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Home Alone 3 ホーム・アローン3

アメリカ映画 (1997)

マコーレー・カルキンが9歳の時出演した『ホーム・アローン』は製作予算$18,000,000に対し興行収入は$476,684,675(26倍)、11歳の時出演した『ホーム・アローン2』(簡易表示)は製作予算$28,000,000に対し興行収入は$358,994,850(13倍)だった。しかし、アレックス・D・リンツが8歳の時出演した『ホーム・アローン3』では、製作予算$32,000,000に対し興行収入は$79,082,515(2.5倍)と一気に縮小した。3作とも脚本はジョン・ヒューズ。しかし、監督はクリス・コロンバスから、前2作の編集者だったラジャ・ゴズネルに格下げ〔これが最初の映画監督で、それ以後の監督作も冴えない〕。『ホーム・アローン3』にけるアレックス・D・リンツの演技は、すごく上手なのだが、脚本のせいで常に “善意の塊” なのに対し〔彼のどの映画でもそうなのだが〕、マコーレー・カルキンは、9歳の時から、既に “悪の影” が見えており、『ホーム・アローン2』では、それがより顕著となっている〔将来の悲惨な人生を予見させる〕 。しかし、それがかえってケヴィンという “少し不良っぽい少年” に現実味を与え、彼が泥棒以外の人物と接触する場面に躍動感を与え、泥棒との対決には少し残酷な場面もあるが、初めて見る “あまり良くない子” による残虐な泥棒虐め に珍しさがあった〔以前紹介した『わんぱくデニス』でも無心な幼児による悪漢虐めはあり、その場合も、興行収入/製作予算は3.3。観客は良い子×悪漢は評価しないらしい〕。『ホーム・アローン3』では、俳優と同名のアレックスは常に “良い子” で、凶悪なグループとの対決以外に見どころがなく、その対決も、その多くが前2作の場面とかなり似た場面が多く、似ていない場面も、あり得ない設定が多い。それが、前2作と比べて完敗した原因で、その責は監督と脚本の2人にある。ここでは、アレックス・D・リンツの多様な表現力の魅力を写真で紹介すると同時に、なぜ映画として失敗したのかを、2つの面から写真で解説する。まず、第一は、あり得ない出来事。これは、映画を観ている者に不審感を抱かせる。映画は、冒頭から、“$1,000万の価値のあるミサイル隠蔽マイクロチップを隠したラジコンカーが、偶然からシカゴ郊外に単身で住んでいる老婦人に手に渡った際、その行き先がなぜ犯行グループに分かったか” について、2つの点で大きな疑問を抱かせる。そして、アレックスと4人の強盗との対決の中で、アレックスの仕掛けた罠に、泥棒が “やられる” 場面に無理(わざとらしさ)が多過ぎる。それらの場面の該当する写真には、左下にの印を付けておいた。その理由については、その都度説明する。また、アレックスの仕掛けた罠で、前2作に類似の場面があった場合には、前2作の該当する場面を、黄色の枠で囲んで提示する。その類似点についても、その都度説明する。こうした紹介の仕方は、今回が初めてで最後。

映画は、大きく分けて、①8歳のアレックスの向かいに住むヘス夫人が、サンフランシスコからの飛行機に乗る時に、機内持ち込み手荷物のX線検査の際、同じショッピングバックだが中身の違う物を取ってしまう。しかし、そのバッグには、国際的犯罪組織がシリコンバレーから盗んだ防衛上極めて重大な意味を持つマイクロチップが入っていた。組織の4人は、ヘス夫人がシカゴ便に乗り、アレックスの住む郊外住宅14棟のうちの誰かが持ち帰ったと知る。ヘス夫人から雪かきを頼まれていたアレックスは、お礼に、ヘス夫人にはゴミとしか思えないラジコンカー(中にマイクロチップが隠してある)をもらう。しかし、翌朝になると、アレックスは水疱瘡を発症してしまう。②組織の4人は、昼間誰もいない郊外住宅(両親は共働き、同居の祖父母はいない、子供は学校)なので、1軒ずつ侵入しショッピングバックを捜し始めるが、最初の1軒に入って抜け出す直前、アレックスに望遠鏡で見られて警察に通報される。警察が来ても、侵入された形跡がなかったので、誤報にされる。翌日、2軒目が侵入された際は、通報は早かったが、強盗は室内で上手に身を隠し、結果的にアレックスは、嘘つき扱いされる。③翌日、3軒目が侵入された時、アレックスは自分で解決することにし、ラジコンカーにビデオカメラを載せて3軒目に侵入、 ボスの顔を撮影するのに成功するが、途中でボスに感づかれ、逃げ出す際にビデオカセットは奪われるが、ラジコンカーは逃げ帰る。しかし、玩具のラジコンカーが執拗に追われたことを不思議に思ったアレックスは、ラジコンカーの中にチップが隠されているのを発見し、空軍に通報する。④ボスは、ラジコンカーの電波の届き具合から、マイクロチップがアレックスの家にあると断定し、翌日手下の一人を侵入させようとして、手下はひどい目に遭う。アレックスは、自分が狙われていることを確信し、攻められてきても守れるよう、自宅を傷付けてでも、万全の準備をする。⑤ここからは、攻め入ろうとする4人対、アレックスの戦い。すべてアレックスが勝つ。⑥空軍からの通報を受けて駆け付けたFBIにより全員が逮捕される。これらの中で、前節で指摘した、あり得ない想定()と、『ホーム・アローン2』の二番煎じが集中するのが⑤。他の部分には、一部間違いがあるが、⑤がこれほどひどくなかったら、名作として記憶されたかもしれないのに、本国ですらBLが販売されていない惨状は、すべて⑤の部分のお粗末な脚本のせいだ 。

アレックス・D・リンツが『One Fine Day(素晴らしき日)』(1996)の脇役でヤングスター賞を受賞したのを受けて、大作の主役に抜擢されたが、本人の演技は見事だったのに、最悪の脚本のせいで映画がこけてしまい、そのあとメジャーから声がかからなくなってしまった。それは、逆に、アレックス本人と両親にとって幸せなことで〔両親はもともと映画主演には後ろ向き〕、彼の高い頭脳に相応しい進学・就職の選択を彼に取らせるきっかけとなった。それでも、1990年代の終わりから、2000年代の初めにかけて、最も素晴らしい子役であることは間違いないし、その純真な笑顔は、これまでのどの子役よりも素晴らしい。これだけの特集を組むだけの価値のある名子役だ。

あらすじ

映画の冒頭、香港の北朝鮮の工作員から、FBIに長年追われている犯罪者ボープレーは、ミサイル隠蔽用のマイクロチップを1000万ドルの報奨金で入手するよう依頼される。ボープレーと、その手下の3人(リボンズ、ジャーニガン、アンガー)は、シリコンバレーにあるAXUSという架空の会社の技術者を買収し、報奨金と引き換えに空軍用の特殊なマイクロチップを1個入手。空港のX線検査でバレないよう、玩具のラジコンカーのマイクロチップの上に重ねて置き(1枚目の写真)、サンフランシスコ国際空港〔後で、アレックスの隣人のヘス夫人がそう言う〕に向かう。ボープレーは、直ちに香港にマイクロチップを持って行かなくてはならないので、当然、当時の国際線ターミナル〔現在の国内線ターミナル2〕に行き、搭乗手続き後にセキュリティチェックを受ける〔後で、FBIの捜査官が、「奴らは偽名で登場手続きをしたが、香港便には乗らなかった」と言っている〕。その時、事故が起きる。今なら、金属探知機とX線検査装置は1組になっているが、映画では、金属探知機の2列が1つのX線検査装置を使用している〔四半世紀前の古いターミナルなので、是非は不明〕。A列に並んだリボンズが、マイクロチップの入ったパリジャンというサンフランシスコの有名なパン屋のビニール袋をX線検査装置のベルトコンベアーに置いた後でしばらくしてから、B列の夫人がサンフランシコで買ったパリジャンのパンを入れたビニール袋をベルトコンベアーに置く。しかし、リボンズの1人前の女性が金属探知機で引っ掛かって遅れている間に、B列の夫人が先にX線検査装置の受け取り場に行き、そこに出て来たパリジャンのビニール袋を自分の物だと思って持っていってしまう(2枚目の写真、右の矢印がリボンズ、左の矢印がヘス夫人)。だから、リボンズは、後から出て来たヘス夫人のパリジャンのビニール袋を、自分の物だと思ってしまう。この写真になぜが付いているのか? それは、❶ボープレー達は香港に行くので、当時の国際線ターミナルにいるハズだから。一方のヘス夫人はサンフランシスコで買い物をしてシカゴに戻るので、国内線の3つあるターミナルの何れかにいるハズ。❷なぜ、国際線のリボンズと国内線のヘス夫人が 同一の搭乗手続きの場にいるのか? こんなことは、100%、絶対にあり得ない。4人が一緒になった後で、リボンズはビニール袋の中身が違うことに気付く〔パンとラジコンカーでは重さも大きさも違うので、持った瞬間に気付くハズ。だから、これも可笑しい〕。4人は、さっそく探し始める。ヘス夫人は、運搬用のミニカーに乗り、ビニール袋の上に上着を置いたので袋は見えない。しかし、そのように、“持っていても見えない事例” は他にもあるハズ。しかし、①リボンズの、ダラス、マイアミ、ニューヨーク、デンバー行きのラウンジにはなかった、②ジャーニガンの、バー、レストラン(以上複数)、クラブ・ラウンジにはなかった、③アンガーの男性用トイレに行った時何も見なかった、の言葉だけで、ボープレーはちょうど、「搭乗開始」のサインが1つだけ出ていたシカゴ便だと決めつける(3枚目の写真)。ここにも。❶ラウンジはもっとたくさんある。❷土産物店は? ❸トイレは1ヶ所ではないし、個室は調べていないし、女性用トイレもある。❹そもそも、シカゴ行きがゲートA1で、東京行きがゲートA2ということ自体ふざけているのだが(国際線ターミナルと、国内線ターミナルは全く別で、行き来できない)、それは先に指摘したので、これほどの大空港で「搭乗開始」が1ヶ所というのもあり得ない。❺こんな状況で、シカゴへ行ったと断定するのは危険で無謀で絶対に無理がある。それに、❻香港行きでチェックインしたのに、どうやってシカゴ行きに再チェックインしたのか? そして、飛行機がシカゴ国際空港に着いた後、ボープレーは機の出口手前、リボンズは、ボーディング・ブリッジの曲がり角に立って、乗客の手荷物をチェックしている。ヘス夫人の後には、松葉杖を付いた男とその家族がいて、間隔が5mは離れている。その時、ヘス夫人が右手に持っていた “ビニール袋を入れたバッグ” を通路の床に置き(4枚目の写真、矢印)、上に被せてあったマフラーを手に取ったことで、❶ビニール袋のすぐ後ろから撮影しているカメラには、ラジコンカーの箱が映る。すると、リボンズはすぐにボープレーを呼ぶのだが、4枚目の写真の状態で、❷遠く離れたリボンズに、袋の中に入っているラジコンカーの箱など見えるハズがない。だから、これも。2人は、なぜか急に増えた乗客に阻まれて前に進めず、ヘス夫人が再びミニカーに乗ってタクシー乗り場に直行したので、タクシーに乗るところを遠くから目撃し、タクシーの番号をチェックするのがやっと。4人は、タクシー会社に行き、その番号の運転手が戻ってくる夕方まで待っていて、女性が降りた通り名と、建物がチューダー様式で、クリスマス・イルミと、クリスマス・ツリーがあり、車庫への道が雪かきしていない唯一の家という情報を得る。
  
