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Warriors of Virtue タオの伝説

アメリカ映画 (1997)

マリオ・イェディダイア(Mario Yedidia)が主演する異世界でのカンフー映画。マリオが扮するライアンは、ふとしたことからタオの世界に転送される。そこは、道教(タオ)の陰陽五行思想が支配する地。その世界と住民のすべてが「気」と呼ばれるエネルギーによって動かされ、その小宇宙を構成する5つの元素、水、木、火、土、金(goldではなくmetal)の相生と相剋のバランスの上に成り立つ社会だ。それを主導するのが道士チャン、漢字で書けば恐らく「忠」。そのチャンが育てたのがルー族(カンガルー)の5人の「徳の戦士(Warriors of Virtue)」。映画の原題だ。5人は、それぞれ五行を代表している。彼らが戦うのが、タオの世界の僭主として生命の泉(Lifespring)の水を独占しようと目論むコモド。外界からやってきたライアンは、伝説の写本(Manuscript of Legend)を読むことのできる唯一の人物という設定。映画の1割はカンフーによる派手な格闘シーンだが、マリオの魅力は十分に堪能できる。日本では、ビデオが出されただけで、その後、DVDは出されていない。この時代の映画には、こうしたケースが多い。

ライアンは、右足に金属支柱付短下肢装具を付けている。中枢神経系の疾患があるようには見えないので、先天性の股関節亜脱臼かもしれない。そのため、好きなフットボールも、選手に水を配ることしかさせてもらえない。自分のチームが負けそうになった時、アメフトに詳しいライアンは、面白い作戦を年上の選手ブラッドに提案する。彼は、聞いたときはバカにしたくせに、作戦を実行してみて成功すると、自分が思いついたことにする。仲間に入れて欲しいライアンは、文句を言わない。そんなライアンをからかってやろうと、ブラッドは、夜ライアンを地下トンネルに呼び出し、下水が渦巻き状に吸い込まれる水槽の上に置かれた鋼管の上を歩いて渡れたら仲間にしてやると強要する。ライアンは、バランスを崩して渦巻きに落ちてしまうが、その先にあったのは死ではなく、異世界だった。その世界は、道士チャンに率いられた徳の戦士によって守られた住民と、生命の泉を独占して若さを保ち続ける僭主に率いられた軍隊とによって二分されていた。そこに、世界の行く末を左右する「伝説の写本」を読むことのできる唯一の存在 「来たりし者」としてライアンが現れる。チャンは平和の維持のため、僭主は自己の妖力を増すためライアンに写本を読ませようとする。写本には、「命を奪う時、己の一部も失われる」と書いてある。その言葉を信じて、自分を犠牲にして徳の戦士に力を与え、僭主を倒すことに成功したライアン。それこそが、ライアンが元の世界に戻れる唯一の道でもあった。異界では治っていたライアンの脚も、元の世界に戻ればまた悪くなる。しかし、道士に「大切なものは 肉体ではなく心」「強さは肉体にあるのではなく、徳の心 『気』 にある」と諭されたライアンにとって、それはもうハンディキャップではなかった。

マリオ・イェディダイアは、主演作はこの映画1本しかないが、3年早く生まれたイライジャ・ウッドと同じくらい可愛い。この映画でヤング・アーティスト・アワードの候補になったが、『エア・バディ』と『ビーグル犬シャイロ』に負けてしまった。個人的には、マリオの方が上手かったと思うのだが… 映画の内容が幼稚すぎたせいかもしれない。もっと活躍して欲しかった子役だ。


