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Witness 刑事ジョン・ブック/目撃者

アメリカ映画 (1985)

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)など、最近のハリソン・フォードを見ていると、年齢の割に〔まだ、75歳を過ぎたばかり〕年老いて見え、演技も冴えないが、彼の履歴を見てみると、アカデミー賞の主演男優賞は、ノミネートされたのは1回のみ。そして、その1回だけの出演作が、この『刑事ジョン・ブック/目撃者』。ピューリッツァー賞を受賞した映画評論家ロジャー・エバート〔Roger Ebert、2013 年に亡くなった〕が公開時に作品と彼の演技を絶賛し、公開の15年後に権威ある映画雑誌「エンパイア」でも、「ほぼ間違いなくハリソン・フォードの最高の演技であり、80年代のうっとりとさせる輝きから生まれた最強のスリラーの一つ」のように、ハリソン・フォードらしからぬ名演を称賛している。そう言う意味では、20世紀から21世紀にかけて、『スター・ウォーズ』『インディ・ジョーンズ』などのシリーズもので一世を風靡した俳優の、最高の演技が見られる作品として価値がある。アーミッシュという特異なキリスト教のコミュニティーを最も正確に描き、スリラーと平穏な人間関係をバランスよく描写した優れた脚本・撮影も特筆に値する。

アーミッシュの8歳の少年サミュエルを演じるのは、1つ前に紹介した『旅立ちの季節』(1991)のルーカス・ハース(Lukas Haas)。公開年で比較すると6年の開きがあり、まるで別人のような外見だが、静かで、あまり行動しないという性格はよく似ている。彼がヤング・アーティスト賞を受賞した『Lady in White(汚れなき瞳の中に)』(1988)、『The Perfect Tribute(リンカーン/アメリカを統一した男)』(1991)を見ない限り演技力の評価は下せないが、1980-90年代の最初にかけて多くの映画に出演した子役であることは確か。

あらすじ

映画は、多くの黒服を着たアーミッシュの人々が、徒歩やバギーでラップ家の葬儀に向かう場面から始まる(1枚目の写真)〔2枚目の写真は、この映画が今でも人気があるため、ロケ地を巡る秘密ツアーが開催されていて、そこに掲載されていた現在のラップ家(左端)を撮影したもの〕。アーミッシュは、18世紀から19世紀にペンシルベニアに定住したドイツ〔スイスのアルザス地方出身の〕移民の中で、ペンシルベニア・ダッチ語を話す再洗礼派キリスト教徒〔メノー派も同じ宗派だが、生活スタイルは現代的〕で、当時のままの生活スタイルを維持している人々を指す。「ダッチ」は英語でオランダ語を指すが、実際には、高地ドイツ語の発展形。アーミッシュが "Deutsch" と言っていたのを、他の初期のアメリカ人入植者たちが “Dutch” と混同したというのが有力な説とされている。バギーは小型の1頭立ての馬車のことで、アーミッシュは自動車を使わず、現在でもバギーしか所持していない。3枚目の写真は、夫のジェイコブを亡くしたレイチェルと、その1人息子のサミュエル、義父〔夫のジェイコブの父〕のイライ。レイチェルが頭に被っているものは、アーミッシュの女性が必ず被っている白のボンネット。イライのあごひげは既婚男性の印。4枚目の写真は、イライの家に集まった村人たち(矢印はサミュエル)。ここで話されている言葉はすべてペンシルベニア・ダッチ語。葬儀が終わり、レイチェルに気のあるダニエルは、女性だけが集まっているグループに寄って行き、「レイチェル、ジェイコブのことは気の毒だった。彼は神と共に歩んでいる」と声をかける(5枚目の写真)。
  
  
  
  
  

次のシーンでは、レイチェルがボルティモアにいる姉に会いに、サミュエルと一緒に出かける。ラップ家がどこにあるのかは不明だが、ペンシルベニア州でアーミッシュの多いのは、ランカスター郡〔Lancaster County〕。レイチェルを前の座席、サミュエルを後ろに乗せた義父のバギーは、鉄道駅に向かう(1枚目の写真)。そのためには、幹線道路を走ることになり、片側1車線の道路なので、ゆっくり走るバギーのあとに、長い車列ができる(2枚目の写真)。途中で信号待ちする交差点のロケ地は、それまで走ってきたPA-896〔ペンシルバニア州道896号線〕がUS-30〔アメリカの東海岸と西海岸を結ぶ国道30号線〕とクロスする地点〔ランカスターの東南東約10km〕。バギーが着いた駅のロケ地は、パークスバーグ〔Parkesburg〕〔先ほどの交差点の東南東約25km〕という村の寂れた駅〔実際にそんな距離をバギーで走ることはないので、ただのロケ地だが、彼らがランカスター郡にいるという設定は確かなようだ〕。駅に着くと、別のバギーで見送りに来たダニエルが、羊を描いた小さな木の板をサミュエルにプレゼントして喜ばせる(3枚目の写真)〔レイチェルに取り入るため〕
  
  
  