  
  
  

一方、ヘス夫人の家では、夜暗くなってから、向かいの家に住んでいる8歳のアレックスが車庫への道の雪かきをしている(1枚目の写真、矢印はプッシャー)。全部終わってから、ドアベルを押すとヘス夫人が出て来たので、アレックスは 「全部終わったよ、ヘスさん。ぼく、へとへとで汗びっしょりだけど、全身おおってるから見えないけど」と言う。ヘス夫人は、「雪かきはもっと早くやってくれるんじゃなかった?」と文句を言う。「でも、ぼく…」。「言い訳なんか聞きたくない。あんたは、約束を破ったの。何を言っても無駄よ」。「ごめんね。タダでいいから」。「そしたら、近所の人たちに、不当に雪かきさせられたって 言いふらすんでしょ?」。アレックスは首を横に振る(2枚目の写真)。ヘス夫人は、サンフランシスコまで行ったので、せっかく有名なサワードウのパン〔伝統的なパン種を使って焼いたパン〕を買ったのに、どこかのバカが袋を間違えたと文句を言った後、「これがバイト代よ。こんなバカげたもの要らないから」と言って、ラジコンカーをアレックスに渡す(3枚目の写真、矢印)〔こちらの方が、バイト代より高い〕。箱をもらったアレックスが、お尻をポリポリ掻いたので、「レディの前で、お尻を掻くなんてなんて失礼な」と叱られる。アレックスが通りを渡って反対側にある自分の家に戻った直後、タクシー会社で情報を仕入れたボープレーたちが様子を探りにくる。ほとんどの家はチューダー様式で、クリスマスルイミやツリーもあり、車庫への道の雪かきもやってあるので、ビニール袋を間違えて持っていった女性の家の特定はできなかった。しかし、この区画には家が14軒しかないので、その中の1つにあることは確か。郊外住宅〔共働きで、子供は学校〕なので、明るくなってから1軒ずつ調べることにする。
  
  
  

家に戻ったアレックスは、雪かきの時の服のまま自分の部屋に行くと、まず金魚に餌をやる〔時計は午後6時2分前〕。このシーンで、アレックスが8歳の割に “仕掛け” に長けていることが分かる。1枚目の写真の矢印は、金魚の餌の入った缶が自動的に傾いて、その下の青い容器に少量を入れるところ。このあと、青い容器は、その右にある赤い円と棒でつながっているので、時計回りに回転して金魚鉢の中に餌を入れる。餌やりが終わると、アレックスは玄関に戻り、帽子を脱ぎ、どうして首筋が痒いのか鏡で見てみる。分かったのは、首に赤い斑点が5-6個、額に1個あったこと。そこで、今度はジャンパーを開け、シャツをめくってみると、お腹に赤い斑点が幾つもある。その頃、母は電話で上役に週末は子供のために休みを取りたいこと、家が改装ちゅうであること〔ここでしか言及されない→あとで、急に、大掛かりな工事中の部分が出て来る〕を訴える。父も電話で水曜にクリーブランド〔シカゴの東500キロ〕に商品説明に行くと言っている。忙しい家族だ。自分の部屋に戻ったアレックスは、もう少し大きな鏡の前に立つと、シャツを開いて上半身を見てみると、体が赤い斑点で一杯だ(2枚目の写真)。今度は下も脱いで、全身が斑点だらけになっているのをみると〔だから、さっき、痒くてお尻を掻いた〕、家じゅうに響き渡る悲鳴を上げる。飛んできた両親は、アレックスの口に体温計を入れるが、赤い斑点だけで、母は 「水疱瘡ね」と言う。それを聞いた兄は、「こんなのペテンだよ。バッタが死んじゃったから、科学レポートが出せなくなったから」と言い〔実は、直前に兄は部屋でバスケットボールで床を何度も叩いていて、アレックスが飼っていたバッタを潰した〕、アレックスを仰天させる(3枚目の写真)。
  
  
  

アレックスは、ベッドで横になっていてもつまらないので、“吸盤付きゴム” を発射する玩具の拳銃を取り出し(1枚目の写真、矢印)〔アメリカのネット通販で見ても、これほど本物そっくりの “すべて真っ黒” のゴム発射銃はないので(ゴムの色はカラフル)、この映画のために特注したもの〕、TVの画面に向かって発射する。そして、屋根裏部屋に行くと、大事に飼っている白ネズミに、望遠鏡を覗かせた後で、「これから、もっと面白くなるよ」と話しかけ(2枚目の写真、ネズミの入っている入れ物から見たアレックス)、小さな望遠鏡にTVのリモコンを付けたものを、ヘス夫人の居間のTVに向け、リモコンでTVをつけたり、番組を変えたりしてびっくりさせる(写真はないが、❶リモコンの電波が50m離れた向かいの家のガラス越しのTVまで届くハズがない)。その間、ボープレーの手下は電話線を切断して隠れ家として借りた家に接続するよう細工したり、カモフラージュ用に犬を1匹盗んだりする。母にはもう一度、上役から電話がかかってきて、社長が来るから必ず来いと強要され、①1時間だけ、②アレックスが呼んだらすぐ帰る、③それが嫌なら解雇すればいいと言い、相手の返事も聞かずに切る。母がアレックスの様子を見に行くと、石鹸の泡が出る拳銃の玩具〔あとで再登場〕で遊びながら、「ぼくが重い病気だって、チャーリー〔上役〕に言った?」と訊くので(3枚目の写真、矢印)、母は玩具を取り上げ、「チャーリーは知ってるわ」と答える。「家族休暇法〔正しくは、家族医療休暇法〕は?」。「1時間以内に必ず戻るわ」。
  
  
  

その言葉に続いて、母は、ヘス夫人にアレックスが1人になると電話したと話すと、アレックスは、「電話なんかしたの?」と嫌がる。「何かあったら、すぐに来るって。不満そうだったけど」(1枚目の写真)。アレックスは、「もし、竜巻が起きたら?」(2枚目の写真)と、冬に起こらないことを想像して言った後に、重大な心配をする。「わるものは?」。「日中だから大丈夫よ」。「どうして? 日中は、誰も家にいないよ。ぼくは8つだけど、そのくらい分かる。大人のわるものだったら、分ると思わない?」(3枚目の写真)。このどんぴしゃりの心配に対し、母は、「この辺りは、すごく安全なの。それに出入りできる道路は1本だけ。ドアは全部鍵をかけるし、あなたは携帯の番号を知ってる。すぐ戻るわ」と言って、仕事に出かけてしまう。
  
  
  

