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Max Keeble's Big Move マックス・キーブルの大逆襲

アメリカ映画 (2001)

ディズニーが製作した子供向き映画。2500万ドル〔当時の32億円〕の製作費は完全な子供向き映画としては、かなり高額だったが、興行収入はお粗末な脚本と演出のせいで1863万ドル〔当時の23億円〕とコケてしまった。しかし、それは決してマックス・キーブル役のアレックス・D・リンツのせいではなく、彼は100%見事な演技を披露している。この映画は、マックスが中学に入学した月曜日から土曜日までの僅か1週間を描いている。月曜は、入学早々、ひどい虐めに遭い、その夜、父から遠くのシカゴへの引っ越しが告げられる。引っ越しの日は金曜日。入学したばかりの学校にはあと3日しか通わないことが分かる。火曜の授業の際、マックスは、引っ越してしまえば、ここにはいなくなるので、徹底的に復讐しようと誓う。復讐の相手は、4人。罪の重さから言えば、マックスが大好きだった動物保護施設を壊して、学校のフットボール場にしようと画策する校長〔目的は、元フットボールの名選手で、今、市の教育長になっている人物が引退するので、その後釜になるための媚びへつらい〕が1番。2番はトロイ・マギンティで、マックスを虐めの最初のターゲットにし、体じゅう生ゴミだらけにした。3番は移動式アイスクリーム屋の主人で、マックスを始終バンで追い回す。4番は、ドッブスで、ランチ代を奪った。復讐は水曜と木曜に行われる。ところが、木曜の夜になり、父が引っ越しの中止を宣言し、マックスは大慌て。金曜は、その贖罪の日となる。最後の土曜は短い後日談。映画をダメにしたのは、❶映画の冒頭に、マックスの夢と題して、映像的には幼稚で、内容的にも低品質の場面が4分も続き、一気に失望させる点あらすじでは、カットした〕。❷校長の台詞と演技があまりにわざとらしく、つまり、幼稚園レベルで、映画の品格を著しく下げている点、❸マックスの親友(ローブ)、教師の1人、マックスの父のコスプレが、あまりに非現実的な点。これらは、すべて、監督と脚本(3名)の失策だが、こんな連中を選んだプロデューサーにも責任がある。

マックス・キーブル役のアレックス・D・リンツ(Alex D. Linz)については、1つ前に紹介した『スペース・ミッション/宇宙への挑戦』を参照されたい。両方とも2001年の映画だが、こちらの方が撮影は後で、年齢も12歳。こちらの方が紹介が後回しになったのは、頼りにしているIMDbは公開順になっているが、撮影順では逆転していたため。

あらすじ

映画の冒頭4分弱は、マックスの夢。内容の大半は、アイスクリームの移動販売車のオヤジとの争い。この長い長い悪夢が、この映画の最大の欠点。冒頭で一気に映画の品格を落とし、それが “夢” だと分からない観客にとって、「こんな映画を1時間以上観続けるなんて、という嫌悪感すら抱かせる。だから、ここでは、DVDのボーナスの中の「ALEX TO THE MAX」の最初のシーンを代わりに紹介する。たくさんの少女のファンが待っているところに、マックスの乗った車がやって来る。マックスは車から降りると、洒落たサングラスをはめ(1枚目の写真)、女の子達が殺到、マックスからサインをねだるというもの(2枚目の写真、矢印がマックス)。どうせ夢なら、こちらの方がすっきりしていて、しかも長さは僅か30秒。ところで、このDVD(ディズニーの正規版)の本編映像、なぜ4:3なのだろう? ボーナスの中の削除シーン12点はすべて16:9なのに? 
  
  

そして、映画と同じように、マックスのベッドサイドの目覚ましが7時になると、「起きろ、バカタレ!」と叫んで夢から目覚めさせる(1枚目の写真)〔わざわざ示したのは、ここからが映画の本編だから〕。目が覚めたマックスの独白が流れる。「そう… 夢だったんだ。人生は、夢のようにはいかない」。この表現は、前節の変更版の方が よりぴったりする。「今日から僕は 中学生。変化があることは、間違いない」(2枚目の写真)。その後、マックスは朝食テーブルに着くが、そこでも、母を紹介する独白が流れる。「この家の仕上げに6年もかけて没頭してきた。取り憑かれてきた、って感じだけど」。そして、父が、ゴムで作った真っ赤なロブスターのコスプレを来て現れる。それを見たマックスが思わずニヤニヤする(3枚目の写真)。父の仕事は広告マンなので、ボスの命令で、どんな変な格好でもしなくてはならない。最初の登校日なので、父が、「送ってこうか?」と訊くと、笑われること必須なので、マックスは 「いいよ、バスに乗ってくから」と断る。
  
  
  

スクールバスでは、マックスの横に変なローブを着た小太りの少年が座る。「みんな、変人だと思ってるけど。彼は、ちっとも気にしていない」(1枚目の写真)「僕の大親友だ。ロバート。でも、ローブって呼んでる」。そこに、「やあ、ボクたち」と手を振って、女の子が乗り込んでくる。「もう一人の大親友、ミーガンだ。どこへ行くにも、クラリネット。決して、手放さない」。ミーガンは、通路で転んでしまう。マックスが 「大丈夫?」と訊くと、ミーガンは 「タンク(戦車)みたいに頑丈よ」と言い、ローブは 「ああ、汚水処理タンク(水槽)だ」と言い返し、ミーガンも 「おむつ臭いローブ着た 変人のくせに」と逆襲。ミーガンは、マックスが楽器を持っていないので、「バスーンはどこ?」と訊く。マックスは 「考えたんだけど、もう中学生だ。バンドなんて、ダサくない?」と訊き返す(2枚目の写真)。「ダサいって? あなた、なに言ってんのよ? 私たちが、カッコいい時なんてあった?」。「だから 言ってる。カッコ良くしようって」。バスを降りた3人は、カーティス中学校の前に並んで立つ(3枚目の写真)。そうした新入生を窓から見ているのは、史上最悪の校長ジンドレーク。「やって来たぞ。ニキビ面、歯列矯正器、シラミ、鼻水ずるずる、だぶだぶズボン。だが、どいつも、わしの成功への踏み台だ。それを昇りきれば、そこは、夜空を焦がすネオンサインの海」〔この男は、停年退職する教育長の後釜を狙っている〕
  
  
  

