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My Brother the Pig ジョージ

アメリカ映画 (1999)

アレックス・D・リンツ一括紹介シリーズでなければ、取り上げなかったような駄作。原因は2つ。❶まだ未熟だったスカーレット・ヨハンソンを主役に抜擢し、素人の脚本家と、冴えない監督のせいで、無意味な演技を延々とさせてしまったこと。❷あり得ない設定の映画は数多いけれど、ジョージが豚に変身するプロセスが、自ら設定した変身のプロセスを無視した “メチャメチャ” なものになっていて、説得性がゼロ以下のこと。唯一の救いは、アレックス・D・リンツのパートの部分だけは脚本がうまく機能し、アレックスらしい “頭の良さ” の光る演技が見られること。これで、彼が役柄上 邪魔な眼鏡さえかけていなかったら、もっと良かったのに。彼に眼鏡をかけさせたバカは、脚本家か監督のどちらなのだろう?

両親の2週間ほどの “惨めなフランス自転車旅行” 中、ナニーと2人の子供(自分勝手で生意気な13歳のキャシーと、悪さしかしない8歳のジョージ)が残される。そして、キャシーは ナニーを困らせようと、“ジョージと、隣に住むフロイトが台所をメチャメチャにして作ったアイスクリーム” を持ったジョージを、ナニーの部屋に押し込める。メキシコ人のナニーの女系家族は、代々変身魔術の伝統を受け継いできたので、ナニーの部屋にもその道具が置いてあり、それに溶けたアイスクリームが掛かったことで、“彼女が持っていた本に書いてある変身のためのプロセス” を完全に無視する形でなぜか魔術が働き、ジョージは豚に変身する。最初は、豚がジョージだと信じなかったキャシーも、ナニーとフロイトに証拠を突き付けられて納得し、メキシコの片田舎に住むナニーの祖母に救いを求めることに。しかし、祖母の家に着いたキャシーは、祖母とナニーを罵倒し、勝手に家を飛び出し、村の中心に行くと、あらゆる責任を放棄して、そこで会った2人の村の女の子と無駄な1日を過ごす。ナニーとフロイトと豚のジョージは一緒に村の中心に行き、ナニーはジョージを元に戻す材料の収集、フロイトとジョージは、いなくなったキャシーを探す。キャシーは見つからず、豚のジョージはありえない状況下でフロイトから逃げ出し、肉屋に捕まる。豚のジョージが入れられた納屋を見つけ出したフロイトは、夜になってナニーの祖母の家に戻ろうと外に出て来たキャシーと出会い、そこから、ジョージ救出作戦が始まる。翌朝、計画は成功し、全員が祖母の家に戻り、夜の来るのを待って、“コヨーテの顔をした岩山” の近くに設けられた “変身台” の上に乗せられた豚のジョージは、ナニーが買い揃えた材料で作られた魔術薬を掛けられ、コヨーテの岩の目の部分の穴から差し込む満月の光を浴びて、元の人間に戻る。

アレックス・D・リンツ(Alex D. Linz)は1989年1月3日生まれ。映画の撮影は恐らく1998年なので、撮影時は9歳。最初から最後まで眼鏡をかけているので、アレックスらしさがほとんどない。眼鏡にこれほどマイナス効果があるとは驚きだ。ただ、アレックスが演じるフロイトの子供らしくない論理的な話し方と、メキシコに行ってからの一番の活躍者という設定は、オープニングクレジットで、脇役としてではなく、最後に「with」付きで表示されるだけあって、主役のキャシーより遥かに存在感がある。

あらすじ

アレック扮するフロイトの登場は、オープニングのアニメが終ってから8分後なので、それまでの状況を簡単に説明しておく。映画の主人公は、カリフォルニア州の片田舎に住むコールドウェルの一家。そこには、両親の他に、13歳になる生意気盛りのキャシー、“キャシーに言わせると「最悪の生き物」” の8歳のジョージ、2人のナニーのメキシコ人のマチルダの3人が住んでいる。そして、両親が海外旅行に出かける前夜のジョージによるキャシーへの悪戯と、その後の顛末が描かれ、そして翌日。朝食の時間に、母が、キャシーに 「あなたが生まれる前から、パパとママはロマンチックな休暇とはサヨナラだった。そろそろ刺激が欲しいのよ」と旅行の動機を話し、融和主義的な父は、「次の休暇は、みんなで行くから」と姉と弟を慰める。そこに、隣(近所?)に住むフロイトが、玄関もフリーパスで、「どこ行くの?」と部屋に入って来る。キャシーの母は、「お早う、フロイト、私たち 素晴らしいワイン地方を自転車で廻り、ロマンチックなシャトーに泊り…」と話し始め、ここで、父も参加して、2人で後を続ける。「…普通の観光客が決して見るチャンスのない場所にも行くんだ」。すると、ジョージが、「サソリの急襲だ!」と言って、フロイトに飛びかかる。それでも、フロイトは、静観して見ているジョージの両親に向かって 「男の絆だよ」と言う(1枚目の写真)。母は、そこにいる子供3人に、「いいこと、みんな、私たちがいない間、マチルダが責任者ですからね。フロイトもよ。いいわね、キャシー」と言う。口の悪いキャシーは、「嫌よ。彼女、マザー・テレサとメリー・ポピンズの “あいのこ” のミュータントよ」と反対する。そこに、キャシーのクラスメイトから電話がかかってくる。内容は、次の土曜の夜、友達を招いてパーティをやるというもの。キャシーが 「パーティ? 喜んで行くわ」と答えると、「あなたは招いてない。ただ、アイスクリームを買い占めないでと言っておきたかったの」という冷たい返事〔偏屈なので嫌われている〕。父は、キャシーの言葉しか聞いていないので、なぜかフロイトとジョージの口を手で押さえて、「楽しい週末になるな」と誤解する(2枚目の写真)。キャシーは自分の部屋に行くと、フランス語の教材に付いているCDの中の 「フランスの若い男性の写真」に向かって、「合衆国での生活は惨めなものよ。誰も私を理解してくれない。その上、母がジョージと名付けた、太った豚を相手にしないといけないの」と話しかける(3枚目の写真)。
  