母が出掛けると、何もすることがないアレックスは、屋根裏部屋に行き、天窓の1つを開けて外を見てみると、誰もいないハズの時間帯なのに、犬を連れた女〔リボンズ〕やランニングウェアの男〔アンガー〕がいて、首をひねる。そして、偶然望遠鏡で近くの家を覗いみると、窓に男〔ボープレー〕の姿が見える(1枚目の写真、矢印)。泥棒だと直感したアレックスは(2枚目の写真)、すぐに2階にある両親の寝室の固定電話まで走って行くと、すぐに「911」をプッシュ。出た女性の担当者に、「ドロボーを見たよ」と話す。「あなた一人?」。「ママは少し前に出かけたんだ。ぼく水疱瘡だから」。「住所をどうぞ」。「ドロボーがいるのは ぼくの家じゃない、ステファンの家だ」と言って、住所を教える(3枚目の写真)。しかし、運の悪いことに、アレックスが男を見た時は、手下が車で迎えに来る20秒前で、電話を掛けた時には、とっくに家から逃げ出していた。ボープレーは、迎えに来たジャーニガンに、「何もない」と伝える。その車と入れ違うように母が帰ってくる。車の音を聞いたアレックスは1階まで駆け降りると、外まで出て行き、「ステファンの家にドロボーだよ! 望遠鏡で見たんだ! 犬を連れた女やランニングウェアの男も。見たことのない人たちだったけど、犬はジョニー・アレンの犬だったよ。だから警察を呼んだんだ」と興奮して話す。その時、パトカーのサイレンが聞こえる。2人が見ていると、パトカーの警官はドアを蹴破り、同時に警報装置が鳴り出し、中には誰もいなかった。
  
  
  

警官の1人は、家の前で立って見ていたアレックス母子の前まで来ると、母に向かって 「防犯ベルは作動していました」(1枚目の写真)〔ボープレーは、電子装置で防犯ベルを解除し、2つの鍵は伝統的な方法で解除した〕「家の中には誰もいませんでしたし、何かが盗まれた形跡もありませんでした」〔ボープレーの目的は、パリジャンのビニール袋を探すこと〕と報告する。そして、アレックスに向かって、「坊や、デマの警報は冗談では済まないんだよ」と注意する。アレックスは、「デマなんかじゃない。ホントに男がいたんだ」(2枚目の写真)「男は、グレーのバンに、2人の見張りと運転手を載せてた」と、事実を述べるが、警官は嘘だと思い込んでいるので〔高度な技術を持った特殊な犯罪者が、こんな平和な郊外住宅に来るハズがない〕、母に向かって 「我々の仕事は真剣なものなんだと息子さんに注意して下さい」と言って立ち去る。息子の悪戯に怒った母は、アレックスをベッドに連れて行き、強制的にベッドに寝かせる。アレックスが 「ママに話を信じてもらうためには、35歳にならないとダメなんだ」と文句を言うと、母は 「生意気言うんじゃないの。パパとママは ステファンの家のドアも弁償しなくちゃいけないのよ」と叱る。この場面は、前2作にはなかった面白いシチュエーション。貶すばかりではいけないので、褒めるべきところは褒めないと(を付けよう)。一方、FBIの本部では、担当部長がエージェントを集め、「奴らは偽名で登場手続きをしたが、香港便には乗らなかった。奴らはまだ国内にいるに違いないが、それ以上は分からん。だが、何としてもチップを見つけねばならん」と訓示している(3枚目の写真)。
  
  
  

その夜、隠れ家で、防犯ベルが鳴らなかったのに、すぐに警察が来たのは、誰かが通報したに違いないという結論に達する。そして、コンピュータを立ち上げ、その頃にはグーグルマップが存在しなかったので〔グーグルマップの北米版のリリースは2005年2月〕、住宅の形まで描いた地図〔こんなものが存在したのだろうか?〕を開き、今朝ボープレーが侵入した家を赤く示し、ほとんどの家からこの家が見えることが分かる(1枚目の写真、その一例)。「俺たちが気付かず、見逃している誰かだ」。翌朝、父が飛行機に乗るために家を出ていった後、アレックスはさっそく屋根裏に登って監視を始めるが、老人を装って杖をついて歩いてくる不審な男〔アンガー〕に気付くと(2枚目の写真)、すぐに窓を閉める(3枚目の写真、左下の矢印はアンガー、右上の矢印は閉めた窓)。参考までに、4枚目の写真は、ロケ地の家。
  
  
  
  

アンガーが通り過ぎると、アレックスはすぐに窓を開け、望遠鏡で覗く。すると、昨日のの家の窓越しに、昨日と同じ男の顔がはっきりと見える(1・2枚目の写真)。アレックスは、2階の両親の寝室まで駆け下りると、再度警察に電話(3枚目の写真)。今度は、会社の建物の前に車を停めた母や、空港で搭乗しようとする父にも、メールで「911」と知らせる。
  
  
  

パトカーが住宅地に入ってきたのを、監視役のリボンズがすぐにボープレーに知らせる。パトカーが家の前に停まり、警官がドアに向かっても、窓から犯人が見えたので、アレックスは今度こそやったと思う。しかし、この家には防犯ベルがセットされていなかったので、ボープレーの電子装置はなかったし、ボープレー自身は、天井に張り付いて隠れ(1枚目の写真)、警官はそれを見逃してしまう。ちょうど帰宅時でスクールバスから降りた住宅地の大勢の子供達に、警官は、「病気で学校を休んでいる子が、間違った警報を送ったんだ」と、比較的おだやかに説明するが、アレックスに対しては、今度は警察署長が出向いて説教をする。「君が警察に通報したのは、この2日間で2回だ。警察に通報するということは、重大な行為なんだよ」。アレックスは、「ぼく、昨日もドロボー見たし、今日もドロボー見たんだ」と主張する。「家には、誰もいなかった」(2枚目の写真)。「ジョニー・アレンの犬はどうなの? 昨夜ジョニーと話したら、月曜の朝に盗まれたって言ってたよ」。「ジョニーは、それを見たのか?」。母は、「アレックス、署長さんに謝って、部屋に行きなさい」と指示し、アレックスは 「いい市民で、ごめんなさい」と、署長を非難するような謝罪をして(3枚目の写真)、部屋から出て行く。この2回目の設定とアレックスの台詞は、この映画の中で、一番よく出来ている(ここも)。アレックスは、2階に上がって行くと、兄からは 「警察に2回も悪ふざけ。これでお前も、要注意人物だ」と言われ、姉からは 「この先一生、助けを求めても 助けなんか来ない」と言われる。さらに、「近所の笑い者」「家名穢し」との嫌味も。アレックスは 部屋に閉じ籠る。
  
  
  

アレックスは、自分で描いた近所の絵を見ながら(1枚目の写真、泥棒が入った家には✖印が書いてある)、白ネズミに向かって、「最初はステファン、次がヘスさん、この次はきっとアルコットだ。家に押し入って何も盗ってかないドロボーなんているか? ぼくが考えてること分かる? 奴ら、きっと何か特別な物を探してるんだ。それを誰が持っているか分からないから、全部の家を調べてる。それって、一体何なんだろう?」(2枚目の写真)〔この推測は、アレックスがかなり秀才であることを示している。ごく普通の少年のケヴィンとはそこが違う〕。そして、窓辺に立つと、「誰も何もしないのなら、ぼくがやるっきゃない」と言う(3枚目の写真)。この言葉は、『ホーム・アローン』の「ここは僕の家だ。僕が守る」に対比する言葉。ケヴィンの言葉が自分の家に限定されていたが、アレックスの言葉が対象がもっと広くなっている。この言葉もに値する。
  
  
  

ここからが、ラジコンカーの活躍する場面。『ホーム・アローン3』だけの独自の素敵なアイディアなので、ラジコンカーの登場する5つの節は、すべて。翌朝、ボープレーが予測通りアルコットの家に入ろうとしているのを、道路の凸型カーブミラーを見て知ったアレックスは(1枚目の写真、矢印)、警察が信じるように、泥棒の行為をビデオで撮影してやろうと、ラジコンカーの屋根にワイヤレス・ビデオトランスミッター付きのビデオカメラをガムテープで固定し、その映像を、屋根裏部屋に持って来たTVで見ながら、ラジコンカーを操縦する〔ラジコンカーの受信範囲は一般に100~500mだが、映画では100mくらい〕。2枚目の写真は、ラジコンカーがアレックスの家の玄関のペットドアから出て、走り出したところ。だから、屋根裏の窓から直接見ながら操縦している(3枚目の写真)。ラジコンカーは、家の前の道路を横断し、反対側の家の車庫への道を走って行く。この辺りからは、ビデオカメラ映像を映したTVを見ながらの操縦となる。そして、アルコットの家のペットドアから中に入る。
  
  
  

観ていて感心したのは、ラジコンカーが予期せぬ室内の2段の段差の前に来た時。アレックスは一旦ラジコンカーを階段の手前で停めると、勢いよくバックさせる。ラジコンカーの車輪は、かなり大きくて凹凸が一杯付いているので〔現在、販売しているものも〕、その摩擦力で、敷いてあった小さな絨毯が段差の方に動かされ、段差を斜めにカバーする。アレックスは、その絨毯の斜道の上を通ってラジコンカーを段差の下に降りさせる(1枚目の写真)〔後で、戻らないといけないので、これしか方法がない〕(実に合理的で、ここだけでも)。すると、前方に泥棒の姿が見えたので、ゆっくりと近づき、スタンド台の下で停まる。しかし、ラジコンカーの走行には音がするので、ボープレーは変な音に気付く(2枚目の写真、矢印)。男が振り向こうとしたので、アレックスは慌ててラジコンカーをバックさせ、スタンド台の後ろに隠れる。しかし、それで安心していると、男の姿が横に消え、アレックスが 「これで、逮捕だな」と、白ネズミににこやかに話していると、いきなり男の顔がTVの全面に映り(3枚目の写真)、アレックスはびっくりして、後ろにひっくり返る。
  
