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ドイツ映画 (2019)

この映画のドイツ語の翻訳では、AIに非常に助けてられた。そこで、そもそも、ドイツの都市近郊の森で、ホームレスがテント生活を送ることがあるのかをAIに訊いてみた。その答えを次に記す。「ドイツではホームレスの人々が都市近郊の森や公園でテント生活を送っていることがあります。この生き方は、しばしば大きな課題と危険を伴い、通常は必要に迫られて選ばれます。多くのホームレスは、緊急シェルターが混雑していたり、規則が多かったり、あるいは単に静かに暮らしたいといった理由で、テントでの生活を好む傾向があります。また、緊急シェルターには常駐の住民がいることが多く、新しく来た人にとっては状況がさらに困難になることもあります。テントで暮らすホームレスの人々は、しばしば襲撃、破壊行為、盗難の被害に遭いますテントは切り裂かれたり、荒らされたり、排泄物で汚されたりします。特に冬の凍えるような寒さの中でのテント生活は、肉体的にも精神的にも深い傷を残します。電気、水道、衛生設備などの基本的な必需品が不足しており、衛生と清潔を保つことが困難です」。太字の部分は、映画と密接に関係した記述だ。これを見る限り、この映画で起きていることは、ある意味、ドイツの現状の一つとみなすことができる。

Taz誌のサイトの2022年11月21日の記事 「ホームレスの人々がオスナブリュックにキャンプを設営/日々の生活(https://taz.de/Obdachlose-bilden-Camp-in-Osnabrueck/!5893230/)の中に、映画のメリーと似たような状況にある女性へのインタビューが掲載されている。「30代半ばのジェシカ・ブッシュマンさんは、Taz紙の取材に対し、なぜここ〔森〕に住んでいるのかを話してくれました。彼女は、25キロ離れたメレ(Melle)出身で、最初はどこか別の場所で “粗末な暮らし” をしていたと語ります。『7月にアパートを失いました。でも、子どもたちはオスナブリュック(Osnabrück)の児童福祉事務所に預けられているので、ずっとそばにいたい。だからここに来たんです。子どもたちは2歳、3歳、13歳です。また ちゃんとしたアパートに住み、安定した仕事に就きたいです』」。

もう一度AIに戻り、私があらすじの最後の結末を酷評した点について、監督が何と言っていて、それにどのような意味があるのかを訊いてみた。まず、監督の説明:「主人公は学ぶ意欲がないように見える。外からの圧力は増し、高まっていくが、結局は内なる苦悩が主人公を、かつて必死に避けようとしていた行動へと駆り立てる。感情が高ぶる瞬間、絶え間ない重圧は、悲劇的ではあるものの、カタルシス的な諦めのジェスチャーへと昇華する」。この最後の部分の意味をAIはこう分析する。「①人は “重荷を背負うこと” がもはや不可能な限界に達すると、ストレスは日常の重荷から変革をもたらす力へと変化します。②最終的に重荷を手放すことで、安堵感や感情の “浄化” が得られます。たとえその行為がネガティブなものであったとしても、緊張を解き放つ行為は、その瞬間に強い満足感をもたらします。③安堵感は大きな代償を伴います。“見捨てられる” とは、責任、人間関係、さらには自身の生命や安全さえも放棄することを意味します。それが “悲劇的” なのは、人が唯一の逃避手段として喪失や自己破壊の道を選んでいるからです」。つまり、メリーは、ベンの元に走ったことで、自己破壊の道を選んだことになる。

ベン役は、クラウディオ・マグノ(Claudio Magno)。2014年のTV映画『Die Mütter-Mafia』に主要な脇役を務めたのが映画初出演。その後、2015~17年のTVドラマに出演し、次がこの映画。映画の撮影が2018年とすれば、2007年生まれなので11歳。その後、2021年の『Lieber Thomas』という映画にも出演している。監督は、本作の焦点をメリー役のFranziska Hartmannに当てているので、ベンも重要な役どころなのに、ちっともカメラを向けないのが、子供蔑視を感じさせる。

あらすじ

背の高い雑草の間から、ベンとメリーが出て来る(1枚目の写真)。1枚目の写真では分からなかったが、2枚目の写真を見ると、メリーは 道なき道を大きなスーツケースを引きずって来たことが分かる。メリーが荷物を地面に投げ出して、手を見ているのは、坂を下る時に滑ってしまい、手を付いて痛かったから。ベンは、スカートを見て 「お尻が汚れてるよ。それに、縫い目も破れてる」と、冗談を言い、メリーを一瞬心配させる。2人はすぐに仲良くなり、野原に出て、駅を目指して歩いて行く(3枚目の写真)。

ケルンのフランクフルター通り駅(Frankfurter Str.)〔ケルンの都心のあるライン川左岸ではなく、右岸にある郊外の駅で、ケルン大聖堂の東南東約7.2kmにある〕に着いた2人は、公衆トイレに入る(1枚目の写真、矢印)。中に入ると、メリーは、上半身ほとんど裸になって 持参したシャンプーで髪を洗い(2枚目の写真)〔湯気が出ていないので水〕、その間に、ベンは歯を磨く。髪を洗い終えると、メリーはハンドドライヤーで髪の毛を乾かす。そして、電車に遅れそうになったので、メリーはベンにスーツケースを任せ、電車を止めようと、ホーム目がけて必死に走る(3枚目の写真)。

しかし、ホームに出ると、ちょうど電車が発車した後で、当然、停まってはくれない(1枚目の写真)。そこで、メリーは ドイツ語の下品な言葉の代表格である 「Scheise(ちくしょう)!」を連発する。次の電車が来るまでの間に、メリーは、市の職員のクヤフスキーに電話をかける。しかし、本人は不在なので、「いつ戻って来られます?」と相手に訊きながら、野道を歩いて来た靴を、ハイヒールに履き替える(2枚目の写真、矢印は携帯)。クヤフスキーには、後で、もう一度電話をかけることに。そして、脱いだ野道の靴を、接着剤で補修する。

場面は、ケルンの都心にある、どこかの航空会社の建物の一室。客室乗務員の希望者を募り、何らかのテストをして〔内容や期間も不明〕、10名の候補者を発表する会場。候補者になった男女は、担当者に名前を呼ばれ、前まで出て行き、修了証明書とバラの花を1輪渡される。10人目となり、「そして最後に、最後になりましたが、クラスの一番の生徒、メリー」と呼ばれ、担当者から、「素晴らしいですね。おめでとうございます」と褒められ、メリーは笑顔になる(1枚目の写真)。なぜか〔こんな場所への同行が許されるものだろうか?〕、ベンが、「やったね、ママ!」と言って抱き着く(2枚目の写真)。そして、“10名の候補者の今後” についての説明がなされる。「あなた方は、最終の10名に選ばれました。試用期間終了後、5名が正社員として採用されます。ですから、頑張ってください。すべてはあなた方 次第です。成功を祈っています: いつも安全な着陸を(Always happy landings)〔ここだけ、英語。この社のスローガン?〕!」。因みにドイツの試用期間は最長6ヶ月。試用期間中でも、合意した給与を受け取ることができる 。

メリーとベンは電車に乗り、市役所に向かう。途中で、メリーはクヤフスキーに電話する(1枚目の写真、矢印)。「今日は、クヤフスキーさん。メラニー・シュナイダーです。残念ながら、今朝の予定が変更になったため、時間通りに伺うことができませんでした〔試用雇用者の選定などという重要な行事の予定が、急きょ変更になるのはおかしい〕」「10時半に伺ってもよろしいでしょうか?〔ということは、先程の行事は午前8時半~9時頃行われたのか?〕」。メリーは席を立ち、ベンもすぐに着いて行く。そして、電車はスピードを落とし、メリーは出口近くで続きを話す。「はい、そうしていただけると助かります」「本当に緊急でした」「ありがとうございます」。電話が終わると、ドアが開く寸前に、メリーはベンを抱き締める(2枚目の写真)。電車から降りたメリーは、足早に歩きながら(3枚目の写真)、ベンに、「そこから先は道わかるから、自分で行けるわよね。いい?」と訊く〔ベンは学校に行く。しかし、ドイツの小学校は朝8時授業開始なのに、こんな時間でいいのだろうか?〕。「うん」。メリーが、そのまま、前を見て歩いていて、ふと気づくとベンがいない。急いで引き返すと、ベンが店で雑誌を見ている。「ベン、行くわよ」とメリーが言うと、ベンは雑誌のページを見せ、「見て、ママ、ぼくこれが欲しいんだ」と言う(4枚目の写真)。「クールね。素敵じゃない」「これ欲しい」。「来て!」。