義父は、レイチェルが列車に乗る前に、「周りにはイギリス人しかいない。気をつけろよ」と注意する(1枚目の写真)〔アーミッシュは、自分たち以外の人間を 「イギリス人」 と呼ぶ〕。ステップを上がったレイチェルにダニエルが笑顔で手を上げ、それに対し、レイチェルも微笑むが、わざわざ送ってきた相手に対しては少し冷たいようにも見える〔夫を亡くしたばかりなので当然なのかも〕。座席に座った2人は、嬉しそうにはしゃぐ(2枚目の写真)。列車が走り始めると、自分を売り込むことに必死のダニエルは、バギーの覆いを畳み、仁王立ちになって列車と並行して馬を走らせ、勇気のあるところを見せる(3枚目の写真)。
  
  
  

2人がフィラデルフィアに着き、レイチェルがボルティモア行きの列車について窓口で尋ねると、「3時間遅れています。乗車時間になったらアナウンスがあります。そこに座っていて下さい」と、指示される。2人は、1895年に製作された「輸送の情熱〔The Spirit of Transportation〕」という壁のレリーフの前の木の長椅子に座って時間を潰す。そのうち、サミュエルはトイレに行きたくなり、1人でトイレに向かう(1枚目の写真、矢印)。このロ地は、映画の設定と同じフィラデルフィアのウィリアム H. グレイ 3 世 30 番街駅〔William H. Gray III 30th Street Station〕〔国家歴史登録財〕。2枚目の写真に示すように、長さ88m×幅41m×高29mの内部〔格天井と美しいアールデコ様式のシャンデリアが特徴〕は、“アメリカの鉄道と都市計画の進歩におけるマイルストーン” と言われるに相応しい立派な駅舎です〔建物内部には礼拝堂、霊安室、病院、屋上には小型飛行機の着陸スペースまであるとか〕。サミュエルがトイレに入って行くと、好青年が洗面で顔を洗っている。サミュエルは一番奥の個室に入る(3枚目の写真、矢印)。サミュエルはドアを完全に閉めずに用を足し始める。
  
  
  

すると、トイレ内に、2人の男が入って来て、好青年〔覆面警官〕の両脇に陣取る(1枚目の写真、矢印は麻薬担当の警部補マクフィー)。好青年の右側に位置したマクフィーの部下の汚職警官が、赤黒い布を好青年の頭に被せると、マクフィーが飛び出しナイフで好青年の喉を切って殺害する(2枚目の写真、矢印はナイフ)。それを、閉めていないドアの隙間からじっと見ている(3枚目の写真)〔映画の原題『目撃者』そのものだ〕。サミュエルは、隙間から離れた際、うっかり小さな音を漏らしてしまう(4枚目の写真)。
  
  
  
  

その音を耳にしたマクフィーは、個室のドアを右端から1つずつ開けては、中に誰か隠れていないか調べ始める(1枚目の写真、矢印は拳銃)。ドアが開けられるのが近づいてくるのを知ったサミュエルは、ドアに中から鍵をかける。そして、マクフィーが開けようとガタガタと揺すっている隙に、個室のトイレの壁の下の狭い隙間から、右隣の個室に逃げる(2枚目の写真、矢印の方向)。マクフィーがドアを蹴破っても、そこには誰もいない。サミュエルは、便器の上に乗って隠れていた(3枚目の写真)〔なぜ、便器の上に乗っているのだろう? マクフィーがその気になれば、屈んで下の隙間からチェックなどせず、1回調べたドアをもう一度開ければ済むだけなのに〕
  
  
  

次の場面では、警官が駅に集合している。指揮を取っているのは、ジョン・ブック警部、配下はカーター巡査部長。レイチェルとサミュエルは怖そうに抱き合っている(1枚目の写真)。目撃者が 「そこにいる変な黒い服を着た子供」だと聞いた警部は、2人に近寄っていくと、腰を降ろし、下から目線で 「坊やは大丈夫?」とレイチェルに尋ねる。「私は警官です。坊やと話さないといけません」。そう言うと、サミュエルに、「何て名前だい?」と訊く(2枚目の写真)。サミュエルが緊張して何も言えないので、レイチェルが代わりに、「サミュエル・ラップ」と教える。「あなたの息子さん?」。レイチェルは頷くと、「ボルティモアに向かう途中なんです。妹が待っていて、もうすぐ列車に乗らないと」と言うが、警部は、「他の列車に乗っていただきます」と答えると、サミュエルに、「サム、殺された男は警官だった。私は、何が起きたのか調べないといけない。君がトイレで見たことを何もかも話して欲しい」と言う。サミュエルは、「2人いた」と話す。「2人の男かい?」。「見たのは1人だけ」。「どんな男だった?」。サミュエルは、警部の隣にいた黒人の巡査部長を見て、「この人みたい」と言う。「黒人? 黒い肌だった?」。「うん。でも、schtumpigじゃない」。「schtumpig? schtumpigって何?」。レイチェルがペンシルベニア・ダッチ語の説明をする。「農場では、生まれた豚が小さいとschtumpigって言うの。“ちび” のこと」。「じゃあ、大きな男〔big guy〕だったんだ」。警部は立ち上がると、「私くらいかな?」と訊く。サミュエルは、その言葉が初めてだったのか、「big guy」と嬉しそうに言う(3枚目の写真)。
  
  
  

