ベネズエラ映画 (2013)
ベネズエラ〔正確には、ベネズエラ・ボリバル共和国〕は、目下3期目を迎える “悪名高きマドゥーロ大統領” で有名だが、この映画が、各国の映画祭ではなく、ベネズエラ本国で劇場公開された2014年8月には、まだ1期目のマドゥーロ大統領が就任してから1年5ヶ月が経った時だった。この時点でのマドゥーロ政権は、彼が、前任者のチャベス大統領の「21世紀の社会主義」政策を継承し、その欠陥がもたらした治安や経済情勢の悪化が進み、国民の不満が高まっていた時期で、現在のような非公正な選挙により選出された違法性の高い独裁政権ではなかった。事実、翌年の2015年12月に行われた国会議員の選挙では、野党が3分の2の議席を獲得している。だから、この映画が作られた時点では、ベネズエラは民主的な国家だった訳で、それがこのような深く心に沁(し)みる作品が生まれた要因であろう。
映画の題名「La distancia más larga」は、直訳(英訳)すれば、「Most long distance」。これは、最も単純なスペイン語なので、他の英訳はない。ただ、日本語にした場合、最後の「distance」だけは、「距離」以外にも、「道のり」、「隔たり」の訳が可能だ。「距離」を、物理的な長さと考えた場合、よりしっくりした日本語は「道のり」であろう。そして、「距離感」と言った場合に含まれる人間関係と考えた場合、心と心の「隔たり」が、よりしっくりした日本語だ。映画では、この「最も遠い距離」を、上記の3つの意味で表現しているように思われる。映画の主人公は2人。ベネズエラの首都カラカスで、父フリオ、母サラと一緒に住んでいる10歳のルーカス。そして、遠いスペインに住んでいるサラの母マルティナ。かつてのマルティナは、結婚した夫と一緒にブラジル、ガイアナ国境近くのロライマ山の麓グラン・サバナの小屋に住んでいた。ルーカスと、失業中の父フリオとはそりが合わず、母サラはフリオとの離婚も視野に入れている。この家族には、映画の最初から「隔たり」が見られた。怒りっぽいフリオが渋滞した高速道路で、バイクに乗ったチンピラに怒鳴ってしまい、結果的にサラは射殺されてしまうが、これにより、残された2人の「隔たり」は極限まで拡大する。一方、ルーカスの祖母にあたるマルティナは、かつて、夫との口論の翌日、いつも一緒に行くロライマ登山に参加せず、そのせいではないが、何らかの事故で夫は帰らぬ人となり、娘のサラとの間に「隔たり」が生まれる。サラが大人になると、マルティナは生まれ故郷のスペインに帰ってしまう。結果として、ベネズエラとスペインの遠い「距離」が妨げとなり、ルーカスは、祖母のマルティナと一度も会ったことがない。そのマルティナは、年老いてから腹部の悪性腫瘍の手術を受け、手術では完治せず、モルヒネで痛みを抑えるしかない末期の癌に苦しんいる。そして、一人寂しくスペインで死ぬよりは、かつて楽しく暮らしたグラン・サバナの小屋に行き、ロライマ山に登り、そこで死のうと決意する。マルティナは、自殺のことは伏せ、グラン・サバナでサラに会いたいと希望し、サラもその気になっていたが、結局、その前に殺されてしまった。ルーカスは、祖母からサラに届いた昔の写真を見て、大嫌いな父と決別し、一度も会ったことのない祖母に一緒に暮らそうと、家出する。しかし、カラカスからグラン・サバナまでは、直線距離で約900km、道路では1000km近くある。その「道のり」は遠く、バスで偶然乗り合わせたカエモという、カラカスで悪事に加わり、グラン・サバナに残して来た病気の父を助ける資金を稼ごうとして失敗した青年と親しくなる。一方、グラン・サバナに着いたマルティナは、すぐにロライマに登ろうとするが、以前と違い、登山には保証人(ガイド)の同行が必須になっていたので、自殺目的の登山に同行するガイドはいない。そこにルーカスがやって来る。2人の間には、すぐに強固な連帯感が生まれる。そして、資金に困っていたカエモがガイドを引き受ける。マルティナは、ルーカスの父がカラカスから息子を引き取りに来た時、正直に、自分がこれからどうするかを話す。2人は、それをルーカスに、いつ、どう話すべきかで口論になる。ルーカスにとって、祖母が二度と会えない「遥か遠く」に行ってしまうことは耐えられないことだからだ。ここでの「距離」は、最も遠いものとなる。だから、映画の題名は、この最後の部分を指しているものと思われる。結局、マルティナは、ルーカスがカラカスに帰っても 「私はいつも(お互いの心の中で)一緒にいる」という形で、「距離」を気にしないように誘導し、父のフリオも賛成する。フリオはマルティナと会ったことで、ルーカスとのふれあいの仕方を学び、それ以後、2人の間で「隔たり」はなくなる。ルーカスとフリオがカラカスに向けて出発すると、マルティナはガイドのカエモと出発し、途中で別れると、山腹の洞窟に入って永遠の眠りにつく。
ルーカス役のオーマル・モヤ(Omar Moya)については、残念ながら何も資料はない。唯一分かっているのは、これが映画初出演で、2作目はないということだけ。演技は素晴らしいが、まだ幼くて顔が小さいので、マルティナ役のスペインの名女優カルメ・エリアス(Carme Elías)と同じ距離から撮影すると、顔が小さくしか映らない。おまけに、クロースアップそのものが少なく、広角的な構図が多いので、使える写真が少なかった。
あらすじ
家の前の階段〔後で、全景が表示されるが、家は斜面の上に建てられているので、玄関まで15段の階段が設けられている〕を期待に満ちて駆け下りてきた10歳のルーカスが、輸送会社の配達員に 「スペインから?」と訊く(1枚目の写真、矢印は袋)。「そうだよ」。ルーカスが荷物を持って大喜びで階段を駆け上っていくと、反対に階段を下りてきた母サラに、配達員が 「サラ・ルイスさんですか?」と訊く。「ええ、そうよ」。カメラはルーカスを追うので、この時点でサラが何を受け取ったのかは分からない。階段の上まで行くと、ルーカスは待ちきれずに包装を解き、中から出て来た箱から運動靴を取り出しながら、「これできっと勝てる」と言って(2枚目の写真、矢印は運動靴)、さっそく靴を履いてみる。「ありがとう」と言って階段を上がって来たサラが、ルーカスに 「どう? サイズ合ってる?」と訊く。「ぴったりだよ、ママ」。サラは、息子が放置していった包装紙と靴箱を回収し、内開きの玄関ドアの外側に設けられたアルミで作られた面白い模様の風通しドアを閉めて室内に入る〔暑いので玄関ドアは開けっ放し、風通しドアは 2枚目の写真にも運動靴の後ろに写っている〕。キッチンの椅子に、両足に運動靴を履いて座ったルーカスは、サラが手に持ったA4くらいの大きさの茶封筒を見て、「それ何なの? 見せてよ」と訊く。サラは、「あとでね。ママもまだ見てないの」と言い(3枚目の写真、矢印は茶封筒)、引き出しに入れる。

サラは、「サルサ〔トマト・ベースのスペイン風ソース〕作るの 手伝って。遅れちゃってるから」とルーカスに頼み、ルーカスは「僕 やるよ」と言って手慣れたやり方で作る(1枚目の写真)。そこに、父フリオが服装に気を配りながら入ってくる〔これから面接を受ける〕。ルーカスは、「見て、パパ」と運動靴を見せ、父は 「最近、おばあちゃんはタイミングよく贈り物を送ってくれるな」と言った後で、「勝つのに、そんなものは必要ないぞ、チャンピオン」と、祖母〔サラの母〕の好意を誹謗する〔当然、サラには面白くない〕。そこに電話がかかってくる。それは、祖母からで、電話を取ったサラは、「ちょうど間に合ったわ。ええ、とても喜んでる」と言い、祖母からの電話だと分かったルーカスは、受話器に向かって、「最高だよ、ありがとう!」と大きな声でお礼を言う(2枚目の写真)。フリオは、祖母と疎遠なので、「外で待ってる」「行くぞ、ルーカス」と言って 出て行く。その後も、重要な会話は続く。「いいえ。2人とも 何も知らない。なぜなの? フリオには理解できないでしょうね。ルーカスは一緒に行きたいと思うわ」。ここで、サラは 受話器を首に挟んだまま、茶封筒の中に入っていた昔の写真〔5~6枚〕を見る。そして、両親と、まだ幼かった頃の自分の3人で撮った写真(3枚目の写真)を見ながら、「あの頃のことはほとんど覚えてない… ごめんね、ママ。おっしゃる通り、ゼロからのスタートだったの」「で、住まいは?」「完璧ね。1ヶ月後、またあそこに戻るなんて信じられない」「お医者さんには行ったの?」「行かなきゃ」と会話は続く〔祖母が何を話したのかは分からない〕。

