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Journey (TV) ジャーニー

アメリカ映画 (1995)

写真を撮ることが大好きと言われる日本人にとって、まさにぴったりの映画。映画の中で、ジェイソン・ロバーズ演じる祖父と、主人公のジャーニーの交わす会話… 「時には、写真が ありのままを見せる事もある」。「どうやったら、それができるの?」。「わしには分からんよ、ジャーニー。多分、だから、みんなも写真を撮るんだろう。それが 何なのかを見るために」は、かなり奥が深い。正直、こんなことを考えたこともなかった。「物事は完璧じゃない方がいいんだ。わしは、この写真が好きだ。ここには命がある。物事は ほどほどがいいんだ」という祖父の哲学も面白い。この映画は、パトリシア・マクラクラン(Patricia Maclachlan)という女性の児童文学作家が1991年に発表した同名原作を忠実に映画化したもの。ネットで調べてみたら、『おじいちゃんのカメラ』というタイトルで1994年に偕成社から翻訳出版されていた。この事実を知ったのは、この文章を書いている時なので、映画の題名に反映させてはいない。この作家の作品は、1979年から1994年にかけてのほとんどが日本で翻訳出版されている。最新作は2020年だが、1994年以後はなぜが翻訳がほぼ途絶えている。だから、聞いたこともない名前だったのか? この映画の監督は、トム・マクローリン(Tom McLoughlin)。TV映画専門だが、中に、大好きな映画『Anya's Bell(アーニャのベル)』(1999)があったので納得した。ほのぼのとした優しさは、この監督の特徴らしい。この映画では、マックス・ポメランクの顔が何度も何度もアップで映される。これほど顔のアップが多い映画も珍しい。お陰でマックスの魅力が堪能できる。なお、この映画は、本国アメリカでも、VHSしか存在しない〔アメリカに住んでいれば、Amazon Primeで観れるようだが、日本では観られない〕。字幕も一切存在しない。

ジャーニーとキャットの弟と姉は、“両親運” に恵まれず、父は、ジャーニーが幼児のうちにどこかに出て行ってしまって二度と帰らず、母も、義父と大喧嘩して、また出奔しようとしていた。母がいなくなれば、2人は、祖父母と暮らすことになる。元々、この家族には合わなかった母が出て行った後、その部屋には、ジャーニーやキャットの思い出の数百枚の写真が、細か手で裂かれて残されていた。それは、母の精神がどこか異常であったことを示唆するほど、おぞましくて残酷な行為だった。祖父母はその事実を2人にはひた隠しにするが、何とかしなくてはと考えた祖父は、今からでも遅くはないと決心し、4人家族の写真をせっせと撮り始める。そうした祖父の変化を疎ましく思ったジャーニーは、最初は冷淡に見ていたが、幼児の頃に “父” にあやしてもらった記憶を、祖父の行動の中に見て、徐々に写真撮影に対して心を開いて行く。母が、切り裂いていった写真を発見した時はショックだったが、祖父が撮ったたくさんの写真を見ているうちに信頼するようになり、祖母が嫌いな猫の飼育に祖父が全面的に協力してくれたことで、2人の関係は堅固なものとなる。そして、最後に、祖父が自ら暗室を作り、どこかから見つけてきたネガ・フィルムで、ジャーニーの赤ちゃん時代の写真を現像した時、彼の心は感謝で溢れ、祖父とともに新たな人生への第一歩を踏み出すのだった。

マックス・ポメランクが出演した4本の映画の最後の作品。第1作の『ボビー・フィッシャーを探せ』以上に、出演場面が多く、上でも書いたが、顔のアップもくどいほど何回も見られる。映画の撮影日など詳しいことは分からないが、映画での設定が11歳なので、恐らく11歳なのであろう。マックス・ポメランクは、子役として映画に出演することに魅力を感じず、4作目できっぱりとやめてしまった。『エスケイプ/FBI証人保護プログラム』の解説で書いたように、ハーバード大学の公共政策大学院で公共政策の修士号を得ているので、映画俳優として振り回されるよりは、一流の人材として、別の形で社会に貢献する道を選んだのであろう。マックスは、微妙な感情を抑えて表現する自然体の演技が実に素晴らしい。他に、このような子役はいないので、4本すべて紹介することにした。

あらすじ

ジャーニーは、母と祖父の激しい口論が気になり、寝室のドアを開けて心配そうに様子を窺っている(1枚目の写真)。そのあと、ジャーニーは窓辺に立つ(2枚目の写真)。すると、青年になったジャーニーの声で独白が流れる。「ママは、僕を、ジャーニーと名付けた。ジャーニー。僕にも、ママの “落ち着きのなさ” を求めたかのかな? でも、ママは、結果を見る事なく、僕が11歳の時、家を出て行った。それは、春が どっとばかりに押し寄せて 山腹をシャクナゲで彩らせる前、夏風が 網戸をカタカタ震わせる蒸し暑く本をカビさせるよりは ずっと前のことだった」、この声とともに カメラがどんどん後ろに引いて行き、最後はジャーニーの家の全景になって終わる(3枚目の写真)。
  
  
  

