をする。3人が答えると、橋を渡ることが許可され、橋の向こうにある「ジャックと豆の木」の幹の隙間から封筒を手に入れる。中に入っていた新聞の切り抜きの標題文字(2行)の最初の1文字を並べると、「IN」となる。そして、①HORRORで手に入らなかった情報を推測で補い、「THE WAY OUT IS THE WAY IN(出口は入口だ)」と、カイル・キーリーのチームの成果とほぼ同じヒントが得られる。
原作では、チャールズ・チルティントンが “チーム・メイトを唆してカイル・キーリー・チームの1人の図書カードを盗んだ” 責任を問われ、ゲームから追放される。そして、カイル・キーリー・チームだけが、レモンチェロと一緒に地下道を通って出口に向かう。出口の鍵には、最後の言葉遊びがあり、「Once you learn how to do this, you will be forever free(一度この方法を学べば、あなたは永遠に自由になれる)」という紙切れが貼ってある。そこで、「READ(読書)」と操作すると、鍵が開き、図書館から脱出できる。
映画では、チャールズ・チルティントンのせいで図書館のシステムが破壊され、①~④の部屋の扉が開き、中から怪物が出て来て全員が恐怖にさらされる。そこで、チャールズ・チルティントンはカイル・キーリーと協力して怪物どもから逃げることにする。レモンチェロは、システムの回復に必死で同行どころではない。しかも、なぜだか分からないが、カイル・キーリーが描いた空想上の恐竜スカラダクティルまで現れる。スカラダクティルの出現に責任を感じたカイル・キーリーは、たくさんの赤い風船〔出口になぜか一杯置いてある〕を使ってスカラダクティルを退治する。出口には、原作と同じ4文字を正しく入れないと開かないドアがあり、そこに「READ」と入れる。
カイル・キーリー役は、 Casey Simpson (ケイシー・シンプソン)。2004年4月6日生まれ。撮影時は12歳なので、映画の設定と同じ。彼は 2007年から、TVドラマ、TV映画、映画に出演し、これが14本目の作品。現在に至るまで出演を続けているので、TV界で仕事を続けるつもりらしい。演技は、まあまあ、可もなく不可もなし、といった感じ。これだけ多くの作品に出ていても、受賞歴はゼロ。
あらすじ
アレクサンドリアヴィルというオハイオ州にある架空の小さな町の中を、12歳〔中学1年生〕のカイル・キーリーが、2人の兄〔17歳と15歳〕と愛犬のトゥインキーに追われて全速で逃げている(1枚目の写真、矢印はレンチ)。カイルが手に持っているのは、モンキーレンチとボーリングのピン。ここで、本人のコメントが入る。「僕の名前はカイル・キーリー。なぜ兄さんたちが僕を追いかけてるのか、なぜ僕が犬のトゥインキーから盗んだのか〔ピンのこと?〕、不思議に思ってるなら、みんな ルイジ・L・レモンチェロって男のせいなんだ」。一方、自分が経営する店の前で、カイルの父が妻に、「カイルはどこだ? 1時間前に、新しいモンキーレンチを買いに行かせたのに」と文句を言うと、母は 「あの子は、いつもゲームをしてるから。夢中なの」とサポートする。「テレビゲームをやる子もいるけど、僕らはレモンチェロの宝探しゲームをやってる。これは、彼の人気ゲームの一つなんだ。噂によると、次のゲームはこれまでで最大のものになるとか」。カイルは、走るのに夢中で、段ボール箱を抱えた男性にぶつかって中身を歩道に散乱させたり、オープンレストランのシェフの横を走り抜けて客の前に置くはずのスパゲティを客の頭に被せたりと、迷惑行為をくり返す。父の店の前まで来たカイルは、「ほら、レンチだよ、パパ」と言って、よく見ずにレンチを投げたので、レンチはショーウィンドウのガラスを当たって粉々にする(2枚目の写真、矢印)。「こら、カイル、戻って来い!」。「レモンチェロさんは、史上最高のゲームメーカーで、僕のヒーローなんだ。ゲームに戻ろう。最後の課題は、1982 年の、合計が 30 セントで、そのうち 1 枚が 5 セントじゃない硬貨 2 枚を見つけること。つまり、25セントと5セントだ」。映画の中の現在は、2016年なので34年前のコインが簡単に手に入るわけではない。「僕は、どこにあるか知ってるんだ」。カイルは自宅まで走って行くと、父がコインを貯めておく大きなビンの中から2枚のコインを兄たちが来る前に探し出し、2人の前に、2枚を見せて、「遅かったね」と自慢する。しかし、地下室の入口に父が現われ、外出禁止を言い渡し、カイルは愕然とする(3枚目の写真、矢印は2枚のコイン)。
外出禁止でも学校には行かなくてはならないので、次の日、カイルは面白くない顔で地理の授業に出ている〔アレクサンドリアヴィルは小さな町なので、中学1年生のクラスはこの1つだけ〕。すると、小さなドローンが、さらに小さな箱をぶら下げ、教室の空いた窓から中に入ってくる。その箱には、「引っ張って」と書いた細長い紙が吊られていたので、教師が引っ張る(1枚目の写真)。すると、1960年代に図書館の館長だったトビン夫人の半透明のホログラム映像が現われる〔あり得ない〕。夫人は自己紹介した上で、「私は、世界的に有名なルイジ・L・レモンチェロのおかげで、かつてのゴールドリーフ〔金箔〕銀行が最新鋭の新しい図書館としてオープンすることを発表するため、ここに来ました」と話す。