イギリス映画 (1976)
この映画は、1909年のイギリスの炭鉱におけるポニーの過酷な環境をテーマにしている。ここでは、もう少し幅を広げて、ポニーと子供双方の歴史的変遷について見て行こう。イギリスが、世界で初めて産業革命を実行した背景に、隠された悲劇はあまり知られていると思えないので、ここでは、イギリスの国立炭鉱業博物館〔National Coal Mining Museum〕、ビッグピット国立石炭博物館〔Big Pit National Coal Museum〕、ホース・ジャーナル〔HORSE Journals〕、英国新聞記録〔The British NEWSPAPER Archive〕の4つのサイトから、①炭鉱における子供の労働、②炭鉱におけるポニーの労働、の2点について19世紀から20世紀初頭までの状況の変化を記載する。
炭鉱の児童に関する1842年の報告書では、「(1)鉱山での労働が始まる一般的な年齢は8-9歳だが、7-8歳もしばしば見られ、6-7歳も稀ではなく、5-6歳、時には、5歳や4歳という事例もある。(2)鉱山での作業に従事する人々の大半は13歳から18歳未満である。(3) 6歳以上のさまざまな年齢の労働者に、石炭を積んだトロッコを採掘場から主坑道もしくは竪坑まで押したり引きずったりする重労働が課せられる。(4)労働者が完全雇用されている場合、児童及び若者の所定労働時間が 11 時間未満になることは稀で、12時間であることが多く、幾つかの地域では13時間で、14時間の地域すらある。(5)これらの炭鉱の大半で、通常の賃金労働の中で、多かれ少なかれ定期的に夜間労働が行われており、労働者の身体的および精神的状態、特に児童や若者に、有害な影響を及ぼしている。(6)炭鉱所有者は、彼らの職場で雇用されている児童及び若者が日々の労働が終えた後の状況に無関心で、彼らに健全な娯楽や心身の休息を与えるような配慮をほとんど何もしていない。(7)これらの炭鉱で働く児童及び若者の大部分は、坑内で働く成人労働者の家族であるか、近隣の最貧家庭に属している。(8)女性が炭鉱で働いている地域では、性別に関係なく同一の労働に、同じだけの時間従事させられているだけでなく、少女や少年、若い男性や女性、さらには妊娠している既婚女性まで、ほとんど裸で働いているのが普通であり、多くの炭鉱では男性が全裸で働いていることから、道徳を低下させる。(9)炭鉱のあらゆる場所で、恐ろしい事故が極めて頻繁に起きており、そのような事故で亡くなった労働者のうち、児童や若者の割合が、時には成人の割合と同等であり、それより大幅に下回ることは稀である。(10)疼痛性、致死性疾患の種が、幼少期や青年期に蒔かれることが非常に多く、これらの疾患はゆっくりと、しかし着実に進行し、30 歳から 40 歳の間に恐るべき芽を出し、この世代の人口は50 歳を過ぎると急減するのが普通である。
この報告書の公表とそれを受けた国民の抗議により、立法化は避けられなくなり、「鉱山炭鉱法〔Mine and Colliery Act〕」が1842年8月4日に制定された。1843年3月1日以降、イギリスでは女性および10歳未満の子供の鉱山における地下労働が違法となった。
1900年7月30日、「鉱山(児童地下労働禁止)法〔Mines (Prohibition of Child Labour Underground) Act〕」が制定され、13歳未満の少年の鉱山における地下労働が禁止された。1900年8月4日付の記事には、次のような一文がある。「英国全体で、 12歳から13歳までの児童4,868人が鉱山の地下で働いており、ランカシャーとヨークシャーでは、10歳から13歳までの男子552人と女子10人が地上で働いていた」。
少年とポニーとの関係については、「新人の少年は、ポニー使いとして職に就く。ポニーを与えられ、厩舎で馬具をつけて作業場に連れて行くように言われる」との記載がみつかった。これは、まさに、この映画のデイヴとトミーに該当する。
最後に、この映画の最後に起きた爆発事故について。映画の設定の1909年の僅か4年後の1913年10月14日に、英国史上最悪の炭鉱爆発事故がウェールズのセンゲニード〔Senghenydd〕炭鉱で起きた。当時、坑内にいた推定1,000人の鉱夫のうち439人と救助隊員1人が死亡した。当時、坑内には最大200頭のポニーいて、少なくとも100頭が死亡した。原因は、蓄積した可燃性ガスに電気の火花が引火したためと考えられている〔日本最悪の炭鉱爆発事故は、1914年12月15日に福岡県の三菱方城炭鉱で起きた。死者は671人。英国最悪の約1年後というのが気になる〕。
次に、ポニーについて見て行こう。
坑内ポニーは18世紀半ばに導入された。坑内ポニーは坑口近くの地下に繋留されることが多く、炭鉱の年次休暇中にのみ坑内から姿を現し、通常は毎日8時間交代で坑内軌道上を使って30ポンド〔0.4トン/映画では0.5トン〕の石炭を運搬していた。1838年7月4日、シルクストーン〔Silkstone〕のハスカー〔Huskar〕炭鉱で洪水が発生し、26人の子供が死亡した事故をきっかけに、坑内ポニーが本格的に導入された。1842年の「鉱山炭鉱法」の制定により、児童や女性に、ポニーが取って代わった。労働環境は劣悪だったが、ポニーは手厚い世話を受け、時には10年間も働き続けた〔映画では14年。この記述を知っていれば、“フラッシュ” が凄いポニーだということが分かる〕。1913年、ポニーの最盛期には、英国の炭鉱で7万頭のポニーが働いていた。その後、機械化が進むにつれてその数は減り始めた〔まさに、映画と同じ〕。翌1914年、英国王立動物虐待防止協会〔RSPCA〕は、英国の炭鉱で働く70,396頭の馬とポニーのうち、2,999頭が負傷して死亡し、10,878頭が負傷したものの生き延びたと報告した〔老齢のために安楽死させられた馬とポニーは除外〕。あと、映画と関係する話題として、フラッシュは14年間、地下の厩舎で過ごしたため、盲目になったという設定になっている。これに対しては、「幾つかの鉱山には地下厩舎があり、馬やポニーは年間の大半をそこで飼育されていた。作業が減ると、彼らは地上に連れ出され、牧草地に放牧された。他の鉱山では、鉱夫たちと同じように、交代でポニーを地上と地下に運んでいた」という記述があり、14年も厩舎という設定には疑問が生じる。また、盲目に関しては、「盲目のポニーは、鉱山で働くことが法律で許されていなかった」「暗闇で働くからといって、必ずしも盲目になるわけではない」とあり、これも考えにくい。「老齢によって失明することもあった」ともあるが、フラッシュは、炭疽病による盲目。ただ、フラッシュが、見えなくても坑道内を自由に走り回った点に関しては、「坑内ポニーは独自のスキルを身につけていて、狭い場所で方向転換したり、言葉による指示に応えたりできた。暗闇の中で作業をしていたが、周囲をしっかりと把握していた。彼らは賢く、頭脳明晰で、暗闇の中で視力が試されるような状況で、他の本能を発達させていった。ケガで片目が見えなくなったポニーは、硬い石に鼻をこすりつけて、どこで曲がればいいのかを探る術を習得した」と書かれている。非常に賢い動物だ。
デイヴ役は、アンドリュー・ハリソン(Andrew Harrison)。出演した本格的な映画は、これ1本。他に情報はない。トミー役は、ベンジー・ボルガー(Benjie Bolgar)。こちらも、出演した本格的な映画は、これ1本だけで、他に情報もない。
あらすじ
映画の冒頭、「ヨークシャー、イングランド、1909年」と表示される。そして、鋼鉄で出来た巨大な炭鉱タワー〔炭鉱夫を地上→地下(その逆も)、採掘した石炭を地下→地上に移動させるための竪坑リフト〕が映る。そして、リフトに乗って、この炭鉱の新しい管理責任者〔manager〕サンドマンと、案内をする技師長のカーターが坑道に降りて行く。そして、坑道の中の様子が映される。映画の中で掘削部が映ることは一度もなく、採掘した0.5トンの石炭を入れた炭車〔tub〕2台を牽いたポニーが、レールを敷いた坑道の中を竪坑に向かって歩いて行く姿(1枚目の写真、矢印は炭車)と、空になった炭車2台を牽いたポニーが採掘現場に向かって歩いて行く姿が映される。ポニーは10頭程度いるが、一旦坑道に入れられたら、二度と外に出ることはできず、炭鉱夫がいなくなる夜の間は、坑道内の厩舎で過ごすことになる。そのポニーの中で一番長く〔14年間〕働いているのがフラッシュ〔閃光: 暗闇で働いているから付けた名?〕で、この映画で重要な役割を果たす。サンドマンは、カーターからポニーが運ぶ石炭が1tonだと聞くと、「ポニーなんか使わない炭車見たことあるか?」と訊く。「聞いたことはあるばってん、見たことはなかとです」。「一度に最大 100 台の炭車を処理できる機械だ」〔新しい管理責任者はポニーに否定的〕。次に、デイヴとトミーの兄弟が、ポニーの餌の乾草を炭車に入れて押しているシーンが映る(2枚目の写真)。この映画の主人公とも言えるデイヴは、フラッシュが好きなので、会うごとに可愛がる(3枚目の写真)。



