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Eyewitness 小さな目撃者

イギリス映画 (1970)

コーネル・ウールリッチ(Cornell Woolrich)のペンネームで、1920年代に出版された短編小説を大幅に改訂した作品。これまで、映画化された作品は、『小さな目撃者』以外にも、『The Window()』(1949)、『The Boy Cried Murder』(1966)、『Cloak & Dagger(ビデオゲームを探せ!)』(1984)がある。これら4本の映画は、両親がいたり、旅行中でいなかったり、本作のように祖父しかいなかったりと様々だし、場所も、ニューヨーク、サンアントニオ〔人口100万人以上〕、旧ユーゴのリゾート、本作の孤島まで様々。似ているのは、主人公の子供が大の嘘つきで、殺人を目撃し、その話を誰も信用せず、殺人犯に追われるというメインストリーのみ。このくらいの筋なら、誰にでも思いつきそうなので、“原作を映画化した作品” という範疇に入れるべきかどうか疑問を感じないでもない。ここで、話題を変え、せっかくマルタ島という珍しい場所を舞台にしながら、映画では、“どこかの島” という設定で通しているため、マルタらしさが出ていない。私はマルタ島が好きなので、マルタについて少し紹介しておこう。あらすじでも少し触れたが、マルタの首都ヴァレッタは、16世紀のマルタ騎士団の騎士団長の宮殿のある場所として有名で、岬の先端には、映画には出て来ないが、当時の聖エルモ砦がそのまま残っている。下の1枚目の写真は聖エルモ砦から見たヴァレッタの旧市街の全景まえがきの「冒頭(第2節)に示したグーグル・マップの全景の反対側〕。しかし、マルタが有名なのは、それだけではない。マルタには、世界遺産になっている巨石神殿群が残っている。それらのうち、実際に行ってみて一番気に入ったのが、下の2枚目のムナイドラ〔Mnajdra〕神殿(BC2800年)。なぜ好きかといえば、①地中海文明で最古、②入口の四角い穴が、石材の組み合わせでなく、1枚の石を長方形に繰り抜いているその稀少さ、③バックに青い地中海がみえる立地の良さ、の3点が揃っているから。もう1つ、非常に特殊な遺跡を紹介しておこう。下の3枚目の写真。この奇妙なものは世界最古の道路遺跡で、アル・イル・クビル 〔Għar il-Kbir〕にあるクラパム・ジャンクションの軌条道〔Claphan Junction cart-ruts〕。道路は世界中でもっと昔から存在していたが、その痕跡がはっきりと残っている最古(BC1400~1200頃)の事例。なぜ、ロンドンの西にある有名な操車場の名前が付いているかといえば、この写真のような分岐点〔写真で黄色ピンクの矢印で分岐を表示〕が何ヶ所もあり、それが操車場の分岐レールを思わせるから。軌条道とは、岩を掘って作った荷車用の道のこと。こんな凸凹で荷車が通れるかと思うかもしれないが、使う時には溝に土を入れて平らにしていた。これを何に使ったかといえば、この上部に広がる畑に土を運ぶため。
  
  
  

マーク・レスター(Mark Lester、1958年7月11日生まれ)が一躍時の人になった『Oliver!(オリバー!)』(1968)と、その次の主演作『Run Wild, Run Free(野にかける白い馬のように)』(1969)に続いて主演を演じたのがこの映画。TV映画を無視すれば、代表作『Melody(小さな恋のメロディ)』(1971)の1つ前の作品。この4本が、マーク・レスターの子役としての絶頂期に当たる。本作で非常に不満な点は、あまりにも出番が少ないこと。エンドクレジットでは名前がトップに出て来るが、登場場面は少なく、しかも、背中からとか、遠くを走る場面ばかり。あらすじの中で指摘したように、助演者の無駄な会話に時間を割き過ぎており、主演子役の出番をもっと多くすべきだったと強く批判したくなる。

