ドイツ映画 (2018)
命に関わる病気を抱える子どもたちや貧困の中で暮らす子どもたちを支援するオンライン募金活動「Watch for Wishes」の一環としてオンライン公開された英語のドイツ映画『Robin: Watch for Wishes(ロビン)』(2018年)。従って、登場するのは、確実な死を宣告された末期癌のロビン(12歳)。映画の主人公は、ロビンの父ジョン。この映画の筋書きは、他では観たことがないほど奇抜で、エンドクレジットの3~4分前になって観客を心底驚かせる脚本は、大したものだ。しかし、その脚本には4つの致命的な問題点があり、それさえなければ映画史上に残る作品になっていたかもしれない。この映画の解説では、特例として、あらすじの最後に、その4つの問題点について紹介し、その回避方法についても提案する。
この映画で2番目に重要な役は、12歳のロビン役のエイデン・フラワーズ(Aiden Flowers)。彼は、この映画で、インディペンデント映画を対象にしたクイーンパーム国際映画祭で、Best Young Actor賞を受賞している。ただ、私は賛成できない。理由は、2004年12月13日生まれで、映画が撮影された2016秋~2017初頭には、映画の設定と同じ12歳(しかもなったばかり)にしては、少なくとも14歳の元気一杯の少年に見える点。だって、彼は、いつ死んでもいいと宣告を受けた末期癌の患者で、何度も、脱毛を経験している弱々しい少年のハズだ。それを、何でもできそうな頑丈な体格の少年が演じていると、“死に瀕している” という悲壮感が全く感じられない。これは本人の責任ではなく、キャスティングの責任なのだが、ミスキャストの非現実的な演技に賞を与える主催者にも疑問を抱かざるを得ない。
あらすじ
写真の左端の 青色 の縦線は 現在、黄色 の縦線は 過去 の映像 。
映画の冒頭に映るのは、南アフリカのケープタウンの下町キラーニー(Killarney)地区から見たテーブルマウンテン(1枚目の写真)。そして、この映画の主人公、詩人のジョン・ガーバーがポエトリー・スラム選手権〔詩人が観客と審査員の前で朗読詩(3分以内)を披露する競技形式のイベント〕の第1ラウンドで読み上げる詩がバックグランドに流れる。映像も詩と同じで、だから、最初はそれが選手権の詩ではなく、場面の説明かと思ってしまう。ケープタウンの下町の駐車禁止の道路に、ライオンのマスクを顔に付けた2人を乗せた小型トラックが停まる。運転席から下りた男が、まっすぐ銀行に入って行く。あまりに派手な格好なので、警備員も気にしない。男は、腰に挟んでおいた拳銃を取り出して、窓口のガラス越しに拳銃を構える(2枚目の写真)。女性の係員は、札束を窓口から外に出し、男はそれをバッグに入れるとすぐに車に戻って、立ち去る。車はその地区にあるマディバズ・アボードという児童養護施設に乗り入れると(3枚目の写真)、バッグを施設長の女性に渡し、1枚の円筒状に包んだ紙を渡して掲示するよう依頼する。大金に驚いた施設長は喜んでOKする。運転している男がマスクを外すと、ジョン・ガーバーの笑顔が見える。ここで、場面は切り替わり、第1ラウンドで詩を読んでいるジョン・ガーバーの後ろ姿と、大勢の観客が映る(4枚目の写真)。参考までに、詩を紹介しておこう。詩の題名は 『ロビン・フッド』。「“盗賊の王”は、“百獣の王”の目と、獅子のように勇敢に鼓動する心を持ち、駐車禁止の標識の下に車を停め、獲物を追う。罰金なんか気にしない。王は勇敢だと、言ったの覚えてるか? 今日こそがその日、王は堂々と正面ゲートから洞窟へ踏み込む。『やあ、どうした?』とでも言い。今日は、乙女マリアンとの結婚なんて、ありえない。やるべき仕事、奪うべき預金がある。手のひらに汗が滲み、深呼吸ひとつ、マスクの下で心臓は激しく鳴る、この任務に挑むより、退職口座でも開く方がマシかもしれん。だが追放者に金利は最悪、弓矢は時代遅れ、過去の遺物から銃を引っ張り出し、『手を挙げろ、野郎ども!』。『バンザイ!』と叫ぶ、今日は給料日だ。やった、やった、なんて日だ。冗談ではなく、バットマンの相棒ロビンと同じ名を持ち、銀行が生み出した蛇どもに痛撃を与える、それこそが君の役割。ならば君は常軌を逸してはいない、真っ直ぐな道を行き、貧しい者のために盗むのだ。困窮する者のため、強欲な者から奪う。銀行を創る悪に比べれば、銀行強盗など何だというのか? 感謝など無用、金持ちから盗むことこそ王の流儀、願い、夢! 獅子の心臓が止まるまで、夢を追い続ける。それまで叫び続けるだろう。やった、やった、なんて日だ」。採点の結果、5人の出演者の中で、断トツの9.6点を獲得して、準決勝への出場が決まる。

ジョン・ガーバーは、楽屋裏から出た所で待ち構えていた警官に拘束されそうになる。ジョン・ガーバーは、階段を駆け上がり、トイレに逃げ込み、そこで持っていた用紙の中から大事な紙を探しているうち、警官に突入され、持っていた用紙を全部落としてしまう。署に連れて行かれたジョン・ガーバーに、刑事のローゼンバウムは、「息子さんはどこですか?」「ロビン君はどこですか?」「彼は生きていますか?」などと質問するが、「次は準決勝だ」「準決勝を勝たんと」としか言わない。結果的に、彼は留置場の独房に入れられる(1枚目の写真)。一方、ドイツの警察から通報を受けたプラハの国際空港の事務室では、係員が、ロビン失踪時から数日以内の空港内の監視カメラや、出国者のIDを調査し(2枚目の写真)、依頼したドイツの都市の警察に、「彼のID書類がありました」と報告する【問題点①】。一方、ジョン・ガーバーが入れられた留置場では、他の収監者が、「新入り見たか? ガキの殺人犯だと聞いたぞ」と話している。息子のことが心配なガーバー夫人は、留置場までやって来ると、刑事に、「あなた達が息子を見つけるまで、私をここから追い出せませんよ」と言う。刑事は、新しい情報として、「先週銀行強盗があったのです。犯人たちは、ジョンが詩に書いたようにライオンの仮面を被っていました」と告げる。夫人は、「ローゼンバウム刑事、私の息子が銀行強盗をしたと言ってるの?」。「それどころか、もっと良い話なんです。銀行は南アフリカのケープタウンにあります。犯行に及んだ “英雄” たちを、みんなが探しているんです」と言う、現地の2017年2月13日付の新聞を見せる。その見出しは、「南アの汚職銀行、覆面の自警団により裁かれる」と、すごく犯人に好意的な内容だ(3枚目の写真)。そこにやって来たのが、上司のフィッシャー課長。彼は、夫人に、「あなたは正しかった」と言うと、刑事に対し、「そもそもどうして君が見落としたかは分からんが、彼はチェコ共和国で航空券を2枚購入していた。プラハ空港だ。たった今、IDが確認された」と批判する。それを聞いた夫人は、「何ですって?」とびっくりする。「1週間前です」。刑事は、病院の監視カメラの写真を持ちながら(4枚目の写真、矢印)〔撮影日が2017年2月15日になっている→新聞の発行が13日なので美術班のミス〕、「あなたがロビン君の行方不明を報告された時、彼らは既に飛行中でした」と言う【問題点②】。新聞を見た夫人は、直感的に、「南アフリカへ?」と訊く。課長は、「先程、南アフリカ警察に連絡しました」と言うと、刑事に対し、「彼らの捜索活動を支援するため、我々が持っている情報を提供するんだ。とりわけ、彼がどこからともなくステージに現れたことについて」と指示し、部屋から出て行く。刑事は、「ご主人が息子さんを南アフリカに連れて行く理由として、何か思い当たることはありますか?」と夫人に質問する。夫人は、「彼と話さないと」と言う。