ポニーの世話係のバートが、デイヴやトミーと話していると、ルークが、「バート、子供たちば隠した方がよか。親方〔gaffer〕が来る」と注意する。デイヴが 「監督って誰?」とバートに訊くと、「新しか管理責任者や。おいおい、しゃあ、早うここから出て、板壁ん後ろに入るったい。父しゃん〔ルーク・アームストロング〕が そげ言うたろ」。「彼は父しゃんやなか」。「じゃあ義父や」。バートは反論するデイヴを細い隙間の中に押し込む。そこに、サンドマンがやってきて、カーターが 「彼は、バート・コーズデン、ポニーん世話係ばい」と紹介する。サンドマンは、フラッシュを見て、「こいつは、いつからここにいるんだ?」とバートに尋ねる。「14年でごじゃいます」。「ここに来た時は、3歳か4歳だったのか?」。「そうばい」。「じゃあ、もうベストじゃなくなってるな」。「フラッシュが? 彼は、一番の働き手ばい」。サンドマンとカーターがいなくなると、隙間から出て来たデイヴが、「フラッシュが、ベストやなかって?」と、サンドマンの無知に呆れる(1枚目の写真)。バートも、「彼は、ただんロンドン野郎しゃ。なんも知っとらん」と軽蔑する。3人がリフトで地上に出て、バートが駄賃として、デイヴとトミーの1ペニーずつ渡す(2枚目の写真、矢印)。2人は、炭坑内の管理責任者の事務所の横の小丘を登って行く時、サンドマンがじっと睨んでいる(3枚目の写真、矢印)。サンドマンは、さっそくカーターに、「あの子供たちは何なんだ?」と訊く。「子供たちでごじゃいますか?」。「そう、2人いた。坑道から出て来たぞ」。「ああ、あん子たちなら、デイヴとトミー・サドラーばい。バートば手伝うて、ポニーん世話ばしよーとです」と笑顔で話す。しかし、サンドマンは、厳しい顔で、「彼らは若すぎて給与リストに載る資格がない」と言う。カーターは、再度笑顔で、「2人は、ポニーが好いとっちゃん。バートが、時々1ペニーあげとーばい」と言うが、サンドマンは、「何よりもまず、安全基準を考慮しなければならん。彼らが降りることは許されん」と冷たく言い放つ。すると、それを聞いた炭鉱夫の一人が、「許しゃれん? 2人ん親爺しゃんな、あそこで死んだんや」と、デイヴとトミーを擁護する。



2人が家に戻った後の夕食のシーン。母は、炭鉱の町で生きていくために、別の炭鉱夫と再婚しているが、デイヴはそれが気に食わない。デイヴが、手づかみで食べていると、母が、「デイヴ、あんた “ばりうまか物” 食べよーとよ。やけん、それに感謝して、まるで “どげんでんよか物” んごと ガツガツ食べんとって」と、少し過剰な注意をする〔シーンを見ている限り、手づかみを注意するだけで十分なのに、余分なことを言っている〕。カチンと来たデイヴは、何も言わずに席を立つ。母:「一体どこしゃぃ行くつもりと?」。デイヴ:「トミーば散歩に連れて行くったい」(1枚目の写真)、ルーク:「もう遅いっちゃないと?」〔仕事が終わったので夕方遅い〕。デイヴ:「昔は、いつも食後にトミーば連れて出かけとったやないか」〔父が死ぬ前は、父と兄弟3人で散歩に出かけていた〕。母:「ばってん、あんた一人じゃなかったとよ」。デイヴは “嫌な奴” といった顔でルークを見ると(2枚目の写真)、「行ったっちゃよか?」と母に訊く。すると、ルークが、「行けや! なして行かんっちゃ!」と怒鳴るように言う。デイヴはさっさと席を離れると、弟に向かって、「行くくさ、トム〔トミー〕、ダニー〔犬〕」と声をかけ、トミーと犬もすぐについて行く。後は、2人だけの寂しい夕食となるが、母と義父にも大いに責任がある。映画は、ここで、もう一人の主人公アリスの家の状況を映す。この炭鉱の所有者ハロゲート卿から管理責任者として招かれたサンドマンは、一家でこの炭鉱の町に移ってきた。荷ほどきが全部終わり、妻と、娘のアリスの3人での夕食のシーン(3枚目の写真)。サンドマンは、2人に事情を説明する。「私はハロゲート卿に招かれてここに来た。彼の炭鉱を黒字化するためだ。そして、私はそれを成し遂げるつもりだ。もし私ができなければ、彼は炭鉱を閉鎖するだろう。そうなれば私は職を失う… そして炭鉱夫たちは生活の糧を失う」。妻:「一体何が問題なんですの?」。「問題は、十分な量の石炭を採掘できないことだ。従って、価格が高くなり、それでは売れない。だから夜間勤務を止めざるを得なかったんだ」。アリス:「じゃあどうするの、お父さん?」。「まずは、あの坑道用のポニーを処分しないといかんな」〔これが映画の主題となる〕。



そして、翌朝。エムズデール炭鉱の門と、巨大な炭鉱タワーが映る(1枚目の写真)〔このロケ地は、ノース・ヨークシャー州にあるソープ・ヘスリー(Thorpe Hesley)鉱山。「1886年から1974年まで操業し、2つの坑道から石炭と鉄鉱石を採掘した」と書かれている〕。その頃、デイヴとトミーと犬は、丘の頂上を目がけて競争していた。一方、アリスは、手作りの凧を持つと、結構高い石の塀を乗り越えようとする。母に、「アリス、どこに行くの?」と聞かれると、塀の上から、「凧あげに行くだけよ、お母様!」と叫んで(2枚目の写真、矢印は凧)、塀を飛び降りる。妻が、「あの子が一人で荒れ地に行くのは好きじゃないわ」と言うと、サンドマンは 「ここに一人でいるのは寂しいんだろう」と許容する。「あの子に、粗雑な炭鉱夫の子どもたちと遊ばせたくないの」。3つ目のシーンは、ハロゲート卿とサンドマンの会話。ハロゲート卿から 「私の炭鉱は赤字続きだ。君は新しい管理責任者として、この状況をどうするつもりかね?」と尋ねられ(3枚目の写真)、サンドマンは 「坑道内での機械の使用について、可能性を模索して参りたいと思います、閣下」と答える。「機械? 炭鉱夫の代わりに機械を使うのか?」。「いいえ、閣下。坑道から竪坑まで石炭を運ぶのに、ポニーの代わりに機械を使うことができると思うのです」。ハロゲート卿は、その提案を承認する。