カメラは、家から出て行こうと荷物を作っているジャーニーの母ミン〔名前から中国系。演じている俳優も中国人とのハーフ(顔も)。ジャーニーのその姉キャットもヨーロッパ系の顔なので(ジャーニーを演じるマックス・ポメランクはポーランド系のユダヤ人の子孫、キャットを演じる女優はアルバニア人とハーフ)〕〔原作ではリディーという名前。ここだけ、中国系に合わせてミンと名を変えている。そうまでして、なぜこんなキャスティングを強行したのだろう?〕 と、ジャーニーの祖父マーカスとの口論を映す。「こんな事、やっちゃいかん。間違っとる」。「これ以上、こんなトコには住んでられない。あたしのする事は、何もかも “悪い” んだから!」。「ここは、お前のウチだ。子供だっているじゃろ」。「あんたがいるでしょ」。「わしじゃ、十分にしてやれん」。「ちゃんとできるわよ。あんたが、家中を取り仕切って来たじゃない。あんたの家、あんたの土地、あんたの孫、あんたの規則!」。「おまえを、“何でも他人のせいにする”人間にしたのは、わしの過ちだ」。「あなたの 好き勝手にされてたまるもんですか! あたしはずっとあんたの奴隷だった。トラクターだって運転したかった。町で働きたかったけど 認めてくれなかった。ここに、縛り付けようとしたのよ!」。「そんなの、ずっと前の話じゃないか!」。「あたしの事なんて、ずっと前から、見放してたから」。マーカスは、家を逃げ出した息子の写真を見せ、「奴が おまえを捨てた事まで、わしの責任に せんでくれ」と言うと、ミンはその写真を奪い取って引き裂く。「誰一人、ここは離れん。ずっと一緒に暮すんだ。家族なら出て行くな」。「あたしは出てく」。「間違っとる。ジャーニーやキャットを放っぽり出して、さっさと出てくなんて。母親の道を 外れとる」(1枚目の写真)。そう言うと、「二度と 戻ってくるな」と背を向ける〔かなり深刻だが、これほど身勝手で口の悪い母親は観ていて不愉快でたまらない〕。一方、ジャーニーは、自分の部屋に入って来たキャットに、父の写真の入った写真立てを見ながら、「僕、小さかったころ無理言って、パパの写真もらったんだ。パパを覚えていたかったから。ここに 置いておけば、パパに見られてるような気がしたから。でも、違ってた。見ようともしてくれなかった」とキャットに不満を打ち明け、「パパの事、覚えてる? パパが出て行った訳、知ってる?」と訊く。キャットは、「その話、よしましょ。あの人の事なんか考えたくもない」と言う(2・3枚目の写真)。この話から、祖父マーカスの息子は、ジャーニーが幼い頃、2人の子供と妻を放り出して家を出て行ったロクデナシだと分かる。そして、今度は、その妻も、ロクデナシ2号として、家を出て行こうとしている。
  
  
  

家を出て行く直前、このロクデナシのミンは、それまで貯めてあった写真、自分の写真だけでなく、ジャーニーやキットの写真、2人にとっての思い出のすべてを 1枚残らず細切れになるまで破る。そして、使い古したスーツケースと新品のリュックを持つと、階段を下り、台所であった祖母には声一つかけず、そのまま家の外に出る。ジャーニーは、キャットに 「そんな… やだよ」と言うなり、後を追いかける。ミンは、車に乗る前、納屋で祖父に向かい合うと(1枚目の写真)、「キャットとジャーニーには お金を送る」と言う。それを、扉の端からジャーニーが見ている(2枚目の写真)。マーカス:「ミン、そんな問題じゃないんだ」。ミン:「電話する」。それだけ言うと、納屋から出て行こうとし、ジャーニーとぶつかる。ジャーニーは母に抱き着く。「戻って来るわ、ジャーニー」(3枚目の写真)。マーカスは、「いいや、ジャーニーに、彼女は戻って来ん」と言い、ミンが,嘘を見破られたような目でマーカスを見る。ミンは、そのまま オンボロ車に乗り込み〔一度もフロントビューを映さないので車種不明〕、去って行く。
  
  
  

一方、家では、ミンの部屋に入って行った祖母のロティが、床に散乱した “裂かれた写真” を見て、思わず絶句する(1枚目の写真)。そして、床に落ちている分を集めて箱に入れていると、そこにマーカスが入ってきて、こちらも絶句。ロティは、「子供たちに残されたのは、これが すべてだったのに」と思わず怒りを口にする。その子供たちが近づいてくる音がしたので、2人は大急ぎで写真の切れ端を集め切り、箱をミンのベッドの下に隠す。次に怒りを爆発させたのはキャット。「生きてくのが嫌になった。何も関心が持てない! ママの縦笛なんて要らない。他の物も みんな要らない!」と言い出す。その中には、紙の箱に入ったカメラもあった〔中には、アルミ製のフィルム缶も5個入っている〕。「これも要らんのか、キャット?」。「写真には、もう…」。「うんざりしたか?」。「そうよ、お祖父ちゃん。使ってよ」。祖父は、カメラを手に持ち、「ジャーニーは?」と訊く。「農場は、よく知ってる。なんで写真なんか撮るの?」。それを聞いた祖父は、ジャーニーに向かってカメラを構える(2枚目の写真)〔このカメラは、東ドイツのイハゲー(Ihagee)社によって1963年から発売されたExakta Varex IIb/なぜ、東ドイツ製品がアメリカの片田舎に?〕。ジャーニーは笑顔一つ見せない(3枚目の写真)。祖父のせいで母が出て行ったと思っているので、機嫌が悪いのだ。キャットは、母のイニシャルの入ったTシャツをゴミ箱に投げ捨てるト、ジャーニーは拾って大事そうに抱く。可哀想に思った祖母は、ジャーニーとキャットを抱きしめるが、祖父は、一家の記録を撮るのは自分の役目だと思い、3人を自分の方に向かせて写真を撮る。
  