警部は、2人をパトカーに乗せると(1枚目の写真)、市警本部に向かわず、「彼がまだ近所にいると信じるに足る理由があります」と、後から考えると全く間違った説明をし〔そんな “理由” など どこにもない〕、悪い黒人が多く集まっているバーに向かう。そして、巡査部長と一緒に店に入って行くと、体の大きな黒人を店から連れ出し、パトカーの後部座席の窓に顔を押し付け、「サム、これが その男か?」と訊き(2枚目の写真)、サミュエルが首を横に振ると(3枚目の写真)、黒人を解放する。レイチェルは、このような乱暴で無意味なやり方に抗議する。そのあと、巡査部長が2人をどうするかについて、「ホテルか?」と訊くと、警部は、それでは逃げられてしまうので、姉エレーヌの家に泊めることにする。
  
  
  

警部は、何の予告もなしに姉の家に2人を連れて行く。警部が2人を2階の「青の部屋」に向かわせて階段を下りてくると、姉は、「いきなり何てことするのよ」と批判する。「大事なことなんだ」。それを聞いた姉は、「突き当りまで行ってね。坊やには折りたたみベッドがあるわ」と言いながら階段を駆け上がる。警部はすぐに出て行ってしまい、姉が様子を見に行くと、2人は着替え、サミュエルはベッドに寝ている(1枚目の写真)。姉は。「あなた方アーミッシュだそうね」と訊く。「ええ」。「まあ」。姉は、びっくりして出て行く。2人だけになると、サミュエルは、「僕たち、ここにずっといるの?」とレイチェルに尋ねる(2枚目の写真)。「いいえ、今夜だけよ」。
  
  

翌朝、2人は警部に連れられて警察本部へ。廊下でレイチェルが、「私たち、いつこの街を出て行けるの?」と訊くと、警部は 「できるだけ早く終わらせるから、そうしたら出て行けますよ」と答え、レイチェルはホッとする。サミュエルは、面通し室〔明るい〕のマジックミラーの裏側〔暗い〕に立ち、7人の黒人の容疑者を見る(1枚目の写真)。警部は、この中にトイレで見た男がいるか訊くが、サミュエルは首を横に振って否定する(2枚目の写真)。
  
  

警部は、2人を近くの食堂に連れて行き、ホットドッグを3個注文する。席につくと、警部はさっそく食べ始めるが、2人が食前の祈りを始めると、失敗したと思い、口を動かすのを止めてじっとしている(1枚目の写真、矢印は祈りのために組んだ手)〔下を向いて目を閉じているので、警部が何をしていても見えないのだが…〕。祈りが終わると、口の中に入れたホットドッグを噛み始める。それを見たサミュエルは、思い切り大きく口を開けてホットドッグに噛みつく(2枚目の写真)。レイチェルは、食べずに、「お姉さんは、あなたには家族がいないと言ってらした」と話しかける。「ありませんよ」。「あなたは結婚して自分の子供を持つべきだと思っておられるわ。あなたが責任を恐れてるとも」。「他には何て?」。「彼女は言ってたわ。あなたが警察の仕事が好きなのは、自分が常に正しくて、自分だけが何でもできると思っているからだって」。
  
  

警察本部に戻ると、警部は、犯罪者の写真の次から次へと見せるが(1枚目の写真)、サミュエルは首を横に振り続ける。その時、巡査部長から電話がかかってくる。少し離れた席にいた女性は、サミュエルに笑顔を見せたので、何もすることがなくなったサミュエルは女性の前まで行く。女性はクッキーを1つ渡そうとするが、サミュエルは首を横に振る。サミュエルが後ろを向くと、別の男性がこっちに来いと首を振って合図する。サミュエルが前まで行くと、男の左手が手錠でイスに固定されていて、男がイスを揺すってカタカタ音を立てる。そこを離れ、室内を歩き回っていると、ガラスのケースにこれまでこの警察本部がもらった表彰記念品が飾ってある。サミュエルが視線を上げて行くと、サミュエルの目は新聞記事の切り抜きに吸い寄せられる(2枚目の写真)。その記事の標題は、「マクフィー麻薬取締官が青少年プロジェクトで表彰」というもので、記事は、「フィラデルフィア市警麻薬課のジェームズ・マクフィー巡査が、彼の提唱した『もうひとつの方法』プログラムの成功を称え、市議会から今年度のエドワード・L・ウェズリー賞〔架空〕を授与された」という記述から始まっている。サミュエルがじっと見ていたのでは、その記事の文章ではなく、そこに掲載されていた黒人の写真。それは、駅のトイレで警官を殺した男と同じ顔だった(3枚目の写真)。
  
  
  

サミュエルは、電話で話している警部の方をじっと見る(1枚目の写真)。その目線に気付いた警部は(2枚目の写真)、電話を切り、サミュエルの前まで来ると、一緒にガラスのケースの中を見る。すると、サミュエルが、ジェームズ・マクフィーの写真を指差す(3枚目の写真)。警部は、よくやったとサミュエルの顔を見る。
  
  
  