そして 「いいですか、最も想像力豊かなエッセイを書いた12人の12歳の生徒が、『レモンチェロ氏の図書館からの脱出』をプレイすることができます」(2枚目の写真)「選ばれた人は、2日後に開催されるレモンチェロ氏の誕生パーティーで発表されます」。それを聞いたカイルと、隣の席のアキミ・ヒューズは大喜び(3枚目の写真)。「僕は、そのゲームをプレイすることが運命だと分かってた。そのためには、僕の人生で最高のエッセイを書かないと」。因みに、トビン夫人がホログラム映像なのは、ずっと前に亡くなっているから。また、どうして、アレクサンドリアヴィルの12歳なのかといえば、レモンチェロはこの町の生まれで、1968年、この町の古い図書館〔12年前に取り壊された〕の中でゲームの発想を練っていた。その時、今度、新しく図書館として生まれ変わるゴールドリーフ銀行に強盗が押し入って150万ドルを盗み、1枚の100ドルをレモンチェロの後ろに落としていったことで、侵入ルート〔図書館→銀行〕が判明し、大々的な新聞記事になった。この、レモンチェロの転機となった事件が起きた時、彼は12歳だった。
次に、カイルの紹介で、主要な登場人物〔子供達〕が紹介される〔順番は一部変えてある〕。1枚目の左は、スクールバスも教室でも隣の席の 「一番の親友で、数学が得意で、クラスの会計係」のアキミ。原作では「母親はアジア人で、父親はアイルランド人」となっているが、アキミは日本人らしい名前。1枚目の右は 「僕が知ってる他の全員を合わせたよりも多くの本を読んでいるシエラ・ラッセル」。ここまでが、“カイル・キーリーのチーム”。2枚目の左は 「アンドリュー・ペックルマン。いい子だけど、いつも虐められてる」。頭にボールが当たり、眼鏡が飛んでいる。そのボールを投げたのが、2枚目の右の 「チャールズ・チルティントン。いじめっ子、カーキ色のズボン好き、ガミガミ言うのが大好き」。3枚目の左は 「ヘイリー・デイリーは、学校で一番人気の女の子。いっぱい友だちがいるのに、なぜかどの写真にも写ってるのは自分だけ」〔自撮りマニア〕。ここまでが、“チャールズ・チルティントンのチーム”。最後の3枚目の右は 「ミゲル・フェルナンデスは、図書館の当番を趣味でやっている唯一の子」。
家に帰ったカイルは、さっそくノートに文字と絵を描く。中央には恐竜の絵が描かれ〔Scaradactylという空想の翼竜。恐らくCearadactylusをもじったもの〕、文字は全く読めないが、左下の3人は恐らくカイルと2人の兄かも。右ページの上部の文字の最下段の先頭は、かろうじて「bubble(泡)」と読め、その下の絵と一致する。泡発生器の下の絵には、「レモンチェロ氏の宝探し」と書いた札の絵〔映画の冒頭のゲームで、カイルが持っていた〕が描かれ、その下には、「やっぱり、風船がないと!!!」の文字を、赤い風船で挟んでいる(1枚目の写真)。そして、レモンチェロの誕生日の夜、ゴールドリーフ銀行〔原作によれが、「聳え立つコリント式の柱、アーチ型のエントランス、たくさんの派手な飾り窓、そしてとてつもなく大きな金色に輝くのドームを持つ建物は、オハイオ州のこの小さな町の古風な通りではなく、ワシントン D.C. の凱旋記念碑の隣に相応しいものだった」と書かれている〕を5年がかりで改造した新図書館の前で、大勢の町民を前にして、「紳士淑女の皆様、少年少女の皆さん、どうぞご注目下さい」というアナウンスとともに、ファンファーレが鳴らされる。レモンチェロが玄関から出て来ると思いきや、サーチライトは上空を照らし、ギリシャ神殿のペディメント〔正面頂部の平たい三角形〕の下辺に水平に張られたロープの上を、バランスを取るため左手に傘を持ってレモンチェロがゆっくりと中央に向かって歩いてくる(2枚目の写真)。そして、中央まで来ると、ワザとバランスを崩したように見せかけ、ロープから落ちてかろうじて右手でロープを掴み、群衆から悲鳴が上がる。そして、手を離して落下するが、落ちていった先は群集には見えないがトランポリンになっていて、1回バウンドしただけで、マイクの正面にピタリと静止する。群集が一斉に拍手したので、レモンチェロは笑顔になる(3枚目の写真)。そして、「ゲーム制作の第一のルールは、常に一歩先を行くことです」と述べる。
そして、「それでは、史上最高のゲームのプレイヤーを発表します。自分の名前が呼ばれたらステージに上がって下さい」と言う(1枚目の写真)。最初に呼ばれたのは、ミゲル・フェルナンデス、アンドリュー・ペックルマン、ブリジット・ワッジ、ショーン・キーガン、シエラ・ラッセル、ヤスミン・スミス=スナイダー、ケイラ・コーソン、ヘイリー・デイリー、アキミ・ヒューズ、ローズ・ヴェルメット、チャールズ・チルティントン、そして、最後がカイル・キーリー〔太字は、実際にゲームに参加したメンバー〕。最後までハラハラしながら待っていたカイルは、兄2人に抱き着き。父に 「頑張れよ、トラブルメーカー」と言われ、「ありがとう、パパ」と喜び(2枚目の写真)、壇上に駆け上がる。こうした、抽選でゲームに参加するという発想は、『チャーリーとチョコレート工場』から来ているのかも。3枚目の写真は、世界中で販売された板チョコの中に5枚だけ入れられた金色のチケットを獲得してびっくりするチャーリー。レモンチェロの下に12人が並び、群集に向かって笑顔を見せる(4枚目の写真)。