サラは、自分の車に2人を乗せ〔父は失業中なので、車を持っていない〕、まずルーカスを学校まで送る。途中の往復8車線の高速道路は、超渋滞でほとんど動かない。その中をバイクが列を作って走って行く(1枚目の写真)。車内では、サラが祖母のことを話題にする〔祖母が、どうするつもりかは話してない〕。すると、フリオは、「人は変わらん、間違えるな」と祖母嫌いを明白にし、後部座背の真ん中に座ったルーカスは、「おばあちゃんと仲直りするの、いいんじゃない」とサラに味方する。フリオはさっそく、「それは、お前が祖母を知らないからだ」と、すぐに否定する。そして、渋滞を少しでも回避しようと、「あっちに入って」と、サラに車線変更を指示する。すると、後ろから走ってきたバイクがぶつかりそうになり、フリオは 窓から拳を振り上げ、「おい、この くそったれ!」と怒鳴る(2枚目の写真、矢印は拳)。さらに、窓から顔を出して、「この街を 自分のものだと思ってるのか?!」と、怒鳴り続ける。それを聞いたバイクの後ろに乗ったチンピラは、拳銃を向け、「そのクソ車から降りて、ここで言いやがれ!」と睨みつけ(3枚目の写真、矢印は拳銃)、去って行く。

学校の正門の前で車が停まると、ルーカスは後部座席に一人で座っているので、どちら側からでも降りられるのに、何故か 車道側から降りる。それを見たサラは、「ルーカス、危ない!」と言うが、ルーカスは平気で運転席まで来ると、「6時に迎えに来てくれる?」と訊く(1枚目の写真)。「いつも通りじゃないの。どうかしたの?」。ルーカスは肩をすくめる。自分のことしか考えないフリオが、「おい、チャンピオン、みんな遅刻しちゃうぞ」と追い払うようなことを言い、サラは ルーカスの頭を抱いて、「愛してるわハニー、頑張ってね」と勇気づける。2人だけになると、サラはフリオに 「緊張してる?」と訊き、フリオは 「正直言って、面接に慣れてきたんだと思う」と応える。「この仕事はあなたにピッタリだわ。うまくいくわよ」。「どうしてそう思う?」。「あなたにふさわしいから」。「君、僕がこの仕事に就くの、ホントに賛成なんだね?」。「あなたと同じくらい」。ここまで会話を聞くと、2人の仲が良いと思ってしまう。しかし、フリオの次の言葉の、「でも、なぜかは 違うだろ」から、全く別の事実が露呈する。「フリオ、『暗黙のルール』があるでしょ。だから、議論するつもりはないわ。あなたの経済状況が良くなったら、私たちはそれぞれ別々の道を歩む。それだけの話よ」〔サラは離婚を決意している〕。「それは君が決めたルールで、僕は同意なんかしてない」〔フリオは離婚に反対している〕。サラは何も言わずに面接のある会社の前で車を停め、「頑張ってね、フリオ」と言い、フリオは何も言わずに車を降りる〔どう見ても、この結婚は破綻している〕。その後、フリオが面接をする会社に勤めているテレサという友人との電話での会話があり、エドゥアルドという人物〔最後まで、どんな人物かは分からない〕が、フリオの採用を支援してくれるから安心して、と告げる〔テレサは、サラの離婚に賛成〕。このあと、サラとルーカスのシーンが平行して流れるが、ここでは、まずルーカスのシーンを紹介する。恐らく授業が終わった後、ルーカスが属するクラブで、陸上短距離の練習試合が行われる。スタート直前のルーカスの真剣な顔(2枚目の写真)。そして、走り始めた時のルーカス(3枚目の写真)〔最後は、両隣のレーンに誰もいない中を走る姿を、後ろから靴だけアップで撮るので、1位だったのかどうかは確定できない〕。

サラが郊外を快適なスピードで走っていると、今朝、フリオが怒鳴りつけたバイクが追って来る〔この映画の最大の疑問点。フリオが怒鳴った時、車は密に並んでいたので、かなり前方にいたチンピラから車のナンバープレートは、絶対に見えない。では、どうして、数時間も後で、全く違う場所を走っているサラの車を、「あの時の車」だと特定できたのか? 唯一の可能性は、怒鳴られた時から、ずっと隠れて後を付けていたという場合だけ〕。そして、助手席の窓を2人で叩き、「車を停めろ!」と叫ぶ(1枚目の写真)。怖くなったサラは、なぜか、高速から下りてしまう。サラは、ハンドルの右の枠に入れた携帯電話のボタンを押し、「フリオ」、と助けを求める。採用が決まったフリオがご機嫌な声で、「夕食、どこに行きたい?」と言うと、「さっきのバイクが…」と悲壮な声で応える。「何だと。奴らに追われてるのか? 今どこだ?」。「分からない」〔高速から下りたから〕。閑散とした住宅地のT字路まで来た時、T字路から別のバイクが入って来て、拳銃を構え、サラの車をストップさせる(2枚目の写真)。追ってきたバイクの運転手が、「おい、どんな奴だ?」と別のバイクの男に訊くと、「超イケてるぞ!」と笑顔で答える。後方のバイクの後ろから下りた一番のワルが、サラに拳銃を構え、「出て来てキーを寄こせ!」と怒鳴り(3枚目の写真)、運転手の方が、「俺達と一緒に来いよ、ベイビー」と、わざと甘えるよう声で脅す。その時、他の車が来るのが見えたので、顔を見られたと思ったワルは、サラを撃ち殺して逃げ去る〔映画の開始から僅か9分。意外な展開に驚かされる〕。

サラの葬儀が終わって、どのくらいの日数が経ったのかは全く分からない。フリオが作った簡単な夕食を、ルーカスが元気のない顔で食べていると、父が 「今朝、お前のコーチと話した。練習をやめたいと言ってるそうだな。陸上競技大会〔スペイン語では “intercolegiale” と言っているが、直訳すればインターカレッジ(大学対抗スポーツ競技大会)になってしまう。どう考えても変なので、ルーカスの年齢に合わせた標記に変えた〕は、来週だぞ」と言うと、ルーカスは 「僕、もう大会には出ない」と、ある意味、当然の態度で応じる(1枚目の写真)。「ママは 楽しみにしてたぞ」。ルーカスは 「ママはもう見てくれない」と言って席を立つと、食べ終わった皿をキッチンに持って行く。そして、戻ってくると、「おばあちゃんなら来られるよ。おばあちゃんは一人で暮らしているし、僕たちだってそうだ」と提案する(2枚目の写真)。しかし、義母が嫌いなフリオは、「パパが世話してやってるだろ?」と反対する。ルーカスは、自分勝手な返事しかしないフリオは無視し、「電話する」と言う。「やめろ」。それでも、ルーカスが電話機をテーブルの上に持ってきたので、「くそ(Coño)、やめろ」と言うが、ルーカスは完全に無視して電話番号を押す。しかし、誰も電話に出ないので、「おばあちゃん、電話に出ない。病院で当直なの?」と、フリオに訊く。しかし、父親として完全に失格のフリオは、「お休み」とだけ言い、息子の質問は無視して部屋から出て行く。そこで、ルーカスは、祖母が務めていた病院に電話してみる〔因みに、祖母はスペインに住んでいる。だから、このシーンは根本的におかしい。なぜなら、ベネズエラ(夏)が夜の7時とすると、スペイン(冬)では5時間足して深夜0時となる。こんな時間に電話が通じるのだろうか?〕。ここからは、ルーカスの台詞。「もしもし」「おばあちゃんを探してます。名前はマルティナ・デルガード」「旅行中?」「どこへ?」「ベネズエラに来る途中ですって?」(3枚目の写真)「誰に訊けば?」。ここで、場面は、首都カラカスのシモン・ボリバル国際空港に変わり、国際線の到着ロビーに出て来たマルティナが映る(4枚目の写真)。マルティナは係員に、「すみません、プエルト・オルダス〔カラカスの東南東約500km〕行きの乗り継ぎ便はどこですか?」と尋ねる。

翌朝、ルーカスは、フリオに陸上短距離の練習場に連れて行かれる。その途中で、ルーカスは、もう一度、祖母に連絡を取ろうと懇願するが、フリオは 「おばあちゃんは、お前のママのお葬式に来なかった。なんで、今 来ると思うんだ」と相手にしない。ルーカスが 「チケットが手に入らなかったから来られなかったんだ」と好意的にかばっても、「私とお前だけで十分やっていける」と相手にしない(1枚目の写真)。会社に行ったフリオに警察から電話がかかってきて、サラの車を取りに来るように指示される。その際、殺人犯について何か分かったかと尋ねても、何も分かっていないと言われただけ〔犯罪の多発地帯で、目撃者ゼロに近い事件なので、警察は恐らく何も調べていない〕。一方、練習場に行ったルーカスは、スターターピストルが撃たれて スタートラインから走り始めるが、途中で走るのを止めてしまう(2枚目の写真、矢印)。一方、プエルト・オルダスに着いた祖母は、ワイルドルートツアーガイド(guía de Ruta Salvaje)のナサックを雇い、ジープでグラン・サバナ(Gran Sabana)に向かう〔地域名、面積約1万平方km、日本でこれより広いのは北海道、岩手、福島、長野、新潟、秋田、新潟の6道県のみ。しかも、グラン・サバナはカナイマ国立公園の一部で、この公園の広さは3万平方kmもある〕〔プエルト・オルダスの南南東約450km〕(3枚目の写真は、グラン・サバナに入ってすぐの場面)。