あらすじ

ロケ地は地中海のマルタだが、映画では、どこかの島という設定になっていて、しかも独立国家ということにもなっていない。映画の主人公ジギーは、島の灯台〔デリマラ(Delimara)灯台〕の灯台守で祖父のアームストロング〔元・大佐〕と姉のピッパ、叔母のロビアック〔両親のいない一家の面倒をみている〕と一緒に暮らしている。そして、有名な嘘つき。この日も、灯室の下の手すりに立っている祖父に向かって、「おじいちゃん、ねえ、聞いてよ」と叫ぶと(1枚目の写真、矢印)、祖父は 「ホントの話なら聞いてもいいぞ、作り話はダメだ」と答える。「船が沈没しちゃった。急に、爆発して。魚雷だよ!」(2枚目の写真)。平和な時代なので、いつもの作り話だと分かった祖父は、嘘だと非難せず、適当に答えた後、「パレードに遅れるぞ」と注意する。ジギーが家に向かうと、祖父は双眼鏡で、港の方を見てみると、大統領を載せたモーターボートが岸壁に向かっているのが見える(3枚目の写真)〔実際には、灯台は島の南東端にあり、そこから岸壁までは、島内を横切って9キロあり、見えるハズはない〕
  
  
  

モーターボートが埠頭に近づいた頃、洋服屋の若手店主で、金儲けのため悪事に手を染めた軽薄な男が、犯罪者から手渡されたスナイパーライフルを分解して “如何にも派手” な紙袋に入れると(1枚目の写真、矢印)、店の看板を「OPEN」から「CLOSED」にひっくり返して外に出て行く。岸壁では、モーターボートが接岸し、民族服を着たアフリカのどこかの国の大統領が軍楽隊の出迎えを受ける(2枚目の写真)。この場所は、グーグル・ストリートビューの定点での空中撮影(3枚目の写真)の の地点。参考までに、次の節で大統領を乗せた車列が通る橋と門は、 の地点。その先、最初にジギーが逃げる場面が少し後にあるが、その時に通るのが のルート。因みに、ロケ地はマルタの首都ヴァレッタ〔Valletta〕。マルタ騎士団の聖エルモ砦を含め “難攻不落の町” として造成されたのは1571年。当時の地図を見ると、 にかけての深い溝の右側が町で、溝の左右は巨大な城壁になっている。 の橋は、ヴァレッタに入る唯一の入口だった。
  
  
  

灯台の下の家では、これからパレードを見に行くジギーの髪を、ロビアックがブラシで何とかきれいにしようとしている(1枚目の写真)。そして、前節の の橋を渡り、門をくぐった車列が、大勢の市民が待ち受ける旧市街に入って行く(2枚目の写真)。この門の向こうにある橋と、門の正面側を写した3枚目の写真は、私がかなり昔にマルタに行った時に撮影したもの。この荘厳な門(1569年)は現在壊されてしまい、イタリアの有名な建築家レンゾ・ピアノが2014年に造った開放的な空間に改悪されてしまった(4枚目の写真)〔有名な建築家に依頼したとはいえ、街全体がユネスコの世界遺産に登録(1980年)された後に、最も重要な旧市街地への入口を破壊させるような愚かな行為を、なぜユネスコは許可したのだろう?〕
  
  
  
  

ジギーとピッパは、大統領を見るのに適した場所を探して移動する。その途中でも、ジギーは、軍楽隊の1人が持っていたバスドラムを見て、「僕 ドラムを演奏できるよ」と嘘をついたり、ジギーが場所を決めると、「僕、もっと前に行かなくちゃ。大統領が、最前列にいてくれって手紙をよこしたんだ」と嘘をついて、毎度のことながらピッパを呆れさせる(1枚目の写真)。一方、紙袋を持った若手店主は、建物の中に入ろうとして、警官に呼び止められ、中を検分される。警官は、中を見た後、男に建物の中に入るのを許可し、男と一緒に中に入って行く〔分解したスナイパーライフルは剥き出して入っているので、この警官が男に指図した主犯〕。ジギーが後ろの建物を見ると, 屋上やテラスには、ライフルを持った警官が配置されている。一方、さっき中に入って行った男は袋を持たずに外に出て来る。代わりにそこにやって来たのは、先ほどピッパを見かけて、声をかけようと追いかけてきたイギリス人の観光客。彼は、ピッパがいる場所を確認すると、ゆっくりと寄って行く。彼がピッパの隣に来たのと入れ替わりに(3枚目の写真)、ジギーはピッパに黙って勝手に離れ、先ほど男と警官が入って行ったドアから建物の中に忍び込む 。
  
  
  