そして、場面は、市役所の中にあるクヤフスキーの机の前。メリーは、「6ヶ月も待てないわ! 緊急シェルター〔Notunterkunft〕はまさに地獄よ【下に、ベルリンのMariendorf地区にあるホームレスのための緊急シェルターの写真(https://kubus-berlin.de/archive/13636)】。ベンとは絶対に二度と行かない。どんなことがあっても。お願い、今すぐアパートが要るの、今すぐ! 子供を連れた女性を路上に放り出すなんて、ありえないわ!」と必死に訴える(1枚目の写真)。クヤフスキーは、「誰も、そんなことしませんよ」と反論するだけ。「あなたは、ただ、私の分類を変えるだけでいいんです!  私はこのアパートの解約通告を受けたんですよ」〔このアパートがどれなのか、映画を観ていても分からない〕。クヤフスキー:「誰も、あなたを路上に放り出しません。その逆です」。メリー:「なら、アパートを探すのを手伝って下さい」。ここで、クヤフスキーは、さっき自分が言ったことと矛盾する発言をする。「はっきり申し上げますが、まず第一に、あなたには子供の面倒を見る義務があるのです」。「何が言いたいの?」。「その子が住む場所がない場合は、あなたが住む場所を見つけるまで里親に預けられます」(2枚目の写真)〔「誰も、あなたを路上に放り出しません」と言っておきながら、何という無責任な代案を平気で言うのだろう。お役所仕事の典型〕。「私の子供を取り上げるつもり?」。「私は、児童福祉事務所〔Jugendamt〕がこの件を引き継いでくれた方がいいと思います」〔タライ廻しの責任逃れ。お役所仕事の典型〕。メリーは呆れて文句を言う。「ベンと一緒に、非常識な人々や薬物中毒者たちのそばで寝ろですって?! あなたの目には、それで私が自分の子供を守っているなんて見えるの?」。そして、このままバカ女に任せるのは危険だと思い、①児童福祉事務所に連絡する必要はない、②自分でアパートを見つける、③それまで友達の家に泊る、と言って早々に退散する。

メリーは、市役所から出ると、予め電話をしておいた友達のナディーンに会いに行くが、そこで、なぜか、児童福祉事務所のギャスターに電話をかける〔さっき、あれほど嫌がったのに、なぜ自分から連絡を取ろうとするのだろう?〕。しかし、ギャスターは不在だったので、折り返し電話をかけて欲しいと言って電話を切る。そこに、ナディーンがやって来る。2人は、ナディーンが持って来た昼食を食べながら、「ベンと私が もう一度お宅に伺ってもいいかしら? ほんの数日間だけ」と訊く。ナディーン:「ひどい、まだ何も見つかってないの?」(1枚目の写真)。メリー:「市役所がアパートを貸してくれるわ」〔ひどい嘘〕。しかし、それでも、ナディーンは、「でも、まず彼に聞いてみないと。私が代わりに決めるわけにはいかない」と言い出す〔彼は夫ではなく愛人〕。そして、「誰でもいいってわけじゃない」とも。それを聞いたメリーは、自分が友達に嘘を付いたことは忘れ、友達の煮え切らない態度に、「じゃあね」と立ち去る。そして、ギャスターの部屋を訪れると、先客がちょうど帰るところで部屋には入れてもらえたが、「まず、予約を取っていただく必要があります」と言われる(2枚目の写真)。いくらメリーが、「急ぎの用なので少しお時間を」と頼んでも、「火曜日の午後3時」と指定される。メリーは、「午後3時半」と言い、ギャスターは、「午後3時15分」と言い、何とかそれで互いに合意する。

ここで、ベンの学校のシーンに変わる。ベンの顔が大写しになるのは映画の中で僅か2回しかなく、これが1回目(1枚目の写真)。放課後にベンがボールで遊んでいると、壁に立て掛けておいたスケボーを、新入生のマックスが触ろうとしたので、「やあ」と声をかける。マックスは、初めて誰かに声をかけてもらったので、「今日は」と返事する、ベンは 「それ、ぼくのだよ」と言い、マックスは 「ごめん」と謝る。ベンは、マックスに、スケボーの乗り方を簡単に教える。2人は、それが契機となって友達になり、メリーが迎えに来た時には、ライトセーバーの玩具を持ったマックス〔そんなものを学校に持って来ていいの?〕と遊んでいた。メリーは、すぐにベンにキスをする(2枚目の写真)。ベンは、「この子、マックスだよ。ぼくのクラスの新入生なんだ」とメリーに紹介する。そこに、マックスの母が現われたので、マックスは、「ママ、今日、ベンの家に行っていい? 彼、ライトセーバーを見せてくれるんだって」と頼む〔ベンは、ライトセーバーなど持っていないので嘘〕。メリーは、アパートもないので、「ごめんね。残念だけどできないの。ライトセーバーも箱に詰めちゃったから」とマックスに言う。それを聞いたマックスの母が、「引っ越されるの?」と訊くと、「ええ、でも、この近くなんです。私たちは急いでアパートを探しているんですが、何かご存じですか?」と、情報が得られないか訊いてみる。「私たちの場合は、知人を通じて探したんです。でも、もう引っ越されるんでしょ?」〔メリーの話の矛盾を突いた〕。「ええ、でも、一時的な解決策なんです。狭いし、見苦しいし、立地も悪いし、値段も高いの」〔嘘の付きっ放しも大変〕。「いい物件を耳にしたら、教えて下さい」〔ここだけは本心〕

その後、メリーとベンは、“追い出されてしまったアパート” に向かって歩いて行く。そのシーンの最初の言葉は、メリー:「どうしてライトセーバー持ってるなんて言ったの?」(1枚目の写真)。ベン:「つい、うっかりして」。「友達を招いたりなんかしたらダメなのよ、分かった?」。「やってないよ。マックスが言い出したんだ。ぼく、招いたりしてない」。アパートに行くと、目下改装中で、工事が行われている。メリーは、すぐに2階のアニタに会いに行く。すごい騒音の中で、「今日から始まったの?」と、工事のことを訊く。「そうよ」。「まだ、175ユーロ〔当時の、約2万3千円〕、あなたに払ってないわね」〔でも、払わない〕。その時、工事屋が来て、ベンが工事中の〔粉じんだらけの〕部屋にマスクなしでいるので、即刻出すように言って来る。アニタは、今回の “追い出し” について、「役所の女性から、私のアパートが狭すぎると言われたの。私は、その女性と、利用可能な案を一つ残らず検討したわ。でも、私がこの部屋で子供達を預かってるから、時々様子を見に来るんだって。だから、今では、もうできないの」と弁解する(2枚目の写真)〔アニタの言葉からは、今までベンだけを預かっていたようにも受け取れる〕。メリー:「いつまで続くの?」。「彼女言わなかった。2ヶ月ってとこかしら」。そのあと、そのアパートに置いてあった大量の荷物を整理するメリーの様子が映るが、アパートから出て来た時に、それを持って来たわけではない〔一体何をしていたのだろう?〕。メリーは、ここには、最低でも2ヶ月は住めないことが分かり、すぐトミーに電話する〔誰かも分からないし、この時にしか名前は出てこない〕。「今日はトミー。今夜、ベンと私、あなたの所に泊まれないかしら?」(3枚目の写真、矢印)「あなた、私たちのこと気付いてないのね」「あのね、正直言って、そんなの理解できないわ」「どうだっていいわ。じゃあね」。