ルーカスは早目に帰宅し〔結構学校から家まで遠いし、自転車はないので、公共交通機関を使ったのだろうか?〕、自室で、要らなくなった運動靴を乱暴に脱いでいると、マルティナから来た茶封筒があったことを思い出す。そこで、キッチンまで駆けて行き、引き出しの一番奥に隠してあった茶封筒を見つけると(1枚目の写真、矢印は茶封筒)、中の写真を取り出して見てみる。1番上は、映画の最後に出て来るシーンと同じで、ギアナ高地のテーブルマウンテン、ロライマ山(Monte Roraima、標高2810m)の頂上の端に座っているマルティナの写真、2番目はもう亡くなった祖父の写真、3番目は一家の家の窓の外で、テーブルマウンテンを背景に手を上げている幼い頃のサラの写真〔後で、もう一度出て来る〕、そして、ハガキに書かれた文字(2枚目の写真)。映像はこの写真の構図で固定されているので、上に何が書いてあるのかは一部しか分からない。2行目は、「Carretera de tierra a la izquierda」と読めるが、これは、「左側の未舗装道路」、3行目の 「pasado el camino a la izquierda」は、「左側の道を過ぎて」、4行目の 「que esta al final del camino」は、「道の終わりにある」。これは、祖母が昔暮らした家への行き方を書いたもの。中央に書かれた文字は、「もう一度チャンスをくれてありがとう。またここで会いましょう」という、マルティナからサラへのつい最近の伝言。しかし、これだけでは、家がどこにあるか分からない〔住所がどこにも書いてない〕。ルーカスがハガキを裏返すと、ロライマ山の前の広大な野原に孤立して建っている小屋が映っている〔ここが、かつて祖父、マルティナ、サラの3人が暮らしていた家〕。そして、シーンが変わり、マルティナを乗せてプエルト・オルダスから8時間かけて走ってきたジープが小屋に着いた場面に変わる(4枚目の写真)〔ハガキの写真と全く同じ構図〕。

小屋に着いたマルティナは、ここまでの車代を払った後で、「明朝、ロライマ山の登山口まで連れて行ってくれますか?」とナサックに訊く。「もちろんです。ガイドも致します」。「ありがとう、でも一人で行きたいの。7時に迎えに来て下さる?」(1枚目の写真)〔このマルティナの要請に、なぜかナサックはOKする。これは極めて異例な言動で、理解できない。というのは、ロライマ山は保護区にあり、ガイドの同伴なしには入山できないから。それが分かっていて、それを前もって言わないのは極めて 不正直〕。ナサックは去り、マルティナはドアの鍵を開け、何年かぶりかは全く不明だが、小屋の中に入る。そして、板で保護された窓を一枚上げて、懐かしのロライマ山をじっと見る(2枚目の写真)。そして、狭い寝室に入ってベッドに座ると、夫の枕の上に手を置き、亡くなった夫の思いを馳せる(3枚目の写真、矢印)。マルティナがベッドの上で、スペインから持参した荷物を出していると、上腹部を激しい痛みが襲い、急いで荷物の中から薬を取り出して飲む。それでも、すぐに痛みが消える訳ではないので、腹を押えてベッドに横たわり苦痛に耐える(4枚目の写真)〔マルティナは、サラが殺される少し前に手術をしていたことが後で分かる。病気が何なのかは分からないが、押さえている場所から、胃癌、膵臓癌、肝臓癌のいずれか可能性が高い〕。

カラカスでは、フリオが仕事を終えてから、サラの車を回収しに行く。そして、銃弾で破壊された運転席のガラスを見てショックを受ける(1枚目の写真)。フリオは、恐る恐る中に入って運転席に座ると、自分の短気な暴言が引き起こした惨事に責任を感じて強く後悔する(2枚目の写真)。フリオは、そのまま車を運転して、自宅まで帰る。手には、2人分の夕食ピザを持っている。そこに、車の音を聞いたルーカスが階段を駆け降りてくる。フリオは、「ピザを持って来たから、中に入って」と言うが、ルーカスは運転席の銃痕を見てしまう(3枚目の写真)。そして、「ママ、事故ったんじゃないね? 何があったの?」と訊く〔フリオは、死因は事故だったと話していたらしい〕。フリオは、「高速道路のバイカーたちのこと、覚えてるだろ? ホントにごめんな」と謝る〔ルーカスは許してなんかいない〕。

翌朝、超渋滞の高速道路で、ルーカスは助手席に座り、窓を開け、携帯を持って操作している。後ろからバイクが来たので、フリオは、「腕を中に入れて、携帯を隠すんだ」と注意するが(1枚目の写真)、ルーカスは無視。「手を入れて窓を閉めんか! このクソガキ!」。ちっとも変らないフリオの傲慢な態度に頭に来たルーカスは、「今度は、僕を殺す気か?」と反論し(2枚目の写真)、怒ったフリオは、「いったい何考えてる?!」と怒鳴って、ルーカスの頬を引っ叩く。プツンと切れたルーカスは、すぐにドアを開けて車から逃げ出す。渋滞でどの車も動けないので、フリオは運転席から飛び出てルーカスの後を追い、捕まえると、「いったい何なんだ?」と言いながら(3枚目の写真)助手席に放り込み、「二度とやるな!」と叱る。

フリオは、車を学校の前で停める。先ほどの自分の態度が行き過ぎだと反省したのか、助手席から降りたルーカスに、「仕事を早めに切り上げるから、夕食は一緒に食べに行かないか?」と声をかける(1枚目の写真)。しかし、ルーカスは返事もせずにドアをバタンと閉める。そして、車が立ち去ると、学校には行かず、以前にも述べたように、何らかの手段に家に戻る。そして、キッチンの引き出しの中から札束〔サラが隠しておいた?〕を取り出すと、それを自分の部屋の机に置き(2枚目の写真、矢印は札束)、リュック式のカバンから教科書などを取り出すと、札束、マルティナからの茶封筒を入れ〔他に何を入れたのかは不明〕、服を着替えて家出する(3枚目の写真、矢印)。

ルーカスは走ってバスセンターまで行くと(1枚目の写真)、350㏄くらいの水のペットボトル1本を買い、プエルト・オルダス行きのバスがどれかを係員に訊く。途中で、シャツ1枚のチンピラに、「バッグを寄こせば、何もせん」と脅されるが、それを見たもっと年上の若者が、後ろからチンピラの両腕をつかみ、「なんで俺を襲わん」と脅したので(2枚目の写真、矢印はルーカスの頭)、逃げて行く。次のシーンでは、プエルト・オルダス行きのバスの乗客の列の最後に並んだルーカスに、さっき助けてくれた若者が、「お前みたいなガキが ここで何をしてる?」と訊く。「プエルト・オルダスまで行くんだ」(3枚目の写真)。「プエルト・オルダスで何する?」。「サンタ・エレーナ・デ・ウアイレン(Santa Elena de Uairén、プエルト・オルダスの南南東約450km)行きのバスに乗るよ」〔どうやって、そこまで詳しく調べたのだろう?〕。「グラン・サバナに一人で行くんか」〔サンタ・エレーナ・デ・ウアイレンはグラン・サバナの南端にある町で、グラン・サバナ観光の入口になっている〕。「ううん、おばあちゃんがプエルト・オルダスで僕を待ってる」〔これは嘘〕。話しているうちに、列は前に進み、バスの運転手が、「彼は、君と一緒なのか?」と ルーカスに尋ねる。小学生が一人だと乗車拒否されるかもと思ったルーカスは、とっさに、「うん、僕の兄さん。でも、僕の運賃は自分で払う」と言ってお金を渡す。その大胆さに若者は何も言えない。このシーンの最後では、ルーカスが若者(名前はカエモ)と一緒に座っている(4枚目の写真)。