  
  

ジャーニーが納屋の脇に積んである薪のところに行くと、農園の下働きをしてくれているブーンというメキシコ人の男が、「お早う、ジャーニー。お祖父ちゃんを捜してるんか?」と訊く。「ううん」(1枚目の写真)。そう言ったのに、「どこにいるの?」と訊く。「牛の糞を撮ってなさる」。ジャーニーが振り向くと、確かに祖父は “よく知ってる” 牛なんかを撮影している(2枚目の写真)。ジャーニーの様子を心配したブーンが、「ママは、どうするつもりかな?」と訊くと、「戻って来るさ」と答えて歩み去り、木の影に隠れるようにして祖父の様子を窺う(3枚目の写真)。
  
  
  

ミンが出て行って何日後かは分からないが、郵便が配達され、母からの便りを期待してポストまで行ったキャットの顔が曇る。キャットは、手紙の束をテーブルに捨てるように置くと、「差出住所が書いてない」と冷たく言う。祖父が、「やっぱり、その気が…」と言い始めると、祖母が、「マーカス! そっとして おくの」と止める。キャットは、ニンジンを包丁で叩き切りながら、「きっとね… お祖父ちゃんが 言いたいのは… 封筒の中は お金だけだろう、って事でしょ。何も書いてない。知りたがってることは、何も…」と言う。祖父:「がっかりだな」。ジャーニーが封筒を開けると、中に入っていたのは、札束2つをクリップで留め、それぞれに、「キャット」「ジャーニー」と書かれた紙が挟んであった(1枚目の写真)。それを見たジャーニーは、祖父に向かって、「がっかりなんて、してない。絶対! ちゃんと書いてある。僕たちの名前が」と反論する。母を憎んでいるキャットは、「お金は、あんたが持ってなさい。好きなように使うといい」と言う。ジャーニーは、「僕、銀行に預ける。旅行用に積み立てるんだ! ママの居場所が 分かったら、キャットと僕で 会いに行けるように」(2枚目の写真)「住所は 書き忘れたんだ。うっかり忘れただけさ」と言い、部屋の隅にあるイスに座って顔を背ける。祖母は、そんなジャーニーに寄って行くと、肩に手を置いて 「ジャーニー」と声をかける(3枚目の写真)。その姿を写真に撮ろうと、カメラを向けてシャッターを切った祖父に向かって、ジャーニーは 「なぜ、そんな事するの? なぜなのさ?」と批判する。「お祖父ちゃんには 必要な事なの」。「理解できないよ」。
  
  
  

ジャーニーは、祖母に古い写真アルバムを見せられる。そこにあったのは、キャットと同じ年頃の祖母の写真。祖父と初めて会った頃の祖母の幸せそうな顔もあれば、親戚同士の野外パーティで、一人だけつまらなそうにしている若いミンの写真もある(1枚目の写真)〔この頃から偏屈だった〕。祖母は、「あなたの お祖父ちゃんが、撮ったのよ」と説明する。「いい雰囲気だね… ママ以外は」。祖母は 「あなたのママは、いつも、どこか他所(よそ)に行きたがってた」と話す。「だから、ママは 行ったんだね… どこか他所に」。祖母が出て行くと、置いていったアルバムを、ジャーニーはベッドに横になって もう一度見てみる(2枚目の写真)。蘇るのは、決して温かくなかった母の想い出(3枚目の写真)〔アルバムの中にジャーニーの写真は一枚もない〕
  
  
  

しばらくすると、姉のキャットが入ってきて、アルバムを見始める。すると、近所に住むクーパーという少年が窓から入ってくる。キャットは、「他のみんなのように、ドアから入って来れないの?」と言うが、答えは、「No」。しかし、いつもと違うのは、幼児を連れてき来たこと。キャットは、幼児をみて大喜び。それを見たクーパーは、「結婚してくれる?」と訊く。それを聞いたジャーニーは、姉に 「聞き飽きたんじゃない?」と訊くが、返事は 「何度でも聞きたいわ」。クーパー:「いいコンビだもん。ママも、そう言ってる」。クーパーは、ミンのことを念頭に、「それで?」と訊く。「出てったわ」。しかし、話題を変えたいキャットは、クーパーの家族はみんな顔が似ていると言う。クーパーの表現が面白い。「家族の写真を、空に放り投げたとするだろ。そしたら、全部、僕の写真に見えちゃうんだ」。それを聞いたジャーニーは、「でも、僕は、誰とも似てたくないな」と主張する。そこに入って来たのが祖父。祖父は、「持っててくれ、ジャーニー」と言ってカメラを渡すと(1枚目の写真)、幼児を膝に乗せる。それを見たジャーニーは、カメラを構えて撮り、「ごめんなさい。撮るつもりなんて…」と謝る。祖父は、「いやいや、構わんぞ。好きなだけ、一杯 撮るがいい」と言いながら、「♪パカパカ、ボストンへ…」と幼児をあやす。その響きが聞き覚えあるように思え、ジャーニーは一体何だろうという顔をする(2枚目の写真)。この、目の “上まぶた” を少し吊り上げる表情はマックス・ポメランク独特のもので、『ボビー・フィッシャーを探して』の最終決戦の場で、詰め手を理解しかけ “ホントかな” という時に見せる表情(3枚目の写真)と全く同じだ〔DVDの画質の方が、VHSの画質より悪い!〕。そして、独白。「僕たちは庭にいた。僕は、持ち上げられたり下げられたり、でも目は、青いシャツの白いボタンに吸い寄せられた。辺りには、夏の匂いが満ち溢れていた。声が聴こえる… 大きくなったり、小さくなったり、笑ったり。『見てごらん、坊や』。シャツのボタンが見える。首元まで。でも、顔がないのだ。僕のパパだと、分かっているのに、顔がないのだ」。幼児を床に戻し、カメラを受け取ろうとする祖父に向かって、ジャーニーは、「カメラを通すと、物事は違って見えるんだね。ほんとの姿とは、違ったものになるんだ」と言う(4枚目の写真)。「時にはな。だが 時には、写真が “ありのまま〔what is really there〕” を見せる事もある」。「どうやったら、それができるの?」。「わしには 分からんよ、ジャーニー。多分、だから、みんなも写真を撮るんだろう。それが 何なのかを見るために」。「どういう 意味なの… “それが 何なのかを見るため〔to see what is there〕” って?」。祖父は、アルバムに貼ってある自分の子供時代の写真を指差して、「見なさい」と言い、部屋から立ち去る。ジャーニー:「何が言いたいんだろう?」。クーパー:「これって、君じゃないのかい?」。キャット:「お祖父ちゃんよ、ジャーニー。“似た者 同士〔Two of a kind〕” ね」〔含蓄のある言葉〕
  