その夜、警部はポール・シェイファー本部長の家を訪れ、「2人のうち1人はマクフィーです、ポール」と報告する。「マクフィー? 麻薬担当の警部補の?」。「ええ」。「すべてが当てはまるんです。4年前、麻薬課の手入れで、550ガロン〔約2000ℓ〕のP-2-P〔フェニルアセトン〕が押収され、警察の保管庫に入れられた。フィラデルフィアは国内すべての主要都市にスピード〔覚醒剤〕を供給してるて、スピードを作るにはP-2-Pが必要なんです」(1枚目の写真)「1パイント〔0.125ガロン〕5,000ドルで売られてる。2200万ドル〔当時の約53億円〕ですよ。警察の保管庫に電話しても、550ガロンのP-2-Pは存在しない。4年前、手入れをやったのは誰だと思います?」。「マクフィー」。「奴に話したか?」。「いいえ、フロリダに休暇中です」。本部長は直ちにFBIに連絡すると言った後で、①少年の居場所(→姉の家)、②このことを誰が知ってるか?(→警部と本部長の2人だけ)を質問し、2人だけの秘密にするよう命じる。警部が、自分のマンションの地下駐車場に車を停め、洗濯した服を持ってエレベーターの乗り場まで歩いて行くと、駐車してあった車からマクフィーが降りて来て、警部に向けて発砲する(2枚目の写真)〔このことから、本部長が、4年前のP-2-Pの取引や、今回のトイレでの殺人の首謀者であることが分かる〕。警部も応戦し、激しい撃ち合いとなり、マクフィーは車で逃げ去る。しかし、警部がエレベーターの前で落とした洗濯物の所まで行くと、自分の体からかなりの出血があることに気付く(3枚目の写真、矢印は血液)。
  
  
  

地下駐車場から車に乗って、姉の家まで行った警部は、撃たれた傷を苦にしながら、いろいろと手を打つ。その際は、姉に2階の部屋に行かせ、ベッドに入っているレイチェルに、「ジョンからよ。今すぐここを出て行くんだって。緊急だそうよ。早く服を着て」と言わせる(1枚目の写真)。そして、戻って来た姉には、「俺の車をガレージに入れドアは閉めといて」と言う。姉が 「ジョン、いったいどうなってるの?」と訊いても、「あんたは何も知らない。いいね? 車は借りる。理由は言えない。あんたは、あの女性と子供のことも、聞いたことがない」と、姉が知らぬ存ぜぬで通すよう求める。「ジョン、わけを教えて」と頼んでも、知っていると顔に出るので、「言われた通りに」としか言わない。姉の小型車の後部座席にレイチェルとサミュエルを乗せ、ひどい怪我を負いながら警部はマーミッシュの村まで運転していく。レイチェルが、「フィラデルフィアにいれば安全だって言ってじゃない」と文句を言うが、「間違ってた」としか答えない(2枚目の写真)。警部は、途中で車を停めると、公衆電話から巡査部長に電話をかけ、「あの子の供述、シェイファーに渡したか?」と訊く。「いいえ」。「この件のすべての書類は、今夜中に破棄してくれ。俺も、数日消える。お前も警戒しろ。シェイファーが絡んでる」と依頼プラス警告する。翌日、姉の家をシェイファーが訪れ、「彼はトラブルに巻き込まれてる。私は彼を助けたい」と嘘をつき、「彼がどこにいるか知る必要がある」と言う。姉が、「どんなトラブル?」と訊くと、「それは組織内の問題だ。あなたが心配しなくていい。彼と直(じか)に話せれば、問題はすぐ解決できる」と、嘘を並べる(3枚目の写真)。姉は、弟に言われた通り、「私の所有地から出てって」とけんもほろろに追い払う。シェイファーは、姉は何も知らないと思い込む〔実際、ほとんど何も知らないのだが〕
  
  
  

警部はレイチェルに教えてもらいながら、何とかラップ家の前に到着する。数日間音沙汰なしだったので、心配した義父が、「サミュエル」と叫んで家から飛び出して行き、サミュエルは 「パパ」と言って抱き上げられる。一方、車の中では、疲労困憊した警部の様子を見て、レイチェルが 「休まないと。コーヒーを用意するわ」と言うが、警部は 「ここには いられない」と断る。親切を無視されたレイチェルは黙って車から降り、ドアをバタンと閉めると〔警部の傷に響く〕、窓から 「裁判の時、サミュエルを連れ戻しに来る?」と訊く。警部は 「裁判なんかない」と言うと車を出すが、それまでは、2人を家まで送り届けるという使命感だけで頑張って来た警部も、目的を達成すると、それ以上の気力がなくなり、気を失って道から外れ、家の前の大きな巣箱にぶつかって停まる。巣箱を心配したのか、警部を心配したのかは分からないが、サミュエル、レイチェル、義父の順に車に向かって走り出す(1枚目の写真、矢印は倒れた巣箱)。レイチェルが運転席のドアを開けると、血まみれになった警部のズボンが目に入る。レイチェルは義父に馬車を取ってくるよう頼むと、警部に向かって 「なぜ病院に行かなかったの?」と詰問する。「医者はダメだ。銃の傷は報告される。報告されれば奴らは私を見つける。私が見つかれば坊やが見つかる」と、危機感を伝える(2枚目の写真)。そこに、義父が馬車を全速で走らせてくる。気を失った男〔義父は、まだ相手が誰か知らない〕を見た義父は、「イギリス人は死んだのか?」と尋ね、レイチェルは 「いいえ」と答える。祖父は心臓が動いているのを確かめると、警部の背中を後ろから抱いて車から出し、レイチェルが脚をもって馬車に移す。警部の右上腹部のYシャツは、血で真っ赤だ(3枚目の写真)。
  