ジギーは、2階に駆け上がり、最初に見つけたドアから、広場側の物置部屋に入って行き、少しだけ開いていた隣の部屋のドアの隙間から覗いてみる(1枚目の写真)。中では、警官のヘルメットを被った男が、若手店主が持って来た紙袋に手を突っ込んでいるが、そこで見るのを止めるので、中にスナイパーライフルが入っているのを見たわけではない。この映画の日本版DVDの箱の中には、このシーンがメインで印刷された製品もあるようだが、「小さな目撃者」という題にはぴったりでも、このシーンには何の意味もない。ジギーは、そのまま窓まで行き広場の様子を見るが、その隣のブラインドの掛った開口部の向こうでは、スナイパーライフルを持った警官がいつでも撃てるよう、準備をしている(2枚目の写真、矢印)。ジギーが見ていると、広場に 大統領の車列の先頭のオートバイ3台が入ってくる(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

隣の部屋の警官は、大統領の乗った4人乗りのオープンカー〔後部座席の左側に大統領、右側にこの時しか現れない行政のトップ、助手席には、この訪問の警備全体を仕切っている警視正が乗っている〕が広場に入って来ると、狙いを付けて何発も撃つ。サイレンサー〔正しくは、サプレッサー〕が付いているので、消音されていると思いがちだが、実際には、サプレッサー付きライフルの射撃音は146デシベルで、打ち上げ花火や離陸中の旅客機並みの大きな音〔https://hb-plaza.com/supp ressor-noise-levels/〕。だから、すぐ横にいるジギーはすぐにびっくりし(1枚目の写真)、この直後に右を向いて隣の部屋を見る。下では大騒ぎが起きているが、隣に狙撃犯がいると分かったジギーは、開口部から離れて壁に張り付く。一方、狙撃された車では、大統領、その横の要人、運転手の3人が撃たれ、車止めにぶつかって停止した車から、警視正だけが真っ青な顔で降りて来ると、部下に 「広場を空にしろ」と命じる。ピッパは、ジギーがどこにもいないので恐慌状態になるが、イギリス男がサポートして広場から立ち退かせる。狙撃をした警官は、3人を撃ったところで射撃をなぜか止め、スナイパーライフルを分解して再び紙袋に戻す〔一番深不可解な場面〕。そして、ジギーが物置部屋から出ようとして、“少しだけ開いていた隣の部屋のドアの隙間” の前を走り抜けると、その音に気付いた警官が顔を出し(2枚目の写真)、ジギーは、犯人に見られたことでショックを受ける(3枚目の写真)。犯人の警官も、目撃者の少年の顔を睨むように見る。ジギーは、廊下の窓から屋上に逃げ、後を追おうとした警官は、その時、階段を多くの警官が駆け上がってきたため、対応に追われて〔スナイパーライフルが見つかる前に追い返すため〕、行方を見失う。
  
  
  

若手店主は、主犯の警官が部屋に残していった紙袋を取りに来て、先に別の目的で部屋に入って来ていた従業員を、長く太い針を首に突き刺して殺す(1枚目の写真)〔この店主は、素人の犯罪者のように描かれていたのに、このような殺人道具を持っていたことは腑に落ちない〕。一方、駐車しておいた車まで戻ったピッパがジギーのことを心配するので、一緒に付いていったイギリス男は、「男の子は、いつだって大丈夫さ」と慰める(2枚目の写真)。それでも、とても運転できそうにないので、結局運転を代ろうと言って、ピッパの車に乗り込む。そして、「いいかい、君の家に着いたらすぐに何か手を打とう。だけど、彼が 家で君を待っていることに賭けてもいいぞ」と安心させた上で、「僕は、トム・ジョーンズだ」と名乗る〔有名な歌手だったトム・ジョーンズも、1940年生まれなので、ほぼ同じくらいの年〕。その頃、ジギーは、ヴァレッタの中心市街地の最大の特徴である中央がV字型に凹んだ街路を走っている(3枚目の写真)。4枚目の写真は、私が撮影したV字型になったヴァレッタの別の街路〔ここと、もう一箇所が一番急で長い〕。なぜこのような地形になっているかについては、「マルタ騎士団が訪れる前のこの地は、高さと谷のある岬だった」と書かれている。
  
  
  
  