  
  
  

家の外には、三脚の上にカメラが載っていて、家の中からは祖父とジャーニーの争う声が聞こえる。「なんで、やってみない?」。「できないよ」。「何を、そんなにゴチャゴチャ言っとる。この件については、2人で話し合ってきたじゃないか」。「やり方も知らないのに、町まで運転なんてできないよ」(1枚目の写真)。祖父は、ジャーニーの初運転記念の写真をタイマーで撮ろうと車の前に4人で並ぶ〔車は、1950年製のフォード・カスタム・セダン〕。タイマーをセットし、10から7まで来た時、上空を軽飛行機が飛ぶ音が聞こえ、全員が空を見上げてしまう(2枚目の写真)。出来上がった写真(3枚目の写真)も、全員が空を見ている。「気にするな。出かけるとするか。現像に持ってくフィルムが 何本もあるし、仕上がった写真も取って来ないと。行くぞ、ジャーニー」。
  
  
  

運転席に乗ったジャーニー。「ペダルに足が届かないよ。前だって見えないし」。「じゃあ、この枕の上に座ったらいい」。「待って、ブレーキが…」。「さぁ、頑張れよ」。車は何とか前に進み始める。しばらく走り、祖父が、「いいぞ。上手いじゃないか」と褒める(1枚目の写真)。「やったよ。だけど、なぜこんな車が好きなの?」。「わしの お気に入りさ。思い出が詰まっとるんだ」。これに、キャットが口を挟む。「絶滅種よ。お祖母ちゃんは、『リョコウバト』〔1914年に絶滅〕だと言ってた」。「何だと、そんな事を?」。祖父は、助手席から身を乗り出してカメラを構える。「フラついとるぞ。真っ直ぐ運転しろ」。「また、写真なの? 僕が、事故ったら、それも、写真の題材にするつもりなんだ」。祖父は、途中、道路脇で野菜の販売所を作っている顔見知りの女性に声をかけ、写真をパチリ(2枚目の写真)。トラクターに乗った男性もパチリ。最後は、対面で自転車に乗ってやってきたクーパー。こっちは、いい所を見せたいので、祖父に写真を撮るよう要求する。撮ったのは、びっくりしているクーパー。これで、ジャーニーも笑顔になる。そして、「さっきの、飛行機を見上げてた写真… 絶対、いい出来だよ」と祖父に言う(3枚目の写真)。「わしも そう思うな、ジャーニー」。キャットは、嬉しそうに、「“似た者 同士” ね」と以前の言葉をくり返す。
  
  
  

ある日、激しい雨が急に降り出したので、園芸を管理している祖母は、キャットとジャーニーと3人で、満開のシャクヤクの花を切り取って室内に退避させる。その様子を、祖父が、新しく購入したストロボを使って何枚も撮影したので、遂に祖母の怒りが爆発する。「マーカス、目がチカチカして、何も見えないじゃない。農民らしく、あっちにいなさいな」。「わしは 写真を撮る農民、“農民写真家” って奴だ」。「何でも、思い通りにはならないって、いい加減に悟ったらどう、マーカス!」。そう叱られた祖父は、悲しそうに出て行く。心配になったジャーニーはレインコートを着て後を追う(1枚目の写真)。祖父は 納屋で牛を撮り、次は鶏に向かう。ジャーニーが納屋に入って行くと、奥の一角に “壁に写真が一杯貼ってある” 場所がある(2枚目の写真)。ジャーニーが近づいていってよく見ると、その中には、ジャーニーを撮った写真も数多くあった(3枚目の写真)。
  
  
  

ジャーニーは、その中に自分が撮った写真があることに気付く(1枚目の写真)。クーパーが連れてきて幼児を祖父が抱いている写真だ(2枚目の写真)。ジャーニーが生まれて初めて撮った写真なので、右端が白くなっている。すると、ジャーニーがいることに気付いた祖父が寄ってきて、「端っこが ボケてるのは、カメラが ブレたからさ」と教える。「じゃあ、いい写真とは言えないね」。「ジャーニー、素敵な写真だよ」。「だけど、カメラが ブレてる」。「それは、そうだが、ここには、エメット〔幼児〕と わしだけの空間がある。何と形容したらいいか… 繭(まゆ)にでも包まれて、世界から切り離されたみたいだろ?」(3枚目の写真)。「でも、完璧じゃないよ」。」「“完璧〔perfect〕”? “完璧” って何だ? 物事は、“完璧” じゃない方がいいんだ。わしは、この写真が好きだ。ここには命がある。物事は “ほどほど〔good enough〕” がいいんだ」。
  