デイヴとトミーが 川を見下ろす場所まで来た時、犬のトムが吠え、女の子の声で、「あっちに行って! 怖い犬ね! 家にお帰り!」と叫んでいるのが聞こえる(1・2枚目の写真、矢印は凧とアリス)。デイヴは、「木ん上に女ん子がおる」と驚き、すぐに2人で助けに駆け付ける。そして、真下まで行くと、「そげんとこで何しよーったい?」と訊く。アリスは、「どっかに行って」と生意気に答える。「降りらるー?」。「もちろんよ」。そう言った割に、怖くて降りられない。デイヴは、アリスを下ろした後で、凧も取ってやる(3枚目の写真、矢印)。



アリスは、凧が木に引っ掛かった理由として、「凧を高く上げられるくらい 早く走れなかったの」と打ち明ける。トミーは 「デイヴならできたばい」と言う。そこで、デイヴは全速で走り、凧を上げることに成功する(1枚目の写真)。一旦上がると、後は風が支えてくれるので、デイヴはアリスに糸を渡し、アリスは凧あげが出来て喜ぶ(2枚目の写真)。凧あげが終わって歩きながら、アリスは、「どうして学校に行かないの?」とデイヴに訊く。「夏休みやけん」。「運がいいわね。私には、ひどい家庭教師が来るのよ。きっと、一日中室内にこもって勉強させるんだわ」。トミー:「家庭教師って何?」。デイヴ:「先生みたかねもんしゃ」。「なして、僕らんごと学校行かんと?」。「だって、炭鉱ん学校やし、こん子、お嬢さんやろ」。それを聞いたアリスは、「私、お嬢さんじゃない!」と反論する(3枚目の写真)。「よかや、そうしゃ〔いいや、そうだ〕」。「お嬢さんじゃないわ! そんなじゃない!」。2人は言い争っているうち、バランスを崩して草花の割いている丘を転がり落ちるが、最後、アリスがデイヴに馬乗りになって 「取り消して!」と迫り、デイヴが 「やめれや! もうよか! お嬢さんは争うたりしぇん」と言い、お嬢さんでないと認めたので、アリスも笑顔になる。



3人は、いつもとデイヴとトミーが登って行く小丘の上に行き、炭鉱山の広場を見下ろす。アリスは、「坑道の中って どんな感じなのかしら」と言う。「入ったことなかと? 僕ら毎日入っとーばい」。「そんなこと できないでしょ。男の子は14歳になるまで鉱山で働くことは許されてないのよ」。「僕ら働いとーんやなか。バートがポニーん世話すると手伝いよーったい」。それを聞いたアリスは、2人にとって恐ろしいことを言う。「ポニーがいなくなったら、寂しくなるわね」。「おらんくなる?」(1枚目の写真)。恐らく、アリスが父のサンドマンから聞いた話を教えられた2人は、家まで全速で走って帰る。通りに面したドアを開けると、そこが2枚目の写真の食事をする場所で〔狭い家。兄弟は1つのベッドで寝ている〕、2人の帰りが遅いのでルークが一人で食べている。最初に口火を切ったのはトミーで、「ポニー、母ちゃん、ポニー!」と母に向かって叫ぶ。「一体どこしゃぃ行っとったと?」。「ポニー!」。ルーク:「ポニーがどげんした?」。ここで、ようやくデイヴが発言する。「ポニーたち、捨てられちゃう! 代わりに機械ば入るーったい!」(2枚目の写真)。今度は、トミーが、「ポニーは、どうなってしまうん?!」と訊く。冷静で、ある意味、妙に冷たい母は、「どげんなるやろうね? 働けんなら、誰もポニーん餌代なんか払うてくれんばい」と、見放したように言う。今度は、デイヴが、珍しく、嫌いなルークに、「ポニーたち、どげんなると?」と訊く。返事は、母よりもっとすげない。「知ったことか。ポニーだけ処分しゃれて、俺たちが仕事ば奪われんだけありがたかて思え」。それを聞いたデイヴは、「もちろん、あんたは気にも留めんしゃ! あんたは、父しゃんば坑道に置き去りにした! 自分だけ逃げて、父しゃんば見殺しにしたんやけんな!」と怒鳴る(3枚目の写真)。怒ったルークは立ち上がってデイヴを叩こうとするが、母が止めさせ、ルークは外に出て行く。母は、「あげんひどかこと、よう言えるばい」とデイヴを諫めるが、デイヴは 「彼には、ここしゃぃおる権利はなか。ここは、僕らん家や」と主張する。「今は、彼ん家ばい。彼は一日中坑道で働いて、うちらに食べ物と衣服ば与えてくれるとに…」。この場では、母はこれ以上何も言わなかったが、後で、当時の事情を話す場面がある。①坑道内で爆発が起きて、ルークは転落してケガをした、②デイヴの父が助けに行き、その時2度目の爆発が起きた、③ルークは意識不明になったので何もできなかった、というもの。デイヴがルークを嫌っている理由と、それが、“何が起きたかを正確に聞かされていなかったため” だということが分かる。



翌朝、昨日の夕方と同じ場所で、炭鉱の広場を見下ろしながら、アリスは 「ポニーがいなくなる前に、下に行って見てみたい」と言い出す(1枚目の写真)。2人は、止めるが、どうしても見てみたいアリスに負けたデイヴは、アリスにトミーの服を着せ、背を丸めてトミーのように小さく見えるようにさせると、ぴったり自分の後ろにくっついて歩かせ、入山の受付を、バートと一緒に通過する(2枚目の写真、矢印はアリス)。デイヴと “トミー” に気付いたサンドマンは、走って来るが、バートたち3人の乗ったリフトが降りて行った直後に現地に着いたので、アリスはバレずに済んだ。しかし、サンドマンが、通過を黙認したカーターに、「もしまたあの少年たちが降りて行くのを見たら、君を解雇するぞ」と宣言したので、デイヴは二度と降りて行けなくなる。一方、地下の坑道では、まだ仕事が始まっていないので、フラッシュたちポニーは、まだ地下厩舎にいる。デイヴはアリスをフラッシュに会わせる。そこに、バートが乾草の入ったバケツを持って来ると、「上にある機械見たか?」とデイヴに訊く。「機械?」。「シェフィールドから来た技師たちん大きな木箱や。可哀想なポニー… もう長うはここしゃぃいなかろう」。それを聞いたアリスは、「素晴らしいわ!」と笑顔になる(3枚目の写真、矢印はフラッシュ)。それを聞いたデイヴが、「『素晴らしい』って、なんが言いたかばい?」と訊く。「働かなくてよくなったら、炭鉱から出されて、野原に放たれるんでしょ? そしたら、毎日ポニーに会いに行き、餌をあげたり、世話できるじゃない」。バートは、「あんた、そげ思うんか? お父しゃんに訊いてみるんばい」と言う。



家に帰ったアリスを待っていたのは、如何にも厳しそうな女性の家庭教師。アリスは、早く父に訊きたいので、家庭教師なんかどうでもいいが、父は、なかなか帰って来ない。その間に、デイヴとトミーは、もう寝る時間になり、アリスが話した楽天的な期待を2人で分かち合っている。そして、デイヴは、3人がポニーたちを連れて野山を駆けている夢を見る。翌朝、アリスが朝食に降りてくると、もう父はいない。そこで、向かい側に座った家庭教師に、どうしても知りたいと言った上で、「お父様は炭鉱に機械を持ち込んで、かつてポニーが担っていた仕事をさせるつもりなの。そしたら、ポニーたちがどうなるのか、どうしても知りたいの」と言う。家庭教師は、笑顔で、「役目が終わったのなら、行かざるを得ないでしょうね」と答える。「どこに行くの?」。家庭教師は言いたくないので、アリスの母を見る。そこで、アリスは 「お母様?」と言う。母も言いたくなかったので、結局、冷酷な家庭教師が、「屠殺場」と言い、それを聞いたアリスは、「まさか!」と叫ぶと(1枚目の写真)、「お父様は、そんなことしないわ!」と言いながら食堂を飛び出して行く。そして、父のいる炭鉱の事務所まで、ずっと走って行き、中に飛び込む。しかし、その時は、カーターが、坑道に機械用のケーブルを敷設する作業をするとポニーが暴れるので、作業を中止したと報告に来た直後だったので、忙しいと言って相手にされない。別室に行った父とカーターは、炭鉱夫を全員帰宅させ、ケーブル敷設を優先させることにする。カーターが出て行った後も、父はアリスの話を聞こうとしなかったが、何度も頼まれて、遂に用を訊く。アリスは、すぐ、ポニーがどうなるか訊く。答えは、「ポニーは自活することに慣れておらん」。「どこかに野原でもないの? ポニーたちがそこで楽しく暮らして、走り回って、思いっきり遊べるような?」。「誰が餌代を払うんだ?」。「炭鉱主よ。そこで働いたんだから」。「ハロゲート卿が、何もしない動物にお金を出すとは到底思えんな」(2枚目の写真)。「そしたら、ポニーたちはどうなるの? まさか、ポニーたちを屠殺場なんかに送らないわよね、お父様?」。「家庭教師と勉強でもせんか! 頭の中がもういっぱいなのに、ポニーのことで煩わされるのはうんざりだ!」(3枚目の写真)〔最低の父親〕 。



