フランス映画 (2017)
私は多くの映画を観てきたが、これほど自然、特に、森そのものと、そこに住む動物について、これほど美しく、時間を割いて映像化した作品は他に観たことがない。この映画の前半は、パリの孤児院から引き取られた12歳のポールが、密猟者、密漁者、密森林者(森林においてその産物を窃取する者)のトトシュに教えられて、森の中で各種の生命体が “生きること” の厳しさについて学ぶ場面。まさに、「森の中」の「生命の学校」、映画の題名そのものだ。この映画の、森における重要サブ・テーマは、巨鹿(géant、grand cerf)と呼ばれている、巨大な角を持った雄鹿。伝説の鹿をどうしても捕まえたい伯爵による狩猟の場面は、ドキュメンタリーさながらの迫力がある。それに、その清々しい結末。この映画の、題名とは全く関係がないのが、映画の最後の場面を占める、ポールの素性が明らかになっていく過程。ある意味、これほどのハッピーエンドの映画は他にないのではないかと思う。いろいろな意味で、誰が観ても感動を与えてくれる素晴らしい映画だ。
この映画には、1150行の字幕が付いている。そして、映画を観て行く上で、重要な情報が字幕の中に数多く点在している。そのため、この映画の紹介するにあたり、全字幕の正確な訳が必要となった。しかし、問題が幾つか生じた。①俳優が話しているフランス語と、字幕のフランス語が、ほとんど一致しない。②普通の訳では通じないフランス語の表現が時折使われ、Cambridge DictionaryやCollins Dictionaryでは、私が持っている辞書と同程度の機能しかないので、いつも愛用しているbab.la(https://en.bab.la/dictionary/french-english)をフルに利用したが、今回はそれでも答えが見つからず、フランス語でAIに訊いてみたり、「フランス語の罵倒表現に関する言語学的研究」という筑波大学博士(言語学)学位請求論文で、ようやく意味がつかめたものすらあった。③フランス語の字幕だけでは信用できず、オランダ語の字幕を並行して使用・照合し、正しいと思われる方(半々)を使用した。④英語字幕は、省略が過ぎて全く使い物にならなかった。翻訳にこれほど苦労したのは、今回が初めてだったと言える。
主役のポールを演じたのは、ジャン・スキャンデル(Jean Scandel)。2004年11月10日生まれ。映画の撮影は映画の舞台と同じ地域で2016年9月19日~11月25日に行われたので、撮影時11~12歳。映画への出演は、これ1作のみ。演技は自然で、非常に巧い。
あらすじ
映画の冒頭、「パリ、1927年〔夏〕」と表示される。第一次世界大戦〔1914年7月28日~1918年11月11日〕が終わって8年半以上経過している。それでも、パリにある孤児院には、幼児の時に入所した戦争孤児が数多く残されている。少しでも、入所者を減らすために、子供たちは里親や養子に出されてきた。そして、その順番が、この映画の主人公、ポールにもやってくる。パリから100km以上南にある田舎から呼ばれた中年の女性セレスティーヌが所長室に入って行く。「遠方からお出でいただき、感謝します」。「わざわざ来たわけじゃないんです。クルブヴォワで兄に会う予定だったのです」。「私があなたにお会いしたかったのは、当所の孤児たちは国の保護下にあり、特に戦争孤児はそうなのです」(1枚目の写真)「でも、いつまでも続けられません。里親の家族に引き取っていただく必要があります。お分かりいただけるでしょう? その際、子供が新しい家庭と何らかの繋がりを持っている方が良いのです。ポール・カラデック少年のファイルには、あなたの名前しか見つかりませんでした」。その時、机の上の書類が一瞬だけ映る(2枚目の写真)。映画の観客には分からないが、文字が判明できる右端の書類を紹介しよう、そこには、この女性セレスティーヌ(Célestine)の文字はない。そこに書かれているのは、ポールの貴重な情報。上から、「生年月日: 1915年5月3日(今12歳)/生誕地: ブロワ(Blois)/姓: カラデック(Caradec)/名: ポール(Paul)/マチルド・ドゥ・ラ・フレネー(Mathilde de la Fresnaye): の息子/母の職業: 無職/ジョン・カラデック(Jean Caradec): の息子/父の職業: 鉄道員(cheminot)/住所(省略)」。後で分かるが、マチルドは出産時に死亡し、ジョンは戦死した。そこで問題となるのが、所長はなぜ、マチルド・ドゥ・ラ・フレネーの名を見落としたか、という点。名の後に、“de la” が付いているのは貴族の証拠。だったら、Fresnayeという貴族は1人しかいないのだから、確認することは容易で、そんな重要人物の娘なら、たとえ本人は死んでいても、簡単に見つかるであろう(それに気付かなかった担当者は、職務怠慢で無能な人間)。しかも、そんな重要な公式文書を、いくら観客には判読できなくても、なぜ、わざわざ見せたのだろう? 所長は、セレスティーヌに 「あなたは父親をご存知だったと思います」と訊く。「父親は知りません。母親は知っています」。「もし差し支えなければ、どのような ご関係ですか?」。「ええと… 同じ故郷の人でした。私の村の」〔不適切な回答〕。「この子をご存知でしたか?」。「いいえ。一度も会ったことがありません。お母さんは可哀想そうに出産で亡くなりました」。「遠回しに言うのは止めましょう。この男の子を引き取っていただけませんか?」。「つまり… 養子にしろと?」。「急ぐ必要はありません。お互いにうまくやっていけるかどうか、様子を見て決めればいいのです」。「所長さん、そ、それは… 無理です」。「でも、あなたは慣れておられる〔以前、里子を育てた〕」。「ええ、でも… この子は無理。連れて行けません」(3枚目の写真)。ここで、所長は、せっかく来たのだからと、会って行くよう勧める。所長は、ベッドが並んでいる薄暗い部屋にセレスティーヌを連れて行く。所長は、部下に、「カラデックを連れてきたまえ」と命じる。カラデックが、職員に襟を掴まれて連れて来られると、所長は、「ここで一晩過ごしたいか? マダムがお前に会いたいとおっしゃる。そんな態度で、お前を どう思われる?」と、里子に引き取ってもらえる可能性をちらつかせる。それに対し、ポールが 「構うもんか」と生意気に返事したので(4枚目の写真)、所長はポールの頬を強く引っ叩く。セレスティーヌは、まさかという顔で驚く。所長は、「あれは、子供のせいじゃないんです。壁に閉じ込められていると、頭の中にも壁ができるんです。だからこそ、家族と一緒にいることが大切なんです」と、最後の一押しをする。

セレスティーヌは、ポールを引き取り、汽車に乗せて、自分が住んでいるロワレ県に向かう。窓辺に座ったセレスティーヌは、向かい側に座ったポールに、「チョコレートはどう?」と勧めるが(1枚目の写真、矢印、窓には、ちょうど、ポール役の俳優の名前が表示されている)。ポールは、「いりません」と、丁寧だがきっぱりと断る。その後、汽車はロワレ県に入り、シャンボール城のすぐ近くを通っていく(2枚目の写真は、城に見とれるポール)〔現在はもちろん、1930年のロワレ県の鉄道マップを見ても、城の10キロ以内に鉄道はない〕。その後、空撮に変わり、映画のタイトルが表示される(3枚目の写真)〔ロワレ県を含めたこの辺りのことを、現地の人は、ソローニュと呼んでいる〕。

セレスティーヌとポールは、駅から家まで林の中の道を歩いている。ポールがずっと黙っているので、「話したくないの?」と訊くと、「マダム、話したくありません」と、また、丁寧に答える(1枚目の写真)。「マダムなんて、呼ばないで。私はセレスティーヌよ。ママ・セレスティーヌ」。「誰にも、ママとは呼びません」。その時、2人は、城に向かう道を歩いていた。そして、城から、黄色の高級車が出て来たので(2枚目の写真)、2人は脇に避ける。車は2人の前で停まる。セレスティーヌは、運転席に座った生意気そうな若い男ベルトランに向かって、「夏休みに この子を預かりました。私のいとこの甥の息子です」と言うと(3枚目の写真)、怖い顔をして見ていたベルトランは、「よかろう。屋敷の仕事はちゃんとやれ。始末する物もある」と命じる。すると、隣に座っていた若くて美しい女性が、「青い部屋のランプを壊しちゃったの」と話す。「ご心配なく。私が対処致します」〔これで、セレスティーヌが、この城に雇われている家政婦だと分かる〕。その時、ポールが、車のフェンダーの上の飾りに触ろうとしたのを見たベルトランが、「こら! 触るんじゃない!」と怒鳴る。そして、セレスティーヌに、「じゃあ出かける。夕方までにはパリに着く」と言い残して去って行く。車がいなくなると、セレスティーヌは、「彼は伯爵じゃない。その息子よ。ドラ息子」と教える。さっき、セレスティーヌが、“いとこの甥の息子” と言ったので、ポールがその理由を尋ねると、「私の家には、誰でも泊めていいわけじゃないの」と答える。「つまり、嘘ついたんですね?」。「誰かに訊かれたら、さっきの話を繰り返すのよ。それから、“丁寧語” を使うのは止めなさい。私は伯爵夫人じゃないのよ」。