12人は、レモンチェロに連れられて、まず、階段で2階に上がる。そこは普通の図書館のような形に作られている(1枚目の写真)。先頭を歩きながら、レモンチェロは 「警告しておこう。図書館からの脱出は、臆病な子には向いていない。ありったけの精神力と体力を使わないといけない」と普通の声で言った後で、急に振り向くと、「勇気を振り絞るんだ」と厳しい顔で言う。それを見て、全員がびっくりする(2枚目の写真)。レモンチェロが、「始める前に辞める最後のチャンスだよ」。それを聞いて、ブリジット・ワッジとショーン・キーガンが逃げ出す(3枚目の写真、右の矢印が最初に逃げ出したブリジット、左の矢印がそれに続いたショーン)。
ここで、真っ赤な背広に、黒に近い赤の眼鏡をはめた若い女性館長が現われ、1人1人に配布される図書館のカードを手渡そうとして、それぞれの顔写真の入ったカードの最初の1枚を全員に見せる。そして、取り扱い方について注意を始めると、そのカードに自分の顔がついているのを見つけたケイラ・コーソンが、「私のだ!」 と言って勝手に奪い(1枚目の写真、矢印)、カードを指でつつき始めると、「GAME OVER」と表示され、床に四角の穴が開いて下に落ちていく〔あり得ない〕 。床はすぐに閉まるが、彼女は、ペディメントの裏に設けられたアクリルの筒の中から落下し、トランポリンの上に落ちる(2枚目の写真、点線のように落下)。そして、新たに除外されたメンバーとして大きく表示される(3枚目の写真)。このやり方は、『ハンガー・ゲーム』で、12地区から選ばれた男女2人ずつの計24人が、特殊な戦闘地区(森)の中で闘い、死んだ者が空に表示される場面(4枚目の写真)を参考にしている。
女性館長のジンチェンコ博士は、「図書館でパズルを解くと、手がかりにアクセスできるようになります。そして、それらの手がかりは “どうしたら、レモンチェロ氏の図書館からの脱出できるか?” という大きな疑問に対して答えを与えてくれます」と説明しながら、残った9人に図書館カードを配布する(1枚目の写真、矢印)。それが終わると、今度はレモンチェロが、「最初に脱出した子は、子供たちがレモンチェロの本やゲーム、トランプで目にする “顔” となる」と言い、それを聞いたカイル達全員がやる気満々になる(2枚目の写真)。そして、レモンチェロは、金の鍵を取り出し、「この鍵は、図書館にあるすべての本、歴史的遺物、貴重品(実際には管理システム全体)を制御するんだ。存在するのは2つだけ、これと、私の鍵だよ」と言うと、チョッキのポケットから取り出して見せる(3枚目の写真、チョッキのボタンに固定されている)。そして、最初に見せた鍵をジンチェンコに渡し(4枚目の写真、矢印)、不注意で軽率なジンチェンコは、もらったキーを背広の左ポケットにそのまま入れる。
レモンチェロは、9人を引き連れて3階に上って行く。そこは、図書館とは全く違った雰囲気の場所で、2体の奇妙なブロンズ像に挟まれた両開きの扉がある。レモンチェロは、この扉の中について、「本を読むのではなく、本を体験するんだ。遭遇する課題に立ち向かい、謎を解き、手がかりを獲得するんだ」と言う。そして、扉が開き、9人の子供達は中に入って行く。そこは、図書館とは思えない奇妙な場所だった(1枚目の写真)。中央に置いてあったのは、最初の手がかりを与える大きな本(2枚目の写真)。その台には、意味不明のアルファベットが並んでいた(3枚目の写真) 。
ここでも、トビン夫人の半透明のホログラム映像が現われ、「脱出の手がかりを得るには、このコードを解読する必要があります。時間は2分です、始めて」と言って消える。最初に、前向きな発言をしたのはカイルで、「Luigi L. Lemoncelloの文字数は、5,1,10だ」と指摘する〔下段の「;IOHO ; ;R,PMVR;;P」は、5,1,10文字〕。次にアンドリューが、「僕、携帯で “L” を打つ時、(間違えて)いつも “;” を打っちゃうんだ」と言う。それを聞いて、カイルが、「全部の文字が、キーボードの1文字分ズレてるんだ」と、そこに置いてあったタイプライターの “L” と “;” の間に指を置く(1枚目の写真)。それに応じて、アキミがノートに両者を対比して書いてみる(2枚目の写真、後ろ半分)。これで、冒頭の解説に書いたように、「Knowkledge not shared remains unknown. —Luigi L. Lemoncello(共有されていない知識は未知のまま—ルイジ・L・レモンチェロ)」となる。これ自身はヒントでも何でもなく、手掛かりを得るための2分間の知恵比べ。結果として、もう一度ホログラム映像が現われ、「よくやったわね」と言うと、指をパチリと鳴らす。すると、大きな本が勝手にページを飛ばしていき、封筒のあるページで止まる(3枚目の写真)。アキミが封筒を開くと、中から新聞の切り抜きが出て来る。それは、「ザ・アレクサンドリアヴィル・タイムズ」という地元紙の、1968年6月22日の記事で、「とびきり強盗団〔Dandy Bandits〕アレクサンドリアヴィルのゴールドリーフ銀行を襲う」という大見出しの下に、銀行の前に立つ警察署長の写真が掲載されている。掲載された写真が拡大されると、白黒映像に変わり、署長が記者の質問に語り始める。「彼らがどうやって金庫室に入ったかは、謎のままです」(4枚目の写真)。すると、シエラが写真の下の見出しに注目する。なぜかと言えば、6行の見出しの先頭の文字が、すべて太文字になっていたからで(5枚目の写真、黄色の点線枠)、それを縦に読めば、「THEWAY」 すなわち、「The Way」という2つの単語になるからだ。