  
  

ボープレーは、このラジコンカーが、探していた物だと気付く。しかも、自分の顔がビデオで撮られている。そこで、ラジコンカーを奪おうと手を伸ばした瞬間、起き上がったアレックスはラジコンカーをバックさせ、ボープレーはスタンド台に頭をぶつける。その間に、ラジコンカーは向きを変え、絨毯の斜路を上がってキッチンに入るが、急なカーブを強いたために回転して時間を潰し、そこにボープレーが現われ、キッチンテーブル上に置いてあった洗濯籠に触れて床に落とし、ラジコンカーはその中に埋もれる。ラジコンカーの姿が消えたので、ボープレーは床に落ちた洗濯物の山に近づいてくる。そこで、アレックスはアルコットの家に携帯で電話をかけ、その携帯を持って兄の部屋まで走って行き、英語を上手に話せるオウムに、如何にも電話がかかってきたようにしゃべらせる(オウムには人間がしゃべる言葉を真似る能力はあっても、これほど完璧には話せないので、この部分のみ)。ボープレーが電話に気を取られている隙に、アレックスは、「行け!!」と叫ぶと、フルスピードでラジコンカーを衣類の下から脱出させ、90度曲がってペットドアに向かう。しかし、ドアから飛び出した時の衝撃、上下逆さまになって動けなくなる(3枚目の写真)。
  
  
  

ドアから外に出たボープレーは、ラジコンカーのビデオカメラから、中のビデオカセットを抜き取る。そして、リボンズにラジコンカーを渡すと、「家の中に女がいる。戻って処分する」と言い残して家に戻り、リボンズは何重にも巻いたガムテープを外して中のチップを奪おうとする。その姿を望遠鏡で見たアレックスは(1枚目の写真、矢印はラジコンカー)、その状態でラジコンカーを前進させる。ラジコンカーは、リボンズの顔にぶつかって雪の地面の上に落ち、そのまま家との境にある木の塀の穴の開いた部分にぶつかって突破。隣の庭に入る。一方、家の中に入って行ったボープレーは、声が電話機のスピーカーモードからのものだと分かり、唖然としているところに、リボンズが駆け込んできて、「失くしちゃった!」と叫ぶ。「何だと?!」。そこから、4人によるラジコンカーの捕獲競争が始まる。まず、側道を走って追いかけたのがアンガー。途中で、ラジコンカーに引き離されるが、受信範囲を超えたため、ラジコンカーが突然ストップする(2枚目の写真)。アレックスは、側道に近い側の窓まで走って行き、アンガーが飛びかかった瞬間、ラジコンカーを再スタートさせ(3枚目の写真、矢印)、捕獲を免れる。
  
  
  

ラジコンカーが表通りを走っていると、反対側からジャーニガンが運転するバンが走って来る。もしぶつかったら、大切なチップが壊れてしまうので、ジャーニガンは右車輪を掻いた雪の上に乗せ、ラジコンカーとぶつからないようにする(1枚目の写真)。ラジコンカーは、バンとすれ違った後、左に曲がって側道に入り、そこから、植木の間を潜り抜けて右側の庭に入って逃げる。その間、ボープレーとリボンズが正面衝突したり、ジャーニガンの車がアンガーとぶつかったりする場面がある。最終的に、ラジコンカーは、アレックスの家の隣の庭に入る。そこには、子供達が滑って遊べるように、境界の塀に向かって雪の坂道が作ってある。ラジコンカーは、その坂道のかなり手前から勢いをつけて全速で駆け上がり、ジャーニガンの頭の上を飛んで(2枚目の写真、矢印)、アレックスの家の庭に飛び込み、アレックスが無事回収する。しかし、証拠のビデオが手に入ったと喜んでボタンを押すと、中のカセットは抜き取られていて、アレックスはがっくりする(3枚目の写真、矢印はカセットが入っているハズの場所)。
  
  
  

アレックスは、「奴ら、テープを奪ったのに、どうして 必死にラジコンカーを追いかけたんだろう?」と疑問に思いながら、ラジコンカーの蓋を外すと、中から余分のチップが アレックスの描いた地図の上に落ちる(1枚目の写真、矢印)。アレックスがチップをひっくり返してみると、「AXUS/防衛技術/アメリカ空軍」「USAF 9034-456B/NSB 100-76-C-0729」と2ヶ所表示がある。そこで、アレックスは、近くにある空軍兵の募集事務所に電話をかける(2枚目の写真)。1人しかいない担当者は、「空軍って書いてある玩具はいっぱいある」と言いながら、アレックスの言った番号を聞き取ってくれる。一方、散々な目に遭った4人組は、テイクアウトの夕食を食べながら、お互い文句を言い合うが、リボンズが有益な意見を口にする。「ガキよ。ガキに決まってる」(3枚目の写真)「ポリ公は2回来て、2回ともガキを信じなかった。だから、自分でやろうとしたのよ。他には、考えられないわ」。ボープレーは、「きっと3026番地の家だ。おもちゃの車の作動範囲内にあるし、俺が入った3軒とも見ることができる」と、これも的確な意見。そこで、目標をアレックスの家に絞って、明日の日中、攻撃をかけることに決める。
  
  
  

夕食の時、母は、①夫は明日の夜帰宅する、②自分は、四半期に一度の顧客会議が正午から午後 5 時まであるので、兄と姉は学校が終わったらまっすぐ家に帰ってアレックスの面倒を見ること、の2点を話す。しかし、兄はホッケー、姉は体操の部活があるから無理だと言い、ヘス夫人に頼めばいいと勧める。それを聞いたアレックスは、ヘス夫人の世話にはなりたくないので、「ぼく一人で大丈夫」と答える(1枚目の写真)。そこに、電話がかかってきて、母が出る。アレックスに聞こえるのは、母は、「ええ、彼は、水疱瘡でずっと家にいるわ」と言った後で、アレックスに 「ブラッドベリー・クロヴィスって子 知ってる?」と訊く。「うん」。「これは、彼のお母さんからの電話。あなた、彼から おもちゃの自動車取り上げた?」。それを聞いて、アレックスはびっくりして、首を横に振る(2枚目の写真)。母は、「彼のラジコンカーは、お向かいの女性の方からいただいたの」と説明する。アレックスは、これは、犯人が、ラジコンカーの持ち主を確かめるために掛けたに違いないと確信し、電話機のボタンを押して、強制的に通話を遮断する。これで、電話を掛けていたリボンズは、チップがどこにあるか100%分かる。母は、アレックスが電話を勝手に切ったことを責める。アレックスは、「お願い、クロヴィスさんと話さないで」と頼む。「なぜ?」。「危険なんだ」。「『危険』? 何、言ってるの?」。「嘘なんだ。何もかも。クロヴィスさんじゃない」。「それって、どういうこと?」。アレックスは、兄と姉がニヤニヤしながら見ている前で、引き出しから、学校の生徒の電話帳を取り出し、母に、クロヴィスの家に電話をかけるよう求める。
  
  
  

しかし、予めジャーニガンが地区の電話線に細工をしておいたので、アレックスの家の電話から発信があったことがすぐに分かる。ジャーニガンは、電話が要求した通話先を、隠れ家の電話に切り替える(1枚目の写真)。従って、母からの電話を取ったのは、さっき掛けたのと同じリボンズ。だから、「クロヴィスです」と嘘を言った後、「先ほどは、電話が切れたみたいで」と、上手に話を続けられる。母が、何の違和感もなく話をしているのを見たアレックスは、「奴ら、電話を横取りしたんだ」と気付く。そこで、一体そんな凄い相手と、どう戦えばいいのか考える(2枚目の写真)。自分の部屋に行ったアレックスは、チップを手に持ちながら、前よりもずっと長い決意を、白ネズミに向かって述べる。「奴らは、あした、ぼくを襲いにくる。誰も信じてくれない。両親も、兄も姉も。警察も空軍も。誰一人。なら、どうすればいい? 隠れちゃうのは、間違ってる。戦うことこそ、正しい道だ。ぼくがやったことを見れば、みんな理解してくれる。ぼくが、ホントのことを言ってたんだと分ってくれる。だから、ぼくは泣いたり、悲しんだり、怖れたりなんかしない。奴らは大人で犯罪者だけど、ここはぼくの近所で、これはぼくの家だ。相手が年上だろうが大きかろうが、構うもんか。奴らには、ここでぼくを倒せない」(3枚目の写真)。『ホーム・アローン』より、よほどカッコいい(♕♕)。
  
  
  

その夜、家族が眠ってから、アレックスは明日の戦いの用意を一部行う。兄の部屋に忍びこんで、花火をたくさん頂戴するので、オウムに静かにしてるよう、クラッカーを1枚渡そうとする(1枚目の写真、矢印はクラッカー)。オウムは、「倍かゼロか」と言う(オウムが自主的に目的を求める言葉を発することなどあり得ないので、)。アレックスはもう1枚渡す〔重要な伏線〕。オウムが静かにしているので、アレックスは兄のベッドの下から花火の一杯入った箱を取り出し、庭のイグルー〔イヌイット族の雪の家〕の中にセットする。次にアレックスがやったのは、玄関から入って来る敵に、頭上から、本の一杯詰まった箱を落とすための準備(2枚目の写真、上の矢印は本、下の矢印は斜めに置かれた大きな木箱)。3番目にアレックスがやったことは、石鹸の泡が出る拳銃の玩具の、上に乗った3つの球を外し(3枚目の写真、矢印)、黒いスプレーをかけて、本物の銃のように見せること。TVでは、天気予報で、明日のシカゴでの激しい吹雪を警告している。
  