  
  

両親が外で車の支度をしている隙に、ジョージはフロイトに 「やるぞ」と言い、かねてから計画していた “特製のアイスクリーム” 作りを始める(1枚目の写真)。2人は台所の棚に入っているものすべてを外に投げ出し、使える物をテーブルの上に積んでいく。冷凍庫の中身(主としてアイスクリーム)はすべてテーブルの上に投げる。そして、大きなガラスのボウルに色々なものを少しずつ入れてかき混ぜる(2枚目の写真)。最後に大きなアイスクリームの箱の中身を全部ボウルの上に乗せ、平らにし、その上にさらにお菓子を置き、真ん中に木のしゃもじを押し込んで、巨大なアイスに相応しい “アイスバー” にする。完成したボウルは冷凍庫に戻されるが(3枚目の写真)、そこに、外出していたマチルダが戻って来て悲鳴を上げる。それを聞きつけたキャシーも飛んでくる。2人は、メチャメチャになった台所の惨状にびっくりする。マチルダ:「いったいどうなってるの?」。キャシー:「私じゃないわ」。マチルダは、すぐに、「ジョージ、フロイト」と呼ぶ。2人は、お菓子で汚れた姿のままテーブルの後ろから姿を見せる。ジョージがマチルダに 「用事は済んだの?」と訊くと、マチルダは 「何を言っても無駄よ。フロイトは家に帰って」と言う。すると、フロイトは、「僕、一瞬のエネルギーに夢中にさせられたんだ。僕たちにはみんな動物的な本能があるでしょ。ジョージは、そんな感じで、僕を 僕のイド〔精神の奥底にある本能的衝動の源泉〕に引きずり込んだんだ」と弁解し(4枚目の写真)、キャシーに、「あんた幾つなの? チビの変わり種ね?」と言われる。後始末は、すべてジョージに課すと言われるが、優しいマチルダは、雇い主が出かけたら一緒に片付けると言ってくれる。それを聞いたキャシーは、その甘さに文句を言い、マチルダがいなくなると、惨状をポラロイド・カメラで撮影し、その写真を持って外にいる両親に弟の悪たれぶりを訴えるが、出発が迫って忙しい両親は真面目に取り合わない。両親が出発していなくなると、ジョージは芝生の自動散水のスイッチを入れ、キャシーはずぶ濡れに。
  
  
  
  

次のシーンは、両親がフランスに行ってから9日目〔あと4日で帰宅〕。マチルダが冷凍庫の中を見ると、奥の方に変なものが入っている。そこで、ガラスのボウルを取り出し、すぐ横の床で遊んでいたジョージに、「これ、あなたの?」と訊く。作ってから、どこに置いたか忘れていたジョージは、派手にマチルダに感謝すると、アイスボウルを受け取る。それを聞いたキャシーは、置くとしたら冷凍庫しかないのにと ジョージをあざ笑う。ここで、キャシーが、「今からガーデニングに行くから、用があったら呼んでね」と言い残して いなくなる。ジョージは、フロイトに電話をかけ、すぐ来いと言うと、来るのを待たずに しゃもじを掴んで中身のアイスを取り出し 舐め始める(1枚目の写真)。すると、マチルダの部屋のドアの隙間からピンク色の光が下から上に動くのが一瞬見える。そこで、アイスバーを持ちながら、ドアに近づいて行く。それを見たキャシーは、2人(マチルダとジョージ)を困らせてやろうと、「なぜ中に入らないの? あんたが破壊してない ただ一つの部屋でしょ」と煽る。ジョージが、「ママが、あそこはマチルダのプライベートな場所だって」と反対すると、「ほら、入って! あんたが破壊できるようなものがいっぱいあるに違いないわ」と、もう一度プッシュ。それでも、マチルダはジョージに優しいので、「僕の部屋じゃない」と反対する。そこで、キャシーはドアを少し開け、「入って」と強く指示(2枚目の写真)。「ほら入るの。メチャメチャにして。ベッドの上でジャンプするのよ」(3枚目の写真)。結局、ジョージは部屋に入って行く。
  
  
  