坑道に入れなくなったので、外でブラブラしていたデイヴは、アリスが事務所に飛び込み、しばらくして、しゅんとして出て来たのを見て、「どげんした、アリス? 何があった?」と声をかける(1枚目の写真)。アリスは、泣きながら、「ポニーが… ポニーたちを殺すつもりよ」と告げる。それを聞いたデイヴは、「やるべきことはただ一つ。盗むしかなか」と断言する(2枚目の写真)。アリス:「盗むの? それって、ポニーたちを鉱山から出して、安全な場所に避難させるってこと? 素敵ね! でも、どうやってやるの?」。しばらく議論が続くが、カットして、デイヴは 「古か竪坑が残っとーかも。そこから降りりゃあ、今ん坑道に入り込めるかも」と言う。アリスが、「それがどこにあるか、どうやったら分かるの?」と訊くと、「管理責任者は、全施設ん図面ば保管しとー」と答える。「君んお父しゃんの事務所ばい」。3人は、さっそく事務所の階段の下に隠れてチャンスを待つ。幸い、ケーブル敷設の作業で大きな問題が生じたので、サンドマンが呼び出される。誰もいなくなった事務所に、アリスが忍び込み、図面がありそうな場所を片っ端から探し、遂に、一世代前の炭鉱タワーに関する図面を発見する(3枚目の写真、矢印)。



同じ炭鉱に使われた一世代前の炭鉱タワーなので、現在の炭鉱タワーからそれほど離れていないことは確かなので、デイヴは丘の上に登り、割と簡単に発見する(1枚目の写真)。そして、3人は、古い施設に向かって走って行く(2枚目の写真)。2枚目の写真の全体が炭鉱タワーだが、大きく2つの部分に分かれている。竪坑の真上に作られた木製の塔が巻上タワー〔winding tower〕で、てっぺんについた大車輪が巻上ホイール〔winding wheels〕。そこからロープが左にある切妻屋根の巻上エンジンハウス〔winding engine house〕に向かって伸びている。このハウスの中には巻上ロープ〔winding ropes〕を引っ張ったり、緩めたりして、竪坑内のリフトを上下させる巻上ドラム〔winding drum〕と、それに回転力を与える動力源としての巻上エンジン〔winding engine〕が入っている。なお、ドラムの横には、リフトの位置を知らせるための深度表示〔depth indicator to the left〕の柱が立っている。真っ先に巻上エンジンハウスに入ったデイヴは、クモの巣の張った巻上エンジンを見て、動かせるかどうか不安になるが、2人には装置の役割を説明する。



修理に仕方を知りたいと思ったアリスは、その日の夕食後、居間で寛いでいる父に、「お父様、巻上エンジンって、どうやって動くの?」と質問する。それに対し、家庭教師は、「アリス、それはお嬢さんに相応しい話題ではありませんね」と注意する(1枚目の写真)。しかし、父サンドマンは、「ミス・クーツ、娘にはお嬢さんになって、フランス語や裁縫、水彩画を学んで欲しいが、彼女の周りのことにも興味を持って欲しいんです」と釘を刺すと、「アリス、私の書斎に来れば、巻上エンジンの仕組みを教えてあげよう」と言う〔これまでは最低の父だったが、少しだけ挽回した〕。そこで教えてもらったことは、翌日、デイヴとの作業で役に立つ。映画では、デイヴが、2枚の厚い鉄製円板を重ねて使おうとした時、アリスが、緩衝材としての薄い円板を見せて、「これを2枚の間に入れないといけないわ」と教えるが(2枚目の写真、左の矢印の薄い円板を、右下の矢印の “2枚の厚い円板の間” に入れる)、そんな細かいことまで父は教えたのだろうか?〔疑問〕 そして、すべてが完了し、アリスが、「あとは、グリース〔潤滑油〕を塗るだけね」と言う(3枚目の写真)。



そこで、デイヴとトミーは、現役の巻上エンジンハウスに侵入すると、作業を分担し、トミーが中に一人だけいる作業員に会いに行く。作業員は、「やあ、トミー。なんの用だい?」と気軽に声をかけてくる。デイヴから作業員の目を逸らすことがトミーの役割なので、「これ、おっきなエンジンやね、ハリー」と、相手の自慢の機械に話題を持っていく(1枚目の写真、矢印はデイヴ)。「これって何するもんと?」(2枚目の写真)。「(坑内から)水ば汲み出すったい。いつもやっとらな、(坑内は)すぐに水浸しになるけんな」。その間に、デイヴがグリースの入った容器を盗み(3枚目の写真、矢印は容器)、それを見届けたトミーは、「じゃあね、ハリー」と言って出て行く。



カメラは再び古い炭鉱タワーに戻り、デイヴとアリスが蒸気駆動の巻上機関室内のボイラーに石炭をどんどん入れて火力を高めている。次に映るのは、石炭が残っている場所で シャベルを使って木製の一輪車に石炭を入れているシーン。デイヴは、「あまり汚れんごとした方がよかよ。しゃもなかと、どこしゃぃ行っとったんか疑わるーけんしゃ」とアリスに注意する(1枚目の写真)。その時、グリースの入った容器を持ったトミーが、「デイヴ、見に来て、もう十分塗ったて思う」と呼ぶ。3人は建物の中に入り、デイヴが巻上エンジンを始動させる大きな棒を動かしてONにする。しかし、巻上ドラムはほんの少し回転しただけで止まってしまう。対処の仕方が分からないので困っていると、そこに、都合よくバートが現われる〔坑内で仕事中のバートが、なぜ廃棄された施設に現れたのか、全く理解できない〕。そして、「一体ここでなんが起きとるったい? 古かエンジンば動かそうとしとるとか? うもう行ったら何ばする気なんや〔うまく行ったら何をする気なんだ〕?」と訊く(2枚目の写真)。トミーは、「ぼくら、ポニーば出しちゃるんだ」と、嬉しそうに言う。「竪坑から上げるとか? どげんしちゃるつもりなんや?」。「古か坑道ば通って」。ここで、初めてデイヴが口を出す。「このエンジンさえ 動いてくれればね」。それを聞いたバートは、「そげん難しゅうなかくさ。ここが使われとったんな、そげん昔やなか。ます、竪坑ヘッド〔shaft head、木製の塔〕ばきれいにしぇなな」〔機械を停止した際、リフトを固定したため、リフトを引っ張る巻上ロープを動かす巻上ドラムがストップした〕。リフトが自由に動くように、木の板を数枚外すと、巻上ドラムが勢いよく回転を始め、直方体の木のリフトが現われる(3枚目の写真)。3人は、「やった! やった!」と大喜び。バートは去る前に、①グリースを馴染ませるために、リフトを数回上下させるべき、②ただし、長く動かしていると、誰かが音を聞きつける、とアドバイスしてくれる。