トミーに断られたメリーとベンは、またいつもの森に向かう(1枚目の写真)。そのあと、どうやっていつものテントに行くかが初めて克明に描かれる。最初は、誰も入って行かないような茂みの中に入って行き(2枚目の写真、矢印はベン)、森の中に入ると、太い倒木を跨ぐのに重いスーツケースが邪魔になったり、自然の小さな溝の上の倒木を渡ったりして(3枚目の写真)、ようやくテントに辿り着く。

テントは、もちろん、枝で覆って隠してあるので、メリーは枝を取り除く(1枚目の写真、矢印は青いテント)。メリーは、うっかり、テントの入口のチャックをしっかり閉めておかなかったので、中にカエルやナメクジが入ってしまい、ベンがナメクジを外に放り出した後、カエルを捕まえようとする(2枚目の写真、矢印はカエル)。中に虫がいなくなると、メリーがスーツケースを中に引きずり入れる(3枚目の写真)。順序が逆だと思うが、その後で、メリーは着替えながら、ベンにテントの中に残ったカタツムリの粘液をトイレットペーパーで拭き取らせる〔ナメクジだけでなくカタツムリもいた〕

夜、狭いテントの中で横になると、メリーが 「明日は、何したい? 何でもいいのよ。やりたいこと言って」と訊く。「防護壁を作るんだ。イノシシ対策だよ」(1枚目の写真)。メリーは、ベンがテントの近くに限定していると思い、「ベン、何やってもいいのよ。動物園、遊園地、泳ぎに行くのだって。近くに波の出るプールがあるの、そこに行ってみようか」と言う。しかし、ベンは 「防護壁を作りたいんだ」とくり返す。こうなれば、ベンの確信なのだが、メリーは、「何でもいい」「やりたいこと」と言っておきながら、結局やりたくないので、「火曜の仕事が始まる前の最後の休みなの。願い事を言って」と、別の理由を言って意見を変えさせようとする。それでもベンが、防護壁を主張すると、仕方なく認める。そして翌朝から木の枝を集め始め、それを横に並べて、一種の柵を作っていく(2枚目の写真、矢印)〔イノシシに効果があるかどうか分からない。そもそも、イノシシがいるのだろうか?〕。大変な肉体労働が終わると、2人は倒木に座り、メリーが作った鍋料理をその上に置き、そこからスプーンで何かをすくって食べる。ベン:「まあまあだね」。メリー:「ほら、この白いの…」。「あまり好きじゃない」。「私は、すごく美味しいと思うわ。温かいって想像するの。いい?」〔つまり、火を通さずに、冷たいものを食べている〕。「ううん、ぼくは、おいしくないと思うよ」(3枚目の写真、矢印はベンのスプーンとメリーの鍋)。

そのあと、肉体労働をして汚れた服と、汗まみれの体をきれいにしようと、2人は、近くの小川に行き〔あまりきれいな水とは思えない〕、中に入ってメリーが顔を洗い(1枚目の写真)、下着だけになったメリーの横で、ベンがシャツを脱いで洗ったりする(2枚目の写真)。それを受け取ったメリーは、丸めたまま木の幹にポンと置く。そのあと、何か別のものをベンが投げるシーンがある。これが、ベンの顔が大写しになる2回目で最後(3枚目の写真)。4枚目の写真は、その日の深夜。ベンが、便意を催したので、メリーは、すぐにベンを外に出し、臭うと嫌なのでテントから離れた場所まで行かせる。そして、ティッシュもトイレットペーパーも切らしてしまったことに気付くと、メリーは懐中電灯で草や木の葉っぱをちぎって集め(4枚目の写真、矢印はベンが隠れている場所)、「今は、葉っぱを使うしかないの。重ねて使って」と言って渡す。

次のシーンは火曜日。メリーともう一人の候補者のザシャ〔男性〕、それにベテランの客室乗務員イヴォンヌの3人が客室内通路に立ち、離陸前の安全に関するデモンストレーションとしての、救命胴衣の使い方の説明をしている(1枚目の写真)。次のシーンでは、ベンが、コインランドリーで大量の洗濯物を取り出している(2枚目の写真)。すると、メリーが、スナックを持って買い物から戻ってきて、袋をベンに渡す。ベンは中を見て、「ぼく、チーズなんか食べたくない」と文句を言う。「サラミが売り切れだったの」〔中身の選択肢が僅か2種類しかないとは思えない。母親ならベンがチーズ嫌いだと知っているので、これだけ手伝いをさせるなら、もっと配慮すべきなのに〕。代わりに、メリーは、一緒に買って来たものを見せる。「それ何?」。「ソーラーバッテリーよ。これで携帯の電源が落ちにくくなるわ」(3枚目の写真、矢印)〔発電効率は天候に左右され充電に時間がかかる→あとで、メリーの生活スタイルでは、役に立たないことが分かる〕

メリーが、古いアパートの1室で、大家のおばあさんと、不動産業者と一緒にいる。おばあさんが、「賃貸契約書をお渡しします。さらに、あなたから書類として提出いただきたいその他の書類もすべて記載されています」と言って 厚い書類を渡そうとする(1枚目の写真)。溢れんばかりの笑顔のメリーは、「了解しました。私もすべての書類をここに持っています。だから、今すぐ署名できます」と言い、書類を不動産業者に渡しながら、「雇用契約書、口座明細書、自己開示書〔家主と契約を締結する際に、個人的および財務的な状況を明らかにする文書〕があります」と説明する。それを聞いた不動産業者は、「SCHUFA信用情報報告書も含まれていますか?」と訊く〔ドイツの信用情報機関SCHUFA(シューファ)が発行する信用情報レポート(信用調査報告書)のことで、ドイツでの賃貸契約、携帯電話契約、ローン、クレジットカード作成時などに、個人の信用度(支払い能力や信用履歴)を証明するために提出を求められる書類。特にアパート探しでは必須書類となることが多い〕。これに対し、メリーは、前の大家に175ユーロ未払い金があるので、「残念ながら、家賃滞納が1件あるので、ありません」と答えざるを得ない。そして、「前のアパートにはカビが生えていたからです。ここに証拠の写真もあります」と弁明するが、結局アパートを借りることはできなかった。メリーは、ベンと一緒に歩きながら、「すぐにアパートを見つけないと深刻な問題になるわ」と自分に言い聞かせた上で、ベンに対し、「私たちには住む場所がないなんて誰にも言っちゃダメよ」と念を押す。ベンは、「そんなこと言わない。誓うよ」と返事する(2枚目の写真)。それでも心配なメリーは、「これはホントに重要なことだから、誰にも知られちゃいけないの。友達にも、その両親にも、ラウンシュタイン先生〔担任の教師〕にもよ」。「分ってるって」。「私も誰にも言わないって約束する。あなたも約束して」。「約束する」。ベンはそう言うと、「ママ?」と呼びかける。立ち止ったメリーに、ベンは 「何とかなるよ」と言って抱き着く。メリーは、ベンを抱き締めると、「ベン、ごめんね」と不自由をかけることを謝る(3枚目の写真)。

メリーは、料理のために焚き火を作ろうと、何とか枯葉に火を点けようとするが、うまくいかない。ベンが 「小さな葉っぱを下にしなきゃ」と言い、メリーは 「してるわよ」と言う。ベンは、「じゃあ、トイレットペーパー持って来る」と言い、テントに戻って取って来る(1枚目の写真、矢印)。そのあとで、ベンが倒木の上に座っていると、メリーが 「ダメだった」言い、ベンの隣に座る。食べる物もないので、メリーは、「もう、寝ましょうか?」と言う。「ぼく、疲れてないよ」。「さあ来て、寝ましょ」。「ぼく寝ない」(2枚目の写真)。メリーは、「またね」と言ってテントに行き、ベンは倒木の上で横になる(3枚目の写真)〔何と侘しい生活。メリーには責任感が欠けているのではないか?〕