  
  

これだけ言うと、祖父は離れて行こうとしたが、ジャーニーが引き留める。「お祖父ちゃん? どう思う? ママが出てったのは、僕が、“ほどほど” じゃなかったから?」。「違う。わしは、お前が聞きたくない時も “真実〔truth〕” を話してきたろ?」。「“時々〔Sometimes〕” だよ。だって、ママは戻って来ないって、言ったじゃない。ママは絶対戻って来るから、“真実” じゃない」。「一番大事な “真実” は、お前には、何の “落ち度〔fault〕” もないという事だ」。「ママにも “落ち度” はないよ」。そして、「写真は どこにあるの?」と訊く。「僕、写真が見たい」。「どの写真だ?」。「パパとママと僕の写真… キャットのも。僕たちが、エメットみたいに幼かった頃の写真。僕が、パパの膝に乗っていて、歌ってもらってた時の写真」。「なくなってしまった」。「“なくなった〔gone〕” って、ママが持ってったの?」、「“真実” が…?」。「知りたい」。「ママが引き裂いた」。その強烈な言葉に、ジャーニーは凍り付き、それを教えた祖父を恨む(1枚目の写真)。そして、何も言わずに立ち去る。ジャーニーは、そのまま自分の部屋に直行し、病気だと称して朝になっても起きない。そこに入って来たキャットは、「あんたが病気だなんて信じない。もし、病気だとしても、楽しんでるんでしょ」とズバリ指摘。「ノドが痛いんだ」。「見せなさいよ」。「熱だってあるんだ」。キャットは、ジャーニーが毛布3枚、キルト、ベッドカバーを被っているのを確かめると、「ジャーニー、毛布が5枚よ、孵化してチョウチョになっちゃうわ、夏なのに」と言う。「キャット、ママが、写真を引き裂いたんだ」(2枚目の写真)。キャットは、ジャーニーの毛布類をすべて剥ぎ取ると、「ジャーニー、あんたは病気じゃない! 逃げてるだけ」と言い、カーテンを上げ(3枚目の写真)、「逃げて、ウジウジしてるだけなの!」と、窓を開け放つ。
  
  
  

近所の住民の屋外パーティの最中、ジャーニーは猫の鳴き声を耳にする。目をやると、近くの木の根元に猫がいて、こっちを見ている。その すがるような雰囲気に、ジャーニーは思わず近づいて行く。すると、それに気付いたクーパーが手に食べ物を持って追いかけてくる。「ジャーニー、何だい?」。「しーっ。猫だ」。「噛み付かないよね? 可愛いな」(1枚目の写真)「誰が、飼ってるんだろう?」。「飼われてなんてないさ」。2人が猫を可愛がっていると、祖母が、林の中にいるジャーニーに気付く。「ジャーニー、それ何なの?」。2人は振り向き、クーパーが「猫だよ!」と言う(2枚目の写真)。祖母は、「猫! その猫、私の鳥を食べちゃうわ」と警告する。ジャーニーは、クーパーに、「お祖母ちゃんの機嫌は最悪だ。猫嫌いだからね」と教える。そして、クーパーが半分ほど食べたハンバーガーサンドから肉の一部を取り出すと、近くの地面に置く。祖母とキャットは一旦家に戻り、パーティ用の追回のパイを持って戻ろうとする。その時、電話がかかってくる。祖母に頼まれたキャットは電話を取りに行く。それは、ミンからだった。その先のシーンは、薄汚れた窓ガラス越しの映像。キャットは、「嫌よ… 嫌! ママと話したくなんかない!」と強く言い、そのまま電話を切る。
  
  

その日の夜、ジャーニーが窓のところを見ると、暑くて開けっ放しの窓の桟の上に例の猫が座っている。ジャーニーの笑顔を見て、猫は部屋の中に入ると、ジャーニーが寝転んでいるベッドの上に上がる。ジャーニーは、猫を優しく撫でる(1枚目の写真)。ジャーニーは、思い立つと、部屋を出てキッチンに行く。そこでは、祖母が日中の後片付けをしていて、ジャーニーに 「何か、して欲しい事ある?」と尋ねる。「何も。お祖母ちゃん。お休みなさい」。しかし、ジャーニーの目的は祖母ではない。「お休み」と言ってソファから振り向いた祖父に向かって、ジャーニーは、手で合図して部屋に来るように頼む(2枚目の写真)。祖父を部屋に入れると、ジャーニーはすぐに猫を指差す。「おやまぁ、これは」と言って 優しく猫を撫でた祖父は、「誰の猫なんだ?」と訊く。ジャーニーが答えないので、ピンときた祖父は、「ダメだぞ、ジャーニー。お祖母ちゃんが猫嫌いだって事、知っとるだろ? 何せ、鳥好きだからな」と注意する。しかし、ジャーニーは、「僕、この猫 好きだよ。窓から入って来た。だから、僕のさ」と主張る(3枚目の写真)。「名前を付けるんじゃないぞ。ウチのルールは知っとるじゃろ… もし 名前を付けたら、ずっと面倒を見ないといかん」。そのあと、祖父は、猫の足から血が出ているのに気付く。そして、「お前は大した猫ちゃんだ〔You are really something〕」と言いながら、可愛がる。
  
  
  