ジギーは、途中で、主犯の警官と、その弟で一緒に行動している2人にオートバイで追われる。1枚目の写真は、バラッカ〔Barrakka〕・リフトの手前にある連続アーチの前を走ってリフトに向かうジギー。ジギーは、オートバイに追いつかれる前にリフトに乗り込み、主犯の警官が到着した時には、銃で撃てないほど、リフトは降下している(2枚目の写真)。そして、このリフトの全景が映る(3枚目の写真、矢印はジギーが乗っているカゴ)。バラッカ・リフトは、1905年に造られ〔高さ60m〕、映画の撮影直後の1973年に営業が中止され、1983年に解体された。現在の2代目は、2012年にオープンしたもの〔高さ58m〕(4枚目の写真)。最初から2つ目の節の最後に付けた全景写真の がジギーの移動したルート。現在のリフトは23秒で下まで行けるが、当時のリフトは非常に遅く、2台のオートバイが階段を走り下りてリフトを追いかけ、リフトが最下段に着くより早く一番下に着いてジギーを待っていた。しかし、賢いジギーは、最下段の1つ上でリフトを停め、逃げおおせる〔オートバイで、最下段からその1つ上に行くには大廻りしないといけない〕
  
  
  
  

リフトから逃げ出したジギーが次に姿を見せるシーンが、1枚目の写真。このロケ地は、マルタ島の東端にあるヴァレッタではなく、島の中央にあるムディーナ〔Mdina〕の町の聖パウロ大聖堂の下の斜面〔リフトの10km弱西〕。2枚目の写真は、偶然、私が撮影したほぼ同じ場所。ジギーは、運良く、トム・ジョーンズの運転するピッパの車と遭遇する。ピッパは、ジギーがどこに行ったのか非常に心配していたので、再会後も怒りは容易に収まらない。一方的に責められるばかりなので、ジギーは 「ねえ、説明するから、チャンスを与えて!」と頼み、ようやく話を聞いてもらえるが、そこで、①大統領を撃った犯人を見た、②撃ったのは警官だった、③警官に追われている、と話したものだから、ピッパはいつもの作り話の特に悪質なものだと決めつける(3枚目の写真)。
  
  
  

一方、トム・ジョーンズは、ジギーが嘘つきの常習犯だと聞いても、初めて会った少年なので、もっと詳しく話を聞き、④警官は2人、⑤追われている理由は、カフェの中の部屋の隣にいて犯人を見たから、と述べたものだから、ピッパに 「君は僕よりこの子のことを知ってる。ホントのことだという可能性は?」と問いかける。ピッパは、「この子は、何でもでっち上げるの!」とジギーに向かって怒鳴り、ジギーは、「時々作り話はするよ。だけど、今度はホントに起きたんだ!」と必死に食い下がる(1枚目の写真)。一方、島の石切り場で、主犯の警官と若手店主が待ち合わせて会い、若手店主は手数料を要求する。警官はお金を渡すと同時に相手の顔を殴り、相手は、気絶して地面に倒れる(2枚目の写真)。警官はお金を奪い返すと、近くに停めてあったブルドーザーに予め乗っていた弟が地面に倒れた若手店主の体を前面のブレードの中に入れると、そのまま持ち上げ、崖っ縁まで運んで行くと、そのまま海に投げ捨てる(3枚目の合成写真、死体の矢印は2ヶ所)。
  
  
  

灯台には、祖父の2人の孫と、同行したトム・ジョーンズが到着している。灯台のシーンに変わってから、警視正がTVに映るまでの4分余りは、祖父とトム・ジョーンズの無意味な会話がダラダラと続き、一気に緊張感が崩れる。そして、TVに映った警視正の顔は、当時のTVとしては異様に鮮明なので “貼り付け” と分かり、興を削がれる。警視正は、今日起きた惨劇について述べ、「凶暴な事態には強烈な措置が要求されます」と言った後で、戒厳令と夜間外出禁止令(18時~翌8時)が布告されたと告げ、一人もしくは複数の暗殺者が逮捕されるまで布告は継続されると話す(1枚目の写真)。とうに18時を過ぎているので、トム・ジョーンズは灯台に泊まることになる。そのあと、ジギーを部屋に閉じ込めたピッパが降りてきて、祖父が2階の自室に行き、今度は、ピッパとトム・ジョーンズの無意味な会話が4分余りに渡って再びダラダラと続き、いい加減うんざりさせられる〔“サスペンスフルなアクションが売り物” と宣伝された90分の映画の中で、この9分弱の無駄は許し難い〕。そのあと、場面が変わり、2台のオートバイが灯台に向かうシーンが一瞬映る(2枚目の写真)。主犯と弟も、このように2台のオートバイを並行して走らせていたシーンがあったので、悪漢どもが灯台に向かっていると思わせる巧みな演出にも見えるが、この時点ではジギーの住所は犯人に知られていないので、単なる肩透かし。そして、ジギーを除く4人が夕食のテーブルに着いた時、灯台守の家の鉄の扉がドンドンと強く叩かれる(3枚目の写真)、叔母がドアを開けに行き、祖父が、食堂から 「誰だね?」と訊いた時、叔母が 「警官です」と答えたのを耳にしたジギーは…
  