マチルダの部屋に入ったジョージは、特に悪さはしないが、あちこち見て回る。そのうちに、背の低い棚の上に乗っている、大きな木箱に気付き蓋を開けてみると、中には水晶を削って作られた動物の小さな像が5つと、より小さな水晶が1個入っている(1枚目の写真)。ジョージが横に置いてある古そうな本を開こうとしていると、融けたアイスクリームが木箱の中の水晶にポタポタとかかる(2枚目の写真)。そして、たまたまジョージが開いたページには、一番上に豚の絵が描かれ、その下には、ジョージには理解できないスペイン語で、「一人を豚に変えるには四つの魔除けを揃えよ」と書かれ、その下に、「1.ガラガラヘビ〔正しいスペルはvíbora〕  、2.トウモロコシの粒、3.カラスの羽、4.豚のまつげ」と四つの魔除けが指示されている。そのうちに、部屋の中がピンク色の光で溢れ、水晶に小さな雷光が当たり、びっくりしたジョージがアイスクリームを丸ごと箱の中に落とす。最後は、大きな雷光とともに白煙が上がる。ガーデニングをしていたマチルダは異様な感覚に襲われ、急いで部屋に向かう。そして、マチルダの部屋では、ジョージの服をまとった仔豚が煙のなかから現れ(4枚目の写真)、服を残してドアから出て行く〔本に書かれて四つの魔除けと、お菓子で作ったアイスクリームとの関係は全くない。人間が仔豚に変わること自体あり得ない絵空事だが、それでも、変身する条件くらいきちんと守らせるべきで、このあまりのいい加減さには呆れて物も言えない。スペイン語だからアメリカの子供には分からないと思ったのか?〕
  
  
  
  

マチルダは、自分の部屋のドから煙が出ているのを見て、「ジョージ、何を燃やしたの?」とドアに向かって訊き、キャシーは、台所の床を見て仔豚がいるのに驚き、「マチルダ! これどこから?」と訊く。そこに、呼ばれてやって来たフロイトが、キャシーに 「この豚、どこで手に入れたの?」と訊く(1枚目の写真)。豚は、フロイトを見て嬉しそうにブーブー鳴いたので、フロイトは 「ねえ、この豚、僕を好きみたい」と言う。キャシーは、ジョージに豚を見せようと、マチルダの部屋に向かって 「ジョージ」と呼ぶ。それを見たマチルダは、ハッとして、急いで自分の部屋に入ってドアを閉める。フロイトは、「ジョージ、豚を見逃すよ!」と叫ぶと、「捜してくる」とキャシーに言うと、「ジョージ!」と呼びながら奥に向かい、それを見た豚が後を追っていく(2枚目の写真)。それを見たキャシーは 「変なの」と独りごちる。フロイトは、廊下を早足で歩きながら、「ジョージ、どこだい?」と呼び、その後を、豚が必死に追いかける。マチルダは、木箱の中でバラバラに割れた水晶の破片を見て、何が起きたが分かり、驚天動地の表情。フロイトは、ジョージの部屋まで行き、ベッドの下を覗くが、どこにもいない。そこまでついてきた豚は、床の上に落ちていたお菓子の食べ残しを口に入れ、それを見たフロイトは 「何て豚だ」と呆れるが、「おい、豚君、僕について来たのか?」と嬉しそうに尋ねる(3枚目の写真)。
  
  
  

事態に直面したマチルダは、2人に向かって、「聞いてちょうだい。ホントの話よ。冗談なんかじゃない。この豚がジョージなの」と訴える(1枚目の写真)。フロイトは即座に信じたが、何事にも不真面目なキャシーは信じない。マチルダは、「神に誓って」「理解し難いとは思うけど」と必死に説得するが効果がないので、豚に向かって、「ジョージ、ランチ・ボックスの場所を教えて」と言い、豚は直ちに一番下の引き出しの取っ手を口で引っ張り、中のランチ・ボックスを見せる。フロイトは 「ちゃんとできたじゃないか」とジョージを褒めるが(2枚目の写真)、キャシーは 「この芸ができるようになるまで、どのくらいベーコンやったの?」と、てんで取り合わない。そこで、フロイトはキャシーに、「ジョージの部屋にある何かを取りにいかせたら? ちゃんと戻って来たら、ジョージだって信じられるだろ?」と提案する。「バカバカしい」。「やれよ」。キャシーは、仕方なく 「ジョージ、一番好きな物を持って来て」と言う。すると、ジョージは ニンテンドーのコントローラーを咥えて戻って来る(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

これを見て、心配になったキャシーは 「何が起きてるの?」とマチルダに訊き、フロイトは 「キャシーは、状況の現実を受け入れ始めたんだ」とマチルダに笑顔で言う(1枚目の写真)。そこで、マチルダは話し始める、①彼女の家族の女性達は代々 “動物の霊の守護者”、②誰もが小さな “並行する(動物の)魂” を持っているが気付かずに一生を終える、③ジョージの “並行する(動物の)魂” は豚だった、というもの(2枚目の写真)。キャシーが、「ジョージの体はどうなったの?」と訊くと、フロイトは、「君に隣に座ってるじゃないか」と言って、豚を指差す(3枚目の写真)。
  
  
  