家に戻ったアリスは、当日か翌日かは分からないが、家庭教師に、「クーツ先生、私、レース編みを学びたいと思います」と言い、喜んだクーツは、予備に持っていた糸玉をアリスに渡す。場面は、古い炭鉱タワーに変わり、リフトで下に行こうとするデイヴに、アリスはその糸玉を渡す(1枚目の写真、矢印)。リフトに乗ったデイヴは、糸玉をズボンのポケットに入れ、右手で火の点いたロウソクを持ち、左手で倒れないように鉄棒を握り締める。アリスとトミーが巻上エンジンを起動させると、リフトはゆっくりと下がって行く(2枚目の写真、矢印は糸玉)。アリスは、ドラムの横にある深度表示の柱の中央の “リフトの位置を示す長方形の木” の底辺が、柱の左右に付いた白い印(下の方)と並んだところで、エンジンを止める(3枚目の写真、矢印はリフトの位置を示す木)。



デイヴはリフトから出ると、竪坑の支柱に糸玉の細い糸の先端を縛り付ける(1枚目の写真、矢印は細い糸)。そして、今は使われなくなった古い坑道を、左手にロウソク、右手に糸玉を持って歩いて行く(2枚目の写真、矢印は糸玉)。これは、途中で道に迷っても、リフトまで確実に戻って来られるようにするための工夫だが、まるで、1938年版の『トム・ソーヤの冒険』の最後のクライマックスにそっくりだ(3枚目の写真)〔これ以後の、1973年版、1976年版、1995年版、2014年版にはない〕〔ただし、原作では、凧糸を使うが、その時にはロウソクは使い切っている〕。



デイヴが坑道を延々と歩いていると、遠くの方からポニーの哮(いなな)きが聞こえたので、そちらの方に歩いて行くが、いつも鳴いてくれるわけではないので、何度も迷った挙句、遂に、稼働中の坑道にぶつかる。旧坑道に入れないよう、2本の斜材でブロックしてあるが、中は手に取るように見える(1枚目の写真)。そこにいたのが、ちょうどフラッシュだったので、デイヴは嬉しくて笑顔になる(2枚目の写真、矢印は糸玉)。一方、地上では、アリスが 「今の坑道に辿り着くまでに、どのくらい歩かないといけないのかしら」とトミーに訊く。「坑道は何マイルも走りよー。きっと迷子になるばい」。あまりにひどい言い方に、アリスは、「トミー!」と叱るが、トミーは止めるどころか、ますますエスカレートする。「ろうそくは燃え尽き、疲れ果てて倒るーまで暗闇ん中ばしゃまよか〔暗闇の中をさまよい〕、死ぬまでそこしゃぃ横たわるったい… 骸骨だけが残る」(3枚目の写真)〔なぜ、こんな発言をさせる?〕。デイヴはリフトに戻ろうと歩き始めるが、糸玉を斜材の交点に忘れてきてしまったので、完全に道に迷い、どちらに進んだらいいか分からなくなる。幸い、焦って転んだ拍子に、地面に落ちている糸に気付き(4枚目の写真、矢印は糸)、何とかリフトに辿り着くことができた。デイヴがリフトに付いている紐を引くと、竪坑の最上部の鈴が鳴る。これで、デイヴがリフトに乗ったことが分かったので、喜んだ2人は急いで巻上エンジンハウスに走って行き、アリスが巻上エンジンを作動させる。




上がってきたリフトに乗っていたデイヴに、「でくるて思いよった〔できると思ってた〕!」と言いながら、トミーが飛び付く〔先ほどの発言の後では、白々しい〕。エンジンを停めた後、アリスも走って来て、「デイヴ、通り抜けられた? 何が見つかった?」と訊く。「みんなが働いとー現場まで、ちゃんと行くる。年寄りフラッシュも見た!」〔ポニーの寿命は20~30年。フラッシュは、17~18歳なので、寿命に近い〕。それを聞いた2人は、また、「やったー! やったー!」と喜ぶ。次のシーンでは、デイヴは石で出来た大きな小屋まで2人を連れて来て、「(ポニーたちを)ここしゃぃ連れてくりゃあよか」と言う(2枚目の写真)。この小屋のロケ地は、ノース・ヨークシャー州にある(旧)グリントン〔Grinton〕製錬所(3枚目の写真)〔1820年頃。グレードII*指定建造物(日本の国指定重要文化財)〕。3人は中に入って行く(4枚目の写真)。




翌朝、義父のルークは、炭鉱に出かける直前、デイヴに 「今日は機械なんかん接続作業ば行う。明日はポニーたちば外に出しバーンズリー〔サウス・ヨークシャー州〕に送り出す予定や。やけん、今日は、ポニーが坑道で働く最後ん日になる。もし、会いに行きたかなら、カーターに頼んじゃるぞ」と、彼にしては親切に話しかける(1枚目の写真)。しかし、ポニーを救う作業で忙しいデイヴは、「ううん、よかよ〔No thanks: No thank youよりは丁寧〕。どげんでんよかけん」と断る。そのすげない返事に驚いた母が、「デイヴ、しゃよなら〔さよなら〕ば言いとうなかと? あん年取ったフラッシュにも?」と訊く。「ただんポニーやないか」。夫婦は、ホッとしたのか、笑顔で見合うと、ルークはドアを開けて通りに出て行く。一方、坑道では、バートが 機械を運ばされているポニーたちを見て、「哀れなポニーたち… 自分たちば死に追いやる物ば運んどーとも知らんとって」と、思わず口にする。それを耳にした技師の一人が、「バート、ポニーがおらんくなったらどげんする?」と訊く〔バートの仕事は、ポニーの世話〕。「考えとらん。だが、ここじゃ、もう俺ん居場所はなかね。何とか仕事ば探しゃな」。次のシーンは、朝なのか、夕方なのか分からないが、ルークが、屋外でカーターと、機械導入後の失業者数について訊いていると〔ルークは、組合の担当者?〕、カーターが “丘の向こうから聞こえてきたような” 音を一瞬耳にする。ちょうどその頃、古い巻上エンジンハウスでは、デイヴがエンジンを起動させていた(2枚目の写真)〔注意しないと気付かれる〕。一方、アリスは、「お休みなさい」を言ってから、ベッドを “アリスが寝ている” ように加工し(3枚目の写真、矢印)、窓からこっそりと抜け出す〔窓の下に長いハシゴが置いてある〕。そして、走って巻上エンジンハウスまで行くと、「遅くなってごめん」と謝ってデイヴたちに合流する。同じ頃、坑道内でも、古い巻上エンジンの音は聞こえている。その “あり得ない現象” を炭鉱夫たち数人が話題にしていると、危機感を覚えたバートは、「まあそうやろうな。前にも聞いたことがある。昔んエンジンハウスから聞こえるったい。あそこで5人死んでから、あそこは封鎖しゃれた。ホブゴブリン〔人に悪さをする小鬼〕どもに古か坑道へ引きずり込まるーとがえずか〔引きずり込まれるのが怖い〕」と、炭鉱夫たちの関心を何とか逸らそうとする(4枚目の写真)。それからしばらくして、全作業は終了し、ポニーたちは、いつもの部屋に連れて行かれ、翌朝、外に出されるのを待つことになる。




坑道に誰もいなくなる時間まで待ってから、デイヴとトミーはリフトで旧坑道に降りて行く〔アリスは、ボイラーに石炭を入れる係。上品な少女なのに頑張っている〕。坑道では、デイヴとトミーが、地下厩舎からリフトまで、ポニーたちを追い立てるが(1枚目の写真)、なかなか思ったようにリフトに向かってはくれない。一方、デイヴとトミーの小さな家では、こんなに夜遅くなっても2人が戻って来ないので。「これまで、こげん遅れたことは一度もなかった」と心配したルークは(2枚目の写真)、2人を探しに行く。地下ではポニーたちがリフトの周りに集められ(3枚目の写真)、最初にフラッシュが地上に送られることに。2人は、嫌がる〔いつもと違ったことをさせらるので〕フラッシュを何とかリフトに乗せ、木の板で入口を仕切ると(4枚目の写真、矢印は板)、トミーが紐を引いて地上の鈴を鳴らす。しかし、何度鳴らしてもリフトは動かない。心配性のトミーは、「ぼくたちポニーたちと一緒にここしゃぃ閉じ込められてから〔閉じ込められちゃって〕、最後には “スケリントン〔骸骨の幼児語〕” になるったい」と心配する。