そして、カーティス中学校の “イジメっ子の輝く伝統” の今年の主役は、トロイ・マギンティ。先輩が、恐れおののく新入生に話した言葉は、「毎日違う生徒を選んでは、叩きのめす。奴は、独自の方法で、次の獲物が誰か、みんなに知らせる」。そして、壁に張り付いた生徒達の前で、トロイ・マギンティは 「マックス・キーブル」と書いたTシャツを披露する(1枚目の写真)。その頃、マックスの教室では教師が名前を呼んで、出席を取っていた。その時、教室に設置されたTVに、「諸君の校長からの通達」という表示が出て(2枚目の写真、矢印)、国会議事堂の写真を背景に、如何にも取ってつけた黒い背広に赤いネクタイの校長が、「重大発表があるので、全校生徒は3時限目に講堂に集合しなさい。出席は必須なので、全員出席すること、欠席は許されない」と言うと(3枚目の写真)、リモコンを押してカメラを切ると、“黒い背広に赤いネクタイ” の飾り〔背中の部分はない〕を取り外し、丸々と太った中年の秘書に、「ジンドレーク最高の演技」と言って席を立つが、リモコンの押し方が悪くてスイッチが切れていなかったので、そのすべてが生徒達の目に入り、初めて見る1年生の生徒達が笑い出す。
  
  
  

2時限目の授業は、生命科学のグラマラスな女性教師。「科学というと難しそうだけど、授業は楽しくするつもり」と言い、最初に棚からフェロモンの入ったビンを取り出して見せる(1枚目の写真、矢印)。そして、「自然界の愛の媚薬。無臭で無色〔重要な情報〕。化学が生んだ悩殺的な引力が、一滴で異性を吸い寄せる」と、あまり教育的でない表現で説明すると、「じゃ、証明してみせるわ。誰か、窓を開けてくれるかしら?」と言う。男子生徒全員が手を上げる。当たったのは、ローブ。彼が窓を開けると、右手にフェロモンを付けた教師の腕に、1羽の鳥が飛んで来て止まり、フェロモンを付けた手を見る(2枚目の写真、矢印)。「ほらね。もうイチコロよ」。
  
  

2時限目が終わり、マックスが廊下を歩いていると、反対側から、新聞配達する時に見たことのある年上の美女が歩いてくる。そちらに見とれたマックス、教室のドアが開けられたのに気付かず、ぶつかって廊下に転倒(1枚目の写真)。それを見た美女が、目の前まで来て 「ねぇ、大丈夫?」と訊いたので、マックスは 「ぜんぜん 平気」と言いながら、直ちに起き上がる。「どこかで、会ったかしら?」。「僕、新聞配達少年。名前はマックスだよ。ジェンナ」(2枚目の写真)。「あ、そうか。今日から、ここの生徒ね?」。マックスは、ジェンナが持っていた箱を見て、「君も、吹くんだ… クラリネットを」と訊く。「第1クラリネットよ」(3枚目の写真)。「僕も、バンドに入ってた。バスーン担当」。「そう。じゃ、またね」。「君のハートを、バスーン」。マックスは、ミーガンには、「バンドなんて、ダサくない?」と言ったくせに、急に、バンドに参加したくなる。
  
  
  

その直後、マックスは トロイ・マギンティに廊下で会う。マックスは、大きくなってからのトロイに会ったのは初めてだったので、虐めっ子になったとは知らずに、笑顔で 「元気?」と訊く。しかし、トロイは 「お前は一番最初の獲物だ。ありがたく思え」と言う。「彼とは、小さい頃から遊んでた。あれは、僕の4回目の誕生日だった。出しものは、カエルのマック・グーグルス〔マックスの父のコスプレ〕。しかし、中に1人だけ泣き出した子がいた。それが、当時のトロイ・マギンティ。「マック・グーグルスに、食べられちゃう!」と泣き叫び、他の子供達から、「弱虫、弱虫、弱虫」と笑われる。「トロイは、こんなに大きくなった」。トロイは、いきなりマックスを掴むと、「何すんだよ!」の抗議を無視して外に連れて行く。そして、「トロイの、料理教室。最初に、チキンの一切れを溶けたバターに漬けます」と冗談ぽく言うと、マックスを泥の中に投げ込む(1枚目の写真)。「次は、ベトベト肉に、パン粉をまぶします」。泥で全身真っ黒になったマックスを、何かは不明だが、粉の出口の下まで連れて行き、一気に粉をかける(2枚目の写真)。「完ぺきだ。下ごしらえ完了。では、チキンをオーブンに入れましょう」。そう言うと、廃棄した料理などの生ごみが溜まっている大きな鉄の箱の蓋を開ける。マックスは 「ゲロしそう! おえっ!」と悲鳴を上げる(3枚目の写真)。
  
  
  

3時限目が始まり、講堂に集まった全生徒の前で、校長は、「今週の木曜、ネボース教育長が わが校を視察に来られる。そこで、罰則の基準を許容度ゼロから ゼロ以下に下げることにした。問答無用で、即座に厳罰処分だぞ」と 厳しく言う(1枚目の写真)。その後は、急に明るくなり、我が校のフィトボールチームを勝利に導くため東欧から3人の交換留学生を呼んだと話し、巨大な3人を紹介する。そして、「だから、競技する場所が要る。諸君、君らに進呈しよう。ピッカピカの、フットボール・スタジアムを」と言い、その模型を見せる(2枚目の写真、一緒にいるのは校長に批判的な秘書)。すると、突然、生徒席側の真っ暗な出入口が開き、1人の生徒が入って来る。校長は、堂々と遅刻した生徒に対し、「そこの、お前! チビ助! 悪戯小僧!! 名前を言え?!」と命じる。食べ物のカスで激しく汚れた生徒は、前に進み出ると、「マックス・キーブル」と名乗る(3枚目の写真)。校長は、そのひどい姿が虐めによるものだということに気付きもせず、「目を付けたからな、マックス・キーブル。ブラックリスト入りだ」と宣告する。マックスが 「でも、僕は…」と弁解しようとしても、「座れ!」の一言。
  
  
  

集会が終わり、3人で外に出てくると、メーガンは 「何て、中学なの! マギンティが、こんなことするなんて…」と怒り、ローブは 「校長が言ってたよ、ケンカを売られても無視しろって」と言いながら、マックスにくっついているスパゲティを取って口に入れようとし、メーガンが止めさせる。メーガンから、「そんな格好で いられないわよ」と言われたマックスは、「そんなの、分かってるよ」と言い(1枚目の写真)、芝生のミスト・スプリンクラーで全身をきれいにし(2枚目の写真)、ガーデンニング用のブロワーを使っていた用務員のおじさんに、「乾かしてくれる?」と頼んで濡れた服の水分を吹き飛ばしてもらう(3枚目の写真)。
  
  
  