  
  

さっそく、ある程度健康管理に詳しいアーミッシュが呼ばれる〔部屋は2階だが、どうやって運んだのだろう?〕〔アーミッシュの村に医者はいない〕。腹部に触った男は、「燃えるように熱い」と言う。傷を覆っていた布を外すと、腹部の左右に銃創が付いている。男は、銃弾が左から入り、右から出て行ったと言うが、それだと警部がマクフィーと90度横を向いた時に貫通したことになる〔正面から撃ち合っていたのに、なぜこのようなことが可能なのだろうか?〕。男は、「感染しているかもしれん。出血もひどい。わしは医者じゃない。この男は、すぐ病院に連れて行くべきじゃ。わしにできることは何もない」と言う。しかし、警部が気を失う前に言ったことを聞いていたレイチェルは、「ダメよ。彼はここにいないと」と言い出す。義父は、「死んだらどうする? シェリフがやって来て、わしらが法を破ったと言うぞ」と反対するが、レイチェルは 「それなら、死なないよう お祈りをしないと。でも、もし死んだら、誰にも知られないよう、何とかしないと」と反対する。義父は 「だがな、レイチェル、それだと、この男の生死をわしらが左右することになる」と、難色を示す。レイチェルは 「神よ私を救い給え。分かってます、イライ。でも、これだけはお話しないと。もし彼が見つかったら、彼をこんな目に遭わせた連中がサミュエルを捕まえに来るのよ」と真相を話し、これで様子はガラリと変わる(1枚目の写真)。男は、「なら、湿布を作ろう。感染症には牛乳3、亜麻仁油2の割合じゃ。メアリーに、わしが自分で煎じた茶も持って来て来させよう」と言う。そして、家を出て行く前に、イライに、「ラップ、この件に関しては長老たちに話さねばならん」と言い、イライは、「お任せする」と答える。男が帰ると、万が一にも車が見つからないよう、馬に牽かせて車を納屋に隠す(2枚目の写真)。そのあと、警部が熱に浮かされてうなされるのをいうのをレイチェルが看病したり、朝まで、ベッドの脇のイスに座ったまま眠ってしまう姿が映される。2日後、警部が意識を取り戻すと、眼の前に多くの老アーミッシュが立って見ていた。「誰なんだ?」とレイチェルに訊くと、「私たちの地区の長老様。あなたを直々にご覧になりに来られたの」と説明する(3枚目の写真)。
  
  
  

それからしばらくして、サミュエルが警部の寝ていた部屋に入って来る。誰もいなかったので、机の引き出しを開けると、中に、警部の持ち物が入っている。警察の身分証や鍵やコイン、そして拳銃も。サミュエルはもの珍しそうに拳銃を触ってみる。すると、「動くな!」という強い言葉して(1枚目の写真、矢印)、部屋に入って来た警部は拳銃を素早く取り上げると、サミュエルをベッドに座らせ、「これは装填されてる。すごく危険なんだ。決して触るんじゃない」と強く注意する(2枚目の写真、矢印)。そして、銃弾を抜き取ると、「これなら安全だ。分かるな?」と言う。「分かった、ブックさん」(3枚目の写真)。「ジョンと呼んでくれ。怒鳴るつもりはなかった。私は、君に怪我して欲しくなかったんだ」。そう言うと、拳銃をサミュエルに渡す。しかし、そこにレイチェルが入って来て、サミュエルが銃を持っているのを見てしまう。レイチェルは直ちに、「下で、私を待ってなさい」と命じる。サミュエルが出て行くと、レイチェルは、状況を聞かずに、「ジョン・ブック、あなたがこの家にいる間は、私たちの流儀を尊重すべきよ」と批判する。警部は、何も言い訳せず、拳銃を差し出して、「持って行って。どこか安全で、あの子が見つけない場所に」と言う。それで一件落着とはならず、イライはサミュエルを銃を置いたテーブルに座らせると、「銃は人の命を奪うためのものだ。わしらは、命を奪うことは間違っていると信じている。神だけがなさることだ」と説教をする(4枚目の写真、矢印)。
  
  
  
  

サミュエルの出ない場面なので、簡単に要約すると、①警部の服が血で汚れていたので、レイチェルが洗い、代わりに亡き夫の正式な黒服を持参する〔普段、アーミッシュの男性は、単色の長袖シャツにサスペンダー付きの黒ズボン、帽子はつばの広い麦わらハットなのに、なぜ正式な服を渡したのだろう?〕。②警部は、レイチェルに渡された服を着て(1枚目の写真、スボンが短い)、電話をかけに近くの非アーミッシュの町までイライにバギーで連れていってもらう。③警部は、すぐに巡査部長に電話をかけ(2枚目の写真)、「俺は、始末をつけにそっちに行こうと思うが、どのくらい危険だ?」と訊く。巡査部長は、「危険すぎる。来ちゃダメだ。みんなであんたを捜してる」。「あの子のためにも、ここから出て行かないと」。「あんたは、シェイファーから1マイル以内には近づけないよ」。この電話のロケ地は、インターコース〔Intercourse〕という小さな村〔ランカスターの東約17km〕にある今では閉鎖された店。公衆電話だけは今でも使えるとYouTubeで言っていた(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