「1週間前」と表示され、マディバズ・アボードの児童養護施設で、ロビンが他の子供たちと一緒にバスケットボールで遊んでいる短いシーンが入る(1・2枚目の写真)。

小型トラックの助手席に座ったロビンは、ダッシュボードの上に “やりたいこと” を書いた紙を置き、既に書いてあった 「🔲 drive a car(運転する)」の下に、「🔲 beat mom at basketball(バスケでママに勝つ)」と追加する(1枚目の写真)〔願いが成就したら、🔲の中に✔を入れる〕。父に、「何を書いてるんだ?」と訊かれると、「バスケのことだよ」と答える。「好きなんだな?」。「僕のリストだからね、パパ」(2枚目の写真)。

父は部屋を借りる。ロビンのライオンのぬいぐるみが置かれたテーブルに座ると、詩を書き始める。すると、ロビンが、「夕食の準備ができたよ、パパ」と言う。父は、感謝もせずに、「“legend” と韻を踏む言葉は何だ?」と訊く〔"legend"(レジェンド)の語尾(-egend)と完全に同じ響きを持つ英単語はない→ジョーク〕。答えのない質問なので、ロビンは、「何を書いてるの?」と訊く。「ママへの贈り物」。ロビンは、簡単な料理の入ったボウルを父の横に持って来て、「もう千篇もの詩をもらってるよ、パパ」と言い、ぬいぐるみを奥に置く。「ママは、私の詩が好きなんだ。そうやって… パパは」、このあと、ロビンが受け継いで、「ママの心を掴んだんだろ。分かってるって」。そう言って、食べ始めたロビンが咳をする。「大丈夫か?」。「ちょっとムセちゃって」(2枚目の写真)「それで、ママは来ると思う?」。「わからん。多分」。「僕、ママのことが少し恋しいと思う」。「私も恋しいよ。だから、これを書いてるんだ。誰かのことが恋しくなると、私は書く。悲しい時も書く。そうすると気が楽になるんだ」。「それなら、僕もママに詩を書いてみるよ。今どこにいるか、書いてもいい?」。「構わんが… 秘密の暗号でな。ママにしか分からない暗号だぞ」。そして、ロビンは、ドアの方を見て、「dreamland(夢の国)」と言う(3枚目の写真)。父も振り返ってドアを見る。ロビンは、「“dreamland” って、“legend” とちょっと韻を踏んでいるよね」と言うと、“やりたいこと” を書いた紙の裏に、「For Mom(ママへ)」と書き始める(4枚目の写真)。

父の書いた母への詩。ナレーション風に音声が流れる。「伝説はきめ細かな砂の浜辺を彷徨う、誰も見つめる者のない、驚異に満ちた孤独な夢の国に沿って」。ここで、場面は変わり、1週間後の独房に。ナレーションは続く。「己の信仰と運命、彼らは自由を追い求める。伝説は決して色褪せない。希望という技術を習得するのは難しくない、この手は過ぎ去った日々を拒み、一文字一文字が永遠に生き続ける」。最後の方で、独房の扉が開き、ジョン・ガーバーは拘置所の面会室に連れて行かれる。「決して立ち止まりはしない」。ここで、2人は会話のボタンを押す。すると、ジョン・ガーバーの声が聞こえてくる。「ただ待っているよりは、何もかもが素晴らしい。永遠に」〔ナレーションではなく、ジョン・ガーバーが直接話しかけている〕。それを聞いた妻は、「ジョン! 止めて!」と言う。しかし、彼は止めない。「今も心臓が強く、爪も研ぎ澄まされているならば…」。「ジョン!」。「夢は、血管を駆け巡る引き裂かれた毒などではない」。「ロビンはどこ?!」。「道を見つけた時…」。「私たちの息子はどこなの?!」。「努力が無駄ではなかったと思えることを願う」。「彼、生きてるの?!」(1枚目の写真)。「準決勝に出場しないと」(2枚目の写真)。この、自己中心的な言葉に激怒した妻は、立ち上がると、「ジョン、私たちの息子はどこなのよ!」と叫ぶ。ここで、係官が入って来て、ガーバー夫人に騒がないよう注意する。しかし、彼女は、ますます激し、「ジョン!! 私の息子に一体何したのか、今すぐ話しなさい!!」と怒鳴り、係官から、丁寧だが断固として面会室から連れ出される。妻が最後に言った言葉は、「あんた、一生そこから出られないよう祈るのね!」。その夜、家に帰ったガーバー夫人〔プロのバスケットボール選手〕が、家の壁に付いたリングネットに何度もボールを入れていると、そこにローゼンバウム刑事が現われる。夫人は、「何かニュースがあるの?」と期待を込めて訊くが、彼は、「ええと、あの… 明日の夜、何か予定ありますか?」と訊く。「なぜ?」。「準決勝のジョンを見に行くんです。もしよかったら、バックステージパス〔楽屋裏への入場証〕を2枚手に入れますよ」と言う。憎たらしい夫の晴れ姿なんか見に行くことに何の意味があるのか、そんな暇があるなら夫を徹底的に尋問すべきと主張する夫人に対し、刑事は、「昼も夜もジョンを厳しく尋問したところで、彼は何も話さないでしょう。彼が詠んだ “夢の国の伝説” という言葉が、私に語りかけてくるのです」(3枚目の写真)「彼は、私たちに伝えようとしているのです、ガーバー夫人、暗号で。彼は、私たちをロビン君のもとに導いてくれるでしょう。詩こそが彼の人生のすべてだったのです」と話す。

夜の留置場の裏庭で、ジョン・ガーバーがゲーテの魔王(Erlkönig)のバウアリング(Edgar Alfred Bowring)による英訳詩を口ずさみながらバスケットボールをドリブルする。「これほど遅い夜の闇を、駆けるのは誰か。それは父親だ、愛する我が子を抱いた。彼はその腕で、少年をしっかりと抱きしめる。安全なように、温もりを絶やさぬように」。そう言ってリングネットにボールを投げるが、全くの方向違い。そのボールを掴んだ髭の生意気な男が、「子供殺しには見えんな。弱々しすぎる。詩のチャンピオンさんよ」と言い、魔王を口ずさみながらバスケットボールのドリブルを始める。「これほど遅い夜の闇を……少年をしっかりと抱きしめる」まで行ったところで、立ち塞がったジョンをみて、ドリブルをやめ、「何だと? 俺がポーランド人だからって、『魔王』もゲーテも知らないとでも思ったか? てめえのシュート、ひでえもんだ」と言うと、ボールをジョンに渡し(下の写真)、「投げろ」と言ってシュートするよう促す。シュートしたジョンが、また大きく外すと、「ほら見ろ。クソだ」とあざける。「誰もが生まれながらのバスケットボール選手じゃない」。「女々しい奴だ」。
何もない荒れ地の真ん中を一直線に走る未舗装道路を、左右に首をふりながら小型トラックが走る(1枚目の写真)。車内では、助手席に座った父が、「あーーっ! スピード落とせ!」「道の真ん中を走れ!」「運転、代われ!」「運転する時は、ちゃんと前を見ろ!」と叫び続ける。ロビンは車を急停車させると、運転席から飛び出して、道路の横の盛り土に吐く(2枚目の写真)。父が、「ロブ、ロブ、大丈夫か?」と飛んでくる。「うん、ごめん」。ロビンは、ズボンのポケットからリストの紙を取り出すと、「🔲 drive a car(運転する)」の🔲に✔を入れる(3枚目の写真)。

