アメリカ映画 (1993)
小さい頃母親に捨てられ、以来児童保護担当のドワイトに苦労をかけて来た反抗的なジェシーは、それまでの経過は不明だが、12歳になった時、それまでいた場所からまた逃げ出し、似たような仲間と路上生活を送りつつ、一種の物乞いや、盗み食いで命をつないできた。しかし、パトカーに追われてノースウェスト・アドベンチャー・パークの地下室に逃げ込み、赤いスプレーで悪戯書きをしている時、マリンランドのプールウィンドウの向こうに、巨大なシャチが現われ、びっくりする。それが、ジェシーとウィリーの出会いだった。ジェシーは、すぐに警官に捕まり、ドワイトの努力で、プールウィンドウの悪戯書きの除去が科せられただけで済み、近くのグリーンウッド家に里子として引き取られた。そうした環境が嫌いで、新しい里親に馴染もうとしないジェシーだったが、プールウィンドウの悪戯書きの除去作業は、シャチのウィリーと会えるいい機会でもあった。一方、シャチのウィリーは、近くの海でアドベンチャー・パークの持ち主の画策で漁船に捕獲されて以来、家族と引き離された悲しみのため、マリンランドの関係者の誰とも馴染もうとせず、孤独に暮らしてきた。似たような環境の1人と1頭が、心を通い合い、無二の親友となるのがこの映画の最大の魅力。2人がプール・サイドで見せる愛情のこもった仕草は、観ていて気持ちがいい。ウィリー役のシャチには、後述するように、メキシコシティにあるレイノ・アドベンチャー・水生動物アリーナのシャチ、ケイコが使われたが、ケイコの健康を害するようなシーンには下の写真のアニマトロニクス〔動物の形と動きを精巧に再現するロボット〕が使われた。その後も、結構ハラハラさせるシーンが続き、感動的な別れのシーンで幕を閉じる。
監督サイモン・ブランドは、2023年6月12日の『The Guardian』のインタビューで、最終場面でのジャンプについて、初めて撮影方法を明らかにした。インタビューの中で、面白い箇所を3つ紹介しよう。
①最初は、映画ではなく、撮影現場での話。「私は撮影現場に来ると、みんなに『おはよう』と挨拶する。でも、私がケイコに挨拶しないと、彼は吻〔くちさき〕から水を吹きかけるんだ。ところで、どうやってシャチに挨拶するか知ってる? 拳〔こぶし〕で背中を叩くだけじゃ不十分で、背中にドシンと飛び乗らないといけない。ケイコは舌をこすられるのも大好きだったから、口を開けると、私たちは彼の舌を勢いよくこすってやった。日課だったね」。
②次は、ウィリーのショーの場面について。「ジェイソンは動物が大好きで、ウィリーを演じたシャチ、ケイコと素晴らしい関係を築いた。ある時、水中カメラマンが滑って足を骨折し、雰囲気は最悪となり、ケイコも落ち込んでしまった。翌日、“マリーナのオーナーの前でジェシーがウィリーにショーをさせる場面” を撮影していたが、ケイコはまだ落ち込んでいて、プールを一周し、飛び出してコンクリートの床に滑り込むはずだったが、トレーナーたちにはそれをさせることができなかった。私は 『ケイコが、ジェイソンのためにそれをやるか見てみよう』と言った。そして、信じられないことに、ケイコはそれをやってみせた。ケイコは小さなジェイソンが大好きだったのだ」。
③最後が、監督が初めて明かした秘話。「ラストのシーンを、どうやって撮影するかについて、何度も会議を重ねた。結局、撮影は、小さな港で満潮時に行った。ロケットランチャーを作り、その上にアニマトロニクスのケイコを乗せた(上 の写真)。ケイコが水から飛び出した直後(下の写真=映画の一場面)、CGI がそれを引き継いだ。音、感情、画像が一体となって観客を立ち上がらせた」。
ケイコの簡単な生涯を、「World Animal Protection US」のウィリーに関するサイト(https://www.worldanimalprotection.us/latest/blogs/story-keiko-first-captive-orca-returned-wild/)に準じて解説しておこう。1頭の雄のシャチが1979年、2歳の時、アイスランドで捕獲された。シャチはカナダのオンタリオ州のMarinelandに移され、その後1985年にメキシコシティにあるReino Aventuraに売却された。メキシコで、シャチは “lucky one” を意味する日本語ケイコ〔雄なのに慶子? せめて慶太とか?〕と名付けられ〔BBC、CNNなど多くのニュースメディアにワン・パターンでそう書いてある。それが女性名だと指摘したものも1つあるが、理由は書かれていない〕、定期的に観客の前でショーを行い、人工海水で塩素処理された温かいイルカ用の水槽〔シャチには不適合〕で暮らしていた。ワーナー・ブラザーズがケイコを『フリー・ウィリー』の主役として雇い、1992年に撮影を開始した。映画はヒットしたが、ケイコの健康状態は悪化し〔胃潰瘍、皮膚の突起物〕、深刻な低体重だった。映画のエンドロールに、商業捕鯨から鯨を救うためのフリーダイヤルの電話番号を表示したため〔DVDには入っていない〕、30万以上の人々が鯨ではなくケイコの解放を求める電話をかけた。ワーナー・ブラザーズとReino Aventuraは、この抗議に応えてケイコを引退させることに同意した。フリー・ウィリー・ケイコ財団が設立され、ケイコをアイスランドに戻す計画が開始された。ケイコは1996年にオレゴン州のCoast Aquariumに到着し、生きた魚を食べ、海水の入った囲いの中で暮らし、体重は2,000ポンド〔907kg〕増えた。この間、100万人を超える人々がケイコを見に来たので、収益性を考え、Coast Aquariumは手放すのを嫌がったが、交渉を重ね、1998年に飛行機でアイスランドに運ばれ、アイスランド最南端にあるヴェストマンナ諸島〔Vestmannaeyjar〕最大の町Vestmannaeyjabærの近くにあるKlettsvik湾に設けられた海中飼育場に入れられた。そこで、ケイコは、生きた魚を捕まえる方法を学び、飼育場を離れて “海を泳ぐ” 機会も与えられた。その後 3 年間、ケイコは生きた魚を捕まえたり、他のシャチと交流したりする姿が見られたが、交流は長く続かなかった。2002年、Humane Societyがプロジェクトを引き継ぐと、それまでの方針を180度変え、”愛のむち” の規約を導入した。彼らはケイコに話しかけるのを止め、目を合わせないようにし、ケイコを自立させようとした。しかし、これは失敗し、ケイコを混乱させてしまった。2002 年 7 月、ケイコは突然いなくなり、2ヶ月後に、800マイル〔1287km〕以上離れたノルウェーで発見された。人々がケイコの存在を確認すると、ケイコはすぐに以前のように、人間との接触を求めた。ケイコは人間に慣れ過ぎていたため、野生に戻すことは不可能だと判明した。ケイコは、ノルウェーのフィヨルド地帯の最北部にあるTaknes湾で餌を与えられながら暮らし、2003年12月、肺炎で死亡した。右の写真は、子供達が石を持ち寄って作った「Keiko's Memorial Cairn(ケイコ記念ケルン)」。