リフトが動かなくなった理由は、機械の不調。3人が今夜ポニーたち逃がそうとしていることを知っているバートが、助けにやって来て機械を少し触ると、リフトは再び動き出す。リフトが地上に着くとアリスが飛んできて、大好きなフラッシュを迎える(1枚目の写真)。それでもフラッシュが暴れるので、デイヴが 「どげんしたんや。フラッシュ?」と声をかけると、バートが 「フラッシュにとって なんもかんも奇妙なんや。14年も外に出とらんけんな」と教える。デイヴはフラッシュはアリスに任せ、リフトで地下に降りて行き、他のポニーを1頭ずつ運び上げる。すべて運び上げ終わると、10頭程のポニーを3人で連れて行けるよう、3組に分けてロープで縛る。バートは、「あとは任しぇた。俺はもう行く。どこしゃぃ行くかはゆわんでくれ」(2枚目の写真)と言って立ち去る。3人は、それぞれポニーを3~4頭ずつ牽きながら、荒れ地を歩き(3枚目の写真)、先日訪れた大きな小屋に向かう。



その頃、遅く帰宅したサンドマンが、食事を食べてから娘の様子を部屋に見に行く。すると、布団の中に潜り込んでいる割には直線的なので、変だなと思い布団を剥がすと(1枚目の写真、矢印)、アリスがいない。サンドマンは驚いて妻を呼ぶ。その時、ドアをノックする音がしたので、期待してドアを開けると、そこにいたのは、今朝バークと話していた技師とルーク。サンドマンが、階級が上の技師に、「娘を見なかったか?」と尋ねると、技師は、「うんにゃ、見とりましぇん。監督しゃん、ポニーがおらんくなってしもうた」と告げる(2枚目の写真)。場面は、小屋の中で多くのポニーの世話をしている3人の姿に変わる(3枚目の写真)。ここに連れて来られてからも、フラッシュは落ち着きがない。心配するアリスに、デイヴは、さっきバートから聞いたことを話す。「何年も地下におったしぇいでそうなるっちゃん。フラッシュには、なんもかんも奇妙に見えるったい」。それを聞いたアリスは、「慣れたら気に入ってくれるわよね?」と訊き、デイヴが、「うん」と言うと、「私たち、やったわね! ポニーを助けた!」と笑顔で言い、デイヴも、「そうやね」と笑顔で応じる(4枚目の写真)。




その楽しいシーンの直後、大きな音がして、小屋の扉が開かれ、左から、技師、サンドマン、家庭教師、ルークの4人が姿を見せる(1枚目の写真)〔なぜ、この小屋に来たかというと、あらすじでは省いたが、デイヴたち3人が最初にこの小屋を見に来た時、兄弟が去った後、アリスが1人で帰ろうとしていた時、アリスを探しに来た家庭教師と出会ったから。家庭教師(サンドマン、ハロゲート卿に次ぐ悪役)は、そのことをサンドマンに話し、ここに来たに違いない。しかし、それだけのことで、こんな遠くまで、真夜中にわざわざ4人で来るだろうか?〕。アリスは、父が来たので、すべては自分がいなくなったのがバレたせいだと思い、父に向かって、「お父様、ポニーたちを連れて行かないで」と懇願するが、血も涙もないサンドマンは、家庭教師にアリスを家に連れて行くよう命じただけで、自分は一人で帰宅する。ルークは、ちゃんと2人を連れて帰宅する(2枚目の写真)。母は、眠っているトミーをそのまま受け取って寝室に連れて行き、ルークとデイヴだけになる。ルークは、「なんか食べたかか?」と訊く。デイヴが悲しそうにうつむくと、「じゃあ、寝るとが一番や」と言う。デイヴが頷いて階段を上がろうとすると、ルークは 「デイヴ」と呼びかける、デイヴが振り向くと、言おうとしていたことの代りに、「しゃあ〔さあ〕、ベッドに行って」と言う。そして、今までのポニーに対する自分の言動を反省し、デイヴの勇敢な行動を誇りに思ったルークは、2階を見上げながら笑顔になる(3枚目の写真)。



翌朝、ポニーたちは、サンドマンの命令で炭坑のそばの鉄道駅の裏にある炭鉱専用の貨車軌道の前まで連れて行かれ、そのまま貨車に乗せられようとする。それを、その背後の壁から心配そうに見ているデイヴとトミーが映る(1枚目の写真)。作業を実際に指揮しているのは、技師長のカーターと昨夜の技師。その前に現れたのが、ルークを中心とした30名近い炭鉱夫たち。それを見たカーターが、「よかか、ここでぶらぶらしなんな。竪坑まで行って地下に降りれ」と命じる。それに対し、ルークは 「ポニーたちにかまいなんな!」と強く抗議する(2枚目の写真)。カーターは、「何やと?」と言っただけで、バートに 「ポニーば積み込め」と命じる。無視されたルークは、「れて行くなて言うたんや! やめれ!!」と怒鳴り、仲間の炭鉱夫の方を向くと、「あんポニーたちはよう働いてくれた… 石炭ば運び、俺たちが働くんば助けてくれたんや。なんに、まるで生肉んごと〔生肉みたいに〕屠殺場に連れて行かるーとば、黙って見よーとか?」と演説する(3枚目の写真)。それを聞いた炭鉱夫たちは、貨車の前まで行き、ポニーが乗せられないようにブロックする。上から見ていたデイヴとトミーにとって、ルークは嫌な義父ではなく、英雄だ。



カーターは、すぐにサンドマンに相談に行く。そして、結果的に、サンドマンの事務所の前に炭鉱夫全員が集められ、サンドマンが、「私が命令したら、それには従うべきだ。ポニーたちを駅に戻し、貨車に入れたまえ」と、一方的に命令する。それに対し、ルークは 「あんポニーたちは、俺たち同様、坑道が居場所なんや!」と強く主張し、他の鉱夫たちも、「そうや! そうや!」と賛同する。サンドマン:「ポニーは機械に取って代わられた。そのお陰でもっと金が稼げるんだ」(1枚目の写真)。それに対し、ルークは 「奴ら、人から機械へと変えようとしとー! そげんことは許しゃん!」と大声で怒鳴る。他の鉱夫たちも、「俺たち、機械なんか要らん!」「そうやそうや!」「今まで通り、ポニーと一緒に働くったい!」と声が上がる。それに対し、サンドマンは 「あの機械がなければ、炭鉱はきっと閉鎖され、お前たちは路頭に迷い、一文無しになっていただろう! あの機械はお前たちの生活を守ってるんだ! お前たちがこれほど愚かじゃなければ…」。最後の侮辱的な言葉に、ボス的な鉱夫が 「俺たちは、ボスん言うままにはしゃれんぞ! そげんよかて〔そんなにいいと〕思うなら、あんたが自分の機械で、自分の採掘場ば掘りゃよかばい! みんな行くくさ!」と叫ぶ。その言葉で、鉱夫たち全員が事務所前の広場から出て行こうとする。カーターが、「どこしゃぃ行くつもりや? 一日分ん給料ば失いたかとか?」と注意すると、ルークが、「こりゃ、ストライキや! もしあんポニーたちば貨車に入れてみぃ、俺たちは二度と戻って来んぞ!」と、最後通告する。家に帰ったサンドマンは、アリスに、「お前のせいで私はストライクを食らった。お前が、自分がやった行動を反省し、心底恥じることを願う。お前を罰するつもりはないが、私が非常に怒り、お前にひどく失望していることを知れば、お前にとって十分な罰となろう」と強く叱る。しかし、アリスも負けていない。「それで、ポニーたちはどうなるの?」と、決然として、横を向いたまま訊く。最悪の父親のサンドマンは、それには答えず、「もう寝るんだ」と命じる。アリスは初めて父の顔を(睨むように)見ると、何も言わずに立ち去る。一方、ルークの家では、デイヴがルークのすぐ横に座り、信頼を示しているが、母は、生活の方が心配なので、「組合は、あんたば支援してくれると?!」と訊く。「かもしれん」(2枚目の写真)。「もし、支援してくれんやったら、ストライキ手当もらえんとよ。どげんして生きていくと?」〔20世紀初頭のイギリスでは、ストライキ手当は労働組合が自らの積立金から提供したが、その額は一般的に低く(最低限)、賃金全額を補填するものではなかった〕。母はさらに、「デイヴ、なんニヤニヤしとーと?」と批判する。デイヴは、「ポニーが殺しゃれんでよかったやなか」と言うが、母は 「ポニーなんか、もう うんじゃり! ポニーは食べ物も、着る物もくれんとよ!」と当たり散らす。村の広場では、何もすることのない炭鉱夫たちがたむろしている(3枚目の写真)。ポニーたちは、駅のそばの屋根のない建物の中でまとめて飼育され、バートとデイヴとトミーが餌を与えている。その中で重要なシーンは、フラッシュを調べているバートに、デイヴが 「フラッシュ、いっちょん〔ぜんぜん〕見えんと?」と訊く場面(4枚目の写真)。「そうや。炭疽病って言う、石炭ん粉塵による炎症や。坑道に永年いるポニーん多くが罹(かか)る。フラッシュは、道順ば覚えてしもうたけん、誰も気づかんやったんや」。