父は、「もう1回やる?」と言うロビンを押しとどめると、一緒に車にもたれて座る。ロビンは、「ママが見てなくてよかった。見てたら、パニクってたよ」というが、父は、リストの紙の裏にも字が書いてあるのを目ざとくみつけ、「それ、ママへの詩か?」と紙を奪おうとするが、ロビンは 「やめてよ! まだ終わってないんだよ!」と言って渡さない。父は、「素晴らしいことだ。いつか観客の前で披露できるかもしれんな」と、そうした行為を褒め、それを聞いたロビンは、「ちょっと待って、それマジで?」と訊く。「そうとも。いつか決勝の舞台に連れていってやる」。「それってすごくクールだ」と言うと、ロビンは、「🔲 beat mom at basketball(バスケでママに勝つ)」の下に、「🔲 championship final(決勝戦)」と書き足す(1枚目の写真)。父は、「そろそろ冒険に戻ろうか」とロビンに声をかける。「僕が運転できるならね」(2枚目の写真)。ここで、2人をバックに、準決勝のナレーションが入り始める。「三十億回の鼓動。君の心のリズム」〔30億回=80歳の人の生まれてからの平均鼓動総数〕。ここから、場面は準決勝の舞台で詩を詠むジョン・ガーバーに切り替わる。「絶え間なく、規則正しく、不可逆の。人生で一度きりの、カウントダウン」。一番後ろに立って並んだ人々の何人かはスマホで動画撮影をしている(3枚目の写真)。「数え切れない鼓動が、この限られた時間を、一度きりの経験を、ひとつ、またひとつと削り取っていく。それでおしまい。三十億回の鼓動。君の心のリズム。始まりと終わりを刻むメトロノーム、だがそれまでの間、音色を、旋律を選ぶのは君自身だ。君だけが流れを紡ぎ、高低を操る。人生の交響曲」。

ここで、画面は再び南アフリカに戻り、父が運転する小型トラックの荷台に立ったロビンの姿が、後ろと斜め前から映される(1・2枚目の写真)。そして、詩のナレーションが続く。「チクタク、鼓動が時を刻む、残された日々は限られている、解き放たれて生きるのだ、穏やかな夜へと、静かに去ってはならない。時間は猫が鼠を追うように君を狩り立てる、だから人生の歩みを、走りに変えよ! 運命を揺さぶり、成し遂げたことで道を切り拓くのだ」。

場面は、海の中に入るロビンに変わる(1・2枚目の写真)。「だから鼓動に耳を澄ませ、過ぎ去っていく日々を本の章のように捉え始めるのだ、一章ごとに。叶えようとしているリストの夢を実現していくのだから」。そして、ロビンは、リストの「🔲 swim in the ocean(海で泳ぐ)」に✔を入れる(3枚目の写真)。「空気の中の潮の香りを嗅ぐのだ。そのリズムを聴き逃さぬよう、心せよ」。

道路の近くにライオンがいたので、父は車をそっと停め、2人は荷台に上がってライオンを見る(1枚目の写真)。「生きるということがいかなるものか、その香りを吸い込め」。ロビンの双眼鏡を通して見たライオンが映る(2枚目の写真)。「王の中の王。君に怖れはない。君の心臓は拍動し、破裂し、止まってしまう瞬間が来るまでは、すべてがマディバズ・アボードから始まったことを忘れるな」。ロビンは、リストの「🔲 see real lions(本物のライオンを見る)」に✔を入れる(3枚目の写真)。

ロビンと父は、山を登っていく(1枚目の写真)。「君は成長している、巨人を倒せるほど大きくなり、空を飛び、もう泣いてなどいない、疑念や恐怖にどれほど心が揺れ動こうとも、笏を手に、君はキングスヘッド(king's head)の王だ」。頂上に着いたロビンは、大好きなライオンのぬいぐるみを、海に向かって掲げると、「わーっ」と叫ぶ(2枚目の写真)。「穏やかに去ってはならぬ、今こそ戦う時だ」。ロビンは、リストの「🔲 climb a mountain(山に登る)」に✔を入れる(3枚目の写真)。

池の端の草地に停めた小型トラックの荷台に横になったロビン(1・2枚目の写真)。「リストは長く、時間は残り少ない、すぐ取りかかり、追い求めよ。君ならできる、私には分かっている。チクタク、鼓動が時を刻む」。ここで、映像は、映画の中で一番古い過去(父がロビンを連れ出した日の昼間)に戻る。病室に横たわったロビンの周りに両親がいる。父は、ロビンが描いたライオンの絵を見ている(1枚目の写真)。部屋の端に置かれたベッドサイドモニターが、ロビンの容体を24時間体制で見守っている(2枚目の写真)。「時間は相変わらず猫と鼠の追いかけっこをしているが、この勝負において君は獅子だ、飼い慣らされぬ捕食者であり、獲物ではない。痛みも、死ぬことも恐れない」。

ここで、画面は一瞬、準決勝の会場に戻る。「人生にも、今戦っている戦いにも、まだ疲れてはいない。消えゆく光に対して、君は激しく抗う」。そして、主治医の部屋に呼び出された両親〔前節の病室のシーンの直後〕。主治医は2人に何事かを告げる〔内容は不明〕。「鼓動の時計が、その時を告げる時。三十億回の鼓動、残り、未知数」〔「残り、未知数」とは、余命は不明という意味→これが、主治医が告げたこと→つまり、いつ死んでもおかしくはない(手は尽くした。もうできることは何もない、あとは死を待つのみ)〕。そして、母は泣き始める(1枚目の写真)。夫は、その母を抱き締める。会場では、朗読が済んだことで、拍手や歓声が起きる。ジョン・ガーバーは3人の挑戦者の中で断トツの最高得点を取り、決勝に進むことが決まる(2枚目の写真)。楽屋裏では、課長が待っている。ジョン・ガーバーはトイレに行きたいと申し出る。トイレに入ったジョン・ガーバーは、先日、逮捕された時に落としてしまった大切なリストを、家具の下の隙間から拾い上げる。外で待っている課長に、ローゼンバウム刑事が話しかける。「明日の朝一番の便でケープタウンに行きます」。無能な課長は、刑事をバカにする。「詩に惹かれたのか?」。「だって、さっき、詩の中にいっぱいヒントを残していったでしょ」。「君は、いつから詩の教授になったんだ? こんなショーは、全くのナンセンスだ。明日は、ガーバーを徹底的に尋問し、少年を見つけろ」。一方、会場で詩を聞いていたガーバー夫人に、ジョン・ガーバーの大ファンで、「白ウサギ」という彼の詩専用のブログを持っている女性が話しかけるが、夫人は取り合わない。それでも、「ジョンの詩は、実際の出来事に基づいているのですか?」「あの詩は、実体験に基づいているのですか?」「彼の詩を聴かれて、どう感じられましたか?」としつこく聴き、夫人にスマホを取り上げられ、ゴミ掃除婦の水バケツの中に捨てられる。それでも、彼女は、もう1つのスマホを取り出し、「ジョンは、男の子が気に入りそうな旅の話をしているようですね?」と訊き、夫人は「旅なんかじゃない、とんでもない誘拐よ!」とだけ言って立ち去る。