あらすじ

閑静な住宅街、朝、母が仕事に出かけて行く。母はライアンが朝食をとっていると思っているが、彼はトイレにこもって カンフー漫画を読みふけっている(1枚目の写真)。画面はいつしかライアンがいつも訪れている中華料理店に切り替わる。ライアンは、そこの調理人の1人ミンと大の仲良しで、料理をする時の見事な手さばき(カンフーのような)を惚れ惚れと見ている。ミンは、ライアンを呼び寄せると、理想の世界について語って聞かせる。「君の想像を遙かに超えた世界なんだ。不安のない至福に満ちた世界。そこでは、何でも可能になる。偉大な戦士たちが守ってくれている。銃も、レーザー光線も、SFXもない。彼らは自然の力だけを使う。火、金(金属)、木、水、そして、土だ(2枚目の写真)。
  
  

ライアンが通っている中学校で、彼はフットボール・チームの水運び役。生まれつき左脚が悪く特殊な装具を付けていて ぎくしゃくとしか歩けない。それでも水運びをやっているのは、アメフトが大好きだから。今日の試合はコーチの作戦ミスで、エースプレイヤーのブラッドが完全にマークされ、残り時間僅かで16対20で負けている。最後にコーチがタイムを要求、ライアンが水を持って行く。コーチはマンネリ作戦を指示し、ブラッドが反対すると、「俺には豊富な経験がある」と一蹴されてしまう。ライアンは、ブラッドにこっそり、「いつも 右のディフェンダーが邪魔するから、左にブーツレッグして エンドゾーンまでつっ走れば?」と提案する(1枚目の写真)。それに対する返礼は、口に含んだ水をライアンの靴に吐き捨てただけ。しかし、作戦が優れていると感じたブラッドは、ライアンの提案通りにプレーする。先ほどの屈辱も忘れて大声で声援するライアン(2枚目の写真)。タッチダンウに成功したブラッドは6点を得て、チームは逆転勝利する。最初は大喜びしていたライアンだったが、讃えられるのはプレーした本人だけなので、自分の限界を感じて急に寂しい顔になる(3枚目の写真)。「名案だったな」とチャッキーが慰める。同じ水運び仲間だ。
  
  
  

ライアンが、チャッキーと一緒に歩いている。チャッキー:「ひどいよな。お前のアイディアなのに」。「だから?」。「お前だろキーマンは。お前がやったんだ」。そこに、勝ち誇ったブラッド達が自転車で通りかかる。「邪魔だ!」。「おい、ブラッド、ライアンの案で勝ったんだろ。感謝ぐらいしろよ」。2人を取り囲む自転車(1枚目の写真)。「何か言ったか? それとも、おならか?」。「ライアンの提案を聞いたんだろ。そして、その通りにプレーした」。面目を潰された形のブラッド。一応、ライアンの顔を立て、「左にブーツレッグして エンドゾーンまでつっ走る。名案だったな」と褒める。さらに、「プレーできないなんて気の毒だな。頭いいのに」。そして、「今夜、一緒につるまないか?」と誘う。実は、殊勝に褒めて見せたのは、話をここに持って行くためだ。素直に喜んで8時に落ち合う約束をするライアン(2枚目の写真)。帰宅すると、母が冷凍食品をレンジ解凍しただけの夕食だ。「試合はどうだった?」と訊かれ、「勝ったよ。ブラッドがタッチダウンして試合終了。僕の作戦だ」。「本当? すごいじゃない。ママ、嬉しいわ」。「どこが? 僕が点を入れたわけじゃない」(3枚目の写真)。
  
  
  

母は夕食の解凍に失敗し、おまけに、また仕事に出かけるため、ライアンはお金をもらってミンの店に行く。ミンは「渡したいものがある」と言って ライアンを自分の控え室に連れて行く。ライアンは、ガラス瓶に入った奇妙な物に興味を惹かれる。それは、蛾の繭(まゆ)だった。ミンが子供の頃、学校に行く途中で地面に落ちているのを拾い、中から出ようと悪戦苦闘していた蛾を助けてやろうと繭を開いたところ、一旦は飛び立ったもののすぐに死んでしまったのだ。「何が起きたの?」。「俺が 変身の邪魔をしたんだ」「俺達はみな自分の繭を持っている。そこから自由になろうと苦労することで、殻を破って飛び立てるんだ」(1枚目の写真)。しかし、この言葉にもライアンは元気がない。「翼が折れてたら、飛べないよね」。ライアンには自分の先天異常の脚のことが常に頭にある。ミンが渡そうと思っていたのは、そんなライアンを勇気付けるための「タオの写本」だった。その写本のお陰で、自分は「望み通りの人間」になれたので、今度はライアンにそうなって欲しいと思ったのだ。だが、その種の自己啓発本は母から一杯もらっていたライアンは、折角のミンの好意にもほとんど興味を示さない。ミンは、写本をライアンのバックパックに入れ、「見てごらん。君のものだ」と渡すが、ライアンは「また、後で」と言っただけ(2枚目の写真)。
  