ここで、マックスの最後の敵登場。背広にネクタイ、フォーマルシューズ、アルミのスーツケースを持ったヒジネスマンのような中学生。「ドッブスは、株式市場の天才児。10歳で百万長者に、12歳で全財産を失った。今、彼は取り戻そうと必死。カモるのは生徒」。ドッブスは、PDA〔2000年初頭に流行った携帯情報端末〕を見ながら、「12時15分、キーブルとミーティング」と、予定をチェックする(1枚目の写真、矢印はPDA)。ミーティングといっても、食堂でランチの順番待ちをしているマックスを列から押し出し、「お前の資産運用を、手助けしてやる」と言い、「しばらく 俺に預ければ、投資信託で金持ちになれるぞ」と嘘を言って、ランチ代を盗むだけのあくどい行為(2枚目の写真、矢印)。ランチタイムが終わって、マックスが友達2人と廊下を歩いていると、トクデナシの校長に呼び止められる。「君は、私が、バカ騒ぎや 戯言を、奨励してると 思い込んでるようだが、私は、奨励〔encourage〕してない、漿励〔excourage、存在しない単語〕してる」と、訳の分からないことを口走る。
  
  

そのあと、マックスはバンドの練習場に行く。マックスがバスの中で言っていたことと違うので、ミーガンは 「あら、何しに来たの? バンドはダサいって、言ってたくせに」と冷やかす。「そうだけどさ、よく考えてみたら、バンドもかなり…」(1枚目の写真)。そこに、ジェンナが入ってきたので、「ホットだ」。ジェンナは、ミーガンに 「そこ、私の席なんだけど」と注意する。「名前でも 書いてあるんです?」。「そうよ」。イスには、大きく 「ジェンナ/第1クラリネット」と白い大きな字でプリントされているので、気付かなかったミーガンのミス。ジェンナが専用のイスに座ると、マックスはさっそく 「やあ、ジェンナ」と笑顔で声をかけ、ジェンナは後ろを向いて 「あら」と言い、ミーガンは嫌な顔をする(2枚目の写真)。
  
  

授業が終わった後、マックスは、行きつけの動物保護施設に立ち寄る(1枚目の写真)。マックスが最初に行ったのが、チンパンジーの入っている檻。「やあ、タッド。寂しかった?」と声をかける。1つ前に紹介した『Race to Space』のビリーそっくりだ。「この子は、タッド。動物保護施設のボスだ。赤ちゃんの頃から面倒みてきたから、弟みたいなモンだ」。すると、仔ヤギの世話をしていた飼育員が、「よお、マックス」と声をかけ、「この仔ヤギに、ミルク やってくれるか?」と頼む。「いいよ。何かあったの?」。「知らんのか? ここが 閉鎖になる。どっかの奴〔校長〕が土地を買って、立退きを迫ってやがる」。「動物たちは、どうなるの?」。「必死で、別の場所を探してるんだが、週末には追い出されちまう」(2枚目の写真)。「信じられなかった。何とか しなきゃ。でも何を? パパやママに、何か考えがあるかも…」。
  
  

マックスが家に帰ると、それ以上に衝撃的なことを告げられる。「引っ越すって?!」。父:「ああ。フォージが、パパを支店の責任者に」(1枚目の写真)。「急に言われても、いつ?」。母:「金曜」。「今週の金曜? そんなの、ひど過ぎる! 僕の生活や友達は、どうなるの?」。父:「それは判ってるが、お前なら、シカゴでも大勢友達ができる」。あまりに遠くなので、「シ、シカゴ?!」と、もう一度びっくり。「ここでやることが 一杯あるんだ」(2枚目の写真)。母:「あなたの気持ちは判るけど、私たちも辛いの」。「なら、僕にすっごいアイディアがある。引越し やめようよ」。「フォージは、パパのボスだ」。
  
  

翌朝、マックスが 長年やってきた新聞配達のアルバイトをしている(1枚目の写真、矢印は飛んで行く新聞)。すると、突然、アイスクリームの移動販売車が行く手を遮る。映画の冒頭では このオヤジとの長い悪夢がくどいほど流されるが、このあらすじでは最初の登場。マックスが移動販売車にぶつかりそうになって、自転車の向きを変えて急停止すると、開いたドアからオヤジが 「また会ったな 新聞少年」と声をかける(2枚目の写真)。「僕と、邪悪なアイスクリームマンの関係。知りたいだろ? ある日 僕は、アイスのコーンの中にゴキブリを見つけた。ママは保健所に通報、あいつは捕まった。それ以来、僕を目の敵(かたき)にしている」。マックスは、歩道を走って逃げ出す(3枚目の写真)。歩道から車道の真ん中に出ると、全力で漕ぐ。アイスクリームマンもそれを追う。その時、アイスクリームマンのバンが、交差点の一時停止を無視したので、待ち構えていた白バイに追われる。停車したアイスクリームマンは、アイスキャンディーで誤魔化そうとするが、警官に渡されたのは 「邪悪なアイスクリームマン/無謀運転/罰金280ドル」と書かれた違反切符。これで、マックスに対する恨みがつのる。
  
  
  

アルバイトが終わり、学校に行くと、昨日の今日(きのうのきょう)なので、上級生から 「見ろよ、ゴミ箱のガキだ」「ちんけな、生ゴミ野郎」などと 声がかかる。一方、動物保護施設のことを知ったミーガンは、昨夜中に作った立退き反対を訴えるビラを見せ、「良かったら、あなたと私で学校中に貼ってかない?」とマックスに頼む(1枚目の写真、矢印)。マックスは、引っ越してしまうので、「無駄だよ。こんなの、役に立たない」とすげなく突っ返す。しばらくして、秘書の前を通った校長が、横の掲示板に貼ってあるポスターに気付く。そこには、チンパンジーのタッドの顔を背景に、「動物保護施設を救おう!」と大きな字で書かれたポスターがピンで留められていた。校長は、「ラングーンさん、このビラは?」と、ヘラヘラ顔で訊く(2枚目の写真)。常に、校長に批判的な秘書は、「子供たちが、あの動物保護施設を救おうと」と答える。「子供たちって、どんな?」。「思いやりがあって、公徳心の高い子供たちですよ」。この皮肉にもかかわらず、校長はポスターを破るように剥がし、廊下に出て行く。そして、壁のあちこちに貼ってあるポスターを剥がし始める。そこにやって来たのがアレックス。校長は、「おい お前。止まれ!」と命じ、「一体、これは どういうことだ?」と問い詰める。ポスターを突き付けられたアレックスは 「僕じゃ ありません」と否定した上で、「動物たちは、行き場がないんです。どっかの奴が、閉鎖するから」と、事態を説明する(3枚目の写真)。それを聞いた校長は、「私が 閉鎖するんだ、あほんだら」と言う。「何ですって?」。「どこに、スタジアムを造ると思う?」。
  
  
  