主治医から最終宣告のあった日の夜。両親が夕食の時に話している。母:「また動物園に連れて行った方がいいかもね」。父:「彼が描いたライオンの絵には檻が描いてない。本当は檻があったのに、彼は檻を描かなかった」。「いわゆる、“芸術的自由” ね」。「いいや、“真の自由” だ」(写真)。話は、ライオンからロビンになり、父が 「あの病院から彼を連れ出さないと」と言い出す。母は、「彼の癌を治せるとしたら、あの人たちしかいない」と反対する。しかし、父は、「その人たちが『誰にも治せない』って言ったんだぞ」と再反論。「あの子を見捨てる気なのね」。「手の施しようがない。医者が今日そう言った。いつ最期を迎えても不思議ではないと」。母は、「その日が1ヶ月後かもしれないし、1年後かもしれないのよ、ジョン。でも、彼には次の抗癌剤治療が必要なの。私たちは何年も、次の治療、また次の治療って、望みをつないできたのよ!」。「その薬のせいで、あの子は苦しんでる」。「彼の命を危険にさらすような真似は絶対にさせないわ」。「まさにその通り。これは彼の命なんだ。彼の時間なんだ! この病院で最期を迎えるなんて、彼は望んでないんだ!」。「最期の話なんて、もうやめて!」。「息子があの部屋で一生を終えるなんて、耐えられるのか?」。
その日の夜遅く、父は息子の病室を訪れる(1枚目の写真)。父がベッドに腰を下ろすと、眠っていたロビンが目を覚まして、「やあ、パパ」と笑みを浮かべる(2枚目の写真)。父は、「ゲームをしよう。韻踏み(Rhyme-time)だ」と言い、「私からいくよ。“Friday(金曜日)” だ」〔この日が金曜日だった〕。「“X-ray(エックス線)”。“Boring(つまらない)”」(3枚目の写真)。「“Drawing(描画)”。“Artist(芸術家)”」。「“Wish list(願いごとリスト)”。“Sodium hydrogen carbonate(炭酸水素ナトリウム)〔点滴用〕”」。「君の勝ちだ」。「見せてあげようか?」。「ぜひ」。ロビンはお尻のしたに隠していたものを引っ張り出して父に差し出す(4枚目の写真)。「それを受け取った父は、紙を開く前に、「これ何だ?」と訊く。ロビンは、「僕、本物のライオンが見たい。ここから出たら、このリストにあること全部したいんだ」。父が紙を開くと、そこには、「🔲 see real lions(本物のライオンを見る)」「🔲 travel(旅をする)」「🔲 be Robin Hood!(ロビン・フッドになる)」「🔲 swim in the ocean(海で泳ぐ)」「🔲 climb a mountain(山に登る)」「🔲 Find ‘Hope’(“希望”を見つける)」の6つが書かれている(5枚目の写真)。ロビンは、「あ、待って」と言うと、紙を取り戻し、一番上に、「🔲 flying(飛んでいる)」と書き加える。「空を飛ぶのか? カッコいいな」。

廊下に出た父は、スマホを取り出し、妻に電話しようかすまいか迷う(1枚目の写真)〔どちらを選んだのかは分からない〕。次のシーンでは、シャツの上から長袖のフード付きのセーターを着たロビンが、点滴スタンドを持って病室から出てくる〔このシーンは、ナンセンス。左の手の甲に点滴針が刺さった状態で長袖のセーターを着ることは不可能/そもそも、いつかは外すのだから、服を着る時に外すのが常識〕。ロビンは、「あれ、ママはどこ?」と訊くので、父が最初に病室に入ってから、かなりの時間が経っていることが分かる。ロビンが 「ママも来るの?」と訊くと、父は 「いや、これは父と息子の冒険だ」と答える。そして、リストを見ながら、「よし、じゃあまずは… ロビン・フッドだな」と言う。それを聞いたロビンは、「すごいや! なら、パパはリトル・ジョン〔相棒の大きなクマの名前〕だ」と言う(2枚目の写真)。2人は、夜間看護婦室の前をこっそり通ると、次のシーンでは2人の乗った車が橋を渡って町を出て行く(3枚目の写真)〔このロケ地は、インゴルシュタット(Ingolstadt)というニュルンベルクの80km南にある町、川はドナウ川〕。

しばらく車に乗っていると、ロビンがリストの下部の白紙の部分に、「🔲 drive a car(車を運転する)」と書いたので(1枚目の写真)、父は、「車を運転する? 車を運転したいのか?」と訊く。ロビンは笑顔で頷く。「OK。運転する、ロビン・フッド、本物のライオンを見る、飛ぶ… 他には何があったっけ?」。「ううん、なんでもない…」。「おいおい、相棒を信じてくれよ。何が書いてあるんだ?」。「OK。あのね、僕、パパとママが話してるの聞いちゃったんだ。ママが、パパが希望を失くしたって言ってた。だから、僕がパパのために見つけてあげようと思って」(2枚目の写真)。父はしばらく黙っている。その時、スマホに電話がかかる。それが妻からだと分かると、父は、スマホを運転席の窓から投げ捨てる(3枚目の写真、矢印)。そして、「一緒に、希望を見つけに行こう」と言うと、左折してプラハに向かう(4枚目の写真)。

ここで、場面はジョン・ガーバーの独房に変わる。彼は、電気バリカンで伸びた毛を刈ると、壁に取り付けられた鏡の裏に隠しておいたリストを取り出し、「🔲 Find ‘Hope’(“希望”を見つける)」に ✖ 印が付いているのを見る(1枚目の写真)。そこに、看守が入って来て、ローゼンバウム刑事が接見に来たと告げる。ジョン・ガーバーは、ノートパソコンのある部屋に連れて行かれ、刑事は、準決勝の時の映像を見せる。「すべてがマディバズ・アボードから始まったことを忘れるな。君は成長している、巨人を倒せるほど大きくなり、空を飛び、もう泣いてなどいない、疑念や恐怖にどれほど心が揺れ動こうとも、笏を手に、君はキングスヘッド(king’s head)の王だ」。そして、「王(king)とはライオンのことだな? なら、キングスヘッド(king’s head)は ライオンズヘッド(lion’s head)のことだろ? ケープタウンのな」(2枚目の写真)〔あらすじの一番最初の写真の、テーブルマウンテンの右にある∧型の山が有名なライオンズヘッド(Lion’s Head)〕「彼はまだそこにいるのか? チクタク、ジョン! 時間がないぞ! お前の息子はまだ生きてるのか? どこにいるか話すんだ、ジョン!」。何を言われても、ジョン・ガーバーは何も言わずに前をじっと向いたまま座っている。

次は、ローゼンバウム刑事が、ジョン・ガーバーに面会に来た “ブログ「白うさぎ」” の女性を空港に向かう車に乗せ、 “ある事” を依頼するシーン。結構面白いので、やりとりを紹介しよう。刑事は署から出て車に向かいながら、「急いでください。空港へ行かなければならないので」と言い、車に着くと助手席のドアを開けて「さあ、乗って」と促す。女性は 「そんなに簡単に私を誘えると思って?」と笑う。車は発進し、刑事はさっそく、「あなたのブログ『白うさぎ』 拝見しましたよ。彼の作品の、素晴らしいアーカイブをお持ちのようだ」と言う。女性:「新作は全部ね。でも、昔のパフォーマンスは、一部しかネットに公開してないわ。南アフリカへ飛ぶの?」。刑事:「あなたの持っている動画が、すべて必要なんです」。「その代わりに、何をいただけるのかしら?」。「捜査妨害であなたを逮捕しない、というのはどうですか?」。笑顔で 「ふふっ、口先だけでしょ」。「実は、うちの娘がウサギを飼っていましてね、それが犬に食べられてしまったんですよ」とニヤリとし、「教えていただきたいのですが、ブログで決勝戦をライブ配信する予定はありますか?」。「あら、新しいファンかしら? 可愛いところがあるのね」。「我々は、彼の子供を捜しているのです」。「わぉ。詩の中から手がかりを捜してるってわけ? それは大変ね」。「彼の詩は、ロビンについて書かれていますから」。「ええ、ジョンの詩はどれもロビンについてよ。きっと、病気と向き合うための支えになってたのね」。お札を1枚だけ差し出し、「動画を送ってください」。「私を買収するつもりなの?」。車を停めてドアを開け、「それは、ここからの車代ですよ」。「これっぽっちで?」(1枚目の写真、矢印)。「動画を送ってください。お願いします。できるだけ早く」。女性は車から降り、刑事の手から1枚の札をもぎ取る。刑事:「どうもありがとう」。飛行機に乗った刑事は、女性から送られてきた動画に見入る(2枚目の写真)〔矢印から、ロビンの頭髪が脱毛していることが分かる。これは恐らく未公開の古い映像で、抗癌剤による一時的な脱毛〕。