翌日ケルンに行った時、少しでもお金を作ろうと思ったメリーは、以前買ったまま使ってないセーターを、買った店に持って行き、返金を求める。店主は、セーターを拡げて調べると(1枚目の写真、矢印)、「いいですか。そんなことはできません。着用済みです」と拒否する。メリー:「買った時からです。私が着たんじゃありません」。「でも、着用済みなんです」。「タグも付いてるし、レシートもあるから、返品してお金を払ってくれたら嬉しいんですが」。強引なメリーの態度に、「普通ならお断りするんですが」と言いつつ、店主はレジからお金を出してメリーに渡す。メリーは、「ありがとう」と言って、お金を受け取る。メリーは、その足で、ベンを迎えにアニダのアパートに行く。そして、出て来たベンを抱き締めると(2枚目の写真)、洋服店で強引にせしめたお金を、少しでも借金を減らすためアニダに渡す。こうしてアニダの気を少しでも良くした後で、「事務所の人が、今、家庭訪問をしたいと言ってるの」と切り出す〔一体いつギャスターに会い、どんな約束をしたのだろう?〕。しかし、アニダは 「ダメよメリー、ここではできないわ。私の認可も、児童福祉事務所を通じて行われるの。後で、私たち2人とも罰せられるわ」と きっぱり断る。アニダが、心配して 「どうするの?」と訊くと、メリーは 「ナディーンに電話する」と言って別れるが、電話などせず、そのままベンを連れて電車に乗り(3枚目の写真)、森に帰る。

森では、ベンが、拾ったビール瓶の上に2個 丸い実を乗せて遊んでいる。それを見たメリーは、「すごい」と褒める。「宇宙船だよ」(1枚目の写真、矢印)。「操縦士と副操縦士かな?」。一旦、テントの中に入ったメリーは、両手を後ろに隠して、「プレゼントがあるわよ」と言う。「何なの?」。「クールなもの。左手かな? それとも右手?」。「両方」。それを聞くと、メリーは、「じゃじゃーん」と言い、スイッチを入れて、ライトセーバーを取り出して見せる(2枚目の写真)。ベンは、「わあ、すごい! それ、ずーっと欲しかったんだ! ありがとう!」と大喜び。メリーは、しばらくベンに遊ばせた後で、テントの中に入れると蛍光灯になるわよ」と言って、天井に付けてみせる。ベンは、さっそく靴を脱いでテントの中に入る(3枚目の写真)。

教師のラウンシュタインが、翌日提出の課題の説明をしているのに、ベンとマックスは全く無視し、仲良く絵でも描いて遊んでいる(1枚目の写真)。他の生徒は授業が終わったので教室から出て行くが、2人は遊び続ける。ラウンシュタインは2人の所まで来ると、「おい、仲良し君たち、席を離した方がいいかな?」と訊く。ベンは 「ラウンシュタイン先生、ぼくたち、ちゃんと聞いてました」と、すぐに返事し、マックスも 「ホントです」と言う。ラウンシュタインは、次に、ベンのシワの寄った教科書を手に取ると、「これは、一体どうしたんだ?」と訊く。「雨が降ったからなんです」。「雨? いつ降った?」〔森では降ったが、ケルン市内では降らなかった?〕。「ママと旅行に行った時です」。ベンが、頭を机に乗せているのを気に留めたラウンシュタインは、しゃがむと、「君の頭は、机にくっついてるのか?」と訊く。「疲れてるだけです」。「気分が悪いのか? お母さんに電話しようか?」(2枚目の写真)。「大丈夫です」。ラウンシュタインは、不良品になった教科書を持ったまま立ち上がると、「後で職員室まで来なさい。いいね? そしたら君に1冊あげる。でも、これは例外中の例外だからね」。次のシーンは、職員室ではなく、外の自転車置き場で。ラウンシュタインは、「CLUBS」という人気のクラッカーの袋を手に持ち、「5枚に上げるぞ」と言うと、薄いクラッカーを5枚重ねてベンに渡す。そして、自分も5枚手に取ると、「よーい、ドン」と言い、5枚のまま口に入れて食べ始める(3枚目の写真)〔楽しい教師〕。勝ったのは、ラウンシュタイン。そこに、電話で呼ばれたメリーがやって来る。

メリーは、ラウンシュタインにお礼を言うと、ベンを連れて歩き始める。しかし、いつものベンと違い、スピードが遅く、顔にも精気がないので、「来て。どうしたの?」と訊きながら、額に手を当てて熱があるか見てみる。「まあ、すごい熱じゃないの」。「平気だよ」。「平気? じゃあ、どうしたらいいの?」。「ほっといて」。「ほっとけない」。「何するの?」。「アニタに電話する」。しかし、電話をすると断わられる(1枚目の写真、矢印)〔恐らく、ギャスターが来ているか、これから来る〕。次のシーンでは、2人は、プラットホームのベンチに座っている。メリーは、携帯を取り出すとザシャに電話をかける(2枚目の写真、矢印)。「あのねえ、ベンが病気で、工事屋がウチに来てるの。もしできれば、あなたのトコで一晩泊まらせてもらえないかしら?」。これに対してはOKが出たので、メリーは途中で薬局に寄り、解熱剤を買い〔7.25ユーロ≒950円〕、一人では階段を登れなくなったベンを抱いてプラットホームに行く(3枚目の写真)。こんなに苦労して行ったにもかかわらず、ザシャのアパートには鍵がかかっていて中に入れない〔メリーは、すぐにザシャに電話をかけるが、鍵は教えられた場所になかった〕。限界に達したベンは、「森に行こうよ」と言い出す。「横になりたいんだ」。しかし、メリーは 「ダメ」と拒否する。

次のシーンで、メリーがベンを背負って歩いているのは(1枚目の写真)、何らかの認知症老人のための介護施設。メリーとベンは個室の中に入って行く〔ドイツの介護施設のシングルルームの広さは 16~18㎡なので、ベランダが付いている分、それより広く感じられる。ただ、お金もないメリーがどうやって費用を負担しているのだろう? 介護保険(法定強制保険)の支援額(月額2096ユーロ≒27万円)だけでは足りないので、社会福祉事務所からのサポートを受けているのだろうか?〕。メリーの母は重度の認知症なので、メリーは、「私はメリー、あなたの娘よ」と言っても、理解してもらえない(2枚目の写真、立派な個室)。メリーは、「見て。こっちはベンよ」と言うと、ベッドの反対側に行く。ベンは、「今日は、おばあちゃん」と言い、抱き着く〔相手が小さな子供なので、母は、孫だと分からなくても喜ぶ〕。そこに、写真立てを持って来たメリーが母に見せる。母が 「これ私の娘よ」と言うと、メリーは、その写真を指差して、「ええ、これ私よ」と言い、納得させようとする。そして、「あなたの孫のベンは、今、とっても疲れているの。少し、ベッドに寝てもいいかしら?」と言うと、返事を待たずに靴を脱がせて横にならせる。母は、孫だと聞いたので、嬉しそうにベンと一緒に横になる。次のシーンでは、それから かなり時間が経ち、母は眠ってしまい、メリーは看護婦が持って来た夕食をイスに横たわって食べながらTVを見ている。ベンも何か丸いものを手にしているが(3枚目の写真)、食べようとして止めて皿に戻すと、「ちゃんとした物が食べたい」と言う〔一体何だったのだろう?〕。その後、皿を載せたスライドテーブルの奥から、メリーは母の財布を取り出す。ベンが、「何してるの?」と訊くと、「おばあちゃんにお金があるか見てるの。何か食べ物を買うためよ」と言う(4枚目の写真、矢印)。良識のあるベンは、「ダメだよ」と言うが、生きるために必死のメリーは、「そんなに悪いことじゃない」と言う。「でも、それ、おばあちゃんのだし、おばあちゃんだってお金がいるよ」。「ベン、そんな説教しないで」。しかし、ベンはTVのリモコンで祖母を叩いて起こし、見知らぬ女性がいるのを見た母は、「シスター!」と叫ぶ〔もう、顔を忘れている〕。母が何度もシスターと叫んだので、変な興奮状態にあると誤解した看護婦は、母を宥めることだけに専念する。そして、メリーには、「面会時間は終わりました」と告げる。メリーは、「でも、こんなひどいことになっちゃって。母は、ベンに会えてすごく喜んだのに。だから、時計を見るのを忘れてて、電車に乗り遅れちゃったわ。お願い。お願い」と、ここにいたいと必死に訴える〔真っ暗になった頃 森に戻っても危険だし、病気のベンにとっては最悪なので〕