  

ライアンは、そのまま、待ち合わせの場所に出向く。チャッキーが「ゾッとするトコだな。退散しようぜ」と手を引くが、ライアンは、「せっかくのチャンスを ふいにする気か」と動かない。アメフトのスターと対等に付き合える機会だと本気で思っているのだ。そこに、さっきのグループが、再び自転車に乗って現れる(1枚目の写真)。ブラッド:「ちゃんと来たな」。ライアン:「ここで 何するの?」。「大将ごっこ。お前たちが大将だ」。懐中電灯を渡され、立ち入り禁止の大きなトンネルの中に全員で入って行く。2人で先頭を歩きながら、チャッキーは「こんなのマズいぞ。さっき、どこか変だって言ったろ。賭けてもいい、ずっとひどいぞ。胸にイニシャルを彫られるとか、俺たちのソーセージ(俗語で、「男性器」の意味)でホット・ドッグを作るとか」。ライアンは、「黙れ」と言ったものの、マンホールの中へ降りていく段階になると、だんだん不安になってくる。チャッキーは、「明日、スペイン語のテストがあったの思い出した。アディオス・アミーゴ」と帰ろうとするが、当然、許してもらえない。覚悟して進む2人。そして、行き着いた先にあったものは、竜巻のように渦巻く水流の上に置かれた1本の細い鋼管。そして、ブラッドが言う。「いいか、単純だ。おまえは あれを渡って 向こうの壁にサインしろ」。そして、スプレー缶を渡される。驚きのあまり見開かれたライアンの目(2枚目の写真)。一緒に来た女の子が必死に止めるが、ブラッドは「じゃあ、向こうで待っててやる」と言って、バランスを取りながら管を渡る。そして、「来いよ、ジェフリーズ。クールなんだろ?」と焚き付ける。女の子は「あなたを からかってるだけよ」と呼びかけ、チャッキーは「こんなのバカげてる。トム・クルーズ(「つたい歩きする」の意味)の真似か?」と止めるが、ライアンは「黙れ。僕にだって出来る。彼もやったんだ」と言って、渡り始める。片足が悪いのでバランスがすごく難しい。それを見て、ブラッドは、意地悪く「赤ん坊みたいだな。いっそ四つん這いになったらどうだ」と集中力を破ろうとする。ライアンが渦の真上まで来た時(3枚目の写真)、ブラッドは、ライアンの背後に突き出たパイプがあり、そこからいつ排水されるか分からないから急げ、と脅す。しかし、現実に変な音がして、パイプから勢いよく水が噴き出し、排水をまともに浴びたライアンは転倒し、渦の中に真っ逆さまに落ちてしまう。
  
  
  