マチルダは、キャシーの質問に対し、説明を続けるが、内容は、①理由は分からないが、ジョージの中の “並行する豚の魂” が、ジョージの肉体を人間から豚に変えた、②ひょっとしたら、ジョージが持っていたアイスクリームと、祖母の動物の石が反応したのかもしれない、という曖昧なもの。キャシーは、②の部分に強い疑問を投げかけ、さらに、すべてが嘘でないことを前提にした上で、「前回 こんなことが起きた時、あんたの家族の女性たちはどうしたの?」と訊く。マチルダは、「こんなことは、しばらく起きてないの」と、答える。キャシーは、「10年?」「20年?」と訊くが返事はない。「30、40、50年?」「80年? 100年?!」。ここで、フロイトが、「ティラノサウルスの頃?」と口を挟み、キャシーから 「うるさい」と叱られる。「いつなの?」。「私の祖先がテココという村に住んでた5~600年前くらい」。「じゃあ、その時、彼女たちは、どうやって人間に戻したの?」。「知らないわよ! そこにいなかったもの」。「知ってる人は?」。「お祖母ちゃんのベルタ」。「どこに住んでるの?」。「うんと遠く。メキシコシティの向こう」。「電話して!」。「電話がないの」。「彼女なら、私が両親から生涯外出禁止にされる前に、ジョージを豚から元に戻せるの?」。「たぶん」。「たぶん?」。「きっと」。「じゃあ、メキシコに行きましょ」。2人は、さっそくガレージの中の両親の車に乗り込む。後部座席にフロイトがいるのを見たキャシーは 「降りなさい」と言い、マチルダも 「悪いけど、連れて行けないわ」と言うが、そこで、ジョージがブーブーと鳴き、フロイトは 「ほらね、僕は要るんだ。ジョージの通訳だからね」と主張する(2枚目の写真、帽子のL.A.P.D.は、恐らく「ロサンゼルス市警察」の意味)。それでも2人の対応は変わらない。「降りて」。「ご両親が心配するでしょ」。これに対しフロイトは、「親離れの必要性は既定事実なんだ。自立心が行き過ぎた時だけ家に帰れと言われてる」と、有名な心理学者のフロイトのように難しい理屈をこねる。マチルダは 「冗談でしょ?」と言い、キャシーは 「そういう両親なの」と肯定する。それで、マチルダは “責任者” としてフロイトの同行を許可する。フロイトは、さっそく、「ねえキャシー、君 怒鳴られると思う?」と訊く。キャシーは、「もう死んでるから、怒鳴られないわ。弟をポーク・チョップに変え、隣の子を誘拐し、母の車を盗み、メキシコまで行ってナニーのアステカ族の祖母に会って、弟を以前の怪物に戻すのよ。怒鳴られるだけで済むと思うの?」(3枚目の写真)。
  
  
  

マチルダがメキシコに向かって高速道路を運転していると、車載の携帯に電話がかかってくる。電話をしたのは、自転車旅行中の父から(1枚目の写真)。誰も電話を取りたくなかったが、結局、キャシーが拒否したのでマチルダが取る。相手が雇い主だったので、笑い声を交えて、①みんな一緒、②シーワールド(サンディエゴ)に向かっていると、嘘を交えて話す。父が、「子供たちの1人と話せるかな?」と言ったので、マチルダはキャシーに受話器を渡す。キャシーは、「パパ? やあ、ええ 元気よ。みんな元気。ジョージもフロイトも」と嘘を付いた後で、「フランスはどう?」と訊く。「今日は、44キログラム〔国際単位系に慣れていない〕走った。普通の観光客が決して見るチャンスのない場所を見てる」と自慢するが、母はうんざり顔。理由は、左足が痛くて包帯の上からガムテープを巻くほどのひどさだから。母が 「ジョージが行儀良くしてるか訊いて」と言ったので、父がその質問をくり返し、キャシーは 「ジョージは、嘘みたいにいい子なの」と、おとなしい豚の様子をそのまま伝える。しかし、話したいと言われたので、バッテリー切れを装って電話を切る。会話が終わった後で、両親の脇を通って行った同じグループの自転車乗りが、「あと12キロメートルでホステルだ」と、頑張るよう声をかけて行く。父は、①シャトーのハズが安手のホステル〔格下のホテル〕、②12キロって何なんだ。12マイル? 112マイル? とブツブツ文句を言う。3人と1匹が乗ったオープンカーは、メキシコ国境まで辿り着く。「すべての家畜は検疫の対象」との看板に、フロイトは キャシーから渡された2枚の布を豚にかけ、その上に、自分が被っていた帽子を載せ、子供が眠っているように見せかける(3枚目の写真、矢印は帽子)。
  
  
  

国境を越える時にはきれいだった車も、マチルダの故郷アグア・カリエンテ〔架空の村〕に着いた時には(1枚目の写真)、埃で白くなっていた。車は、そのまま村の中心(2枚目の写真)を通過し、祖母の住む一軒家まで来る。車に気付いた祖母が出てきて、マチルダと抱き合う(3枚目の写真)。
  
  
  