ここで、カメラは、マルティナに切り替わる。マルティナが、ナサックのジープでロライマ山の登山口にある粗末な事務所に着くと、ナサックは、「まず、登山の登録をする必要があります。登録が済んだら、渡された許可用紙を保護区の監視員に渡して下さい。一人で登ることは許されていません」と言う〔前に書いたように、こんな注意事項は、昨日言うべきだった〕。そんなことを始めて聞かされたマルティナは、さっさと監視員の方に歩いて行くが、許可用紙を持っていないので、先に行くことを拒否される。そこで、不親切なナサックの前を無言で通り過ぎて事務所に行き、そこで行われている手続きを見る。テーブルの後ろに座った係官が、前のイスに座った登山者に、「下山はいつですか?」と尋ね、「水曜です」と答えると、「ここに署名して下さい。下山されたら、もう一度署名してもらいます」と言い、男性が署名すると、許可用紙に印を押す(1枚目の写真)。ガイドを連れた二人連れは、受け取った許可用紙を、登山道の入口に立っている監視員に渡して入って行く。小屋に戻るジープの中で、ナサックは、「どうか怒らないで。私の立場になって考えてみて下さい。あの書類に私が署名したら、私はあなたに対する責任を負わされるんです」と、マルティナが一人で入っていけない理由を述べる。マルティナは、その話を昨日しなかったことは責めず、「それなりの説明が付けばいいんでしょ? 私たちは、一緒に出発する。そして、私たちの姿が彼らから見えなくなったら、そこで別れる」(2枚目の写真)「翌朝、あなたは無線で、私がテントからいなくなったと連絡する。それなら、何も問題はないでしょ。やりたくないなら、止めなさい。簡単にお金を稼ぎたいと思っている別の誰かを見つけるから」。「ガイド料を上げてもらえますか? 妻の手術の費用が払えるくらい」。「いいわ。でも、早く決めてね。明日、登りたいの」。

プエルト・オルダスに向かうバスの中で、カエモは バスの運転手の後ろに立ち、乗客に向かって木の棒に吊るした たくさんの石を見せ、「グラン・サバナ特有の碧玉でできた、お守りだよ。恐怖から守ってくれる。大安売りだ。1個60、2個なら90」とセールスする(1枚目の写真、矢印は碧玉の付いた首輪のひも)〔さっき、ルーカスが買ったペットボトルは10ボリバルだった。今の日本の感覚で1本150円とすれば、お守り1個は900円といった感じ〕〔日本では、碧玉はパワーストーンとされている〕。買ったのは1人だけ。カエモが席に戻ると、「親父は受け取ってくれるかな」とつぶやく。ルーカスは、「それ、あんたが作ったの?」と訊く。「もちろん」。「ホントに効果あるの?」。「どう思う?」。ルーカスは100ボリバル札を出して、「1個ちょうだい」と言う(2枚目の写真、矢印はお札)。「お前なら、タダでいい。俺のちっちゃな弟なんだろ?」と、切符を買った時の勝手な嘘を、そのまま認め、「どれが欲しい?」と選ばせてくれる。カエモは、ルーカスが選んだ石の付いた首輪をかけてやる(3枚目の写真、矢印は碧玉)。そして、「どうして、そんなチビが一人旅してるんだ?」と訊く。「パパもママも仕事で、来られないんだ」。「もちろんだな。で、2人が署名した承諾書は、家に忘れてきたんだろ? なんで家出したんだ? 言わないと、運転手に警察を呼ぶように言うぞ」。その先、どうなったかは分からない。

カメラは再び、マルティナに。彼女は、藁屋根だけで壁のない簡単な店が、ポツポツと並んでいる場所を歩いていて、50歳前後の男性の店の前で止まると、「あなたが吸ってるタバコ、少し分けてもらえる?」と訊く。男は、屋根から吊った “縦に割った丸太” の上においてある籠から1袋取り出し、70ボリバルで売る。そして、「バカンスかね?」と訊く。マルティナはそれには答えず、後ろを見て、「あそこでは、患者を診てるの?」と訊き返す。「ああ、2年前から。最初は一時的なもんだったが、ここでも医師は必要だと気づいてね。サンフランシスコは遠いからな」(1枚目の写真)〔この男は、カエモの父フェデリコ〕。マルティナは、店から離れると、10mほど離れた所で、“等間隔に並ぶ丸太” の柱で囲まれた中で患者を診ている50歳前後の女性の背を見ながら微笑む(2枚目の写真)。そして、「ローラ」と声をかける。2人は昔からの知り合いだったようで、抱き合って久し振りの再会を喜ぶ。「長年にわたり家を守ってくれてありがとう」。「あなたが、いつか戻って来るって分かってた」。

バスがプエルト・オルダスに着いたのは、もう暗くなってから。ルーカスがカエモに、「サンタ・エレーナ・デ・ウアイレン行きのバスは?」と訊くと、「無理だ。明日まで待たないと」「おばあちゃんに電話してみたら?」と言われる〔ルーカスが、バスのことを訊いたことで、彼がカラカスで、「おばあちゃんがプエルト・オルダスで僕を待ってる」と言ったのが嘘だとバレてしまう。そこでカエモが、からかった〕。ルーカスが、「一緒に行ってもいい?」と言うと、「ダメ」と断られる。「でも、僕…」(1枚目の写真)。「ダメって言ったろ」。その後、カエモが、悪事に失敗して借金にある悪漢から、「一週間待ってやる。返済しないと、代償として何かを奪い取るからな」と脅される場面を経て、彼は自分の小型トラックに乗ってサンタ・エレーナ・デ・ウアイレンに向かう。真っ暗な中を運転していると、後ろの荷台から携帯の着信音が聞こえる。カエムは急停車し(2枚目の写真)、拳銃を構えて車から降りると、荷台に向かって、「出て来い、このクソ野郎!」と言い、ビニールカバーを剥がす。すると、ルーカスがいたので、「ここで何してる?」と詰問するが(3枚目の写真)、取り敢えず、鳴り続ける電話に出させる。

ルーカスの携帯にかかった電話はカラカスからで、フリオの運転する車の助手席に座った女性〔会社の同僚〕がかけたもの。ようやくルーカスが携帯に出たので、フリオは携帯を奪い取り、車を停め、外に出ながら、「ルーカス」と呼びかける(1枚目の写真)。「一体どこにいる?」「グラン・サバナだと? 何言ってんだ?」「どうして、おばあちゃんが そこにいると思うんだ?」「私にどうして欲しいんだ?」「誰と一緒なんだ?」。ここまでがカラカスのシーン。真っ暗な車に戻り、ルーカスが、「パパが話したいって」と言いながら、携帯をカエムに渡そうとする。しかし、カエムは、「頭おかしいんじゃないのか? 俺はもう行く。降りろ!」と言うと、荷台からルーカスを降ろす。こんな何もないところで置いて行かれたら終わりなので、ルーカスは必死になって 「お願い。お願い」と頼む(2枚目の写真)。カエムは、仕方なく携帯を受け取ると、「何の用だ?」とぶっきらぼうに訊く。恐らく場所を訊かれたので。「プエルト・オルダスから3時間だ。俺はさよならする」と答える。ここで、再びカラカスに戻り、フリオは 「お願いだから、その子を人里離れた場所に置き去りにしないで」「あんた、どこに行くんだね? その子を連れて行けないのか?」「明日の早朝には、私がそっちに着けるよ」「私が払う。いくら必要なんだね?」。ここで、カエムが 「欲しいものをくれれば、この子はどこへでも連れて行く」「彼に代る」と言う〔悪漢に返済する借金を払ってもらうことにした?〕。フリオはルーカスに向かって、「息子よ、着いたらすぐに電話をくれ。携帯の電源は切るなよ。こっちから電話するから」と言って電話を切る。

一方のマルティナ。翌日ロライマ山に登ると聞いて、ローラは自宅に招く。時間は前後するが、2人の会話のうち、重要な場面を ここでまとめて紹介しよう。①まず、ローラと会った直後のマルティナの言葉。「ローラ、私、ここに住もうと思って来たんじゃない。サラにここで会いたいと頼んだの。サラに謝って、お別れを言いたかったから」。② そして、マルティナも親しかったトマスも招いたローラの家での夕食の場で。マルティナ:「トマスはレオ(死んだ夫)にそっくりだから、時々彼じゃないかって思っちゃう。もし私も登っていたら、今ここで私たち4人全員が揃っていたはずよね」。ローラ:「あなたのせいじゃないわ」〔説明はないが、この登山の時、何らかの事故で夫のレオが死んだらしい〕。「サラも同じように思ってくれていたらよかったのに」。③そして、そのしばらく後の、重要なマルティナの言葉。「サラは私が病気じゃないかと疑ってたけど、何の病気なのかは知らなかった。私が手術を受けたのは、彼女が殺された数日前だったので、医師は私を葬儀に行かせてくれなかった。埋葬に立ち会えなかった死者はこれで2人目! 何てこと?」〔1人目の死者は、恐らく夫のレオ〕。④そして、サラをここに呼んだことに関しての長い会話。マルティナ:「13年ぶりに戻ってきて、『死にそうなの、面倒見てくれない』 なんて言うのはおかしいわ」。ローラ:「それは彼女がどう思うかでしょ。ちょうどあなたが母親の面倒を見ようと決心したように」。「母が私に頼んだの、だから、事情が違うわ」。「誰の人生も台無しにすることなく、どこで、どのように死ぬか自分で決められるうちに、死にたいの」(1枚目の写真)。「そしてあなたの孫は? 彼のことは考えたの?」。「彼には会ったこともない。気にも留めないでしょ。でも、遺言で、私の全財産は彼に相続されることになってる」。「あなたがしようとしていること、すごく無謀だわ」。「無謀?」。「自分が望む場所で死ぬことが無謀なの?」。「治療を受けたら? 私、助けるわ」。「ベッドで死ぬのと、あのクソみたいな山で死ぬのと、どこが違うの? あなたなら、他の誰より理解できるでしょ」。「レオは、もう そこにいないのよ!」。「分かってるわ! バカじゃないんだから!」。「サラなら理解してくれると期待してた。お願い、あなたも理解して」。そして翌朝、マルティナは、ジープで迎えにきたガイドのナサックに、お札が詰まった茶封筒を渡す(2枚目の写真、矢印)。