ライアンは、森の中の川のほとりに倒れていた(1枚目の写真)。意識が戻って立ち上がる。水に落ちたはずなのに、服が乾いている。「チャッキー? みんな どこにいるんだ?」と呼ぶが返事はない。上を見上げると、天を突くような大木が茂り、太陽はどこにもない。その時、人の気配がし、ライアンが振り向くと(2枚目の写真)、そこには兜と甲冑を身にまとった男がいる。「おい、お前!」。逃げるライアンに向けて投げられた槍が、バックパックに突き刺さり、ライアンも倒れる。男にバックパックを奪われ、さらに攻撃されそうになった時、川から何から飛び出してきて、あっという間に男が投げ飛ばされた。その隙に逃げ出すライアン。そのライアンの前に、人間ではない生物が現われる。ライアンは、驚いて全力で逃げるが、ふと立ち止まり、自分の不自由だった脚が治っていることに気付く。装具もなくなっている。「やった!」と狂喜するライアン(3枚目の写真)。今まで出来なかったカンフーの真似や、フットボールのプレーをやってみる。その最中、変なコビトに襲われるが、美しい女性に救われ、どこかへ連れて行かれる。
  
  
  

この世界を実質的に支配している暴君コモドの本拠地では、使命を果たせず、ライアンのバックパックを持ち帰っただけの指揮官が、コモドに責められている。コモドは失敗者を残忍に裁くため、指揮官は必死に弁解する。「閣下、ご覧下さい。これを持って参りました。少年から取り上げました。『来たりし者』です」。来たりし者と聞き、荷物だけ取り上げ、指揮官を死の穴に落とすコモド。穴の中にある回転する刃物で切り刻まれる残虐な処刑だ。バックパックの中には「伝説の写本」が入っていた。さっそく取り上げるコモド(1枚目の写真)。しかし、コモドが写本を開いても、そこには白紙のページがあるだけ。タオの世界の将来を左右する重要な写本も、読めるのは来たりし者だけなのだ。コモドは、「来たりし者を見つけ、ここに連れて来い。生きたままだ」と命令する。これで、ライアンの立場は一気に危険になった。一方のライアン、女性に連れられて、コモドの支配を逃れている唯一の集落を訪れる(2枚目の写真)。そこには、タオの世界に残った唯一の生命の泉があり、コモドはその支配を坦々と狙っている。そして、それを守っているのが、道士チャンと彼が育てた5人の「徳の戦士」なのだ。
  
  

ライアンは、この集落の庇護者である道士チャンの元に連れて行かれる。ライアンが「伝説の写本」を持って来たからだ。ただ、彼らは、その写本がコモドの部下によって盗まれ、今はライアンの手元にないことは知らない。だから、チャンがライアンに投げかけた最初の言葉は、「写本を見せてくれぬか?」だった。「重要なことなのだ、来たりし者よ」。ライアンは、「僕の名前はライアン・ジェフリーズです」と言って話をかわす。そして、「徳の戦士に会わせてもらえます?」と頼む。ライアンとしては、「伝説の写本」を持ってないことを知られたくないのだ。チャンは、ライアンを戦士の元に連れて行く。「わしは、タオを守るため、5人の戦士を育てた。誠実で高潔な者たちじゃ」。「カンフーで闘うんですか?」。「自然の元素を力としている。木、火、土、金(金属)、そして、水じゃ」。「ミンが言った通りだ」と独り言(1枚目の写真)。そして、その順番に4人の戦士(カンガルーに似たルー族)の闘いぶりが紹介される。「5人じゃないんですか?」。「5人目はヤン、リーダーじゃ。慈悲の徳、水の力じゃ」。「どこにいるのです?」。「ヤンは、闘志を失くしてしまった」。4人が練習を終え、チャンを囲んいると、そこにライアンが入って来る。チャンは、「彼は、来たりし者じゃ。大切なものを持って来てくれた。さあ、ライアン・ジェフリーズ、写本を見せてくれぬか?」。こうなっては、正直に打ち明けるしかない。「僕は、持ってません。彼らの1人が持ってます」。そして戦士達に「僕をコモドの兵士から助けてくれた時、バックパックに入ってたんだ。川でだよ」と説明する。戦士の1人が「来たりし者が川で救われたのなら、やったのはヤンだ」と言う。戦士をやめてしまったヤンに非難の言葉が出るが、チャンは、「この戦いでは、5人が力を合わせねばならん。ヤンを捜し出すのじゃ。伝説の写本がないと、コモドを倒すことはできぬ」(3枚目の写真)と諌める。
  