ケープタウンの空港から出たローゼンバウム刑事は、出た所に停車していたパトカーに向かって歩いて行き、「マランゴ捜査官ですか?」と訊く。「アヤンダと呼んでください」。「ローゼンバウム刑事です。やっと直接お会いできましたね」。「ええ、私も。お連れの方がいるようですが?」。その言葉に驚いて刑事が振り向くと、何とガーバー夫人が近寄ってきて、「どうやら、向かう先は同じようね」と言う。「ここで、一体何をなさってるんですか?」。「息子を見つけるのよ。あなたに邪魔はさせないわ」(1枚目の写真)。「まさか、そんなことしませんよ」。夫人は、誰にも断らずに、勝手にパトカーのリアハッチを開ける。刑事は、アヤンダに、「それでアヤンダ、彼の詩から何か見つかった?」と訊く。アヤンダの返事は不明。車は3人を乗せて動き出す。刑事と夫人が連れて行かれた先は、刑事が最初から気にしていた「夢の国」。ジョン・ガーバーとロビンが泊った部屋だ。刑事は、ドアの上に貼り付けられた「Dreamland」の文字を見て、「ここが、あの “夢の国”」と満足げにつぶやき、中の様子を見る(2枚目の写真)。何か残されていないかゴミ箱を調べた刑事は、中から薬のビンを見つける。それを見た夫人は、「ロブの抗癌剤だわ」と驚く。そこに入って来たアヤンダが、「大家の話だと、銀行強盗の逃走に使われたのと同じ、赤いピックアップトラックを覚えてるそうだ」と言う。夫人:「それって、いつ?」。アヤンダ:「1週間以上前です、ガーバー夫人」〔車の中で、刑事が紹介したに違いない〕。

ここで、ローゼンバウム刑事が、「アヤンダ、聴いてもらいたいものがある。昨夜のジョンの録音だ」と言って、スマホを渡す。アヤンダは、両耳イヤホンを付け、静かな環境で録音を聴く。そして、「『すべてがマディバズ・アボードから始まった』、マディバズ・アボードだ!」(1枚目の写真)と言い、「病気の子どもたちのための施設なんだ」と話す。アヤンダはすぐに、2人をマディバズ・アボードに連れて行く。夫人は、すぐに廊下に貼ってあるライオンの絵に気付き、刑事を呼ぶ(2枚目の写真)。そして、「これ、ロビンが行方不明になる前日に描いた絵よ」と言う【問題点③】。刑事は絵を取り外し、施設長の女性のところに行くと、「すみません。この絵を描いた男の子のことを、本当に覚えておられませんか? 父親と一緒にいたはずなんですが」と訊く。施設長は、「覚えていませんよ。この施設には、手助けをしてくれる大勢の外国人ボランティアがやって来ますから」と答える。

夜の留置場の裏庭で、ジョン・ガーバーと髭男が向かい合い、髭男が 「これほど遅い夜の闇を、駆けるのは誰か…」と、ボールを左右の手で交互に床に叩きつけ、そのドリブル音に合わせて、詩が4拍子になるように口ずさむ。ジョンにはなかなかボールが奪えない。それでも最後には奪ってシュートし、リングネットにも入れる。それを見た髭男は、「ほお、上達してきたじゃねえか! 腰抜けのくせに、少しは根性ついたんか?」と言うと、離れた場所のイスに座る。ジョンはシュートの練習を始める。髭男は、イスの横に置いてあったジョンの上着のポケットから顔を覗かせている紙に興味を持ち、取り出して見てみる。そして、ジョンの背中にむかって、「ママをバスケで負かしたいだと? 年寄りばばあじゃねえのか?」と声をかける。ジョンは、振り向くと、「それを置くんだ」と言うが、髭男は、「だから、めちゃめちゃトレーニングしてたんか?」と訊く。「それは私のものだ」。髭男は、今度は裏のロビンが書いた詩を見て、「おやまあ、可愛い子猫の詩だな… これ、お前のガキのリストなんか、ジョン?」と(1枚目の写真、矢印)、勘違いに気付く。ジョンは、紙を奪おうとするが、髭男は 「これほど遅い夜の闇を、駆けるのは誰か」と言いながら、さっと避ける。そして、紙を高く掲げて、「ほーら、子猫ちゃんのだぞ…」まで言ったところで、ジョンが紙をもぎ取ろうとするが、紙は真ん中から2つに破れる(2枚目の写真、矢印はジョンが取った方)。髭男は、「俺のせいじゃないぞ」と言って紙を捨てるが、ジョンはそれを見ていなかったので拾わず、逆に、奪った方の紙を握り締めて拳を作ると、髭男に殴りかかるが、詩人に格闘は無理なので、上に跨れたところで警備員に、分離され、それぞれの独房に連れて行かれる。

南アフリカに戻り、ロビンは、一人は歩けないので父に運んでもらい(1枚目の写真)、海を見下ろす高い崖のてっぺんまで来る。父は、まず、ロビンに抗癌剤を飲ませる。そして、バッグの中のリストの紙を出して裏返す(2枚目の写真)。父は、崖の方に向かうロビンに、「これ、君がママに書いた詩か? 読んでもいいか?」と尋ねる。ここから、ロビンの詩の最初の部分のナレーション。「雲の王様。この王様は重力がこわい。足は4本。爪もあるよ、20個」(3枚目の写真)。ここまで読んだ時、父は、ロビンが崖の先端に立っているのに気付く。父は、「ロビン! ロブ! やめろ!」と叫びながら走って行く。しかし、崖の先端から5mほどまで来た時、ロビンは 「待って!」と止める。そして、「来て。怖がらないで」と言い、自分と同じ先端まで 父をゆっくりと歩かせ、2人は崖っぷちに並んで立つ。2人は両手を広げると、「わー! やー!」と叫ぶ(4枚目の写真)。しかし、ロビンが髪に触ると、髪の毛が手に付いて来る〔脱毛が始まった〕。それを見た父は、「君をここに連れてくるべきじゃなかった」と言う。「ううん、僕がパパをここに連れてきたんだ」。「家に帰らないと」。「何だって? ダメだよ、ダメ、ダメ! リストには、まだ4つも残ってるよ! 約束したじゃないか、僕たち全部やるって」。「ここにいちゃ、ママにバスケで勝つのは無理だぞ。私の知る限り、君を出場させてやれるポエトリー・スラムだってない。それに、ここまで飛行機で来たんだから、それ(flying)はリストから外していいだろ?」。「違うよ! そういう意味じゃないことくらい、パパだって分かってるくせに! 僕が言ってるのは、たった一人で飛ぶことだよ。夢の中みたいに!」(5枚目の写真)。「家に帰ったら全部叶えよう、な? 体の調子が良くなってからだ」。「パパだって、そんなこと信じてないでしょ。前にも言ったけど、パパがママと話してるの聞いちゃったんだ。でも僕、病院のベッドで死ぬのは嫌だからね」。「ロブ、君は重病なんだ」。「分かってるよ! でも、僕は冒険を続けたい。だけど、パパがいてくれなきゃ、どうやって “父と子の冒険” をすればいいの?」。「分かった。一緒に飛ぼう」。