入院患者の部屋で寝ることは規則で禁じられているので、看護婦は、例外的な措置として、夜間勤務の看護婦の部屋でベンを寝せることに(1枚目の写真)〔しかし、1枚目の写真を見る限り、外はまだ明るい。それなのに、メリーが『電車に乗り遅れた』と言ったのは、行き先がケルンの郊外ではなく、どこか遠くに帰ることを想定させるために付いた嘘なのか?〕。2枚目の写真は、本当に真っ暗になってから。ベンはもう眠っていて、メリーは下着だけになると、そのままどこかに座る〔壁の柄を見ると、1枚目の写真の部屋ではない〕。そのあと、どうやって朝まで過ごしたのかは分からない。

翌朝、ベンを母の病室に預けたメリーは、くたびれた表情で空港にやって来る(1枚目の写真)。そして、服装を整えようと男女共用の乗務員用トイレに行き、上半身、下着だけになる〔職場条例により乗務員用トイレは一般的に男女別。男女共用トイレは稀のはず〕。そこに、入って来たザシャは、「彼、鍵を持って行っちゃったんだ。送ったんだそうだけど、来週にしか届かないみたい。それだと困る?」と事情を説明して、訊く。「いいえ、心配しないで。それより、お金貸してもらえない?」(2枚目の写真)。「いくら?」。「200ユーロ〔約2万6千円〕」。ザシャは、「そんなに持ってないよ」と言い、財布を見ながら、「50、100、120、130…」と数えていく。「150でもいいわ?」。ザシャは150ユーロ渡す。「どうもありがとう」。2人が飛行機に乗り込み、客室のチェックをしていると、ベテランの客室乗務員イヴォンヌが、声をかけて用件を話す。「人事部があなたに連絡を取ろうと何度も試みたの。でも、電話がいつも話し中だったとか。明日電話してもらえる?」(3枚目の写真)。「明日ですか? ベンが病気で、今は一人にできないので無理なんです」。「なら、人事部に電話して、そのことをはっきり伝えて下さい」。「分かりました」。

ベンは、メリーからもらった航空会社の旅客機のミニ模型を手に持って、祖母の病室のベランダから、つまらなさそうに外を見ている(1枚目の写真)。一方、メリーが施設の廊下を急いで歩いていると、ベンのことを頼んでおいた看護婦が、怒った声で、「あまりに遅いじゃないの! とっくに勤務時間は終わってるのよ!」と文句を言う。「本当にごめんなさい。思ったより 時間がかかってしまって。これで何とか」と言い、お金を渡そうとする(2枚目の写真、矢印はお札)。看護婦は、「40〔約5千円〕」と要求する。メリーが財布を出すと、中は空っぽ。それを見た看護婦は、「分かった、それでいいわ。ベンはおばあちゃんと一緒よ」と教える。メリーが急いで母の病室に入って行くと、ベンはベッドに寝ている。「ベン。少しは気分良くなった?」。「うん」。ベンが起き上がって靴を履いている間に、メリーは母の額にキスして、「じゃあね」と言う。そのあとで、ベンが祖母に抱き着き 「じゃあね」と言うと、祖母も 「じゃあね、愛しい坊や」と言葉を返す(3枚目の写真)。

2人は、森に向かって登って行く(1枚目の写真)。テントを開いた後、メリーは温かい飲み物の用意をし、ベンは自分の毛布を用意しながら、「ママも毛布欲しい?」と訊く(2枚目の写真)。「要らない」。そう返事すると、逆に、「紅茶かハーブティー、どっちがいい?」と訊く。ベンは 「紅茶」と言った後で、紅茶の入ったカップを受け取りながら、「ぼく、ある事 考えてたんだ」と言う(3枚目の写真)。「何を?」。「将来は、科学系の高校に行きたいなって」。「なぜ? どうしてそんなことを思いついたの?」。「そしたら、ぼくがお金稼いで、いつもママに一部を渡せるよ」(4枚目の写真)。この殊勝な意見に対し、メリーは、「ベン、お金を稼ぐなんて考えないで。何かを勉強するなら、楽しめることをすればいい。でも、お金を稼ぎたいとか、私に何かあげたいとか、そういう目的で勉強するのはやめて」と言う。「でも、ぼく、ママを助けたい」。「無理しなくていいの。私は一人で何とかできる。今は一時的な状況なの〔ある意味、重要な言葉〕

学校までラウンシュタインに会いに行ったメリーは、彼がいなかったので、外に出て来ると、ちょうど自転車で学校に着いたラウンシュタインと会うことができた。メリーは、さっそく、「少しお話ししてもよろしいでしょうか?」と訊く(1枚目の写真)。「もちろんです」。「児童福祉事務所のギャスターさんから電話があると思います。ベンのことを訊きたいそうです」。すると、ラウンシュタインが意外なことを話す。「ギャスターさんは、昨日すでに電話をかけてきました」。「本当ですか?」。「はい。心配ありません。電話を下されば、喜んで打ち合わせをしましょう」。ただ、ラウンシュタインは校長に呼ばれて学校に来たので、その場で話すことはできなかった。次は、空港での意味不明のシーン。ザシャが、メリーに、「テストとして時々そうすることがあるって、スージーが言ってたよ」と言う(2枚目の写真)〔何のことか分からないが、ひょっとしたら、先日イヴォンヌが、「人事部があなたに連絡を取ろうと何度も試みたの。でも、電話がいつも話し中だったとか」のことだろうか?〕。ザシャの説明は、さらに続く。「君が、急な変更や追加の要求にどれだけ臨機応変に対応できるかを試すためだとか。次回は、ちゃんと対応しないといけないよ」。それを聞いたメリーは、「私にそれをさせようとしたのが、良い兆候だといいけど」と言い、ザシャは 「おそらくね。僕には、まだ何もないんだ」と言う。3番目は、もっと分かり易いシーン。ベンやマックスたちが子供用の3輪車や4輪車で遊び、周りに母親たちがいる。すると、ベンの携帯にメリーから電話がかかって来る。「やあ、ママ」「どうしても?」「でも、ぼく、できれば…」「訊いてみるよ」。そして、「マックス」と呼びかける。「何?」。「今夜、君んちに泊ってもいい?」(3枚目の写真、矢印は携帯)。「もちろんだよ」。「お母さんに訊いてくれる?」。マックスにとっては最高の幸せなので、母の所に4輪車を漕いで行く。

マックスの家でのシーンは、ライトセーバーを持って戦いごっこをする場面から始まる(1枚目の写真)。マックスの母はすぐに止めさせ、ベッドに入る直前なので、2人に歯を磨かせる。お風呂に入った後、裸のままシーツを被った2人は、ベッドの上で仲良くじゃれ合う。そのうちに、ベンが、「秘密を教えてあげようか?」と言い出す(2枚目の写真)。「うん、もちろん」。「でも、誰にも言っちゃいけないよ」。「大丈夫。信じて」。「両親にも、ラウエンシュタインにも言わないって 約束する?」。「うん」。「ぼくとママは木の上に住んでるんだ」。「え、どういうこと?」。「木のてっぺん、まさに一番上なんだ。だから、ほとんどすべて見ることができる。世界中をね。だけど、誰もぼくたちを見ることができない。ぼくたち、そういうカッコいい家を建てたんだ。ぼくたち、実は浮浪者なんだけどね」。そこまで真面目な顔で言うと、くすっと笑い、「騙された!」と言って笑顔になり、マックスも笑顔になる(3枚目の写真)。