トロイ・マギンティの2日目の犠牲者は、「ローブの変人」。廊下に人だかりがしているので、マックスが 「どうしたの?」と そこら辺の男の子に尋ねると、「いいから、見て来いよ」と言われる。そこで、中に入って行くと、そこにはガラス・ケースに入れられたローブが苦しんでいる。マックスはすぐに扉を開ける(1枚目の写真)。そして、集まった生徒達に 「彼、閉所恐怖症なんだ。だから、ひょっとして…」と説明を始めると、ローブが廊下にゲロし、生徒達が一斉に下がる。すると、ローブを助けた罰として、トロイ・マギンティはマックスを掴んでトイレに向かう。その頃、トイレでは、ドッブスが、「1番を使えば3ドル、2番が5ドル」と、個室の使用料を生徒に要求していた。そこにトロイ・マギンティが、「ガラス・ケースには苦労したんだぞ」と言いながら、嫌がるマックスを連れて入って来る。ドッブスは、相手がトロイなので、「4番を お使い下さい」と言い(2枚目の写真)、ドアまで開ける。マックスは、「髪の毛だけは 濡らさないで」と頼むが、頭から便器に突っ込まれる。そして、上半身水びたしになったマックスが 遅れて教室に入って行くと、「遅刻、それに、びしょ濡れ。両方とも、校則違反よ」と、一方的に批判される。そして、他の生徒達に向かって、「文明社会は規則を作りました。規則がないと 社会は完全に崩壊します」と言った上で、「この意見に賛成ですか、キーブル君?」と訊き、マックスが賛成すると、「では罰として、このテーマで2千語の作文を書きなさい」と命じる。姿を見れば、虐めに遭ったことは明らかなのに、この不当な処置に、マックスは 「そんなの 不公平です!」と抗議する(3枚目の写真)。しかし、無下な教師は、「原稿は、私の机に乗せておくこと。金曜までに!」と命じる。この最後の一言で、マックスはピンと閃く。
  
  
  

待てよ、金曜は引越しの日だ。この先生は意地悪で、何の罪もない僕を罰しようとしてる。でも、僕が引っ越せば、もう何もできない。今こそ、立ち上がる時だ」。マックスは、「そんなの、今すぐできるよ。見てて」と言うと、教壇の上に置いてあったリンゴとハサミを手に取ると、生徒達の方を向き、「さて、諸君…」と言い、リンゴを齧る。「文明社会には規則が必要だ。さもないと、こんなこと しちゃう」と言うや否や、電話のコードをハサミでちょん切る(1枚目の写真、矢印)。教師は、「2千語と言ったけど、4千語にします」と言うが、マックスは構わず教壇の上に乗ると、「それに… こんなのも」と言いながら、置いてあった地球儀を蹴飛ばす(2枚目の写真、矢印の方向に飛んで行く)。「8千語にします。すぐ席に着いて!」。「8千? ちょろいな。いっそ、1万2千は? みんな、1万2千で いいよな?」。生徒達は、大賛成。教師は 「教壇から降りなさい!」と怒鳴る。マックスは、「りょーかい」とバカにするように言うと、教壇から、すぐ前の生徒の机に上に歩いて乗り、そこから、他の机へとどんどん乗って行き(3枚目の写真、矢印は教壇)、最後は、教室の出口の机の上まで行ってから、床に飛び降りる。教師は 「大変なことになるから覚悟なさい」と警告するが、マックスは、おどけて、仏教徒のように合掌して頭を下げると、半回転してドアから廊下に出て行く。マックス・キーブルの大逆襲の始まりだ。
  
  
  

怖いものなし。今まで、僕たちを追っかけ回して意地悪や嫌がらせをしてきた連中… あいつらを、驚かせてやろう」。マックスが最初にしたことは、トロイ・マギンティをやっつけるために、マック・グーグルスのサイトから、テーマソングをダウンロードすること。動物保護施設については、校長に廊下で捕まった時、口臭スプレーを使っていたのを思い出し、フェロモンを使おうと思い立つ。最後にドッブスの顔も映るが 対処法は示されない。「遂に僕は、弱い者イジメと対決することに。それには、協力が必要だ」。授業後、廃品置き場に集まった3人。マックスは、2人に向かって、「これは、タダのプランじゃない。プラネタリウムだ」と、“” に力を入れて言う〔plan net arium と分割すると、計略計画システムのような意味になる〕。「いいかい、僕が あいつらの標的になる。でも、僕はもう いない。だろ? そこが、ミソなんだ」(2枚目の写真)「君らは、何も知らないで僕に協力した」。ローブ:「それって、何て言うんだろ?」。「もっともらしい否認〔Plausible deniability〕〔全部マックスのせいにして、自分は無罪だと主張する〕」(3枚目の写真)。ミーガンは 「そんなことより、送別会でもやらない?」と言い、それに対してマックスは 「やるさ、でっかいのを。これが終わったらね」と応じ、3人は握り拳をぶつけ合って結束を誓う。
  
  
  

翌日、学校のすぐ横に駐車したアイスクリームマンのバンの前に並んだ生徒たちに、ドッブスが近づいて行く。それを見た、マックスは、塀を乗り越えてバンに行く(1枚目の写真)。アイスクリームマンは、自分の客からアイスクリーム代を奪おうとするドッブスに、「おい! 失せろ、資本家の手先め!」と怒鳴るが、ドッブスも、すぐ溶けるようなアイスクリームを売っていることに対し、「あんたこそ、マトモな商売しろよ」と反論。その隙に、バンの下に潜ったミーガンは、ドッブスのスーツケースを車の下に引き込む(2枚目の写真、矢印)。一方、マックスは、バン内のアイスクリームを冷やすために冷たい空気を送り込む金属コイルを引き抜き、冷凍用の空気が噴出する(3枚目の写真、矢印)。ドッブスは アイスクリームマンの前まで行くと、「言ったろ、生徒のランチ代は俺のモンだ」と言い、怒ったアイスクリームマンがアイスクリームをドッブスのフォーマルシューズに投げつける。ミーガンはスーツケースからドッブスのPDAを奪い、スーツケースを元の場所に戻す。
  
  
  

次の復讐は、トロイ・マギンティに対して。彼が自分のロッカーを開けると、その瞬間、「♪僕は 沼が好きな、マック・グーグルスだ」の歌が聞こえて来て、トロイは恐怖に囚われる。ロッカーを閉めると、その瞬間、歌は止む。そして、再度開けると、また歌が始まる(1枚目の写真、矢印はローブ)。カメラは、何が起きているかを、壁の向こうの教室内を映すことで明かす。ドアの所に立ったローブが手を上げている間は、トロイがロッカーを開けている。その間は、ロッカーのすぐ裏に貼り付けたスピカーから、マック・グーグルスの歌を流すミニ・ステレオのスイッチを マックスがONにする(2枚目の写真、矢印はスピーカー)。トロイが腕を下げると、スイッチをOFFにする。こうして、トロイに昔の悪夢を思い出させる。その後、校内放送で、校長が、「あと数時間でネボース教育長がお見えになる」と通達し、放送が終わった後、スイッチを切ったつもりでバカな真似をして、見ている生徒達の失笑を買うシーンが入る〔マックスの逆襲とは無関係なので、ダメ脚本〕
  