  
  

翌朝、スクールバスが出た後、犬の散歩をしているように見せかけるため、盗んだ犬を連れたリボンズがアレックスの家にやって来る。それを窓から見ていたアレックスは、白ネズミに、「始めるぞ」と声をかけると、犬笛を咥え、ペンチを持って玄関の洋服掛けに行く。リボンズがチャイムを鳴らすと、すぐにチャイムの電線をペンチで切断する。出社前で忙しい母は、「アレックス、出てもられる?」と頼む。アレックスは、ドアの右側の窓から犬笛を吹く。犬はリボンズの前を通って右側に移動する。アレックスは次に左側の窓に走り、また犬笛を吹く。犬は、リボンズの後ろを通って左側に移動する。アレックスは、もう一度右側の窓まで走り、犬笛を吹く。リボンズは、少しドアから離れて “応答の全くない家” を見上げていたので、犬はリボンズの前を通って右側に移動(1枚目の写真、矢印は脚に巻き付いているリード)。アレックスは、玄関の左側面の裏口から外に出ると、玄関が見える角まで来ると、誰もいないので押し入ろうとドアに接近したリボンズの向こうにいる犬に向かって犬笛を吹く(2枚目の写真、矢印)。犬は、リボンズの後ろを走ってアレックスに駆け寄り、足に巻き付いたリードが急に引っ張られたので、リボンズは悲鳴を上げて地面に押し倒され、そのまま犬に引きずられる(3枚目の写真、矢印の方向)。犬は、家の角の手前にある植え込み突っ込んでリボンズをメチャメチャにし、車庫への道に投げ出すと、早々と逃げ出したアレックス目がけて走って行く。裏口で待っていたアレックスは、犬のリードを外し、ジョニー・アレンの所に戻るよう指示する(ここまでの設定に無理や不自然さはなく、リボンズがかなり痛めつけられるので)。
  
  
  

ここで、場面はFBI本部に変わり、空軍兵の募集事務所からの情報が、FBIの担当部長に届けられる。情報が、盗まれたチップの資料と一致したので(1枚目の写真)、部長は直ちにシカゴに向かう。アレックスが階段の下で待っていると、母が2階から降りて来て、「天気予報見ておいてくれた?」と訊く。「問題なし、だけど、コートがいるね」。それを聞いた母は、コートを取りに玄関に行こうとするが、アレックスは、玄関の洋服掛けの前まで先回りすると、「待って、コートならぼくが持ってくから、ママはコミューターカップ〔通勤時に飲む飲料用のカップ〕用に 激ウマのホットコーヒーでも作ったら」と勧める(2枚目の写真)。母が、感謝してキッチンに行くと、アレックスは、慎重に洋服掛けを開ける。すると、泥棒用に昨夜準備した、“扉を開けたらボクシングのグローブが猛烈な勢いで飛び出て来る装置” が正常に作動し、グローブが目の前に飛び出す(3枚目の写真、扉の裏に貼り付けてあるのは、“くしゃみをする前のような声をだす人形”)。アレックスは、グローブを付けたイスを支えていた棒を床から拾うと、戸棚の中に入り、イスに乗って元通りの位置に戻し、イスが動かないよう、棒で服掛け棒に当てて固定する。そして、母のコートを持ってキッチンに行く。
  
  
  

母は、出かける前に、「ねえ、坊や、今週はホントにごめんなさい。こんな風に行ったり来たりして、胸が張り裂ける思いよ」と謝る。アレックスは 「いいって。ママのせいじゃない。時代だよ」と慰める。母は、クロヴィスについても尋ねる。「クロヴィスさん来た? ブラッドベリーの名前がラジコンカーに書いてないか、確かめたいとか言ってたけど」。「ママがシャワーを浴びてる時に、来たよ」(1枚目の写真)。「遠慮なしに、言ってやった?」。「バッチリ」。「懲りるといいわね」。「コリゴリさ」。母は最後に 「家のこと、よろしくね」と言い、アレックスは 「ぜんぶ任せて」と応じる(2枚目の写真)。母が出て行った後に、アレックスが見せる、“えもいわれぬ寂しげな顔” は、この映画の中でベストワンの表情(3枚目の写真)。
  
  
  

アレックスは、早速、昨夜できなかった 外回りの来襲準備に取り掛かる。最初にやったことは、銅線に赤い毛糸を巻きつけながら玄関の手前の植え込みの隙間に赤いバリケードを作ること(1枚目の写真、矢印)。コンセントは、120Vの電源に差し込むが、これだけでは感電しても大したダメージは与えない。『ホーム・アローン2』では、電圧増幅器もしくは電流増幅器を使って、ケヴィンが、前者なら死にはしないがスタンガンのような電撃を、後者なら筋肉が痙攣して呼吸困難になるような死に至る感電を、マーヴに与えている。しかし、アレックスにはそんな機械はない。次にやったことは、プールの位置を変えること。もちろん、本当に変えることなど不可能なので、大量に降り積もった雪を利用し、プールに出入りする時のハンドレールの位置を変え、後は、雪掻き用の板レーキを使って、プールの縁のように見えるように、四角の段差をつける(2枚目の写真)。そして、本当のプール〔凍結した水面の上に雪が積もっている〕の上に置くためのトランポリンを、畳んだ状態で、小型の雪掻き機で引っ張って運んでくる(3枚目の写真)(が付いているのは、8歳の子が運転しているから。それに、写真から分かるように、トランポリンは結構重くて、型のステンレスパイプの支柱が4つ付いている。問題は、❶こんな重い物を、どうやってプールの上に置いたのか? ❷プールに張った氷は、こんな集約的な〔細いステンレスに集中する〕重みに耐えられるのか? という大きな疑問がつきまとう(これもに相当)〔後で、さらなる、もっと大きな問題も発生するが、それについては後述〕。次のシーンでは、プールの上に置かれたトランポリンの “メッシュベッド” の上に雪が積もっていく様子が映される。そのあとで、アレックスは家の中の増築中の部分に行き、作業用に置いてあったベニヤ板を外す(4枚目の写真、矢印)。そして、玄関の前に100個ほどのビー玉を置き(5枚目の写真)、その上に玄関専用のマットを置き、ビー玉を見えなくする。
  
  
  
  
  

そして、来襲。最初のシーンはジャーニガン。ジャーニガンは増築中の裏口から入ろうとするが、なぜか、ドアの前にあるイスに座ってしまい、そのため、バッテリーから配線された電気ショックで、腰に巻いた弾薬が暴発する(1枚目の写真)。がついているのは、家屋に浸入しようとするプロの犯罪者が、侵入する前に、そこに置いてあるイスにわざわざ座ることなどあり得ないから。このシーンが、来襲シーンの最初にあることで、観客をがっかりさせてしまう。次は、玄関から入ろうとしたアンガー。赤い毛糸のバリケードに、幼い子供らしい手書きの文字で、「危険/電気エネルギー/感電死しないで」と書いた紙が、クリップでとめられているのを見て、「ガキだった頃は ずっと昔だ。ガキってのは、信じられんくらいバカだってことを、忘れちまってた」と言うと、ペンチを取り出して赤い電線を切ろうとすると、すぐに火花が散り、高電流が流れた体は震え始め、髪の毛が逆立ち、電光が地面に向かって走る(2枚目の写真)。電流増幅器もなさそうだし、ペンチで触れただけで、こんなことが起きるのは変なので、をつけようかとも考えたが、『ホーム・アローン2』の二番煎じ(3枚目の写真、黄色の枠)の方に重きを置くことにした。同じ、脚本家が、2と3で、同じようなギャグを使うのは最低の判断だ。
  
  
  

このあと、アンガーは、赤いバリケードを走って飛び越え、玄関マットに着地するが、ビー玉の上に置いてあったので、そのまま玄関ドアに激突する(1枚目の写真、矢印の方向に滑る)。似たようなシーンは、『ホーム・アローン2』にあるので、これも二番煎じ(2枚目の写真、黄色の枠)。3枚目の写真は、ドアにぶつかったアンガーが転倒して痛がるシーン。
  
  
  

アレックスの頭の良さを象徴するのが、バーベルが屋根の上に、見えるように置いてあるシーン(1枚目の写真、矢印は釣り糸)。転倒しているアンガーの所にやって来たボープレーは、赤いバリケードの電源を抜いてから撤去し〔この時、撤去されたのは赤い毛糸を巻いた銅線だけで、電流増幅器などの機械類は一切ない〕、アンガーを半分バカにしたように彼の脇を通って玄関ドアの前まで行くと、ドアから上に伸びてバーベルまで達している細い釣り糸に触れ、ドアを開けるとバーベルが落ちてくる仕掛けだと思い込み、それを防ぐためにナイフで釣り糸を切る。しかし、ここはアレックスの方が一枚上で、釣り糸とバーベルのペアは見せかけ。釣り糸を切ったことで、別ルートの細工が作動し始め、ボープレーが 「賢いガキじゃないな」と言っていると、昨夜アレックスが本を一杯詰めていた木箱のストッパーが外れ、天窓のガラスを突き破って木箱が2人の上に落ちて来て(2枚目の写真、矢印は木箱)、頭を直撃する。本が飛び散るのは、ぶつかってから(このシーン自体は、ボープレーを騙すほど賢いという意味で)。しかし、『ホーム・アローン2』には、金具の詰まったバッグが開いて、バッグではなく、中の金具が泥棒の頭に振ってくるシーンがある。箱本体の落下と、中身の落下で、若干異なっているが(3枚目の写真、黄色の枠、矢印は落下する金具)、頭の上に何かを落とすという点では同じ。
  