サンドマンは、ハロゲート卿に相談に行く。以下の抜粋会話で、サンドマンの馬鹿さ加減と、ハロゲート卿の冷酷さが良く分かる。ハロゲート卿:「彼らは、一体全体どういうつもりでストライキをやっておるのかね? もっと金が欲しいのか?」。サンドマン:「いいえ、閣下。機械が問題なのです」。「彼らが機械の使用を拒んでいるとでも?」。「そうではありません、閣下。彼らは(これ以上機械化しない)保証を求めているのです」。サンドマンは、“ポニーを救うため” という一番重要なことを黙っている。このような愚かな人物に、管理責任者の資格はない。このあとのハロゲート卿の発言は、ポニーの話が出されていたら、全く違ったものになっていた可能性が高い。しかし、ポニーの話が出なかったので、ハロゲート卿の “炭鉱など、どうなってもいい” という姿勢がもろに出てしまう。「いいか、私は彼らが何を望もうが、全く気になどせん。彼らは働くため ここにいる。君は彼らが働くのを監視するため ここにいる。君は私に、この機械が炭鉱を早晩 採算の取れる状態にするだろうと言った。だが、もしそれが実現しないなら、私は炭鉱をただ単に閉鎖し、その土地を他の用途に転用するしかない。ただ、その場合、彼らの中の誰一人として、仕事はもとより、住む場所すら失うだろう」(1枚目の写真)。炭鉱に戻ったサンドマンは、もう一度全員を事務所前に集め、ハロゲート卿の最後の言葉だけを引用して、問答無用の脅しをかける。「君たちが、明日仕事に戻らないなら、炭鉱は閉鎖する。エムズデール炭鉱は赤字を出している! 利益を上げる方法はただ一つ、機械を使って より大量に そして より安く石炭を掘り出すことだ!」(2枚目の写真)。全員が蒼白に静まる中で、ルークが 「ポニーはどげんなる?!」と訊く。「この炭鉱に、ポニーの居場所などない!」。こう “最低” の返事をすると、サンドマンは “協議は不要” とばかりに室内に消える。ルークは、隣にいた労働者のまとめ役に、「おい、エイモス、あげんとは〔あんなのは〕最後通牒や! 受け入れらるーか! しぇめて条件ば付けよう!」と言うと、さっきまでサンドマンがいた場所に上り、みんなに話しかける。「俺たちはポニーんためにストライキばしたが、(目的は)それだけじゃなかった! 俺たち自身と仕事へん〔への〕敬意ば求めて、ストライキば決行したんや! もし彼らがなんも考えず、一方的にポニーば追い出しぇるんなら、俺たちやって追い出しぇるったい! もし、条件ば付けんで奴ん言う通りに(明日仕事に)戻りゃあ…」。ここまで言った時、他の連中から異論が噴出する。「条件なんか付けらるーか?」「ここは炭鉱ん村で、俺たちは炭鉱住宅に住んどー」「炭鉱が閉鎖しゃれたら、俺たち全員、妻や子供たちまで路頭に迷う。金も、住む場所も、食い物も、仕事も失うったい」「炭鉱が閉鎖しゃれたら終わりだ、よう考えてみぃ」。それでも、ルークは 「投票すべきや!」と主張する。エイモスが、「明日、仕事に戻りたか者」と言うと、ほぼ全員が手を上げる(3枚目の写真)。次に、「反対ん者」と言うと、手を上げたのは、ルークと、一番後ろで見ていたバース、デイヴ、トミーの4人だけ。



翌朝、アリスの母が、「お父様は、これから炭鉱に行かれるのよ。行ってらっしゃいのキスはしないの?」と訊くと、アリスは 「私、一生涯、キスなんかしないわ」と宣言する(1枚目の写真)。一方、駅では、暴れるポニーを何とか貨車に入れようとしている(2枚目の写真)。それを見ていたサンドマンが、貨車に背を向け、カーターと一緒に笑顔で歩き始める。カーターが、「ポニーたちに家ば見つけちゃれなかったとは残念ばい。そうすりゃ男たちも心置きのう戻れたやろうに」と言うと〔カーターは、まともな人間〕、サンドマンは 「彼らはそれを弱さの表れとしか見なさないだろう」と答える〔サンドマンは、腐り切っている〕。このバカな言葉の直後、まるで天罰が下ったかのように、炭鉱タワーの近くで爆発が起きる(3枚目の写真)〔この爆発は、炭鉱内で発生する爆発性のガス(メタンガス)が、空気と混ざることで引火・爆発した “坑内ガス爆発”。防止法は、換気によるメタン希釈(メタン濃度を爆発限界以下に希釈するための継続的で強い気流を発生させる)、メタン除去(様々な場所からボーリング孔を掘削してメタンガスを回収する)、厳格な設備管理と清掃による発火源(火花や炎など)の除去(ライター、マッチ、および認定されていない点火を厳禁する)等だが、20世紀初頭では制御は不可能に近い〕。



救助された炭鉱夫の数から、坑道のどこかに8人が残されていることが分かる。ここで、坑道内が映り、その中にはルークもいるし、けが人もいるが、死者はいない(1枚目の写真)。中での会話は、「落盤の先で炭塵が堆積している場合、突破までに数日かかる可能性がある」。あるいは、何らかの音が聞こえないか坑道内を探ろうとした鉱夫に対しては、「気をつけて行けよ、アルフ。お前のブーツから火花が少しでも出たら、また爆発するかもしれないぞ」。一方、外では、サンドマンが、駆け付けたハロゲート卿に対し、坑道の配置図を見せ、8人がいる可能性の高い場所を示している。ハロゲート卿:「連絡を取る手段はないのか?」。サンドマン:「主換気シャフトが壊れてしまいました。アフターダンプ〔二酸化炭素、一酸化炭素、窒素で構成され、非常に有毒な悪臭ガスの成分である硫化水素も存在する可能性がある〕も最悪の状態です」。「アフターダンプ、窒息を起こすガスか?」。「そうです、閣下」。ここで、カーターが口を挟む。「そして、可燃性ガスとアフターダンプが一緒になると…」。「分っとる。発火する…。ところで、他に連絡を取る手段はないのか?」(2枚目の写真)。「ありません、閣下、換気ができるまで48時間ほどかかりますので」。ここで、いつもの技師が、「何とか連絡が取るーはずばい」と言い出し、実際に何人かで行こうとするが、サンドマンは、「坑道に出て10分もすれば窒息するぞ」と止める。ここで、デイヴが発言する。「ポニーん時んごと、古か坑道から入るーばい」(3枚目の写真)。バートも、「君たちが、昔ん巻上エンジンば動くごとしたしな」と付け加える。それを聞いたサンドマンは、「試してみよう」と言う。それに対し、カーターは、「正しか道ば見つくることはできんやろう。あん子ば行かしぇるわけにもいかんし。爆発性ん可燃性んガスん危険性があるけん、安全ランプ〔爆発による致命的な事故を防ぐために発明された特殊なランプ。炎を金網やガラスで囲み、メタンなどの可燃性ガスの発火を防ぐ構造〕以外はなんも使えん。そして、安全ランプは暗かばい。つまり、暗闇ん中、知らん坑道ん中ば歩くことになるとです」と、この案を否定する。すると、デイヴがもう一度発言する。「フラッシュには明かりなんか要らん。それに、道だって知っとー」〔この “道を知ってる” 発言は、疑問。フラッシュは、現役の坑道は盲目でも慣れていて自由に歩き回れたが、旧坑道は、デイヴとトミーにリフトまで無理矢理連れて行かれただけ。それでは順路を覚えている可能性などゼロに近いと思うのだが…〕。