小型トラックに乗ったカエモとルーカス。夜じゅう寝ていて、目が覚めたルーカスに、カエモが 「起きたか。食うか?」と言ってパンを差し出す。「ううん」。「なんてダメな副操縦士なんだ! ずっと寝てばっかし」。「誰か殺したことある?」。「なんで そんなこと訊く?」。「銃、持ってるから」。「それがどうした。この国じゃ、みんな持ってる」。「僕のママ、撃たれて死んじゃった」。「俺のオフクロも数年前に死んだ」。「やっぱり殺されたの?」。「まさか。だが、その方がよかったのかもな」。そんな憂鬱な話しが嫌いなカエモは、急に話題を変え、「これが自由だ。見ろ。グラン・サバナに着いたぞ。叫べ」と言う。「どうして?」。「叫ばんと撃つぞ」。そう言うと、右手を懐の中に入れ、銃を取り出すフリをして、指で銃の形を作ってルーカスに向ける。ルーカスが笑顔になると、カエモは前を向き、口を大きく開けて叫ぶ。それを見たルーカスも同じように叫ぶ(1枚目の写真)。2人の乗った車は、叫びながら、グラン・サバナに入って行く。テーブルマウンテンを見たルーカスは、「頂上には何があるの?」と訊く。「でっかくて黒い岩、世界のどこにもいない昆虫、食虫植物」。「すごいや。僕も登ってみたい」。「ガイドなしじゃ登れん。だが、お前がいい子にしてたら、連れてってやる」(2枚目の写真)。しばらく走ると、道路の反対側からジープが近づいてくる。そのジープはナサックだったので、すれ違う時、カエモはクラクションを鳴らし、「おい、どうした? ヤアも言わずに行っちまうんか?!」と叫ぶ。結果として、2台とも通り過ぎてから停車し、カエモがトラックから降りて歩き始めると、ジープがバックしてくる(3枚目の写真、右の矢印は無関係なので逆方向に行ったルーカス)。一方、ナサックのジープの助手席には、ルーカスの祖母のマルティナが座っているが(左の矢印)、お互いに気付かない。車から降りたナサックは、「お前のオヤジから 来るとは聞いてたが、こんなに早く来るとはな」と言い、再会を喜ぶ。

マルティナの小屋に近づくと、ルーカスは、葉書に書いてあったアクセス手段をカエモに話し、間違いなく小屋に到着する(1枚目の写真、矢印はハガキの写真)。車が停まると、ルーカスは小屋のドアまで走って行き、ドアをノックするが、先ほどすれ違ったので、返事はない。ドアに鍵がかかっていなかったので、ルーカスは中に入って行く。カエモは、それを見て、ルーカスのリュックの中から携帯を取り出し、電話をかけようとするが、ルーカスがドアから呼びかけたので、家の中に入って行く。「どうした?」。ルーカスは、「これ、見つけたんだ」と言って、マルティナの鞄を見せる。カエモは、「そうか。お前のパパにそう言え」と言って携帯を渡そうとする。ルーカスは、「どうして 僕の携帯持ってるの?」と不審そうに訊くが、カエモは、「電話しろ」と命じる(2枚目の写真)。ルーカスは、仕方なく携帯を受け取るが、鞄を指して、「触らないで、おばあちゃんの物だから」と 携帯の二の舞を避ける。そして、カエモを監視しながら父に電話をかける。「もしもし」「うん、パパ」「うん、おばあちゃん いるよ。鞄があるんだ」「まだ、カエモと一緒だよ」(3枚目の写真)〔カエモが見ている矢印の紙は、マルティナがスペインから持参した文書(あとで診断書だと分かる)〕。

一方、三度目にロライマ山の登山口にある事務所に着くと、2人は入山手続きの列に並ぶ。すると、事務所の中から出て来た職員が、「ナサック、ここで会えて嬉しいよ」と、背後から声をかける。ナサックは驚いて振り向く。職員:「奥さん、元気かい」。ナサック:「大変ですよ。ご存じでしょ。あなたがここで働いているなんて知らなかった」。「数日前に転勤になったから。君の件は、私が対応しよう」(1枚目の写真)。理由は全く説明されないが、「これはマズい」と思ったナサックは、職員が部屋に戻ったので、急いでジープに戻る。追いかけてきたマルティナが、「ナサック!」と声をかけると、ナサックはジープの中から 今朝渡された茶封筒を、「ごめんなさい」と言いながら取り出し(2枚目の写真、矢印は茶封筒)、「できません」と言って返す。そして、彼女や小屋に送り返そうと、ジープに乗り込む。

マルティナの小屋では、カエモが何かを見ていることに気付いたルーカスが、「それ、おばあちゃんの物で、あんたの物じゃない!」と言って、取り上げようとする。しかし、カモエは、ルーカスから奪われないよう、手を高く上げる(1枚目の写真、矢印は文書)。ルーカスは、「もう行ったら? あんたの父さん 待ってるよ」と言うと、飛び上がって紙を取ろうとするが、カエモは背後の棚の上に紙を投げ込む。そしえ、「まさか、弟よ。お前をここまで連れてきてやったんだ。俺に借りがあるんだぞ。おばあちゃんに、俺に仕事をくれって言うんだ」と言う〔フリオとの電話はどうなったのだろう?〕。「それ、返してくれたら言うよ」。その時、車が近づいてくる音がする。急いで窓まで行くと、さっき、ここへ来る前に停車した時のジープだったので、「あんたの友だちが来た」と言う(2枚目の写真)。カエモが、「どうして、あの時、おばあちゃんだと気付かなかったのかな?」と言ったので、ルーカスは遂に会えるとワクワクする。ジープから降ろされたマルティナが、困惑しながら小屋に歩いて行くと、開きっ放しのドアからカエモが出て来る。「私の家で何してるの?」。「あんたの孫が会いたがってたんだ。だから、無事にここまで送り届けたのさ」。驚いたマルティナが男の左側を覗くと、ルーカスは、自分の顔が見えるように体を傾け、「今日は」と笑顔で言う(3枚目の写真)。

次のシーンは、カラカスの会社で働いているフリオ。昨夜 あれほど心配していたのに、このダメ親父は、結局、何もせずに日常生活に戻っていた。そこにルーカスから電話が入る。そして、すぐにマルティナに代る。久し振りに話す相手に対し、フリオは 「やあ、そこにいてくれて嬉しいよ。ルーカスは大丈夫?」と訊いた上で、「あんたが普通のおばあちゃんのように振る舞っていたら、息子は会いに駆けつけたりなんかしなかったのに」と不満をぶつける〔実際には、このフリオが、普通のパパのように振る舞っていたら、ルーカスはこの「人非人」から逃げて、祖母に会いになんか行かなかった〕〔①母の射殺を内緒にし、②無理矢理クラブに行かせ、③射殺がバレると謝るが、射殺の原因がフリオの無鉄砲な激怒によることがバレる〕。そして、「申し訳ないが、お願いがある」と言う〔映画では不明だが、恐らく、自分が迎えに行くまで、ルーカスの面倒を見るようにとの依頼。これで、マルティナの登山は数日延期になった〕。マルティナは、ルーカスを、かつて自分が暮らしていた子供部屋に連れて行く。そして、窓を開き放つ。そして、「少し片づければ、ずいぶん良くなるわよ。買い物してきた物を片付けてくるわ。何か必要なものがあれば、すぐそこにいるから。そこが気に入らないなら、ラウンジで寝てもいいのよ」と言うが、ルーカスはその間ずっと黙ったまま。マルティナが出て行くと、ルーカスはさっそく茶封筒から写真を取り出し、中から、この部屋から撮った写真を見つける。そして、窓辺に立って比較する(1枚目の写真、中央の窓枠の右に映っているのは、外で遊んでいる幼い頃の母サラ)。マルティナが、買い物を整理していて、ふと窓の外を見ると、ルーカスが、写真の母のように外の野原に出て行き、遠くの山をじっと見ている(2枚目の写真)。時間は飛んで夜になる。フリオは、社内で一人残って仕事をしている。小屋の外で、草の上に座っているルーカスの隣に、マルティナがやって来て座る。ルーカスは、20㎝ほど離れて座り直してから、「ベネズエラに来るって、どうして言わなかったの?」と質問する(3枚目の写真)。「今の自分が、もっと悲しくなってしまうんじゃないかと 心配だったから」。「僕、あなたの孫だよ。電話してくれなくちゃ。あなたが、ママに送った写真 見つけたんだ。ママが(死んだから)来ないと分かってたのに、なぜ来たの?」。「ここに来たかったからよ」。「僕が来たこと 気にくわない?」。「いいえ、まさか。中に入らない? 夕食ができたわ。お腹空いてるでしょ?」。「ちょっとだけ」。食卓に座ると、用意してあったのはルーカスの分だけ。「食べないの?」。「さっき軽いものを食べたの。でも、あなたには、あなたのママが好きだったトマトソースのスパゲティを用意したわ」。そう言って、ルーカスの前にスパゲティの皿を置く。しかし、ルーカスは じっと見ているだけで食べようとしない。「どうしたの? ママの作った方がおいしかったのね。でも、食べてみて」。ルーカスは一口食べて、そこでストップする〔よほど不味い?〕。

