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Convicts 旅立ちの季節

アメリカ映画 (1991)

原題が 『囚人たち』のこの映画は、独立した作品にはなっているが、実は、映画の脚本を書いたアメリカの著名な劇作家ホートン・フート(Horton Foote、1916-2009年)が1974年から書き始めた “彼の父の生涯” を描いた「ホレス・ロブドーの物語」の中の1つ。この「ホレス・ロブドーの物語」は、ホートン・フートの死後、『The Orphans’ Home Cycle(孤児の家の史詩)』という題名で、舞台劇として再構成され、ブロードウェーで好評を博した。劇は「The Story of a Childhood(子供時代の物語)」、「The Story of a Marriage(結婚の物語)」、「The Story of a Family(家族の物語)」の3つのパートに分かれ、「子供時代の物語」は、第一幕が「Roots in a Parched Ground(乾いた地の根)」(物語りの舞台は1902年)、第二幕が、この映画の「Convicts(囚人たち)(1904年)、第三幕の「Lily Dale(リリー・デール)」(1910年)の3つに分かれている。ついでながら、「結婚の物語」は、第一幕:「The Widow Claire(未亡人クレア)」(1912年)、第二幕:「Courtship(求愛)」(1916年)、第三幕:「Valentine's Day(バレンタインデー)」(1917年)。「家族の物語」は、第一幕:「1918(1918 年)」(1918年)、第二幕:「Cousins(いとこたち)」、第三幕:「The Death of Papa(パパの死)」(1928年)。このうち、この映画の前段にあたる「乾いた地の根」では、ホレスの父は結婚生活が破綻した後に大酒飲みとなり、恐らくアルコール依存症による肝不全のため、死の床に横たわっている(の写真は、舞台劇での場面)。元々、この父の一家は、ガルベストン出身で、学歴が高く、学者肌で、都会的な一家だが、小さな町で生きていくという厳しい現実には向いていない。多感な12歳の少年ホレスは、父のような弁護士になりたいと思っていたが、家族に背を向け、商売を学びたいと思うようになる。そして、「囚人たち」で、14歳のホレスは、店の経営を手伝うつもりで、短気でアルコール依存症で銃乱射癖のある精神不安定な元南軍兵士の農園主の元で仕事に就くが、囚人労働者の過酷な扱いを目の当たりし、二度目のアルコール中毒死に直面する。ホレスの父が静かに息を引き取ったのに対し、この狂った農園主は激しい幻覚に見舞われ、生来の意地悪さと合わさって予測不可能でグロテスクな恐怖をホレスに与える。映画は、舞台より18年も前に上映されたもので、必ずしも両者は一致していないが(時代設定は、1902年と2年早く、ホレスも13歳と1歳若い)、ホレスが狂気の農園主ソルに翻弄されるところは同じ〔舞台を見た訳ではないので、正確なことは述べられない〕

この映画について、1989年12月3日に書かれたニューヨーク・タイムズ紙の映画評『南部の記憶が「囚人たち」の製作者に影を落とす』の中で、上記のホートン・フートの談話〔『』内〕が引用されている。「監獄農場で働く囚人たちの厳しいイメージが、フート氏につきまとっている:『私が子供の頃、プランテーションには囚人たちがいて、彼らが畑で働いているのを見るのはぞっとする光景だった。ヒューストンに行った時、大きな監獄農場にあった砂糖畑を通り過ぎると、そこに彼らがいたんだ』。フート氏が『囚人たち』を書いた時、その光景を物語に取り入れた。物語の一部は彼の父親の体験に基づいているが、フート氏はテキサスの環境をより豊かにするために、自身の体験も融合させている。『父がプランテーションの店に働きに行ったことは知っていた。彼は唯一の白人の子供で、黒人の夫婦と一緒の部屋で寝ていた。そしてあるクリスマスの日、彼の家族が町に呼んでも、彼は帰ろうとしなかった。彼は黒人が大好きだったから。でも、そこは監獄農場ではなかった。私の創作だ』。囚人たちはフート氏の想像力による合成だが、映画の中でのホレスの発言『お父さんのお墓に墓石が欲しい』は、フート氏の家族の歴史を痛切に反映している。フート氏は 『私の父は、彼の父親の死と深く関わっており、墓石というテーマは、私にとって非常に魅力的な暗喩なんだ』と語る。『他の人たちは、9つの物語をすべて見るまで、それを理解できるかどうかは分からない。それでも、『1918年』までは、父親の墓のために墓石を買う必要があるという話が常に出てくる。それは本当の話だった。父が、結婚して最初にお金を手にしたのは第一次世界大戦中だった。父は、“彼の息子により建立” と書かれた墓石を買った。墓地に墓石がないことが、不安だったんだと思う。それは私にとって、父が、彼の父親に対して深い愛情を持っていたに違いないことの象徴だった』」。

ホレス役は、ルーカス・ハ-ス(Lukas Haas)。1976年4月16日生まれ。1990年の撮影とすれば、映画の設定と同じ13歳。ルーカスの出演作の紹介は、2015年の『ライアン・ホワイト・ストーリー』に続いて8年4ヶ月ぶり。