  

集落に連れて来てくれた女性と親しくなったライアンは、かつてタオの国が平和だった時代にルー族を讃えて作られた寺院に連れて行ってもらう。そして、ヤンが姿を消したのは、戦闘中に1人殺してしまったからだと聞かされる。しかし、その時、「来たりし者」を捕らえに来たコモドの部下に見つかり、女性が気付かぬうちに連れ去られてしまう。手を縛られて森の中を連行されるライアン(1枚目の写真)を救ったのは、最初に助けてくれた生物(今では、それがヤンだったと分かっている)だった。「ねえ、あなたがヤンなんでしょ? 僕はライアン、来たりし者なんだって。前、川で助けてくれたよね。写本を返してくれる? 必要なんだ」。「伝説の写本か?」。「持ってないの?」(2枚目の写真)。「じゃあ、コモドが持ってったんだ。ねえ、写本を取り返すのを手伝ってよ。チャン先生が、あなたに戻って欲しいって言ってた。一緒に行こうよ」。しかし、ヤンはどこかに消えてしまう。ライアンは、「どこに行ったの? 戦士の1人なんでしょ。誠実と高潔、忘れたの? 永久に逃げてるつもり?」と呼ぶ(3枚目の写真)。何の返事もないので、「みんながあきらめるハズだ」とつぶやいた後、「意気地なし〔Wimp〕!」と叫んで去ろうとすると、ヤンが目の前に現れ、「さあ、行こう」と言ってくれる。
  
  
  

戻ったヤンが、他の4人に受け入れられたところで、道士チャンが「皆が揃った姿を見られるのは嬉しいことじゃ」と現れる。そして、「来たりし者が、写本を持って参った。そこに書かれていることを読めるのは彼だけじゃ」と告げる(1枚目の写真)。「僕が?」と驚くライアン。ヤンは、カムバックしたリーダーとして、「命に懸けて、コモドから写本を取り返します」とチャンに誓う。集落では、ヤンが戻り、徳の戦士が揃ったことに大喜び。群集の前に勢ぞろいした5人、プラス、ライアンに向かって歓声が上がる。アメフトで勝ったような高揚感にひたるライアン(2枚目の写真)。その後、戦士達だけになると、今後の作戦でもめる。道士と約束した以上、一刻でも早く写本を取り戻しに行きたいヤンと、集落の人々を無防備のまま放置できないという土の戦士の間での意見の対立だ。火と金の戦士はヤンに同行すると発言。そこにライアンも「僕も」と割り込む。火の戦士は、「それは、賢明ではない」と言い、金の戦士もそれに同調。「我々は君を危険にはさらせない。君は友達だ」。友達と言われたので、いつもチャッキーとしていた仕草で友情を交わすライアン(3枚目の写真)。こうして3人の戦士は写本の奪還に出発することになるが、それを例の女性がこっそり隠れて聞いていた。実はこの女性、コモドの妹で、スパイとして潜入していたのだ。
  
  
  

ライアンは、かつて、写本の入ったバックパックを奪われた時、直後にコビトに襲われたが、その時のコビトがずうずうしくライアンの前に現れる。そして、コモドから写本をかすめ取って隠してあるから、一緒にくれば渡してやると持ちかける。その話に乗って付いて行ったライアンは、待ち構えていたコモドの将軍に捕まってしまう(1枚目の写真)。だが、ライアンの危機を察知したチャンが将軍の行く手を遮り、ライアンを助けてくれる(2枚目の写真)。しかし、チャンはライアンの危機は察知しても、何故か、戦士達の勝手な行動は察知できなかった(さらに言えば、コモドの妹がスパイであることも)。そのため、コモドの元に向かった3人の戦士は、コモドが事前にスパイの妹から聞いて用意しておいた罠に簡単に引っかかって捉えられてしまう(3枚目の写真)。写真では分かりにくいが、上の方に手足を鎖でつながれて浮いているのが3人の戦士。右下にいるのがコモド。その左にある螺旋模様の部分が開くと、その下が穴になっていて底に回転する刃物がある。いわば、絶体絶命の状況だ。
  