主役のジェシー役を演じたのは、Jason James Richter(ジェイソン・ジェームズ・リクター)。1980年1月29日生まれなので、撮影時12歳〔映画の設定と同じ〕。『フリー・ウィリー』が 映画初出演。そのあと、2つの映画に脇役と主役で出た後、『フリー・ウィリー2』で再びジェシーを演じる。そして、TVに出た後、『フリー・ウィリー3』で17歳になったジェシーを演じる。その後もずっと映画に出演を続け、現在に至っている。『フリー・ウィリー』では、「Young Artist Awards」の主演子役賞を受賞している。
あらすじ
映画の冒頭、2分弱にわたり、海を勇壮に泳ぐ4頭のシャチ〔オルカは英語から来た別称〕の親子の姿が映される(1枚目の写真)〔背びれは何れも垂直〕。ところが、その前に2隻の漁船が立ち塞がる。そして、幅があって長い網を双方の漁船からモーターボートで張り出し、シャチを囲むように円形を作っていく。そして、2台のモーターボートが交差すると、円形は閉じられ、中に逃げ遅れた1頭が取り残される(2枚目の写真、矢印)。網の外側にいる両親は、網の中に入ってしまった子供のシャチをどうすることもできない(3枚目の写真)。因みに、ミシガン州の「動物 -法律と歴史- センター」のサイト(https://www.animallaw.info/)には、「合衆国は1989年以来、野生のシャチの捕獲許可証を発行していない」と書いてある。映画の撮影は、1992年なので、映画の中のシャチ、ウィリーは少なくとも3年以上狭い水族館に飼われていたことになる〔ウィリー役のケイコ(Keiko)は、1979年にアイスランドで捕獲され、1985年メキシコシティのReino Aventura aquatic arenaに連れて来られた〕。
ここで場面は一転し、アメリカのどこか架空の町の中央広場で、12歳のジェシーが、中年の女性に 「すみません。ママったら、仕事に行く途中で僕を車から降ろした時、バス代くれるの忘れちゃって。お金貸してもらえません?」と頼む(1枚目の写真)。女性は、相手がちゃんとした子供だったので、ハンドバッグから1ドル札を出してジェシーに渡し、ジェシーは 「ありがとう、奥さん、よい一日を」と背中に向かって声をかける。一方、より年上で、少し汚くて不良っぽいペリーが、中年の男性に 「家に帰らないと。1ドル貸して」と声をかけると、「失せろ」と言われる。次にジェシーが20代の黒人女性に 「友だちと僕、自然史博物館でお金を使い果たしちゃったんです。フェリーに乗らないと家に帰れないので、助けていただけません?」と頼むと、女性は 「いいわよ」と言ってハンドバッグを開ける。行き場のない4人の子〔ジェシーとペリーと白人の女の子と黒人の男の子〕がこの広場で集めたお金はジェシーの2ドルを除けば、コイン数枚ずつだけ。ジェシーは 「お腹が空いた」と言い、オープンテラスで食べていた客が、食べ残して席を立ったのを見ると、そのテーブルまで走って行き、残った食べ物をパン籠に入れ(2枚目の写真)、柵を越えて逃げる。次に4人はケータリング業者の店の前に停めたバンから、50×50cmくらいの結婚24周年のお祝いケーキを盗み出す。そして、暗くなってひと気のない場所に行くと、みんなでケーキを食べる(3枚目の写真)。
その時、そこにパトカーが入って来たので、4人はケーキを放り出して逃げ出す(1枚目の写真、矢印はパトカー)。ジェシーとペリーは右の方に逃げ、逃げ込んだ先はマリンランドのプールウィンドウへの裏口だった。悪質なペリーは、赤いスプレーを見つけるとすぐに悪戯書きを始め、それを見たジェシーも無色のスプレーをあちこち振りかける。しばらくすると、ペリーが入って行った部屋から変な音が聞こえてくる。「ペリー?」と呼んでも返事がないので、ジェシーが中に入っていくと、ガラス越しに何かが巨大な口を “ガッ” と開けたので逃げ出す。しかし、その後も、呼ぶような声がしたので振り返ると、プールウィンドウの向こうに巨大なシャチがいたので、びっくりして見とれる(2枚目の写真)〔雷が光って明るく見える。体長6.7m〕。すると、そこに警官が踏み込んできたので、ジェシーは必死に外に逃げるが、すぐに取り押さえられる(3枚目の写真)〔雷雨なのでずぶ濡れ〕。
児童保護担当のドワイトは、ジェシーを警察から引き取って来ると 「不法侵入、故意による器物損壊、公共物汚損、公務執行妨害」と罪状を挙げ 「他に何かあるか?」と訊く。ジェシーは 「銀行強盗も幾つか」と冗談を言うが、ドワイトは取り合わず 「逃げ出してから3日目で良かった」と言い、ジェシーは 「僕がいなくなって寂しかった、ドワイト?」と減らず口を叩く。「ペリーも一緒だったのか?」と問いには、「ペリーって誰?」と答え、ドワイトは 「とぼけるな。君が面倒に巻き込まれないよう、私は警察やアドベンチャー・パークと45 分も話したんだ。お陰で、少年裁判所に行かずに済んだ。保護観察中に、ノースウェスト・アドベンチャー・パークの落書きを消すだけでいい」と、寛大な措置で済ませたことを強調する。それにも関わらず、ジェシーが 「なんで掃除なんか?」と言ったので、ドワイトは 「君にはうんざりだ。もう、さよならしてもいいんだ。そうすりゃ、君は青少年局の管轄となり、少年裁判所が判断し、少年拘置所に入れられるだろう」と少し脅した後で、「君の今後の処遇は変わっていない。グリーンウッド夫妻は、今回の件を気にしていない」と話す(1枚目の写真)〔ジェシーのこれまでの状況が全く説明されていない。因みに、アメリカには孤児院は存在せず、孤児に対する支援は里親制度(foster care)が基本だが、その他の選択肢として、①グループホーム(group home)、②居住型治療センター(residential treatment center)、③寄宿学校(modern boarding school)がある。もし、ジェシーが別の里親の元にいて、3日離れただけなら里親の元に戻されるのが普通だし、ドワイトが新しい里親グリーンウッド夫妻のことを持ち出すことはない。ということは、①②③の何れかにいたと思われる。①は、里親制度に適さない子供達が滞在できるホームで、カウンセリング、個別指導、健康管理などのサービスが提供される、②は、問題児や非行少年で里親やグループホームに留まることができない子供達のための居住型カウンセリングセンターなので、ジェシーは恐らく①にいたのであろう〕。そして、ドワイトはジェシーを車に乗せるとグリーンウッド夫妻の家まで連れて行く。ジェシーの到着を待っていた自動車整備工場のオーナー、グレンとその妻で教師のアニーが車まで迎えに来て、ジェシーに握手の手を差し出す。ジェシーは憮然とした顔で、嫌々握手をする(2枚目の写真)。グレンが、ジェシーが抱き締めているバックパックを、「運ぼうか」と手を差し出しても、「No」と言ってバックパックを遠ざける。グレンは両手を肩まで挙げて、“何もしないよ” というサインを送る。アニーは 「顔を洗って、夕食にしましょ」と言ってジェシーを連れて家に入って行く。夕食の準備の際も、アニーが何を話しかけてもジェシーは無視。食事が出されると、何も言わずにかぶりつく。グレンが 「君は、一体何が好きなんだ?」と尋ねても、「食べてる時に話すのは好きじゃない」としか言わない(3枚目の写真)。食事が終わると、2人はジェシーを部屋に連れて行く。そこは、2階で、2つの壁にある大きな窓から海が見える素敵な部屋で、ベッドの上には、新しい靴、服、それにプレゼントの箱まで置いてある(4枚目の写真)。ジェシーはそれを見ても何も言わないし、グレンがプレゼントの箱を渡そうとしても、バックパックを抱いたままなので、箱を横に置くしかない。アニーが、用意しておいた服の色が気に入らなかったら交換すると話しても、相変わらず何も言わない。2人は諦めて出て行くが、その際 「お休み」と声をかけても返事もない。