その日は、みんな疲れていたので ぐっすり寝てしまう。キャシーが悪夢から起こされると、マチルダの祖母をスペイン語で紹介され、失礼なキャシーは悲鳴をあげる。そして、フロイトを叩き起こすと、「あの人たち、スペイン語で、私たちの将来を決める気よ」と言う。それを聞いたフロイトは、さっそく 「Buenos días(お早う) ¿Cómo está?(元気ですか?)」と挨拶する(1枚目の写真)。それを聞いた2人は、キャシーの人種偏見的な態度の後だけに、笑顔になる(2枚目の写真)。キャシーは、「それどこで覚えたの?」と訊き、フロイトが 「セサミストリート〔子ども向けテレビ教育番組〕」と答えると、「エルモ〔セサミストリートのキャラ〕は、『ジョージを男の子に戻して』を、どう言うか教えてくれた?」と、意地悪く訊く〔最初の挨拶に相手の母国語を使う礼儀すら忘れ、自分は老婆を見て悲鳴を上げたくせに、自分より5歳下の子をこんな風に貶すのは、本当に卑劣な女性〕。その話を聞いたマチルダは、「キャシー、ベルタお祖母ちゃんは 取りかかってるわ。でも、お祖母ちゃんには、もう少し時間が要るの」と答える。次のシーンでは、家の外に設けられた竹を縦に並べて囲った簡易シャワー室での水浴び。マチルダは自らシャワーを浴びながら、2人に「楽しいわよ」と勧めるが、キャシーは断固拒否。一方、フロイトは、ジョージに向かって、「気に障ったら悪いけど、君、豚みたいな臭いがするぞ」と言い、それを聞いたジョージ豚は、まだマチリダがシャワーを浴びている中に入って行き、追い出される。フロイトは、マチルダに 「心配ないって。豚は、黒と白しか見えないと思うよ」と声をかける〔正しくは、「青だけは分かって、その他の色は、白黒の濃淡の世界のようなイメージ」だが、どうしてそんなことまで知っていたのだろう?〕
  
  
  

朝食が始まると、キャシーは、さっそく文句を言い始める。「これ以上時間を無駄しないで、弟を男の子に戻してよ。あんたの祖母はいつ私の弟を直すつもりなの?」(1枚目の写真)。マチルダと祖母は会話を交わし、マチルダは、「明日の満月の夜、お祖母ちゃん多分できるだろうって」と答える。キャシーは、さっそく、その言葉尻を捉えて、「明日の夜? 多分? マチルダ! あんた、祖母が、私の弟を直してくれるって言ったじゃない!」と、一方的に責める〔「ほら、入って! あんたが破壊できるようなものがいっぱいあるに違いないわ」 と言って、ジョージをマチルダの部屋に無理矢理入らせたくせに、なんという性悪娘〕。マチルダは、「お祖母さんは、明日の夜までにパナホに使う材料をすべて揃えないといけないの」と、冷静に答える。「それ、何よ?」。「パナホは、ジョージを男の子に戻す魔法のスープのようなものなの」。それを聞いたフロイトは、「大変だ! 僕らが冷凍したものは、きっとピンカーコそっくりだったんだ!」と驚く(2枚目の写真)。フロイトの珍しい言い間違いに、マチルダは 「パナホよ、フロイト」と笑顔になる(3枚目の写真)。そして、「明日の夜、ジョージを “コヨーテ山” に連れて行くわ。満月が山全体を照らすと、コヨーテの目が光るの」と説明するが、それに対しても、キャシーは 「魔法のスープ? カヨーテ山〔言い間違い〕? あんたの祖母が ジョージを元のジョージに戻せるって言った! だけど、いまだに、焼かれるのを待ってるハムじゃないの! この嘘つき! この責任は、全部一人で負うのね」と、一方的に責める。そして、文句ばかり言っていて、何も食べていないのに、祖母に向かって〔ベルタは幸い英語が分からない〕、「あんたの食べ物、サイアク!」と罵る。
  
  
  

この 「サイアク」という言葉を聞いたマチルダは、我慢の限界を超えたので、キャシーに向かって 「私やお祖母ちゃんに、二度とそんな口きくのやめてちょうだい。こんな体験初めてなんだから、この先どうなるか、分るわけないじゃないの。それに、あなたは弟のことよりも、自分のことばかり心配してるわ。最後に言っとくけど、二度と嘘つき呼ばわりしないで。私にだって尊厳はある。あなたみたいな自己中の “snot(生意気なガキ)” からそんな風に言われる筋合いはないわ」と、強く反駁する。それを聞いたフロイトは、「やった!」と喜ぶが(1枚目の写真)、腐ったキャシーは、反省するどころか、「あんたなんか大嫌い。今に、困ったことになるから。私の両親は、あんたがやったすべてについて訴えるわよ」と言うと、責任逃れで家から出て、村に向かう。そこで、パナホを作るための鍋を家の外にセットしながら、マチルダは 「これが終わり次第、キャシーを拾いに行くわよ」と フロイトに言う。フロイトは、「ほっといたら?」と言うが(2枚目の写真)、マチルダは キャシーを擁護し、後は祖母に任せ、フロイトを助手席、豚のジョージを後部座席に乗せて、車で村の中心に向かう(3枚目の写真)。
  
  
  

村に向かう車の中で、フロイトは、マチルダに、「心配しないで、マチルダ。これはキャシーにいい薬だよ。ストレスを発散するには、時間が必要だから。それに、彼女、ホントのDPWだから」と言う(1枚目の写真)。マチルダにDPWの意味を問われたフロイトは、最初、言い渋っていたが、最後には、「dehydrated poop worm(脱水状態のうんこ回虫)」と言うが、その頃、キャシーは 必死でトイレを探していた。しかし、村人に訊いても英語が全く通じないので、両手で股を抑えて必死に我慢する。そのうち、後ろから来た2人の姉妹のうち姉の方(メルセデス)が 英語がペラペラだと分かり(2枚目の写真)、家がすぐ近くなので、すぐにトイレを借りに行く。2人の家に行ってからのキャシーのシーンは、映画と全く関係がなく、ただの無駄な時間潰し。一方、マチルダが運転する車は、村の中心にある噴水のすぐ横にある店の前で停まり、そこで全員が下車する(3枚目の写真、矢印は駐車禁止を意味する手製の印)。
  