翌朝、朝食の用意をしていて腹部に痛みが走ったので、マルティナはトイレに行き、スペインから持ってきた薬入れを開けると、錠剤〔モルヒネ〕が残り1錠しか残っていない(1枚目の写真、矢印は錠剤)〔もっと早く、ロライマ山で死ぬハズだった〕。錠剤を呑んでしばらくすると、ドアがノックされ、ルーカスが 「おばあちゃん、大丈夫?」と声をかける。「大丈夫よ。きっと何か変な物を食べたせいね。すぐ行くわ。朝食、食べ始めて」。息を整えてからトイレから出て行くと、牛乳を飲んだルーカスが、笑顔で 「お早う」と言う(2枚目の写真)。「顔色 悪いけど、どうしたの?」。「私の色よ」。マルティナは、ルーカスに、サンドイッチとバナナを2人分渡す〔ルーカスとカエモの分〕。そして、市場〔ローラや、カエモの父がいた場所〕まで一緒に乗せて行ってもらう。マルティナを見たローラは、「行かなかったのね」とホッとする。マルティナは、「ルーカスが会いに来たの。家出して、ここにいる」と、事情を打ち明ける。「何て ありがたいことなの」。「3日後に、父親が迎えに来て連れて帰ったら、以前と同じになるわ」。そして、モルヒネを渡してくれるよう頼む。「なぜ、その子に知られたくないの? その子のため、それとも、あなたのため?」。「孫に心配かけたくないから」。ローラは反論するが、マルティナは自分の考えを押し通す。マルティナは、フェデリコの店で、カエモと一緒にいたルーカスに、自分はローラに送ってもらうから、カエモと2人で行くよう指示する。

カエモが連れて行ったのは、かなり流れの速い渓流。岩の上を歩いて渓流を渡ると(1枚目の写真)、ルーカスを流れの真ん中の岩の上まで連れて行き、そこで手を離して(2枚目の写真)、渓流下りをさせる。2・3枚目の写真は、流されていくシーンの2コマだが、かなり危険な場所に見えるので、どうやって撮影したのだろう〔特撮や、スタントマンではない〕。次に2人が行ったのは、大きな滝の真下(4枚目の写真)。そこから、滝の裏に入っていった2人は、以前 車の中でやったように、大声で叫ぶ(5枚目の写真)。

ローラの診療所で処置ベッドに横になったマルティナに、注射針を持ったローラが近づき、「ビタミンB12は効くわよ。モルヒネは飲み過ぎないようにね」と言う〔「がん薬物療法に伴う末梢神経障害の診断と治療」という資料に、「症状の治療としてのビタミンB12 の投与」は、「推奨なし」と書かれている〕。そして、注射が終わると、「さあ、家に帰って休んで」と言われるが、マルティナは 「ルーカスに、会いに行くって言っちゃった。あなたにも、ルーカスに会って欲しい。すべてが終わった後、彼に全てを説明してほしいから」と話す(2枚目の写真)。「警察から告げられるより、残酷じゃないでしょ」。「当初の計画は、そうだったんでしょ? なぜ今になって彼のことを心配してるの? マルティナ、あなた、思ってる以上に、その子のことが大切になったのよ」〔ローラは、マルティナの依頼に応じたわけではない〕。

マルティナはローラの車を運転させてもらい、会う約束の場所に向かう。その場所の近くの崖の上では、カエモがルーカスに、「まず走れ。崖際に来たら、岩に当たらないよう高くジャンプしろ。いいな?」と教えている。「OK」。崖の下にいるマルティナとローラを見つけたルーカスは、手を振る。そして、最初に、手本を見せるため、カエモがジャンプする(1枚目の写真、矢印の方向に落ちる)。崖下の淵に飛び込んだカエモは、下からルーカスに向かって、「飛び降りろ!」と叫ぶ(2枚目の写真)。ルーカスは、淵を見下ろし(3枚目の写真)、お守りを手で握りながらスタート地点までバックするが、怖くて走り出せない。小屋に戻った3人。カエモが、「この辺りには、勇敢な子供たちなら一杯いますよ」と、マルティナに話しかけると、ルーカスは 「明日は、必ずジャンプする。見てて」と言い、マルティナは微笑む。ルーカスは、さらに、「おばあちゃん、カエモと僕にいい考えがあるんだ。パパに、あと数日だけ、ここに泊めてもらえるよう頼んで」と言い出す。カエモも 「俺がルーカスをカラカスまで連れてくから、パパさんは仕事を休まなくて済みます」と支援する〔カエモには、悪漢に返すお金、父親の病気を治すためのお金が必要〕。マルティナは 「フリオは、そんなこと許さないわよ」と言い、ルーカスの提案を拒否する。ルーカスが了承しないので、自分で(電話を使って)父親と交渉に行かせると、残ったカエモに、「私のガイドになってくれるなら、必要なお金は差し上げるわ。ただし条件がいくつかあるの。第一に、ルーカスに知られてはならない」。ここで、この画面は終わってしまう〔この映画は、肝心なところで、会話がいつも途切れるので、全体を把握するのが大変〕。

小屋の外での2回目のルーカスとマルティナの会話。カエモがマルティナの提案を積極的に受け入れ、ルーカスの希望が潰えた結果、カエモの裏切りに腹を立てたルーカスは、「もう、あいつとはどこにも行かない。あいつは裏切り者だ」と不満をぶつける。それを聞いて責任を感じたマルティナは、「私が一緒に行こうか」と提案する。「ホント?」。「ローラの車を借りればいいわ。カエモほど強くないけど、ハイキングくらいならできる」(1枚目の写真)。そして、翌朝、2人は市場に行く〔車がないのに、どうやって行ったのだろう? カエモの車に乗ったとは思えないし、ローラが迎えに来てくれたのだろうか?〕。マルティナは、ルーカスに “ハイキングに相応しい服” を着せようと、子供服の店に行き、冒険家のコスチューム〔インディジョーンズ的〕を思わせる服を選び、その場で着替えさせ(2枚目の写真)いざ出発。マルティナは、ハイキングの途中で立ち止ると、ルーカスの両親の不和について、人の心と心のつながりという一般論から話し始め、「私たちは、誰かと親しいと思っても、実は遠く離れていたりする。それが、あなたのママとパパの間に起きたことなの」と言い、さらに、「それが今、あなたとあなたのパパの間で起きていることでもあるのよ」と言った上で、「あなたにとって、フリオはたった一人のパパなんだから、仲良くなって楽しまなきゃ」と、提言する(3枚目の写真)。

次のシーンでは、マルティナは静かに流れる渓流の岸で、フリオに対するルーカスの怒りについても、何とか収めようとする。「パパを責めることはできないわ。バイクに乗った悪漢が、ママを追って行くなんて分かる訳ないでしょ」。ルーカスが、「どうして事故だなんて作り話したの? ホントのこと隠しちゃって」と不満を言うと、「パパはあなたを守りたかったのよ。幼すぎて理解できないこともあるから」と無理筋の回答〔そんなフリオではない〕。「それって、どんなこと? おばあちゃんが思っている以上に、僕 分かってるんだよ」。ここから、マルティナと夫の間で起きたことが話される。①ロライマ山に登る前夜、祖父と祖母は口論になり、翌日の登山に、祖母は同行しなかった。何日経っても祖父は帰って来ず、大勢で捜索したが見つからなかった。②サラは、母マルティナが父と同行しなかったことを責めた。マルティナは、罪の意識があったので、自己弁護できなかった。③フリオも、きっと同じ気持ちに違いない。それを聞いたルーカスは、父のことは違うと思うので黙っていたが、マルティナのことは好きなので、「もし僕が彼女(サラ)だったら、あなたを許すよ」と言う(2枚目の写真)。そして、「一緒に泳ぎに行こうよ」と誘う。ルーカスは、マルティナの手を引いて、どんどん深いところに連れて行く(3枚目の写真)〔マルティナは、水面に浮かんで楽しむ〕。