翌朝、グレンは、ピックアップトラックに乗せてジェシーをアドベンチャー・パークまで連れて行くと、荷台から子供用の自転車を降ろし、家への帰り道を教える(1枚目の写真)。そして 「帰れると思うか?」と訊くと、“当たり前じゃん” と言った顔でグレンを見るが(2枚目の写真)、やはり黙ったまま。グレンは、「中に入ったら、アクアティック・シアター〔海洋動物のショーを見せる水槽と観覧席のある場所〕を探して、ランドルフに会うんだ」と言い、それを聞いたジェシーは、何も言わずに自転車に乗ってアドベンチャー・パークに入って行く。ランドルフは、ジェシーにバケツ2個とスポンジ、洗剤を持たせてプールウィンドウまで連れて行き、昨夜ペリーが赤いスプレーで汚していったガラスをきれいにするよう命じる(3枚目の写真)〔映画を観ている限り、ジェシーはほとんど何も悪さをしていない。赤いスプレーで悪戯したのはペリー1人〕。ジェシーが洗剤をつけたスポンジでガラスを洗い始めると、赤い汚れはすぐに消えていく。
ジェシーは、昨夜初めてみたシャチが、目の前をゆっくりと泳いでいくのを見ると、不機嫌な顔は笑顔に変わる。そして、仕事を放り出して階段を上がり、観覧席の前面にある水槽との境のコンクリートの囲いまで行き、そこからシャチが見えないか水面をじっと見つめる(1枚目の写真)。すると、いきなり目の前にシャチが飛び出て来て、バシャンと水に戻ったので、水しぶきを浴びる(2枚目の写真)。驚いたジェシーは、いきなりランドルフに肩をつかまれ、向きを変えさせられ、「ここで、何してる?」と訊かれる(3枚目の写真)。「何も」。ランドルフは、囲いに肘をつくと、水槽を見ながら 「7000ポンド〔3125kg〕ある。強力な顎は、骨をオートミールみたいに砕く。ウィリーは不機嫌だ。構うんじゃないぞ。彼の邪魔をしなきゃ、彼もお前さんの邪魔はせん。分かったな?」と言う。「うん」。
ジェシーは、その後も赤いスプレーの掃除を続けるが、ガラスの部分と違って壁の部分はなかなか消えてくれない(1枚目の写真)。そのうち、外から音楽が聞こえてきて、男性の声で 「皆様、私たちのアシカショーは毎日 4 回上演されており、ショータイムは 10 時、12 時、2 時、4 時です」とアナウンスされたので、ジェシーは階段を上がり、柵越しに外の様子を見てみる。そこでは、女性トレーナーのレイが、2頭のアシカを使ってショーを行っているが、観客席は空席が目立つ(2枚目の写真)。ジェシーは、アシカがキスするのを見て、思わずニヤニヤしてしまう(3枚目の写真)。観客席には、アドベンチャー・パークのオーナーのダイアルと、ゼネラルマネージャーのウェイドが座って見ていたが、ショーが終わると、ダイアルは不満そうに立ち上がる。アナウンスが 「当館自慢のシャチ、ウィリーが見られます」と言い、ゲートが開いて、ウィリーが観客席の前の水槽に入って来ると、ジェシーはまた水槽との境の囲いまで来て、ウィリーがジャンプするのを見ている。すると、レイが 「君、落書きの子ね?」と声をかけたので、「だろうね」と答える。「君は、ここの観察ゾーンをめちゃくちゃにしたのよ」。「ごめん」。そう言うと、ジェシーがまたシャチの方を見たので、「シャチ、好きなの?」と訊く。「好きだよ」。「ウィリーは 誰も好きじゃないの。だから気をつけて」。
翌日か数日後、赤いスプレーは完全に除去されている(1枚目の写真)。ジェシーは、保護観察が終われば、もうここに来られないので、昔から大切にしてきたハーモニカを取り出すと、その場で吹いてみる。すると、ウィリーの姿が見えたので、今度は、ウィリーに向かって吹いてみる(2枚目の写真)。すると、ガラス窓の向こう側で、ウィリーが、ジェシーを見ながらシャチ独特の甲高い声を何度も出す。ジェシーは、階段を上がって外に出ると、いつもの囲いの所まで行ってハーモニカを吹く(3枚目の写真)。
すると、ウィリーはジェシーの近くまで泳いでくると、いきなり軽くジャンプし背中から着水する。ちょうどその時、囲いに沿って餌の魚の入ったダンボール箱を持ったレイが歩いていたので、着水した時の水しぶきを浴びる(1枚目の写真、矢印はダンボール箱)。レイは、ウィリーに向かって 「えらく楽しそうね、機嫌ワル君」と文句を言い、それを聞いたジェシーは思わず笑ってしまう(2枚目の写真)。そして、レイに向かって 「ウィリーって、人を困らせるのが好きなんだね」と言う。「そうよ。芸を仕込むのは私しかいないのに、言うことをきいてもくれない。たいていのシャチは優しくて利口なのに、ウィリーは利口だけど、意地悪なの」と説明する。それでも、ジェシーがウィリーをじっと見ているので、「ウィリーが好きなのね」と訊く。「うん」。レイは 「よかった」と言うと、持っていたダンボール箱をジェシーにいきなり渡し、「手伝って」と言う。そして、餌の作業場に連れて行くと、良い魚と悪い魚の見分け方を教え、悪い魚はジェシーの横に置いたトタン箱の中に放り込む。ジェシーも見様見真似で手伝う(3枚目の写真)〔経費削減しか考えないゼネラルマネージャーが寄こす魚を選別して、ウィリーが食べるべきでないものは捨てる〕。
その日の夜、ジェシーは2階の窓から抜け出し、1階の屋根からトイを伝って降りると、アドベンチャー・パークまで行き、囲いのない平坦な場所〔アシカのショーをする場所〕に座ってハーモニカを吹く。すると、ウィリーが軽くジャンプをして(1枚目の写真)ジェシーの前に泳いでくる。ジャンプの音を聞きつけたランドルフがライトを点けたので、ジェシーはヤバいと思って急いで逃げ出すが、走り出してすぐに転んでしまい、囲いがないので、勢い余ってプールに転落し、ショックで気を失い、そのまま沈んでいく。お陰で調べに出て来たランドルフには見つからなかったが、そのままでは溺れてしまう。それを救ったのがウィリーで、水中深くまで落ちていったジェシーの体を頭で押すと、そのまま水面まで上げて行き、アシカの座る台の脇に押し上げる(2枚目の写真、矢印)。意識を取り戻したジェシーは、ウィリーに 「君は、僕の命を救ってくれた」と感謝する(3枚目の写真)。