  
  

てっきり、自分を殺しに来たに違いないと思い込んで、2階の窓から逃げ出す(1枚目の写真、矢印は警察のオートバイのミラーに映ったジギー)。その頃、家の中に招じ入れられた(犯人とは別の)警官は、住民台帳に載った人数を確認し〔祖父がジギーは2階だと言うと、子供なので確認しない〕、トム・ジョーンズに対しては許可なく島を出ることはできないと注意する〔ジギーが逃げ出したことに、誰も気付かない〕。ジギーは街まで走って行き、友だちの少女アン=マリーの部屋の窓を叩き、「いいか、君に話がある。天下の一大事なんだ」と言い(2枚目の写真)、警察まで知らせに行くよう頼む。親切なアン=マリーは、夜間外出禁止令が出ているのに、一人で歩いて警察まで行ってくれる。その途中のシーンが3枚目の写真(矢印)。この教会は、3つ前の節で出てきたムディーナの聖パウロ大聖堂の正面。私が撮影した正面写真を4枚目に示す。この直後、アン=マリーは ジープで巡回していた優しい警官に保護され、警察に行く途中と話したので、そのまま署まで乗せて行ってもらえる。
  
  
  
  

一方、灯台では、祖父がジギーの部屋に行くと、誰もおらず窓が開いたままになっている。祖父は、さっきの警官が置いて行った名刺の電話番号にかけ、孫がいなくなったと知らせる。ただし、アン=マリーが連れて行かれたのは分署で、祖父がかけたのは警察本部。ここで、場面は主犯の警官とその弟の会話に変わる。弟は 「ガキは放っておいて、ずらかろう」と提案するが、兄は 「奴は俺を見た。ガキは危険だ、殺すしかない」と反対する。弟は 「あんたの “もう一つの失敗” がバレるのは時間の問題だ。行かないと」と、この時点では、何が “もう一つの失敗” か観客には理解できない表現を使って 逃走を主張する。“失敗” の大きさから見て、弟はもっと兄を責めていいと思うのだが、それに対する生意気な兄の返答は 「奴は俺を見た」(2枚目の写真)「逃げたいなら逃げろ」。その最後通牒を聞いた弟は、仕方なく兄と一緒に目撃者を探すことに同意する。アン=マリーは、気のいい署長に迎えられ、コーヒーとサンドイッチを与えられる。アン=マリーは、ジギーから聞いた話をそのまま署長に打ち明けるが、全く信用してくれない(3枚目の写真)。そして、部下に家まで送るよう命じる。
  
  
  

その時、主犯の警官とその弟が乗ったオートバイが分署の前に着く。そこに、アン=マリーを連れた警官が出て来て〔こちらの警官の方が、巡査の主犯より階級が上〕、2人に、ジープでアン=マリーを家まで送るよう命じる(1枚目の写真、矢印はアン=マリー)。2人にとっては煩わしい雑用だったが、アン=マリーは、さっそく、「友だちのジギーが見たのよ。彼、テレビでやってた男の人を撃ったのが誰だか知ってるわ」と自慢げに話す。その言葉に、主犯は 「知ってるのか?」と内心の嬉しさを隠して訊く。「そうよ、見たんだから。警官が撃ったのよ。署長さんは 警官は人を撃たないって言ったけど、ジギーは時々あるんだって言うの」。「ジギーがどこにいるか知ってる?」。「ええ、ウチの庭にいるわ。灯台に住んでる子なの」。最高の情報を2つも教えてくれたので、主犯は 「じゃあ、ジギーに紹介してもらおうか」と言って、ジープに乗せる。アン=マリーの庭の壁の上からジープがやってくるのを見たジギーは、急いで下に降りて行くと、門扉ごしにジープを見ている。すると、何と、運転席から降りたのは、大統領を撃った警官だったのでびっくりし(2枚目の写真)、「アン=マリー、逃げろ、犯人どもだ!」と叫んで、逃げ出す〔主犯が、すぐに追いかける〕。アン=マリーは、主犯の弟に捕まえられたまま続けさまに悲鳴を上げたので、それを聞き付けた父親がドアを開け 「おい、何しとる!」と怒鳴る。アン=マリーは 「パパ!」と叫びながら父の方に走って行き、父に抱き上げられたところを、弟によって2人とも射殺される。その音で駆け付けた5-6名の軍人に対し、弟は 「誰かが男性と少女を撃った。2人の男が逃げて行った。私は救援を呼びに行く」と嘘を言い、ジープに乗って逃げ去る。その場に残された軍人は、その凄惨さに驚く(3枚目の写真)。このすぐ後に、ドアから出てきた母親が惨状を見て悲鳴を上げる。
  