あらすじ

映画の原題は、解説に書いたように 『囚人たち』 だが、映画の冒頭は、そのうちの1人が夜に逃げ出し、それを松明と犬を持った3人が追う場面から始まる。“囚人” と言っても刑務所に収容されているわけではなく、1902年のテキサス州のほとんど誰も住んでいないような僻地での話なので、木造の粗末な小屋に詰め込まれ、毎日高齢の地主のソルの畑で働かされている黒人男性の1人が逃げ出しただけ。追う人数も、農作業の監督と守衛2人の3人だけ。そのくらい辺ぴな場所だ。追う側が犬にかける声で、この映画の2人の主人公の1人、13歳のホレスが目を覚ます(1枚目の写真)。彼は、黒人の老夫婦と一緒に寝ている。1863年の奴隷解放宣言からほぼ40年経過しているが、南部では黒人に対するさまざまな差別が続いていた〔この映画の時代設定の52年後になって、ようやく「教育上の隔離」(白人と黒人の別々の学校)が違憲だという判決が下されたが、その52年後ですら、待合室、トイレ、公園、バスの座席など至る場所に、白人専用、黒人専用の表示が掲げられていた。従って、その52年前に、白人であるホレスと、黒人であるベンとマーサの夫妻が、一緒に寝ている光景は異常に見えてしまう〕。ホレスは、「マーサ、起きてる? 猟犬の鳴き声がするよ」と声をかける。その声で目を覚ましたマーサは、「逃げようとしてる囚人を追いかけてるの」と言う。その頃、囚人は、沼地の中を必死で逃げていた(3枚目の写真、矢印)。その時、銃声が聞こえたので、ホレスは、「ベン、彼ら撃ってるよ。殺しちゃったと思う?」と訊く。「分からんな。もう静かになった。寝なさい」。
  
  
  

朝になり、ソルの弟の娘のアサ〔Miss Asa なので未婚〕が、正体不明のビリー〔Mr.Billy と呼ばれる以外、何も情報がない〕と一緒に、小型の一頭立ての馬車で父の館に向かっている。アサは、馬車に乗っている間、ウイスキーをチビチビ飲んでいる。館が近づくと、囚人用の穴に、布で包んだ死体が入れられているが、それが昨夜逃げ出した囚人かどうかは分からない。ビリーは 「そのウイスキー飲ませろよ」と言い、アサは 「終わったら、すぐ」と言い、一口飲むとポータブルフラゴンを 手綱を握っているビリーに渡す。アサは、父の館に行く前に、伯父ソルの館への道に馬車を乗り入れながら、 「すぐにソル伯父の葬儀があるから、またここに来ることになるわ。あの老いぼれが、あと何回もクリスマスを過ごせるとは思えないもの」とひどいことを言う〔この日は、クリスマス・イブ〕。ビリーは、「君は これまで5回のクリスマスの度に そう言ってきたぞ」と言う。馬車が、古ぼけた館の階段の前に停まると、ソルが中にいるかどうか調べにビリーが入って行く。中には誰もいなかったので、外に出て来て 「誰もいないよ」とアサに言う(1枚目の写真、矢印はビリーとアサ)。それを、近くの木の陰から見ていたソルは、「クリスマスが台無しだ」と一人ごちると、2人に構わずどこかに行く。ビリーは、馬車を “ベンとマーサがやっている店” の前で停めると、古びたドアから入って行く。そして、マーサに、「ホレスはどこだ?」と訊く。「釣りに行きました」。「ソルさんはどこだ?」。「どこかその辺にいます。保安官を呼びましたから。囚人の一人が別の囚人を殺して逃げたんです」(3枚目の写真)〔先ほど埋めていたのは、昨夜殺された囚人〕。それを聞いたビリーは、「ホレスの家の者たちは、彼をこんなひどい場所に寄こすなんて、何を考えてるんだ」と言う。ホレスを探しに行ったマーサが戻ってくると、店の中ではアサとビリーがウイスキーを飲んでいる。
  
  
  

ホレスが釣りから戻って来ると、アサとビリーはもう店にはおらず、マーサは 「ビリーさんが、クリスマスにハリソン〔テキサス州の北東にある郡の名前〕に戻って欲しいって言ってたわ」と話す。それを聞いたホレスは。「ソルさんが戻るまで僕はどこにも行かないよ。彼、昨日僕に行ったんだ、今日支払うって」。「でも、一昨日にも、昨日支払うって言ったんでしょ? あたしなら、今日支払ってくれるのを待つなんて無駄はしないわ」(1枚目の写真)。「お金をもらうまでは出て行けないよ。父さんの墓にはまだ墓石がないから、頭金を払って買いたいんだ。墓石がないなんて耐えられないよ」(2枚目の写真)。「クリスマスに帰らなかったら、お母さん怒られるんじゃない?」。「僕が何しようと気にしないよ」。ホレスが朝食を終えて店の外に出ると、ベンが 「ホレス!」と呼ぶ(3枚目の写真)〔店の外観がよく分かる唯一の写真〕
  
  
  