その時、ケイラが、部屋の隅の天井灯を指差して、「あれトイレかな?」と言い出す。あくどいチャールズは、「EXIT(非常口)」の文字がカイラに見えないよう一歩下がると、「そうだと思うよ」と言って、両手で “どうぞ” と合図する(1枚目の写真)。「EXIT」の文字に気付いた他の子たちは、止めようとするが、カイラはドアを押してしまい(2枚目の写真)、その途端、また床に穴が開き、中に落ちていく。チャールズは、平然とした顔で 「非常口だった。ちゃんと教えるの忘れてた」と言い、明るく輝く「EXIT」の表示の前から立ち去る(3枚目の写真、矢印)。
それを見たカイルは、アキミに 「なんて卑怯な奴なんだ。僕たちチームを組むべきじゃないかな。分かったことも共有できるし。入る?」と訊く。「もちろん」。「よかった」。2人は拳を合わせる(1枚目の写真)。この大きな空間には、4つの扉があるが、そのうち2つが大きく映る。1つは、「CHILDREN」(2枚目の写真)で、もう1つは「FANTASY」(3枚目の写真)〔「CHILDREN」は対象、「FANTASY」と残り2つの扉は内容。なぜ内容で統一しないのだろう? お陰で、前者に登場するのは、ハンプティダンプティ、マザーグース、シャーロット、後者に登場するのは、トロール、天空の巨人、ヘンゼルとグレーテル、東の魔女で、どちらも対象は子供で、内容はファンタジー。ダブってしまう〕。
この空間の一角に、銀行時代の金庫らしい厳重に保護された扉があり、それを見に行こうとしたアンドリューが、後ろからチャールズに突き飛ばされて(1枚目の写真)、床に両手をついて倒れ、その衝撃で眼鏡が吹き飛ぶ。チャールズは金庫の中にお金があるかもしれないと期待し、金庫に向かう。その自分勝手で、他人を傷付けても何とも思わない態度に腹を立てたカイルは、眼鏡を必死で探しているアンドリューに、落ちていた眼鏡を拾って渡してやる(2枚目の写真、上の矢印は眼鏡、下の矢印は後で重要だと分かる物)。一方、頭の悪いチャールズには金庫を開けることができない〔なぜ、こんなバカが12名の中に選ばれたのかが全く分からない。原作のチャールズは意地悪で策士だが、頭の良さがピカ一だった〕。ここで、トビン夫人のホログラム映像が、「HORROR」セクションの扉の前に集まるよう告げる。そして、「この部屋〔今8人がいる広い空間〕を安全地帯と考えて」と言う。アンドリューが 「何から?」と訊くと、「あなた方が直面するすべての難題から」と言う。そして、さらに重要な注意事項として、「覚えておくこと。いいですね、手がかり探すために各セクションには1回しか入れません。さもないと、失格になります」と注意する。しかし、自撮りにしか興味のないヘイリーは、この時も、トビン夫人には背を向けて、話など聞いていない(3枚目の写真、矢印はスマホ)。
一連の話が終わると、ミゲルが手を挙げ、「お願い、僕に一番で行かせて。僕、学校の図書館で3,000時間くらいコミュニティサービスしてきたから」と願い出る。それを聞いたトビン夫人は、認めるに十分な理由だとみなし、喜んだミゲルは図書館カードをドアの開閉装置に差し込んで滑らせ、開いたドアに1人で入って行く(1枚目の写真、閉まるところ)。扉の向こうは19世紀風の狭い路地となっている。そこを歩いて行くミゲルの様子は、7人がいる空間でも映像として確認できる(2枚目の写真)。再度現われたトビン夫人は、エドガー・アラン・ポーの短編小説 『The Tell-Tale Heart(告げ口心臓)』を2分で探せば手がかりが得られると、ミゲルに言う(3枚目の写真)。
その直後、19世紀風の服装の30歳くらいの紳士が現われ、ミゲルに、「失礼、今夜は満月か知っていますか?」と尋ねる。ミゲルが空を見ると満月だったので、「なぜ訊くの?」と問い返すと、唸り声が聞こえ、紳士のいた場所には、狼男が歯を剥いていた(1枚目の写真)。ミゲルは悲鳴を上げて逃げ出す。コントロール・ルームでジンチェンコが見ていると、ミゲルの心拍数は125に上がっている。隠れているつもりのミゲルの横に、今度はドラキュラが出現し(2枚目の写真)、「おやおや、血が騒いでるな」と話しかける。ミゲルは再度、悲鳴を上げて逃げ出す。逃げた先で本は見つけたが、今度は、フランケンシュタインが襲ってくる。逃げても反対側にはドラキュラがいるし、狼男も男も近づいてくる。ミゲルは、「こんなの止める。僕は図書館員になれればいいんだ」と言い、自ら穴を開けて立ち去る。その様子を、映像でずっと見ていたローズも、「もうこれ以上は無理」と言い、図書館カードを半分に折り(3枚目の写真)、穴から落ちていなくなる。これで、挑戦者は12人から6人に半減した。
2人が抜けた状況を見て、カイルはアキミとチームを組んだことを公表する。それに対抗して、チャールズとヘイリーはチームを組み、そこに無理矢理アンドリューを引っ張り込む。残ったシエラはカイルが引き取り、これで3人対3人の2つのチームが出来上がる(1枚目の写真)。前者は結束力が固く、後者はバラバラ。チャールズは、「CHILDREN」を子供用と解釈し、「これなら簡単さ」と言い、2人を引き連れて扉を開けて入って行く(2枚目の写真)。カイルは、「FANTASY」、「SCIENCE」、「CLASSIC」と言うが、どの映像を見ても、空間の両側にドアは2つずつしかなく、「SCIENCE」は存在しない〔適当に名前を付けてたくさんあるように見せかけた〕。シエラの得意なのは文学なので、彼女の希望を生かし、3人は 「CLASSIC」セクションの扉を開けて入って行く(3枚目の写真)。