  
  

ジギーが逃げ込んだのは、「聖パウロ教会のカタコンブ」と表示された小さな建物(1枚目の写真)〔以前2度ロケ地になったムディーナの聖パウロ大聖堂の西南西660mにあるラバト(Rabat)の町の聖パウロ教会のさらに西南西200mにあるカタコンブ〕。ジギーが階段を下りていくと、キリストの磔像の近くにいた僧侶に 「どこに行くんだ?」と訊かれる。ジギーは 「僕、殺されちゃう!」と訴えるが(2枚目の写真)、僧侶は本気にせず 「なんでこんなに夜更かし してるんだ」とたしなめる。ジギーが、愚かなことに、入口のドアを半開きのままにしてきたので、主犯の警官がすぐに気付いてドアを開け、2人に拳銃を向ける。それに気付いた僧侶がジギーを庇って背中に隠し、「ここは神の家だぞ!」と冒瀆行為を叱りつけると、そんなことで躊躇などしない主犯の警官は、僧侶を撃ち殺す(3枚目の写真)。
  
  
  

ジギーは、すぐに、奥のカタコンブの方に逃げる(1枚目の写真)。このカタコンブは、BC3世紀に 古代ローマ人が死者を埋葬するために造った地下墓所が、AD7世紀にかけて拡張されたもので(2000㎡)、通路と一番有名な聖パウロ像のある洞窟の写真が2つのサイトにあったので、それを2枚目に示す。ジギーが入って行く洞窟には、映画用に多くのカラフルな像が並べられていて、その奥に長い板が数枚立て掛けてあり、彼はその後ろに隠れる(3枚目の写真、矢印は長い板)。主犯の警官が、怪しいと睨んで中を捜し始めると、ジギーは板を力一杯押し、悪漢はその板の下敷きになり(4枚目の写真)、ジギーに逃げる時間を与えてくれる。ジギーを見失った主犯の警官は、灯台に戻るハズだと考える。
  
  
  
  

先にアン=マリーが訪れた分署では、行方不明の少年として本署から伝えられた名前と、アン=マリーが告げた少年の名前が一致していたので、署長はすぐに本署に電話する。その本署では、アン=マリーと父親の遺体が運ばれてきている。そして、監視に当たっていた軍の話として、先に警官が来ていて、その警官が誰か分からない〔殺人の報告書が出ていない〕という異常事態に、警視正が至急の調査を命じる。調査結果を見た警視正は、①大統領が撃たれ、②ウェイターが殺され、③少年が行方不明、④少女が殺された、という4つの事件にすべて絡んでいるのは警察だと気付く。そして、事件は大統領暗殺ではなく、同じ車に乗っていた自分を殺すのが真の目的だったと部下に告げる(1枚目の写真)〔これが、主犯の弟が言っていた “もう一つの失敗”。あとで、この主犯は元マフィアだと分かるが、銃を使い慣れた犯罪者が、4人乗りのオープンカーを、窓に固定したスナイパーライフルで狙い撃ちしたにもかかわらず、3発とも外して残りの3人を殺すなどという失態をするものだろうか? それに、失敗したと分かった時点で、まだ誰も彼のいたアパートを疑っていなかったのに、なぜ4発目を警視正に向けて撃たなかったのだろう? これが、この映画で一番の疑問点。それに、警視正には、間接的にだが、大統領暗殺に対する責任問題が提起されるのではないか? 彼のせいで3人が殺され、その後別の3人まで殺されたのだから〕。ここで、場面は灯台に変わる。祖父には警察〔あとで、主犯がかけたと分かる〕から そちらに向かうとの電話が入る〔当然のことだが、アン=マリーとその父が殺されたことは伏せてある〕。祖父は、ジギーが部屋から逃げ出した時、予めどこに行くか決めていたに違いない、それは恐らく砦だろうとピッパとトム・ジョーンズに話し、それを叔母も聞いている(2枚目の写真)〔この部分にも無理がある。ジギーはアン=マリーに頼むために出て行ったのであって、砦に行こうとした訳ではない〕。一方、主犯の警官は、弟に命じて灯台に通じる電話線を切断させてから、灯台の鉄扉をノックする。すると叔母が出て来て、ジギーはいないが、恐らく砦にいると話してしまう。居間にいた祖父は、銃声が聞こえたので、玄関まで行くと〔ピッパとトム・ジョーンズも駆けつける〕、そこでは叔母が撃たれて死んでいた。(3枚目の写真、矢印は叔母)。トム・ジョーンズは、警察のジープが走り去るのを窓から目撃していた。祖父は、警察に電話しとうとしても通じないので、3人で砦に向かうことにする。一方、本署では、警視正が全警官の点呼を取るよう命じる。その結果判明したのが、ポール・グラッツィーニという男。警視正は、「私は、ここから半マイルも離れていないところで、彼の義兄を撃った。マフィアは執念深い」と言うと、すぐにジギーの家に向かうことにする〔だから、先程の電話は警察がかけたものではない〕
  