ベンは、昨夜、“囚人Bを殺して逃げ出して捕らえられた” 囚人Aを猟銃で狙う役をホレスに頼む(1枚目の写真)〔囚人は鎖で木に繋がれているので襲われる恐れはない〕。ベンとの会話の中で、「ここには牧師はおらん。ソルさんと、監督と守衛たち、それに あんたと俺と囚人以外誰も」「俺は、ここで生まれた。ちょうど奴隷時代が終わった頃かな。ママとパパはここに埋められてる。2人は、奴隷でなくなった後も賃金のためにそのまま働き続けた。多くの年寄りがそうだった。その連中が死んでいくと、ソルさんは囚人たちを連れてきて働かせた」と、ホレスに 状況を説明する。ベンがいなくなると、興味津々のホレスは囚人に 「噛み煙草 欲しい?」と誘うように訊く。囚人が頷いたので、ホレスは近くまで寄って行き、箱ごと投げる。それで打ち解けたのか、ホレスが名乗ると、囚人も自分の名前を言う(2枚目の写真)。ここから囚人の話が始まる。①ルイジアナ州南部の出身、②男と喧嘩になりナイフで怪我をさせた。③罰金を払うために、ソルの農園で働くことにした。④罰金は500ドル。月に7ドルもらえ州に支払われる。⑤学校に行ったことがないので計算ができない〔ホレスが、500÷(7×12)≒5.95 なので約6年かかると教える〕(3枚目の写真)。⑥昨夜、囚人を1人殺してしまったから、もっと長くなる。
  
  
  

そこに、ソルと保安官とベンがやって来る。保安官はベンに、①木に繋がれた囚人は、昨夜何人殺したか?〔⇒1人〕、②殺したのは有色人種か白人か?〔⇒黒人〕の2点を確認する。そして、鎖の鍵を受け取ると、囚人を連れて行く。ソルにようやく会えたホレスは、ウイスキーを飲んでいるソルに、「あなたは昨日、給料は今日払うって言いましたよね?」と質問する。アルコール依存症で、恐らく、重度の認知症でもあるソルは、「わしが君を雇っただと?」と、突拍子もないことを言い出す。マーサは、「ご承知だと思いますが、ソルさん、この子はあなたのために働いています」と助け船を出す。ソルは、勝手な口出しに対し 「お前に訊いたか?」と文句を言い、マーサが 「いいえ」と答えると、「なら、黙っとれ」と、黒人を見下して命じる。マーサは 「撃てば」と言う。「なぜ、そんなことを言う?」。「もう、うんざりしたから。この可哀想な子は、父さんのお墓の墓石を手に入れようと、ここで6ヶ月働いてるのに、あなたはお金を払おうとしない」(1枚目の写真)。それを聞いたソルは、「しばらくしたら家に行く。そしたら金は払う」と言って去って行く。ホレスがマーサに 「払うと思う?」と訊くと、「あたしだったら、無駄な期待はしない」と答える。一方、保安官は、連れ去った囚人を殴り倒し、立ち上がったところを背中から撃って殺す(2枚目の写真、矢印)。その音を聞いて走って戻って来たソルは、ホレスに墓を掘りに行くから死体を見張っているよう指示するが、ホレスは死体と一緒にいるのが嫌なので断る。どうせお金なんか払わないソルがホレスに強制すると、マーサが代理で死体の所に行く。しかし、本当に死んだか確認したいソルは、結局、自分で見に行く。マーサがホレスと一緒にいると、そこに、自由囚人〔囚人の中から1人だけ選ばれる自由行動のできる男〕のジャクスンがソルを探しにやって来る。ホレスは、「ジャクスン、彼はあんたの言うことなら聞く。僕にお金を渡せって言ってよ」と頼むが、「あの人は、俺の話なんか聞かないよ」と陽気に答える(3枚目の写真)。
  
  
  

その直後、囚人達が狭い小屋から出されて、その日の農作業に連れていかれるシーンがある(1枚目の写真)。場面は変わり、囚人の埋葬を終えたベンが戻ってくる。埋められた場所は、ソルの一族とはもちろん離れ、ベンの両親や姉とも離れて場所に、墓碑なく並んで埋められている。そこに、泥酔したビリーがやって来て、穀物小屋の前で意識を失って倒れる。小屋から出てきたソルは、ホレスの顔は分からなかったのに、ビリーの顔だとすぐ分かる(2枚目の写真、矢印はビリー)。そのあと、自由囚人のジャクスンが、囚人のうちの1人が病気なので作業に出られないと報告すると、ソルはホレスに、「監督に、その囚人も他の奴らと同じように畑で働かせろと言ってくれ」と命じるが、優しいマーサは 「あたしは、この子に、囚人たちの所には行くなと言いました」と反対し。ソルが自分で行けばいいと言う。ソルは、「わしが病気の囚人を怖がると思うか?」と言うと(3枚目の写真)、自分で言いに行く。
  
  
  