ポールは、城の脇にある伯爵領の森の狩猟監視員ボレルの家に連れて行かれる(1枚目の写真)。上着を脱いだポールは、さっそく家の横に置いてある幾つかの小さな檻の中に入れられているウサギに興味を持ち、六角形の金網から指を入れてウサギの顔に触ってみる(2枚目の写真)。すると、指に噛みつきそうになったので、慌てて指を抜く。その、慌てようを見ていたセレスティーヌは、「ウサギは、あんたを食べない。むしろその逆よ」と言うと、そのウサギの檻の扉を開ける。「何て名なの?」。「ジャンノよ」。そう言うと、セレスティーヌは耳をつかんでウサギを引っ張り出し、都会っ子のポールを怖がらせる。場面は夜になり、ボレルがキツネを1匹ぶら下げて帰って来る。そして、ポールを見て、「そいつが、例のガキか?」と言う。「ポールって名よ」。そして、夕食が始まり、孤児院ではついぞ食べたことのない、おいしそうな料理が皿につけられるのを見て、ワクワクする(3枚目の写真)。そこで、「これ、何?」と訊くと、セレスティーヌは 「ウサギよ。覚えてないの? これ、ジャンノよ」と答える。それを聞いたポールは、すぐに席を立ち、「そんなの、ひどい」と言って部屋に行ってしまう。そして、寝る時間。セレスティーヌはポールに、「ここは 私の子供たちの部屋だったの」と言う。「あなたの子供?」。「あなた(vous)って言うのは、やめて。ホントは、私の子供じゃなかった。神様は私がママになることを望まなかったから、私は他人の子供の世話をしたの。私を、ママ・セレスティーヌと呼んだのは彼らよ」。そして、話はポールの父に移り、「あんたの父さんは生活保護を受けた少年だった」と話す。そのあと、夫のポールについて話した後、部屋を出る前に、「さあ、ぐっすり眠って」と言い、キスしようとするが、ポールは顔を逸らしてキスさせない。セレスティーヌがドアまで行くと、ポールは、「鍵をかけるつもりですか(Voulez allez fermer la porte à clé)?」と訊く。セレスティーヌは、ポールが “丁寧語” を使い続けるので、この際、はっきり分からせようと、「言い直して。『鍵かけるの(Tu vas fermer la porte à clé)?』」と、分かり易く注意する。

翌朝、ポールは、檻に残ったウサギが食べられないよう、「さあ、みんなここから逃げて」と言いながら、3つの扉を開けるが、ウサギは出ようとしない。「何てバカなんだ」と不満をぶつけると(1枚目の写真、矢印は扉)、いつの間にか、それを見ていたボレルが、「ウサギと話してるのか? 閉めて、犬に餌をやるのを手伝え」と命じる。「犬は好きじゃない」。「怖いのか? ソローニュに来るべきじゃなかったな」。「無理矢理だよ」。「そうか? 今は ここにいるんだから、仕事しろ」。そして、水の入ったバケツを持たせて犬小屋に向かう。ポールは、ボレルの腕に付いた金色の腕章を見て、「逮捕できるんですか?」と訊く。「そうだ。狩猟監視員は、森の警察官だ」。「森に泥棒がいるの?」。「密猟者って言うんだ」(2枚目の写真)。「密猟者?」。「ああ、密猟する奴だ。厄介者だ。動物、魚、キノコ、木材… 何でも盗みやがる。ここにも一人いる。トトシュ。最悪の奴だ。現行犯で捕まえてやる。刑務所に直行だ。流刑地かな」。そして、犬小屋に着くと、ボレルは、頑丈な鉄の扉を開けて中に入る(3枚目の写真)。小屋の中には、数10匹の茶色の猟犬〔ショートヘアード・ハンガリアン・ビズラ?〕がいて、よく飼い慣らされている。しかし、ポールは犬が怖いので、バケツを持って中に入った途端、犬に押されたのか、バケツを倒してしまい、ボレルから、「この不器用な間抜けめ! 出てけ」と叱られる。

そのあと、セレスティーヌが城に向かうために制服を着て、エプロンをポールに結ばせながら、「急いで、早く行かなきゃ。屋敷で仕事が待ってる」と急かす。ポールが、「俺も一緒に行く」と言うと、セレスティーヌは、「ダメよ。伯爵は子供が好きじゃない。彼が来たら、逃げなさい。いい?」と、城以外で会った時の注意をする〔顔も知らないのに、どうやって逃げられる〕。「一人で何すればいいの?」。「好きなようにしてて」。「散歩に行ってもいい?」。「もちろん」。生まれて初めて大自然の中に入って行くことを許されたポールは、洗濯物の前で、じっと森を見つめる(1枚目の写真)。ここから、カメラは、広大な森を美しく描いていく。そこでは色々な動物が、自由気ままに動き回っている(2枚目の写真、矢印)。かなりの時間が経ち、ポールが家に戻ると、セレスティーヌは城から戻っている。セレスティーヌと一緒に、森の中の道を歩きながら、ポールは、「トトシェって、どんな人?」と訊く。「誰から聞いたの?」(3枚目の写真)。「旦那さんのボレル。流刑地送りにしたいって言ってた」。「あの2人… 犬猿の仲なの。トトシェは悪者じゃない。彼はただ… 何て言えばいいのかしら? 自由。それね。彼、ホントに自由なの。決められた通りにしか行動しないボレルとは大違い」。「密猟者だって」。「ソローニュではみんなそうしてるし、容認されてる。日々の生活を良くしないと。この土地は貧しいから」。2人がロワール川まで来ると、セレスティーヌは 「あれが彼の家よ」と教える。「家なんかないよ」。「ええ、船があるでしょ。林のそばの窪みの中」(4枚目の写真、矢印)。

翌日、ポールはトトシェに会えないかと、ロワール川に架かる橋の上に行ってみる。すると、川に入って一人で漁をしている男がいる(1枚目の写真、矢印)。ポールは、漁などやったことがないので、岸辺まで降りて行くと、その音で耳ざとく気付いた初老の男がふり向く(2枚目の写真)。男が手にしているのは、手製の四つ手網。男の右側の石の上には、小さな犬がポールの方を見ている。それを、男の側から撮ったのが、3枚目の写真(岸辺は結構急勾配)。その時、犬が石の上でバランスを崩し、川に落ちてしまう。それを見たポールは、助けようと靴のまま川の中に入って行く。男は 「坊主(Garçon)!」と何度も叫ぶが、それは、少年(garçon)に対して言ったのでなくて、犬の呼称。ポール:「助けなきゃ」。男:「俺は、泳げん!」。ポールは、服のまま川の流れに沿って泳ぎ出す。しかし、男が心配するのは、自分の犬のことだけ。犬が岸に倒れた木の密生した枝に向かって泳いでいるので、「坊主、流れに逆らうと、枝に引っかかるぞ!」とハラハラしながら叫ぶ。ポールは上手に泳いで、枝の中に閉じ込められた犬を助け出す。男はすぐにロープを投げ、犬を抱いたポールはロープにつかまり(4枚目の写真、上の矢印は犬、下の矢印はロープ)、男はロープをたぐり寄せて犬を助ける。ポールに対する感謝の言葉はない〔ポールが岸辺まで来たのが悪いと思っている〕。

次のシーンは、2つ前の節にある川沿いの船の中〔つまり、この男がトトシェ〕。ポールは下着の上から布を巻き付け、服はトトシェがどこかで干している。ポールが1人で船の中を見回していると、ドアを開けてトトシェが入って来る。そして、「お前、どこで泳ぎを習った?」と訊く。「孤児院で。教理問答かプールのどちらかだったから」。トトシェは、それで会話を打ち切ったので、ポールは逆に、「どうして犬を坊主って呼ぶの?」と訊くが返事はない。その後も、「釣りの仕方を教えて」。「他にやることがある」と、何ともすげない(1枚目の写真)。「何か教えてあげようか? 例えば、泳ぎ方とか」。「なあ、『坊主』を助けてくれたことは感謝しとる。だが、子供は邪魔だ。特にパリっ子はな」。最初は笑顔だったポールも(2枚目の写真)、この冷酷な言葉にがっかりする。トトシェは、乾ききっていない服を渡し、「さあ、帰れ」とポールを追い出す(3枚目の写真)。

夜になり、ポールが洗面台で顔を洗っていると、ボレルが外出の用意をしている。セレスティーヌが、「どこ行くの?」と訊くと、「大きな樫の木の下」と答える。「北風が吹くと、キジが群れをなして枝に止まる。だが、それを知っているのは俺だけじゃない。満月だ、あの野郎も狙いに来るだろう。そしたら、現行犯逮捕して、トトシュを刑務所に入れてやる」と言うと、時計を見る(1枚目の写真)。ボレルが猟銃を持って出かけ、ポールがセレスティーヌにお休みを言おうと、寝室を覗くと、彼女が、窓を開けて白い布を干している(2枚目の写真、矢印)。夜なので理に合わない行動なので、「それって何のため?」と訊く。セレスティーヌは、「ええと… 乾かすためよ」と曖昧に答え、お茶を濁そうと、ポールが川で濡らした服を、「濡れた服、干しておいた」と言って渡す。カメラは、窓に干された布を外から映し、さらに、森の中から出て来た男が、窓から入り、セレスティーヌが布を外す短いシーンを映す。そして、彼女が窓を閉めると、カーテン越しに、2人が立ったまま抱き合う姿が一瞬見える。自分の部屋で本を読んでいたポールは、セレスティーヌの笑い声に気付き、ドアを開けて外を覗く〔何が見えたのかは分からない〕。朝になり、森で一夜を無駄に過ごしたボレルが帰って来て、寝るために寝室に入って行く。セレスティーヌは、ポールにスープと薄切りにしたフランスパンを出し、「トースト食べて」と言う(3枚目の写真)。