  
  

祖父、ピッパ、トム・ジョーンズの3人は、砦に到着する。年配とはいえ、元大佐なので、祖父が1人で様子を見に行く。祖父はドアを開けて中に入ると、すぐに 「パーカー〔ここに住んでいる元・部下〕! ジギー!」と呼び、返事がないので、石の螺旋階段を上がって2階に行きながら 「パーカー!」と呼ぶ。しかし、2階にも誰もいない〔鎧や中世の武器が展示してある〕。2ヶ所のランプを明るくして探すうち、テーブル掛けと床との僅かな隙間に青い運動靴が見える。祖父が、確信してテーブル掛けをまくり上げると、そこにはジギーが隠れていた〔祖父の声が聞こえたハズなのに、なぜ姿を見せなかったのだろう? 声だけでは不安だったのだろうか?〕。ジギーは祖父に抱き着く。祖父が 「パーカーはどこだ?」と訊くと、「警察に通報しに行ったんだ、ごめんね」と謝る(1枚目の写真)。祖父は 「お前のロビアック叔母さんが死んだ。真実を知らねばならん。お前は誰を見たんだ? 警官というのは本当か?」と訊く。ジギーは、泣きながら 「そうだよ。ずっと、おじいちゃんにそう言い続けてるじゃないか」と言うが、ジギーは灯台に帰ってからピッパに部屋に閉じ込められ、祖父に話す前に窓から逃げてしまったので、一度も話していない。祖父は、これまでピッパの “嘘つきジギー” の話ばかり聞かされてきたので、初めて本人の必死の訴えを訊き、「お前を信じるよ」と言う(2枚目の写真)。ジギーは、相手に顔を見られたから、「僕を殺そうとしてるんだ!」と泣きながら訴え、ようやく祖父も危険な状況を把握するが、その前に叔母が警察のジープに乗ってきた人物によって射殺されているので、“今さら何を” と白けてしまう。一方、車の中で待ちくたびれたピッパは、トム・ジョーンズを誘って車から出て砦に入って行くが、戸口の前庭の木の下で死んでいるパーカーの死体(3枚目の写真)を見て悲鳴を上げる〔なぜ、祖父は死体に気付かなかったのだろう??〕。この悲鳴と、ピッパの口を押えたトム・ジョーンズが、「大佐」と呼ぶ声が、主犯と弟に聞こえてしまう。
  
  
  

ピッパが2階に飛び込んできて、「ジギー、お祖父ちゃん、パーカーが死んでる。奴ら、私たちがここにいるって知ってる!」と叫んだものだから、2階に向けて銃が撃たれ、全員が床に伏せる。祖父は、トム・ジョーンズに 「2人をここから出したい。わしが何か陽動作戦をやれば、君は2人を車まで連れて行けるか?」と訊く。トム・ジョーンズは 「やれます」と言っただけでなく、床に落ちていたランプを見て、「火炎瓶はどう?」と提案する。祖父は名案を褒め、さっそく2人で複数の空のランプにブランデーを詰め始める。一方、灯台に着き、ロビアックの死体以外誰もいないことに困惑した警視正に、部下が “砦で祖父とジギーが楽しんでいる写真” を見つけてきて見せる。警視正は すぐに砦に向かう。祖父は、建物から見つからずに外に出るルートを教え、3人を車に向かわせると、銃弾の飛んできた裏庭目がけて火炎瓶を投げる(1枚目の写真)。1発目を投げても、まだ数発残っているので(2枚目の写真、矢印)、暗殺犯は陽動作戦にひっかかり、その間に3人は塔の上から壁を伝って逃げる(3枚目の写真)。
  