この映画の最大の弱点というか大失敗の理解不能場面。まず、夜、いつもの電車に乗っているメリーが映る。その単調なシーンが、ほぼ30秒も続いた後、いきなり、何の説明もなく、1枚目の写真のキスシーンに変わる。それまで、学校の前でギャスターについて話しただけの2人が、しかも、ラウンシュタインに至っては、教師でありながら、教え子の母とこんな行為に走るなんて、観ているのがバカらしくなる。映画全体が非常に珍しい内容でなかったら、このシーンの存在だけで、紹介の対象から外してしまいたくなるほどのレベルの低さだ。叱咤されるべきは、脚本も兼ねている製作時39歳の監督。メリーとラウンシュタインのありえない行為は、さらにエスカレートする(2枚目の写真)。

ラウンシュタインは8時には学校に行かなくていけないので、それ以前にメリーはアパートを出されたハスだ。一方、ベンは、マックスと一緒に、母が学校まで送ったに違いない。2人が会えるのは、学校が終わってからなので、午後となる〔その間、メリーは何をしていたのだろう? 客室乗務員なら許せるが〕。2人が一緒に歩く可哀想なシーンは、次の会話から始まる。ベン:「これがバッテリー、これが充電ケーブル。バッテリーはソーラーのものよりずっと優れてるよ。ずっと長持ちするし、壊れにくいんだ」(1枚目の写真)。メリー:「どこで手に入れたの?」。「いつでも学校に持って行けば充電できるし」。「ベン、どこで手に入れたの?」。ベンは肩をすくめる。「それ何なの? どこでなの?! ベン!」。ベンは白状する。「あそこの店」。「お金がなくても?」。メリーはそう言うと、ベンを店の前まで連れて行く。ベンは店の中に入って行くと、「ぼく これ盗んだんですが、間違ったことだと気づきました」と店員に言ってバッテリーを返す(2枚目の写真)。店員は、「分かった、問題ない。だが、二度とこんなするんじゃないぞ」と言って許してくれる。メリーも、「ホントにラッキーだったわね。でも、二度としちゃダメよ」と再度注意する。それで終わるならいいのだが、メリーは、その後もくどくど文句を言い、何度もやらないと誓わせるが、前の晩、メリーとラウンシュタインがした行為の方がよほど罪が深いので、メリーが何度も叱るのが許し難く思えてしまう。『自分はどうなんだ?!』と言いたい。この嫌らしいメリーは、いつもの電車に乗ってからも、ベンを責め続ける(3枚目の写真)。

電車の中は明るかったのに、僅か10分ほど乗っただけで、歩き始めると、森の中で真っ暗になる〔電車の中のシーンを夕方にすべきだった〕。暗い上に、懐中電灯は1個しかなく、しかも光が弱いので、愚かなメリーは転んで足首を捻挫してしまう(1枚目の写真)。『愚か』と書いたのは、転ぶ前に、「しまった! ギャスターさんに電話するの忘れてた。何てバカなんだ」と言うほど愚かだったから。ベンが、「ぼくたちが アパート持ってないってバレたら、トラブルの?」と訊くと、「何とかするわ。何か考えてみる」と無責任に言い逃れるが、後で、この失敗が最悪の結果につながってしまう。そういう意味では、バカなセックスをして、電話を掛け忘れ、ベンを叱ることに専念した天罰が足首の捻挫だろう。翌朝、駅まで行ったメリーは、ギャスターに電話をかけ(2枚目の写真、矢印は携帯)、「お早うございます、ギャスターさん、メラニー・シュナイダーです。昨日は、全く連絡が取れなくて、本当に申し訳ありませんでした。今日が、予約した日ですよね?」「良かった。では、ベンに連絡しておきますので、また後でお会いしましょう」と言って電話を切る。そして、ベンに、「今日、ギャスターさんが あなたの学校に来るの。心配しなくていいわ。彼女は、あなたが大丈夫かどうか知りたいだけなの」と話す。「ママも来るの?」。「もちろん。ラウンシュタイン先生もみえるわ」。そのあと、メリーがいつもの飛行機に搭乗する。すると、イヴォンヌから、「あなたは試用期間中なのよ。信頼できる人でなければならないの」と注意される〔メリーは一体何を失敗したのだろう? ザシャが、前々日に 「次回は、ちゃんと対応しないといけないよ」と注意したことと関係あるのかもしれないが、それも変で、メリーがザシャと一緒に空港にいたなら、イヴォンヌとも一緒だったハズだ。そうなると、メリーの失敗は、その後の2日間に起こした別件としか思えない。映画は、そのことに一切触れていない。実に、不親切な脚本だ〕。メリーは、「もう二度としません」と言うと、機内のトイレに行き、捻挫した足首に薬を付けて包帯を巻く(3枚目の写真、矢印)。

その日の午後、ギャスターが学校を訪れ、ラウンシュタインと話を終え、「お時間をいただきありがとうございました。最終的な結論を出す前に、校長先生と直接会って面談したいと思います」と告げる。ベンが2人の後を歩いているが、メリーの姿はどこにもない(1枚目の写真)。ラウンシュタインがいなくなっても、メリーはまだ現れない。ベンが困っていると、携帯が鳴る。ベンがメールを見ていると、ギャスターが 「ママなの?」と訊く。ベンは 「うん。飛行機が遅れたって」と答える。「そういうことは、よくあるの?」。「ううん。学校が終わったら、いつもアニタのトコに遊びに行くんだ。だから、ママが遅れて着いても、ぼくには分からないよ。だって、ママはいつも同じ時間にぼくを迎えに来るから」。「アニタって誰?」。「ぼくのチャイルドマインダー〔働く両親の幼い子供たちを、自分の子供と一緒に日中に有料で世話する女性〕だよ」。「そうなの」。「いつ家庭訪問に来るの?」。「それには、あなたのママと話し合わないと」。「ぼくが、アパート 見せてもいいよ」(2枚目の写真)。「今日は、アパートに行く予定じゃなかったの。それって、今からってこと?」。「うん」。このあと、メリーが街の歩道を走っている姿が映る。そして、なぜか、アニタのアパートの階段を登っていると、上からギャスターが降りて来る。それを見たメリーは、「今日は、ギャスターさん。とっても急いだんです。学校で待ち合わせたハズなんですが」と話しかける〔メリーは、どうしてアニタのアパートに来たのだろう? かなり遅刻して学校に行った時、ギャスターもベンもいなかったから? それなら、遅れた自分が悪いので、普通ならギャスターに電話するか、携帯の番号を教えてもらっていないのなら、仲良くなったラウンシュタインと相談するとか、ギャスターの事務所に行くのが普通で、“ギャスターが絶対にいないハズのアニタのアパート” なんかに、なぜ行ったのか? いつものようにベンを迎えに行ったのだとしたら、遅刻したことを何とも思っていない非常識な人間と言うことになる〕。ギャスターは、「あなたは、どこにいたの?」と訊く。「ごめんなさい」。「この件を、どうしたらいいか、分からなくなったわ。私は、次の予定があるから行かないと。明日の朝、事務所の方に電話して」。「はい。明日は土曜日ですが」。「じゃあ、月曜に」。そう言って、急いで降りて行くギャスターに、メリーは、「分かりました。じゃあまた。さようなら」と、下に向かって呼びかけるしかない〔最初、メリーが予約なしでギャスターの事務所を訪れた時、2人は、『火曜日の午後3時15分』に会うことで合意した。しかし、メリーがギャスターと会うシーンなどなかった。上記の、「それには、あなたのママと話し合わないと」というギャスターの言葉からは、2人が会ったとはとても思えない。もし、会ったとしたら、何が話し合われたのだろう。『火曜日の午後3時15分』を無視し、なぜ、いきなり金曜に飛ぶのだろう?  実に不審極まる脚本だ〕