ポールは、すぐに森に行くと、大きな樫の木の下に行き、トトシュを見つける。“坊主” の唸り声で、存在に気付いたトトシュは、振り向いてポールの襟を掴むと、「またお前か? 失せろ!」と言って突き放し、「スパイしろと、ボレルが言ったのか?」と訊く(1枚目の写真)。「ううん、誓うよ…」。「失せろ! 立ち去れ!」。「一緒に行きたい」。「ダメ、嫌だ」。そこで、ポールは、昨夜見たことを種に脅す。「ボレルは あなたを刑務所に入れようと、一晩中外で過ごした。僕は あなたがどこで、誰といたか知ってる。だから、連れてかないと…」(2枚目の写真)。トトシュは、「いいか、クソガキ。もし捕まったら、俺は、刑務所に行く前に、喉を掻っ切るんだ」と言うが、そんなこと するハズがないので、ポールは、「僕も刑務所にいたんだ」と言う。「笑わせるな!」。「孤児院だけどね」。「聞きたくない」。しかし、トトシュの態度が和らいだので、後を付いて行くことが許されたポールは笑顔になる(3枚目の写真)。2人は沼地と草むらの境を歩く。すると、“坊主”が吠えたので、トトシュが犬をどける。すると、その先には罠にかかったウサギがいたので、掴み上げて紐を外す。それを見たポールが、「これが、密猟ってやつ?」と訊く。「密猟… 何 言ってる? 俺の獲物だ」。

さらに歩いて行くと、目の前に泥の沼が現われる。すると、トトシュは泥の前に跪いて詳しく調べ始める。そして、初めてポールに教え始める。泥の上に付いた動物の足跡を見せ、「足跡の先端に指が2本見えるだろ? これで、動物の重さが分かる。1センチあたり10キロだ」と言い、足跡後部の幅を手で測る。「こりゃ、12センチかな? オスだ。3歳か4歳だな。120キロくらいの」。「何のオス?」(1枚目の写真)。「豚だ。お前みたい都会っ子は、イノシシって言う」。次のシーンでは、2人は倒れた大木の幹に座り、トトシュは瓶に入った水を飲み、持って来た小さなソーセージか何かを切ってポールに渡す。「ありがとう」と言って、ポールが手に取ると、ちょうど下を向いたトトシュが、「動くな」と小声で命じる。ポールは、パンと肉を持ったまま固まる。「1ミリも動くな」。カメラは、ポールの靴に近寄ってくる蛇を映す。トトシュは、先端が小さなYの字になった棒を取ると、Yの部分で、靴に登り始めた蛇の頭を押さえ、指でその下を掴んで引っ張り出す。そして、「100スーだ、薬剤師がくれるぞ。これで、俺の喉が潤う。袋を寄こせ」と嬉しそうに言い、ポールが渡した袋の中に、長さ1mほどの蛇を入れる。すると、“坊主”が小さく吠えたので、トトシュは急いで荷物をまとめ、ポールに 「来い。急げ」と命じる。そして、草の中に隠れて様子を窺う(2枚目の写真)。遠くから、猟犬の吠える声の次に、ボレルの叫び声が聞こえる。「トトシュ、いるんだろ! 出て来い!」。すると、それを打ち消すように、「ボレル、君は 騒ぎ過ぎだ」という別の声が聞こえる。「わしは、鹿が見たかったんだ」。「伯爵様、これは奴の罠です。ご覧を。どうか告訴して下さい」。「証拠が必要だ。何もないだろう。誰がトトシュだと言った? それに、ウサギは この領地にたくさんいるんだ」(3枚目の写真)。「ですが、密猟は防がないと。そのためには柵を設ける必要があります」。「絶対にいかん。柵などいらん。森は牢獄じゃない。わしの森で 狂ったように叫ぶのは止めてくれ」。

2人が、別の湿地との境界に着いた時、トトシュはボレルをやっつけるための策略を始める。ポールと “坊主” を上にやり、「ほら、そっちの乾いた方を歩くんだ。足跡を残さんよう気をつけろ」と指示する。そして、トトシュは湿地帯の上を足跡をわざと残しながら歩くと、近くの石の上に座り、ポールに 「これは、”騙し靴” だ」と言いながら、二重底になった靴底の下の部分を回転させる(1枚目の写真、矢印)。この状態で歩くと、泥に付いた足跡は、歩いたのと逆向きに付く。両足とも逆さまにした後、トトシュは意図的に歩き回る。それを見たポールが、「ボレルは、またあなたのせいにする」と言うと、「その通り」と応え、ポールはニッコリする(2枚目の写真)。そのあと、ボレルが、湿地についた沢山の足跡を見て 興奮するシーンがある。そして、やったとばかりに、食堂で雉を食べている2人の警官のところまで行くと、湿地で見つけた罠も見せ、「トトシュを捕まえたよ。この2つの罠は奴のもんだ。足跡だって残っている」と売り込む。「いつもそう言うが…」。「違う、違う。ぬかるんだ土だから、足跡が消えることはない。これで、奴を逮捕だ!」。そして、3人は湿地まで来る。しかし、うかつなボレルは、足跡に興奮しただけで、ちゃんと調べた訳ではなかった。だから、警官の前で、「変だな… 奴が、どっちに行ったのか分かん」という始末。警官は、「現行犯で捕まえない限り、私たちには何もできん」と、お粗末なトトシュをバカにしてニタニタしている(3枚目の写真)。

一方、森の中をどんどん進んでいるトトシュは、落ちていた片側だけの鹿の角を拾い、ポールに見せる。「猟師が殺したの?」。「まさか。冬になると、”ボワ”(bois)〔鹿の角、木の葉、の2つの意味がある〕は落ちる」と教える。まさか、鹿の角だとは思わないポールは、頭上の木を見上げる。すぐ間違いに気付いたトトシュは、そっち〔木の葉〕じゃない、鹿の角(bois du cerf)だ。春になると、また生えてくる」と一般論を言った上で、「立派な角だ」と評価する。鹿の角など見たこともないポールは、「どこが?」と訊く。トトシュは、頭に一番近い枝角(えだつの)から、「アンドゥリエ(andouiller)、シュロンドリエ(surandouiller)、トロシュア(trochure)、2つに分かれたエポワ(époi)」と名前を教える(1枚目の写真)。参考までに、https://www.researchgate.net/figure/Nomenclature-dun-bois-de-cerf-e-laphe_fig105_273772385 に掲載されていた2枚目の図によれば、シェヴィリュア(Chevillure)だけがない角になっている〔これが左右揃えば、「10の角」というタイプの角になる〕。トトシュは、角を落ちていた場所に置くと、次に森から聞こえてくる鳴き声をポールに聞かせる。「聞こえるか?」(3枚目の写真)。「鳥だね」。「鳥に決まっとる。何て奴だ。ハッコウチョウ(fauvette)だ。ハッコウチョウは “森の番人” と呼ばれとる。危険があると警報を鳴らす」。その時、狐が1匹突進して行き、草むらにいた鳥に襲いかかる。トトシュは、現場まで急いで行くと、狐は逃げて行き、大きな鳥の死骸が残される。鳥を抱き上げたトトシュは、「いい鳥だ」と言う〔自分で食べることを考えている〕。ポールが、「かわいそう」と嘆くと、トトシュは映画の題名にも関係するようなことを言う(4枚目の写真)。「そうじゃない。それが “生きること” だ」。「生きることは死じゃない」。「いや、そうなんだ。狐が生きるには、雉は死なねばならん。雉が生きるには、昆虫は死なねばならん。昆虫が生きるには、植物は死なねばならん。それが自然なんだ。生、死、そして、生」。

帰宅して、サヤインゲンの両端をちぎり取るのを手伝っているポールに、セレスティーヌは 「あんたを森に行かせたのは、トトシュが一緒だからよ。これは、私たちのちっちゃな秘密。ボレルに知られたら、二度と行けなくなるわ」と話し、「トトシュのこと、好き?」と訊く。それに対し、ポールは、先にトトシュに使った策略を、ここでも使うが、うんとお手柔らか。「そっちも だよね?」(1枚目の写真)。「あのね… ボレル以外は、みんなトトシュが好きなの」。「でも、他の誰より 好きだよね?」。「あんたの質問、イライラするわね」。ここで、ポールは話題を変える。壁に貼られたボレルの小さな額縁入り写真を見て、「ボレルの上の写真は誰?」と訊く。「それ、私の弟のギレック。彼が戦場へ旅立った日よ」。「戻ってきたの?」。「ええ。神様ありがとうございます」。「僕の父さんは戻ってこなかった。死んだらどこに行くの?」。「もちろん天国よ」。「なぜ死んだ人を埋葬するの?」。「生きている人と同じ。死んだ人にも家が要るわ。墓はね、死んだ人の家なの」。「父さんは、軍人墓地に埋葬されてる。一度も会いに行ったことないよ。母さんは、どこに墓があるかも分からない」(2枚目の写真)。