ドアが突然開き、祖母が入って来て、「そこで、何やってるの?」と訊く。そして、猫を見つけると、「マーカス、事もあろうに〔for heaven's sake〕!」。その大きな声を聞いてキャットが入って来て、「もう 名前は付けたの?」と訊く。祖父は、「ロティ、これは 怪我した動物なんだ。“思いやり〔humane〕” を持ってやらんとな」。「マーカス、私が猫をどう思ってるか知ってるでしょ。それに、猫は鳥に “思いやり” なんてないのよ」。ジャーニーは、「お祖母ちゃん、僕、この猫 欲しいよ」と すがるように頼む(1枚目の写真)。それを聞いた祖父は、「ロティ、何とも不幸な事ではあるが、ジャーニーは、名前を付けてしまった。ルールは知っとるだろ」と嘘を付いてくれる(2枚目の写真)。名前を聞かせろと迫った祖母に対し、祖父は、花瓶のシャクヤクの花束を見て、「ブルーム」〔flowerは根のある花、花束になったような花はbloom〕と言う。「今、でっち上げたんでしょ。この古狸〔old man〕! 花だって名前があるのよ、ピオニー〔peony:シャクヤク〕って」。祖父は、ピオニーは、名前として変だと、混ぜっ返し、さっそくカメラを取りに行く。祖父が仕上がった猫の写真を納屋で見ていると、猫を抱いたジャーニーがやって来て、「お祖父ちゃん、ありがとう」とお礼を言う(3枚目の写真)。
  
  
  

ジャーニーは、最初、ブルームのことを雄猫だと思っていた。しかし、ブルームを見た下働きのブーンは、雌猫でお産が近いと教える。そのことを食事の席で話すと、祖母は、「ブルームが雌猫だって事ぐらい、知らなかったと思うの?」と言う。「ううん」。「もちろん、知ってたわよ」(1枚目の写真)「それが、意味する事 といったら、半ダースの 毛むくじゃらの子猫が、腹を空かせた毛むくじゃらの大猫になって、私の鳥を食べちゃうって事」。祖母が、キッチンの隣の部屋に入って行くと、ブルームが後を追いかける。祖母は、「あら、また鼠なの? おぞましい肉食動物ね!」と ブルームを叱る。それを見たジャーニーは、祖父に、「ご機嫌 斜めだ」と話しかける。2人が部屋から出て行くのを確認すると、祖母の態度が急に変わり、小声で 「ご褒美あげましょ。あんた、きれいな猫ね」と言いながら、鼠を獲ったお礼に何かを食べさせ、首筋を撫でる(2枚目の写真)。「あんた、世界一の猫だわ」。それを、こっそり戻ってきて聞いたジャーニーは、祖父に向かってニッコリする(3枚目の写真)。
  
  
  

それからかなりの日が経ち、写真魔になった祖父が、3人を撮ろうとするのを、みんながワザと逃げて回るシーンがある。それはそれで、微笑ましいのだが、問題はジャーニーが隠れようとした場所。それは、ミンの部屋だった。すると、そこにブルームが入って来てベッドの下に入って行く。ジャーニーが、ブルームの様子を見ようとベッドの下を探すと(1枚目の写真)、ブルームは引き裂かれた写真片の入った紙箱の中に、気持ち良さそうに横になっていた(2枚目の写真)。キャットが入って来て、そのあと、祖父と祖母も入ってくる。ジャーニー:「一緒に、持って行かなかった。ここに、残してったんだ」。キャット:「ワザと、みんなに見えるように やったのね。こんなの、殺人と同じよ」。「僕、直してみるよ、キャット」(3枚目の写真)。それを聞いた祖父は、止めようとした祖母に、「やりたいように、させるんだ。あの子には、その権利がある。ジャーニーの過去なんだから」と言う。
  
  
  

それから、ジャーニーは頑張って写真を元に戻そうとする(1枚目の写真)。しかし、ジグゾーパズルと違い、数百枚の別々の写真を4つ以上に裂いたものばかりなので、どうやっても対の部分が見つからない。ジャーニーは限界を感じ始める(2枚目の写真)。ある時、ハッと見上げると、クーパーが椅子に座ってじっと見ている。「全部の写真を、元に戻すんだ」。それに対し、クーパーは 「ジャーニー、そんなの無理だ。不可能だぞ。写真は何百枚もある」と呆れる。その言葉に頭に来たジャーニーは、「そのカーボーイ・ハット、バカみたい」と批判する。クーパーは、いつの間にかいなくなる。クーパーに言われたことが頭に残ったジャーニーは、作業をやめ、ベッドに横になり、どうしようかと考え(3枚目の写真)、そのまま疲れて眠ってしまう。翌朝 目が覚めたジャーニーは、写真をつなぎ合わそうと試みているキャットに向かって、「写真の引き裂き方が細か過ぎて、とても 元に戻せないよ。ママは、戻って来る気なんて なかったんだ」と、再認識する。そして、写真の破片をかき集めると、紙箱に戻すと(4枚目の写真)、「この箱は お前のだ、ブルーム」と、写真ごとブルームに譲る。
  
  
  
  