  

次のまともなシーンは、生命科学の授業が終わった後、ローブ1人が実験用のテーブルの間に残り、教師が前を見ている隙に、空のビーカーを1つ持つと、床にワザと落とす(1枚目の写真、矢印は落下の方向)。ガラス器具の割れる音で振り向いた教師は、「実験器具は、壊さないよう気を付けてね。スタジアム建設計画のため、予算が削られて苦しいの」と言いながら、ローブと一緒に割れたフラスコを片付ける。その隙に、実験室に侵入したマックスが、戸棚の中からフェロモンの瓶2本を盗み(2枚目の写真、矢印)、そのまま実験室から逃げ出す。教師は気付かない。一方、図書室では、ドッブスが生徒達から巻き上げたお金を出し、スーツケースを開けてPDAに入力しようとするが、ケースの中を必死で探してもPDAはどこにもないので真っ青になる。さらに一方、アイスクリームマンのバンでは、アイスクリームがどんどん溶けていき、買いに来た子供達から文句が出る。それを遠くから双眼鏡で見ていたマックスは至極満足。
  
  

中盤で重要なシーン。その日の夜、マックスが自室でパソコンを使っていると、そこに父が入って来る。そして、今回の急な引っ越しについて、理由をきちんと話す。「急にこんなことになって済まないが、パパにとっても急な話だったんだ。いいか… もし、パパが転勤を断ったらどうなると思う? この家も食べ物もお前の服も、みんな金がかかるんだ」(1枚目の写真)。それに対し、マックスは、「なぜ 移るのか、まだ判らない」と言う。「長い人生の中には、嫌なことでも しなきゃならない時がある。なぜなら、自分より力のある人が、そう命令するからだ」。この言葉に対し、マックスが反論する。「違うよ、パパ。もし、怖がらずに、立ち向かう姿勢を見せれば、パパを支配しようなんて思わなくなる」(2枚目の写真)。この意外な言葉に、父は、「マックスを どうした? お前は 誰だ? 別人か?」とジョークを飛ばすが、あとでずっしり心に応える。
  
  

その夜 最後の逆襲。3人は夜遅くなってから、学校に行き、ローブの背中に乗ったマックスが、エア・ダクトから校長室に侵入する(1枚目の写真)〔ローブは後から入ろうとするが、太っているので入れない〕。ミーガンは、窓が開いていたので、すんなり校長室に入る。マックスの指示で、ミーガンは校長のパソコンを立ち上げ、マックスは校長の口臭スプレーを引き出しから出して 机の上に置く。パソコンの、学校予算のページには、97%がフットボール・スタジアムの建設費に当てられ、教師の給与に1%、教科書に1%、口臭スプレーに1%というひどい図が掲載されていた(2枚目の写真)〔いくら何でもメチャメチャ。給与をこんなに下げたら、暴動が起きる〕。それを見たマックスは、「阻止してやる」と言うと、盗んだフェロモンを 口臭スプレーに流し込む(3枚目の写真、矢印)。「これで、校長の息はフェロモンだ」。マックスは、最後に、学内放送用の背景の特別版をセットして退散する。
  
  
  

翌日の朝。引っ越しの1日前。マックスは、昔 父が使っていたマック・グーグルスのコスプレを物置から出してくる(1枚目の写真)。そして、学校に行くと、みんなの前でジャンバーを開くと、そこには、「トロイ・マギンティ」とプリントされていたので(2枚目の写真)、それを見た生徒達はびっくりする。
  
  

トロイが 誰もいない体育館で、パンチングボールを叩き、「どうだ? もう殴らない。約束する」と言った直後、もう一度叩いて 「今のはウソ。ごめんよ」と、虐めの練習をしていると、急に真っ暗になり、ドアが開いて光が差し込むと、そこにはマック・グーグルスが立っていた。そして、マック・グーグルスの歌が流れ、マック・グーグルスが一歩ずつトロイに近づいて行く。その結果は、映画では、少し後になるが、体育の授業で生徒達が真っ暗な体育館に入ってきて、教師が照明を点けると、隅で震えているトロイが発見され(2枚目の写真)、笑われる。生徒の管理をする教師は、マックスやローブがトロイに虐められても何もカバーしなかったくせに、トロイの震えが止まらないと、原因の究明に躍起となり、すべてのきっかけがマックスにあることを思い出させてしまう。かくして、トロイは前以上にマックスを憎むようになる。
  
  

校長は、視察に訪れるネボース教育長を盛大に迎えようと、学校の前にバンドの一部と、東欧からのフットボールの留学生を並べ、ネボースが到着すると、両手を広げて歓迎する(1枚目の写真)。それを見て、まともなネボースは愕然とする。校長は、「この瞬間を、どんなに待ち望んだか! クレイジーレッグス〔ネボースもフットボールの有名な選手だったので、名選手の映画『Crazylegs』をもじったのか?〕… お元気そうで」と言いながら、ネボースの肩を両手で掴み、「握手しましょう。おお、凄い握力」と感激するフリをする。「校長がスタジアムに熱中するのは、このネボース教育長に取り入るため。もし、彼の後釜に座れるなら、靴下だって食べただろう」。校長は、ネボースを校舎内の一角に案内し、「退職されるなんて残念でなりません、クレイジーレッグス。あなたの全盛期の記念品を集めてます」と言うと、飾ってあるジョックストラップ〔男性スポーツ選手用の局部サポーター〕を取り上げて、「優勝戦の時のです」と言って見せ、ネボースは呆れて一歩下がる。ネボースは、その横に置いてあったスタジアムの模型を見て、「これは、何だね?」と質問する。「ネボース・スタジアムです」。「こんなもの、どこから資金を? 本校への特別出費は認めてないぞ」(2枚目の写真、矢印は模型)。校長は 「手作り菓子の販売、洗車、無駄使いもやめ、貯めました」と 適当に嘘を並べる。そのあと、校長はネボースを図書室に案内する。「小さいな」。「でも 蔵書数は豊富です。特にスポーツ関係は」。そう言うと、ネボースの伝記の出版が待ち遠しいとゴマをする。しかし、校長が図書室に入る前に口臭スプレーを使っていたので、しばらくするとリスが1匹やってきて、校長の上着の中に潜り込む(3枚目の写真)。ネボースは、「パソコンの更新を通達したはずだが?」と訊くが、校長は リスでそれどころではない。
  
  
  

その頃、マックスは、管理人室の奥にある倉庫に入って行き、先回お世話になった “ガーデンニング用のブロワー” を勝手に持ち出す(1枚目の写真)。さらに、バンドの練習室に行くと、大型のスーザフォンを持ち出す(2枚目の写真)。
  