ホレスはマーサと2人きりになると、「離婚してなくて、最初の妻が亡くなって再婚した場合はどうなるの? 天国に行ったら、どっちの女性が奥さんになるの?」と変なことを聞く。変な質問の理由をマーサが訊くと、「パパが死んで、ママは他の男と結婚しちゃったんだ。昨夜、天国で彼女の夫になるのはどっちなんだろうと、考えちゃってて」と理由を明かす(1枚目の写真)〔これで、以前の「父さんのお墓の墓石を手に入れようと」「僕が何しようと気にしないよ」の意味がはっきりする〕。一方、病気の囚人は、監督が問答無用で農場まで連れて行く。ホレスとベンが小屋の前のサイコロで遊んでいると、すぐ近くでクルミを集めているソルが、「あの子が、わしに金を支払えと言っとる。ベン。お前が払え」と言う(1枚目の写真)。ベンもお金など持っていないので、「どうやって払うんで? 金などありません」と答える。「店で、現金受け取るだろ」。「10月以降、みんなを信用買いをしているの知っとるでしょ?」。ベンは、ここにいるのは誰だと訊かれ、「あなたと俺とこの子とマーサと監督と看守と囚人たち」と答える(3枚目の写真)。
  
  
  

お金の話が出たので、ソルは、倉庫の前にいるベンとマーサに、「メリー・クリスマス」と言って1枚お札を渡す。しかし、それは40年も前に使用できなくなった南部連合のお札。受け取ったベンは、「これじゃ何も買えない」と言うが、ソルは、「持ってろよ。今後どうなるか分からん」と無茶なことを平気で言う。そして、穀物袋の上で本を読んでいたホレスに、「君は一体誰だ?」と訊く(1枚目の写真、矢印はお札)。「ホレス・ロブドーです」〔丁寧な返事の場合、“Sir” を付けている〕。「何歳だ?」。「13歳です」。「誰の子なんだ?」。ベンは、「ご存じでしょ、ソルさん。彼のお父さんは亡くなった」と言うが、ソルは、「彼に答えさせろ」と言う。「父さん、亡くなったのか?」。「はい」。「何て名前だ?」。「ポール・ホレス・ロブドーです」。「わしは、そいつを知っとるぞ。殺しても飽き足らん。わしの弟の弁護士だった。弟がわしをだますのを手伝った奴だ。何でここにいる?」。ベン:「彼〔ホレス〕の伯父は、アルバート・ソーントンです。彼は店を手伝ってくれてる。ご存知でしょ? この店はとても暇で、客も少ないから、この子で十分なんです」。「ポール・ホレス・ロブドーの子供になんか、いて欲しくない。わしの弟のところに連れていけ」。「あなたの弟さんはニューオーリンズですよ」。ソルが去ると、ベンは、ソルは酔っ払っているからあんなことを言うんだと、ホレスに説明する。その酔っ払ったソルが、自分の家に戻ると、ビリーとアサが2人とも泥酔して昼間から眠っている(2枚目の写真)。それを見ると、ソルは猟銃を持って すぐに家を出て行く。ここで、場面は、囚人が働いている農園に変わる(3枚目の写真)。
  
  
  

猟銃を持ったソルは、ベランダで店番をしているホレスの前まで来ると、さっき会ったばかりなのに、「君は一体誰だ?」と訊く。「ホレスです」。「ああ、そうだったな。君のお父さんの名前は?」。「ポール・ホレス・ロブドー」(1枚目の写真)。ソルは指をパチンと鳴らす。「わしは、彼を知っとる。死んだんだ」。「はい」。「わしには弟がおる。会ったことは?」。「いいえ」。「彼とはうまくいかんかった。意地悪なくそ野郎だ」。ソルが、バルコニーのベンチに座ると、ホレスは、「ちょうど、あなたを探しにお宅まで伺うところでした。もう少ししたら、給料を払うって言ったでしょ」と言う。「何のために?」。「あなたのために働いているからです」。「わしのために働いてるだと?」。「はい、ここはあなたの店です」。「何歳だ?」。「13」。「それなら、ここで働かせてもらったお礼を払うべきじゃないか。店の運営方法を学んだだろ」。「でも、あなたは約束しました」。「しとらんぞ」。「しました。週50セント払うって。僕はここに6ヶ月いるけど、あなたは何も払ってくれません」(2枚目の写真)「12ドル50セントの未払いです。あなたはクリスマス・イブに払うと言いました。今日です」。「わしは酔っ払っとるからな」(3枚目の写真)「今、思い出した。お父さんの墓石を買うお金を稼ぐためだったな?」。「はい」。
  
  
  

ソルは、急に気を変え、ホレスに店から紙と鉛筆を持って来させる。そして、遺言らしきものを書かせようとするが、すぐに中断し、弟と2人の醜い娘を除き、誰もいなくなったと言うと、「兄弟はいるか?」と訊く。ホレスが 「妹がいます」と答えると、「ひざまずいて、兄弟がいないことを神に感謝するんだな。そいつらは、君の何もかも盗むから」と言い、ホレスが素直に 「神様ありがとう」と言うと、「君はいい子だ」と褒め(1枚目の写真)、狩りに連れて行く。そして、何もいない所に行くと、熊がいると言い出し、猟銃を撃ち(2枚目の写真)、当たったかどうか見に行かせる〔当然、何もない〕。次は、農園との境界を一緒に歩きながら、以前チラと名前の出てきたサラについて、如何にも生きているように話すので、ホレスは、「ここには、あなた、僕、ベンとマーサ、囚人たち、看守、監督、ジャクスン以外、誰もいません」と、以前のベンの言葉をもう少し正確にくり返す(3枚目の写真)。
  