村中の人々が、旧炭鉱タワーの周りに集まって来る(1枚目の写真)。フラッシュもいる。デイヴは、「僕もフラッシュと一緒に行かしぇて」とサンドマンに頼むが、「いいや、論外だ」と断られる。「お願い」。「残念だが許可できないんだ、坊や。君は、ここにいて、お母さんの面倒を見ていなさい」。それを聞いた炭鉱夫の一人が、「心配するな、俺がフラッシュば操る。フラッシュん係やけんな」と言い、バークと一緒に暴れるフラッシュをリフトに連れて行く。サンドマンも、指揮を取らないといけないので、リフトで下に降りて行く。坑内に入ると、フラッシュを先頭に立たせて、旧坑道から現坑道に向かう(2枚目の写真)。フラッシュが立ち止った所が崩落現場。サンドマンが持って来た棒で壁を何度も突く(3枚目の写真、矢印は突く方向)。



一方、取り残された8人がいる坑道では、叩くような音が聞こえたので、アルフが音のする方に走って行き、短い木の棒で壁を叩く(1枚目の写真、矢印)。その音が聞こえたサンドマンは、「彼らがいるぞ!」と後ろに教え、それを聞いたフラッシュの係は、「やったな、フラッシュ」と褒める。地上では、男が、「見つかったったい!」と、村人に叫んで知らせる。カーターが、待機していた医師の所まで走って行き、至急リフトまで来るよう指示する。医師と、木の棒と布で出来た簡単な担架を持った3人がリフトに向かって走る(2枚目の写真)。崩落現場には、10人近い救助隊が穴を拡げ、閉じ込められていた8人のうち、自分で動けない者から引っ張り出して担架に乗せる。動ける鉱夫は、自分で這い出て来る(3枚目の写真)。リフトの地上部の脇に立ったカーターが、リフトで最初に到着した3人の名を順に呼び上げ、それを聞いた家族は喜びに包まれる。地下では、全員を救出してホッとしたサンドマンとフラッシュの係が、いつ爆発するか分からないので、急いでリフトに戻る。しかし、救助の際、誰も監視していなかったフラッシュは、昔いた地下厩舎に、本能で戻ってしまっていた。地上では、2度目のリフトで5人の名が呼び上げられ、最後の5人目がルークだった。出て来たルークに、デイヴの母が抱き着く(4枚目の写真)。ルークは、カーターに、下に残っているのは、サンドマンとビル〔フラッシュの係〕だけだと教える。そして、最後のリフトでサンドマンたちが上がって来て妻が抱き着く。アリスも、「お父様、ごめんなさい」と言って抱き着く〔なぜ、謝る? 「お父様、よくやったわね」というなら分かるが〕。ハロゲート卿はサンドマンを讃える。




しかし、デイヴだけは、フラッシュが上がって来ていないことを心配し、「フラッシュはどこ?」と、初めて口にする。ビルは、「俺が、荷台からフラッシュば外した。フラッシュは… たぶん、自分の仕事が終わったて思うてポニーん部屋に戻ったっちゃろう」と言う。それを聞いたルークは、「俺が降りて、フラッシュば連れて来る」と言う。みんなが止めようとするが、ルークは 「フラッシュが、俺たちん命ば助けてくれたんや」と言い、妻の 「止めて」の声も無視される。デイヴが、「止めて、ルーク、行かんとって!」と言うが、それでも行こうとするルークに、デイヴは 「ルーク、行かんとって!」と抱き着いて止める(1枚目の写真)。その時、大きな爆発音がして木製の巻上タワーの下から粉塵が立ち昇る(2枚目の写真)。フラッシュが死んだことを悟ったデイヴが泣き始めると、ルークは、デイヴを抱き締める。村人全員が引き揚げた後で、ハロゲート卿がサンドマンに、「なぜ、子供たちが泣いとるんだ?」と尋ねる。「ポニーが置き去りにされたからです、閣下」。「ポニーだと? だが、男たちは全員助かったじゃないか」。「はい、閣下、そう思われても当然でしょうが… あのポニーは、彼らにとって大切な存在なのです」(3枚目の写真)〔ポニーに対して血も涙もなかったサンドマンが、急にこんなことを言うとは信じ難い〕。



翌日、楽隊を先頭に、エムズデール炭鉱の幕を掲げた一団が炭鉱夫の村を出て行く(1枚目の写真)。このロケ地は、ノース・ヨークシャー州にあるラングスウェイト〔Langthwaite〕という村(2枚目の写真)。村人全員は、楽隊を先頭に、荒れ地を超えてハロゲート卿の城に向かう(3枚目の写真)。城の前庭には長いテーブルが3列設けられ、その正面に立ったハロゲート卿が挨拶する。「私の短い挨拶はただこれだけです… みなさん、炭鉱夫のピクニックにようこそ」〔「ピクニック」は、19世紀初頭から「屋外での食事」を意味する言葉として使われた〕「お茶を楽しんでいただいた後で ちょっとした儀式を行いますが、今はこれで終わります」(4枚目の写真)。全員が拍手する。




みんながお菓子を食べているのに、デイヴがいないことに気付いたルークは、席を立つ。デイヴは少し離れた柵の前で、池の向こうに繋がれている1頭の馬を見ている。ルークは、デイヴの横まで行くと、「フラッシュは、最高やったな。いつも、最高んものがおらんくなるったい。君ん父しゃんな、俺にとって最高ん友だちやった」と言うと、笑顔でデイヴを見る(1枚目の写真)。ルークは、さらに、「こん太陽ん光ん下に、フラッシュがおってくれたらよかったとにな」と言う。それに対し、デイヴは、「ううん。フラッシュは外に出た時、目が見えんことに気付いたんや」と言い、“太陽の光の下” 云々の喜びなんかないと打ち明ける。それを聞いたルークは、デイヴの肩を抱く。デイヴの母は、柵の所に2人だけでいる夫と息子に、「一日中、そこしゃぃ立って馬ば見よーと? それとも、お茶ば飲みに来ると?」と声を掛け、2人は席に戻る。お茶とお菓子が終わると、ハロゲート卿は全員を芝生の方に移し、柵の前に立ってスピーチをする。「紳士淑女の皆さん、フラッシュに敬意を表し、この牧草地を寄贈できることを大変嬉しく思います。フラッシュの仲間だった他のポニーたちが、余生を快適かつ自由に過ごせる場所となるでしょう」。伯爵の寛大な措置に、全員が笑顔で拍手する(2枚目の写真)。アリスがテープをカットし、ポニーたちが柵で囲われた牧草地へと駆けて行く。カメラは、それを、池の対岸から城と一緒に映し(3枚目の写真)、これがラストシーンとなる。因みに、このロケ地は、ノース・ヨークシャー州にあるリプリー〔Ripley〕城(4枚目の写真)〔14世紀。グレードⅠ指定建造物(日本の国宝)〕。