  
  

少し前のシーンになるが、母からアレックスの世話を頼まれたヘス夫人が、アレックスの家に向かうシーンがある。ボープレーとリボンズは、近くに引っ越してきた者だと嘘を付き、運送屋が間違えて荷物をどこかのガレージの中に置いたので、調べさせて欲しいと頼む。その言葉を信用したヘス夫人は、リボンズをガレージまで連れて行く。ガレージに入ると、リボンズはガレージの扉を下ろし、ヘス夫人は初めて異常に気付く。ここで、前節までの失敗シーンが入る。そして、ヘス夫人が、ガレージ内のイスに座らされ、動けず、声も出せないよう、ガムテープで縛られる。そして、リボンズは最後に、「覚えておいて。空港のセキュリティチェックで荷物を取る時、間違えないことね。あんたが、向かいの小さな男の子を嫌いだといいんだけど」と言うと、横のドアを開けっ放しに出て行く。一方、イスに座って感電するようなワザとらしさを見せたジャーニガンは、次のシーンでは、もっとワザとらしいことをして、観客を呆れさせる。すなわち イスを投げ捨てた後、数歩前進すると、木の枝から垂れ下げられた釣り針が肩に引っ掛かる。異常を感じたジャーニガンは臨戦態勢を取る。そこまでは、自然な動きだが、そのあとがいけない。その場で方向を何度も変え、その度に釣り針の先が結びつけられている水道の栓が徐々に開いて行く。そして、最悪の行為は、背中に付いた釣り糸に気付き、それを手で引っ張ったこと(2枚目の写真、矢印は釣り糸)。イスで懲りた後で、罠だと分かっているのに、そんなもの誰が引っ張るかと言いたい。しかも、かなり引っ張らないと、水道の栓は開かない。ようやく栓が開くと、冷たい水がジャーニガンにかかるのだが、馬鹿らしくて見ていられない(■■)。
  
  

一方、木箱にぶつかり、そのあと、散乱する本に埋もれていた2人が立ち上がろうとすると、ドアの前でそれを郵便受けの穴からチェックしていたアレックスは、頃合いだと思い、家の中に張っておいた別の紐をハサミで切る(1枚目の写真、矢印)。2人が立ち上がって玄関に向かうと、紐で止められていたバーベルが、2人の頭の上に落ちてくる(2枚目の写真)。この、別ルートによるバーベル落下は見事だ()。ただし、落とす方法はずっと単純だが、鉄棒が頭に当たるシーン自体は 『ホーム・アローン2』にもあった(3枚目の写真、黄色の枠)。
  
  
  

ここに、ヘス夫人のガレージから戻って来たリボンズが2人の前に現われ、情けない姿を皮肉る。ボープレーは、①自分はこの玄関、②アンガーは北側、③リボンズは南側から侵入するよう、3つに分ける。最初に映るのがアンガーで、彼はナイフを木製の雨戸〔ガラス窓は上げてあり、両開きの雨戸が閉まっていて、中央の簡単な引っかけ鍵で開かないようになっていた〕の隙間に入れ、鍵を解除すると、固い雨戸を思い切り力を入れて開く。すると、中には、テーブルの下に座ったアレックスが待ち構えていて(1枚目の写真)、漆喰の詰まった風船をアンガーの顔目がけて発射する。顔に正面から当たったため、アンガーは庭に仰向けに倒れたが、顔は漆喰で真っ白(2枚目の写真)。しかし、①漆喰ではなく白ペンキで、②ぶつけられたのではなく、滑ってぶつかった拍子にペンキ缶の棚が倒れた結果、と言う違いはあるが、結果的に似たようなシーンは、『ホーム・アローン2』にもあった(3枚目の写真、黄色の枠)。
  
  
  

次が、この場面初登場のリボンズ。南側からの侵入を指示され、門扉止めを外そうと、右手を何も考えずに木の扉の上から手を入れると、シート床用接着剤の缶の中に手を突っ込む(1枚目の写真)。手袋をはめていたので、手袋を取られただけで解放された。そこで、リボンズは木の扉を乗り越えて中に飛び降りると、膝下まで粘度の高い真っ黒な物質の中にはまり込み、バランスを崩して膝を付くが、その時、水平に張ってあった釣り糸に触ってしまい、頭上に花の植わった植木鉢が落ちてきて(2枚目の写真)、気を失い、粘着力のある真っ黒な物質の中に顔から倒れ込む。これは、明らかに■■。なぜかと言えば、粘着力のある真っ黒な物質を幅2m、長さ5-6mにわたって通路に敷くようなことが、短時間で、8歳の子に出来るとは思えないし、材料が入手できるとも思えないから。リボンズのシーンは、その間に、アンガーとジャーニガンの場面をはさみ、さらに続く。立ち上がったリボンズは、深さが10cmほどに浅くなった粘着力のある真っ黒な物質を、一歩一歩足を引き抜きながら歩き始めるが、バランスを崩して、今度は仰向けに倒れる(3枚目の写真)。すると、2番目の鉢植えが顔めがけて落ちてくるので、恐怖に慄く。ここも、前に続き、同じ意味で■■。それに、ちょうど顔の真上に落ちてくるようなタイミングは、あり得ない。
  
  
  

少し戻って、ジャーニガン。彼は、増築中の2階から侵入しようと思い、横にあった倉庫に梯子があるのを見つけ、やれありがたやと、取りに入る。すると、天井の梁に座っている子供のスボンと靴が見えたので、敵を見つけたと大喜びし、こっそり近づき、足を掴んで思い切り引っ張る(1枚目の写真)。そこまでは、当然の行動でいいのだが、ジャーニガンは以前と同じように、引っ張っても落ちて来ないのに、何度も力任せに引っ張り(子供が座っているだけなら、すぐに落ちてくる)、電動の芝刈り機を作動させてしまう。ジャーニガンは、落ちてきた “服を着た猿の大きな人形” にびっくりし、頭にきて投げ捨てる。すると、頭の上の梁から芝刈り機が落下してきて、逃げもせず、叫ぶだけのジャーニガンの頭の上に落下、お陰で、ジャーニガンの頭の毛は、変な風に刈り取られる(2枚目の写真)(人形だと分かった段階で、とっさに逃げれば済むこと)。『ホーム・アローン』や『ホーム・アローン2』では、ボスのハリーの頭に火が点くシーンがあるが、こちらの方がまだワザとらしくない(3枚目の写真、黄色の枠)。
  
  
  

自ら玄関からの突入を選んだボープレーが、ドアがネジ釘で柱に固定されていたため、電気ノコギリを使ってドアを削って侵入する(1枚目の写真、矢印の紐は、以前紹介した “くしゃみをする前のような声をだす人形” につながっている)〔削ったのは、ネジ釘の部分だろうが、そこがネジ釘で固定されていると、なぜ分かったのだろう?〕、ボープレーがドアを大きく開けて入ったことで、人形が声を出し、ボープレーはガキがうっかり声を出したと誤解する。そして、「殺してやる」と言って戸棚の扉を開けると、グローブがボープレーのお腹を直撃〔このシーンに不自然さはない〕、そのまま後ろに倒れると、腰に付けていた特殊な(Mossberg 50653 590 Shockwave 12 Gaugeに似た)大型銃が暴発する(2枚目の写真、矢印は人形)。それをドアの横から覗き見たアレックスの ”痛そう!” という表情は面白いが、本来なら、凄い音なので、一時的に耳が聞こえなくなると思うのだが…
  
  
  

一方、顔に付いた漆喰を少し削って、鼻呼吸ができるなったアンガーは、先ほどやられた窓の雨戸をもう一度開き、下げられていたロールスクリーンを上げようと手を突っ込むと、窓を支えていた定規が外れ、窓がアンガーの頭に落ちてくる(1枚目の写真、矢印は吹っ飛んでいく定規)。そのあと、アンガーは、三度目の正直でこの窓に挑戦。今度は窓は無事開き、安心して体を中に入れ、足を下ろそうとすると(2枚目の写真、矢印)、その下には、接着剤の一杯入ったメガブロックの容器が2つ置いてあった。窓から侵入し、そこに何かが置いてあるシーンは、『ホーム・アローン』で、マーヴがクリスマス・ツリーの尖った飾りの上に足を下ろして痛がるシーン(3枚目の写真、黄色の枠)に似ている。ただ、この時は、痛いだけだったが、下に車輪の付いたメガブロックの容器に両足を突っ込んで抜けなくなったアンガーの方が、その後も後(あと)を引いて、より悲惨。
  
  
  