映画では、2つのチームについて、何度も交互に紹介されるが、ここでは、まず、「CHILDREN」セクションに入って行ったチャールズ・チルティントンのチームのその後について紹介する。扉をくぐると、そこにあったのは、図書館の中の1室ではなく、広大な自然の農園〔そんなことは現代の科学ではあり得ないので、これは原作からの異端な逸脱〕。3人は野原を歩いて農家の方に向かう(1枚目の写真)。すると、いつも通りトビン夫人のホログラム映像が現われ、4分でハンプティダンプティを元通りにするという、子供でもできる簡単な問題を出す。それを聞いたチャールズは、「僕をからかってるの? ガキの遊びじゃん」と言う(2枚目の写真、ヘイリーはまた自撮りを始め、アンドリューはガチョウの雛を抱いている)。トビン夫人は、チャールズの傲慢な態度は無視し、アンドリューに ガチョウの雛に触るとマザーグースを怒らせると注意するが、雛を離すのが遅れてマザーグースに追いかけられ、アンドリューは納屋に逃げ込む。そこには、納屋に住む蜘蛛のシャーロットと子豚のウィルバーがいて、アンドリューを助けてくれる(3枚目の写真)。一方、チャールズは、卵型が僅か4つに割れただけのハンプティダンプティをあっという間にくっつけ〔いくら何でも簡単すぎる〕、脱出の手がかりもすぐに手に入る(4枚目の写真、矢印)。
次が、「CLASSIC」セクションに入っていったカイル・キーリーのチーム。こちらの方は、不平等極まる難しさ。トビン夫人は、僅か2分で 「You must retrieve a very famous book」と言う。“retrieve” には2つの意味があるが、普通に使われる “回収する” だとしたら、そんなことは不可能。だから、“検索する” という方の意味を、“とっても有名な本を見つける” という風に解釈すべきであろう。というのも、3人の前に1枚目の写真のようなカードが投影されたからだ〔2分で謎を解き、その本がどこにあるか探すことまでは絶対無理〕。一旦は絶望したカイルだが、彼はすぐに絵を英語で読むことに気付き、そのとき拡大して表示されたのが、2枚目の写真〔1枚目の写真と全く違う!!〕。そして、カイルは右上のカードに描かれた “三色旗” を指して、「It's the official flag of Rome(ローマの公式旗だ)」と言う。イタリアの三色旗を使っているのでそれらしく見えるが、ローアの公式旗は右に示すように全くの別物! その右下のカードが “+O” なので、カイルは 「Rome に o を足すとRomeoだ」と言う。すると、アキミは “三色旗” の左の “手” とその左下の “-H” を見て、「hand よね。hand から hを引くと and だわ」と言い、この2つから、探すべき本がシェイクスピアの『Romeo and Juliet(ロミオとジュリエット)』だと分かる。この場面には、大きな矛盾がある。1枚目の写真〔1秒半しか映らない〕は、2枚目と似ているように見えて、こうしてじっくり比較するとカードの位置が違い、1枚目からは 『Romeo and』 など見えて来ない〔単なる編集ミスだが、いくらTV映画でも もっと真剣に製作すべきだ〕。トビン夫人から選んだ本が正解だと言われたので、今度は本を探して持って来なくてはいけない。しかし、2人のいる場所は、下に3階分(3枚目の写真)、上に11~12階分の高さのある塔の内部のような場所で、a)ここも野原と同じであり得ない仮想空間、b)図書番号もなして数万冊の中からどうやって見つける? c)そもそも、階段もエレヴェーターもないのに、どうやってアクセスする? という問題を抱えている。しかし、なぜか3人は本がどこにあるか知っているようで、それはかなり上の方にある。そして、手近にある本の中に『hard hovers(頑丈で空を飛ぶ)』という題名のものが混じっていたので、カイルがそれに乗ってみると、魔法のように浮かび上がる(4枚目の写真)〔これも、現在の技術では不可能〕。高所恐怖症のシエラは、『hard hovers』を両手で掴んでぶら下がり、垂直に上昇して『Romeo and Juliet』のある棚まで上がって行き、片手で本を掴んだシエラを、本に乗ったカイラとアキミがサポートして無事着地。本から出て来た封筒の中には、先の新聞より2日後の6月24日付けの記事が入っている。大見出しは、「とびきり強盗団の謎 さらに深まる」というもの。すでに最初の手がかりで慣れているので、その下の太字を見ると、「ISTHEWAY」、すなわち、「IS THE WAY」だと分かる(5枚目の写真、黄色の点線枠)。最後に、新聞の写真の部分がここでも白黒映像に変わり、12歳のレモンチェロが、記者に対し、「昨夜、図書館で本を読んでいたら、何か音がした。僕は、本に夢中になってたから、無視した。でも、読み終えた後、床に、ゴールドリーフ銀行の100ドル札の束が落ちてたんだ」と話す(6枚目の写真)〔強盗は、図書館を経由して銀行に潜入した〕。