次のシーンでは、ジェシーがランドルフのコテージに連れていかれている〔このシーンには、疑問が残る。①そもそも、ランドルフは、アドベンチャー・パークから離れた海辺のコテージに住んでいるのに、先ほど彼は、こんな夜遅くにプールウィンドウにいて、すぐにライトを点けた。如何にもワザとらしい。②ジェシーは、さっきは逃げたのに、どうしてランドルフと一緒にいるのだろう? しかも、彼は、わざわざジェシーをコテージまで連れて行った。これもワザちらしい〕。ランドルフは、ずぶ濡れになったジェシーをタオルでくるんで座らせると、「君は 何か特別なものを持っているに違いない、だからウィリーは君を食べなかったんだ」と言う。ジェシーは 「ウィリーは僕を嫌ってなんかいない。僕たちお互いに理解し合ってるから」と言う。「理解だと? だから君を守ったのか?」。「僕には、どうしてあなたたちが、ウィリーとうまく行ってないのか分かんない」。ジェシーは、テーブルの上に置いたあったシャチの人形を手に取ると、立ち上がってランドルフから離れる。「ウィリーは、彼の水槽に誰かが近寄るのを嫌がるんだ。君は、なぜそこに行ったんだ?」。「仕事が終わっちゃったから、さよなら言いに行ったんだ」(1枚目の写真)。ランドルフは、ジェシーの手から人形を取り上げると、「ウィリーの目を見たことあるか?」と訊き、「シャチが望めば、人の魂を覗くこともできる」と、ハイダ族〔カナダのブリティッシュ・コロンビア州沿岸部で生活していた北西海岸先住民〕らしい意見を言うと、「ウィリーは、レイにも私にも目を向けん。だが、君のことは見てるのかもしれん」と、現実に戻って付け加える(2枚目の写真)。そして、自分のバンに乗せてジェシーを家まで送って行く。すると、家のドアが開き、ジェシーの失踪に気付いて起きていた2人が走って出て来る。アニーは、びしょ濡れを心配するが、グレンは 「落書きを消すために夜 抜け出すとは、驚くような話だ」と、勝手に抜け出したことを、皮肉くるように責める。ジェシーが、「水槽に落ちたんだ」と言うと、アニーは 「シャチの水槽?」とびっくりする。「いったい何が起きたんだ?」。「水槽に落ちたのは、僕が滑ったから」。そこに、ランドルフが顔を出し、これまでのジェシーの振る舞いを褒め、「あなた方さえOKなら、夏の残りの期間、彼に来てもらえればありがたいですね。少しですが、お金も払います」と話し、ジェシーは大喜びで2人に頼み(3・4枚目の写真)、グレンは勝手な行動の結果に渋々OKし、アニーは日中だけと条件を付け喜んでOKする〔グレンは、いつもジェシーに “暖かいとは言えない態度” で接している。なら、なぜ里親になったのだろう?〕。
翌日かそれ以降のある日、ジェシーがプールの脇の狭い真四角の水槽に行くと、ウィリーがネットで前後を吊り上げられ、ウェイドが指導し、レイ以外に4人の男が作業をしている(1枚目の写真)。レイは、「こんな場所で検査するなんて無理です。こんなネットで捕まえるのは危険です」と止めるよう主張するが、ウェイドは 「ここしかない」とつっぱねる。レイは、「あなたとダイアルは見下げた漁師たちからウィリーを買った。そして、イルカ用の水槽に入れた。ウィリーは演技なんかできないのに、奇跡を期待してる」と強く非難する。ウェイドは、レイは検査担当〔何の検査?〕ではなく調教担当だと文句を言い、レイは、シャチの調教など最初の契約に入っていないと反撥する。その間にも、ウィリーが苦しむ状態が続いたので(2枚目の写真)、ジェシーは、ウィリーのネットを吊っているロープをこっそり外し(3枚目の写真)解放してやる。ジェシーはすぐに逃げ出し、何気ない顔をしてプールの縁に現れると、ばったりランドルフに出会う。ランドルフは 「ウィリーはきっと感謝してる」と言い、ジェシーがやったと知っていながら非難などしない。ランドルフが去った後、彼の方を振り返ったジェシーは、“僕って、役に立つでしょ” といった顔でランドルフを見送る(4枚目の写真)。
ジェシーは、漁港の埠頭に並んでいる魚の露店商の1人に、「余った魚があれば、引き取るよ。僕には、ウィリーっていう特別な友だちがいるんだ」と頼む。新聞紙に包んだもらった魚を自転車のカゴに入れていると、5人の不良と一緒のペリーが声をかける。「新しい服だな。新しいバイトか?」(1枚目の写真、矢印は新聞紙に包んだもらった魚)。「一緒に住んでる」。「あれからどうなった? お前、パクられたろ?」。「落書き、全部消したんだ。今は、そこで働いてる」。ペリーはジェシーを仲間に紹介してやると持ちかけるが、ウィリーが好きになったジェシーは、「いつか寄って」とだけ言って立ち去る。そして、そのままプールに直行したジェシーは、もらってきた魚をウィリーに向かって投げるが、ウィリーはそれを咥えると、そのままジェシーのところまで持ってくる(2枚目の写真、矢印は魚)。ジェシーは、「どうしたんだ、ウィリー。こういうの好きなんだろ?」と言いながら、魚を手に取ると、「こうやって食べるんだ」と言うと、立ち上がって、その魚を食べる真似をする(3枚目の写真)。ウィリーは、“違う” とでも言うように水面から出した頭部を大きく左右に振ると、大きく口を開ける。「君の口に魚を入れて欲しいのか?」。今度は、頷く。「じゃあ約束だよ。魚を入れてあげるから、僕の手を噛み切らないこと」。そう言うと、ジェシーはなるべく手を口の中に入れないよう、素早く魚を口の中に放り込む(4枚目の写真、矢印)。2匹目もうまくいく。
そこで、今度は、吻〔シャチの口の周辺が前方へ突き出している部分〕の先端に触れてみようと、手を伸ばす。最初は怖くてなかなか手が伸びなかったが、遂に黒くて丸い部分に触って撫でる(1枚目の写真)〔右の写真は、スペイン語のサイトにあった2017年に撮影された写真。ジェシーより小さな子が平気でシャチの吻に触っているので、映画だけの特殊な状況ではない〕。「ゴムみたいだね。皮が剥けてる〔ケイコは、メキシコシティのレイノ・アベンチュラの小さな水槽で飼育されたため、皮膚病変がある〕。それでも美しい動物だね」。ジェシーが 「じゃあね、行かないと。残った魚は取っておこう」と言い、新聞紙の中に残った魚を掴んで立ち上がって歩き出すと、ウィリーもゆっくりあとを追ってくる。そして、90度回転して右の胸びれを高く上げる。それを見たジェシーは、「僕にだってできるよ」と左腕を上げる(2枚目の写真、2つの矢印)。ジェシーは、「もう片方も、できるかい?」と言い、今度は自分から先に右腕を上げ、それを見たウィリーが左の胸びれを上げる。次は、上げた右腕を振ると、ウィリーも左の胸びれを振る。ますます楽しくなったジェシーは、魚の包みをアシカの座る台の上に置くと、「踊れるかい?」と言い、両腕を水平に上げて1回転し、ウィリーもぐるりと回転する。その様子を、途中からだが、ランドルフ、そして、彼が呼んだレイが見ている。