映画は、一瞬、現在に戻り、ジョン・ガーバーが破れて右半分だけになってしまったリストを、同じ大きさの1枚の紙の上に乗せ、記憶力だけで、失われた右半分に書いてあったことを復元している(1枚目の写真)。復元は、裏に書かれた「母への詩」についても行われる。独房のドアの小さなガラス窓から、無能なフィッシャーがそれ〔背中だけで、ジョンが何をしているかは分からない〕を見ている。このバカは、すぐにスマホで電話をかける。ケープタウンでは、ローゼンバウム刑事が、スマホに 「はい、分かりました」と言っている。そして、アヤンダのところに行くと、「フィッシャーから戻れって命令が来た。今すぐだ」と告げる。それを聞いた夫人は、「何ですって?」と頭に来る。「ジョンが他の受刑者を襲ったんだ。処遇が厳しくなった。もう手加減はなし。最後のチャンスもなくなった」と、決勝に出場できなくなったことを暗に告げる。夫人は、「でも、彼の最後の詩が必要なのよ! なぜ反対しないの?」と、反発する。「規則には従わないと」。「規則なんかどうだっていい! 息子のことなのよ!」。「残念ながら、命令は命令なんだ」。「勝手になさい。私はここに残る。でも、ジョンの最後の詩も要るの」。「フィッシャーに話して、ジョンを必ずあの舞台に立たせてみせるよ」。フィッシャーが開いた記者会見の場には大勢の記者が詰めかけ(2枚目の写真)、そのTV中継をジョンも独房で見ている。その際の記者からの質問の多くは、ローゼンバウムの南アフリカでの捜索のこと、ジョンの書いた詩と息子の失踪との関係で、いずれも無能な課長の意にそぐわないものばかりなので、フィッシャーは 「ガーバー氏の今夜の決勝への出場は許可できません」と言い、早々と会見を打ち切る。TV中継を見ていたジョンは、激怒してTVをドアに向けて投げつけ(3枚目の写真)、独房の中をめちゃめちゃにし、鏡に何かを投げつけて、カラスはクモの巣状にひび割れする。帰国したローゼンバウムが、無能な課長に、「ガーバーは今夜、出場しないといけないんです!」と、捜査上の必須事項だと言っても、このバカは「マスコミはこの事件に大騒ぎしている。ガーバーのショーで面目を潰されるわけにはいかん」と保身に走る。それに対し、ローゼンバウムは、「メンツですか? そんな弱腰で、このヤマが解決できるんですか!」と、部下としてはギリギリの線で上司を責める。「ローゼンバウム。お前、自分が何様のつもりだ?」。「お言葉ですが、課長。この詩でパズルは完成するんです。俺を信じてください!」。課長は、「違う、パズルはこれで完成する」と言うと、クリアファイルに入れた1枚の破れた紙〔ジョン・ガーバーのリストの左半分〕を渡す。「これは何です?」。「ジョンの物だ。争った時に落とした」(4枚目の写真)「詩のことなど忘れるんだ。任務を遂行し、少年を見つけ出せ」。ローゼンバウムは、直ちにアヤンダに電話をかけ、スカイダイビングやパラグライダーの会社の先週の予約状況を調べるよう依頼する〔海や山やライオンは場所が特定できないが、「飛ぶ」だけは特定できる〕。

場面は南アフリカに戻り、父がロビンの髪の毛を電気バリカンでラフにカットしている(1枚目の写真)。おそらく、抗癌剤による脱毛だと病気だと勘ぐられるので、丸坊主にしたのであろう。そして、嫌がるロビンに抗癌剤を飲ませるために、「飲んだら、私の頭を丸坊主にしていいぞ」と言う(2枚目の写真)。そして、ロビンは父を丸坊主にする(3枚目の写真)〔どんな場所か分かるように、遠景写真にした。海岸沿いに立てられた看板には、「喜望峰(Cape of Good Hope)/アフリカ大陸の最南西端」と書かれている〕〔ケープタウンの約50km南〕。

ジョン・ガーバーの独房に入って来たローゼンバウム刑事は、部屋の中の惨状をみて、「大変な日だったな」と声をかけると(1枚目の写真)、「俺は、ロビンがどこにいるのか訊きに来たんじゃない。俺が訊きたいのは、もし彼がまた生きているんなら、どうして、これが俺の手にあるのかってことだ」と言うと、クリアファイルから出したしわくちゃの破れたリストを見せる(2枚目の写真)。ジョンは、「決勝に出ないと」と言う。「ああ、分かってる。リストに書いてあって、まだチェックが入ってないからな」。「頼むよ」。「今となっちゃ、何もできんのだ。厳命を受けてるからな。あんたが、台無しにしたんじゃないか。残りの半分はどこにある?」。その時、刑事のスマホに電話がかかる。それは、アヤンダからで、彼は、「彼の予約が見つかった。喜望峰スカイダイビング。先週だ」と報告する。助手席にはガーバー夫人が乗っている。

パイロットは、ロビンにパラシュートを装着しながら、「上空では体を動かさないように」「飛ぶ前に頭を後ろに反らすのを忘れないで」と注意している(1・2枚目の写真)。父は、パイロットから、「最後にDZに来たのはいつだね?」と訊かれ、「え?」と言う。「ドロップ・ゾーンのことだよ。最後にジャンプしたのはいつ?」。父は、「3週間前」と言うが、それなら顔を覚えているので、信じたとは思わない。しかし、飛行機に乗り込んだ父は、パイロットに札束を渡す。パイロットは、「たった1回跳ぶのに、こんなにくれるのか!?」と驚く(3枚目の写真)。「いいから受け取れ」。「ジャンプの動画、欲しいか?」。「動画は要らない」。ここで、独房に戻り、刑事は、「🔲 Find ‘Hope’(“希望”を見つける)」の「🔲 Find」しか残っていないので、「何を見つけたんだ?」〔過去形なのは、✔が入っているから〕と訊く。当然答えない。刑事は紙の裏の詩を見る。「雲、重力がこわい。あんたの息子は、空を飛びたかったんだな。スカイダイビングで何があったんだ?」。当然答えない。。

アヤンダは、「警察だ!」と言ってから、格納庫の中に入って行く。現われたパイロットは、「やあ、皆さん、何かご用ですか?」と尋ねる。ガーバー夫人は、「私たち、息子のロビンを探してるの。先週、彼の父親と一緒にここにいたわ。ジョン・ガーバーよ」と言う。「ええ…」。「今、どこに?」。「さあ、悪いけど」(1枚目の写真)。ここで、アヤンダが交替する。「君の名前は?」。一方、独房では、ローゼンバウムが、「今、俺の同僚がパイロットと話してる。奴があんたを庇うとは思えんな。自白すれば、刑期を少し短縮できるかもしれんぞ」。それに対し、ジョンは初めて返事する。「私を刑務所に連れて行ってくれ」。刑事は、話にならないので出て行く。映画は、ロビンと父に切り替わる。パイロットが、「飛ぶ準備はできてるか! あと30秒」と声をかける(2枚目の写真)。「10」。ロビンは父が開けたドアから身を乗り出す。そして、父が 「いいか?」と訊く。ロビンは 「待って」と言う。ここで、場面は再び、アヤンダとガーバー夫人に。アヤンダが、夫人に、「パイロットは、2人で飛び降りたが、パラシュートは持ち帰らなかった。どこに着地したかも分からない、と言ってます」と話す(3枚目の写真)〔パラシュートとハーネスで、2人分200~400万円なので、よほどの大金を事前に渡したことになる。そうでなければ、パイロットはとっくに警察に盗難で訴えている〕。アヤンダは、このことを、さっそくローゼンバウムに知らせる。そのことを知ったローゼンバウムは、独房に戻り、課長の命令を無視し、ジョンをポエトリー・スラム選手権の決勝の舞台に連れて行く。飛行機では、「待って」と言った後、ロビンは 「ママの詩に、いいことを思いついた」と言い、リスト紙を取り出して、一番下に2行書き足す(4枚目の写真)。