別な日、ポールは1人でホートを漕いでいると、伯爵の乗った馬がすぐ近くの岸で停まる(1枚目の写真、矢印)。伯爵は馬を降りると、帽子を脱ぎ、林の中の小さな建物の中に入って行き、小さな窓にランプが点くのが見える(2枚目の写真)。そして、その直後のシーンが3枚目の写真。ポールは城の中に入ろうとしている。2枚目の写真は一瞬なので、如何にも、ポールがボートで岸に漕ぎ付け、すぐに伯爵が入って行った建物に侵入したかのように見える。ここで、再度、「問題の指摘」を行おう。この映画の監督・脚本ニコラ・ヴァニエは、2013年のBelle et Sébastien(ベル&セバスチャン)の監督・脚本でもある。以前、この映画を紹介した時の解説に 「映画は、フランスで大ヒットしたが、受賞数は少ない。恐らくストーリーが単純で、脚本に深みと一貫性がないのが原因であろうが、全編オールロケで描かれるアルプスの美しい四季は息をのむほど素晴らしい」と書いておいた。実は、この映画でも、同様のことが起きている。あらすじの冒頭で「マチルド・ドゥ・ラ・フレネー」のことは指摘したが、映画の観客には全く分からない。そして、今回のこの画面。やはり、観客には気付きにくい。しかし、不自然であることに変わりはなく、映画のプロなら、他の表現方法が考え出せなかったのかと訝(いぶか)しむ。実は、伯爵が入っていった場所は、このあらすじの、最後から9番目の節と同じ場所なのだ。その場面を見れば、“林の中の小さな建物” と、城館とが離れていることが分かる。それを強調するため、4枚目にグーグル・アースの航空写真を付けておいた。この中で、中央に映っているのは、この映画が撮影されたヴィルブルジョン(Villebourgeon)城〔オルレアンの南35km、ブロアの東40km〕。そして、右下の黄色の矢印が、ポールのボートが点いた地点で、矢印の先端に伯爵が入って行った小さな祠がある。そこから城の南端までは、歩いて110mほどある。映画を観ていると、伯爵が入って行った場所にポールも入っていったように見えるが、実際には、セレスティーニに近づかないように言われた城に、最低110mは歩いて侵入したことになる(それを観客に悟らせないよう、2枚目と3枚目のシーンを連続させたのは不誠実だ)。しかも、3枚目の貧相に見えるドアをくぐった先には、5枚目の立派な部屋がある。こんな家宅侵入をポールがするだろうか? 映画は、こうした矛盾を無視して、新たな展開へと導いていく。ポールは、最初に入った部屋を出て、廊下を歩いているうち、廊下から右に上がって行く階段の所まで来る。階段の壁には、伯爵が猟で勝ち取った鹿の角が一面に飾ってある。ポールが階段を少し登って それを見ていると、階段の踊り場まで降りてきて侵入者に気付いた伯爵が、「おい、ここで何してる? 君は誰だ?」と詰問する(6枚目の写真)。ポールは、セレスティーヌに、「彼が来たら、逃げなさい」と言われていたので、「答えろ!」の言葉も無視して、逃げ出す。

伯爵は、さっそく調理室に行き、そこで働いているセレスティーヌと、同僚の女性に、「ここをうろついている少年は誰だね?」と訊く(1枚目の写真)。すぐにピンと来たセレスティーヌは、「バカンスで来ているパリっ子です。もう ご迷惑はおかけしません」と謝る。「あの無口の子の名前は?」。「ポール・ラカサーニュ。私のいとこの甥の息子です」。伯爵は、「そうか」と言って出て行く。城を逃げ出したポールが、どこに行ったのかは分からないが、夕方になって家に戻ってくる。ドアの横で、靴に付いた泥を、細い枝のようなものを束ねた “はたき” で払っていると、ボレルが、「こんな時間まで どこにいた?」と訊く(2枚目の写真、矢印)。ポールが黙っていると、「親爺は礼儀作法を教えんかったのか?」と批判する。ポールが、「父さんは戦争で死んだ。放っといて」と反論すると、ボレルは立ち上がり、ポールの胸を掴むと、「何だと?!」と怒鳴るが、そこにセレスティーヌが」割って入り、夫を止める。そして、ポールに対しては、「あんたは、お屋敷をうろつくんじゃない」と叱る(3枚目の写真)。ボレルは、「気に入らんのなら、パリに帰りゃいいんだ」と言った後で、「あいつの親爺は戦争で死んだのか?」と訊く。「そうよ。可哀想に」。「ラカサーニュは除隊になったって言ってなかったか?」。この危機的な質問に、セレスティーヌは、とっさに、「あなた、私の “甥のいとこ” と勘違いしてますよ。あの子は、私の “いとこの甥” の子です」と誤魔化す。

ある朝。トトシュのボート・ハウスが映り、その前を多くの鳥が飛んで行く(1枚目の写真)。この映画らしい素晴らしいシーンだ。船の中では、トトシュが、ルアー釣り用の疑似餌を作っている。ポールが、何でも知っているトトシュに、「あなた、誰に教わったの?」と訊く(2枚目の写真)。「教わったって、何を?」「釣り、植物、動物…」。「自分でだ。見て覚えた。俺がお前くらいの時、家には10人いた。親爺は、食い扶持が多過ぎると言って、俺を ”牛飼い少年” に出した。俺は、ここの農場で牛の世話をした。日なかは牧草地で。夕暮れ時に牛舎へ。俺はワラの上で眠った。幸せだった。誰も俺を邪魔せんかった。俺は1年後にやっと家に帰れた。親は気にも留めず、挨拶すらしてくれなんだ。そこで俺は言った。『じゃあな、みんな』。そして 冒険に戻った。それから… 俺はまだここにいる」。「じゃあ、両親 いなかったんだ」。「実際のところはな」。「僕たち、同じだね」。「それでも育つ。きっと分かる」。ポールは笑顔になる(3枚目の写真)。

そのあと、2人は、ポールが最初に村に来た時に渡った橋の上に行き、魚の様子を検分する。トトシュは、「ロワール川の主(ぬし)、見事な鮭だ。見えるか?」と、見つけた鮭をポールに教える。「はい。釣ってみるの?」。トトシュは、「やるぞ。あいつを釣ってみせる。できるだけ遠くから釣り針を投げんといかん。お前は、ここから指示しろ」と言うと、ポールを橋の上に残し、自分は大きな鮭を見つけた場所から、かなり離れた下流から川に入り、フライフィッシングを始める(1枚目の写真、矢印)。疑似餌は、鮭の近くでない限り効果がないので、トトシュは、ポールに何度も訊きながら、繰り返し投げる。そして、ようやく鮭のそばに疑似餌が落ち、鮭はすぐに食いつく。それからが大変で、巨大な鮭なので、大きなタモを持ったポールが近づくまで、トトシュは鮭が逃げないよう全力で踏ん張る。ポールは、こんな大きな魚をタモに入れたことがないので、「うんと下からだぞ」と言われても、それほど下げられず、一旦入れた鮭に逃げられる。2回目はタモをうんと下げ、鮭を丸ごと中に入れることに成功する(2枚目の写真、矢印)。しかし、重くてなかなか持ち上げることができないので、トトシュも手伝って水面から上げる(3枚目の写真)。橋の上に戻ったトトシュは、使った疑似餌を歯で切ると、「毛針釣り騎士団の騎士に任命してやる」と言い、ポールのチョッキに付ける(4枚目の写真、矢印)。

場面は、トトシュの船の上に変わり、船の後部デッキに設けられた食卓の上に、トトシュが料理した鮭が皿につけられ、「仕上げに旨いバターソースだ」と、本格的なフランス料理がポールにも振る舞われる(1枚目の写真)。食べながら、ポールが、「セレスティーヌは いつも食事の前にお祈りするんだよ」と言うと、トトシュは、「”聖水盤のカエル”(grenouille de bénitier)〔信心に凝り固まった女性〕さ」という。「それって何?」。「聖餐のワインを飲む祭壇奉仕者」。「孤児院のミサには行きたくなかった」。「それでいい。誰だって、あの世のワインより、この世のワインの方が好きだ」。このあと、話は変な方に向いて行く。ポールが、「セレスティーヌ、来るの?」と訊く。「いいや。なぜ訊く?」。「あの布だね」〔船室の入口にも布がかけてある〕。「どんな布だ?」。「彼女が窓に掛けるやつ」。それでピンときたトトシュは、「いいか、お前。合図が必要だ。でないとボレルに捕まっちまう。絶対、黙ってろ。ボレルが森にいるなら、俺は罠を仕掛けん」と言う。目的が違ってきたので、ポールは、「どこか別んトコ〔セレスティーヌのベッド〕に行くの?」と訊くが、これ以上話したくないトトシュは、「このトトシュ風の鮭はどうだ?」と話題を変える。「おいしいよ」。その時、橋の上を何台かの馬車が通って行く(2枚目の写真、矢印)。ポールが、「あれ、サーカス?」と訊くと、「サーカスじゃない。まあ、そのうち分かる(tu verras)。伯爵がなぜ ジプシーどもを領地に入れるのか、よう分からん。あいつらは盗み、だまし取り、見つけた物は何でもかき集める。キノコ、狩猟肉、魚」と不満を漏らす。ポールは、この時とばかり、「なら、密猟者みたいなもんだね?」と、笑顔でトトシュを皮肉る。話題をさらに変える必要を感じたトトシュは、川に入れて冷やしておいた酒の瓶を引き上げると、「お前の毒蛇の瓶だ。覚えてるか?」と訊き、「一杯注いでやる。旨いぞ。安物の酒じゃない」と言ってカップに注ぎ(3枚目の写真、矢印)、乾杯する。「乾杯したからには、俺を『君』って呼んでくれ」(4枚目の写真)。食事が終わり、酔っ払ったポールは、歌いながら野原を歩いて家に向かう。

家に帰り、夕食の時間になってもポールの酔いは覚めず、なんとなくボーっとしている。それでも、チョッキの毛針を見たボレルが 「それ、どこにあった?」と訊くと、「地面に落ちてた」と、正しく嘘を付く。ここで、セレスティーヌは、食前の祈りの言葉を唱えるが、ポールは、いつもより覚めた顔で、両手を合わせて祈っている2人を見ている。それに気付いたボレルが、「宗教に対して少しは敬意を払え!」と叱ると、「僕は、聖水盤のカエルじゃない」と反論する(1枚目の写真)。ボレルが、セレスティーヌに 「引っ叩いてやる」と許可を求めると、彼女は 「口論はなし」と抑える。そして、「ほら、あなたのために作ったもの見て。豚の胃袋と足よ」と、機嫌を取る。「耳を忘れてないよな?」。セレスティーヌは、「ほら、あんたの耳よ」と言って、明らかに耳だと分かるものを、皿に盛る」。ポールは顔を背ける。それを見たボレルは、「欲しいか? いらんのか? 最高に旨いぞ」と、見せびらかしながら(2枚目の写真、矢印は耳)、耳にかぶりつく。それを見たポールは、吐き気が抑えられなくなったので〔耳が気持ちが悪いから? 酔っ払っているから?〕、走って外に出て行く。ボレルは、「あいつ、なんて弱虫なんだ」とバカにする。しかし、ポールがかなり酔っていることに気付いていたセレスティーヌは、翌朝、路上市が開かれている村まで行くと、箒を売っているトトシュの前まで行き、「くたばるがいい(Mets-le-toi où je pense)! この酔っぱらい! アル中(sac à vin)! あの子は別の目的であんたに預けたのよ!」と怒鳴り立てる(3枚目の写真)。