次が、ジャーニガンで唯一のないシーン。ジャーニガンは、散々な思いをした倉庫から梯子を持ち出すと、増築中の2階の窓に上がって行く。それに気付いたアレックスは、急いで2階まで上がって行き、そこにジャーニガンが到着。アレックスを見たジャーニガンが、やったとばかりに喜ぶと(1枚目の写真)、それに合わせるように、アレックスは恐れおののいた顔をする(2枚目の写真)。ジャーニガンが捕まえてやろうと、何も考えずに中に入ると、敷いてあった作業用の布の下のベニヤ板は外されてなくなっていたので、そのまま落下(3枚目の写真、矢印の方向)。アレックスは、「バイバイ」と声をかける。ジャーニガンは1階の床も壊して、地下室のトイレの上に落ちる。この “工事中で床のない空間に落ちる” シーンは、『ホーム・アローン2』の完全な二番煎じ(4枚目の写真、黄色の枠、矢印の方向に落下)
  
  
  
  

真っ黒な物質から何とか脱出したリボンズは、ドアに通る3段の木の階段の前まで来る。普通に上がってもいいのだが、階段の板が細工されているかもしれないと思ったリボンズは、両側の手すりの上に両手を置くと、踏み板を歩かずに、勢いを付けて、ドアのあるテラスまで飛ぼうとする。しかし、手すりを支える柱に、ノコギリで切込みが入っていたため、手すり全体が左右に分かれ、リボンズはそのまま落下、階段の踏み板も割れる(1枚目の写真。矢印の方向に倒れる)。これは、『ホーム・アローン』で、ケヴィンが階段に水をまいておき、それが凍って、ハリーが転んだシーン(2枚目の写真、黄色の枠)のようにならないために、リボンズが取った対応が、かえって仇になった場面。しかし、木材をノコギリで半分ほど切っておき、悪者が通ると、落下するという発想は、『ホーム・アローン2』で、木の梯子を登ろうとしたハリーが、梯子ごと地下室に倒れ落ちる場面(3枚目の写真、黄色の枠、矢印)で既に使用済み。
  
  
  

リボンズは何とか立ち上がると、かなり後ろに下がり、連続宙返りをしながら階段の部分を通り越してテラスに着地。自分の身体能力を誇りつつ、180度廻ってドアを向き、一歩踏み出すと、床の5枚の板が、手前の梁を中心に回転し、できた穴からリボンズは垂直落下する(1枚目の写真、矢印は回転軸になった梁)。その時の悲鳴を聞いたボープレーが、ドアを開けて外に出ると、踏んだのは同じ板なので、リボンズと同じように落下し(2枚目の写真、矢印は、2回目なので、踏み板が外れて剥き出しになった梁)、リボンズの上に落ちる。このシーンには、が付けてある。理由は、このような細工をこの箇所に施すには、大工の高度な技術が必要で、8歳の子供には100%不可能だと判断したため。
  
  

一方、両方の足が、コロコロ動く箱に固定されてしまったアンガーが、バランスを取りながら、苦労して少しずつ前に進んでいると、地下で凄い音がしたので、助けようと地下室へのドアを開ける。しかし、そこには、入口に一本の木材が打ち付けてあったので、アンガーのメガブロックの容器はそれにぶつかって停止。勢い余ったアンガーは、空中で一回転しながら地下室に落下(1枚目の写真)。こうした、つるつる動いて制御できない状況は、『ホーム・アローン2』の地下室の床にまかれた滑る液体の上で体を止められなくなったマーヴが、ペンキの缶の棚に激突するシーンでもあった(2枚目の写真、黄色の枠、矢印の方向に棚が倒れ、マーヴはペンキで顔が白くなる⇒以前、言及)。アンガーは、階段の途中に着地、そのままガタガタと階段を滑り降りて行き、正面にあった台にぶつかり、上に置いてあったネズミ捕りに指を挟まれ、床に尻もちをついた衝撃で、反対側の手に持っていた銃を天井に向けて撃ってしまい、それがトイレの下水管に当り、頭から溜まった黒い汚水を被る(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

この地下室で、散々な目に遭った4人が顔を揃える。ここで、雪で動けなくなった車の中で、母が携帯の番号を押すシーンが一瞬映る。固定電話は地下室にも置いてあるので、4人にも電話の音が聞こえる。アレックスは、大急ぎで両親の寝室に走って行く。地下室の電話機は、部屋の隅に置いてあり、左側にはスチール棚が置いてあるので、ボープレーは 電話機の右側の青い布の上に拳銃(Glock Model 22)を置く(1枚目の写真、右の矢印はボープレーが置いた銃、左の矢印は “吸盤付きゴム” を発射する玩具の拳銃)。アレックスが、息を切らして受話器を取ると、母が、「息を切らして、どうかしたの?」と訊く。「何でもない。順調だよ」。「ひどい天気なの。今から家に帰るわ」。「ゆっくりでいいよ。家に帰らなくていいから、スタン〔兄〕とモリー〔姉〕を迎えに行ってよ」。「それでいいの?」。「うん、ヘスさんとダイヤモンド・ゲームやってるから」。会話がここまで来た時、アレックスの勇気ある態度を ある意味感心しながら聞いていたボープレーは、はっきり手元を確かめずに、電話機のそばに置いてあったアレックスの玩具の銃を手に取る(3枚目の写真、矢印は吸盤付きゴム)。このシーンが■■。なぜなのか? それは、たとえ、Glock Model 22と寸分変わらぬ形の “吸盤付きゴム” を発射する玩具の拳銃が存在するとしても、重さが違う。装填されたGlock Model 22の重さは34.38オンス〔974グラム〕。普通に売っているソフト吸盤ピストルの重さは100グラム以下。プロの犯罪者なら、持った瞬間に違うと気付かないハズはない。このあと、ボープレーは 「何て勇敢なガキだ」と言って電話を切り、銃をポケットに入れる。
  
  
  

ボープレー以外の3人は、1階をすべて調べてどこにもアレックスがいないので、2階に行く。その際、アレックスは白ネズミを攻撃用に放した後、間一髪で階段脇の物入れの中に隠れるが、ドアが閉まるのが、階段を上がって来たアンガーに見られてしまう(1枚目の写真、左の矢印は閉まるドア、右の矢印はアンガーの視線)。そこで、アンガーは、やったとばかりにドアノブを回して開けようとする。見られているとは思わなかったアレックスはびっくりする。外では、アンガーが、「貴様がやりやがったひでぇ苦痛の仕返しをしてやるぞ」と言いながら、鍵をこじ開けようとしている。そこは小さな空間で、アレックスの背後は棚になっていて、そこに、タオルとかアイロンなどの生活雑貨が入れてあり、隠れる場所などない。焦ったアレックスは、ドアの裏側にぶら下げされた袋の中に隠れる。ドアを開けたアンガーも、まさかそんな小さな袋に入れるとは思いもよらないので、気付かない(2枚目の写真)。アンガーは、ここに隠れたと主張したので、リボンズとジャーニガンにバカにされる。そこで、場面は学校に変わり、除雪車2台を先頭に、パトカーやFBIの車5台がこれ以上ないスピードで校内に入ってくる。校長室では、母とスタンとモリーが待機させられている。そこにFBIの部長が入って来ると、身分証明書を提示し(3枚目の写真、矢印)、「あなたの息子さんと話しに来ました」と言い、スタンに向かって、「ラジコンカーのコンピューターチップについて空軍に電話したのは君だね?」と訊く。「いいえ」。母は、「アレックスだわ。もう一人の息子よ。何が起きたんです?」と訊く。「彼は、危険にさらされています」。「ここにはいないわ。家よ」。部長は、部下に 「すぐ移動だ」と命じる。心配になった母が、「なぜ、危険なの?」と訊いても反応なし。スタンが、「ママが訊いてます」と言っても、「立場上、それについては話せない」とすげなく言い、部屋を出て行こうとする。モリーは、部長が明けたドアを無理矢理閉めると、「あなたが言った 『それ』 ってのは、私の弟よ」と、強く出る。部長は、仕方なく 「私たちは、彼が、北朝鮮のテロ組織のために働く国際犯罪組織によって国防総省の契約企業から盗まれた極秘の電子デバイスを持っていると考えています」と答え、3人をだけでなく、アレックスを叱った警察署長までびっくりさせる。
  
  
  

アレックスは、屋根裏部屋に上がって行くと、すぐに、Residential Dumbwaiter Elevator〔家庭の荷物用小型エレベーター〕に乗って(1枚目の写真)、地下室まで降りて行き、エレベーターの床板を外す(2枚目の写真、矢印)。これから外に出るので、電話機の横に置いておいたジャンパーを取ろうとすると、ボープレーが間違えて残していった本物のピストルが台の上に転がる(3枚目の写真、矢印)。アレックスは、「ヤバい」と言って手に取ると、近くのゴミ箱に捨てる。最後に、ゆっくりと歩行する玩具のロボットをエレベーターの手前の台に乗せ、昇降ボタンに向かって進ませてから、地下室を出て行く。
  
  
  