最後は、ウィリーの前でしゃがんだジェシーの前で、ウィリーは大きく口を開け、舌を丸くする(1枚目の写真)。ウィリーは、自分の舌を突き出して見せ(2枚目の写真)、ウィリーも精一杯舌を口から出す(3枚目の写真)。一連の楽しいコミュニケーションを見ていたレイは、ジェシーに 「餌あげてみて」と声をかける。ジェシーが紙包みを開けて魚を1匹口の中に放り込む。そして、レイに魚を差し出して 「やってみる?」と訊く。レイがためらったので、「さあ」と笑顔で誘う(4枚目の写真)。レイがその気になって、魚を受け取ると、それを見たウィリーは水の中に潜り、尾びれで水面を叩いて水しぶきをレイに浴びせる。
レイはアシカに餌をやりながら、「私がウィリーに行ったあらゆる医学的検査のせいで、彼は私が悪い魔女だと思ってる」と、レイに対してウィリーが冷淡な理由を説明した上で、シャチの生態についてジェシーに教える。その中で、一番重要な言葉は、「ウィリーのようなシャチは、海では家族と一緒に暮らしているの」(1枚目の写真)。この情報は、その後のジェシーの行動に強い影響を与える。そのあとで、レイはジェシーを館内の自分の部屋に連れて行く。そこで、ジェシーは不思議に思っていたことを口にする。「ウィリーの背びれ、垂れ下がってるよね」。それに対し、レイは、「水槽に閉じ込められていると、よく起きることなの」と言う。「なぜ?」。「誰にも分らない。多分、普通に泳ぐにはもっと広いスペースが必要なのかも」と答える〔これに対して、最も詳しく書いてあったのは、非専門家のサイト。要約すると、①どんなに大きな水槽でも、広大な海とは比べ物にならない。シャチは限られたスペースで泳ぐことしかできない。その結果、十分な運動ができず、背びれの筋肉が衰えてしまう。背びれの筋肉が弱ると、その重さを支えきれずに垂れ下がるようになる。②水族館の水槽は深さが限られているので、シャチが浮上するたびに背びれが水面に当たる。この繰り返しが、背びれが曲がる一因となっているとも言われている。③水族館の限られたスペースでは、本来の行動や生活スタイルが実現できない。この制約環境下でのストレスが、体調不良や筋肉の衰えを招き、さらに背びれの変形につながっている可能性も考えられる。④水族館では、シャチ特有の家族や仲間との絆が失われてしまう。こうした社会的なストレスも、背びれの変形や他の健康問題に影響を及ぼしているかもしれない〕。これに対し、ジェシーが 「じゃあ、どうしてダイアルさんはウィリーのためにもっと大きな水槽を作らないの?」と訊くと、レイは 「ダイアルは野生動物を商品だと思ってる。つまりね、ウィリーはお金を稼がない。だから、大きなプールなんか作ってやらないの」(2枚目の写真)「その件で、手助けしてくれる?」。「いいよ」。それを聞いたレイは、ジェシーをもう一度プールサイドまで連れて行く。そして、「シャチは触られたり、撫でられたり、ハグされたり、舌を摩(さす)られたりするのが大好きなの」。「ちょっと待ってよ。まさか、あんた、僕の手を取って、ウィリーの口の中に入れて、舌をこすらせたいの?」。「ええ、そのうちね」。そのあとで、ジェシーはランドルフのコテージに連れて行かれ、1冊の本を見せられる。それは、ハイダ族のランドルフが父からもらったもので、ハイダの歴史について書いてある。ランドルフは、ジェシーに、ハイダに伝わるシャチ創造神話を読んで聞かせるが(3枚目の写真)、そこに登場するハイダの英雄Natsaclaneが、危機に陥った時に唱える祈りの言葉が、「サラナ・エイヨ・ナイシス」〔何度聞いてもそう聞こえる〕〔X、Tumblr、Pinterestには、その言葉は 「Salanaa Eiyung Ayesis」で、その意味は、「我に力を」だと書いてある。ただ、ネット上のハイダ語→英語の簡単な辞書には、この3文字はなく(そもそも e という文字がない)、唯一 「Saláanaa」とかなり近い単語が、「God」という訳になっている。この “祈りの言葉” は、この映画で最も重要な言葉だが、なぜか映画の公式英語字幕では空白となっていて意味も不明。映画の造語のようにも思える〕。
次の日(?)、ジェシーは、埠頭の露店商同士が投げ渡している魚を奪うと、そのままウィリーのプールに直行し、レイとランドルフの指導を受けて、見栄えのする餌やりを実行する(1枚目の写真、矢印は盗んできた魚)。さらに、腕を勢いよく振り下ろして、ウィリーに胸びれで強く水面を叩かせてみたり(2枚目の写真、矢印)、ウィリーの背中に乗って見せたり(3枚目の写真)、最後には、ウィリーの舌をさすれるようにまでなる(4枚目の写真)。。
夕方になり、一旦家に戻ったジェシーは、アニーに頼まれ、グレンの自動車整備工場まで夜の弁当を持って行く。ジェシーは机の上に飾ってあったクラシックな車の写真に目を惹かれる〔フォードの1950年代のSupercharged Thunderbird〕。グレンは1年半かけて最高の状態に戻したと写真を見ながら自慢する。「でも、売っちまった」。「どうして?」(1枚目の写真)。「人生じゃ一つの愛しか持てないんだ」〔アニーと結婚するため〕〔この言い方では、ジェシーは決してグレンに愛してもらえない〕。ジェシーは、低い棚の上に飾ってあるツーショットの写真にも興味を示す。それは、子供の頃のグレンと2年前に亡くなった母親の写真だった。そのことを聞いたジェシーは 「僕のママ、そのうち迎えに来るよ」と言う。「そうなのか?」。「近いうちだよ」。「変だな。そんな話 聞いとらんぞ」。「信じてくれないの?」(2枚目の写真)「ドワイトが何を言おうが関係ない。あいつ何も分かっちゃいない。ママは今は用事があるけど、終わったら迎えに来てくれるんだ!」(3枚目の写真)。そう怒鳴るように言うと、ジェシーはさっさと部屋から出て自転車に乗ってどこかに行ってしまう。
夜11時過ぎ、土砂降りの雨の中をグレンが帰宅し、アニーに 「彼はアドベンチャー・パークにはいなかった」と言う〔ジェシーが帰って来ないので、心配したアニーがグレンに電話し、グレンが探しに行った?〕。それを聞いたアニーが、「ドワイトに電話した方がいいかも。もう11時を過ぎてるわ」と言うと、グレンは 「何時かくらい分かってる!」と不機嫌に遮る。そこに、ドアが開き、ジェシーがずぶ濡れになって入ってくる。ジェシーは 「どこにいたの?」と普通に訊くが、グレンは 「自分が何をしたのか、分かってるのか? パークにいないんなら、どこにいたか言うべきだろ!」と叱りつける。ジェシーは、「どうだっていい。僕を捨てたいんだろ? そうすれば?」(1枚目の写真)「僕はここに住んでるじゃなく、しばらくここにいるだけなんだ」と言うと、さっさと2階に上がって行く。グレンは 「ありゃ一体何だ? ようやく話が通じるようになり始め、理解したり、心を通い合わせることができるようになった矢先…」と不満をぶつける。アニーは 「あの子は、怖がっていて、私たちを避けようとしてるの」と庇うが、グレンは 「俺は、あいつを放り出したい」と本音を言う。