「CLASSIC」セクションから意気揚々と出て来たカイルは、「僕らの脱出は、とびきり強盗団と関係があるハズだ」と言うが、何も分かっていないチャールズは一切の情報共有を否定する。しかも、チャールズが封筒を取り出した時には自撮りで夢中だったヘイリーが、「手がかり、見せてよ。さっきは見る機会なかったから」と言うと、同じチームにもかかわらず、「そりゃ、君が悪いんだ。見たけりゃ、僕が見つけた時、そこにいるべきだったんだ」と拒否する。「携帯の電波を探してたの。見せてよ」。チャールズは 「うっかり CHILDRENセクションに忘れてきちゃった」と嘘をつく。ヘイリーは 「取りに行って来るわ」と言うと、カイリーが止めるのを無視し、図書館カードで扉を開けようとする(1枚目の写真、矢印)。すると、すぐにトビン夫人が現われ 「同じ部屋に二度入ることはできません。失格です」と宣言する。ヘイリーが 「そんなの聞いてないわ」と言うと(2枚目の写真)、「私が話している時に自撮りなんかするからです」と言われてしまい、床下に消える。一方、コントロール・ルームのモニターには、「TEAM 2」のヘイリーに✖が付けられる(3枚目の写真)。
チャールズは、アンドリューを連れて、「TEAM 1」の3人から離れ、壁の角から3人の様子をこっそりと窺う。カイルは、さっきはシエラが希望するセクションに行ったので、今度はアキミに選ばせる。アキミは「FANTASY」セクションを選ぶ。チャールズは、3人の後をつけて行き、成果だけ奪おうと考える。それを聞いたアンドリューが、「待ってよ、そんなのズルじゃない?」と言っても、話をはぐらかす。その時、そこにジンチェンコがやって来る。いきなり2人と遭遇してびっくりしたジンチェンコとすれ違う際(1枚目の写真)、あとで判明することだが、チャールズは赤い背広のポケットから金の鍵を盗み出す。カイルたちが「FANTASY」セクションの扉を開けて中に入っていったので(2枚目の写真)、チャールズたちは、扉が閉まる直前に滑り込む(3枚目の写真)。
「FANTASY」セクションの中は 一面の森。ただし 「CHILDREN」セクションの時のような本当の自然ではなく、「HORROR」セクションの時と同じ、スタジオ内に作られた人工の森。3人が少し歩くと、石の丸い橋がある。すると、トビン夫人が現われ、脱出のヒントは、レモンチェロ橋を渡ることだと言って消える。橋を渡るだけなんて簡単過ぎると思っていると、脇からトロールが現われ、ゲームに勝ったら渡ってもいいと言う(1枚目の写真)。そして、原作と同じ、Luigi L. Lemoncelloのアルファベット16文字を、4×4のマスに並べたボードが現われる。そして、60秒以内に、16文字から16の単語を言うよう求める。アキミ:「Lemon(レモン)」、シエラ:「Cello(チェロ)」(2枚目の写真)。カイル:「Lion(ライオン)」。シエラ:「Eon(無限の時間)」。アキミ:「Mole(モグラ)」。シエラ:「Leg(脚)、Elm(ニレの木)」。カイル:「Oil(油)、One(1)」。アキミ:「Cell(細胞)」。ここで、すらすら回答はストップ。トロールは 「まだ10語だよ」と言う。ようやく、カイルが「Mole」と言うが、もうアキミが言ったのでダメ。そうした状況を、チャールズは 木の穴からこっそり見ている(3枚目の写真)。一方、アンドリューは地面に落ちていたパンのかけら〔帰り道が見つかるよう、ヘンゼルの落としていったもの〕を食べ始める。その時、ようやく、カイル:「Lice(シラミ)」、アキミ:「Glen(峡谷)」と追加。この時点で残り15秒。トロールが、カウントダウンを初め、「5、4、3、2」まで来た時、アキミが一気に 「Go(行く)、Long(長い)、Melon(メロン)、Colonel(大佐)」と一気に16まで行き、レモンチェロ橋を渡る許可が出る。
3人が喜んで橋を渡っていなくなり、チャールズが口惜しがっていると、そこにヘンゼルとグレーテルが現われる。そして、「パンくず見なかった? 妹と僕は道に迷ってしまった」と声をかける。ヤバいと思ったチャールズは、2人を追い払い、何とかしようと振り向くと、木の陰に青く光る鍵穴がある。そこで、さっき盗んだ金の鍵を取り出し、鍵穴に差し込む(1枚目の写真、矢印)。アンドリューが、「どうやって手に入れたの?」と訊くと、さっきすれ違った際に、借りただけだと話す。鍵を差し込んだことで開いた操作パネルには、上から、「SHRINK BEANSTALK(豆の木を縮小)」、「ADD WITCH(魔女を追加)」、「REPROGRAM TROLL(トロールを再プログラム)」、「IMPORT GIANT(巨人を読み込み)」の4つのボタンがあり、チャールズは 「魔女を追加」を押し、表示された 「ACTIVATE(作動)」を押すと、「作動済」の表示が出る。その頃、ジンチェンコは金の鍵が必要となり、鍵がなくなっていることにようやく気付く。さらに、同じ頃、アキミは豆の木の隙間から封筒を見つけ出す(2枚目の写真、矢印)。チャールズは 「豆の木を縮小」も「作動済」にし、それまで天まで伸びていた豆の木が一瞬にして消え、代わりに1粒の豆になる。チャールズの愚かさに頭に来たアンドリューが、チャールズに体ごとぶつかり、怒ったチャールズは地面に落ちていたアンドリューの水筒を投げるが、それが操作パネルにぶつかり、火花が飛び散って装置が壊れる(3枚目の写真)。この破壊行為は 「FANTASY」セクションに留まらず、全システムを狂わせてしまう〔システムの堅牢性が低く過ぎる〕。