それからしばらく経ち、ポールが1人でロワールの岸に座り、竿で魚を釣っている。それを、近くの木の上からこっそり見ていたジプシーの女の子が、こっそりとポールの後ろに近づき、釣った魚を入れる缶を盗もうとする(1枚目の写真、矢印は缶)。すると、魚がかかったので、女の子は、缶を置いて逃げて行く。ポールは、獲った魚を缶に入れようとするが、置いた場所になく、少し離れた場所にあった。誰かが動かした違いないので、見回すと、逃げて行く子が 遠くの方に見える(2枚目の写真、矢印は女の子)。ポールは跡を追って行き、ジプシーの一団が滞在している場所に着く。すると、女の子が現われ、「あたいをスパイするなんてね」と言い、「何て名?」と訊く。「ポール。君は?」。「みんなは ベラって呼んでる。あんた、いい時に来たわね。伯爵のために踊るのよ。さあ、来て」。馬から降りる伯爵を 首長が、「お元気ですか? お会いできて嬉しいです」と迎える。「わしもだよ、ジョセフ」。さっそくバンジョーの音が流れ、若い女性たちが、伯爵の前で歓迎の踊りを披露する(3枚目の写真、矢印は伯爵)。

別の日の早朝〔川に朝靄(もや)がかかり、鶏が鳴いている〕、ポールはこっそりと家を出て行く。ポールが 大好きな森の中をゆっくりと歩いていると、鹿の鳴き声がしたので、そちらに目を向ける(1枚目の写真)。すると、木の葉や草に隠れてよく見えないが、今まで見たこともないほど たくさんの枝角を持った鹿がいる(2枚目の写真、矢印は)。ポールはトトシュに報告しようと、あちこち捜し、川岸の林の中にいるトトシュを見つけると 駆け寄って、「鹿を見たよ、おっきな! 少なくとも16本の枝角があった。間違いない」と、嬉しそうに話す。しかし、トトシュは、ここに永年住んでいる自分が見ていないのに、夏休みで来ただけの12歳の子供が見つけるハズがないと思い、「また、酒を飲んだのか? いい冗談だ。笑わせてくれる」と相手にせず、川に迫り出した木の幹に縛り付けた “Λ型の木片” の先の釣り糸を引っ張り、引っ掛かった魚を回収する。そして、鹿のことは無視し、「仕掛け糸、やれるか?」とポールに訊く。ポールが嬉しがると、「2つ渡す。残りは俺がやる。ナイフも貸してやる。誰にも見られんよう気をつけろ」と注意し、Λ型の木片2個と、ナイフを渡して去る(3枚目の写真)。

それからしばらくして、ポールが川沿いの木の仕掛け糸から魚を回収していると、突然、後ろから、「やめろ!」と怒鳴る声が聞こえる。びっくりして振り向くと、ボレルが猟銃を向け、「法の名において、凶器を捨てろ」と命じる。ポールは すぐにナイフを捨てる。「手を挙げろ」。ポールは両手を上げる(1枚目の写真、矢印は猟銃)。ボレルは、ポールが持っていた魚を奪うと、「密漁の現場で現行犯逮捕だ。第132条。これでお前は裁判所行きだな」と言う。「孤児院に戻されるの?」。「いいや。誰が命じたか自白しないと、本物の刑務所だ」(2枚目の写真)〔セレスティーヌのいとこの甥の息子、という話と食い違うのに、なぜボレルは気付かない?〕。ポールは、「誰も」と嘘を付く。ボレルは、ナイフを拾って、「これ、誰のナイフだ?」と訊く。今度は、「僕の」と嘘を付く〔「拾った」という嘘は全く通用しない〕。ボレルは、「嘘つくな! お前は密漁者で、俺に作り話までする。裁判官がお前を信じると思うか?」と怒鳴る。ポールは、びっくりして、「裁判官?」と訊き返すが、返事はなく、「前を歩け」と命じられただけ。ボレルは、ポールを家まで先に立たせて連行すると、セレスティーヌが干している最中の洗濯物に向かってポールを突き飛ばし、妻をびっくりさせる。そして、「お前の悪タレを連れて来た」と言う。「この子、何したの?」。「良心が残ってれば話すだろう。こいつが森でうろつく姿なんか 二度と見たくない。これからは、ずっと一緒にいろ。ちゃんと躾(しつ)けるんだ。さもないと、パリ行きの最初の列車に乗せてやる」と言うと(3枚目の写真)、ほくほくしながらトトシュの船に向かう。そして、「今度こそ、お前は終わりだ(fait comme un rat)。あのガキが吐いた」と嘘を付く。しかし、トトシュの方が一枚上手なので、「ガキ? どこの?」としらばくれる。「俺をバカだと思ってるのか? 刑務所にぶち込んでやる。ガキは、お前の罠だと白状した。証拠は これだ」と言い、ポールから奪った物を見せる。「そんな証拠があるなら、なぜ警察が現れん? それが手順だろ?」。この言葉で、ボレルは何もできなくなる。

一方、夫から、「これからは、ずっと一緒にいろ」と言われたセレスティーヌは、ポールを城に連れて来ている。廊下を通りながら、窓の外を見ていたポールは、女性が馬に乗って城から出て行くのを見て、「伯爵の娘さん、乗馬がとても上手だね」とセレスティーヌに言う。「何 言ってるの? 娘さんは亡くなったのよ。伯爵に会っても、娘さんのことは話しちゃダメ。絶対よ。すごく悲しいことなの。分かった?」と注意する。1人になったポールが、先日と同じ “階段の壁に飾られた鹿の角” を見ていると、今度は下から伯爵が現われて、「やあ」と声をかける。ポールが引きつったように驚くと、「怖がらせたかな?」と訊く。「はい、ムッシュー。少し」。「鹿の角を見てるのかね?」。するとポールは、見ていた角について、「“12の角”( douze cors)〔12本の枝角のある雄鹿の角〕で、“シュロンドリエ”(surandouiller)〔根元から2つ目の枝角〕は真っ黒です」と話す。伯爵は、驚いて、「12の角? シュロンドリエ? 誰から教わったんだね?」と訊く。「ボレルです、ムッシュー」。「これは素晴らしい12の角だよ。わしらに 大変な思いをさせた。鹿は、”賢い入れ替え” (tapé au change) 後に、姿を消したんだ」。「賢い入れ替えって、どういう意味ですか?」。「鹿の策略なんだ。鹿は他の動物を蹴って犬の群れを惑わし、自分の足跡を見失わせる。わしらは、それを何とか乗り越えた」。その時、伯爵とポールが話しているのに気付いたセレスティーヌが、「ポール、来なさい」と言うが、伯爵は、「いいよ、セレスティーヌ。わしは楽しんどる」と答え、ポールには、「狩猟や動物に そんなに興味があるのかね?」と尋ねる。「はい、動物なら」。少し話した後、伯爵は、自慢の15の角を見せ、「これまで捕獲された中で最も美しい雄鹿だ」と言う。しかし、ポールは、もっと大きいのを見たばかりなので、「もっと大きいのは ないのですか?」と質問する。「ああ、“巨鹿” がいると言われている」。「巨鹿?」。「17本か18本の枝角があるらしい。わしの領地に足を踏み入れた、高貴で素晴らしい旅人だ。だが、それは伝説に違いない。実際に彼を見た者は誰もいない」。映画のこのシーンは、ここで終わるが、映画のこの後の展開からみて、ポールはこのあと、伯爵に、16本以上の枝角を持つ鹿を見たことを話したに違いない。

ポールと一緒に城を出たセレスティーヌは、「何を話してたの?」と訊く。ポールは、「狩りと鹿だよ」と答え、「僕、トトシュに会いたい」と言い出す。「ボレルは行かさない。分かってるでしょ」。「ボレルに黙ってたら?」。「学校が始まるから、彼に会う時間もなくなるわ」。「学校?」。「クリスマスまで休みが続くと思ってたの?」。この言葉にポールはびっくりして、笑顔になる。「つまり、僕を家に置いてくれるの?」。そして、学校のシーン。授業の前なので、生徒達は教室の中で遊んでいる。そこに、ドアが開き、ポールと女性教師が入ってくる。教師は生徒達を座らせると、「ポール・ラカサーニュ君です。パリから来た お友だち」と紹介する(1枚目の写真、矢印)。そのあと、授業中のシーンと、ポールが来なくなって寂しそうなトトシュ(2枚目の写真)や、伯爵(3枚目の写真)の姿が交互に映される。