アニタと会ったメリーは、「最悪よね、本当にごめんなさい。こんなこと、起きるハズじゃなかった」と謝り、「彼女、さっき、あなたのアパートに来たのね?」と訊く。「ええ、そうよ」。「しまった。それで、彼女、何て言ったの?」。「ここに、あなたの服が一着もないって不思議がってたわ」。「しまった」。アニタは、「もし、資格を失ったら…」と心配するが〔チャイルドマインダーの資格?〕、メリーは、「面談は学校で行われるハズだったの。こんなことになるとは。そもそも、家庭訪問は今日じゃなかったし」と弁解する。次のシーンでは、メリーがアパートの外を歩きながら、ベンに話しかける。「このこと、あなたがギャスターさんに話したの?」。ベンはメリーの顔を見るが何も言わない。「一体どういうつもりで、こんなことを考えたの? どうして知らせなかったの? まさか、分かってないわけないわよね? これから、大変なことになるのよ! 何か言うことある?!」と、最後は激しく叱るように訊く(1枚目の写真)。「ラウンシュタイン先生がいなくなった後、ぼく、あの女(ひと)と二人きりになった。そしたら、いろいろ質問し始めたんだ」。「月曜日に彼女が学校の前に現れ、あなたを連れ去っても、驚くには値しないわね」。「でも、それならぼくが説明すれば…」。「あなたは黙ってるの! 私がやるから! 分かった?! 私よ! あなたじゃないの! いいわね?!」。「はい」〔確かに、「ぼくが、アパート 見せてあげられるよ」と言い出したのは、ベンの失敗。だが、それを言ってはダメだと、予めベンに教えておかなかったメリーに第一義的な瑕疵(かし)がある〕。その夜、メリーはベンを連れてホテルに泊る〔シャワーでなくバスが付いているので、安ホテルではない〕。バスに入りながら、ベンは、「ごめんなさい」と謝る(2枚目の写真)。「助けたかっただけなんだ」。「分かってる。心配しないで。何とかするわ」。2人はベッドに入ると、メリーがフロントに電話して、「費用は航空会社が払います。払わない場合は私が払います」と言った後で、「コーラと、クラブハウスサンド〔トースト3枚を重ね,その間に鶏肉、レタスなどをはさんだサンドイッチ〕を2人分」と頼む。最後は、食べた後の愛情溢れるシーン(3枚目の写真)。

翌朝、1人で空港に向かうメリー。お金がないので無賃乗車をしていると、車掌が切符を調べに来る(1枚目の写真、矢印)。もうすぐ駅なので、メリーはドアの前に移動し、早く電車が停まってドアが開くのを待つ(2枚目の写真)。搭乗したメリーは、イヴォンヌに、「ちょっとお聞きしたいのですが」と声をかける。イヴォンヌが受け入れたので、「仮払金をいただくことは可能でしょうか?」(3枚目の写真)「もし可能なら、どなたに相談すればいいでしょうか?」と、訊きにくいことを尋ねる。イヴォンヌは、正直に、「試用期間中の社員について、経理部は通常、そのような対応を好まないわ」と答える。「通常とは異なる状況ではどうでしょうか?」。「ヒルシュラーに聞くのがいいわ」。「分かりました」。「いずれにせよ、近いうちに彼と話をしないといけないので、あなたに代わって聞いてあげる」。「ありがとうございます」。「あなた、大丈夫なの?」。「はい、もちろんです。初任給が出るまで、まだ少し時間がかかりますし、ベンの誕生日がもうすぐですので」。

ベンは、またマックスのアパートに泊めてもらう。2人がマックスの狭い部屋にいると、母がドアの所まで来て、「マックス、これのこと?」と訊く。「うん、そうだよ」。それを聞いた母は、Tシャツを拡げて両手で持つと、「ベン、見て」と言う。「かっこいいね」。それを聞いたマックスは、Tシャツを母の手から取ると、ベンの前に持って来て、「これ、君にあげる。僕には小さ過ぎるんだ」と言う。「いいよ。ありがとう」。母は、「それ、もらってくれていいのよ。マックスは、もう着れないから」と言い、マックスがベンの横にTシャツを置く。ベンは、「ありがとう」と言って着てみる(1枚目の写真、矢印)。授業が終わった頃、メリーが学校まで会いに来る。ベンが着ているTシャツを見て、「ねえ、何 着てるの?」と訊く。「マックスにもらったの」。「後ろを見せて」と言い、背中のバックパックを外すと、「BRASIL 10」〔ブラジル代表のエースナンバー〕が見えたので、「素敵じゃない」と褒める。そして、マックスの母に、「突然のお願いだっだのに、対応していただき ありがとうございました」と お礼を言う。そして、ベンには、「放課後、家〔森のこと〕で会いましょうね。今日はアニタのトコには行けないから。ママは5時頃まで仕事をして、遅くとも5時半にはあなたのトコに行くわね」と言って別れる(2枚目の写真)。メリーが搭乗したのは、パリ行きの便。しかし、パリの天候が悪くて出発が遅れることになる。メリーは、さっそく、ベンに電話をかけ、「天気が悪いので離陸できないの。アニタにトコに行って、着いたらメールくれる?」と指示する(3枚目の写真、矢印)。

真っ暗な森の中、テントの前で、ベンがライトセーバーを持ってメリーの帰りを待っていると(1枚目の写真、色調補正で、明るさとコントラストを上げて増感している)、変な〔数人の酔っ払った男が奇声を上げるような〕声がそれほど遠くない所から聞こえてくる。怖くなったベンは逃げ出して、森の中を走って行く。ここで、パリからケルンに戻る飛行機の中で、数人の客室乗務員が、乗客に飲み物を訊いている。メリー:「お飲み物はいかがですか?」。乗客A:「要りません」。「何になさいますか?」。乗客B:「コーラ」。コーラを渡して、「どうぞ」。そして、問題の隣の乗客C。「あなたは?」。乗客C:「何て?」。英語で訊かれたので、メリーも、「何になさいますか?」と英語で訊く。すると、乗客は、笑顔で 「いろんなものが好きなんだ」と答える。飛行機が遅れてイライラしていたメリーは、やってはいけないことを平気でする。すなわち、乗客Cを無視し、カートを後ろの座席に動かしてしまう。乗客Cは、「おい、戻って来いよ!」と言うが、メリーは、乗客Dに 飲みものを訊く(2枚目の写真)。乗客C:「おい、あんたに話しかけてるんだぞ!」。メリー:「声を少し小さくしてもらえませんか?」。「普通の声だ」。メリーは、もう一人の客室乗務員に、「お願いします」と対応を頼む。その女性が、「お客様、すみません、ご用件は何でしょうか?」と乗客Cに訊くと、「彼女に謝ってもらいたい」と言う〔試用期間中の客室乗務員としては失格とみなされる行為。これまでのメリーの行動(大切な電話のかけ忘れ、人に物を頼む時の素っ気なさ、自分のミスを全く反省しない性格)から判断して、社会人としても落第としか思えない〕。「状況が分からないのですが、何かお飲み物をお出ししましょうか? スパークリングワイン、白ワイン、赤ワインはいかがですか?」。「いらん〔It's okay〕」。「ドイツビールは?」。「いらん」。ここで機内の不快なシーンは終わり、メリーが空港ターミナルから走り出て、急いでタクシーに乗ると、フランクフルター通り駅まで、できるだけ早く行くよう頼む。次のシーンは、真っ暗な森の中を歩いてテントに向かうメリー。しかし、テントに着くと、あたり一面にひしゃけたテントや、その中身らしき物 が落ちている(3枚目の写真、この場面は特に画面が黒一色で、強く増感)〔ここも、全く理解できない場面。観客を無視したシーンが多過ぎるが、その最たるもの。ベンが耳にした男たちが破壊したのだろうか? それとも廃棄された別のゴミ?〕。メリーは、「ベン?」「ベン!」と何度も叫んで森の中を走り回り、運よく無事なベンを見つけ、ホッとして抱きしめる(4枚目の写真、テントから離れた場所にも、衣類が散乱している。これも強く増感)。

次のシーンでは、何と、2人はテントの中。夜遅いので、メリーがベンのTシャツを脱がせ、パジャマに着替えさせている。しかし、テントは何ら損傷を受けたようには見えない(1枚目の写真、増感)。因みに、テントの側面に印刷された文字は、「喜馬拉雅」。中国語で、ヒマラヤを意味する言葉。朝になり、メリーが地面に落ちた教科書を集め、埃を払いながらベンのバックパックに入れている(2枚目の写真)。それが終わると、今度は、地面に散らばった服を集めて回る。こうしたシーンを見ると、何らかの手が加えられたことは確か〔悪漢が、テントの中に金目の物でもないか探し、その際、中身を全部外に放り出したのだろうか? だから、テントは無事だったとか?〕。すると、テントが開き、中からベンが出て来て、すぐに足に靴を履く(3枚目の写真)。