ジャーニーが窓から覗くと、クーパーが乗り捨てていった自転車が横倒しになっている〔ライトが付いていないため、真っ暗で走れなかった?〕。ジャーニーは窓から出ると〔窓の真下に石炭の搬入口の斜路があり、窓から簡単に出入りできる〕、自転車の前に立つ(1枚目の写真)。そして、そのままクーパーの家に向かって自転車を漕ぐが、途中で写真のことが悲しくなり、涙が止まらなくなる。クーパーは、自転車を見て、「届けてくれてありがとう」と言い、ジャーニーは、「カーボーイ・ハットのこと、ごめんね」と謝り、2人のわだかまりは解消。「泣いてるの?」。「うん」。「じゃあ、行こうか。ミセス・マクドゥーガルが朝食を用意してる」〔この一家は変わっていて、お互い正式名称で呼び合っている〕。家に入って行くと、クーパーの父が、「食事は要らない、ミセス・マクドゥーガル。コーヒーを いただくよ」と声をかける。ジャーニーは 一緒に食卓に着くが(2枚目の写真)、エメットが両親からとても可愛がられている。壁には、額に入ったエメットの写真が一杯飾ってある。一家の写真も。それを見るジャーニーの顔は、羨ましそうでもあり、嬉しそうでもある。食事が終わり、ジャーニーがたくさんある写真立てを見ていると、一家が寄ってくる。ジャーニーは、「お祖父ちゃんは、『写真は、時には “真実” を示す』って言ってた」と話す(3枚目の写真)〔祖父の発言は、「時には “ありのまま”を見せる事もある」と「わしは “真実” を話してきた」。ジャーニーは、これを混同している〕。クーパーの父:「そうだな、この写真には “真実” がある。どうだい、俺、ニコニコしてるだろ。嫁さんを、射止めたんだもんな」。クーパーの母:「ダンカンが言う通り、この写真には “真実” があるわ。でも、そっちの写真を、見てごらんなさい。如何にも、理想の一家って感じするでしょ?」。しかし、中に、一人意地悪な男が、ニコニコした顔で写っていることを指摘。「時々 “真実” は、写真の陰に隠れてしまい、表(おもて)には 現れないのよ」。
  
  
  

ジャーニーが、クーパーに乗せてもらって家に帰り、窓から2人で入ろうとると、ジャーニーの部屋には3人が集まっていて、ブルームjには3匹の子猫が産まれていた。祖母は、ブルームを撫でながら、「あなたは、立派なお母さんよ」と讃える。ジャーニーは、「誰に、教わったの?」と訊く。クーパー:「教わったって、何を?」。「ううん、お母さんのなり方」。祖父:「母親なら、知っとる」。キャット:「知らない人も いるわ」。ジャーニーは、自分から、タイマーで写真を撮りたいと言い出す。キャット:「あら、ヤだ。これで、2人になっちゃった」。ジャーニーは三脚を立てながら、「みんな、もっと くっついて」と指示する(1枚目の写真)。ジャーニーは、タイマーを押し、急いで戻ろうとしてつまずき、祖父に支えられる。その膝の感覚に驚いたジャーニーは、思わず祖父の顔を見つめる(2枚目の写真)。それに気付いた祖父が、「カメラを見ろ」と言ったので、体を起こしてカメラを見る(3枚目の写真)。
  
  
  

朝食が終わり、全員が外に出た時、電話がかかって来る。一番用事のなかったジャーニーが電話機まで走ると、それは母ミンだった。電話を取った時の笑顔が消える。最初は、母の応答に応えようとしなかったジャーニーだが、「ジャーニー、あなたなんでしょ?」と何度も促され、ようやく、「そうだよ」と応える。母:「変わりない?」。「ママ、猫が来たの。その猫、とってもいい お母さんなの。僕と一緒に、いてくれる。いつまでもね」(1枚目の写真)。電話のシーンはここで終わり、そのあと、ジャーニーは納屋に行って壁の写真をじっと見る(2枚目の写真)。そこに祖父が来たので、「電話、ママからだった」と報告する。「『変わりない』って訊いてくれたけど、家を出てったこと、一言も謝ってくれなかった」(3枚目の写真)。「そうだな、ミンは、自分が悪いとは認めんだろう」。「ママは、こうも言ってた。『たかが写真じゃない』って」。「お前のママには、写真の事が、ぜんぜん理解できんのだ」。「ママは、僕に、『訪ねて来て欲しい』って言ったけど、僕は、出来ないって答えた。ママには、こうも言ったんだよ。お金なんかじゃなく、手紙を送ってくれれば。いつの日か会ってもいいって… 多分だけど」。ジャーニーの話はさらに続く。「お祖父ちゃん?」。「何だね、ジャーニー?」。「僕、ママに言ったんだ。“完璧” な物は何もないって。物事は “ほどほど” がいいんだって」。
  
  
  

この先が、観ていて理解のできない部分。ブーンに、「あんたさんの写真、残念でしたな。あの子に 戻してやる術(すべ)が、全然ないなんて」と言われた祖父は、恐らくだが、キャットから譲り受けた紙箱の中に入っていたアルミ製のフィルム缶のことを思い出したとしか思えない。そして、その中に、ジャーニーの古い写真があれば、ジャーニーにとっていい思い出になると考えたのだろう。しかし、それなら、フィルムをいつものように町の写真屋に持っていって現像してもらえば済むことだ。なのに、祖父は、何度も町と往復して大量の機材を買い込み、納屋に運んでいる。ある日、大箱1個と、小箱2個を抱えた祖父が車から降りた時、キャットが 「何してるのかしら?」と言おうと、祖母は 「確かめてみましょ」と言い出す。そして、祖父が 納屋の中に入って行くと(1枚目の写真)、クーパーも一緒に4人で後を追って納屋に向かう(2枚目の写真)。祖父が一番奥の部屋に入ろうとする直前、祖母は、「マーカス、私の愛しい人、何やってるの?」と声をかける。祖父は 「べたべたした言葉で、わしに話しかけるな!」と怒鳴るように言うと、ドアをバタンと閉める。「スパイしてやりましょ」(3枚目の写真)「見張られてると感じた方が、楽しいものよ」。しかし、ドアには鍵がかかっていて入れない。キャットが 「お祖父ちゃん?」と呼びかけると、「わしは、仕事で忙しいんだ!」と、これまた怒鳴るように答える。そこで、全員が引き揚げることに。
  