  
  

ソルは、「君のお父さんのお墓には、どんな墓石を考えとるんだ?」と尋ね、ホレ-スは、「ほんの小さなもの」と答える。「一体なんで小さなものでいいんだ? わしが親父の墓に建てたものを見たか? これまで作られた最大の墓石だ。あちこちに天使も立てた」と言うと、何もない土地を指して、「見てみろ、8つの墓石が見えるだろ?」と言う(1枚目の写真)。「墓石なんかありません」。「くそ、誰かが盗みおったんだ。親爺の墓石もだぞ!」。「いいえ、そこは囚人の墓です。あなたの墓地じゃありません」。「じゃあ、わしの墓地はどこなんだ?」。「向こうの方です」。そして、ソルは、墓地に向かう途中で木の幹の脇に立つと、また無意味な射撃をする(2枚目の写真)。「何を撃ったんですか?」。「囚人どもだ。全員殺してやる」。そして、今度は、囚人の撃ち方の練習だと言って、ホレスに猟銃を渡して撃たせる。次の場面では、地面に横になったソルを見て、ベンが 「何を撃ってるんです?」と言って寄ってくる。ホレスは、「最初は熊、それから囚人だと言ったけど、何もいなかった。地面に横たわらないよう言ったけど、聞かないんだ」と説明する。ベンが、「ソルさん」と声をかけると(3枚目の写真)、ソルは 「囚人どもが墓石を持ち去りやがった。次は、わしを殺しに来る」と意味不明のことを言い、ベンはジャクスンを呼びに行く。一方、農作業をしていた病気の囚人は、地面に倒れてしまっても、無理矢理立たされて、フラフラしながら無理矢理働かされる。
  
  
  

ジャクスンを連れて来たベンは、2人でソルを家まで連れて行こうとするが、ソルは、狩りに行くと主張する。それでも、2人が家に連れて行こうと立ち上がらせようとすると、ソルは暴れ、「邪魔すると殺すぞ。立ち去れ!」と怒鳴ったので、ホレスは2人と一緒に離れて行く。すると、ソルが、「白人の子には残って欲しい。ここで信頼できるのは彼だけだ」と声をかけたので、ベンは嫌がるホレスを宥めてソルの所に戻らせる。ホレスが前まで行くと、寝転がったままのソルは、「もう一度 名前を」と訊き直し、ホレスの涙を見て、「何で泣いとる?」と訊く。「怖いからです」(1枚目の写真)。「何が怖いんだ?」。「分りません」。ソルは 「夜、囚人が逃げ出すのが怖いのか?」と言いながら、ホレスに助けてもらって立ち上がると、「君を、殺しにくるからか?」と訊き、ホレスは 「分りません」と酔っ払いの妄言には、無難な返事で押し通す。「じゃあ何が怖いんだ?」。「いろんなことです」。ソルは 「こっちに来い。いい子だ」と、ホレスの肩を抱く(2枚目の写真)。そして、一緒に歩きながら、「アルバート〔ホレスの伯父〕は言っとった、君がここに来たのは、お父さんのお墓に墓石を買うためだと」と言う。「はい」。「なら、わしが買ってやる。テキサスで一番大きな墓石だぞ。天使と2人の南軍の勇士も付けてやる」(3枚目の写真)〔ソルはただの大ぼら吹き〕
  
  
  

ここからが映画の後半、スタートはクリスマス・イブの夜。そして、そのまま残り5分を除き、その夜のソルの行動と言葉がメインとなる。ホレスは、ベンの家での夕食もそこそこに(1枚目の写真)、ランプを持って家の外に出される。外で待っていたのはジャクスンで、ホレスはソルの館まで連れていかれる。その理由について、ジャクスンは、「ソルさんは、目を覚ますたびに、あんたに来て欲しいって言うんだ。死ぬ時には、白人と一緒にいたいんだとさ」と説明する(2枚目の写真)。「アサさんとビリーさんは?」。「2人は、彼女の父さんの館に行った」。「ソルさん死ぬの?」。「彼はそう言ってるけど、俺は信じねぇ」。「一緒にいてよ、ジャクスン。彼が死ぬ時、一人でいたくない」。「彼は死なねぇ。そう言ってるだけさ。死ぬには、意地悪すぎる」。一方、囚人の墓地では、病気で働かされた囚人が死に、ベンが穴を掘って埋めている。館で目を覚ましたソルは、「ジャクスン!」と呼ぶ。ジャクスンは部屋に笑顔で入って来ると、「あの白人の子が来てますよ」と告げる。「わしの見える所に来るよう言ってくれ」。ジャクスンは、ドアの向こうを見て手で呼ぶと、ホレスが入って来て帽子を取って両手で持つ〔行儀がいい〕。ソルはホレスに、「わしが死にかけとると聞いたか?」と訊く。「はい」。ソルは、自分が3人兄弟の1人で、メルビンは弟タイヤによって毒殺されたと話す。それが終わると、ホレスを自分の前に座らせ、「わしは死にかけとる。あいつら、ちゃんと話したか?」と再び訊く(3枚目の写真)。「はい」。「老人が死ぬのを見てたことあるか?」。「いいえ」。「わしが死んだら、奴らがわしを棺に入れるまで、わしを一人にせんと約束してくれ。ここには、いろんな害獣がいて、遺体を引き裂くからな。そんなことさせないでくれ」。「させません」。「わしが眠っちまっても、離れないでくれ。いいな」。「離れません」。そして、ジャクスンには、夜明け前までに、生死にかかわらず、囚人たちに棺を作らせ、完成したら、ベッドの脇に置くよう命じる。その後で、ジャクスンが囚人になった理由を訊く〔理由は、弟を殺した男を殺したから。ジャクスンが男を殺した当時19歳、この農園で囚人として働き始めた時は32歳、自由囚人になったのは40歳、今は55歳〕。そして、夜明け前ではなく、今すぐ棺を作るよう命令を変え、再び、ジャクスンの殺人についてもっと詳しく尋ねる〔ホレスが館に来てから、ここまで8分弱。実に長くて単調なシーン〕
  