短く紹介するシーン集。ポルチーニ茸を集めているトトシュと伯爵が森で出会う(1枚目の写真)。伯爵の最初の言葉は、「ああ、友よ、すべては望み通りかね?」。トトシュの返事は 「はい、伯爵様、ありがとう」。2人の間柄は、ボレルの異様な態度とは違って、非常に友好的。伯爵が、「密猟はうまくいってる?」と訊くと、トトシュは 「昔とは違います。残念ですが、王様の時代には より自由がありました」と答える〔王様の時代とは、ナポレオンⅢ世(1852-70)を指すと思われるが、映画の設定は1927年なので、57年以上前。トトシュにそんな記憶があるのだろうか?〕。映画の本筋で重要な会話は、「ところで、セレスティーヌがパリっ子を住まわせていること、知っていた?」という伯爵の質問。「パリっ子?」。「ああ。彼を知っているような気がする。不思議だな」(2枚目の写真)「あの子は、わしが憧れる巨鹿を見たと言うんだ」。短い伯爵の会話の前半は、伯爵とポールの関係を最初に暗示する言葉として重要。後半は、階段でのシーンの後、ポールが16の角以上の鹿を見たことを伯爵に話した証拠。次のシーンは夜で、ボレルがセレスティーヌに、「今夜は真っ暗だな。ランタンが要る夜だ。きっと、あいつ、来るだろう。野兎の巣穴へ向かっているに違いない。そこにいたら終わりだ。現行犯で捕まえてやる」と話す場面。それを、ポールはこっそり聞いている(3枚目の写真)。そして、懐中電灯を持ってトトシュに危機を知らせに行く。「トトシュ、ボレルが来るよ。あいつ、あんたを刑務所に入れる気だ」と教えた後で、「僕、密猟のこと、ボレルには何も話してない」と潔白を訴える(4枚目の写真)。トトシュは、ボレルがあんな嘘を並べたにもかかわらず、「お前を疑ったことなどない」と言ってくれる。そして、すぐに、ボレルが来ても捕まらないよう、片付ける。最後に、この翌日なのか、いつもパリに行って、城のことなど何もしないバカ息子が、自分の客(男女)を8名ほど連れて来て、城で もてなして遊ぶシーンがある。

映画は、この辺りから、“森の学校” から “ポールの出生” へと、主眼点を変えて行く。最初は、ポールの部屋にある机に開かない引出しが1つある。ポールは、その引出しをドライバーでこじ開けて中を調べる。ほとんどは、前、この部屋を使っていたセレスティーヌの最初の養子のものだったが、中に1通の手紙が入っていた。手紙の中には、男女2人が写った正式な写真と、手紙が入っていた(1~3枚目の写真)。映画の中で、手紙は書いた本人の声で読み上げられる。「愛しいセレスティーヌ。私は、レ・ゼルテニの村の教会で、親しい人たちに見守られて結婚式を挙げたいと夢見ていました。ご存知の理由により、それは叶いませんでした。私の人生で最も幸せな日は、少し悲しくなりました。なぜなら、あなたがそこにいなかったから。だから、この写真を送ります。あなたにキスを。いつかパリでお会いできることを願っています。あなたのマチルド」〔書いた日は、1915年9月10日。場所はパリ〕。

そこに、セレスティーヌが入って来たので、ポールは写真を見せて、「写真に写っているの、誰?」と訊く(1枚目の写真、矢印は写真)。しかし、セレスティーヌは説明を拒否し、「私に渡して」と言う。「ダメ、説明して」。「写真を渡しなさい!」。写真の奪い合いとなる。写真を守ったポールは、「僕の母さんの名前もマチルドだった」(2枚目の写真)「だから、僕、ここにいるの? 僕の母さんがこの村の出身で、だから母さんを知ってたの?」と、真剣に尋ねる。しかし、ここでもセレスティーヌは、「そうじゃない」と答える。「嘘だ!」。「勝手に探るなんて許されない!」。「知りたいんだ!」。「だめ! 後で! 今は、すごく混乱してるから。一人になりたいの」〔セレスティーヌにとっても、ポールがこんなことを知ろうとは、夢にも思わなかったので、今までの嘘をどうつくろうべきか 分からなくなっていた〕。写真と手紙を奪って部屋から出て行こうとするセレスティーヌに向かって、ポールは 「あんたには、うんざりだ。何もかも!!」と怒鳴る(3枚目の写真)。

ポールは、トトシュに相談しようと川原を歩いていると、トトシュと仲のいいデデという、気さくな密猟者と出会う。そこで、「デデは、いつからここにいるの?」と訊いてみると、「ずいぶん前から」という返事。「マチルドって人、知ってる?」。「ああ。学校まで〔手押し車で〕送って欲しいって頼んだ、小さな女の子がいたな。でも、今はもうおらん」。「どこに行ったの?」。「行っちゃった。あの上に」と、天を指す。マチルドがこの村の出身で、死んだのなら、村の墓地に墓があるかも知れないと思ったポールは、走って墓地に行く。墓地の墓石は、ちょうど体くらいの大きさの長方形の厚い石が地面に水平に置かれていて、そこに墓碑銘が彫られている。ポールはマチルド(Mathilde)を探して歩き回る。中に1つだけ、「MATH」と彫られ、右側が苔で隠れていたのあったので、手できれいにしてみると、マチュー(Mathieu)だったので、がっかりする(1枚目の写真)。すると、そこにトトシュがやってくる。トトシュが、これほど早く墓地に来たのは、デデに聞いたからとしか考えられない。しかし、デデの話には、墓地を示唆するものは何もなかった。どうして、トトシュは、ポールがここにいると確信できたのだろう? ひょっとして、セレスティーヌから何か聞いていたのかもしれないが、映画はそれを教えてはくれない。トトシュが、「こんなところで何しとる?」と訊くと、ポールは 「母さんの墓を探してた。デデが話したから…」と答える(2枚目の写真)。「お前は、奴の話を聞いて、ここだと思った。仮に母さんがここにいても、だからって、それでどうなる? 石の下の 土まで掘るのか? 何が見つかると思う? 腐った死骸の臭いがする骨だ。それが欲しいのか?」と訊く。「ううん」。「ここから早く出よう。俺と一緒に。頼むから… その暗い考えを 頭から追い出してくれ。人生は美しい。まあ、その気になればだが。だが信じろ。あっという間に過ぎてしまう。もっと楽しまないかん。いいな」(3枚目の写真)。そして、外に出たトトシュは、楽しそうに歌いながら歩いてみせる。「♪一週間の毎日、寝取られ男が歩いてとる」〔ボレルをバカにしたもの〕。「寝取られ男、知っとるか?」。「ううん」。

ポールの大きな分岐点。伯爵が、厩舎で1頭の黒馬を優しく撫でながら、「ところで、君は、あれから巨鹿を また見たか?」と、ポールに訊く。「いいえ」。ポールは、逆に、「その馬、病気なの?」と尋ねる。「いいや。わしと同じで、年老いて疲れてるんだ。わしの娘の愛馬だった。娘が亡くなってから、誰もこの馬には乗っとらん。ラカサーニュ君、乗馬を習ってみんか?」。伯爵が、好意でそう訊いても、ポールはうつむいたままで、何も言わない。そこで、「君に、訊いたんだ」と再度言うと、ポールは 「僕の名前じゃありません」と答える(1枚目の写真、矢印は伯爵)。「そうか?」。「違います」。「そうだろうと思った」〔セレスティーヌの親戚らしくない〕。「本名は カラデックです」。それを聞いた伯爵は、びっくりし(2枚目の写真)、その時、犬が吠えたので、馬が動き、バランスを失った伯爵は地面に転倒する〔ケガはしない〕。ポールは、驚いて、伯爵を助け起こす。伯爵は、すぐに厨房に行き、セレスティーヌに問い質す。「君、知っとったのかね? あんな風に気づかされるとは」。「いいえ、まさか。申し訳ありません。悪意があって 連れて来たのではありません」(3枚目の写真)。「だが、彼が誰だか知っていた?」。「はい、申し訳ありません」。「ポールは 知っとるのか?」。「何も 言えませんでした」。「正しいことをした。彼には 自分の道を歩ませよう」。

ポールが、森で、ブラックベリーを取って食べていると、口笛が聞こえ、頭を上げると、木の上からベラが手招きしている。そこは、小さなツリー・ハウスになっていて、ハシゴで簡単に登って行ける。ポールが上まで行くと、ベラが 「ずいぶん会えなかった。どこにいたの?」と訊く。「学校だよ」。「あんた幸せね。あたいには学校なんてない」。その時、森の方から鳴き声が聞こえ、ベラは 「鹿が鳴いてる」と言う。「どうして鳴くのかな?」(1枚目の写真)。「求愛よ」。2人は木から降りると、草むらの間に隠れて、森の中の原っぱで起きている若い鹿同士の争いと、悠然と歩く巨鹿(2枚目の写真、矢印は巨鹿)を見ている。2人は、森の中で違法な作業をしているトトシュの所に走って行くと、「トトシュ! 今見たよ、巨鹿を」と知らせる(3枚目の写真)。「なんで お前だけに見えるんだ?」。ポールはベラを見ながら、「僕だけじゃない」と言うが、トトシュはジプシーが嫌いなので 「”雌鹿” が見ようが、そんなの何の意味もない」と無視し、作業の邪魔なので追い払う。

別の日、学校で、1人残されたポールが、教壇の机に座った教師の前に立ち、教師がポールのノートを読み上げるのを聞いている。「…18本の枝角が、頭上に冠のように生えていた。森の王は 深い森に隠れて暮らしていた」。読み終わると、教師はポールにノートを返す。「ダメなの?」(1枚目の写真、矢印はノート)。「いいえ、とっても素敵よ。でも教えて… あの鹿、巨鹿を あなた見たの? それとも想像しただけ?」。「今、先生を見てるように、見たよ。2度目だった」。それを聞いた教師は、「ポール、聞いて。巨鹿のことは誰にも言わないで。誰にもよ」と言う。ポールは、ここで、伯爵に話しとは言えないので、罪の意識を感じながら、僅かに頷く。「先生も、あの鹿 見たの?」。「初めて見たのは5年前よ。毎年 発情期が終わると、ここに来て、秘密の場所で休むの」。そして、「守ってやらないと」と付け加える。「どうやって守るの?」。「誰にも話さないこと。特に伯爵には」。ここで場面は変わり、伯爵を乗せた車が森の中の道路を走っている。前方にポールが歩いているのを見た伯爵は(2枚目の写真、矢印)、運転手に車を停めさせ、「さあ、乗って」と、ポールを乗せる。そして、学校のことを訊いた後で、「将来、何になりたい?」と質問する。「分からない」。「何が好きだ?」。「魚、池… 自然だよ」。「森林監視官になりたい? 密猟監視人?」。「僕、密猟者を追いかけたくない」。「つまり、密猟者になりたいのかい?」(3枚目の写真)。ポールは何も言わないが、伯爵は 「その方が楽しいよ」と言う。