ラップ家に戻った警部は、サミュエルに家の周囲の構造物について教えてもらう。最初に言ったのが水車(1枚目の写真)。水車が回ると、ワイヤーが引っ張られ〔恐らく、その先に歯車がついていて、ワイヤーの前後運動が上下運動に変わり〕、井戸から水を汲み上げて家の中に送ると説明する(1枚目の写真)。次は、トウモロコシの貯蔵庫。サミュエルが下部の穴から「ハロー」と叫ぶと(2枚目の写真)、コンクリート製の巨大な空洞の中で声がこだまのように返ってくる(3枚目の写真)〔この貯蔵庫は後で重要な役割を担うのだが、どうしても分からないのは、なぜ空洞で、この頂部に仕切りがあり、その上にトウモロコシが貯蔵されているという設定。ネット上でトウモロコンの貯蔵庫を調べても、トウモロコシは貯蔵庫の下から入れられていて、このような空洞はない〕
  
  
  

元気になった警部は、乳牛の乳搾りを手伝うことに。起床時間は朝の4時半。作業が終わってから朝食だが、まだ外は真っ暗(1枚目の写真)〔食卓の上に吊ってあるのは灯油ランプ。アーミッシュの家には電気が通じておらず、照明は灯油ランプかロウソクのみ〕。その後、警部とレイチェルが次第に仲良くなっていく様子が映される。ある日の夜、納屋で、警部がレイチェルと話しながら、壊れた車の修理をしていると、ラジオの音が入り始める。番組は、すぐに「Wonderful World」という曲を流し始める。その曲に合わせ、2人は納屋の中で踊り始める。すると、義父が 「レイチェル!」と呼ぶ声が聞こえ、ランプを手にした義父が納屋に入って来る。義父は、ペンシルベニア・ダッチ語で叱る(2枚目の写真)。レイチェルは、それを無視するように納屋からとっとと出て行く。義父は後を追いながら、「お前はどうなっとる? 規律はどうした?」と問い詰める。それに対し、レイチェルは 「私は規律に反することは何もしていません」と強弁する。「何もだと? お前は、銃を持った男をこの家に連れて来た。この家に危険をもたらしたのじゃ。あの男を追って、銃を持ったイギリス人がやって来るという懸念を」。「私は何の罪も犯していません」。「かもしれんし、そうでないかもしれん。お前も、噂は知っておるじゃろう。お前を忌避〔shunned〕しようと、ビショップのところに行った者がおるんじゃ」(3枚目の写真)。「ただの雑談よ」。「軽く考えてはいかん。彼らならできる。お前は、忌避の意味を知っとるのか? わしは、お前と一緒の食卓には座れん。お前の手から何も受け取れん。一緒に教会にも行けん」。この真摯な義父の言葉にも、警部が好きになったレイチェルは、「私は子供じゃないわ。判断するのは私よ」と義父に失礼なことを平気で言う。それに対し義父は 「それを判断するのは彼らであり、私もそうだ。私を辱めないでくれ」。それに対し、レイチェルは 「You shame yourself」〔共感性羞恥心を指しているのだが、適切な訳が思いつかない/でも、アーミッシュの女性が、義父に対し、こんな異常とも言える失礼な態度を本当に取るものだろうか?〕と、冷たく言い放って去って行く。一方、フィラデルフィアの警察本部では、シェイファーの部屋に呼ばれた巡査部長が、「奴がどこにいるのか、なぜ私に話さん? 私は、彼と話したいだけだ」と言い(4枚目の写真)、それでも彼が黙っていると、「ジョンはルールを破った。今度は、君が破ろうとしとる」と脅す。
  
  
  
  

次は、非常にユニークなシーン。新婚夫婦のために、コミュニティーの働ける男女が集まり、助け合いの精神で大きな納屋を1日で建てる場面。警部も誘われて協力するが、もともと大工の腕前は上々だったので、部外者にもかかわらず、この日だけは重宝される。作業は、納屋の外に面する妻壁の木枠〔地面に造って置いてある〕を男性全員がロープで引っ張って垂直に立てるところから始まる。次に、3ヶ所ある中間の木枠〔納屋の内部なので、外枠だけ〕を1つ立て、妻壁の木枠と連結して固定する。それをあと2回繰り返し、最後に、反対側の妻壁の木枠を立てる。この作業と並行して、壁の木脇の上に、三角屋根の木枠を組み立てていく。その全貌を映したのが1枚目の写真。CGなどではないので、なかなか壮観だ。2枚目の写真は、枠を組み立て終わったところで、女性達が用意した昼食を男性全員が食べるが、その前に祈りを捧げているところ。折角なので、そのあとの作り方も3枚目に紹介しておこう。なぜか、軒までは届かない長い板を順に並べている〔左の建物は、新婚夫婦の家。これは誰が建てたのだろう?〕。夕方になって納屋が完成すると、全員が引き上げていく(4枚目の写真、矢印は納屋)。
  
  
  
  