  

アイスクリームマンは、アイスクリームが溶けてしまったので、それでも売ろうと、「おいしいアイスクリーム・スープ」と書いた紙を貼り出すが、誰も来ない。そこにやって来たのが、ローブ。「おや、ウチの お得意さんだ。今日は何にするかね?」。ローブは、何も言わずにドッブスから奪ったPDAを渡す(1枚目の写真、矢印)。そこには、「アイスを元通りにしたかったら、3時に廃品置き場まで来い」とのメモが表示されている(2枚目の写真、映像はメモの後半)。
  
  

そして、いよいよランチタイム。トレイに山ほど食べ物を取ってきたマックスは、前に座っているミーガンに 「準備できた?」と訊く。「まあね。でも、どうして動物保護施設が救えるのか、分らないわ」。「計画の一部さ」。そこに、ローブが飛び込んで来て、「来たぞ!」と知らせる。マックスは 「時間ぴったり」と言うと、たくさん持って来た食べ物の一部をフォークに乗せると、「ランチを召し上がれ」と言うと(1枚目の写真)、テコの原理で、フォークの先端の食べ物を、遠くに弾き飛ばす。食べ物は、チェスをしていた生徒の顔に当る(2枚目の写真)。怒った生徒は、立ち上がると 「誰が投げた?」と訊く。マックスはイスの上に乗ると、遠く離れた方を笑顔で指す(3枚目の写真)。立ち上がった生徒は、隣の生徒が食べていたハンバーグサンドを奪うと、マックスが指した生徒の顔に投げつける。それを境に食べ物が飛び交い始め、それを狙っていたマックスは、「フード・ファイトだ!」と叫ぶ。
  
  
  

そして、広い食堂の中で、激しいフード・ファイトが繰り広げられる(1・2枚目の写真)〔マックスだけは、ほとんど被害に遭わない〕。最後は、スーザフォンから入れたマスタードを、ガーデンニング用のブロワーから噴射し、食堂内を黄色のマスタードで染める(3枚目の写真)。
  
  
  

校長は、ネボースに、「最後の見せ場。わが校の輝く宝石。カフェテリアへ」と案内して行き、食堂のドアを、「私からあなたへの贈り物です」と言って開ける。中に入った2人は、あまりのひどさに茫然とする(1枚目の写真)。校長が、大声で 「止めろ!!」と怒鳴ると、フード・ファイトは一瞬で収まる。校長は、「教育長、保証致します。こんなことは前代未聞です。一度たりとも前例はありません」と弁解すると、生徒達に向かって、「誰が始めた? もし犯人が名乗り出ないのなら、今、この瞬間に、ここにいる君たち全員に、恐ろしい懲罰を課すことになるぞ」と言うが、その途端、チンパンジーのタッドが背中に飛び乗り、校長は前のめりに倒れ、床に落ちた食べ物に顔を埋める(2枚目の写真)。タッドは、その上で何度も飛び跳ね、生徒達は笑い出す。ネボースは、「何なんだ、この学校は?」と呆れると、恐らく最低点を付けて、食堂から出て行く。
  
  

一方、ドッブスが自宅でノートパソコンを見ていると、そこにメールが入る。「電子手帳を取り返したかったら、3時に廃品置き場に来い。追伸: 金属コイルを 持って来い」。ドッブスには、金属コイルの意味が分からなかったが、その時、父が 「坊主、玄関に金属コイルがあるが、お前のか?」と叫んだので、意味が分かる。3時になり、ドッブスは、玄関に置いてあった金属コイルを持って歩いて廃品置き場に行く。アイスクリームマンも、メッセージの入ったPDAを持ち、バンに乗って廃品置き場に行く。そして、バンの中からマイクで、「コイルを返せ」と要求する。ドッブスは、「僕のPDAを返せ!」と叫ぶ。バンから降りたアイスクリームマンとドッブスが、睨み合い、アイスクリームマンが 「何て言った、若造?」と訊く。「PDAを返せだ。聞こえただろ? さっさと返せ」。「PTAだと?」。「違う」。アイスクリームマンが 「小っちゃな坊や、PTAに助けて欲ちいのね」とバカにする。怒ったドッブスが、アイスクリームマンの白い制帽を投げ捨てる。アイスクリームマンは、ドッブスのネクタイを掴み、「コイルをよこせ!」と怒鳴る。ドッブスは、コイルを掴むと、真っ直ぐなコイルを真ん中で2つに折り曲げ(1枚目の写真)、地面に投げ捨てる。怒ったアイスクリームマンは、PDAを何度も地面にぶつけた後、地面上のPDAの上で飛び跳ねる(2枚目の写真、矢印)。2人はつかみ合いの喧嘩を始める。すると、マックスの運転するクレーンが、バンの天井に付けられた宣伝用の巨大なアイスクリームを掴むと、そのままバンを持ち上げ、2人の上まで運んで行き、バンを傾け、2人に大量の溶けたアイスクリームを浴びせかける(3枚目の写真)。
  
  
  

午後3時をまわり、マックスが歩道を歩いていると、ちょうどジェンナが家から出て来る。そして、「あら、マックス」と声をかけてくれたので、マックスも、「やあ、ジェンナ」と嬉しそうに返事する(1枚目の写真)。「一緒に来ない? バディーズで 友だちに会うの」。「悪いけど、これからちょっと行くトコがあって…」。「いいじゃない。ちょっと付き合ってよ。楽しいから」。この素敵な誘いに、送別会もあるので、マックスは、「そうだね…」と迷う。ジェンナは、「ミルク・シェーク1杯だけ」と笑顔で言い、マックスは 「うん、付き合うよ。一杯だけ」と言ってしまう。しかし、次のシーンでは、バディーズで みんなが 「キーブル! キーブル!」と煽る中、マックスは8杯目を飲み干す(2枚目の写真)。そして、マックスの向かって右側に座った上級生が、「カフェテリアでの、お猿さん騒動、あなたが張本人ですって?」と訊く。「あれは、タッドっていうチンパンジーさ」。今度は、ジェンナが、「ワルなんだから」と言う〔だから、下級生なのに誘った〕。「まあね。僕は生まれ変わって、これからは “でかい態度” でいくんだ」。その頃、ローブの家では、テーブルに メーガンの用意した大きなケーキが置かれ、お別れの飾り付けもされ、2人がマックスの来るのを待っている(3枚目の写真)。「マックスは どこ?」。「大丈夫、すぐに来るよ」。
  
  
  