コントロール・ルームでは、「SYSTEM FAILURE(システムダウン)」の警報が鳴り、各セクションの扉が一斉に開き、中から、ドラキュラ、ヘンゼルとグレーテル、マザーグース、フランケンシュタイン、狼男、空飛ぶ本の順に現われ、真っ赤な服のジンチェンコを恐怖に落とし入れる(1枚目の写真)〔「SCIENCE」セクションが存在するという設定なら、このシーンに、5・6番目の扉を映すべきだし、ロボットや忍者(後から、6番目が名前だけ出て来る)くらい登場させるべきで、経費節減のための怠慢としか言いようがない〕。ジンチェンコは、向かってきたフランケンシュタインに追われて逃げ出し、「FANTASY」セクションでは、チャールズが「追加」を指示した魔女が箒に乗って襲ってきたので、カイル達3人は扉から逃げ出す。しかし、制約がなくなったので、魔女も扉から飛び出し、3人は必死に逃げる(2枚目の写真、矢印は魔女)。先に扉から逃げ出したチャールズとアンドリューは、どの怪物にも見つからないよう、壁際のイスの後ろに隠れている。アンドリューが 「君のせいだ」と責めると、チャールズは 「君の愚かな良心があんなことしなきゃ、カイルのチームを妨害できたのに」と、逆に非難する。その時、罰が当たり、ヘンゼルとグレーテルが放った矢が近くの本棚の本に突き刺さる〔この映画のヘンゼルとグレーテルは、童話(7歳くらい)と違って大人。童話ではもちろん弓なんか使わない。2013年に公開された映画『ヘンゼルとグレーテル』(童話から15年後の “銃で魔女狩りをする兄妹”)を思わせる〕。2人は、ヘンゼルとグレーテルに追われて逃げ惑う。一方、何が起きたのかよく理解できていない3人の前に、フランケンシュタインに追いかけられたジンチェンコが、早く逃げるよう指示する。そこで、3人は出口に向かうが扉は閉まっていて開かない。そこに、チャールズとアンドリューがやって来たので、矢が飛んできて扉に刺さる(3枚目の写真、矢印)。ヘンゼルとグレーテルが、5人に向かって弓に矢をつがえ、グレーテルが 「(この世と)さよならを言う時ね」と言うと、トロールが現われ、「あいつらを傷付けるな」と命じたので5人はホッとする。しかし、その直後にトロールが斧を取り出し、「それは、俺の仕事だ」と言ったので、5人は悲鳴を上げて逃げ出す。
5人は、誰にも見つからない場所に隠れると、アキミが豆の木で見つけた封筒の中の新聞を取り出す。その大見出しは 「とびきり強盗団の謎解明!」。見出しの下の太字は僅か2文字の「IN」だった(1枚目の写真、黄色の点線枠)。そして、白黒の映像が始まる。そこでは、警官が 「1ヶ月かかりましたが、誰も解けないと思っていた謎が解けました。悪名高いレオポルドが率いたと推測される盗賊団は、秘密のトンネルを使って銀行の換気システムから侵入したのです。その入口は、格子の後ろに隠れて、ここにありました」(2枚目の写真、矢印)。原作と大きく違い、ここで、これまでの自分の卑怯な行為の数々を改心したチャールズが、ハンプトンダンプトンで見つけた封筒を渡す(3枚目の写真)。映画で映ったのは、太字の部分「OUT」だけ(4枚目の写真、黄色の点線枠)。これで、今まで集めた 「THE WAY」「IS THE WAY」「IN」「OUT」 を意味が通じるように並び替えると、「THE WAY OUT IS THE WAY IN(出口は入口だ)」となる(5枚目の写真)。つまり、5人にとっての “レモンチェロ図書館からの脱出口=出口” は “強盗団が侵入した入口=格子の付いた換気口” ということになる。下の2枚目の白黒映像の矢印の格子のことを覚えていたアンドリューは、「入口、知ってる」と言い出し、4人を喜ばせる〔カイルが、アンドリューの眼鏡を拾って渡してやった時の写真(11節前の上から2枚目)の下側の矢印の格子と比較されたし〕。
5人が安全な場所から出ると、すぐにカイルが創造した翼竜Scaradactylに追われる(1枚目の写真)〔そんなことはあり得ない〕。5人のうちカイルのチーム3人は 「CHILDREN」セクションに逃げ込み、チャールズとアンドリューは 「HORROR」セクションに逃げ込む。アキミとシエラは、納屋に入ってシャーロットの蜘蛛の巣に捕らわれる。それ以上、大変なことにはならなかったハズだが、蜘蛛のシャーロットは、マザーグースが 「MARTIAL ARTS(格闘技)」セクション〔「SCIENCE」セクションと同じ、一度も映らないセクション〕で忍者の装備を取って来たと警告する。カイル達が戻って来ると、チャールズとアンドリューがいつの間にか「HORROR」セクションから出て来て、出口の “格子” の見える位置に隠れている。そして、その前を魔女が行ったり来たりしている。アキミは魔女の弱点は水だと言い〔『オズの魔法使い』では、ドロシーが魔女に水をかけると、魔女はどんどん溶けて死んでしまう〕、さっき納屋から取って来た革の水筒を持ってカイルと一緒に出ていくと、魔女に水をかけ(2枚目の写真、矢印)、魔女は逃げ去る。5人は格子を外し、順番に中に入って行く(3枚目の写真)。
小さな換気口の先は広い地下通路になっていて、5人はそこを走って出口に向かう(1枚目の写真)。その後から、ヘンゼルとグレーテルと「HORROR」セクションの3怪物が追って行く。5人は点検に来たレモンチェロと遭遇し、レモンチェロは、「とびきり強盗団が銀行へのトンネルの爆破に使ったダイナマイト」〔銀行強盗にダイナマイトなんか使ったら、音と振動で気付かれると思うのだが…〕の残りを使って、怪物ども(2枚目の写真)を爆破する(3枚目の写真、矢印はダイナマイトの起爆装置)。怪物どもは、天井から落ちて来た石に埋まり(4枚目の写真)、天井には大きな穴が開く