ここで、事態は急展開する。ボレルが巨鹿を捜そうと、一番の狩猟犬を連れて臭跡を嗅がせて森の中を走り回る姿が映る。そして、本格的な鹿狩りの服装に変えると、伯爵に報告に行く。「あの鹿かね? 姿を見たのかね?」。「はい、18の角ではなく、17の角でした。ドルグフェイユの道で、ヴォローヴァン〔狩猟犬の名〕が気付いたんです。あの犬は、決して間違えません。行きましょう」。ボレルは狩りのホルン(コルノ・ダ・カッチャ)を吹き、ヴォローヴァンを先頭に、多数の狩猟犬を全速で走らせる。走る狩猟犬を、走る車から撮影するシーンには、実に迫力がある(1枚目の写真)。そして、巨鹿が逃げて行く(2枚目の写真)。頭のいい巨鹿は、川まで走ると、臭いが付かないよう、川の中を走って行く(3枚目の写真)。

川まで追って来た狩猟犬は、水の中で臭いを失い、どうしていいのか分からなくなる(1枚目の写真)。しかし、執念に燃えるボレルは、川岸に付いた足跡が上流を向いていたことから、犬を上流に向かって走らせる〔川の中ではなく、岸に沿って〕。そして、上流に隠れていた巨鹿を追い詰め、狩猟犬で囲み、逃げられなくする(2枚目の写真、矢印は巨鹿)。伯爵がなかなか動かないので、ボレルは、馬から下りて伯爵の前まで走って行き、「これ以上待てません、伯爵様。ヴォークワの12の角の時ように、逃げられてしまいます」と言い、剣を差し出す(3枚目の写真、左の矢印は剣、右の矢印は狩りのホルン)。ここで、シーンはポールの学校に変わり、授業が終えった生徒たちが門から出てくる。外で待っていたトトシュが、「ポール」と呼び、これまで彼が学校まで来たことがないので、ポールは驚いて駆け寄る。トトシュは、「鹿のこと、お前が正しかった」と言う。「見たの?」。トトシュは笑顔になって、ポールの肩を抱くと、「実に 立派な方だ。伯爵はボレルと あの鹿を追った。そして、鹿を追い詰めた」。ここで、巨鹿を大切に思っている教師が寄ってきて、「殺してたの?」と訊く。「池に追い詰めたんだ。生涯ずっと 巨鹿を狩ることを夢見てきた伯爵は…」。ポール:「で、どうしたの?」。「赦免なさった」(4枚目の写真)。

しかし、その頃、城に帰る途中の伯爵は、野道を馬でゆっくりと走っていて、前方の倒木に気付く。そんなに高いわけではないので飛び越せると判断し、馬に駆けさせる。しかし、怖がった馬は、直前になって急停止し、勢い余った伯爵は前方に投げ出され(1枚目の写真)、倒木の向こうの地面に叩き付けられる。ここで、シーンは、城内の自室のベッドに横になった伯爵と、バカ息子との会話に変わる。伯爵:「この歳になると、こういう事は ”終わりの始まり” になるだろう」。息子:「大げさです」。「わしは 領地のことが心配なんだ」。息子は、その言葉に、皮肉を込めて賛成する。「あなたの代わりになる者などいません。誰一人 信頼できません」。それを聞いて裏を読んだ〔つまり、息子は、「自分が代わりになれるし、信頼できる」と、言いたかった〕伯爵は、「君は、わしに信頼されるような事を 何かしたかね? これまで働いた事があるか?」と批判する。「それを私に言うんですか? あなたは私の事業への資金援助を拒否した」。「事業?」〔とても事業とは呼べないことをしたに違いない〕。「妹も 助けなかった」〔これは事実〕。そして、最後に、「お訊きしたいのですが、あの巨鹿を、なぜ赦免したのです?」と訊く。「なぜ? 感謝するためだ。心から」(2枚目の写真)。この言葉を話した時には、部屋の入口にポールが立っていた。それに気付いた息子は、「ここにいるんじゃない。出てけ!」と叱るが、伯爵は 「わしが呼んだんだ」と言う。そして、「入って。入って」と声をかけ、ポールが入って行くと、「もっと近くに」と、腕を伸ばしてポールの手に触れる。息子は、腹を立てて部屋から出て行く。それと入れ替わりに、セレスティーヌがお盆を持って入って来て、ワゴンに乗せてポール方に転がして行く。伯爵は、「ホットチョコレートは好きかね?」とポールに訊き、頷いたので、セレスティーヌがカップを渡す(3枚目の写真)。「伯爵様、あまり甘やかさないで下さい」。「なぜダメなんだ?」。

別の日、バカ息子は、城の庭に “以前城に呼んだ連中” と一緒にいる。そこに、呼ばれたボレルが走って来て、「ムッシュー・ベルトラン」と呼びかける。「奴は どこにいる?」。「足跡を見ていません」。「犬で追い立てろ。領地全体をくまなく捜せ」。「伯爵様は鹿を赦免されました」。「私の命令に逆らうな」。親不孝なバカ息子は、ボレルにこう命じると、ロクデナシの仲間に向かって、「よし。鹿が見つかるまで、鴨で気晴らししよう」と言う(1枚目の写真)。そして、森の中の池まで行くと、空を飛ぶ鳥を 次々と撃ち落とす〔殺すのを楽しんでいるだけ〕。それを見たベラは、バカ息子の前まで行くと、「くそったれ! 呪われろ! パラトゥーキ!〔ジプシーの呪いの言葉?〕」と叫ぶ。「失せろ、魔女め!」。「お前、地獄に落ちろ!」。それを聞いたバカ息子は、猟銃を妻(?)に渡し、逃げて行くベラを走って追いかけるが、すぐにつまずいて泥の中にうつ伏せに倒れ、「ちくしょう!!」と叫ぶ。バカ息子は、そのままの服装で、自動車に乗ってジプシーの一時居留地に行き、「小さな魔女はどこだ?!」と叫ぶ。そして、首長に対しては、「明日、出てけ。ガキどもも全員だ」と命じる。「あんたの父上は許さない」。「決めるのは私だ。すべて変えてやる」。

翌日の夜、ポールはジプシー達と一緒にいる。木の幹にナイフで字を彫っているポールに、ベラが 「何してるの?」と訊く。「僕が 読み書きを教える。これ、BとP、ベラとポールだよ」。「BとP… あんた、恋人にキスされたことある、ホントの?」。「ホントもニセもない。殴られたり平手打ちされただけ」。ベラは、「教えてあげるよ」と言い、ポールに “ホントのキス” をする(1枚目の写真)。一方、城では、伯爵が 「わしの小さなポールは、今日、来なかった」と、悲しそうにセレスティーヌに話す。「お疲れになるだけです」。「いや、その逆だよ。彼と話していると 心が安らぐ。それに… わしには あまり時間が残されておらん」。ここで、もう一度、ジプシーに戻る。ポールは、ベラの祖母(?)と一緒だ。祖母:「伯爵がなぜ わしらを守ってくれるのか 知りたかないかの?」。ベラ:「話してあげて」。「伯爵は、若い頃、美しいジプシーの娘と恋に落ちたんじゃ」(2枚目の写真、矢印はポール)「じゃが、伯爵の両親は、結婚を阻止するため あらゆる手段を講じた」「そして… 同じことが、また起きたんじゃ」。「どんな?」。「伯爵と その娘さんじゃ。彼も 娘の結婚を止めようとした」。「死んだんでしょ?」。「そう、マチルド。伯爵の娘さん」(3枚目の写真)。この言葉は、ポールにとって衝撃だった。

ポールは家に帰ると、当然、セレスティーヌに、真実を話すよう求める。ここから、セレスティーヌの話が始まる。「あなたのママは、私が初めて世話をした赤ちゃんだった。目に浮かぶわ、私のちっちゃなマチルド。伯爵は娘に夢中だった。伯爵にとって全てだったの。でも、マチルドは、ある若者と出会った。ジョン、あなたのパパよ。マチルドは彼が好きになり、恋に落ちたの」(1枚目の写真)「ジョンは軌道工だった」。「それって何?」。「彼はここに線路を敷きに来て、あなたのママが領地を馬で走っていた時、2人は出会った。2人は 森の中の小屋に隠れながら、愛を育んだ。伯爵は2人を引き離そうと、あらゆる手を講じた。彼は告訴までしたわ。あなたのママは、まだ未成年だったから。2人はパリへ逃げた。あなたの両親の愛は、何よりも美しく、強かった。そして、戦争が始まったの〔第一次世界大戦〕。あなたのパパは、出征し、戦場で亡くなった。そして、あなたが生まれた。伯爵は悲しみに打ちひしがれ、獣のような叫び声が聞こえた。伯爵は、あなたのママからの手紙に返事を出さなかったし、会うことも拒んだから。そして、彼女は棺桶に入ってここに帰って来た」(2枚目の写真)。「どうして 僕に黙ってたの?」。「どう話すべきか分からなくて、何も言えなかったの」。

セレスティーヌは、ポールを連れて マチルドの墓に行く。そこは、映画の最初の頃、ポールがボートを漕いでいて、伯爵が入って行くのを見たところ。1枚目の写真で見ると、上に十字架が付いているので、墓所だと分かる。それに、城館と、かなり離れていることも。ポールが中に入ると、十字架の右にマチルダの名前が記されている。「マチルド・カラデック。旧姓 ラ・フレネー。1898 – 1915年〔わずか17歳で死亡〕」(2枚目の写真)。ポールは、じっと墓碑を見た後(3枚目の写真)、持っていった花を捧げる。