  
  

別の日。キャットとジャーニーは、空き缶を下げて黒ラズベリーを獲りに行く。キャットが、「二つ置き、三つ置き〔Every third or every fourth?〕と尋ねる。ジャーニーは 「一つ置き〔every other〕」と提案するが、結局、二つ置きにすることに(1枚目の写真)〔その場で食べる分と、缶に入れる分の割合〕。「裏庭でキャンプしてた頃の事、覚えてる?」。「あんた、テントを張るの好きだったわね。張り終わると、中に座ってソワソワしてた。何かもっと起きないかって期待して」。返事がないので、「どうしたの?」とキャットが訊くと、「お祖父ちゃんが言ってた。ママは、何かが起きるのを待ってるんだって。ママが、僕たちと一緒にテントに入ってきた時のこと、覚えてる?」。「ええ。彼女、しばらく座ってて、それから、あたし達を見て、こう言ったわ、『で、今から何が起きるの?』」。「僕たちがいるだけじゃ、物足りなかったんだ」(2枚目の写真)。会話はさらに続く。「キャット、僕、写真、元に戻せなかったけど、元に戻せたら 万事うまくいくと思ったんだ」。「分かってるわ。あんたと、お祖父ちゃんは、“似た者 同士” だもん」。「何が、言いたいの?」。「どうして、お祖父ちゃんは、家族の写真を撮ってると思うの? ママが取り上げた物を、あんたに返してやろうと 写真を撮ってたって、知らなかったの?」。話が終わると、2人は黒ラズベリーを食べ終わるいと、茂みから飛び出して追いかけっこを始める。それを木の影から見ている女性がいる(3枚目の写真)。それは、2人を一目見たくて戻って来たミンだった。彼女は、声もかけずにそのまま立ち去る。
  
  
  

ある夜、ジャーニーがブルームとじゃれていると、2階のミンの部屋で音がして、それから祖父が降りてくる音が聞こえ、開いているドアから顔を見せて、「お休み、ジャーニー」と声をかける。「ママの部屋に いたの?」。「あぁ… 子猫が入り込んどった」。「もう寝るの?」。「いやいや、まだ寝るワケにはいかん。仕事があるからな。お休み」。ジャーニーは祖父が納屋に入って行くのは見たが、そのまま眠ってしまう。そして、なぜか明け方の4時過ぎに目が覚める(1枚目の写真)。窓の外では、納屋の2階の開いた扉から赤い光が見える(2枚目の写真)。一体何だろうと不思議に思ったジャーニーは、納屋の中に入って行き、赤い光が漏れているドアの前まで来る(3枚目の写真)。
  
  
  

鍵は掛かっていなかったので、ドアを開けると、中は真っ赤だった(1枚目の写真)。祖父は、後ろ姿しか見えないが、白い電球を付けて何かしている。1つ作業を終えた祖父は、気配に気づき、振り返ってジャーニーがドア口にいることに気付く。「靴は どうした?」。「これ全部、何なの?」。「ちょっと、黙っててくれ」。そう言うと、祖父は5つ数える(2枚目の写真)。そして、白い電球を消す。「これは、引き伸ばし機。現像用の、赤いライトだ」。「暗室だね? 一人で作ったの?」。「黒白写真… 過去からの映像だ」。子猫が産まれた時に、ジャーニーがタイマーで撮った写真を指すと、「これは、素晴らしい写真だ」と言う。そして、ジャーニーが 「“完璧” じゃないけど…」と言いかけると、その後の「“ほどほど” だ」は、2人で唱和する。「ここに、もっとある」と言って祖父が渡した封筒の中にはネガ・フィルムが入っている。それを現像すると、出てきたのは、失踪した父と、ミンに見守れた赤ん坊時代のジャーニーの映像だった(3枚目の写真)〔このネガがどこにあったのかが、最大の謎。そして、前にも少し書いたが、ネガがあるのなら、なぜ町の写真屋で現像せずに、わざわざ暗室を作ったのだろう?〕
  
  
  

この写真を見て、ジャーニーは、「これ、僕が覚えてる顔じゃない」と言う。そして、「僕が乗ってたのは、お祖父ちゃんの膝だったんだ。子守唄を歌ってくれたのは、お祖父ちゃんだ。パパじゃない。僕の 記憶にあったのは、お祖父ちゃんのYシャツ とボタンだったんだ」と感動する(1枚目の写真)「お祖父ちゃんの顔だったんだ。僕の世話をしてくれたのも、パパじゃない。お祖父ちゃんだった」。最後の独白。「こうして、お祖父ちゃんは作業場を後にした」(2枚目の写真)「僕は、木の壁に沿って指を這わせていった。そして、干し草に手を触れた。触れれば、それが自分の物になるかのように」。納屋の扉まで行くと、ジャーニーが祖父に一言、話しかける。「2人とも、一度は 僕を愛してくれたんだ〔Once they loved me〕」。「そして、僕たちは、扉を開け」(3枚目の写真)「納屋の外へと、足を踏み出した。夜は終わり、日が昇ろうとしていた」。
  
  
  

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