  
  

それが終わると、「わしが、押入れに隠れていた囚人を撃った時、お前ここにいたか?」とジャクスンに訊く。そして、その囚人について1分以上の会話が続いた後、ソルは、急に、「あそこの押入れの中で音がしなかったか?」とジャクスンに問う〔単なる妄想〕。「いいえ」。「聞こえた」。そして、拳銃を手に持つと、押入れのドアに向かって、「そこから出て来い、この汚いクソ野郎」などと怒鳴ると、ホレスの目の前で銃を3発撃つ(1枚目の写真)。そして、ジャクスンに、「何が死んどるか見に行け」と命じる(2枚目の写真、矢印は銃痕)。ジャクスンは、ドアを開けて 「何も見えません」と言うが、ソルは中に入ってしっかり探すよう命じ、ジャクスンはあきらめて押入れの中のイスに座り込む(3枚目の写真、矢印は分かりにくいがジャクスンの頭)。
  
  
  

それからしばらくして、ソルは ホレスに 「どこから来た?」と訊く。「ハリソンから」。「ここで何しとる?」。「働いてます。あなたの店で」(1枚目の写真)。「君は、白人だろ?」。「はい」。ソルは、鏡に映った自分の顔を見て、「あの老人は誰だ?」と訊く。あまりに変な質問だったので、ホレスは笑顔で 「あなたです」と答える(2枚目の写真)。「ここと、ハリソンの間で、白人はわしら2人と、監督と守衛2人だけ、残りは囚人どもだ」。「ベンとマーサは、囚人じゃないよ」。「そいつら、どこにいる?」。「店に」。「わしが墓石を約束したのは君か?」。「はい」。「忘れとらんぞ。それに、金も払っとらん」。「はい」。「ジャクスンが戻ったら、借りは返す。幾らだ?」。「12ドル50セント」。「12ドル50セント?」。「はい」。「老人に対する君の親切に、100ドル、ひょっとしたら1000ドル払ってやる」〔嘘〕(3枚目の写真、持っている紙に意味はない)。しばらく話が続いた後〔約1分〕、押入れから、ジャクスンが 「何もありやせんでした」と言って出てくると、こんな所に長居はしたくないので、すぐに棺作りに向かう。
  
  
  

すると、また、ソルが 「あの押入れから、何か聞こえなかったか?」とホレスに訊く。「いいえ」。「わしは、聞こえた」。そう言うと、ソルは床から靴を拾うと、「そこから出て来い、このクソ野郎! 聞こえてるぞ!」と怒鳴ると、靴をドアに投げつける。そして、「もう一度だけ、機会をやる」と言いながら、拳銃を再びドアに向け、少し待ってから、今度は4発撃つ(1枚目の写真、矢印)。ソルは、見に行くようホレスに言うが、ホレスは断る。「怖いのか?」。ホレスが頷くと、ソルは立ち上がって自分で見に行き、「中は血だらけだ」と言い〔妄想〕、すぐに押入れから出てくると、今度は、ジャクスンと囚人に暴力を振るわれた夢の話をする。そして、イスに戻ると、いきなり 「バターミルク」〔バターを攪拌する際に残る液体〕と言い、レードルですくって飲むと、レードルに残ったバターミルクを、「胸に毛が生えるぞ」と言ってホレスに飲ませる(2枚目の写真、矢印)。その時、ジャクスンが部屋に入ってくる。「どこにいた?」。「あなたの棺のことを話しに行きました」。「作り始めたか?」。「はい」。「檜で作っとるか?」。「知りません」。「終わったら、ここに持って来るか?」。「はい」。「どのくらいかかる?」。「1時間です」。ソルは押入れの中が血だらけだから掃除しろとジャクスンに命じ、血なんかないと言われて反撥した後、急に気を変え、ジャクスンをイスに座らせ、ホレスと2人に、自分の母親のことを話し始める。それが約2分続いた後で、急に 「その子の名は何だ?」とジャクスンに訊き、ジャクスンは 「ホレスです」と答える(3枚目の写真)。ソルは、ホレスを、また自分の横に座らせる。
  