カエモは 市場にいる父フェデリコに会いに行き、「スペインの女性をロライマに連れて行くことになった」と報告する。父は、息子が悪漢の手助けを止め、登山ガイドとして生きる道を選んだことを喜ぶ。そこに、ナサックが入ってきたので、フェデリコはカエモの制止を振り切って、マルティナのことを話してしまう。そのあと、外に出て行ったナサックは、カエモに、「フェデリコが、お前のやろうとしていることを知ったら、決して許さんだろう」と警告する〔なぜ、マルティナの自殺を助けると、フェデリコが怒るのか、説明が全くない〕。カエモは、「そんなに悪いことだと思うなら、お前、なんでやろうとしたんだ?」と反駁する。「俺はやらんかった! それが大事なんだ!」(1枚目の写真)。「お前は俺ほど 金が必要じゃないからさ。あの女は死にたがってる。俺はただ、それを助けるだけだ」。「お前がやるべきことは、俺の妻がやってるように、お前の母親もやったように、命をかけて戦うことだ」。「それが何の役に立った? もし俺の母さんがもう一度選べたなら、きっとあのクソみたいな最後の数ヶ月は避けただろう〔死を選んだ〕。お前、奥さんに 死にたいかどうか訊いたことあるんか?」。「そんなの、お前の問題じゃない!」。「俺が何をやるかだって、お前の問題じゃないだろ! お前が奥さんの命のために闘ってるように、俺は親父の命のために闘ってるんだ!」(2枚目の写真)「だから、口出しするな」。

翌朝は、ルーカスが朝食の用意をしてと、マルティナが姿を見せる。朝食テーブルに座ったルーカスは、「このクッキーは おばあちゃん用。僕のママみたいに、甘い朝食が好きなんだね」と言う。「ありがとう、ハニー。なんて素敵なテーブルなの」。「ここに引っ越したら、僕が 毎朝朝食を作ってあげるよ」(1枚目の写真)〔ルーカスは期待するが、祖母の顔を見て〕「やっぱ、無理だよね。でも、必ずまた会いに来るから」。「ここはあなたの家よ」。「今日は何するの? 選んでもいい?」。その結果、2人はハイキングに出かけるが、昨日のように楽な場所ではなく、斜面を登る厳しいハイキング。ルーカスが 「82」、マルティナが 「83」と交互に数えながら一歩一歩登っていく。「89」まで数えたところで、マルティナは、「あなたのおじいちゃんは、数えると頑張れるって言ってたけど、私、もう疲れちゃった」と言い、手を引っ張ってもらう(2枚目の写真)。ルーカスは、服と一緒に登山靴も買ってもらったので、「この新しいブーツを履いてると、ぜんぜん疲れないね」と言う。「良かったわね。水、もらえない?」。ルーカスはすぐに水筒を渡すと、「このブーツを履くたびに、おばあちゃんのことを思い出すよ」と言う。「ブーツがすり減ったら、私のこと忘れる?」。「おばあちゃんがくれた運動靴があるよ」。「それもすり減ったら?」。「また買ってよ」。「すり減らない物の方がいいわ。そうね、いつもしていること。例えばね、今みたいに森の中を歩いていると、私は、あなたのおじいちゃんのこと思い出すわ」。「走るのはどう?」。「いいわね」。そこで、森から出て、林道に出ると、競争のつもりでルーカスは走り始めるが(3枚目の写真)、水筒が落ちる音がしたので、振り返ると祖母が倒れている。ルーカスは、「おばあちゃん!」と叫んで、駆け寄る(4枚目の写真)〔ルーカスには、祖母の病気のことは一切知らされていないので、こうなっても仕方がない〕。ルーカスは、「助けて!!」と何度も叫ぶが、こんな辺ぴな所には 誰もいない。一方、カエモは見晴らしの良い場所に行き、自分の将来を考え、ガイドには不要な、“悪のシンボル” でもある拳銃を投げ捨てる。そして、小型トラックに戻ると、ルーカスから携帯に電話が入り、事情を聞くと、急いで車に乗り込む。

カエモは2人を小屋に連れ帰り、至急ローラを呼ぶ。ルーカスは、暗い顔でテーブルに座っているが(1枚目の写真)、ただ心配しているだけなのか、森の中のハイキングに連れて行ったせいだと自分を責めているのかは分からない〔しかし、この練習のお陰で、手術後安静にしていたマルティナは、数日後のシーンでは、もっと急な斜面を「294」以上まで登ることができた〕。ベッドで横になったマルティナは、ローラに、「ルーカスはどこ?」と訊く。ローラは、「カエモと一緒に外にいるわ」と言うが、すぐに、「ルーカスのことはいいから、私の言うことを聞いて。あなたは とっても衰弱してるの。頂上には決して辿り着けない。登ってる途中で、来たことに後悔したらどうするつもり?」と心配する。「ローラ、後悔なんかしないわ。今となってはなおさらよ」。そして、ローラが 「ルーカスのことはいいから」と言ったのを受けて、「今、ルーカスと私はとても仲良しなの。私は、ルーカスに、他の記憶ではなく、この記憶を残したい。ローラ、経ってのお願いよ」と、死の病のことは伏せておくよう頼む(2枚目の写真)。ローラが、寝室から出て行くと、ラウンジにいたルーカスが、「おばあちゃん、大丈夫なの?」と訊く。ローラはマルティナの希望通り、「心配しないで。誰にでもあることよ。ほとんど何も食べていないのに、肉体的な疲労が重なれば… でも、回復するわ」と嘘を付く(3枚目の写真)。「ホント?」。「そうよ。でも、休ませないと。遠出はダメよ」。そう言うと、祖母に会いに行かせる。ルーカスがいなくなると、カエモは、「俺、あの人の診断書を読んだんだ。深刻な状態なんだよね? 登山に連れて行っていいか心配だよ」と言う〔ここで、初めて、カエモが見ていた紙が診断書だと分かる〕。ここでもローラは、「ロライマ〔登山ガイド〕のことは心配しないで。彼女は、どうしても行くと決めている。それが大事なの。でも、彼女に辛い思いはさせたくない。だから、あなたに助けて欲しいの」(4枚目の写真)。

小屋の外での3回目で最後のルーカスとマルティナの会話。マルティナが一人で焚き火にあたっていると、そこに、牛乳と水のコップを持ったルーカスがやって来て、水のコップを祖母に渡す。マルティナは、「こんなハンサムなヘルパーがいるなんて、私 なんてラッキーなんでしょう」と言い、祖母の横に座ったルーカスは牛乳の方を飲む(1枚目の写真)。マルティナは、「私のことを思い出す時は、こんな弱った姿はやめてね」と言う。ルーカスは、「条件が一つあるよ。回復するまで、カラカスまで僕たちと一緒に来てよ」と言う。この二度目の提案に対し、マルティナは、「すぐ元気になるわ。ローラがそう言わなかった?」と言った上で、より重要なことを告げる。「知ってる? 今まで訪れた場所の中で、ここが一番幸せだったのよ。最初は、あなたのママと、おじいちゃんが一緒だったし、今は あなたが一緒だから」(2枚目の写真)「だから私は、ここにいたいの。そして… 私の決断を尊重して欲しい… この先に 私が下す決断も」。それを聞いたルーカスは、「どうしてそんなこと言うの? おばあちゃん、どうかしたの?」と心配する。マルティナは、「何でもないわ。悲しそうな顔しないで」と言うと、ルーカスの頭にキスし、満天の星空を見せる(3枚目の写真)。「素敵でしょ?」。「カラカスの空は真っ黒だよ」。

その後で、ルーカスが父に電話すると、会社にいたフリオは、「全部順調に終わった。これから、そっちに向かうぞ」と言う。カメラは、カラカス市内の高速、何もない田舎の一本道を走る車から見える風景を映す。そして、遂に、サラの車が小屋に到着する。カラフルなTシャツを着たフリオが、初めて訪れた小屋のドアをノックしかけると、車の音を聞いたマルティナが先にドアを開ける。初対面か、数十年ぶりの2人の挨拶は、丁寧な 「ブエノス・ディアス(Buenos días)」でなく 「ボラ(Hola)」。中に招き入れられたフリオは、壁全体が窓になっているラウンジに座り、マルティナはコーヒーを用意する(1枚目の写真)。フリオが、「ルーカスは?」と訊くと、「どこかしら? さっきまで、そこにいたのに」と言うが、それは予め決めておいた言葉で、いきなりルーカスの部屋のドアが開き、インディジョーンズ的な服に着替えたルーカスが、「ジャジャーン!」と言って登場し、父を笑わせる。「何、着てるんだ? こっちへおいで」。そう言って、飛んできた息子を抱き締める。ルーカスが、「ママの部屋と、滝を見てかないと。カエモが迎えに来てくれるんだ」と言うと、フリオは、夜を徹して1000km近く走って来たにもかかわらず、「今日は遠足の日じゃない。すぐ出発する」と、つれない返事。それを聞いたマルティナは、「フリオ、今夜は泊って行ったら? 体を休めないと」と勧める。そこにカエモの車が来たので、ルーカスは、「お願い」と再度頼み、フリオはOKする。ルーカスが、「一緒に来ないと?」と誘うと(3枚目の写真)、マルティナは、「お父さんを休ませてあげなさい」と言い、ルーカス一人で行かせる。