「そんなこと言わないで! あんな風に怒鳴ったから、こんな結果になったのよ!」。「あいつは俺をイライラさせるんだ!」(2枚目の写真)。「なぜだか分かる? 彼はあなた自身を思い出させるので、それが怖いのよ」。「俺たちは最善を尽くした。これ以上はもう我慢ならん! 俺は、君と二人だけで幸せなんだ」。こうした厳しい話、なかでも、グレンに徹底的に嫌われていることは、すべてジェシーに筒抜けだ(3枚目の写真、手に持っているのは、彼が初めて来た時にプレゼントの箱の中に入っていたボール)。最後の言葉を聞いたジェシーは、部屋に戻ると、ボールを窓に向かって投げつける(4枚目の写真、矢印)。ガラスの割れる音を聞いて、2人が駆けつける。ベッドにうつ伏せになっているジェシーに、アニーは 「大丈夫?」と優しい言葉をかける。ジェシーは 「怖くなっただけ」と答える。「何が怖いの?」。「二人が言い争ってのが聞こえた。だから怖かった」。反省したグレンは 「大人は時々口論する。だが、それで誰かが傷つくわけじゃない。俺はアニーを傷つけん。君もだ。知っておけ」と言うが、あまり信用できない。
翌朝、ジェシーは、ちゃんとお金を払って魚を買う(1枚目の写真、矢印)。そして、ウィリーのプールに直行すると、立派な魚をウィリーに見せ、「これは、僕から君へのプレゼントだ。小遣いをはたいて買ったんだ。楽しめよ」と言って、口の中に入れる(2枚目の写真)。すると、そこにペリーがやって来て、「俺は行く。まず、サクラメント、それからロスだ」(3枚目の写真)「デイトンと俺はビジネス・パートナーみたいなもんだ。お前も入れてやるぞ」と言う。「今は、できないよ」。「おいおい、これはスゴイことなんだぞ。俺たちは金持ちになれる」。それでも、ジェシーがシャチの方を見ているので、ペリーは 「分かった、勝手にしな」と言うと、「Venice, California」〔ロスの高級なビーチタウン〕の絵ハガキを渡し、「来る気になったら、俺たちはここにいる」と言い、出て行く。
ウィリーは、プールの端に吻の白い部分を付け 目を外に出している。ジェシーは、その横に座ると、「家族がいなくて寂しい?」と訊く(1枚目の写真)。そして、「僕のママは困った人でね、僕の世話どころか、自分の世話もできなかったんだ。僕が小さかった頃から一度も会ってない。それでも、いないと寂しいんだ。グリーンウッドの人たちはまあまあ。何となくザラザラしてて、一緒にいると緊張しちゃう。それが現実なんだ。もっと悪くなるかも。分かるかい?」と話しかける。ジェシーは、ウィリーの家族についても話す。「君も、家族がいなくて寂しいだろ? いつか、会えるといいね」。そう言うと、ジェシーはウィリーにキスする(2枚目の写真)。そして、「大好きだよ、ウィリー」と言うと、頬をつける(3枚目の写真)〔この2枚は、最高に素晴らしい〕。
ウィリーの調教が終わったので、ダイアルとウェイドの前で、芸が披露される。ジェシーが最初に命じたのは、プールの縁を泳ぎながら水を吹きかけること(1枚目の写真)。一周して戻って来たウィリーに、今度は背を下に泳ぎ、尾びれを跳ね上げるように泳がせる。その後は、以前練習していたように、片方の胸びれを振りながら泳ぎ(2枚目の写真)、ボール遊びもして見せる(3枚目の写真)。その後は、背と腹を交互に回転しながら泳ぎ、水に潜ってからジャンプし、最後は、「さあ、僕の方に来い」の言葉に、ウィリーはプールから出て、ジェシーの前まで来て止まる(4枚目の写真)。最後は素晴らしい出来だったので、ダイアルとウェイドもびっくりして100%満足する。ダイアルは、ジェシーに 「もう一度全部できるか?」と訊く。ジェシーは頷く。ダイアルには、それだけでは十分ではなかったので、「君とレイが望んでいることにはお金がかかる。確かめないといけない」と言う。ジェシーは 「はい、もちろん もう一度できます。いつでも」と、ウィリーのために敬語を使って答える。それを聞いたダイアルは、「じゃあ、準備しよう」と笑顔で言う。ダイアルは、小さな子供が大きなシャチをあれだけ上手に操ることができれば、ショーは大盛況だと皮算用して上機嫌になる。
そして、観客で溢れる興行初日(1枚目の写真)。あまりの人気ぶりにダイアルは笑顔が止まらない。子供はプールウィンドウにも群がる(2枚目の写真)。しかし、ここで大きな問題が起きる。ウィリーにとって、こんなに多くの人間の前に出ることは初めての経験で、非常に神経質になってしまったのだ。しかも、プールに近い、プールウィンドウでは、子供達が声援を送るつもりでガラスをドンドンと叩き、音に敏感なシャチの神経を逆なでする。ジェシーは大勢の観客にも平気なのだが、ジェシーが紹介されたことで観客が一斉に拍手したことも、ウィリーにはプレッシャーとなる。だから、なかなか姿を見せないウィリーを、ジェシーが水に手を突っ込んで、ようやく、いつものように目から先の吻だけ水の上に出す(3枚目の写真)。ジェシーは、「ウィリー、これは僕らにとってすごく大事なことなんだ。お願いだ、ダメにしないでくれよ。君なら絶対できる」と必死になって説得し、両手を水平に挙げて芸をさせようとするが、ウィリーは吻を左右に振ってイヤイヤをし、勝手に泳ぎ去ってしまう。
お金を払って入場した観客は、不満の声を発し、全員が促すように手を叩き始める。それは、ますますウィリーをイライラさせる(1枚目の写真)。ウィリーが、特にイライラしたのは、最初からずっと叩き続けられているプールウィンドウで、怒ったウィリーはガラスにぶつかって行き、怖れをなした子供たちは逃げ出す(2枚目の写真)。異常事態に、ダイアルとウェイドは立ち上がる(3枚目の写真)。ダイアルに命じられたウェイドがプールウィンドウまで駆け下りて行くと、3トンを超えるシャチがぶつかったため、ガラスを支えているボルトの1本が緩んで、そこから水が糸のように噴き出している(4枚目の写真、矢印)。
悲しさ、悔しさ、腹立ちをどこにぶつけていいか分からないジェシーは、海沿いの崖まで行くと、そこに立っていた金網でできたゴミ箱を蹴飛ばす(1枚目の写真)。そこに、グレンとアニーとドワイトがやってくる。一番優しいアニーは、「ジェシー、あんなに大きくて強い動物を扱うなんて、とても勇気があるのね」と、褒める(2枚目の写真)。一方、グレンは、「あのシャチは、きっと芸をするのが嫌いなんだ」と間違った意見を言う。ジェシーは、首を横に振る。グレン:「君は、最善を尽くした。できることはすべてやった」。アニー:「あなたを誇りに思ってる。私だったら、あんな大勢の前で緊張しちゃうもの」。それを聞いたジェシーは、3人を放っておいて、10メートルほど先のベンチに座る。ドワイトは、2人に “任せて” と手で指示すると、ジェシーの隣に座る。そして、「どうした? ショーは…」と声をかける。ジェシーは、「ショーやグリーンウッドなんかクタバレ!」と、里親にまで怒りをぶちまける。ドワイトは、「2人は、君と対立してるのか?」。「何もかもさ」。「グリーンウッドさんとは、うまくいってると思うけどな」。「じゃあ、一緒に暮らしてみろよ! もう。こんなトコうんざりだ! ママを探しに行く」。「また、街に繰り出すのか」。「ううん、ママを探しに行く」(3枚目の写真)。「州も、連邦政府も、見つけられなかったんだぞ」。「僕が見つける」。「いつになったら分かるんだ? 彼女は戻らん。君を玄関に置き去りにした日を忘れたのか? 方向転換して走り去ったんだぞ。バックミラーさえ見ずに。それが母親のすることか? あの2人は君と友だちになりたがってる。君の母親よりずっとだ」。「ほっといてくれよ!」。そう怒鳴ると、ジェシーは走り去る。