警部が次に町に行き、警察本部に電話をかけて、巡査部長につなぐよう頼むと、いつもと違い他の部署に回され、友だちだと告げると、昨夜殉職したと告げられる(1枚目の写真)。巡査部長はシェイファーによって殺害されたと悟った警部は、居所を追跡されないよう、夜まで待って、シェイファーの自宅に電話する。シェイファー: 「わしの自宅に電話をかけても逆探知できん。賢いな、ジョン、すごく賢い」。警部: 「生きる意味を失くしたか、ポール?」。「何だと?」。「汚職警官のことを よくそう言っていたろ? どこか途中で、生きる意味を失くしたと」。「ジョン。どこにいるかは分かっている。捕まえに行くからな」。「いや、そうじゃない。俺がお前を捕まえに行くんだ。お前がゼノビッチにやったこと、カーターにやったことを、お前にもやってやる。このクソ野郎め」(2枚目の写真)。
  
  

別の日。警部はイライと2人でバギーに乗って町に行く〔なぜ、2人で行ったかは分からない。警部はイライに嫌われているし、町にはもう用はないハズ。次のシーンのための “ワザと” の外出?〕。2人の前には、荷台の上に何人も乗せたバギーが先行している。その前に現れたのが、恐らく観光客としてやってきたチンピラの若者たち。相手がアーミッシュだと承知の上で、「英語話せるか?」と嘲り、前に乗っていたダニエルの鼻の頭、両方の頬などに、持っていたアイスクリームを擦り付け、それでも怒らないダニエルを、「お前、男か?」と笑う。それを見て腹を立てて出て行こうとする警部に、イライは 「それは、我々のやり方ではない」と注意するが、人目を引くと自分だけでなくサミュエルの命も危ないことを知っていながら、愚かな警部は 「だが、それは俺のやり方じゃない」と言うと、バギーから降り、チンピラどもに向かって歩いて行く。それを見たダニエルは、「いいんだ、ブック」と、自分に害はないと止めるが、警部は、かれをバカにしたチンピラの顔と腹部に猛烈な一発をお見舞いする。相手は、顔中血だらけになる(2枚目の写真)。それに腹を立てたのは、近くの商店主。アーミッシュの観光で儲けているくせに、観光客が減るとイライに文句を言い、直後に偶然通りがかったパトカーの巡査に、イライ・パップと一緒の男が殴ったと話してしまう(3枚目の写真)〔この映画で、汚職警官に次いで嫌な奴〕。これで、警部の隠れている場所がシェイファーに知られてしまった。
  
  
  

自分の行った愚かな行為を、後になって気付いた警部は、ラップ家を出て行くことにする。いろいろ役に立ってくれたサミュエルには、大工として腕を振るって “立体ボール転がし” をプレゼントし(1枚目の写真)、ここに来た時に車をぶつけて壊してしまった巣箱は復元し、元通りに柱に乗せて家の前に立て(2枚目の写真)、レイチェルとは永久の別れのキスをする(3枚目の写真)〔これで、シェイファーがやってきても、警部はいなくなっていて無事だが、サミュエルは重要な目撃者なので殺される可能性がある。その点に対する配慮がどこにもない〕
  
  
  

いよいよ最後の戦い。警部の居所を知った本部長のシェイファーは、殺人犯の警部補マクフィーと、同じような汚職警官〔恐らく警部補〕のファーギーを連れてまだ薄暗い野道を歩いてラップ家に向かう(1枚目の写真)。一番荒っぽいマクフィーがライフル銃を構えドアを蹴破って入って行く。そこにいたレイチェルに向かって、シェイファーは 「我々はフィラデルフィア警察だ。ラップ夫人、心配はいらん。我々はあんたの息子さんには手を出さん。ブックが欲しいだけだ。どこにいる?」と、静かに、しかし、脅迫的に訊く。そこに、絞ったミルクの入ったバケツを両手に持ったイライが納屋から戻って来て、ライフルを持ったマクフィーを見るなり 「ブック!」と叫ぶ(2枚目の写真)。イライはマクフィーに乗って顔を殴られて倒れ、ミルクが地面に散乱する。マクフィーは、ファーギーと一緒にイライが叫んだ納屋の方に走って行く。イライの叫び声を聞いた警部はサミュエルと一緒にいたが、彼がまずしたことは扉に鍵をかけること(3枚目の写真)。
  
  
  

複雑な構造の納屋なので、そのまま地階を走って車を隠した隣の納屋まで行くと、少し開いたままの扉の前で、サミュエルに向かって 「よく聞け、サミュエル、全速でホッホライトナーの農場〔ダニエルがいる〕に行き、そのまま そこにいるんだ。いいな?」と命じる。「あなた、殺されちゃうの?」(1枚目の写真)。「私なら大丈夫だ」。「でも、銃を持ってないじゃない」。警部は心配してくれるサミュエルを抱き締めると、「走るんだ、サミュエル、走れ!」と命じる。サミュエルは、遠く離れた隣の農場目がけて走り出す(2枚目の写真)。警部は、そのまま車で逃げようと、扉を開け、エンジンをかけようとするが、かからない。納屋の中の牛小屋に入ろうとしたマクフィーは、革靴を牛の糞の中に突っ込む。エンジンを何度もかける音にファーギーが気付き、開いた扉のところまで行くと、車のドアは開いたままになっている。ファーギーは、警部がどこにいるか分からないのに、脅すためなのか、何度も発砲する。その発砲音を聞いたサミュエルは、走るのを止め、進もうか 戻ろうか考える(3枚目の写真)。
  
  
  