  
  

3人は穴に落とされるが、金の戦士の持っている鋼の輪を回転する2枚の刃に絡ませて止め、逃げることに成功する。一方、コモドは戦士達が死んだと思い、全軍を繰り出して集落の制圧に乗り出す。その頃、ライアンは道士チャンと話し合っていた。「写本があれば、家に帰れます?」。「ルー達を助ければ、家への道が見つかるじゃろう」。「僕の脚は?」。「大切なものは 肉体ではなく心なのじゃ」。「でも、今のように強くなりたいよ」。「徳の戦士は強いと思うか?」。「ええ、もちろん」。「彼らの強さは肉体にあるのではない。徳の心、『気』にあるのじゃ」。「気って?」。「気とは、内なる心のエネルギーのことじゃ。気は、正にも負にもなる。コモドは負の気を使い、殺戮と破壊を行っておる。しかし、もし そなたが心の徳を一つにまとめることができれば、正の気が生まれ、正しいことを行う力が得られよう」。「他の誰にも写本が読めないのに、どうやったら僕に読めるのですか?」。「答えは そなたの心の中にある」。その時、突然チャンの表情が変わり、ライアンに走って逃げろと命じる。コモドが直々に襲ってきたのだ。2人の壮絶な戦い。途中で逃げるのを忘れて心配そうに見守るライアン(1枚目の写真)。彼は、そこで敵兵に遭遇し、結局 チャンとコモドの戦いの場に戻って来る。そして、石の隙間に脚を突っ込み取れなくなったので、うっかり「チャン先生、助けて」と叫んでしまう。その一瞬の隙を突いて、コモドがチャンを切る。コモドは死にゆくチャンの元に寄り、「俺は地獄にいる。牢獄だ。どうしたら自由になれる?」と訊く(2枚目の写真)。「この世に地獄があるとすれば、それはお前の心の中、争いの絶えない心の中だけにある」。チャンが死んだ後 ライアンは気を失うが、次に目覚めた所は、コモドの宮殿の豪華なベッドの中だった(3枚目の写真)。
  
  
  

ライアンは、コモドに写本を渡され、読むよう強制される(1枚目の写真)。しかし、写本を開いても、そこにあるのは何も書かれていない空白のページばかりだった。それでも、「読め!」と脅され、ライアンは、「人生ってそんなもんさ(Shit happens)」と、諦めの境地で答える。コモドは、顔を寄せると、静かに「貴様、読めないんだな」と言い(2枚目の写真)、次の瞬間、「この役立たず!」と怒鳴ってライアンを殺そうとする。それを救ったのは、ライアンにとっては裏切り者のコモドの妹だった。その直後、差し出がましい妹の行動に怒った女性側近が、嫉妬に狂って妹を刺し殺し、それに激怒したコモドが側近を殺す。その混乱に乗じて、ライアンは写本を持ったまま逃走することに成功(3枚目の写真)。
  
  
  