恐らく、その日の夜。ポールは伯爵を訪ねて行く。伯爵の容体はかなり悪くなっている。伯爵は、ポールから話を聞いたらしく、「じゃあ、もう知ったんだな」と言う。「君のママは、ママは、とても美しい(est belle)」(1枚目の写真)。すると、伯爵のことを怒っていたポールは、すかさず、「美しかった(était belle)」と、過去形で言い直す。「君の気持ちは分かる」。「そうなの? 生きてた時に、愛するべきだった。あなたはママを追い払い、二度と会うことを拒んだ。ママの結婚式にも出なかった」。「君の言う通りだ。だが、それに気づいた時には もう手遅れだった。わしは、娘を理解することも、娘の幸せを受け入れることもできなかった」(2枚目の写真)「みんなを不幸にしてしまった。だが… 君がいる。だから、愛させておくれ」。そして、「お出で」と優しく言う。泣きかけていたポールは、伯爵に抱き着く。「わしのちっちゃなポール」(3枚目の写真)「ごめんな。悪かった」。「おじいちゃん…」。

伯爵は亡くなり、神父が 「父と子と聖霊の御名によって、アーメン」と、最後の祈りの言葉を捧げる〔バカ息子のベルトランは、なぜいないのだろう??〕。すると、セレスティーヌが 「おじいちゃんにキスしてあげて」と言い、ポールは伯爵の頬にキスする(2枚目の写真)。そのあと、トトシュが、セレスティーヌの家に行き、伯爵が、ポルチーニ茸より好きだったアンズ茸の入った籠を渡し、「俺の代わりに これ渡しておいてくれ。花より、これを好まれるだろう」と言う。「来ないの?」。「教会の葬式は苦手なんだ。それから、あの子にキスしやってくれ」。「キスが好きじゃないの」〔ベラのキスは喜んで受けた〕。

バカ息子は、全部が自分のものになったと思っているので、よそ者が領地に侵入しないよう、業者を呼ぶ。技師は、地図を見ながら、「ご覧の通り、私たちは今、川が領地の北の境界線となっている場所にいます。川が自然の境界線になっていない場所では、塀を作っていきます」と説明する(1枚目の写真)。しかし、バカ息子は、川があれば十分という甘い考えに反対し、「川は多くの場所で渡ることができる。領地の周囲を 塀で完全に囲まないといかん」と指示する。一方、村人の多くが集まった場所で、トトシュは、「塀に囲まれてしまったら、ここは死んだも同然だ!」と、ベルトランの方針を強く批判する。ポールが 「なぜ塀が問題なの?」と訊くと、トトシュは 「大型の動物、イノシシやシカなんかは広い場所が必要なんだ。季節に合わせて移動するからな」と教える(2枚目の写真)。さらに、「単に食べるためだけじゃない」と言うと、その後を、いつもは敵対関係にあるボレルが続ける。「発情期を終えた雄鹿は、角を再生するため ビタミンが要る。それにビタミンは、雄鹿の体力維持にも必要だ。だから彼らは行き来する」。ここで、トトシュが、再度引き取り、「あのクソ塀ができたら、もう終わりだ。キノコも、栗も、木も なくなる… 何も残らん!」と締めくくる。他の村人からも、「こんなことは許されん!!」。「そうだ!!」という声が上がる。そこに、学校の教師がドアを開け、トトシュを呼ぶ。教師から緊急情報を聞いたトトシュは、中に戻ると、「静かに! 奴は巨鹿を狩ることに決めた。伯爵の死を 巨鹿のせいにするなど、ひどい理屈だ。そして、あのクソは、巨鹿の居場所を見つけやがった。あの鹿は赦免されておる。赦免された動物を殺すのは冒涜だ。やめさせる」と宣言する。

ボレルは、ベルトランに従って、狩猟犬に巨鹿を追わせる。茂みの中には、塀を作る場所に、ロープが張り巡らされているので、巨鹿は逃げ場所がなくなる(1枚目の写真、矢印はロープ)。ベルトランは、「奴は、ハマった」と狂喜し、ボレルに 「やれ!」と命じる。ボレルは馬から下りると、馬を木に縛り、剣を持ってベルトランの方に行くが、これまで 鹿狩りに参加したことのないベルトランは、猟銃で撃ち殺そうとする。作法を無視した行動に、ボレルは 「ダメです! ダメ!!」と叫ぶが、ベルトランは巨鹿に狙いをつける。その時、銃声が響き、馬は驚いて両脚を上げ(2枚目の写真)、ベルトランは地面に落ちる。銃を撃ったのは、トトシュだった(3枚目の写真)。トトシュのそばにいたポールは、巨鹿を取り囲んだ狩猟犬の一群に、何度も「下がれ!」と命じて追い払う。その隙に、逃げ口を見つけた巨鹿は去って行く。それを見たポールはホッとするが、怒ったベルトランは、猟銃をトトシュに向ける。それを見たボレルは、横から飛び出して(4枚目の写真)ベルトランを地面に倒す。ベルトランは、ボレルにクビを言い渡す。

おそらく、その翌日。城館で、伯爵の遺言が告知されるので、楽しみにしながらベルトランが部屋に入って行くと、そこには7人も先客がいたので驚き、公証人に、「そいつら、ここで何してる?」と、生意気に訊く。公証人は、「私が皆さんを呼びました。ド・ラ・フレネ〔伯爵〕様のご指示です。遺言書を読み上げますので、どうぞ おかけ下さい」と言う(1枚目の写真)。仕方なく、8つの椅子の中央にベルトランが座ると、公証人による朗読が始まる。
・「私、フィリップ・ルイ・アレクサンドル・ド・ラ・フレネは、本遺言書が私の最終遺言であり、これ以前のすべての遺言を無効とする」
・「私は、以下の財産を下記の者に遺贈する」
・「ジプシーに、ラ・ヴィロット川とシェマン・ド・ボワ・ボードの間の約2ヘクタールの土地を、制限なく利用する権利を与える」
・「ジェルマン・ボレル氏とその夫人セレスティーヌに、彼らの住居、菜園、および隣接する庭園の完全所有権を認める」(2枚目の写真)
・「アルマン氏とマドレーヌ・ルメルシエにも 同様の権利を与える」
・「私の息子、ベルトランへ。彼が領地の一部を担保〔借金が返済できなくなった時の保証〕として設定したことを考えると、私は、彼が自分の仕事で生計を立てられるだけの財産を遺す。すなわち、オルレアン、フォブール・バニエ通りにある私の酢工場の虚有権〔別の人が使用権を所有する財産の所有〕、及び、それに隣接する住居である」
まだ、城や領地についての言及がないので、ベルトランは期待しつつ、「それで、先生… 残りは?」と笑顔で訊く 。告知の場面はここで終わる。次のシーンでは、この城の所有権を失ったベルトランが、車の横に立ち、召使いだったアルマンが、荷物を車に運んでいる(3枚目の写真)。

ベルトランが 車に乗ろうとすると、中から出て来たポールが、「待って」と言い、「ぜひまた会いに来て下さい。この領地は 誰でも自由に利用できます」と告げる。ベルトランは、ポールの顔をじっと見ただけで、何も言わない。ここで、アルマンが、「さようなら、ムッシュー・ベルトラン」と言い(1枚目の写真)、彼は車に乗り込む〔この映画では、はっきりしないが、爵位はどうなったのだろう? 普通は、長男の継承が基本原則なのだが… しかし、ベルトランが爵位を継いだのなら、永久の別れの際にムッシューだけでは失礼ではないか?〕。ベルトランの妻(?)はもっと気さくで、セレスティーヌと笑顔で別れの言葉を交わし、そのあと、「私のちっちゃなポール」と言いながら、ポールの頬にキスし、「体に気をつけてね」と言い、ポールも 「さよなら」と言う。ポールは、セレスティーヌと並んで、ベルトラン夫妻の乗った車を見送る(2枚目の写真)。車は、城から離れて行く(3枚目の写真、矢印)。

先日、村人に戦いを訴えた場所に、トトシュが飛び込んで来て、「おい、みんな… 知ってるか? ポール… なんて呼んでいいのかな… 彼は 普遍的遺贈受遺者〔遺言によって全財産を相続する人〕に任じられた。領地と城を相続したんだ。だから、森も、巨鹿も、すべてが救われた!」と告げ、村人からは歓声が上がる。トトシュは酒の入ったグラスを持ち、乾杯の音頭を取る(1枚目の写真)。次のシーンでは、凸凹になった地面の上に座ったポールに、狩猟監視員の金色の腕章を付けたトトシュが、「群れがいますな。15匹の野良犬、3匹の雌豚、そして1頭の大きな四つ足動物」と話しかける。「うん。大きな雄だ。少なくとも130キロはあるね」。今度は、狩猟監視員のボレルがトトシュに、「放っておいたら、めちゃくちゃにしてしまうだろう。明日は、きっとブドウ畑だ」と言う。それを受けて、トトシュは、「ムッシュー・ポール、俺の提案は 一斉捜索です」と言う。「分かりました。明日の朝、一斉捜索をしましょう」(2枚目の写真、矢印は腕章)。今度はボレルが、「何時にします? ムッシュー・ポール」と訊く。「えーと… 9時」。それを聞いたトトシュは、「9時! ボスは、俺たちを厳しい道へと導くな」とボレルに言うと、後は、ポールの肩に親し気に手を置くと、一緒に城に向かう(3枚目の写真)。

翌朝9時までに、村人が城に集まってくる。ポールは、「ママ・セレスティーヌ」と言って(1枚目の写真)、セレスティーヌに抱かれる。そして、いよいよ一斉捜索が始まる。ポールやベラを含めた多くの人が、森の前に一列に並び、一番端に立ったトトシュがハンティング・トランペットを5秒ほど吹くと(2枚目の写真)、全員が一斉に棒を振るいながら森に向かって歩き始める(3枚目の写真)。