しかし、辺りが真っ暗になってもマックスは現れない。それは、マックスがバディーズでずっと時間を潰し、最後には、テーブルの上でジェンナと踊っていたから(1枚目の写真)。マックスを探しに来たミーガンとローブは、それを見て呆れる(2枚目の写真)。2人に気付いたマックスは、踊るのをやめて外に出て行くが、ミーガンは早足で立ち去ってしまう。ローブは、「僕たちは、いいって。パーティに戻れよ。僕たち カッコ良くないもんな」と 批判がましく言うが、そのあとに、「でも、ミーガンは君が好きなんだ」と付け加える。家に帰ったマックスは、ミーガンの家に電話をかけ、ミーガンがまだ戻っていなかったので、「本当に、悪かったと思ってます。謝ってたって… 忘れないで、頼みます」と 低姿勢で母親に頼む。
  
  

局面の大転換。その夜、父が変ちくりんなコスプレでマックスの部屋に入って来ると、妻も呼び寄せ、ビッグニュースを知らせる。「引越しは中止」(1枚目の写真)。マックスは、「中止?」と訊き返す。「ああ。遂にフォージに反論してやった」。妻:「フォージに抵抗したの?」。「辞めてやった。この町で、自分の会社をつくる」。「まあ、あなた。今度は、あなたがボスね!」。ここで、事態の深刻さに気付いたマックスが、「待って! 引っ越さないの?!」と訊く。「ああ」。それを聞いた時の、広角レンズでのマックスの顔が面白い(2枚目の写真)。ここから先は、「大逆襲」ではなくなる。映画の題名の正確な日本語訳は『マックス・キーブルの大きな方向転換』。「逆襲」は、映画の途中までの出来事で、映画は、①逆境、②逆襲、③逆転 の3段構成になっている。それが「方向転換」の全容なのだが、日本語版は、真ん中のドタバタ騒ぎだけをクローズアップしたものになっている。
  
  

学校まで 父に送ってもらう車の中で。マックスは 「僕は、どうしたらいいんだ? ここは、何とかしないと」と悩む。学校に着くと、父は、「マックス、これからは いいぞ。私がボスになったんだ」と嬉しそうに言うが、マックスは。「でも パパ、父親の責任は? 家でしょ、食べ物でしょ、僕の服… 僕は何を着るの? まさか、ボロを着ろって?」と、不安をぶつける(1枚目の写真)。父:「マックス、今さら何だよ? お前が、気付かせてくれた… フォージが弱い者イジメだって。それがなかったら、立ち向かう勇気なんてなかった」。父は、以前のマックスの言葉 「違うよ、パパ。もし、怖がらずに、立ち向かう姿勢を見せれば、パパを支配しようなんて思わなくなる」で一大決心をしたので、マックスの全く異なる反応に困惑する。マックスは、「僕、ただの子供だよ。知らないよ」と、さらに父を困らせる(1枚目の写真)。父は、「大丈夫か、ピリピリして?」と心配する。マックスは、「大丈夫、平気。冷静だよ、快調」と言って車を降りるが、降りるとすぐに階段の横に隠れる。そして、始業ベルが鳴る。「僕は、絶体絶命だった。それも最悪の」。マックスが、木の茂みの間から覗くと、ローブが芝生の上に寝かせられ、トロイが脅している(2枚目の写真)。「でも、まさか、友達まで狙われるとは…」。トロイはローブに、「お前にゃ、長い1年になるぜ。毎日、ぶん殴ってやる。仲良しのキーブルに感謝するんだな」と にこやかに警告する。一方、バンドの練習室では、ドッブスがミーガンに、「これからずっと 俺のために働け」と命じている(3枚目の写真)。
  
  
  

校長は、秘書に 「マックス・キーブルを呼んで。話がある」と命じると、秘書は 「じゃあ、飛行機の予約を」と言葉を返す。「何?」。「シカゴに引っ越しました」。そこで、腹の虫が収まらない校長は、秘書に命じて校内放送の準備をさせる。秘書は、いつも通り、“黒い背広に赤いネクタイ” の飾りを付けさせ、窓を背景のスクリーンで塞ぐ。校長は、「諸君、注意して聞くんだ!! 昨日の、わが校に対する犯罪行為は、元生徒のキーブルが煽動したものだ。次の課外活動を一時中止する。美術。音楽。体育。娯楽! 延期だ、中止だ、廃止だ!!」(1枚目の写真)〔背後のスクリーンでは、校長の 「私は女性の下着をはいてます!」という台詞とともに、マックスが校長を指して笑っている〕。話の内容は生徒達には深刻だが、教師にとってはマックスのスクリーンが面白くて、笑い声が校長の耳にも入る。不思議に思って振り向いてスクリーンに気付いた校長は、「キーブル!」と怒鳴る。一方、ローブとミーガンの授業では、ローブがミーガンに 「トロイは、これから毎日 僕を殴るって。一生の間」と悲しそうに話し、ミーガンもローブに 「ドッブスも、ずーっとお金を払えって。永久に」。それを受けて、ローブは以前マックスが言っていた言葉をもじって、「もっともらしくない否認」と言い〔マックスは 「もっともらし否認」と言っていた〕、マックスの責任を追及する。その頃、マックスは、用務員の部屋に行き、「しばらく、ここに 隠れてていい? バカやっちゃって」と頼む。そして、さらに、「カフェテリアのことは、ごめんなさい。でも、校長には、あんな権利はない。それに、僕のせいで、友達が痛い目に… 僕には何もできない」と、昨日の不始末とその結果を悔しがる。用務員は、「自分で散らかした物は、自分で片付けないとな」と、アドバイス(2枚目の写真)。「おじさんは、僕に 何とかしろと言っているようだった。悪漢どもに立ち向かったが、あれは、ただの不意打ちだ。勇気なんかじゃない。ひきょうな方法だった」。ローブとミーガンのクラスでは、教師が、生徒達に 動詞の例を挙げるよう求める。ミーガン:「裏切る。あざむく。嘘をつく」。ローブ:「だます。一杯くわす。口車に乗せる」。その時、教室のTVにマックスが映り、「生徒の皆さん、マックス・キーブルです。まず、謝りたいと思います。親友の ミーガンとローブに。僕は本当にバカでした。巻き込んだこと、ごめんなさい。僕は最低でした。でも、君たちは、永遠に僕の親友です。今は、ごめんなさいとしか言えません。引越しは中止になりました」と話す(3枚目の写真)。
  
  
  