テントから出て来たベンに、意を決したメリーが優しく話し始める。「ベン、話があるの。今度のことはそう簡単にはいかないけど、きっと一緒に乗り越えられる。今から、あなたを事務所の女性の所まで連れて行かないといけないの」。ベンは 「やだよ!」と反対する。「こんな緊急事態になったら、里親に預けるしかないの。ほんの短い間だけよ」。「そんなことしないで、お願いママ」。「アパートが見つかり次第、あなたを迎えに行くから。ママは、あなたが危険な目に遭うのは耐えられないの」〔森が危険だと、改めて気付かされた〕。「お願い、ママ、ぼくイヤだ。ママと一緒にいたい」。「私も、あなたと一緒にいたいのよ。でもこうするしかないの」(1枚目の写真)。「お願い、やめて! ぼくたち、いつも一緒だって約束したよね!」。「そうだけど… でも、ほんのちょっとしたら、また会えるわ」。「ママなんか大嫌いだ!」。そう言うと、メリーに抱かれて体を引き離す(2枚目の写真)。ここで、ケルンの児童福祉事務所に向かう電車に乗った2人の映像に変わる(3枚目の写真)。表情からは、2人の間に溝ができてしまったように見える。

ギャスターの部屋で。ギャスターはメリーに、「里親になるのは とても素敵な人たちですよ。ベンは適切に世話をしてもらえるでしょう」と話す。そして、ベンの目線と同じ目線になるようにしゃがみ込むと、ベンに向かって、「ベン、一緒に来てくれる?」と声をかける(1枚目の写真)。ベンは何も言わず、肩をすくめる。ギャスターは、メリーに、「バックパック以外に、他に何かありますか?」と訊く。メリーは、黄色い袋をギャスターに渡す。ギャスターは、もう一度ベンに、「ベン、あなたの携帯電話。ママに渡して」と告げる。ベン:「どうして?」。ギャスターは、理由は言わず、ただ、「2週間後に返してもらえるわ」とだけ言う。ベンは、仕方なく、携帯をメリーに渡す。場面は、事務所の裏にある駐車場に変わり、ギャスターが、ベンを里親の所まで連れて行く赤い車の後部座席のドアを開ける。ベンは素直に中に座り、メリーは、(恐らくギャスターが中を検閲した)黄色い袋をベンの横に置く。そして、ベンを抱き締めると、「ほんの少しの間だけよ、ベン。今、アパート探しを手伝ってもらってるから。見つかったら、またママと暮らせるわ」と話す。ベン:「ずっと、一緒だね」。「もちろん、そうよ」。ギャスターが、運転席からベンに、「ママとは、すぐに再会できますよ」と言う。その言葉で、メリーはベンを放して、じっと顔を見つめる(2枚目の写真)。そして、ベンにシートベルトをつけながら、「よかったわね。またすぐね」と言うとドアを閉める。車がいなくなると、メリーは、あまりの悲しさに 泣き崩れる(3枚目の写真)。

最初に、客室乗務員の仕事をこなしているメリーの短いシーンが入る(1枚目の写真)。その後、夜の空港ターミナルの外でメリーがぼんやりと待っていると、タクシーが停まってラウンシュタインが降りて来て、「車を持ってないから」と弁解する。2人はその場で抱き合った後、一緒にタクシーに乗り(2枚目の写真)、ラウンシュタインのアパートに向かう。ラウンシュタインは、ソファをメリーのベッド代わりにし、2人でそこに座ると、またキスを始める。メリーが 「私と一緒に寝てもらえる?」と訊くと、ラウンシュタインは、後ろからメリーを抱いてソファに横になる(3枚目の写真)。

その先何があったのか、あるいは何もなかったのか、一切分からない。しかし、メリーがアパートに入った時は夜だったが、次のシーンは昼間。なぜか、メリーは森のテントに向かう(1枚目の写真)。そして、まだ明るいのに、テントの中で下着だけで横になる(2枚目の写真)〔監督は、一体何が言いたいのだろう? メリーが夜過ごせる場所は、ラウンシュタインのアパートと 森の中のテントの2ヶ所しかないとでも言いたいのだろうか?〕

お金に困ったメリーは、追加でローンを頼もうと、銀行に行って相談する。すると、「シュナイダーさん、あなたはSCHUFA(信用情報機関)にネガティブな記録〔支払い遅延〕があります。ですから、残念ですが、追加の融資はできません」と断られてしまう(1枚目の写真)。困ったメリーは、せめてできる唯一のこととして、携帯電話を充電させてもらう。同じ日か、別の日か分からないが、客室乗務員の仕事を終えて、空港ターミナルの外でメリーがタバコを吸っていると、携帯に電話がかかってくる(2枚目の写真、矢印)。それは、ラウンシュタインからの緊急電話だったので、言われた通り、すぐに学校に向かう。校舎の外で待っていたラウンシュタインは、メリーに、「今朝、ベンはいつも通り学校に来た。それからトイレに行きたいって教室を出てったまま、戻って来なかったんだ」と、状況を説明する。そこに、ギャスターと警官2名がやって来る。主導権を取ったのは、女性警官。「今日は、シュナイダーさんですか?」と言って、握手の手を差し出し、メリーが、「そうです、今日は」と言うと、握手して、「私はシュトラッサー、同僚のコルブです」と紹介し、「ベンから、連絡はありましたか? ベンが会いに行ったかもしれない人は 他にいませんか?」と質問する。メリーは、「私は、ベンが今どこに住んでいるかも知らないんです。そして、彼の携帯は取り上げられました」と話す。ギャスターは、「私は里親と少し前に電話で話しました。何も知らないそうです」と報告する(3枚目の写真)。女性警官は、ギャスターに、「シュナイダーさんは接触禁止令を守りましたか?」と訊くが、答えるべきでないメリーが 「はい、もちろん!」と発言する。それをサポートするように、ラウンシュタインが、「ええ、学校にみえたことはありません。そしてベンは、一度も校庭から出ませんでした」と発言する。それを聞いた女性警官は、メリーに、「その少年は、遅かれ早かれあなたに連絡してくると思います。その際には、すぐに知らせて下さい」と言う。メリー:「はい」。女性警官:「連絡が早く入るといいですね」。「ありがとうございます」。メリーは、ギャスターと何一つ話さず、そのままさっさと別れる〔普通の母親なら、自分の子が行方不明になったら、もっと心配して、警官やギャスターと相談すると思うのだが。こんなに早く別れれば、普通の警官ならその異常さに気付き、“彼女は子供の行き先を知っているから、何の心配もしていない。きっと、これから子供の所に行こうとするだろう” と想定し、後をつけるくらいのことはするであろう〕

メリーは、自分の姿が見えない所までくると、全速で走り始める(1枚目の写真)。そして、向かった先は森(2枚目の写真)。ベンは、ちゃんとテントの所にいた。2人は抱き合って喜ぶ(3枚目の写真)。映画は、ここで終わる。森で暮らすという意味では、元に戻った “どうどう巡り” にも見えるが、実際は、はるかに危険な状況にある。ベンを永久に外に出さない限り、例えば、ベンが学校に行けば警察に通報され、詳しく尋問され、結局、森に言ったことを告白せざるを得なくなる。そうすれば、メリーの母親としての適格的が問われ、親権を失うかもしれない。そうすれば、正社員にはなれず、子供も奪われ、地獄のような人生が待っている。試用期間の権利を捨て、どこか遠くに逃げようとしても、IDがあるため隠れることはできないし、旅費もない。八方塞りになることは目に見えている。監督は、なぜもっと幸せな結末を与えるのを嫌ったのだろう? そもそも、この結末で、メリーがどうなるか、真剣に考えたことがあるのだろうか?


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