その夜、アニーは、ベッドで横になっているジェシーに、「あのね、動物って予測不可能で、時にはまるで人間みたいに無作法にふるまうことだってあるの。だからといって、信頼するなってことじゃないの。いい?」と言葉をかけるが、ジェシーは何も言わない。そして、アニーが出て行くと、ペリーが渡した「Venice, California」の絵ハガキを持つと、また窓から出て行き、アドベンチャー・パークに行く。そして、ジェシーが来たのを見て寄ってきたウィリーを、「あっち行けよ」と追い払う。それでも、寄ってくるウィリーに、「今日はどうした? 緊張してガチガチになって」と文句を言う。ウィリーは、水を吹きかける。「やめろよ」。すると、もっと大量の水を吹きかける(1枚目の写真)。ジェシーは 「やめろ!」と怒鳴る。ウィリーが悲しそうな声を出したので、ジェシーは 「今から、そんな声出しても遅いぞ。僕はここから出て、カリフォルニアに行くんだ。元気でな」と言うと(2枚目の写真)、立ち去ろうとする。悲しくなったウィリーは、吻を出して何度も悲しい声を出す(3枚目の写真)。それを見たジェシーは、プールの端に造られた装飾としての灯台の壁についた足場となるコの字型の釘を登って行くと、アドベンチャー・パークの向こうに広がる海に、ウィリーの家族のシャチ3頭がいるのが見える(4枚目の写真、矢印)。ウィリーは、別れた家族に対し、話しかけていたのだった。
事態は一気に進んでいく。ジェシーが振り返ると、プールの中から変な光が見える(1枚目の写真)。ジェシーはすぐに塔を降りると、プールウィンドウの中に忍び込む。すると、ウェイドの前に立った溶接眼鏡を付けた男が、プールウィンドウの鉄枠に切断トーチの高熱ガスを浴びせ、火花が飛び散っている(2枚目の写真)。切断トーチが終わると、ウェイドの後ろにいた男が、ボルトにタガネを当て、金槌で叩いてボルトを破壊する。3人が逃げ出した後、ジェシーが再度中に入ると、中はプールから噴き出る水で危険な状態になっている(3枚目の写真)。
ジェシーは、すぐにランドルフのコテージに駆けつけて、大声で 「起きて!!」と何度も叫びながらドアを叩き続ける。そして、ランドルフをプールウィンドウに連れて行く。最悪の状況を見たランドルフは、「ダイアルは保険金が欲しいんだ。ウィリーが死ねば100万ドル手に入る」と言う。それを聞いたジェシーは、「ウィリーを解放しよう!」と言う。「何だと?」。「ウィリーを逃がすんだ。湾に連れて行って、海に入れてやろう」。それを聞いたランドルフは、「わしは、この仕事、嫌いだった」と、ジェシーに賛成する。そこに現れたレイに、ランドルフは 「これは事故じゃない。ダイアルがウィリーを殺そうとしとる」と言い、ジェシーは 「だから海に戻すんだ」と言う(1枚目の写真)。レイ:「あんたたち2人で?」。ジェシー:「あなたも」。レイ:「私も?」。ランドルフ:「その通りだ。水がなくなったら、ウィリーは死んじまう。タンクは修理不能だ」。ジェシー:「ウィリーには家族がいる。僕、聞いたんだ」(2枚目の写真)。レイ:「ジェ…」、ジェシー:「あいつら、ウィリーを殺そうとしてるんだよ!」。レイ:「警察、呼んだ?」。ランドルフ:「それが何の役に立つ? ウィリーを海に戻さんと、死ぬぞ。ここから出ていくか、(協力するなら)給水栓を回して来い」。レイが、給水栓を回転させると、僅かだが、プールに水が注ぎ込み、水位の低下速度が遅くなる。ランドルフは、移動式起重機の先端に、ウィリーを入れるための “2本の平行したステンレス・パイプの間に布をぶら下げた物” を付け、それを水槽の中に降ろす〔ウィリーが入り易いように、布はパイプから離して床に平らに置く〕。ジェシーはプールとは切り離された水槽に飛び込むと、ウィリーに話しかけ(3枚目の写真、矢印)、できるだけ早く布の真上の位置に来させる。そして、底まで潜って行き、布の両端に付いたフックを起重機の先端のI型鋼材の両端に掛ける。ランドルフは、ジェシーがウィリーの上に乗った状態のまま、I型鋼材を持ち上げる。すると、2本のパイプの間の布に乗ったウィリーが、水の上に現れる(4枚目の写真)〔シャチは、地上でも呼吸できるが、肺が圧迫されるので、2~3時間以内に海に戻さないと死亡する確率が高くなる〕。
問題は、“2本のパイプの間の布に乗ったウィリー” を乗せた台車を 海まで運ぶ手段がないこと。そこで、ジェシーはランドルフを連れてグレンの家に行き、停めてあるピックアップトラックを無断で借りることにする。運転するのはランドルフ(1枚目の写真)。急ぐあまり、ゴミ箱を倒してしまったので、その音でグレンが起きてしまい、窓から車が盗まれて行くのを見る。ランドルフは、台車の前までバックで車を入れると、車と台車を結合させる。一方、自分の自動車整備工場までアニーと一緒に行ったグレンは、車載無線でジェシーに連絡を取ろうとする。しかし、ジェシーはホースでウィリーに水をかけているし(2枚目の写真、矢印)、ランドルフとレイは どの道を通るか話し合っていて、誰も気づかない。準備が終わり、レイは、ジェシーに 「ウィリーに何も起きないようにするわ。約束する」と言い、運転席にランドルフ、助手席にレイ、ウィリーの顔の横にジェシーを乗せてアドベンチャー・パークから出発する(3枚目の写真)。
ウィリーの台車を引っ張るピックアップが長い橋を渡っている頃、どうして分かったのかは謎だが、ウェイドからダイアルに一報が入り、ウィリーがいなくなったことを知らせる。ダイアルは、ウィリーに死亡保険はかけているが、盗難保険はかけていないので、逃げられたら丸損になるから大慌て。ランドルフとレイを追いかけるとともに、捕獲船の船員にも召集をかけるよう命じる。一方、ランドルフは、できるだけ目立たないようにしたいので、古い林道を通ることにして、左折する(1枚目の写真)。しかし、この決断は完全に間違いで、巨大な倒木が道を塞いでいる(2枚目の写真)。台車を先頭にして 林道をバックするしか 打つ手はない。そこで、ランドルフはゆっくりとバックを始めるが、ピックアップの車体より長い〔ウィリーは体長6.7m〕台車をバックで進ませるのは、路肩がしっかりしていない道では大変な作業で、台車の左側のタイヤが、林道の端の柔らかい部分に入ってしまい、どんどん谷の方に下がり始める。その時になって車を停めるが、車体そのものはかなり傾き、危険な状態になる(3枚目の写真、矢印)。そこで、ランドルフはピックアップを前進させようとするが、重さ3トン強のウィリーに加えて、台車も結構重いので、ピックアップの馬力では全く動かない。まさに、八方ふさがりの窮状だ。