カエモは、ルーカスを一番のお気に入りの場所まで連れて行き、「ここは、俺にとって、グラン・サバナでベストの場所だ。お前に見て欲しかった」と言う(1枚目の写真)。そして、「ロライマの山上に立つと、世界で一番幸せな人間になった気がする。天国にいるような気分だが、もっと楽しい」とも。ルーカスが、「人は死んだら天国に行くと思う?」と訊くと、「それじゃ、ちょっと遠すぎないか? みんな、俺たちと一緒にここにいると思う。お前のママはお前と、俺の母さんは俺と。これで4人揃ったな。お前のママと俺の母さんは、お前と俺と同じように、友だちなんだ」と変わったことを言う。母に天国にいて欲しいルーカスは、「2人とも、遠く離れていても、僕たちのそばにいられるんだ」と、別の見方を主張する。一方、祖母の小屋では、マルティナがフリオに、これから自分がすることを打ち明ける〔その場面自体はない〕。それを聞いたフリオは、「もっと前に、私に話すべきでした。ルーカスはあなたに会い、今やあなたを愛してます」「彼が私に訊かないと思いますか? 私は、嘘はつきたくない」(2枚目の写真)。「私には、本当のことなど話せない」。「あなたがやろうとしてることは、私にも理解し難いことなんです。一体どうすれば? 私は、彼に罪悪感を抱いて欲しくない」。「何に対して?」。「あなたをここに残しておいたことに対し。それに、連れて帰らなかったことで私を責めて欲しくもない。私たちは、彼に理解させないといけない。あなたが、『ルーカスには ここにいて欲しくない。私と一緒に帰るべきだ』と思っていると」。「もう知ってるます」。「彼には 『あなたが山に登るのを止める方法』などなかった、と理解させないといけない」。その後、議論がどう展開したのかは、全く紹介されない〔次のシーンでは、フリオはマルティナに積極的に協力している⇒ここまで非協力的でありながら、フリオが変身した過程を示さないのはズルい〕。そして、場面は、もう一度、カエモとルーカスに戻る。2人は、3日前に行った崖まで行き、カエモが最初に飛び込み、淵からカエモが叫ぶ。「さあ、探究者よ、飛び込め!」。ルーカスは、今度は勇気を持って飛び込む(3枚目の写真)〔ここも、崖に向かって走るところから連続して撮っているので、特撮でもスタントマンでもない〕。

小屋に戻って来たルーカスの前で、フリオはテントを立てている〔ずっとカラカスで暮らしていた一家にテントなど必要ないので、テントは小屋にあったもの。登山にも必要だし〕〔フリオが独力でテントを張れるのは、ボーイスカウトに参加したことがあるから〕。ルーカスが、テントをカラカスに持って帰ったらと提案するが、フリオは、「おばあちゃんに、(カラカスで)料理を作ってもらった方がいいぞ。おいしそうな匂いがするじゃないか」と、冗談を言うが、ルーカスは 「もう頼んだんだけど、おばあちゃん ここにいたいんだって」と、自ら否定する。それを聞いたマルティナが、「お父さんと、カラカスに行かなくちゃいけないのは、あなたよね」と言うと、ルーカスは 「僕もそう思ってる」と言い、父も 「レースにも勝たなくちゃな」と笑顔で追随し、ルーカスも笑顔で 「もちろん」と応じる。急にハッピーになった会話の最後は、フリオがルーカスに 「さあ、おばあちゃんの横に行くんだ。写真を撮らなくちゃな」と言う場面。フリオは、開いた窓から、小屋の中に戻った息子と祖母の幸せ一杯のツーショットを携帯で撮る(1枚目の写真)〔ルーカスにとって生涯の思い出となるプレゼント〕。その日の夜、ルーカスは父と一緒にテントで寝る(2枚目の写真)。小屋の中で一人になったマルティナは、ルーカスへの一種の「遺書」を何枚も書いている(3枚目の写真、矢印)。

翌朝、自動車に乗ろうとするフリオに、マルティナは 「彼が理解できるようになったら、真実を知ってもらいたいの。これ渡してもらえる?」と言って、昨夜書いた「遺書」を入れた封筒を差し出す(1枚目の写真)。フリオは封筒を受け取ると、「サラなら きっとそうしたでしょう」と言う。マルティナのフリオに対する最後の言葉は、「二度と家出させないで」というもの。フリオは頷きながら、「あなたとサラが、(天国で)再会できますように」と言うと、そこにルーカスが小屋からリュックを持って出て来る。フリオは、「それ渡して。車で待ってるから」と言ってリュックを受け取ると、車に行きかけ、振り返ると、マルティナに 「私たちが変われると分かって嬉しかった」と感謝する。ルーカスと2人きりになると、マルティナは 「あなたが走る時、私はいつも一緒にいる。分かってるわね?」と言い、ルーカスは笑顔で頷く(2枚目の写真)。それに対し、ルーカスも 「おばあちゃん、体を大切にね」と言い、マルティナが頷く。そして、「あなたに会えてよかった」と言うと、ルーカスは 「僕こそ」と言い、バスの中でカエモからもらった碧玉の付いたお守りを首から外し(3枚目の写真、矢印は碧玉)、「怖くなったら、これ付けて。僕もう要らない」と言って渡す。マルティナはルーカスを抱き締める(4枚目の写真)。2人は手を振って別れる。

その日、予定より1週間近く遅れたマルティナは、カエモと一緒に事務所に行き、初めて入山手続きを行い、発行された許可用紙を監視員に渡し(1枚目の写真、矢印)、ロライマ山の登山道に入って行く。ここで、ルーカスの最後の登場場面が短く挿入される。ルーカスは、父に向かって、「パパ、大声で叫ぼうよ」と声をかける。「何?」。「スピード上げて!」。そして、カエモと一緒にやったように、大声で叫び始める。それを見たフリオも、以前の堅苦しい人間ではなくなったので、ルーカスと同じように大声で叫ぶ(2枚目の写真)〔家出の効果は100%〕。その頃、マルティナとカエモは、ロライマ山に向かう ほぼ真っ直ぐな登山道を、ゆっくりと進んで行く(3枚目の写真)〔マルティナのリュックは、カエモが運んでいる〕。かなり山に近づいた時、マルティナが立ち止る。彼女が何と指示したのか分からないが、カエモが 「もう、これ以上同行するなと言われるんですね?」と訊くと、マルティナは 「そうよ」と答える。カエモは、「ローラが言ったことをお忘れなく。一度だけでも彼女の指示に従えば、彼女はとても喜ぶでしょう」と言う〔あらすじでは省略したが、この日の朝、ローラは自分で調合した薬液の入ったビンをカエモに渡し、「もし彼女が頂上に行けなかったら、まず睡眠薬を飲んでからこれを飲むように伝えて。15分で眠りにつき、苦しくなくなるの」と頼んだ〕。カエモはさらに、「俺のちっちゃな弟〔ルーカス〕のことは気にしないで。彼なら分かってくれるから」と 付け加える。「じゃあ…」。「さようなら。ありがとう」。2人はそこで別れ、マルティナは真っ直ぐ山に向かい、ルーカスは時間を潰すべく脇に逸れて行く(4枚目の写真、矢印は歩く方向)〔当然ながら、マルティナも自分のリュックを背負っている〕。

そのあと、かつて、ルーカスと一緒に森の中を登った時のように、マルティナが杖をつきながら、「102、103、104、105」と数えながら登っている(1枚目の写真)。「200」まで数えた時、疲労で地面に倒れ込むが、「さあ、数えるのを止めたら、力が抜けちゃうわよ」と自らを奮い立たせる。その後も、必死に登って行くシーンが、「294」まで続く。その後、そのくらい登ったのかは分からないが、マルティナはランプを点けて洞窟の中に入って行く(2枚目の写真)〔結婚してから何度も登っているから、どこに洞窟があるのか知っていたに違いない。だから、ここは、予定していた最終目的地〕。マルティナが、死体が見つからないよう、奥まで降りて行き、地面に横たわると、首からかけていた 「ルーカスからもらった碧玉の付いたお守り」を握り締める(3枚目の写真、矢印はお守りのひも)。そして、ローラが作ってくれた薬が効いてきたので、手を伸ばしてランプを消す。すると、場面は変わり、ロライマ山の平坦だが、岩塊や水溜まりのある頂上を、何も持たずに元気に歩くマルティナが映る。彼女が向かった先は、昔の写真にあった見晴らしの良い岩の上。そこに、彼女が腰を降ろして座ったところで映画は終わる〔これは、死んだマルティナの魂なのか?〕。因みに、最後の5枚目の写真は、カラカスの家で、ルーカスが最初に茶封筒の中を見た時に 一番上にあった写真。こちらの方〔若い時のマルティナ〕は、ちゃんと登って来たので、リュックを背負っている。