  
  

車を降りたマチルダは 「こんなに賑やかなの 見たの初めて」とびっくりするが、フロイトは 「これで賑やか?」と逆に驚く(1枚目の写真)。マチルダは 「材料を集めたら、ここを出ましょ」と言って、フロイトと豚のジョージを連れて店に入って行く。すると、マチルダが経営者の男性と抱き合って喜んでいるので、フロイトは 「このホールマーク〔恋愛映画を多く流すTVチャンネル〕的なシーンの英語版ある?」と訊く(2枚目の写真)。すると、男性は、数年ぶりに会ったマチルダの長兄だと分かる。兄が、「この豚は何だ?」と訊くと、「すごくややこしい話なの」と言い、状況説明を始めるが、フロイトは 「非常に有意義な会話を邪魔して悪いんだけど、遅くなってきたよ」と、彼らしい言い回しでキャシーのことを指摘する。それを聞いたマチルダは、慌てて飛び出して行く。1人残された長兄に、フロイトは 「彼の姉さんだよ」と言い、「彼女も豚なのか?」と訊かれると、「もっと凶暴」と答え(3枚目の写真)、ジョージも頷く。
  
  
  

戻って来たマチルダに、フロイトは豚のジョージと一緒にキャシーを捜しに行くと言い、最初は反対される。しかし、「これは、実社会で何か新しいことを始めることで僕ら〔フロイトと豚のジョージ〕の成長ぶりを示すいい機会だよ」と、TVドラマ 『オール・マイ・チルドレン』からの引用を口にし、OKを取る。マチルダは、店の外まで一緒に行くと、「キャシーを見つけたら、すぐここに戻ってくるのよ」「何もかも うまくいくから」「2人とも大好きよ」(2枚目の写真)と言って別れる。そのあと、フロイトは豚のジョージを連れて、「キャシー」と呼びながら、村の中心の狭い範囲を探し回る(3枚目の写真)。しかし、キャシーは、2人の姉妹の家(2階にある)で長話に昂じていて、呼び声など聞こえない。
  
  
  

フロイトが村の中心に戻って来た時、村に1軒しかないオープン・カフェに座っているジーンズの女性を見て、「キャシー、ここにいたんだ!」と声をかけると、振り向いたのは、別の若い女性。彼女は 「あら、同じバスじゃないわね」と驚く。「ごめん。彼の姉さんと間違えて」。フロイトが、豚を見ながら 「彼の姉」 と言ったので、女性は、「まあ〔Gee〕、ありがとう」と皮肉を言う。そこで、フロイトは、「ごめん。あなたが、僕の姉さんの友だちかと思ったんだ。豚は、僕のペットだよ」と言い直す。「変わったペットね」。「ここで何してるの?」。「高校の卒業記念に、両親に連れて来られたの。嫌々ね」。そこに、両親が出てきて、豚を写真に撮ろうとして、「撮ってもいいかい?」と訊く。フロイトは、「2ドル払えばね」と答える。女性の母が、「1ドルに値切りましょ」と夫に言うと、すかさず、フロイトが 「2ドル払えば、豚は、2つの数字を足してみせるよ」と言い、契約成立。父親が 「1+1は?」と訊いたので、フロイトは 「そんなの、幼稚園児でもできるよ。もっと難しいのを」と言う。「1×2は?」。豚のジョージは、左足で2回地面を叩く。それを見た、最初の女性は、「わあ、その豚 ラジコンじゃないってホントなの?」とびっくりする。父親は、「すごいぞ」と言ってお金を渡す。そして、同じバスで来た連中に、「みんな、すごいぞ」と声をかける。「その子の名前は?」と、女性に豚の名前を訊かれると、フロイトは 「キャシー」と答える(1枚目の写真)。バスの仲間が豚のジョージを囲んで踊り(2枚目の写真、矢印はジョージ)、ジョージは、その中でくるくる回る。フロイトが帽子を出して歩き回ると、その中に1ドル札がどんどん入れられる(3枚目の写真、矢印はお札)。ショーが終わると、最初の女性がジョージの頬にキスし、「あなたたち、今度の旅でサイコーよ」と感謝する。
  
  
  

暗くなり、ロウソクの明かりしかない店内では、“魔法のスープ” に必要なものを、マチルダが兄から受け取っては容器に入れている(1枚目の写真)。ベルタの家の前では、焚き火にかけた鍋の周りに、彼女が何かを振りかけている。マチルダは、キャシーがなかなか戻らないのでイライラし始める。一方、フロイドは、豚のジョージと一緒に噴水まで戻ってきて、店から出て来たマチルダに、まだ見つからないと合図をするが、その直後、何を思ったのか豚が急に走り出す〔理由も示されないので、わざとらしく、あり得ない設定〕。豚のジョージが向かったのは、家畜の肉を扱う肉屋の納屋の扉。そんなところでブーブー鳴いていれば、肉屋に捕まるのは当たり前(2枚目の写真)〔三流の脚本〕。一方、兄の店の前に停めておいた車は、レッカー車によりどこかに運ばれていく(3枚目の写真、矢印は車)〔①手製の駐車違反の紙を店に貼ったのは兄なのか? ②兄は、知っていてなぜマチルダに注意しなかったのか? ③正規のものではないので、勝手に撤去したら犯罪になる。このシーンもワザとらしくて三流〕。3枚目の写真では、車は店の前を離れ、角から消えそうになっているのに、店の中にいるのに、なぜかマチルダはこんな状態になってから気付き、兄のバイクを借りて後を追う。
  