アレックスは、家から外に出ると、屋根裏部屋にいるであろう泥棒達に向かって大声で叫ぶ。「ぼくは、そんなトコにいないよ、デカくて、おバカで、法律破りの、まぬけ君たち!」(1枚目の写真)。そして、チップを取り出すと、「これ、見えるかい?」と笑顔で言って、隣の家に向かう。アレックスが屋根裏部屋に行ったことは全員が見ているので、アンガーは、「どうやって、あそこまで?」と驚く。リボンズは、窓からに決まってると言い、2人に飛び降りるよう強制する。2人は、雪の積もったトランポリンの真上まで行き〔もし、アレックスが飛び降りたとしたら、雪がきれいに積もっているハズがない〕、そこから飛び降りる(2枚目の写真)。2人がトランポリンに接触した直後の映像が3枚目の写真(■■)。雪が積もっていたハズのメッシュベッドはどこにもなく、2人は、そこを貫通して、プールの氷を突き破って、凍るような水の中に落ちる。これはトランポリンなので、メッシュベッドがあれば、必ず体は跳ね返る。なら、雪の積もったメッシュベッドはどこに消えたのか? こんなことが起きるためには、トランポリンをプールの上にセットする前に、まずメッシュベッドを外し、それからプールの上に置き、雪が10cm以上積もっても破れないような大きくて薄いビニール・シートを、凍ったプールの上で、本物のようにきれいに張る必要がある。そんなことは、8歳の子どころか、普通の大人にだってできない。だから、このシーンは、不可能で、現実には200%あり得ない〔この映画の中で最悪〕。最後に、アレックスがセットしたロボットがエレベーターのボタンに到着し、エレベーターが上昇してくる音が聞こえる。リボンズは、アレックスが逃げた方法が分かり、エレベーターが到着すると、中が狭いのでお尻から体を押し込もうとして、床がないので、そのまま地下まで落ちて行く(4枚目の写真、矢印の方向)。




アレックスが ヘス夫人のガレージに入って行くと、夫人がガムテープでイスに縛り付けられ、寒さで気を失っている。アレックスが、「ヘスおばさん」と声をかけて頬に触ると、意識が戻る。アレックスは口に貼り付けられたテープをはがし、自分が着ていた青いジャンパーをはおらせ、「もう大丈夫。ぼくがここにいるよ」と言いながら、他のテープをはがしていると、窓が開いてカーテンが動いているのに気付く(1枚目の写真)。すると、カーテンの影からボープレーが現われ、「貴様がアレックスだな?」と声をかける。ボープレーは、3人の手下を放っておいて、今まで、こんなところで何をしていたのだろう? もし、彼がアレックスを見つけて、後を追ってきたんだとしたら、姿を見ているハズなので、「貴様がアレックスだな?」と訊くはずがない()。ボープレーは、「今日、貴様は一つ学んだな。善良な市民は代償を払わんといかん。貴様は、隣人を助けようとして、俺の罠にはまったんだ」(「罠」。この台詞には大きな矛盾がある。ボープレーは自分たちがヘスにしたことを、アレックスが見ていたことは知らない。従って、アレックスがヘスを助けにくるのを予想できるハズがない。こんな無茶な脚本を、恥ずかしげもなくよく書いたものだ■■)。アレックスは、「ヘスおばさんを 家に入れてあげて。年を取っていて、体がすごく冷たいんだ。お願い」と頼むが、ボープレーはアレックスを掴むと、台の上に乗せ、「チップをよこせ!」と迫る。アレックスは、「盗んだものだ。あんたのもんじゃない」と、渡すつもりは全くない(2枚目の写真)。ボープレーは、“吸盤付きゴム” を発射する玩具の拳銃をアレックスに向け、「チップだ、クソガキ。チップをよこせ」と迫るが、銃の先端の吸盤を見たアレックスは、「その銃だって、あんたのもんじゃない」と 笑顔で言う。「何だと?」。「ぼくの銃だよ」。ボープレーが上に向けて銃を撃つと、吸盤付きゴムが飛び出して鏡にくっつく。アレックスは、“石鹸の泡が出る玩具の拳銃を黒く塗ったもの” を取り出し、「これが、あんたの銃だ」と言ってボープレーに向け(3枚目の写真、矢印は泡の出る口)、ボープレーはガレージから逃げ出す(2つの玩具の銃に、プロの犯罪者が騙されるハズがない)。
  
  
  

ボープレーが去った後、アレックスはヘス夫人を家まで連れて行き、イスに座らせ、「スープでも飲まないと。好きなのある?」と訊く。ヘス夫人が 「ありがとう。でも要らないわ。大丈夫だから」と言うと、アレックスは 「外はホントに寒かったのに、タフなおばさん〔tough old bird〕だね」と褒め、夫人も 「あなたって、とても優しい子なのね。今まで気付かなかった」と褒め、アレックスは 「おばさんだけじゃないよ」と受ける。この温かいシーンの後、除雪車2台を先頭に、パトカーやFBIの車5台、プラス、母が運転する車が住宅街の道路に入って来る(1枚目の写真)。大勢の警官が自宅に突入していくのを見て、母はアレックスのことがすごく心配になるが、ヘス夫人の玄関からアレックスが 「ママ!」と叫んで、走ってくるのを見て(2枚目の写真)、母は心からホッとする。そして、息子の方に歩いて行き、走って来たアレックスを抱きしめると、「ホントにごめんなさい。あなたの言ったことに耳を貸さなくて」と謝る。そこに、スタンが来て 「超カッコいいな」、モリーも 「あんた、ヒーローね」と言ったので、アレックスの顔が綻ぶ(3枚目の写真)〔『ホーム・アローン』と『ホーム・アローン2』では、ケヴィンが褒められたことは一度もないので、こちらの方が、観ていて爽快〕
  
  
  

そこに、FBIの部長が、地元の警察署長と一緒に来て、「君がアレックスか?」と訊く。「うん」。部長が身分証を見せると、アレックスは盗まれたチップを渡す(1枚目の写真、矢印)。そして、「通りの向かい側に、スープと、足を診てもらう医者が必要な高齢者がいるよ」(2枚目の写真)「プールには男が2人、地下室には女が1人、もう1人は逃げた」と報告し、兄と姉をびっくりさせる〔FBIが追っているような4人を、弟が1人でやっつけた〕。それを聞いた部長は、ボープレーの写真を見せ、「彼か?」と訊く。「うん」。「私は、7年間もこいつを追ってるんだが、いつも取り逃がしてしまう」と悔しがった後で、「ありがとう」と一言。次のシーンでは、プールに落ちて、腰の周りに氷が張り付いた男2人と、狭いエレベーターの中で手足が曲がってしまった女が、警察に取り押さえられる(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

映画のラスト間際に、第2の最悪シーン。ボープレーは、よりによってアレックスの庭のイグルーの中に隠れている。そこに、①2階のアレックスの部屋にあったラジコンカーに乗ったスタンのオウムが(どうやって1階まで運んだ?■■)、自ら操縦してイグルーに突入して行く(あり得ない)(なぜ、オウムにボープレーの居所が分かった?■■)。そして、「何 心配してる、ロクデナシ」と、人間のようにしっかりした言葉で言うと()、ラジコンカーに突き刺してあったマッチ棒()を咥えると、前夜にアレックスがセットしておいたスタンの花火群の先端まで飛んで行き、「カウントダウン」と言うと、「5、4、3、2」。ここで、ボープレーはクラッカーを1枚取り出して、「これ、やるぞ」と言う。オウムは、同じシチュエーションで、アレックスに言ったように 「倍かゼロか」と言う。ボープレーは1枚しか持っていなかったので、オウムは、木の柱でマッチを擦って火を点け、それを花火の導火線に燃え移らせる(2枚目の写真)(オウムが火?■■■  完全にバカげていて、この瞬間、映画は、栄光ある『ホーム・アローン』シリーズの続編から、単なる子供向きの三流映画に成り下がる)。オウムは、ラジコンカーに乗って 「ショータイムだ!」 と言いながらイグルーから脱出し、そのあと、花火が一斉に爆発する(3枚目の写真)。警官が直ちに駆け付け、ボープレーは逮捕される。それにしても、アレックスが花火をセットした時、何らかの目算があった訳で、なぜそれを生かすような脚本が書けなかったのだろう。脚本を書いたジョン・ヒューズにすべての責任がある。ジョン・ヒューズの大親友ジョン・キャンディが1994年に急死した以後、ジョン・ヒューズから “映画の鬼才” が消えてしまったとされる。20世紀フォックスは、なぜ、別の新鋭に脚本を任せなかったのだろう?
  
  
  

アレックスの父が帰宅すると、家には多くの職人が入って応急修理をしている(1枚目の写真、矢印は父)。一方、主要な人物が集まったキッチンでは、アレックスがヘス夫人に、「今まで、水疱瘡にかかったことある?」と訊く。返事は、1930年頃にかかったというもの。あまりに昔の話なので、全員が笑う(2枚目の写真)。そこに、父が姿を見せる。アレックスは、「パパ!」と叫ぶと、父に走り寄って抱き着く。父は 「大変だった割に元気だな」と言うので、母が電話したのか? アレックスは 「あいつら、ぼくに触れることすらできなかった」と、満面の笑みで言う(3枚目の写真)〔後で、水疱瘡のワクチンを打っていなかった犯罪者4人は、顔中赤い斑点ができているが、「触れることすらできなかった」のなら、いつ感染したのだろう?〕。スタンは 「チップを盗まれたコンピュータ会社は、アレックスに報奨金をくれるんだ」と言い、モリーは 「6桁の金額なのよ、すごいわね」〔最低の100000ドルでも、1997年の為替レートで1150万円〕と追加。アレックスが、「で、何か持ってきてくれた?」と父に訊くと、渡されたものは、強盗と戦った時と同じラジコンカー。
  
  
  

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