  
  

ソルは、自分が子供の頃の話を始める。「わしが君くらいの年だった頃、この辺りは深い森だった。大人も子供もナタがないと通り抜けできないほど密生しておった。森以外に、ここには他にはない物があった。高さが10-12フィートもある広大なサトウキビの群生だ」(1枚目の写真)「それが、ここが ケーン〔サトウキビ〕ランドと呼ばれる理由だ。知っとったか?」。「いいえ」。ソルはジャクスンに、「お前はどうだ、ジャクスン?」と訊く。「知っとりました」。話はすぐに逸れ、ソルは、「何か歌を知っとるか、ジャクスン?」と訊く。ジャクスンが知っていたのは、「Oh,Them Golden Slippers」という、“純粋なニグロ・スピリチュアルではなく、1879年にジェームス・A・ブランドという黒人音楽家がスピリチュアルのスタイルで作ったポピュラーソング” のほんの一部の 「Oh, them golden slippers(ああ、黄金のスリッパよ)」の部分だけ。歌から話はさらに逸れ、「わしが死んでも、牧師を呼ぶな」とジャクスンに命じる。ジャクスンが、牧師でなかったら誰が祈るのかと訊くと、「誰にも祈って欲しくない」と言い、さらに、親戚も呼ぶなと言い、いて欲しいのは、「お前と、ベンとマーサ、ここにいる子、そしてサラ」と、既に死んだサラの名をまたあげる。「サラさんは、死にました。ホレス以外の白人には、来て欲しくないんですか?」。「そうだ」。そして、ソルは、棺の出来具合をジャクスンに見に行かせる。ここで、場面は屋外の作業場に移り、棺はほとんど完成している。この僅か20秒のシーンのあと、場面はソルとホレスに戻る。ソルは、「アルバート・ソーントンさんが ここに連れて来た少年を知っとるか?」とホレスに訊く。「はい。僕です」(2枚目の写真)。「そうだったか?」。「はい」。「お父さんを亡くしたのは君だったか。わしも親爺を亡くした。脳卒中だった。84歳だった」。そう言うと、銃を持ったまま、ベッドに横になる(3枚目の写真)。「君のお父さんは、何歳だった?」。「たったの32」。「まあ、誰だって いつかは逝かねばならん」。
  
  
  

そこに、ベンとジャクスンが棺を持って部屋に入って来る。ソルは、ベッドから起き上がって端に座ると、ベッドと平行に置くよう命じる。ジャクスンは、棺が檜で作られたことを話し、蓋を外す(1枚目の写真、矢印は棺)。ソルは、自分にぴったり合うか、中に入って試すと言い出し、壁に掛けてあった南軍のコートを羽織ると、棺の中に入り、ジャクスンに枕を頭の下に入れさせる。ソルが中に横たわると、ジャクスンは猟銃を体の横に入れる。ベンは、病気の囚人を埋葬したことをホレスに話している(2枚目の写真、矢印はソルの手)。ソルは、棺の中で眠ってしまう。囚人の埋葬と、棺作りで疲れてしまったベンは出て行き、ホレスが眠いと言い出したので、ジャクスンは、「ソルさん、この子はもう寝ていいですか?」と大きな声で尋ねるが返事はない(3枚目の写真)。ソルが死んだと思ったジャクスンは、大声でベンを呼び戻す。ベンは、「すぐにアサに知らせないと」と言うが、ジャクスンは先ほどソルから指示された “牧師なしの短い参列者リスト ” のことを話し、2人で棺に蓋をする。
  
  
  

ベンとジャクスンが葬儀について話していると、棺の中から音がする。そこで、ベンが蓋を外すと、ソルが目を覚ましていたので、それを見たホレスは笑顔になる(1枚目の写真)。ベンは、ソルの手を引っぱり、棺から起き上がらせる(2枚目の写真、矢印)。棺から出たソルは、ベンに 「わしを埋めるつもりだったか?」と訊き、「はい」という返事を聞くと、「わしは、死ぬつもりなんかない。この忌々しい棺をここから運び出せ」と2人に命じる。2人が棺を持って出て行くと、ソルは、ホレスに 「わしはすべての奴らより長生きするかもしれん。アサと悪魔みたいな弟、ベンとジャクスン、囚人どもより」と言う。そして、「君は幾つだ?」と訊く。「13」(3枚目の写真)。「君より長生きは無理だな」。
  
  
  