  
  

どこを捜しても豚のジョージがいないので、フロイトは噴水まで戻って来る。そして、助けてもらおうと、「マチルダ!」と叫ぶが、反応がない〔車を取り返しに行った〕。困ったフロイトは、「いいか、フロイト、落ち着け。よく考えろ。パパが言っただろ。優先リストを作るんだ」。そう言うと、右腕をまくると、そこに、「1、ジョージを見つける」と言いながら、「1.ジョージ」と書く(2枚目の写真)。さらに、「2、キャシーを見つける。3、ベルタの家に戻る」と付け加え、腕に3つの名前を書く(3枚目の写真)。
  
  
  

フロイトが、「ジョージ、どこにいる?」と言いながら裏路地を歩いていると、豚の格好をした木の看板が窓の上に付いていたので、そこから覗いてみると、凶暴そうな男が鶏を乱暴に台に押さえつけると、ナタで首を切り落とす。それを見たフロイトは心配になり、路地のさらに奥まで行くと、さっきと同じ豚の看板が納屋の扉の上にも付いている。そこで、「ジョージ、そこにいるのか?」と声をかけると、中からブーブーと鳴く声が聞こえる。直後に、スペイン語で何か怒鳴る声が聞こえたので、フロイトは急いで物陰に隠れる。すると、扉が開き、さっきの凶暴な男が顔を出して気配を窺う。扉が閉まると、フロイトはもう一度扉まで行くと、「ジョージ、もしそこにいるなら、静かにしてないと危ないぞ。こっちは、めちゃめちゃで僕一人になっちゃった。だけど、心配するな、僕は怖くなんかない。だから、頑張れ。すぐに戻って来るからな」(2枚目の写真)。そう言うと、間違いなく戻って来られるように、ポラロイドカメラで納屋の写真を撮る(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

キャシーと2人の女の子のシーンは、スカーレット・ヨハンソンが、2003年公開の『ロスト・イン・トランスレーション』と『真珠の耳飾りの少女』でブレイクする4年前なので、“こんな下らない役” を延々とさせられてうんざりしたに違いない、と思わせる時間の無駄遣い。辺りが真っ暗になるまで、変なメキシコ風のドレスまで来て、ダラダラと話し合った最後に、突然、ジョージのことを思い出し、慌ててメルセデスの家を2人と一緒に出て、ベルタの家に行こうとして、村の通りに出た所でフロイトとぶつかる。キャシーは、理不尽に 「ここで、何してるの?!」とフロイトに怒鳴り(1枚目の写真)、フロイトは 「ここで、何してるんだよ?!」と怒鳴り返し、さらに、「弟が食用のために閉じ込められてるのに、よくそんなこと言えるな!」と、1日中探し回らされたことへの怒りをぶつける(2枚目の写真)。「何、言ってるの?」。「いいかい、キャシー、事態は絶望的だ。ジョージは、明日、彼を食用肉として売ろうとしてる怪物によって閉じ込められてる。なのに、そんなルポール〔派手な衣装や化粧などのショー的な要素を含む扮装をしたホモセクシュアルの男性〕みたいな恰好で歩いてるなんて! いいかい、キャシー、これは、僕の両親が “危機的状況” って呼んでるものなんだ!」。これで、ようやくキャシーも真剣になり、「彼、どこにいるの?」と訊く。ジョージは写真を見せる。メルセデスの案内で、4人は納屋の前まで駆け付ける(3枚目の写真、矢印はポラロイドの写真)。メルセデスは 「私の家に戻って、明日、豚さんを助け出す案を練りましょ」と提案し、フロイトも 「今だと、動物が騒ぐから、それがいい」と賛成する。
  
  
  

翌朝、キャシーと地元の女の子は、2人で肉屋に入って行く。ちょうど、主人(昨夜の凶暴な男)が鶏をさばいているところだったが(1枚目の写真、矢印)、メルセデスは、「母は、奥から出した新しい物が欲しいって」と要求する。最初は すげなく断った主人だったが、キャシーがアメリカドルを見せると、「今、取って来る」と言うと、背後のドアの南京錠を外して中に入って行く。その隙に、メルセデスは店の外に出て合図し、フロイトは腹這いになって店に向かう。一方、店の中では、キャシーが 「足が折れちゃった」と叫び出し、鶏を1羽持って出て来た主人は、鶏を奥に戻すと、ドアを開けたままキャシーの前に屈み込む。その後ろをフロイトが這って行く(2枚目の写真、矢印)。フロイトがドアから中に入った直後、主人は 「お前さんのバカな友だちのために、包帯を取って来る」と言うと、ドアに南京錠を掛ける。一方、納屋まで行ったフロイトは、そこで豚のジョージと出会い、「いたのか」と安心する(3枚目の写真、矢印は豚のジョージ)。「君を、ここから連れ出さないとな」。ドアの所まで戻ったフロイトは、主人がいない間にドアまで来たキャシーに 「いた?」と訊かれ、「うん」と答える。しかし、それを主人に見つかり、恐ろしくなって後退したはずみで、後ろに置いてあった “鶏肉の漬物の入った大きな瓶” を床に落としてしまい、中身が床に散乱する。怒った主人は、ナタを持って、店から逃げ出した2人を追いかける(4枚目の写真、矢印は主人、その前の赤いドレスがキャシー、先頭がメルセデス)。
  