  
  

3人は、ここまで祖父が運転してきた車に乗り込むが、オンボロ車なので〔車種特定不能〕、キーを回すとセルは回るがエンジンがかからない。おまけに、セルの回る音が、キーを回す度にするので、暗殺犯も、火炎瓶は見せかけで、少年が逃げようとしていることに気付いてしまう。そこで、主犯の方が外まで走って出て来るが、ぎりぎり間に合ってエンジンがかかったので、主犯が撃った弾がリアウインドウを粉々にしただけで済む。主犯はすぐにジープに乗って追いかけようとしたので、祖父はジープの直前に火炎瓶を投げつけるが、ジープは構わず突っ込んでいく(1枚目の写真)。一方、残された弟は、家の中に侵入し(2枚目の写真)、螺旋状になった階段を上って2階に向かうが、祖父に靴で顔を蹴られて〔螺旋状なので気付かれない〕、1階まで転がり落ちる。階段を下りてきた祖父に腕を撃たれた弟は、外に逃げたところを、警視正の乗った車に跳ねられて死亡する(3枚目の写真)。
  
  
  

ここからが、この映画の見せどころ。3人の乗った車をジープが追いかける “死のレース” は、夜が明けても続く(1枚目の写真、矢印)。トム・ジョーンズの運転する車に追いついたジープは、並走して走り、何度も何度も体当たりして、車を側方の石ガードにぶつける(2枚目の写真)。後部座席では、弾に当たらないよう座席に仰向けに寝たジギーとピッパが、タイヤが石ガードにぶつかる度に強い衝撃を受ける(3枚目の写真)。
  
  
  

何度もぶつけられてガタガタになった車は、ジープがもう一度体当たりすると、石ガードを乗り越えて、崖っぷちに行ったところで停止する。それを見た主犯は、ジープを車の後部に何度もぶつけ、崖の方に押していく(1枚目の写真)。そのうち、車の向きが変わったので、ジープは車に真横からぶつかり、回転させる(2枚目の写真、矢印)。車の中は上下逆さまになり、2人は傷だらけになる。そして、崖の直前で、一気に落としてやろうとジープがかなり下がってから発進したところで、警視正の車が追いつき、部下の銃が主犯の後頭部に当たる。ジープは転倒した車に一部ぶつかってから崖から転落する(3枚目の写真、あまりに見事なので、7枚の写真を連ねて落ちて行くシーンを再現した)。確かに、この6分間の追跡劇は、他に例がないほど素晴らしい。何よりも、すべて実写であることによる迫力は、何物にも代え難い。
  
  

転覆した車からは、最初にジギーが這い出してくる(1枚目の写真)。お尻のところに見えているのはトム・ジョーンズの手。ピッパは反対側から脱出する〔右端のタイヤに指が見える〕。やっとのことで立ち上がったジギーは、駆け付けた祖父と対面する(2枚目の写真)。そして、祖父に抱き着く(3枚目の写真)。
  
  
  

最後のシーンは、顔の傷が治っているので、それから数日後。島で一番のレストラン(?)で。ピッパとトム・ジョーンズは仲良く踊っているが、ピッパが左手薬指にきれいな指輪をつけているのが映るので、2人は婚約したのだろう。一方、黒い背広に白のYシャツ姿のジギーは、祖父と一緒にテーブルに座っている。ジギーは、奥の席に、ヒットラーに似た口髭男が座っているのを見つけると(1枚目の写真)、「おじいちゃん、ヒットラーがいるよ」と ご注進。祖父は、またジギーの嘘が始まったと思い、「また、始まったか」と諦め顔になり、「ヒットラーはベルリンの地下壕で死んだ。1945年にな」と諫めるように言う。「でも、そこにいるんだ」(2枚目の写真)。諦めた祖父は 「どこだ?」と訊く。ジギーが 「そこだよ」と言って、ヒットラー男のいた席を見るが、そこには誰もいない。それを見た祖父は、舌を鳴らして “また嘘か” とジギーを見て鼻で笑って別の方を見ると、ヒットラー男がレストランを出て行くのが見える。その時の驚いた祖父の顔を見たジギーは、この映画で初めて笑みを見せ(3枚目の写真)、映画はこの場面で終わる。
  
  
  

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