校長は、廊下を歩いていて、教員室の前を通りかかり、開いているドアからTVのマックスを見る。校長は、「キーブルだ!」と叫ぶと、自分の部屋に走って行く。その時、マックスは、「トロイとドッブス、標的は僕だろ。友達に手を出すな。前なら逃げたが、今度は正々堂々と戦う。会いたきゃ駐車場に来い。3時だ」と挑戦するが、その時、校長が部屋に入って来て、「カット!」と叫び、カメラのスイッチをリモコンで切る。校長は、自分のイスに座っているマックスの襟を掴んで立たせると、机の向かい側のイスに投げるように座らせる。そして、机の端にもたれかかると、「お前は犯罪者だ。だから、そのように扱ってやる」と言い、マックスは 「僕は犯罪者じゃない。あんたみたいに 悪事を行うのが犯罪者だ」と強く反論する。「お前は、根拠がない中傷で、私の非の打ち所のない名声に泥を塗る つもりか?」。「『根拠がない』? ありありだよ」。「『ありあり』?」。「証拠がある! パソコンを見た」(1枚目の写真)。ここで、校長は背を向けて自分の席に向かい、その間に、マックスは、カメラのスイッチを入れる。「あんたは、学校の予算を全部流用して、バカげたスタジアム建設に注ぎ込んでる」。「私のパソコンを 見たのか?」(2枚目の写真、矢印は校内放送に流れている映像)。「ああ、だから事実だ」。「お前は、お利口さんだな。だが、私もだ! 確かに、予算を誤魔化した。だが、私の予算だ。教材は、最少でいい。どうせ、アホ揃いだ」。この言葉を教室で聞いていた教師は腹を立てる。「楽器なんか、どうでもいい。バンドは負け犬だ」の言葉に、バンド担当の教師は、頭にくる(3枚目の写真、矢印は校長)。「いくら欲しがっても残業代はやらん。こっちが、もらいたいぐらいだ!」の言葉で、用務員が仕事を投げ出す。
  
  
  

そこに、大型のトラックに乗せられたブルドーザーが到着する。それを窓から見た校長は、「おっと そうか、知らないんだな? お前は、動物保護施設を救ったと思ってる。だが、そう簡単にはいかん!」と言うと、マックスの襟を掴んだまま、校舎から出ると、そのまま用務員室の倉庫まで連行し、中に入れ、回転式のドアロックを90度まわして閉じ込める(1枚目の写真)。マックスは、①約束の3時が近づいている、②動物保護施設が心配、なので、倉庫にあった針金を使ってドアロックを逆回転させ(2枚目の写真)、倉庫から抜け出す。
  
  

3時ちょうどに駐車場に行ったトロイとドッブス。トロイが、時計を見ながら、「俺の時計が進んでるのか? キーブルの奴、怖気づいたのか?」と言っていると、駐車場の端までやってきたマックスが 「僕のこと、探してる?」と声をかける(1枚目の写真)。2人は振り返る。トロイは 「キーブル、痛い痛い駐車場にようこそ」と言い、ドッブスは 「医者なら、ちっとも痛くないって言うが、俺は医者じゃない。マギンティだって、同じさ」と言う。「その通り。俺は、医者じゃねぇ」。マックスは、「ついてないな。医者が要るのは、そっちだ」と 平然と言うと、いきなりドッブスに突っかかる。しかし、トロイに簡単に引き剥がされ、捕まると、ドッブスが殴ろうとする。すると、ミーガンの 「離しなさい!」という声が響く(3枚目の写真)。トロイは 「お前なんかに、何ができる?」と バカにする。ミーガンは 「これよ」と言うと、クラリネットを 短く吹く。すると、遠くの方からバンドがやってくる音が聞こえる。先頭に立って歩いてくるのは、ローブ。それと合わせたように、背後からは大勢の新入生がやってくる。
  
  
  

そして、トロイとドッブスは大勢の生徒達にびっしりと囲まれ、びっくりしたので、掴んでいたマックスを離してしまう(1枚目の写真、矢印はマックス)。トロイが、おどけて 「何だか、ビビるな」と言うと、ミーガンは強い調子で 「当然よ! 私たちは、学校を取り戻すの!」と宣言し、ローブも 「そうだ、イジメのない、暴力のない、ワルのいない、学校だ!」と叫ぶ。体のひときわ大きな東欧からの留学生は、「君らが、恐怖で支配した時代は、たった今 終わったんだ」と言い、生徒達の中から 「もう終わりだな!」「ゴミ収集箱に投げ込め!」「ドロドロだ!」「やっちまえ!!」という声が上がる。留学生が2人を担ぎ上げ(2枚目の写真、矢印はドッブス)、初日にマックスが投げ込まれた生ゴミで一杯の大きな鉄の箱に2人とも放り込まれる。3枚目の写真は、映画では、少し先の場面になるが、2人の汚れ具合がよく分かるので、紹介した。
  
  
  

それを見ていたジェンナは、「カッコいいわね。みんなで、週末にパーティを開くの。上級生だけなんだけど、あなたは歓迎」と、マックスを勧誘する(1枚目の写真)。しかし、「ミルク・シェーク1杯だけ」で懲りたマックスは、「悪いんだけど行けないんだ。友達と約束があって」と言って、ミーガンの方を選ぶ。ミーガンは、「素敵な変化ね」と喜ぶが、マックスは 「最高の変化は 引越しをやめたことだよ」と言いながら(2枚目の写真)、ミーガンの手を握る。
  
  

その時、校長が運転するブルドーザーが、動物保護施設の方に突進して行くのが見える。ブルドーザーは、施設の木造の門を突き破って中に侵入(1枚目の写真)。マックスは、施設の脇に駐車してあったトラックの屋根に飛び乗ると、荷台に張ってあったゴムマットに飛び降り、そのバウンドを利用して、施設の塀を飛び越える(2枚目の写真)。すると、運良く、地面には落ちず、ダチョウの背中にすっぽりと乗る。知り合いのダチョウなので、すぐに前進させ、ブルドーザーの前に立ち塞がり、「やめろ、ジンドレーク。やり過ぎだ」と警告する(3枚目の写真)。
  
  
  

校長はブルドーザーから降り、マックスもダチョウから降り、一戦交えようとするが、その前に校長が口臭スプレーを使ったことで(1枚目の写真、矢印)、辺りにいた動物達が一斉に騒ぎ始める。マックスは地面に落ちていた “筒状の新聞” を拾うと、それを動物舎の木戸に投げ付けて扉を開放し、そこからたくさんの動物達が校長に向かって突進してくる。校長は、必死になって走って逃げる(2枚目の写真)。翌日の地元の新聞の一面は、「新聞少年、校長を摘発/ジンドレーク解雇/マックス・キーブル 動物保護施設を救う」というものだが、記事の一部には、「校長が起訴されている」と書かれているので、解雇だけでは済まないようだ(3枚目の写真)〔ただ、記事では、すべては木曜に起きたと書かれており、新聞の発行は金曜日。しかし、マックスの引っ越し予定日は金曜で、それがキャンセルになり、校長による暴走は金曜に起きたので、新聞の日付は1日ズレている〕
  
  
  

マックスが、嬉しそうにその新聞を配っていると(1枚目の写真)、1人だけ残っていた悪のアイスクリームマンが、マックスを見つけて追いかけてくる。マックスは、顔色を変えて逃げ出す(2枚目の写真、矢印)。
  
  

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