しばらくすると、開いた穴からジンチェンコが姿を見せる。チャールズは金の鍵を盗んだことを謝り 「僕を失格にしないで」と頼む。ヘイリーを簡単に失格にしたくせに、ジンチェンコはチャールズを許す〔原作では失格になったのに、なぜ?〕。ジンチェンコは、1人で頑張って金の鍵を見つけたことを自慢し、システムが正常に戻ったと言うが、その途端に、翼竜Scaradactylに突き飛ばされて地下の通路に落下する。レモンチェロは、元々システムになかった怪獣の存在を不思議がるが、カイルは 「Scaradactylだからだよ。僕が考えたハイブリッドの恐竜」と言う〔カイルがノートに描いた絵が なぜ実物として現れたのかについての説明には全くなっていない〕。書庫にいるScaradactylが、レモンチェロに向かって大きな嘴を開く(1枚目の写真)。危機感を抱いたレモンチェロは、子供達に出口に向かって逃げるよう指示する。カイルは 「Scaradactylを創ったのは僕だ。これは僕の責任だ」と言うが(2枚目の写真)、レモンチェロは問答無用で行かせる。カイルは 「Scaradactylの爪と嘴に気をつけて。弱点はしっぽだよ」と教え、4人に合流する。5人が向かった先にあったのは、4つの “L” の字が表示された鉄の扉。扉に付いた取っ手は、ロックされていて動かない(3枚目の写真)。すると、トビン夫人が現われ 「脱出するには、このドアを開ける単語を入れないといけません。ヒントは、“一度これを学べば、あなたは永遠に自由になれる”。4分です」と言って消える。
カイルは、目の前の扉のことより、さっきレモンチェロに任せてきたScaradactylの方が気になって仕方がない(1枚目の写真)。そこで、何とかしなきゃと、扉の両側にあった赤い風船をすべて手に持つと、4人に 「僕のヒーローを助けに行く」と言って戻って行く。爆発で開いた穴の下では、穴から下に降りたScaradactylが、レモンチェロとジンチェンコに襲いかかろうとしていた。それを見たカイルは 「やめろ〔Not so fast〕!」とScaradactylに怒鳴りつける。Scaradactylがカイルの方を向くと、カイルは、“闘牛士のように赤い風船で注意を引きつつ”、Scaradactylのしっぽに赤い風船のロープの先端を縛り付ける(2枚目の写真、矢印)。そして、風船を穴に向かって投げると、Scaradactylはしっぽを上にして穴の中に引っ張り上げられ、なぜか消滅する〔なぜ恐竜が現われ、なぜ赤い風船に弱く、なぜ消えたのか? もうメチャメチャだ〕。そして、カイルは、レモンチェロ、ジンチェンコと一緒に扉まで行くと、アンドリューが 「DREAM(夢)はどう?」 と言い、チャールズが 「DREAMは5文字だ。読み方くらい覚えろよ〔Learn how to read〕」と言っている。それを聞いたカイルは、「READ、それで行こう。考えてみろよ。あらゆるパズルを僕らが解けたのは、本や詩や物語を読んできたからだ」と言う(3枚目の写真)。そこで、4つの四角に「READ」と入れる(4枚目の写真)。時間ぎりぎりで間に合って扉は開く 。
5人は、梯子を上って図書館の入口の左側から次々と現われ、見守っていた家族から拍手を浴びる。レモンチェロの指示で最後に梯子を上がったのはカイルだった。レモンチェロは、真っ黒な汚い姿から、冒頭の派手な姿に一瞬で変わると〔あり得ない〕、扉の正面に姿を現らわれて 5人と並ぶ。レモンチェロは 「君たちが直面した障害は私が想像していたよりもずっと大きなものだったが、君たちはチームとして一緒になって立ち向かった。だから、君たち全員を優勝者と宣言できることをとても嬉しく思う」と、5人を讃える(1枚目の写真)。5人はステージから降り、それぞれの家族と抱き合って喜ぶ。レモンチェロは、カイルの家族のところにやって来ると、「カイル、私はこれまでいろんなゲームを作ってきたが、風船で倒せるScaradactylのようなものは絶対思いつかないだろう。あれは天才的だった。それに言うまでもなく、君は素晴らしいリーダーシップを見せてくれた。だから、うちの図書館で夏の間バイトをしてくれないか? もちろん、ご両親が許可してくれることが前提だが」と言う。カイルの両親は大賛成。カイルも 「最高にクールだよ!」と大喜び(2枚目の写真)。「素晴らしい。来週から始めてもらおう。それまで、これを私のために保管しておいてくれないか?」。そう言うと、レモンチェロは チョッキに入れてあった金の鍵を取り出すと、カイルに渡す(3枚目の写真、矢印)。カイルはそれを見て感激する(4枚目の写真)。レモンチェロは 「最後に一つだけ。常に一歩先を行くことを忘れずに」と言うと、一瞬で姿が消え、代わりに赤い風船が1つ浮いている〔この部分、最後の言葉と、風船との関係が全く分からない。原作のラストでカイルがレモンチェロに 「誕生日パーティーでお会いましょう」と別れを告げると、レモンチェロは 「ああ、そうだ、知ってるかな、カイル?」と訊く。「何を?」。「風船があるかもしれない!」。ひょっとして、このラストをもじって、愛読者のために風船を出したのかも?〕。