レイは 「助けが要るわ」と言う。それを聞いたジェシーは、決断し、ピックアップの無線で、「グレン、アニー、いる?」と訊く。すると、すぐにグレンが無線を取る。映画では途中が省略され、次の場面では、もう2人がウィリーの台車の後ろまでアニーの車で来ている。車から降りたグレンが、ジェシーに 「何か起きた? 俺のトラックで何してる? それに、このシャチは?」と、車を勝手に盗んだジェシーを詰問する。「あいつら、ウィリーを殺そうとしたんだ。だから、僕たちウィリーを海に戻そうとしてる」(1枚目の写真)「グレン、僕たちを助けて。そしたら、僕、何でもするから。何でも!」。「俺が、君に何を望んでると思う?」。「分んない。でも、僕はウィリーの面倒を見てやりたい、彼にとってベストなことをしてやりたいんだ。分かる? お願いだよ、グレン。どうか力を貸して。ウィリーが死んじゃう」。それだけ聞いたグレンは、今までの腹立たしかった思いは別にして、本気で助けることにする。そして、トラックの座席の後ろにウインチとチェーンがあると教え、それを聞いたジェシーはグレンに初めて抱き着き、「ありがとう、グレン」と言ってピックアップの座席に走って行く。ウインチを使えば〔倒木にウインチを縛りつけ、チェーンでピックアップを引っ張る〕、滑り落ちそうだった台車を元の道に戻すことは容易な作業だった(2枚目の写真)〔確実を期すために、タイヤの下に何枚も板を挿入している〕。そして、グレンが運転して、上手に林道をバックする。その頃、ダイアルとウェイドの悪い部下たちも、車で港に向かっている。その時点では、ジェシーたちの方が先行していたが、ウィリーが苦しそうな声を出したので、レイの依頼で、グレンは閉まったガソリン・スタンドのコイン洗車機に台車を入れ、レイがホースでウィリーに水をかける(3枚目の写真)。しかし、そうしているうちに、ダイアル達が追い抜いて行ってしまう。
一行が ドーソンズ・マリーナに到着すると、ダイアル達が入口の扉を閉め、その前にたむろして、入らせないようにしている。台車に乗っていて、そんなことが見えないジェシーは、車を停めたグレンに 「お願い、グレン、急いで!」と声をかける。グレンはアニーの顔を見、アニーは 「行きましょ」と言い、グレンはアクセルを思い切り踏み込む。ピックアップは急発進し、停まる様子がないので、扉の所に固まっていた5人は必死に避け、ピックアップは木製の扉を突き破ってマリーナに向かう(2枚目の写真)。そして、ボートを進水させるためのスロープのところで向きを180度変えると、ウィリーの台車を先にして、海に入って行く(3枚目の写真、矢印はジェシー)。なお、この3枚の写真は、映画と比較して意図的に暗くしてある。理由は、コイン洗車機でウィリーに水をかけた時には真っ暗だったのに、それから、1時間も走るハズもないのに、マリーナの場面はかなり明るくなっていて違和感が大き過ぎると思ったから。以後の節も、時間の経過とともに少しずつ明るくなるように、明度を順次変えてある。
マリーナの入口の扉とスロープはそれほど離れていないので、ピックアップが180度向きをかえて海に入っていく間に、悪者どもが襲いかかってくる(1枚目の写真、矢印はジェシー、ジェシーをつかんでいるのはウェイド)。このシーンのあと、グレンがウェイドを殴り付け、ジェシーはウィリーのところまで泳いで行くと、ウィリーに声をかけて沖にむかって逃げるように促す。ウィリーは、その言葉に従って、係留された漁船の間の水路の先にある防波堤の隙間に向かって泳ぎ始める(2枚目の写真)。しかし、悪賢いダイアルは、万が一を考え、予め2隻の漁船を防波堤の手前に配置しておき、ウィリーが防波堤に近づくと、行く手に網を張って通さないようにしてしまう(3枚目の写真)。
それを見たジェシーは、海から出ると、マリーナの縁にそって走りながら、ウィリーに向かって、「船から離れろ! 網から離れろ! 僕の方に来い! こっちだ急げ!」と叫ぶ。そして、粗い石を乱雑に積んだだけの防波堤の水辺に座って手を海に入れると、手を揺らしてウィリーを近くに来させる(1枚目の写真)。そして、ウィリーに向かって 「寂しくなるね。僕を忘れるなよ、いいね? 僕も、君を忘れない。君のママによろしく。君のことが大好きだ。君を信じてる。君にならできる。自由になれるんだ」と優しく声を掛ける(2枚目の写真)。そして、防波堤のより ”幅の狭い” 部分に向かって走りながら、口調を変え 「やるんだ、ウィリー! 来いよ! 君ならできる! この壁を飛び越えるんだ! 君を信じてる! 君ならできる! 自由になるんだ! 飛ぶんだ!」と叫ぶ。そう鼓舞すると、ジェシーは防波堤のてっぺんに上がり、さらに先端近くまで走って行く。そして、ウィリーに向かって、「来い、ウィリー! 1回やるだけでいいんだ! たった1回だ!」と再度叫ぶ。ウィリーは防波堤から離れると、向きを変え、全速で防波堤に向かって泳ぐ。それを見たウィリーは、「サラナ・エイヨ・ナイシス」と言うと、右手を上げる(3枚目の写真)。それを遠くから見たランドルフも、「サラナ・エイヨ・ナイシス」と祈る。突然、防波堤の手前にウィリーの吻が現われ、次いで胸びれが現われる。カメラの角度が俯瞰的になり、防波堤の上に立ったジェシーの上をウィリーが飛び越えて行く(4枚目の写真)。ジェシーは、自分の上を飛んで行くウィリーを、海水をいっぱい浴びながら、嬉しそうに見送る(5枚目の写真)。
ウィリーの脱出を見て、最初に映るのが、愕然としたダイアルとウェイド。いい気味だ。そして、海の中で抱き合って喜ぶランドルフとレイ(1枚目の写真)。ピックアップの荷台の上では、グレンとアニーが抱き合って喜ぶ(2枚目の写真)。ジェシーは、ウィリーの姿が消えた海に向かって 「さよなら、ウィリー。寂しいな。いつか会えることを願ってるよ。大好きだ」と言っていると、そこに、グレンとアニーが上がって来る(3枚目の写真)。ジェシーは、2人に向かって 「ホントにありがとう」と言い、アニーに抱き着く(4枚目の写真)。「家に帰りましょ」。「そうだね」。2年後に公開された『Free Willy 2: The Adventure Home(フリー・ウィリー2)』でもジェシーはグリーンウッド家の一員なので、最後のグレンの献身的な協力でジェシーが落ち着き先を見つけたことが分かる〔ピックアップの運転席の座席まで浸水したので、車は廃車にするしかなかった。『フリー・ウィリー』のピックアップは、1985年製のGMC K-3500。『フリー・ウィリー2』のピックアップは、1993年製のFord F-350〕〔ウィリーとは、『フリー・ウィリー2』だけでなく、4年後に公開された『Free Willy 3: The Rescue(フリー・ウィリー3)』でも会える〕 。