突然のジョン・ガーバーの登場に司会者も驚く。マイクを前に立ったジョンは、「どうか聴いて欲しい。ロビンの詩だ」と言うと、「修復した紙を見ながら、読み上げる」。「白ウサギ」の女性からメールが入った母も、スカイダイビングの格納庫の中で、動画を見る(1枚目の写真)。「ママへ。雲の王様〔自分のこと〕。この王様は、重力がこわい。足は4本。爪もあるよ、20個。そして、2枚の羽で、ライオンは空高く飛んでいく。旅はちょっとドキドキするけれど。でもね、やりたいことリストがあるから後悔はないよ。こうして空にいればフィッシャー、こわいものから身を守れるって分かってるから。下も見ないし後ろも振り返らない、前だけを見るんだ。重力の恐怖は、もうどこかへ消えちゃった」。朗読の背景には、ロビンと父が飛行機から飛び降りる場面が映る。読み終わったジョンは、紙を裏返すと、「🔲 champi-onship final(決勝戦)」の🔲に✔を入れる。これで、残るのは、「🔲 beat mom at basketball(バスケでママに勝つ)」だけとなった。ジョンが、「それでは、次は私が書いたものを読んでみたいと思います」と言うと、「警察だ」という声が一斉に上がり、無能なフィッシャーを先頭に演壇に向かって歩いて行く。ジョンは拘束される前に、ロビンが書いたリストの母への詩の紙を両手で握りしめる。一方、幕の裏から出て来たローゼンバウムは、フィッシャーに向かって 「任せて欲しいと言ったハズだ!」と文句を言うと、フィッシャーの返事は、「手を引け」。そう言うと、このバカは、後ろにジョンを連れて会場の出口に向かう。ジョンは、自分をスマホで撮り続ける「白ウサギ」の女性を歩きながら見ると、振り向いた顔を戻す時に両手で握って丸くなっていた紙を床に落とす。それが自分へのメッセージだと思った女性は、すぐにその2個を拾う。女性は、その映像をガーバー夫人に送る。一方、演壇の床に落ちていた、ジョンが詠むはずだった詩の原稿はローゼンバウムが拾う。

その紙を見ながらローゼンバウムが 「追跡の記録」と読み始めると、画面はすぐに、どんどん落ちて行く2人の映像に変わる。「ニュートンは言う、石はいつでも同じ速度で落ちていくと。アインシュタインは言う、もし君が十分な速度〔限りなく光に近い速度〕で落ちていけば、時の流れは遅くなると」(1枚目の写真)「ならば、もし十分速く落ちたなら、君は浮かぶのか?〔ありえない〕 君が、速く、ただひたすら速く落ちたなら、浮かぶのか、飛ぶのか 。君は飛べるのか? もし君が、そのように落ちて、それをいつまでも続けるなら、そのすべての瞬間は永遠に続く人生となる〔相対性理論の極限の物理現象〕。ネバーランド〔時間の概念のない国〕。雲の王国。君の獅子の心臓は高鳴り、獅子の血が駆け巡り、血管にアドレナリン〔脳や身体を臨戦状態にするホルモン〕が満ち、内なる痛みは消え去り、カチカチと刻まれるリズムが聞こえる。君は、重みもなく、羽もなく、恐れもなく、涙もない」。ここで、ロビンは父から離れる。一度離れてしまうと、再び一緒になるのは難しい。「一日一日が夢、一つ一つの鼓動が勝利。毒と戦うには、アドレナリンこそが君の薬。眼下に広がる大地と海、そこに宿る永遠の一秒一秒。落下の連鎖から解き放たれ、落ちるのではない、飛んでいる」。父は、「ロビン!」と叫ぶ。「君は希望の岸辺を高く舞う。壮大な使命のリストを手に、浜辺の砂を、夢の国を越えて。だが、それは重荷ではない。君を引きずり下ろしはしない。なぜなら、君は伝説だから」。父は一瞬ロビンの腕をつかむ(2枚目の写真)。しかし、すぐに離れてしまう。ここで父のパラシュートが開き、一気に差は開いて行く。「雲の王」。ロビンはパラシュートを開かないので、海に向かって真っ直ぐ落ちて行くように見える(3枚目の写真)〔ADD(スカイダイバーが危険な高度に達してもメインパラシュートを開かなかった場合に、自動で予備パラシュートを展開して命を救う最後の安全装置)が作動するのは地表から僅か200m~300m〕〔海に落ちた場合、パラシュートの布やパラコードが体に絡まって危険な状態になる可能性がある〕。「もしかしたら、君を自由にしようとしたのは間違いだったかもしれない。もしかしたら、私は強くもなく、英雄でもないのかもしれない。もちろん、それは紙一重の選択。保証などどこにもない」。ここで、場面は空の上から、ジョンの裁判に変わる〔映像だけで、結果がどうなったのかは分からない〕。「だが、来る日も来る日も、私の行動は最も過酷な裁判所によって裁かれる。私自身という裁判所に。ガベル〔裁判官が使う木槌〕が振り下ろされる、来る日も来る日も。そしてその度に、君は落ち、君は飛ぶ、何度も何度も。チクタクと時は刻み、私の心臓は鼓動を続ける。息子よ、永遠(とわ)に君を愛し続けるのは、決して私一人だけではない」。

ローゼンバウムは、フィシャーに事件の担当から外されたことなど無視し、南アフリカに飛ぶ。そこで、アヤンダから出た言葉は、ある意味ショックだった。「捜査は打ち切ることにした。我々は、沿岸部をすべて捜した。その子は、もうとっくに、流されている。残念だな」(1枚目の写真)。それを聞いたローゼンバウムは、海岸に設置された簡易テントの中に入って行くと、中に置かれたロビンの似顔絵に着目する。「これが、似顔絵かな?」。「そう」。「パイロットが描いた?」。「ええ」。「髪の色は?」。「金髪」。「ロビンには、抗癌剤のせいで毛髪なんかなかった」【問題点③】「今になっても、遺体は見つからない。なぜだ? なぜ、パイロットは嘘をつくんだ? なぜ、施設の女性は、髪のない少年を覚えていなかった? なぜジョンは、我々をあちこち連れ回したんだ? ロビン以外、すべてだ!」。そう言うと、ローゼンバウムはジョンから奪ったリストの半分を取り出し、「なぜこのリストが私の手にある? ジョンの最後の詩によれば、ロビンと共に海の底にあるはずなのに」と言い(3枚目の写真、矢印)、「 作り話だ。なにもかも作り話だ!」と断言する。

場面は、1週間以上前に戻り、妻との口論の後の、「息子があの部屋で一生を終えるなんて、耐えられるのか?」を受けて、最初のシーンと同じように、父は病院の廊下を歩いて、息子の病室に向かう(1枚目の写真)。病室に入った父は、左の手の甲に点滴針が刺さったロビーの腕にやさしく触る。その直後に、ベッドサイドモニターが映る(2枚目の写真)。そこでは、すべての表示が消え、心電図が表示される部分に「Ableitungen AUS(心電図オフ)」の表示が出ているだけで〔「胸のリード線抜けている」ことを示す、この表示は、日中に両親が訪れた時にも出ていた(ずっと前の節に添付した写真参照)〕、脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度が表示される部分〔日中には、72、96と表示されていた〕には「---」と表示されている〔指先センサーのコードが抜けている〕【問題点④】。既に死んでいたロビンの頭は完全に脱毛している【問題点③】。父は、涙を流して悲しむ。そして、ロビンが大切にしていたライオンのぬいぐるみを手に取ると、お尻の部分に紙が入っていたので引き出してみる(3枚目の写真)。それを手に取ると、「ママへ」で始まる詩が書いてある(4枚目の写真)〔以前の架空の旅では、途中でロビンが書いていたが、実は死ぬ前から出来上がっていた〕。紙の裏を見ると、ロビンが死ぬ前にやりかたったことがすべて書かれている(5枚目の写真)〔以前の架空の旅では、途中でロビンが書き足したが、実は最初からすべて書いてあった〕。父は、ロビンを抱き抱えて病室を出て行く(6枚目の写真)〔病院の監視カメラに映った映像〕。