逃げ出したのはいいが 行き場のないライアンは、森の中で泣いている。「こんな風景もう見たくない。こんな所にいたくない。人が死ぬのも見たくない。家に帰りたいよ」。そこに、例のコビトが、また現れる。「行っちまえ、化け物。お前は僕を売った。自分だって売る奴だ。失せろ」。「ただ、助けたいだけだ」。「お前の助けなんか要らない。消えちまえ、この2フィートの化け物め」。コビトは去って行くが、しばらくして振り返りと、「ルーの奴らには お前の助けが必要だ」と初めてまともなことを言う(1枚目の写真)。ライアンは、その話を受け入れ、道士チャンの遺体を花で覆って嘆いている5人の戦士の前に現われる。そして、「僕には、あなた達を助けられない。読もうとしたけど、白紙なんだ。ごめんね。頑張ったけど、僕にはできないんだ」と正直に打ち明ける。それを聞いた5人の戦士は、自分達だけで闘うしかないと、コモドの戦陣へと向かう。そこから始まる6分間に及ぶ戦士対コモドの戦闘シーンは、この映画の山場になっている。一方、チャンの亡骸の横に座り込んだライアンは、写本に頭をうずめて「どうやったら、ルーの戦士を助けられる?」と悩んでいる。その時、かつてチャンに言われた言葉が頭を過ぎる。「答えは そなたの心の中にある」。「チャン先生、助けて」(2枚目の写真)。すると、写本が光り出し、文字と図が現れる(3枚目の写真)。上には、「五行相生。正の気」と書かれ、五行の図の下には、「命を奪う時、己の一部も失われる」と書いてある。ライアンは、コモドが道士の命を奪ったことで、コモドも弱くなったことに気付く。そして、自分にしかできない秘策にも…
  
  
  

ライアンは、5人とコモドの闘いの最終局面に駆けつける。そして、「やい、コモド」と呼びかけると、「これを見ろ」と写本をかざす(1枚目の写真)。そして、次々とページを破り取りながら、5人に向かって「五行相生。正の気だよ。今すぐ、やるんだ!」と叫ぶ。ライアンに怒りの「気」をぶつけるコモド。お陰で、ライアンは吹っ飛び、写本もバラバラになる。戦士達は5人の気を合わせて強大なエネルギーを作り出し(2枚目の写真)、それをコモドにぶつける。負の気をすべて失い、すべての記憶も失い、ただの人となるコモド。しかし、ライアンはコモドの負の気を浴び、死の淵にある。戦士達に丁寧に地面に横たえられ、何度も声を掛けられると目を開き(3枚目の写真)、「うまくいった?」と訊く。みんなが頷くと、弱々しく微笑む。ライアンが手に握りしめているものに気付いたヤンが、「これは何だ?」と手に取る。「僕、写本が読めたんだ」。それは、さっきライアンが見たページだった。「ライアンは自分を犠牲にして我々を救ったんだ。コモドに自分を殺させて、奴を弱らせたんだ」「君は世界を変えたんだ、ライアン」。タオの世界に光が戻ると、ライアンも光となって消えていった。ライアンの英雄的行動は、タオの神話として残ることだろう。
  
  
  

ライアンは、渦に落ちる少し前の時間に戻った。ちょうど、女の子が「あなたを からかってるだけよ」と呼びかけ、チャッキーが「こんなのバカげてる。トム・クルーズの真似か?」と止めた時だ。前と違って賢くなったライアンは(1枚目の写真)、「そうだよな(Why not?)」と言って、スプレー缶を渦の中に投げ捨てる。ブラッドが、「嘘だろ。何しやがる? お前は この先ずっとダメ男だぞ。この意気地なし野郎!」と煽っても無視する。その時、かつてライアンを渦に投げ込んだパイプから勢いよく水が噴き出し、細い鋼管が折れてしまう。今度は、戻れなくなったブラッドが「ここから出してくれ! 助けて!」と泣きつくことに(2枚目の写真)。
  
  

ライアンが家に戻り、ベッドに入っていると、ようやく母が帰ってくる。様子を見に来た母が、「今夜はどうだった?」と訊くと、「道徳的(Virtuous)」(1枚目の写真)と一言。変わった返事に戸惑う母。マリオの顔も最高に面白い。お休みと言って母が出て行った後、ライアンはベッドから起き、窓辺に置いた繭入りのガラス瓶をしげしげと見る。そして、おもむろに蓋を開けると、蓋の裏に貼ってあった紙に気付く。「自分の力を試せ(Spread your wings)」と書いてある。ミンが、脚の不自由なライアンに贈った言葉だ(2枚目の写真)。今のライアンなら、その意味が100%分かるし、それを実行できる。
  
  

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