警部は、再び地階に戻り、トウモロコシの貯蔵庫を覗いてみる(1枚目の写真)。そこに入ってしまうと行き止まりになるので、入るのはやめ上を見上げると、天井に貯蔵庫の上部に登る階段があるのが見えたので、そこを登り始める。ファーギーは、床に穴が開いたままになっていたので、そこから逃げたと分かり、地階に侵入する。そして、トウモロコシの貯蔵庫の中に入って行き、隠れていないか確認する(2枚目の写真)。その時、階段の最上段まで逃げていた警部は、頂部に貯蔵されているトウモロコシを支えている床を開け、下の貯蔵庫に一気に落下させる(3枚目の写真、矢印は落ちてくるトウモロコシの粒)。ファーギーは逃げる暇もなくトウモロコシに埋まってしまう。
  
  
  

ファーギーを捜しに来たマクフィーは、彼がどこにもいないので、暴行警官らしく、トウモロコシ貯蔵庫の入口に向かって何発も発砲する。その音を聞き、台所で心配そうに抱き合っていたレイチェルと義父は、突然、隣の部屋にサミュエルが立っているのをみてびっくりし、レイチェルが声を出しそうになるのを義父が手で押さえて止める。一方、続けさまの発砲音に外に出て行ったシェイファーは、マクフィーが、「ファーギーがどうなったか分かりません。来て下さい」と叫んだので、戸口から2人に向かって、「来て。外に出るぞ」と声をかける(1枚目の写真)。義父は、レイチェルを先に出すと、隣の部屋からじっと見ているサミュエルに(2枚目の写真)、手を動かして “鐘を鳴らせ” と暗示して(3枚目の写真、矢印)出て行く。
  
  
  

その間に、警部は、トウモロコシの貯蔵庫に潜り込むと、ファーギーが埋まっていたので、辺りを掘ってライフルを引っ張り出す(1枚目の写真、矢印)。そして、再び中に入って来たマクフィーを撃ち殺す(2枚目の写真)。
  
  

サミュエルは、祖父の暗示を理解し、緊急事態を知らせる鐘を鳴らす(1枚目の写真)。シェイファーはイライに、「ガキに鐘を鳴らすのを止めさせろ!」と命じる。すると、そこにライフルを持った警部が現われたので、シェイファーはレイチェルの頭に銃を突き付ける。警部が 「放せ、ポール!」と怒鳴ると、シェイファーは 「銃を下ろせ、ブック!」と怒鳴る。その後、怒鳴り合いが続くが、結局は、シェイファーの 「女の頭を吹き飛ばすぞ」の脅迫の方が強く(2枚目の写真、矢印は拳銃)、警部はライフルを捨てて、「彼女を放せ」と言うしかない(3枚目の写真)。祖父は、鐘の所まで行くと、立派に役目を果たした孫を抱き締める。
  
  
  

鐘の音を聞いて、男たちが助けに駆け付ける(1枚目の写真)。中には、女性や子供も混じっている。シェイファーが警部にライフルを突き付けて戸口から外に出てくると、そこには大勢のアーミッシュがずらりと並んでいる。これは、シェイファーにとって予想外のことだった。驚いたシェイファーの手を逃れた警部は、アーミッシュの一群の中に飛び込む。シェイファーは 「私は警官だ。この男は殺人容疑で指名手配されている。下がれ!」と怒鳴る。警部は、「ポール、何をする気だ? 私を殺すのか? 彼〔イライ〕を撃つのか?」と言い、次にサミュエルを捕まえると、「この子を殺すのか? それがあんたの目的なのか?」と糾弾する(3枚目の写真)。大勢のアーミッシュが見ている前で、シェイファーには何もできない。警部は、「もう終わった。止めろ!」と怒鳴り、シェイファーからライフルを取り上げる。
  
  
  

次の場面では、多くのパトカーと警官が納屋の周りにいる(1枚目の写真、矢印は警部)。それを、窓からサミュエルがじっと見ている(2枚目の写真)。この辺り、台詞はゼロ。
  
  

次は、警部とサミュエルが、納屋の横の川辺に座っている(1枚目の写真)。警部はサミュエルの首に手を置き、顔を髪につける〔何を囁いたのだろう?〕。警部が立ち上がって去ろうとすると、サミュエルは 「さよなら、ジョン・ブック」と声をかけ、警部は振り向いて 「さよなら、サミュエル」と言い、サミュエルは微笑む(3枚目の写真)〔これが、サミュエルの最後の登場場面〕
  
  
  

警部が戸口に立っていると、レイチェルが現われる。2人は見合うが、そこには、かつてのような恋心はない。あくまで、アーミッシュの未亡人と、フィラデルフィア警察の未婚の警部という、別世界の存在同士。レイチェルの最後の微笑は控え目だし(1枚目の写真)、警部は、自分の立場を考えて笑顔にはなれない(2枚目の写真)。2人は別れの言葉を交わすことなく別れ、警部は姉の車に向かう。彼がドアを開けようとすると、顔を見せたイライが、「イギリス人には気をつけろよ」と声をかけ(3枚目の写真)、警部は笑顔になると手を上げて別れを告げる(4枚目の写真)。そして、順調にエンジンがかかったので、すぐに車を出す。途中で、歩いて “邪魔者のいなくなったラップ家” に向かって歩いてくるダニエルとすれ違う〔ダニエルは、レイチェルと再婚するのだろうか?〕
  
  
  
  

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