  
  
  

一方、フロイトは、主人がいなくなっても、南京錠がかかっているので、ドアからは逃げられない。そこで、「ここから抜け出すための、何か論理的な方法があるはずだ」と考え、納屋の奥に閉じ込められていた雄牛の柵を開ける(1枚目の写真、矢印は柵の止め板)。しかし、雄牛はじっとして動かないので、豚のジョージに向かって、「全力で扉にぶつかれって言ってやれよ。でないと、命が危ないって」と言い、ジョージは必死になってブーブー鳴く。しかし、雄牛は動かない。そこで、フロイトは、「数秒以内にここを出ないと、日没までに切り刻んでトルティーヤに詰められるぞと、言えよ」と、ジョージに言う(2枚目の写真)。今度は、その怖さが通じて、雄牛は納屋の扉を突き破って逃げ出す(3枚目の写真)。納屋にいた他の牛、豚、山羊も逃げ出し、最後にフロイトと豚のジョージが逃げ出す。
  
  
  

フロイトと豚のジョージは、村の中心通りに出た所で、キャシーとメリセデスに出会う(1枚目の写真)。しかし、すぐに主人に見つかったので、“マチルダが取り戻して 元の場所に停めてあった車” 目がけて走り、飛び乗る(2枚目の写真)。車は、すぐにベルタの家に向かい、主人は悔しがるが、まだ彼は、納屋の家畜が全部逃げ出したことには気づいていない。夜になり、予定の時間が近づいたので、ベルタとキャシーは荷物を持って出かけようとする。フロイトは、キャシーに 「ちゃんと話せよ」と言って、ベルタと一緒に出て行く。残されたキャシーは、出て行こうとするマチルダを止め(3枚目の写真)、「この大失敗と、あなたの家族への無礼な態度ごめんなさい、って言いたくて。実は、あの日、ジョージをあなたの部屋に押し込んだのは私なの」と謝る。そして、豚のジョージに対しては、「私、時々、というか、いつもあんたに意地悪だった。あんたはうっとうしいけど、あんたのこと好きよ」と謝る。心の広いマチルダは、「始めからやり直しましょ」と言い、互いの自己紹介から始める。こうして、良い雰囲気になったところで、2人と1匹は、外で待っている2人に合流する。
  
  
  

4人と1匹は、車で入れる所まで行き、そこからは歩いてコヨーテ山が正面に見える場所まで行く。満月は、コヨーテの顔をした岩山の近くまできている。ベルタは、この儀式のために設けられた石の台の上に、持って来た重い鍋を置き、持って来た材料を入れてパナホを作る。その間に、フロイトは、豚のジョージに、持って来た服を着せる。月がコヨーテのすぐそばまで近づくと、ベルタは豚と鷲の形の水晶をパナホの中に入れて混ぜる。そして、豚のジョージに、石の台に上がらせる。満月はコヨーテの顔の裏側に入り始め、目の部分に相当する開いた穴から月光が差し込み(1枚目の写真、矢印)、その光が、豚のジョージの乗った石の台を明るく照らす。そのタイミングでパナホが豚のジョージの背中にかけられる(2枚目の写真)。すると、魔法が働いて、薄青い光の粒が豚のジョージを覆い始める(3枚目の写真)〔それにしても、「前回 こんなことが起きた時」は「テココという村に住んでた5~600年前」だというのに、なぜ、別の場所に、この魔術にぴったりのコヨーテ山があり、そこから月光が差し込む場所に石の台まで作ってあるのだろう? すべてがあまりにも偶然で、いい加減過ぎる〕
  
  
  

すると、そこに突然 肉屋の主人が現われ、豚を奪おうと、石の台の上に乗る(1枚目の写真)。豚のジョージは逃げ出し、ベルタとマチルダから残りのパナホを浴びせられた主人の周りにも薄青い光の粒が出現し、大きな雷光とともに白煙が上がり、煙が消えると、そこにいたのは1羽の鷲(2枚目の写真)。月は、コヨーテの目から去り、魔法の時は終わった。4人が心配する中、ジョージは、豚の時のように這って岩陰から出て来る(3枚目の写真)。ジョージは、豚の時のように、ブーブーと鳴き、みんなをドキッとさせるが、「ブタ語で、ありがとうだよ」と言って、ホッとさせる。そして、“誰にも見せないという条件付きで、石の台に上がったジョージと、3人の女性” を、フロイトがポラドイドカメラでパチリ。これで、メキシコのシーンは終わる。
  
  
  

家に辿り着いた4人は、両親が戻る前に、汚れきった車を大急ぎで洗う(1枚目の写真)。そして、両親がタクシーを降りて芝生を歩いて来ると、4人で仲良くポーズを取る(2枚目の写真)。抱き合った後、父が、「留守中に何かあったか?」と訊くと、全員が 「No」と答える。しかし、ジョージが背を向けた時、豚のしっぽが残っていたので(3枚目の写真)、キャシーとマチルダは真っ青に。その先、どうなるのかは分からない。
  
  
  

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