会話はさらに続く。「わしは一度も結婚せんかった。だから、子供がおらん。君は、お父さんがいるのか?」。「いいえ」。「何があったんだ?」。「亡くなりました」。「孤児なのか?」。「いいえ、ママがいます」。「どこに?」。「ヒューストンに」。「わしの子になってくれ」。そう言うと、「今すぐわしのそばに来るんだ。お金はある。押入れの奥のスーツケースに隠してあるんだ。今すぐ取ってきてくれ、そうすりゃ借りを返すことができる。老人に親切にしてくれたお礼に、多額の報酬もやるぞ」。中には2つのスーツケースがあった。「どっち?」。「小さい方だ」。ホレスは、スーツケースをソルの前の小テーブルに置く。「そこに幾ら入っとると思う?」。「分かりません」。「この前数えた時には1万ドル以上あった。君に半分やる」(1枚目の写真)。ホレスは、さっそくスーツケースを開けるが、中に入っていたのは、破れた本のページだけ。「お金なんか入ってません」(2枚目の写真、矢印はただの紙切れ)。「嘘をつくんじゃない」。「嘘なんか言ってません」。「そのスーツケースを渡すんだ」。中を調べたソルは、「何てこった。全部盗まれちまった。ベンを呼べ。ジャクスンを呼べ。監督を呼べ。囚人全員を調ばんといかん」と言う。しかし、ホレスが部屋から出て行こうとすると、「行くんじゃない。こっちに来てくれ! 離れるんじゃない。わしを一人にしないでくれ。金なんかどうだっていい。わしのそばにいるんだ」と頼む〔お金は、とっくに使ってしまって今は一文無し。それすら覚えてないのか、わざと嘘をついたのかは分からない〕。ソルは、盗まれたのではなく、囚人の墓に埋めたと言い出し、隣の部屋にいるベンを呼び、「わしが金を隠したのは、どの囚人の墓か覚えとるか?」と訊くが、ただの妄想なので、ベンは否定する。それを聞いたソルは、ウイスキーを飲んで威勢を付ける(3枚目の写真、矢印)〔どうしようもない、嘘つきの、老人ボケのアル中〕
  
  
  

ソルは、置いてあった古い新聞をホレスに取ってこさせ、「ニュースを読んでくれ」と頼む。「古い新聞だね。1865年のだ〔37年前〕。『テキサスは連邦に戻れない』って書いてある」。「なぜだ?」。「テキサスは南部連合に入ってたから」。「ああ、そうだった。もっと読んでくれ」。「『昨日、連邦軍のゴードン・グレンジャー将軍は南軍の副知事フレッチャー・ストックデールからテキサスを奪取した』」〔1865年6月19日〕〔テキサス州が正式に連邦に再加盟したのは1870年〕。「わしのそばに寄って」。ホレスが近寄ると、一種の遺言を口にする。「わしを、家族と一緒に埋葬させないように。わしは、弟や彼の娘と一緒にいたくない。あんな奴らよりは、囚人の近くの方がいい」(1枚目の写真)。それだけ言うと、ソルは続きを読ませる。ホレスは、その先の記事を読んでいて、ふとソルを見ると、様子がおかしいのに気付く(2枚目の写真、矢印は新聞)。ソルは、ホレスの袖をぎゅっと握りしめたまま、死んだように目を閉じている。心配になったホレスは、「ソルさん」と声をかけ、反応がないので腕をつかんで揺する。どうやら死んでしまったようなので、「ベン!」と叫ぶ(3枚目の写真、矢印はホレスの袖を握ったソルの手)。ベンは、ソルが死んだことを確認する。
  
  
  

翌朝、棺を持ったジャクスンとベン、ホレス、マーサの4人だけが埋葬に向かう(1枚目の写真)。そして、昨夜ソルがホレスに指示したような孤独な場所に掘られた穴の前で、ホレスとマーサが見ている前で、2人は棺を穴に降ろしていく(2枚目の写真)。そのあと、ベンが話す。「アサさんは、俺たちが彼〔ソル〕をどうしようが気にもかけん。ここに埋めようが、小川に投げ込もうが、どうだっていいんだ。だから、彼には、墓石もない」。ホレスが、「昨日の夕方、マーサと僕は、彼の家族の墓地に行ったんだ。ソルさんは、父親の墓石には天使があるって言ってたけど、どこにもなかった」と言うと、ベンは、「ソルさんの嘘だ。あそには、そんなものは何もない。彼の名前を書いた大理石の板が立ってるだけだ。それも、囚人たちが草むしりをしなかったら、1週間も経てば雑草で見えなくなる」と言う。さらに、「俺は、アサさんに、あんたがまだここにいて、ソルさんが死ぬまで一晩中一緒にいてくれたのに お金を払ってもらってないと話した。彼女は、それはあんたの不運だと言いやがった」(3枚目の写真)「彼女には、ソルさんの借金を払う気なんかない。あんたをどうやって町に戻すか尋ねたら、“歩いてけ” だとさ。彼女は店を閉め、囚人たちを親爺さんのとこに連れて行くつもりだから、俺たちみんな歩くしかない」。そして、映画の最後を飾る厳しい言葉。「半年後には、ここに誰が埋葬されたのかさえ分からなくなる。俺の家族のも、囚人たちのも、ソルさんのも。雑草や、木や、サトウキビが、すべてを奪ってしまう。一度は、"ケーンランド "と呼ばれていた土地が、ケーン〔サトウキビ〕の大地に戻る。家も店も墓もなくなって」。
  
  
  

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