前節の少し前に紹介された、実際にジョンが南アフリカでしたことの2枚を紹介しておこう。1枚目のライオンの絵は、ロビンと両親が一緒だった時に父が見ていたライオンの絵、母が「これ、ロビンが行方不明になる前日に描いた絵よ」と問題発言をした時の絵だ。ジョンは、わざわざこの絵を持って来て、マディバズ・アボードの児童養護施設の施設長に貼るよう頼んだと以前書いた。2枚目の写真は、パイロットに札束を渡した写真。前の写真と違い、ロビンが映っていない。この後に、ローゼンバウムとアヤンダの最後の会話が入る。ローゼンバウム:「『雲の王の伝説』なんだ!」。アヤンダ:「つまり、彼はここにはいないってことか?」。「いや、ある意味ではここにいる。『🔲 Find ‘Hope’(“希望”を見つける)』に✔が入ってる」。「なぜ彼はそんなことを? すべて 創作なのか?」。「彼の妻が話してくれた、詩はジョンの世界だったと。だが、彼女の世界でもあったんだ」。「ということは、彼はミリアムのために、こんな作り話を仕組んだのか?」。「彼女のため。自分自身のため。そして、ロビンのためだよ」。そして、すぐに、ジョン・ガーバーの最後の詩のナレーションが入る。背景は、南アフリカの海。「希望は守り人。私たちを生かし続けるもの。希望とは、人生への信頼。火花が炎となり、大火となる場所。君が選んだ生き方も、心の声も、進む道も、決して潰(つい)えぬ場所」。ここで、カメラは、崖の上にいるジョンに近づいて行く。彼は、ライオンのぬいぐるみの中に隠してあった骨壺を取り出す(3枚目の写真)。「獅子が獲物を狙うように、君の人生を生きよ。倒れても、ただ立ち上がるのではなく、飛ぶのだ」。ジョンは、海に向かってロビンの灰を撒く(4枚目の写真)【問題点②】。「希望の先へ。境界の先へ。夢想の先へ。君のリストは、人生への誓約だから」。ここで、ジョンは、「🔲 Find ‘Hope’(“希望”を見つける)」の🔲に✔を入れる(5枚目の写真)。

この後は、1つだけ残った「🔲 beat mom at basketball(バスケでママに勝つ)」を達成すべく(1枚目の写真)、刑務所の裏庭でバスケットの練習に励むジョンの姿が映る。「未達成の欄がある限り、私も、君も、彼女も、誰も止まりはしない。なぜなら、この世で、真実の愛より強いものは何もないのだから」。そこに、妻のミリアムが現われる。そして、ミリアムがジョンを鍛え、自分に勝てるよう練習するシーンが最後まで続く。「だから私たちは歩み続ける、一瞬一瞬を大切に。無駄な夢などない、正解も間違いも。これは君の試合。君の伝説。君の人生なのだから」。

最後に、問題点の解説をしておこう。番号は映画に現れた順に付いているが、ここでは実際に起きた順に記述しよう。【問題点④】ジョンが「息子があの部屋で一生を終えるなんて、耐えられるのか?」と言った後、彼は、夜遅くにこっそり、家を抜け出して病院に向かう。そして、病室に入るとロビンはもう死んでいた。そして、ロビンの容体を24時間体制で見守っているモニターは、心電図オフの表示が出ていて、指先センサーのコードも抜けていた。心電図オフの表示は、日中にロビンが生きていた時も同じように出ていた。末期癌の患者が、ちゃんとしたモニターを付けていながら、それが非表示になった状態で放置されることはあり得ない。医療安全マニュアルに基づき直ちにスタッフが患者のベッドサイドへ駆けつける。だから、そもそも日中のロビンの部屋のモニターの非表示放置も奇妙だが、何と言っても、患者が死亡しても、病院が一切関知せず、そのまま放置していたという設定は、絶対にあり得ない。つまり、映画そのものが、ここで崩壊する。【問題点③】ジョンがロビンの部屋に入った時、ロビンの頭は100%脱毛していた。しかし、同じ日の日中、ロビン部屋に両親がいた時、毛はふさふさと生えていた(この時、父は、ロビンの描いたライオンの絵を見ている)。最初、映画を観た時、このシーンは半年くらい前のものだと思っていた。しかし、それを破壊したのは、ロビンの母が南アのディバズ・アボードでライオンの絵を見て発した「これ、ロビンが行方不明になる前日に描いた絵よ」の一言。ジョンがロビンの部屋に入ったのは、行方不明になる前日の夜なので、僅か半日で脱毛したことになる。そんなことは絶対に不可能。【問題点②】ジョンは南アでロビンの遺灰を撒く。そして、彼がプラハ国際空港から飛行機で南アに向かったのは、ロビンの死体を運び出した翌日。ドイツからプラハに向かう途中で火葬したことになる。しかし、火葬するためには、医師2人による検視と公的な死亡証明書がなければ火葬場には入れないし、そもそも真夜中には稼働していない。彼が南アで撒くのは、火葬場で作られた純粋な灰なので、こんなことは100%不可能。【問題点①】ジョンは、ロビンと一緒に南アに行ったように装い、ドイツ警察も南ア警察もそれを前提に捜索する。しかし、プラハ空港での出国時、ケープタウン空港での入国時には本人のIDを含めた厳重な審査が行われる。当然、そこにロビンはいない。彼が1人で行動していることはたちどころに判明するハズなのに、どちらの警察もそれに気付かない。呆れ返るお粗末さだ。折角、エンドロールに3~4分前にすべてが逆転するという脚本を作りながら、これほど大きなミスを重ねた製作陣のレベルは、信じられないほど低い
なら、どうすれば良かったのだろう? 【問題点④】ロビンの入院を止めさせ、自宅療養にすべきだった。もっと早くから。病気で苦しんでいる子を、いつも世話のできる自宅で楽しく過ごさせる。特に、もう打つ手がないと言われたら。もうモニターなんかもいらない。そんな時、息子のリストを見つけたら、ジョンは、誰にも見つからずに息子を連れて、それが遺体でも、出て行くことができる。【問題点③】この解決策はごく簡単で、母の発言を「これ、ロビンが行方不明になる半年前に描いた絵よ」に変えるだけで済む。そもそも、こんな台詞を入れたこと自体が間違いなので。【問題点②】これも解決策は極めて簡単で、南アでジョンが遺灰を撒くシーンをやめればそれで終わり。ただし、ロビンの遺体の問題は残る。それは、次の【問題点①】と一緒に解決できる。ロビンは、そもそも、リストの中に南アフリカとは一言も書いてない。なのに、なぜわざわざ遠くの国をロケ地にしたのかも理解できない。ジョンが、南アフリカではなく、ドイツ国内、あるいは、EU域内でリストを実行することにすれば、入出国や飛行機の搭乗者が2名でなく1名の問題は消滅する。移動にIDは必要ないから。問題は、ロビンの遺体だが、これは真心を持って森の中に埋めればいい。場合により、あとで正式な墓地に移すこともできる。このように、問題点をすべてなくせば、おそらく、素晴らしい映画になったであろうことを考えると、脚本が如何に重要であるかがよく分かる